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日中食品汚染 Ⅷ

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● 日中食品汚染 Ⅷ 第1章 見えない食品の恐怖

                     

                              日本のエキス消費量

  では日本では、年間どのくらいのエキスが消費されているのだろうか?農水省はなぜか
 最近のデータの公表をやめてしまった。最も近いもので2008年度のデータしか公表し
 ていない。日本エキス調味料協会会員のうち51社のデータであるが、この協会自体がデ
 ータの公表を止めた可能性もある。

  エキスはまず大きく原体エキス、加エエキスに分かれ、さらにそれぞれが粉体、ペース
 ト、液体の3つの形態に細分化される。これらを合計すると生産量の全体になり、消費量
 とほぼ一致するようだ。2008年度のデータでは12万4853トンで、2004年度
 より2700トン増加している,なおデータがないので確かなことはいえないが、最近も
 おそらく増えているはずだ。

  農水省の担当部署に輸入量を問い合わせたところ、「貿易統計」を見ればわかるという
 ものだったが、現在の統計による限り、その数字にたどり着くことはほとんど不可能だ。
 エキス調味料協会の資料から作ったのが表4である。これによると2008年度のエキス
 総輸入量は1万6755トン、2004年度の3倍となった,エキスの輸入増加はこの食
 品の利便性と価格面での有利さを証明している。

 

  とくに輸入が増えているものはピーフエキス、チキンエキスと野菜類エキスだ。チキン
 エキスの大きな増加は、中国から輸入する鶏肉調製品の増加と同じ性質のもので、チキン
 肉そのものの輸入に代替する意味を持っていると考えられる。ただし、残念ながらこのデ
 ータからは輸入先の分布を知ることはできない。

  そこで再び「貿易統計一を当たってみると、次のことが分かった,
  日本が中国から輸入しているエキスは肉エキスや野菜エキスなど多彩だが、2010年
 1722トン(4億4000万円)、2011年1539トン(4億円)、2012年
 1842トン(4億6000万円)である。驚くかもしれないが、カレールウも中国から
 の輸入が2010年I12トン(2500万円)、2011年32トン(I200万円)
 2012年26トン(500万円)となっている。

  日本エキス調味料協会には、2014年1月時点で59杜が加盟している,主要なメー
 カーは加盟しているはずだから、謎体的な企業名称を昆れば、この業界の大体の様子は見
 当がつく。この団体は、農林水産省総合食料同食品産業振興課許可によることから、行政
 側と業界との連携強化の要諮にもとづいて設政されたものらしい,日本でエキスの定義を
 行っているのはこの団体しかない,「食品として用いられる農・水・畜産物を原材料とし
 て、衛生的管理の下に抽出又は搾汁、自己消化、酵素処理、精製、濃縮等により製造し、
 原材料由来の成分を含有するもの、またはこれに副原材料、呈味成分を加えたもので、食
 品に風味を付与するものをいう」,呈味成分とは、叶‥味、塩味、酸味、苦味、うま味な
 どのことで、これには良品添加物も含まれている。

  ちなみにアメリカのエキスの定義は、「多くの場合、エタノールまたは水などの溶媒を
 使用することにより、原材料の一部を抽出することによって作られる物質である。エキス
 は濃縮エキスまたは粉末の形態で販売することができるというものだ。
  アメリカの定義が実態に近いとは断言できないが、日本エキス調味料協会の定義にはエ
 タノールという表現は見られず、「自己消化、酵素処理、精製、濃縮等により製造一とあ
 るだけで、いかなる触媒や化合物も使っていないことになっている。

  この団体の会員メーカー59社を見ると、どちらかというと食品メーカーの中では中堅
 か ら中小規模の企業が目立つ。ここから、エキスは食品の中では比較的後発の商品だと
 いうことがわかるが、かといってその役割はけっして軽擬すべきものではない。今後の花
 形産業に躍り出る可能性を泌めている。

  たとえばB社の例を見ると、営業や経営指針は、「顧客の要望に要望に合わせたエキス
 調味料品の製造・販売。加圧抽出品や常圧抽出品、酵素分解などの製法によるエキス製品
 ならびに加工エキス調味料の開発・製造。中国ISO9001取引企業との提携によるチ
 キン原料の生産・管理及び解体・検査まで一括した生産体制を構築、また、トレーサピリ
 ティの確保にもぷ点を置く,豚・牛等の原料に関しても、中田食肉協会を通じ、安全な品
 質を確保できる企業より、鮮度の高い原料を購入する」ことで、「高品質な製品休訓を維
 持一とある(同社ホームページ)。

  エキスメーカーの多くが中国に製造拠点を構えるか、製品貿易を行っている,表4で見
 たように、エキスの輸入量は増えているが、国別の正確な内訳が不明なので困る。しかし
 これらエキスメーカーの公開情報から、中国という文字が大きく浮かび上がり、相当量を
 占めているだろうことが推測される。すなわち、変装輸入あるいは百面相輸入の相手が浮
 かび上がったのである。



                          中国最大のエキス製造会社


  中国と日本で大きくなっているエキス市場の動きを示すのが、エキス製造技術に関連す
 る特許だ。
  中国の発明や実用新案権を管理している国家知識産権局の統計によると、エキス製造技
 術を含む特許(特許分類A23L)申請件数(国内企業のみ)は、2012年だけで1万1
 430件に上り日本をはるかにしのぐ多さである。ちなみに2011年は7524件だっ
 たので急速な進歩だといえる。中国では、いかに食品加工関連の技術改良志向が強いかを
 知る手がかりともなる。

  広州のW研有限公司は、日本やカナダにも輸出している中国最大クラスの食品エキス製
 造業者だ。特許や実用新案権など多数の知的財産権を持っており、年間8000トンを生
 産している。設立は2008年だ。この企業は鶏肉エキス、牛肉エキス、豚肉エキス、ア
 ワビエキス、ザリガニエキス、カニエキス、エピエキス、貝エキスなど幅広く製造してい
 る。

  中国科学技術部が認定する重点高技術企業H公司は武漢にある。1998年にできた企
 業だが、健康食品のほかに、主力事業のひとつとして鶏肉エキスを作っている。従業員1
 万8000人を擁する。鶏肉エキスは保健食品の原材料としても利用されている。この企
 業の場合、鶏肉エキスを抽出する際、防腐剤を使っている点が問題だ。

  また一般に、鶏肉エキスといっても、胸肉とか腿肉とかを扱う企業はない,エキスはど
 の部位からも抽出可能なことがメリットでもあり、またそういう食品形態なので抗生物質
 などの薬物汚染や、飼料から取り込まれた農薬汚染の危険因子が入り込む余地は、他の食
 品に比べても格段に高い。この2社以外にも中国では多数の企業がエキス製造に参入し、
 国内外の食品メーカーに供給している。

  日本では、エキス製造特許件数は、細かすぎるためか公表されていない。公表されてい
 る食品加工特許件数は2002年の938件から増え、最新データの2011年では16
 18件と、約70%増加している。この中に、エキス製造法に関する特許も含まれている
 と見られる。背景には、食品冷凍技術、濃縮技術、食品化学技術の進歩などがあり、公開
 されている特許を見ると、たとえばN社は従来特許だった「カキ肉エキス製法特許」をさ
 らに改善、カキの内臓部分に含まれる有害物質を混入させない方法を発明した,

  またP物産は常温保存安定性のある還元性濃縮チキンエキスと天然エキスの呈味成分を
 維持し、アレルギーを起こす物質を低減、除去したアレルゲン低減の天然チキンエキスの
 製造方法の特許を取得した。エキスや粉末の製造に関する特許は今後さらに熱が増す可能
 性がある。エキス製造特許競争は熾烈さを増しているが、それだけ企業経営者にとっては
 有望な商品だということだ、


                          高橋五郎 箸 『日中食品汚染』

 

エキスである以上、汚染物質(危害物質)が濃縮してくるケースも大きくなるだろう?そこ
で、検査方法だが、(1)まず、添加剤や新規物質の事前審査評価の検査試験結果データ(
MSDSなども含め)はもちろんのこと、(2)加工食品の事前審査評価に加え(要法整備)
(3)それが不可能なケースの事後審査評価(要法整備)が必要だろうが、着実に検査試験
事例を積み上げ、国際的な知財・機構を構築するしかないが、『最新アレルギー制御工学
(2015.04.09)のように、アレルギー疾患人口が急増するなか、また、複雑化した交易社会
に適合した予防・検査・是正が必要となる。また、根本治療法の確立も必要だ。例えば、無
農薬野菜なら植物工場で生産されたものとか――現在掲載中の『新弥生時代植物工場論』(
日本周回新幹線構想Ⅱ」2015.04.08)――また、魚工場(これについては別途考察掲載す
る)や家畜生産の非抗生物質化(これに関しては残件扱い)など。


                   
                                (この項つづく)

 

 



【新弥生時代 植物工場論 Ⅲ】 

ここ数年新しい農業について考えてきたことを、独自に事業化の基本イメージを確定させてお
きたいという思いに駆られ、上記の本をそのたたき台として、時宜、読み進めたいと掲載を開
始した。独自の事業化イメージはできあがっている。この本にもすこし紹介されている。時々
の気付いた点を添え書きとしてここに記載していく。通読された方に理解できるだろう。それ
では読み進めることに。


 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を施設内で
 人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所にとらわれず、安全
 な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めています。その「植物工場」そ
 のものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産コストから、養液栽培の技術、流通、
 販売、経営などを豊富な写真や図解を用いて様々な角度からわかりやすく解説。また、ク
 リアすべき課題や技術革新などによってもたらされるであろう将来像についても、アグリ
 ビジネス的な視点や現状もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書と
 なっています。

             古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」より

  
   【目次】

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか

   
  巻 頭 町にとけ込む植物工場

 

                  新素材で拓くドームハウスの植物工場

  千葉大学構内にあり、2014年8月に稼働をはじめたジャパンドームハウス株式会社
  が建てた植物工場は、幅7.7m、長さ26m。建物の外壁は独白の特殊発泡ポリスチレン
 でできており、植物工場に適した環境をつくりだしている。運営は株式会社阿蘇ファーム
 ランドが行っている。

  ドームハウスの特徴のひとつは、ポリスチレンの壁の厚さが20mもあり、断熱性に非
 常に優れていること。ドーム内の空調は家庭用のルームエアコン5台でまかなえるので、
 経済性にも優れている。ふたつめに、その形状と材質から、自然災害にも強いこと。屋根
 の半円の形状は風を受け流し、積雪にも耐える。

  さまざまなタイプのドーム型植物工場建設のノウハウをもつジャパンドームハウス。短
 期施工が可能なことがひとつの特徴である。植物工場への新規参入の貴重な後押しになる
 だろう。

 

 

                       直売所を併設した植物工場

  三協フロンテア株式会社は、専門であるユニットハウスやトランクルームの製造技術を
 活かした小型の植物工場を製造・販売している。さまざまな形状のものがあるが、なかで
 も「やさいばこ」という名の2坪に収まる植物工場が注目を集めている。

  柏の葉近くの流山展示場では、植物工場での野菜栽培をみられるだけでなく、すぐそば
 で直売も行っている。多いときには50組以上も、野菜目当ての来客があるという。グリー
 ンリーフやロメイン、ルッコラ、バジルなど、一年を通して値段を変えずに販売できるの
 は、植物工場ならでは。

  やさいばこには1.2坪タイプと1.8坪タイプがあり、小型のほうは駐車場1台分のス
 ペースに収まる。工場設備一式と苗のセットを月々5万円でレンタルすることが可能だ。
 購入するにしても、工事費を合わせても200万円以内で設置できる。

 

   植物工場のふたつのタイプ

                                                        植物工場は高度な植物生産システム

  現在最も高度に生育環境を制御する植物生産システムが植物工場であろう。
 植物工場は、環境制御法によりふたつのタイプに分類できる。ひとつは太陽光
 型植物工場であり、もうひとつが人工光型植物工場である。人工光型植物工場
 は閉鎖空間であり、太陽光型植物工場は外界気象に少なからず影響される半閉
 鎖施設であるため、その性質は大きく異なる。

  太陽光型植物工場

  太陽光型植物工場は、園芸施設と同様に半閉鎖型のシステムで農業的側面が大きい。換
 気を必要とし半透明の被覆材で囲むため、日射の影響を受ける。人工光型植物工場に比べ
 ると自然に左右される部分が多いが、それでも、収穫量と品質におよぼす気象の影響は開
 放型の田畑より軽減される。

  半閉鎖型の太陽光型植物工場に適した植物は、高度な環境制御により、品質と収穫量を
 大幅に向上できる植物である。
  トマト、パプリカなどの果菜類、菜もの野菜やハーブ類、べリー類、コチョウランなど
 の高紙花斉、コンテナ利用で小型に仕上げたビワ、マンゴーなどの果樹が挙げられる。
  太陽光型植物工場は、植物生産システムのひとつとして有用で、今後も施設による植物
 生産のほとんどは太陽光を利用して行われるだろう。しかし、生育環境を高度に制御する
 と いう植物工場の目的からすると、自然環境からの影響は短所にもなる。

  人工光型植物工場

  人工光型植物工場は閉鎖型のシステムで、工業的側面が大きい。外界との境界は光を透
 過しない断熱材で常に仕切られ密閉度が高い。品質・収穫量は、環境管理技術に依存する。
 閉鎖型での生産に適する植物は、弱い光、15~30日程度の短い栽培期間、高栽植密度
 で生産が可能で重量当たりの価値が高いものだ。具体的には、菜もの野菜、ハーブ、香草
 類、小型根菜類(二十日ダイコン、コカブなど)である。
  太陽光型植物工場に適したトマト、パプリカなどの果菜類は、人工光型の植物工場には
 向かない。理由はいくつかある。
  ひとつは、これらの栽培には強い光と数カ月以上の栽培期間が必要であること。ふたつ
 めに、栽培密度が1平方メートル当たり3~10本なので、電気料金が過大となること。
 さらに、草丈が高くなるので、多段栽培棚を前提とする人工光型植物工場には向かない。
  逆に、経営収支を無視すれば、ほぼすべての植物は人工光栽培が可能であるが、現実的
 ではない。

 


ここで、チャレンジキーワードの「栽培密度」という言葉がでてきた。それでは「栽培密度」を上げるには
どうすれば良いか?これが新しいテーマとして浮上する。
 

                                   この項つづく 

 

 




デクサマニー降臨 Ⅳ

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● デクサマニー降臨 Ⅳ 最新ナトリウムイオン二次電池技術

 ノートパソコンやスマートホンなどの小型携帯機器に使用されているリチウムイオン電池は、近年の
 脱原発や省エネルギー化への社会背景から、低コスト化が、電気自動車や住宅用充電器などの普及の
 条件となるが、リチウムイオン電池は希少元素であるリチウムやコバルトを使用しており、大幅なコ
 スト――昨年の水酸化リチウムの輸入価格は840円/キログラム、これに対し、重炭酸ナトリウム
 は44円/キログラムで精錬後は価格はさらに10倍乖離、海水からリチウム精製も開発研究が進ん
 でいるものの――削減が難しい。また、特定の希少元素産出国に依存しカントリーリスクが大きいた
 め、希少なリチウムを使用しないナトリウムイオン電池の開発が活発に行われている。ナトリウムイ
 オン電池の実現には、(1)電流を流すために化合物の対(プラス極とマイナス極)が必要となり、
 それぞれ共にナトリウムイオンを可逆的に吸蔵・放出する特性改善が求められ(2)プラス極につい
 て、これまでの研究からナトリウムイオンを可逆的に吸蔵・放出できる化合物が多数報告されている
 が、(3)マイナス極については、急速充電、長時間の電流供給、充放電の繰り返しに対する安定性
 などの条件を満たす化合物が見つかっていなかった。

 尚、「特開2014-107142 ナトリウムイオン電池用負極およびその製造方法ならびにナトリウムイオン
 電池」(住友電気工業株式会社)では、
ナトリウムとチタンとを含む複合酸化物と、複合酸化物の表
 面の少なくとも一部を被覆する導電性炭素材料と、の複合物を含み、導電性炭素材料が、有機高分子、
 樹脂およびタールよりなる群から選択される少なくとも1種の炭化物であり、導電性炭素材料の量が、
 複合酸化物100質量部に対して、3.5質量%以上である、ナトリウムイオン電池用負極を用いる
 ことで、ナトリウムとチタンとを含む複合酸化物を負極活物質として用いる場合に、ナトリウムイオ
 ン電池のIRドロップを抑制し放電容量を向上させる技術が提案されている(下図)。  



また、電圧は同程度でも高容量密度の亜鉛-空気電池などの開発研究が進行している。さて、東京大学
の山田淳夫教授、大久保詩史准教授、長崎大学の森口勇教授らのグループは、ナトリウムイオン電池をシ
ステムとして完成させるための鍵となるマイナス極を開発ことを公表(上図クリック参照)。具体的に
は、チタンと炭素から構成されるシート状の化合物を、ナトリウムイオン電池のマイナス極として応用。
このシート状の化合物は多量のナトリウムイオンを吸蔵・放出する特性を示し(図1)、ナトリウムイ
オン電池の長時間の電流供給を日f詣とするマイナス極であることが分かった。また、シート構造を反
映して高速でのナトリウムイオン吸蔵・放出も可能であり、急速充電にも対応可能であり、さらに、ナ
トリウムイオン吸蔵・放出を繰り返しても特性が劣化することはなく、長期間安定に作動することも分
かったという。



図1 ナトリウムイオン電池の負極イメージチタン (赤)と炭素  (灰色) から成るシート
   状物質がナリウムイオン (黄色)を吸収・放出する。正極(水色)と負極(赤色)

今回発見したマイナス極を、このグループが発見した安価な鉄と硫黄で構成されるプラス極と組み合わ
せることで、ナトリウムイオン電池のプロトタイプが完成した。作製したプロトタイプは、長時間の電
流供給が可能であり、充電・放電を繰り返すことによる劣化もなく、急速な充電や放電にも対応可能。
今後は、ナトリウムイオン電池を実現のボトルネックとなっていた負極の課題が解決され、ナトリウム
イオン電池のプロトタイプを完成したことで、この試作装置はナトリウム、鉄、硫黄、酸素、チタン、
炭素などの汎用元素のみで構成され、低コストな電池の実用化が加速し、小型の携帯機器から大型の電
気自動車まで幅広い用途展開が考えられる。

 

 

この研究成果は、昨年年7月18日、東大の山田淳夫教授らのグループが、リチウムイオン電池と同等以
上の性能を実現する新物質を発見したとことにはじまる。この物質を正極に使用した新型電池は 3.8
V(リチウム換算で4.1V)の高い電圧を出すことができる。新物質の組成はNa2Fe2(SO4)3で。山
田教授は、結晶構造が鉱石のアルオード石に似ていることから、新物質を「アルオード石型」と名づけ
る。アルオード石型化合物は、鉄を用いたナトリウム電池として3.8Vの世界最高電圧を達成した。
最初、間違いではないかと思っという山田教授が、何度も追試を実施。結局、何度やっても同じ値が出
た。それで、間違いではないと確信したという。

つまり、錬金術によるまったくの新規物質だということに気づく。山田教授が「間違いではないか」と
疑ったのには理由がある。電池の電圧は、正極材と負極材の組み合わせで決まる。特に、正極材の酸化
力が、電極電位(酸化還元電位)、ひいては、電圧に反映される。金属が電解質溶液中で発生すること
のできる電圧は、高い順からリチウム、カリウム、カルシウム、ナトリウムなどと続く。ナトリウムは
リチウムより0.3Vほど劣り、リチウム電池と同等あるいはそれ以上の電圧を出すのは不可能と考え
られるため。電池が放電する時は、正極が電子を引き付ける。この引き付ける強さがポイントになるが
新物質の正極に含まれる鉄イオンは、よりエネルギーの低い電子軌道に強力に電子を引き込む。これが
強い酸化力を生み、高い起電力となる。

 

つまり、軌道としては、周期律表の右側の元素の方が原子核に引き付けられて安定化するので、鉄イオ
ンは、電子を引き取る力がもともと比較的強いのです。さらに、硫酸イオン(SO4)2-によりその傾向
を強め、ナトリウムと組み合わせる物質にしたことがポイント。さらにアルオード石型の結晶構造をよ
くよく見てみると、鉄イオン間の距離が非常に近く、電圧が上がりやすい状況にある。合わせてアルオ
ード石型は、ナトリウムイオンが素早く移動できるが移動するには、ある種の山を越えていく必要があ
るが、その山越えエネルギー(Ea)――非常に優れたイオン伝導体の典型的な値(Ea)は、0.2eV程
度だが、アルオード石型の場合、一番低いところで0.14eV程度と見積もられ――が、この新物質の
場合極めて低いため、充放電を数分で行うことができる。 

一方、山田教授はアルオード石型化合物をつくることに、350℃程度と比較的低い温度で成功。通常無
機の電極材料を合成するには700~800℃前後の高温環境が必要で、温度の点でも今までの方法論が通じ
ない世界だったが、常識的な700℃前後の温度設定ではうまくいっていなかった。このように、新規物質
簡単にできるようになれば、予想以上に「スマートグリッド時代」を加速進化させる可能性がある。

山田教授は、もともとソニーの中央研究所を経てソニーフロンティアサイエンス研究所の研究室長を務
めた。これまでのリチウム電池開発でも未来を切り開いてきた自負と実績がある。例えば、広く普及し
ているリチウムイオン電池の正極材料には、レアメタルであるコバルトが大量に含まれ、早い段階から
コバルトの代わりに鉄を使い、当初は実用性に関して全く未知数であったオリビン型リン酸鉄リチウム
の研究を行う。その反応機構の解明から最適化、さらには新規材料開発に至るまで、世界屈指の体系的
な研究実績を蓄積している。そう簡単に実用化が達成されるかというとそうもいかないとも話す反面、
組成の海図を描いてみると、まだまだ未知の領域があると意欲をみせる。

 

 ● 今夜の一品

親子の絆も深まるかも。 

 

進撃のヘーリオス Ⅴ

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● 進撃のヘーリオスⅤ 最新水電解技術

はやいもので、「オールソーラーシステム」を提案掲載して、3年と4ヵ月経つ。ここにき
て「再エネ」から水素を製造するプロジェクトが加速するニュースが相次いで届いている。
その1つが、五島市椛島(かばしま)沖で進む環境省の浮体式洋上風力発電実証事業で、余っ
た電力から水素をつくる取り組みがはじまっている。島外に運ぶほか、水素を燃料とした車
や船に活用する。実現すれば、送電設備が整っていない離島の再生可能エネルギー事業に可
能性が高まっている。市再生可能エネルギー推進室によると、海上に設置した風車は最大出
力2メガワット。しかし椛島(人口 約150人)の送電線に流せる電力は最大600キロワットしか
なく、それ以上発電しても島内では使用できない。計画は2014年度と15年度の2カ年。生み
出した電気を使って水を水素と酸素に分ける「電気分解」の要領で水素を取り出す。その後
トルエン(メチルシクロヘキサン)と反応させ、液体の状態でドラム缶に保管。こうすれば
余剰電力の エネルギーを備蓄でき、送電網を介さず輸送できる。このほか、水素を燃料にし
た車や小型船を導入することも計画。小型船は、風車の点検などに活用できないか検討して
いる。新しいエネルギーとして水素の注目が集まる中、市は化石燃料を使用しない再生エネ
由来の「プレミアム水素」として発信したい考え。野口太郎市長は「水素をエネルギーとし
て活用できれば新たた道筋を見いだせる。環境に優しい『五島産の水素』となれば、地域振
興の鍵にもなるはずだ」と期待を込めている。浮体式洋上風力発電実証事業は11年度から取
り組んでいる。最大出力100キロワットの小規模試験機や同じく2メガワットの実証機を設
置。実用化に向けたデータ収集などをしてきている。

 

尚、水素貯蔵法として、有機ケミカルハイドライド法水素貯蔵輸送システムでは、水素を大
量に長期間、常温・常圧の条件の下でロス無く貯蔵可能であり、水素エネルギーの国家備蓄
にも対応できる技術として注目されているので記載しておこう(上図)。

2つめは、東芝が「水素」関連事業の強化に乗り出し、製造から貯蔵、発電・利用まで一貫
したソリューションを提供。「地産地消」型ビジネスと「サプライチェーン」型ビジネスに
新たに取り組み、2020年度に水素関連事業で売上高1千億円を目指すという。東芝グループ
では、太陽光・風力・水力発電など再生可能エネルギーを利用した発電システム、水電解装
置、燃料電池、エネルギーマネジメントシステム(EMS)など、多くの水素関連技術を保有し
ている。これらの総合力を生かして、グループ内の技術を融合し、水素の製造から利活用ま
でを実現する水素ソリューションを展開するというニュース。 

それによると、東芝では2014年4月から「次世代エネルギー事業開発プロジェクトチーム」
を設立し、「水素」を基軸にした新たな事業モデルの創出に取り組んできた。これらに加え
2015年4月6日に、東芝 府中事業所内に水素エネルギー研究開発センターを開設。次世代
エネルギーとして水素を基軸とした各種技術の実用化に向けて取り組みを強化する。同セン
ターの建築面積は900平方メートルで太陽光発電システムや水電解装置、水素タンク、エネル
ギー制御システム、燃料電池水素機などを設置。高効率に水と電気から水素を生成する新開
発の固体酸化物形電解装置なども用意しているという。水素に関連するさまざまなソリュー
ション実用化に向けた実証実験を行うとともに、水素関連技術の展示スペースとして活用す
る。

 

水素「地産地消」事業とは、水素の外部調達不要なエネルギーシステムを展開する事業を指
す。再生可能エネルギーと水素電力貯蔵システムなどを用意し、これらを生かして水素を生
成し、再び電力として利用するというエネルギー供給モデルを実現する。用途としては、離
島や遠隔地など発電コストが高い地域向けや、災害対策などで活用するモデルを想定。既に
BCP(Business continuity planning:事業継続計画)対策としては、川崎市で実証実験を開始し
ているという。

 

ところで、水電解による水素製造方式は、(1)アルカリ水電解:電解槽は、アノード、カ
ソードの電極、アルカリ電解液及びアノードとカソードの間に隔壁(セパレータ)があり、
水素を酸素の混合を防止する構造となっている。電極はアノード、カソードともニッケルメ
ッキした鉄電極あるいはニッケル系金属電極のようなニッケル系材料が使用されている。隔
壁には従来アスベストが使用されていたが、ポリエステル系材料などを用いた多孔質膜が使
用されるようになっている。電解液には25~30%の水酸化カリウム水溶液が使用される。常
圧で動作する電解槽の場合は、80℃程度で運転され、電解電圧は1.8~2.1V、電解電流密度
0.2A/cm2程度で、電解効率は70~80%程度の性能になる。(2)固体高分子型水電解:
固体高分子型水電解は電解効率の向上、電解電流密度の向上を目指して1970 年代にゼネラル・
エレクトリックにより開発が開始された。日本では、1990 年台にWE-NET プロジェクトで
開発が行われた。電解質は、プロトン導電性のフッ素樹脂系イオン交換膜が用いられる。こ
れが固体高分子型の名前の由来であり、隔壁の役割も兼ねている。電極はアノード、カソー
ドとも白金、白金系合金あるいは白金担持カーボン等白金系の材料が使用される。電解電圧
は1.6V 程度、電解電流密度1.0A/cm2 程度で、電解効率は90~91%程度の性能になる。
(3)水蒸気電解:水蒸気電解は700~800℃程度の水蒸気を電気分解して水素を製造する技
術で、電解質としてイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)などのセラミックならなる固体酸
化物が使用される。高温であるため、低温動作の他の水電解システムに比べ高効率が期待で
き、電解電圧1.29~1.32V、電解電流密度0.6 A/cm2 程度が試験データとして得られている。
 高温ガス化炉などの外部から高温熱を利用する場合には、エネルギー効率は95.7%、
内部の熱で自立運転する場合には93.2%が期待できる、の3つある。 

 

ところで、前述した東芝は、原子力発電でのシステムメーカであり、(3)の水蒸気電解技
術の知財を保有しているが、(2)の個体高分子型水電解の開発をおしすすめている(上図)。 
水素電力貯蔵システム構成を上図に示す。SOEC、固体酸化物型燃料電池(SOFC)から成るセ
ルスタック部は.電解槽の性能を上げるため.約800℃の高温としている。また、高い充放
電効率を得るために発電反応で生じた熱を高温蓄熱装置で貯留し、電解反応時に再利用する。
一方、燃料(電解時の水など、発電時の水素など)を室温から約800℃に昇温するために、
再生熱交換器と低温蓄熱装置を設けている。低温蓄熱装置は、高温蓄熱装置と同様に、発電
反応時に蓄熱し、電解反応時に放熱して水を蒸発させる。

 

勿論、(1)の方式を使用するケースもあるが、東芝の水素エネルギー研究開発センタの開
所式のビデオを見る限り、電極を金属からセラミックにかえることで水素発生効率が30%
向上したと説明しているので(1)の方式のものと判断したが、これの確認については残件
扱いとする。

さて、35年後160兆円市場とは、いささか眉唾もののような気がするが、そこはそれ、
それほど大きな期待がかかる仕事であることだけは確かである。今夜はどでかい話題を取り
上げたが、長生きすればそれを見届けることができるかもしれないね ^^;。

おめでとう!ひこにゃん9歳。

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東近江市は三重県境の約40キロを周遊する登山道「鈴鹿トレイル」の整備に乗り出す。標高
1200メートル級の名山「鈴鹿10座」も定めて鈴鹿山脈の豊かな自然を発信し、関西や東
海地方から登山客を呼び込みたいという(京都新聞 2015.04.01)。どんなものかと、今夜、
万を侍して?閲覧する。その背景はこうだ、鈴鹿山脈の登山は従来、山頂までの距離が近い三
重県側が主だった。2011年に同市と三重県いなべ市を結ぶ石榑(いしぐれ)トンネルが開
通した後、滋賀県側でも登山客が増えた。山並みや琵琶湖の眺め、豊富な動植物が人気を呼ぶ
一方、滋賀側は登山道の整備が行き届かず、道に迷ったり遭難したりするケースも増えてきた
ため――県警によると14年は13件の遭難があり、死者も1人出ている――東近江市は15
年度一般会計当初予算に整備費など390万円を計上。北の御池岳(1247メートル)と南
の御在所岳(1212メートル)を3泊4日で周遊できるルートを整備することに。地元山岳
会と連携して危険な箇所を洗い出し、案内板やロープを設置して安全を確保するとのこと。

