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八十八鯛から大阪都構想 

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 ● 今夜は八十八鯛から

彼女が誕生日だというので南彦根の徳特兵衛へ。いつもの席に座り、いつものように眼精疲労
対策の「大トロ」(『トロをめだして徳特兵衛へ』 2011.07.10)と「茹でげそ」を注文。さて、
つぎをと、掲示ボードに目をやると「八十八鯛」 という文字が飛び込む。そこで寿司職人に尋
ねる。あれって、どういう鯛なの?、と。"ヤトヤダイ" という宇和島海産の真鯛という返事。
もちもちとした食感が半端じゃないので、これって本当に真鯛なの?とつぶやく。そこで、ネ
ットサーフ。 この名は四国八十八ヵ所になぞらえてつけられる。深い緑の山々が豊饒の海を育
て、その海から発信される四国を代表するブランドとなるようと愛媛県漁連らが立ち上げ、飼
料メーカーや生産者の精進で普及する。

    

たしかに、高い弾力性のあるモチモチ感を生かすには、和風ペーストの料理となりえるが、そ
れなら、薄造りやカルパッツチョに向いている。いわば、さかなの生ハム仕立てにするには、
燻製や炙り焼きにできそうで、オールオイル漬けやバターコートもありだという連想から、こ
のまえの福井の鯖へしこの延長で、さばへしこの骨を抜き、フードプロセッサーでこし、マスカルポー
ネチーズ(クリームチーズ)を混ぜてた「へしこチーズ」をコートすれば、あっさりとした八十八鯛に油脂と
鯖へしこの辛みと旨味がマッチングし絶品の「へしこチーズ添えの八十八鯛カルパッツチョ」が頭の中で
完成する。

 

 

● 大阪都構想派にエールを その1

大阪都構想の是非をめぐる住民投票が27日、告示された。来月月17日に行われる投票の結果が
大阪の将来を大きく左右するだけでなく、日本の政治経済体制が、明治以降続いてきた薩長幕
藩中央集権遺制や戦後の開発中央集権制を遺制を払拭し、成熟した民主国家を標榜する地方分
権制への移行に向けたターニングポイントであるとわたし(たち)は考えているが、そのこと
を考察をすすめるために。まず、佐々木信夫中央大学教授の「大阪都構想:住民投票と「特別
区」お創成は何を生むか」(上)(現在ビジネス 2015.04.30)を参考にしてみる。



 日本では、市町村の大都市特例として府県の仕事を市に移譲する「政令指定都市」という
 仕組みが始まったのが1956年(昭和31年)である。最初、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸
 の6大市を指定してスタートしたが、現在20市まで増えた。百万人とか1千万人とかの人
 々が暮らす大都市をどのようなシステムで運営していくか、世界のどの都市でも大都市経
 営には苦労をしている。そこで使われる大都市制度も様々な工夫が凝らされているが、大
 別すると大きく3つである。

 ①〈特例都市〉タイプ:広域自治体に包括され、かつ組織の特例や事務配分の特例により
 広域自治体の一部を処理する日本の「指定都市」に近い制度。例えば、フランスのマルセ
 イユやリヨン、韓国の特例都市など。

 ②〈特別市〉タイプ:州・府県という広域自治体から独立させ、それと同格の権限を付与。
 広域自治体の事務と基礎自治体の事務を併せ持つ日本の自治法でいう旧特別市に近い制度。
 例えば、ドイツのミュンヘン、ケルンなど。 

 ③〈都制〉タイプ:その区域内に法人格を持つ区や郡を包含しつつ、広域自治体の事務と
 基礎自治体の事務を併せ持つ日本の〈都制〉(都区制度)に近い制度。例えば韓国の広域市、
 ドイツの都市州など

 日本の場合、大阪、名古屋、横浜など20政令市が①タイプ、東京が③タイプだが、今度、
 大阪都構想が実現すれば大阪は①から③タイプに移ることになる。

                   -中略-

 戦後、法律上認められながら実現しなかった「幻の特別市」制度と引きかえに、妥協の産
 物として生まれた「大都市に関する特例」にすぎない。地方自治法をはじめ個別法におい
 て、人口百万人以上の基礎自治体に行政裁量によって府県の権限の一部を上乗せする特例
 扱いを積み重ねてきた仕組みにとどまり、大都市の持つ潜在力を十分発揮するにふさわし
 い制度とはいいがたい。

           「大阪都構想:住民投票と「特別区」の創設は何を生むか」(上) 
   

 
つまり、制度の根幹が一般市町村と同一の制度で、自治制度上、大都市の位置づけや役割が不
明確で、事務配分は特例的で一体性・総合性を欠き、府県との役割分担が不明確なため二重行
政、二重監督の弊害が大きいく、役割分担に応じた税財政制度が存在しないといった構造的な
問題を抱え、大都市経営としての多くの課題を抱え、膨大で複雑な行財政需要に的確に応え、
高い政策能力を発揮できない上、生活者の住民が必要とする身近な行政とはいえず大阪の24
の行政区は巨大市の出先出張所に過ぎず地方自治の単位でもなければ、住民代表によって運営
されている訳でもないと指摘しつつ、70~百万程度までの規模なら、それなりに合理性を持
つ現行制度だが、2百万とか3百万に及ぶ巨大市の場合、政令市制度は不十分で、住民自治を
強化する仕組みとして(1)府県行政と大都市行政の二重行政の弊害を取り除き、(2)司令
塔の一元化、(3)大都市に対する国・県の二重監督の解消のためには、大阪都構想が掲げる
特別区を内包する都制度(都区制度)を採用するのが妥当な選択だろうと述べている。

                                   この項つづく

 

                                                                                                                                                

 

  ● 今夜の一枚

Ichiro’s home run caps Miami Marlins’ 7-3 win against Mets

41歳のベテランの一発にベンチもスタンドも大興奮。「チームメートもファンの人もあんなに
喜んでくれたら泣きそうやね。みんなにこんな(雰囲気を)つくってもらって、というのは初
めての経験」と語る。


Read more here: http://www.miamiherald.com/sports/mlb/miami-marlins/article19917378.html#storylink=cpy

 


大阪都構想にエールを。

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● 大阪都構想派にエールを その2

ところで、都構想のはしまりはいつだろう。1953年12月の大阪府議会「大阪産業都建設に関する決議」
が始まりとされ、大阪府・市を廃止して大阪都を設置し、市内に都市区を設置するとされる。ところが
2000年に、太田房江大阪府知事(当時)が大阪府と大阪市の統合を掲げた大阪新都構想を唱えるまで、
議論は市民レベルになかったもののわたし周りにも東京に転出する学童がでてき、東京オリンピック開
催をさかいとして、金融会社などの本社が東京に集中していく(寧ろ、京都本社は残っていく)。2001
年には「大阪府行財政計画」に「大阪都」という言葉が表現されているが、この発言に対し磯村隆文大
阪市長(当時)が大阪府を初めとする都道府県から独立した「スーパー指定都市」、「特別市」を主張
し対立している。

それから、しばらくして、橋下知事(当時)を代表とする「大阪維新の会」が大阪府全域を「大阪都」
とし、大阪市・堺市の政令指定都市を解消させ大阪府と一体化させる構想を2015年までに実現を目指す
ものとして提案される。特別区については、東京都23区をモデルとしつつ、東京23区よりも独立性が高
く、一般市よりも権限範囲の広い中核市レベルの自治体を想定し、20区内の水道・消防・公営交通など
の大規模事業は、区内の固定資産税・法人税の税金などを収入を財源として都が行い、住民サービスや
その他の事業は20区の独自性に任せる提案を行うが、以降今日に至るといのがその経緯である。

 

 さて、「大阪都構想」の賛否を決める大阪市民対象の住民投票が、27日告示された。焦点は、大阪市
民の住民参加、府と市の二重行政の2点。特に後者は、インフラ整備の遅れをはじめとする巨大な経済
損失をもたらしている」と高橋洋一株式会社政策工房 代表取締役会長が(「大阪都構想」を逃せば大阪
の衰退はさらに進む」(『高橋 洋一の俗論を撃つ!』2015.05.01 ダイヤモンド・オンライン))を寄
稿している.


 ・まず第一に人口 270万人の大阪市に1人の公選市長より5人の公選区長を住民が選ぶという住民
  参加の方が、よりきめ細かい行政ができる。270万都市を1人の公選市長、公選議会でマネージメ
  ントしている先進国都市はない。ニューヨークでもロンドンでも、基礎自治は小さな単位で自治
  権を有する特別区とし、住民が参加している。今の大阪市の「区」は24もある。しかし、これ
  は、役人区長の行政区というもので、公選区長の東京都の特別区とはまったく違う。大阪都構想
  が実現すれば、大阪市に今は1つしかない、教育委員会が5つ、児童相談所が5つ、保健所も5
  つになる。さらに、予算編成権も5つになって、より細かなエリアに対応できる。
   これは、地方政府内で権限を分権化することによって、住民サービスを向上させるものだ。基
  礎的自治体として必要な教育委員会、児童相談所、保健所が人口270万人で1つではきめ細かい
  行政はできないはずだ。
   大阪都構想の反対派は、最初に600億円ものお金がかかると言うが、試算では17年間で2700億
  円ほど浮くからたいした問題でない。これは、後述する二重行政の問題を見れば、初期コストが
  かかるとしても、改善のための長期投資とも言える。

 ・第二に、大阪都構想は、大阪市と大阪府の役割分担を見直して二重行政を排除する目的がある。
  東京都と東京23特別区を見れば、23特別区は福祉や義務教育など身近なサービス、東京都は
  交通網整備や都市計画等広域行政サービスと役割分担がなされており、二重行政の声はない。と
  ころが、大阪市と大阪府は、「ふ(府)し(市)合わせ」というくらいに、府と市の行政が二重
  になっている。
   この点、大阪市長の橋下徹氏の言葉によれば、「大阪市民は広域行政を府税で負担しています。
  さらに大阪市で広域行政をやってきたから市民は二重の負担を負わされてきたのです」となる。

               「大阪都構想」を逃せば大阪の衰退はさらに進む」(『高橋洋一
                の俗論を撃つ!』2015.05.01 ダイヤモンド・オンライン)

 具体例として、広域行政の目玉である交通インフラが酷く、大阪全体の計画がなく、実行者不在が問
題と指摘し、これを明らかにするために、まず、高速道路について、大阪を東京と比較してみせる(指
摘された該当者や団体にとっては冷や汗ものだが)。

 

①阪神高速、首都高速ともに、国の出資は50%だが、実額で見れば、首都高速は、関西高速に
比べて30%以上多く国の出資は、無利子融資と同じで、国は補助金を与えている。財務省の
政策コスト分析では、2005年当時において、将来の36年間で、阪神高速は2083億円、首都高速
は3199億円の国からの財政支援を得るといる。 ②両社ともに、主要役員は44名だが、その出身を見ると、阪神高速は、鉄道会社1、国交省2、
プロパー1に対し、首都高速は東京都2、国交省1、プロパー1である。阪神高速においては
大阪府と大阪市がともに出資して、どちらも1人の役人を送り込めず、首都高速は、東京都出
資が集約されているため2人も役人を送り込んでりるに大阪府と大阪市は関与できず、国から
の天下りが跋扈する一方で、首都高速は、国からカネをうまく引き出し、役員も送り込み東京
都が運営の主導権を持っている。 ③東京の中央環状線は、今年3月7日に全線開通した。筆者の家は東京区部の北にあるが、ドア
ツードア30分で田空港に着くが、一方、大阪では大阪都市再生環状道路がまだできていない。
淀川左岸線延伸部がミッシングリンクになっている上に、二重行政(ふ(府)し(市)合わせ)
で淀川左岸線延伸部ができず、大阪都市再生環状道路は実現できずにいるが、これは東京では
ありえず、東京都だけ行っている。

               「大阪都構想」を逃せば大阪の衰退はさらに進む」(『高橋洋一
                の俗論を撃つ!』2015.05.01 ダイヤモンド・オンライン)

 

 以上のように、国土交通省近畿整備局の資料では、阪神高速道路放射線(都心方向)と環状線との合
流部では1日当たり4時間以上の渋滞が発生しているし、大阪市内の交通渋滞で年間約2700億円の損失
が発生させており、こうしたムダをなくすためには、大阪都構想の初期コスト600億円という批判とは
とるにたらない、つまり「角を矯めて牛を殺す」「針小棒大」「木をみて森をみず」の類だとし反証し
大阪における社会インフラの遅れ――高速道路淀川左岸線延伸部、関空アクセス鉄道、今里筋線井高野
北伸など――が見られるがこの解決策が大阪都構想であり、大阪都構想をきっかけとして、大阪が、二
極の一つになれば首都のバックアップ機能が整備できると指摘した上で、大阪市は政令市の中で人口減
少し衰退している希有な存在だが大阪都を逃せばその傾向はさらに拍車がかると警告し結んでいるが。
完全なバックアップできるかを別に、これは傾聴に値するものだろう。

 

ところで、高橋洋一は「財政再建には順序がある 増税は最後の手段」(『高橋洋一の俗論を撃つ!』2015.
04.16 ダイヤモンド・オンライン)で、消費税は地方税とすべき地方分権との関係で考えよと述べてい
る。


  こう考えると、消費税は、国の社会保障目的税ではなく、地方税とすべきという結論になる。消
 費税は一般財源だが、国が取るか地方が取るかという問題になる。地方分権が進んだ国では、国で
 なく地方の税源と見なせることも多い。
  これは、国と地方の税金について、国は応能税(各人の能力に応じて払う税)地方は応益税(各
 人の便益に応じて払う税)という税理論にも合致する。というわけで、日本を含めて給付と負担の
 関係が明確な社会保険方式で運営されている国が多い。もっとも保険料を払えない低所得者に対し
 ては、税が投入されている。ただし、日本のように社会保険方式と言いながら、税金が半分近く投
 入されている国はあまり聞かない。


                               「財政再建には順序がある 増税は最後の手段」(『高橋洋一
                 の俗論を撃つ!』2015.04.16 ダイヤモンド・オンライン)

                                                         この項つづく

 

 

 ● 太陽光エネルギーを水素へ高効率に変換 :   安価で簡便なシステムにより実現

              太陽光エネルギーから水素への変換効率を15.3%まで高めることに成功

 

 

通常の水分解電気化学セルの「電流-電圧特性」は。理論的には、1.23Vの電圧印加で、水の電気分解が
起こり、電流が流れ始めるるが、実際には、1.48Vの電圧が必要(1.238÷1.48×100=83.6%)。理由は
電気化学セルの内部電気抵抗で、エネルギーロスする(下図参照)。

 
※ Hydrogen Generation Using Electrochemical Water Splitting via Electricity Generated by Nature Energy
      Journal of the Japan Institute of Energy,vol94,No.1,2015

 最も一般的なシリコン太陽電池は、電池1つの最大出力電圧が0.6~0.7Vで1つの太陽電池で水の電気
分解を行うには、エネルギー不足。そこで、理化学研究所の研究グループは、太陽電池の直列接続を行
い、水の電気分解可能な電圧まで電圧を高めるとともに、もっともエネルギーロスの少ない接続方法に
ついて検討。
 
 まず初めに、研究チームは、シリコン太陽電池と電気化学セルを使った場合の光エネルギーから水素
エネルギーへの変換効率を求めました。シリコン太陽電池を3個直列に接続した場合は2.0%、4個直列
に接続した場合は、6.1%であり、いずれも変換効率が良くないことが分かったが、これはシリコン太
陽電池自体の光電変換効率が悪いことによる。 

そこで、フレネルレンズを用いて太陽の位置に合わせ効率よく集光できるタンデム型太陽電池を使用し、
エネルギー変換効率の向上を試みる。その結果、光エネルギーから水素エネルギーへの変換効率が12.
2%と非常に高い変換効率が得られた(下/左図)。しかし、太陽電池の最大出力点(最大出力電圧
2.12V、最大出力電流95.9 mA)と電気化学セルの動作点(動作電圧1.55 V、動作電流999.
8 mA)の間に大きな差が存在している。そこで、タンデム型太陽電池を2個直列、電気化学セルを3個
直列に並べることで太陽電池の最大出力電圧と電気化学セルの動作電圧が近づくようにすると、エネル
ギー変換効率が15.3%まで向上した(下/右図)。

 

 

 

  ● 今夜の一枚

Nepal earthquake: Teenager pulled alive from rubble on Day 6 

 

葱坊主と愚かな愛

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                     藤房と葱坊主なる海老煎餅の里を帰りなん 




                               われおもふゆゑ十字架と葱坊主    


                                                          石原吉郎

 

ゴールデンウィークを強く意識しているわけではないが、少し出ようというので作業の手をとめ
る近くの多賀サービスエリアのEXPASA多賀店まで出かけるが、真夏日和とのことで少し歩
きはじめ、ドライブ・マイ・カー"のロードスターは駐車場に乗り込みチンチンをものともせず
現場までナビで走り出す。途中工事中もあり余裕なく上り車線側のサービスエリアの駐車場にと
め売り場に行き係員に尋ねると、下り線側にしか、つまり株式会社えびせんべいの里の本社があ
る名古屋方面からしか置いていないとのことの説明を受けるが、半知半解というか、そんな暗黙
の商習慣なるのかと訝しく吹っ切れないまま。それでも陸橋を渡り目的のEXPASA多賀店で
彼女が買い物が終わるまで待ち、ランチ用のサービスエリアの笹寿司などを買ってかえる。

 

駐車場近くの農家の家庭菜園では、藤の木の傍のねぎ坊主が、真夏日和の大空に坊主頭を並べて
いる。溢れる生命感に惹かれ思わずデジカメする。ところで、このごろ物騒なというか、家の周
辺を暴走する車を目撃するなどのことがありバックナンバーを控えるために常備携帯することに
しているのだ。さて、家で買ってきたレモン風味の笹ずしを食べ、夕食前にはビールと烏賊の七
味煎餅を試食するものの、前者は、柿の葉寿司のような酷(深みのある味)がなく物足りないし、
烏賊煎餅はべたつき喉が渇くという具合だが、これも重大なものではない好みの差の話だがそん
な感想をもった。

ところで、巻頭の俳句は、戦後詩の代表的詩人である石原吉郎の作品。「われおもふゆゑ」は、
フランスの哲学者・数学者・物理学者であるルネ・デカルトが1637年にオランダのレイデン
において、著者名なしで初めて公刊した『方法序説』の第4部にある有名な第一原理である。デ
カルトは、数学を除く諸学に失望し、方法的懐疑を通じて哲学の第一原理としての「我思う、故
に我おり」に到達した。すなわちすべての存在を疑ってかかった末に、すべての存在を疑ってい
る「我」の存在について次のように述べているという(柴崎 聰 「石原吉郎の俳句の短歌」日本
大学大学院総合社会情報研究科紀要 No.8, 295-301 2007)。そして「十字架」と「葱坊主」は
「我」ほどに重要な存在ということになる。「葱坊主」とは、「球状についた白い小さな花を坊
主頭に見立てたもの」である。「葱」に宗軟性はないが、「坊主」にかろうじて宗教臭さがある。
坊主頭であった有原自身を「葱坊主」に見立てたのかもしれない。坊主頭に見立てたとするなら
「おもふ」主体と重なってくる。この場合の 「おもふ」は、「信じる」に限りなく近い精神の
働きなのではないだろうかと述べているが、これほどまでに象徴的な暗喩に表現するとは大変な
驚きだ。

● 今夜のアラカルト Cauliflower with Leek "Ash"

牛乳でトリミングしたカリフラワーを茹でパンを加えブレンダー処理しピューレにする。そこに
残りのカリフラワー小花に加え塩で味をつけし柔らかく煮たものを皿に入れ、予めスライスして
おいたカリフラワーを飾り、その上からロースト葱の小片を振りかける。

 

   

朝からは葉刈り剪定で忙し一日だった。 体力の減衰を感じ、俄のローイングを百回やるが持続
させなきゃ駄目と言い聞かせているんだがね。

● デジタル革命は地球をを救えるか : インテルの10ナノメートルチップ

デジタル革命は、高度資本主義社会、電子情報通信技術の進展とともに胎動し産み落とされ、現
代進行中である。しかし、反面急速に膨張した人類の経済活動は、エコロジカル・フットプリン
トでの環境容量を遙かに凌いでしまっている中、端的な例を示せば、2006年の世界のエネルギー
消費量に比べ、通信情報機器の急増により、2025年には9.4倍の4.6兆キロワットアワーに達
すると見込まれている。つまりは、21世紀の最大の課題は「地球環境ガバナンス」であり、地
球環境劣化、人口増加、南北格差拡大等の人類社会の持続可能性(サステナビリティ)の問題を解
決しなければ人類が滅亡するような破局を否が応でも想定しなければならないと、いわれている。

民主的な社会においては、個々の人々がサステナビリティに関する十分な知識を有して、判断し、
行動するのでなければ「地球環境ガバナンス」という目標を達成することは到底不可能。このよ
うな意味で、人々がいつでもどこでも必要な情報にアクセスでき、リスクと便益とを考慮して意
志決定し、行動し、意見を述べ、政策決定に参加し得る高度情報化社会、ユビキタス社会の実現
が、人類社会の持続可能性を高める前提となる。

民主的な社会においては、個々の人々がサステナビリティに関する十分な知識を有して、判断し
行動するのでなければ「地球環境ガバナンス」という目標を達成することは到底不可能だ。この
ような意味で、人々がいつでもどこでも必要な情報にアクセスでき、リスクと便益とを考慮して
意志決定し、行動し、意見を述べ、政策決定に参加し得る高度情報化社会、ユビキタス社会の実
現が、人類社会の持続可能性を高める前提となる。で、その核心をなすのが、科学技術コミュニ
ケーションといわれているが、肝心要の電子情報通信技術等の世界消費エネルギーが「地球環境
ガバナンス」を超えるような事態が各地で生じるとも限らない。

これに答えるように、2010年にインテルは、プロセス技術の今後の進展に備え、量子井戸電界効
果トランジスタ(QWFET:Quantum Well Field-Effect Transistor)の取り組みを前進させる。同社は
2008年に、高速で低消費電力のQWFETを初めて披露していたが、このQWFETは、40ナノメー
トルInSb(インジウム・アンチモン)材料をベースにして、pチャネル型構造を形成したもので、
0.5Vの電源電圧で140GHzの遮断周波数を達成する。このようにSi(シリコン)材料で実現し得
るレベルを超える性能や低消費電力性を達成するための手段として、Ⅲ-Ⅴ族系の半導体材料を使
ったトランジスタを模索する研究が進めてきた。



このように、Intelは10年近くにわたり、量子井戸電界効果トランジスタ(QWFET)の研究を進め
てきた。Intelの10ナノメートルチップは、Ⅲ-Ⅴ族半導体、具体的にはInGaAs(インジウム・ガリ
ウム・ヒ素)とGe(ゲルマニウム)を用いたQWFETになると予測しているが、半導体のアナリス
ト、David Kanterは、自身のWebサイト「Real World Technologies」に投稿した記事の中で、Intelは
10ナノメートルプロセス以降、QWFET(Quantum-Well FET:量子井戸FET)を用いるようになると
指摘。この新たなトランジスタ構造では、2つの新素材――n型トランジスタ向けにInGaAs(イン
ジウム・ガリウム・ヒ素)、p型トランジスタ向けにはひずみゲルマニウム(Ge)――が用いられ
るようになる。

つまり、Kanterの予測が正しければ、Intelは早ければ2016年に、動作電圧が他社に比べて200mV
低い(1Vから0.8Vに低減)トランジスタを10ナノメートルプロセスで製造できる可能性がある。
他のチップメーカーは7ナノメートルプロセスまでIntelの技術に追い付くことができず、少なく
とも2年の後れを取ると見ている。彼はは、自身の予測の信頼度を80~90%とした上で、Intelが
10ナノメートルプロセスに関する計画を明らかにするのは1年以上先になると指摘、この見解
は、Intelが主に「International Electron Devices Meeting(IEDM)」で発表した24本の論文に基づき、
チップの製造に関連するIntelの特許も分析。「私が得た情報は全て、IntelがQWFETを採用すると
いう方向性を指し示しているが、重要なのはQWFETを用いるのかどうかという点ではなく、それ
を10ナノメートルで採用するのか、7ナノメートルで採用するのかという点である」という。
が、これは目が離せない話題だ。



【関連特許例】

・US 8,748,269 B2  Quantum-well-based semiconductor devices 
・US 8,680,575 B2  Semiconductor device and method of fabrication
・US 8,501,508 B2  Method of forming quantum well mosfet channels having uni-axial strains caused by
                                metal source/drains
・US 8,378,334 B2 Low power floating body memory cell based on low-bandgap-material quantum well 
・US 8,344,418 B2   Materials for interfacing high-K dielectric layers with Ⅲ-V semiconductors

  ● 今夜の一曲

Silly Love Songs  
Paul McCartney’s 10 Greatest Songs After The Beatles March 6, 2013 12:00 AM

心のラヴ・ソング (Silly Love Songs) は、1976年に発表されたポール・マッカートニー(Paul
McCartney )率いるウイングス(Wings)の楽曲。アルバム『スピード・オブ・サウンド』から
シングル・カットされ、評論家のリチャード・ゴールドシュタインに「ポールはバラードしか
書けない」と批評された事に対し、ポールが「馬鹿げたラヴ・ソングの何が悪い?」と切り返し
た曲とされる。独特のイントロは、ピンク・フロイドの「マネー」のテープループに触発され
また、イントロは、日本の幼児番組『ひらけ!ポンキッキ』で頻繁に効果音として用いられた。

いま、ポールは来日し公演しているが、今回で公演来日が最後になるかも知れない。暫く、ポールの楽
曲を楽しみたい。

樺太に植物工場を。

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【新弥生時代 植物工場論 16】


 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を
  施設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所に
 とらわれず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めてい
 ます。その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産
 コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や図解を用い
 て様々な角度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技術革新などに
 よってもたらされるであろう将来像についても、アグリビジネス的な視点や現状
 もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書となっています。

           古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」
  

  【目次】  

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか

  

  薬膳レストラン併設植物工場

                    都会で行う「近未来農園」

  2013年に大阪・梅田に開業した「グランフロント大阪」は、梅田貨物駅跡
 地を中心とする約24ヘクタールの「うめきた」(都市再生緊急整備地域内)に
 おいて、大阪経済活性化の拠点として最も注目されるビジネスとサービスの複合
 施設だ。なかでも「ナレッジキャピタル」はその中核施設として位置づけられて
 いるが、同施設の6階にある薬膳フレンチレストラン「旬穀旬菜」には「旬穀旬
 菜シティファーム」という名の植物工場が併設されている。

  コンセプトは、「都会で行う近未来農園」。季節の葉もの野菜や根葉、果菜、
 ハーブなど60種類以上の野菜を栽培・収穫し、また収穫した野菜は実際に「旬穀
 旬菜」で使用するなど、店産店消によるフードマイレージ・ゼロの第6次産業化
 の実践を試みている。

                   「近未来農園」野菜の特長
 
  「旬穀旬菜シティファーム」では、特殊なセラミックの筒内に植物の根を張ら
 せる「セラミック栽培」を導入している。
  その特長は、①農薬を使う必要がない、②水耕でありながら、根の周りの環境
 を腐葉土と同等の環境で野菜を育てられる、といった点だ。また、セラミック容
 器の空洞のなかを表面に沿って伸びる根は空気にも接しているため、常に適度な
 ストレスがかかる。そのストレスによって野菜に複雑な代謝を促し、風味や香り
 が豊かになる。
  さらに、ロート製薬研究開発所の調べによれば、クレソンに含まれるβカロテ
 ンや、ミニトマト、赤パプリカ、黄パプリカに含まれるビタミンCなど、栄養素
 や機能性成分の含有騒が標準値に比べ高い値が測定されている。なお、この栽培
 技術はハイトカルチャ社の特許技術で、2012年には同社が製作した宇宙栽培
 用特殊セラミック製の種子発芽実験装置を積んだロケットが打ち上げられ、宇宙
 空間でも同様の機能により植物栽培実験が行われている。

                  「農」と「食」の可能性を拡大

  「グランフロント大阪ナレッジキャピタル」には、企業や研究機関、大学、ア
 ーティスト、消費者らの交流・展示スペース、コンベンション施設、多目的劇場
 などがある。「旬穀旬菜シティファーム」のほかに、パナソニックセンター大阪
 のカフエ「フーディ・フーディ」にも8台の小型植物工場が並んでおり、農と食
 における新たなコンテンツ開発やビジネスモデル創造の火付け役となることを期
 待したい。



  甘草(カンゾウ)の水耕

                 漢方製剤に欠かせない「甘草」

  甘草(カンゾウ)はマメ料の多年草で、その根や地下茎に肝機能改善や抗炎症
  抗アレルギーに効能があるとされるグリチルリチンと呼ばれる有効成分を含んで
  いる。現在、日本における一般漢方製剤の70%以上に原料として処方されてお
 り、甘草を用いた漢方製剤市場は2500億円といわれる。
  
 このように、甘草は我々の生活に欠かせなぃ植物のひとつであるが、実は国内使
 用量の100%を輸入に頻っている。また、供給量のほとんどを野生植物に依存
 しており、乱獲するとその跡地が砂漠化しやすく、主要輸出国の中国は2000
 年以降、野生甘草の採取制限をしている。
  さらに、世界的な生薬の需要増による価格高騰や生物多様性条約を背景とする
 資源国との利益分配などの問題も加わり、安定供給に懸念が生じはじめている。


                  日本初―・甘草の水耕に成功

  そんななか、鹿島建設㈱が㈲医薬基盤研究所および千葉大学の協力のもと、日
 本初となる甘草の水耕システムの開発に成功した。
  甘草の水耕は1970年代から多くの研究者が手かけてきたが、いまだ実用化
 には至っていない。その要因としては、優良な苗の入手が困難であること、水耕
 では細根が大量に発生し根が肥大しないことなどがあるが、鹿島建設は、医薬基
 盤研究所が選抜した有効成分の含有量が高くなる系統のは草苗を特定の条件下で
 栽培し、適度なストレスを与えることで、根を肥大化させることに成功した。

                             実用化に向けた課題と展望 

  水耕による甘草の利点としては、①露地の土耕では収穫までに4年以上かかる
 が水耕では約1年で収穫できる、②生物および有害物質などの付着の危険性が低
 い、などがある。

 ①生産コストが高く現状では採算がとれない、
 ②植物工場産が漢方製剤の原料として用いられるにはより多面的な評価が必要な
 ど実用化に向けた課題もある。

  ただ、中国における生薬の平均価格が2007年から2010年の4年間で2倍
 になるなど、価格高騰の懸念は年々高まりつつある。また、甘草は漢方製剤のみなら
 ず化粧品やシャンプーの原料としても用いられているため、新たな市場開拓も期
 待できる。甘草を含めて、多くの種類の薬用植物の水耕・植物工場栽培の実用化
 に向けた今後の展開に注目したい。

 

  良質な野菜苗の大量生産

                     高まる購入苗の必要性

 「苗半作」(よい苗を育てることができれば、作物栽培の半分は成功したような
 ものである)といわれるように、苗の善し悪しによってその後の生育や最終的な
 品質・収穫量が大きく左右される。ゆえに、農家は良作田をつくるために多大な
 労力と細心の注意を払う必要があるが、一方で、その管理における時間的・精神
 的負担はかなり大きい。
  そこで、自家育苗を行わずに購入作田を用いる農家が年々増えており、そんな
 購入苗需要に応えるべく、育苗を専門に行う業種がここ十数年発展を遂げている。

                 育苗業における減農薬への課題

  ただ、育苗業には課題も少なくはない。
  まず、技術面だ。品質の高い苗を生産し続けるためには熟練の技術が必要とな
 るが、経験が必要とされる熟練技術者の養成は容易ではない。
  さらに、農薬取締法の改正である。これにより、購入苗においても農薬使用履
 歴表示が義務づけられたため、利用する農家側からは、登録農薬の総使用回数制
 限の点から育苗段階における農薬使用回数を減らしてほしいとの要望が出ている。
 これは、育苗業にとってはかなりの難題といえる。
  加えて、近年トマト栽培に大きな被害をもたらしているトマト黄化葉巻病の存
 在だ。育苗段階での防除が重要であることから、育苗ハウスヘの厳重な防虫ネッ
 ト設置をはじめ、対策に伴う生産コスト増などが課題となっている。

             露地栽培との「共生」を物語る先進事例

  そのようななか、2000年に設立されたベルグアース㈱や、2003年に設
 立した㈲徳島シードリングでは、閉鎖型苗生産システム(苗生産に特化した植物
 工場、商品名・苗テラス)を導入し実稼働させている。トマトの接ぎ木苗や台木
 枯木生産用の苗テラスを中心としたこの育作田施設からは、それぞれの社で、年
 問約1000万本100万本の接ぎ木苗が出荷されている。
  植物工場で苗栽培を行うメリットは、①自然条件に左右されないため、高品質
 な作田を短期間で安定的に生産できる、②害虫が付かないため農薬が不要などさ
 まざまあり、前述の育苗業における課題を解決し得る。そしてそれは、結果的に
 購入苗を用いる農家のためにもなる。
  植物工場と露地栽培はよく「競合する」と懸念されがちだが、それらが「共生
 する」ことを物語る事例のひとつといえる。

 

 

  JAが取り組む人工光型植物工場

                   JA初の本格的な植物工場

  福島県の「JA東西しらかわ」は、2014年1月より試験栽培を開始、白河
 市表郷金山で人工光型植物工場の運営を開始した。育苗、水耕プラント、出荷調
 製室など延べ床面積約500平方メートルのこの工場内では、1株80g程度の
 レタス類やミニハクサイが1日に約3000株生産されている。
  同JAが植物工場の導入に着目した最大の理由は、原発事故の放射性物質によ
 る風評被害対策だった。人工光型植物工場であれば、放射性物質に汚染される心
 配がない。これによって風評被害を払拭し、安定供給による産地づくりに結びつ
 けたいとの思いがあった。
  同時に、外部環境を遮断するため自然環境に左右されない植物工場は年間を通
 して安定的に量、品質を保つことが可能であり、日本の農業のみならず世界の食
 料供給のなかで非常に大きな意味合いがあると感じたことも、植物工場の導入を
 後押しした。  

                    地元雇用の剔出にも貢献

  また、一般の野菜栽培は「自然が相手」のため気候に影響されるが、人工光型
 植物工場の栽培空間は常に気温、湿度、照明などが一定で、作業環境が快適であ
 る。加えて、植物の成長を実感しやすいため作業が楽しく、農業経験のない人で
 も容易で、女性の働く場所として適している。
  この点が、同JAが植物工場の導入に至ったもうひとつの理由である。
  植物工場を建てても、運営者・指導者に栽培できる技術、知識がなければ植
 物をきちんと育てることはできない。もちろんJAには栽培のプロがそろってお
 り、その点に不安はない。そういう意味で、JAが植物工場を建てるのは理想的
 だ。

                   地域農業の先進的モデルヘ

  植物工場運営における課題のひとつに販路があるが、同JAでは、同JAおよ
 び連携JAの直売所での販売や、地元の学校給食への供給などを実施している。
 また、同JAはこの数年、「みりょく満点」のブランド戦略で産地づくりに成果
 をあげているが、このブランド品の特徴は、ミネラル成分を含んだ鉱物資源の肥
 料を使っている点にある。これは、植物工場における機能性付与にも相通じる部
 分だ。
  同JAのチャレンジが、地域農業の新たなビジネスモデルとなることを期待し
 たい。

 

 
  生産性を増す人工光型植物工場

                  日本最大の人工光型植物工場

  人工光型植物工場の増加に伴い、個々の工場の面積が拡大、生産性も向上して
 いる。現在、日本最大の人工光型植物工場は、株式会社スプレッドが経営してい
 る工場だ。
  スプレッドは、2006年に野菜工場事業を目的として、京都府亀岡市で設立
 された。人工光型植物工場である「亀岡プラント」は、人工光型多段式湛液水耕
 方式を採用し、2007年に稼働を開始。2009年に増設をし、さらに生産力
 を増強している。
  現在、建物面積は2870平方メートルで、天井高は15・7m、光源は蛍光
 灯を使用している。育苗に20~22日問、栽培に18~20日間かけ、1日当たり2万
  3000株ものレタスの出荷が可能である。年間を通してみると、730万株も
 のレタスを出荷していて、日本の植物工場産レタス市場ではトップクラスのシェ
 アを誇り、生産量も世界でトップクラスの多さだ。
 
               生産から販売までをグループ企業で
 
  スプレッドが自社内で構築した研究体制、大空間での高度な生産管理技術など
 といった実績は、世界中からニーズがある。そのため、世界各地でスプレッドの
 植物工場である「Vegetable Factory」が展開しつつある。
  また、スプレッドの強みは、青果業界を縦断して事業を展開するトレードグル
 ープのメンバーということもある。トレードグループは、生産、流通、物流、広
 告、販売それぞれの連携をはかっているのだ。スプレッドは、このうちの「生産
 」の領域を担っている。トレードグループは包括的な事業展開をすることで、「
 生産から消費までをカバーする野菜の総合商社」を目指し、青果業界に新しい風
 を吹き込んでいる。

                                独自のブランド名で流通

  スプレッドが生産するレタスは、「ベジタス」というブランド名で流通してい
 る。全国のスーパーや百貨店など約に100社と取引きし、1袋約200円で販
 売されている。ベジタスの人気には、以下の理由が考えられる。①年間を通して
 価格が安定している、②露地ものに比べてビタミンAが豊富、③生産工程におい
 て、農薬を一切使用していないので洗わずに食べられる、などである。実績も好
 調で、今後は首都圏での工場稼働も視野に拡大路線は続いていくだろう。
  スプレッドでは、植物工場による「未来の子供たちが安心してくらせる持続可
 能社会の実現」という目標達成に向けて、チャレンジを続けているのだ。

