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一本足打法の風力発電機

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【羽根のない風力発電登場】 

「羽根のない風力発電機」に風が当たると、空気の流れによる渦(ヴォーテックス)の力で上の
ほうが大きく揺れる。内部の下に組み込まれた反発する2枚の磁石により、揺れにより生じる上
下の動きで電力を発生させる。通常の発電機と同様に、電磁誘導の作用で機械エネルギーを電気
エネルギーへ変換する――そんな風力発電機が2016年に登場するというということで話題と
なっている。これはスペインのベンチャー企業「Vortex Bladeless(ヴォーテックス・ブレードレ
ス)」社が開発中の風力発電機で羽根(ブレード)のない風力発電機で、見た目は野球のバット
に似ている)。外側の素材はカーボンファイバーとグラスファイバーを合成したもの。




この原理については、「スマートキャンティに振動発電を組み込む」(『ドライマウスからスマ
ートキャンティ』2015.02.06)で紹介しているので(下図をクリック)それを参考願いたい。

 

【オールバイオマスシステム完結論 13】  


現在は高さが6メートルのプロトタイプをフィールドテスト中で、2016年に発売予定の最初の製
品は2倍の12メートルになる。発電能力は4キロワットと小さく、家庭や小規模の会社で利用
することを想定。さらに発電事業用の1メガワット(=千キロワット)クラスの製品を2018年に
投入する計画。高さは百メートルを超える見込み。(1)同社試算では、従来の風力発電機と比
べて電力1キロワット時あたりの発電コストが40%も低くなる。(2)機械的な部品を使わな
いため、メンテナンスのコストも小さく、(3)風車の回転による騒音の発生や鳥の衝突も生じ
ない。(4)細長い円筒形の構造物を立てるだけで済み、狭い場所に設置することも可能になる。




Vortex社は製品化に先がけて6月1日から、インターネットを使って多数の出資者を募るクラウ
ドファンディングを開始。これまに投資家から百万ドル(1億2000万円)を超える資金を集めたが、
クラウドファンディングを実施して米国を中心に市場に狙っている。 

   

【日本の政治史論 14:政体と中枢】  

 「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で、触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。  

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』  

   目 次  

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策   


  第8章 官僚の政策が壊す日本

                                    官僚は公正中立でも優秀でもない

  政治家やビジネスマンの場合、秀才の思い上かりがあると、やがてわか身に返ってくる。
 ビジネスマンが、いくら俺は凄いんだ、頭がいいんだといったところで、仕事の成績が悪け
 れば、笑われるだけである。政治家も世論の批判にさらされるし、なによりも選挙という国
 民の審判がある。
  対してキャリア官僚は、成果で評価されることはないので、自分か稿り高ぶっていること
 さえ分からない。
  多くのキャリア官僚は政治を軽んじている。

 「大臣なんてすぐに代わる。永続して政策を考えているのはわれわれだけだ。われわれかい
 なければ、政策一つ満足にできない。日本の官僚は公正中ふで優秀だ。政治家は専門知識が
 なく利権に走る。従って、われわれ官僚が行政の主たる担い手になるべきだ」
 と、本気で思っている人か少なくない。

  私は、この自信が良く理解できない。第一自分だちか優秀だという根拠かない。東大を出
 て官僚になったことが根拠だとしたら、あまりにも思慮が浅い。
  確かに官僚になった時点では、人材の質は高い。省庁の選考は、ディベートなどもあって
 民間に比べると比較的厳しい。それを潜り抜けてきたのだから、優秀だったのだろう。 

  しかし、これはI.0代前半の時点での話だ。その後のスキルのレベルアップやキャリア
 で、いくらでも能力は伸び縮みする。
  遂に官僚が優秀でなかった証拠ならいくらでもある。もし、日本のテクノクラートが本当
 に優秀なら、現在のように財政が火の庫になるまで放置していただろうか。経済かこれほど
 急速に萎んでいただろうか。

  官僚は優秀でも公正中茫でもないのでは、と疑わせる事例は、枚挙にいとまがない。社会
 保険庁の消えた年金問題、空港の需要予測、1400兆円の国民金融資産を抱えながら世界
 で競争できない銀行を作った護送船団方式、住宅行政への信頼を地に落とした耐震偽装問題、
 摘発しても摘発しても続く官製・談合……これが本当に優秀な官僚のやることかといわれれ
 ば、俄かに反論できない。

  おそらく福島原発事故を検証すれば、日本の官僚かアメリカやフランスなどの官僚と比べ
 て、10年以上遅れた世界にいることが分かるのではないか。ニューヨーク・タイムズ紙な
 どには、早くもそうした論評が載り始めている。
  にもかかわらず、霞が関の官僚組織は日本最高の頭脳集団で、彼らに任せておけばなんと
 かしてくれるという幻想を抱いている国民が、まだいる。もはや、こんな幻想は.自害あっ
 て‘利なしである。公務員制度改革や経済再生を進めるにiたっては、公務員は公正中立で
 優秀だという前提を捨ててかかるべきである。                                  

                                    インフラビジネスはなぜ危ないのか

  霞か関と民主党政権か一体となって熱心に取り組んだ『パッケージ型インフラ海外展開」
 も、適切な政策かどうか、怪しい限りである。
  日本にはインフラ関連の優れた製造業がある。原了力発電、新幹線、水関連技術など、こ
 れから新興国を中心に大きな財要のある分野だ。 
  しかし、単品として、あるいは個々の技術としては世界最高レベルでも、それを長期間に
 わたりシステムとして管理・運営して利益を出していくという取り組みでは、欧米の企業に
 後れを取ることが多かった。最近では韓国やロシアなどの追い上げにも遭っている。だから、
 この分野で、官民挙げてオールジャパンで取り組もうというのである。

  この分野に目をつけるのは正しい、政府と民間が協力して収り組むこともいい。だが、目
 的が正しいから何をやってもいいとはならない。手段の適切性を慎重に咀恥しなければなら
 ないのだ。
 「パッケージ型インフラ海外展開」の発想の原点は、これをやれば、日本は儲かるだろう、
 である。では、本当に儲かるのか。総理が首脳会議で「日本の企業にもいい製品があります
 よ」と売り込むのはコストゼロなので、いくらやっても損はない。福島原発事故の際、フラ
 ンスのサルコジ大統領がいち早く訪日し、自国企業の宣伝を大々的に、しかも巧妙に行つた
 のは一つの手本だ。

  しかし、問題はその先だ。こうした国家的なお祭り騒ぎは、後で国民につけが回ってきて
 終わりということが多い。
  まず第一に、インフラ事業の海外進出は10年から20年という息の長い取り組みが必要
 だ。国家戦略としてこうした取り釦みを継続的に進めていけるような体制が政府にあるのか
 どうか。つまり、組織力の勝負で勝てるのか。これまでの経験では、答えはNOだ。

  日本人は、「組織力か強みだ]と自画自賛することが多い。政府にはとりわけその傾向が
 強い。個人で戦うことに自信がないのでチームワークをことさら強調する。
  しかし、日本の強みはチームワークの「和」ないし「協調性」の部分であり、たとえば、
 組織としての決断力、俊敏烈、行動力などにおいては、欧米の政府や企業に比べて明らかに
 劣っているということをあまり自覚していない。とりわけ、大企業や政府においてその傾向
 が強い。私の経験では、俊敏果敢な行動や意思決定においては、大企業よりオーナー経営の
 中小企業などのほうがはるかに優れていると思う。



  たとえばイランで日の丸油田開発を目指したIJPC(イラン・ジャパン石油化学)事業。
 三井物産を核とした三井グループが、イランの原油確保を目指して1971年からスタート
 させ、円借款や貿易保険も用いた国家的プロジェクトとして進められたが、18年の歳月を
 費やしても油田はできず、イラン革命、イランーイラク戦争で撤退を余儀なくされ、膨大な
 損害をこうむった、政府も9大な損害を出した。
 
  IJPCに取り組んでいたとき、企業も国も最大級のブロジェクトだとみな気分が高揚し
 ていたが、見事に失敗に終わってしまった。このとき、イラン・イラク戦争に関する情報入
 手やその後の意思決定でも、口本はもたついて被害を拡大させた。つまりこれは、日本は組
 織力という点で決して秀でていないという一例である。

  そしてこの組織力の弱さは、福島原発令故の対応でもはっきりと証明されてしまった。政
 権中枢や担当省庁、主体となる企業はただ右往左.往するばかりで、組織としてまったく機
 能できなかった、難しい決断や迅速な判断は、いずれも組織の命運がかかる重大事項だ。日
 本の政官すべてかそうした面で、比較劣位にあることを十分認識すべきであろう。

  競争力のない分野に無理やり突っ込んで行くことかいいのかどうか。むしろメインコント
 ラクターのもとで、部分的にその機器を売り込んで、利益を短期で暖定すべしという考え方
 も十分ある。やみくもにパッケージを賛美し、何十年分ものリスクを取ったほうが勝ちだと
 いう偏った考え方は取るべきではない。

  第二に、組織力の話とも関連するが、日本政府が前に出ることで、相手との交渉で有利に
 立ってるかということがある。途上国といっても、独立や国家統一のために何回も戦争や内
 戦を経験し、生きるか死ぬかの困難な外交交渉を乗り越えてきた国々が相手である。この海
 千山千の国々を相子に、日本政府が強かな交渉をできるかどうか。 

  過去の例を振り返れば答えは簡単だ。「否」である、現在の日本政府の浮かれたお祭り騒
 ぎを見ていると、相手からすれば、カモがネギを背負ってやってきたという状況になってい
 るのではないかと、不安でならない。
  事実、新幹線や原発の受注交渉で、各国から次々と灸件を突きつけられている。たとえば、 
 新幹線の車両を現地生産しろ、あるいは超長期の運転保証をしろ、また技術移転をしろと。
 機器を現地生産するとなると、技術の流出は避けられない。
  中国では新幹線を売り込んで技術か・取られ、いまや「中国製新幹線」は日本の強力なラ
 イバルとなりつつある。


                             
  これは日本だけが直面している問題ではない。中国は、2002年に上海りニアモーター
 カーを開通させ、上海万博が聞かれた2010年、杭州にまで延長した。上海リニアの入札
 はフランス、ドイツ、日本で争われ、最終的にはドイツに決まり、工事が行われ、延長区間
 も引き続き、ドイツの企業が請け負うことになっていた。

  ところが、ドイツのリニア工場に中国人技術者が忍び込む事件か起き、その後、中国政府
 は延長りニアの「10パーセントはドイツに発注するが、後はすべて自国でやるから技術移
 転をしろ。その条件を呑まなければ発注しない」と要求してきた。そして実際、独自で開発
 したリニアの実験を開始、国産リニアを完成ざせてしまった。

                                   この項つづく

 


核の廃棄場所がない?!

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   改革の原動力として3つの「はみ出し者」の存在が挙げられます。
       「ばか者」「よそ者」「若者」です。
                                
                                吉川廣和




朝日新聞 2015.05.23

● 核の廃棄場所がない ?!

原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の処分地選定について、政府府は22日、公
募に頗る従来の方式から、国が主導して選ぶ方式に転換する基本方針を閣議決定。科学的に適性
が高いとされる「科学的有望地」の絞り込みが今後の焦点となるが、超長期の隔離が必要な「核
のごみ」の処分地選びは容易ではないという(同上「核ゴミ処分地 公募を転換 めど立たず国
主導に」)。

それによると、高レベル廃棄物は強い放射線を出すため、300メートル以深に埋めて処分する
ことが法律で決まっている。法律に基づく基本方針の改定は7年ぶり。新方針では、科学的に適
性が高いとみられる地域を国が科学的有望地として示し、調査したい意向を自治体などに申し入
れる制度とする。公募も続ける。そのうえで20年程度かけて文献調査、概要調査、精密調査へと
進む。

科学的有望他の条件や基準は、専門家らでつくる経済産業省の作業部会で検討が続く。火山帯や
断層帯は従来通り避ける方針。これまでの議論では、軟弱地盤を避けるため関東や関西などの平
野部も除かれる見通し。地下水の動きが少ない沿岸部や沿岸の海底下などが検討される可能性も
ある。

また、宮沢洋一経産相は22日の閣議後の会見で、科学的有望地の提示について「自治体の数でい
うと相当数になると思っている」と述べ、最初は自治体を示すのではなく、全国を適性が「より
高い」「ある」「低い」と三つ程度に区分けしたイメージを想定しているという。新方針には、
調査の前段階で幅広い立場の住民が意見を交わす継続的な「対話の湯」を設けることや、将来の
技術進歩で別の処分法に見直せる余地を残すため、搬入した廃棄物を回収できるようにすること
も盛り込む。最終処分が始まるまでには長い年月がかかるため、経産省は22日、原発にたまり続
ける使用済み燃料の貯蔵容量を増やす具体策を作る方針も示した。

処分地選定は、電力会社などが出資する原子力発電環境整備機構が2002年から調査の受け入
れを公募するも、高知県東洋町が07年に応募するも後に撤回しただけで調査できていない。最
終処分のめどがないまま原発再稼働をめざす国の姿勢への批判もあり、13年末に関係閣僚会議
が設置され、見直しを決めた経過がある。

ここまで放置を許してきた個人的な後悔もあるが、行政政府に対する不審・不満は、昨今の火山
活動のマグマのように、たまりにたまり続けている。一刻もはやく安全宣言できる状態にもって
いかなければと考える。ここは忍の一字。

                                     



   

【日本の政治史論 15:政体と中枢】  

 「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。  

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』  

  目 次  

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策   


  第8章 官僚の政策が壊す日本


                                    官僚は公正中立でも優秀でもない 

                       経産省が仙谷長官を持ち上げたわけ

  この中国の新幹線やリニア事件のように、今後も技術が流出して終わりにならないとも限
 らない。
  もちろん、日本政府もこのようなリスクに気がつかないはずはない。民間企業はさらにこ
 の問題に敏感だ。しかし、政府が動き出すと、客観的な情勢分析に様々なバイアスがかかり、
 正しい戦略を取れなくなることが多い。とりわけ、パッケージ型インフラ海外展開ピジネス
 を成長戦略の目玉としてぷちあげてしまった民主党菅政権にとっては、あらゆるプロジェク
 トに前のめりになっていくリスクが極めて高かった。

  実際、2010年2月末には、仙谷由入民主党代表代行は、国会で予算審議が難航する最
 中にベトナムを訪れ、「鉄道・原発」の売り込みに玖しんでいた。
  政治がそのような姿勢を取ると官僚はこれを巧みに利用する。民間もうまくリスクを国に
 押しつけて、おいしいとこ取りを狙う。こうして、戦略的な判断による強かな交渉とは似て
 も似つかぬ、政官挙げての無防備な突撃作戦になってしまう。まるで特攻である。
  経産省も油谷氏のPRを盛んに行ったようだ。これは、相手国を利する動きになっている。
  たとえば、日本がインドやベトナムで優先交渉権を得たというが、原発の建設予定は一つ
 ではない。日本以外にも複数の国々と交渉をしており、互いに競わせ、もっとも自国の国益
 にかなう道を探っている。だから、優先交渉権を取れたからといって、大騒ぎするほどのも
 のではない。

  しかし、大きなプロジェクトの受注は政治的な宣伝材料としては格好のものなので、民主
 党は声を大にして「凄いだろう」といいたくなるだろう。
  経産省は、プラント型パッケージセールスの主導権を取りたいがため、これを後押しして
 政権のご機嫌を取る。もちろん、自分たちもそれで高揚しているから、そのうち、本当にこ
 れは凄いことだと思い込んでしまう危険性か高い。
  たとえば、べトナムの優先交渉権取得は厳しい状況だったが、仙谷官房長官が各省に号令
 をかけ、日の丸チームを作って一気に流れが変わった」と持ち上げる解説を、記者たちを呼
 んでやる。経度省にべったりの新聞が早速取り上げ、記事にした。

  そもそも、相手国から見れば、日本だけ本当に特別扱いして儲けさせるなどという発想は
 ない。相手を引きつけて、それから思い切りしやぶり尽くそうと考えるのが当然だ。ベトナ
 ム側からすれば、しめしめである。
  大々的に宣伝すればするほど、日本は後には引けなくなる。条件が折り合わず、途中で降
 りるなどというみっともないまねもできなくなるのだ。
  こうしてベトナムは、いくらでも要求を突きつけられる。一方の日本は、無茶な条件でも
 呑まざるを得なくなるのだ。 

  これでは本当に先が危ぶまれる。交渉が不利になることが分からず、日本が一方的に得し
 ているように思い込んで、内向きの政治宣伝のお先棒を担ぐ官僚、そしてそれを鵜呑みにす
 る記事が出るようなナイーブな国――。こんな国が、強かな新興国を相手に、有利な交渉が
 できるとはとても思えない。

  福島原発事故でのサルコジ大統領の訪日は、フランスの原子力産業のためのセールスに他
 ならない。一歩間違えば日本や世界中から非難されるかもしれないなか、彼の売り込みは一
 定の効果を上げそうだ。平時に売り込みをしたところで、逆に足下を見られて見返りを要求
 される。日本か窮地に立たされているいまなら、恩を売りながらセールスができると踏んだ
 のであろう。
  こうした芸当が日本政府にできるだろうか。残念ながらはなはだ心もとない。



                    天下り法人がドブに捨てた二千数百億円

  第三の問題として、政府が金儲けの目利きができるかという問題かある。とりわけ、20
 年から30年にも及ぶピジネスの先を見通すことは極めてむずかしい。だから民間だけでは
 対応できないというのだか、では、政府が入ることでその確実性か増すのか。
  途上国では、民間よりも政府のほうが人材も優秀だったり、情報収集力でも勝っていたり
 ということで、政府が前に出るメリットがはっきりしている。では、先進国ではどうか。

  アメリカでも国を挙げてインフラを売り込むビジネスは「ステートキャピタリズム」の名
 で話題になりつつあり、日本でも「新重商主義」として注目が高まっている。しかし、アメ
 リカ政府の情報収集力はもちろん他の追随を許さないものだ。政府高官には民間企業の経営
 で実績を示したプロも多い。さらに軍事協力など民間にはできない特別の武器もあり、政府
 か前に出ることにそれなりの合理性がある。

  それに比べて日本はどうか。ピジネスに関する目利き能力という点では、日本政府ははっ
 きりいって幼稚園以下である。
  NTTの株式売却収入などを原資にしてご2000億円近くの資金を、経産省がベンチャ
 ー支援と称してあまたの企業に出資したことがある。結果がどうなったか――。還ってきた
 のはわずかに5パーセント。なんと2千数巨億円がドプに捨てられたも同然、大損失を出し
 たのである。運営したのは天下り法人。それに対して誰一人責任を取っていない。

  そもそも、日本政府がやったインフラ整備の結果を見てみるが良い。車より熊のほうが多
 いといわれた地方の道路、空港、港湾、至るところで失敗の山。成功例は失敗に比べれば、
 10分の1以下だろう。インフラについては政府の競争力は極めて低いのである。とにか
 く、政府が出て行くと金儲けの確実性が増すという考えは捨てたほうが良い。
  インフラをビジネスにすれば、一時期、日立や東芝など複数の日本企業は潤うかもしれな
 いが、日本の国益という視点でトータルに見た場合、儲けが出るかどうかは別だ。

  ベトナムやインドで原発を作ることによって電力の安定供給が保証される、あるいは高速
 鉄道を整備して物流網を整備するのも同じことだ。もちろん経済協力という側面もあるので、
 その部分は別に考えなければならないが、そうであれば、その分は経済協力の予算を減らし
 て良いことになる。

  いずれにしても、国民に直接稗益しないという面において国内のインフラ整備とは根本的
 に違うのだから、各プロジェクトの推進に政府がリスクを取ることによってどれだけのリタ
 ーンがあるのか、しっかり見極めなければならない。ハイリスクならばハイリターンがなけ
 ればならないのだ。