また登山拠点となる道の駅「奥永源寺渓流の里」(今秋開業予定)では、登山用品を販売し、10座を制
覇した登山客には記念バッジを渡す。市は、登山客から登山記録を提出してもらい登山道の状況を把
握。崖崩れや倒木などへの対応や遭難者の素早い救助につなげたいとする。 

できれば、「緊急ヘリポート」の設置や「山岳ナビアプリ」などあればなお結構だろう。

 

 


● 「インフレ目標」の評価とは

すこし前になるが「高橋洋一の俗論を撃つ!」(ダイヤモンドオンライン、2015.03.19)で、
日銀は17日開いた金融政策決定会合で、現状の金融緩和の継続を決めた。原油安の影響で目先
のインフレ率は上昇しにくく、0%程度になる可能性もあるが、物価の上昇基調は崩れていな
いと公表したことに対し、「インフレ目標はガチガチのルールではない。バーナンキの言を借
りれば、市場とのコミュニケーションツールである。ガチガチのルールではないが、それが達
成できない場合には、説明責任を果たさなければいけない。だから、目標達成ができない場合
には、即辞任というのは、社会部系新聞記者の短絡思考である。」とした上で、説明責任を果
たしていないと批判し、(1)消費増税の影響が大きいかったが(上図/上)、(2)原油価
格下落が、一般物価であるインフレ率の低下ににつながるようにみえるが相関はしていない(
上図/下)として、説明すべきだと指摘していた。専門家ではないので手元にはデータがない
ので、「インフレ目標未達」要因の一番が「消費税増税」かどうかは、原油及び消費税以外の
説明因子をどれほど見積もった分析(解析)なのか分からないので、二者択一だけの説明なら、
高橋の指摘をここは「是」として止めるしかない。

※ 複雑な経済数理解析のためには、高級な電算部門が必要で、この業務を歳入庁や内閣府な
  で管轄する整備(但し、解析業務は民営・民間に発注)すべきだとこのブログでも掲載し
  てきた(『ケインズをデジタル蘇生』2013.03.23)。また、原油安は、OPECの思惑だ
  けでなく、シェールオイル増産や再生可能エネルギーの普及(『再エネが一番安い時代
  2014.11.28)も大きく影響していると考える。この場合、政策評価の目標の主要目的因子
  として(1)インフレ目標達成率、(2)雇用率(=失業率)、(3)GDPデフレータ、
  (4)格差助長率(=総資本÷総所得)などを評価項目として定義しておく。

   ● 成長戦略『双頭の狗鷲』

 

 

● 最新液体混合工学 流体混合器「ラモンドナノミキサ」

界面活性剤不要の水混合燃料(エマルジョン燃料)を株式会社ナノクスが開発(上図)。船舶
やボイラに利用することで、窒素酸化物(NOX)濃度を50%程度低減し、燃費は8%程度
向上する。モーターやミキサーなど同社独自の撹拌(かくはん)・混合システムで、水と重油
の均一な長時間混合を実現。

この水混合燃料は久留米工業大学工学部の高山敦好准教授と共同開発し実現。A重油66.5%
水30%にC重油3.5%を添加して燃料粘度を上昇させ、専用の撹拌機とナノクス製のラモン
ドナノミキサ」と呼ぶ流体混合器を使って微細かつ均一に混合。 同混合器はハニカム構造体で
液体が通過する過程で起きる乱流や圧力変化を利用し、水と油はナノレベルまでせん断。均一
に混合できるので界面活性剤が不要。高山准教授は、1カ月後でも「油水分離が生じない水混
合燃料が精製可能」と話し、すでに船舶用エンジンを使った実証実験を実施中で、NOX濃度
低減や燃費向上のほかに、粒子状物質(PM)の重量および減少も確認している。廃水を混合
する廃水エマルジョン燃料化の研究開発を進めているが、今後エネルギー各社に装置の採用を
働きかけるとのこと。

 

 
特開2015-013274  流体混合装置

混合ケース内には、導入口側から導出口側に向けて複数の混合ユニットを相互に間隔をあけ、
直列的に配設して、混合ユニット間に中継溜り空間を形成、導入口と最上流側に配置した混合
ユニットとの間に導入口側溜り空間を形成する一方、最下流側に配置した混合ユニットと導出
口との間に導出口側溜り空間を形成、各溜り空間の間に混合ユニットを連通させて配置し、混
合ユニットに設けた流入口は導入口側に向けて開口配置する一方、混合ユニットに設け流出口
は導出口側に向けて開口配置した構造にすることで、圧力損失を低減、加圧ポンプの電力消費
量の低減化でき、混合処理済み流体の流出量の増大化(効率化)できる流体混合装置を提供す
る(上図クリック↑)。

 
W/O 2012/029663 窒素処理水生成装置、窒素処理水生成方法、及び、窒素処理水により処理する生鮮魚介類の鮮度保持処理法

 

 

  

● 今夜の一品 木片風メモパッド

 
 

  ● ひこにゃん9歳のお誕生日 

全国のゆるキャラブームに火をつけ、燎原の火のごとくゆるキャラ事業を生み出した「ひこに
ゃん」。ひこにゃんは「彦根城築城400年祭」の開催に合わせて2006年に登場。公募で
名前の決まった4月13日が、市の特別住民票にも「誕生日」と記載されている。 有り難う、
ひこにゃん。これからもよろしく、ひこにゃん。

 

 

がんもどき再考記

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          雨風のおさまりしか花筏 盛り過ぎとて淡く燃えなむ 


 

 

● がんもどき再考記

『進化する代替食品工学』(2015.01.27)の記憶が残っているのか、目が覚めると"がんも
どき"ってダイズ食品だったことを思いつき、がんもどきをアレンジすれば、この商品展開
は大化けするのではないかと考えてみた。

ところで、がんもどきは「がんも」とか「飛竜頭」(ひりゅうず、ひりうず、ひろうす、
ひりょうず)も呼ばれるが、「雁擬き」と字を宛てて表記することもあるという。水気を
しぼった豆腐にすったヤマイモ、ニンジン、ゴボウ、シイタケ、コンブ、ギンナンなどを
混ぜ合わせて丸く成型し油で揚げたものである。おでんや煮物に用いられることが多い。
なお江戸時代の終わりまでは、こんにゃくを油で炒めた料理を「がんもどき」と呼んでい
た。元々、がんもどきは精進料理(もどき料理)で肉の代用品として作られたものである
名前の由来については諸説あるが、最も知られているのは雁の肉に味を似せたとされるこ
とから「がんもどき」だという説である。他にも鳥類の肉のすり身を鶏卵大に丸めて煮た
り蒸したりする料理「丸(がん)」に似せて作ったという説や、がんもどきの中にきくら
げではなく安物の昆布で代用したら丸めた形の表面に糸昆布が現れてその様子が雁が飛ん
でいるかのように見えたからという説などあるとか。また、現在では崩した豆腐に具材を
混ぜ込んで揚げるが、江戸時代には饅頭のように豆腐で包んで揚げていたとも。

 

類似品には、油揚げ――薄切りにした豆腐を油で揚げた食品。厚揚げ(生揚げ)とは違い
薄切りをした豆腐を使用するので内部まで揚がっている。「あげ」(または女房詞が付い
て「おあげ」とも)と略され、「稲荷揚げ」、「狐揚げ」、「寿司あげ」と呼ばれること
があり、厚揚げに対して「薄揚げ」と呼ぶ地域もある――や厚揚げがあるが、様々な具材
が入っている違いある。

まず、思いついたのが、そば、うどん、ラーメンなどの麺類のトッピングや具材。そのつ
ぎに考えたいたのが形、メダル(太鼓饅頭)タイプ、ボール(手鞠)タイプ。なかにいれ
るのは、なんでもよいのだ、つまり、ソーセ-ジ、ラクト食品、挽肉、魚肉、あるいは、
「フィリョース」のように卵を混ぜ合わせもよいし、干し柿などの果実、餡、モッツァレ
ラチーズを雪見大福のようにいれてもよいし、パスタ、そば、ドライカレー、焼きめしを
包み込んでもいいというわけだ。あくまでも大豆が主体のアミノ酸食品として応用展開さ
せるのだ。これは大きな市場となると閃いたという話。

  

  

 

● 最新水電解工学技術Ⅱ              

 『進撃のヘーリオス Ⅴ』(2015.04.13)の残件を調べていたが、セラミックが電極なの
か隔膜なのか明確にすることができなかった。水電解の構成や操作条件をまとめると下表
のようになるが、固体高分子型の水素発生触媒あるいは、陰極材料には炭化ケイ素なども
提案されている。また、炭化チタン(グラフェン)構造やペロブストカイト構造などの電
極(触媒)も研究開発されている。つまり、ひきつづき残件扱いとなる。



※ 参考資料

http://www.hess.jp/Search/data/33-01-019.pdf
http://www.hess.jp/Search/data/36-01-011.pdf
http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/leaflet/Q05007.pdf
http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/download/AszldE5j1xiug5o3OMsdsee5TXpkCrVB/report.pdf
http://www.hess.jp/Search/data/30-01-042.pdf
http://www.inpit.go.jp/blob/katsuyo/pdf/chart/fippan20.pdf
http://www.yonago-k.ac.jp/tosho/research_rep/archives/47/pdf/03_Ozone_Generation.pdf
http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/leaflet/Q09008.pdf
https://www.toshiba.co.jp/tech/review/2005/02/60_02pdf/a07.pdf
http://www.iae.or.jp/wp/wp-content/uploads/2014/06/200810_Vol31_No3.pdf 
http://www.elec.tohoku-gakuin.ac.jp/kimura/reserch/mh/solar_mh.pdf
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2010/pr20100514/pr20100514.html
http://www.f-suiso.jp/bunkakai/H23bunkakai/4th/H23_4_3.pdf

※ 太陽光型水電解装置の特許が三菱化学及び東京大学の共同特許公開されているの参考
  に記載しておく(下図)。

この特許は、太陽光をエネルギー源とし、水を原料とした水素製造装置で、逆反応を抑制
し、生成気体による気泡の発生を抑制し溶液抵抗を低減(光電変換効率を向上させる)。
また、反応に利用できない太陽エネルギーが熱として電極と触媒の加熱抑制(光電変換効
率を向上)させる。加えて、、導電性支持体の開口率を最適化することで、電極表面の溶液抵
抗による電圧降下と、有効受光面積(触媒塗布可能面積)とのバランスを最適化(光電変換効率を
向上)させる。

【要約】

酸素発生用電極、水素発生用電極と非導電性の多孔質構造体を有する電極部、この電極部
に電解質水溶液を供給する電解質水溶液供給機構、ならびに、電極表面へ光を導入する採
光部を備えてなる光水分解反応を利用した水素製造装置の、電極が空間中に存在するもの
とし、装置の運転時に、電解質水溶液供給機構で、電極に電解質水溶液を供給し、電極表
面に電解質溶液の液膜を形成することで、水の分解反応を効率よく進行させることができ
る水素製造装置の提案。

 

 


● 今夜の一品 火を使わないキャンドルライター

従来のものとはまったく異なった、無炎・電子・充電式のキャンドルライター。リチウムイオ
ン電池で動作し、2つのセラミック製の電極の間に、小さな電気アークを作り出し、それを利
用して、キャンドルに点火できる。火を使わないので火傷などの心配が要らなく安全な環境を
つくりだす。

 

 

レイアの抱擁 Ⅰ

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● レイアの抱擁 Ⅰ バイオエタノールの一気通貫生産酵母登場 

龍谷大学農学部の島 純教授、京都大学の谷村 あゆみ研究員、小川 順教授らの研究グループは、食品廃棄物
などに多量に含まれるデンプンからバイオエタノールを生産する際、多糖分解酵素での処理工程が不要となる
酵母を発見した(「デンプンからバイオエタノールを一気通貫生産できる酵母を発見」JST 2014.03.30)。

これは情報収集洩れ、甚だしい失態をさらすことに。



それはさておき、メンバーの島純教授は東北大学法学部、農林省官僚という異色の経歴をもつ。周知の通り、
日本を含め先進国では、膨大な食品廃棄物や食品ロス(食べられる状態にありながら廃棄されている食品)の
問題が顕在化し、国内では年間約1700万トンにもおよぶ廃棄物を排出、そのうち約800万トンが食品ロ
スであると考えられている。その食品廃棄物のほとんどは焼却や埋め立て処分されているため、フードチェー
ン全体のコスト増や温室効果ガスの発生の加速など、自然環境への悪影響が甚大となっているが、この問題解
決に当たり、食品廃棄物や食品ロスに豊富に含まれるデンプンをバイオマス資源として、低コスト・バイオエ
タノール生産技術の構築に向けて研究をすすめてきたが、デンプンの糖化に必要なアミラーゼなどを添加しな
い一気通貫プロセス(下図)に焦点をあてて、有用微生物の探索を行ったという。

尚、遺伝子組み換え微生物を用いた場合には、物理的封じ込めにより高コストにつながる可能性が高いため、
自然分離株を活用することを想定して研究を進めてきたという。

 

 
さて、(1)まず、デンプンを単一炭素源とした寒天培地を用いて、デンプンで生育ができる酵母菌株の選択
する。その結果、自然界から分離した530株の酵母のうち、79%にあたる419株に生育。(2)次に、
10%のデンプンを含む液体培地において静置培養を行い、生産されたエタノール量を測定しました。419
株のうち3株が、6g/Lのエタノールを生産しており、特に、JCM18690株は、9.78 g/Lという高
い値を達成。残りの2株は、ゲノムDNAを抽出し塩基配列を決定することで、同定を行い、
属であることを突き止める。コントロールとして Sheffersomyces shahae NBRC1983株を用いこの3株につ
いて、10%のデンプンを含む液体培地における生産エタノール量、アミラーゼ活性の経時変化の測定を行い
ました。10日間、観測をした結果、JCM8690株は、エタノール量が7日目で約8g/Lに達し、他の菌株
よりも高いエタノール生産能力であるを明らかにする。α-アミラーゼ活性に差はなく、グルコアミラーゼ活性
は、JCM18690株は他の株よりも約1.6倍高く、高いエタノール生産能力につながったとする。この他、
JCM18690株は、グルコースからのエタノール生産能力も高く、エタノール耐性を持つことも突き止める。



以上の結果から、低コスト・バイオエタノールの実用化につながる重要な成果で、JCM18690株を用いることに
より、従来の酵素の添加を必要とするプロセスや、遺伝子組み換え株を用いたプロセスに比べ、酵素のコスト
削減だけでなく、生産プロセスの簡易化も期待でき、JCM18690株には、キシロースからの高い発酵能力と高
温耐性があることが既に分かっていまる。デンプンだけでなく、さまざまな未利用バイオマスからのバイオエ
タノール生産に寄与すると考えられる。本株のゲノムシークエンスも進んでおり、遺伝資源としての活用も視
野に入れ、これらはバイオ燃料生産を介して、化石燃料を代替し、温室効果ガス排出の抑制を期待するとのこ
と。食品廃棄物などに含まれるデンプン質バイオマスを用いることができれば、環境負荷の軽減に寄与し、循
環型社会の実現へ大きく貢献できます。今後は、より実用的プロセスにするために、培養日数の短縮化を目指
すと同時に、不溶性デンプンや、実際の食品廃棄物を原料にして研究を進めていく予定だという。

※ 参考

1)一気通貫プロセス:糖化工程と発酵工程を同時に行うプロセス。
2)キシロース:植物系バイオマスを糖化すると生じる単糖。グルコースの次に多く含まれている。
3)高温ストレス耐性:通常の温度帯(20~30度)よりも高い温度で発酵能力があること。
4)α-アミラーゼ:デンプンを分解する酵素。デンプンをグルコースが数個つながったオリゴ糖に分解する。
5)グルコアミラーゼ:デンプンを分解する酵素。デンプンやオリゴ糖を、グルコースに分解する。
6)Sheffersomyces shahae NBRC1980株採取場所:京都大学構内の土壌より単離
7)特開2015-037398 2'-置換型ヌクレオシドの製造方法:http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2015037398

 

 Isolation of a novel strain of Candida shehatae for ethanol production at elevated temperature

 
・ 微生物材料開発室 (JCM) 

京都大学の構内の土壌から、そんなダイヤモンドが発見されたって?それも、ノンコンベンショナル酵母で ?!
それは盆と正月がいっしょに来たものみたい。これから実用化できるか?3年先をゴールに置くと、予算は最
低3億円はいるだろうか(10人/年×3年)。試作装置での収率などの検収をクリア出来きたとして、その経
済効果(市場経済+社会経済+環境リスク回避費用)を想定すると莫大なものになるだろと想像されるがどう
だろうか ? ^^; 。


● 独立型水素製造システムへバイオエタノールを投入


ノンコンベンショナル酵母でバイオマスエタノールを内燃機関の燃料として使用するのではなく、燃料電池の
原料として使用し、そこで発電された電力と廃熱を利用して、水電解装置で水素を製造することも可能であり
調査してみた。下図は、ジーエス・ユアサコーポレーションの特許だが、原料はメタノールを使用している。
それによると、 水素製造装置を構成する水素製造セル(10)と、水素製造装置を運転するための補機(16)、
(17)と、この補機に電気エネルギーを供給するための燃料電池(33)とを少なくとも備えた独立型水素
製造システム。この水素製造装置が、メタノール(有機物)を含む燃料を分解して水素を含むガスを製造する。
隔膜(11)の一方の面に設けた燃料極(12)、この燃料極に有機物と水を含む燃料を供給する手段、隔膜
の他方の面に設けた酸化極、この酸化極に酸化剤を供給する手段、この燃料極側から水素を含むガスを発生さ
せて取り出す手段を備えた構造で、低温で水素を含むガスを製造でき、燃料電池から供給される電気エネルギ
ーだけで運転が可能で、大きな電気エネルギーを必要としない水素製造装置を使用した独立型水素製造システ
ムを提供するもの。

 



次に、これをエタノールで代替するにはそうすればよいか考える。下図は秋田大学が提案するその新規考案である。
それによると、燃料電池の一つに固体高分子形燃料電池(PEFC)は、低温領域で運転可能で、高いエネルギ
ー変換効率を示し、起動時間が短く、システムが小型軽量であることから、電気自動車の動力源や携帯用電源
として注目されているが、水素に替わる「次世代燃料電池の燃料」として炭化水素系燃料の適用が試行されて
いる――メタノールやエタノール等のアルコール系燃料が注目され、燃料電池の燃料としてアルコール系燃料
を用いる場合、燃料電池のアノードで、触媒被毒を抑えつつ効率的に燃料を酸化させるかが重要となる。アノ
ード触媒の性能向上が一つの課題となっている――特に直接型メタノール燃料電池の性能を飛躍的に向上させ
ることが可能なアノード触媒が提案されているが、作動環境が酸性となりアノード触媒の酸腐食されない貴金
属を用いるがコスト増大となる。

アルカリ燃料電池であれば、作動環境がマイルドになり、電極材料にNiやFe等の金属を用いることができ
貴金属の使用量を削減することができる。さらに、メタノールに比べて毒性が低く、バイオマスからも製造可
能であることから、製造コストや貯蔵の問題が少ないエタノールに着目。貴金属の使用量を削減した「アルカ
リ直接型エタノール燃料電池」で、アノード触媒の性能向上を図る開発――アルカリ直接型エタノール燃料電
池の性能を向上できるアノード触媒――アノードに燃料のエタノールが供給され、燃料電池の性能を向上でき
る、白金酸化物を還元した白金部分酸化物をアノード触媒として使用とする方法が提案されている。 
  

以上、今夜はバイオエタノールのノンコンベンショナル酵母を使用しバイオエタノールを食品廃棄物からエタ
ノールを製造し、燃料電池の原料として発電し水素を製造するというもので、「オールバイオマスシステム」
の代表するシステムを考案してみた。これは大きなプロジェクトになるだろう。食品廃棄物だけでなく、自然
有機系廃材や廃棄物にも応用できるのものでもある。これは面白い。 

● 今夜の一品

上図(クリック↑)はUSB充電機能を追加できるコンセントカバーだ。なくてもよいが、あってもよいコンセント
カバーだ。

 

広島空港に欠陥 ?

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”Asiana Plane Crash-Lands Short of Hiroshima Runway in Japan", The Asiana Airlines Inc. aircraft was carrying
73 passengers, two pilots, five cabin crew members and one engineer when it landed in Hiroshima at about
8:05 p.m. Source: The Yomiuri Shimbun via AP Images

● アシアナ機事故 広島空港に欠陥 ?

広島空港でアシアナ航空機が着陸に失敗して多数の乗客が負傷した事故。一夜明けた15日
機体は車輪が外れ、主翼も裂けるなどあちこちを損傷していることが確認された。専門家か
らは操縦士のミスを指摘する見方も出ている。広島空港を管理する国土交通省大阪航空局広
島空港事務所では15日午前1時50分ごろ、漆島重人所長らが記者会見した。漆島所長は
「安全が第一のなかで、このような事故が起きたことを残念に思う」と語った。事故の内容
については冒頭で「14日午後8時5分ごろに着陸した際、滑走路から逸脱し、草地に停止。
胴体後部に損傷があり、大修理を要するので航空事故に該当する」と説明した。

当時の天候や着陸時の状況など詳細については、「統一的な対応を航空事業安全室でとるの
で問い合わせてほしい」と述べ、本省の電話番号を紹介するにとどめた。午前4時40分過
ぎ、事故機の機長が韓国籍であることや滑走路東の無線施設に破損があること、滑走路の損
傷は確認中で復旧のめどが立っていないことを回答した。パイロットとは接触できておらず、
居場所も把握していないという(「アシアナ機事故、広島空港欠航続く 人的ミスの可能性
も」朝日新聞デジタル2015.04.15.13:22)。 

広島空港の事故で、着陸時、空港周辺の視界が急速に悪化し、着陸をやり直す基準に達して
いた可能性があることがわかった。国の運輸安全委員会は事故機が超低空で進入したとみて
おり、韓国人機長や管制官から当時の状況を聴く。広島空港は標高約330メートルの山間
部を切り開き、1993年に開港した。季節によって霧や雲に覆われることが多く、西側か
ら進入する着陸機を精密に誘導する計器着陸装置(ILS)を備えていた。国土交通省によ
ると、事故機はILSの精密誘導が使えない東側から進入。全地球測位システム(GPS)
や機体の高度計などを頼りに、最終的に目視で着陸を図った。天候や風向きによって東側か
ら進入するケースは珍しくなく、14日は他の便も東側から着陸していた。 

関西航空地方気象台(大阪府田尻町)によると、広島空港周辺では14日午後7時前に霧が
観測され、午後8時には弱い雨が降っていた。空港内の滑走路視距離観測装置の記録では、
午後8時に視界は1800メートル以上と悪くなかったが午後8時8分のデータでは300
メートルへと急速に悪化していた。事故は午後8時5分ごろ発生したとされる。広島空港で
は東側から進入する場合、パイロットからの視界が1600メートル以上なければ着陸をや
り直す基準がある。直前に視界が悪くなった場合はパイロットに判断が任されている(「ア
シアナ機事故 着陸基準下回る視界か 進入直前に悪化」朝日新聞デジタル2015.04.16 5:34)。

広島空港でアシアナ航空機が着陸に失敗し滑走路から外れた事故で、約15分前まで全日空
機や日航機などがアシアナ機と同じ「RNAV方式」と呼ばれる方法で着陸していたことが
16日、国土交通省への取材で分かった。国交省によると、事故が起きるまでの約3時間半
にわたり、8機が同じ東方向から進入、うち7機が同じ方式を使って着陸した。運輸安全委
員会は直前に急な天候悪化や人為的ミスがあった可能性もあるとみて、回収したフライトレ
コーダ(飛行記録装置)などを解析して当時の状況を調べるという(「天候急変、対応できず
?広島空港のアシアナ機事故」北海道新聞 2016.07.31)。



※ アシアナ航空214便着陸失敗事故 Wikipedia

この事故の感想は? 船長が逃げだした旅客船「セウォル号」沈没事故(もしくは事件)のよ
うに機長の所在が分からない。また、アシアナ航空の操縦士操作のミス、管制官の指示の瑕
疵などフライトレコーダなどの調査を待たなければなんとも言えないが、印象だけいえば、
(1)山間部に敷設された空港、(2)気象の急変(濃霧・局所風)、(3)東側滑走路に
は計器着陸装置が配置されていないという3点で、大規模気候変動による局所的異常気象の
頻発化など考慮すれば、福知山脱線事故例から、 東側滑走路への計器着陸装置を即設置すべ
きだ。また、広島空港だけでなく、新興国などの経済成長にともなう航空機と空路およびそ
の周辺システム上の安全性の遵法と充実は喫緊の課題であり、「コストカット」が「人命は
鴻毛より軽し」にならぬことを祈るばかりだ。

 
ILS (Instrument Landing System:計器着陸装置)

 

 

 ● レイアの抱擁 Ⅱ 最新人工光合成型水素製造技術

NEDOと人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)がNEDO の人工光合成プロジェ
クトで、太陽エネルギーを利用した光触媒による水からの水素製造(人工光合成の一種)で
世界最高レベルの太陽エネルギー変換効率2%を達成し、今後、エネルギー変換効率10%
の達成を目指というニュースも昨夜と同様漏らしていた。これではレイア(大地の女神)に
叱られると奮起する。




話はこうだ。太陽エネルギーを利用した光触媒による水分解で製造した水素と二酸化炭素を原
料とした基幹化学品(C2~C4オレフィン)の製造プロセスの開発(上図)で、従来の光触媒
材料ではその吸収波長が紫外光領域に限られていたが、可視光から赤外光領域にかけての光
を利用できるように材料選択の幅を広げてきた。今回、可視光領域の光を吸収する水素と酸
素発生用光触媒の中で組み合わせの最適化を図り、シート状に成形した光触媒を用いて、性
能評価のためにパラレルセルを作成し、太陽エネルギー変換効率を測定。その結果、太陽エ
ネルギーを利用した光触媒による水からの水素製造において、太陽エネルギー変換効率の最
高値2.2%、1時間平均値で1.96%を達成。この値は現段階で世界最高レベルとなり、
さらに、将来の実用化を想定、水素および酸素発生用光触媒を同じ基板上に成形した混合型
光触媒シートも開発、水素と酸素の発生を確認したというのだが、いきなりフィルム型という
には飛躍できないと考えられる。

 

そこで、既存の技術をしらべてみると下図のような構造が考えられている。概略説明すると、
光電変換部や太陽電池の受光面とは逆側の裏面側電解液室で、水を電解して水素と酸素を生
成すると水素や酸素のガスがガス生成電極や太陽電池の電極板等のガス発生面に付着する。
ガス発生面と電解液等の水溶液との間に滞留すると、溶液の接触面積が低下し、水素と酸素
のガス生成効率を低下させる。

受光部を有し、pn接合半導体薄膜が形成された複数の素子が直列に連なるように積層され
た素子積層体と、複数の素子中の、素子積層体の一方の端部の第1の素子の表面に形成され、
水素ガスを生成する水素ガス生成部と、水素ガス生成部を含む。この水素ガス生成部と接触
する電解水溶液と、生成した水素ガスを収容する第1の電解室と、複数の素子中の、素子積
層体の他方の端部にある第2の素子の半導体薄膜形成された導電性基板の裏面に形成され、
酸素ガスを生成する酸素ガス生成部と、酸素ガス生成部を含む。酸素ガス生成部と接触する
電解水溶液と酸素ガスを収容する第2の電解室と、第1の電解室と第2の電解室との間に設
けたイオン透過性のガス非透過性隔膜で構成されることで、時間の経過によらず、高いガス
生成効率を維持でき、水素と酸素のガスが完全分離され、高純度の気体として安定して製造
できる装置である。


尚、より詳細は上の参考図をクリックして特許申請公開書面を参照のこと。下図に光電変換
素子(光水分解電極)の製法特許-電変換素子の製造方法は、基板上に、電析法によりCu
膜、Sn膜およびZn膜を備えるCu-Zn-Sn系金属積層膜を形成する第1の工程と、
Cu-Zn-Sn系金属積層膜にアニールを施し、Cu-Zn-Sn系金属合金前駆体を形
成する第2の工程と、Cu-Zn-Sn系金属合金前駆体を硫化し、CZTS膜を形成する
第3の工程とを有する。第3の工程で形成されたCZTS膜は、表面の表面粗さが0.5μm
以下である――を掲載しておく。なお、大阪大学、富士フイルム、人工光合成化学プロセス
技術研究組合の共同出願である。

※ 富士フィルムはデジタル革命渦論によるダメージを跳ね返し、デジカメ、データストレ
  ージフィルム、スキャナなどの電子関連機器、化粧品、医薬品など幅広い事業展開に成
  功している特異な企業である。恐るべし、富士フィルム。



以上のように実用化のめどがつけば、「オールバイオマスシステム」と「オールソーラーシ
ステム」がデジタル革命の基本特性第1則のシームレスを実現してしまう。いうなれば大融
合が実現する。酸素と水素は直燃あるいは電力に、そして水素は、二酸化炭素と化学合成し
て、有機化合物が合成でき、ここから、窒素や硫黄などを加え、繊維、プラスチック、医薬
品、食品(人造蛋白)などが合成されるというわけだ。これは、大革命(第5次産業革命)
である。これは面白い!