  人工光型植物工場・世界の動き

               輸出産業としての人工光型植物工場

  28頁で触れたように、日本が牽引してきた人工光型植物工場市場はいま、アジ
 ア各国、カナダやアメリカに止まらず、ロシア、モンゴル、中東といった、自然
 環境の厳しい国や地域での広がりが注目されている。
  日本ではこれまで、植物工場の研究に対して政府が支援を行いながらその実績
 を積み上げてきた。さらに近年は、次の展開として海外をにらんだ戦略を立てる
 企業が増えている。
  日本から輸入した高級野菜の市場がもともとある香港やシンガポールでは、と
 くに植物工場の需要は増している。
  国内市場だけでは市場規模が限られるので、より食料問題環境問題が身近で、
 農業を取り巻く環境が厳しい地域こそが、フロンティアとなり得るのである。

                  極寒の地モンゴルの植物工場

  モンゴルの首都ウランバートルでは、2014年に日本企業である株式会社み
 らいが建設した植物工場が稼働を開始した。延べ床面積が各450平方メートル
 の植物工場2棟で、建設費は約2億2000万円。LED照明を活用して野菜を
 生育する完全屋内型の工場である。
  ウランバートルは、豊富な鉱物資源を背景に高い経済成長が続いている。その
 ため、新鮮な野菜の需要が従来よりも高まり、植物工場へ白羽の矢が立ったので
 あった。
  モンゴルの自然環境は大変厳しく、野菜栽培には適さない。

  極寒期の外気温はマイナス35℃にもなり、乾燥していて砂嵐に見舞われやすい
 などの特徴もあるからだ。そのため、野菜はほぼ全量を中国から輸入してきたが
 輸送コストがかかるうえに新鮮ではない。みらいはこの地で、完全密閉型の人工
 光型植物工場を建設し、無暖房栽培を可能にした。みらいには以前にも南極の昭
 和基地に植物工場を導入した実績があり、モンゴルの植物工場建設にもつながっ
 たといえる。

                 企業間プロジェクトによる展開

  このプロジェクトは、もともと千葉銀行がウランバートルで開いた商談会がき
 っかけで実現した。モンゴルの大手飲食店であるノマヅグループとみらいが結び
 ついたかたちだが、バックアップする企業はほかにもある。建設資材を運ぶ国際
 物流は、千葉銀行と取引がある日本通運が担当。同じく、業務提携先の企業が海
 上保険、貿易保険を担当する。このように、植物工場の世界展開にはさまざまな
 事業が付随し、一大プロジェクトになっていくのである。

 

尚、初期投資対策(例えば、無利子融資制度・減価償却期間の長期間化)を政府が担保す
ることができれば短期間に普及していくだろうし、モンゴルの事例のように、極寒・極暑地帯
では完全制御型植物工場の無利子融資を担保できれば技術的課題だけでなく関係国の友
好が密接になる。さしずめ、ロシアの樺太サハリン地区で展開できればと、考えてい
る。非制裁政策(日本型ソフトパワー政策)で積極的平和主義的外交を成功させてみ
てはいかがなものか。

また、ブログでも取り上げてきた山葵の栽培。柏崎市の石地わさび園で地下水をくみ
上げ山葵を露地ハウスで栽培、地下水はマス養殖に再利用している(下イラスト参照)。
既に、岐阜大学などで人工光型=完全制御型植物工場で試験栽培されている。ところ
で、石地わさび園の施設に、シーズニング(調味料)などの完全な安全・品質の追従
(トレーサービリティ)できる加工生産工場を追加できればなお結構。

                                               この項つづく

 

  ● 今夜のアラカルト 枝豆と山葵のディップ

                                             

  ● 今夜の一曲

Helen Wheels  
Paul McCartney’s 10 Greatest Songs After The Beatles March 6, 2013 12:00 AM

「愛しのヘレン」は、1973年にポール・マッカートニー&ウイングスが発表した楽曲。
アルバム『バンド・オン・ザ・ラン』で行われたラゴスでのレコーディング・セッシ
ョンで制作、同アルバムのアメリカ盤に収録された。本国イギリスではオリジナル・
アルバム未収録のものの1993年「ポール・マッカートニー・コレクションシリーズ」
の一環として発売された『バンド・オン・ザ・ラン』の再発CDにボーナス・トラッ
クとして収録。タイトルの「ヘレン」は、ポールが自分の自動車に付けた名前。スコ
ットランドにある自分の農場からロンドンへ戻る旅路を歌詞にしている。

地方分権の税制考

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● 大阪都構想にエールを その3

                                           特別区の魅力は多くある

さて、いま東京だけで使われている特別区制度は、昭和50年の区長公選復活までは東
京都の内部団体とされていたが、現在は一般の市町村と同じ基礎自治体で、人口が高
度に集中し日々変化し続ける大都市東京において、区民が安心して豊かな生活ができ
るまちを創るために機能している。特別区は独自に、また相互に連携して新たな課題
にチャレンジし続けている。公選区長、公選議会を有する一般市以上にダイナミズム
に富む活動をする特別区だが、意外に知られていないのが、大阪市など政令市の行政
区と何が違うのか。同じ「区」という呼び名でも、実は全く違う。下記に、住民投票
で特別区を選ぶか、いまのままの行政区を選ぶかの分かれ目になるポイント一覧した。 

つまり、行政区は政令市の出張所として自治権は一切ない。特別区は自治体なので法
人格もあり、公選の長、議会がおかれ、立法権に当たる条例制定権も課税権も有する。
大阪市の行政区と今度、創設を予定している特別区は全く違う。東京でいえば、特別
区がある区域は、880万の人々が暮らし、1千万人を超える人々が活動する巨大な大都
市地域。このため、他の大都市のようにひとつの基礎自治体がこの地域全体を受け持
つのではなく、それぞれの特別区が基礎自治の役割を担い、広域自治体である東京都
が広域政策、広域行政を担う役割分担の下に、相互に連携しながら東京大都市地域の
行政に責任を持つ、独特の大都市制度となっている。

また、上下水や地下鉄、バス、消防、港湾、病院などを都が受け持つ一方、都と23区
間の財政調整のしくみがあり、特別区に住む880万住民は23区間の財政力の差はあって
も、ほぼ均等のサービスを享受できる。住んでいる人々にとって、セフティネットの
張られた、安心、安全、生き生きと暮らせる制度となっている(佐々木信夫中央大学
教授の「大阪都構想:住民投票と「特別区」の創成は何を生むか」(下) 現代ビジ
ネス 2015.05.02)。

 

                                                                      東京都制度の 魅力

そして、同上で都制度の魅力をつぎのように説明する。

都制度(都区制度)の 魅力は、50万単位で基礎自治を担う特別区を設置し、広域行政
広域政策は都に一本化するという点にあり、特別区の住民にとっては「自治の原則」
と 「均衡の原則」を同時に実現できる一方、広域自治体である都にとっては、都政と
して大都市の一体性を確保した戦略的な都市経営ができるという点にある。東京の特
別区、いわゆる23区では、880万の人々が暮し、昼間は1,200万人もの人々が活動して
いるが、この巨大な大都市地域に集まる人口や産業を対象とする大都市行政は、各特
別区が個性を発揮しながらも、全体として円滑に行われる必要がある。

このため特別区は、相互に連携・協力しながら、様々な行政課題に取り組んでいる。
特別区は、区民に最も身近な基礎自治体であるが、地方分権が推進され、地方自治体はこ
れまで以上に自らの判断で、地域ニーズに応じた個性的な施策を展開することが可能となっ
ている。特別区も、互いに競い合いながら地域特性を生かした様々な行政活動をし、他の区
よりより優れた低い コストのサービスを実現しようと競い合っている。公選制のよさが遺憾な
く発揮されているのが、特別区制度である。

大阪が都制度(都区制度)になれば、これまで大阪市に1つしかなかった教育委員会
が5つできるし、府の機関であった児童相談所が5つでき、保健所も5つになる。府費
負担教員(市の公立学 校教員)の人事権も特別区に移る。何よりもより細かなエリア
に予算編成権が来るのである。条例制定権と予算編成権が5つの特別区ができることで
生まれる。

大規模地域計画は大阪都の権限となるが、それをやるやらないは、これまでの府市の
争いではなく、都知事選挙でやるやらないを決めた方がはっきりする。それを可能と
するのが都制度である。さらに進めることだけなく、やらないことをスピーディに決
めるのも重要ではないか。特別区に限らず、いまや各自治体は創意工夫しながら、住
民福祉の向上を競う時代である。その中で、福祉や医療をはじめ、子育て・教育・災
害対策など大都市地域特有 の課題に挑戦していかなければならない。

東京をみると、その課題解決に向けて、特別区は互いに連携・協力をしつつも、時に
はよきライバルとして競い合いながら、時代を先取りした施策に果敢に取り組み、区
民の期待に応えようと頑張っている。そこで働く公務員も、わが区を他の区に負けな
いまちにしようと、前例 や待ち受ける困難な状況を打ち破り、新たなものをつくろう
と張り切って仕事に打ち込んでいる。この姿を見たとき、大市役所の出先である区に
配置された職員と全く違う顔を見ることができる。人間、権限と責任を負ったとき真
剣勝負をする。と、佐々木信夫は指摘するが概ね賛同できるものであるが、東京との
比較において、財政基盤の後背に関する税制改革の考察が抜けている。



高橋洋一が「財政再建には順序がある 増税は最後の手段」(『高橋洋一の俗論を撃つ
!』2015.04.16 ダイヤモンド・オンライン)で、(1)消費税は、国の社会保障目
的税ではなく、国の社会保障目的税ではなく、地方は応益税(各人の便益に応じて払
う税)という税理論と合致する地方税にすべきという理由からと、(2)東京一極集
中による行政的経済リスク回避策――これには、規制緩和・民営化等により地方の権
限の拡大を図る「小さな政府」を標榜するという「新自由主義的分権」と住民方自治
を伸張させる「民主主義的分権」という2つのイデオロギーの潮流ある――と(3)
デジタル革命渦論に象徴される第5次産業革命と英米粒金融資本主義によるデフレと
格差拡大には、応能税への課税シフトとわたし(たち)が提案する地域別逆格差法人
税制などの是正政策が不可欠であり、これらを包括し「大阪都構想」をして賛同した
糸考えている。

                                この項了

※「国と地方の税財政関係の再構築の方向性―税源移譲のあり方、意義及び効果の検
 討を中心として ―」 松田直樹税務大学校 研究部教授 国税庁 2005.03.11

 

 

 

  

【新弥生時代 植物工場論 17】


 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を
  施設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所に
 とらわれず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めてい
 ます。その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産
 コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や図解を用い
 て様々な角度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技術革新などに
 よってもたらされるであろう将来像についても、アグリビジネス的な視点や現状
 もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書となっています。

           古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」
  

  【目次】  

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか

 
  植物工場が病院の癒し空間に

                  「街中植物工場」の新展開

  植物工場の大きな可能性のひとつに「街中植物工場」という考え方がある。ス
 ーパーやコンビニに植物工場が併設されれば、一般市民が植物工場を通して農に
 親しむ機会が増える。
  小型の植物工場を売り出す企業も増え、レストランや商業施設への導入事例は
 増加傾向にある。屋外に設置できる小型植物工場もあり、駐車場に設置し、交通
 整理の人員の片手間の作業として運営する例もある。
  さまざまな小型植物工場設置の取り組みのなかでも、病院に設置した例は注目
 に値する。病院だからこその効果と可能性を探り、いろいろな試みがなされてい
 る。

                    榊原記念病院の取り組み

  東京都府中市にある榊原記念病院では、病院に入って真っ直ぐすすむと、ディ
 スプレイとしても機能する植物工場に行き着く。1階ロビーのいちばん目立つ場
 所に置いてあるので、来院者、入院患者の見舞い者など、皆が足を止めるという。
  榊原記念病院は循環器系を専門とする病院で、来院者には重篤な患者も多く、
 専門性が高い医療が展開されている。そんななかでも、統合医療という考えを大
 事にしていて、西洋医学に加えて人間の心身全体を診る代替医療にも注力してい
 る。その取り組みの一環が、植物工場の導入だった。

  2012(平成24)年4月にロビーに植物工場を設置。来院者の目を楽しませ
 る癒しの空間を目指し、木質で覆われたディスプレイのデザインを採用した。工
 場内では、レタス各種、小松菜、バジルなどのほか、地方品種であるカツオ菜な
 ど、多様な植物を育てることに挑戦。職員が毎日世話をしいるので、生育管理も
 きめ細かくできている。管理作業時には、直接来院者から植物工場について尋ね
 られたり、収穫した野菜を食べてみたいという要望を伝えられることがあるそう
 だ。
  収穫した野菜は職員に配布しており、2013年度には植物工場産野菜が試験
 的に職員食堂でも採用された。今後は、院内で収穫した植物工場の野菜を来院者
 用レストランで提供することを目標のひとつにしている。


                        来院者や地域住民に親しんでもらう

  衛生管理をはじめとした壁もあるが、来院者が主体的に植物に関わる素地は次
 第に育まれている。今後は、来院者や地域住民の直接的な意見に耳を傾ける機会
 や、収穫した野菜を試食してもらう機会をつくることも視野に入れている。

 


  福祉型植物工場

                      雇用創出の新機軸

  24頁で述べたように、植物工場が注目されるのにはさまざまな社会的背景があ
 る。そのなかには、植物工場が創出する雇用への期待が含まれる。
  植物工場内は植物の成長に適した環境を一年を通して保っているので、人間の
 作業環境としても快適である。
  さらに軽作業が多いので、高齢者、障がい者などの働く場としての適性が充分
 にある。また、植物を扱う作業なので働きながら一定の癒し効果が得られると考
 えられている。
  早くは2000年代初頭から、障がい者の就労施設としての植物工場が設立さ
 れてきた。設置から10年余りを経て、利益を上げ、増設、増産を果たしている工
 場が出てきている。

                        社会福祉法人が運営する植物工場

  たとえば、2013年に佐賀県武雄市に設立された「やさい工房・あんスリー
 武雄」は、NPO法人緑風会が運営する障がい者就労支援施設であり、人工光型
 植物工場である。この植物工場が設立された理由は、食の安定供給、安心・安全
 農業の課題解決などの社会問題を憂いてのこと。
  そしてもうひとつは、障がい者の就労施設がとても少ないという現状を変えた
 いとする強い想いがあったからだ。
  稼働中の野菜工場部分の面積は889平方メートルで、一日当たりレタスを
 1850株、年間最大で67万株を出荷することが町能な施設で、光源は蛍光灯を
 利用している。
  現在主力として生産しているのは、フリル・アイスというグリーンリーフの一
 種で、葉先がフリルのように縮れていので、ボリューム感が出るのがもち昧であ
 る。植物工場野菜の利点である、洗わなくても食べられるクリーンさを活かし、
 サラダやレタスのように肉を巻いたり、手巻き寿司の海苔代わりといった食べ方
 が適している。出荷先は大手コンビニや市内宿泊施設だが、さらに販路を開拓し、
 工場をフル稼働させることが今後の課題である。

                   癒し効果のある植物工場
 
  障がい者が働く場としての植物工場では、作業を単純にする、軽作業にするな
 どの工夫がなされている。あんスリー武雄でも、13名のさまざまな障がいをもつ
 方が働いており、その作業はいろいろと工夫がされている。
  植物に接していると次第に作業者の表情が明るくなっていくなどの効果があり、
 植物に触れる職業としての農業の福祉面での可能性を感じさせる事例である。

  空き工場・空き店舗の活用

                                   地域資源活用のための植物工場

  生育環境を人工的にコントロールする植物工場では、植物を生産するにあたり、
 その地の自然環境に左右されることがない。これは遊休地や荒れ地、日陰など露
 地での野菜生産がむずかしい場所でも、生産活動ができるという利点となる。
  とくに人工光型植物工場については、密閉空間ですべての生育環境を制御する
 ため、空き工場や空き倉庫などがあれば撤去することなく利用できる。

  光源をはじめとした植物工場を運営するためのコストは、年々減少していて、
 大企業ならずとも新規参入する機会が増えてきている。建物の再利用や雇用の創
 出が課題になっている地域が多く、植物工場は、地方創成のアイデアのひとつに
 位置づけられるだろう。 

                  「ウベモクファーム」の挑戦

  山口県宇部市に本社を構える株式会社ウベモクは、1928年に創業した建材
 メーカーだ。この老舗会社が、新規事業として植物工場事業に乗り出し、「ウベ
 モクファーム」を開設。商店街の空き店舗を利用した人工光型植物工場を運営し
 ている。このプロジェクトには、ウベモク以外にも山口大学発のベンチャー企業
 宇部市雇用創造協議会など6つの山□県内の企業や団体が参加している。野菜の
 生産はもちろん、商店街の活性化や高齢者の雇用といった地域的な課題解決への
 意気込みを感じる。
 
  改装前の工場は、どこにでもある商店街の一店舗だったが、建築業で培った実
 績と協力企業などのスキルを駆使し、小さいながらも充分機能的な工場が完成し
 た。野菜販売の店舗営業も同地で行い、客が工場内の見学をすることが容易だと
 いうのも、この工場の特徴だろう。小規模だからこそ、さまざまな植物工場の可
 能性にチャレンジしている。

    空き店舗が次第に植物工場になっていく様子を、ブログでいきいきと伝えてい
 る。経過報告の閑話休題として、入居する商店街の紹介なども適宜挟み込まれ、
 植物工場が商店街活性化のためにあることがうかがえる。


             ウベモクファームのベビーリーフ販売

  ウベモクファームは、2014年4月から稼働を開始し、9月に店舗をオープ
 ンした。商品は、午前と午後の1時間、工場に併設する店舗で販売している。ま
 だはじまったばかりの事業だが、街に聞かれた植物工場としての展開が注目され
 る。

 

  植物工場の市場規模予測

                  植物工場市場が活況な理由

  植物工場の数は、2009年の農地法改正や経済産業省、農林水産省による事
 業をきっかけとした、製造業などの異業種からの新規参入などにより、増加の一
 途をたどっている。具体的にみると、人工光型植物工場は201年現在、165
 工場が稼働しており、そのうちの乍分か2010年以降に稼働したものである。
  栽培技術の進歩、生産管理手法の確立、光熱費ゃ人件費、物流コストの削減な
 どの理由から、異業種参入のハードルが下がったのだ。また、栽培品目も多様化
 している。人工光型植物工場では、相変わらずリーフレタスが栽培の主力ではあ
 るが、結球レタスのほか、機能性野菜や健康食品の原料植物、イチゴなどの栽培
 も行われている。

                        異業種からの新規参入

  異業種による新規参入の例をみてみよう。ある自動車会社では、太陽光型植物
 工場でパプリカ栽培を開始した。パプリカは消費者に人気だが、9割を輸入に頼
 っていることに着目。施設や栽培に関してはオランダの技術を取り入れた。自社
 の自動車工場の廃熱を利用するなどして、既存の設備を活かしている点が特徴で
 ある。将来は自社の販売網を利用した輸出も視野に入れており、堅実な道筋を立
 てている。

  また、今後成長産業になる、機能性野菜の生産を担うことで、大学などの研究
 機関や地域振興事業のバックアップを受け、新規参入を果たした企業もある。こ
 れまでの支援が強かった植物工場のプロジェクトが、ビジネスとして本格的に育
 ってきたことがうかがえる。

                         予想される市場規模 

  このように植物工場での栽培の可能性も広がり、参入も容易になると、今後は
 市場規模の拡大が予想される。矢野経済研究所の調査では、人工光型植物工場の
 市場規模(野菜の生産額)は、2015年から2025年の10年間で3倍になる
 と予想されている。予想ではやはり、機能性野菜として低カリウムレタスの増産
 が著しいことや、医薬品としての野菜の栽培が伸びることが示唆されている。

  一方、国内の太陽光型植物工場も、2025年の市場規模は1057億円にも
 なり、10年間で3倍以上に連すると予想される(次頁)。工場の建設をはじめと
 した植物工場関連市場に目を向ければ、植物工場ビジネスはさらに拡大の余地が
 ある。

                              この項つづく

 

 

  ● 今夜の1つのプロジェクト

ILC(国際リニアコライダー; International Linear Collider)計画は、全長約30キロメ
ートルの直線状の加速器をつくり、現在達成しうる最高エネルギーで電子と陽電子の
衝突実験を行う計画。宇宙初期に迫る高エネルギーの反応を作り出すことにより、宇
宙創成の謎、時間と空間の謎、質量の謎に迫る。ILC計画は、現在欧州CERN研究所で
稼動しているLHCの次に実現するべき有力な大型基幹計画として、世界中の素粒子物
理学者の意見が一致している計画。ILC計画を進めるために、アジア・欧州・米国の
3極の素粒子物理学者による国際共同研究チームが作られ、日本の研究者も世界中の
研究者と密接に協力しながら研究を進めているもの。

※「ILC 計画に関する技術的波及効果等調査分析」

 

スター・ウォーズの日

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誰が5月4日を映画「スター・ウォーズ」の日としのだろうか?昨日はその記念日であることを知る。
東京は港区の六本木ヒルズでは、この日に合わせ、ファンたちが映画のキャラクターにふんし集まる
イベントが開かれた。5月4日は英語で「May 4th」と発音し 「フォースと共にあらんことを」とい
う意味の映画の中のせりふ「May The Forece be with You」との語呂あわせから「スター・ウォーズの
日」と決められたというが、それに輪を掛け、ディズニー・クルーズラインが2016年1月から4月ま
で、ディズニー・ファンタジー」の西カリブ海クルーズで映画『スター・ウォーズ』をテーマにした「
スター・ウォーズ・デー」を設定。各種特別イベント――今年12月公開予定の最新作『スター・ウ
ォーズ/フォースの覚醒』の上映や、デッキ・パーティー、キャラクターとのふれあいイベント、特
別料理やドリンクの提供、限定グッズの販売などを行う。実施日は2016年1月09・23日、2月6日・
20日、3月05・19日、4月02・16日を予定。また、「ディズニー・ドリーム」は今年秋の改装で、子
ども向け施設「オセアニア・クラブ」をスター・ウォーズの宇宙船「ミレニアム・ファルコン」のよ
うに変身させる。同映画をテーマにした工作やゲームなどを行う予定。劇中に登場する銀河共和国の
騎士「ジェダイ」の研修生として、武器のライトセーバーを操るトレーニングなどにも参加できる。
改装は2015年10月04日から24日に行う――を実施するというからして、商業主義的な演出か何かしら
ないが、これに乗っていいものか妙なコンプレックスな気分だ。



ところで、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』の日本公演の思い出。中国プラント建設
のプロジェクトの最中の帰国時に梅田のOS劇場で映画鑑賞したのだが、心身の疲れもあり、ワイド
スクリーンのイントロの音響に圧倒され気分悪くなり一旦退出仕掛けたが思いとどまり何とか最後ま
で見終えた記憶ががある。もう少し記憶をたぐると、このころは一種のストレス性のパニック症候群
に悩まされていたが、脳活動は最高潮状態で、6つ位のプロジェクトを逐ったの回転板が直列で繋が
れ、それぞれが任意の速度で回転している状態であり、メモされた数桁の数字をたやすく暗算できた
り、独自の工学的数式を考案できた――もっとも現在は、休憩中の囲碁の地合い計算やチェスの一手
先を読むこともままならないが――体験が思い出される。

さて、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒(原題 Star Wars: The Force Awakens)』は、完成すれば
『スター・ウォーズ・シリーズ』の7番目の作品となる。ディズニーによるルーカスフィルム買収後
初の『スター・ウォーズ』映画となるが、オリジナル3部作の最終章『エピソード6/ジェダイの帰
還』の約30年後の物語を描いているというが、詳細についてはまだ発表されていない。エピソード
6は、エピソード5より1年後、ルーク・スカイウォーカーとレイア姫は惑星タトゥイーンに住む犯
罪王、ジャバ・ザ・ハットの宮殿に潜入し、ハン・ソロを救出する。その後、修行を終えるため惑星
ダゴバに戻ったルークは、死の床にあった師ヨーダと霊体として現れたオビ=ワン・ケノービから、
ダース・ベイダーの正体がかつての彼の父アナキン・スカイウォーカーであること、さらにもう一人
のアナキンの子供――レイアが妹であることを知らされる・・・というストーリーだったが。エピソ
ード7は劇場まで行くか?それはわからない。

 

 

 

2015年4月29日に発売された浜田省吾の18枚目のオリジナル・アルバム 『Journey of a Songwriter 〜 旅す
るソングライター』が話題となっている。ことし5月11日付のオリコンアルバムランキングでが初登
場1位(初週売上8.0万枚)を獲得し、首位獲得は2000年11月8日発売のベスト盤『The History of
Shogo Hamada "Since 1975"』以来14年半ぶり。オリジナルアルバムの首位は1996年11月25日付の「青
空の扉」以来18年半ぶりで「オリジナルアルバム歴代最長間隔首位獲得記録」を樹立。なお、同週付
のアルバムランキングでは、浜田が75年のデビュー当時ドラマーとして在籍していたバンドAIDOの
『AIDO Complete Collection』(4月29日発売)が初週売上5,014枚で初登場11位。シングル・アル
バムを通じ初のランクインしてトップ20入りを果たす。

 

  君の歌が聴こえてくる  心の一番きれいなところから

  オレの声は届いてるか? 遠く離れても遠く離れても


  どこにいたって君を想ってる

  ロンドン パリ ニューヨークシティー 札幌 博多

  でもどこにいようと オレはオレで変わりようがない

  ナイスガイってタイプの人生規範から見事に外れて

  曇り 土砂降り後 快晴


  青空の下を駆ける 時には嵐の日だってある

  でも生きるんだ 呼吸止めすに

  成し遂けたことよリ 今をどう生きるかって考えている

  自分忘れの旅の途上で
 

  君がいなけりや生きていけない

  何をしたって意味が無い

  でもいつも傍にいるわけじゃない 旅は今日も続く

  失われた時さがして 月に向って唸る 歌う 吠える


  最後は空に手を伸ぱし 慈愛と許しを乞うかも

  浅い夢が終わる時に

  いつか帰るはすの故郷 今もノメーシ出来てないけど

  どこだっていいんだ 君がいれぱ


  アスファルトを踏みしめて

  高層ピルの隙間から昇る太陽

  同じ太陽 世界中で見た

  涙と笑いと嘆きの入り混る感情抱いて

  人は生きてた 生きてた 生きてる

 

 

                                              『旅するソングライター』

                                              唄/作詞/作曲 浜田省吾


冒頭の「君の歌が聴こえてくる/心の一番きれいなところから/オレの声は届いてるか?/遠く離れ
ても遠く離れても」で全て凝縮される。あとはアップテンポで軽妙な曲に乗せて流れる。ところが、
平凡と思える歌詞がすぐれた楽曲の構成と演出で躍動している。

   ● 今夜の一曲

With a Little Luck  
Paul McCartney’s 10 Greatest Songs After The Beatles March 6, 2013 12:00 AM

しあわせの予感(With a Little Luck)は、1978年にポール・マッカートニー&ウイングスが発表した
楽曲のシングル。なお邦題は当初「愛の幸運」。アルバム『ロンドン・タウン』の9曲目に収録。L
P版ではB面冒頭の曲。『ロンドン・タウン』の洋上セッションでレコーディングされ、シングルカ
ットは1978年4月23日で、『ロンドン・タウン』からのカットでは1枚目。米国でのビルボード誌で
は、1978年5月20日に週間ランキング第1位を獲得。ビルボード誌1978年年間ランキングでは第28位。
キャッシュボックス誌では、5月20日、28日、2週間第1位を獲得している。この曲はポールならで
はの類い稀なる音楽センスが発揮されている。「癒し系」の一曲と評されてもいるが、特にベースと
クラシック系アレンジのキーボード、シンセサイザーの響きが生きている。


 

 

ダウンスペーシング農法

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さて、この連載も今夜で終わるとなる。どのようなまとめになるかわからないが、
ここまで概ね期待に沿った内容となっている。



【新弥生時代 植物工場論 18:ダウンスペーシング工学】 

 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を
  施設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所に
 とらわれず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めてい
 ます。その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産
 コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や図解を用い
 て様々な角度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技術革新などに
 よってもたらされるであろう将来像についても、アグリビジネス的な視点や現状
 もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書となっています。

           古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」 

  【目次】  

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか

 


  食べる人への認知拡大
 
                  「直売所」ではまとめ買いも

  近頃、野菜の値段が高い。とくに露地もののレタスなど、菜もの野菜で目立つ。
 これは梅雨時期の豪雨や、夏から繰り返し上陸する大型台風のせいで、畑に苗を
 植え付けるのが遅れたため。長雨では病気が多発し出荷量も減る。
  そんななか、「植物工場野菜」の直売所に買いに来る人が増えている(千葉県
 流山市・採れたてやさい直売所「やさいばこ」)。一番人気の「グリーンリーフ
 」は、まとめ買いする人もいて、早くから売り切れになることが多いという(グ
 リーンリーフは、鮮やかな美しい葉で料理に映える。かすかにほろ苦く大人の昧
 )。
  まとめ買いするのは、長くおいても傷まず、いつまでもシャキシャキと元気だ
 から。植物工場の野菜は付着した生菌数がごく少ないため日もちし、洗わずにそ
 のまま食べられる。

                  買った人・食べた人の感想は

  実際に買ってくれた顧客の感想はどうだろうか。店舗が集めたアンケートでは、
 工場産野菜を選んだ理由の1位は、昧・品質がよい、2位が、安全性が高い、3
 位は、野菜の種類(好みの野菜がある)だった。
  個別の感想(自由回答欄による)をみると、「やわらかくておいしい」「新鮮
 で歯触りがよくおいしくいただきました」「安全な野菜なので安心して毎日食べ
 ています」「洗うのがカンタンでいいです」「(ほかの店では)夏しか買えない
  スイートバジルが鮮度もよくおいしかったので感激!」などがあった。一年中新
  鮮で品質のよい、好みの野菜が手に入る店があれば、確実にリピーターは増える。
 とくに一人暮らしや老人夫婦だけの家には、少量に小分けされた「長もち・安心
 野菜がピッタリだ。

               まだ知られていないよさをアピール

  次頁に、植物工場野菜のもつアピールポイントを挙げてみた。「洗わずに食べ
 られる」と自信をもっていえるだけの清浄な野菜であること。農薬・害虫の心配
 がないことは、とくに女性への大切な訴求点である。硝醜態窒素が少なく、「い
 やな苫昧がない」こと、「日もちがしていつまでも新鮮」なことも大事な特長だ。
 こうしたよさを消費者はまだまだ知らない。食べてみないとよさはわからない。
 生産者の側も、試 食の機会を増やすなどして、そのよさを実感させる必要があ
 るかもしれない。

  

  小さな植物工場を家庭へ

                             育てる楽しみ、食べる楽しみ

  「植物工場」という21世紀型の農業を、家庭やオフィス内でやってみたいと思
 う人たちもいる。植物工場のプラント関連企業が、家庭用のミニプラントを開発
 し、さまざまな形と機能をもつ製品が急増している。
  そのなかのひとつに、「水耕栽培器・グリーンファーム」がある。高さ約30m
 幅約54m、奥行26mで、電子レンジを少し横長にしたような大きさ。室内専用で
 、栽培数はレタス・菜もの野菜で10株、ベビーリーフ系・ハーブ系で20株。栽培
 ケースには培養液が約4L入る。光源は省電力な白色LED照明で、消費電力は
 排気ファンを含めて30W。点灯時刻・時間は、タイマーで自動調節できる。

                   気流の発生で野菜を健康に

  次頁の図が、「水耕栽培器・グリーンファーム」の基本的なしくみである。次
 の3つの装置(機能)が付いている。

  ①LED照明(省電力の光源)
  ②ファン(気流発生・光源からの熱の排除と除湿)
  ③エアポンプ(養液への酸素供給)

  ②のファンは、外の空気から二酸化炭素を取り入れ、気流で葉に送って光合成
 を盛んにし、蒸散による過剰な湿度上昇を抑えてくれる大切な機能である。
 この栽培器には冷房・暖房の装置はない。室内のエアコンからの空気(室温15~
 30℃)を使うことになる。

                    理解者・支援者を増やす

  野菜の種子(23種類)と液体肥料はオンラインショップから購入。苗床パネル
 に種子をまいて、野菜やハーブなどの育ちを観察し、約30日で収穫が楽しめる。
  利用者の感想をみると、「植物栽培のおもしろさ、不思議さを子供たちと楽し
 みました」「清潔で安心、インテリアにもなり、友人たちとのサラダパーティが
 楽しみ」「診療室にもおけるくらい清潔感がある」などがある。
  野菜とともに暮らし、働く、新しいライフスタイルが広がっている。

  学校でも「食農教育」のツールとして、千葉県の浦安市などで「小型植物工場
 装置」を導入する動きが出てきた。野菜を健康に育てるには何か必要なのか。光・
 空気・水・養分・温度・湿度・風の基本を学ぶなら、室内の装置がわかりやすい。
 こうして学んだ子供たちは植物工場のよき理解者・支援者になってくれるだろう。


 


この頁の「小さな植物工場を家庭へ」に関して、【新弥生時代 植物工場論 Ⅸ】(
還らざる『転位のための十篇』』 2015.04.23)の「スウェデポニックシステム」の
紹介の補足注釈として「人工光型植物育種システム」の派生ビジネスモデルとして考
察していることを書き留めておく。
 

  新規参入への課題

                    人工光型植物工場の特徴を最大限に活用 

  人工光型植物工場ビジネスヘの新規参入を目指すとき、どんな検討課題がある
 のかを考えてみたい。
  何よりのポイントは、人工光型植物工場の特徴をつかむこと。その特徴を端的
 にいえば「場所を選ばない閉鎖空問のなかで、品質のよく揃った農産物を周年生
 産できる」こと。しかも「一年中、春のような快適な労働環境である」こと。こ
 の特徴を最大限に生かすことがいちばんの課題である。
  植物工場事業は、付加価値の高いものをつくらない限り、基本的に薄利多売の
 ビジネスモデルであるといわれる。そのためにも、照明器具や空調設備、栽培ベ
 ッドなどにむだな設備投資を行わないこと。また、常に9割に近い稼働率を維持
 することが、赤字経営に陥らないための大前提である。この前提を踏まえて、こ
 こではおもに市場開発・経営の面から課題をまとめてみよう。

                 人工光型植物工場定着への課題

 【何をつくるか】露地畑と同じものをつくったのでは、既存の農業と競合するこ
 とになる。一般の畑ではできない、やらないものを出荷するすみ分けが必要であ
 る。たとえば、食べればとてもおいしいのに露地畑では捨てていた間引き菜(葉
 つきの小さいニンジンなど)を商品にして回転を早める。植物工場なら、上の汚
 れを洗う必要もなく、きれいな室内環境のなか、立ったままで収穫・出荷作業が
 できる。
  新規参入者としては、ニッチな品目を周年生産することで消費を定着させ、市
 場シェアを高めることが王道である。

 【どこでつくるか】工業製品と比べて単価の安い農産物では、物流コストの占め
 る割合が大きい。流通コスト低減は、売り先に近い場所での生産が基本である。
  たとえば、流通センターや外食チェーンのセントラルキッチンに併設すれば、
 流通コストはOになる。レストランや小売店併設の「店産店消」型も、流通コス
 トはゼロになるの利点を生かした取り組みといえる。

 【誰とつくるか】人工光型植物工場の特徴のひとつは、夏でも冬でも変わらない
 快適な労働環境にある。しかも軽労働であり、雇用不足が問題になっている障が
 い者の働き場所として自立を支援できるのも植物工場の役割である。地域の高齢
 者の生き甲斐づくりの場にもなる。

 【誰と組むか】同業他社間の連携で、人口需要者の要求量に応えること。「植物
 工場協同組合」を設立し、販路を確保したい新規参入者の受け胤とすることは、
 植物工場の裾野の拡大に大きく寄与することになるだろう。

  世界的に高まる植物工場の需要

               都市人口の増加が植物工場を求める

  いま世界では、食料を取り巻く国際環境の構造的変化が起きており、植物工場
 の需要が国内外で高まっている。その大きな要因は、世界人口の増加が続くなか
 で、開発途上国を中心に都市人口が急速に増えていることにある。
  2014年前後から、農村人口と都市人口が逆転しはじめた。
  農村から都市への人口の流入がすすんで農村人口は世界的に減少し、同時に高
 齢化している(次頁)。
  世界的に減少がすすむ農村人口は、増大する都市人口の食料を提供し続けられ
 るのか。これが問題の焦点である。
  これまでの自給的な食生活から、購入依存の食生活へと、都市化は食生活のあ
 り方を変える。教育のレベルも向上して、食と健康への理解もすすみ、健康志向
 から生鮮野菜の消費が増える。品質の落ちた輸入ものを食べていた野菜輸入国で
 は、「植物工場」を開設することによって、トマトなどの新鮮な野菜を国内で自
 給しようとする動きが強まっている。

                 耕作放棄地活用の選択肢として

  日本ではどうだろうか。農業就業人口は2015年から2050年までの35年
 間でほぽ半減し、さらに65歳以上の高齢者の比率が60%から70%に上昇する
 と推定されている。高齢化によって重労働を伴う農業はできなくなり、耕作放棄
 地は 2010年には39.6万ヘクタール(放棄率10.6%)まで広がってい
 る。そうした状況のなか、軽労働でできる植物工場が注目されていくだろう。
  現在、植物工場建設市場にはさまざまなメーカーが参入し、価格競争が生じて
 きた。今後10年以内に、人工光型植物工場の設置コストも、運転コストも、とも
 に半分以下になると予測されている。そうなれば、農家の人が自力で人工光型の
 経営をはじめてもおかしくない時代となるだろう。