                      役人がインフラビジネスで得る余禄

  最後に、パッケージ型インフラ整備が大失敗に終わる可能性を高める最大の要因について
 指摘しよう。これまで述べたところから概ね推測かつくと思うか、役人がパッケージ型イン
 フラセールス」に執心するのは、おいしい汁が吸える可能性があるからだ。大型プロジェク
 トには、政治家も役人も企業家も蜜に集まる蟻のように寄ってくる。
  たとえば、原発を世界に売り込むに当たって、官民出資の投資ファンド、すなわち産業革
 新機構が出資して、国際原子力発電なる新会社を設立した。いまはさすがに天下りは行って
 いないか、そのうち、この会社は役人の天下り機関になる可能性がある。
 
  インフラピジネスは余禄があるだけでなく、経産省や国交省などの役人にとって、とても
 愉しい仕事でもある。
  受注すれば大きなピジネスになるので、関係企業の社長は、大臣以下、事務次官、局長の
 ところに日参して、「お願いします」とペコペコする。貿易保険やJBICの融資を引き出
 したり、経済協カプロジェクトにつけてやったりすれば、なおのこと、社長は経産省に米揚
 きバックのように頭を下げる。

  経度省は規制や補助金などの利権が少ないので、最近はとくに企業のトップが経産省に頭
 を下げるという関係は少なくなってきた。それがインフラピジネスなら、続々と社長が集ま
 ってきて、しかもみな頭をドげて帰る。役人にとってこんな気持ちの良いことはない。
  企業から見れば、白分たちが負うべき数巨億円あるいは数千億円単位の巨大なリスクを国
 民に押しつけることができるのであるから、頭を下げることなど安いものだ。何百回でも頭
 を下げるだろう。

  ここで、企業が頭を下げるということは、役人の発想では、天下りを送り込める可能性が
 高いということ。今後、パッケージ型インフラ整備で産業革新機構に出資してもらったり、
 貿易保険をつけてもらったりした企業などに、天下りやそれに代わる現役出向などで経産省
 の役人が面倒を見てもらうことになる可能性がト分にある。すでに天下りを受け入れている
 企業では、今後もそのポストを提供し続けるということになるだろう。 

  損する可能性の高い事業に役人が平気で国民の税金を注ぎ込めるのは、役人ならではのお
 かしな金銭感覚も関係している。
  役人は、いま損するわけではないものには、あまり考えずにどんどんおカネを出す。役人
 にとって、仕事は予算を取って使うこと。そこで、ピリオドだ。その結果には関心がない。
 投資したキャッシュがすべてなくなっても、キャッシュを追加するわけではない。つまり新
 たな予算とは関係ないので、自分の仕事とは関係ないというのが、役人の感覚なのだ。

  役人の世界では成果を問われない。役人は投資したカネがどのような成果につなかったの
 か、ということには、まるで関心かないのだ。先ほど述べたNTTの株式売却益を2千数百
 億円なくしてしまっても何の問題にもならず、誰も責任を取らなかったのがいい例である。
 

                        わざわざ借金して投資する産業革新機構の愚

  産業値新機構も役人的な発想でできあがった政府系ファンドだ。同機構は、先端技術や特
 許の事業化の支援などを目的として、産業活力再生特別措置法に基づき、2009年7月に
 設置された。投資対象は、先端技術による新事業、有望なベンチャー企業、国際競争力の強
 化につながる大企業の事業再編などとしている。

  政府か出資する投資ファンドを「ソブリンファンド」という。資源国のソプリンファンド
 は石油や天然ガスで儲けて余った国のねカネから成り、資源を持たない先進国では、積み上
 かった年金や外貨準備を原資としている。

   

  日本の産業革新機構も、国のおカネを運用している点ではソプリンファンドに近いが、政
 府が出資している920億円は、基本的に国民からの借金。機構が金融機関から資金調達す
 る場合、8000億円まで政府保証がつけられるので、最終的リスクは国が負う。
  いずれにしても、わざわざ国が借金しておカネを運用しようとしているという点で、普通
 のソプリンファンドとは違う。そもそもこれだけ財政状況が悪化しているときに、借金をし
 てまで投資をするという発想自体か変だ。結局、無駄のオンパレードとなった昔の財政投融
 資のプロジェクトと似ている。

  現在は財政状況がより悪化しているからもっとたちか悪い。借金返済で首が回らなくなっ
 たので、一発逆転、大穴狙いで万馬券の夢を追うというのに近い。
  しかも、時限立法で定められた機構の設置期間は15年。つまり最長15年の間で出資し
 たおカ參を回収する。
  民間会社の15年先のことは誰にも予測できない。その間に経営者も変わるだろうし、企
 業を取り巻く環境も大きく変化する。途中で出資した企業が倒産し、焦げつく恐れはいくら
 でもある。
  従って、よほど高いリターンでないと、投資する人はいない。しかも、どかんと投資する
 人は皆無に近い。そこで多くの人から少しずつ出資させて、リスクの分散をはかる。 

  機構のインセンティプの構造がおかしいという問題もある。いま産業革新機構にいる人は、
 案件をたくさん作れば有名になり、当面の市場の評価を得られる仕組みになっている。しか
 し、本当にその案件で儲けられるのか、結果が出るのはずっと先だ。
  15年間、ずっと居続ける人はいないだろう。10年以上先に結果が出たときには、案件
 を作った人はすでにいない。だから、結果は考えず、投資先をなるべく多く見つけようとす
 る。



  私は2003年に立ち上げられた産業再生機構に執行役員として出向していた。産業再生
 機構が成功したのは、組織の存続期間が最長で5年、実際には4年で終わったからだ。しか
 も、個別案件単位では3年以内にプロジヱクトを終了しなければならない。3年先なら、そ
 の案件に携わった人か結果責任を問われる。
  失敗すればその人の市場の評価は下がり、再生機構の廃止後の転職で著しく不利になる。

  短期間で辞めれば逃げたといわれるし、わずか数年前のプロジェクトだから、誰が責任者
 かはすぐ分かる。よって、結果が悪ければその人の評価に響く。
  自分の市場価値に関わるので、参加した民間の人たちは、死に物狂いで成果を出そうとし
 た。産業再生機構が成功した裏には、こうしたインセンティブ構造があったのだ。
  一方、産業革新機構では、そういうインセンティブ構造になっていないところで国のおカ
 ネを使わせる。これはたいへん危険な話だ。

  最近の産業革新機構か取り上げた案件を見ていると、当初考えられていたベンチャー支援
 とは似ても似つかぬ政治案件があったり、大企業支援案件のための打ち出の小槌として使わ
 れ始めたりしている。私にはそうとしか見えない。

  役人の政策か浅はかになるのは、利益の誘導もさることながら、現場をほとんど知らない
 からだ。たとえば経産省の官僚はビジネスマンとして得意先と丁々発止の交渉をしたことも
 なければ、実体経済に詳しいわけでもない。審議会にかけて検討してもらい、まとめるとい
 っても、しょせん耳学問だ。利益誘導を抜きにしても、実情に即した政策を作るだけの経験
 も知識もない。そういう意味でも、回転ドア方式で、震が関に民間の血を入れる必要がある。


ここで、米国的行政制度の「回転ドアー方式」に触れておこう。捕虜理論(Regulatory Capture)と
いう、規制機関が規制されるべき事業者側に取り込まれ、規制される事業者側の利益の最大化に
貢献するという最悪の状況である「天下り問題」の根源となる。そこでその解決方法として「回
転ドア方式」が提言され、米国ではは政権が変わったタイミングで公務員のほとんどが辞表を出
して民間のシンクタンクに戻ったり、経営の実務で経験と知識を深め、次の政権交代に備えてき
た歴史があり、この制度を担保するために、必ず能力に見合った仕事が与られている。投資経験、
実務経験、ビジネス・センスを持たない霞ヶ関からの天下り職員が、年金基金の原資を食い潰し
てきた反省に立ち日本でもこの方式採用としてきたが、国家官僚達の激しい抵抗にあい道半ばに
ある。ところが、回転ドアー方式も悪用されるケース――関連企業の意を受け民間人(あるいは
半官半民族)が天登りと天下りを繰り返す――もあるのでよくよく考えておく必要があるが、民
間企業の最前線で働いてきたわたし(たち)も概ね共感できる内容となっている。次回は一旦「
序章」→「4章」に戻り、その後「終章」の順に読み進めていく。


                                    この項つづく

 

   ● 今夜の一曲

'Nineteen Hundred And Eighty Five' 
Paul McCartney’s 10 Greatest Songs After The Beatles March 6, 2013 12:00 AM

 

アルバム『バンド・オン・ザ・ラン』収録。オリジナルでは同アルバムの最後を飾る曲。「ポー
ル・マッカートニー・コレクションシリーズ」では後に「愛しのヘレン」(Helen Wheels)など
ボーナストラックが続く。米国と日本では、シングル『バンド・オン・ザ・ラン』のB面に入っ
た。ラゴスでレコーディングされたものに、ロンドンでストリングスとブラス・セクションをオ
ーバーダビング。印象的なピアノで始まるメロディが繰り返される内にダンスミュージックて、
ロックとなり壮大なオーケストラの最後に「バンド・オン・ザ・ラン」の一節がリプライズで現
れるポールのアレンジャフルサウンド。さては、お楽しみを。

 

  ● 今夜の一枚

理解できないが、理解しよう。^^; ?!

アイルランド、国民投票で同性婚合法化


厭戦を叱咤する愚

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   われわれは訓練と装備は供与できるが、戦う意志は提供できない。
                                
                          カーター米国防長官

 

   

【日本の政治史論 16:政体と中枢】  

 「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。  

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より) 

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』   

    目 次   

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策    

   序 章 福島原発事故の裏で

                    賞賛される日本人、批判される日本政府
 
  2011年3月11日に発生した東日本大震災――。
  その後、テレビに映し出される想像を絶する被害、刻々と送られる津波の映像。寒さに震
 える10万単位の被災者かいる。そして、福島第一原発では名もない勇者たちが命がけで作
 業を続けている。
  自分にも何かできないか………お金ではない、いまは物だ、という報道を聞いて、知り合
 いのボランティアグループに救援物資を送る。それでも、何もできないという無力感にとり
 つかれる。

  他方で、ここは大丈夫なのだろうか、放射能汚染はどこまで広かるのだろう――こんな心
 配をする自分がいる。そんなことを考えることで、原発の近くで必死に災害復旧のために戦
 っている方々に中し訳ないという後ろめたさが心を覆う。何をしても手につかない。そうこ
 う思いを巡らせているあいだも、刻々とニュースが飛び込んでくる。

  被災地から離れた場所にいる方々の多くは、そんな状況だったのではないか。
  3万人近い死者・行方不明者-これだけの惨事のなか唯一の光明は、われわれ日本人が世
 界中から賞賛される素晴らしい民であるという事実に改めて気づくことができたことであろ 
 身を犠牲にして人々を津波から守ろうとした勇者たち、そして忍耐強く秩序を守り、自力で
 立ち上がろうとする人々、苦しいなかでも思いやりと助け合いの心を行動で示す被災者たち
 ………世界のメディアが賞賛し、世界中に共感と支援の輪か広がった。涙が出るほど嬉しい
 ことだった。

  他方、地震後の日本政府の対応には世界中から非難の声が集中した。日本政府を賞賛する
 論評は、残念なから、私は見たことがない。原発事故対応を含め、日本のメディアか政府批
 判を抑えるなか、海外の論調は総じて厳しかった。
  私かもっとも驚いたのは、震災が起きるやいなや、信じられないことに、これを増税のた
 めの千載一遇のチャンスととらえる一群の人たちが即座に動き姶めたことだ。震災対応より
 もはるかにスピーディな反応。驚くというより悲しかった。

  一方、震災直後の週末を挟んだ3月15日、「無」計画停電実施発表の混乱か続くなか、
 関東各地の税務署には長蛇の列ができていた。政府の心ない連中が自らの利権維持に汲々と
 しつつ国民に負担増を求めようとしているのに、地震でも、停電でも、真面目に納税しよう
 という市民の涙ぐましい姿だ。私は、この国の民はなんと素晴らしい人たちなのだろうと思
 うと同時に、行政府の一員として本当に中し訳ない気持ちになった。

  絶対に安心と聞かされてきた原発-どんな地震でも大丈夫だと、われわれは思い込まされ
 てきた。反論したいと思ったことは何度もある。しかし、それだけの根拠となるデータを持
 ち合わせていなかった。
  4基で、いや、六基といっていいだろう、同時に生じた大事故。眼前の事実はすべての迷
 信をいとも簡単に覆した。
  それでも、政府は当初、「事故」ではなく「事象」といい続けた。「爆発」が起きても、
 「大きな音が聞こえた」「白煙が上がるのが目撃された」「しかし何か起きたのかは分から
 ない」という東京電力に対して、「情報が遅い」といって総理か怒ったという話が流れた。
 永田町と霞が関の悪いところが集中的に出てしまっている、そう感じた。

  しかし、私は当初、こういう事態は経験のないことだから、いくつかの不手際が起きても
 やむを得ないと思った。失敗をあげつらうより、いま何をすべきかに集中すべきだと思った
 のだ。心を一つにして国難に立ち向かうべきだと。
  そして、マスコミも批判を抑え、国民に冷静な対応を呼びかけ続けた。国民が一致協力し
 てがんぱろうというキャンペーンを展開した。
 「想定外の地震」「想定外の津波」「想定外の原発事故」………すべてが「想定外」の一言
 で許される、そんな空気が支配した。
  みんな必死で戦っている。自分のためだけではない、みんなのために戦っている。国民は
 そう信じた。
  しかし、そうしたなか、最初の数日で、私の心のなかにどうしようもない違和感か募って
 いった。




                      官房副長官「懇談メモ」驚愕の内容

  「節電啓発等担当大臣に蓮前大臣」「災害ボランティア担当総理補佐官に辻元清美議員」
 「菅総理が現地を視察」、そして「菅総理の会見」……しかし、そのいずれも危機対応のた
 めの具体的な措置ではなく、政権浮揚のためのパフォーマンスではないか。私にはもっとも
 大事な初動の数時間、政府の危機感が伝わってこなかった。こうした一連の行動を見て、安
 心感か高まったという国民はいただろうか。

  むしろ、この震災を「政権浮揚」の最大の機会と考えているのではないかとさえ感じた人
 々も多かったのではないか。地震の直前まで外国人献金問題で追及を受けていた菅政権。そ
 こに未曾有の大震災。緊迫した政局にとりあえずタオルが投げ込まれた、という感覚を持つ
 のは不謹慎ではあるが、政治家であればある意味自然だったかもしれない。
  しかし、マスコミから回ってきた官房副長官の一人の懇談メモを見て私は驚いた。「これ
 は間違いなく歴史のてヘージになるよ」と高揚した発言。開いた口か塞がらないとはこのこ
 とだ。

  現場や東電、原子力安全・保安院、そして官邸で起きていることが目の前に浮かぶ。おそ
 らく、この最初の数時間で、来電や官僚の官邸に対する不信感は瞬く間に頂点に達したであ
 ろう。そうなれば、官邸もまた彼らに不信感を持つ。負のスパイラルだ。
 これほどの危機にありながら、以後おそらくすべての連携がうまくいかなくなる。そして、
 対応が後手後手に回るだろうという確信か芽生えた。

  危機管理の要諦はいくつかある。アメリカの人気テレビドラマの「24」をご覧になった方
 は多いだろう。常に危機管理の話なのだが、それは日本でも同じはずだ。事が起きたらまず
 何をするか―一2011年3月の原発事故に当てはめると、次のようになるだろう。

  まず、現場に総理直結のスタッフが真っ先に飛ぶ。最高の能力と体力と度胸も兼ね備えた、
  総理が無条件で信頼できる者でなければならない。総理との関係は分からないが、イメー
 ジだけでいえば、民主党では、たとえば馬淵澄夫氏のようなタイプだろう。
  実際にはその代わりに総理自らが原発に飛んだ,しかし、もちろん現地に政府の基地を設
 置したわけではない。もし、そのときに爆発などが起きていたらと思うと、ぞっとする。



  次に官邸との直接の通信手段確保のため基地局を設け、テレビ回線で常時会議が現地との
 あいだでできるようにする。こうすれば現地の情報がリアルタイムで官邸に届く。このとき
 は東電にはそのシステムがあったが、官邸にはなかった。しかも、官邸は驚くことに、当初、
 来電の情報を経度省原子力安全・保安院を通して収集していたという……。

  東電は民間企業とはいえ、お役所体質と隠蔽体質ではおそらく役所以上であることは累次
 の原発不祥事を追及してきた民主党の政治家が知らないはずがない。情報は、社内を出るま
 でに何重ものスクリーニングを経なければならず、しかも、一番重要な、すなわち悪い情報
 ほど出てきにくいシステムになっているはずだ。

  経産省でも、入ってきた情報はまず、幹部に上げなければならない。それから官邸に届く。
 菅総理が、情報が遅いと怒鳴ったという報道があったり、官房長官も情報伝達が迅速にいか
 ないことに苦言を呈する場面があったが、これは本来あってはならないことである。
  国民のあいだに、「この人たちは何か起きているのかよく分かつていないのだ」「東電は
 情報を隠しているのか」という疑心暗鬼が広がり、ただでさえ不安に駆られている国民を、

  さらに、心配させてしまうからだ。アメリカの大統領なら、万全の情報収集態勢を敷いた
 うえで、「みなさん安心してください。われわれはすべての情報をリアルタイムで把握して
 います。必要な情報は直ちにみなさんにお伝えします」といったであろう。
  次に大事なことは、関係者間の情報の共有と共通認識に基づいた対応策の決定である。ア
 メリカのテレビドラマ「24」でよく目にする場面。テレピ画面の前で、閣僚や軍の幹部が一
 堂に会し、スタッフが情報を、画像で示されたデータを駆使しながら詳細に報告。対応策の
 オプションについて議論し、方針を大統領が決断する。

  こうすれば、情報と認識が幹部や主要スタッフのあいだで共有されるので、その後の行動
 に不整合が生じず、迅速な対応が可能となる。
  報道された総理動静を見ていると、時折会議は開かれるか、それもセレモニー的。具体的
 な対応策について議論したり決定したりしているというより、パフォーマンス的な色彩が強
 く感じられた。むしろ、個別に各省幹部や専門家が呼び込まれ、その都度、総理から指示が
 なされていたようだ。

  これでは、一糸乱れぬ迅速な対応は期待できない。

  その後の原発事故対応を見ても、さまざまな問題点が浮かび上がる。
  総理が現地に飛んだことは、初動対応で極めて負荷が高くなっていた官邸スタッフにさら
 なる負荷をかけた。総理の意図がどうであったにせよ、対応の準備ができていない段階でい
 きなり総理が現地に入るとなれば、そのときの官邸スタッフは、あらゆる準備をしなければ
 ならない。相当な労力がそこに割かれることになる。その間、当然ながら他の業務の処理速
 度は遅くなる。

  原発に関する情報が思うように入らなかったからといって、総理が現地に行く必要がある
 か。答えはNOだ。トップ自らが現地に乗り込み政治主導をアピールしようとしたという説
 もあるが、そうだとすると、政治主導のはき違えもはなはだしい。
  その後、総理は既存の原子力安全・保安院や原子力安全委員会への不信感から、同窓の東
 京工業大学卒の専門家の助言を得ることにした。しかし、これは政治主導ではなく、個人と
 しての「政治家」主導に過ぎない。もちろんさまざまな意見を聞くのは良いか、国家の組織
 を動かせない総理か果たして国難に対処できるのか。この答えも、もちろんNOだ。
  民主党の政治家のなかには、政治主導を官僚排除と同義だと考えている人たちが多いよう
 だ。政務三役のなかには、自ら電卓をたたくパフォーマンスを見せた人もいるくらいである。 
  天下太平の世の中ならそれでも良いのかもしれないが――。

                                「ベント」の真実

  3月末から4月にかけて一時「ベント」をめぐる官邸と東電の争いがあった。争いといっ
 ても表向きではなく、おたがいマスコミに対してそれぞれの主張を宣伝し合うというかたち
 で展開された。
  詳しい事情は不明だが、報道によれば、福島第心匹発一号機の圧力容器内の圧力が上昇し、
 容器の破損が懸念された。そうした深刻な事態を防ぐため、容器内の水蒸気を外部に逃がす
 ベントという作業を行うことになった。官邸では当初、3月11日深夜に、その方向性が事
 実上決まっていたのだが、実施されたのは翌12日午前10時過ぎ。