  

日本全国の太陽光発電一覧地図 : 4066 MW → 4731 MW 1日当たり 9.5 MW 増加している
 

● 再生エ導入量1位は福岡県、認定量では茨城県と宮城県が躍進 

全国各地で再生可能エネルギーの発電設備が続々と運転を開始している。資源エネルギー庁
がまとめた2014年12月末時点の都道府県別のデータによると、運転を開始した発電設備の規
模(導入量)が最も大きいのは福岡県である(下図)。半年前の2014年6月末の時点でも第
1位で、太陽光の導入量が着実に拡大している。

 

● 京都の道が変わる マイカーよりもウオーカー/四条通歩道拡幅工事

 

日本を代表する観光都市である京都市。その中心市街地で、全国でも珍しいリニューアル事
業が進行している。中心市街地を貫くメーンストリートの車道を半減させるプロジェクト。
市は百貨店や高級ブランド店などが建ち並ぶ四条通の河原町付近1.1キロメートルの区間で、
車道を4車線から2車線に減らし、歩道の標準的な幅員をこれまでの3.5メートルから6.5
メートルに広げている。中心市街地における異例の車道削減策で、約29億円の事業費を投
じる。2015年10月末に道路工事を終える予定 。

不動産価値を高める方法は、箱もの、筋ものをなどの建設するだけでない。どのようなコミ
ニティをつくるのかという設問をたて、それを実現することにある。 裏返せば、付加価値
を高めるアプローチやそのものの目標設定や方法はいくらでもあるはずだ。"デフレ脱却"と
は、そこに投入されるひとの息遣いの大きさであり、情熱にあるのだろう。それは、例えば
統一地方選挙の市会議員に当選することが、年金目当てであったり、税金をチョロまかすが
ごときものではなく、未来への投企(投機)の大きさにあると、そう考え「京都市の試み」
や「大阪都構想の挑戦」を注視している。

 

 

死のシルクロード再考

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【新弥生時代 植物工場論 Ⅳ】 

ここ数年新しい農業について考えてきたことを、独自に事業化の基本イメージを確定さ
せておきたいという思いに駆られ、上記の本をそのたたき台として、時宜、読み進めた
いと掲載を開始した。独自の事業化イメージはできあがっている。この本にもすこし紹
介されている。時々の気付いた点を添え書きとしてここに記載していく。通読された方
に理解できるだろう。それでは読み進めることに。


 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を施
 設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所にとら
 われず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めています。
 その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産コストか
 ら、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や図解を用いて様々な角
 度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技術革新などによってもたら
 されるであろう将来像についても、アグリビジネス的な視点や現状もふまえながら
 紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書となっています。

          古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」より 

 

 人工光型植物工場に高まる期待

                                          いのちを育てる「工場」として

 「植物工場」の意味合いは語られる場によってさまざまだが、最近の定義としては
 「 植物の生育環境を制御して栽培を行う園芸施設のうち、環境および生育のモニタ
 リ ングを基礎として、高度な環境制御と生育予測を行うことにより、野菜などの植
 物の周年・計画生産が可能な栽培施設」(農商工連携研究会報告書、2009)が
 ある。この定義に習えば、「自動化・無人化」は植物工場の要件とはされていない。

  工場というネーミングが無機質で暗い印象を与えることもあり、植物工場にはネ
 ガティブなイメージをもつ人もいる(工場一般が暗いイメージをもつのであれば、
 それは改善すべきである。そこで働く人々も、明るい職場で明るく働きたいのだか
 ら)。しかし、植物工場は生きものを育てる点で、無機物を製造する工場とは異な
 っている。植物工場の働きは「製造」ではなく「生産・育成」であり、植物を生み
 出し、育む機能があることを覚えておきたい。将来的には、製造工場も「育てる」
 感じの工場にしたいものである。

                                 期待が高まる社会的背景

 かつて、SFのような話として認識されていた植物工場。しかし20頁で挙げたよう
 な地 球規模の課題や私たちのライフスタイルの変化によって、認知度と需要は上が
 り続けてい る。植物工場への期待が高まっている理由について、より具体的にみて
 みると、以下のようなことが挙げられる。

  ①市民の安全・安心・高品質および安定価格志向が高まっていること。②露 地
  野菜とは異なり、人工光型植物工場では、年間にわたって品質が一定の野菜を供給
  することが可能であること。③市民の健康志向の高まりに関連し、機能性野菜が受
 け入れられつつあること。④高齢者、障がい者、失業者の就業機会の増大要求。⑤
 外食・中食産業が、人工光型植物工場から野菜を仕人れる際、品 質と量の確保が容
 易であること。

    ⑥寒冷、熱帯、乾燥地域における周年安定的な植物生産需要の増大。⑦乾燥地域
 における節水栽培需要の増加。⑧光源空調、断熱、情報設備のコストパフォーマン
 スが、過去15年間で2倍以上向上したこと。⑨農商工連携、6次産業化、地域おこ
 し、街づくりにおける核となることへの期待。⑩ライフスタイルとしての街中植物
 工場への需要が増加。⑨空き 建物、 日陰地などの遊休空間の有効利用。⑩人工光
 型植物工場の市街地への設置で、生産地と消費地が至近距離となり、長距離輸送の
 ためのエネルギーコストと包装コストを削減。

  人工光型植物工場による多様な課題の解決は、いまだ発展途上のものも多く今後
 の技術 革新が期待されている。

 

 植物工場はエコといえるか

               環境制御で最適な生産システムをつくる

  植物工場の利点は、外部からの影響を軽減、もしくは受けずに植物の生産が可能
  な点にある。とくに人工光型植物工場においては、植物生産システムにとって最適
  な環境をつくりだすことができる。
 植物生産システムにとっての最適とは、次の4点である。

  ①そのシステムが持続可能な生産システムである。
  ②高収量・高品質と省資源・環境保全との両立がされている。
  ③経営的に健全である。
  ④作業者に働きがいを与える。

 とくに、持続可能性や省資源・環境保全に関しては、消費者からの期待と関心も高
 い。

※ここでは、④のなかで、重労働からの解放の意義を強調しておきたい。


                      投入資源の利用効率は抜群に高い

  植物生産システムにおける必須投入資源は、光、二酸化炭素、水、肥料、種子(
 苗)である。これらの資源をいかに効率よく利用できるかが、植物工場がエコかど
 うかの判断基準のひとつになる。
  露地、園芸施設、人工光型植物工場の役人資源利用効率を比較してみると、植物
 工場の利用効率が抜群に高い(次頁)。利用効率をみる場合には、土地面積当たり
 ではなく、土地生産性(価値創出量)当たりのコストをみることで、社会における
 実質的な効率を考えることができる。
  たとえば必須投入資源の水についてみると、人工光型植物工場と通常の園芸施設
 の投入量は大きく違ってくる。田畑や温室でかん水した場合には、蒸散・蒸発した
 水蒸気は回収できない。一万、閉鎖型の植物工場では、水蒸気を除湿して再び利用
 することが可能だ。そのため通常の温室の48分の1ですむという実証実験もなさ
 れている。

                                                       社会的視点も踏まえた「省エネ」効果

   人工光型植物工場には必ず光源ランプが必要なので、電気の消費量が大きく、電気代が
 高いことは省エネヘの壁ではある。ただし光源についても研究がすすみ、LEDの普及や
 より効率よく植物を育てられる光源の開発や照明システムの改善などによって、次第にエ
 ネルギー効率は向上している。
  また、植物の生産に直接関わる部分ではない省エネの要素も、植物工場には多々ある。
 消費者にとっては、洗わなくても食べられることで節水になるし、捨てる部分が少ないの
 もゴミの削減につながる。消費地に近い場所での生産が可能な点も、フードマイレージの
 縮小に一役買っている。

 

 

  人工光型植物工場は日本が先進国

               人工光型植物工場研究の礎を築いた日本

  太陽光型の植物工場や施設園芸については、オランダが先進地といわれるが、人
 工光型植物工場については、日本の研究が最先端を走ってきた。
  日本での人工光型植物工場の研究開発は、1970年代半ばにはじまり1990
 年代以降は、日本生物環境調節学会と日本植物工場学会(2007年に日本生物環
 境工学会として統合)、日本養液栽培研究会、園芸学会などが中心になり研究が継
 続されてきた。2009年には、農林水産省と経済産業省による植物工場補助事業
 が開始され、現在も継続されている。

                    全国に広がる植物工場研究

  国のバックアップを受けるかたちになり、日本の大学や農水省系公的研究機関に
 おける人工光型植物工場の研究は活況となった。企業の開発研究も盛んである。現
 在の日本は、そのころにはじまった研究の成果もあり、第3次植物工場ブームの様
 相を呈している。今回は、一時的なブームで終わらないと予想されている。

  経済産業省、農林水産省それぞれの事業の目標は、単位生産量当たりの生産コス
 トを30%以上削減すること。この研究10拠点の研究機関が名を連ね、目標を達
 成し、さらに別事業による研究も全国各地でスタートしていった。
  2010年にはNPO法人植物工場研究会も発足。研究開発事業、拠点事業のサ
 ポート、人材育成など、植物工場の発展に寄与する活動の拠点に位置づけられた。

                 海外の植物工場開設へ技術を輸出 

  日本の人工光型植物工場は、近年海外への広がりをみせている。国内の植物工場
 で実績を上げた日本企業は、海外からの引く手数多の状況だ。シンガポール、タイ、
 香港などに日本製の工場が進出、および進出を予定している。またロシア各地やモ
 ンゴルなど、野菜の周年栽培がむずかしい土地柄の国では、小型、中型の日本製植
 物工場が稼働している。
 
  日本に次いで植物工場数が多いのは台湾で、約42の植物工場が稼働中だ(20
 14年7月現在)。台湾に次いで、韓国や中国といった日本の隣国でも、日本企業
 との共同案件を含めて、数が増えているようだ。
  アメリカ、カナダでも大小合わせて10工場以上が稼働している。また、世界的
 規模の協議会も発足し、植物工場への関心の高まりは、いよいよ勢いを増している。

 

  野菜工房は、キューピー(株)で野菜工場に携わった前社長が「これからの地域
 社会には、定年退職した高齢者や障がい者が地域のなかで働く場所が必要」という
 考えから、経験もいらず、身体への負担も小さい「ユニバーサルワーク」として事
 業化した。キューピーの支援を受けながら独自技術を開発。現在はリーフレタスの
 ほか、サラダ菜、フリルアイスなどを栽培している。
  2008年の創業当初から、地域における安定雇用を第一に考え、同業他社に勝
 つのではなく、品質や生産技術の高度化により差別化を図っている。
  農薬を全く使用していないのはもちろんのこと、硝酸塩の濃度を低く抑えるなど、
 高品質・高付加価値野菜の開発に力をいれており、将来的には、特定の栄養素を多
 く含む、健康促進効果のある野菜の実現をめざしている。

 

ここでのチャレンジキーワードは、「高付加価値野菜」。 これを可能とする人工光型植物工場を
アジアの新興国の主要都市に無償贈与できれば、燎原の火のごとく普及、成長していくこと間
違いない!これは積極的平和主義のコア政策だとわたし(たち)は考えている。

尚、これを実現するソフト・ハードのインフラ整備の概要は残件扱い。

                                  この項つづく 

 

● 日中食品汚染 Ⅷ 第1章 見えない食品の恐怖

                     

                        地上と地下から汚染される

  生産、加工、流通、貯蔵のうち、食品汚染の原囚が特に集中するのは生産過程であ
 る。図2で示したように、耕土作物が根を張り養分を吸いトげるための土壌)、濯漑
 水、人気といった地下と地トからの汚染が、農産.物を汚染しやすい構造を作リてい
 る。耕土は地表に近いため、酸性雨、PM2・5、エ場や石炭火力発電所の煤煙、ク
 ルマの排気ガス、採鉱排水、廃棄ゴミなどの直撃を受けやすい,漂流用水はこのほか
 に汚染地f水、塩害、水不足に悩まされる。大気は耕土と同様の汚染要因を持ち、農
 産物を汚し、収量を減らす。

  まずは、青果物からみていこう。青果物とは野菜と果物を指しての言葉だ。日本の
 最大の青果物輸入相手国は中国だ。現地の農民は、自分の作っている青果物が日本へ
 輸出されることを自慢し誇りにも思っている。日本は野菜のほとんどの品目を中国か
 ら輸入しているから、中国農業と日本とのつながりが深いことも知っている。中国人
 が食べる習慣のないゴボウ、枝豆、コンニャク、マツタケなどは、日本へ高値で輸出
 されていることも知っている。中国からコンニャク芋でなくコンニャクが輸入されて
 いるのは、日本のコンニャク芋の主産地である群馬県に対する農水省の配慮だという
 ことは誰もが知っている。コンニャク芋は農産物でコンニャクは加工食品と、形態が
 違うので輸入しても問題ないのだ,





  青果物汚染の主な原因は、一般に化学肥料(硝酸塩増加など)、農薬、有害大気、
 汚水そして重金属だ。中でも最近注目を集めている硝酸塩問題は、野菜栽培のための
 化学肥料のまきすぎに最大の理由があると考えられている,硝酸塩は、通常摂取する
 程度では人体に有害なものではないが、体内で還元され亜硝酸塩に変化すると、メト
 ヘモグロビン血症や発ガン性物質のニトロソ化合物の生成に関与する恐れがあるとい
 う化学物質だ。
  
  日本の農水省は人体には影響がないと結論付けているが、学者の意見は分かれる,
 専門家の意見が分かれるものを非専門家が大丈夫というのはどうかと思うが、これが
 日本の食品安全問題に関する姿勢だ。中国では、この硝酸塩汚染が、野菜に深刻な影
  響をもたらしているという査読付きの研究論文が多数公表されている。
  2013年10月21日、「アメリカ科学アカデミー紀要」(PNAS)は硝酸塩が数
 十年間にわたり、土壌や地下水に汚染の後遺症を残す可能性があるとする研究論文を
 掲載した。これは、従来考えられていた以上に硝酸塩が消滅せず、生態系に大きな影
 響を及ぼす恐れがあるとの指摘だ。
  硝酸塩が心配ではないという人は、さっそくこの論文を読んでみるべきだ。もっと
 深刻なのは農薬汚染だ。たまたま手にした「斉魯晩報」という夕刊紙は、2013年
 9月6日付で、青島市がスーパーなどで行った野菜の残留農薬サンプル検査の結果を
 大きく報じている。最近中国の新聞は食品問題に正面から切り込むようになった,4
 段抜き見出しには"あるスーパーのチングン菜の残留農薬、基準値の6倍を超す"とあ
 った。キュウリ、ニラ、ホウレンソウ、セロリ、チングン菜の5腫煩に検査不合格が
 みられ、売り場の形態に応じて、不合格率が棒グラフで掲げてあった。

  内訳は、農産物集荷市場(主に郊外にあり、農家が自分で作った農産物を直接運ん
 で顧客に販売する市場)3%スーパー6%、卸売市場6%、露天市場14%というから、
 日本では想像できない不合格率の高さだ。その理由について担当の記者は、今年は例
 年になく病害虫の発生が多かったことにあると解説した。

  それはともかく、スーパーや卸売市場で扱われる農産物は、あらかじめスーパーや
 市場で検査を受けているはずなのに、これだけの不合格率が多くの品目に出ることに
 驚かされる。いかに農薬汚染が深刻か、そしてしっかりと行われていると政府が豪語
 している検査が、いかにずさんだったかを証明している。

                                  「神農丹」ショック

  中国では、汚染野菜はほとんどの品目におよび、とくに大きな問題になった野菜に
 生姜、もやし、落花生、トマト、ナスなどがある。生姜には「神農丹」(日本名メチ
 ルカルバモイルの一種。劇物指定の殺虫剤で最も危険な農薬)という銘柄の農薬が浸
 透し大問題となった。この農薬の致死量は、50ミリグラムで体重50キログラムの大が
 死ぬ。主に生姜、キュウリなどウリ科の植物に使われ、中国でも危険度がもっとも高
 い劇薬に指定されている。ある生姜産地ではこの農薬を使ってできた生姜や農作物が
 
  テレピ放送され話題になったが、当の農民は食べない。その訳は、農薬の袋に「神
 農丹を野菜に院ってはならない」と注意書きされているからだ,取材に対しては、こ
 れは売るために作ったもので、農民が食べるものではないから使ったのだ」と答えた
 という。恐らく安くてよく効くから使っているだけのことだろう。

  多くの吸物、とくにブドウには二酸化硫黄(亜硫酸ガス)が、鮮度や色彩維持のた
 めに日常的に使われている。食品添加物としても使用は許されているが、正体は有毒
 なガスだ。最近、地方政府が経営に関わっている2000ヘクタールの大きなブドウ
 農場を訪ねた際、若く美しい経営責任者が話してくれた。収穫したブドウを二酸化硫
 黄の袋に入れ2ヵ月侍つと市場価格が2・5倍に跳ね上がるので、その時明を待って
 すべて売りきるのだという。
  利口なやり方だが、消費者にとっては危険きわまりない。2ヵ月間にわたって二酸
 化硫黄がブドウの皮に浸み込むわけだから、皮ごとブドウを食べる習慣のある中国人
 にとって、人体にいいはずはない,
 
  最近、中国でも多くの店舗に並ぶようになってきたネ-ブルオレンジ。その人気を
 悪用して、染色剤に浸し、皮だけでなく身まで鮮やかなオレンジ色に染めたものを作
 り、大量に売りさばいていた業者が摘発された,農薬ではないが、違法な染色剤の活
 用も青果物では一般的で、キュウリ、トマトなどでも問題となった。
  ところで、中国の農薬メーカー数は約100.この中にはデュポンの現地工場など
 外資系も含まれるが、最大級の中国農薬メーカーは瑞沢、江山、克勝、紅太陽などあ
 る。政府が認可している農薬の数は約3万銘柄に及ぶ(農業部資料)。50グラムや
 百グラム小瓶、小箱、ビニール小袋入りとして売られているが、使用方法や希釈倍率
 などの肝心な文字は蟻の目玉よりも小さいので読む農民はほとんどいない。

  中国は農薬を極毒、劇毒、中等毒、低毒、実際無毒、無海の6種に等級分けしてい
 る(WHOは5分類)。中国ではよく「毒もやし」とか「毒生姜」といった呼び方が
 使われるが、その「毒」とは、農薬の危険度からきている。急性の海性を表すのに「
 半数致死量」(ある動物に与えるとその半数が死亡する量)という指標があるが、極
 毒の場合、小ネズミ半数致死量は1ミリグラム未満、劇毒は1~50ミリグラム、中
 等毒は51~500ミリグラム、低毒501~5000ミリグラム、実際無毒5001~
 1万5000ミリグラム、無毒1万5000ミリグラム超とされている。農薬の危険
 度をわかりやすくするために、農民向けに作った簡便法だと思うが、実際のところこ
 んな区分法を知っている農民はほとんどいない。

                        高橋五郎 箸 『日中食品汚染』

 

ここで触れられていない「死のシルクロード」のこと――福島第一原発による放射性物質
汚染量を遙かに超える複合汚染の影響の――がとても気になるところだ。もしかすると漢
民族は既に滅ぶことが予定されているのか誰も分からない。

              
    Where there is no vision, the people perish...   聖書 箴言29章18節


                                                     (この項了)

  

 




   生まれた事 知らせた声

   どこまでも遠く 全部を抱きしめた...

                                     作詞/作曲  藤原基央

 


6・7 あづち信長まつり

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● 6・7 あづち信長まつり

おかしなもので、近くて一度も観光したことがなかった「あづち信長まつり」。ことし
こそはみてみようと起床のときに決める。織田信長の命日6月2日にちなみ、毎年6月
の第一日曜日に行われる行事で、昨年は、6月8日に開催している。見所は安土城下を
めぐる総勢5百人以上の武者行列。信長をはじめとした武将、姫君、天正少年使節や宣
教師などの衣装を身にまとい安土城下をねり歩く姿。地元の特産物を販売する「あづち
楽市」やお堀巡りなどのイベントも盛りだくさん企画される。一日、ぼんやりとイベン
トを楽しむのもまた一興かと考える。 

 

 

● ルームランニング記 Ⅲ

木の芽時、ここ2、3日そんな状態だ。寒暖差のによるけれど、原因は脳の大部分の機
能低下。怒りっぽい・イラつきやすい、胃痛・胃腸の不快感・便通の異常、寝つきが悪い・
途中で目が覚める。・自律神経バランスの正常化が治療法だが、処方箋は3つ程あって、
(1)気分転換する、休暇をしっかりとるリフレッシュ法と(2)足裏マッサージ・ア
ロマなどのリラックス法、(3)スポーツ・気功・ヨガなどをやってみることだが、ル
ームランニング不足ということで、メニューを換え、最大斜度:7度、最大速度:毎時
6.5キロメートルに変更、これに、クエン酸とアミノ酸が多く含まれたものをサプリ
メントとして摂取。暫く、これで様子をみることに。

 

  図 自殺者統計(内閣府)



【新弥生時代 植物工場論 Ⅴ】 

ここ数年新しい農業について考えてきたことを、独自に事業化の基本イメージを確定さ
せておきたいという思いに駆られ、上記の本をそのたたき台として、時宜、読み進めた
いと掲載を開始した。独自の事業化イメージはできあがっている。この本にもすこし紹
介されている。時々の気付いた点を添え書きとしてここに記載していく。通読された方
に理解できるだろう。それでは読み進めることに。


 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を施
 設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所にとら
 われず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めています。
 その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産コストか
 ら、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や図解を用いて様々な角
 度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技術革新などによってもたら
 されるであろう将来像についても、アグリビジネス的な視点や現状もふまえながら
 紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書となっています。

            古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」 

   【目次】

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか

 
  そもそも「人工光型」って?

                                人工光型植物工場の特長

  現在、日本における植物工場は「人工光型(閉鎖型)」と「太陽光型(半閉鎖型
 )」のふたつに分類される。「太陽光型」には「人工光・太陽光併用型」も含まれ
 る。太陽光型が太陽光(自然光)を利用するのに対し、この章で紹介する「人工光
 型」は、その名のとおりj人工光(蛍光灯やLEDごのみを使い、密閉度が高い断
 熱壁によって。閉鎖された清浄な空問のなかで植物を生産する。つまり、「気象条
 件に左右されることなく植物の栽培環境を最適に制御できる」ことが、露地や温室、
 太陽光型植物工場などとは異なる大きな特長である。

                                「人工光型」の必須投入資源とは?

  テレビや雑誌などで生産の様子をみたことがある人はわかるだろうが、「人工光
 型植物工場」の内部では、一見、SF映画のワンシーンのような近未来的な風景が
 広がっている。
  たしかにその様子は、田畑などにおける植物(農産物)の生産風景とは似つかな
 い。見慣れない光景である。ただ、その一方で人工光型植物工場に不可決な資源(
 必須役人資源)は、「光」「二酸化炭素」「無機肥料」「水」「種苗」と、植物が
 成長するのに必要な。馴染みのものばかり。また、工場内の設備もエアコンや送風
 ファン、蛍光灯やLEDといった光源ランプなど、私たちの身近に存在するもので
 基本的に構成されている。

  工場といえども、あくまで植物を育て(栽培して)、食料を「生産している」(
 環境に働きかけて生活に必要な食料を生み出している)のであって、全く別のアプ
 ローチで植物を「製造している」(原料に手を加えて製品にしている)わけではな
 い。このことを前提に人工光型植物工場やその生産物と向き合うことが、生産者に
 なるうえでも消費者になるうえでも最初の一歩となるだろう。

                                          酸素は必須投入資源?

  植物の呼吸には酸素が必要であるが、前述の必須投入資源のなかに酸素は含まれ
 ていない。なぜか? 理由のひとつは、植物の光合成活動により酸素が生産される
 から。もうひとつは、大気中の酸素の濃度である。現在、地球上の大気における(
 晩の容積比率は約21%で、二酸化炭素は約O・04%。大気中には二酸化炭素の
 約5百倍の酸素が存在するのである。よって、酸素を投入しなくても光合成の速度
 に影響はない(逆に酸素濃度が低いほど呼吸速度は低くなり、正味の光合成は増え
 る)。

 

 「人工光型」のイメージと実態

                 「人工光型」は環境にわるいのか?

  次頁上の図は、2013年に実施された「植物工場製野菜に関する消費者調査」
 の結果である。認知度、購入経験ともに2009年の調査よりも高くなっており、
 植物工場に対する理解が年々深まっていることがうかがえる。
  一方で、「土壌」や「人工光」という言葉につきまとうマイナスイメージもあっ
 てか、周辺環境への負荷や電気エネルギーの使いすぎといった不安・懸念を目にす
 る人も少なくはない。

  たしかに、経済活動による生態系へのさまざまな負荷を土地面積に換算した環境
 指標「エコロジカル・フットプリント」にもとづいて計算すると、人工光型植物工
 場の環境負荷は露地栽培の十数倍にもおよぶ。ただ、この計算のもとになったのは
 約20年前のデータで省エネ技術がすすんだ現在とは状況がかなり異なる。
  また、植物生産に必要な水量や農薬、肥料、さらに過剰な肥料施用による地下水
 や河川水の汚染が考慮されておらず、正確に比較できているとはいいがたい。
  そして、人工光型植物工場には、温室やハウスなどの園芸施設に比べ、はるかに、
 「エコ」な側面もある。

                     かん水の必要量は50分の1

   では、人工光型植物工場は園芸施設に比べ、どのくらい資源を節減できるのか? それ
 を示すのが、次頁下の表だ。まず目にとまるのは、水の「50分の1」という数値である。たと
 えば温室でかん水した場合、蒸発した水蒸気や植物の葉の気孔から放出される水蒸気は
 回収できない。

  それに対し、人工光型植物工場では、栽培室に放出される水蒸気(蒸散・蒸発水)
 のほぽすべてを冷房時にエアコン冷却面に付く結露として回収し再利用することが
 できるため、かん水の必要量を温室の約50分の1に抑えられる。また、二酸化炭
 素や光エネルギー、肥料も約2分の1に節減することができる。

                           「人工光型」の消費電力の未来は

   一方で、人工光型植物工場の「ネック」といえるのが電力エネルギーの消費量である。た
  だ、近年の照明技術、エアコン性能の向上は著しく、消費電力量は年々減少してい
 る。
  また、風力発電、太陽光発電、バイオマス発電などを導入することで自然エネル
 ギーが電気エネルギーに変換されれば、エコロジカル・フットプリント(環境に与
 える負荷)を現在の約8分の1に減少できる。

   生産者からみた「人工光型」のメリット

                          計画的・安定的に周年生産を実現

  露地栽培において、気候や土壌が品質の善し悪しや収量、栽培時期に大きく影響
 することはいうまでもない。自然を相手にする限りこれは。宿命゛であるものの、
 「記録的な猛暑(寒波)」「局地的な豪雨」など異常気象のニュースがあとを絶た
 ない昨今、そのリスクはますます高まっているといえるだろ

  一方、人工光型植物工場は、気象条件にかかわらず光強度や明期、光質、温度、
 二酸化炭素濃度、気流速度、養液成分濃度といつた環境要因を安定的に制御できる。
 つまり、設備と環境管理技術さえ整っていれば、雪氷に覆われた寒冷地域であって
 も、砂漠が広がる乾燥地域であっても、はたまた高層ビルが乱立する都市部であっ
 ても植物を生産するうえで最適な環境を維持できる。このように、気候や土壌条件
 に依存することなく計画的かつ安定的に生産を行うことが可能であることが、人工
 光型植物工場の最大の利点のひとつとなっている。

  年間生産能力は露地の100倍以上人工光型植物工場のもうひとつの大きな利点
 が、土地面積当たりの生産性の高さである。まず、環境制御によって光合成と成長
 を促進させることで、苗の定植から収穫までの期間を約2分の1に短縮できる。さ
 らに、多段棚の使用によって床面積当たりの生産能力が格段に飛躍する。たとえば、
 床面積1000平方メートルの人工光型植物工場で栽培棚が10段あった場合、リ
 ーフレタスなら1口約7500株、年間約250万株生産できる。これは同面積の
 露地におけるりーフレタスの年間生産能力の100倍以上であり、今後もこの生産
 能力の差はさらに広がっていくことが予想される。

                                 省資源・環境保全にも長所が

  省資源・環境保全の面においても、人工光型植物工場にはさまざまなメリットが
 ある。かん水必要量を施設園芸の約50分の1に抑えられることは34頁で紹介し
 たが、培養痕も循環利用が可能であり残痕をほとんど外部に排出しない。このため
 肥料を含んだ排水(環境汚染物質)の量が大幅に減ることはもちろん、元々の施肥
 量も最少にすることができる。

  また、前述のとおり設備と環境管理技術さえ整っていればどこでも生産可能=生
 産地が限定されないがゆえに、生産地と消費地が至近距離となり、長期輸送のため
 のエネルギー資源や包装のための資源の節減にもつながる。

 

  消費者からみた「人工光型」のメリット


                  無農薬かつ衛生的な野菜生産

  放射能汚染の問題や相次ぐ偽装問題の影響で「食の安全・安心」に対する消費者
 の関心が高まり続けている昨今において、人工光型植物工場野菜の最大の魅力は、

  ①無農薬栽培である
  ②収穫時の雑菌付着がわずかである

 という点にある。特筆すべきは後者で、人工光型植物工場産の菜もの野菜における
 生菌数は、園芸施設で栽培された菜もの野菜の約100分の1(1g当たり100
 ~1000個)といわれている。これにより傷みや品質低下が軽減されるため「収
 穫後の日もちが2倍になる」「水道水で洗う手間も省ける」などといった付加価値
 のある商品となった。

                    年間を通して品質が一定

  「品質」という面においても、人工光型植物工場で生産された野菜には露地栽培
 や施設園芸栽培の野菜にはない魅力がある。
  次頁の図に、露地で栽培されたホウレンソウの抗酸化力、ビタミンC(アスコル
 ビン酸)および精度の月別変化を示した。図をみてみると、旬の時期をピークとし
 て、ホウレンソウの体内成分が変動(いずれも低下)していることがみてとれる。

  一方、気象の影響を受けない人工光型植物工場野菜は、年間にわたり品質(植物
 体内成分)を一定に保つことが可能である。
  さらに将来的には、環境制御によって意図的にビタミンCやポリフェノールの濃
 度を高めるなど、より機能性が高い野菜の生産も可能になる。

                     実際の消費者の反応は?

  経済産業省が2009年に行ったアンケートによれば、植物工場野菜をすでに購
 入・利用したことのある消費者の購入・利用理由は「安心・安全」が約30%と最
 も多く、次いで「規格・品質が安定している」が17%と、植物工場野菜の長所を
 理解・評価していることがうかがえる。ただ、同調査では「すでに購入・利用した
 ことがある」と回答した人が全体のわずか14%であり、そもそもの絶対数が少な
 いことも事実である。
  今後生産者は「理解を深めてもらう」ための努力を、そして消費者は「理解を深
 める」ための努力を続けていく必要がある。

 

今夜は、メリット的側面を掲載させた。コストもここで記載されたものを前提すれば、
そのようになるだろう。一旦これを受け止めこの先を進めていこう。

                                  この項つづく 

  ● 今夜の一枚

Ichiro wins video replay challenge after wild play at plate.