                   地域に根ざした植物工場ヘ

  都市農業の新たな展開として都会で植物工場が増え、農村でも施設園芸の先端
 として気象災害に強い植物工場が建てられる。個々の農家がはじめてもよいが、
 まずは地元のJAが植物工場の事業主体となって、高齢者などの「遊休人材」に
 生き甲斐の場を提供する活動が期待される。地域の保育所学校・養護老人施設な
 どに、給食として地産地消の新鮮で安心な植物工場野菜が周年で提供されるよう
 になるだろう。
 「農業」の復興を通じた地域の活性化へ、地域に根ざした植物工場ビジネスの取
 り組みに注目したい。

 

 

以上、考察をし終えたが、この著書にあるように、(1)価格安定(=供給力)と、
(2)高付加価値化の2つに目標が収斂される。前者は、食品の安全保障と直結し、
後者は、多様なユーザの要望(期待)に迅速に応える市場に直結する。そして、その
問題解決のコアシステムが、わたし(たち)がここで提案した『オール人工光型植物
育種システム』であり、読者諸氏に多少なりともご理解いただけたかと考える。そこ
での鍵語が、「高密度栽培:ダウンスペーシング」である。その技術目的の一例が、
有用な花、芽、茎、葉、根、根ひげなどの部位の肥大化やその部位に含有される機能
物質の高密度化にあり、その他の部位は生育を阻害しない程度に栽培するという生物
(生体・生命)工学である。また、その他の例としては、色素(色合い)やフレーバ
ー(風味、香味)などの改変を、(1)環境制御のみ(場合によっては、後述する紫
外線、電波、X線なども使用し変異を促すことも含めることも可)で自然変異を期待
して淘汰圧(選択圧)をかけることで選抜する選抜技術(生物の遺伝的性質を改良)
方法。

さらには(2)ハクサイとキャベツの雑種「ハクラン」やホウレンソウとコマツナの
雑種「千宝菜」のように植物の個体から組織を取り出し、培養して増殖させる細胞培
養技術、(3)オレンジとカラタチの体細胞雑種「オレタチ」のように2つの細胞を
接着、融合させ核の融合により生殖過程を経ずに雑種細胞を作製する細胞融合技術、
あるいは、(4)2個体間の生殖活動――受粉、接合、受精を意味し、両個体が同一
の遺伝子型をもつ場合も含み、遺伝子型が異なり雑種が形成される場合を特に「交雑」
と呼ぶが。遺伝形質が全く同一の個体間の交配は品種改良にはなりにくいが、交配に
伴って生じる突然変異による品種改良が起こり得るが一般には交配と交雑は混同して
使用される交配技術、

また、(5)2個体間の生殖活動、すなわち受粉、接合、受精を意味し、両個体が同
一の遺伝子型をもつ場合も含む。遺伝子型が異なり雑種が形成される場合を特に「交
雑」と呼ぶ。遺伝形質が全く同一の個体間の交配は品種改良にはなりにくいが、交配
に伴って生じる突然変異による品種改良が起こり得る。一般には交配と交雑は混同し
て使用される変異技術、(6)種なし西瓜のように染色体は通常1対の染色体(ゲノ
ムが2セット:2倍体)が増加させた生物(倍数体)を作製する倍数体形成技術、最
後に、(7)遺伝子を人工的に改変する技術――クローニング(単離)、遺伝子の導
入(細胞への導入)、遺伝子の発現(遺伝子が暗号化している蛋白質を生産させるこ
と)等からの遺伝子操作技術は、安全性が確認された場合を例外として基本として使
用しないものとする。 



                                この項了



 

● 湖北さざ波街道を行く



湖岸をドライブしようと急遽、湖北野鳥センタ(湖北みずどりステーション)まで出かけるが、道
沿いにはプチソーラーの建設ラッシュを目撃するが、目的地を散策すると、ソーラーシュアリン
グされている農地を発見、早速デジカメする(バックの山は山本山/上写真(下))。エネルギー
革命はこんなところにも波及したのかと感心する。

 ● 今夜の一輪

裏庭にピンク色の八重の椿が毎年春先から咲き始め彩りを添えてくれる。千重~列弁咲
き、小~中輪。1~4月に咲くという。品種はジェシーコーナー(米国産)らしい。母
が植えたものでいまは形見となったが、うす桃色の美しい花である。

 

 

 

 

 

 

 

 

思案の防犯カメラ

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【日本の政治史論 Ⅰ:政体と中枢】 


「古賀の乱ってなんだ "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』 2015.04.04)で、触発
されるように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。
その結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載し
ていきたい。まずは第5章から読み進める。

 福島原発メルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)

                           古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』


   目 次

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策




    第5章 民主党政権が蹟いた場所

                                                                                族議員が一掃された必然

  民主党は前面に「脱官僚」を掲げ、2009年8月末の総選挙を戦い、国民の支持を受け、   
 長らく続いてきた自民党政権時代を終焉させた。「脱官僚」を実現するための手法として、
 民主党が上げたのは、ご存じのように「政治主導」である。
  確かに、民主党は自民党に比べれば、はるかに政治主導による「脱官僚」を実現しやすい
 環境にあった。
  自民党時代の与党議員と官僚の関係は、「政官癒着」とよく非難されていたが、この表現
 は適切ではない。自民党と霞が関の関係はもっと深かったからだ。
  自民党は、政策立案の場として、党内に「財務金融部会」「経済産業部会」「環境部会」
 といった専門の部会を設置している。内閣が提出する法案であっても、まず各部会の議論と
 了承手続きを経て、自民党の政務調査会(政調)で調整され、さらに党総務会に回され、最
 後に閣議で正式決定されて国会に提出されるという仕組みになっていた。
  この政策立案の場である各部会のブレーンは、対応する関係省庁の官僚が務めていた。法
 治国家の日本では、政策には法律の裏づけが要る。たとえば、経済産業省がやりたい政策が
 あれば、それを法案にまとめ、官の素案として自民党の経済産業部会で論議してもらう。部
 会でこの法案(政策)はいいからやろうとなると、修正などのとりまとめをした後に、党政
 調に上げられる。すなわち、自民党の部会と関係省庁は一体となって政策をまとめあげてい
 たのだ。
 
  自民党の議員は必ずどこかの部会に入ることになっている。部会は若手議員の勉強の場で
 もある。初当選して国会議員になりたての新人のなかには、政策立案といっても何も分から
 ない人もいる。彼らは、専門部会でそれを学びながら、政治家として成長していく。この先
 生役を務めているのも官僚。言い換えれば、自民党の議員は官僚に育てられて一人前の政治
 家になるという仕組みになっていたのだ。

  従って、自民党時代の自民党議員と官僚は、切っても切れない親子関係といってもいいほ
 ど深く結びついていた。
 
  このシステムには、各分野のスペシャリストの政治家が育つというメリットがある一方で、
 悪名高い「族議員」を生み出すなど弊害も多かった。たとえば経度省が経済産業部会で実権
 を握る経産族議員を育成、こうした族議員に根回しして、その力を借りて法案を通す。その
 見返りに、族議員の目利きや陳情に応じ、特定の業界に便宜をはかるといった慣行が根づき、
  議員は省の利益の代弁者となっていた。
  つまり、単純な癒着というより、政官が一体となった「複合共同体」ができあかつていた
 のである。自民党政権時代、公務員制度改革が幾度も暗礁に乗り上げたのは、こうした構造
 的な関係が根を張っていたからだ。
  利権は国政のあらゆる分野に及んでいた。公共事業、医療、農業、教育、運輸、通信……、
 数え上げたらきりがない。そして、電力もまた代表的な政官財の癒着構造を特っていた。電
 力の世界は、業界全体が、政にも官にも優越するという特殊な構造になっていた。

  その点、結党以来、一度も政権の座に就いたことのなかった民主党の議員は、官庁との不
 明朗な利害関係はない。民主党にも、官僚出身の議員がたくさんいる。民主党の「過去官僚」
 議員のなかには出身官庁と深い関係にあり、自民党の族議員と同じような動きをする人もい
 るが、少なくとも自民党時代のように構造的な一体関係を育むシステムは存在しなかった。
  民主党政権になれば、自民党の族議員と官僚といった政官の関係は一度ご破算になる。そ
 のうえで民主党政権が、政治家と官僚の新たな関係を構築すれば、「脱官僚」は一気に進展
 する可能性はあった。

                      民主党が脱官僚できない二つの理由

  民主党政権は、発足当初こそ、期待通り、官僚と対峙する姿勢を鮮明に打ち出して出発し
 たが、その後の妥協に次ぐ妥協を見ていると、「脱官僚」は看板倒れに終わりそうな気配で
 あった。
  民主党はそもそも「政治主導」の意味が分かっていなかったのではないか、そして、「政
 治主導」を行う実力がなかったのではないかということをすでに指摘した。しかし、仮に「
 政治主導」の意味を理解し、これを実施する実力があったとしても、なお足りないことが二
 つある。

 

  最大の問題は民主党が何をやりたいのか、それがはっきりと見えてこない点である。総選
 挙前に作られたマニフェストに民主党の政策は集約されていると考えるのが妥当なのだろう
 が、そのマニフェストを熟読しても、民主党が目指している国家像が伝わってこない。私の
 周囲の人々のなかには、「あれはあくまでも選挙用で、国民受けする政策をとりあえず並べ
 ただけでしかない」と酷評する人もいる。
  マニフェストで掲げた政策を民主党政権はやっていない、国民との公約を守っていないと
 いう批判があったが、それ以前にマニフェストの政策を民主党が本気でやりたいと考えてい
 るのか、疑問に感じてきた。
 
  鳩山氏にしても仙谷氏にしても、いま一つ、何をやりたいのかが伝わってこなかった。菅
 総理は「平成の開国」「最小不幸社会」などを掲げていたが、マニフェストを見直すことに
 なったから、国民から見れば、そもそも民主党が何を目指すかは不明だった。やるべきこと
 やりたいことが分からないまま予算や法案の審議をした。なんと国民を馬鹿にしていること
 か。
  菅総理の考える理想の社会が具体的にどのようなものなのか、私には見えなかった。「最
 小」「不幸」というネガティブな単語を二つ重ねた言葉からは、雰囲気的には、みんなで貧
 しくても肩を寄せ合って生きていこうね、という感じかなと思ってしまった。
  民主党政権最大の実力者である切れ者の誉れ高い仙谷氏は、自分に対する批判に反論する
 姿は幾度も見たが、前向きな政策を力強く語っているところを見たことがない。
 仙谷氏が国家職略帽のときにやったことで記憶しているのはヽベトナムヘの原子力発電所と
 新幹線の売り込みぐらいのものである。こんなことを国家戦略帽がやるのかな、もっと大き
 な枠組みを変えるようなことを考えてもらいたいな、と少しがっかりしたものだ。

  二つ目は、政治主導のための仕組みを確立できていないことにある。自民党政権時代は善
 くも悪くも党と官僚は一体で、官僚依存で政策を立案し、実施していたが、それに代わる仕
 組みが作れていない。
  官僚が国民の代表である政治家の考えを半ば無視して、自分たちの利益につながる政策を
 立案している。これを改革するキーワードが「政治主導」なのは間違いないが、言葉だけが
 独り歩きしていて、そのための仕組みが整えられておらず、掛け声倒れになった。

  そうなってしまったのは、政治の制度改革が遅れていたからだ。国家公務員制度改革推進
 本部で公務員制度改革に取り組んでいたときに、行政と政治の制度改革はセットで行うべき
 だと強く感じた。公務員制度が改革され、官僚が国民のために働く仕組みになっても、政治
 がそれを使いこなし、政策に活かせる体制になっていなければ、行政は正常に機能しないか
 らだ。
  麻生政権のもとで提出した国家公務員法改正案に、そのための仕組みとして「国家戦略ス
 タッフ」「政務スタッフ」の創設を、基本法のスケジュールを前倒しして盛り込んだのもそ
 のためだった。民主党はこれを参考にして、鳴り物入りで「国家戦略局」を作るという法案
 を提出したが、優先順位は極めて低く、結局まったく成立の目処は立だなかった。そして最
 後には議論すら聞かなくなってしまったのだ。

  経済財政諮問会議はいまだに法律上存在している。これを実質的な司令塔にすることも可
 能だが、小泉改革を連想するということなのか、活用されていない。
  総理主導を実現するための強力な司令塔とサポート部隊は、自民党時代とまったく変わら
 ず、財務省と財務省を中心とした官邸官僚が担っていた。だから、「自民党と同じだ」とい
 うことになるのだ。


                                   この項つづく 

 

 

● 日中食品汚染 Ⅹ 中国の食品汚染地図 

【目次】

 第一章 見えない食品の恐怖
 第二章 中国の食品汚染地図
 第三章 食品汚染のヒトへの影響
 第四章 なぜ汚染連鎖が絶ちきれないのか
 第五章 重金属汚染という新たな難題
 第六章 日本の食品は安全といえるか


古在豊樹 監修「図解でよくわかる「植物工場のきほん」 から汲み上げた新しい農法の骨格を素
描し終えたので、そのことを踏まえ、今夜からはこの著書から食の汚染の実態を学び、そこから
課題を掬い取り「食の安全」を担保する方法を考察していく。

                             畜産物は飼料の汚染から

  家畜汚染といった場合、BSE(牛)、コレラ(豚)、二ューカッスル(鶏)などの畜鮪
 特有の病気と思われがちで、厳密にいえば汚染ではないという見方もできる。しかし本書は
 「食品汚染に定義なし」の立場をとっているので、流通しているものの中に、これらの家畜
 病で弱ったあるいは死んだ家畜の肉やその他の部位があれば汚染肉として考える,また、ず
 さんな解体方法からBSEリスクを含む牛の晴肉、その他の部位も汚染食品となる。
  さて肉類や酪農品の汚染は、飼料の汚染や投与薬剤問題とほぼ同義だ。農薬汚染、抗生物
 質汚染、違法飼料添加物汚染、ホルモン剤注射などから起こる.とくに大きな問題は、残留
 農薬の付いた飼料だ。家畜の飼料はふすま(玄米を積木にする際に出るコメのかすの一種で
 養分が多い)、大豆かす、トウモロコシ、小麦、哺わら、干し草、雑草などが主なものだ。
 
  中国では最近大豆の国内自給が不足し、毎年6000万トンもの遺伝子組換え大豆を輸入
 している。だから、大豆かすの汚染は、輸入大豆の汚染や長い時間をかけて船舶輸送する際
 に使う防カピ剤の汚染によることが多い。汚染されたコメのふすまは、当然危険度が高い。
 トウモロコシや小麦は天水農業(降雨利用)だが、降雨がないときは水路から引いた水をま
 くので、その水が汚染されていれば作物も汚染されることになる。
  ある省のトウモロコシ地帯を歩いたとき、家庭雑排水で汚れきった水が、そのまま畑に散
 布されている現場を見て驚いたことがあるが、これは決して例外ではなく、似たようなこと
 が各地で行われている。
  中国では水が不足しているので、トウモロコシや小麦栽培をせざるをえず、北部の農民が
 好き好んでこれらの農産物を選んだわけではない。揚子江から北部の中国には、全国の水資
 源の18%しかない。南部は温暖で水が豊富なので最初からコメ栽培を選ぶことができたが、
 北部は水が少なくても育つ作物になったということだ

  トウモロコシや小麦の汚染は農薬汚染、重金属汚染が元凶だ。北部には、もともと産業廃
 棄物を大量に排出する重化学工業や重厚長大型の国有企業が多く立地しており、鉱山も多い。
 こうした環境は重金属汚染源になる可能性が高い。しかも家畜は穀物をよく食べるので、食
 物連鎖の影響を濃縮した形で受けやすい,肉1キログラムを生産するために必要な穀物は、
 牛肉の場合14~15キログラム、豚肉7~8キログラム、鶏肉3キログラムといわれる。その
 ほか、稲わらや干し草、雑草などの粗飼料も不可欠だ。
  食へる量が多いので、もし汚染された飼料を毎日とると、肉や卵、酪農品が受ける影響も
 大きくなる。



 
                       中国も日本も抗生物質大国

  飼料に混ぜる抗生物質が人間が使う抗生物質に耐性をつけてしまう危険性(交叉耐性)に
 気づき、その使用を禁止したのは、農業先進国であり養豚の盛んなデンマークだった。長い
 問使用してきた抗生物質には、他のどんな薬物にも発生する薬剤耐性が生まれる。この点に
 危機感を持ったデンマーク当局は、世田作でもいち早く抗生物質の使用を禁止した。
  まず1995年アボパルシン、98年バージニアマイシンを禁止、EUもこれにならい97年
 にアポパルシンの使用を 禁止。世界の流れは、抗生物質排除の方向へ急速に転換し始めた。
  EUは交叉耐性を危惧して、畜産物の成長促進剤として使用する抗生物質と、人間が医療
 行為に使う抗生物質の飼料への使用を2006年までに段階的に排除した。

  アボパルシンの大量使用によるバンコマイシン(これも抗生物質の一種)耐性腸球菌とい
 う、バンコマイシンが効かない菌の発生という危機的な状況が生まれたからだ。こうしたこ
 とはどの抗生物質にも起こりうるので、食品汚染を考える際には無撹できない。
  では日本はどうか? 残念ながら、2014年時点においてさえ、EUで禁止されたバー
 ジニアマイシンを含む18種類類の抗生物質を飼料に混ぜて使用してもかまわないことにな
 っている。じつは日本という国は、抗生物質規制の後進国なのだ,



  中国は日本以上に規制がゆるいのが現状で、中国人自ら「抗生物質大国」と称してはばか
 らない。2012年、中国では抗生物質が21万トン生産され、3万トンを輸出し残りの18
 万トンを国内で消費している。
  ひとり当たりの抗生物質消費量は、アメリカの10倍以上に当たる138グラムだ。飼料を
 含む家畜向けの使用量は9・7万トン。国内消費量全体の半分以上にも相当する多さである。
  そんな中国だが、危機感を覚えていることも事実だ。そこで政府は近い将来、家畜向けの
 抗生物質の使用を全面的に禁止する方針を打ち出したが、いまだ実現していない。
  現在、飼料に使用できる抗生物質の種類は数の上で日本を上回る24種類だ。
  抗生物質を長年飼料に使用した場合、家畜生産物を食べる人体にはどのような影響が出る
 のだろうか? 一般に、飼料中の抗生物質は家畜の体内に残留し、やがて間接的に人体に取
  り込まれる。
 
   問題は抗生物質が、規制量以上に家畜の飼料に使用されていることだ,その使用制限が、
 中国では飼料1トン当たり10~15グラムと決められているが、厳格に守られることはほとん
 どないといわれている。あらかじめ決まった飼料成分が入っている配合飼料を使うこともあ
 るが、抗生物質は後から如えられるため、いくらでも入りうる。この点は、農薬の希釈濃度
 が規定通りにされるためしがないのと似ている。少ない場合もあれば、多すぎる場合もある
 のは普通のことだ。

  中国には畜産のための飼料に使う成分を定めた「飼料原料目録」という規程があり、そこ
 に書かれている成分以外は、使ってはならないことになっている。しかし現実には2013
 年の3月に、揚予江河口に流れ着いた数千頭の死んだ豚からヒ素が検出されたことが記憶に
 新しい。この例は目録に記された規定が十分に守られていないことを図らずも証明してしまっ
  た。
  また別の「飼料添加剤品腫目録」という資料には、飼料に添加することが許されるアミノ
 酸、酵素、抗酸化剤、着色料、調味剤などの明細とその量が記載されている。本来、これ以
 外の添加物は使用禁止のはずだが、実際には、さまざまな物質や化合物が使用されている。
  飼料成分や添加物を法令に従って使用していたとしても、安全を守れるとは限らない。農
 薬や重金属で汚染された飼料を家畜に与えていれば何の意味もないからだ。


                                   この項つづく

 




● 手動式茶葉ミルと健康法

茶カテキンが癌予防に役立っていることは疫学的に検証されているが、手動ミルで粉茶にすこと
をことを商品化したのは、株式会社川崎成樹脂以外に知らない。いまは粉末茶を買ってきて呑ん
でいるが、内分の臼で粒子を調節できるというのも初めてだろう。最も昨年同社は、構造は異な
るが手動ミルの実用新案登録している(JP 3190010 U 2014.4.10)。これで用途がぐ~っつと広
がる。

 

話はお茶の健康法とその最新ツールから離れるが、数日前から、夕食を中心として納豆を食べるように
してきて、胃腸の調子が悪かったが改善してきたので、納豆菌とその生成物が効果があるのだと実感し
ている。そういうことがあるのだと、それにもしても早すぎるんじゃない?と。

● 思案の防犯カメラ

つい最近、ご近所で嫌がらせの器物損害、つまり駐車中の車を傷つけたというので、警察(刑事)が不
審なことはなかったと聞き込みにしたので、わけを聞き、ストーカーなどで事件化しては取り返しがつ
かないので、何かあったら連絡すると返事したが、その件のひとが、防犯カメラで定点監視できないか
と消極的にたづねるので、人権の問題があるからとその場で断ったものの、猛スピードで運転する車を
2,3回目撃し、「飛び出し坊や」の設置確認し、デジカメを常備携帯するようにしていた矢先でもあ
り。防犯カメラがあれば、危険発生しそうな視野で定点観測することで、証拠をとることができる。と、
思い立ちネットで家庭用のそれを検索してみた。すでに、この1年すぐ近くで車による2件の事故を目
撃している。よく言うではないか、「2度あることは、3度ある」と。もう少し様子を見ようと残件扱
いに。

 

 

 

 


挑戦なくして成果なし

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【日本の政治史論 Ⅱ:政体と中枢】  

「古賀の乱ってなんだ "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で、触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。 


  福島原発メルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)


                          古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』

   目 次

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策

 

    第5章 民主党政権が蹟いた場所

  
                                 労働組合との隠したくても隠せない関係

  二つの基本的な理由に加えて、民主党と労働組合の関係にも触れなくてはならない。民主党
 の有力な支持母体、日本労働組合総連合会(連合)傘下の地方自治体職員などによる労組合の
 連合体、全日本自治団体労働組合(自治労)や、政府関連の労働組合は、急激な公務員制度改
 革に反対の意向を示している。
  民主党には選挙を組合に頼っている政治家が数多くいる。組合の正式な組織候補となってい
 る者はもちろんのことだが、一年生議員などには、組合がなければ選挙活動をどうやればいい
 か分からない人も多いのである。
  頼りにするのは選挙費用や票のためだけではない。たとえば、公募で選ばれた候補者がまっ
 たく土地勘のない田舎で選挙活動を行うとしよう。都会のように駅前の街頭演説などをしても、
 そもそも駅前に人などいない。大きな住宅街というのもないから、自転車で町を回るなどとい
 うことをしても、出会える人の数などたかが知れている。しかも、よそ者にはなかなか心を開
 いてもらえない。きっと途方に暮れてしまう。

  ところが、組合が支援すればまったく異なる。どんな田舎にも学校はある。日教組が人を集
 めて小さな集会を開いてくれれば、演説させてもらえる。それが選挙運動になる。工場の労働
 組合が集会を開いてくれる。これも貴重な活動の場だ。こうして少しずつ選挙運動の輪が広が
 っていくのだ。このような最初の経験は極めて大きな影響を与える。政治家になってから集ま
 ってくれた人よりも、こうした何もない段階で世話になった人への恩義は誰しも強く感じるも
 のだ。民主党には若い議員が多いから、組合の影響など受けないのではないかと思う人も多い
 かもしれないが、実態は大違いなのである。
  組合の嫌がる政策を実施して選挙で応援してもらえなくなると、議席の維持がむずかしくな
 る。こうして組合に気を遣い始めると、結局、官僚の意向に逆らうことはむずかしくなる。政
 治主導といっても、その前提となる公務員制度改革には手がつけられなくなるからだ。

  おもしろいエピソードを紹介しよう。2008年頃、あるテレビ局の番組で連合の古賀伸明
 会長が、当時の仙谷由人行政刷新担当大臣と松井孝治官房副長官を呼び捨てにする場面が放映
 で、少なくとも表面上は仲良くしていたほうがいいだろうという判断が働いているように見え
 た。これを「消極的な擦り寄り」とすれば、一方で[積極的な擦り寄り」もある。
  民主党政権は、財務省に対しては明らかに、これと手を結び、仲間に引き入れたいと考えて
 いたと思われる。財務省の協力なくしては予算編成も緊急課題となっている経済政策もできな
 い。財務省の知恵を貸してもらわなければ、民主党政権の支持率はジリ貧になり、解散・総選
 挙にまで追い込まれ、政権政党の座を失う恐れが出てくる。

  だからこそ、財務省を味方にすべく、公務員制度改革を後退させ、天下り規制を骨抜きにす
 るなどの「誠意」を示して引き込んだのだ。これが民主党の「魚心」とすれば、財務省の「水
 心」は消費税増税である。悲願の消費税増税を民主党政権にやらせるために財務省が描いた理
 想のシナリオは、民主党政権を長く続けさせ、その間に民主党政権に消費税増税を強行突破さ
 せる――こういうものだったと私は推測している。

   増税の議論を行う前にまず選挙で国民の信を問い、そのうえで増税を決めるという筋書きで
 は実現はむずかしい。5パーセントの増税は、国民からすれば5パーセントの減収だ。
 民主党が選挙で勝てる可能性は限りなく低くなる。何かあっても民主党政権を支え次の参議院
 議員選挙までの三年間、選挙がない状況を作り出し、その間に増税を既成事実化したいと、財
 務省第瓦章 民主党政権が蹟いた場所は考えていたのではないか。もちろん、あわよくば選挙
  なしで増税までこぎ着けたいという思惑もあっただろう。

      この財務省のシナリオに沿って、鳩山政権から引き維いだ菅政権は消費税増税を口にした。
  ところが、菅氏は増税に関して、「少なくとも三年後の選挙で国民の信を問う」と国民に約
 束した。ある意味うまい戦略だと思った。
  財務省からすると、これで増税実現までのハードルが高くなった。民主党政権に増税をやら
 せるには、民主党政権を維持させ、なおかつ総選挙にも勝たせなければならなくなったからだ。
 菅発言は、「俺たちも死に物狂いでやるから、財務省も死に物狂いで俺たちを支えろ。でない
 と、増税は実現しないぞ」という財務省へのメッセージでもある。  

  一方で、消費税増税表明は自民党が先。これに菅氏が抱きついたわけだ。財務省にしてみれ
  ば、増税を実現してくれるのなら、民主党、自民党のどちらでもかまわない。自民党に乗り換
 える道ももちろん視野に入っている。
  そこで、民主党政権が暗に強調しているのが公務員制度改革の違いだ。「自民党やみんなの
 党に比べれば、われわれのほうがずっと緩い」とアピールし、財務省をつなぎとめようとして
 いた。
  民主党と財務省が手を組んだとはいえ、菅政権は消費税増税を餌に政権維持を助けろ、と財
 務省を踊らそうとしていただけ。また財務省にしても、助けるふりをして、最後に増税さえで
 された。その直後、仙谷氏本人からこのテレビ局に、一方的な報道だとしてものすごい剣幕で
 電話がかかったそうである。連合からも抗議があった。
  これほどおもしろい映像はないから普通なら繰り返し放送されるのだが、実際には、このテ
 レビ局はその映像を封印してしまった。

  逆にいえば、テレビ局側は、それほど民主党が組合との癒着問題に神経質になっていると思
 っていたということなのだろう。この問題がいかに根深いものか分かるというものだ。ところ
 で、原発事故で問題となっている電力業界。この分野の労働組合は「全国電力関連産業労働組
 合総連合(電力総連)」という。連合のなかでも大きな勢力を有し、組織内議員も輩出してい
 る。笹森清内閣特別顧問は元会長で、日本労働組合総連合会(連合)会長も務め民主党政権に
 大きな影響力を持つ人物と考えられている。福島原発事故後の対応や東電の処理にあたっては、
 この電力総連の動きも要注意である。  

                       財務省と手を結ぶしかなかった秘密

  さらに指摘しなければならないのが、前にも触れた閣僚の力の問題。与党経験のない民主党
 の議員が大臣や副大臣、政務官に初めて就任し、官僚と戦う。官僚出身の議員などは霞が問に
 人脈もあり、その手の内を知っているが、大半の閣僚が官僚に太刀打ちできるという自信を持
 てない。自分たちの力が足りないのに戦いを挑んだりすると、官僚に叩かれて終わるだけなの
 で、少なくとも表面上は仲良くしていたほうがいいだろうという判断が働いているように見え
 た。

  時の政権と財務省の関係はしょせん狐と狸の化かし合いだ。裏切る、裏切らないの緊張関係
 のなかで、腹を探り合い、自分たちの利益をなるべく大きくすべく網引きをやっている。繰り
 広げられる虚々実々の駆け引きは、不謹慎な言い方だが、傍目には、とてもおもしろい。
  民主党政権は、ときどき、「俺たちもやる気になれば、これぐらいできるんだよ」と強気の
 態度で脅しをかけ、財務省を従わせようとするかと思えば、「世論の批判が強いので、この政
 策だけは我慢してもらえないか」と泣き落としにかかった。

  財務省は財務省で、「このタイミングでは、さすがにやらせるのは無理か。それなら、こち
 らは向こうの要求を呑む代わりに、あの政策をやらそう」などと、政権の腹の内を読みなが
 ら、最大限要求を通そうとする。以七はあくまで私の推測で、やっている当事者はそんな意識
 はないというかもしれない。しかし、少なくとも傍から見ていると、そのような駆け引きがあ
 るように見える。
  では、消費税の増税は次の選挙後までないのか。ないと見るのが普通だろう。しかし、ひょ
 っとすると、と考えていた財務官僚もいたのではないか。消費税増税は実は民主党政権にとっ
 ても切り札になり得たからだ。なぜか。
  増税すれば、財源不足で実現できなかった政策が実施できる。それによって支持率を維持し、
 選挙に勝つという戦略もあるだろう。逆に財務省は、増税なしでは様々な政策が実施できない
 という危機的状況を演出するだろう。国民を脅して、むしろ国民の側から「消費税を上げてく
 れ」という悲鳴を上げさせる。そうなると、意外と早く消費税増税が実施される可能性がある
 ことは否定しきれないのではないか、と私は見ている。


                              仙谷官房長官の大誤算

  仙谷氏と財務省の関係も非常に興味深い。仙谷氏はすでに触れたように、当初は改革に燃え
 ていたと思われる。しかし、現実との妥協で財務省と手を握るふりをしたように見える。ある
 意味、仙石氏の判断は正しかったと思う。
  仙谷氏は官房長官を退任する以前は、菅政権の陰の総理といわれるほど、権力を一手に握っ
 ていた。民主党政権誕生直後は決して主流とはいえなかった仙谷氏が、民主党内の権力を掌握
 し、菅内閣で突出した権力者となれたのは、財務省に依存する作戦が成功したからである。仙
 谷氏が権力の座についた原動力が財務省依存だった、と私は見ている。
  財務省のバックアップがあるために、他の閣僚に比べて、人ってくる情報の質・量が違って
 くる。したがって、情報不足による失言はなく、犬ポカをせずに済んだ。非常にむずかしい場
 面になると、仙谷氏の意見が、一番もっともらしい。他の閣僚の評価が落ちていく一方で、仙
 谷氏の評価だけはうなぎ上りで、内閣のなかで突出した権力を持つに至った。 

 

  つまり、財務省をうまく操って、やっと霞が関と戦える力を持つところまで上ってきたと私
 がそう思うのは、仙谷氏が極端なまでに財務省の意向を汲んでいるように見えたからだ。
 そうは見えないように巧妙にやっていたが、全体から見ると、霞が関に対して非常に手厚い政
 策を次々とやっていた。国民がすべて批判するような政策でも、押し通す。党内から、「こん
 なことをやれば、選挙に必ず負ける」という批判の声が上がったにもかかわらず……。
  仙谷氏が霞が関に完全屈服したのではないかという人もいたが、私はそうは思わなかった。
 あれほどあからさまにやったのだから、仙谷氏の戦略だと思った。自分がどれだけ霞が関を守
 ってやっているか、あえて見せつけ、財務省を手なずけて、権力の階段を上ろうとしていたの
 ではないか、と推測している。

  これはよほど自信がないと怖くてできない。マスコミに叩かれたときに、立っていられなく
 なる。仙谷氏には自信があったのだろう。自分が権力を握れば、選挙も絶対勝てると踏んでい
 たのだと思う。
  だが誤算があった。仙谷氏が階段を上っているうちに肝心の民主党の支持率が下がってしま
 い、2010年7月の参院選はポロ負けしてしまった。仙谷氏の官僚依存も、国民から見ると
、自民党時代に逆戻りしたとしか見えず、菅内閣は急速に国民の信を失った。
  民主党を風船に、仙谷氏をそのなかの空気にたとえてみると分かりやすいかもしれない。民
 主党という風船は、2009年の総選挙前には空高く舞い上がっていた。その頃、仙谷氏という空
 気は風船の下のほうに漂っていた。
 
  最下部の空気である自分が、財務省と喧嘩しても潰されるだけである。仙谷氏はとりあえず
 手を組んだふりをして階段を上がろうと考えた。党内の政治力学を睨みながら、財務省を利用
 して。この戦略は見事に奏功し、風船の頂点まで上り詰めた。
  ところが、気がつくと肝心の風船が、その間に急下降。水平線ぎりぎりまで落ちていた。相
 対的に見ると、かつて風船の底辺にいた頃よりも、自分の位置は下がっていた。それどころ
 か、いまや風船は破裂寸前だった。
  挙げ句の果ては、上手の手から水が洩れ、閣内からも出ることになってしまった。結局、仙
 谷氏は、パラドックスに押し潰され、霞が閣との決戦の日は迎えられなかった。
  仙谷氏の陥ったパラドックスは民主党政権にも当てはまる。民主党が野党時代、脱官僚に本
 気で取り組もうと考えていたのは間違いない。だが、政権の座に就いた途端、現実が重くのし
 かかってくる。
  大きな改革は一年ではできない。すべてやり遂げるまでには七年から八年かかるとすると、
 四年後の選挙に勝だなければならない。その前にすぐ参院選、そしてまた統一地方選。選挙に
 勝つためには、政権を維持し、なおかつ支持率を高水準に保つ必要がある。そのためには、霞
 が閣と事を荒立てるのは危険、となる。

  かくして妥協に次ぐ妥協が始まり、気がつけば身動きができなくなっている。政権の支持率
 はジリ貧になり、やがて倒れる……。民主党はこの罠にかかり、国民の信を急激に失ったのだ。
  仮に改革には七、八年必要だとしても、政権を維持するために守りに入ると終わりだ。リス
 クがあっても政権が倒れることを恐れず、その時々でできる改革を断行し、常に推進力を維持
 する。そして、いったん支持率が落ちたとしても盛り返すという政権運営をして、初めて改革
 も政権維持も成功する。小泉純一郎総理はこれがうまかった。

  小泉内閣の支持率は、おしなべて高かったが、浮き沈みがあった。そろそろ危ない水準まで
 下がってくると、小泉氏は守りに入らず、思い切った冒険をした。たとえば電撃的な北朝鮮訪
 問である。そして、極めつきは郵政選挙だ。それが功を奏し、支持率は再び上昇するといった
 サイクルの繰り返しだった。

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』


"No challenge, No findings" 小泉は幸運であったが、それも「挑戦なくして、結果なし」を腹に据
えていた。転がり込んだ好機を没主体性で転落していく民主党とそのシンパは何を学んだろうか。
さて、このつづきは次回に。

                              
                                    この項つづく

 

    ● 今夜のメッセージ 

 宮崎駿氏「辺野古基金」共同代表へ 新基地阻止、内外に(琉球新報 2015.05.08) 

  

Japan scholars in West issue statement calling for 'unbiased accounting' of past 

日本は言葉と行動で過去清算を 欧米などの学者187人が要望 (2015.05.04)

※ OPEN LETTER IN SUPPORT OF HISTORIANS IN JAPAN 
 https://networks.h-net.org/system/files/contributed-files/japan-scholars-statement-2015.5.4-eng_0.pdf 

  

 

● 日本全国の太陽光発電一覧地図 : 15/02/06:1941/4066 MW → 15/05/08/:2178/4844 MW

 

● 最新トップランナー事情  日本発!新型太陽光電池「ペロブスカイト」

世界中で、多くの研究機関が新しいタイプの太陽電池開発に取り組むなか、コストパフォーマンス
に優れているこの太陽電池は、数年先、化石燃料や、中でも最も危険な原子力からの依存を減らす
ために必要な解決策の1つであり、最も有力な選択肢だろう。

沖縄の沖縄科学技術大学院大学のヤビン・チー准教授のエネルギー材料と表面科学ユニットが、こ
の無尽蔵で、低コストで生産できるエネルギー源を私達1人1人が利用できるよう、新エネルギーの
研究をしており、一般にはまだ知られていない革命が進んでいる。この革命は私たちのライフスタ
イルに新しい提案すると紹介されている(上ビデオ)。

そもそも『ペロブスカイト太陽電池』は2009年に桐蔭横浜大学 宮坂力教授らのチームがペロブス
カイト結晶の薄膜を発電部に使用、太陽電池として動作することを突き止める。当初は発電効率
が低くそれほど注目されなかったが、2012年に米科学誌『サイエンス』に“10.9%”の発電効率
を実現したと発表したことから世界中で研究に火が付く。その後、世界各国から高効率化したとの
成果が次々と発表され、2014年にはシリコン系と比べてもヒケを取らない約20%の変換効率を達
成。

今年に入り、独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS)のナノ材料科学環境拠点(GREEN)がペ
ロブスカイト太陽電池の製造プロセスで製品バラつきの原因となる水分や酸素を排除することで、
理想的な半導体特性を実現。また、東京大学の瀬川浩司教授は壁や人が発する赤外光を吸収して発
電する“色素増感型”太陽電池を『ペロブスカイト太陽電池』と組合わせることで、シリコン系を
超える発電効率の高い太陽電池の開発に成功する。

さらに、同上の物質・材料研究機構は、これまで、報道されたペロブスカイト太陽電池の変換効率
は、ほとんどが小さな面積のセル(約 0.1平方センチメートル)でのデータのため測定の誤差が大
きく、測定方法も公開されていなかったのを、世界で初めて国際標準試験機関で記録が公認され、
変換効率15%を達成(上図クリック)。これにより日本が世界のトップランナーことを見事実証
する。恐るべしクールジャパン! 