  3月下旬になって、この遅れは、総理の現地視察の準備に追われたため、あるいは、総理
 が現地にいるあいだは放射性物質を放出できなかったため、などという憶測かなされ、官房
 長官の会見でも質問された。当初はあまり真面目に取り合わなかった官房長官だったか、マ
 スコミからの批判は日に日に強まった。すると一転、ベントを総理が指示していたにもかか
 わらず、東電がそれを遅らせたのだという解説か官邸筋から流され、テレビ朝日の「報道ス
 テーション」に出演した寺田学・前総理補佐官もそう説明した。

  しかし、もし総理がどうしてもベントか必要だと判断したのなら、ただ東電に法律(原子
 炉等規制法)に基づいた命令を発すれば良かった。
  ベントによって何をするかといえば、放射性物質を外部に出すのだ。どれくらいの濃度か
 も分からない。軽々にやって、事故が小規模で終わったとしたら、後で「なぜベントしたの
 か」と怒られるかもしれない。世論だけでなく、政府だって掌を返して束電を批判するかも
 しれない。普通はそう思うだろう。だからこそ、「政府が責任を取るから心配しないで開け
 なさい」というメッセージを送る「命令」が用意されているのだ。

  それをなぜすぐに使わなかったのか。命令できることを知らなかったのか。官僚か知らな
 いはずはない。総理にそれを上げなかったのか。だとすればサボタージュだということにな
 るし、総理の信頼するスタッフが無能だったということになる。知っていたが、東電の判断
 でやれといったのかもしれない。だとすれば責任逃れである。

  政治主導とは、本来、官僚排除ではない。政治と官僚のどちらが主導するかという話であ
 る。官僚主導など本来はあってはならない。政治が主導し、官僚はそれをサポートし、それ
 に従って政策を実施する。当たり前のことができていなかったようだ。
  そして、リーダーの一番大事な資格-それは、リスクを取って判断し結果責任を負う、と
 いうことだ。総理にその覚悟かなかったのか、あるいは官僚が自分たちの責任を逃れるため
 に東電に判断を押しつけようとしたのか・・・・・・。


                       東電の序列は総理よりも上なのか

  ところで、正式な命令かなかったとしても、時の総理か指示したのなら、普通は黙って従
 いそうな気もするが、なぜそうならないのか。
  もちろん、東電がお役所体質であり、形式を整えないと動けない、そして自分でリスクを
 取れない、そんな組織だったという面もあると思う。しかしそれよりも、来電は、時の総理
 の指示を相当軽く考えていたのではないか-これが私の見方だ。



  私は過去に電気事業関係のポストに就いた経験のある同僚から、「東電は自分たちが日本
 で一番偉いと思い込んでいる」という話を何回か聞いたことがある。その理由は後にも書く
 が、主に、東電が経済界では断トツの力を持つ日本最大の調達企業であること、他の電力会
 社とともに自民党の有力な政治家をほぼその影響下に置いていること、全国電力関連産業労
 働組合総連合(電力総連)という組合を動かせば民主党もいうことを聞くという自信を持っ
 ていること(電力総連会長から連合会長を務めた笹森清氏は菅政権の内閣特別顧問)、巨額
 の広告料でテレビ局や新聞などに対する支配を確立していること、学界に対しても直接間接
 の研究支援などで絶大な影響力を持っていること、などによるものである。

  簡単にいえば、誰も東電には逆らえないのである。

  テレピ局の報道も、福島原発の事故が発生した当初は、市電を批判する論調ではなかった。
  経営幹部の影響下にある軟弱なブロデューサーは、市電批判につながる内容になると、直
 ちに批判色をなくすよう現場に強力な命令を下したという。
  ところが、おもしろいことに、河野太郎衆議院議員がプログなどで市電とテレピ局の癒着
 を糾弾すると、視聴者からの批判が相次ぎ、癒着批判を恐れたテレビ局が、急に掌を返した
 ように市電批判を始めたのである、しかし、その背景には、当初はまだ東電の力は侮れない
 と思っていたテレピ局も、4月に入ると、その経営が今後苦しくなるという見通しを持ち始
 め、スポンサーとしての価値がないと判断したという面もある。



  いずれにしても、少なくとも事故発生当初は大惨事になるとも思わず、過去の自分たちの
 力を信じて、「総理といえども相手にせず」と考えていたとしてもまったく不思議ではない。
 それは、事故後に「血圧が高くなった」などという理由で一週間も入院してみせた社長の態
 度に如実に表れているのではないか。
  だからこそ、官邸は、一刻も早く伝家の宝刀である法律に基づく命令を出す必要があった
 のである。


                    天下りを送る経産省よりも強い東電

 「まえがき」にも書いたが、2011年1月、世間の耳目を集めた話題として、前年の夏ま
 で資源エネルギー庁長官を務めていた経産官僚が東電に天下ったという事実がある。
  この事実は、経産省がその電力事業に対する規制権限を背景にして天下りを押しつけたと
 いうように見える。しかし、天下りの多くの場合がそうなのだか、通常、天下りは双方にと
 ってメリットがある。つまり東電側は、規制に関して経産省がさまざまな便宜をはかってく
 れると期待している、こう考えるのが普通だ。

  だから、持ちつ持たれつ、といいたいところだが、少し事情は違う。通常の時期はそうし
 た平和な状態か続くのだが、こと電力の規制緩和というような大きな問題になると、両者は
 時に衝突することもある。過去何回か、電力の規制緩和が推進された時期がある。そしてそ
 のたびに、両者の間に主導権争いがあり、政治家や学者、マスコミを巻き込んだ大戦争か起
 きた。そして、必ずといっていいほど毎回、経産省内の守旧派が力を増し、改革派がパージ
 されるという歴史が繰り返されてきた。

  当初はいつも改革派がリードする。マスコミもこれを支援する。しかし、大詰めを迎える
 といつも、なぜか審議会では優勢だった改革派の多くが妥協案に乗り、最後までがんばれる
 委員はほとんどいなくなる。
  電力業界には競争がない。ここに競争を導入して電カコストを下げることは、消費者にと
 っても産業界にとっても望ましい。

  自由化の議論のもっとも先鋭的なものが、後に書く通り、発電会社と送電会社を分離する
 発で送電分離。このテーマについて本気で推進しようとした官僚か何人かいた。あるいは核
 燃料サイクルに反対しようとした若手官僚もいた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、
 多くは経産省を去った。後述するが、私も十数年前、発送電分離をパリのOECDで唱えた
 ことがあるが、危うく日本に召喚されてクピになるところだった。その理由とは何だったの
 か――。

  そして逆に、東電とうまく癒着できた官僚は出世コースに残ることが多かった。東電なら
 ば、政治家への影響力を行使してさまざまなかたちで経度省の人事に介入したり、政策運営
 に介入したりすることも可能だといわれている。
  こうした巨大な力を見せつけられてきた経度官僚が、本気で東電と戦うのは命懸けだ。つ
 まり、政治家も官僚も来電には勝てない。そう来電が過信していたからこそ、福島原発事故
 で初勤の蹟きが生じたのかもしれない。


                           「日本中枢の崩壊」の縮図

  東電の問題を今後どう解決するのか-私は一つの私案をまとめて経産省の官房長や資源エ
 ネルギー庁の担当課長などにそれを伝えた。そして、それを経済誌『エコノミスト』に寄稿
 しようとした。しかし、それは官房から止められた。
  「そんな売名行為は認められない」というのだ……思いもよらない批判に対して、なるほ
 どそういう見方があるのだなと驚くと同時に、締め切り間際だつたということもあり、調整
 の時間もなかったので、そのときは引き下がった。
 しかし、経産省内部の密室で議論するよりも、早い段階でさまざまな論点を国民の前に出し、
 それをもとに議論をしてもらうことは有益だと思った。私は電力関係を担当しているわけで
 はなく、まったく所管外だから、それが経度省の立場だと誤解されることもないだろう。個
 人の意見として、一国民の意見として提言することは悪いことではないし、むしろ社会に貢
 献することになると思う。

 「売名行為」だというのは、その人がそういう願望を持っているからそう見えてしまうんだ
 よ、気にすることないよ」と、ある財界人はいってくれた。そのとき賞詞長に送った資料は
 巻末に補論として添付した。
  さて、ここまで、福島原発事故の最初の一日のごく一部の出来事を振り返りながら、いく
 つかの問題に触れた。日本の政治行政にはさまざまな問題があると痛感し、不安を感じた読
 者も多かったのではなかろうか。
  ちょっと思い出してみただけでも、次のように多くの論点が出てくる。
  まず、総理のリーダシップの問題と政治t導の在り方。民主党に政治主導かできないのは
 なぜか。リーダーシップ発揮のための条件は何か-。第一章で述べる国家戦略スタッフのよ
 うな自前の強力なスタッフが必要なのである。これがあれば大分ちがった展開になったので
 はないか。 

  リーダーシップとして重要な要素、それは、危急時にこそリスクを取って判断し、責任を
 取る姿勢だ。そして、その姿勢を官僚をはじめとする他のプレイヤーが信じられるかどうか、
 これか問題になる。
  日本の政治家や官僚の組織力の問題もある。緊急時に、日本の美徳「チームワーク」だけ
 で乗り切れるのか。がんばっている証しが徹夜徹夜の勤務という評価軸では、かえって時間
 を浪費して決断できないという罠に陥る。

  そして、モノ作りや技術カヘの偏重と過信もある。日本の原子力発電は絶対に安全だとい
 っていたが、それがいかに空虚なものだったか。アメリカのいう通りに原子炉を冷却し、窒
 素を注入するなど、まったく主体性は見えなかった。それ以外でも、日本の膜技術は世界一
 といっていたが、放射能除去技術でフランス企業に教えを請う。ロボット技術は世界一と自
 慢していたか、結局なかなか使えない………
  官僚の情報隠蔽体質が所管業界にまで蔓延している事実も挙げなければならない。安全規
 制が、国民のための安全規制ではなく、官僚自らの安全を守る規制になっていることもそう
 だ。



                                 
  2011年4月30日に内閣官房参与を辞任した東京大学教授の小佐古敏荘氏は、放射性
 物質の健康への影響や放射線防護策の専門家として、福島県内の小学校や幼稚園などでの被
 曝限度を年間20ミリシーベルトと設定したことを、「とても許すことかできない」と批判
 した。約8万4千人の放射線業務従事者のなかでも20ミリシーベルトもの大量の被曝をす
 る者は、平常時では極めて少ない、というのだ。これなども、政府や文部科学省の官僚が責
 任を問われないようにあらかじめ上限を引き上げておこうとしたのだとすれば、国民はなん
 のために税金を払っているのかわからない。

  福島原発の嘔故処理を見て、優秀なはずの官僚がいかにそうではないか明白になった。い
 や、無能にさえ見えた。専門性のない官僚が、もっとも専門性が要求される分野で規制を実
 施している恐ろしさ。安全神話に安住し、自らの無謬性を信じて疑わない官僚の愚かさ。想
 定外を連呼していたか、すべて過去に指摘を受けていた。ただ、それに耳を貸さなかっただ
 け「想定外症候群」と呼べる。

  原子力村という閉鎖空間にどっぷりつかってガラパゴス化した産官学連合体も恐ろしい。
  しかし、これらの問題は、決して今日に始まったことではない。何十年間という歳月をか
 けて築かれた日本の構造問題そのものである。未曾有の危機だから、それが極めて分かりや
 すいかたちで、国民の日の前に晒されたに過ぎない。「日本中枢の崩壊」の一つの縮図が、
 この危機に際して現れた、そういって良いだろう。


政体では巨大な企業団体組織の自己増殖をどのように制御するかの具体例がここでは語られてい
る。労働組合という相互扶助・同伴運動の最前線で関わっていた経験から言うと、個人的には立
派な人格者建ちも組織の渦中に埋没、あるいは結果として反動していく様を目撃してきたが、こ
れに抗う原則の「弱者のサイドに同伴・支援・組織化」を、厳しい現実の中、面倒で、辛くとも
堅持してきた。さて、次回は第1章に移ろう。面倒でも辛くても挟持してきた。

                                    この項つづく



【集団自衛権再考 Ⅰ】

カーター米国防長官は24日放送のCNNテレビのインタビューで、過激派組織「イスラム国」に
イラク中西部アンバル州の州都ラマディを制圧されたことに関し「イラク軍が戦う意志を見せな
かった」と述べ、イラク政府軍の士気の低下が過激派組織の伸長を許したと批判したという(上
図)。長官は「イラク軍は数の面で敵をはるかに上回っていたが、戦わずして撤退した。過激派
組織と戦うイラク軍の意志に問題がある」と指摘。「われわれは訓練と装備は供与できるが、戦
う意志は提供できない」と述べ、軍の士気を立て直すようイラク側に求めたという。 

しかし、イラク軍の厭戦感を叱咤するなどというこは、気持ちとしてわかるが、お門違いだと考
える。ここまでこじらせてきたのは、欧米、旧ソ連(現ロシア)・中国、イスラエルあるいは中
東関係諸国でありイラク兵達こそ憐れな被害者ではないか。蓋し、戦闘を端緒を切るのは容易だ
が、終結・撤退・収拾が困難であることは自明のこと。厭戦を叱咤する愚とは、この様なことを
さすのであろう。

「高橋洋一の俗論を撃つ」(2015.05.21 ダイヤモンドオンライン)で「集団自衛権を行使しない
のは国際的には非常識だ」を掲載していたので目を通したが、残念ながらこれこそが「俗論」と
いう感想に至る。例えば、中国が国際法を破り南沙諸島でフィリピンとベトナムと交戦状態に陥
った場合、国連で非難決議動議が常任理事国会議で中国側の拒否権で採択(ロシアは棄権ないし
は中国側に同調するかもしれな)→国連加盟国の多数から、直ちに、ソフトパワーの行使(人・
モノ・カネに交流停止ないしは封鎖)の同意を獲得し→同調諸国行使→中国は反発あるいは戦況
拡大→被害2国から軍事的支援要請→賛同国(米国・旧英連邦諸国・東南アジア諸国)が支援・
参戦→日本は軍事物資支援限定で国内意見を統一し、非派兵(=自衛隊派遣)条件支援→中国が
戦況拡大した場合、再度常任理事国会議で除名勧告を動議→臨時加盟国総会開催で中国の除名勧
告動議の上、2/3以上の賛同取り付ける→中国抜きで(自動的そのようになるだろう)国連軍
の派遣を動議→国連軍編成派兵(ここでは日本国内で派兵(範囲の規定化の上)動議し上態度決
定)→国連軍に自衛隊を加入編成し参戦・・・・・・というイメージがわたし(たち)が想定する集団
自衛権行使の――現実の中国はこのシナリオは決して選択しないし、するとしてもその前にロシ
アと同盟関係を結び、フィリピンやベトナムを宥めるようなあらゆる対抗措置を練ってくる――
イメージ(シナリオ)である。これは1991年に想起した考えを元にイメージものである。

                                    この項つづく 

                                     

独立自尊時代

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   発明は恋愛と同じです。苦しいと思えば苦しい。
               楽しいと思えばこれほど楽しいことはありません。
                                
                            本田 宗一郎

 

● バルーン振動式風力発電システム

「羽根のない風力発電登場」(『一本足打法の風力発電機』2015.05.24)で空気の流れによる渦
(ヴォーテックス)の力で上のほうが大きく揺れる。内部の下に組み込まれた反発する2枚の磁
石により、揺れにより生じる上下の動きで電力を発生させる。通常の発電機と同様に、電磁誘導
の作用で機械エネルギーを電気エネルギーへ変換する風力発電機の話題を取り上げが、風船(バ
ルーンの形状は微風でも激しく揺動するもの)を上げて、水平方向の揺動を上下運動に変換し振
動発電すればと考えてみた。

   US9033665B2 Propulsion device using fluid flow

これをイメージしたのが下図である。この新規技術の鍵部位は アンカーから立ち上がる繋留ワ
イヤと支柱との接触リングである。繋留ワイヤはバルーン用ガス(水素、ヘリウムなど)供給用
チューブ兼用で可撓性と伸縮性と気密性の富んだプラスチックチューブを使用し、チューブとバ
ルーンの接合部は特殊な弁と圧力センサを装備配置し圧力が降下すればガスを注入できる機構を
もつ。また、バルーンと繋留支柱のレベルは動機させる必要があるために支柱も伸縮できる特殊
なロック構造を持たせてあるが、バルーンの回収時はロック解除できるような行動になっている。
さて、接触リングには特殊な潤滑グリスを施し摩耗を防止しバルーンの揺動を上下運動に変換し
アンカー部にある電磁式発電器で電気エネルギー変換するものである。 このシステムの特徴は、
最適風力を得るためのレベル選択の自在性にある。


なお、発電器の一例として下図のブラーザー鉱業の新規提案を参考に掲載する。図1の下部のス
プリング(発条機構)と軽量で強靭でガス機密性をもつ繋留ワイヤが接続されている。また、こ
の図では巻き取り機構は掲載していないが、これにういては別途考案し、時宜をえて掲載する。
さらに、試作段階で、バルーンの長時間の機密性保持時間を保証するデータが提出されれば、ガ
ス注入機構とこれと関係する機構を排除し、量産試作に移し確認実証の上、実用量産入る。

 
まぁ~、これが成功すれば、「再生可能エネルギー百パーセント時代」は、この極東はジャパン
グから始まるから、当に「 ごくとうごくらく」(極東極楽)ということになり、めでたしめで
たしである。



   

【日本の政治史論 17:政体と中枢】 

 「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。  

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)  

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』    

    目 次    

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策     

  第1章 暗転した官僚人生 

                                                                             官房長官の恫喝に至る物語

 「ざっきの古賀さんの上司として、一言先はどのお話に私から話をさせていただきます」
 「 私は、小野議員の今回の、今回の、古賀さんをこういうところに、現時点での彼の職務、
 彼の行っている行政と関係のないこういう場に呼び出す、こういうやり方ははなはだ彼の将
 来を傷つけると思います……優秀な人であるだけに大変残念に思います」

  2010年10月15日の参議院予算委員会、仙谷由人官房長官のしわがれた声が議場に
 響いた。と、その瞬間、「何をいっているんだ。(参考人の)出席は委員会が決めたことだ
 !」「恫喝だ!」という怒声が飛び交い、議場は騒然となった。
  その後、繰り返しテレビで放映されることとなったこの場・『私は、驚き、困惑して事態
 を見守っているしかなかった。

  この日の朝、私は出張先の四国から急速、呼び戻された。午後の予算委員会の小野次郎議
 員の質疑に出席を求められたからだ。どうして、このような事態にかち至ったのか。実は長
 い物語がある・・・・・・。



  それは、当時の自民党衆議院議員・渡辺喜美氏(元・みんなの党代表)が2006年12
 月に行政改革・規制改革担当人臣となったときに遡る。 
  後でも詳しく触れるが、私は、改革を目指す政策を推進していたため、守旧派の経済産業
 省幹部に疎まれ、その年の7月に中小企業基盤整備機構という独立行政法人に飛ばされてい
 た。しかも、それまでのストレスかたたったのか、同じ月に人腸がんの手術をして、抗がん
 剤を飲みながら闘病を続けていた。

  そのような状況にあった仏のもとに、渡辺人臣から、「ぜひ会いたい」という電話が入っ
 た。人臣室を訪れると、「今度大臣に就任したので、補佐官として自分を助けて欲しい」と
 いう要請だった。
  私はそれ以前から渡辺大臣とは親しくさせていただいていた。尋常でない馬力を持ち、信
 念と実行力のある、最近では珍しい政治家だと思っていたので、思い切った改革に身を投じ
 るには絶好の機会だと思った。ゆえに、本来であれば二つ返事で馳せ参じたであろう。
  しかし、私のそのときの状況は、それを許すほど甘いものではなかった。手術後に腸閉塞
 を患うなど経過が思わしくなく、体力は極限にまで落ち込んでいた。抗がん剤の副作用で、
 電車通勤するだけでも全精力を使い果たしてしまうと感じる毎日であった。