イチロのタフ技 チャレンジ(ビデオ)で得点をえる。 

 

 

蒲焼食文化継承考

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● 蒲焼食文化の継承


             江戸前に のたをうたせる 女あり 


このころ、女の鰻さきがいたことが詠まれているほどに、この時代(宝暦)でも珍しい
ことなんだろうと思う。元々「江戸前」とはウナギの代名詞だったとか。つまり、「江
戸前と唱へ候場所は、西の方、武州・品川州崎一番の棒杭と申場所、羽根田海より江戸
前海へ入口に御座候。東の方武州深川州崎松棒杭と申場所、下総海より江戸へ入口に御
座候」(三田村鳶魚「江戸の食生活」)とあるように、品川の州崎から深川の州崎の内
が江戸前の海をさし、現在よりかなり狭いとされ、江戸前以外の鰻を「旅鰻」と呼び差
別していたともいう。


                      丑の日に籠でのり込む旅うなぎ

 

日本には、土用の丑の日に鰻を食べる慣習があるが、土用とは古代中国で生まれた五行
説(万物は木、火、土、金、水の5元素からなるという思想)上の季節の分類の一つで、
各季節の終わりにおける約18日間のことである。土用の中で十二支の丑の日にあたる
のが「土用の丑の日」である。暑い盛りである夏の丑の日に精力をつけ、厳しい夏を乗
り切ろうというこの慣わしは、江戸時代中期に活躍した平賀源内(1728~1779)は、蘭
学のみにとどまらず、発明家、江戸浄瑠璃作家、陶芸家、画家、本草(薬学)家など多
くの顔を持ち、様々な分野でその才能を発揮した。この奇才なる源内こそが、今に続く
この風習をつくったと言われている。当時は土用の丑の日に、うどんや梅干し、瓜とい
った『う』の字のつくものを食べると夏負けしないという俗信があり、その部分をつい
たキャッチコピー「土用の丑の日に鰻を食べると滋養になる」が当たったその源かもし
れないとも。

さて、話は ニホンウナギ(Anguilla japonica)の絶滅危機回避策の現状について。ニホンウナギ
の養殖は天然のシラスウナギに百%依存しているが、シラスウナギの来遊量は近年激減
し、養殖産業に大きな影響を与え続けている。ニホンウナギの生態には不明な点が多く、
産卵場や回遊経路は謎にあるが、産卵場がマリアナ海域にあることが解明されており、
水産総合研究センタらが、2008年に産卵場で親ウナギの捕獲したが、回遊中の行動や産
卵場に至るまでのルートは未解明にあった。今回はさらに、ニホンウナギの遊泳生態の
調査を行う。

● ニホンウナギ成魚は深海でも日出・日没を感知

それによると、深度データを発信する超音波発信器を装着したニホンウナギの成体を産
卵場であるマリアナ海域や日本近海で放流して追跡。その結果、日出と日没などに関連
した規則的な浅深移動が捉えられ、深度データから日出と日没時刻――日出の約1時間
前に潜行を開始し、昼間は500から800メートルの深度帯を遊泳、日没時に浮上を開始し、
夜間は150から300メートの深度帯を遊泳することを、さらに、昼間には太陽の照度によ
り遊泳深度が変化し、800mといった深海でも太陽光を感知していること、また、夜間に
は月齢、月出、月没と遊泳深度が関連、150から300メートルいった深度で月光を感知す
ること――を突き止める。

Light-Sensitive Vertical Migration of the Japanese Eel Anguilla japonica Revealed by Real-Time Tracking and
Its Utilization for Geolocation, PLOS ONE April 15, 2015

この日周行動は非常に規則的であり、遊泳深度データの変化から日出・日没時刻を特定
できることから、遊泳地点の緯度経度が推定できるため、今まで謎であった日本からマ
リアナ海域への産卵回遊ルート解明への応用が期待されている。

ところで、日本は、世界のウナ半生産量の70%を消費。国内の漁獲ではまかないきれ
ない需要に対応するため、これまで世界各地から二ホンウナギ(ジャポニカ種)、ヨー
ロッパウナギ(アンギラ種)、アメリカウナギ(ロストラ-タ種)の3種が日本市場へ
隼められて含たが、その結果、現在2つの種が国際的に絶滅危惧種に指定されるなど、
いずれも著しく資源状態を悪化させている。日本のウナギ市場はその穴を補おうと世界
各地で「代替ウナギ」を探しているが、数あるウナギ種の中でも特に日本で注目を浴び
ているのが、東南アジア周辺に生息し、特にインドネシアで漁業・養殖が盛んなビカー
ラウナギ(ビカーラ種)だ。大手商社の丸紅が現地で大規模な生産を行い、最大手スー
パーマーケットのイオンが国内で広く販売されているが、資源乱獲によりウナギの絶滅
の危機に瀕している言われている。

  
 薄利多売が乱獲を助長 ?  完全養殖を実現するしかないか。

 

 このように考えていくと「江戸前」「蒲焼」の食文化をいままでとおり保守するには、天然ウナギ
の乱獲を防ぎ、絶滅の危機を回避するには、天然のニホンウナギの生態の解明と同時に、世
界市場に対する管理手法・法整備を議論し保護しつつ、完全養殖技術の確立追求も進めて行
かなければならないだろう。それにしても、深海で太陽の動向を感知する能力に驚かされるニ
ュースだ。これは面白い。



【新弥生時代 植物工場論 Ⅵ】 

ここ数年新しい農業について考えてきたことを、独自に事業化の基本イメージを確定さ
せておきたいという思いに駆られ、上記の本をそのたたき台として、時宜、読み進めた
いと掲載を開始した。独自の事業化イメージはできあがっている。この本にもすこし紹
介されている。時々の気付いた点を添え書きとしてここに記載していく。通読された方
に理解できるだろう。それでは読み進めることに。


 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を施
 設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所にとら
 われず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めています。
 その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産コストか
 ら、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や図解を用いて様々な角
 度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技術革新などによってもたら
 されるであろう将来像についても、アグリビジネス的な視点や現状もふまえながら
 紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書となっています。

            古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」 

 

   【目次】

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか

  「人工光型」の課題と展望

                  「人工光型」がまだ少ない理由

   生産者にも消費者にもメリットがあり、かつ環境にもやさしい……。となれば、
 「街中にもっと人工光型植物工場があってもいいのでは?」「スーパーやレストラ
 ンなどでもっと人工光型植物工場野菜を目(口)にする機会があってもいいのでは?
 」と疑問に思われる方も少なくはないだろう。
  この章で述べてきたとおり、たしかに人工光型植物工場に開する研究開発はかな
 りすすんでいる。ただ、産業化に至るにはまだいくつかの課題が残されているとい
 うのが実際のところである。設備と栽培における課題と展望を次に示す。

                       設備面の課題と展望

  設備面の課題としては、①現状では初期投資が大きい、②電気の利用効率が低く
 運転経費が高い、③光源の有効な利用法が確立していない、という3つがある。
  ただ、①については過大な初期投資や不適切な設備の選択による面も大きく、今
 後の設計が最適化されることによって半減し得る。
  ②も同様で、現状では不適切なランプやエアコンの運転法によるむだな運転費の
 支出が多いため、今後、運転法が改善されていくことで同じく半減し得る。
  そして、③も照明電力の時刻別消費の平準化、照明システムやスペーシングによ
 る植物受光率の向上、さらに蛍光灯やLEDのランプ効率と照明技術の向上によっ
 て今後大幅な電気使用量の削減が見込める。
  2025年までにはコスト・パフォーマンスを現状の4~6倍に上げることが実
 行可能な目標として示されており、人工光型植物工場の設備面における展望は明る
 い。
 
                           栽培面の課題と展望
                          
  栽培面の課題は、①栽培法が確立していない、②適切な品種が少ない、という点
 にある。
  ①は、未だに太陽光下の養液栽培法の影響が色濃く残っていることがネックであ
 る。ゆえに、植物種や品種によっては環境と植物成長の関係に未解明な点も多く、
 人工光型植物工場の長所を最大限に生かしきれているとはいいがたい。今後の研究
 の進展が待たれる。
  ②については、人工光型植物工場ならではの商品の開発や販売がすでにはじまり
 つつある。さらに今後、人工光型植物工場専用の品種なども開発されれば、採算性
 は大きく改善されるだろう。

  「人工光型」に適した植物とは?

                                      「人工光型」向き植物の条件

   現在の人工光型植物工場において、栽培できない植物はほとんどない。ただし、
 それは「経営収支を無視すれば」の話であり、当然、向き不向きはある。では、ど
 んな植物が「人工光型」向きなのか? その条件が、次に示す2つである。

 ①比較的弱い光でも成長し、苗を植えてから収穫までの栽培期間が短い(15~30日)
 ②高裁植密度で生産が可能かつ重量当たりの価値が高い
 
  具体的にあげれば、各種の接ぎ木苗・挿し木苗・実生苗、菜もの野菜・ハーブ・
 香草類、草本性薬用植物、小型根菜類などがこれに該当する。
  なお、播種から苗になるまでは必要なスペースが小さいので、日数が多くても生
 産性への影響は少ない。

                       向き不向きの見極め方

  前に羅列した「人工光型」向きの植物に共通しているのは、「草丈が短い」とい
 う点である。人工光型植物工場では、多段棚の利用が前提になる。ゆえに、草丈が
 30センチメートル(植物の先端から根の基部までの長さが40センチメートトル)
 程度以下であることが人工光型植物工場での生産では好ましい。むしろ、これらの
 植物を温室または太陽光型植物工場で生産した場合、高さ1メートル前後のベンチ
 を利用して栽培するにしても植物から屋根までの数メートルは空気層、つまり「デ
 ッドスペース」となる。それを差し引きしてもあまりあるほどの利点が太陽光下で
 の栽培にあるのか、検討してみる価値は十分にあるといえるだろう。

  そして、もうひとつの共通点が「強光を好まない(弱光を好む)」という点だ。
 いわずもがなだが、照明(人工光源)を使用する人工光型植物工場では、強い光が
 必要であればあるほど電気料金が過大になる。とくに、強い光と長い栽培期間が必
 要で、しかも栽培密度の低い果菜類(トマト、キュウリ、パプリカ、ナスなど)は
 経営的に利益を出すことが非常にむずかしく、生産の対象にはなり得ない。


             「人工光型」と「太陽光型」の併用が増加

  2005年以降、果菜類の育苗を「人工光型」で行い、栽培は「太陽光型」で行
 う方式が増えている。周年にわたり高品質な苗が大量に必要なトマトの低段密植栽
 培や菜ものの養液栽培において、これは非常に有効である。「人工光型」と「太陽
 光型」お互いの長所短所を理解したうえで使い分けることも大切だが、それらを組
 み合わせることでより有効な生産方式を見出していく視点や発想も重要だ。


ここで、大切なことが掲載されている。つまり、人工光型は、①栽培法が確立していな
い、さらに、②適切な品種が少ないの2点とし指摘し、生産に適するのは機能性植物の
み(上図/上)としてこの節以降、詳細概説に移っているが、その対象から外れた「カ
ロリー性植物」「果菜・果樹・大型根菜」に関して、「環境と植物成長の関係に未解明
な点も多く・・・」(「栽培面の課題と展望」)と述べていることもあり、該当植物の
育種改良法で栽培可能だろうと個人的に考えている。そのために、例えば(1)長時間
の観察画像解析システムや(2)自動環境制御試験培養ユニットシステムの開発は欠か
せない。具体的には、イネの育種改良:高栽培密度化=ダウンサイジング=ダウンスペ
ーシングのための環境自動制御(土壌環境を含める)を予めカレンダータイマー制御す
る条件をプログラミングし育種試験結果を集約し、環境と植物成長の関係に解明し、品
種改良することで、全てを人工光型栽培可能できるようにするというものであり、この
時点で高付加価値をはらむ特許出願事案となる(環境工学研究所WEEF「オール人工
光型植物栽培育種システム」)。


  「人工光型」運営のポイント

               生産能力当たりで初期コストを考える

  人工光型植物工場の産業化における障壁のひとつが。初期コストの高さ々である
 ことは40頁でも述べたとおりである。
  一方で、人工光型植物工場に対する知識の浅さや誤った解釈が、その印象を過大
 化させている側面があることも否めない。
  たとえば、温室(ハウス)と人工光型植物工場の初期コストを。土地面積当たり
 で比較した場合、人工光型植物工場のコストの高さに驚くだろう。しかし、土地当
 たりの生産能力で考えた場合はどうか? 同じ土地面積であっても、棚が4段であ
 れば人工光型植物工場の生産能力は温室の約10倍、20段あれば50倍またはそ
 れ以上になる。つまり、人工光型植物工場の必要床面積は棚が4段なら温室の約10
 分の1、棚が20段なら約50分のIですむ。また、天井の高さが3~6メートルの
 場合、建物容積は30分の1から300分の1になる。さらに、床面積が10分の
 1から50分の1になれば作業者の歩行(運搬)距離が大幅に減り、作業時間を30
 %以上減少し得る。
  初期コストは、生産能力当たりで比較・検討すべきである。

 

                 重量商品化率は90%以上を目指す

  人工光型植物工場の運営においては、「いかにロスを少なくできるか?」が重要
 なポイントになる。たとえば、露地で栽培した結球レタスの場合、収穫時に13枚
 前後の外葉が畑に残される。また、芯が太く長いため、実際に商品となるのは収穫
 時の畑での重量の半分以下(約40%)である。
  それに対し、人工光型植物工場で結球性レタスを栽培し、結球前に収穫すれば、
 外葉を破棄する必要がないうえに芯も短く小さいため、収穫時の重量の90%以上
 を商品化することができる。見かけが異なるが、同じ昧、食感の新商品である。
  重量商品化率90%以上。人工光型植物工場の運営を成功に導きたいのであれば、
 この数値をめやすとすることが望ましい。

           人工光型植物工場マーケットを創造するには?

  前述のレタスの結球前収穫は、重量商品化率90%以上であるうえに「カット野
 菜にしたものがほしい」「1人で食べきれる分だけほしい」という消費者の個食ニ
 ーズにも応えた非常に有意義な事例のひとつである。このように、人工光型植物工
 場の特性を生かして生産者・消費者双方にとってメリットのある商品を生み出すた
 めの発想や視点が、人工光型植物工場の運営には必要不可決といえる。

 

 

                                  この項つづく
 

中国の食品汚染考

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● 日中食品汚染 Ⅸ 中国の食品汚染地図

 

【目次】

 第一章 見えない食品の恐怖
 第二章 中国の食品汚染地図
 第三章 食品汚染のヒトへの影響
 第四章 なぜ汚染連鎖が絶ちきれないのか
 第五章 重金属汚染という新たな難題
 第六章 日本の食品は安全といえるか


『農産物完全自給プロジェクト』(2014.12.31)から掲載してきた、高橋五郎著「
日中食品汚染」は現在の食品の交易、あるいは技術と文明の問題を炙り出すととも
に、食の安全と近未来の安全な食品生産システムを考察していく。また、今進めて
いる、古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」 の考察にも生かし
て行こう。


第2章 中国の食品汚染地図 

                      「神農丹」ショック

    あまりにも危険な農薬は国際的な取り決めやガイドラインもあり、製造・使
 用禁止の対象になっている その数は今のところ23種類,B日C、DDT、
 トキサフェン、DBCP、クロルジメホルム、ジブロモエタン、ニトロフェン、
 アルドリン、ディルドリン、水銀製剤、ヒ素、ナマリ系農薬、メタンジアン(
 日本にはない化学物質)、テトラミン、フルオロ酢酸ナトリウム、ラット中毒
 シリコン、メタミドホス、メチルパラチオン、パラチオン、モノクロトホス、
 リンアミンなどだ。

 


  このうち、メタミドホスは毒入り餃子事件で日本でも有名になった、いわく
 つきの農薬だ。すでに、1983年に製造・使用禁止になっていたはずのもの
 だ。それでもまだ製造・販売されているのだから、中国はまことに自由主義の
 国だとしかいいようがない。
  農村の農業用資材を売っている小さな商店をのぞくと、至るところにこの種
 の農薬や添加物が乱雑に積まれている。

※ 中国産食品の安全性 - Wikipedia
※ メタンジアン(methanediam)については不詳(残件扱い)


                   有機肥料という名の人糞

  有機肥料の害も無視できない。日本では有機肥料は有機野菜や無農薬野菜の
 生みの親のような受け止め方があるが、中国ではそうばかりともいってはおれ
 ない。家畜の糞尿を発酵させた堆肥は有機青果物の栽培にとって有効かつ不可
 欠なものだが、中には、ヒトの糞尿をろくに発酵させないまま畑にまく例も少
 なくない。人糞はコストもかからず、農民にとっては毎日排出される打ち出の
 小づちなのだ。

  わたしは中国の書店で最近出版されたばかりの肥料学の専門図書や農民向け
 と思われる肥料ハンドブックを買ったが、これには人糞肥料の作り方から使い
 方まで細かく書いてあった。また、中国農村の畑を歩くと、人糞肥料を土に混
 ぜたちょうどアンコのような色をした固まりをよく見かけるが、その固まりは
 やがてほぐされ、畑や田圃の土の中に混ぜ込まれる。これが発酵した場合、と
 てもいい肥料になる。たとえばナス。人糞肥料を使っている畑のナスは大きな
 葉が上をぴんと向いて、黒光りした茎が力強く立っている。ナスは光沢のある
 紫色をして、いまにもはち切れそうな勢いを見せる。これに対し、化学肥料だ
 けを使って栽培したナスは勢いと色がまったく違う。

  しかしこうした発酵した人糞ではなく、まだ取れたてのものを桶で運んで大
 きな柄杓で土壌にかけることが問題なのだ。確かに人糞には、窒素、燐酸、カ
 リウムといった肥料に欠かせない3要素が豊富だが、発酵させずにまけば、土
 壌の表面や中で悪玉の雑菌や細菌の繁殖実験をするようなものだ。結局は逆効
 果となる。そこで農民は、それらの悪脱菌を退治せんと強烈な農薬をまく。こ
 のような農法が残留農薬問題をひき起こす最大の理由だ。中国の伝統農法は人
 糞肥料なしには成り立たず、善良でまじめな農民ほど伝統を重んずる傾向があ
 ることは国が違っても同じで、これが災いのもととなっているとは皮肉なこと
 だ。

                    PM2・5は農村地帯にまで

  大気汚染や水汚染も、青果物汚染につながる問題として中国で注目され始め
 た。では大気汚染がなぜ青果物汚染に関係するのだろうか。それはPM2・5
 など、さまざまな汚染源の微粒子が降雨や風の影響で、雪のように大地に降り
 注ぐからだ,中国のPM2・5の微粒子は石炭煤煙や車の排ガス、さらには工
 場煤煙などが元凶といわれる。

  とくに、石炭煤煙の影響はきわめて深刻なレベルに達していろ。50メート
 ル先が見えなくなるのは北京や上海などの大都会だけではなく、今や農村地帯
 にまで広がっている。あるとき河北省の郊外農村を訪れると、北京や上海ほど
 ではないにしても前方が見えにくくなるほど霞がかっていた。

  中国の石炭のうち、石炭化の進んだ高品質の無煙炭は10%程度にすぎない。
 ただしこの種類の石炭は煙は出ないが、石炭化率が高い分、硫黄酸化物を多く
 排出する。残りは、煙と硫黄酸化物の両方を含むあまり品質の良くない石炭が
 占める。
  これらのもっとも大きな問題は、酸性雨の原因ともなることだ。しかも中国
 は世界一の石炭消費国で年間35億トンにも達する,石炭を家庭や地域暖房の
 ために大量に消費し、エネルギー消費の70%を石炭に依存する中国では、脱硫
 装匿を完璧に装備することはほとんど望めず、石炭を使い続ける限り、大気汚
 染を減らすことはできない。大気汚染は土壌や農林畜水産物までも汚染する。

  暖房の季節は、北京市内でも石炭の煙の臭いがするし、石炭産地の山西省辺
 りでは、夏でも夕方になると、夕飯の支度のために燃やす石炭の煙が町全体を
 煙突のようにする。保有量が1億台に達した車の排ガスの排出吸も世界一多く、
 さまざまな原因から生まれる二酸化炭素排出量を合わせると72億トン(20
 10年)で財界最大だ。これらの化学物質は広い大地に降り注ぎ、農地を硫黄
 酸化物や重金属を含む微粒7.で汚染する原因となるのだ。


                      地下水汚染が与える影響

  汚水による青果物栽培への影響も同じように深刻だ。汚水は地下水と地表水
 両方から青果物に襲いかかり、生育の低下はもちろんのこと、青果物そのもの
 に農薬成分や重金属などが浸透する。中国のほとんどの農村では地下水のくみ
 すぎから地ド水位が低ドし、塩害の発生も各地で起きているが、水銀、細菌水、
 ヒ素などで汚染した地下水の散布がもっとも大きな問題となっている,

  中国の専門家なら誰しもが知っていることだが、水の3分の1が地下水で賄
 われ、その60%は深刻な汚染状態にあるとみられている,また都市の場合、き
 れいな地下水はたったの3%しかないほど悪化しているという。
  かつて中国は水大国で、その証拠に水墨画には必ずといっていいほど山紫水
 明の風景が描かれてきた,ところが、その豊富な水があだとなって、いつしか
 枯渇し、しかも汚れるに任せてきたツケがまわってきているのが現状だ。

  先ごろ国連は、この数十年間で中国の河川が2万7000本も消滅したとい
 う報告書を出し、世界を驚かせた。そして2010年、環境保護部は直接人体
 が触れてはいけない汚染性水の割合が、揚子江、黄河、松花江などの中国7大
 河川水全体の16・4%を占めると警告した。
  このほか地下水と地表水の汚染の理由として、農村のトイレ問題がある。中
 国国家衛生・計画生育委員会によると、農村附帯数は2億6000万戸。この
 うち自宅にトイレのある附帯は1億8000万戸(約70%)、残りは外の公
 衆トイレや畑の共同便所(屎尿を肥料として使うために設けてある)で用を足
 している。

  自宅にトイレがあるといっても、農家世帯のうち水洗式は122%にすぎず、
 大部分はいわゆる自然落下式を使っている。この場合、どこへ処分するかとい
 う問題が起こる。成人は1口約2リットルの排尿をし、150~200グラム
 の排便をする。農家附帯人ロを3人とすると1日当たり11万7000~15
 万6000トンの便の量だ。これに水分が加わるから大変な量が毎日農村から
 排出され、どこかに消えていく。このうちの多くが、地表水や地下水を汚染し
 ている。

                      コメの重金属汚染

  コメは、下(土壌の重金属汚染)と上(茎や葉の農薬汚染)から汚染されて
 いる。2011年1月、改革的な論調で知られる中国紙「南方週末」は基準値
 を大幅に超えたカドミウムや水銀が、工場に出回っているコメから検出された
 ことを報じ、コメを主食とする中国南方の人びとに衝撃を与えた,これを発端
 に、汚染米のニュースが全国を駆け巡ると、それまで隠されていた実態が次々
 と明るみに出た。カドミウム汚染は、遼寧省、浙江省、江西省、広東省、湘南
 省、広西チワン族自治区、貴州省、四川省などにも広がっている(重金属汚染
 の分布図は図3を参照)。


  湖南省はとりわけ深刻で、省の土壌肥料研究所は省内の水田の68・8%が
 カドミウムで汚染されているという、すでに2008年に行っていた研究結果
 を公表した。
  同省の湘潭県は伝統的にコメを作ってきた。コメの郷里で、面積7000ヘ
 クタール、年に85万トンを収穫するコメ産地だ。ところが、汚染米であるこ
 とが明らかになってから農民自身もみずから作ったコメを食べなくなり、すべ
 てを鶏と豚のエサにせざるを得ない状況だという。重金属によって汚染された
 水田では、収ほが極端に減少する現象も現れ、同じ湘潭県では半減した水田も
 あった。

  「信息時報」という新聞の2013年5月21日付では、事態を重くみた広
 州市が、ついにカドミウム汚染の深刻な産地として、湖南省衡東県と蚊県を公
 表したと報じた。これには「羅生門」という呼び方まで付けた。中国でも、黒
 沢明監督の羅生門は有名だが、「身勝手な」という意味も付している。カドミ
 ウム汚染は、農民の化学肥料の使いすぎも影響しているから、あながち外れた
 形容詞ともいえない。カドミウム汚染は、まきすぎた燐酸肥料が化学変化によ
 ってカドミウムに変化して起こるといわれる。だが多くの場合は、農民とは無
 関係な鉱山や化学工場からの廃液、汚染した大気の降雨による土壌沈着だ。

  中国科学院も、カドミウム、クロム、ヒ素、ナマリなどを中心とする重金属
 汚染が全耕地の20%に当たる約2000万ヘクタールに達するという研究結
 果を公表した。これは、政府系の研究機関がそれまでのベールを剥いで、土壌
 汚染の深刻な実態を世にさらすことで、国民に注意を呼びかけざるを得ない状
 況にあることを示唆している。
  南京農業大学農業資源環境研究所のある教授によればコメが汚染するという
 ことは、コメと並んで中国最大の収穫砥を誇るトウモロコシ、小麦、大豆、ジ
 ャガイモ、サトイモ、人参、落花生などあらゆる農産物に汚染が広がっている
 証拠だとしている。
 
  中国の重金属汚染問題の研究者によると、ナマリ、カドミウム、水銀、ヒ素
 のどれで実験しても、最も多く吸収・蓄積するのがコメだという。コメは試験
 したネギやかんきつ順、甘藷、一見類、ピーマンなどよりも、はるかに多くの 
 重金属を蓄積する性質を持っているという。


                    DDTを復活させた薬剤耐性

  コメの上からの汚染は残留農薬汚染によるものだ。残留農薬問題は殺虫剤、
 殺菌剤、除草剤、殺鼠剤などが、コメ本体の中に残留する問題である。最近は
 中国東北地方での栽培も増えてはいるが、コメの主産地は中国南方に分布し、
 気温が比較的温暖なためか、害虫や土壌中細菌が大ほに繁殖しやすい。稲の立
 ち枯れ症状を見せるイモチ病やさまざまなカビが発生したり線虫が繁殖しやす
 く、これらを退治するために強力な農薬が必要だったのだ。

  あらゆる生物には薬剤耐性があり、強い農薬でなければ徐々に効かなくなる
 ので、禁止された有機塩素系殺虫剤DDTやBHCといった猛毒の農薬が使
 われることになる。
  国際的にはDDTを禁ましてからマラリアの発生が増えて、WHOが仕方な
 くマラリアの蔓延地区に対して、製造と使用を認めるように方針を変えた。だ
 が、中国の田圃でも薬剤耐性が起きている。DDTの使用禁止を知らない農民
 がほとんどだからだ。仮に知っていても、それを使わなければコメが育たない
 ほど薬剤耐性は深刻になっている。

                        水汚染はコメと直結

  さらにコメを作るための水の汚染問題が、全国に広がっている。水汚染につ
 いては後に詳述するが、工場三廃(廃水、廃気、廃ゴミ)といわれる中のひと
 つだ。加えて家畜糞尿汚染、生活雑俳水汚染などがある。
  まず家畜糞尿による汚染は、肉や卵、酪農品の生産の急増に、家畜糞尿処理
 施設の建設や浄化技術が追い付いていないことが背ほにある。たとえば黒竜江
 省では最近、豚、牛、羊、家禽の飼養が増加し、1年間に排出される糞尿が1
 億トンを超えている。これに対し、糞尿処理施設はコストが高いこともあり、
 ほとんど建設が進まず、一部は堆肥生産に向けられるものの、大半は廃棄され
 ているという。

  糞尿は時間がたてばすべてが土か水に溶けていく。相当部分は河川や湖沼に
 流れ、あるいは地下水に浸透していくということだ。汚れた水は、富栄養化し
 たり、汚れたままの用水となって田圃に入り込んでくる。
  わたしの兄はかなりの規模の畜産経営者だったが、毎日、豚や牛から排出さ
 れる糞尿の量は想像を絶するもので、ポンプを使って畜舎からくみ出すために
 体中にその水分を浴びながら必死で作業をしていたものだ。とくに育成中の豚
 はしょっちゅう臭い尿を音を立てながら排泄し、離れた場所からそれを見てい
 た当時中学生だったわたしは、そんな兄に心から同情した。
  青果物汚染の項で述べたことの多くは、コメ汚染にも当てはまる。さらに、
 コメ汚染はトウモロコシ、小麦や人コウリャン、アワなどの穀物全体にも当て
 はまるという事実を、しっかり認識していただきたい。

                                  高橋五郎 箸 『日中食品汚染』

                                           (この項つづく)

 



【新弥生時代 植物工場論 Ⅶ】 


 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件
 を施設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場
 所にとらわれず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集
 めています。その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投
 資・生産コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や
 図解を用いて様々な角度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技
 術革新などによってもたらされるであろう将来像についても、アグリビジネス
 的な視点や現状もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書
 となっています。

          古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」 

   【目次】

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか


 日本の「人工光型」は、いま…

            85の工場が毎日1000株以上を生産

  2014年3月現在、日本では85の人工光型植物工場が毎日1000株以
 上のレタスなどを生産・販売している(1000株以下の工場も含めると16
 5工場)。これは2010年の約3倍におよぶ数であり、さらに2014年中
 には毎日1000株以上を生産・販売することが可能な10カ所の工場が新た
 に建設されることも決まっている。
  経営収支的には、2013年3月時点で黒字の工場が全体の20%、収支が
 均衡した工場が60%、赤字の工場が20%と、まだまだ産業としては未成熟
 ではあるものの、2014年度は黒字経営の工場が増大すると予測されている。
  さらに、2015年から2025年までの10年間で市場規模は3倍になる
 と予測されており、工場の設置場所も病院ホテル、駐車場など、街中のさまざ
 まなところへと広がりをみせていくと考えられる。
 
                    日本と世界の工場事情

  大型の人工光型植物工場が増加している一方で、レストランやショッピング
 センターなど身近な場所にも床面積10~50平方メートル程度の小型の人工
 光型植物工場が併設されはじめている。
  さらに、家庭用、趣味用、展示用、教育用といった用途に応じた床面積1平
 方メートル以下のデザイン性に優れた人工光型植物工場の販売やサービスもは
 じまるなど、植物工場は着実に私たちの生活空間のなかに入り込みつつある。

  このような動きは、日本のみならず台湾や中国をはじめとした東南アジアの
 各地でもみられる。またオランダ、アメリカ、中近東、ロシアなどにおいても
 人工光型植物工場ビジネスヘの参入や導入の動きがみられるようになってきた
 人工光型植物工場に関する国際集会や国内集会が世界各地で開催されており、
 その社会的関心はいまや世界中に広がっている。

                     世界を牽引する日本の技術

  そのようななかでも、日本の人工光型植物工場に関する研究レベル、普及数
 および社会的認知度は、世界のトップクラスである。ロシア、モンゴル、バー
 レーン、クウェートなどで。メイド・イン・ジャパン‘の人工光型植物工場が
 稼働(または案件が進行)するなど、日本の技術は世界各国に影響をおよぼし
 ている。

  全国にチェーン店を展開する大戸屋は、2009年の4月より、山梨県で植物
 工場を試験的に運営している。海外、とくに東南アジアの店舗において、お客様
 に提供する野菜の品質や安全性をさらに高めたいということがきっかけとなり、
 植物工場試験の取り組みをはしめた。

  植物工場での野菜栽培は、コスト面で課題がある。しかし、お客様へ安全・安
 心な野菜を届けるための有用な技術に発展するという視点を軸に活動している。
 現在、生産量の関係で、植物工場産野菜が取り扱われているのは山梨県の一部の
 店舗と大戸屋ダイニングのみだが、植物工場産野菜のみを使用したサラダメニュ
 ーを開発するなど、店舗で提供する際に必要となる品質や栽培品目などについて、
 有益な情報を集めている。

  そして、それらの成果をもとに、さらなる改善を加えながら、植物工場産野菜
 の出荷を増していく予定だ。なお、2011年8月からシンガポールの店舗にお
 いては、パナソニック社が手がける水耕の野菜工場からの野菜を使ったメニュー
 を展開しはじめている。


 第3章 太陽光型植物工場とは

  「太陽光型」の特徴と対象植物
   
                                太陽光型植物工場とは? 