 ● 今夜の一品

双眼鏡や望遠鏡で見た景色をスマートフォンで手軽に撮影してくれるアイテム「Snapzoom」。ス
マートフォンと望遠レンズを取り付けるだけで、誰にでも簡単にプロのような写真を撮ることが
できるという。これは面白い。撮った映像はすぐさま空間伝送できるから凄い時代だ。

 




 

愛に遅早はあるか。

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【日本の政治史論 Ⅲ:政体と中枢】  

「古賀の乱ってなんだ "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で、触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。 

  福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)


                          古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』

   目 次

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策

 

  第5章 民主党政権が蹟いた場所

                              誕生直後の絶好機を逃した鳩山政権

  脱官僚の最大の好機は、民主党政権が誕生した直後だった。「鉄は熱いうちに打て」のた
 とえのごとく、あのとき大胆な改革を実施していれば、成功した可能性が高い。霞が関を改
 革する一つのポイントは役人の評価基準にある。分かりやすくいえば、何をやったら偉くな
 れるか。

  いまは、役所のために予算を増やしたり、規制を作って天下りポストを多くした者が評価
 される。「あそこまで省益を大らせるとは、あいつはワルだなあ」は、官庁では褒め言葉で
 ある。そういう「ワル」にはマイナス評価しかつかないよう変えなければならない。
  この手法についていうと、それはさしてむずかしいことではない。総理や大臣が「公益法
 人への天下りポストも予算も半減しろ」と命令し、「これを真面目にやった者は昇進させる。
 しかし、できなかった者は能力がないと判断して干す」という。
  干すといわれれば、役人はけっこう真面目に取り組むものだ。

  ただし、これをやるためには一つ要件かおる。それは、政権がしばらく続く、そして大臣
 も交代しない、という前提である。来年どうせ政権や大臣が変わると思えば、大臣のいうこ
 とは聞かない。下手に指示に従い、次に来た大臣の方針が変わって梯子を外されれば、次官
 や官房長は役所の利益に反する行動を取ったとして、マイナス評価をつける可能性が高いか
 らだ。
  鳩山政権が誕生した頃は支持率も高く、この政権がずっと続くとみな考えていた。しかも、
 脱官僚を掲げて登場した政権だけに、役人は相当思い切ったことをやられると覚悟していた。
 あのとき、全次官に天下り先リストの一覧表を出させ、半減を指示し、具体的な計画表を1.
 2月までに出すよう命じ、「できなかったら、成績不良とみなす」と告げ、次のように迫る。
 「私にあなたたちの命を預けてください。一生懸命やってくれたら、私はみなさんを守る。
 しかし、できなかったら役所を去ってもらうしかない。そういう意味で辞表を出してくださ
 い。国民のためにやるという覚悟を示してください」各人に目標も書かせ、期限をつけて評
 価する。なかには抵抗する次官もいるだろう。あるいは全員が談合してボイコットしようと
 するかもしれない。半減は無理だからI割にしてくれと泣きを入れてくる次官もいるに違い
 ない。

  しかし、目標を達成できなかった者は、話し合いのうえ、ばっさりと切る。ここまで大胆
 にやれば、残って大事に扱われる者はむしろ、政権に恩義を感じる。
  役人はクビにできないというが、そうでもない。明確な目標を設定して、それができなか
 ったからクビだとちやんとした話をすれば、それに逆らう官僚はほとんどいないのではない
 か。次官・局長ともなれば巨額の退職金が入る。そこで抵抗してみても、世の中から糾弾さ
 れる。そんな根性のある役人はいないだろう。

  あのとき、総理と大臣が一枚岩になって、抜き打ちでこれをやれば、成功する確率はかな
 り高かったのではなかろうか。
  ところが、鳩山政権がやったことは真逆だった。政権交代前、農水省の次官は、民主党の
 マニフェストに書かれていた農業政策を公然と批判していた。政権誕生後、お互いに政策論
 争をしたのならまだしも、農水の次官が掌を返して「誠心誠意やります」というと、赤松広
 隆農水相は即座に、「ぜひ、一緒にやってくれ」と応じた。これでは完全に役人のご機嫌取
 りである。多くの国民はたいへん失望したであろう。

  赤松大臣だけでなく、長妻昭厚労相を除く大方の閣僚が、役人に擦り寄った。みなリスク
 を取れなかった。官僚に離反されてサボタージュされ、足元をすくわれると、大臣をクビに
 なるという恐怖に勝てなかったのだろう。
  初めて大臣に就任した方ばかりなので、その気持ちは分かるが、閣内が一致団結して意見
 を統一し、互いに支えながら脱官僚の方針を貫いていただきたかった。それができていれば、
 公務員制度改革も政治主導も一気に進展していたはずだ。民主党政権は絶好の機会を逃して
 しまった……。





                   役人とマスコミに追い落とされた長妻大臣

  そんななか、民主党政権の閣僚のなかで唯一、野党時代の方針を貫こうとしたのは、先述
 した長妻昭氏である。
  消えた年金問題を舌鋒鋭く突いた「ミスター年金」の長妻氏は、民主党政権誕生の殼大の
 立て役者となり、功労を認められて鳩山政権の厚生労働大臣に抜擢された。良妻氏の閣僚時
 代の話は著書『招かれざる大臣』に詳しいが、私は回書を読んで、ああ、なるほどと思った。
 以下は従来から述べている私の推測に過ぎないが、長妻大臣の話と極めてうまく平仄が合っ
 ているので、おそらくかなり当たっていると考えていいのではないか。



  長妻氏は仙谷氏に比べれば年金問題以外は素人に近く、もともと厚労族だった仙谷氏が指
 導をしていた。仙谷氏は、厚労人臣になりたいと希望していたといわれるぐらいで、その分
  野には明るい。だが長妻氏も、年金以外の分野でも、勉強しているうちにだんだん自分の考
 えを持つようになり、仙谷氏の意見に従わないことも多くなった。
 その間、仙谷氏は、権力を次々と掌握していき、「陰の総理」といわれる存在になった。閣
 僚はみな仙谷氏に逆らわないなかで、自分の手下と思っていた長妻氏だけは、いうべきこと
 はいう。仙谷氏にとって長妻氏は徐々に煙たい存在になっていった。

  一方、厚労省の役人も、他の閣僚と違って役所に擦り寄らず、政治主導を貫こうとする長
 妻氏に手を焼いていた。
  象徴的な例が、先述した「退職管理基本方針」を受けて、役人が天下りの代わりに現役の
 まま出向できる団体を追加しようとしたときの対応である。
  ずらっと並んだ出向先として追加しようとしている団体はこれまでの天下り先。このリス
 トを見て、長妻氏は、これはおかしい、理由が分からない、と一人だけ頑としてこれを認め
 なかった。
  各省の出向先追加リスト(96ページ参照)が回ってきたとき、私は目を疑った。厚労省だ
 け真っ白で何も書いていない。長妻大臣は凄いことをやったな、これはひと波乱ある、と思
 った。果たして、後に長妻氏は事実上の更迭の憂き目に遭う……。

  出向先追加リスト容認の閣議決定がされたのは、夏の定例人事の少し前だった。前述した
 「退職管理基本方針」の閣議決定を受けて出すのだから、厚労省の役人は当然、自分たちも
 追加リストを出せると思う。追加の出向先をあてこんで、人事を内定していた。ところが、
 長妻氏がこれをストップした。そのため、厚労省だけ人事が混乱したはずだ。
  厚労省の役人からすれば、自分たちだけが被害を受けているという意識になる。長妻さん
 の対応は理不尽だと。いじわるされていると憤りもする。他の役所は予定通りリスト追加が
 認められているのだからなおさらだ。これは、厚労省の役人が悪いのではなく、同じことが
 起これば他の省庁の役人誰でも抱く感情だ。

  かといって長妻氏が悪いわけではない。もともとの民主党の方針を変えた菅氏に非がある。
 我が身可愛さで、官僚に妥協した閣僚全員も悪い。
  就任以来、方針を曲げず、原則を押し通そうとする長妻氏と厚労省の役人の意思疎通は、
 それまでもうまくいっていなかった。そこに、長妻氏の追加リスト拒否である。溜まってい
 た厚労省の役人の不満のマグマが一気に噴出し、官邸にSOSを出しただけでなく、マスコ
 ミを通じて反撃に出た。
  曰く、「職員に対する指示がサディスティックで、パワハラまがいのいじめもあり、職員
 には不信感が募っている」「政治主導の意味をはき違えている。

  たとえばある報道は、長妻氏は冷酷な性格で、「警護官を雨のなか、家の前に一晩中立た
 せていた」と書いた。大臣の自宅の前には、就任中、警護用のポリスボックスが仮設される。
 警護官にとって、立って見張りをするそのこと自体が仕事だ。しかも、二時間で交代する決
  まりになっているという。なのに、あたかも長妻氏が指示したかのように、「雨のなか、一
 晩中立たせていた」と書く。警護官を家族に挨拶させなかったといった、どうでもいいこと
 さえ、悪口の材料にされた。
 「私が頼んで、警護官を派遣してもらっていたわけでもないのに、それを家の前にずっと立
 たせていたと書くんですよ」と、長妻氏はマスコミの理不尽さを嘆いていた。
 根も葉もない誹諧中傷も報じられたという。大手新聞の報道によると、次のような出来事が
 あったことになっている。

 大臣室で官僚から説明を受けているとき、長妻氏の資料が床に落ちた。役人が拾うのを躊躇
 していると、長妻氏が「君、拾えよ」と局長に命令した。局長が渋々拾うと、長妻氏が「こ
 れが、いまの僕と君の関係だ」といったとされていた。
 長妻氏は、「そんなこというわけないでしょ。常識で考えてくださいよ」と、苦りきってい
 たという。いま挙げたのは、長妻氏に対する悪口記事のほんの一例で、大臣就任中は、連日
 のように誹諧中傷記事が各メディアに掲載されて(※「させていた常套手段」誰が?・・・
 と筆者が と追加しておこう)いた。
 普通、大臣に関する批判が出れば、マスコミは大臣に取材し、裏を取る。それもやらずに一
 方的に、記事をでっちあげて叩く。厚労省の役人と記者クラブがタッグを組んで、良妻追い
 落としに動いたのは、明らかだろう。

                    財務省主計局が記者に送った中傷メール

  マスコミによれば、良妻氏は大臣に就任後、成果らしい成果を出さなかったとされる。メ
 ディアは「ミスター年金」をもじって「ミスター無能」「ミスター検討中」と郵楡した。ご
 本人はごく一部しか明らかにしていないが、全省的な激しいサボタージュに遭ったと推測さ
 れる。
  大臣はただでさえ、忙しい。特に長妻氏の場合、全部自分で処理しようとしたため、寝る
 時間もなく、細かなことに気を造う暇がなかったはずだ。こんな場合、普通は、大臣秘書官
 がフォローするべきで、細かなことは秘書官や事務方の責任が問われる。しかし、厚労省で
 はそうならなかった。

  逆に、「あんなことも気づかない。こんなこともしない。冷たいだけじゃなく無能だ」と、
 みなで言い回ったようだ。こんな状況では、長妻氏がいくら仕事をやりたくてもできない。
 結局、長妻氏は「職員からすこぶる評判が悪い」「内開府の意見募集に悪評が山のように届
 いている」という理由から、菅改造内閣発足をもって退任した。いわば更迭だ。
  これまでの慣例では、閣僚経験者で、しかも政権交代の最大の功労者である長妻氏を無役
 にするなどとはあり得ない。一時期、首担桶佐官にするという観測記事が出回ったが、最終
 的に長妻氏が与えられた次のポストは、民主党の筆頭副幹事長だった。これは異例の降格人
 事である。

  実は、長妻氏追い落としには、さらに裏の話がある。大臣就任期間に、「長妻は、こんなひ
 どいことをやっている」として、長妻氏の仕打ちを列挙したメールが出回った。私は持って
 いないが、多くの記者が手にしていた。彼らはそれをどこから人手したか・・・財務省の主計局
 からである。
  厚労省が出所であれば、内輪もめだということになり、厚労省の役人も悪者になりかねな
 い。財務省がやんわりと「なんだかひどいらしいですなあ」とやれば、真実味も増すし、記
 者も飛びつきやすいという巧妙な作戦である。




                       財務省が絶対に認めない改革とは

  財務省にとっても、長妻氏は邪魔者だった。長妻氏は野党時代、社会保険庁の日本年金機
 構への移行を凍結し、社会保険庁を国税庁と統合させて「歳入庁」を設置すべきだと主張し
 ていた。大臣になった後、年金機構の民間出向者が内定済みという理由で、これは実現しな
 かったが、将来的には歳入庁設置の意向を示していた。※
  財務省が絶対に受け入れられない改革、それは国税庁の完全切り離しである。
  一時期、消えた年金問題に関連して歳入庁構想が浮上した。年金も国税も国民からおカネ
 を徴収する点では同じ機能なので、社会保険庁と国税庁を統合し、歳入庁を新設して、国民
 から徴収する機能を一元管理しようという構想だ。こういう仕組みにすれば、無駄な人件費
 が削減できるだけでなく、徴収率も上がるし、データの管理もしっかりし、間違いも起こり
 にくい。極めて妥当な案だった。

  ところが、いつの間にか、歳入庁構想は俎上に載せられなくなり、立ち消えになった。財
 務省が反発したか、あるいは、民主党がそれを恐れたからだといわれている。
  なぜ、財務省はたかだか下部機関に過ぎない国税庁にこだわるのか。財務省のスーパーパ
 ワーの隠れた源泉が国税庁の査察権であるからだ。実は国税庁は、検察庁に勝るとも劣らな
 い強力なツールなのである(※米映画『アンタッチャブル』参鑑)。
  普通に生活していて、刑事事件の被告になることはまずない。刑事事件を起こさない限り、
 警察も検察も手を出せない。厚労省の元局長、村本厚子氏のように無理やり罪を被せて逮捕
 すると、どんなことになるか。大きな社会問題になり、いま検察は大変な苦境に立だされて
 いる。

  ところが、ただ一つ、比較的容易に刑事事件の落とし穴に嵌まりやすいのが脱税である。
 これを担当するのが他ならぬ国税庁だ。サラリーマンの場合、税金は会社が天引きして納め
 るので、脱税容疑に問われることはほとんどないが、自営業者や企業経営者は、うっかりす
 ると脱税に引っかかる。
  たとえ、脱税する気は毛頭なくても、経理上のミスはいくらでも起こり得る。とくに経理
 に専門スタッフを割く余裕のない自営業や中小企業では、国税庁がとことん調べれば、脱税
 とされても仕方がないミスは必ず見つけられる。

   国税庁はその気になれば、普通に暮らしている人を脱税で摘発し、刑事被告人として告訴
  できるのだ。あるいはそこまで行かなくても、国税庁の査察が入るということになれば、相
 当な恐怖感を抱かせることができるのだ。
  ましてやカネの流れが不透明な政治家は国税庁が怖い。だから国税庁を管轄する財務省に
 は刃向かえない。

  国税庁は、マスコミを牽制するためのツールとしても大いに威力を発揮する。霞が聞に対
 して批判的なフリーのジャーナリストを黙らすのは、その気になれば簡単だ。国税庁が査察
 に入れば、いくらでも埃は出てくる。
  経理がしっかりしている大手出版社や大手新聞社などのメディアを押さえ込むのも、さほ
 どむずかしくないという。国税庁は定期的にマスコミにも調査に入っている。たとえそのと
 きに立件できなくても、すべての資料を閲覧できることが大きい。

  経理の資料を見れば、重役や編集者、記者がどこどこで某政治家、某役人と食事をしたと
 いった情報が人手できる。国税庁は、入手したこれらの情報のうち役に立ちそうなものは整
 理して保管するという。
  ――財務省にとって、この懐刀が、いざというときにものをいうのだ。たとえ摘発しなく
 ても、霞が関に楯つくマスコミや政治家には、やんわり「これ以上うるさいと、こちらも本
 気でやりますよ」と相手が受け取るような形で、それとなくにおわせるだけで十分だろう。

  無論、財務省は国税庁を脅しの道具に使っているなどとは絶対認めないだろうが、査察や
 調査と霞が関批判の記事の間には、ある種の因果関係が存在すると感じているマスコミ人は
 多いはずである。
  私自身こんなことを書くことについて、友人のマスコミ関係者から、「古賀さん、国税の
 ことは書かないほうがいいよ」と忠告を受けた。ここでの表現がオブラートに包んだような
 ものになっているとしたら、やはり私も国税の恐怖に勝てなかったということかもしれない。

  しかし、もう一人の友人はこういった。「古賀さん、ここまで霞が関を敵に回したら、い
 まさら手遅れだよ」……。
  かように財務省にとって国税庁ほど使い勝手のいい機関はない。だから何かあっても手放
 そうとはしないのだ。

                    公務員制度改革なくして増税なし

  私は、仮に、仙谷氏が権力を握った時点で、民主党という風船が高く上がり続けていたら、
 かなりおもしろいことになったのではないか、と思っている。脱官僚を実現する環境は、鳩
 山政権のときよりも好転していると感じたからだ。

                                                                                古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』


実名(組織・故人の)が入ってくると、これは「事実は小説より奇なり」であり、これを巡り、
民主主義の成熟度が問われることになる。「バッタボックスに立たなければ、ゲームは始まらな
い、バッタボックスに入らなければゲームは終わらない」ということだ。面白い。



※「国税庁は財務省の「権力の源泉」だ。これが歳入庁となり財務省から分離・独立することは
 絶対認められないというのが財務省の立場である。現に、橋本政権時代、橋本首相が国税庁の
 分離を提案したことがあったが、大蔵省幹部や大蔵省出身の総理秘書官のあわてぶりは尋常で
 はなかった。秘書官などは「総理、そんなことを本当にやっていいと思ってるんですか!」と
 血相を変えて喰ってかかっていた。この時は、歴代自民党税制調査会長を大蔵省がすべて迅速
 かつ周到に根回しして、瞬時に葬り去ったものである(「シリーズ/財務省の増税マインドコ
 ントロールを暴く!・・・②「歳入庁構想、自民・財務省の連合軍に見事に葬り去られる」」
 江田けんじ公式ホームページ 2012.07.09)。

                                                     この項つづく





プロコフィエフ: バレエ音楽「ロメオとジュリエット」第2組曲
 

  ● 今夜の一曲


   憎くはないのに憎まれ口を

   きいて悔やんだ日もあった

   愛し合うのは早いのね コバルト

   色の波も散る 波勝岬は純情岬

 
   一人になったら悔しいけれど、

   涙ほろりとこぼしてた

   愛し合うのは早いのね 南の伊豆の

   春の夢 波勝岬は青春岬

 
   青春時代はかえってこない、

   みんな大事にしましょうよ

   愛し合うのは早いのね かもめの

   歌も潮鳴りも 波勝岬は思い出岬


                        『愛しあうには早すぎて』
                             
                               歌  本間千代子       
                              作 詞 丘灯 至夫
                              作 曲 山路 進一             

 「あたかもグループ交際を推奨しているような」歌詞の舟木一夫「君たちがいて僕がいた」
 と本間千代子「愛し合うには早すぎて」は「一種のハーモニーをかなでるような仕掛けとな
 っていた」。また、舟木一夫「高校三年生」の「ぼくらフォーク・ダンスの手をとれば、甘
 く匂うよ黒髪が」という「男女の接近の限界線の提示」と「愛し合うのは、早いのね」(本
 間の歌の三番ともに共通する歌詞)とは「共鳴しあってもいた」。

                     藤井淑禎 著『純愛の精神史―昭和三十年代の
                     青春を読む―』(新潮社(新潮選書)、1994) 
     

同上著者によると、波勝岬は、昭和三〇年代半ばくらいまで、船でしか行けず、陸路で辿り着く
のは困難な場所だった。バス路線から離れており、最寄りのバス停からもまともな道はなかった。
と語るほど、この歌ができた1963.4年は、「波勝岬」が「人跡未踏の地」「処女性=純潔
のメタファー」たりえた、高度経済成長への乖離を意味していたのだろう。個人的には、日活の
青春映画シリーズのヒロインをめぐり小百合か、千代子かで競い合った青い特でもあったが、声
美人で後者のファンであったが、団塊の世代に、異性愛の早い、遅いを意識させたシンボリック
な映画音楽として深く記憶にとどめる。 

 

 

有珠山・御嶽山・箱根山

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● 箱根山が噴火する可能性は?、また、その規模は? 

神奈川県の箱根山では活発な火山活動が続き、10日夕方以降、箱根町で震度2や1の揺れを観
測する地震が相次いで起きた。気象庁は大涌谷周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生するおそ
れがあるとして、引き続き警戒を呼びかけている。大涌谷の斜面から噴き出す蒸気が多く、活発
な火山活動が続いている。午後6時7分ごろには箱根山周辺の地下のごく浅いところが震源とみ
られる地震があり、箱根町湯本で震度2の揺れを観測したほか、神奈川県小田原市や静岡県熱海
市などで震度1の揺れを観測。地震の規模を示すマグニチュードは3.1と推定され、先月下旬
以降では最も大きかったとみられる。また、午後5時ごろから午後6時20分すぎにかけて、箱
根町湯本で震度1の揺れを観測する地震が4回あった。噴火規模は大涌谷周辺にとどまるだろう
という専門家の話だが、噴火高さは3百メートル程度ではないかともいわれている。
    5月10日 18時40分

まあ、どうなるかわからないが、有珠山、御嶽山などの経験を踏まえつつ用心にこしたことはな
いだろうが、多角的な視点からみると、二度と現在の富士を目にすることはないだろうと旅にで
かけた思いの延長にある(『富士賛歌』2012.05.20)。
                                        

 

    ● 今夜のアラカルト

  

出展:室井克義著「イタリアン・アウトドア・クッキング-プロの技に遊ぶ」(柴田書店、1996)

【イタリアン・アウトドア・クッキング Ⅰ グレープフルーツと柿のサラダ】

最近は視力の低下のため、精密なマシンの組み立ては拡大鏡ハットを着け作業するのだが、やは
り不便なのだが、手先は元来器用かったため、長年の自信(自惚れ)のため抜けずにいるが、こ
のブログのタイピングも誤字・脱字・多字・重ね字のミスタイプはしょっちゅうだ。だから、書
道、絵画などは今でも変な過信が残っているため、時間に余裕ができればやってみたいと思って
いるが、料理も手先は勿論、味覚もいけるのじゃないかと変な過信をもっているが、これを言う
と彼女が嫌がるから、アウトドア・クッキングなら腕が振るえるんじゃないかと思っている。

さて、著名な日本の北イタリア料理シェフの室井克義は、表記の本のレシピでこのように書いて
いる――野菜料理で、印象深いのがイタリアのモンテ・ローサ(赤い山)というサラダ。何てこ
とはないニンジンのせん切りが山のように盛ってあり、ドレッシングがかけてあるだけ。しかし
これが実に甘い。歯ごたえも最高。血管が浮き出てきそうなうまさだった。僕は、イタリアから
帰国してつくづく思うことの一つが、日本の野菜サラダの冷やしすぎ、季節的なこともあるだろ
うけど、野菜が育った大地の温度で充分ははず。2泊3日のキャンプなどでは、皆、とくに女性
の顔に、いい加減肉、魚料理に飽きちゃったと書いてある。そんなときの主役を野菜料理にして
みてはどうだろう――と、前置きし作り方を紹介している。柿とグレープフルーツ、レタス、カ
リ力リベーコン(上/下右写真)を基本のドレッシングであえただけ。ベーコンはオーヴンで水
分を飛ばせば、簡単にカリカリになる。また、日本では、柿酢や黒酢などあるが、イタリアでは、桃
酢を使っているという。これは憶えておこう。 

   


 



【日本の政治史論 Ⅳ:政体と中枢】  

「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で、触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。 

  福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)


                          古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』

   目 次

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策 

  第5章 民主党政権が蹟いた場所

                                 公務員制度改革なくして増税なし

  鳩山政隆の頃は、鳩山総理と小沢一郎幹事長は必ずしも}枚岩でなかったし、他にも岡田
 克也氏、前原誠司氏らのグループも力を持っており、党内も内閣も意思統、ができていなか
 った。複数の軸があり、まとまっていない状況は、官僚にとって好都合だ。ときには鳩山総
 理を突っつき、ときには小沢氏や前原氏を動かし、自分たちに良いようにコントロールでき
 るからだ。

  菅政権になって、権力か分散していた状況は変化し、「陰の総理」と呼ばれるほど仙谷官
 房長官に権力が収斂していった。旨い換えれば、仙谷氏を中心とした対霞が関戦略が心てら
 れる状況か生まれ、銘々か勝手なことをいっていた鳩山政権時代よりは、官僚を封じ込めや
 すい状況が整っていたのだ。
  しかも、各省庁の役人は大臣そっちのけで、権力が集中した仙谷氏の顔色をうかがうよう
 になっていた。これは仙谷氏飼から見れば一応、政治主導の実現である。ただ、それは仙谷
 氏が官僚の嫌がることをしないという限定つきだった。官僚は仙谷氏の意向を忖度して動く
 ので、各大臣も官僚に従っていれば安泰だと思っていたのだろう。つまり、結局はまだ官僚
 主導の域を超えていなかった。

  私は仙谷氏は、脱官僚の理想を捨ててはいないと信じていたので、仙谷氏がやっと本領を
 発揮する環境ができたと密かに期待していた。しかし、仙谷氏は失言などで問責決議され、
 2011年1月、菅政権が二度目の内閣改造に踏み切らざるを得なくなると、閣外に去った。 
  新たな内閣の布陣を見ると、党外から財政再埋論者のり与謝野馨氏を経済財政政策担当大
 臣に起用したところからも、消費税増税路線は明らかである。
  現在の国家財政を考えれば、デフレ脱却と名目成長率上昇を実現できなければ、いずれ増
 税は避けられない。それだけを考えれば、政権の一つの選択肢として、消費税増税を検討し
 ておくのは必要だ。しかし、財務省主導の増税では、国民は納得しないはずだ。民間では、
 景気の悪化でボーナスはゼロ回答、給与も下がるという状況が続いているからだ。

  国の財政は、いまや破綻寸前。先にも記したように、民間でいえば、会社更生法を申請し
 なければ立ち行かないところまで来ている。
  事業再生の段階では、無駄な事業は切り、経営陣には責任を取ってやめてもらう。その代
 わり、若い有能な人を引っ張りあげる。あるいは外から優秀な人材を連れてきて、新たな企
 業文化を作り、前に進む。
  事業のいくつかは整理されるので、ポストは減り、相当数の従業員がリストラされる。巷
 にはリストラされて失業した人が溢れる。民間の失業者のなかには、職だけでなく、住むと
 ころも失った派遣社員もいる。彼らは次の職を見つけるため、悲壮な表情でハローワークに
 並んでいる。

  対して霞が関は、世間とは別肌界だ。民間でいえば公社更生法申請段階というのに、無駄
 な事業をいまだに続けている。リストラもやらない。役人は公務員法に守られ、給与もボー
 ナスもほとんど削られない。公務員法は変えるべきだが、それでも霞が開はリストラは認め
 ないかもしれない。私のように公務員もリストラが必要などというと、返ってくる言葉は決
 まっている。「生首飛ばして、血を流そうというのか」――。

  罪を犯したわけではないのに、クピを切るのはかわいそうだ。これが霞か関の麗しい論理
 である。だか、寒風吹き荒ぶ民間をよそに、ぬくぬくした境遇に安住している霞が関がいく
 ら増税が必要だといっても、国民は誰も納得しないに違いない。
  ハローワークに行った失業者か隣の人に尋ねる。「あなたは何をしてらっしゃつたんです
 か」「国家公務員です。お互い厳しいですなあ」。こういう会話が交わされるようになって、
 初めて国民も、ああ霞が関もがんばつているな、苦しいがわれわれも協力しなければ、とな
 って増税を受け入れる。

  すなわち、公務員制度改革、脱官僚なくして、増税は実現しない。菅総理がそのことに気
 づいていらっしやったかどうか。
  増税路線をはっきりと打ち出したときこそ、政権の真価が問われている。菅総理がリーダ
 ーシップを発揮して、政治主導で、可及的速やかに改革に着手してくれることを私は期待し
 た。

ここにかかれていることも異論ない見識だと考える。端的にまとめると「公務員制度改革、脱官
僚なくして、増税は実現しない」に集約されることは、このブログで提案している成長戦略『双
頭の狗鷲(ダブルヘッド・ゴールデンイーグル)』の基本骨子でもある。でもあるが実現するの
はなかなか難しいことは、長らくこの地で住民運動をしてきた高校教師の同士の賢兄も反対する
"生活保守"が働くことを知っている。まして、薩長幕藩的中央集権遺制を色濃く残している財務
省などの上級国家官僚が既得権益を守り抵抗することも推測できる。勿論、ここには自民党など
の保守(反動)の政治委員(文武官族議員)グループも含まれる。このように歴史の時系列を広
げ多角的に考えると、世界の動きが見通すことも可能だ。とまろう、『吉本隆明 「すべてを引
き受ける」という思想』(光文社  2012.06.20 茂木健一朗)のタイトル通りだから。このよう
に、折角、政権交代を可能にし、風通りが良くなった好機を、<現在の政体>により多くの勤労納
税者の期待が裏切られていく様をわたしたちは目撃することになる。

 

  第6章 政治主導を実現する三つの組織

                       事業仕分けに大臣が抵抗するわけ

  政治主導を確立するために必要な仕組みに触れる前に、そもそも政治主導とは何か、とい
 う根本的な問いについて考えてみたい。
  日本国憲法では国権の最高機関は国会だと定めている通り、国の機関としては国会か究極
 の主導権を持っているはずだ。その次に問題になるのが、では、行政を担う政府のなかで誰
 に専権かあるのか、ということだ。それか政治なのか官僚なのか。
 
  政治家やマスコミは,政治主導」という言葉をなんの疑問もなく使っているが、実は政治
 主導という言葉があること自体、本来はおかしい。官僚は大臣の指揮下にある、政府の仕事
 に携わる実務の遂行名であり、政策の決定権はない。従って、法律上は「官僚主導」はあり
 得ないはずであり、その逆の「政治主導」などという言葉も存滉する意義がないはずである。

  これを大前提に考えていくと、一言でいえば、政治主導とは「内閣主導」だ。さらに詰め
 ていくと、内閣のトップである総理の主導こそが政治主導の究極の形となる。先述した通り、
 一人に権力が集中していたほうが、霞が関を押さえ込みやすくなる。その意味でも、総理主
 導が望ましい。
  ところか、役人言葉には「内閣主導」はあっても「総理主導」はない。役人は、総理は内
 閣の総意に基づきりリーダーシッブを発揮するのであって、各省庁の人臣の意思を考慮しな
 い総理の主導はあり得ないと解釈する。このように役人か考えるのは、総理主導を認めると、
 総理の一存でなんでも決まってしまいかれないからだ。

  総理主導を認めない考え方によれば、各人臣をコントロールすることにより、内閣をコン
 トロールし、結果的に総理の主導権を空洞化できる,現実にそういうことが起きている。
  たとえば、事業仕分けで各省大臣が抵抗している姿がその典型だ。
  逆に総理主導を認め、総理を完全にコントロールできなくなると、役人の意思は反映され
 なくなる。各省の役人からすれば、総理のコントロールは、所轄の大臣のそれに比べるとは
 るかにむすかしい。
   官僚の解釈が間違っているわけではない。憲法上も、「総理は内閣の総意に基づいて」
 とタガをはめている、官僚はこの解釈を楯にとって「総理主導」を認めないのだ。
 
  だが、現実には最終決定権を握っているのは総理である。大臣の指名・罷免の権限を有す
 る総理は、大臣を指名し、場合によっては罷免できる。
  しかも、閣議で議論した結果、意見がまとまらないときに、最終的な決断を下すのも総理
 だ。もし、総理の考えに全閣僚が反対したときには、全大臣を罷免し、総理が兼務すること
 だって論理的には可能である。それがゆえに、閣僚が不祥事を起こしたときには、総理は任
 命責任を問われろ。
  この仕組みを前提に考えれば、総理が各省庁、各大臣に直接指示する、総理主導の政治か
 もっとも効率的な政治主導という結論になる。

                                   この項つづく

  

最新液中加工工学

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【最新液中加工工学】

日曜の夕食時、テレビをみていると、従来の、バネの力によって液体を高圧で発射し、皮膚を貫
いて筋肉に薬剤を注入する注射器では、神経を傷つけたり、痛みを感じるなどの課題があったが、
芝浦工大の山西陽子准教授が2012年に開発した針なしタイプでは、微細気泡を利用して試薬
などを細胞内に送り込む技術「マイクロバブルインジェクションメス」を改良して作製し、メス
を覆うガラス製のシェルを前方に突き出すことで生体組織と密着させ、高精度で位置決めし、空
気中でも使える注射器――直接皮膚に押し当て、試薬を内包した気泡を発射。その気泡がはじけ
ることで細胞に穴をあけ試薬を流し込むが、穴の直径が4マイクロメートルと小さいため、ヒト
の体の痛覚を避けられる痛みを感じない――が紹介されていた。

これはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、直訳すると「マイクロ電機システム」となるが、個人
的には15年前、「微塵工学」と呼び、ネオコンバーテックの表面微細加工の要素技術として、
研究調査していたが(「微」はマイクロメートルで「塵」はナノメートルの寸法単位)、(1)超音波発振方式
や(2)電界誘起方式で、泡発生させ気泡を1粒づつノズルで連続噴出させ、気泡が破砕する衝
撃波で皮膚を穿孔し注入するという原理。このときの中空形成時、窒素ガスと薬液の2つを同時
注入する。また気泡を導出経路が長い場合、独自のソート機構も提案されているが、「電界誘起マイ
クロナノ気泡による低侵襲加工」などと呼称している。ここで、「侵襲(性)」とは、生体を傷つ
けるあるいはその強度を意味する。 

 

なお、同上研究グループは応用領域として、(1)ピンポイント遺伝子導入、(2)針なし注射
器、(3)プラズマと空洞現象の相乗効果と薬液、薬剤のソートによる精密彫刻あるいは洗浄、
(4)気泡を包む試薬層を複数の層にすることで薬効を増やしつつ、より微塵化させことで薬効
を高める技術、(5)ピンポイント色素マーキング、(7)白質結晶の高速、高収量化技術など
が提案されている。このように、ピンポイントで気泡発生させ、対象物を微塵加工技術は「ネオ
コーバーテックのコア技術であり、また、「オール人工光型植物育種システム」のツールだろう。
これは実に面白い。


特開2015-048268「タンパク質結晶装置用の気泡噴出部材及びタンパク質吸着気泡噴出部材、
タンパク質結晶装置及びタンパク質結晶化方法、並びにタンパク質結晶切削装置及びタン
パク質結晶切削方法」

 

 【日本の政治史論 Ⅴ:政体と中枢】  

「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で、触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。 

  福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)


                           古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』

   目 次

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策 

 

  第6章 政治主導を実現する三つの組織

                              政治主導に必須の三要素

  問題は、そのための仕組み作りである。総理が官僚機構を完全コントロールし、政治主導
 を実現するには、どのような仕組みが必要か。
  総理か掌握しなければならない要素は三つある。分かりやすくいえば、「モノ」「ヒト」
 「カネ」。すなわち、「政策な案」、政策を実施するための「組織と人事」「予算」である。
 この二つの機能を官邸に集約し、総理の司令塔として各省庁に指示する仕組みに変えれば良
 い。

  一つ目の政策立案では総理直轄のプレーンが要る。政策霖案のための総理直属の組織とい
 えば、誰し橋本龍太郎元総理がイニシアティブを取り、森喜朗内閣のときに設置された経済
 財政訪問会議を思い浮かべる。
  その次の小泉純一郎内閣が強いリーダーシップを発揮できた大きな要因の一つも、この会
 議にある閣僚に加え、民間有識者、学者らで構成され、会議では侃々諤々の議論が繰り広げ
 られ、郵政民営化では、竹中平蔵大臣と麻生太郎総務大臣の丁々発止のやり取りも伝えられ
 た。そうした閣僚問の利害の対茫を小泉総理が最終的に裁定するルールになっており諮問会
 議は、紛れもなく実質的に総理直属の政策な案組織としての機能を果たしていた。

  経済財政諮問会議の設置は、党主導の政策立案を官邸にシフトさせ、族議員と官僚による
 利益誘導を排除するという目的もあつたが、政治主導による政策な案の仕組みの一つの雛形
 となったのも確かである。
  しかし、小泉内閣退陣後は、族議員と官僚の巻き返しにより次第に形骸化していき、その
 意味を徐々に失っていった。
  一方、民主党か経済財政諮問会議に代わる仕組みとして打ち出したのは「国家戦略局」構
 想である。