 「手伝いたいのはやまやまだ、しかも、これから急速に体力が回復するかもしれない」――
 その場で様々な考えが頭のなかを駆け巡る。しかし、自分かやりたいという熱意だけで引き
 受けるのは無責任だ。もし、途中で私が倒れれば、まったく経緯を知らない代役を’リてて
 官僚と戦わなければならなくなる。しかもそのリスクはかなり高い。そんな状態でこの大役
 を引き受けろわけにもいかず、このときは涙を呑んで断った。
 
  しかし、後にそれが大正解だったことか分かる。私は翌年3月、また腸閉塞で倒れ、虎の
 門病院に担ぎ込まれたからだ。ちょうど渡辺大臣のチームが国家公務無法改正案をまとめて、
 まさに官僚と大戦争を行っている最中である。苦しさにあえぎながらも、『やっぱり受けな
 くて良かったな」と、自分の判断の正しさに妙に感心していたのを思い出す。

  ただ私は、渡辺大臣のオファーを断るときに、「私よりももっと役に立つ男がいますとい
 って、代わりにある若手官僚を渡辺大臣に紹介していた。それが、後に渡辺大臣の補佐官に
 就任し、自民党の参議院幹事長だった片山虎之助参議院議員や、財務官僚で官邸を事実上牛
 耳っていた坂篤郎官房副長官補と大立ち回りを演じて勇名を馳せた原英史氏(現・政策工房
 社長)である。

  彼が経産省の取引信用課長時代、厚氏は隣の消費経済課の課長補佐。一緒に法律改正など
 をした仲だった。しかし、私と彼はそれほど親しい間柄ではなかった。ともに法律改止を行
 う課長と課長補佐なら普通、補佐のほうから調整のため、いろいろと話を持つてきたり、国
 会回りをするときには課長に気配りしたりするので、当然、ある程度親しくなっていく。し
 かし、原氏は、他の補佐とはまったく違って、必要なこと以外は一切話さない。「ずいぶん
 クールな奴だ」と思っていた。しかし、仕事は飛びきりできるのである。

  実は、こういう素質が重要なのだ。つまり、仕事はできるが、上に変におもねることはな
 く、筋の通らないことを頼まれたら平気で断る、そんな人間。芯がしっかりしているのに加
 えて、できる男にありがちな出世願望もない。彼の能力とともに、この独特の強さは、渡辺
 喜美氏に通じるものがあると感じた。
  おもしろいことに、渡辺大臣と原氏にはもう一つ似たところがあった-即断即決だ。
  私が原氏に電話で事情を説明し、「渡辺大臣の補佐官になる気があるか」と聞いたとき、
 もちろん即答は期待していなかった。しかし、彼は一つ返事で「ああ、やりますよ」と即答
 したのだ。一瞬たりとも考える様了はなかった。私は大いに心配になって、「これをやると
 霞か関すべてを敵に回すことになるかもしれない。嫌だったら遠慮なく断っていいんだよ」
 といったか、「いや、大丈夫です」と何の迷いもないかのようだ。

  私は、「こんなに簡単に決めていいのか、もっと考えたほうがいいのに」「自分が声をか
 けたがために、彼はとんでもなく困難な人生に身を投じることになるのではないか」と、少
 し後悔したか、彼の微塵の迷いもない声を開いて、すぐに渡辺大臣に彼を紹介することにし
 た。
  渡辺大臣に原氏を紹介したのは内開府の大臣室であった。渡辺大臣は、私が紹介したとい
 うだけで完全に堅氏を信頼している。10分程度雑談しただけで、「よろしく頼む」と採用
 を決めた。そして、すぐに経産省に電話し、彼を一本釣りしたのだ。’よくもこんなに簡単
 に、自分にとって一番重要な人事を決めるものだ」と、そのとき払は心底驚いた。このよう
 に、渡辺大臣も即断即決の人なのだ。


                             官房長室への呼び出し

  しかし、一つ誤算かあった。私か原氏と.緒に大臣室に入ったという情報は、その日のう
 ちに内閣官房、経産省や財務省に流れていた。このため、後になって私が原氏を渡辺人臣に
 紹介したことか明らかになり、その後原氏が活躍すればするほど、私の霞が関での評判は悪
 くなっていったのだ。
  私は原氏一人にこの大役を押しつけるのは中し訳ないと思い、原氏をサポートする若手を
 一人つけるべきだとも思った。それが、金指壽(ひさし)氏だ。私の部下として働いたこと
 もあり、どこに出しても恥ずかしくない超一級の能力を持つ若干。彼も「ぜひやりたい」と
 いうことで、原氏をサポートすることになった。

  しかし、ここでおさまらないのが経産省の幹部である――。
  省内の職員の人事は大臣官房の仕事だ。たとえ管理職の人事であっても、大臣の意向など
 ほとんど関係ない。すべて參務力がお膳立てして、大臣はそれを追認するだけ。ところが、
 あろうことか、自分の大臣でない、しかも自分たちが「改M7‐派の跳ねっ返りだ」と馬鹿
 にしていた。
  渡辺氏が、大臣になったその勢いで、よその役所の役人、すなわち自分たらの部下を勝手
 に連れていく-とんでもないことだ。
  しかも当時、厚氏と金指氏はともに中小企業庁に属し、法律改正などの重要な職務につい
 いた.それを二人まとめて一本釣りされたのだ。通常は、一本釣りなどしないで、経度省の
 官房長などに打診をして、もし難色を示されれば、「じやあ他の人を推薦してくれよ」とい
 う手順を踏む。嫌だというのに無理やり連れていけば、その後、経度省との関係は悪くなる
 から、普通の大臣は諦めるのだ。現に、その後、私を使いたいといってきたある政治家は、
 経度省に打診して断られたら、あっさり諦めて、他の職員を登用した。

  しかし渡辺大臣は、そもそも経産省に打診する前に、本人たちと会って採用を内定してし
 まったのである。役所から見れば言語道断のやり方。ただ悲しいかな官僚は、他省庁の大臣
 とはいえ、本気になられると表以って・刃向かうわけにはいかない。あるいは、経度省はそ
 の程度の力しかないと見ても良いだろう、

  官僚にとってもっとも重要な権限である人事権を政治家には鯛されておもしろいはずがな
 い。その矛先は私に向かった。
  ある日、私は経産省の官場長室に呼ばれた。「渡辺大臣とは仲がいいのか」「渡辺大臣室
 に行かなかったか」「原君を紹介しなかったか」など、そんなことを遠回しにねちねちと聞
 いてくる。本当は私が二人を紹介したと確信しているのに、証拠がないからはっきりそうと
 はいわない。払は適当にはぐらかしながら、最後はこういった。
 
 「でも、官房長、良かったですね。行政改革とか公務員制度改革とか、これからの政府の最
 重要課題ですよ。その担当大臣に経産省の職員を使ってもらえるんだから、本当に名誉なこ
 とですよ,そうでしょ?‘
  私は心底そう思っていたのだが、相手からすれば、実はこれは最大級の嫌からせである。
 なぜなら、建て前上は、私のいうことは正し≒官房長としてはこれを否定したいが、もし否
 定してそれが外に伝われば、「改革を妨害する」といって叩かれる。他方、「その通りだ」
 といってしまったのでは人事権を放棄したことになるし、私の行為を事実ト追認してしまう
 ことになり、官房長としての浩券にかかわる。完全にディレンマに陥るのだ。
  結局、官房長は、黙ったまま苦虫を噛み潰したような傾をしていた。


                           安倍総理退任の襄で官僚は

  さて本題に戻ろう。公務員制度改革の流れは、実は安倍音二内閣から始まっている。ただ、
 2006年に政権に就いた安倍総理は当初、公務員制度改革にはさほど熱心ではないと見ら
 れていた。著書の『美しい国へ』のなかで公務員制度改革に言及した部分はなかった。
  そもそも自民党政権は、公務員制度改革に積極的だったわけではない。改革の権化のよう
 にいわれる小泉純一郎総理でさえ、天下りをはじめとする公務員制度改革には遂に手をつけ
 ることはなかった。それほどの難題になぜ安倍晋三総理が取り組んだのか――。

  ここから先は、私の推測だが、安倍総理は「戦後レジームからの脱却」を掲げて教育改革
 など様々な分野で野心的な施策を打ち出そうとしていた。しかし、戦後レジームからの脱却
 というほどの大改革を実行しようとしたとき、最大の障害になるのが、まさに戦後レジーム
 の中核である官僚システムであるということに気づいたのだろう。

  大きな改革を行えば、必ず現行のシステムに寄生した既得権グループが被害を受ける。業
 界も族議員も、そしてそれと一体となった官僚も被害者になる。さらに、既得権グループが
 本気で抵抗してくるときに、抵抗のための理論的支柱を提供し、世論対策や国会対策等すべ
 ての面で高度な戦略を立て、事実上の司令部となるのが霞が関の官僚システムである、とい
 うことに改めて気づいたのではないか。大きな改防を成し遂げるには、なによりも抵抗勢力
 の中心的存在である官僚システムを変えなければ、紡局、改革は絵に描いた餅に終わる。

  そして、もう一つ、安倍政権の「美しい国、日本」として掲げられた製作アジェンダか必
 ずしも国民の心に響かず、逆に民主党の「消えた年金」攻撃などによって支持率が下がるな
 か実は公務員制度改革が国民に受ける数少ない政策テーマだということか明らかになってき
 たことがある。それを如実に示したのが、渡辺喜美行政改革相当大臣の公務員制度改革への
 猪突猛進ぶりと、その姿勢に対する国民の高い支持だった。

  渡辺大臣か「過激」といわれる(実際には過激でも何でもなくごく当たり前の改竹案だっ
 たのだが)国京公務員法の改正案を手に官僚と真っ向から対峙し、また、官僚に依存しきっ
 た自民党の長老たちの抵抗と戦う姿を、マスコミは時間と紙面を割いて大きく報道し続け、
 それに国民は大声援を送った。安倍総理はその勢いを見て意を強くし、最後は腹をくくって
 大改革に賭けたのだろう。
 
  安倍総理といえば退任時の痛々しい姿ばかりを記憶する力が多いかもしれないが、最後に
 成し遂げた国家公務貝法改正は、公務員による天ドりの斡旋を禁止するという、霞が関から
 見ればとんでもない禁じ手を実現したもの。当然、これに対する霞か関の反発は尋常ではな
 く、それが官僚のサボタージュを呼び、政権崩壊の一因となったといわれている。


    


                         前代未聞、安倍総理の離れ業

  さて、渡辺チーム発足時に話を戻そう。自民党の多数派である守旧派と官僚が結びついた
 政官連合に対して、渡辺大臣は原、金指というわずか三人人の精鋭部隊で立ち向かうことに
 なる。
  そのときの改革の内容は、大きく分けて二つ。省庁による天下り斡旋禁止、そして年功序
 列を廃して能力実績主義を導入することだ。両方とも現在の官僚システムの本丸に杭を打ち
 込む極めて重要な改革である。

  当然のことながら、これに対する官僚の抵抗には凄まじいものがあった。そのエピソード
 には事欠かない。詳細は原英史氏の著書『官僚のレトリック』に譲ることにして、ここでは
 一つだけ紹介しよう、

  一言で天下り禁止といっても、禁止するなら禁止すべきなんらかの行為を特定しなければ
 いけない。民間企業に行くことすべてを禁止するのは明らかに行き過ぎだろう。そこで、ヘ
 ッドハンティングなど自分の実力で転職することは良いか、省庁がその権限や予算を背景と
 して天下りを押しつけるのが問題で、こうした天下りの斡旋だけを禁止すれば良いのではな
 いか、という議論が出てくる。

  他方、そもそも省庁が斡旋するとなぜ、企業や団体がそれを受け入れるのか。やはり裏に
 は必ず権限や予算を背景とした無言の圧力を感じるからではないか、という考え方がある。
 そうだとすれば、省庁が斡旋することはすべて禁止したほうが良い、という考え力に至る。
  つまり、禁止するのは省庁による天下りの「斡旋」すべてなのか、そうではなくて、予算
 や権限を背景としたことが分かる「押しつけ的な斡旋」に限るのか、という争いだ。

  単純に考えれば悪い斡旋だけを禁止すればいいのだから、「押しつけ的な斡旋」だけ禁止
 すればいいように見えるか、そうしてしまうと、実は禁止の効果はほとんどゼロになってし
 まう。なぜなら、そもそも押しつけているかどうかを証明するのが極めてむずかしい。受け
 入れ企業は無言の圧力を感じているから押しつけられました」とは口か裂けてもいえない。
  役所の側は、「企業がぜひに、というので、その要請に応えただけです」という。そうな
 れば押しつけはなかったということになってしまう。現に、官僚たちは、役所が押しつけ的
 な斡旋をしたことなど一度もないという立場を一貫して取ってきた。

  途中何度も落とし穴に嵌まりそうになりながらも、原・金指チームの頭脳とかんばりに支
 えられた渡辺大臣は、最後まで「斡旋」すべてを禁止する方針を貫いた。
  途中、各省の事務次官かスクラムを組んで抵抗する塔而もあった。これに対し安倍総理は、
 次官会議の議論を無視するという当時としては前代未聞の離れ業で応じた。最後はこうした
 尋常ならぬ総理のリーダーシップで、この画期的な国家公務員法の改正案を成立させるので
 ある。




  私はこの動きを裏から見ていた。当初は、原チームが本当に官僚連合軍と戦えるのか不安
 に思ったりもした。現に金指氏は、最初のうち私に頻繁に連絡を寄越し、その苦境を伝えて
 きた。私はそんな肢を勇気づけ、また、ときにはアドバイスもした。

  こんなことがあった。

  省庁による天下りの斡旋を禁止する場合、それに違反したときにどういう罰を与えるか。
 刑事罰にすれば捜査当局の強制的な捜査でな件できる。しかし、単なる懲威処分にとどまる
 なら、懲威権を持つ人事当局か調査することにしかならない。天下りの斡旋をするのは人事
 局だから、それが問遊になったとき、人事当局がその人事当局を調査することになり、これ
 では泥棒が泥棒に「泥棒したか」と聞いているようなものである。従って、刑事罰の対象に
 すべきだと私は考えた。

  原チームもそれを目指して動いていたが、法務省も警察ももちろん協力的ではない。そこ
 で私は、東京地検の特捜部に籍を置く友人の検事に相談した。どのような条文にすれば実際
 に使えるか、現場の意見を求めたのだ。その結果を金指氏に伝えた。しかし、天下り斡旋を
 禁止するだけでも官僚から見れば天地がひっくりかえるような暴挙だ。それを刑事罰にする
 のは当時としてはハードルが高すぎた。結局、刑事罰にすることはできなかった。この点は
 原氏も残念がっていた。

  

  2009年秋、日本郵政の社長に元大蔵次官の斎藤次郎氏が、副社長にも先述の元財務官
 僚、坂篤郎氏が就任した。これは閣僚が行ったことだから「省庁職員」による天下りの斡旋
 ではないと民主党は強弁したか、実はそのときもう一つ疑念を呼ぶ「渡り」人事が行われて
 いた。日本郵政の副社長に就任した坂氏が就いていた日本損害保険協会の副会長ポストに元
 国税庁長官(財務官僚)が就任したのだ。これは閣僚による人事ではない。現職の官僚か絡
 んでいるのではないかと国会でも問題になった。

  その後半年近くたってから、民主党は「調査の結果、省庁による斡旋はなかった」と答弁
 した。どのように調べたかと聞かれて、金融庁の課長が担保協会に問い合わせたという。ま
 さに心配していたことが起きたのだ。役人が調べてしらを切る。それ以上は実効性のある調
 査はできない。

  さらに、2011年の正月の紙面を賑わせた、資源エネルギー庁長官が退任4ヵ月後に所
 管の東京電力に天下りした事件でも、やはり枝野幸男官房長官は、「経済産業省の秘淑[課
 長が東京電力に聞いたところ、役人による斡旋はなく、本人に企業が直接要請したというこ
 となので、天下りの斡旋はなかった」と、胸を張った。これまた泥棒に調査をさせてしまっ
 たのだ。
  少し脱線してしまったか、原チームは、1、2ヵ月もすると完全に独り立つし、私への連
 絡も次第に頻度が低くなっていった、大変な成長ぶりだ。私はこのとき思った。
  若い人たちの能力とはそういうものだ。ミッションと権限を与えれば、能力のある者は年
 齢に関係なく大きな力を発揮する。しがらみがない分、年長者よりも大胆な改革に邁進でき
 るのだ。やはり、若手を抜擢する仕組みを作らなければいけない。


最後の、三行の部分は、わたしの小さな経験のエッセンと全く符合するものであり、未来を見つ
めるものにとっては至極、当たり前の、自然な帰結なのだが、永田町や霞が関界では、これを
"革命"(再生・再会う・復活)と 言うらしい。

                                    この項つづく 

 ● 今夜の一品

独立時計師アカデミー

政局は一気に  "独立自尊" を問われることになる。これは、ニホン・コクミンへの、「武断国
家主義へのノスタルジア」以外への問いかけであることを肝に銘じよう。^^; !

 

           

 

 

 

 

 

再生エネ百パーセント時代

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    自ら足れりとし、自らよしと するのは、夜郎自大というて、
         最も固陋(ころう)、最も鄙吝(ひりん)な態度なのじゃ。
                                
                              南国回天記

 

 

 

 

 



【再生可能エネルギー百パーセント時代 Ⅰ】


● エタノールから電力変換できる触媒ができたって?