    太陽光型植物工場と人工光型植物工場の基本的な違いは、人工光型が「断熱量
 によって閉鎖された密閉度の高い空間のなかで人工光のみを使って植物を生産す
 る」のに対し、太陽光型は「透明な量(膜)で覆われた施設のなかで太陽光を利
 用して植物を生産する」という点にある。

  ただ、「ならば、私たちが普段見かけるガラス温室やプラスチックハウスはす
 べて太陽光型植物工場なのか?」というと、そうではない。太陽光型植物工場と
 そのほかの園芸施設の違いは、備えている環境制御機器にある。その違いを次頁
 に示した。太陽光を利用する植物生産施設には、①簡易被覆施設、②環境制御上
 耕施設、③環境制御養液栽培施設、の3つがあり、①は表の基本機器のみを備え
 ている。②は、基本機器+中級機器を備えている。③は基本機器+中級機器+上
 級機器をすべて備えている。そして、③のなかでも高度で大型のものを、太陽光
 型植物工場と呼ぶ。なお、補光ランプ装置を備えたものは、人工光併用型植物工
 場と呼ばれる。

                             太陽光型の特徴

  太陽光型は、園芸施設ほどではないが外界気象(とくに日射量)の影響を受け
 るという点で人工光型とは大きく異なる。
  さらに、太陽光を利用する植物生産施設のなかでは「トップクラス」の環境制
 御システムを備えているものの、人工光型のそれと比較すると室内環境の安定性
 に欠ける。
  また、太陽光型には農業的な側面がかなりある。これも、人工光型とは異なる
 点だ。人工光型は、植物(農作物)を計画的・安定的に生産することを主目的と
 する。一方、太陽光型には、植物(農作物)の生産に加え、生物多様性、景観、
 農業社会の維持など多様な役割がある。

                          太陽光型に適した植物

  太陽光型での生産に適しているのは、「高度な環境制御により品質と収量を大
 幅に向上できる可能性が高く、また強い光を好み、栽培期間が数か月~1年にお
 よぶ植物」だ。
  具体的にはトマト、ピーマン、キュウリなどの果菜類である。コンテナ利用で
 小型に仕上げた、ブルーベリー、ビワマンゴー、ブドウなどの果樹も対象になり
 得る。機能性成分を多く含む野菜・ハーブ類、大型のコチョウランなどの高級花
 き、さらには薬用デンドロビウム、オタネニンジン、サフラン、センブリなどの
 基本本性または1年生草本の薬用植物も今後は対象になり得る。

                                              この項つづく

 

 ● 今夜の一品

We make brushing teeth fun  

歯みがきが楽しい!スマート歯ブラシ
 

 

 

今夜のダメ出しⅠ

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● 今夜のダメ出しⅠ こんな軍事基地?はいらない。

Chaina says airstrip on Spratly islands is for ‘supply and maintenance only' , but it is no credibility.

 

【アジアインフラ投資銀行への思惑】

同国主導で年内に設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に57カ国の参加
が決まり、創設メンバーが確定したと中国が発表。3月末の期限前に駆け込み申請
が相次いだ結果、日本と米国が最大出資国であるアジア開発銀行(ADB)の67
カ国・地域に迫る規模で発足することになったことで、さすがの日米政府も困惑を
隠せないようだ。結論的には、参加しても参加しなくてもどちらでも良いことで、
粛々と、新興国の経済発展を「贈与経済」的に下支えすればよいことだと既にコメ
ント済み(「独立自尊再考 アジアインフラ投資銀行(AIIB)問題」『進撃の
ヘーリオスⅠ』2015.04.02)だが、フィリピン軍が、20日朝、南シナ海・スプラト
リー(南沙)諸島での中国による埋め立ての様子を「緊張を高め、環境を破壊して
いる」と批判し撮影した20枚以上の写真や地図を公開しているように、軍事力を背
景に領土拡張する中国は、いまや自己矛盾の例の「社会帝国主義」的行動を公然化
させている以上、中国の覇権・専横へ警戒を怠らないのは至極当然なことだ。

 

● 財政再建秩序考

「財政再建には順序がある 増税は最後の手段」(『高橋洋一の俗論を撃つ!』2015.
04.16 ダイヤモンド・オンライン)で、15日、参議院国民生活のためのデフレ脱
却及び財政再建に関する調査会での参考人発言を再度まとめ掲載していたので斜め
読みし、最後の設問に最上段の「デフレ脱却・名目経済成長」を選択せず、6段目
の「実質経済成長(潜在成長率の底上げ)」の中長期的な課題を重視し投票を済ま
せる。なお、今回の時評のエッセンスを下表にまとめたが、(1)「財政は経済の
後からついてくる」(2) 財政再建“5つの方法”とその順序、(3)日本の財
政状況は深刻ではない 再建には名目成長率が重要、(4)増収のための不公平是
正 税制をいじるより徴収漏れをなくせ、(5)消費増税が日本経済をぶち壊した
そもそも社会保障目的税化が間違い、(6)消費税は地方税とすべき地方分権との
関係で考えよ。とに要約している。

 

そこで、消費税制と社会保障と地方分権ということを考えさせられた。つまり、高
橋は、この3つの連関をつぎのように規定する。


 こう考えると、消費税は、国の社会保障目的税ではなく、地方税とすべきとい
 う結論になる。消費税は一般財源だが、国が取るか地方が取るかという問題に
 なる。地方分権が進んだ国では、国でなく地方の税源と見なせることも多い。
 これは、国と地方の税金について、国は応能税(各人の能力に応じて払う税)、
 地方は応益税(各人の便益に応じて払う税)という税理論にも合致する。とい
 うわけで、日本を含めて給付と負担の関係が明確な社会保険方式で運営されて
 いる国が多い。もっとも保険料を払えない低所得者に対しては、税が投入され
 ている。ただし、日本のように社会保険方式と言いながら、税金が半分近く投
 入されている国はあまり聞かない。

 消費税の社会保障目的税化は、社会保障を保険方式で運営するという世界の流
 れにも逆行するものだ(ドイツのように消費税引き上げの増収分の一部を、特
 定用途に使った国はある)。

 消費税の社会保障目的税化が間違いというのは、1990年代までは大蔵省の主張
 でもあった。しかし、1999年の自自公連立時に、財務省が当時の小沢一郎自由
 党党首に話を持ちかけて、消費税を社会保障に使うと予算総則に書いた。なお、
 平成12年度の税制改正に関する答申(政府税制調査会)の中で、「諸外国にお
 いても消費税等を目的税としている例は見当たらない」との記述がある。

 また、地方分権の進んだ国では、オーストラリアのように国のみが消費税を課
 税し地方に税収を分与する方式、ドイツ、オーストリアのように国と地方が消
 費税を共同税として課税し、税収を国と地方で配分する方式、カナダのように
 国が消費税を課税し、その上に地方が課税する方式、アメリカのように国は消
 費税を課税せず、地方が消費税を課税する方式がある。これらを見ると、世界
 でも、分権度が高い国ほど、国としての消費税のウエイトが低い。


          高橋洋一「財政再建には順序がある 増税は最後の手段」


つまり、景気高揚感のあった消費税導入当時の理由が、産業構造の変化(3次産業
の肥大下)では、「応益税」で「広く・薄く」徴収する消費税にシフトすべきだと
故吉本隆明らのインテリ層が主張しそれに追随したというわけだが、デフレ下では
寧ろ、「応能税」にシフトさせなければならないということを学習する。さらに、
所得税の累進制とともに、個人だけでなく、法人への「逆格差法人税制」(「地域
繁栄型法人税制」2014.12.19)の導入などを構想したわけであるが、彼の論旨を踏
まえることで、「税制と景気浮揚論」をより深めることができた。これは有り難い
ことだ。

  

【新弥生時代 植物工場論 Ⅷ】 


 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件
 を施設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場
 所にとらわれず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集
 めています。その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投
 資・生産コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や
 図解を用いて様々な角度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技
 術革新などによってもたらされるであろう将来像についても、アグリビジネス
 的な視点や現状もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書
 となっています。

         古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」 

   【目次】

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか

 



 

 世界の「太陽光型」事情

                 太陽光型はオランダが先進国

  1960年代初頭にオーストリアのルスナー社が立体式植物工場の稼働を開
 始して以降、太陽光型植物工場は規模・技術ともに発展を続け、現在では、世
 界各地に普及している。
  なかでもオランダは、1970年代から施設園芸の大型化・自動化・情報化
 をすすめ、いまでは国内に約1万ヘクタールの太陽光型植物工場を有する世界
 屈指の「太陽光型植物工場大国」となっている。アメリカ、カナダ、オースト
 ラリア、中近東東南アジアに設置されている太陽光型植物工場は、オランダか
 らの輸入またはオランダ式のものがほとんどである。

  ちなみに、「植物工場」に対応する英語としては、太陽光型、人工光型を問
 わず"Plant Factorys"という和製英語が浸透しつつある。ところが オランダでは
 商業温室のほとんどすべてが太陽光型植物工場であり、「植物工場=いわゆる
 普通 日本はこのままでいい?の温室」という感覚であるためか"Plant Factory"
 という言葉を人工光型だけに使う。オランダが「太陽光型植物工場大国」たる
 所以といえるだろう。

                              世界の動向と日本の現状

  オランダ以外の国でも、太陽光型植物工場の導入・拡大の動きはすすんでい
 る。日本の隣国の韓国では、農村振興庁が日本などへの果菜類の輸出を視野に
 入れた床面積150ヘクタール規模の太陽光型植物工場事業計画を検討してい
 る。同じく隣国の中国でも、北京市の郊外に合計1000ヘクタールを超える
 大規模連棟温室および日光温室が設置され、イチゴを主とする野菜類などが生
 産されている。さらに、ベトナムやマレーシアでも、台湾、フランス、タイな
 どの企業が出資して設置した床面積10~20ヘクタール規模のオランダ式または
 フランス式の太陽光型植物工場が稼働している。

  日本はというと、太陽光型植物工場を含む園芸施設の床面積は過去10年ほ
 とんど変化がない。また、太陽光型植物工場と呼び得る施設の合計床面積も数
 百ヘクタール程度と、オランダに遠くおよばず、勢いでも近隣諸国に遅れをと
 っている。

                    日本はこのままでいい?

  中国、韓国、台湾、ベトナムやマレーシアの施設園芸地域では、日本に留学
 して園芸を学んだ人々が多く活躍している。これは大変喜ばしいことであるが、
 一方で"Plant Factorys"という言葉の生みの親である日本は、このま までよいの
 か。今後どうしていくべきなのかを十分に考え、実行していく必要がある(巻
 末の155頁参照)。 

 

 
  太陽光利用の「問題点」①

                                 植物には「太陽光」が最適なのか

  太陽光を利用する露地や温室、太陽光型植物工場などの植物生産システムは
 きわめて有用であり、人工光型植物工場が台頭しようと、今後も植物 生産の
 多くは太陽光が利用される。
  ただ、それは生物多様性や景観、農村社会の維持など農作物生産以外にも重
 要な役割があるからであり、太陽光下での生産がすべての植物にとってベスト
 だからではない。

  私たち人間は「養殖よりも天然≒添加物よりも無添加」と、体内に取り入れ
 るものにおいてはとくに「自然であること」にありがたみを感じる傾向がある。
 そのイメージの延長で 植物も「人工光よりも太陽光」と考える人は少なくな
 い。ただ、植物が必要としているのは光源を問わず「成長するのに最適な光エ
 ネルギー」であり、炎天下で熱中症になる人がいるように、植物によっては太
 陽光が有害になることもある。

                 太陽光利用には問題点も多い

  植物の成長に必須な光エネルギーとして、太陽光には具体的に以下のような
 問題が存在する。

 ①天候や時期、時刻によって日射(光)の強さと方向・角度が異なる(次頁)。
 ②季節や天候(曇雨天)による日射の強さの変動に伴い、植物の成長が変動す
 る。
 ③弱光を好む植物(菜もの野菜や苗など)にとって、夏の晴天昼間の光は強す
 ぎる。
 ④逆に、朝夕や曇雨天時の日射は、弱光を好む植物にとっても弱すぎる。
 ⑤日射エネルギーの約50%は、光合成に利用されない近赤外放射エネルギーと
 赤外放射エネルギーである(日射が強いときは、それらの放射の加熱作用の影
 響で室内気温と菜温か高くなりやすい)

                   「太陽光利用=無料」ではない

  前述の問題による植物生産速度の遅れを防ぐために、太陽光型植物工場には
 遮光カーテンや保温カーテン、暖房設備、換気装置、かん水装置、防虫網の設
 置および稼働が必要となる。ちなみに、これらの設備とその管理作業は人工光
 型植物工場においては不要である。
  つまり「無料」の太陽光を利用するには、相当の設備投資と運転費用(おも
 に人件費と冬季の暖房費)が必要なのだ。
  また、病害虫防除に関する作業とコストおよび病害虫の被害による収量・品
 質低下も無視できない。

                   室内が過高温になりやすい

  日本および中緯度・低緯度に位置するアジア、中近東、北米南部、ヨーロッ
 パ南部の平野郎における夏は、比較的高温である。さらに、正午前後の日射も
 比較的強い場合が多く(地域および時期によっては相対湿度も高い)、太陽光
 型植物工場においては室内の過高温が問題となるが、このような気候条件下で
 は昼間のヒートポンプ(エアコン)冷房は得策ではない。そのため、晴天の昼
 間には換気窓を全開または換気扇をフル運転する(場合によっては遮光や細霧
 発生による気化冷房もする)ことで室内気温を低下させる。
  夏場の高温は、植物はもちろん室内作業者にも不適であり、また秋作のため
 の育苗にも悪影響をおよぽすため、収量や晶  換気窓全開でもやれる二酸化
 炭素施用法は質の向上、さらに快適労働のためにもそのょうな措置が必要であ
 る。しかし一方で、この措置が、高収量・高品質を阻む別の問題の「引き金」
 となることも知っておく必要がある。              

                 二酸化炭素施用がやりにくい


   植物の光合成の律速要因のひとつに二酸化炭素濃度がある。大気中の二酸化が
  抑制される。逆に、これを700~1000ppmに高めるとほとんどの植物の光
  合成速度が約1・5倍になる。ゆえに太陽光型植物工場においても、そのぐ
 らいの二酸化炭素濃度を維持するのが望ましい。
  しかし、その障壁となるのが、前述の「室内温度を低下させるための換気」
 である。
  二酸化炭素は、室内外の二酸化炭素度差にほぽ比例して、濃度の高いほうか
 ら低いほうへと流出する。すなわち、大気中の二酸化炭素濃度が約400ppm
  あるのに対し、換気窓を開けたまま室内の二酸化炭素濃度<を700~1000ppmに
  維持しようとした場合、施用した二酸化炭素のほとんど全部が大気中に流出し
 てしまう。これは、二酸化炭素施用コストが高くなり、二酸化炭素を多量に放
 出することにもなる。

              換気窓全開でもやれる二酸化炭素施用法
               
  以上の理由により、換気窓を終日全開している日本の夏季における太陽光型
 園芸施設では、二酸化炭素施用がほとんど行われていない。さらに冬季でも、
 関東以西では最も二酸化炭素施用に効果的な晴天時の9~15時(冬季では光
 強度が増すほど二酸化炭素濃度を高くすることによる光合成促進効果が高い)
 に、室内の過高温防止のために換気窓を開けざるを得ない。
  しかし、換気が必要な太陽光型でも、効果的に凪を施用し、室内温度を下げ
 る方法がある(58頁)。

 

植物工場の生産実績が顕著になりつつある。これも関係者の努力のたまものであ
る。近くでは、電子部品などめっき加工の清川メッキ工業)が、自社の成分分析
技術と品質管理ノウハウを駆使してハーブを生産する植物工場を本社敷地内に設
け、本格稼働させた。一日当たり600株の生産能力があり、大手の青果関連会
社や洋菓子メーカー、外食チェーンに販売。今後は自社の専用サイトなどを通じ
て、乾燥品やバジル入りアイスなど一般消費者向けの販売にも力を入れていくと
いう(下/左写真)。また、岐阜県の北部にある奥飛騨温泉郷の「奥飛騨ファーム」
でバナナやコーヒーを生産する植物工場が3月中旬から稼働。温泉熱とLED照明を
組み合わせて、室内の温度を一定に保ちながら光合成を促進する仕組みだ。温泉
旅館の和室を改造した植物工場では、栽培に必要な電気代が月に1万3千円で済
むという(下/右写真)。

 

 

これを看ている、着実に新弥生時代の農産物生産システムはこの地に定着しつつ
あるようだ。これは実に面白い。

                                             この項つづく

   

 




 

還らざる『転位のための十篇』

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   苛酷がきざみこまれた路のうへに

   九月の病んだ太陽がうつる

   蟻のやうにちひさなぼくたちの嫌悪が

   あなぐらのそこに這ひこんでゆく

   黄昏れのはうへ むすうのあなぐらのはうへ

   ぼくたちの危惧とぼくたちの破局のはうヘ

   太陽は落ちてゆくように視える



   はじめにぼくたちの路上が 羞耻が ちひさな愛が

   つぎにぼくたちの意志が

   かげになる

   ぽくたちのさてつした魂は役割ををへる

   あの悔恨に肉づけすることにつかひ果したこころを

   あなぐらのそこに埋没させようとする

   しづかに睡るのかあきらかに死ぬのか知らない

   ぼくたちのつけくはへた風景は破壊されるのかどうか知らない

   ぼくたちの根拠はしだいに荒廃し

   ぼくたちの愛と非議と抗争とはみしらぬ星のしたに繋がれる



   おう ぼくたちの牢獄

   風が温度と気圧とをかヘ

   戦火と乾いた夜が風景とその視線をかへ

   ぼくたちの不幸な感情が女たちのこころをかへ

   夕べごとに板のうへで晩餐がひらかれる

   いっせいに寂しいぼくたちの地球よ

   ぼくたちはいんめっされた証拠のために

   盗賊と殺人者の罪状を負はなければならない

   いんめっされた証拠を書きあらためるため

   ぼくたちの不在をひつようとするものがゐる

   そこに奪はれたものと奪はれないものとを

   空しくわけようとするぼくたちの眼が繋がれてゐる
   


   ぼくたちは九月の地球をを愛するか

   おう ぼくたちけそれを愛する

   ぼくたちは砲火と貨車(ワゴン)のうへの装甲車をこのむか

   おう ぼくたちはそれをこのまない

   ぼくたちは記憶と屈辱とになれることができるか

   おう ぼくたちはそれになれることができない

   ゆくところのないぼくたちの信号よ

   とまどふひとびとの優しいこころよ

   ぼくたちの路上はいまも見なれてゐてしかも未知だ

   どんな可能もぼくたちの視てゐる風景のほかからやってこない

   どんな可能もぼくたちの生を絶ちきることなしにおとづれることはない

   ぼくたちはそこで刺し殺さねばならぬ

   架空のうたと架空の謀議と

   たしかなぼくたちの破局とを

   ぼくたちはそこで嗤はねばならぬ

   フイナンツ※の焦慮とその行方とを


   おう さぴしいぼくたちの法廷

   九月の太陽は無言だ

   まるでぼくたちの無言のやうに

   すべての小鳥たち すべての空のいろも無言だ

   ぼくたちはぼくたちの病理を言葉にかへない

   ぽくたちはぼくたちの病理を審判にゆだねる

   なぜ 美しいものと醜いものとがわけられないか

   なぜ 未来の条件のまへに現在を捨てきれないか

   なぜ 愛憎をコムプレツクスによつておしつぶすか

   なぜ 本能に荒涼たるくびきをかけるか

   おう その威厳と法服とを歴史のたどられたプロセスからかりるだらう

   ぼくたちの法定者よ

   ぼくたちを裁くために嗤ふべき立法によるな

   ぼくたちを裁くためにけちくさい倫理をもちひるな

   ぼくたちはじぶんの無力に伝播性がなく

   いつもひとりで窓をこじあけ

   九月の空と太陽をみようとするのを知つてゐる

   習慣以上のとがつた仕種で

   世界のあらゆる異質の思想をののしらうとかまへてゐる

   ぼくたちの苛酷な夢のはやさを知つてゐる

   ぼくたちのこころはうけいれられないとき

   小鳥のやうなはやさでとび去り

   そのときぼくたちをとりまいてゐる微温を

   つき破ってしまふのを知づてゐる

   ぼくたちはすべての審判に〈否〉とこたへるかもしれない

   そうして牢獄の夜が

   どんな破局の晨にかはらうとも

   ぼくたちはそれに関しないと主張するかも知れない

   ぼくたちは支配者からびた一文もうけとらず

   もつぱら荒諒や戦火を喰べて生きてきたと主張するかもしれない



                                      「審 判」 /『「転位のための十篇」』 より
                
               (「吉本隆明全著作集1 定本詩集」 勁草書房)

 

「『転位のための十篇』」 昭和二十八年九月一日、私家版詩集として発行された。
ユリイカ版『吉本隆明詩集』、思潮社版『吉本隆明詩集』、思潮社〈現代詩文庫〉
版『吉本隆明詩集』などに収められた。
『転位』発表時の著者は、年齢にして二十代の終りにあたり、東洋インキ在職中の
技術者であったが、この詩集は当時、文学として形骸化し得る極限の表現形式を成
立させることとなった。『転位のための十篇』は、時代と個的精神史の対応から生
まれた根源的運命的な詩として、詩そのものの本質的存在として、いつまでもナイ
ーヴな若い魂に問いかけるだろう。この詩集を手にするとき、われわれは時と人と
の、還らざる歌に接するのである――と川上春雄は解題で付記しているように「真
夏の体験」(第二次世界大戦)を「九月の太陽」(敗戦後)世界認識の方法を獲得
するための思想的格闘を孤独に進めることになる。わたし(たち)が、この「戦後
70年」を振り返る時、これを献歌し、決意を新にしたいと考える。

※ ドイツ語で「金融」(Finanz)を意味する。 

 

   ● 今夜の一曲

 帰らざる日々 久石讓 (映画「紅の豚」の挿入曲)

 

  

【新弥生時代 植物工場論 Ⅸ】 

 


 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件
 を施設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場
 所にとらわれず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集
 めています。その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投
 資・生産コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や
 図解を用いて様々な角度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技
 術革新などによってもたらされるであろう将来像についても、アグリビジネス
 的な視点や現状もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書
 となっています。

         古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」 

   【目次】

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか

 



 
 効果的な二酸化炭素施用・冷房法は?


                 ゼロ濃度差二酸化炭素施用法


  太陽光型植物工場での服施用においては、換気窓が全開でも効果的に施用で
 きる方法の開発が望まれる。その「糸口」となり得るのが、「ゼロ濃度差二酸
 化炭素施用法」だ。
  これは、晴天時は窓が全開でも植物が光合成していれば室内服濃度が室外二
 酸化炭素服濃度よりも100ppm前後低くなるので、二酸化炭素を施用して室内
 濃度を室外濃度とほぽ等しくなるまで上昇させる二酸化炭素施用法である。二
 酸化炭素が換気窓から室外に漏れるのは室内濃度が室外濃度より高い場合のみ
 であり、この方法であれば施用した服のほぼすべてが植物の光合成活動により
 吸収され、換気窓が全開でも服利用効率は100%近くになる。
  変動する日射条件下でこの施用法を実現するための装置が最近市販された。
 この装置は、低くなった室内二酸化炭素を外気二酸化炭素と同じ400ppmに
 なるように自動施用するものである。

                             細霧冷房法の利点と欠点

  室内外の二酸化炭素濃度がほは等しく、かつ適温・適温の環境下では、光強
 度が高いほど光合成速度は高まる。すなわち、日射が強い夏場の昼間に気温を
 適切に制御できれば、ゼロ濃度差二酸化炭素施用法でより高い効果が得られる。
  そこで、換気や遮光だけでは室内温度が高すぎる場合には、直径が約0.01ミ
 リメートル前後の水滴の集合を室内散布する「細霧冷房法」を試みるケースが
 日本では多い。夏季の晴天時に室内で細書が蒸発すると、蒸発(気化)冷却に
 より周囲の空気の気温が、5℃以上低下する(相対湿度の変動は20~30%)。
  ただ、①細霧が十分に蒸発せず植物上に落下する、②葉が濡れることで病原
 菌類が発芽・繁殖しやすくなる、など欠点もある。これらを補うべく、現状で
 は、たとえば細霧の散布を1分間行い、その後2分間は散布を停止するなど、
 細霧の散布を間欠的に行っている。

                  新しい細霧冷房法の開発も

  間欠噴霧による絹霧冷房法による温湿度の変動と植物の濡れ・乾燥などの連
 続は、一般的には植物成長にとって好ましくない。そこで現在、開発がすすん
 でいるのが、絹霧の発生速度を噴霧圧力の連続的制御によって、この欠点を解
 決する試みだ。この細霧発生方法は、絹霧冷房だけでなく、室内の空気が乾燥
 気味の際の加湿にも応用できることが実験的に示されている(次頁)。また、
 夜間の無人時に窓を閉じて農薬散布することへの利用も試みられている。

 

 ヒートポンプの活用法①(資源面)

                              ヒートポンプの基礎知識

  ヒートポンプとは、ある場所の熱エネルギーをほかの場所に熱媒体を用いて
 運搬する装置のことで、圧縮機、蒸発機凝縮機、膨張弁、四方弁、冷媒配管な
 どからなる。圧縮機の駆動を電気エネルギーで行うものを電気ヒートポンプと
 呼ぶ。
  いまいちイメージがわきづらいかもしれないが、ヒートポンプをおもに室内
 の冷暖房に用いたものを「エアコン」と呼び、また、「冷蔵庫」や「製氷機」
 飲料の「自動販売機」などもヒートポンプの別名である。さらに最近では、洗
 直物乾燥機や浴室乾燥機、食器洗浄機など、私たちの身近なものにもヒートポ
 ンプが用いられている。 ここでは、太陽光型植物工場におけるヒートポンプ
 (エアコン)の活用法を紹介する。


                 結露水を養液原水として利用

  太陽光型植物工場において、換気窓を閉めた状態で昼間中ヒートポンプ冷房
 した場合、室内機に凝縮する結露水(作物からの蒸散水および床面からの蒸発
 水)の量は床面積1ヘクタールで1日当たり10~50トンに達する。
  この結露水の回収に加え、植物工場および関連施設の屋根面への降雨も回収
 して水耕養液原水などとして用いれば、井水を利用する必要が大幅に減少する。
 1ヘクタール当たり1000トン程度の集水タンクが水で満たされていれば、
 1カ月に必要な水をほぽまかなえる。
  ちなみに、室内機で回収された水や雨水には無機イオンがほとんどなく、養
 液の原水としては井戸水よりも好適な場合が多い。

                     昼間の余剰熱を暖房熱源に

  さらに、日本は冬季といえども、晴天時の昼間には太陽光型植物工場室内に
 余剰な熱が発生する。この余剰熱を換気で外に逃がすことなく、夜間の暖房熱
 源とする方法は実用化し得る。とくに、明け方の気温低下がはげしい夜間放射
 冷却(晴れた日の夜、太陽からの放射がなくなって地表面からの長波放射量が
 大気からの長波放射量を大きく上回ることで、地表面が冷却していくこと)が
 起きるときは、その前日の昼間は晴天の場合が多いため、昼間にその余剰熱を
 たくわえやすい。
  ただ、蓄熱を要する日数が多くなるほど必要な蓄熱槽容量が大きくなるため
 長期蓄熱の実用化には慎重な検討が必要である。

 

  ヒートポンプの活用法②(コスト面)

               多目的利用で初期コストを合理化

  電気ヒートポンプ(エアコン)普及における現時点での欠点のひとつに、ヒ
 ートポンプを暖房機としてだけ使用していることによる初期コストの高さがあ
 る。ヒートポンプは、太陽光型でも、暖房だけでなく冷房・除湿にも使いたい。
  通年運転で冷房・除湿に使用しても、年間の基本料金は増えず電力消費量に
 比例する料金が増えるだけである。
  一般に、ヒートポンプで夏季夜間の室温を外気温より数℃低く維持すること
 で、果菜類や葉菜類の収量と品質が数10%向上し、また除湿することで多湿
 による病害が抑制される。
  ヒートポンプの多目的利用により、暖房機経費の節減だけでなく、増収や品
 質向上、病害予防に役立てば、その初期コストの償却年数は、ヒートポンプと
 暖房機を併用して暖房だけに利用する場合の償却年数に比較して半減する。
 また、外気温か低いときは、室温設定値を2~3℃低くする、保温カーテンの
 断熱性を増す、室内気温分布のムラを改善するなどで、初期コストと運転コス
 トの両方を削減できる。