  民主党は2009年の総選挙に当たって、政権構想のなかで「官邸機能を強化し、総理直
 属の国家戦略局を設置し、官民の優秀な人材を結集して、新時代の国家ビジョンを創り、政
 治主導で予算の骨格を策定する」とし、鳩山内閣は発足と同時に国家戦略担当相として菅直
 人氏を任命、法整備が整うまでの暫定組織として内閣官房に「国家戦略室」を設置した。
  その後、翌2010年2月に国家戦略局の設置を盛り込んだ法案が国会に提出されたもの
 の、実質的な審議は行われず、継続審議のまま棚hげになった。暫定組織である国家戦略室
 の室長も空席で、玄葉光.郎民主党政策調査会長が代行を兼務するといった状況が続き、ほ
 とんど機能していなかった。

  私が考える総理直属の政策作りの仕組みは、自民党政権の経済財政諮問会議とも民主党政
 権の口指す国家戦略局とも少し違う。
  私がイメージするものはアメリカの仕組みに近い。アメリカでは行政権は大統領が単独で
 担っており、ホワイトハウスに大統領直属の中核組織「大統領府」が置かれている。大統領
 府は行政組織の統括腰間であり、軍事外交政策の「国家安全保障会議」、通商政策の「通商
 代表部」、経済政策の「経済諮問委員会」などで構成されている。

  また各省の閣僚は、あくまで大統領を補佐し助言を与える役割に留められており、大統領
 が閣僚の意見に法的に拘束されない仕組みになっている。そして新大統領が就任すると、閣
 僚だけでなく、行政組織の幹部も政治任用によってすべて入れ替えられる。その数は約3千
 人にも及ぶ。文字通り、官僚機構の「中.胆‘が一新されるのだ。
  このいささかエキセントリックに見えるシステムには批判もあり、官僚の入れ替えには議
 会の承認が必要なものもあり、時間もかかる。大統領就任後半年経っても、まだ財務省の次
 官補が決まっていないなどという、日本では考えられない事態も起こり得る。

  しかし、それでも新大統領の就任と同時に、大統領の意向に添う新たな政策が次々と提案
 される。まだ決まっていない役所の幹部ポストがあるにもかかわらず政策が出てくるのは、
 大統領か予め用意していた自前のチームを連れて、ホワイトハウスに入るからだ。このチー
 ムが既存の行政組織とは関係なく、政策をリードする。

  小泉内閣が強力なリーダーシッブを発揮できた秘密も、小泉総理が自前のチームを持って
 いたことによる。小泉総理は、竹中平蔵氏をトップとする竹中チームと、飯島勲秘書官を筆
 頭とする飯島チームを連れて官邸に入った。
 小泉総理は、政策は竹中チーム、マスコミ対策は飯島秘書官に分担させ、政策についても案
  件ごとに人をうまく使い分けなから行政組織をコントロールし、政策運営を行った。小泉時
  代を見ると、政治主導を発揮するには、総理直結の自前のチームが不可欠だということが分
 かるだろう。

  裏を返せば、安倍晋三内閣の失敗は、自前のチームかなかったことに起因している。もう
 少し正確にいえば、故人のプレーンはいたか、小泉内閣の時に比べると十分な陣容になって
 おらず、チームとして機能していなかつたといったほうが良いかもしれない。いずれにして
 も、安倍総理を支える体制が不十分だったというべきだろう。

  安倍総理は内閣の発足後、官邸スタッフを公募すると発表した。私はこれを聞いて正直驚
 いた。ホワイトハウススタッフを大統領就任後に公募するなどということがあるだろうか。
  安倍氏は小泉政権ドで官房長官を務めていた。しかも、小泉総理が早々と後継指名をして
 おり、就任2カ月前には、次の総理に就く可能性が非常に高かった。少なくとも1ヵ月前に
 は次同胞即就任は確定的だった。

  官房長官だった安倍氏は、官邸の官僚スタッフに関して熟知していただろうし、人脈もあ
 ったはずだ。1ヵ月も準備期間があれば、どのスタッフを残し、どの人を省庁に返すかとい
 った人選をし、自分の政権に必要だと思われる人物は一本釣りし、民間人も含めて自前のチ
 ームを編成できたはずである。ところか、そういった準備かほとんどできておらず、就任後
 にスタッフを大々的に公募した。だから私は驚いたのだ。

   当時、私は安倍内閣の政治主導はむずかしいのではないか、と危惧していた。案の定、安
  倍内閣は官僚の凱抗に遭って漬されてしまった。民主党政権と違い、安倍総理のやりたい政
 策は明確に見えたが、安倍総理には、誰を使い、どのような仕組みでそれを実現するのか、
 具体的な案がなかったように思う。総理になってから、それを考えるのでは遅い。


                            意図が不明な国家戦略局

  小泉内閣の成功と安倍内閣の失敗という対照的な例を目の当たりにして、私は、総理の座
 に就く政治家は、予め自前のチームを準備できる仕組みを作る必要があると強く感じた。
  そこで私か注目したのが、2008年6月に国会を通過した「国家公務員制度改革基本法」
 のなかにあった「国家戦略スタッフ」という文言だった。


2008.06.13  国家公務員制度改革基本法 
2008.11.05  国家戦略スタッフ・政務スタッフのイメージ(抜粋)


  現行の制度下でも、官邸内には政策政案組織が設けられている、官房長官、官房副長官の
 下にある「官房副長官補」なる官僚組織がそれである、単に略し、就任している個人の名前
 を冠して「○○補」と呼ばれることか多い。そして、各「袖」の下には省庁から出向した審
 議官、参事官、その下に参事官補と呼ばれるスタッフがいて、一つの組織となっている。

  この官房副長官補は三名おり、主として安全保障や警察を担当する補、財政など内政を担
 当する補、外交を担当する補と役割分担されている。彼らか、官房長官と副長官などを助け、
 内閣全体の立場から、省庁を超えた総合調整を行うことになっている。いわば、日本政府の
 司令塔を支える屋台骨といっても良い。うまく機能すれば、縦割り行政や省益優先の官僚主
 導行政を阻止するとともに、総理の意向を行政に直接反映させる役割を果たせるはずである。
 しかし、実際にはそうなっていない。

  問題の第一は、組織機構上、官房長官、官房副長官が介在し、総理の意向が官邸の官僚に
 ぬに伝わりにくいという欠陥があることだ。第二は、より重要な点だが、副長宮相はそれぞ
 れ官僚出身者であり、しかもその下にいるスタッフもみな各省からの出向者で、任期が終わ
 るとまた元の役所に戻る什組みになっている点。そのため、実態としては官邸のなかのミニ
 省庁にしかなっておらず、そこで働く官僚スタッフは親元の省庁に顔か向いているという問
 題がある。
 
  内政面ではとりわけ財務省の影響力が強く、財務省による霞が関支配の拠点ともなってい
 る。従って、現状の官邸の仕組みでは、総理の政治主導の実現はむずかしい。もちろん、こ
 れを総理の強力なリーダーシップで変革できればいいのだが、おそらく時間とコストがかか
 り過ぎて、それが実現する前に政権か倒れてしまうだろう。
  そこで、こうした仕組みを前提としなから、総理の潜在的には強大な権限を顕在化させる
 ことか必要となるのだ。

  では、国家戦略局といった総理直結の組織を別枠で新たに設けるだけでいいのかといえば、
 これも問題がある。民主党が.2010年に出した法案に含まれた国家職略局構想では、組
 織的には、内閤官房のなかに設置することになっている。つまり、官房長官、副長官の下に
 置かれるのだ。しかも、国家戦略局長が副大臣級(官房哨長官の兼務)になっているので、
 官房長官の下につく。国家戦略担当大臣と官房長官の関係も明確ではない。

  また、常設的な組織にしてしまうと、もう一つ別の官房副長官袖のチームを作るようなこ
 とになりかねない。そうなれば、純粋に総理直轄の政策立案チームを作るという趣旨からや
 やもすると外れてしまいかねない。
  その視点で、前にも述べた通り、私は2009年3月に国会に提出した国家公務員法改正
 案のなかに国家戦略スタッフの創設を盛り込んだのだ。

                    総理直結のスタッフが政治を変える

  私の考える総理直結の国家戦略スタッフの在り方は次のようなものだ。
  時の総理はスタッフの人数も人選もすべて自分の一存で決められる。何人入れるかも自由
 だし、政治家と官僚、あるいは民間人の登用も自由。その比率についても総理が独断で決め
 られるといった見台に、総理が好きなようにチームを編成できる。

  国家公務員法改正案に盛り込んだときも、多極多様な人材の任用が可能になるように、ス
 タッフの格もかなり幅広く設定し、それぞれの格に応じた複数の給与レベルを想定しておい
 た。一番低くて課長クラス、上は政務官クラスとした。本当は閣僚クラスも設けたり、民間
 人を登用するために高い給与も出せるようにすることも考えたが、そこまではできなかった。
 
  戦略スタッフの一人ひとりに付与される権限は形式的にはさほど強くはないが、いったん
 総理の指示がトれば、事実上なんでもできる。その事項に関する、実質的に大きな権限を持
 てる。
  しかし、大きな権限を啓えることができるのはあくまでも総理だけであって、官房長官や
 官房副長官は、総理から頼まれない限り国家戦略スタッフには直接指示できない。
  経済財政諮問会議は、政策の調査・審議はできたが、行政組織への指揮命令の権限は有し
 てはいなかった.対して国家戦略スタッフは、総理の頭脳となって政策を考え、総理の手足
 として、命令さえあれば、総理の声も直接各省庁に伝えられる。

  私のシステムなら、総理が予め、戦略スタッフの一人の指令に従うよう、各省庁にお触れ
 を出しておき、総理の命を受けた戦略スタッフの幹部が指揮を執るといったやり方も事実上、
 可能になる。
  この場合、霞が関のサポタージュが予想されるにしても、総理の意向が直に反映される仕
 組みになることが大きい。総理の指示が官邸官僚によっていつの間にやら捻じ曲げられて各
 省庁に伝えられたり、ト分にドまで届かなかったり、その結果墜の命令かよく分からなくな
 り、責任の所在もはっきりしない、といった現在の仕組みを変えるのだ。

  総理直結の組織を使って総理が指示し、政策を立案・実施する仕組みなら、明らかに総理
 に責任かある。もし、公約を実施できなければ、説明責任も生じる。
  自民党は政権を握っていた当時、政策がうまくいかないとぷ目僚にやられた」と弁解して
 いた。実際に官僚が政策を潰したのだとしても、官僚にやられるような政治では困る。『官
 僚にやられた」とは、「私たち自民党の政治家には力かない」といっていたに過ぎないのだ
 が、それを言い訳に使わざるを得なかったことか、自民党政権の末期症状でもあった。

  総理直結の戦略スタッフ制になれば、末期の自民党政権のような霞任のなすりつけはでき
 なくなる。「スタッフがやってくれなかった」などと総理が弁解すると、即座に記者や野党
 議員から、「スタッフは総理が選んだんですよね」「あなたが指示して、あなたが選んだス
 タッフにやらせたわけだから、責任は総理にある」と突っ込まれる。

  戦略スタッフ創設が法的に確をされれば、総理の座に就く政治家はいやでも、予めどのよ
 うなチームを編成するのか考えておかなければならない。新総理は、マスコミから「どのよ
 うな人を国家戦略スタッフに起用するのか」という質問が真っ先に飛ぶので、総理になる前
 からチームを準備しておく必要がある。安倍氏や民L党政権のような過ちも起きない。そし
 て、新総哩就任と同時に、政治主導による政策提百が活発に行われるようになるはずだ。




  ちなみに、この議論をしていると、官僚から必ず出てくる反論がある。それは、『こんな
 仕組みを作ったら、総理がよほどしっかりしていないと指揮命令系統が不明確になって、行
 政が混乱する」というものである。実際は、「こんなものができても自分たちは国家戦略ス
 タッフの指ぷには従わないから混乱する」といっているに等しい。そもそも「しっかりして
 いない総理」というものを前提に議論すること自体、官邸官僚か政治家をバカにしているこ
 とを物語っている。

  いずれにしても、すでに述べたように鳩山政権の政府案では、国家戦略スタッフはすっぽ
 り抜け落ち、別枠で、意味のよく分からない国家戦略局を創設することになっていた。しか
 も、その法案に賭ける熱意もまったく感じられなかった。官僚を怒らせることをわざわざす
 ることはないという民主党政権の判断かあったのだろうか。

  もし仮に、われわれが策定した公務員改革法が成さしていれば、菅政権ては総理直属の国
 家戦略スタッフが任命され、東日本大震災の初動場面でも活躍していただろう、そのシミュ
 レーションは序章に書いた通りだ。


                                   この項つづく 

 

 ● 今夜の一枚

 『余りにも突然の記念樹』(2014.04.29)のイングリッシュローズ グラハム・トーマスが鈴
なり状態でつぼみから花が咲く瞬間の変化は写真のように小さい蕾が、開花するまで数時間で変
化するが、一番美しいのが開花直後である。本当は、ビデオ撮りしアップするのが一番だが(定
点測定で、コマ送り撮りするにこしたことはないのだが)。バックはよしず(葦簀)のシェード。
あとは、ルージュピエールドゥロンサールの開花を待つ。

 

 

虫の知らせ。

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庄堺公園のバラを観にでかけた。まだ少し早いが台風後で上天気。楽しいそうに話しながら隣接
するグランドに向かうグランドゴルフの老齢の男女の集団が横切る。今年は母がいない薔薇鑑賞
だが、それでも芳い香りに包まれたひとときを二人で過ごす。


【鯰の蒲焼きが全国展開に?】 

蒲焼きのウナギが話題となっているという。TBSでは、奈良県大和郡山市の「うなぎの川はら」
で、香ばしい匂い、こってりした脂の乗ったナマズの蒲焼きの試験的販売を放送していた。近畿
大学の研究者と鹿児島の養鰻業者のコラボで、養殖ナマズのエサを工夫したところ、ウナギに似
た風味をもたせることに成功する。今月9日からウナギ料理店で試験販売し、顧客の声をアンケ
ートする予定。絶滅が危惧されるウナギに代わり夏の主役になれるのではと期待されている。「
ウナギ風味のナマズ」作りの研究は、近大水産経済学研究室(奈良市)の有路昌彦准教授と同大
学院1年の和田好平氏。近大はクロマグロの完全養殖など食の安全・安定を探る研究者が多いな
か、有路准教授は約4年前に調査、研究を開始。昨年、鹿児島県・大隅半島でナマズとウナギの
両方を育てる牧原養鰻の協力を得て 試行錯誤を重ねてきた。ナマズは川や湖沼にすむ淡水魚で
ウナギとは異なるが、ぬるぬるとした表面や生息地など似ている点もあり、有路准教授は「ウナ
ギの代替食になるのではないか」と考え、各地のナマズを 取り寄せ、脂の乗り具合や臭みなどを
比較。「マナマズ(ニホンナマズ)」という種類がかば焼きに適すると判断。泥臭さは生育環境
の影響が大きいため、エサなど養殖技術を工夫すれば ウナギ並みになる。有路准教授は、国内に
は海水魚の養殖に使う固形エサが数百種類あり、栄養価や品質が高く、従来の淡水魚用のかわり
に、この中から油脂を多く含むエサを用いて鹿児島の牧原養鰻で育てる。昨年秋に調理して、淡
泊であっさりした当初の味から脂身が増し、さらにたんぱく質が豊富なエサも混ぜ、弾力のある
肉質になるように工夫する。

 

 


キャットフィッシュを畜養し琵琶湖の特産品に育てる(「『吉本隆明の経済学』論事始め」2015.
02.19)とこのブログでも掲載してきたので(「鯰とサロゲート」2010.10.24/「紫花菜と寒もろ
」2009.02.20/「ビル中の大山椒魚」2012.11.19)、あらためて書き加えることはないが、有
路准教授は、卵巣も大きく美味しく頂けるのだが、緑色で気味悪られるのではとテレビで語って
いたが、麹や糠発酵させたり、酢着け、唐辛子漬け、あるいは燻製や干物にしてみすれば色合い
変化するすから、珍味特産品に変化するのではと思ってみたりした。ともあれ、鰻の代用蒲焼き
としてだけでなくレパートリーも広く独自の発展をとげるのじゃないかと思っている。それと、
日本ナマズ以外のアメリカン・キャット・フィッシュでも蒲焼き向きの種類も発見できるのでは
ないだろうかとも考えた。

 

 【日本の政治史論 Ⅵ:政体と中枢】  

「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で、触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。 

  福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)


                           古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』

   目 次

 

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策 

  第6章 政治主導を実現する三つの組織 

                                     人事権はなきに等しい大臣

  次に「モノ’「ヒト」「カネ」の「ヒト」、すなわち政策を実行するための組織と人事。
 国家公務員の人事権は、法制上では、国家公務員法が「人事権は各省庁大臣にある」として
 おりこれを素直に解釈すれば、大臣が有していることになっている。
  ここで気をつけなければならないのは、国家公務員法でも、大臣全ほが人事権を持ってい
 るとしているわけではないということだ。 
  一口に大臣といっても、法律上は「国務大臣」と「省庁大臣」の二つの呼び方がある。国
 務大臣は総理か任命した大臣全員に使われる呼称であるのに対して、省庁大臣は省のトップ
 である大臣にだけ使われろ呼び方だ。

  たとえば菅内閣のときは、経産省の海江田大臣は経産省のトッブなので国務大臣でもあり、
 省庁大臣でもある。しかし与謝野経済財政政策担当大臣は内閣府の特命大臣であり、所管の
 省庁を持っていないので、国務大臣ではあっても省庁大臣ではなく、人事権はない。
  しかし実際には、省庁大臣であっても、人事権をほとんど行使できない状況に置かれてい
 る。たとえば、大臣が独断で外から人を入れようとすると、「役所に不刊益をもたらすよう
 な人事は認められない』と官僚から圧力がかかる。もちろん表向きは「外の人を入れてもか
 えって混乱して大臣の責任が問われかねませんよ」と、親身になったふりをして『アドバイ
 ス」するのだ。官僚組織にそっぽを向かれると、大臣としての仕事にたちまち支障をきたす
 ので、大臣はそれ以上、ゴリ押しできない。

  現行のシステムでは、役所の幹部人事は、各省庁が人選を行い原案を作り、官房長官の主
 催する官邸の人事検討会議の了承を得て、形式的には閣議で承認を取り、大臣が任命すると
 いう流れになっている。しかし、これはあくまで形式的な手続きに過ぎない。
  実態は、事務次官か作成した推薦リストを人事検討会議かそのまま承認し、大臣が任命す
 る。推薦リストのなかに、たとえ大臣が適任ではないと思う人物の名か入っていても、拒否
 はむずかしい。
  大臣はその役所にずっと勤めているわけではないし、自分の任期がどれくらいか予想もつ
 かない。多くの場合一年程度で交代させられる。そのような短期間の任務だとすれば、あえ
 て官僚と軋瞳を牛むより楽な道を選びたくなる。現場のトップである事務次官から「この人
 こそこのポストにふさわしい」と強く椎されれば、反対はできない。
  従って現在の仕組みでは、政治主導による人事は不可能。これを根本から改確する必要か
 ある。

  そのための新システムか内閣人事局の創設だ。前に述べた通り、各省庁の患部人事を内閣
 人質局で一元管理して実施するのだ.
  具体的には、各省庁の幹部候補の名簿は官房長官が作り、そのなかから各省庁人臣と総理、
 官房長官が相談して決める。そういう仕組みになれば、省利省益をベースとした官僚による
 官僚のための人事はなくなるし、次官に遠慮して人事に介入できない大臣も、本来の自らの
 考えでもっとも望ましい幹部人事かできるはずだ。われわれの作った案も鳩山政権下で作ら
 れた法案も、この点については一緒だ。

  この改革は、2008年の国家公務員制度改革基本法に則ったものだが、幹部人事に絞っ
 たのは、そのほうが効率的だと考えたからだ。
  政治主導の究極の人事形態という意味では、内閣人事局で一括採用し、係員の人事まです
 べてやるかたちが理想的かもしれないが、現実にはむずかしい。全省庁の全人事を内閣官房
 で決めるのは時間的にも無理だし、第一、官房長官や官房副長官などの政治家が、一年生官
 僚、二年生官僚といった若手の仕事内容まで把握できるわけはないからだ。

  仮に可能だとしても、私はやめたほうがいいと思う。あまりにも中央集権的過ぎて、柔軟
 な人事がやりにくくなるという弊害があるからだ。
  採用を内閣一括にするにしても、省庁横断的なものは除いて、課長職までは現場を知る各
 省に委ねたほうかいいだろう。たとえば民間のホールディング・カンパニー・システムでい
 えば、部長職ぐらいまでは現場の経営陣に人事を任せ、各社の経営陣はホールディング・カ
 ンパニーのトップが決める方式だ。
  内閣人事局の創設は、政治主導という観点からも必須である。


                   改革官僚を養成する方法をGEから

  人事についてもう一つ触れておきたい。「幹部候補育成課程」の導入だ。前にも述べたが、
 若手で頭角を現してきた人を選抜し、社会保障など国家的な重点政策を担当している内閣官
 房のチームに入れ、育成するという方法である。
  このやり方の一要性に気づくきっかけになったのは、日本GEの社長であり、GE本社の
 上席副社長を務める藤森義明さんとの会話だった。GEの人材登用に関心があった私は、藤
 森さんに「GEでは優秀な人を外部から引き抜いて幹部として登用しているのですか」と尋
 ねると、「いいえ。幹部は基本的に社内で育成しています。土地動のまったくない新事業に
 進出する場合は外部の人材を集めますか、既存の事業の幹部は社内からの登用が中心です」
 との答えが返ってきた。

  GEは非常に独立性の高い事業部制を敷いている。しかし、各事業部に幹部人事を任せる
 と、全体最適になりにくいし、組織が硬直化してしまう。そこで常に改革を意識し、本部か
 ら指示して、事業部ではできない改革を実施する必要がある。そのため、GE本部が各事業
 部から優秀な若手を集めて様々なプロジェクトを通じて育成し、そのなかで能力を認められ
 た者を、各製茶部や本部の幹部に抜擢するということだった。

  本部での若手育成は徹底したOJT(オン・ザムンョプ・トレーニング=現場研修)だと
 いう。若くて優秀な社員は本部に集められ、主に事業部横断的なプロジェクトに従事する。
 そして、事業部からはなかなか出てこない改革案を作る。その過程でチームのメンバーは評
 価され、幹部に登用されるという仕組みで、なかには四〇代で本社役員になる者も出る。
  これを官僚組織に当てはめれば、幹部の育成だけでなく、改革も進むのではないかと思い、
 国家公務員法改正案にも盛り込んだ。
  この「幹部候補育成課程」は国家公務員制度改革基本法のなかに書かれている。ところが、
 民主党政権の政府案では、これまた抜け落ちていた。
 
  官邸が中心になって若手を育成し、幹部として登用するというやり方に、霞が関が反発し
 たのだろう。各省庁の幹部たちは、有能な人材は自分たちで囲い込んでおき、自分たらの省
 庁の力にしたいと坪えている。だから、優秀な若手を官邸に持っていかれる案などは認めら
 れない。省庁の利益を離れて仝政府的な見地で仕事をする官僚など、各省庁から見れば危険
 分子でしかないのかもしれない。
  若干育成を官邸でやるというと、幹部官僚からは「官邸でやらなくても、役所のなかの研
 修を強化すれば済む話だ』との反論が返ってくる。そんな発想しかないのでは、到底改革な
 どは無理である。

                        財務省の絶対的な二つの行動原理

  「モノ」「ヒト」「カネ」の「カネ」。つまり最後は予算。政策と予算、法案は一体だ。
 大きな政策はj算をつけなければ実施できない。官邸に「予算局」を設置して、予算の編威
 権も持ってくる必要かある。
  ところが呑丿算局の設置は封印され、あえて議論の対象から外された。f算編成権に政治
 が手をつけねば、財務省の猛反発が始まり、大変なことになるという民社党政権の判断から
 だ。財務省は霞が関の官庁のなかでも突出した権力を握っている。なぜ、財務省は省庁のな
 かの省庁と呼ばれ、霞が関の象徴になっているのか――。 

  財務表パワーの源泉の。つか予算編威権だゾ予算.編成権はご昌い換えると、国民から集
 めた税金など国家の収入を再配分する権限。ある意味、国家の存在意義そのものである。各
 省庁は、財務表に概算要求をして、予算をつけてもらう、
  予算に関しては、国会で承認を賂て成なする決まりになっている。政府案をまとめる大詰
 めの段階では、旧務大臣と各省庁の大臣との大臣折衝など、政治が深く関与する。とはいえ、
 膨大な数かある予算の細口を、短期間に政治がつひとつチェックするのは実際にはむずかし
 く、実質的に予算の差配は財務省に委ねられている。

  家庭でもそうだか、もっとも力を持っているのは、家計を預かる人だ。たとえば、ご主人
 が稼いできたおカネをいったん財布のヒモを握る奥さんの懐に収め、それの使い道を決める
 過程では、どうしても奥さんの権限が強くなる。ご主人は奥さんの許可がないと、小遣いも
 上げてもらえない。それと緒で、財務省に予算をつけてもらえないと、公益法人つ作れない
 ので、他省庁は自然と財務表の顔色を窺うようになろ。

  さらに財務省は、予算を査定する権限を背景に各省庁に職侃を送り込んでいるうえ、役所
 が気にする業務を行っているポストも掌握している。たとえば、国家公務員のポストの格付
 けを決める人事院の給与第二課の課長や、各省庁の局や課の組織や定員を査定する総務省行
 政管理局の総括担当管理官ポストも財務表の指定席になっている。これは前にも記した通り
 だ。もっとも、小況による税収蔵と財政危機で、財務省が自由裁量で差配できる額がどんど
  ん少なくなっており、その威光は年々輝きを失いつつある。財務省が消費税の大増税を悲願
  としているのも、財政破綻を危惧しているという理由以上に、自分たちの財布が潤えば、権
  限もそれだけ人きくなるという思惑からである。
 
  財務省の行動原理は、二つに分けられる。一つは財政破綻は絶対に避けたいという思い.
 もう一つは、自分たちの支配装置である予算の配分権をなるべく強化したいという願いだ。
  この二つを実現するための消費税増税なのだが、後者の予算の配分権の強化は、自分たち
 の哉量で配分できる自由な財源の拡大という表現に置き換えることができる。年々増えてい
 く年金の支払いや医療費などの社会保障費。消費税増税分かこうした社会保障費の増加分で
 相殺されたのでは、財務省にとって増税した意味がなくなる。

  これは消費税に、福祉目的とか社会保障目的に限って使うというタガがはめられるか否か
 には関係ない。おカネには色はついていないからだ。どうしても出さなければならない社会
 保障費以上におカネが入ってくれば、自由裁量の財源は増えるので、とにかく増税率を少し
 でも上げたい。これが財務省の目下の最大関心事だ。
  2010年の10月から.11月にかけて行われた事業仕分けの第3弾で、財務省か狙っ
  たのも自由な財源の拡大だった。特別会計に焦点が当てられたこの事業仕分けで、台本と演
 出を担当する財務省は、特別会剖の中身には一切手をつけないほうがいいと考えたようだ。

 特別会計は様々な目的で、一般会計とは別建てで収入と支出を管理する仕組みだ。空港使用
 料や航空機の燃料への課税などを収入源として空港を作る特別会計などがその代表例。この
 特別会計は、同じ計算でも財務省の関与は事実上極めて限定されていて、各省庁が自民党族
 議員とともに好きなように運営してきた。だからその実態を見て、「母屋でおかゆをすすっ
 ているのに離れですき焼きを食べている一と鄙楡されてきた。

  財務省から見れば、年々白分たちの自由裁量の余地が小さくなっていく一般会計予算より
 も、まだまだジャブジャブと減量余地がある特別会計を支配ドに置くことができれば望外の
 喜びだ。
  事業仕分けでは、そのシナリオを財務省が作る。その時点で、すでに財務表としては特別
 会計の支配権確立に大きく前進したことになる。一方、事業仕分けを本気でやつて、まず削
 るべき計算を全部削ると決めてしまうと、その分は子ども手当の財源などに使われてしまう
 ので、財務省から見ればおもしろみがない。そこで、事業仕分けでは、則務省が特別会計を
 支配するという既成事実を作るところにとどめ、適当にお茶を濁したのではないか。

  そして、予算の中身はジャブジャブのまま引き取って、翌年以降好き勝手に使うという作
 戦を取った。財務名の作戦は完勝で終わった。
  東日本大震災直後、増税論かすぐに取り沙汰されたか、このようなときでも真っ先に増税
 のことが頭に浮かぶ人たちがいるということに心底驚いた。このことは、財務表に洗脳され
 た政治家やマスコミ関係者がいかに多いかを物語っている。
 

「カネを稼ぐことより、カネを管理する嫁さんの力が強くなる」との喩えはわかりやすいようで
誤解を招く。稼ぎ手(勤労国民)の収入が増えてい限りリスペクトされるが、収入が逓減する限
り嫁さんがぴーぴー言い出し、旦那さんのストレスが上がって、離婚騒動になる、それで困るの
は、慰謝料を請求さえる旦那さんだけかというと、貯金が底をつけば稼ぐことになれてない嫁さ
んが働かなければならなくなる。母子家庭の悲惨さは現実をみればわかる。かって、それまでG
HQの虎の威を借り権威を振りかざしていた大蔵省の権威を地に貶めた宰相として田中角栄がい
る。道路公団、自動車税などの特別会計枠を拡大させ高度経済成長を実現させた。そこから学習
すれば、「財務省殺すにゃ刃物はいらぬ、インフレ目標2、3パーセントあれば良い」と喩える
ことができる。(実は解決方法は分かっているのだが)それができぬのはなぜかと反質すること
から始めねばとわたし(たち)は考える。 

                                                      この項つづく 

 


【虫の知らせ。】

眼精疲労がひどいことをブログ掲載してきたことだが、昨夜は午後10時半に就眠。いつものよ
うに3時間ほど寝込むと睡眠が浅くなり目を覚ますことがしばしば(神経疲労が強ければ時とし
て、パニック症候群似に陥る)。目を覚ますと眼圧上昇や聴覚の高ぶり、周波数同調不良のラジ
オのような耳鳴りがしたりして眠れずにいたので、寝酒に柚子酒やワインを飲んだが、経験のな
いような頭が冴え渡る状態が続く。いつもなら眠気が襲うのだが全くと言ってそれがない。これ
は何かの前兆かと考え出す。つまり、地震や火山の爆発、あるいは、近親者や友達、近所の方の
突然の訃報などかと思いめぐらす。例えば、地震なら、ブレーカー、ガスを遮断すること、靴を
準備しておくこと、災害時に注意すべきことなどを思いめぐらせた。午前4時過ぎ頃まで眠るこ
とはなかったが、さすがに、ワインを重ね飲みすると眠気が生じ2時間ほどソファーで上毛布を
掛け寝てしまった。結果は、ネパールと岩手で地震が起きていた。これが虫の知らせと腑に落と
すとともに数時間も続いた「突然の頭の冴え」に深く考えこんでしまう。面白いものだ。

 

  

再エネ百%のハワイ

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  人間は考える葦である / ブレーズ・パスカル


【学習能力に長ける米国 : 再エネ立国にチェンジ!】

さすが米国と感心する。福島第一原発事故を目のあたりし米国人は考えた。それまで消極的だっ
た地球温暖化問題への取り組みと脱原発から再エネへの取り組み。その象徴的な2つの話題が、
ハワイとニューヨークから届いている。また、下段に「今夜の一品」で高効率な携帯用太陽光調
理器(GoSun Stove社)紹介掲載しているので参考に。

その1つが、日本と同様に電力の9割を化石燃料に依存してきた米国ハワイ州が再生可能エネル
ギーの拡大に意欲的に取り組んでいる。2030年までに省エネの効果と合わせて再エネの比率を70
%まで高め、さらに2045年に百%を達成する法案が州議会で可決されたというもの。再エネを主
体にした電力の安定供給にも挑むというニュース。

ハワイ州の電源構成は日本の離島と同じように石油火力が主体だ。2012年の時点で石油が7割以
上を占めるほか、石炭も155%にのぼり、化石燃料が9割近くに達する現在の日本と変わらな
い状況と同じ。大きな違いは再生可能エネルギーの発電量が急速に伸びている点。その発端は、
2008年に開始した「ハワイ・クリーン・エネルギー・イニシアチブ」だ。2030年までに再生可能
エネルギーの拡大と省エネルギーの効果によって、電力の70%を再生可能エネルギーで供給す
る目標を州政府が設定したことに始まる。


さらに2015年5月5日に、全米50州の先頭を切って2045年までに再生可能エネルギーを百%に
到達させる法案が議会で承認。5月15日までに州知事が拒否権を行使しなければ正式な法律とし
て成立する。これから30年間のうちにクリーンエネルギー百%の島に生まれ変わることとなる。
ハワイ州が再生可能エネルギーの拡大に積極的に取り組むのは、地球温暖化対策のほかに州特有の
理由として2あり、1つは自動車を含めて燃料の主力になっている石油輸入依存し、州の生活と経済
が石油の価格と調達量に大きく左右される。もう1は、電気料金が米国本土と比べて3倍以上の
水準になっている。2014年の時点で電力1キロワットアワーあたりの平均価格は34セント。1ド
ル=120円で換算で40円を超え、日本の家庭向けの単価も大幅に上回る。再生可能エネルギー
を導入することで、企業も家庭も電気料金を削減することが可能にする。因みに、日本の太陽光
発電の現状は下図の料金状況に想定されている。

 

ハワイ州の試算では、2030年に再生可能エネルギーの比率を70%まで高めまれば、州全体の石
油の輸入額を年間に51億ドル(約6,1000億円)も削減できる見込み。石油の消費量を削減ため
に、ガソリン車から電気自動車へ移行を進める一方、バイオ燃料も増やし、2030年には自動車に
よる石油の消費量の70%削減目標を設定している。



ただ、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが増えると、天候による出力の変動によって電力
の供給が不安定になとなる。日本でも九州などの離島で問題が生じ始めている。この点でもハワ
イ州は世界で最先端の技術を開発・導入する計画で、日立製作所などが参画して「スマートグリ
ッド実証事業」が2013年12月から始まっているという。

 

もう1つは、米国ニューヨーク市の名物である屋台が環境志向の店舗に進化させていくというニ
ュース。屋台の屋根に太陽光パネルを搭載して、天然ガスと組み合わせたハイブリッド発電シス
テムで調理や冷蔵が可能。最新鋭の屋台5百台を無償で提供する先行プログラムが5月11日に始
まる。メリットは3つある。(1)排気ガスを削減――有害な窒素酸化物を95%、二酸化炭素な
どの温室効果ガスを60%削減できる。(2)従来の発電機が発生するチェーンソーのような騒音
がハイブリッド車と同様に静粛性をもつ。(3)ベンダーにはエネルギーコストの低減にもつな
る。

そこで、その効果予測では、ニューヨーク市の屋台では1日に120万食も売られるほど人気が高
いが。エネルギーの将来動向を調査・分析する非営利団体の米Energy Visionによると、ニューヨ
ーク市内の屋台がMRV100に置き換わり、燃料の天然ガスに食品廃棄物などから生成したRNG
(Renewable Natrural Gas、再生可能天然ガス)を利用すると、年間に1,500万リットルのガソリンと
2万トンの二酸化炭素排出量を削減できる見込み。

10数年前、会社をやめてニューヨークにでて、おでん&ラーメン屋台(和風ポトフ屋台)を世
界展開する計画を立てたこともあったが、彼女の協力が得られなかったら断念したこともあった
が、そのことはさておいて、屋台には固定式のキッチンや流し台、冷蔵庫、POS(販売時点情報
管理)システムまで装備でき、1台の価格は1万5,000~2万5,000ドル(日本円で180万~300万円
)程度だというから、300万円/台m3年償却として、1ヵ月あたり8万6千円以下となる。
MOVE Systems社は発売に先がけて500台を無償で提供するパイロット・プログラムを5月11日に
開始。ニューヨーク市からMFV(Mobile Food Vendor)のライセンスを取得しているベンダーが対
象になるとうことだがら、先を越された恰好になった。

※ その当時は太陽光発電や電気自動車(ハイブリッド車)は考えていなかったが、実行してい
  たらこんなところでブログを打ち込むこともなく、ビジネスマンとして有名になり『ニュー
  ヨーク・タイム』の表紙を飾っていただろう。^^;。

   ● 和風ポトフ

 

  ● 今夜の一品

太陽光だけで調理を可能なソーラークッカー「GoSun」。短時間(太陽光を2時間で蓄熱)で290
℃の高温にまで達し、蒸し焼き、天火焼き、炒めなどのクッキングを楽しむことができ、燃料も
電源も必要なくなり、数秒で組み立て分解でき、環境にやさしくて使いやすい。太陽光を効率良
く集めることができるため曇りの日でも調理されていて便利で2年間の保証付き。僻地や、災害
現場で威力を発揮しそうな一品だ。

 

 

 

   

 【日本の政治史論 Ⅶ:政体と中枢】  

「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で、触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。 

  福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)


                           古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』

   目 次

 