バイオエタノール燃料をディーゼルエンジンなどの内燃機関で燃焼させて電力を得るためには、
数百度の高温で空気と燃料を反応させ、窒素酸化物や一酸化炭素など有害排気ガスが発生する。
クリーンなエネルギーをえるには、エタノールを用いたポリマー電解質膜燃料電池の研究が進め
られてきた。これは、水素やメタノール、エタノールなどの燃料分子を電気化学的に酸化し、化
学エネルギーを電力の形で取り出すことで、酸化分解すると無害な水や二酸化炭素に変わるため
有害な排気ガスが発生しない。

エタノール型の燃料電池Cの開発がなかなか進まなかった要因の1つに エタノールが持つ「炭素
ー炭素結合」を効率よく切断できる触媒がなかった(上図/上)。今回、物質・材料研究機構の
阿部英樹らの研究グループは、常温常圧でエタノール燃料から効率よく電力を取り出せる触媒の
開発に成功する。発見した新たな触媒は、タンタル(Ta)と白金(Pt)で作るTaPt3合金ナノ粒子
で、常温・常圧でエタノール分子の炭素ー炭素結合を切断して電力を取り出すことに成功(上図
/中)。 このTaPt3ナノ粒子を触媒として使用し、常温常圧の水溶液中のエタノール燃料の酸化
実験を行い、高いエタノール酸化電流密度を実現(上図/左下)。また、TaPt3ナノ粒子を組み込
んだ燃料電池は、従来触媒のよりも高い出力密度を実現できたという(上図/右下)。

今後の解題は、まず、TaPt3ナノ粒子の合成収量向上――現時点の合成収量は数10ミリグラムだが、
これをPEMFC1スタックに必要な数グラムレベルに引き上げる――をめだすとのこと。それにして
もどう言うことだ、10数年前の事業開発としてバイオエタノールに焦点を当て調査した頃を考え
ると、そのころの事業絞り込み調査の全てが順調に進展しているではないか。これは驚きだ。

ところで、タンタルとの関わりを考えていたら、写真製版適用技術の1つのプロセスであるレジス
トの架橋剤のクロム酸廃液のリサイクルの減圧濃縮装置にチタン+ステンレスの蒸発缶に使ったこ
とを思い出した。いまもあるかどうか分からないが昭和鉛鉄という会社に発注した記憶がある(※
2004年に株式会社SPFに社名変更している)。

  タンタルとは何か

    

【日本の政治史論 18:政体と中枢】 

 「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。  

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)  

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』   

    目 次    

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策     

  第1章 暗転した官僚人生 

                                                                             
                       中曽根元総理の「これは革命だよ」

  さて、その後、安倍政隆は渡辺大臣の奮闘の成果である国家公務員法改正を成し遂げたも
 のの、民主党の消えた年金攻撃の前に支持率が低下、参議院議員選挙に惨敗し、最後は安倍
 総理の体調不良も重なって、2007年8月17日に退陣に追い込まれる。
  その後を継いだ福田康夫総理は奇をてらう政策を嫌うオーソドックスな自民党の政治家で
 ある。われわれ改革漱は、公務員制度改革は大きく後退するだろうと予想した。案の定、福
 田総理は公務昌制度改革についてはほとんど熱意を示さないばかりか、むしろ官僚の側につ
 いて渡辺大臣の改革案の実現に抵抗したようである。

  安倍内閣のときに「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」(有識者懇談会)という
 総理の諮問機関ができていた。有識者懇談会には堺屋太一、尾山太郎、佐々木毅といった改
 革に熱心な論者が参加。堺犀氏が官僚を排除し、その後の公務員制度改革の基本構想を報告
 書としてまとめ上げた。後の『国家公務員制度改革基本法」のベースになるものだ。




  官僚から見ると驚天動地の内容を含んだ究極の改革案に対して、おそらく官邸官僚にその
 危険性を吹き込まれたのだろう福田総理は、その報告書の案を渡辺大臣に示されたときに受
 け取りを拒否したほどだったという。最後にはこの報告書を受け取るのだが、そのときも、
 「日本は政治家が弱いんですよ。こういう国では官僚は強くなければいけないんですね」と
 いう迷言を残したそうだ(この間の経緯は渡辺喜美氏の著書『絶対の決断』に詳しい)。

  この間、官邸の官僚はもちろん全省庁の官僚か敵に回ったのは当然としても、政府内でも
 官房長官などが官僚側に立って、渡辺大臣の改革の足を引つ張ったという。自民党の行政改
 革推進本部も同様だった。つまり、政府与党が官僚と.体となって渡辺人臣の改革をつぶし
 にかかったのだ。
  詳しいことは後に述べるが、国家公務員制度改革基本法は、抜本的な公務員制度改革の哲
 学を示すとともに、「国家戦略スタッフの創設」「内閣人事局の創設」「キャリア制度の廃
 止」「官民人材交流の促進」などを柱とし、実際に改心すべき項目そしてスケジュールを網
 羅的に盛り込んだものだ。

  公務員制度改革の歴史のなかで、ここまで踏み込んだ改革の議論がなされたことはない。
 中首根康弘元総理か「これは革命だよ」といったそうだが、霞が関の旨抗は並大抵でなく、
 福田政権で孤軍奮闘、公務員制度改革を推進する渡辺喜美大臣の周囲には悲壮感さえ漂って
 何度も頓挫しそうになりながらも、渡辺大臣の情熱と原袖佐官らの緻密なサポート、マスコ
  ミを巻き込む作戦が功を奏して、国家公務員制度改革基本法は、なんとか成立にこぎつける。
   2008年6月6日、この法律が衆議院内閣委員会で可決された後のインタビューで、渡
 辺大臣が涙をこぼしたのを見ても、この法律の誕生がいかに難産であったか、想像がつこう
 というものである。

                                   渡辺大臣と仙谷大臣の違い

  国家公務員制度改革基本法の成立は、堅く閉ざされた伏魔殿の扉をようやくこじ開け、こ
 れから続くであろう茨の道の出発点にやっと立てたという段階に過ぎない。大きな一歩では
 あつたが、本当の.正念場がやってくるのは成立後だった。そして、その茨の道を、私が一
 人で歩くことになるとは夢にも思っていなかった。

  基本法では、総理をトップとする閣僚クラスで構成される国家公務員制度改革推進本部を
 設置し、そこに顧同会議という外部有識者の会議を設けて具体化への検討を始めることにな
 っていた。また改や進本部には参務局を設け、その作業をサポートする体制となっていた。
 この顧問会議と事務局がいねば実行部隊である、ここが今度は霞が関との激しい攻防の場と
 なる。

  基本法に則った改革が成功するか否か、その一つの鍵を握っているのは、改革推進本部事
 務局のメンバー選定だった。普通、事務局は各省から出向した官僚で構成する。しかし、事
 が公務員制度改革ゆえ、官僚中心の事務局であれば、改革は骨抜きにされかねない。
  それが痛いほど分かっている渡辺大臣は、民間出身者を数多く起用するなど、民間の活力
 を入れた。しかし、霞が関のこするいやり方を知らない民間出身者かいくら束になってかか
 っても、官僚スタッフにうまくやられる恐れが強かった。

  そこで渡辺大臣が事務局幹部の一入として強力に推薦したのが私だった。当時、急進的な
 改革派とのレッテルを貼られている私の抜擢には、官邸や財務省に根強い拒絶感があったと
 聞いている。
  渡辺大臣に当時間いた話では、福田総理も私の登用に難色を示したという。私は耳を疑っ
 た。私は福田総理とは一度も会ったことかなかった。二橋正弘官房副長官か反対していると
 も聞いたが、ニ橋氏とも面識はなかった。つまり、二橋氏以外の官邸宮原が私の採用を阻止
 しようとしたのだ。後に仙谷行政刷新担当大臣が私を登用しようとして断念したのと酷似し
 た状況である。 



  にもかかわらず、私の起用が決まったのは、渡辺大臣の熱意が勝つたからだ。官僚の差し
 金を跳ね返しての強攻策である。後に述べる通り、仙谷行政刷新担当大臣は当初、私を登用
 しようとしたが、霞が閲の反対に遭うと、あっさりと方針を転換したという。ここが仙谷大
 臣と渡辺大臣の力の差である。覚悟の違いといってもいいだろう。
  改革を成し遂げる人と妥協で道を誤る人。両方を私は目の前で見たことになる。貴重な体
 験だ。

                          卑劣な手段に出た元総務次官

  かくして私は、2008年7月に発足した国家公務員制度改革推進本部事務局の審議官に
 就任した。しかし、その出だしか、実は私の官僚人生暗転の始まりだとは、夢想だにしてい
 なかった。
  官邸でのすったもんだがあったため他の幹部はすでに着任しており、私だけ遅れて7月こ
 8日に着任した。事務局内の管理職で改革派とはっきり分かっていたのは、原英史、石川和
 男(元経済産業省)、機谷俊夫(元オリックス球団代表)、菅原品子(経済同友会部長)各
 氏(いずれも企画官)と、その他.部の民間人と数名の若予言愕くらいである。後はほとん
 どが守旧派または事なかれ派だとすぐに分かった。五分話せば分かるほどはっきりしていた
 といっていい。各省か既得権確保のために送り込んだ、いわば精鋭部隊だ。

  もちろん若手には、他にも改革の気概に燃えている者がいたかもしれないし、議論してい
 けば改革の意味を理解してくれる人もいただろう。しかし、守旧派のオルグも徹底していた。
  いずれにしても少数派に甘んじるしかない。それでも、渡辺大臣のりIダーシップのもとで
 少数派か主導権を鯉る、それが私の作戦だった。
  ところが、である。それから数日も経たない8月1日、福田政権の内閣改造によって渡辺
 大臣は退任させられてしまうのだ………

  守旧派の防波堤の役割を果たしてくれるはずの渡辺大臣の退任が決まって、払は途方に暮
 れた。当時の気分を振り返れば、無人島に島流しにされたような、といえばいいか。気を取
 り直して改革派を中心にして一から議論を始めたものの、すぐさま官邸内の守旧派官僚の激
 しい抵抗に晒された。

  しかも、政策論争ではない。霞が関の上層部がこぞって敵に回り、事務局内でも、改革派
 官僚の旗頭と見られていた私へのゆえなき誹謗中傷が始まったのだ。
 「古賀の主張は全部、経産省の陰謀だ。古賀は一部の官僚に特権を与える仕組みを作ろうと
 画策している」との趣旨の資料がカラーコピーされ、マスコミや労働組合だけでなく、驚い
 たことに民間から出向していた事務局員にまでばら撒かれたのだ。

  加えて、そんな卑劣な手段に出たのが事務局次長の一人(元総務省次官)と知って、私は
 一層、暗澹たる気分に陥った.
  それでも政治か公務同制度改革に積極的ならば救いもあったが、政権与党の自民党の多数
 派は霞か関寄りでやる気が感じられない。もちろん、自民党のなかには、中川秀直、塩崎恭
 久、河野太郎、柴山昌彦、菅原一秀、衛藤晟一、山本一太、世耕弘成、丸川洙代、平将明、
 そして、前大臣の渡辺喜美各議員といった熟心な先生方がいたものの、あくまで少数派でし
 かなかった。

  当時、われわれ改革派を援護してくれたのは、皮肉にも野党だった民主党である。民主党
 の行政改革調査会の幹部は改革に熱心な議員が多く、なかでも「3M」と称されていた松本
 則明(行革調査会長)、松井孝治{同会事務局長)、馬淵澄夫(同会天下り・談合拒絶担当
 主査)の三氏による事務局守旧派の暗躍への糾弾で、少数漱だったわれわれが劣勢を跳ね返
 した時期もあった。

  だが、民主党の支持母体の一つでもある労働組合が真っ向から改革に異を唱え始めると、
 行政改革調査会の幹部たちの声もトーンダウンしていく。


                             福田総理退陣の直後に

  政府内では誰もやりたくない改歌を成し遂げるにはどうしたら良いか。世論を喚起するし
 かない。これが私の考えだった。国民の支持、これが究極の支えである。
  世論喚起の殼大の推進力が顧問会議だった。福田総理は当初、顧問会議について、官僚推
 薦を中心とする穏健な人選を進めていたという。渡辺大臣の後任の茂木敏充大臣もそのライ
 ンに乗りかかったが、渡辺大臣か、もし、いい加減な人選をするなら外から徹底攻撃するぞ
 と脅しをかけてくれたそうだ。その結果、堺屋太一、屋山太郎という改革急先鋒がメンパー
 に入ることになる。この他、佐々木毅学習院人教授、桜井正光経済同友会代表幹事が、その
 後の改革の推進役になっていく。

  守旧派は当然のことながら、この顧問会議に陽が出「たることは避けたい。発信力のある
 メンバーに正論を見張されると、世論がそれになびく恐れが強い。なるべくその開催回数は
 少なくしたいし、会議の内容もできれば隠したい。
  そういう思惑で、第一回顧問会議は、高田総埋か退陣表明した2008年9月1日直後の
  9月5日に行われた。福田総理の第回の会議での挨拶は、「私がその最初をこうやってお目
  にかかって、おしまいになってしまうということは非常に残念でございまして申し訳なく思
 いますけれども」という何とも気の毒なものになってしまった。要するに「こんにちは、さ
 ようなら」とだけいわせたのだ。

  内閣の力が一番落らているときを狙って、役所主導で進めようという魂胆が見え見えだ.
 こんな会議をよくも強行したものだ。さらに驚いたことに、第二回は福田内閣総辞職の前日
 の9月23日に行った。明日なくなる内閣の大臣ではやる気もないだろう、ということだ。
  しかも、第一回の会議はわざとインターネット中継なしで行う。顧問会議から中継せよと
 いわれると、分かりました、といって第二回は中継するというが、当日になると手違いで中
 継できません、という。結局、中継は第三回からになった。

  顧問会議か公開になると、今度はその下にできたワーキンググループを非公開にしようと
 する、第.回は勝手に非公開にしたが、これもメンバーから異論か出て公開になった。
  極めつきは、ワーキンググループのコントロールに失敗すると、ついに役人だけの検討会
 議なるものを作ったこと。役人だけだからメンバーは誰も公開しろなどとはいわない。内密
 に検討が進むことになった。すべてがこんな具合だ。

  ちなみに、2010年に話題になった天下りの代わりに現役のまま独立行政法人や政府系
 機関、民間企業に高齢職員を出向・派遣しても良いことにする案や、窓際の高給スタヅフ職
 の創設などは、官僚だけで行うこの検討会で当時から密かに練られた案だった。しかも、実
 はそのような検討を勝手にするのはけしからん、といって顧問会議に検討を止められていた
 にもかかわらず、それを無詞して官僚の独断で進められた極秘作戦だつたのだ。

  ここから分かる通り、公務員制度改革は、密室で官僚に案を作らせては決していけないの
 だ。基本法とその政令ではっきり決めた通り、顧問会議という公開の場で、国民にすべての
 議論を公開しながら進めなければならない。公開を没入が嫌がるということは、逆にいえば
 公開することか効果的だということだ。

  政隆交代後、民主党は公務員制度改革の案を作ったが、労働基本権の問題を除けば、まさ
 に、密室で官僚が作った案をベースに話が進んだ。なぜ顧問会議を無視するのか。政令で設
 置が決まっているのに、これを無視した。公開の場でやれば、組合に都合の悪い議論が出て
 きて、これに抵抗しにくくなるからではないかと思う。これではまともな改革などできない。
  民孔党の政策決定のやり方はこういう例が多い。誰がどういう権限でどう決めていくのか、
 はっきりしないことが多すぎた。 

  事業仕分けがその典型だ。仕分け人がどういう権限でどこまで決められるのかまったく分
 からないまま、結局、最後はまったく無視されて、どうしようもないという床たらくである。
  やはり、法律・政令でしっかり権限と組織を明確化して検討、決定すべきである。
  税と社会保障も同じ。自民党政権時代に法定された経済財政諮問会議も法律は存在してい
 るが、これも活用しなかった。その代わりに、法律に何も澄いていない様々な会議や組織か
 権限等が不明確なまま、服要な政策立案・決定に携わってきたのだ。弁護士の仙谷由人氏や
 枝野幸男氏など法律の専門家が多い割りに、はなはだ杜撰な国家運営だったといわざるを得
 ない。

 
子細に知れば知るほど、小狡く鄙吝な集団?への暗澹な思いを禁じえない。

                                                       この項つづく

 

 ● ポスト大阪都構想論 Ⅱ 


                       『改革反対の合従連衡派』

                                             しが彦根新聞 押谷盛利

  23日付「大阪の将来を潰した反対派」の時評は多くの読者から賛成の意見を頂いた。こ
 のなかで、ぽくは橋下維新が圃いた大阪都は日没する大阪ではなく、東京と比肩する日本の
 第2首都構想によるもので単なる大阪経済の地盤沈下対策ではないと書いた。そして、その
 時評の末尾で、なぜ、自、公、共、民、社など与野党の混成集団が大阪都に反対したのか。
 彼らを「井の中の蛙」集団ときめつけたぼくは「なぜ改革に反対したのか」と疑問を投げか
 けながらも「それは現状の生温い湯に浸かって、自分たちの地位、利権にあぐらをかきたい
 からである」、「彼らにはあしたの大阪がなく、あしたの自分が存在するだけである」、と
 も書いた。

  あらためて、なぜ、改革に反対したのか、所見を述べる。

  歴史をさかのぼれぱ、日本に仏教が入るとき、これを歓迎するか、反対するか、大論争が
 起き、反対派の物部氏が賛成派の蘇我氏に滅された。
  後醍醐天皇が幕府から政権を奪回しようとした際、賛成派の新田、楠木を破って、最終的
 に反対派の足利尊氏が幕府体制を継続した。
  明治維新前夜、薩、長、土の反体制派(反幕派)の改革に対して、徳川方の石頭は近藤勇
 などの暴力集団をつかって改革を阻止しようとした。
  歴史が証明するように、改革には必ず反対勢力が立ちはだかるしかもその反対は共通して、
 いままで通り、既往の路線継承だった。それは、改革によって自分たちの安住の場がくつが
 えされるという自己保身からだった。

  今回の大阪都構想は、安倍総理以下、政府も好意的、賛成派だった、にも拘わらず、大阪
 の自民党は反対の旗振りをした。民主、公明、共産、社民はみな反対したが、これは大阪府
 議栽大阪市議会で最大の組織を誇る維新を潰すのが、自分たちの生きる道につながる合掌連
 合のさもしさである。
  そこにあるのは、いままで通りの市会議員で幅をきかし、大阪都による市議失職を防ぐ自
 己防衛心だけである。
  ぼくは合従連衡という難しい言葉を出したが、これは古代中国の戦国時代に由来する言葉
 で、そのときどきの状況に応じて、いくつかの勢力が結びあうことをいう。

  要するに、自分たちの政治的生命を安定し、いついつまでも続けるには維新を叩くしたか
 ない、というのが反対派の連合軍の真意であり、言葉を換えれば、改革によって、自分たち
 の政治的ポストや力を失うことを恐れたからである。それは自分たちの保身優先で、国家や
 大阪の将来への関心はゼロというべきだった。
  大阪都構想は他の府県や市町では将来のあるべき姿として評価されていることも知らねば
 ならぬ。
  読売19日「滋賀販]によれば、三日月知事は「今回の投票は住民の意思を尊重するプロセ
 ス自体は意義があった」「関西から元気な地方をつくっていこうとし、行政の改革に斬り込
 もうとする志の根っこは通じるところがある」と好意的に述べている。また、大津市の越直
 美市長は、「大阪がきっかけとなって地方自治体のあり方を考え直し、日本が変わる大きな
 チャンスだったが残念」とコメントしている。連合軍の日本に与えた損失は計り知れない。
  
  維新よ、国民の支持と期待を忘れるなかれ。

                                  
賢者は歴史から学ぶとは言い古された常套句で、ここでの用法が適切かどうかは読者に委ねると
して、この時評は真っ当だと考える。

 

 ● デジタルなウインドウ

4Kビデオを貴方の部屋に、デジタルディスプレイする。そんな時代が来ている。 

           

 

 

 

新風!豆腐クリーム

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    継続は力なり  /  鮎川義介著『物の見方考え方』


     ※ "Continuity is the father of success"  Oxford University Press,1992

 

 

● ペロブスカイト光ダイオード登場!