                   家庭用エアコンを利用する利点

  小型の家庭用エアコンは性能が年々向上し、成績係数(消費エネルギー効率
 ・COP)は業務用に比較して約1・5倍高い。この特長を活かし、複数の家
 庭用エアコンを業務用エアコンと組み合わせて太陽光型植物工場で利用する研
 究が行われている。その利点は、上記のほかに次の6つがある。

 ①今後10年間は、COPと価格性能比の着実な向上が期待できる。
 ②多数の小型ヒートポンプをネットワーク化して制御することで、室内空気の
 ムラをなくす制御性能を高められる。
 ③設置時の作業コストや保守コストが業務用よりもかなり安く、専門家による
 保守がほとんど不要。
 ④故障や取り替えが近所の家電店に依頼できる。
 ⑤「家電リサイクル法」により廃棄システムが確立している。
 ⑥秋まで売れ残った家庭用エアコンが、大幅値引き価格で購入可能(大量購入
 の値引き率も高い)。

                   エアコンの必要設置数は

  暖房能力3・2キロワットの小型ヒートポンプ(家庭用エアコン)で床面積
 1000平方メートル(300坪)の太陽光型植物工場を暖房するには40台
 程度必要になる。この程度であれば、大部分を四周の側壁に設置することで解
 決できる。
  それ以上の場合、2段に積むなどの工夫が必要だ。

 

 

   大分西部に位置し、くじゅう連山を望む久住高原。そのなかで農業を営む久
 住高原野菜工房は、日本ではじめてスウェデポニックシステムを導入した植物
 工場だ。スウェデポニックシステムはスウェーデンで開発されたシステムで、
 太陽光と人工光を併用し、生育させるラインの幅が作物の成長に伴って広がっ
 ていくのが特徴。
  導入した当時栽培していたのは、レタス、ホウレンソウ、パセリの3種類で
 あったが、露地野菜との競合などにより経営的に苦しくなり、おもな生産物を
 ハープに切り替えた。
  久住高原野菜工房のハープは、ポットごと食べごろのものを出荷している。
  また、収穫したハープを使ったドレッシングやソースなどの加工品も販売し
 ており、大分県内の観光地のほか、ホームページから購入することもできる。

 

ここで、スウェデポニックシステムが掲載されたので、新しいビジネス・モデルを
書いておこう。勿論、これは「人工光型植物育種システム」の派生ビジネスモデル
だが、その特徴は、(1)栽培種を選択しユニットサイズ及び仕様を決定、(2)
顧客向け植物栽培ユニットをリース、(3)選択種のポットを顧客に送り、(4)
ネットで栽培状態の遠隔診断をサービスし、(5)継続/中止を確認の上、不用と
なったポット(栽培土壌+植物+ボッド)を回収。(6)継続の場合は新しいポッ
ドを配送するというもの。尚、嵩張るものは、予め決めておいた規格サイズ(スペ
ース)以下ならポット宅配対象として、規格外のサイズ(スペース)は工場側で栽
培し、ネットで顧客は遠隔操作(ドローンな飛行体での確認も可)で確認でき、成
果物を配送する(例えば、大形の野菜・ハーブ、大形フルーツ、胡椒・コ-ヒーな
どの果樹)。尚、工場見学はネット予約で自由参観(収穫体験も可)というもの。
ユニットはメーカ回収するので、廃棄負荷は大幅軽減される上に、登録アイテム以
外の育種希望者には共同開発にもフリー参画可能である。     

                                               この項つづく

 

   

 

4・22 アースデイのいま

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● 光の国 明日香を電気自動車で散策

ソフトバンクモバイルと明日香村地域振興公社は、奈良県飛鳥地方で超小型EVのレン
タルサービスを開始した。充電には県内で太陽光発電により発電された電力を使用し
ており、二酸化炭素フリーなサービスで地域の観光産業の活性化を狙うという。飛鳥
時代の宮殿や史跡が多く、代表的な観光地である奈良県の飛鳥地方。明日香村地域振
興公社とソフトバンクモバイルが、4月17日から超小型モビリティのレンタルサー
ビス事業「MICHIMO(ミチモ)」を開始。超小型EVの充電は全て奈良県内の太陽光
発電による電力を使用する。超小型EVと再生可能エネルギーを組み合わせた二酸化炭
素フリーなサービスで、飛鳥地方における観光産業の活性化を推進していくという。

 

 


● アップルの再生可能エネルギー利用率が87%

2015年4月22日の「アースデイ」に当たり、アップルは環境問題への取り組みをまと
めた。同社は事業運営において再生可能エネルギーの利用率1百%を目指して投資を進
めているが、現在は87%まで高まっていることを明らかにした。



それによると、データセンターなどへの消費電力の高まりから、米国のハイテク・IT
企業では再生可能エネルギーの利用拡大が加速しているが、アップルも自社の全事業
所、データセンター、アップルストアなど全自社施設での利用電力を全て再生可能エ
ネルギーとする目標を立て投資を進めているが、そのために世界各地のメガソーラー
や風力発電所、マイクロ水力発電所(小水力発電所)、地熱発電所、燃料電池ファー
ムなどに投資を加速。これらの取り組みにより、2010年には16%だった再生可能エ
ネルギーの利用比率を2014年には87%まで高められたという。

 

● 名古屋グランパスのスタジアムを発光ダイオード照明で明るさ5割向上

Jリーグチーム名古屋グランパスの本拠地の「パロマ瑞穂スタジアム」の照明塔がLEDに。パナソニック
エコソリューションズ製のLED投光器モジュールを採用、ピッチの明るさは従来比50%向上し、さらに
約5%の消費電力の削減に成功したという。

それによると、照明の前面パネルには衝撃に強く、万が一の破損時にも飛散しにくいポリカーボネイトを採
用している。瞬時点灯が可能になり、スタジアムの運用面での利便性が高まるメリットもあり、の熱を効率
良く放熱させる設計で光束維持率885%実現、設置からLEDの寿命末期まで明るさが維持できる。LE
Dは指向性が強く、一般的に明るい場所と暗い場所の差が大きくピッチ上の明るさにむらが出やすいが、多
様な明るさと配光のバリエーションを備えることでこの課題をクリアしているとのこと。



● アトピー性皮膚炎が異常細菌巣で発症

 

※ Dysbiosis and Staphyloccus aureus Colonization Drives Inflammation in Atopic Dermatitis
     DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.immuni.2015.03.014

慶應義塾大学らの研究グループが、アトピー性皮膚炎における皮膚炎が黄色ブドウ球
菌などの異常細菌巣によって引き起こされることを、マウスを用いて解明。アトピー
性皮膚炎は小児から成人によく見られる疾患で、気管支喘息や食物アレルギーに発展
し得ることから、一般的にはアレルギー性の疾患であると理解されきたが、皮膚局所
の炎症が起こる原因は現在まで解明されてこなかった。一方、アトピー性皮膚炎患者
の皮膚では黄色ブドウ球菌の存在について古くから知られていたが、どのようにアト
ピー性皮膚炎の病態に関わるのか不明だった。

この研究で、抗生物質を投与して細菌が増えないようにしたところ、マウスはアトピ
ー性皮膚炎を発症しなくなり、逆に抗生物質の投与を止めると2週間ほどでアトピー
性皮膚炎を発症したという。研究グループでは、アトピー性皮膚炎は乾燥などの環境
や体質をきっかけに皮膚の表面でこれらの細菌が異常に増殖することで起きるものと
考えている(詳細は上図をクリック)が、今回この研究グループが、アトピー性皮膚
炎のマウスでの皮膚炎は黄色ブドウ球菌を含む異常細菌巣に起因していることを解明
したことで、現在ステロイド剤で炎症抑制に頼っているアトピー性皮膚炎の治療法を
大きく変える可能性があり、異常細菌巣を正常化させ、皮膚炎症の沈静化の新しい治
療の開発を促すと期待している。そうか、これでステロイド多用問題を解決できると
いうことか?今後の研究の結果が楽しみだ。

  

 

 

  

【新弥生時代 植物工場論 Ⅹ】 


 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を
  施設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所に
 とらわれず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めてい
 ます。その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産
 コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や図解を用い
 て様々な角度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技術革新などに
 よってもたらされるであろう将来像についても、アグリビジネス的な視点や現状
 もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書となっています。

           古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」 

    【目次】

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか

 植物の基本生理と必須投入資源

                  植物生理の基本は「光合成」


  植物工場の運営を順調にすすめるためには、植物生理の基本を知っておく必要
 がある。太陽光型から人工光型へ、半閉鎖型から完全閉鎖型へ、自然の環境から
 隔離される度合いが強くなるほど、人の手による栽培環境制御の重要性は高まる。
 しかし、そこに育つ植物の基本的な生理は変わることがなく、植物生理と環境の
 関係について、より深い理解が求められる。

  次頁に、植物の基本的生理作用を複式図で示した。植物生理の基本中の基本は、
 「光合成」である。植物は、光合成によつて自分で栄養となる炭水化物(有機物
 )をつくり出せる「光独立栄養生物」であり、人間を含む動物は、それを利用し
 ないと生きていけない「従属栄養生物」である。植物の基本的生理作用には、光
 合成のほかに、呼吸、蒸散、形態形成(光に反応して、種子発芽、茎の節間伸長、
 花芽形成などの質的変化を起こす作用)、転流、養水分吸収がある。

                  「植物生産システム」と必須資源

  農業とは、本来どういうシステムなのか。どんな形の農業にも共通する「植物
 生産システム」の基本をまとめると次のようになる(次頁)。
 「光、ニ酸化炭素、水および無機肥料(養分)という資源を投入(利用)して、
 適切な温度の範囲の下で、目的に沿った収獲物を槙物体の一部または全体として
 得ること。付随的に酸素、蒸散水(水蒸気)、および植物残さを得る。この植物
 残さは資源にも廃棄物にもなり得る」。
  どんな農業にも「必須役人(利用)資源」となるのが「光、二酸化炭素、水、
 無機養分」である。有機質肥料も使われるが、最終的に作物に吸われるのは、微
 生物に分解された無機養分なので、必須なのは無機養分ということになる。

                    課題は投入資源の利用効率向上

   どんな農業でも、生産の課題は、投入資源の利用効率を高めることにある。
 つまり、投入資源量当たりの収穫量(生産物価値)を大きくすることである。収
 穫時の廃棄量が少なく(出荷収量が多くなる)、植物残さが少ないことも、投入
 資源の利用効率を高めることにつながる。
  とくに、閉鎖型の人工光型植物工場の場合、光は電気子エネルギーによる人工
 照明に頼っているため、光合成速度を高く維持して、光エネルギーー利用効率を
 高めることが最大の課題となる。

 

  光合成と呼吸作用

                      光合成とともに呼吸も生命活動に必要

  光合成とは、光のエネルギーを使って、空気中の二酸化炭素と根から吸収した
 水で、「炭水化物(糖)=炭素Cと水素Hの化合物」をつくり出す作用をいう。
 この光合成作用とともに、植物は、あらゆる生物に共通する「呼吸」も行ってい
 る。呼吸は、体内に酸素を取り込んで「炭水化物」などを分解し、体を維持・成
 長していくのに必要な「生命活動エネルギー」を取り出す生理作用である。光合
 成には光が必要だが、呼吸は光を必要としない。植物は、生きている限り、昼も
 夜も呼吸している。この呼吸は昼間に行っても「暗呼吸」と呼ばれる。ほかに、
 光合成時にだけ行われる「光呼吸」があるが、通常、呼吸といったときは暗呼吸
 だけを指す。 
  光合成と呼吸の関係は、炭水化物の合成(光合成)と分解(酸素呼吸作用)と
 いう、相反する生理作用とみることができる。

                               植物体内の有機物合成の基礎に

  光合成でつくられた炭水化物は、植物体内のいろいろな有機物質の材料になっ
 ている(次頁)。植物体を構成する細胞の細胞壁は、セルロースやリグニンでで
 きており、いずれも光合成産物の炭水化物が材料になっている(健康な食生活に
 必要な食物繊維の供給源)。
  また、炭水化物と、根から吸収された窒素からアミノ酸が合成され、細胞原形
 質の主要成分であるタンパク質がつくられる。植物の貯蔵養分であるデンプンと
 脂肪も、炭水化物が材料になっている。そして、これらの物質の合成には、呼吸
 作用で得られたエネルギーが用いられる。植物体内の有機物の合成はすべて光合
 成と呼吸作用が基礎となっている。    

                                光合成量と呼吸量の相互関係

   光合成によってできた炭水化物は、一部が呼吸作用によってエネルギーとして
 消費され、残りが成長する植物体(葉・茎・根など)の構成材料になる。そのた
 め、光合成と呼吸作用には、相互関係が成り立ち、生命現象に強く影響している。
  光合成量が呼吸量より大きい場合は、生命を維持し、残った物資(炭水化物)
 によって成長がすすむ。光合成量と呼吸量が等しいときは、生命は維持できるが、
 成長はみられない。差し引きの量(物質生産量=正味光合成量)を多くすること
 が、植物の健全生育にとって最も重要な課題になる。(本書でいう「光合成量」
 「呼吸量」とは、「時間当たりの光合成量」「時間当たりの呼吸量」のことであ
 る)。

  光の強さと光合成

                         光が強いほど光合成速度は増すか

  ごく簡単にいえば、光合成は炭水化物(糖)の生産、呼吸は炭水化物の消費で
 ある。光合成による生産から、呼吸による消費を差し引いた正味の光合成量(物
 質生産量)をいかに多くするか、これが、太陽光型にも人工光型にも共通する植
 物工場の生産上の重要課題である。
  光合成の制限要因は、多くの場合、光そのものである。光は、光合成のエネル
 ギー源であり、光がないと、光合成は起こらない。光合成は、光の強さによって
 規制(制限)される。
  弱い光の下では光合成速度(二酸化炭素吸収速度)は低く、強い光の下では光
 合成速度は高くなる。しかし、光の強さが増せば増すほど光合成速度が高くなる
 かというと、そうはならない。

                   「光補償点」と「光飽和点」

  次頁上の複式図で、光の強さ(横軸)と(真の)光合成速度(縦軸)の関係を
 みてみよう。左下隅の横軸と縦軸の交点が光の強さ0(暗黒条件)で、そこから
 右へ光の強さが増していくと、それに比例して光合成速度が上がっていき、二酸
 化炭素の吸収が増えるが、まだ弱光のため、呼吸による叫の放出のほうが多くな
 っている。そして光の強さA点で二酸化炭素の吸収が放出に追いつくことになる。
 このA点の光の強さを「光補償点」という。
  さらに光の強さが増すと、光合成速度(二酸化炭素吸収速度)は比例して増加
 していくが、途中から光合成速度はアタマ打ちとなり、図のB点の光の強さ(光
 飽和点)で、光合成速度は増加しなくなる。この段階の光合成速度は、光の強さ
 よりも空気中の二酸化炭素濃度や温度が制限要因になる。

                   「陽性植物」と「陰性植物」

  先に対する光合成反応の違いとして、明るいところを好む「陽性植物」と比較
 的暗いところでも生育できる「陰性植物」があることを知っておきたい(次頁)。
 最大日射量の10%くらいの弱い先で光飽和点に達する陰性植物は、半日陰から
 日陰を好み、弱先では陽性植物より高い光合成速度を示す(野菜では、ミツバ、
 セリ、クレソン、シソ、ミョウガなど)。
  陽性植物は、直射日光(1日6時間以上)を好み、日陰では正常に育たない特
 性をもつ(トマト、ナス、ピーマン、オクラなど多くの野菜が属する)。陰性と
 陽性の中間に「半陰性植物」がある(ホウレンソウ、レタス、コマツナ、シュン
 ギク、イチゴなど)。人工先型植物工場では、陰性や半陰性の作物を選ぶことが、
 光量を節減するコツである。



                                               この項つづく

● 彦根市議会議員選挙考 

統一地方選挙も終盤戦。定員24名に対し、32名の立候補ということで激戦とい
うが、名前を連呼するだけでこれという特徴はなく只一人候補だけが原発再稼働反
対を掲げているだけだ。思えば、故田中豊一を担ぎ補欠選挙を戦ったときも1/4
の確率で、全てボランティアで戦い抜いた。宣伝カーでは名前の連呼なしで、「琵
琶湖周航の歌」を流していただけだ。そんなことを考えていたのだが、近頃の選挙
カーのスピーカーの性能が上がっているのか音量が大変大きい。つまり、作業の手
を止めさせるほど四月だというのに、五月蠅いのだ。そこで半ば冗談で(1)定数
を半分にする、(2)変わりに歳費を民間の平均給与の2倍程度に引き上げ、(3)
コミニティ集会を午前・午後・夜間帯の3回/日(3ヵ所以上の会場、会場数は決
め、立候補者は時間帯と会場は自由に決めることが出来る)、予め対話時間を決め
ておきこれを義務付け(非強制)、会場日程を組み公表する(勤務関係でこられな
い人のため)。少数精鋭主義で議員活動の質を高めることで地域の活性化を図ると
いうもの。頑張ろう!彦根。 

      

ご機嫌!『ただいま』

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 楽しみのテレビドラマができた。これは難解なサスペンス性も、ストレス性を強い
ることも、稚拙でもなく、かといってテーマの積極性――『アイ’ ム ホーム』の石
坂啓(日本漫画と原作としたテレビドラマで『ビッグコミックオリジナル』(小学館
)において、1997年7月から1998年12月まで連載され、平成11年度第3回文化庁メデ
ィア芸術祭大賞受賞し、1999年2月に上・下巻のコミック化され、2004年にNHK総合
テレビジョンにて『アイ’ム ホーム 遥かなる家路』のタイトルでテレビドラマ化さ
れ、また2015年4月期からテレビ朝日系で、『アイムホーム』のタイトルで、テレビ
ドラマ化で、作者がギリシャのホテルに滞在した際、パンフレットに「アイムホーム
と言って戻ってもらえるような部屋をめざして……」という内容が書かれていたこと
がきっかけで、最初にタイトルを決めて制作され 日本語の帰宅時の挨拶の「ただい
ま」を、単にその意味に留まらず、帰宅したときの家族との安住感、開放感は最初か
ら備わっているものではなく、家族が努力して初めて得られるもの――として創作さ
れる。そして、その「コミック版」のストーリー概要はというと、

事故で過去5年間の記憶を失った家路(木村拓也)。自分のポケットにあった10数個
のカギをもとに本当の自分と、帰るべき場所をさがす長い旅が始まった……。第1話
/思い出した家、第2話/アイジンの家、第3話/元祖(もと)・家、第4話/男友
達(しんゆう)の家、第5話/人事課・家路課長、第6話/義妹(いもうと)の家、
第7話/仮面(じぶん)の家、第8話/スバルの心情

●登場人物:家路久(半年前、事故で記憶をとぎれとぎれに失った40代の男)、ヨ
シコ(家路の現在の妻)、ヨシオ(家路の現在の家庭の子供。家路になついている)、
スバル(家路の元娘。反抗的な中学生)、カオル(家路の前妻)

●あらすじ:家路は会社から自分の家に帰ってきたつもりだったが、そこは、別れた
家族の家だった。その家で暮らしている娘のスバルに過去のことを聞くが、はっきり
思い出せない。さらに彼女からお父さんのことがキライだったと言われてしまう……
。(第1話)、家路はまたもや他人の家に上がり込んでいた。そこは、杏子という女
性の家だった。杏子は、かつての愛人だった。彼女が原因で、地方に左遷されたこと
を知った家路は……。

●本巻の特徴:離婚した元家族や、友人の家を訪ね歩き、過去の自分のことを聞く家
路。果たして記憶は戻るのか!? そして、少しも自分の家族と思えないヨシコたち
とうまくやっていけるのか!?

 

●あらすじ:第9話/赴任先の家、第10話/山の家、第11話/高木の家、第12
話/好物、第13話/スバルの部屋、第14話/桔梗、第15話/離婚届、第16話
/居場所、第17話/帰る場所

●あらすじ/家路は、事故の前の生活をたどれば何か思い出すと考え、赴任先にやっ

来た。しかし、赴任先の街には、彼のことを知る人は誰もいなかった。何も思い出せ
ず、深酒してしまった彼は、無意識のうちに事故を起こしたアパートに向かった。か

つて家路が暮らしていた部屋の、現在の住人は、昔の家路を知っていたのだが……。

●(第9話):家路は、家族3人水入らずで、別荘で過ごすことになったが、妻・ヨ
シコとの関係に悩んでいた。そんなとき、ヨシオが目の上を三針縫うケガをする。ヨ
シオの手術を待つ間、家路はヨシコから、ヨシオの出生の秘密を打ち明けられる。(
第10話) ――として展開。

 



これは目が離せない、ご機嫌な「ただいま」「お帰りなさい」の常套句のドラマだ。

 

 

   

【新弥生時代 植物工場論 11】 


 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を
  施設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所に
 とらわれず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めてい
 ます。その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産
 コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や図解を用い
 て様々な角度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技術革新などに
 よってもたらされるであろう将来像についても、アグリビジネス的な視点や現状
 もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書となっています。

           古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」 

     【目次】

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか


  植物生理の基本を知る気孔の生理機能

                  小さな「気孔」の大きな役割


  学校の理科の授業で、ツユクサなどの葉裏にある小さな気孔を顕微鏡で観察し
 た人も多いだろう。気孔は植物が生きていくうえで大変重要な役割を果たしてい
 る。
  気孔の役割のひとつは、光合成のための二酸化炭素の取り入れ口であること。
 光合成とは、光の存在下で、空気中の酸素が葉の気孔を通じて葉肉細胞に移動し、
 そこで炭水化物(糖)に変換される現象である。そのため、二酸化炭素をできる
 だけ多く植物に吸収させることは、栽培技術としてきわめて重要である。二酸
 化炭素は、濃度の高い葉外の空気から、光合成に使われ爪濃度が低くなっている
 葉内に流れこむ。開いた気孔から、光合成に必要な爪を取り込み、水蒸気も取り
 込み、光合成の副産物・酸素を放出する。これらをあわせてガス交換と呼び、気
 孔はガス交換の95%以上を担う。もうひとつ、気孔の大切な役割は、植物体の水
 を水蒸気として体外に発散させる「蒸散」の出口になることである。

 【水・養分の吸収】植物の蒸散は、水と養分(可給態栄養素)の吸い上げポンプ
 の働きをしている。根の根毛から吸収された水や養分は、圧力の差によって移動
 する。蒸散量が低下すると、水を上に引き上げる力(圧力の差)が弱くなるので、
  水分とともに養分の吸収も低下する。
   植物体のなかの水(水溶性物質を含む)は、導管、細胞間の隙間、細胞内溶液
 などでつながっていて、圧力が最も高い根の先端から、最も低い気孔に向かって
 流れる。つまり、圧力の差に応じて流れるのである。この場合の圧力(正しくは、
 水ポテンシャルと呼ぶ)は、浸透圧、細胞の膨圧、毛管圧、根圧などの合成圧力
 を意味する。


 【葉温を下げる】また、蒸散には、強い日差しで上昇した葉の温度を下げる働き
 もある。葉内の液体水が水蒸気に変わるとき、気化熱を奪うので、そのときに葉
 温が下がる。適温を超えた高温時には、呼吸による消耗と光合成の低下が起きる
 ので、蒸散による冷却作用がきわめて重要になる。

                                                    気孔が開く環境管理を

  光合成産物の増大のために、爪の吸収を高めること。水や肥料養分の吸収をよ
 くするために、蒸散を盛んにすること。このどちらも、気孔が閉じずにしっかり
 開いていることが大切になる。半閉鎖型や閉鎖型の植物工場では、気流や湿度調
 整など「気孔が開く環境管理」がいちばんの目標になる。

  

 

 

     「有効放射(光)範囲」とは


                                    放射(光)の波長範囲と分類

  光は放射の一部であり、電磁波の一種で波動性(波長)をもち、同時に光子(
 光量子ともいう)という粒子でもある。
 太陽はさまざまな波長城の放射を地球上に送り届けているが、このうち植物の成
 長に有効な波長城は、次のふたつの範囲に区分されている(次頁)。

  ①「植物の生理的有効放射」(波長範囲315~800m)
  ②「光合成有効放射」(波長範囲400~700m)
 
  このふたつのうち、①の[植物の生理的有効放射」には、「光合成有効放射」
 以外の波長城である「近案外放射」(波長315~400ナノメートルと「遠赤
 放射」(波長700~800ノアノメートル)が含まれている。
 「近紫外」と「遠赤」の放射が「生理的有効放射」の範囲に入っているのは「光
 形態形成」(種乙‐’発芽・子葉の展開・節間伸長・葉緑素合成・花芽分化など
 )と「二次代謝物質生産」(サポニン・ポリフェノールなど機能性物質の生産
 )に関与しているからだ。

                    人間の比視感度と植物の分光感度の違い

  次頁上の図の「人間の可視域」は、人間の目の網膜が感じる放射(波長範囲360
 ~780ナノメートル)で、可視光または可視放射と呼ぶ。人間の目の可視光と
 植物の有効放射の波長城はほぽ重なっている。
 ただし、植物と人間では、光の感じ方が違うことに注意したい。次頁下の図は、
 人問の目(視器官)の分光(波長)別の比視感度(明るさの相対的な感度)をあ
 らわしたもの。人間の目は、青の波長(400~500m)や赤の波長(600
 ~700m)よりも、緑の波長(500~550ナノメートル)への感度が高く
 より明るく感じる。
 
  光合成に大切な赤や青の波長城の放射を多く含み、緑の波長城をあまり含まな
 い場合は、照度(人間が目に感じる明るさ)は低くなり暗く感じる。このため照
 度(ルクス)は、植物の光合成に関する光の強さをあらわすには適切ではない。

                人工光栽培は、光の量と質が大切

  光は、光合成反応をすすめる子不ルギー源であるとともに、節間伸長や葉緑素
 合成など形態形成への信号源でもある。光をコントロールし、生育を早め収量を
 高めながら商品としての形態・品質も向上させること。とくに、太陽光に依存し
 ない人工光型植物11場の光環境制御では、光の量と質を考えた光源選びや、照射
 時間の調整などが大切になる。

 

  光の波長(色)と光合成

                     青色光と赤色光の有効性


  植物は、葉肉組織にあるクロロフィルと呼ばれる色素(葉緑素)によって光の
 エネルギーを受け取り、光合成に利用している。クロロフィル(一般の植物では
 aとbの2種類がある)は、どの波長(色)の光を吸収しているのか、波長別の
 単位厚さ当たりの吸収率をみたのが次頁上の図である。
  この図をみると、クロロフィル(aとb)には、大きくふたつの波長(色)の
 吸収帯があり、青い光(400~500ナノメートル)と赤い光(600~70
 0ナノメートル)をおもに吸収している。
  660ナノメートル付近の赤色光と450ナノメートル付近の青色光は光合成
 に有効であり、また形態形成や光屈性(光の方向に茎葉が伸びる)にも有効だと
 いわれている。

                       緑色光はむだなのか

  上の図で示したクロロフィルの波長(光)別吸収特性は、葉からクロロフィル
 だけを取り出し、有機溶媒に溶かして測定したもの。この測定法では、緑色の光
 の吸収は非常に少ない。植物は緑色の光をむだにしているのだろうか。
  下の図は、クロロフィルだけでなく、ひとつの葉全体の光合成作用スペクトル
 (色分布)をみたもの。線が多いのはいろいろな植物種での測定例を載せている
 からだ。この図をみると、どんな植物でも、400~700ナノメートルの範囲
 で光合成速度に大きな変化はない。

  波長500ナノメートル付近の緑色光で光合成速度の相対値がやや低いのは、
 葉が緑色光を透過および反射するからである。緑色光の約30%は上層葉を透過
 し、約20%が反射し、約50%が上層葉で吸収される。上層を透過した30%
 の緑色光は中層の葉に到達する。赤色光や青色光は約80%が上層の菓で吸収され、
 約10%が反射し、中層の葉には10%程度しか届かない。すると、数枚の葉が
 重なりあっている植物群落全体の正味光合成速度は緑色光を多く含む光源のほう
 が高くなりうる。

                  幅広い波長城が生育に役立つ

  光合成に適した波長(色)は赤と青だとの見方から、それを効率的に供給でき
 る光源として、青色や赤色のLED(可視発光ダイオード)が注目されている。
 しかし植物群落では、中層まで透過する緑色光が光合成に有利に働いている。ほ
 かにも、最近、緑の効用が注目されている。また、青・緑・赤の波長域だけでな
 く、「近紫外」(315~400ナノメートル)や「遠赤」(700~800ナ
 ノメートル)も含む光源を用意することも、形のよい生産物などにするために大
 切であることが多い。


                                               この項つづく

● ナノ粒子の合成に放射光を用いることで原子13個を安定化

産業技術総合研究所らの研究グループが、放射光と化学反応の同時利用により、従来
よりもさらに小さなナノ粒子を合成する技術を開発した。これにより、放射光で原子
を選択し局所的に還元し、化学反応条件を調整することで、これまでよりも小さな、十
数個の原子から成る後期遷移金属ナノ粒子を成長させる技術を開発。今回成長させた
銅(Cu)など後期遷移金属ナノ粒子で、ナノ触媒、ナノインク、ナノ配線への応用が
期待されるという。  

【概説】これはエネルギー選択性がよく細く絞れる放射光エックス線ビームを照射し、
特定の金属の周辺に光電子、2次電子を供給して、金属の還元後に配位子で安定化す
る技術。

代表的な後期遷移元素である銅(Cu)原子13個からなるナノクラスターを基板上に安
定に得ることができる。エックス線には、大きな原子番号の原子に対して選択性高く
その軌道電子をはじき飛ばして還元する作用がり、この作用を利用し、金属錯体の中
心原子を選択的に、強度調節した還元を施し、ナノクラスターを安定にえる。真空グ
ローブボックス中で調整した溶液を、カプトン基板をエックス線を通す窓としたテフ
ロンセルに封入し、エックス線ビームを照射すると、カプトン基板上にナノクラスタ
ーが生成。得られたナノクラスターをセル中で洗浄し、「その場」XAFS測定を行う。
特定の平衡条件の実現には、適切な化学反応の還元条件と配位子の選択が鍵となり、
還元後に得られるナノクラスターの成長が出発物質の平衡条件で制御される。ナノク
ラスターの構造は、分子軌道法(DFT)によりリガンド分子と金属コア全ての原子位
置を最適化し、それに対応したエックス線吸収スペクトル微細構造(XANES)を、精度
の高い計算手法(FPMS)で計算し比較してコア原子の対称性を決定。またリガンド配
位子を含めたクラスター構造をスペクトルの高エネルギー部分(EXAFS)で解析する
(図1)。