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策 

  第6章 政治主導を実現する三つの組織 

 
                     内閣予算局ができても財務省は困らない

  政策と予算は.体なので、財務省は政界への影響力も強い.自民党時代、財務省以外の省
 庁も自民党議員と深い関係にあるとはいっても族議限に限られていたのに対し、財務省は与
 野党を問わず、広く太いパイプを持っていて、自民党の事務局職員にまでがっちり食い込ん
 でいた。
  力関係も明らかに財務省がトだった。.部の大物議員を除き、地元や支持団体に予算をつ
 けて欲しい議員は、わざわざ財務省に足を運び、T王計官に頭を下げて陳情していた。

  民主党政権になって、政治家の霞か関への陳情は民1党幹事長室を通すようシステムが改
 められ、直接、財務省の役人と一議員か陳情のために接触することは禁じられたりしたが、
 それでも国会議員にとって財務省の意向は無視できない。
  先ほど触れたように、官邸を牛耳っているのも財務省だ。官房副長官袖が財務省の牙城に
 なっているだけでなく、総理や官房長官の秘書官にも、財務省出向名の指定席が用意されて
 いる。

  総理や閣僚には、複数の省庁から出向した役人が、秘書官としてつく。、総理の場合、財
 務省、経度省、警察庁、外務省から送り込まれるのがこれまての慣例だったが、現在は厚生
 労働省からも一人、また、2010年秋に尖閣諸島で中国漁船衝突事件が起きたこともあり、
 防衛省からも秘書官が出向することになって、政務秘書官も入れてレ]大でチームか組まれ
 ている。

  外務省の秘書官は外交、厚労表は社会保障、警察庁と防衛省の秘書官は特殊な役割なので、
 実質、総理の内政の片腕を務めろのは、財務省と経産省から出向した秘書官であることが多
 かった。経度省は最近とみに力が落ちているが、財務省の秘書官は内政全般にわたり引き続
 き大きな発言力を持っている。

  四六時中、総理と行動をともにする秘書官か与える影響は非常に大きい。財務省は秘書官
 を通じて総理をコントロールしている。これは官房長官以ド、多くの特命担当大臣にしても
 同様で、財務省は内閣を支配する力を有しているのだ。
  事実、財務表に逆らい、行革や公務員制度改革を進めた橋本龍太郎内閣や安倍音三内閣は、
 財務省頂点とする霞が関に打倒されてしまった。

  他にも国税庁など財務省のスーパーパワーの源泉はいくつもあるが、予算編成権こそか財
 務省パワーのベースであり、それを取り上げるとなると、相当手ごわい抵抗が予想されるの
 で、あえて政治家は棚上げにしている。
 しかし、実は民主党政権の誕生が濃厚になった時点で、財務省のなかには予算局の設置を覚
 悟した官僚もいたようだ。

  2003年の民や党のマニフェストには、「内閣財政局」の設置が明記されていた。政治
 主導を旗印として政権に就いた鳩山内閣が、この政策を持ち出してくる可能性は十分あった。  
  無論、財務省からしてみれば、予算編成権は何かあっても死守したい。しかし、もし、民
 主党政権が強硬に推進しようとした場合、ギリギリのところで妥協できるラインだと考えて
 いたようである。予算局の設置を阻止するために、民主党政権打倒に勤くかというと、この
 点に関しては、そこまで単純ではなかったのではないか。

  なぜ、虎の子を取り上げられる危機なのに、財務省の抵抗感がさほど強くなかったかとい
 えば、これは少し考えれば分かる。たとえ内閣官房ないし内開府に予算局が設置されたとこ
 ろで、予算編成は誰でもできるという類の仕事ではなく、財務省の協力がなければ一歩も進
 まない。現実的には、内閣官房に予算編成権が移されようとも、予算局に横滑りした財務官
 僚か、財務省出身の官房副長官補の主導の下で予算をまとめ上げることになり、財務劣の権
 限は実質、損なわれることはない。

  こういう読みと自信があったからこそ、財務省のなかには、内閣予算局の設置くらいなら、
 容認できる範囲だと考えている官僚がいたのだ。
  しかし、財務省の思惑はどうであれ、内開府に予算編成機能が移され、総理直轄で予算が
 組まれる仕組みに変わる意味は大きい。とりわけ、予算の優先順位を大きく見直して予算の
 組み替えを行おうと思えば、その仕組みは不可欠だろう。
  政治主導を目指す政権にとって、国家戦略スタッフ、内閣人事局、内閣予算局をすべてに
 先がけて創設することが必要なのだ。 
  民主党政権は、このすべてを先送りした。いや、諦めてしまったのではなかろうか。
  次の章では、真の政治主導を確立するために、役人たちのその行動原理を紹介しよう。私
 が取り組んできた独占禁止法の改止、あるいはガソリンスタンドでのセルフ給油の自由化、
 またクレジットカードのスキミング対策の確立などに際し、省益を守るため、役人たちはど
 う動いたか――。

 


  第7章 役人―その困った生態

 

                           不磨の大典「独禁法九条」

  私は通商産業省(当時)に入って以来、20のポストを経験した。その時々でおもしろい
 仕事ができたこともあれば、そうでないこともあった。ただ、残念なことが一つあるとすれ
 ば、同じ公務員でありながら、国民のため、という基準ではなく、自分の所属する役所のた
 め、という基準を優先する官僚たちの行動を常に□撃し、多くの場面でそれと戦わざるを得
 なかったことである。

  経済企画庁への出向、大臣室、外務省に出向しての南アフリカ共和国の領事、産業政策立
 案の要である産業政策局産業構造課、基礎産業局総務課、大臣官房会計課などでの業務を経
 て、1994年6月、私は産業政策局に戻った。ポストは産業組織政策室の室長であった。
 産業組織政策室は、名門の部署ではあるが、難解な法律を扱うため、政策のプロといわれる
 若手が登用されることが多いポストだ。所帯は10人ほどの小さな組織。私にとっては初め
 ての管理職ポストだが、担当分野も限定されていて、より具体的な政策を求められる。主な
 分野としては、競争政策、特に独占禁止法や規制改革、そして企業法制、特に会社法などか
 挙げられる。

  私が戻った頃、ちょうど二年前に産業構造部で後任に託した産業構造審議会総合部会基本
 問題小委員会という通産省の審議会での検討結果がまとまり、報告書として日本経済の課題
 がズラリと書かれていた。数ある課題のなかで、私が注目したのは「純粋持ち株会社の解禁
 』だった。

 日本は自由主義経済を基本としているから、企業の活動は自由だ。しかし、何でも自由だと
 いうことにしておくと様々な弊害か生じる。たとえば、強い企業かどんどん勝ち続け、ある
 商品を生節できる会社が一つになると、不当に高い値段をつけても、消費者は他に代わりが
 ないのでその値段で買わざるを得なくなる。あるいは、その商品を生産する会社が3社あっ
 たとしても、この3社が相談して値段を不当に吊り上げれば同じことになる。

  そのような独占的な状況になることや、独占的な地位を利用して最終的に消費者の利益を
 損なうことがあっては困る。そこで、自由主義経済の国では必ず独占禁止法という法律を作
 って規制し、対応している。最近では中国でも独禁法が作られ運用されている。
  日本の独禁法九条では「純粋持ち株会社の禁止」が定められていた。純粋持ち株会社とは、
 簡単にいえば、自分ではほとんど事業を行わず、もっぱら子会社の株を持って支配し、その
 子会社を通じて事業を行う会社のことだ。戦前の日本では、少数の財閥か独占的な地位を利
 用して経済、そして社会全体を牛耳っていたことが戦争の一つの原因だ、そう考えたGHO
 は戦後財閥解体を実施した。「経済民主化」の柱の一つである。

  財閥は持ち株会社を中心として運営されていたので、肖領が解けた後も財閥が息を吹き返
 さないように、独禁法9条を作って持ち株会社を作れないようにしたのだ。 
  もちろん、どこの国でも、独禁法は経済法規のなかでももっとも重要な法律だと考えられ
 ている。しかし、日本では、財閥解体、経済院主化というスローガンと.体となって、経済
 法といっても極めて政治色の強い法律になってしまった。社会党をはじめとする左派の人々
 は、独禁法を経済の憲法とし、とくに九条は戦争放棄を定めた憲法九条と並ぶ「もう一つの
 九条」と呼ばれ、絶対に手をつけてはならない聖域扱いだった、そのため、経済界の不満の
 声をよそに、憲法九条同様、改正議論さえもタブーという空気が長らく支配していた。

  私は、農業問題も似たところがあると思っている。つまり、農地解放で、大地主から小作
 農に土地を分けて農業が小規模化した。その結果を固定しようと戦後の農地法か作られて、
 農地の移転に厳しい制約を課したため、農地の集約化による効率化が胎まれ、農業発展の足
 かせになっているのだ。

  独禁法九条は、これまで本格的に法改正をやろうという話が一度もなかった困難なテーマ
 ある。私は、着任してからずっと、なんとかこの問題にチャレンジできないかと考えていた。
  いうまでもなく、財閥を復活させたいと考えたわけではない。産業構造部で勉強して感じ
 たのは、一つは、日本企業の経営の甘さだった。日本の企業のなかには、ほとんど儲からな
 い事業なのに、なかなか撤退せず、横並びで事業を続けているところがたくさんあった。
 
  たとえば、日立や日本電気、冨土通といった電機メーカーは、多角化して様々な分野に進
 出していたか、どこかがいつも赤字で、利益率も高いとはいえないうえ、どんぶり勘定にな
 りやすかった。
  経営者も日本型経営の欠陥をよく認識していて、事業部制や社内分社化といったアイデア
 で、事業ごとの収支を明らかにjる工夫をしていた。しかし、事業部制や分社化には限界が
 あった。同じ社内、同じ労働組合なので、たとえその事業が赤字でも、給与を抑えることも
 できない。どう工夫しても財務はいい加減になってしまう。

  子会社は当時でも認められていたか、子会社の資産が全体の半分以上を占めてほならない
 など制約が多く、すべての事業を1会社化して独以採算を徹底させろのは不可能だった。
  もう1つ、純粋持ち株会社の解禁が必、葡だと考えたのは、その頃から世界中でM&A(
 企廻の合併・買収)が非常に盛んになっていたことかある。選択と集中という概念もようや
 く日本で広まり姶めた頃だ。.

  各社はこれから本格的に戦略的な事業再編に着手するだろう。そのとき、日本の企業だけ
 持ち株会社という経営形態を封印されていては、自由に事業ごとのM&Aや再編を行うこと
 ができない。そういう思いが極めて強かった、ただ、その後の推移を見ると、産業ではその
 時、そこまでの覚悟を持っているところは極めて少数だったようだ。


                     大蔵省が連結決算を嫌がった理由

  純粋持ち株会社を解禁すれば、一つひとつの事業がガラス張りになり、経営効率化に極め
 て有効だ。しかも、M&Aで不採算の関連会社を売ったり、新たな事業に進出するためによ
 その会社を買収するといったことも可能になり、戦略的な経営がやりやすくなる。
  当時、純粋持ち株会社を禁止していたのは、われわれの知る限り世界ではたった2ヵカ国、
 日本と韓国しかなかった。いまは韓国のほうが法整備でも先を行っているが、当時は、何で
 も日本の後追いだったので、韓国も日本の法制をまねて遅れていた。

  日本の独禁法に禁止を入れさせたアメリカももちろん、純粋持ち株会社を認めている。世
 界の常識とはかけ離れた状況になっているのだから、法改正すべきだった。
 こういった趣旨で、純粋持ち株会社の解禁に取り紺もうと考えたのだか、実現までにはいく
 つも障害があった。
 
  まず、税制の問題。連結決算に関する税制度か必要だが、当時はなく、大蔵省(当時)は
 法改正に難色を小していた.
  大蔵省か首を縦に振らない理由は2つあった。連結決算は読み解くのが難解で、大蔵省に
 はそれか分かる人間が.3人しかおらず、人材育成もたいへんだし、税の徴収も面倒になる
 という理由か一つ。財界中で普及していた制度なのに、なんというお粗末な話だろうか。官
 僚は優秀でもなんでもないことを示す典型だ。

  2つ目は、連結納税を認めると、実質減税になってしまうという理由である。非常に単純
 化していえば、同じ額の赤字と黒字の2社の子会社かあったとしよう。単独で税をかければ、
 赤字の会社は税金を払わずに済むか、黒字の会社は法人税を納めなければならない。ところ
 がこれを連結納税にすると、黒字と赤字で差し引き利益は相殺され、税金を納めなくて済む。
 連結納税はかように減税効果があるので、大蔵省は嫌がるのだ。

  さらに、企業をいっぺんに複数の子会社に分割した後に統括する持ち株会社を作るための
 会社法の規定が整備されていない。しかも、その課題の整理すらされていない状況だった。
 これらは法務省の所管だ。

                                                      この項つづく 

   ● 今夜の一曲

Let Me Roll It 
Paul McCartney’s 10 Greatest Songs After The Beatles March 6, 2013 12:00 AM


   You Gave Me Something
   I Understand,
   You Gave Me Loving
   In The Palm Of My Hand

   I can't Tell You How I Feel
   My Heart is Like A Wheel 
     
   ※

    Let Me Roll It
   Let Me Roll It To You
   Let Me Roll It
   Let Me Roll It To You

   I Want To Tell You
   And Now's The Time
   I Want To Tell You That
   You're Going To Be Mine

   I Can't Tell You How I Feel
   My Heart Is Like A Wheel.

   ※ Refrain

レット・ミー・ロール・イット(Let Me Roll It)は、1973年にポール・マッカートニー&ウイン
グス(Paul McCartney & Wings)が発表した楽曲。アルバム『バンド・オン・ザ・ラン』に収録。
タイトなロックンロールのスタイルが特徴的な人気のナンバーのひとつで、シングル「ジェット」
のB面としてリリースされ、リリース当時からポールのライヴの中心として演奏されてきた。

この曲はジョン・レノンのサウンド、特にリフとボーカルのテープ反響部分を模倣した物と見な
されたが、ポールはこの曲がジョンの作品を模倣したと言わず、その声が「ジョンのようだ...
僕はジョンのように歌ったとは意識していない」と否定。歌詞は当時仲の悪かったジョン・レノ
ンに和解を呼びかけたものとして話題になったものの、当時ポールは否定していたが、最近にな
って「この曲はジョンとやりたかった」と語っているから面白い。

 

 

  

現在の錬金術 蓄熱セラミックス

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  平和は剣によってのみ守られる / アドルフ・ヒトラー

 

 

● 現在の錬金術 蓄熱セラミックス

東京大学の大越慎一教授らの研究グループが、永続的に熱エネルギーを保存できるセラミックス
“蓄熱セラミックス(heat storage ceramics)”という新概念の物質を発見したと11日に公表。こ
の物質は、チタン原子と酸素原子のみで構成されたストライプ型-ラムダ-五酸化三チタンいう物
質で、230 kJ L−1の熱エネルギーを吸収・放出する。これは水の融解熱の約70%に相当の大きな
熱量。また、保存した熱エネルギーを、60 MPa (メガパスカル)という弱い圧力を加えることで
取り出すことができ、熱を加えるという方法に加えて、電流を流したり、光を照射したりという
方法でもエネルギーを蓄熱することができ、多彩な方法で熱エネルギーの保存・放出を繰り返し
できる物質。ストライプ型-ラムダ-五酸化三チタンは単なる酸化チタンであり、環境にやさしく、
埋蔵量も豊富で資源的にも恵まれた材料というからして大発見!ノーベル賞ものだ!

尚、この蓄熱セラミックスは、欧州などで進められている太陽熱発電システムや、工場での廃熱
エネルギーを有効に再生利用できる新素材として期待されるほか、感圧シート、繰り返し使用可
能なポケットカイロ、感圧伝導度センサー、電流駆動型の抵抗変化型メモリー(ReRAM)、光記録
メモリーなどの先端電子デバイスとしての新部材としての可能性も秘めているというから、二度
びっくり。このストライプ型-ラムダ-五酸化三チタンは、固体材料であるため取り扱いが容易。
熱伝導率がちょうど耐熱用レンガやコンクリートと同程度であることから、永続的に熱を蓄える
ことができる青色のレンガのようなものだという。また、顔料や塗料として用いられているTiO2
を還元雰囲気下で焼くだけで得られる単なる酸化チタンであるため、環境にやさしく資源的にも
恵まれた材料で、コストもたいへん経済的だという。それにしても、日本刀に使われている酸化
チタンとは不思議だ。

※ストライプ型-ラムダ-五酸化三チタン(stripe-type λ-Ti3O5、上図ではラムダ-五酸化三チタ
 ンと表記)で発見された新概念“蓄熱セラミックス”。(a)加熱により230 kJ L−1の熱エネルギ
 ーを蓄え、弱い圧力(60 MPa)で放出する。その他に、(b)電流を流す、(c)光を照射するという
 多彩な方法でエネルギーを蓄熱することができる。

 

※ストライプ型-ラムダ-五酸化三チタンの圧力印加によるベータ-五酸化三チタンへの転移と、加
 熱によるラムダ-五酸化三チタンへの回復。(a)一軸加圧実験の様子。(b)相分率の圧力依存性と
 (c)温度依存性。圧力60 MPaで急激にラムダ-五酸化三チタンからベータ-五酸化三チタンへ相転
 移する。また、加熱すると200ºC以上でベータ-五酸化三チタンからラムダ-五酸化三チタンへと
 戻る。

 

WO2015050269

 

 

 

 【日本の政治史論 Ⅷ:政体と中枢】  

 

「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で、触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。 

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)

                           古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』 

   目 次 

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策  

  第7章 役人―その困った生態 

                                                   独禁法改正を恐れる学者たち
 
  とはいえ、大蔵省や法務省の説得よりも、やはりたいへんなのは、左派の圧力をどう撥ね
 除けるかだ。どこか応援してくれるところかなければ、実現は不可能である。
  誰でも真っ先に思いつくのは経済界だ。経団連で政争政策を紅当していた阿部泰久氏(現・
 経団連経済基盤本部長)に話しに行くとでぜひ、やってくれと乗り気である。当時、経団連
 のなかに、競争政策委a会という組織かあり、委員長だった旭化成の弓倉礼一社長と話する
 と、「通産省か本気で取り組むのなら、こちらも特別な部会を作って後押しをする」といっ
 ていただいた。

  経団連が部会を作るのだから、こちらもと考え、帰って上司の産業政策局長に許可を求め
 ろと、「いいんじやないの」というので研究会設立の準備を始めた、ただ局長には、そのと
 きは競争政策をやりますというくらいにとどめ、具体的な話はしていなかった。
  ところが、名だたる学者を訪ねていくと、みなけんもほろろ。聞く耳も持たないという様
 子で、話を始めるや否や追い返された。

  有名な学者は左翼がかった人が多く、独禁法九条は堅持すべきという考えに凝り固まって
 いるうえに、公正取引委員会を応援している学者か大手だった。一時、公正取引委員会は極
 めて閉鎖的で、情報をなかなか公表しない。だから、公取と仲良くしていろいろな情報を教
 えてもらわないと、学者は研究対象がなくなり、お手上げになってしまうのだ。だから、彼
 らは持ちつ持たれつの関係を築いていた.いわば、競争政策の世界での談合だ。

  ただ、私は公取に敵意は持っていなかった。むしろもっと強くなって欲しいと思っていた。
 当時、公取は虐待されており、しっかりした規制をしようとすると政治的な横やりか入りて、
 泣き寝人りせざるを得ない。それで、「吠えない番犬」などと揶揄されていた。その中心と
 なって、この弱い公取をいじめているのか通産省だと目されていた。
  古くは富士製鐵とハ幡製鐵の合併による新日本製鐵の誕生。巨大な製鉄会社を合併させて、
 超巨大な会社にする。この合併により独占に近い状態か生まれるし、その結果、価格が上か
 る可能性も十分ある。さらに、戦後の財閥解体、巨大企業の解体に逆行する政策だとして、
 公取は阻止に動いたが、政界、経済界の圧力に屈した。

  そんなとんでもない政策の旗を振る通産省に協力などできるはずかないという学者ばかり
 だった。いま一つ学者がためらった理由としては、日米構造協議以降に高まっていた系列批
 判が挙 げられる。
  アメリカは主として日本の自動車産業を攻撃するため、テーマに系列を選んだ。アメリカ
 の自動車は、日本車より性能がいいはずなのに日本で売れないのは、日本では系列の販売店
 でしか販売か許されていないからだ、系列化をやめろ。あるいは、アメリカの部品メーカー
 は優秀なのに、トヨタや日産の系列に入らなければ部品は買ってもらえない。日本の系列化
 は自由競争を阻害している。これがアメリカの主張だった。

  純粋持ち株会社などを認めれば、ますます系列化が進む。そんな時流に反する話には乗れ
 ないというわけである。
  比較的、柔軟に対応してくれるのでは、と思われる学者に当たっても、通産省に足を運ぶ
 のも憚られるという感じで、商法の学者でさえ、大御所には断られた。
  それでもなんとか参加してくれる学者を探し出した。座長を引き受けてくださったのは、
 成蹊大法学部教授の松下満雄先生である。松下先生は、独禁法では極めて開明的な学者で、
 世界の独禁法にも詳しい。欧米の独禁法学会では知らない人はいない方で、前々から日本の
 独禁法の問題点を指摘されていた。




  松下先生は、通商法でも活躍されており、後にWTO(World Trade organizatjon=世界貿
 貿易機関)の最高機関である上級委員会の委員にまで出世し、その分野では大御所におなり
 になったか、当時は、なぜか日本の独禁法学会では異端児扱いだった。
  アメリカのスタンフオード大学教授の青木昌彦先生も参加してくださった、青木先生は一
 時期、もっともノーベル経済学賞に近い学者といわれ、現在はスタンフオード大学の名誉教
 授である。日本に帰国していた青木先生に会いに行くと、「ぜひ、やりなさい」と快く参加
 を引き受けていただいた。

  商法では、東京大学の江頭憲治郎先生にも参加していただいた。これからの商法学会を背
 負ってjリつといわれる先生の参加で、会もだんだんと格好がついてきた。あと数名、中堅、
 若手の学者に参加していただいた。なかには、反対の世論が高まると、途中で「編されもや
 ったなあ.学会で肩身が狭くて困ったなあ」などと言い出す先生もいたのだが、とにかく研
 究会の陣容は整った。

                     経団連さえ二の足を踏んだテーマ

  なんとか研究会の目処が立ったので、経団連に報告に出かけた。すると経団連からは思い
 もかけぬ話が・・・・・・。
  「うちはちょっと・・・・・・時期尚早だという結論になりまして、部会のなち上げは見合わせ
 ることになりました」経団連では阿部氏が部会設なに尽力されたが、どうも部会長の引き受
 け手がいなかったようだ。世間の批判か怖くなったのか。「えっ」と絶句すると、阿部氏は
 「古賀さん、部会は無理でも経団連は誠心誠意応援しますから」という。誠心誠意といわれ
 ても、梯子を外されたのか、という思いが頭をよぎる。かといって、すでに先生方には依頼
 しているので後には引けず、「誠心誠意応援する」という言葉を信じて研究会の検討を見切
 り発車した。
  後に分かるのだか、経団連の弓倉氏や阿部氏は、その言葉通り、最後までわれわれを支援
 してくれた。

  その後の検討の過程では、いわゆるノンキヤリの職員が目を見張る活躍をしてくれた。た
 とえば、ある職員か国会図書館でGHQ時代のわら半紙のガリ版刷りの資料を発掘してきて
 研究会の教材にした。その資料には、独禁法の草案が作られた頃の議論が逐一記されており、
 手に取るようにGHQと日本側のやり取りが伝わってきた。日本側はGHQの要求にかなり
 強く抵抗していたのだ。


  
  独禁法の草案を作った委員の一人に当時通産大臣だった橋本能太郎氏の父、橋本龍伍氏が
 いた。大蔵官僚だった橋本能伍氏は、吉田茂氏に勧められて政界人りしたが、占領下では内
 閣参事官として経済安定本部にいた。このとき独禁法起草作業に携わったとされる。その橋
 本氏が「GHQの主張はおかしい」という趣旨の発言をしていた。子息、龍太郎氏か通産大
 臣のときに、このような資料が見つかったのは、何かの因縁だろう。研究会は難産だったも
 のの、スタッフのがんばりもあって理論武装はかなり堅固なものができ、最終的なまとめの
 段階まで来た。しかし、政治的には非常にセンシティプな話なので、結論の方向性を最後ま
 で示さないまま、水面下で進めている研究会である。全面解禁を打ち出すことが洩れては、
 と 神経を使った。

  だが、外部のメンバーもいるので、いつかマスコミに流れる。もし、何もマスコミに話さ
 ず記事にされて反対に回られたら、厄介なことになるので、事前に記者たちには事情を説明
 し、解説しておいた。「簡単に書いてもらっては困る」と釘を剌して。
  ところが、1995年2月12日、毎日新聞の記者が、「持ち株会社全面解禁・・・・・・通産
 省の研究会、報告書で提案」と書いてしまった。この記者が悪いのではなく、私の油断が原
 因だった。

  この記者が応援部隊の一人として通産省にやってきて、挨拶に訪れたときにこの話が出た。
 このとき、ストッブしてある話は伝わっているものだと早合点して、書かないという条件を
 明示しないで話してしまったのだ。
  毎日が記事にしたため、大騒ぎになった。他の新聞社も後追いで記事にしたが、毎日に抜
 かれてしまったためか、批判的なニュアンスで書かれていた。さらにしばらくすると、どこ
 も社説で「財閥を復活させるつもりか」「系列の不透明な取引をまた強化する気か」といっ
 た論調で、明確に反対の意を表明し始めた。

  3月になると、とうとう参議院の予算委員会で社会党か取りトげるという騒ぎにまで発展
 した。大臣にも詳しい説明はしていないし、公取とも何の調整もしていない。さすがにこれ
 はまずいことになったと困った。
  このまま大臣が国会に出て行くと、公取から攻撃される。通産省が退却宣言してけりをつ
 けるという方法もあるにはあるが、それではいままでやってきたことがすべて水の泡になっ
 てしまう。かといって、やるというと、公取と通産省の意見が真っ向から対立し、予算委員
 会は閣内不一致で紛糾することは必至だ。審議ストップして大臣の責任問題に発展しかない。

  厄介な事態になったので、上司の産業政策局長に相談すると、「任せる」と一言。局長が
 無責任なわけではない。彼は後に事務次官になった大物で、これぞ武士というタイプだった。
 昼間はテレビで時代劇を見ていることか多い。大枠の指示だけ出しておき、部下が相談に来
 ると、なんでも「ああ分かった」と応じる。部下に自由にやらせておき、任せられなくなっ
 たら自分が出て行って決着させるというのが彼の流儀だった。普段は細かいことばかりいう
 のに、いざという時は腰砕けになったり、責任逃れに終始したりする幹部も多いが、それと
 はまったく逆のタイプだ。


                        政治主導の見本は「機能」

  その夜、人臣の答弁を作成した。大臣になんといわせたらいいか-。海外ではどの国も純
 粋持ち株会社を容認している。会社経営の自由度を高めるためにも、純粋持ち株会社の導入
 が必要だと理由を述べ、駁後にこう表現することにした。

 「少なくとも早急に検討に着手すべきだ」

  解禁しろなどというのは少し行き過ぎだ。少なくとも国会ではまだ議論さえしていない。
 いきなり解禁とは何事だ、と反対派の反発を食らい、入り口で止まってしまう。役所言葉で
 いえば「積極的に」といいたいが、それではたいへんな騒ぎになる。しかし、「慎重に』と
 するのは変なので、このような表現にした。
  これぐらい後ろに下がっておけば、「検討に着手」だから、検討して結論を出さなくても
 よい、と読ませるわけだ。もちろん結論を出すことも含まれる。反対派も真つ向から非難で
 きないだろうし、ギリギリ前には出て行く感じは残されている。
 
  問題は、橋本大臣に納得してもらえるかどうか-。大臣にはたくさん質問か入っているの
 で、大臣室での説明は、2、3分ほどしかない。順番に呼び込まれて、払の番になり、入室
 して恐る恐る説明した。
  その間、橋本大臣は答弁書に目を落としている。私の説明が終わると、大臣か顔を上げて
 いった。

 「分かった。これは人事だな」

  悠られることを覚悟していた私は、「だけどなあ、今後は気をつけろ」、あるいは「だけ
 ど、なぜ、こんなことを俺に黙ってやるんだ」と続くはずの叱咤の言葉を待った。だか、橋
 本大臣は無言。江田憲司秘書官(現・みんなの党幹事長)が、「次」と私の後ろの人を呼ん
 だ。
  橋本大臣が本当に理解してくれたのかは分からなかったが、ともかく怒られずに済んだ。
 退室した私は胸を撫で下ろした。
  予算委員会では時間か押して、われわれの件に関する杜民党の議員の質問時間は短くなっ
 たが、橋本大臣と公取委員長が答弁に立った。案の定、委員長は解禁論をボロクソに批判し
 た。「相互持ち合いあるいは系列、企業集団の存在が海外からのわか国市場への参入あるい
 は投資の障壁になる・・・・・・今日においても株式所有による事業支配力の過度の集中を防止す
 る必要かある・・・・・・。手段であり、企業の系列化、集団の形成強化の核となるおそれのある
 持ち株会社を解禁することは・・・・・・。持ち株会社の禁止規定は堅持すべきものである・・・・・・」
 むずかしい言葉を並べ立てるのほいかにも公取の答弁だが、要するに、これだけ日本の系列
 化が世界から批判を浴びているときに、そんなことをやると世界に恥を防すことになる、独
 禁法九条は断固守りぬく、という意味。歯牙にもかけないとはこのことだ。
 
  一方、橋本大臣は、「公正取引委員会からも系列とか様々な御意見に基づいての御批判が
 ありますけれども、私は積極的な検討はさせていただきたいものと思っております」と答弁
 した。
  ・・・・・・私は「少なくとも早急に検討に着手すべきだ」と柔らかく書いた。しかし、「積極
 的」と大臣はいった。大臣のいい間違いではないかと思った。霞が関言葉で「積極的に」は、
 基本的に「やる」という意味だからだ。

  ついでに永田町の政治家言葉と霞が関の役人言葉に関して況しておくと-。水引町ぢ葉の
 特徴は、「しっかりと」といったあまり意味のない表現で、ニュアンスを出す。菅直人氏が
 得意とした言葉だ。一方、霞が関言葉は、どんな些細な表現にも意図か込められている。「
 霞が関文学」では「○×等」と「等」を入れた場合、後で拡大解釈するための布石だし、「
 前向きに」は『やる」、「慎重に」は、「やらない」という意味だ。

  大臣の場合、答弁は官僚が書くのだから、基本的に霞が関言葉である。橋本大臣は普通の
 大臣と追って、そういう厳密な言葉づかいを理解できる人である。「積極的に」はやるとい
 う意思表示だと解釈して良かった。


                           大蔵省の橋本内閣倒閣運動

  公取がやらないといっているのに、通産大臣はやるという。このまま進めば、委員会がス
 トップする恐れがあった。大臣がいい間違えた場合、官僚や秘書官がすぐに訂正するようい
 いに行く。
  ところが、予算委員会では、われわれ官僚か座っている席は大臣席から遠く、秘書官の席
 も少し離れていたためか、結局、その場で大臣の意向は確認できなかった。

  そのときは、これはまずいことになったと思ったが、後で分かったところでは、いい間違
 いでもなんでもなかった。橋本大臣は、本当にこれはやったほうがいいと考えており、確信
 犯的にわざと答弁を変えたのだった。これだけ大きな問題に対して、短時間に咄嵯の判断を
 下すとは思えない。前々から橋本大臣がこの件について問題意識を持っていたのだろう。
  もう一つ見逃せないのは、当時、橋本大臣には江田憲司氏か秘書官としてついていたこと
 だ。彼は、競争政策にも詳しかったので、私は答弁にやや詳細なメモをつけておいた。江田
 氏は私のことを信頼してくれていたので、橋本大臣に、これは大事な話だと解説してくれた
 ようだ。信頼する側近からの進言も得て、橋本大臣は、自信を持って前向きな答弁かできた
 のだと思う。



  私は、このときの橋本大臣こそ、政治主導の見本だと思っている。政策に関する緻密な検
 討は役人が担当する。その結果を、最終的に閣僚がリスクを取って政治判断する。その際、
 絶対的に信頼できるスタッフを持っている。これが政治主導である。
 役人が勝手にやったと、責任をすべて役人に転嫁するような政治家では、到底、政治主導は
  実現しない。これは2010年秋に起こった尖閣諸島中国船衝突事件でも見られたが、民主
 党が政治主導を確立できなかった原因は、ここにもある。
  一方、橋本氏の場合、役人のわれわれでさえむずかしいのではと思っていた政策を、自分
 の判断でやるといったのだ。まさに政治主導の見本だった。


わたし(たち)の眼からすれば、永田町と霞が関内のコップの中の嵐としか映らぬ「政体」が、
ここではその後の政局→政治経済に影響し、勤労庶民の暮らしに大きな影響を与えることを、
著者の実体験で語られることとなる。それは何のために、誰のためになされるのかと・・・・・。
 

                                                      この項つづく 

 

 

   ● 今夜の一曲

'Venus and Mars / Rock Show' 
Paul McCartney’s 10 Greatest Songs After The Beatles March 6, 2013 12:00 AM

ヴィーナス・アンド・マース/ロック・ショーは、1975年にポール・マッカートニー&ウイングス
が発表及び同曲を収録したシングル。ヴィーナス・アンド・マースに収録されている2曲の短縮
版。曲はポール一人によるギター弾き語りの「ヴィーナス・アンド・マース」に始まり、派手な
展開を見せる「ロック・ショー」へとメドレーで続いている。「ロック・ショー」の歌詞の中には
ジミー・ペイジも登場する。イギリスでは、ヒット・チャートにランキングされなかったが、ア
メリカ、ビルボード誌では、1975年12月13日付けで最高位12位を獲得。キャッシュボックス誌で
は12月6日、13日の2週間、最高位16位を獲得する。

 


高野豆腐パウダー開創

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  大いなる不義を犯して、人の国を攻めば非とされず名誉とし、
           正義とす。それが不義なることを知らず    

                                            墨子

 

● 高野山開創1200年とスーパーフード

高野山は弘法大師により密教の道場が開かれてから1200年目を迎えた。この記念年に高野山では、
4月2日から5月21日までの50日の間、弘法大師が残した大いなる遺産へ感謝を込めて絢爛
壮麗な大法会が執り行われる。ところで、大門が高野山全体の総門であるのに対して、中門は、
浄域である伽藍を結界する重要な門。天保14(1843)年の大火により消失し、礎石のみを残して
いましたが、高野山開創1200年記念大法会に併せて壇上伽藍の中門が再建するというが、今
夜は高野山でも高野豆腐、これを粉末にしたスーパーフードの話。

つまり、高野豆腐は、豆腐の水分を抜いて熟成させながら凍らせたもの。高野豆腐には骨密度を
正常に近い状態に保つことができる「イソフラボン」があり、大豆食品の中では、最も多くたん
ぱく質(アミノ酸)を含んでいる食品――生豆腐の栄養素が詰まった高野豆腐の50%がたんぱ
く質で、生豆腐の7倍、その他、カルシウムは5倍、鉄分は7倍、脂質が8倍――そんなことは
誰もが知っている話。

ところが、昨年からこの高野豆腐をすり下ろした粉大豆が、チョットしたブームになっているのである。 個
人的にはニンニクに含まれる「γ-グルタミル-S-アリルシステイン」を吸収するチアミン(ビタミ
ンB1)にきな粉とニンニク(蒜)の牛乳の同時摂取する個人的な臨床テスト?を行っているが
(『安倍川蒜ミルク』2013.09.11)、現在は、ダイエット食品として話題となっているが、それ
以上にそのスーパーフードの使用方法あるいはそれを使った実用レシピがテレビなどで取り上げ
られるようになっているようだ。それはイタリア料理のポレンタ風でもあるが、高野豆腐のもつ
スポンジ特性を生かし、パンケーキ、ハンバーグに使用される。また、穀物パウダーや魚肉類の
すり身やミンチだけでなく同じベジタブルパウダーとの組み合わせでカラーフルな加工食材にも
応用されて行きそうだ。

 

 

   

 【日本の政治史論 Ⅸ:政体と中枢】   

「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で、触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。  

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』 

   目 次 

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策  

 第7章 役人―その困った生態 

                           大蔵省の橋本内閣倒閣運動

  通産大臣の任期中には、独禁法の改正はかなわなかったか、翌年、総理に就任した橋本氏
 は、1997年、改正法案を国会に提出し、成立させた。
  総理を辞めた後、日歯連献金疑惑もあって、橋本氏の評価は下がってしまったようだが、
 構造改革という。言葉を前面に出したのも橋本総理だったし、小泉時代に有名になった経済
 財政諮問会議の創設を決めたのも橋本氏だ。橋本氏は霞が関の抵抗を押し切り、省庁再編も
 断行した。信念のある立派な政治家だった。宰相の器とは橋本氏のような政治家が持つもの
 なのだろうと思っている。

  ただ、橋本氏ができなかった行革もあった。歳入庁構想だ。橋本内閣は、消費税増税で失
 敗したといわれているが、霞が関では、大蔵省から国税庁を引っ剥がして歳入庁を作ろうと
 したため、敵に回った大蔵省に倒されたと見る向きも多かった。
  当時、大蔵省は、山一燈券などの証券会社を廃業に追い込んだ。あれは大蔵省の橋本内閣
 倒閣運動だったという人もいる。
  民主党も以前は歳入庁構想を高らかに唱えていたので、真っ先に手をつけるかと思ったが、  
 いつの間にか後退して、いつやるのかまったく分からなくなってしまった。やはり、財務省
 が怖かったのだろう。