桐蔭横浜大学大学院工学研究科の宮坂力教授らが「ペロブスカイト」結晶構造つ化合物で、光を
大電流に変換する光ダイオードの開発に成功する(2015.05.22 日刊工業新聞)。光検出感度は
1ワット当たり620アンぺアで、弱い光を大電流にする力は一般の光ダイオード比で2400
倍。材料は安価でペンキのように塗って大面積の光ダイオードを作れる特徴がある。

 

A Switchable High-Sensitivity Photodetecting and Photovoltaic Device with Perovskite Absorber

光ダイオードは光エネルギーを電子信号に変える半導体素子。一般にシリコンで作られ、一つの
光子を一つの電子に変える。一方、開発したペロブスカイト光ダイオードは外部から0.5~0.9
ボルトの低電圧をかけると入射した光子が素子内で2400倍の電子に増幅される。 

宮坂教授は、増幅メカニズムは解明されていないが、ペロブスカイトが持つ分極する特性が影響
していると推察。電子を増幅する光ダイオードは、電子の雪崩現象を起こすアバランシェ光ダイ
オードが実用化済みだが、増幅率は5千~6千倍とペロブスカイトより大きいが、駆動には数10
ボルトの高電圧を必要として、製造に高真空状態を要し、材料にシリコンやガリウムヒ素の高品
質な結晶を使うため高価である。

これに対して、ペロブスカイトは1平方メートル当たり200円程度で材料費は百分の1以下で
済む。宮坂教授は2009年にペロブスカイトを使った太陽電池を開発。今回は太陽電池として
の発電性能を評価する過程で、ペロブスカイトに外部から低電圧をかけ、光を照射すると大電流
が流れることを発見。それを踏まえ、素子内で電子を受け取る緻密な酸化チタン層に細かいバイ
パス構造を作り、光照射で大電流が流れる光ダイオードを開発する。当に、継続は力なり。 

 

● タイで日式新幹線導入で合意

27日、都内で日本・タイ両政府が会談し、タイがバンコク―チェンマイ間で計画している高速
鉄道に日本の新幹線を導入することで合意し、覚書を交わした。海外での新幹線の採用は台湾に
次いで2件目。過去に両国が個別に実施した調査では事業費1兆円強と試算している。今後は両
国合同で行うFS(事業化調査)で事業費を精査するほか、資金面の手当てなども協議する。バ
ンコク―チェンマイ間は現在、在来線が走っている。総延長距離は約750キロメートル、新幹
線の整備では可能な限り直線に近い路線で建設するので660キロ―670キロメートル程度と
想定。同路線の高速鉄道整備について日本企業では、JR東日本、三井物産、日立製作所、三菱
重工業が企業連合を組んで検討しているという(上図)。

 

Thailand-Japan rail project gets cabinet green light | Bangkok Post: business

    

【日本の政治史論 19:政体と中枢】 

 「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。  

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)  

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』   

    目 次    

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策     

  第1章 暗転した官僚人生      
                                                                        
                       
                 係長が総理の気持ちで作った国家戦略スタッフ

  事務局や官邸、さらに与党のなかで、政策・論で大きな抵抗かあったテーマの一つに国家
 戦略スタッフ・政務スタッフの創設がある。国家戦略スタッフとは、簡単にいえば、総理が
 直接任命する自分の頭脳、手足の一部のように働くスタッフであり、いわぱ総理の分身であ
 る。

  政治主導、総理主導を実現するといっても、実際は官僚を動かさなければならない。とこ
 ろが、官邸の官僚は財務省を中心に各省からの出向者の集まりであり、真に総理の意のまま
 に動く集団にはなっていない。基本的には出身の各省の意向に添いながら、官僚の利権を守
 ろうとする力が働く。これまで政治主導が実現しなかった原因の1つが、この官僚に支配さ
 れた官邸の存在なのだ。 

  そこで、これを打破るために、総理を直接補佐し、その頭脳となって政策立案を行い、手
 足となって官僚を動かすスタッフか一定数、必要となる。そのために、渡辺大臣は、基本法
 に、国家戦略スタッフを創設すると書き、そのための法律的な措置を三年以内にすることと、
 スケジュールもはっきり書いた。政務スタッフも、各省の官房が大臣との関係で同じような
 問題を抱えているので、国家戦略スタッフの各省版として創設しようというものだ。

  しかし、これは官僚から見ると極めて危険な仕組みだ。これまで官邸官僚が仕切って、事
 実上、総理までコントロールしていたのに、補佐役とはいえ、総理が官僚のいうことを聞か
 ない集団を勝手に連れてくるなどということは、自分たちの支配権を脅かすとんでもない挑
 戦だと感じたはずだ。

  役人は二年以内といわれると、やりたくないものは三年ギリギリまでやらない。先に延ば
 しておいて、様々な妨害・策略を行い、三年以内にこの決定を覆そうとするのである。
  私が事務局に着任した直後に行われた会議でも、あからさまに国家戦略スタッフ創設先送
 り論が幹部から唱えられた。曰く、「国家戦略スタッフなどというものは時の総理がどう考
 えるかということに大きく依存する、極めて政治的な問題である。われわれ官僚ごときがそ
 の素案を練るなどということは官の・げ場を超えた越権行為である。政治主導の考え方に対
 する不遜な挑戦といわれかねない」………

  しかし、私は真っ向から反対した。「政治主導を実現するためには、総理の力を強くしな
 けれぱならなりこれを後回しにするのは逆にサボタージュといわれる。少なくとも案だけは
 用意して、いつでも出せるようにしておくべきだ」と。
  準備だけはしようといわれると、準備もいけないとはいいにくい。
  ただ、国家戦略スタッフを置くといっても、その権限が何か、総理補佐官との関係はどう
 か、政治家も入れるのか、官僚はどうか、人数はどれくらいか、どのくらいの恪の人たちを
 想定するのか、給与や待遇はどうするのか、といったことはすべて白紙だった。手がかりが
 ほとんどない状態で新しいものを創造するというのは役人がもっとも苦手とするところだ。

  私は、厚生労働省から来た係長クラスの若手官僚を担当にした。彼は、「こんなこと役人
 が考えていいんすかねえ。麻生総理はどう考えてるんすかねえ」といいなから頭を悩ませて
 いた。われわれか出した結論は、時の総理が自分なりに官邸の動かし方を考えて、それにふ
 さわしい自前のスタッフを好きなように配置できるようにしよう、というものだ。

  人数は政令で決めれば良い。政治家でも民間人でも官僚でも良い。総理が一本釣りで連れ
 てくる。給与は課長クラスから政治家並みまで幅広く設定しブ誰でも連れてこられるように
 しておく。権限も、総理の命令であれば、事実上なんでもできることにした。
  こうしておけば、総理は、まず就任と同時に自分のスタヅフをどう揃えるのかということ
 を聞かれるので、制度かあって自由に任命できるのに、これから考えますというのでは恥ず
 かしいから、総理になる前から自分のチームを準備するだろう。また、自分がやりたいこと
 とスタッフの顔ぶれについて説明を求められるだろう。

  何をやりたいか分からない総理、自前のスタッフがいないから官僚に頼り切ってしまう総
 理、成果を出せないことを官僚のサボタージュのせいにする総理、われわれかこれまで見て
 きたこういうだらしのない総理は出づらくなるのではないか、そんな気持ちだった。

  しかし、案ができても、その後がたいへんだった。なぜなら、時の麻生太郎総理はまった
 く関心がないように見えたからだ。普通なら、官僚ではなく政治家が考えればいいのだか、
 総理周辺にも自民党の行革本部にも、積極的に考える姿勢は見られない。同本部に私が案を
 提示すると、スタッフというカタカナは良くないという一点では一致を見たものの、内容に
 ついては、人によって意見はパラバラだった。結局、私が、どんなやり方もできるようにし
 てありますというと、本気で反対する議員はいなかった。

  気の毒だったのは、甘利明公務員制度改革担当大臣だ。本来は麻生総理に意見を聞いて決
 めればいいのだか、当の本人は関心を示さない。かといって、担当大臣が勝手に決めるわけ
 にはいかない。しかし、われわれの上司は甘利大臣だから、私は、「甘利大臣、どうします
 か?決めてください」と何回も迫る。「俺が決めなきやいけないの?」と恨み節も出た。結
 局、係長の案をもとに作ったわれわれの案がそのまま法案に入ってしまった。

  当の係長氏、嬉しそうな顔をしながらも、複雑な気持ちを吐露した。「古賀さん、本当に
 いいんすか?このまま国会に出もやいますよ。僕なんかが作ったやつでいいんすか? この
 まま国会に出ちゃいますよ。僕なんかが作ったやつでいいんですか?」 


                       原発事故対応も変えたはずの法案

  この法案か通っていれば、民社党政権の総理、閣僚が、自前のスタッフを多数揃えて真の
 政治主導を行う姿が見られたかもしれない。
  というのも、序章に記したように、2011年.こ幻の原発事故対応もまったく違ったも
 のになっていたのではないかと思うからだ。

  たとえば、その青写真はこうだ。官邸には、菅総理就任時に、政治家数名、現役・OBの
 官僚10名、学者や会社経営経験者10数名からなる国家戦略スタッフが配置された。いず
 れも総理か全幅の信頼を置くメンバーだ。

  事故発生と同時に総理の指示で、馬淵澄夫国家戦略スタッフをヘッドとする現地緊急対応
 チームが、通信確保と現場の状況確認のためにヘリで現地へ急行。そのなかには、国家戦略
 スタッフの経産省官僚OBや、事故と同時に助っ人として呼ばれたGEの元技術者、自衛隊
 OBなどかいる。原子力安全・保安院からも適切な人材がチームに送り込まれている。

  現地で基地局が開設されると、刻々と情報が入ってくる。総理はテレビ会議で原発所長か
 ら話を聞く。原子力安全・保安院経由で上がってきた情報と食い違いかあるので確認すると、
 東電情報の一部が落とされていたり、誤った解釈がなされていたりしたことが判明した。そ
 こで東電に派遣していた別の国家戦略スタッフに指示して、情報ルートの整備を行わせる。

  とりあえず収集した情報を、官邸に残ったスタッフか整理し、官邸官僚と関係閣僚会議を
 備する。閣僚と各省幹部が集まって.一回目の会議を開催。そこでは最新の情報を共有し、
 基本方針と政府の対応について議論す今ベントと海水注入を緊急に決定すると、保安院長は
 その場で保安院に指示を出し原子炉等規制法に基づく命令を来電に伝達する。

  総理は会議で、「情報はすべて共有しよう。意見は何でもいってくれ。決定は私か行う。
 責任はすべて私が負うので、安心して全力でこの難局に立ち向かってくれ」と毎月。各省の
 官僚はどんどん対応策を作って、大臣が官邸の判断を仰ぐ。このサイクルで、迅速かつ果敢
 な行動が実現する、という具合だ。

  もちろんこれは、国家戦略スタッフの使い方の.例に過ぎない。もっと長期的な課題に国
 家戦略スタッフを使う総理もいるだろうし、日常的にアドバイスを求めるという使い方もあ
 るだろう。いずれにしても、国家戦略スタッフと総理の間の信頼関係はきわめて重要である。
 国家戦略スタッフは孤立して働くのではなく、総理が官僚を動かすための手足となる必要が
 あるのだ。
 

官邸内の裏話をこのように見ていくと、政権交代がなく、自民党政権が続き2013年3月11
日の原発事故を迎えていたらどのようになっていただろうか? そら恐ろしい疑問が湧いてくる
ことを押さえることができない。さて、話は鳩山政権の裏事情をしることになる・・・・・・。

                                                                    この項つづく

 

   「豆乳世界初クリーム」が和食革命を起こす!?!

● 新風!豆腐クリーム

3月18日には「あさチャン!」(TBS系)で「豆腐クリーム」が取り上げられていたというが今
月26日のあさイチ(NHK) で取り上げられていたのみて初めて知る。「豆乳クリーム」は2013年
に不二製油が開発しているからこの流れにあるのだろうが、今年に入ってから豆腐クリームのレ
シピ本が相継いで発売され、クックパッドには豆腐クリームを使ったレシピが千件以上投稿され
ているとか。生クリームやバターの代わりに使うことで、カロリーを抑えた料理が簡単に作れ、
高タンパク、大豆イソフラボンも摂取できることから人気を博している。

1.材料(作りやすい分量)

・木綿豆腐      1/2丁(150グラム) 
・白みそ       大さじ1/2
・牛乳        20ミリリットル
・塩         小さじ1/4
・ニンニク(ゆでる) 1片

2.作り方

① 木綿豆腐を耐熱ボウルに入れ、ラップをかけて、電子レンジ(500W)で2分間加熱。電子レ
  ンジで加熱することで簡単に水分がとばせて、豆腐のにおいも和らぐ。
② 加熱した豆腐をキッチンペーパーを敷いたザルに入れ、10分ほどおいて粗熱をとる。
③ ボウルに入れ、白みそ(大さじ1/2)、牛乳(20ml)、塩(小さじ1/4)、ゆでたニンニク
  (1片)を加える。ゆでたニンニクを加えることで、豆腐臭さを消すことができ、おいしく
  なる。
④ ハンドブレンダーやフォードプロセッサーに入れて、2~3分間撹拌し、しっとりした状態に
  なれば完成。

抹茶を加えて抹茶豆腐クリームパスタや豆腐クリームカルボナーラ――この豆腐クリームを卵に混
ぜれば、簡単にカルボナーラーもできる。生クリームを使ったカルボナーラーと比べると、カロリーも25%
オフできる。ホワイトソース作りが面倒なグラタンも、豆腐クリームを使えば失敗知らずで、カロリーも34
%オフとなる。また豆腐クリームにアンチョビを加えると、バーニャカウダー風に。お酢とマヨ
ネーズを加えると、マヨネーズ風になり、市販のマヨネーズと比べるとカロリーも80%オフに
なる――などのイタリアン、レアーチーズなど牛乳などのラクト類を使用するから完全なオーガ
ニック食品ではないが、牛肉一辺倒な食事を是正できるから面白し、納豆チーズ、納豆バターと
大豆革命旋風はおさまりそうもない。


 

       

漠電力網の登場

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    天災は忘れた頃にやってくる / 寺田 寅彦

 

 

北陸新幹線の福井駅先行開業の議論が進む中、敦賀以西のルート問題が、にわかに焦点に浮上し
てきた。27日に東京都内で開かれた建設促進同盟会の大会には、関西広域連合長の井戸敏三兵
庫県知事が初めて出席し「北陸新幹線は大阪までつながってこそ、なんぼのもん」と発言した。
背景には北陸の市場や人が関東に吸い取られ、東京一極集中が加速するという危機感がある。フ
ル規格による大阪までの早期延伸で北陸、関西の足並みがそろった形だが、ルートに関しては北
陸3県で温度差もあるという(「福井新聞」2015.05.29)。

大会のあいさつで、西川知事は政府与党に対し、フル規格での大阪までの整備を要望。「フル規
格とは、どこかの駅で(東海道新幹線の)こだまに乗り換えるのとは意味が違う」と述べ、暗に
米原ルートを否定した。そして「きょうは井戸知事からもそうしたごあいさつがいただけると思
う」と付け加え、これを受けた井戸知事は「早くフル規格で大阪まで乗り入れていただきたい」
と発言。ルートには触れなかったが「敦賀以西のルート問題を議論する与党検討委員会では発言
する機会がほしい」と訴えた。井戸知事の姿勢を西川知事をはじめ北陸3県の知事は高く評価し
「意味のある大会となった」と口をそろえた。大会に参加した小浜市の松崎晃治市長も「若狭ル
ートを実現するための第一歩となった」と手応えを口にしたという(同上)。

このブログで北陸新幹線の延長ルートをめぐり『中央日本周回新幹線構想』(2015.03.17),『
(中央)日本周回新幹線構想Ⅱ』(2015.03.17)を掲載しているから、基本的な考えだけを付け
加えておきたい。

 




(1)敦賀市を日本海経済圏構想の主要都市(そのほかに、札幌、新潟、松江、下関の4つ)と
おき、(2)脱原発産業都市化促進地域に指定、「逆格差法人税制」(要法制)の対象として、
税率を平均値の0~25%に引き下げる。(3)交通網強化として、(あ)敦賀港の再整備、(
い)「敦賀ー大阪」の新幹線整備(「梅田と「新大阪」の選択残)、(う)「敦賀ー名古屋」の
新幹線整備というもの。このときの列車が「フリーゲージトレイン(軌間可変電車)」を採用す
る。敦賀から下関の北陸・山陰新幹線は「フル規格」でもよいが、新幹線の世界展開事業には、
「フリーゲージトレイン(軌間可変電車)」が敷設費用や事業費用効果でも、敷設汎用性・市場
規模・技術的(~時速5百キロ超)側面から有利と思われる。「敦賀から世界へ!」。このキャッ
チ・コピーは面白いとおもうが?!

※ 尚、米原をジャンクとするのは、湖西線は強風対策がいること、JR米原駅周辺は広大な平地
  が所有施設内に残っており建設費が割安になるという理由から(2015.05.31 12:50)。
  
 

 
● 緑茶とコーヒーとワインをブレンドして飲めないか

国立がん研究センタの緑茶とコーヒーの摂取量と全死亡率の疫学的調査結果よると、緑茶摂取で
心疾患などによる死亡リスクの低下がみられた。この理由は、緑茶に含まれるカテキン(血圧や
体脂肪、脂質の調整)やカフェイン(血管保護、呼吸機能改善)などの効果が推定されている。
また、限定的ではあるが、女性で外因による死亡リスクの低下がみられたが、テアニンやカフェ
イン(認知能力や注意力の改善)の効果かもしれないという(上図/上)。

また、コーヒー摂取で死亡リスクの低下が見られたのは。コーヒーに含まれるクロロゲン酸が血
糖値を改善し、血圧を調整する効果がある上に、抗炎症作用や、コーヒーに含まれるカフェイン
が血管内皮の機能改善効果や、気管支拡張作用があり、呼吸器機能の改善効果が、循環器疾患や
呼吸器疾患死亡リスク低下に寄与しているのではないかという(上図/下)。全がん死亡では他
の部位のがんも総合して分析を行ったので有意差がなくなったのでは推測している。これらを踏まえ、一
日4杯までのコーヒー摂取は死亡リスクの低下を示唆ししているのではないかとしている。

尚、缶コーヒー、インスタントコーヒー、レギュラーコーヒーを含むコーヒーの摂取頻度を尋ねており、また
カフェインとカフェイン抜きコーヒーを分けていないの配慮すること。


疫学的な調査のため説明要因が多すぎる上に説明要因の範囲も不確定(当たり前だが)、ムード、
モードやそれを包括した外環環境といった「飲み方」、リラクゼーションを感じる?感じない?
や気の置けない仲間と一緒?一緒でないないとかそんな些細なことが大きく影響するストレス性
心因が結構効くかもしれない。また、ポリフェノール含有量の側面で考えれば、赤ワインが一番
(上図の比較例の場合)のようになるし、クロロゲン酸を多く含まれる作物を多い方から、コー
ヒー、向日葵の種、茶、ブルーベリー、パセリ、サツマイモ、ジャガイモ、トマト、リンゴ、梨、
茄子、ゴボウなどいうが、高含有量のコーヒーでも、焙煎は深いとクロロゲン酸含有量が低下す
るので要注意(融点は208℃)。こんなことが気になるのはテレビ放送される俳優や芸人の訃
報が立て続いているためで、コーヒーは香りが好きだが好みと言う程ではない。それでも大腸癌
に効果がありそうだとかいうと、今夜のようにネットサーフしている。ところで、コーヒーと緑
茶をワインに加えたオリジナル・カクテルを創作してみようかとも考えているが、イラチで無精
な性格がなせる技なのかもしれないが、下図のような事例報告もあり、アルコールと適量の緑茶
をブレンドして好みで飲んでいる。

 

 

● ピコグリッドってなんだ?