 

Nanoclusters Synthesized by Synchrotron Radiolysis in Concert with Wet Chemistry, Scientific
ReportsVolume:4,Article number:7199DOI:doi:10.1038/srep07199

これで量子サイズ科学工学の応用・産業化が加速されることになる。これは楽しみだ。

 

   


オール人工光型植物育種システム

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【新弥生時代 植物工場論 12】

 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を
  施設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所に
 とらわれず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めてい
 ます。その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産
 コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や図解を用い
 て様々な角度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技術革新などに
 よってもたらされるであろう将来像についても、アグリビジネス的な視点や現状
 もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書となっています。

           古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」 

 

     【目次】

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか

 

 

  光源は蛍光灯かLEDか


                    ほとんどの光源は蛍光灯

  1990年前後の人工光型植物工場(栽培棚が一段)では、ランプ効率のよい
 (消費電力当たりの光束量が多い)高圧ナトリウムランプが用いられたが、青と
 赤の光が少ないこと、
  また多くの赤外放射熱を発生するため(表面温度が150~200℃)、植物
 との距離をとる必要があり、多段棚栽培の光源としては使えない難点があった。
  最近は、蛍光灯のランプ効率がよくなり、多段棚式の人工光型植物工場では、
 蛍光灯を使うところがほとんどである。

  蛍光灯の波長城の例を次頁の図で紹介した。蛍光灯は光合成に有効な波長城を
 含み、植物の生理的有効放射領域をもほぼカバーしているので、植物栽培に適し
 た光源である。
  また直管型蛍光灯の表面温度は40~45℃で、植物との距離を近くできる。断熱
 性の高い人工光型植物工場では、照明からの発熱で、一年中暖房が不要(冷房は
 必要)となる。このような工場では、ヒートポンプ(エアコン)で温度と湿度を
 維持、調整するシステムが主流になっている。

                          LEDはどう使うのか

  ざましく、価格性能比向上が顕著で注目が集まっている。LEDは温度が比較
 的低く保たれるので、熱放射が少なく、近接照射が可能で多段化に有利。なおか
 つ低消費電力で、寿命が長い。
  現在、LEDによる人工照明は、白色(昼光色)が主流になっている。白色L
 EDは、青色LEDに黄色の蛍光体をかぶせて白色化したものが多い。次頁下の
 図のように、白色LEDは波長範囲が広い。曲線の左側の鋭いピークが青色LE
 Dからの発光で、右側のなだらかなピークが黄色蛍光体からの発光である。白色
 LEDは波長の短い青い光を多く出しているが、赤色光がたりない。他方、赤い
 LEDは、波長が長く電気使用量が少なくてすむ。光合成の面からいえば赤い光
 だけでもいいのだが、青い光がないと正常な成長ができないので、混合して使う
 実践例が多い。

                         LEDが主流になるのか

  ランプ効率は、現状では蛍光灯とLEDで大差はない。現在のLED照明コス
 トは蛍光灯の2倍以上で、まだ高い。一方の40W蛍光灯は1本が約1000円以
 下であり、大量購入時の値引きも大きい。しかし、植物栽培用LEDは蛍光灯に
 変わる競争力を数年以内にもつだろう。

 

    照明時間はどうするか

                    一斉点灯・消灯はしない

  人工光型植物工場で、多段式の棚が並ぶ栽培室の場合、各棚の照明時間は1日
 当たり15~16時間が普通である。それ以上の照明時間の延長は、一般に、コ
 スト・パフォーマンスが低ドするといわれている。
  栽培室の照明は、一斉点灯・一斉消灯の方式はとらない。
  栽培室全体を消灯することはない。常に3分の2の栽培棚の光源が点灯してい
 るのが普通である。一斉消灯はせず、全部の点灯もしない理由は大きくふたつあ
 る。

  ①一斉消灯すると光源による熟の排出が止まり、ヒートポンプ(エアコン)の
 冷房運転が停止するので、室内の相対湿度が100%に近づき、植物の成長に好
 ましくない。空気の流動・対流も低下してしまう。すると、カビなどが増えやす
 い。3分2の光源が点灯していれば、冷房に伴う除湿効果で、相対湿度は80%
 前後に維持される。
  ②.電力会社との契約最大消費電力を抑制して、基本料金を低く抑えるため。

                      明期時間と費用対効果

  照明時間(明期時間)は1日15~16時間が普通だというのには、どんな理
 由があるのだろうか。
  明期時間を16時間以上にすると、明期時間を長くした割には乾物重の増加(
 正味光合成量の増加)は少なくなる。植物の栄養成長段階では、24時間照明下
 で成長量が最大になるといわれているが、24時開明期では、植物にクロロシス
 (葉緑体異常)などの生理障害が発生することがある。
  明期時間を長くすれば、当然、電力消費量も増大する。ただし、電力料金には、
 「深夜または夜間料金割引」がある(割引時間帯は電力会社で異なり、午後11
 時から朝7時までの8時間か、午後10時から朝8時までの10時間)。夜から
 朝までの割引料金に切り替えれば、照明の電カコストを削減できる。
  これらを勘案して、明期時間を決めることになる。

                     みえる光は、むだな光

  栽培室に入って、人間の目にみえる光は、実はむだな光。現状では、照明器具
 から発せられた光子エネルギーのうち植物の葉に吸収されるのは50%以下で、
 残りの50%以上は栽培ベッド、床、壁などを照射し、熱エネルギーに変換され
 てむだになる。次頁下の図のように、光源の周りに反射笠をつけ、外への光の漏
 れを減らすだけでも効果は大きい(光源の排熱、通風管理に工夫が必要)。



  会津富士加工は、もともとは下請けとして富士通などに部品を納入していた
 半導体加工会社。しかし、半導体業界全体の海外移転により仕事が激減し、見通
 しが立たなくなったことから、業態転換を計画した。
  そこで農の分野に注目し、半導体工場内のクリーンルームに人工光型植物工場
 を導入。 2010年より生産をはじめた。
  2011年に透析患者向けに需要が見込める低カリウムレタスの生産を開始。
 秋田県立大学・小川准教授の特許をベースに、独自のノウハウで低カリウムレタ
 スの量産化に成功した。
  カリウムの含有量は一般のリーフレタスの20%以下といわれており、人工透
 析患者、腎臓病患者も安心して食べることができる。
  この低カリウムレタスを「Dr.vegetable(ドクターベジタブル)」として商標登
 録。2014年9月の時点で販売しているのはレタスのみだが、太陽光で栽培さ
 れた低カリウムのメロンも期間限定で年2回程度販売している。

 

  

   日本アドバンストアグリは、50年間にわたり照明器具の設計・生産・販売を行っ
  ているツジコー株式会社の子会社として設立された。太陽光に近い光を出す「3
 波長型ワイドバンドLED」を利用した植物工場用システムの開発・販売を行っ
 ている。



  さらに、「ストレス負荷型栽培システム」(好環境とストレス環境を制御する
 ことで、植物生育を促進しながら、その植物が本来もつ栄養を高める技術)を開
 発し、機能性野菜「ツブリナ(アイスプラント)」「ロザリナ(塩生プルピエ)」
 やその野菜を利用した健康食品(グラシトール、アレルバリア)を展開している。
 同社は、植物育成照明から栽培システム、健康食品事業まで、関連事業を一貫し
 た「垂直統合型」の事業を展開している。

                                               この項つづく 

 

  ● 今夜の一品

時代の風:照明付ドッグパワーステーション

iPhoneとApple Watchを同時に充電可能なドックステーション「NuDock」。

 

    

 

地殻が変だぞ ?! 知床羅臼、ネパール

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● 地殻が変だぞ?! 知床羅臼、ネパール編

「地殻が変だぞ?! トンガで新たな火山島が出現」(『6ペンスの唄にハーブ烏の
ロースト』2015.01.18)の続編。23日(木)には南米チリで、標高2千メートルの
カルブコ火山の大規模な噴火。噴煙が上空およそ1万5千メートルにまで達し、チリ
政府は警戒レベルを最高度に引き上げる。チリでは、5年前に巨大地震が発生して以
降、火山活動が活発になり、規模の大きな噴火が相次ぐ。チリの沿岸では2010年
2月にM8.8の巨大地が発生し 日本の沿岸にも津波が押し寄せた。この巨大地震か
ら1年後の6月にチリ南部のアンデス山脈にあるコルドンカウジェ火山群で50年ぶ
りに規模の大きな噴火が発生、噴煙は上空およそ1万5千メートルに達す。山麓に大
量の火山灰や噴石が降ったほか、火山灰はおよそ1万キロ離れたオーストラリアの上
空にまで広がり、南半球では航空機の運航に大きな影響が出る。今回噴火したカルブ
コ火山のおよそ、200キロ北にあるビジャリカ火山では、ことし3月に噴火が発生
し火口より溶岩が流出している(「知床羅臼の海岸隆起、大規模地滑りも 町が対策
本部設置」北海道新聞 2015.04.25)。

 

24日に高さ10~15メートル近くまで海岸が盛り上がっているのが確認された根
室管内羅臼町幌萌町の現場近くで25日午前、新たに大規模な地滑りが見つかった。
羅臼町は災害対策本部を設置し、関連を調べている。地滑りは隆起した海岸の山側で
長さ約5百メートル、幅約2百~3百メートルにわたっている。いつ発生したかは不
明。現場には住宅などはなく、けが人などは確認されていないという。

 

Earthquake slams Nepal; devastating loss of people, history

ネパール中部で25日、マグニチュード(M)7・8の強い地震が発生、首都カトマ
ンズなどで多数のビルや家屋が倒壊した。米CNNなどによると国内の死者は1400人
以上となった。世界最高峰エベレスト(8848メートル)では雪崩などで少なくと
も外国人18人が死亡。インド、中国、バングラデシュでも計約50人が死亡。震源
はカトマンズの北西約80キロ。カトマンズでは市内で最も高い歴史的建造物ダラハ
ラタワー(約60メートル)が倒壊、死傷者が出ている。数百年前に建てられた寺院
などが集中する世界遺産、ダルバール広場にも被害が出ているもようだ。地震はネパ
ールでは約80年ぶりの規模で、同国政府は被害の大きな地域に非常事態を宣言。ヒ
マラヤ山脈は登山シーズンを迎え、多くの外国人が訪れていた。

 

地殻変動の活動期に入ったのか?だとするとその周期はどれほどのものだろうか?想
定される影響規模の見積もりというものがあるのだろうか?米国ではシェールガスの
採掘による陥没・地震が発生しているとも聞く。このような人為的な地殻変動がすぐ
さま連動するとは言い切れないだろうが注意をひくニュースである。もっとも、採掘
による排気ガスによる温暖化係数は二酸化炭素の12倍であるから、この事案は、国
際的な規制の導入も必要だろう。

※ 8 States Dealing With Huge Increases in Fracking Earthquakes, 2015.04.24 EcoWatch 
       水圧破砕採掘による地震? 米国8州で急増

  

【新弥生時代 植物工場論 13】 

 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を
  施設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所に
 とらわれず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めてい
 ます。その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産
 コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や図解を用い
 て様々な角度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技術革新などに
 よってもたらされるであろう将来像についても、アグリビジネス的な視点や現状
 もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書となっています。

           古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」  

     【目次】 

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか

 

 
  植物工場に二酸化炭素施用は不可欠

               植物は二酸化炭素不足状態にある

  現在の地球大気中の二酸化炭素濃度は、約O・04%(400ppm)。実は、
 この濃度は植物にとっては、まだまだ低い濃度なのだ。白亜紀、巨大な恐竜が
 閑歩し、シダ植物などが大きく繁茂していた時代の叫濃度は、O・2%(20
 00ppm)あったといわれている。それに比べて、いまの大気中の400ppmと
 いう低い隔濃度は、白亜紀の5分の1であり、植物の光合成にとって欠乏状態
 なのだという。
  いまの植物は、もっている能力を100%発揮していない。人工光型植物工
 場で、二酸化炭素濃度を大気中濃度の倍にすると、光合成速度(二酸化炭素吸
 収速度)が高まって、葉菜類は生育量がおよそ倍になる。閉じた空間の人工光
 型植物工場では、光合成が盛んになるとすぐに隔が不足して、生育が停滞する。
 そのため人工光型植物工場での栽培には、二酸化炭素施用が必須条件なのであ
 る。

                      適度な二酸化炭素濃度は?

  では、植物工場における脇の濃度は、どのくらいがいいのだろうか。
  次頁の図は、室内温度を一定にして、2段階の光の強さのもとで、二酸化炭
 素濃度を変化させたときの光合成速度を示したもの。この図をみると二酸化炭
 素濃度が低い場合(O・04%=400ppmまで)は、強い光でも弱い光でも、
 光合成速度は同じで、二酸化炭素濃度に比例して増加することがわかる。さら
 に二酸化炭素濃度が高まると、光の強さによって光合成速度に差が生じてくる。
 弱い光では、すぐに光合成速度は増加しなくなる。強い光ではO・1%(1000
 ppm)を超えるとアタマ打ちとなり、O・2%(2000ppm)で光合成速度は
 増加しなくなる。
   この図から、人工光型植物工場の阻濃度は、1000ppm以上をめやすに、
 2000ppmまでの範囲内に制御することで、光合成を十分に促進できることが
 わかる。

                             二酸化炭素施用の注意点

  二酸化炭素の施用は、人工光型植物工場の場合、ボンベに入った液化二酸化
 炭素を気化させて室内に供給するのが基本である(次頁)。栽培室の機密性が
 高いので、供給二酸化炭素の85~90%が作物に吸収されて、外部に漏れる量は
 少ない。施用コストはかかるが、十分に採算はとれる。
  ただし、この二酸化炭素の供給は、気孔を開かせるほかの環境管理(湿度管
 理・気流管理など)と同時にやらないと、二酸化炭素が吸収されず、効果が上
 がらないことに注意したい。

 

 
  温度(葉温)管理

                  温度(葉温)と植物の生育

  温度は、植物の光合成・呼吸・蒸散などの成長にかかわる生理作用と、休眠・
 発芽・花芽分化など発育にかかわる生理作用の両方に関係し、植物の生育のあ
 らゆる場面に影響をおよぼしている。
  植物の温度管理は、気温よりも葉温の管理が重要になる。気温と葉温は、人
 工光型植物工場においても、明らかな差が出る場合がある。たとえば、蒸散が
 盛んに行われている葉では、葉面における気化冷却により、葉温は気温より1
 ~2℃低くなる。逆に蒸散が少ない場合、光が強いほど、葉温は気温より1~
 2℃高くなる。ほかに、葉温の上昇・低下には、気流速度も関係する。葉温を適
 温に保つことは、光合成速度(二酸化炭素吸収速度)を高く維持する大切な土
 台となる。

                葉温25℃付近が光合成の適温

  次頁の図は、正味光合成速度と葉温の関係を示したもの。光が強く二酸化炭
 素濃度が十分に高い条件のとき、正味光合成速度が最大になるのは、葉温か25
 ℃前後であることが多い。
  右側の図は、植物の呼吸との関係から正味光合成速度が最大となる葉温を示
 したもの。植物の呼吸には、光呼吸(光合成が行われるときだけ行われる呼吸)
 と、普通の呼吸(暗呼吸=光の強さに関係ない呼吸)のふたつがあるのだが、
 暗呼吸速度は、葉温が25℃以上になると、急速に高くなる。一方、上の曲線
 (真の光合成速度から光呼吸速度を引いたもの)は80℃を超えるまで高く上
 がっているが、それ以上に暗呼吸速度が上がるので、正味の光合成速度は25
 ℃ 付近がいちばん高いことがわかる。

                               温度は常に一定に管理

  人工光型植物工場の温度管理は、作物の生育適温に合わせて、一定の温度に
 維持するのが重要とされている。露地や施設園芸では、野菜や果物の甘味など
 を高めるために、昼夜(明期と暗期)に寒暖差をつけるやり方がある。人工光
 型でも暗期では明期より数℃低い。温度変化は植物にはストレスとなり、成長
 が遅れるので、成長を早めるために温度変化を抑える管理が人工光型では優先
 されている場合が多い。
  人工光型植物工場の温度管理のめやすは、20~25℃(葉菜類20~22℃、果菜
 類24~25℃)。これに湿度70~80%のめやすも合わせた環境を一年中保つには、
 エアコンでの制御が前提になっている。

  湿度(飽差)管理

               気孔を開く「飽差管理」とは?

  植物工場の湿度管理(人工光型でも太陽光型でも基本は同じ)で、最近注目
 されているのが、「(水蒸気)飽差」という管理の指標である。飽差とは、対
 象としている空気の飽和水蒸気量と実際の水蒸気量との差。対象の空気に、あ
 とどれだけ水蒸気を含む余地があるかを示す指標で、空気1立方メートル当た
 りの水蒸気の空き容量を水蒸気圧差(キロ・パスカル、kPa)、またはg数(
  g/立方メートル)であらわす。
  飽差管理は、気孔を閉じさせない(開けたままにしておく)環境制御として
 きわめて重要である。適正な飽差範囲は、0・5~1哨(3~6g/立方メー
 トル)とされている。
  次頁の表は、気温の違いによって相対湿度をどのようにしたらよいかを判断
 するための「飽差表」である。この表をみると、20℃では70~80%の、25℃で
 は75~85%の相対湿度を必要とする。太陽光型の栽培では気温が30℃を超える
 ことも多いが、その場合に必要な相対湿度は85~90%にもなる。

                         適正飽差で蒸散と光合成を促進

  気孔の開閉と飽差との関係はどうなっているのか。飽差が1・0kPs 以上(
 乾きすぎ)だと、作物は水分欠乏の危険を感知して気孔を閉じ、蒸散はされな
 くなる。逆にO・5 kPa以下(湿り過ぎ)になると、気孔内と外の空気水蒸気
  圧差がなくなり、気孔は開いていても蒸散は起こらない。
  適正な飽差範囲では、気孔が開き蒸散が活発になり、この蒸散が根から養水
 分を吸い上げる力になる。同時に、この開いた気孔からは、ニ酸化炭素(ppm)
  が吸収されて、光合成が促進されることになる。気孔を開く飽差管理は、光合
 成と養水分吸収の両面で、作物の順調な生育を支えるカナメの管理になってい
 る。

                   植物工場の飽差管理は?

  太陽光型の半閉鎖型植物工場では、これまで過湿による病気発生を気にして
 飽差が大きくなり、乾きすぎの傾向があった。乾きすぎなら細霧発生などの湿
 度調整(加湿)が必要になる。
  病原菌を排除できる人工光型植物工場では、暗黒にすると葉から蒸散した水
 蒸気が室内に滞留して、相対湿度が100%に近づく問題がある。これには、
 エアコンによる常時冷房(光源の部分点灯による発熱の除去)と除湿で、気温
 と飽差を適切に制御し、除湿で溜まった蒸散水は回収して培養液の水にリサイ
 クルすることになる。

   


  気流(空気流動)管理

                  空気の流動が生育を左右する

  園芸施設内の空気流動は気流と呼ばれ、その速度を気流速度と呼んでいる。
 気流は、植物の光合成や蒸散に重要な役割を果たしている。換気口のない閉鎖
 空間である人工光型植物工場の栽培室内では、エアコンの送風だけでは空気流
 動が少ない。このため葉面の空気流動が、植物の生育を制限する要素になって
 しまう。
  とくに問題なのは、栽培室の空気を動かさないと、室内の温度、湿度や二酸
 化炭素凪濃度にばらつきが生じること。人工光型植物工場では、隔の供給で光
 合成を活発にすることが必須の条件になっている。しかし、これは栽培室内の
 空気を循環(擾伴)させ、空気の状態を助二にしてはじめてその効果が確かな
 ものになる。人工光型植物工場では、温度や湿度を一定に保つ空調設備と、気
 流を確保する設備が必要になる。

 


                送風で「葉面境界層」を薄くする

  植物の二酸化炭素の吸収を妨げるものとして、覆の表面に厚さ数ミリメート
 ル以下の「覆面境界層」と呼ばれる、粘性が高く流動性の小さな空気層がある
 ことを知っておきたい。無風状態では、この葉面境界層が気孔での阻吸収の抵
 抗壁になり、光合成速度が低くなる現象が起きる。この葉面境界層を送風によ
 り薄くすることにより、光合成を一定の水準まで促進することができる。

  光合成の促進につながるように、葉面境界層を薄くして隔を葉内に供給でき
 るような気流制御が重要になる。さらに、植物の蒸散を活発にするためにも、
 湿度環境に加えて気流環境を制御することが重要な管理になる。

                 気流制御が低コスト栽培のコツ

  栽培室の気流管理は、棚のなかの狭い空間に育つ植物に直接当たる空気の流
 れにも配慮する必要がある。ただし、過度の送風は禁物で、蒸散が多すぎれば
 しおれの原因になる。
  気流速度は、葉をわずかに振動させる程度にして、全体に平均して風が当た
 るようにする。葉の振動は、上からの光を下層まで届かせる効果もある。次頁
 の写真で、苗生産のための人工光型植物工場での、気流発生装置と、空気の流
 れを紹介した。小型ファンを使う気流発生のコストは低い。光の強さは、光飽
 和点よりも少し低くして、その代わりに隔濃度を高くし、気流速度を適切に管
 理するのが、低コスト栽培の勘どころである。

 

  山形県米沢市にある安全野菜工場はサンチュに特化した植物工場。植物工場
 でのサンチュ栽培のパイオニアであり、そのシェアは全国トップを誇る。1996
 年の創業以来、一貫して、徹底的な衛生管理のもとにサンチュを栽培。菜を極
 限までやわらかくつくっており、芯の小葉の部分もおいしく食べることができ
 る。この特徴を活かすため、葉を一枚一枚切り離した形ではなく、株ごと出荷
 している。おもな卸先はやはり焼肉屋。菜がやわらかいため、肉を包みやすく、
 苦味が少ないと評判だ。
  また、機能性野菜の開発にも取り組み、スプラウト(発芽)ニンニクを開発
 している。栄養価が非常に高く、鉄分、ミネラルが豊富。冷え、不眠などによ
 く効く「スコルジン」「アリシン」を多く含む。アルコール代謝促進、腎臓や
 肝臓の機能活性化などにも優れ、大腸ガンの予防にもなり得る。加熱すればニ
 ンニク臭がほとんどなくなり、女性や高齢者には大変弥ばれる商品。


                                                この項つづく 

 

 ● 今夜の一品

キューブの形を取り入れた電源タップ「PowerCube」。コンセントに差し込むプラ
グ、4つの交流電源差込口、2つのUSB給電ポートを持って、もう一つのpowerCube
を連結することも可能。

    

 

超低温空気冷凍工学

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【超低温空気冷凍工学 非共沸冷媒】

ご多分に洩れず、ネットとテレビ情報が情報源だが、どんなに疲れていても「勘 :
intuition)が働くことがままある。日曜朝の「がっちり!!マンデー」をみていて 超
低温冷凍庫の普及させ食品革命――デジタル革命渦論と比肩するとといささか誇張
が過ぎるがもしれないが、マグロの刺身やにぎり寿司を世界に知らしめたからには、
それは許させようは ^^;――を起こしたと言われる株式会社ダイレイの商品開発の
紹介のなかで "肝”の冷媒が複数の冷媒混合した「非共沸冷媒」を使用することで、
従来の冷凍ではできなかったマイナス60℃を実現したという件にフォーカシング
が掛かった。



ところで、食肉や魚介類などの鮮度を比較的長期にわたって劣化させずに保つこと
ができる冷凍庫として、-50℃以下の超低温を達成する冷凍庫が生産地漁港や物
流の拠点などで用いられている。従来は、これらの超低温度を実現する冷凍機シス
テムは、(1)沸点がこれらの領域にある低沸点冷媒を用いて冷凍機と室温環境下
で作動する高沸点冷媒を用いた冷凍機とを組み合わせ、2台のコンプレッサーとコ
ンデンサからなる2段式冷凍機方式を用いてきた。(2)これに対し、同社の超低
温度を実現する低沸点冷媒と室温環境下で凝縮可能な高沸点冷媒とを組合せた非共
沸冷媒による超低温度を単段式コンプレッサーで実現する冷凍機システムを採用(
下図参照クリック↓)

 

しかし、 このような非共沸冷媒を用いた冷凍機システムを 小容量のストッカーな
どに適用する場合は、熱容量も小さく、構造上も一般に扉を冷凍庫上面で水平に開
閉する形式を採用し、収納物の出し入れに際して庫内冷気の換気量も少ないため、
庫内温度の変動も小さく、比較的安定した運転状態を維持できるが、マグロなどを
解体しないままで収納・保管するなど、業務用として庫内容量が大きくなり、人が
庫内に入って作業を行う必要が生じるような庫内容積数千リットル以上の冷凍庫は、
作業や保管スペーシングから縦型の扉開閉方式となりプルダウン性能の向上が必要
だが、(1)能力向上をコンプレッサー、コンデンサなどの冷凍機の個別要素の容
量増大の対処法ではコスト逓増となり過剰スペック(定常運転時の条件の仕様)と
なり、(2)さらに、温度変化に対するが悪い――非共沸冷媒中の低沸点成分が凝
縮されず、気体状態で冷凍機システム中を循環し、コンプレッサーの圧縮負荷が大
きくなる。

(1)エバポレータの膨張弁の開度で冷媒ガスの圧力と流量を自動調整し、起動時
や庫内温度が高く、低沸点成分の凝縮進行しない状態時に、同膨張弁を開放し高沸
点成分の凝縮条件の圧力に維持し、低沸点成分の凝縮が進行するにつれ同膨張弁を
絞り、順次、低沸点成分の凝縮圧力にすることを、(2) 特に同膨張弁のキャピラ
リーチューブを複数並列に設け、開閉数により流量の制御をすることを特徴とする
ことで、起動時、庫内温度上昇時などの低沸点成分の凝縮進行しない状態の冷媒流
量を増大し冷却能力を向上し、庫内温度が低下し、定常運転状態までの間の負荷
変動を抑制・安定運転を可能にするシステム提案である。


  

【新弥生時代 植物工場論 14】

 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を
  施設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所に
 とらわれず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めてい
 ます。その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産
 コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や図解を用い
 て様々な角度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技術革新などに
 よってもたらされるであろう将来像についても、アグリビジネス的な視点や現状
 もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書となっています。

           古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」 

 

     【目次】 

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか

 

 
   養液栽培の方式

                                 水耕法か固形培地法か

   植物工場は、人工光型でも太陽光型でも、土を使わない養液栽培(肥料を水に
 溶かした「培養液」を根に吸わせる)で肥料養分と水の供給を行っている。また
  養液栽培の方式には、「水耕法」と「固形培地法」がある(次頁)。

  【水耕法】培養液のなかや表面で根を育てる栽培法。ほかに「噴霧耕」(根に培
 養液をミスト状または霧状に、連続または間欠噴霧するやり方)もある。水耕法
 には、培養液を浅い水深で栽培ベッドに流す「NFT(薄膜流水式)」、培養液
 を栽培ベッドに溜める「DFT(湛液式)」のほか、毛管水耕(浮き根式水耕)
 などの方式がある。多段式の植物工場ではNFT方式が多い。

 【固形培地法】根を支える土の代わりとなる固形培地を使う栽培法。培地の主流
 はロックウール(玄武岩・製鉄スラグなどを高温で溶かし繊維状にした人造鉱物
 繊維、pH7前後に調整)で、ほかに使用後に土に戻せるヤシガラ繊維などもある。
 太陽光型のトマト栽培などは固形培地法が多い。

                              培養液は環境保全型の循環式ヘ

  培養液の与え方には、「循環式」と「非循環式」の2種類がある。DFT(湛
 池式)やNFT(薄膜流水式)では、培養池は栽培ベッドと培養液タンクの問を
 循環するが(次頁)、固形培地法では、作物に吸収されなかった余剰培養液を循
 環利用せず、そのまま廃棄する「かけ流し式」が多い。循環式の短所は、培養池
 中の養分組成の変化による生育への悪影響病害が侵入すると拡大しやすいことな
 どがある。非循環式では、これらの心配は少ないが、かけ流しは養水分のむだに
 なり、環境汚染にもつながるので、固形培地法においても、循環式への移行がす
 すめられている。

                        土耕と水耕の違いは?

  自然環境に依拠した土耕と水耕の根本の違いは、土のもつ緩衝機能(外部から
 の環境変化をやわらげ、一定の状況に保つ働き)があるかないかである。
  土耕における管理の目標は「土づくり」にある。堆肥を役人して、土壌を団粒
 構造にし、通気性・保水性・生物性・保肥性を高め、環境制御性より環境安定性
 を重視する。
  一方、緩衝材としての土のない水耕では、養水分の施用量の大小が直接作物に
 影響し、邱(土壌酸度)の変動もはげしい。人間による、より緻密な環境制御な
 しには生産の安定性は得られない。




     植物の必須要素

                                                        植物に必須の多量要素は?