                         反対派を翻意させたポスト格上

  話を戻せば、橋本通産大臣の「積極的に検討」という国会答弁は、案の定、反対派に火を
 つけた。当時は自社さきがけ政権で、総理は社民党の村山富市氏だ。われわれは与党杜民党
 の商工部会に呼ばれるのだが、肢らが反対派の急先鋒となって、「独禁法九条の改悪は絶対
 阻止するぞ」「はんたあ~い」とシュプレヒコールを上げる。こんな光景は学園紛争の頃に
 見て以来だ。
  表ではこうした激しい対立が続いていたが、実は裏では少しずつ公取の懐柔策が進んでい
 た。
  もともと検討を開始したときから、公取や独禁法学会と、ずっと同じ議論を続けていた。
 「世界中、どこでもやっているのに、日本だけに悪いことかどうして起きるんですか。仮に
 起きたとしても、取り締まればいいじやないですか。日本には独占禁止法という法律がある。
 財閥ができても分割できる。系列化でがんじがらめにする企業か出てきたら、公取か潰せば
 いい」

  理詰めで相手の主張を潰していくと、最後には「日本の公取はそんなに強くない」と反論
 してきた。ならば、話は簡単だ。公取を強くすればいい。「強くできるのか」というので、
 しめたと思った。
  実は前々から、アメリカからも公取を強化せよとの要求か来ていた。私は以前、産業構造
 課で日米構造協議を担当していたので、彼らの要求は熟知していた。そこで、これをうまく
 利用しようと考えた。

  強くするというと普通、増員を考えるが、私の案はポストの格上げによる組織強化だった。
 公取の事務局を事務総局にする。経済部と取引部を統合して経済取引局に、審査部を審査局
 に格上げする。
  単なる名称の変更に過ぎないように見えるかもしれないが、役人にとってはこれが非常に
 大きい。なぜなら、上のポストが増えるからだ。普通の役所では事務方のトップは事務次官
 その下にいくつかの局長ポストがあり、その下に次長あるいは部長、審議官などというポス
 トがある。上から順に給料も下かっていく。

  公取の事務局長は他省庁では局長に当たる。つまり、一番上のポストが次官級ではないの
 だ。事務総局にすると、そのトップ事務総長は次官級に、部が局になれば、部長は局長へと
 格上げになる。次官級ポストはゼロから一になり、局長級は一から二に増えるのだ。
  経済社会情勢が大きく変わったわけでもないのに、組織全体を格上げするなどという話は
 まず普通、あり得ない。当たり前だ、仕事の内容が変わるわけでもないのに、単純に幹部の
 給料を上げるというのに等しいからだ。しかし、公取の強化は、日米の懸案事項の1つなの
 で、産業政策局長から橋本大臣に上げ、行革本部に根回しすれば、できないことはないので
 はないかというのが私の判断だった。
 
  それに、私は、もともと通産省が公取を目の敵にしていじめることには反対だった。公取
 がもっと強くなってくれなければ、日本の市場は良くならない。そう信じていた。通産省の
 普通の官僚は公取強化には絶対反対という人が多かったが、そんなことは無視しようと思っ
 た。
  ただ、ポストの格上げだけではやはり、不真面目だ。そこで、人員も大幅に増やすという
 ことを進旨することにした。そして、こうした動きは表の研究会の検討中から静かに進めて
 いた。
  公取の職員はプロパーなので、次官ポストができるというだけで大喜びするはずだ。公取
 の懐柔策としてはこれ以上のものはない、という私の予想は的確だった。
  思った通り、公取は一も二もなく乗ってきた。ただ、公取としては、あれだけ反対してい
 たので、すぐに持ち株会社解禁OKと掌は返しにくい。村山総理の社会党が支援してくれて
 いるのだからなおさらだった。内々に合意が成立したものの、法案をいきなり出すわけには
 いかない。いったん棚上げにして、先に組織強化をやるという、やや危ない橋を渡った。

  弱ったのは、たまたま通産省と公取の両方の定員を査定していた行政管理庁の担当官だっ
 た、ポストを新設する場合、スクラップ・アンド・ビルドか原則になっているからだ。
  他の役所で次官級ポストの削減はあり得ないし、局長級ポストにしても減らすのは無理で
 ある。それなのに、公取の次官級ポストや局長ポストを増やせというのだ。事務的にはほと
 んど説明がつかない。非常に真面目な性格の担当者は途方に暮れ、いつ会っても樵悴しきっ
 た顔だった。

  私は「何もしなくてもいいんじゃないですか。私のほうから、政治決着で上から落とすよ
 うに根回ししますから」と助け舟を出した。実際、政治決着で片がつくと、担当者かいった。
 「それにしても、公取ってひどいですね。何もしなくてこんなに焼け太りして……」
 確かに公敵は図々しかった。途中、こちらの足元を見て局長級ポストを三つにしてもらえな
 いか、といってくる始末である。もちろん、そんな強欲な要求は受け入れられなかったが。
  担当者は続けた。

 「実際に動いた古賀さんのところに何の見返りもないのはおかしいですよね。産業組織政策
 室を課に格上げしましょう」

  役所では、室は課よりも格が下である。室長は管理職としては駆け出し、課長になって一
 人前の管理職と認められる。私にとってはどちらでも良かったが、せっかくの好意だから課
 にしてもらうことにした。
  かくして組織改変の法案は成立し、7月1日に施行され、公取のポストが格上げになると
 同時に、産業組織政策室は、産業組織課となり、私は初代課長となった。しかし、その3日
 後定例の人事異動で私は日本を離れることになったのだが・・・・・。

  一方、独禁法改正の法案作りも、通産省と公取によって裏で密かに進められた。まだ持ち
 株会社解禁の方針は出されていない段階だったため、公取の人たちは「こんなことをやって
 いると世間に知れたら、われわれは死刑だ」と恐れていたので、何かあっても表沙汰にはで
 きない。

  そこで、目立たないようにと、少し離れた特許庁の会議室を借りて、草案作りの議論を始
 めた。特許庁は特別会計を持っているので潤沢に予算かおり、ビルも立派だし、使える部屋
 もいっぱいあった。
  こうして法案は極秘裏に練られ、私が日本を離れた後、翌年の国会で可決されたのだった。
  この独禁法改正が、いまのところ私の官僚人生で、もっとも大きな仕事である。


                       霞が関と戦うときの二つの必須要件

  産業組織政策室長だったときには、規制緩和にも取り組んだ。
  当時、村山内閣のもとに行政改革委員会規制緩和小委員会というものがあった。その後、
 橋本内閣で行政改革推進本部規制緩和委員会となるが、その後この規制改革の世界では10
 年以上の長きにわたってオリックスの宮内義彦社長が政府の審議会をリードされてきた。わ
 れわれは、その流れを作るための動きを、裏で経団連と連携しながら進めていた。

  当時はまだ規制改革は緒に就いたばかりで、いまでは信じられないような規制かたくさん
 残っていた。酒・たばこ・医薬品の販売、トラックや内航海運など、かなり厳しい参入規制
 が行われていたし、大店法の古い規制も残っていた。安全規制に名を借りた競争制限も数々
 あった。ガソリンスタンドのセルフ給油の禁止などもその一例である。


さて、政治とは何かとの問いかけに、司馬遼太郎は小説『花神』(※花咲爺さん)で主人公の大
村益次郎に「嫉妬」と言わせている。これはニーチェの「ルサンチマン」とも相補するが、心に
抱くことはこれも自然なことで言葉それ自体を否定するもではなく、共同体の未来目標の摺り合
わせに転化すれば良いことだ(そこが難しいのも承知しているが)。吉本隆明はこれに対し「過
剰過程」というふうに応えている。「独禁法改正」が共同体の「仕合わせ」の利にかなうなら推
進すればよいことで、悪ければ見直せば良いことだと考える。「規制」も「緩和」も先験的、あ
るいは反遡及的に考えることは慎みたいと考えている。


                                                      この項つづく 

   ● イタリアン・アウトドア・クッキング Ⅱ

出展:室井克義著「イタリアン・アウトドア・クッキング-プロの技に遊ぶ」(柴田書店、1996)
 

【ホウレン草入りフェットチーネ、スモークサーモンソース】

材料(4人分): ホウレン草入りフェトチーネ 320グラム、スモークサーモン 80グラム、バター
大さじ3、トマトソース 250グラム、生クリーム 500ミリリットル

作り方:①フライパンにバターを入れ、みじん切りにしたスモークサーモンを入れてサッと炒める
(A)、②トマトソースを入れ、サーモンの味をなじませる(B)。③生クリームを加えて、塩、コシ
ョウで味をととのえてから(C)、茹でで上がったパスタをあえる。

中華鍋:アウトドア用品を一式揃えれば出費も馬鹿にならない。とりあえず、鍋類は家庭で使って
いるもので十分だし、耐久性だって毎日使っているんだから申し分ない。特に、中華鍋は使い方が
無限でおすすめ。今回は速燻法で使っているが、その他にパスタをこねるボールや、食器洗いの桶
にもなる。マキや炭を入れれば直火禁止の場所でのコンロに早変わりする。歴史が物語っている鍋
はやはりすごいと賞賛する。

プロの技:スモークサーモンは色が変わる程度に炒めるだけでいい。あまり火を通しすぎないこと。

 

   ● 今夜の一曲

'Jet―Maybe I´m Amazed' 
Paul McCartney’s 10 Greatest Songs After The Beatles March 6, 2013 12:00 AM

   Jet, Jet
   Jet I can almost remember their funny faces
   That time you told them you were going to marrying soon
   And Jet I thought the only lonely place was the moon

   Jet Jet Jet

   Jet was your father as bold as the sergeant major   
   How come he told you that you were hardly old enough yet
   And Jet I thought the major was a lady suffragette

   Jet Jet Jet

   Ah Mater want Jet to always love me
   Ah Mater want Jet to always love me
   Ah Mater, much later

   Jet......

「ジェット」は、1974年にリリース。『バンド・オン・ザ・ラン』の2曲目に収録。またベストア
ルバムでは『ウイングス・グレイテスト・ヒッツ』『オール・ザ・ベスト』『夢の翼〜ヒッツ&ヒ
ストリー〜』に収録。シングルカットは。『アルバム発表から年の明けた2月15日に、ウイングス
のシングルでは7枚目にあたる。「

「ジェット」とは、2010年11月の『バンド・オン・ザ・ラン』再発売に合わせて同年イギリスで放
送されたテレビ番組にて、ポールが飼っていたポニーの名であるとポールが語っている。なお、ポ
ールはビートルズ時代にも当時の飼犬マーサをタイトルにした「マーサ・マイ・ディア」を作曲。
録音中、テープの磁気体が剥がれ、シンバルの音が少々弱く、さらに、テープの救出コピーによる
全体の音が固くなっているとか。1973年8から9月、ラゴスでの『バンド・オン・ザ・ラン』制作
後にレコーディングされたが、英国で7位。ビルボード誌では、1974年3月30日に週間ランキング
最高位の第7位を獲得。キャッシュボックス誌では、3月23日付け最高位第5位を獲得。日本では
1974年の年間洋楽チャート1位を記録する。

 


 

 

ころんた――サカタのタネが約10年間の歳月をかけて開発したという――ミニメロンの苗が届く。

 

 

芋エネルギー工学

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  変革せよ。変革を迫られる前に。 / ジャック・ウェルチ

 

 

● 芋でエネルギー革命? 

13日の夜、「ほんまでっか!?TV」で鈴木高広近大教授が出演していたので、今夜再度この
話題に。教授の話では「芋で日本を救う!?――サツマイモでもジャガイモでも、ごく普通の芋が
燃料になります。芋燃料は、エネルギー問題をはじめ、地球温暖化問題、過疎化の問題、雇用問
題、食糧問題など、日本のあらゆるさまざまな問題を解決してくれる、純国産の燃料作物なんで
す」とか。その根拠は、「安価でたくさんの量を作ることができるためです。現在、さまざまな
方法で自然エネルギーの開発が行われていますが、どんなにすばらしい技術でもコストが高けれ
ば普及しません。芋は発酵液を蒸留すればガソリン代替のエタノールになりますし、乾燥させれ
ば石炭代替のチップにもなります。とにかく燃料化が安く簡単にできます」という(「エコロジー
オンライン」2011.11.15)。

さらに「・・・・・・人間だけじゃなく、植物にとっても有害だということを知るのです。人間は紫外
線を浴びると体内でメラニンを合成することはよく知られていますが、植物も同様に防御機能で
リグニンという物質などが働き、光を弱めて吸収しています。そのため、わずか3~5%の太陽
光しか光合成には利用されません。しかも農地作物の栽培効率はさらに低い。晴れた夏の日に地
表に届く太陽光の照射エネルギーは1時間で約3.5メガジュール/平方メートルあり、これは芋
0.7キログラム分のエネルギー量に相当しますが、全国の芋の年間収穫量は2~3キログラム/
平方メートル。1年かけて4時間分の太陽光のエネルギーしか固定できない計算です。現在の農
業が非常に効率悪く行われているかがわかりました。自分がいかに光のことを知らずに、微生物
の研究をしていたかも思い知らされましたね」(「同上」)。

このように、日本の農業では、作物に太陽の光を充分浴びさせるため、平地で栽培されてきまた
が、隙間だらけの畝(うね)で浴びた日光の5%しか植物が必要としないのであれば、棚をマン
ションのように多層に重ねて、光を分散させてやればいい。当然、下の棚には光が届きにくいが、
比較的弱い光でも育つ作物で、なおかつ日本全国で栽培可能なものを探していくと、最も優れて
いたのが芋だった。

その作り方は、白いレジ袋を3段に吊ることができる足場を作り、人の背の高さくらいにする。
レジ袋に土を入れてサツマイモの蔓をさすだけでいい。イモの収穫量は、従来の30~50倍になる。
サツマイモは食品とせず、それほど大きくならないでいい。2ヶ月栽培して少しでもイモができ
れば充分。生徒がイモをスライスして、あらかじめ乾燥しておいたイモを炉に入れて燃やす。7
百℃くらいになると、蒸気の力でタービンがまわり発電させるというものがプロトタイプだ。そ
の電気を電動バイクに蓄電池に充電する。ある程度(1時間)充電が済むと、電動バイクはしっ
かりと走り始める。このイモ燃料の優れた点は、経費の安さ。石油や石炭と同じレベル。輸入し
ている木質チップは17円/キログラムだが、イモチップは15円/キログラムにできる。木質チ
ップもイモチップも電力効率は変わらない。輸入木質チップより国内で生産できるサツマイモが
有利。

しかも、現在化石燃料の輸入には年間20兆円かかる。それに対し、農業所得は約8.3兆円(20÷
8.3≒2.4倍)。兼業農家も含めた潜在的農家人口は、830万人。一人あたりにすると、100万円し
かない。それを、鈴木教授は遊休地などを100万ヘクタール使い、45億トン(45億トン×15円/キ
ログラム=67.5兆円/年)のイモを生産することを目標にする。これに応じるように、各地の自
治体も関心を示し、大阪府との産学連携や三重県との共同実験が行われている。三重県鈴鹿市で
は百軒の農家がサツマイモの生産に取り組んでいる。



ここで作る芋はあくまで燃料用。大きく育てる必要はない。生物は小さいものほど2倍の重さに
なる時間が短いという特徴があり、3センチ大の小芋であれば約6週間で育ち、春から秋にかけ
て年6回は収穫できる。例えば、2リットル用のペットボトル(8cm×10cm)容器に苗を植えて、
1平方メートル内に125個敷き詰める。これを縦に5段積み重ね、1区画から約120グラム
gの芋が収穫できる。つまり理論上は、120グラム×125株×5段×6回=450キログラム/平方
メートルの芋を1年間で作れるす。農家1人で20アール(2千平方メートル)の土地を想定する
と、年間9百トン。仮に5円/キログラムで売るとすれば、年収は450万円になると試算して
いる。 

   

● 休耕地で全エネルギー代替可能

鈴木教授は今ある農地を使わなくても、日本にある休耕田約40万ヘクタールを活用すれば、国内
の火力発電と原子力発電の総発電量をまかなえる18億トンの芋の生産が可能だと主張する。さ
らに、生産調整田や有閑農地、ビルの屋上、造成地など、日本中にある利用可能な遊休地は年間
のべ百万ヘクタールを超える。この空き地を確保できれば、発電以外の燃料用途も代替できる4
5億トンにまで伸ばすことができる。つまり、従来の農地ではこれまでどおり米や野菜を作りつ
つ、空き地を使って新たに燃料作物の栽培を行うので、食料作物の供給が減るということがなく
、それどころか、多段栽培の技術は芋だけでなく、さまざまな食料作物の栽培にも応用でき、食
料は減るどころか増やすことができるとまで言い切り(「同上」)、

 
そのことを踏まえ、日本で生産されているジャガイモが300万トン弱、45億トンとなるとこの1500
倍、これだけの芋を作るには機械化は避けられない。農業というよりも工場の発想が前提となる。
燃料用芋の年間出荷見込み額の3~5年分、1350万~2250万円を設備投資に回すことで、設備機
械の市場も生まれので、アルコールや発電事業、合成原料、加工、流通に加え、雇用拡大や住宅
や建設など、芋燃料ビジネスによって、約50兆円もの経済効果を見込めると結ぶ。

この計算が概ね妥当だとすると、太陽光発電(変換効率25%超、7円/キロワットアワー)に
加え、芋エネルギー(バイオマス)とその他再エネ、節電・省エネ効果を加えと現行消費量の3
倍近く賄える量になるものと想定される。

 



以上のような結論を踏まえつつ、「芋エネルギー」を実現するための課題を考えると、(1)気
象変動を前提として、露地栽培でなく、ガラスハウス(植物工場)が前提となる。次に(2)太
陽光型か人工光型のどちらを選択するかを考えると、どちらでもかまわないということになる。
つまり、太陽光型の場合、多機能型波長変換フィルム(薄膜)を導入すれば生産性は、原案より
向上する。さらに人工光型では太陽光発電+蓄電池システム完備することで発光ダイオードなど
の光源で栽培可能。従って、(3)自然光及び人工光両用の導光板を用いて(4)上下可動ネッ
トに垂直栽培し、片面側から導光板(=光拡散板)で均一な大面積の照明を可能とする。(5)
根(地下茎)を専用接合セル部に培養水のノズル噴霧(+凝縮水再循環気液)栽培方式とし(6)
根(地下茎)とそれ以外の部位は自動回収し、その後(7)自動作付けの上(4)へ循環培養す
る。回収部位別に、①エタノール発酵、②メタン発酵、③固形化した上で、(8)燃料電池、蒸
気タービン、直燃ボイラーなどの原料して使用する。ざっくりこのようなイメージエネルギー変
換するシステムを考えた。 


特開2014-161243 栽培装置、栽培システム、植物の栽培方法

 

特開2015-053927 作物育成システム

特開2015-092434 バックライトユニット及び液晶表示装置

   参考図書 

  

【日本の政治史論 11:政体と中枢】      

「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で、触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。  

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』 

   目 次 

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策  

 第7章 役人―その困った生態 

                           大蔵省の橋本内閣倒閣運動

   われわれは、これらの規制一つにつき、.枚ビラを作成する。それを経団連に持っていく
 と、経団連が永田町を回り、先生方にビラを配りながら説明する。一方で、こちらは日本経
 済新聞とタイアフプして記事を書いてもらって、キャンペーンを盛り上げるという作戦であ
 る。
  ところが、ある新聞が、通産省が裏で動いているとすっぱ抜いた。他省庁の規制が多いの
 で、霞が関ではわれわれの行動に非難囂々となった。
  当時、こんなことがあった。通産省の外局の資源エネルギー庁の石油郎の課長がやってき
 て、『ガソリンスタンドのセルフ給油の規制がさあ」と雑談していく。いまでは考えられな
 いことだが、当時はセルフ給油は危険だという理由で禁止されていたのだ。これを解禁すべ
 きだとわれわれは動いていた。

  セルフ給油が認められれば、販売コストが下がり、消費者へのガソリン販売価格も下がる。
  しかし、それで価賂競争が激しくなるのを恐れたガソリンスタンドの業界は、この規制緩
 和に強く反対している。セルフ給油に関する規制自体は消防庁によるものだったので、通産
 省は直接担当ではないか、セルフ給油解禁で影響を受けるのはガソリンスタンド。それを所
 管している深長は、つまり、裏にいるらしい私に、規制緩和に向けて動くのはやめて欲しい
 といいに来たのだ。
  しかし、私は表立って動いているわけでも、実際の担当でもなんでもない。証拠もないの
 に決めつけては話ができないので、要領を得ない雑談か長々と続くだけだった。 

 「お立賜があるので、たいへんですね。お気持ちはよく分かります。でも、部長か何をおっ
 しやりたいのか、私には理解しかねます」
  といってお引き取り願った。
  この話を聞いて、頭に来たのが、その部長の上司だった。「なんだ、あいつは」と怒って
 いるという話が聞こえてきた。しかし、その後もまったく意に介さずどんどん規制緩和のキ
 ャンペーンを続けていた。

  そうこうするうちに、なんと、そのヒ司か私の上司として産業政策局にやってきた。私の
 ことを良く思っていなかったのか、私のやることにことごとくケチをつける。.私がかまわ
 ずやると、その上司からは直接何もいわれないのだか、なぜか事務次官から呼び出しがある。
  誰かが告げ口したのかな、と思った.次官との間で二度ほど次のようなやり取りがあった。
 「規制緩和を.一生懸命やっているそうだね。やっていることはいいと思うんだけどさあ、
 やり方っていうものがあるんじやないのかなあ」

 「はあ」
 「他省庁を刺しているという人もいるんだけど、そんなことやってろのか」
 「ぜんぜん、やってません」
 「それならいいけど、もう少しお行儀良くやることだなあ」

  そのときの次官は、改革に理解のある方だった。しかし、霞か関の仁義に反するようなこ
 とを指摘されると、放っておくわけにはいかなかったのだろう。いつも遠慮がちにゃ自笑し
 なから、やんわりと私を諭そうとした。やんちゃ坊主をたしなめるという感じだ。払は、
 次官は本当は応援してくれている、と嬉しかった。
 規制改革は霞が関では鬼門だ。前向きなことは何をやっても非難される。しかし逆にいえ
 ば、役所から文句がつくならむしろ効果があるという証明でもあるから、迷わずやったほう
 がいいということだ。だから、腹をくくってやりたいようにやると決めて、その後も新たな
 試みにチャンレジした。

  私か最初に試みたのは、国Kに規制について意見を求め、意見があれば、担当課に答えを
 書かせ、それをまとめて公表するというやり方だ。私がいつもやっている、表での議論だ。
 返ってきた答えはほとんど「できません」だったか、国民の指摘はもっともなことばかりだ
 ったので、「できない」と書くだけでも恥すかしい。私はこの問答集を分厚い本にまとめて
 国民に公表したので、坦の中で無駄な規制が浮き彫りになった。

  実は、これは経団連の阿部氏と話していて思いついたことだ。宮内小委員会が実施を検討
 したが、各省庁が許すはずはなかった、では通産省でやればいいと思って実施した。それに
 しても官房総務課か、やることをよく許してくれたものだ。恐らく、理屈では私のほうが正
 しいので、「やるな」とはいえなかったのだろう。

  私が問答集を宮内小委員会に持っていったので、宮内さんが「通産ができるのだから、や
 れないことはない」と強行突破し、以後、年に一度、国民にバプリックコメントを求め、答
 えを公表することになった。理詰めと気合い――霞が関と戦うときのこつの必須要件だ。


                            英語もできないOECD課長

  私の次の仕事は、パリにあるOECD(Organization for Economic Co‐operation and Develop-
     ment=経済協力開発機構)事務局の職員だった。役職は科学技術工業局規制制度改革担当課
 長である。
  OECDに出向するといっても国連と同じで、代表部と唇務局に出向する場合がある。代
 表部はOECDと日本政府の間の連絡窓口のようなもので、事務局はその会議を運営したり、
 様々な調査を行い、報告するなどの仕事をしている,.0ECD事務局職員は国連でいえば、
 国連職員に相当する。
 
  OECDの職員として派遣されるはめになった経緯は、瓢箪から駒という表現が当てはま
 る。
  人事の季節が近づいて、局長に呼ばれ、「君、次はどうしたらいい」と聞かれた.希望の
 ポストはあるか、という意味である。私の答えは「ゆっくり休んで暮らせるような海外勤務
 とかあったらいいですけどね」。冗談でいったつもりだった。というのも、その頃には、す
 でに海外に出る職員は全員決まっていたからだ。 

 「海外か」、局長はぽつりといったが、私はさして気に留めなかった。ところが、局長から
 総務課に私の人事の話が行ったらしい。総務課長は、断ればいいのに、無理だと思っていて
 も逆らわず、「はい、分かりました」と秘書課長に上げたのだろう。
  秘書課長は頭を抱えたはずだ。産業政策局長は次の事務次官になるというのが衆目の一致
 するところだった。事務次官になる人の指示は無視できない。さりとて、空きはない。困っ
 た秘海課長は、通商政策局に、何か適当なポストはないか相談した。

  ちょうどその頃、日本がOECDに資金を拠出してプロジェクトを作るという話が動いて
 いた。おカネを出すのに合わせて一人ぐらい職員を届ってもらおうという話も進んでいたの
 だ。秘書課の指示で、私がそこに于を上げることになった。
  局長からその話が来たとき、私は乗り気ではなかった。なぜなら、正直、私には荷が重い。
 たとえばJETROの出先の次長や大使館の書記官であれば、周りは全部日本人で、部下も
 いて、秘書がついていて、かなりのサポート体制があり、仕事もそれほど忙しくない。

  一方、OECDの職員は、まるで逆である。周囲はすべて外国人。仕事もフルにやらなけ
 れば、務まらない。もちろん、英語だけで仕事をする訓練をしている人なら、むしろ楽しい
 職場かもしれないが、私は留学もしていない。しかも、OECD事務局の公用語は英語とフ
 ランス語。職員は修士は普通でドクターも多い。南アフリカ共和国に赴任していたとはいえ、
 総領事館は日本人ばかりだし、かなり気楽なものだったのだ。 
 
  加えて私は、フランスー語など、まったくしやべれない、どう考えても私には荷が厭かっ
 たそれに、相手も困るのではないか。いろいろ考えて、払は秘書・課長のところに直談判に
 行った。
  話しているうちに秘書課長が、「君、留学していないのか」と驚いている。深刻な顔にな
 り、弱り果てていた、その直後、上司の総務課長から呼ばれて怒鳴られた。「直接、秘書課
 長に話しに行くなんて、どういう了見だ」と。自分の頭を通り越して、秘書課長と話したこ
 とがおもしろくないのだろう。局長に「古賀君も、喜んでいる」と報告し、点数を稼ぎたい
 という思いもあったはずだ。「黙って従え。以後、君の人事の件は一切口にするな」と頑な
 になり、結局、私はフランスに出されることになった。

  予想通り、たいへんだった。会議の途中、英語からフランス語に切り替わると、どんな話
 になっているのか、さっぱり分からない。いままでのように思い切り仕事をするという状況
 ではなかった。

                                   この項つづく


 

● 今夜の大法螺 

  Click here !

1 dead, 21 hurt as plane carrying Marines crashes in Hawaii

ハワイでオスプレイ(俗称 "未亡人製造機")が墜落。悪いことはいわない、至急、安全性の再審
査をしなさい。何だったら、浮体式空港とあわせて、わたし(たち)がデザインしましょうか?^^;。



● 今夜の一言  されど、二酸化炭素濃度は上がる。

 

 

この胸のときめきを。

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   戦争は、外交の失敗以外の何物でもない。 / ピーター・ドラッカー

 

 

【浪速の夢 大阪都構想劇に幕】

住民投票で僅差で反対が上回り否決され、橋下市長と同じく江田憲司維新の会の共同代表の辞任
で決着をみた。(1)地方分権推進、(2)地方自治への新自由主義政策、(3)構造改革主義、
(4)橋下徹市長の手腕の魅力を特徴としていた。尚、(1)へのアプローチとして税制改正2
案を提案してみたがこれは法規主義の遅効性。大阪維新の会の二重行政解消はいわば「選択と集
中」。反対派は既成政党、労組、行政関連する企業団体、また、今回の選挙結果でも明らかにな
った高齢者層(60歳超)。一見すると勝ち目のない選挙であった。これに対し、朝日、産経な
どの大手新聞社の調査では――賛成多数になれば設置された5特別区のうち、区内のすべての行
政区で賛成が上回ったのは「北区」だけ。この「北区」には大阪、新大阪、京橋と三つのターミ
ナル駅があり、大阪府市大都市局が「大阪経済の中枢機能を担うビジネス都市」と位置づけてい
た。中でも繁華街「キタ」を含む北区は、24区で最高の59・03%が賛成した。一方で、す
べての区で反対が上回ったのが、市西部の「湾岸区」と南部の「南区」の二つだった。「湾岸区」
は大阪湾沿いの4区と住之江区の臨海部で構成。橋下徹大阪市長はカジノを含む統合型リゾート
(IR)誘致などを見据えて「世界標準のベイエリアに」と位置づけ、当初の「西区」案から名
称を変えた経緯がある。だが、反対派は南海トラフ巨大地震の津波被害が特別区全域に及ぶ危険
性を指摘。都構想反対を打ち出した地震学の専門家は街頭演説で「ここは大阪市の『津波防波堤
区』」と呼んだ。「南区」は「歴史と新しいものが融合した定住魅力のある区」(大都市局)と
された。住吉大社や「あべのハルカス」があり、人口は政令指定市並みの69万人。歳出額は指
定市の堺市に匹敵する規模になる見通しだった。一方、自主財源が少なく、府と特別区間の「財
政調整頼み」(自民党大阪市議)が批判を浴びた。「南区」に含まれる平野区は市内で最も人口
が多く、この区だけで反対票が賛成票を1万票余上回った――と、「地域差が明確に表れている」
(2015.05.18)と解説している。

昨年、曾根崎小学校の同窓会で意見交換してが今回の調査通りとなっている。もう少し踏み込む
と、関連の深い区である北区以外に西区、都島区、東淀川区はいずれも賛成が上回っているから、
ある意味救われた思いでいる。逆に言えば「大阪での敗北」は、地方創成を遅らせたと考えてい
る。五月の露と消えにし浪速の夢。やんぬるかな、宜なり。

※ 「大阪都構想住民投票」で浮き彫りになった大阪の「南北格差問題」(2015.05.18 古谷経衡 
  評論家/著述家)

  

【白金触媒の劣化遅延工学】

● 燃料電池の触媒「白金」のナノ領域の挙動観察技術

トヨタとファインセラミックスセンタが共同で燃料電池の化学反応を促進する触媒として不可欠な
「白金」の劣化に至る挙動の即時観察技術を開発。これにより、分析用の「透過型電子顕微鏡」の
中で燃料電池と同じ発電状態を模擬できる新しい観察用サンプルの作成に成功し、数ナノメートル
の「白金微粒子」のレベルで、反応性低下に至る挙動プロセスを観察した。

つまり 「白金」の反応性低下は、「白金微粒子」の粗大化に起因するが、リアルタイムで把握で
きず、粗大化の要因解析が困難だったが、粗大化の要因として、「白金微粒子」の担体となるカー
ボン上で(1)粗大化に至る挙動を引き起こす箇所や(2)その時の電圧、さらには、(3)担体
の材料の種類によるそれらの違いなどが明らかになり、反応性低下のメカニズムを解析し、燃料電
池に不可欠な触媒の「白金」の性能・耐久性向上の研究開発指針が得られるのではないかという。

 
このように今回の発明は、白金の劣化すなわち粗大化を抑制=時間軸としての遅延化する方法とその機
構開発の前駆段階の重要な技術となる。うまくいけば、高価な電気化学触媒利用分野に貢献出来る。具体
的には、燃料電池や自動車などの内燃機関の排気ガス浄化や水電解用白金電極などに応用できるだろう。

 

 

  

【日本の政治史論 12:政体と中枢】      

「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で、触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。  

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』 

  第7章 役人―その困った生態 

                                     「発送電分離」パリの空の下から叛乱

  もっともまったく仕事をしなかったわけではない。日本でやりかけていた規制改革に取り
 組んだ。
  テーマはベンチャーなどの小さな企業が成長するための規制緩和の整備。私のアイデアで
 プロジェクトが始まったが、終了間際に急に帰国命令が出て、中途半端な仕事になってしま
 った。
  そんななかで、一つ大きな騒動になったことがある。当時、OECDのプロジェクトのな
 かで、電力の規制改革の議・論が行われていた。その議論を聞いていると、発電部門と送電
 部門の分離が焦点となっていた。

  日本では、各電力会社は発電部門と送電部門をともに持っていて、地域ごとに供給を独占し
 ている。東京に住んでいれば東京電力から買うしかないし、東京電力は基本的には自分の発
 電所の電力だけを供給するという具合だ。そこで発電部門と送電部門を分離して、地域を越
 えて需要家が電力会社を選んで電気を買うことができることにして、競争を導入しようとい
 う考えだ。

  もともと私は、日本の電力会Uはぬるま湯に浸かっていて非効率だし、イノベーションか
 進まない状況に陥っているのではないかと思っていた。
  後に述べるが、通産省と電力会社の癒着ぶりは目に余るものがあり、特に東京電力に睨ま
 れたら出世はできない、などという話を聞いたことがある。「市電は腐っている」と思って
 いた私は、発送電分離の話を聞いたとき、これは電力改革の切り札になるのではないか、と
 感じた。

  電力会社は独占企業でありながら民間企業なので、基本的に株主総会以外に経営チェック
 は入らない。もちろん、原子力の安全規制はチェックが入るか、経営についてのチエックは
 極めて限定的だ。料金値Lげのときなどは通産省がチェックするが、各社には通産省の幹部
 が大トるポストか用意されているので、本気でチェックはできない構造になっている。それ
 が電力会社の悪しき体質を生んでいた。
 
  電力会社は独占なので、いくらでも儲けられる。あまり儲けすぎると、料金を上げろと消
 費者から文句をいわれるので、あまり儲けない。そして、福利厚生などを見えないかたちで
 充実させたり、様々なフリンジベフィットを拡大しようとしがちである。私から気れぱ、本
 来の利益が無駄な経費に注ぎ込まれている、ということになる。

  電力会社の社長か経団連や他の経済団体の会長に推されることが多いのはなぜか。電力会
 社は日本最大の調達企業だからだ。発電プラント、送電線、鉄塔。地域には、発電所や事務
 所か無数にある。生活必需品も必要なら自動車も必要。屯力公社は、鉄をはじめ、ありとあ
 らゆるものをそこらじゆうから大量に買う。だから、経団連の会長に電力会社の社長がなる
 というと、誰も文句がいえない。

  さらに、独占企業だから企業経営のほうも基本的に心配かない。電力会社が経営の危機、
 などということはまず起こらない。社長は毎日本を読んで天下・国家を論じたり、財界活動
 に精を出すこともできる。
  厳しい国際競争に哨され、毎日為替レートの上f‐に一喜.憂している他の産業の経営者
 よりも気楽に見える(だからこそ、東日本大震災で福島第一原発の事故が起こると、危機な
 ど経験したことのない経営者たちは、迅速な判断やリスクを取る果敢な決断ができず、結果、
 すべてが後f後手に回ってしまつたのだ)。

  電力会社は、この圧倒的な力を背景に、政官癒着の構造を作りあげていた。昔、先輩に聞
 いた話だか、電力会社は通産省の役人を頻繁に接待していた。電力会社でその経費を落とす
 と癒着がばれるので、下請けの工事会社などの取引業者につけを回す。下請けはこれを会議
 費などの名目で落とすので、電力会徊と役人の癒着は表に出ず、闇に葬られるというのであ
 る。

  一方で、電力会社は有力政治家に多額の政治献金をし、便宜をはかってもらっていた。そ
 のため、電力に強い自民党の議員には多額の政治献金が集まった、
  そして電力会社は、政治力と役人との癒着で得た力を駆使して、補助金にも口を挟む。発
 電所が立地している地域には補助金が出る。その配分額は、通産省と電力会社が裏で協議し
 て決めていたそうだ。

  電力会社の上層部はみな贅沢な暮らしを謳歌し、一方で、壮大な無駄と癒着利権の構造が
 できあがっていた。こんな澱んだ構図ができてしまつたのはひとえに、競争がないことに起
 因していた。
  ならば、競争させる環境を作ればいいというのか私の発想だった。
  当時、送電線は、たとえば東‐尽電力の管内なら東電が所有していた。これを、送電線は
 別会社にし、発電部門もいくつかの会社に分割する。発電した電力を購入する側は、自由に
 電力会社を選べるように変えるのだ。この仕組みにすると、競争が生じ、癒着の構造も解消
 する。

  電力会社からすれば、とんでもない話である。癒着している通産省でも、発送電分離の実
 現はむずかしい。
  そこで、OECDか日本に勧告するという作戦で、そうなるように勣いた。正式に報店書
 を出すまでには時間がかかるし、発表後では新聞でもベタ記事で、結局は闇に葬られること
 も考えられる。一方、検討段階での予想記参なら扱いも大きくなるし、国内の準備も整って
 いないから、ショック療法としては効果的だ。

  私は旧知の読売新聞の記者に連絡を取って、記事にしてもらった。正月はニュースがない。
  記事はたしか、1月4日の朝刊に、「OECDが規制改革指針電力の発電と送電は分離」
 と大きく扱った。この日は土曜日で、6日が御用始め。年頭の記者会見で、佐藤信二通産大
 臣が前向きなニュアンスで答えたものだから、大騒ぎになった。
  正月だったので、役人へと佐藤大臣のコミュニケーションかうまくいっていなかったのか
 もしれない。8日の日本経済新聞には、「通産相が検討指示、発電と送電を別会社に」とい
 う見出しが躍った。私は「動いたな」と手ごたえを感じた.