デンソーは28日、超小型電気自動車を「移動する電源」として利用できる独立電源ネットワーク
システム「Pico Grid System(ピコグリッドシステム)」を開発したと発表。同社の安城製作所で、
同システムを使った構内移動のための運用を開始しているという。ピコグリッドシステムは、小
規模な太陽光発電と蓄電池、超小型EVを使って電力を供給する独立型の直流分散電力システムに
、車両管理システムを組み合わせたもの。太陽光で発電した電力は、直流のままで超小型EVや蓄
電池に蓄えることができる(上図)。このため、一般的な太陽光発電システムのように直流から
交流への電力変換による損失が発生しないので、効率的に再生可能エネルギーを活用できる。ま
た、電力を蓄えた超小型EVを「移動する電源」として使用すれば、災害時などに商用電源が停止
した場合でも必要な場所への電源供給が可能になるということだ。ところで、ピコとは国際単位
系の接頭辞の1つで、基礎となる単位の10-12倍の量を表すが、そのまま日本語に訳すと「漠電力
網」ということになるが、マイクロ・ナノなどの言葉が踊る昨今ゆえ、1ピコワット、1ピコ秒
を制御する電力網を意味して命名されたのかと推測するしかないが、いろんなことを考えるもの
ですね。「第5次産業革命」ならの『デジタル革命渦論』ということですね。



※ 産業(工学)革命の推移

第1次 焼き畑・去勢
第2次 石器・木器・銅器・鉄器
第3次 活字印刷・製版・製本・交通 
第4次 蒸気機関・地下化石(原子力)燃料
第5次 電気通信・半導体・ナノ(「デジタル革命」)
第6次 ?(超身体・未来エネルギー)
 

   

【日本の政治史論 20:政体と中枢】 

 「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。  

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)   

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』    

    目 次    

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策     

  第1章 暗転した官僚人生                                                                              
                       

                        鳩山大臣を操る総務官僚

   基本法では、人事に関する機能をすべて内閣に集めて、内閣人事局という組織を作ることになっ
  ている。
   政府には、人事に関連する組織として、まず、第三者機関である人事院、そして総務省の
 人事・恩給局、行政管理局、さらに財務省の主計局に給与共済課というものがあり、
  それぞれがバラバラに機能している。これでは、時代のニーズの変化に対応してスピーデ
 ィに組織を改編し、人員を配置し、もっとも適切な人物を各ポストに就けるのが難しい。

  たとえば、産業として衰退してしまった農業を所管する農水省がいまだに巨大な組織を待
 っていて、局長もたくさんいる。他方で、環境問題の重要性が高まっているのに、まだ環境
 省の陣容が十分でない――こうした判断を総理がしたとしよう。本来であれば、農水省の組
 織に大鉈を振るってスリム化し、環境省の組織を拡大する、定員もそれに合わせて増減させ
 る、差し引き余剰人員が出れば、リストラをする。そして、環境省にまだ優秀な人材か少な
 ければ、他省庁や民間から優秀な人材を登用する。これを総理主導で迅速に行うことか必要
 だ。

  ところか、いまはどうなっているか。まず、農水害が自分で自分の組織を切ることは考え
 られない。組織や定員の査定は総務省の行政管理局がやるが、彼らには常に前年との比較で
 仕事か増えたか減ったかという尺度しかないので、組織に大鉈を振るうなどということは無
 理だ。
  一方で、環境省かたとえば新しい局を作るという要求を行政管理局に出しても、だったら
 他の局を潰せというようなこと(スクラップ・アンド・ピルド)を要求する。各省縦割りで
 しか査定しないからである。

  また、定員を大幅に増やすのもむずかしい。一人増やすだけでも膨大な資料を要求される。
 仮に局と課をいくつか作る、あるいは、それと併せて課長補佐、係長、専門職などを置くと
 いう要求が認められても、さらに、人事院にお伺いを立てて、その局長は重要な局長か、課
 長は重要な課長か、補佐は何級か等々、さらに細かい査定を受けなければならない。そして、
 給料全体は主計局の給与共済諌がしっかり査定をしているという具合だ。

  しかも、その後に一番重要な人事は各省がそれぞれ勝手に行う。これで、その時々の行政
 ニーズに即応した組織体制を形成し、しかも適材適所で有能な人材が配置できると考える人
 はいないだろう。
  この点は、民h党も強く批判していて、特に「3M」と呼ばれた松本国明、松井孝治、馬
 淵澄夫各氏は国会でもこの問題を取り上げていた。
  特におもしろい指摘は、馬淵氏が強調していたが、組織や定員を査定する総務省行政管理
 局の総括担当管理官(査定の取りまとめを行う筆頭管理職)と、各ポストの重要性を判断し
 て格付けを行う人事院の給与第二課長が、財務省出向者の指定席になっている事実である。

  馬淵氏は、これに主計局の給与共済課を併せれば、政府の組織・給与を財務省が完全に支
 配していると指摘し、強く批判したのだ。これはなるほどもっともだ、と事務局員も納得し
 ていた。
  ところが、これらの機能を一つにして内閣人事局に集めようという至極まっとうな考えが
 すんなり通るほど、霞が関は甘くない。
  当初、事務局幹部は、そういう大きな改正は無理だといって、とりあえず、総務省の人事・
 恩給局の一部(人事院勧告に基づいて給与法の改正案を作ることなどを行う部局)を移管す
 るだけにしようと画策した。私か、行政管理局や人事院の機能も移管すべき、としつこくい
 うと、「君は素人だからそんなこというけどねぇ、無理なんだよ。できるはずないんだよ」
 と抵抗する。しかし、私がいうことは.E論なので、面と向かって完全に否定はできない。
 われわれのチームは関連する機能をすべて移管する前提で法案策定作業を進めた。

  総務省はもちろん徹底抗戦だった。当時の鳩山邦夫総務大臣を使って、組織・定員の査定
 機能移管はダメだというのだ。ところが、マスコミの批判もあって、途中から路線転換を試
 みる。それは、組織・定員の査定機能だけでなく、たとえば、行政改革全般や行政の情報化
 の推進のような業務を担当する部局まで一緒に内閣人事局に移管するという案だ。実は、こ
 の案は当初から改革推進本部嘔務局にいた、部の守旧派グループが密かに温めていた案であ
 る。
 
  これは何を意味するか――。

  総務省は、旧自治省、旧郵政省、旧総務庁が統合されてできた役所だ。統合によって次官
 ポストは一つになった。その後、旧三省庁で順番に次官を出していたが、旧自治省の力が圧
 倒的に強く、旧総務庁はもっとも力が弱かった。2007年に退官した旧総務庁出身の次官
 が同庁出身・最後の次官になるだろうといわれている。そこでこの旧総務庁グループが焼け
 太り大作戦を企んだというのだ。
  つまり、行政管理局を人事・恩給局と一緒に内閣人事局に移管して、そのなかの最大勢力
 となる。そこで主要ポストを握って、霞か関の人事・組織のクピ根っこを押さえる。すなわ
 ち、旧三省庁のうちの最弱部隊が、政府中枢の最重要部局を乗っ取るということだ。

  鳩山大臣はこの方針転換にもつき合わされて、甘利大臣と最後まで戦う。一時は他の事務
 局幹部が私の知らないところでこの案を呑む約束をしてしまい、内閣人事局の名称を「内閣
 人事・行政管理局」という名前にする案まで自民党に提示され、ほとんど決着寸前まで行っ
 たが、幸い民主党や公明党、自民党の改革派か大反対してくれて、これは頓挫した。
  鳩山大臣もお人よしだ。こんな陰謀につき合わされて、まことにお気の毒だと思った。


                    公務員の「守護神」人事院 vs. 甘利大臣

  もう一つ、忘れられない戦いかあった。
  2009年1月30日に開催予定だった国家公務員制度改革推進本部の会議が流れた。同
 本部は総理を本部長とし、各省大臣が出席して公務員制度改革について議論して政策を決定
 する機関だ。この会議に谷公士人事院総裁が呼ばれた。しかし、谷総裁は、この会議をボイ
 コットしたのだ。

  話は2008年夏以降繰り広げられた人事院の機能を内閣人事局に移管すべきかどうかと
 いう論争に遡る。先述した通り、当初から人事院は聖域だというのが事務局幹部の固定観念
 だった。公務員にはスト権などのいわゆる労働基本権が与えられておらず、とても「弱い」
 立場に置かれてかわいそうなので、それを補う目的で「中立的な」第三者として、公務員の
 処遇などを決める機関が必要だということで人事院が置かれている。

  ところが、この人事院というのが不可思議な組織で、総裁は元官僚(当時は元郵政省事務
 次官が渡りの末就任していた,現在は元厚生労働省事務次官)で、事務局は上から下まで全
 部国家公務員だ。つまり、第三者といいながら、実は公務員が公務員の給料などの待遇を決
 めているのである。よく、公務員の待遇は一般民間企業に比べて良すぎるのではないかとい
 う批判があるか、それは当たり前である。自分で自分の給料を決めているのだから。

  しかも、このようなお手盛りの仕組みが、長年の悪しき慣行によって、ほとんど憲法上の
 要請であるかのごとく聖域に祭りヒげられてしまっていた。特に「五五年体制」での自民党
 と社会党の裏談合時代の名残もあり、その仕組みを自民党は、過去に認めてしまっていたの
 である。その後何回か、その仕組みの変革に挑戦する動きはあったが、結局、何十年もの間
 敗れ続けていたのである。

  あるとき、自民党の行政改革推進本部の幹部会があったが、その席上で世の中では改革派
 で通っている石原伸晃議員ですら、「人事院からの機能移管なんて絶対にできるはずがない
 よ。僕だってやろうとしたけどできなかったんだよ」と半ば諦め顔で忠告してくれた。私は、
 「それなら、なおさらやらなければ」と、決意を新たにした。

  実はあまり知られていないが、人事院が強く反発したのにはもう一つ裏の理由がある。そ
 れは、彼らの天下り利権の確保である。人事院は直接、民間企業や団体を所管していないし、
 補助金や規制の権限も持っていない。従って、普通に考えれば、天下りを民間団体などに押
 しつけることはできないはずだ。しかし、実際には毎年ちゃんと幹部は天下りしている。そ
 のほとんどは、各省庁の所管団体だ。

  先ほど述べた通り、各省は、局長や課長、課長補佐などのポストの重要度を人事院に説明
 して、その格付けを決めてもらわなければならない。当然のことながら、なるべく格付けを
 上げて、より高い給料のポストにしたい。各ポストの重要度は本来、各省庁の経営管理事項
 だが、わが国では労働問題だとして、人事院が労働組合の意向を汲んで決めるのである。

  民間企業では、課長ポストの重要度の位置づけは経営者が決めることであって、労働組合
 と交渉して決めるなどということは考えられない。しかし、公務員の世界では、こういうお
 かしな仕組みがまかり通っている。
  このように、各省庁に対して強力な査定権限を持っているので、人事院から天下り先を要
 求された省庁は簡単には断れない。省庁側としても、ただで要求を呑むわけではない。当然、
 見返りとして、査定で夢心を加えてもらおうという魂胆だ。いわば、官と官の贈収賄みたい
 なものである。

  さて、自民党内でも厭戦気分が強かったにもかかわらず、甘刊大臣は、この悪しき慣行に
 終止符を打つべく、人事院の査定権限を内閣人灘局に移管しようとした。人賀院の幹部が天
 下りできなくなるのだから、たいへんな騒ぎになり、ついには、冒頭に述べた、谷総裁の内
 閣の会議ポイコットヘと展開していくのである。

  われわれは、マスコミに丁寧に訴えた。いかに人事院の抵抗が理不尽なものか。その甲斐
 あって、中立公正な第三者機関であるはずの人事院に対するイメージは地に落ち、公務員の
 利権擁護機関だという認識か急速に広かった。
  これが、官僚、特に一部の官邸官僚の思惑を打ち砕く。彼らは人事院の谷総銭と結託して、
 麻生総理を公務員の守護神にしようと奎んでいたらしい。甘利大臣ががんぱっても、最後は
 総理のところで急進的な改革を潰そうとしていたというから驚きだ。
  しかし、麻生政権はすでに末期症状を呈していた。人事院側に肩入れして、少しでも支持
 率が下がったらもう致命的だという理由で、結局、官邸官僚の抵抗もそこまでとなり、人事
 院からの権限移管の案か固まることになった。

  私は、この話が決着した後、「谷総裁にはお気の毒なことをしたなあ」と事務局の若手と
 話していたのだが、「そんなことないんじやないですか」との答え。皮肉なことに、甘利大
 臣との大乱闘を演じた谷総裁の霞が開での評判はウナギ上りで、官僚仲間のあいだで英雄と
 なってしまったというのだ。出身省の旧郵政官僚幹部(現・総務省の一部)は、「立派な先
  輩を持って鼻が高い」といっていたというから、霞が関がいかに世の中と遊離しているのか
 がよく分かる。普通なら「恥ずかしくて外を歩けない」と思っても良さそうなものだが。


全国の若者達がろくに職に就けない、就けても諸経費扱いの劣悪な非正規社員扱いの職場で働
かなければならない実態に目を瞑り既得権益の「目的なき」拡大を繰り返す国家官僚と既得権
守旧派の職業政治委員達に付ける薬はない。さて、次回は「官僚の二枚舌」に焦点が当てられ
る。

                                                     この項つづく 

   ● 今夜の一輪

裏庭一面に咲き誇るカモミール坊主?!

  Farewell to Spring

同上で咲き始めた、色待宵草=ゴデチア、母の形見でもある。

 

小笠原沖M8.5の謎

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   『ドーン』という爆発音とともに地響きがした。地震かとも思ったが、
        短い時間だったのですぐに噴火とわかった。 

                                      峯苫 健

 

 

【小笠原沖M8.5の謎】

5月30日に小笠原沖で発生したマグニチュード8.5の巨大地震で、気象庁はテレビや携帯電
話に地震の発生をいち早く知らせる緊急地震速報(警報)を発表しなかった。日本周辺でマグニ
チュード8.0以上を観測したのは、2011年の東日本大震災(マグニチュード9.0)以来だとい
うが、なぜ発表されなかった(「The Huffington Post」2015.05.31 09:38 JST|2015.05.31 10:03 JST)。

これに対して、気象庁は緊急地震速報(警報)を発表しなかった理由について、今回の地震の震
源の深さが590キロと深い、深発地震(震源が深さ200キロを超える地震)であったためと
した。気象庁では震源の深さが150キロを超える場合には、緊急地震速報(警報)を発表しな
いシステム――震源が非常に深い場合、震源の真上ではほとんど揺れないのに、震源から遠く離
れた場所でも強い揺れが伝わることもあり、地域ごとの正確な震度の予測が難しいため、緊急地
震速報(警報)は発表しない――のだという説明だが、つまり、下図の様に震源から離れた場所
でも強い揺れが感じられる現象は「異常震域」と呼ばれ、異常震域の現象が起こるのは、地震波
をあまり減衰せずに伝えやすい「海洋プレート」のなかを、ゆれが伝わることで起こることによ
る。 

 

したがって、今回の地震は震源から遠く離れた神奈川県二宮町で震度5強を記録するなど、関東
地方には震度が減衰せず伝わっており、異常震域の現象が起きたのではないかとみられる。プレ
ート内で地震が発生することで「揺れはプレート内に閉じ込められ伝わる。プレートの形に沿っ
て、北海道や東北、関東まで揺れが広がった」と古村孝志東大地震研究所副所長が説明する。異
常震域での震度の予測は、難しいく、気象庁の中村浩二地震情報企画官はこの日の記者会見で、
緊急地震速報(警報)について、「震源が浅い地震であれば、震源からの距離が遠くなると震度
が弱くなるという性質を使い、各地の震度を計算し緊急地震速報を出す。しかし、深さが150
キロを超える地震であれば、震源からの距離が遠くなると、震度が弱くなるという予測式では精
度よく計算できなくなり、現在の技術では限界がある」と話す。 

 


地球の半径は約6千4百キロに対して、今回の発生深度が590キロといえば、約9%程度深度
で、地殻下のマントル上層部とマントル下層部との間の対流層で発生した恰好になるが、前図/
右のように、流動状マントル下部と太平洋プレート部が接触してどうして、局所的な震源となる
のかその理由が理解できないので。たまたま、マントルから突き出した地殻があったとしても、
その歪みがそれほど大きくなるのだろうかという素朴な疑問を払拭できない。翻って、フィリピ
ン海プレートから何らかの落下してきた地殻デブリがプレートを突き抜け衝突してもそれ程(下
表)のエネルギーをもつ地震源となりうるだろうか? あるいは、運ばれてきたデブリがプレートに衝突し
たとしてもどの程度の大きさと衝突速度なのだろうか。そもそも、プレート同士の衝突部付近でこのような
現象が発生するものだろうか・・・・・? さらに、残留応力の局所解放だとして、地震発生機構の特徴とは
どのようなものだろうかと分からない。 

 

さて、なぜ、こんなことに執着するのかというと、日本列島は2013年の東日本大震災以降の地殻
変動の流れが、9世紀の貞観地震の流れと酷似しているのではないかという有識者の指摘に対し、
新たな兆候を感じ取ったためで、東日本大震災+ネパール地震+小笠原沖地震をイメージした時
に、"マントル対流の異変"を加味していまったためで、何の根拠もないイメージの上の話っだが
これを誇大妄想というのだろうが、小説『日本列島沈没』をベースとして、不安、疑問が過ぎっ
たというわけだ。緊急の予算執行してでも、現在の地殻変動に対する観測研究・防災研究を大至
急実施するべきだ――それで、人命が、国土が救済できるのなら、例え年間当たり数十億の経費
(直接的な仕事の従事者:数百人+研究費相当)は微々たるものだと考えるが如何に?

※ 大規模火山災害について:http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/resilience/dai18/siryo2-3.pdf

 

    

【日本の政治史論 21:政体と中枢】 

 

 「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。   

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)    

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』  

    目 次     

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策      

  第1章 暗転した官僚人生   

                          官僚の二枚舌の極み
 
  いままでに挙げたポイント以外にも、守旧派と対立する事項はまだまだたくさんあった。
 幹部の公募採川を推進するために各省庁に数値目.幄を設定する義務を渫す、若手の幹部候
 補を内閣主導で育成する、各ポストごとに職務内容や日原等を詳細に定めるジョブ・ディス
 クリブション(職務明細書}制度を導入すること、などだ。こわらについても極めて頑迷な
 抵抗かあったか、常に顧問会議など表で峡論することによって世論の支持を集め、ほとんど
 の事項で、なんとかわねわれの目指す方向にまとめることができた。

  ただ、一つ重要なな点て骨抜きが行われてしまった。それは幹部公務員の降格に関する規
 定である。

  われわれは、政治主導を実現するには幹部職員を大臣か自由に任免できなければならない
 と考えた。たとえば、民宇党政権誕生のときを思い出そう。民L党は、選挙前には、政権交
 代したら各省庁の幹部には辞表を出してもらうと勇ましかったか、実際に政権を取ったら、
 公務員には身分保障かあるからそんなことはできないという理由で、それを断念した。その
 結果.守旧派の麻生政隆時代の幹部をそのまま居抜きで使うことになった。民主党の農業政
 策を厳しく批判していた農水次官もそのまま留任させたのを見て、私も本当に驚いたものだ。
 
  もちろん、いろいろな工夫でこうした事態を避けることはできたと思うか、やはり、政策
 の方向が変われば当然、幹部の布陣もそれに合わせてごく自然に変えられるような仕組みに
 しておくことか必要だ。そのためには、幹部の身分保障を外すことがポイントになる。
  サッカーで、監督が代わってチームのシステムを変更するのに、レギュラーを前の監督か
 選んだメンバーのまま固定する義務を負わせるということは考えられない。政治主導を実現
 するためには、サッカーの監督と同じことができる権限を閣僚に与えることが必要だ。

  われわれはその実現を目指したが、これは守旧派からすれば絶対に認められない点だった。
  特に、これをいったん認めると、管理職以トにも同様の議論か起きる恐れかおる。公務員
 の最大の特権は、よほどの悪事を働かない限り、クピにならないどころか降格もないし、給
 料も下がらない点。この強力な身分保障は絶対に矢いたくない既得権である。

  従って、幹部に限定するといっても、将来、自分たちにも同じ議論か及ぶ可能性を察知し
 た組合も強力に反対したのだ。
  実は、これを実現できなかった理由の一つとして、この点に関してだけは、われわれのチ
 ームに企画立案の権限か与えられていなかったという点が挙げられる。つまり、最初から、
 この点はもっとも危ない点だとして、担当をわれわれのチームとせず、隣のチームの担当に
 していたのだ。かなり激しいやり取りもあったが、権限上われわれはどうしようもなかった。

  彼らは表面的には降格ができるように見える規定を作ったが、実際には、ほとんど使い物
 にならない規定だった。先のサッカーの例でいえば、重要なことは、前のレギュラーメンバ
 ーを外して新しい選手を入れるときに、一々その理由を説明する必要はないという点だ。ま
 してや、代えられる選手が他のメンバーより劣っていることを立証する責任を監督に負わせ
 るなどといったら、誰も監督を引き受けないだろう。

  しかし、彼らが作った規定は、なぜ降格するのか詳細に説明して、その正当性を証明する
 責任を大臣に負わせていた。こんなことではいつ訴訟になるか分からず、結局、降格の規定
 は有名無実化するだろうという読みである。
  現に担当審議官は、組合に対して、「この規定では滅多なことでは降格できないから心配
 することはない」といって説得を試みているのを私はこの目で見た。国会答弁では、「柔軟
 に降格できるんです」というような説明を甘利大臣にしていたのだから、二枚舌にもほどが
 ある。


                        歴史的偉業になるはずが

  以上の通り完璧とはいえないまでも、逆風のなか、われわれはなんとか結束を固め、幾多
 の抵抗を乗り越え、人事院と総務省の関連する機能を集約し、組織と人事を内閣で一元管理
 する「内閣人事局」の創設と国家戦略スタッフの創設を柱とする国家公務良法改正案をまと
 め上げた、この改正案は、麻生内閣によって2009年3月、国会に提出された。
  内閣人事局の創設は、霞が関の随抗が強く、当初、絶対に無理だと見られていただけに、
 改正案は画期的といえるものだった。

  ところが、いざ審議を始めてみると、民主党がおかしな動きを始めた。表向きは、前述し
 た幹部の降格が事実上できない仕組み等を批判して、いかにも改革に前向きなふりをしなが
 ら裏で人事院の機能移管を阻止するような妥協案を模索。自民党の守旧派と結託して、大幅
 に後退した修正案をまとめようとしたのだ。