  植物の生育に不可欠な「多量要素」は9つある(次頁)。このうち、炭素(C
 )、水素(H)、酸素( O)は、空気中の二酸化炭素や酸素、または養液中の
 水から供給される。植物体(乾物)の元素組成は、炭素(C)と酸素(O)が、
 それぞれ約45%、水素(H)が約6%、合計で96%を占めており、これらは光
 合成過程で植物体内に取り込まれる。肥料養分を考えるまえに、まずは十分なニ
 酸化炭素と水でしっかり光合成させることが基本になる。

  残り6つの多量要素は、肥料として供給する必要がある。
 【窒素(N)】作物の生育と収量に最も大きくかかわり、必要量も多い。茎葉を
 伸長させ、葉色を濃くする「葉肥」。
 【リン酸(P)】呼吸作用や体内のエネルギー伝達に重要な働き。茎の分けつ、
 根の伸長、開花・結実を促進する「実肥」。
 【カリウム(K)】おもに根の発育を促進し、根や茎を強くする「根肥」。光合
 成や炭水化物の移動蓄積に関与する。
 【カルシウム(Ca)】植物の分裂組織、成長点や根の先端の正常な発育に不可
 欠。細胞膜を強くし、根の伸長を促す。
 【マグネシウム(Mg)】葉緑素の構成成分。リン酸の吸収と体内移動に関与。
 炭水化物・リン酸代謝で酵素を活性化。
 【イオウ(S)】アミノ酸、ビタミンなど重要な化合物の成分。葉緑素の生成に
 も関与。不足すると作物が軟弱になる。

                   微量要素も培養液に不可欠

  槙物の生命活動に不可欠な要素のうち、植物体にあまり多く含まれない(必要
 量の少ない)ものを、必須微量要素と呼ぶ。現在8つの要素が認められている(
 次頁)。
  植物体内での役割で分類すると、以下の3つに分けられる。

  ①葉緑素の生成と働きに不可欠=鉄・マンガン・亜鉛・銅・塩素、
  ②生体内酵素の構成成分として不可欠=モリブデン・ニッケル、
  ③細胞組織形成と維持に働く=ホウ素。

  これら微量要素のほかに、必須要素ではないが、特定の作物に有益な働きをす
 る「有用元素」がある(次頁)。
  こうした微量要素は、土耕の場合、土壌中の天然ミネラル成分が供給源となっ
 ているが、土なしの養液栽培では天然供給はない。
  ただし、原水(培養液をつくるときの水=おもに井戸水)からのミネラル分の
 供給はある。海が近い井戸水では、塩素やナトリウムを多く含むものもあって成
 分検査が不可欠である。市販の養液用肥料に微量要素として含まれているのは、
 鉄・マンガン・ホウ素・銅・亜鉛・モリブデンが一般的で、すべての必須微は要
 素を含んでいるわけではない。

 

    養液の調製

                                                         培養液の標準的な処方は?

  作物の生育に欠かせない多量と微量の必須要素を、井戸水などの原水に溶かし
 たものが、養液栽培用の培養液である。
  好適な培養液の成分組成は、作物の種類によって異なる。
  さらに品種、生育段階、温度、光条件などによっても変化する。実際の栽培で
 は、細かく組成を調整することができないので、同じ組成の培養液を追加しなが
 ら使い、生育段階に合わせて濃度を調整することが多い。
  野菜の標準的な培養液の処方を、次頁に紹介した。この表では培養液の標準的
 な組成として、汎用的な「園試処方」や作物別の「山崎処方」を例示している。
  園試処方は、果菜類の養分吸収比から決められたものだが、多くの作物に適用
 でき、組成や濃度を調整して広く応用されている。園試処方も作物別の山崎処方
 も、各養分間のバランスが類似している。表をみると、NO3-N=K+Ca、P
 =Mgの関係があり、陽イオンと陰イオンのバランスに配慮されている(NO3、
 PO3は陰イオン、K・Ca・Mgは陽イオン)。
  山崎処方は、作物別に養分処方が細かく変えられており、この処方は、培養液
 の組成濃度と、作物の吸収成分濃度がほぽ同等なので、常に同じ培養液を補給し
 ておけば、EC(塩類濃度)、pH(溶液酸度)は比較的安定するといわれてい
 る。

                             培養液の自家配合と注意点

  培養液の原料には、市販の複合肥料もあるが、自分で単肥を配合して肥料コス
 トを下げることも重要な課題である。ここでは汎用性のある標準培養液として「
 園試処方」を自家調製する場合の方法と注意点を紹介する(次頁・微量要素は省
 略)。
  配合する肥料分(溶解度と純度の高い工業用製品を使う)は表にあげた4種類。
 次頁の注に載せたように、グループ分けして別々に熱湯で溶いてから水に加える。
 4種類を同一容器に入れて溶かすと、化学反応を起こし(リン酸と石灰・苦土が
 化合してリン酸石灰・リン酸苦土となる)、不溶性の沈殿物となり肥効が著減す
 ることに注意が必要である。

                     原水の水質にも注意を

  養液栽培の原水用地下水の水質でとくに重要なのは、塩分である。塩分はナト
 リウム濃度と塩素濃度の合量で示される。養液栽培での許容限界量は、ナトリウ
 ム濃度が80mg/Lと考えられている。カルシウム・マグネシウム・鉄などの濃
 度が高い地下水は、単肥を用いて培養液組成を改善する方法がよい。



   養液の水質管理
   
                    pHの定期的調整が必要

  培養液の管理は、pH(養液酸度)とEC(電気伝導度=養分イオン濃度)を
 定期的にチェックすることが基本である。培養液の最適同は、多くの作物で5・
 5から6・5であり、これは作物の生育に適しているだけでなく、肥料成分の溶
 解やイオン化に適した条件である。

  次頁上の図は、pHと植物が吸収・利用できる可給態養分との関係を見たもの。
 この図で、各養分の帯の幅の広いところほど、可給態養分が多いことを示して
 いる。培養液の面が低いと、カルシウム・マグネシウム・カリウムの溶解度が低く
 なる(沈殿する)ため欠乏症が生じ、逆に邱が高いと、鉄・マンガンなどの欠乏
 症が生じる。窒素はおもに硝酸イオンとアンモニウムイオンの形で供給されるが、
 培養液のpHは、作物によって硝酸イオンが優先的に吸収されると高くなり、ア
 ンモニウムイオンが優先的に吸収されると低くなる。とくに循環式の養液給与法
 では、作物の養分吸収によって同が変化するので、定期的な調整が必要になる。

 【pHの調整法】pHが5・5以下になれば、水酸化カリウム(苛性カリ)で、
 pH6前後に。面が6・5以上になれば、硝酸(HNO3)で、pH6前後に調整す
 る。この調整剤は、どちらも養分要求量の高いカリウムや窒素を含み、安価なの
 で、コストの面で得策である。

                                       ECの調整と問題点

  EC(電気伝導度)は、培養池の養分濃度(総イオン濃度)の指標としてpH
 と並んで欠かせない測定項目である。単位はds/m(デシシーメンスパーメート
  ル)が用いられる。ECは硝酸態窒素との相関が高く、その残存量を示す指標と
 なるが、ほかにカリウムやカルシウムの残存量のめやすにもなる。
  好適な屁の値は作物によって異なる。植物工場の主要な生産物であるレタス類
 は低いECを好む(作物ごとの、標準EC値は次頁)。 
  ただし、Eによる濃度の診断は、総イオン濃度を測定するもので、培養池中の
 個別のイオン濃度は測定できない。ECによる調整法では、全養分の目標値に沿
 った比例補給なので、各イオンに過不足が生じて、生育障害を引き起こすことが
 ある(次頁)。

 【イオン濃度制御へ】養液調製の理想は、個別のイオン濃度をセンサーで測定し
 て、過不足なく補給すること。すでに「自動イオン濃度制御装置」は開発されて
 いる。まだ価格が高いが、収量・品質の安定や培養液の長期間連続使用のために、
 新しい制御法への期待は大きい。

 

 
  養液の温度管理

                   培養液の適温は15~20℃)

  作物の根を健全に保ち、養分の吸収をよくするには、培養液の温度管理を忘れ
 てはならない。培養液の温度は、養分吸収や、養旅中の溶存酸素の濃度に影響する。
 培養液の適温は15~20℃である。液温か低いと、窒素・リン酸・カリウムの吸収
 は抑制される。逆に池温が高いと、根の呼吸が盛んになる一方で養池中の溶存酸
 素が減少し、根は酸素不足となって根腐れを起こしやすい。
  根の呼吸速度は、温度の上昇とともに、指数関数的に上昇する(酸素の消費量
 が増える)。同時に、養池温度が高くなると、飽和溶存酸素量(養池に溶けるこ
 とのできる酸素量)が低下していく。そのために根は酸素不足になりやすい。酸
 素不足だと、根は先端から壊死していく(次頁)。

                   酸素不足では根が壊死する

  植物の根による養分吸収は、若い先端部で盛んに行われる。
 選択的な養分吸収は、呼吸作用によって得られたエネルギーを用いて行われるの
 で、根の呼吸作用に影響する要因によって支配される。養液温度が適温のとき、
 養分吸収は盛んになる。また酸素も、直接的に根の呼吸作用を通じて養分吸収に
 影響する。
  根の呼吸作用は、光合成によって得られた炭水化物を用いて行われるので、日
 照不足などで光合成が低下するようなときは、根の呼吸作用も弱く、養分吸収も
 低下する。根を健全に保つためには、茎葉での光合成が活発に行われて、呼吸材
 料となる炭水化物が絶えず供給(転流)されることが必要になる。

              チップバーン(Ca欠乏)対策として

  養液温度が高く、酸素も不足すると、カルシウムの吸収が低下する。もともと
 カルシウムは2価のイオンで、1価のイオン(窒素やカリウム)よりも大きいた
 め、吸収されにくく植物体内の移動が鈍い傾向にある。そのため、植物の末端部
 分でカルシウム欠乏が生じやすい(レタスなどの菜もの野菜では菜の先や成長点
 に発生する)。
  菜もの野菜のチップバーン(縁腐れ)は、急激な成長時のカルシウム不足が原
 因となる生理障害である。植物工場では、土耕に比べて成長速度が格段に高まる
 ため、常にチップバーンのリスクがあり、これをいかに低く抑えるかが重要な課
 題となる。そのためにも、根圏の環境(養液温度や酸素量)の管理を怠ることは
 できない。




                              この項つづく



● ミニトマト試験栽培はじめました。

    

 

高密度栽培工学

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【全農産物のダウン・スペーシング : 高密度栽培工学】 

さて、古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」 をベースに「新弥
生時代 植物工場論」の考察をすすめてきて、いよいよ佳境に入り、「オール人工
光型植物育種システム」の構想中、カレンダタイマによる自動的に受粉させるプロ
セスで、超音波発振器で育種培養ポッドに接触させ揺動させ受粉させる――栽培棚
の底部に伝導チェーンに各ポッドユニット間隔に扁芯カムを回転させ上下に揺動す
る機械方式などが特許公開提案されている――がネットで携帯タイプを調べてきた
が、タカラトミーアーツ社から丁度、「ビールアワーシリーズ」の新製品の超音波
できめ細かいビールの泡がつくれる「ソニックアワーポータブル」(下合成写真ク
リック)を見つける。振動数など最適化や接触条件や局部/全体振動などの検討は
いるがこれで充分と考え組み込むことにした。

 

周知の通り、「オール人工光型植物育種システム」の目的は、カロリー性植物や果
菜、果樹、大型根菜形の高密度栽培用の高速品種改良にある。例えば、イネ(稲)
の嵩高は80センチメートルから1メートルあるがこれを、収穫重量を変えずに、
半分の50センチメートル以下の品種に改良できれば、作付け面積(あるいは体積)
あたりの収穫量は相当小さくなる。このように米、小麦、大豆、ジャガイモなどを
品種改良するには、従来法では長時間と労力は膨大なものとなるが、完全植物工場
方式で育種開発できれば短時間にそれを実現でき、それを『オールソーラシステム』
+『オールバイオマスシステム』とのベストミックスすれば、(1)農薬使用の逓
減、(2)遺伝子の直接改変によるリスク回避、(3)原子力エネルギーに依存し
ない省エネ+省労力+稼働コスト逓減、(4)フードロスの逓減、(5)非合成医
薬品事業の創成(例えば漢方薬、強精薬、アンチエイジング薬など)、(6)食糧
の地産・地消促進、そして(7)食糧安定供給のメリットがもたらされる。


それを可能とするシステムとして、(1)長時間の観察画像解析システムや(2)
自動環境制御試験培養ユニットシステムの開発となる。そこで関連新規考案を調べ
てみると下図のような特許が開示されていて参考となるが、それ以外に、(3)ユ
ニットには画像データ取り込み定点カメラシステム(嵩寸法及び表面積などの自動
計測を含む)、(4)また、人工光を均一照射光学設計、(5)重量変化計測シス
テム、(6)嵩高に併せ高さ方向の関連機器移動システム、(7)自動受粉システ
ム(超音波式など)、(8)二酸化炭素濃度調節システム、(8)植物ホルモンな
どの微量成分検出システム、(9)ハンドリングシステム(わき芽除去、サンプリ
ングなど)、(9)遺伝子解析システム――「検体からのDNA抽出」→「遺伝子増
幅」→「遺伝子型判定」の全自動化による育種品種の比較判定の迅速化――などを
追加させたものを考案している。これにより育種改良を繰り返し、高栽培密度化を
実現できるだろう。



このユニットは相当高額なものとなるが、全ての農産物の育種に応用展開できもの
で、初期研究開発段階は農林水産省が直轄しシステム開発(プロトタイプ:αシス
テム→βシステム・・・)を支援することで政府がしっかりと担保することが必要
だろう。成功事例が出来ると、コンピュータ制御が基盤となるためコスト逓減は加
速される(『デジタル革命渦論』の基本特性)。

 

 


【新弥生時代 植物工場論 15】

 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を
  施設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所に
 とらわれず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めてい
 ます。その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産
 コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や図解を用い
 て様々な角度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技術革新などに
 よってもたらされるであろう将来像についても、アグリビジネス的な視点や現状
 もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書となっています。

           古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」


   【目次】 

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか

 

 人工光型植物工場の専門品種開発                           

                   園芸植物の品種開発の現状

  人工光型植物工場の技術が目覚ましい進展を遂げている一方で、人工光型植物
 工場専用の品種開発は現状ほとんど行われていない。その理由は、露地栽培面積
 と簡易園芸施設栽培面積が人工光型植物工場の面積に比較して圧倒的に大きく、
 前者の種子の需要が多いからである。それゆえに、園芸植物の品種は今日に至る
 まで、露地または簡易施設で栽培することを「前提」として開発されてきた。

  露地または簡易施設での栽培を前提とした育種において重要なのが、「耐病性」
 と「環境ストレス耐性」である。病原菌や害虫、低温、高温、乾燥、湿潤などの
 各種ストレスに対する抵抗性を付与したうえで、収穫量、昧、食感、形態、色
 などの特性が好ましい品種を開発・育成する必要がある。

                耐病性・環境ストレス耐性が不要?

  では、人工光型植物工場での栽培を前提とした場合はどうか?   人工光型植物
 工場における植物1g当たりの生菌数(微生物の数)は通常300以下(温室植
 物の100分の1以下、露地植物の500分の1以下)である。とくに病原菌の
  数は、種子に病原菌が含まれていなければ「ほぽゼロ」だ。というのも、植物の病
 原菌はおもに土壌(培地)または媒介昆虫によりもたらされる。ゆえに、露地ま
 たは簡易施設での栽培では常にそのリスクが付きまとう。
  一方、水耕(無土壌)で栽培を行う人工光型植物工場でも病原菌の数がゼロで
 はない理由は、媒介昆虫が栽培室の出入り目および出入りする作業者の衣類や靴、
 髪の毛などとともに侵入するからである。したがって、作業者の出入りを厳重に
 管理すれば、病原菌の侵入機会を阻止することができる。

                 専用品種開発は人類の「新境地」

  前述からもわかるように、人工光型植物工場での栽培を前提とした育種におい
 ては耐病性と環境ストレス耐性がほぼ不要であり、収穫量、昧、食感、形態、色
 などの特性を第一に考えることができる。より具体的にいえば、ストレスがない
 栽培条件化においては高い収穫量と品質を誇るものの、露地や簡易園芸施設では病原菌
 の感染によりたちまち枯死してしまうような植物を専用品種として開発し得る。
  耐病性と環境ストレス耐性が不要な育種をこれまで経験したことのない人類に
 とっては「未開の境地」であるが、今後その開発がすすめば、植物工場ビジネが
 ひいては植物生産そのもののイノベーションとなり得る可能性を秘めている。

 

  重量商品化率から考える新商品開発例

                             「結球前収穫」と「ミニ葉もの野菜」

  生産者と消費者、双方にとって魅力的な商品を植物工場で開発するためには、
 「重量商品化率」(収穫時の総重量に対して実際に商品になる重量の比率)が大
 き なポイントとなる。それを物語る事例のひとつが、結球性野菜の結球前収穫
 だ。レタスやハクサイといった結球性野菜の外葉は収穫後に畑で破棄されるため、
 露地で栽培されるそれらの重量商品化率は40%程度である。一方、人工光型植
 物工場でそれらを栽培し結球前に収穫すれば、重量商品化率90~95%と、露
 地栽培に比べ収量損失を大幅に軽減することが可能になる。同時にそれらは、消
 費者の個食ニーズを満たしており、消費者にとっても魅力 的な商品といえる。

  実際、「手のひらサイズ」(草丈10~15メートル)の菜もの野菜の市場流
 通量が東アジアで増えている。これらの小型葉もの野菜はおもに鍋料理やサラダ
 に使われ、若年層を中心に人気を集めている。今後さらに需要が拡大していくこ
 とが予想されるため、人工光型植物工場における「目玉商品」となり得る可能性
 を秘めている。 

                               高付加価値の「小型根菜」

  コカブや二十日ダイコンといった小型根菜類も、今後、人工光型植物工場の主
 要生産品目となり得る。根菜類の根は、葉の同化産物(光合成によってつくり出
 されるデンプンやタンパク質などの有機化合物)の大きな吸収源となるため、人
 工光型植物工場での匝施用や送風などによる光合成促進効果が根部の肥大として
 現れやすい。また、人工光型植物工場の高度な環境制御によって「茎菜部もおい
 しい根葉」の開発・生産がすすめば、高い重量商品化率(80~90%)を確保でき、
 露地栽培とは異なる商品になる。

                商品および品種開発の。秘訣々とは?

  自然光下における結球レタスの結球条件は比較的知られており、人工光型植物
 工場でもすでに結球レタスの生産が行われている。ここで重要なのは「自然光下
 の結球環境条件を人工光型植物工場で再現する」ことではなく「結球の真の因果
 関係を生理学の基礎から明らかにする」ことだ。そうすれば、人工光型植物工場
 においてのみ実現可能な結球促進条件を見出し得る。さらに、少ない枚数の外葉
 で結球を開始する品種の開発や結球を促進する栽培法などの開発にもつながる。
  このように、自然光下での栽培法、商品化、利用法を踏襲するのではなく、新
 しい生産法、商品化、利用法などを見出すことが、今後の人工光型植物工場の発
 展に寄与するだろう。

  

 高度な環境制御で高付加価値作物に

                  環境制御の今後の課題と展望

  人工光型植物工場の大きな特長は、栽培環境を自在に制御できることである。
 今後の人工光型植物工場においては、成長促進や高収量だけでなく、たとえば同
 じ「葉もの野菜」であっても、人工光下でビタミンCやポリフェノールなど特定
 の機能性成分を露地栽培のそれよりも多く含む(あるいは含有量の低い)品種の
 開発や、その品種を生産するための、より高度かつ低コストの環境制御法の開発
 が重要性を増すと考えられる。

                  安全・安心から健康機能性ヘ

  前述のような品種開発および生産のための環境制御法は、その難易度と普及度
 合によっていくつかのレベルに分けられる。たとえば、植物の成長に欠かせない
 成分である一方、健康への影響が懸念されている硝醜態窒素(短)濃度が低い葉
 もの野菜や、微生物に汚染されていない(傷みが少なく日もちがよい&洗わずに
 食べられる)野菜の開発および環境制御(生産)法はすでに実用化されている。 
 これらの品種および環境制御法をレベル1(=すでに実用化されている)とした
 場合、レベル2(=開発中または普及中)に該当するのが、特定の機能性成分(
 ビタミン、カロテン、ポリフェノールなど)が高い、あるいは活性酸素(ガンな
 どの生活習慣病の原因のひとつとしても知られる)の消去能力が高い品種および
 環境制御法の開発である。
  そしてレベル3(=研究中)には、鉄イオン濃度が高いホウレンソウなど、特
 定の成分が豊富な品種および環境制御法の開発が該当する。

                   高鉄分・低カリウム野菜の生産も

  これらの品種および環境制御法の研究・開発には、具体的にどのような意義や
 実用性があるのか? たとえば195年~2000年の間に、露地栽培ホウレン
 ソウ百gに含まれる鉄分が13mgから2mgに低下し、淡い味になっている(ほか
 の野菜にも同様の傾向がある)。
  それに対し、人工光型植物工場の特定環境条件下で培養液に微量ミネラルを加
 えると、野菜のミネラル成分や抗酸化能が増加して食味と食感も増すと期待され
 ている。
  また、同じホウレンソウでもカリウムイオン濃度が低い品種の開発・生産が実
 用化すれば、腎臓病患者向けの「低カリウムホウレンソウ」として商品化が期待
 できる。

 


  植物工場におけるその他の可能性

                              採種と育種の期間短縮へ 

  日本の種苗会社は、販売用種子の採種のほとんどを海外(おもに発展途上国)
 で行っている。その大きな理由としては、日本の気候条件が採種に適切ではない
 こと、人件費が高いため採種コストが上がってしまうことなどがある。ただ、海
 外での採種には人件費が安いという利点はあるものの、一方で社会的基盤が整っ
 ていない、政治経済的にやや不安定である地球温暖化や異常気象に起因して良質
 な種子の安定的な確保が困難になりつつある、などさまざまな問題を抱えている
 のも事実だ。

  その対策として、人工光型植物工場で効率的かつ安定的な採種を行うという選
 択肢が将来的には考えられる。とくに、播種から採種までが半年以内で終了する
 園芸植物に関しては、育種作業を人工光型植物工場内で実施することで、通常5
 ~7年間を要する育種年数を半減することができる。さらに、播種→開花→結実
 →採種のサイクルを年間数回繰り返すことができる葉もの野菜においては、育種
 期間のさらなる短縮が期待できる。現状、このような試みはほとんど実施されて
 いないが、植物工場における低コストの採種方法が確立できれば、世界的にも価
 値ある知的財産となるだろう。

                      薬用植物の安全生産の場に

  漢方を含む東洋医学および代替医学一般の治療薬の処方効果をより確実なもの
 にするためには、高品質な薬用植物の安定的な生産と供給が必要不可欠である。
  ただ、近年の生薬、漢方製剤、サプリメント、健康食品、保険機能食品の世界
 的な需要増に伴い、薬用植物資源の枯渇や生薬の価格上昇、さらにそれに起因(
 関連)した植生地域の環境劣化(生物多様性の減少など)が問題となっている。

  そこで今後は、高品質・高収量と省資源・環境保全を両立させ、経営的にも採
 算がとれる薬用植物の栽培法の開発・実用化が必要になる。薬用植物は、重量当
 たりの価格が高いものもあり、薬効成分の量と濃度が環境条件に大きく影響され
 るという点で、植物工場での生産に適している場合が多い。

              薬用植物の生産における課題と解決策

  薬用植物は遺伝的特性の遺伝的特性に起因する発芽・生育の不揃いが多く、育
 種・採種技術に関する研究・情報公開も少ない。加えて、遺伝子マーカーによる
 品種または遺伝子特性の同定に関する研究が少なく、今後は優良個体の選抜と交
 雑による品種改良が有効と考えられる。

 

                                              この項つづく

 

    

自爆することはない。

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● ぶれるエネルギー政策 原発回帰リスク考

経済産業省は2030年の電源構成について、28日午後に原案を公表。原発は20%から22%、再生可能エ
ネルギーは22%から24%で、原発回帰が鮮明になったと報じた(「電源構成2030年、原発回帰鮮明に 
政府案」 毎日新聞 2015.04.28)。  それによると、経済産業省は28日、2030年の総発電量に
占める電源ごとの割合(電源構成)について、原発を20?22%、再生可能エネルギーを22~24
%とする政府案をまとめた。原発を新増設するか、原則40年の運転期間を延長しなければ実現しな
い水準で、安倍政権の原発回帰の姿勢が鮮明になった。28日に開いた同省の有識者委員会に提示し、
大筋で了承された。政府が電源構成をまとめるのは10年以来で、東京電力福島第1原発事故後初め
て。政府案は、30年の総発電量を13年度より1割多い1兆650億キロワット時と想定。原発
比率を10年度実績(自家発電含む)の26.4%から4~6ポイント低くする一方、再生エネは2
倍以上にする。再生エネの内訳は、水力8.8~9.2%程度▽太陽光7%程度▽風力1.7%程度
▽バイオマス3.7~4.6%程度▽地熱1~1.1%程度。

再生エネ比率を原発より高めることで、脱原発を求める世論の理解を得たい考え。だが、40年ルー
ルを厳格に運用した時の依存度(約15%)を上回る水準としたことに対し、「政府のエネルギー基
本計画で定めた、原発依存度を可能な限り引き下げるとの方針に矛盾する」との批判も出ている。ま
た、電気料金抑制のため、運転(燃料)コストが安く、昼夜問わず一定規模の発電を行う原発や石炭
火力などの「ベースロード電源」を12年度実績(38%)を上回る56%程度を確保。火力発電、
原発の燃料コストと、再生エネ固定価格買い取り制度にかかる費用との合計を13年の9.7兆円か
ら引き下げる方針も示した。政府案は、与党協議や国民からの意見募集を経て、5月下旬にも正式決
定されるとのこと(同上)。

 

● 原発の発電コストの算定根拠に疑問

これは、2月18日から4月27日まで6回にわたる「発電コスト検証ワーキンググループ」の議論を
もとに、2014年と2030年の電源別の発電コストをまとめたもの。同様の発電コストは震災直後
の2011年12月に当時の民主党政権下で試算していたが、その後の状況変化をふまえて再検討した
ものであるが、これに対して、日本のエネルギー政策の方向性を左右する重要な指標の1つが
電源別の発電コスト想定。政府の委員会が2014年と2030年の発電コストを試算した。予想通り
最も安く見積もった電源は原子力で、電力1kWhあたり10.1円である。安全対策費や核燃料サイ
クル費用を過小に評価だと指摘されている(スマートジャパン「2030年の発電コストが決まる、
原子力は10.1円、太陽光は12.7円」2015.04.28)。それによると、2014年の発電コストから見
ていくと、最も安い電源は原子力である(下図)。1kWhあたりのコストは10.1円になった。た
だしいくつかの条件が付く。すでに廃炉が決まった発電設備を除いて43基がすべて稼働する前
提。新規制基準に基づく追加の安全対策費や、使用済み燃料のサイクル費用についても、火力
発電の二酸化炭素対策費用と比べ桁違いに小さく見込む、と指摘し、原子力に次いで発電コス
トが低いのは一般水力(小水力を除く)の11.0円である。続いて石炭火力の12.3円、LNG(液化
天然ガス)火力の13.7円の順になる。石油火力は15種類の電源の中でも最高の30.6円で、5種類
ある再生可能エネルギーよりも高い。二酸化炭素排出量を含めて考えると、早急に規模を縮小
していく必要があると解説しているが、水力発電より原子力発電がコストが低いというはいか
にも説得力がないように映る。 

 

● 放射性廃棄物の処理費は0.04円!?

コストの算定が難しい点では、原子力が最たるものと言える。いまだ再稼働のめどが立ってい
ない発電設備が大半を占めているにもかかわらず、43基が運転することを前提にして2030年
の発電コストを算定した。稼働する発電設備が少なくなれば、当然ながら1kWhあたりの発電コ
ストは上昇する。原子力の発電コストの内訳をみると、6種類の費用が入っている(上図)。
このうち建設費を中心とする資本費と運転維持費は算定しやすいが、残る4つの費用は不確定
な要素を含むが、とくに「追加的安全対策費」と「核燃料サイクル費用」は格段に増える可能
性が大きい。

そして、追加的安全対策費は電力会社が1基あたり約1000億円と見込んでいるのに対し601億円
しか見込まず、43基の中には老朽化した発電設備も多く、実際には1000億円を大きく上回る
安全対策費の追加が必要になるだろうと指摘される。従って、核燃料サイクル費用に関しても
非現実的な前提をもとに過小見積だ。いまだに核燃料のサイクル設備が稼働していないにもか
かわらず、使用済みの燃料を20年から45年かけて100%再処理できることを想定し、費用を試算。
さらに、高レベルの放射性廃棄物の処理費に至っては、電力1kWhあたりわずか0.04円しか計上
されてないが、最終処分場のめども立っていない状況では、そもそも費用を試算すること自体
が不可能で、もはや原子力発電のコストが安くないことは広く知られている。今回の試算をう
のみにする国民が決して多くないことを政府は早く認識すべきであると結むすんでいる。

 

これらの意見などを踏まえると、政府自民党寄りの、経済産業省の今回の「2030年 電源構成(
案)」は、再稼働ありきの「ゴリ押し姿勢」が露骨になったものであるとが理解できるだろう。
青色発光ダイオードの発明者でありノーベル物理学賞受賞者の天野浩・名古屋大教授が、NH
Kのインタビューに答え、総電力の30%の原子力発電量程度は発光ダイオードやパワー半導
体で十分代替可能だと指摘するように、原発稼働"ゼロ"の現状を踏まえれば、さらには太陽光
発電を代表とする再生可能エネルギーの技術進歩や普及で十分たり得るだろう。まして、現在
の「製造責任」や「社会的責任」の経済活動倫理に照らし合わせれば、使用済み核燃料の廃棄
物処理法も未解決なまま売電することなど全くの不可解で、すぐさま、小規模な試用発電設備
のみを残し、残りのすべての原発を廃炉扱いとするのが原則であろう。

みかたを変えて考えてみよう。ネパール中部で25日、マグニチュード(M)7・8の強い地震
(東日本大震災の30倍の強度)が発生、首都カトマンズなどで5000名?の死者、多数のビルや
家屋が倒壊しているように、火山・地震といった地殻が活動期にあるような昨今、同程度の地
震が中南海トラフで発生すれば、福島第一原子力発電所は再倒壊、放射性物質、汚染水、汚染
残土による汚染を引き起こすだろう。また、その上、新たな甚大な原子力発電所事故が1箇所
だでも発生すれば、この国が滅亡に至るような惨劇やダメージを抱くことはたやすいだろう。
敢えて言うなら、再稼働させなくても同様な惨劇やダメージがひき起こされるだろう。悪いこ
とは言わない、自爆することはない。直ちに、この案は見直すべきである。

Millions of tonnes of radioactive soil and debris, filmed by drone footage, can be seen
packed in black bags in a temporary storage site at Tomioka, Fukushima prefecture,
Thursday.

 

 

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