  通産省ではすぐさま犯人探しが始まり、OECDでこんなことを言い出す奴は誰だとなっ
 た。全員が思い当たるのはただ一人。「古賀しかいない」となり、「あいつをすぐ呼び戻せ」
 となった。
 「資源エルギー庁のOOさんが本気で古賀さんを帰国させて即クビにする、といってます。
 古賀さん気をつけてください」と、通産省の改革派の課長補佐から電話かあった。幸か不幸
 か、それでも私はそのまましばらくパリにいることになったのだが。

 当時の通産省幹部が退官した後教えてくれたことには、「いやあ、あのときはたいへんだっ
 た。省内は大騒ぎだし、電力会社は、騒ぎまくるわ………でも、いまから考えれば良かった
 んだよ。あれから本格的に電力の規制改吊の議論が動き出したんだから」とのこと。
  このことがあったせいか、私はその後、一度も資源エネルギー庁や原子力安全・保安院に
 勤 務することはなかった。
  三年弱のパリ勤務を終えて、私は帰国し、取引信用課長というポストに就く。

                                
                                   この項つづく   

 

 

    ● 今夜の一曲

 


          まちわびて 重ねた肌に 雨ふるを アクセルふみつ 聴くブレンダ・リー      

 

ロードスターの話。やっとオーディオ&ナビの修理が終わりった帰りの道。レザーハンドルを握
りアクセルを噴かせ、ナビの確認しオーディオの切り替えの感触など確認。ブレンダ・リーの曲
がかかっていたので音量を上げボウズの音響を確認すると、音楽の調べとともに桜橋のサンケイ
ホール(今はない)のブレンダ・リーのコンサートの思い出が頭を過ぎる。歌を詠みたくなるほ
ど車とわたしとわたしの身体は一体になり疾走する。よく戻ってきてくれたね ・・・・・・。
   
イタリアの作曲家、シンガーソングライターで本名ジュゼッペ・ドナッジオのピノ・ドナッジオ
が、1965年のサンレモ音楽祭に出場した際、みずから作曲した「この胸のときめきを」"を歌っ
て入賞を果たし,イタリア国内で大ヒットを記録。1966年にはこの曲をダスティ・スプリングフ
ィールドが“You Don't Have to Say You Love Me”として英語でカバーし、イタリアン・ポップス
の範疇に留まらない世界的な大ヒットを果たす。この曲は後にエルヴィス・プレスリーやブレン
ダ・リーなどの有名ミュージシャンによりカバーされる。


    When I said “I needed you”,
   you said you would always stay.
   It wasn’t me who changed, but you,
   and now you’ve gone away.

   Don’t you see that now you’ve gone,
   and I’m left here on my own,
   then I have to follow you, and beg you to come home. 

   You don’t have to say you love me,just be close at hand.
   You don’t have to stay forever, I will understand.
   Believe me, believe me,
   I can’t help but love you,
   but believe me, I’ll never tie you down. 

   Left alone with just a memory,
   life seems dead and so unreal,
   all that’s left is loneliness,
   there is nothing left to feel. 

   You don’t have to say you love me,just be close at hand.
   You don’t have to stay forever, I will understand.
   Believe me, believe me!

   You don’t have to say you love me,just be close at hand.
   You don’t have to stay forever, I will understand.
   Believe me, believe me, believe me!


                             " You Don't Have to Say You Love Me  ”
                                               Music & Word    Pino Donaggio

 

 

 

 

 

今夜も技術がてんこ盛り。

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   能ある鷹は爪を隠す  /  ことわざ 

 

 

● 美濠浄化システム考  

国宝彦根城の濠の水質が悪いため悪臭がすると彼女が洩らした(「春雨前の花日和」/『ごくとう
ごくらく
』 2015.04.06)、ことが気になり、残件扱いにしていたが。そのことが引っかかり、暫く
のテーマを考えた。まず、その手がかりとして、国内特許技術を中心としてネット検索を試み、以
下の「特開2011-011098| 水質浄化装置」を参考にしてみた。



【符号の説明】

1 フロート 2 浮上槽  3 循環ポンプ  4 吸水管  4b 吸水口  5 スクリーン 6 送水
管  7 球状物体  8 静圧減少流域  9 マイクロバブル発生装置  10 大気自吸管 11 空
気室 12 流量調整弁 13 循環管  14 ドラフトチューブ  15 ブロワー 16 散気装置
17 水質浄化装置 18 昇降装置 19 ウェイト 20 アンカー  30 固液分離膜モジュール

このシステムは、閉鎖性水域のダム貯水池、湖沼、海域等の水面下に流入口が沈下している吸水管
を循環ポンプの吸水口に連通接続し、アオコ対策や貧酸素水塊対策として、マイクロバブル発生装
置と散気装置内装ドラフトチューブによるエアーリフト効果を併用した上、高水深化処理槽での有
機性廃水生物処理における曝気処理、固液膜分離処理や難分解性廃水のオゾン分解処理も同様に行
えるようにすることで、従来の閉鎖性水域のアオコ対策や、有機性廃水の好気性生物処理反応槽を
高水深化する廃水処理等で、散気手段を深層部に配設していたが、散気手段を浅層部に配設して深
層部の水と表層水を直接に混合し、省エネルギーが可能な循環流をつくることができるというブル
ーアクア・インダストリー株式会社の技術提案である。 

これをもとに、以下の5つの基本設計骨子として考案。

1.意匠性を重視
2.自律移動浮体型
3.太陽発電+蓄電池型動力源
4.マイクロナノバブル+紫外線型水質浄化方式
5.GPS内蔵3次元ソナー探査ナビ


1.意匠性を重視

観光的側面を考慮し、上図の「17 水質浄化装置」は360度の観光客の視線を考慮する。その
ため上図のような六角堂(多角数には選択性を残す)にすべてを納める。「1 フロート」は水面
下に納める。17の装置内の温度が40℃以下に維持できるように配慮する。六角堂型の屋根にソ
ーラーパネルを配置するが、曲線を必要な場合は可撓性薄膜ソーラーを使用し、できる限り高変換
効率タイプを採用する。

2.自律移動浮体型

浮体は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの軽量タイプで製作し、沈降レベル調節は外付
けウエイトや浮体空洞部に注排水方式とし、移動推進は3つのスクリューで移動させ、制御は水質
検出判定信号で作動させ、「GPS内蔵3次元ソナー探査ナビ」で制御するか遠隔操作で行う。ま
た、定点水質浄化中、浮体が許容内の風圧で流されることを防止するためにGPSモニタを利用し
移動推進スクリューで自動駆動制御する。なお、台風や強風などの許容外の風圧に対しては非常用
アンカー(一対)を参考図のように、自動あるいは遠隔操作で、濠底部に降下させ固定する。



3.太陽発電+蓄電池型動力源

1.でも触れているが、高性能×軽量×高ロバストの電源システムとするが、「特開2015-076528
昇降圧コンバータを多段接続した太陽電池部分影補償装置
」で提案されている技術を応用し、安定
した出力が得られるインバーターを採用する。また、蓄電はリチウムイオン系二次電池や金属-空
気系二次電池などが考えられる。また、コンバーター(コンディショナー)も配置する。照明は発
光ダイオード、通信機器などが配備される。



4.マイクロナノバブル+紫外線型水質浄化方式

水質浄化装置は、(1)マイクロナノバブルと深紫外(紫外)船照射の2つの組み合わせでおこな
う。従って、前述した装置図の部分で高度処理(ブロアー)や固液分子装置は含まれない。(1)
については「特開2013-220126 紫外線殺菌装置」の提案技術に装置内壁に酸化チタンなどの光触
媒層を塗布あるいは光触媒で表面を被覆した棒針状形状を新たに加え備え、そこへ、マイクロナノ
バブルの散乱体含有被処理液を注入し、有機物質や窒素酸化物などを分解する。この気泡発生装置
には、「特開2014-217803| 微細気泡発生装置とその発生方法」の提案技術――吸い込んだ液体を
所定の圧力に加圧・吐出ポンプであって、液体の吸込口の近傍に気体(大気あるいはオゾンガス)
の供給口を設け、羽根車の回転により、液体内に気体の気泡が混合された気液混合流体7を吐出す
気液混合ポンプと、気液混合流体が噴射される噴射ノズルを有する直方体状の箱部材の、内部に3
次元の扁平空間を形成し、気液混合流体が噴射ノズルから扁平空間に噴射されるとき気泡の発生、
圧壊を行うキャビテーションを起こすとともに、気液混合流体が噴射された噴流体が揺れながら扁
平空間内で渦を巻いて流れる渦流とを発生し、気泡の圧壊によるエネルギーと渦流によるせん断力
とで、気泡を微細気泡に微細化する噴流式微細気泡発生部の構成――を応用する。なお、オゾンは
この設計には含めていない。また、(2)の紫外線照射装置には、深紫外発光ダイオードの選択を
上策とする。

また、(1)の吸い込みパイプは可撓性、蛇腹方式で水中深度にあわせ自動的に、あるいは遠隔操
作で鉛直方向に外延及び収縮でき、内壁の抵抗が小さく高気密な材料・構造を採用する。この場合、
要注意すべきは、前出の参考図のように内部抵抗が変化するため、ポンプモータの回転のインバー
タで自動制御できるようにしておくことで発生するマイクロナノバブルのサイズを一定に保つ。さ
らに、水質のモニタリングは、溶存酸素センサによる制御を基本とする。このセンサ出力の時系列
変化をモニタリングし、制御値を上回った時、積算循環量の積和で浄化度を自動演算値を参照し上、
次に述べる5.の「探索ナビ」を利用しスクリューを駆動し浮体を自動(もしくは遠隔操作)的に
移動させる。



5.GPS内蔵3次元ソナー探査ナビ

このシステムは、(1)マイクロナノバブル発生装置の吸い込み口位置の決定に、(2)あるいは、浮体の移
動に使用するもので、システム的にはすでに既存の市販品で応用できるものである。

以上、今回、優れたデザイン性、ダウンスペーシング性、ハイテク性と持続可能性を兼ね備え、肝
であるマイクロナノバブル発生装置+深紫外発光ダイオードと「浮体型閉鎖水域浄化システム」を
構想してみた。これを実現するには試作装置で性能検証試験などを経た上で設計する必要があるが、
1年あたり、ざっくり、3名配置し、3千万円程度の開発費とβ機製作にこじつけるために、最短
2年かかるのではないかと考えている。言い換えると「水質浄化ロボット」開発の一つと考えるわ
かりいいだろう。


【今夜も技術がてんこ盛り】

 ● 東南アジア最長のトンネル「パハン・セランゴール導水トンネル」完成

19日、清水建設は、西松建設、マレーシアのUEMB社・IJM社との共同企業体で施工していた
東南アジア最長のトンネル「パハン・セランゴール導水トンネル」が完成したと発表。マレーシア
のパハン州とセランゴール州を結ぶ総延長44・6キロメートル、直径5・2メートルのトンネル
で世界で11番目の長さ。供用開始後は、日量189万立方メートルの生活・工業用水が、マレー
シアのクアラルンプールとセランゴール州に供給される。同工事は日本政府の円借款事業。清水建
設JVはマレーシア政府から2009年4月に受注し、同6月に着工。トンネルを8工区に分け、3工
区はトンネル掘削機、4工区は発破工法、1工区は間削工法により工事。工事日数は1902日。
延べ労働時間が1102万時間で重大災害発生件数は0件を達成。トンネル土被り世界ランキング
第8位でもある。"能ある鷹は爪を隠す"やね。^^;。

 

 

● 洋上風力116基受注-総出力40万キロワット、過去最大規模

同日、三菱重工業は、ドイツのエネルギー大手エーオンから、洋上風力発電設備(写真)116基を受注した
と発表。受注額は数百億円規模。設備の据え付けのほか、保守サービスの契約も締結。設備の総出力は
40万キロワットに達する。実務はデンマークのヴェスタスとの合弁企業MHIヴェスタス・オフショア・ウイン
ドが担う。エーオンが英国に設置するランピオン洋上風力発電プロジェクト向け。2018年に試運転を完了
する。同設備はイングランド南東部サセックス州沿岸から、13キロメートル沖合に整備される。MHIヴェス
タスは出力3450キロワットの最新鋭設備を供給。同社最大規模の案件となる。英国の29万世帯に必要
な電力を供給し、年間約60万トンの二酸化炭素(CO2)削減を見込む。同案件は英国政府主導で進めら
れる大規模洋上風力発電プロジェクト「ラウンド3」の最初の取り組みの一つだという。

● 世界初 ワイヤレスで電力伝送する『ワイヤレスインホイールモータ』走行に成功

18日、東京大学大学院新領域創成科学研究科の藤本准教授らの研究グループは、東洋電機製造株式
会社、日本精工株式会社との共同研究において、世界で初めて、ワイヤレス電力伝送を用いたイン
ホイールモータを開発し、実際にそのインホイールモータを電気自動車に搭載し、走行に成功。世
界初となるこの技術は、磁界共振結合方式を用いて10センチメートル離れたコイルとコイ間の電
力伝送に成功した他、ワイヤレス通信を用いることで車体と車輪間の完全なワイヤレス化を実現。

ホイール内部に駆動源を配置するインホイールモータは駆動力をタイヤに直接伝達できるため最も
望ましい駆動形態です。このモータを搭載したEVは4輪の独立した駆動力制御により駆動力をタ
イヤに直接伝達できるため、ドライブシャフトによる機械的損失がなく、車両重量が削減できるほ
か、各輪の個別制御が可能になります。これにより、タイヤの横滑りやタイヤのスリップを防止し
安全性を向上させたり、各輪へ最適な駆動力を配分したりして航続距離を延長するなど様々なメリ
ットを享受できるが、従来のインホイールモータは車体側からワイヤにより有線で電力が供給され
これをワイヤレス化することで従来懸念されたインホイールモータとインバータ間との断線がなく
なり、安全性および信頼性が向上し、インホイールモータのさらなる普及の可能性が高まる。

 

● 絶好調!陸上養殖「妙高ゆきエビ」

 

●  水上太陽光フロートシステムを開発  三井住友建設株式会社 

 

 

● つかんだ瞬間に重さ測定するロボットハンド計量システム 株式会社イシダ

いや今夜も、ニュー・テクニックが満載で、寝られそうもありまへんね?!^^;。 

 

 

 

 

 

大阪都構想とポツダム宣言

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   ポツダム宣言は、つまびらかに読んではいないが、日本は
           ポツダム宣言を受け入れ、戦争が終結した。

                                        安部首相 


  

【日本の政治史論 13:政体と中枢】      

「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で、触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。  

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)

                           古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』 

   目 次 

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策  

  第7章 役人―その困った生態 

                      なぜ犯罪を放置しておくのか

  私が配属さねた取引信用課はクレジットカードやリースに関する規制を扱う部署である。
 当時としてはまだ珍しかった債権の流動化などという先端的な余.融商品の導入や振興など
 も行っていた。
  サラ金は金融庁の所管だが、クレジットカード会社はカードローンなどの消費者金融もや
 っているので、そちらの分野も関係していた。サラ金とクレジソトカードは、規制のうえで
 は別のジャンルになっていたか、払にはなぜわざわざ分けているのか、さっぱり理解できな
 かった。




  当時の仕事でおもしろかったのは、クレジットカード偽造対策である。その頃もすでにク
 レジットカードの偽造が横行していた。クレジットカードの情報を磁気テープから読み取り、
 偽造カードに移して正規のカードを装い使う、クレジットカード会社はその対策に必死だっ
 た。
  たとえば、クレジットカード会社のセキュリティーセンターに行くと、時折、ピポという
 音が聞こえる。カード加盟店に置かれている端末のリーダーから送られている情報を分析し、
 偽造カードの疑いかある買い物に関しては瞬時に警告音が鴫る仕組みになっていた。
  警告七日が鳴るのは粒として次のようなケースだ。まず、換金性の高い商品の』兄て続け
 の購入。当時ならテレビやピデオデッキといった高額の家電製品は換金しやすい。また、ビ
 ール券や商品券、新幹線の回数券なども金券ショップで売れる。

  家電製品を伺台も、別々の電器店で間をおかず買うことはまずない。回数券などの購入に
 ついても、常識的に見て、あまりにも大垣だった場合はチェックされる。
  あるいは不自然な買い物。たとえば、東京都の杉並区在住のサラリーマンは、過去の記録
 では、家の周りと新宿近辺で買い物をすることが多い。ところが、休日でもないのに、遠く
 離れた千葉で電器製品を買ったという場合なども警告音が鳴る。
  警告音があると、センターでは販売店への承認の信号を出すのをやめ、店に電話をかけて、
 性別や年齢などかカードの所有者と合致しているか、確かめてもらう。その結果、怪しいと
 なると、店員か利用者に事情を聞く。偽造カードの場合、だいたいその前の時点で、相手は
 逃げるとのことだった。

  クレジットカード会社は、このようなソフトを開発し、涙ぐましい努力を続けて偽造カー
 ドの使用防止に努めているが、しょせんイタチごっこだ。クレジットカード会社が新たな対
 策を講じれば、偽造グループはそれを破るシステムを考案する。どこまで行っても完璧な対
 策は無理だった。

  そうしたなかで、VISA、アメリカン・エキスプレス、マスターといった大手か要望し
 ていたのは、偽造カードを取り締まるための法改正だった。
  当時の刑法では、クレジットカードの偽造に対する規制は非常に緩かった。クレジットカ
 ードの偽造は、法的には「有印私文書偽造」という。偽造のなかでもっとも手厚く禁止措置
 が決められているのは通貨の偽造で、行使の目的で偽造紙幣を作るための紙やインクを用意
 しただけで罪に問われる。行使の目的さえあれば、譲り渡しても罪である。偽造罪で捕まれ
 ば、最大、無期懲役までの重い刑罰が科される。

  ところが、これだけ重罪扱いされているのに、たとえ偽造だと分かっていても、他人から
 知らずにもらったものを所有しているだけでは罪にはならない。なぜなら、その後、所有者
 が警察に届け出るかもしれないし、知らないで偽造通貨をもらってしまっただけで罪に問う
 のは酷であるからだ。

  次に重いのは株券などの有価証券の偽造で、有印私文書はさらに重要度が低いという扱い
 である。その偽造は、たとえ使うつもりで所有していても、罪にはならなかった。
  クレジットカード偽造に対する罰則が緩かったのは、情報窃盗に関する法整備が進んでい
 なかったせいもある。正規のカードからスキミングして偽造カードを作るのは、情報の窃盗
 である。しかし、当時はまだ情報の窃盗に関する規定がなかった。

 
                   お上の発想は「クレジットカードごとき」

  クレジットカード先進国の欧米では、ドイツを除いて法整備が進んでおり、偽造カードを
 持っているだけでも罪になる。ドイツも私がいた間に法改正をした。日本だけが遅れている
 わけで、クレジットカード会社の大手三社の副社長クラスが揃ってやってきて、「なんとか
 してくれ」と陳情する。私もおかしいと思ったので、「分かりました。やりましょう」と答
 えた。

  ところが、部下に聞くと、「ぜんぜんだめですよ。絶対できません」という。理由を尋ね
 てみると、こうだった。お上の発想は、「クレジットカードごとき」である。通貨でも持っ
 ているだけでは罪に聞えないのに、クレジットカードごときでは、絶対に法務省が認めない
 というのだ。情報窃盗罪に関しても、一向に議論が進んでいないとのことである。
 「法務省の法制審議会、刑法部会でもう20年ぐらい議諭しているんですが、表現の自由も
 あって、いまだに結論が出ていない。こんな案件を持っていっても、法務省はまったく相手
 にしてくれませんよ。絶対無理です」

  これまても私がやろうといって部下が止めるケースはよくあった。世間では若い人が新た
 な試みを提案して、しか渋るという例が多いか、私の場合は逆で、私か提案して部下ができ
 ないから、やめたほうがいいと止める場合が大半だった。
  私は、上司にはっきり意見をいう部下か好きだ。意見が違っても、議論すれば、お互いの
 理解が深まるし、後で反対する大たちを説得するためのヒントも見つかる。自ずと十分な準
 備かできるし、難しい課題でもやり遂げることかできる、

  そのときも同じだった。部下が反対したから「そうか、やっぱり無理か」と、いったんほ
 納得しかかった。しかし、後で考えてみて、いやモれでもやるべきだ、こうしたらできるん
 じやないか、と思い、再び部下にぶつけて説得を試みた。これを何度もやると、部下もその
 気になってきた。その後は、みんなでおもしろかつて仕事を進めるようになり、実現すると
 いうパターンだった。

  私は人の管理か得意だとは思っていないが、チームの什嘔をおもしろくすることには長け
 ていたような気がする。それと、払は上と喧嘩するのは得意だが、部Fと喧嘩するのは犬嫌
 いだ。ときには上から押しつけて無理に何かをやらせるというのは、優秀なL司の条件なの
 かもしれないが、私にはどうしてもそれができない. 
  このときもそうだった..クレ、ジットカードの偽造は誰が見ても犯罪であろ。怒いこと
 をやっているのに捕まらないのはおかしい。さりとて、部下のいうことも一つの理屈だし、
 それを乗り越えないで無理に始めても、結局、途中で挫折するだろう。部下と徹底的に議論
 し、半年かけて理屈を整理した。その結果、できる叫能代はゼロではないとなったので、法
 務省に案件を持っていった。

  だが、折想以Lに壁は厚かった。法務省の担当者は、「古賀さん、刑法の話ですよ。軽々
 しく持ってきてもらっても困ります」と相手にしてくれない。学者の先生方の見解も、「む
 ずかしいなあ。てきたとしても、まあ、早くて五年かかりますよ」。私が、「でも、どの国
 もやっているんですよ。日本だけがこんな犯罪を放置しておくと、世腎の笑い物になります
 よ。どう考えてもおかしいじやないですか」と反論しても、「むずかしいな」というばかり
 だった。

                    利権をかぎつけた警察庁の狙いを逆手に

  だが、私は納得できなかった。当時の刑法では、たとえば、こんなおかしな事態か現実に
 こり得る 偽造カードの製造の多くは香港をはじめとする中国大陸で行われていた。クレジ
 ットカードは同じVISAのカードでも発行元ごとにデザィンが違う。中国の偽造業者は、
 様々なデザインのカードを大疑生産し、それを詐欺窃盗グループが買う。こうしてfに入れ
 たカードを、ビジネスマンを装った人がアタヅシュケースに何千枚も入れて剛を歩いている
 ときに、転んでアタッシュケースが聞き、辺りに大量のカードが散乱したとしよう。ちょう
 どそのとき、警官が傍らにいても、彼を楠まえることはてきないばかりか、男は「.哺に恰
 ってくださいよ」と警官に頼めるのだ。

  警官か罪を犯すであろう人の手伝いをする――これはあってはならない話だ。
  法務省が相手にしてくれないのなら、世論に訴え、政治を動かすしかないと思った。そこ
 で、マスコミを使ったキャンペーンを開始した。テレビの番組にカード偽造のひどい実態を
 話し、取材してもらった。

  Max Shachtman  1904–1971


ここで、「法務省が相手にしてくれないのなら、世論に訴え、政治を動かすしかないと思った」
と重要なことを語っている。一介の行政官(国家公務員)がその地位を利用して先導するという
(1)手法と(2)その時宜である。著者の弁護をするつもりがないが、これは他の省庁が行っ
ている「霞が関権力」の情報操作という常套手段。こう言った強者(組織団体)の行動行使は、
"スターリン主義"、言い換えれば、国家的集団主義を経験した青春期の経験から「慎むべき」だ
と肝に銘じているが・・・・・・。さて、先を急ごう。



  記者に[なぜ、こんなに甚大な被害かおるのに、通産省は偽造カードを規制しないのか」
 と責めてもらう。それに私が答える。
 「日本では法律かないので、政府としてはいかんともしかたいんですよねえ……」
  典型的なマッチポンプだが、国民には実態を分かってもらえた。
  一方で犬匝への根回しも進めて、先に挙げたような分かりやすい現実に起こり得るケース
 について話もしたし、大臣の前でスキミングの手口も実演した。

  当時、居酒屋では、夜間、裏口などに鍵をかけずに開けっ放しにしているところが多かっ
 た。おしぼりの業者が、夜間、交換に来るし、開店前には食品業者か材料を届けに来るから
 だ。盗まれて困るようなものは置いていないから、無用心でも平気だ。と。法烏省の担当者
 は、正義感に・溢れている。『そんなのは許せない」といい、本気になった。

  法務省のキャリア組には、自分たちの天下り先を増やそうなどというよこしまな考えはな
 い。法務省で刑法の改Eなどを担当するのは、司法試験に合格した検事が中心で、法務省を
 退官しても弁護士になる道かあるので、天下り先を作る必要などないからだ。
  自立できる道があるかどうかで、行いは変わってくる。普通の役所のキャリアが省益のた
 めに働くのは、結局、最後は役所の世話にならないと生きていけないからだ。

  その点、法務省の検事たちは先を心配することかないので、正義感のほうが先に立つ。警
 察の刊咋狙いをテコに、法務省を動かそうというのが仏の作戦だった。この作戦がまんまと
 功を奏し物事が動きそうなのを見極めて、東大の若手の先生にお願いして、法案の準備に取
 りかかった。

                           官僚の「絶滅危惧種」とは

  しかし、法制審議会をすんなり迎せるかどうか自信はなかった。審議会の議論の進行を阻
 害していたのは、法律家としての美学である。商法には商法の美学、刑法には刑法の美学と
 いう具合に、法学者はそれぞれの法律に美学を求める。
  たとえば、本件では次のような議論か慎重に展開されることは確実だ。この法案をクレジ
 ットカードに適用するとして、では、プリペイドカードはどうか。法的に見て、これも対象
 になる。しかし、商店が出すスタンプカードには適用できるのか・・・・・・」有価証券との関係
 の整理から始まって、附の中のありとあらゆるカードにまで議論が及ぶ。これでは10年、
 20年経っても結論が出ない。

  そこで、クレジットカード大手三社に協力してもらって、アメリカの本社からあちらの規
 制に関する資料をすべて取り寄せてもらった。と同時にアメリカ視察を提案し、法務省刑事
 局の参事官に払の誄の課長補佐をつけて送り出した。
  すると、なんとアメリカ出張の最中、iの参心&Prime;官が自分のカードをスキミングされると
 いう、なんともタイミングのいい嘔件が起こった。帰国した参參官がいった。
 「古賀さん。これは、やっぱりやらなくちやあいけないね・・・・・・」
  もちろん、それで話が決まったわけではないが、法務省は、やる気になると速かった。最
 速でも5年かかるといわれていたものが、たった一年で法改正できたのだ。

  しかも、中身も徹底していた。刑法のなかに、新たに一章を立てる。殺人罪などと同じ扱
 いである。あらゆるケースを想定して刑罰が決められていた。できあがつた法案は、ほぼ完
 璧。偽造カードを所有するのも、スキミングするのも、偽造の準備をするのも、犯罪となっ
 た。ここまでできるのか、と感心したほどだった。

  最近、検察や法務省の評判がすこぶる悪い。しかし、私が知る検雅たちは正義感を持ち、
 圧しいことを実現するためには身を粉にして働いてくれる、頼りになる存在だった。
  その後、産業技術環境局技術振興課長、産業再生機構執行役μ、経済産業政策局経済産業
 政策課長、中小企宴庁経営支援部長などを歴任してきた。
  ここまでに書いたこと以外にも、上とぶつかったことは多々ある、決して公務員制度改革
 がその始まりではない、
  通産省に入省してから、いつの間にか.元年の歳月が過ぎていた。同期の大半はすでに退
 官しているのに、われながらよくこれまで追放されなかったなあ、と不思議に思う。

  しかし考えてみると、上とぶつかったときも、必ず省内に良識のある人たちの勢力かあり、
 私をかばってくれていたように思う。そうでなければ、とっくに私は経産省からいなくなっ
 ていただろう、
  ただ、寂しいのは、現在は、幹部に良識派といえる人がほとんどいなくなってしまったこ
 とだ。らなみに私は、官僚の良識派を「絶滅危惧種」と呼んでいる。  


  第8章 官僚の政策が壊す日本

                                   福島原発事故で露呈した官僚の欠点

  31年の官僚人生を通して、時折感じたのが、霞が関の秀才たちの悲しい習性だった。「
 利口だ「秀才だ」と人から褒められると、われわれの脳はアドレナリンを分泌する。アドレ
 ナリンは快楽物質だから、気持ちがいい。また褒められたいと思い、一生懸命がんばる。そ
 のかいあって良い成績を取れると、また両親から『なんて頭のいい子なんだ」と褒められ、
 アドレナリンが出る。

  キャリア官僚の多くは、小学生の頃から「まあ、今日も100点なの、凄いわねえ」と母
 親から褒められるのに始まって、地域で一番の進学校に入ってトップの成績だ、東大に合格
 した神童だ、国家公務員試験に通った超エリートだと、事あるごとに賛美される人生を送っ
 てきた。アドレナリンは出っぱなしで、次もまた褒められたいと、勉強に全力を投入してき
 た人が大半だ。

  私は生来、怠惰で、勉強でも仕事でも少し気を抜くところがあったので、そうはならなか
 ったが、秀才は性格が歪みやすい。入れ込み迦ぎると、視野が狭くなる。これが秀才の陥り
 やすい罠だ。
  秀才は、ただでさえ視野が狭いのに、世間から隔絶された霞が関という村社会にキャリア
 官僚として棲みつくと、さらにどんどん視野が射まっていく。 

  それでもまだ、若いうちは多少なりとも周りも腿えるが、時が経つにつれ、霞が関村しか
 見えなくなり、頭は固くなる。
  しかし秀才の悲しい性で、常に褒められていたい。裏返していえば、秀才は他人からの非
 難に弱い。内心、おかしいなと思っていても、上司から褒められたい、叱られたくないと思
 い従う。
  そのうちに、たとえ世間から見ると「悪」であっても、気にならなくなる。
  官僚が巴間の非難の目に晒されているとはいっても、官僚の行動は常に「匿名」だ。自分
 が非難に週うわけではない。ト司は褒めてくれるし、自分の周囲にいる人たちもキャリア官
 僚だというと、[へえ、超エリートなんですね」といってくれる、

  このように褒められ続けていると、人は増長するものだ。自岫過剰になり、実寸大の自分
 を見失う。キャリア官僚がみな優秀なわけではない。客観的に見れば、一般の会社と同じよ
 うに、優秀な人もいれば、能力の足りない人もいる、
  ぬるま湯の霞が関だからこそ置いてもらえる、民間会社では使いものにならないだろうと
 思われるキャリア官僚も少なくない。だが、本人には自覚かないL、また霞が関にいれば、
 気づく機会もほとんどない。

  褒められたいという秀才には他にも欠点がある。それはリスクを取れないということだ。
 通常、危ないことをして失敗したら、怒られるか批判される。子供の頃から怒られたことの
 ない秀才は、失敗を極端に恐れるのだ。だから、みんなで渡れば怖くない「前例踏襲方式」
 に陥る。
  新しいことには挑戦できないし、イノベーションなど夢のまた夢だ。
  その結果、責任も取れない秀才は何事も責任名を不明確にしておく。何時間も会議をして
 責任をうやむやにしなから、なんとかコンセンサスを作ってみんなの貞任ということにしよ
 うとする。彼らは、少数派か反対を続けて、白黒をはっきりさせないといけない状況を極端
 に嫌がる。 

  東竃の福島原発事故への対応でも、そうした欠点が露呈したのではないか。緊急事態で情
 報が限られるなかで、咀裂な決断が求められる-ベント、海水注入、米軍への協力依頼。「
 褒められたい秀才症候群」の秀才集団では、何一つ決められなかっただろう。総理に強く進
 言した官僚はいなかったのではないか。


                       官僚の辞書に「過ち」の文字はない

  官僚の特性の一つに「過ちを認めない」というのかある。秀才の特性といってもいい。常
 に褒められていた秀才は、怒られることと批判されることを極端に嫌う。だから、批判のも
 ととなる「過ち」は、絶対に認めたくないのだ。
  自分たちは優秀だから間違えるはずはないという瑞り。仮にそれに気づいたとしても、な
 んとか糊塗するだけの知恵を而している彼らは、官僚特有の「レトリック」を駆使して決し
 て過ちを認めない。
 
  これが官僚の「無謬性神話」である。

  福島原発の事故でも、事故を「事象」と言い続け、想定外の津波のせいにしようとしたり、
 『すべて東電か悪い」といった説明に終始した。今後もなぜ津波の想定を5・7メートルと
 したのか、なぜ全電源慨能停止を想定しなかったのかについて、さまざまな言い訳がなされ
 るであろう。
  とりわけ、このときに多用されたこの「想定外」という言葉は、彼らにとっては実に便利
 な魔法の、言葉だ。JCOの臨界事故も、柏崎刈羽原発を緊急停止させた揺れも、やはり想
 定外だった。

  しかし、それは単に自分たちが想定していなかったということに過ぎない・・・・・・。
  津波の高さの想定か廿すぎることはすでに知られており、特に、電源が津波にやられたら
 どうなるかという議論まで行われていたのだ。現に東海村では、この議論を受けて、電源を
 保護するための補強工事を実施していたという。
  つまり客観的には想定外でもなんでもなく、単に自分たちにとっての想定外だつただけな
 のだ。こうした驕り、リスク回避、無責任、無謬性神話は、「褒められたい秀才症候群」「
 「『私の』想定外症候群」の典型的な症状だ。

                                                        の項つづく

 

● ポスト大阪都構想論争 Ⅰ 


                      『大阪の将来を潰した反対派』

                                             しが彦根新聞 押谷盛利

  後世の歴史がどう審判するか、世紀の大事業ともいうべき「大阪都構想」がタッチの差で
 葬られた。
  大阪市を廃止して、大阪都にし、これまでの府・市の二重行政の無駄をなくし、地方行政
 の徹底的見直しと改革により、大阪を世界の大阪にしようとする偉大にして勇壮なる構想で
 ある。
  改革は2歩3歩.時間で言えば10年、20年後を見越した哲学を伴う。
  今回の住民投票の結果は全くの5分5分の結果で、維新対全政党・連合軍の戦という陣取
 り合戦を占えば、維新は相撲に勝って勝負に負けたというべきであ 今回の大阪都への賛成、
 反対の大激闘は結果において大阪の将来の夢を壊してしまった。

  改革はいつの世にも先々を見通す眼力と正常な判断友鬼神も避けるという旺盛な実行力が
 伴わねばならぬ。大阪市民は本質的に改革派だったそれは橋下徹という百年に一人ともいう
 べき優れた指導者の改革路線を信じ敬服していたからである。橋下維新が画いた大阪都は、
 日没する大阪ではなく、座以と比肩する日本の第2首都構想によるもので、単なる大阪経済
 の地盤沈下対策ではない。

  いま、日本の少子高齢化対策が喫緊事とされるが、それには人口の東京一極集中を打破せ
 ねばならぬ。首都圏巫ふの不安は震災後90年を迎えた関東大地震の地下マグマである。万
 一、東京が関東大震災級に見舞われれば首都機能は消滅しかねない。国内の地震予測は決し
 て楽観を許さないが、第2の首都・大阪都が国難と国民の不安を沈める行政府として機能す

  ることが期待される。地勢的には東の東京に比べ名古屋の中部畷関西以西の四国九州中国地
 方圏の中心都市となり、その求心力は大となる。当然のことながら世界の眼は新しい大阪都
 に着目し貿易、観光面でアジアの玄関となる。外廊が世界都市の風格を示せば、内部の重工
 、軽工業の躍進はもちろん、値喬の振興と発展は加速し、教育、文化、医療、福祉面面で、
 東京に欠けている。近代文化都市―現する。その10年、20年後を先読みした大改革だが、大
 阪の維新以外の政党は大阪占民を裏切ったばかりか、国家将来に水を掛けた。

  維新の捨て身の改革に立ちはだかったのは、自民、公明、共産、民主、社民など与野党混
 成の井の中の蛙集団であった。
  なぜ、彼らは「改革」に反対するのか。それは現状の生温い湯に浸かって自分たちの地斌
 利権にあぐらをかきたいからである。彼らには「あしたの大阪」がなく、「あしたの自分」
 が存在するだけである。なぜ、改革に反対するのか、こわについては次回に言及する。

                                           同上新聞「時評」 2015.05.22


彼女が、大阪都構想が否決に批判しているよと言い出したので  「しが彦根新聞」の時評欄を眼
を通した。保守的論調の地元紙であるが、脱原発論を展開したりしている開明的な保守派の社主。
「浪速の夢 大阪都構想劇に幕」(『この胸のときめきを。』2015.05.20)に掲載した通り、こ
の時評には共感する。

● ポツダム宣言と戦後70年

もう1つ、彼女が13日の国会討論会でおかしなことになっていると呟いたので調べてみたのが
「ポツダム宣言は、つまびらかに読んではいないが、日本はポツダム宣言を受け入れ、戦争が終
結した。」との発言。何だこの程度のことならわた(たち)と変わらないレベルの話で、侵略戦
争を認めようしない政治委員グループ(タカ派)?にしては額面通り受け取れば、不勉強なこと
ではないかとの感想とともに、何ともぼやけた歴史観で、戦前・戦中の戦争で<ウルトラ・ナショ
ナリズム>化していく思想的遺伝性のようなものを感じた。

  ● 今夜の一品

他品種サイズ対応できる鉛筆削り。発想が面白いね!

 

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