  われわれは、そんな案ならまとまらないほうが良いと思ったが、危うく合意寸前まで行っ
 てしまったようだ。なにしろ、自民党の大半は公務員制度改革には後ろ向きで、そもそも党
 内手続きの最終段階で開かれる総務会では、居並ぶ長老たちのほぼ全員が反対したのだ。し
 かしこれを潰したら、ただでさえ支持率の低い麻生政権の評価がさらに下がってしまうから
 という理由でなんとか通ったという経緯もあったほどで、さもありなんという感じだった。
 
  しかし最後は、民主党の選挙を意識した方向転換で、2009年8月の選挙を前に廃案と
 なってしまう。中途半端な妥協で成立させても半分は自民党の手柄になってしまう。それよ
 りは、具体的な議論をしないで、麻生自民党には公務員制度改革はできない、民主党がやれ
 ば根本から違ったもっと先進的な改革ができる、と国民に訴えたほうか得策だと判断したと
 いう。政策よりも政局-今日まで続く流れである。

  とはいえ、われわれはさほど落胆していなかった。政権交代の可能性が高まっていたから
 だ。政治主導、脱官僚、天下り根絶など、抜本的な公務員制度改吊に意欲を示す、民主党が
 政権を配れば、改革は一気に進むのではないかとの期待があった。 


                          仙谷行政刷新大臣の心変わり
 
  2009年9月16日、民主党政権か誕生した。
  鳩山由紀夫内閣は当初、期待通り公務員制度改革に意欲的のように見えた,行政刷新担当
 大臣に就任した仙谷由人氏から組閣前を含めて都内のホテルに三度ほど呼ぱれ、彼のブレー
 ンと思われる民間の方々とともに議論した。議論は抜本的な公務員制度改革から始まり、規
 制改革、独立行政法人(独法)改革などあらゆる改革に及び、これから白紙に絵を描くのだ
 という感じがあり、非常に胸が高鳴ったのを覚えている。

  ホテルでの内々の公議では行政刷新会議のメンパーに関しても話題になった。私も意見を
 求められ、「功なり名を遂げた年配の力ではなく、いま活躍している現役ばりばりの人を入
 れたほうがいい」という意見を述べ、公務員改侭事務局のメンバーにしても同様との趣旨で
 発言をした。すると、次の会合には行政刷新会議と事務局のメンバーの候補者リストを作っ
 て持ってくるよう指示を受けた。

  仙谷大臣との接触がほとんどなかった私が今後の改革の土台を決める論議に参加を求めら
 れること自体、仙谷大臣の改革への旺盛な意欲を表すものだと私は判断していた。
  しかし、その後、仙谷大臣とお会いする機会はなく、私が推薦したメンバーリストもお蔵
 入りになってしまった。そして.12月、仙谷大臣の判断で、私を含む公務員改革事務局幹
 部全員か更迭され、私は経産省に戻された。

  この間、仙谷大臣は、私を公務員制度改革の幹部として残したいと発言しているといった
 噂も聞こえてきたが、あくまで風聞であり、どのような事情があったのか、しかとは分から
 ない。ただ、後のマスコミの報道では、次のような経緯を辿ったとされている。
  仙谷氏は私を補佐官に起用し、改革推進をはかる心づもりだった.だが、霞か関の拒絶感
 は予想をはるかに超えていた。財務省を筆頭に各省庁は私の起用に猛反発し、仙谷大臣も断
 念した・・・・・・。このような経緯があったようだ。

  とりわけショツクだったのは、私の親元である経産省の上層部が反対の意向を示し、陳情
 を行つたという話だった。
  経産省は中央官庁のなかでは、自由な雰囲気で知られている。だからこそ、私のような改
 革を公然と唱える者も長い間冷たい処遇を受けずに済んでいた。その経産省ですら、私の補
 佐官起用には拒否反応を不しているというのだから、いかに霞が関全体が私の処遇に神経を
 尖らせていたのか、分かろうというものである。
 
  とりわけ省庁のなかの省庁、財務省は、私の補佐官起用に徹底抗戦したらしい。財務省に
 へそを曲げられると、すぐそこに追っていた民主党政権初の予算算編成は暗礁に乗り上げ、
 鳩山政権の命運は尽きかねない。
  仙谷大臣が霞が関の圧力に屈したのは、理解できなくもない。予算の編成は毎年、ただで
 さえ難航するのに、鳩山政権は初めての経験である。しかも、自民党政権下ですでに終えて
 いた概算要求を一度白紙に戻してやり直し、査定をして、12月に予算案を出さなければな
 らなかった。これをたった三ヵ月でやるには、財務省を敵に回しては無理である。現実的な
 選択肢を取ったのだろう。

  私の受けた感じでは、仙谷氏が改革に燃えていたのは、明らかだった。気分的にも高揚し
 ていて、なんとエネルギッシュな人だろうと、感嘆したほどだった。私の人事に関しても本
 意ではなく、財務省に対しては「いまに見ていろ」と思っていたのではないか。
  仙谷氏は小沢一郎幹事長とも折り合いが悪く、鳩山政権では、いわば外様の身だ。あの頃
 は、一人で戦うのはまだ無謀だと考え、捲土重来を期していたと思われた。
  だから、私は更迭されても、決して落胆していなかった。いずれは思い切った展開になる
 だろうと微かな希望は持ち続けていた。しかし、希望はすぐに失望へと変わつていく……。


わたしの少ない経験をもってしても、この場面での顛末は痛いほど、実感を、記憶をも呼び戻さ
せる語りなっている。「こうして改革は挫折する」と。そして、その乗り越え方も体現し貴重な
学習もおこなっている。それは「できる限りオープンにすること」。固陋にして鄙吝な集団を撃
破、突破するにはこれが一番であると。さて次回は第2章に入る。

  
                                                       この項つづく 

 

   ● 今夜の一品

汲んできた水をParabosol に注水、砂などのゴミを一次フィルターで除去後タンクに貯められ、次
にパラボラミラーの集光部分を通ることで水を沸騰させ殺菌浄水されるというもの。復水器を通
った蒸気が冷却され、カーボンフィルターを通して浄水タンクに回収。1回で170リットル浄
水可能。飲料水のない場面では保安・防災用に便利そうだ。

 

 


サーチュイン遺伝子の覚醒

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   何か三洋の文字がどっかに残っていないか
               なというふうにいつも思うもの、やっぱり。 

                                   井植  敏


 

    

二酸化炭素を排出せず、原発のような巨大リスクもない。再生可能エネルギーは自前の電源とし
て重要だ。当面のコスト高は課題だが、これを抑えつつどこまで本気で増やすのか。経済産業省
が示している2030年の電源構成(エネルギーミックス)案からは、覚悟も戦略も伝わってこ
ないと「再生エネ比率『抑制目標』ではこまる」(毎日新聞 2015.05.31)と以下のように批判。


 原発事故前の日本では再生エネが電源に占める割合は約1割(水力を含む)だった。政府案
 では30年にこれらを22~24%にするという。しかし、事故前でも目標は21%だった。
 それをわずかに上回る程度で最大限の導入とはとてもいえない。

 しかも、その内訳を見ると風力が1.7%、太陽光が7%に過ぎない。世界の潮流から見て、
 風力や太陽光は確実に伸ばすべき電源である。デンマークではすでに電源の4割近く、英国
 で7%以上中国でも2%以上を風力でまかなう。太陽光の割合もイタリアでは8%近く、ド
 イツでも6%近い。欧州では20年に30%程度の再生エネ割合を目指す国が多い。中国で
 も30年に53%まで拡大が可能という。こうした国際動向から見ると日本の目標はあまり
 に低い。 

 太陽光は固定価格買い取り制度(FIT)の導入で急速に伸びた。風力も北海道、東北を中
 心に潜在力は非常に大きい。拡大の余地は十分にあるのに、この程度の数字に抑えられてい
 るのはなぜなのか。経産省は火力の燃料費とFIT買い取り費用などを足し合わせた「電力
 コスト」を今より低下させることを電源構成を決める前提条件とした。その上で、低コスト
 などを理由に原発を温存、高コストと自然変動を理由に風力や太陽光の導入量を大きく制限
 した。「これでは再生エネ抑制目標だ」という声が環境NGOなどから上がるのはもっとも
 だ。 

 もちろん、コスト抑制は重要だ。FITの賦課金が一定期間、電力料金を押し上げるのも事
 実で、特に中小企業への影響が大きい。しかし、経産省が示す電力コストには減価償却費や
 運転維持費、事故対応費、廃炉費用などが含まれていない。これらを考慮に入れると今より
 30年のコストが増すかもしれない。火力の燃料費も影響が大きく、安く調達する努力を怠
 れば電力コストにはねかえる。風力と太陽光を抑制すれば電力料金を抑えられるという保証
 はない。30年以降への発想が欠けているのも問題だ。FIT費は30年を過ぎると減少に
 転じ、設置費用を回収した設備で燃料費をかけずに安く発電できる可能性がある。将来はF
 ITの必要性もなくなるだろう。再生エネが生み出す市場や雇用も大きい。電源構成は、そ
 うした将来見通しも念頭に決めるべきだ。


以上がその内容だ。このブログでも掲載しているが、電力費が自動的に跳ね上がっていくのは原
発が再稼働できない価格転嫁からで、わたし(たち)の考えでは、太陽光発電だけでも1キロワ
ットアワー当たり7円も既に見えているし、むしろ、百パーセント再生可能エネルギーで賄える
だろうとまで考えている(「再生エネルギー百パーセント時代」2015.05.28、「再エネ百%のハ
ワイ」2015.05.15,「自爆することはない」2015.04.30 「グリッドパリティ達成」2015.03.19
「デジタル革命!大爆発」2014.12.25など参照)。そのように、太陽光発電やバイオマス燃料と
いった再生エネルギーの使用技術工学の改良進化は、反動的なサボタージュ以外に、もはや止め
ることができないと考えている。また、仮に大震災・大噴火に見舞われ、被災したとしても、再
生可能エネルギーは、1年以内に復元することも可能だろうが、原子力エネルギーのそれは、亡
国に至るに等しいものだろう。


 

 

● サーチュイン遺伝子を覚醒させよ!

ビデオ録画から。NHKスペシャル『NEXT WORLD 私たちの未来 』――「不老不死」をテーマに
した第2回目の放送の「新若返る薬NMN・β-ニコチンアミドモノヌクレオチド」(NMN)に着
目――これは「サーチュイン遺伝子」を活性化させる機能が期待されている、日本のオリエンタ
ル酵母工業株式会社(滋賀県長浜市)が独自開発製剤で、(1)メスのマウスにNMNを投与し
たら寿命が16%延びる、(2)糖尿病のマウスに1週間NMNを投与すると、血糖値が正常に、
(3)生後22カ月(人間の60歳に相当)のマウスにNMNを1週間投与することで、細胞が
生後6カ月(同200歳)の状態になった実験報告が公表されている。また、Ⅱ型糖尿病や心臓
、腎臓などの疾患に対して効果があると共に、劇的な若返りが見込めることが明らかにされた。


尚、製剤の価格は1グラム当たり40万円(ただし、研究用試薬)。

サーチュイン遺伝子 出典 idol48.seesaa.net

サーチュイン遺伝子:サーチュイン遺伝子が最近注目を集めています。サーチュイン遺伝子は別名=
長寿遺伝子とも呼ばれ、寿命を延ばす働きがある。サーチュイン遺伝子は昆虫から哺乳類まで殆どの生
物が持つ遺伝子で、これを活性化させると寿命が20~30%ほど延びる。人間に応用すると寿命が百
歳以上に延びることになる。ヒトを含む哺乳類では 7種類 が見つかっており、SIRT1~7と命名され
ている。

 

   

【日本の政治史論 22:政体と中枢

「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。   

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)    

 

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』  

    目 次     

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策    
  

  第2章 公務員制度改革の大逆流   

                                           民主党の限界とは何か

  親元の経済産業省に炭された私に、とりあえず用意されたのは「経済産業省大臣官房付」
 という肩書である。「官房付」は次のポストが決まるまでのいわゆる「待機ポスト」で、い
 わば「閑職」だ。私のようなケースでは数ヵ月以内に、どんなに遅くとも次の夏の定期異動
 で然るべきポストに就くのが普通だが、後に述べる通り、更になっても私には新たなポスト
 は与えられなかった。

  その間、2009年12月に改革派が事務局から一掃されて以降、公務員制度改革推進の
 歯車は完全に止まり、逆回転を始めたようだった。それをはっきりと確認できたのが、鳩山
 政権が国会に提出した政府案だった。
 「政治主導」を掲げて船出した鳩山政権は、事務次官会議廃止、行政刷新会議・国家戦略室
 の設置など具体策を矢継ぎ早に打ち出していたか、2010年2月に出された国家公務員法
 改正に関する政府案の中身は、2009年の麻生政権下での改正案から大幅に後退し、われ
 われの作った改革案は完全に骨抜きにされていた。

  この政府案を一言でいえば、縦割り・省益優先の人事を、政府全体の利益を目指す内閣主
 導の幹部人事に変革するにあたって、改正を必要最小限にとどめた内容だった。
  具体的には、各省ごとに行われていた幹部職員(部長職以上約600名)人事について総
 理(実際には官房長官)が候補者名簿を作り、リストのなかから各省大臣が総理・官房長官
 と協議したうえで、任命する。そのサポート組織として内閣官房に人事局を置くというもの
 である。これは、大筋において麻生政権下でわれわれが取りまとめた法案と同じで、目新し
 い提案ではない。

  民主党政権に私か期待していたのはその先である。幹部職員を企業の取締役並みに入れ替
 えられるようにする新制度が必要だ。時代のニーズに合わせて組織・人員を・迅速かつ大胆
 に配置替えするために、人事院や総務省から組織や定員に関する権限を内閣官房に移すべき
 である。
  これは先に紹介した通り、2009年、自民党政権下で甘利明行政改革担当相が谷公士人
 事院総裁と大バトルを繰り広げた末に、われわれの改正案に盛り込まれていたのだが、鳩山
 政権の政府案からはすっぽり抜け落ちていた。
  さらに政府案では、リストラを推進するために、総人件費管理を内閣官房か中心になって
 決める規定も削除された。明らかに財務省に気を追っている。もちろん、天下り規制の抜本
 強化も入っていなかった。

  すなわち政府案には、必要とされる改革のごく一部しか盛り込まれていなかったのだ。こ
 の時点で、油谷大臣らも結局、改革路線に戻ることはなかつたと私にもはっきり分かった。
  唯一、実質的な進歩があったのは、様々な条件を付与して幹部職員の降格か事実上できな
 い規定となっていた自民党案に対して、政府案は事務次官から局長、部長までを一つの職階
 (クラス)とみなすことにより、次官を部長に落としても、同じクラスのなかでの横滑りだ
 から公務員の身分保障の規定に抵触しないという理屈で、実質的に降格可能にしていた点だ。

  前にも述べた通り、政治主導の実現には幹部の人事を降格を含めて柔軟に行えるようにす
 る必要がある。民間人や若手を登用して官民の文化を融合し、その時々のニーズに対応した
 組織を作り、もっとも強力な幹部の布陣にできるようにするためには、前任者たちを自由に
 降格できるようにするしかない。身分保障でいつまでも居残れるというのでは、こうした人
 事ができなくなるのである。
 
  だから、この民主党案は、ややまどろっこしいやり方ではあるが、麻生政権の改正案より
 は一歩前進ではあった。
  だか、依然として幹部を課長に落とすといった大胆な降格は厳格に制限されるため、全体
 としては、幹部職のポストが空かず、本来目指したはずの若手や民間人の登用にはつながら
 ない内容でしかなかった。
  課長にまで降格させると、そのすぐ下の課長補佐にまで影響か及びかねない。それでは組
 合がおさまらない。祖合への遠慮がここでも改革の障害になっている。民主党の限界が見え
 たといってよいだろう。


                         一人の官僚を切れば五人の失業者を救える        

   私は鳩山内閣の政府案を見て彫沢としヽ焦燥感を剔らせた。とても政府に危機感があると
 は思えなかったからだ。重要なのは、今回の改革が平時のものか、非常時のものかという認
 識である。
  日本の国家財政はぎりぎりの状態にある。企業にたとえれば分かりやすい。いま日本が置
 かれているのは、企業でいえば一時的赤字の段階ではなく、構造的赤字で、借金返済の目処
 が立たず、しかも本業の稼ぎも向上の見通しが立たない状態。民事再生や会社更生の申し立
 てを検討する段階である。

  企業の再生時には、一時的経営悪化時とはまったく異なる大胆な改革が必要となる。経営
 陣の退陣や外部人材の役人で、すべてのしがらみを断って非連続的改革を行う。と同時に、
 並行して内部の中堅・若手を抜擢し、改革業務をリードさせる。信賞必罰を徹底し、年功序
 列が能力主義に改められる。

  さらにもっとも特徴的なのは、ウェットな風土の日本企業でも、再生段階ではドライに大
 胆なリストラか実施されるという点だ。かつてのダイエーや現在の日本航空で行われている
 ことである。東京電力でも必要になるだろう。生きるか死ぬかの瀬戸際で生き残るためには
 事業の選択と集中が必要になり、余剰人員は役員や管理職ポストとともに大幅削減される。
  翻って公務員はどうか。国家には通常、破綻は想定されておらず、公務員は「身分保障」
 で守られている。だか、日本の国家財政は火の車で、さらに年々借金が積み重なり、成長の
 ための投資もままならない。

  破綻を回避するためには、無駄な歳出削減と成長力アップによる税収増をはかる必要があ
 る。それでも足りなければ増税も避けて通れない。
  実は、歳出削減、成長カアップ、増税、これらのいずれも公務員のリストラなくしては実
 現しない。歳出削減を徹底すれば当然人も要らなくなる。事業仕分けは単なる政治ショーで
 終わっているが、本来はここで明らかになった無駄を排除するのと併せてリストラも実施す
 ることが必要だ。無駄な人員を温存していてはなんのための仕分けか分からない。

  ● 成長戦略『双頭の狗鷲』


  成長力アップは役人にはもっとも難しい課題だ。省益のことしか考えてこなかった各省庁
 の幹部の頭からは、過去の延長線hにあるありきたりのアイデアしか出てこない。まったく
 新しい発想で大胆な政策を打ち出すには、若手と民間人の血を入れて、新しい政策イノベー
 ション文化を創造していくしかない。そのためには年寄りの官僚の既得権を奪い、新しい波
 に乗れない人たちをまとめてリストラしなければならない。

  さらに、増税を求めるには、官僚自ら血を流す姿勢を示すことか不可欠だ。日本株式会社
 を運営する社員たる公務員か、自分たちはなんの痛みも受けず、大幅増税を求めても、株主
 であり、債権者でもある国民は、到底つき合えないということになるのは明らかだ。
  すなわち、今回の公務員制度改革は返一時ではなく、危急存亡の非常時の改革として実行
 されるべきで、これまでタブーとされてきた公務員のリストラも不可避なのだ。
  消費税増税だけでは財政再建はできないか、日本国民は悲しいまでに真面目だ。消費税増
 税はもはややむを得ないと思い始めている。しかし、仮に国民が増税を覚悟しているからと
 いって、将来の給も描かないまま、「当面」10パーセントなどという無責任な増税を認め
 るほど国民もバカではない。いかに増税幅を抑えるかを真剣に考えなければならない。

  そのためには、増税の前に徹底的に行政の無駄を省き、無駄な歳出を大幅カットする、成
 長の足かせになっている様々な既得権にメスを入れ、将来の経済成長の基盤を作る、といっ
 た改革が必要だ。それができなければ、財務省の増税による財政再建路線で消費税30パー
 セントを目指すことになるだろう。もちろん、そんなことをすれば消費は大きく落ち込み、
 日本経済が破綻するのは明らかである,

 「身分保障」の美名のもと、仕事がなくなった人を増税で雇用し続けることは許されない。
 時代についていけない幹部官僚を守り続けることは最早、犯罪といってもいいだろう。
  高給取りの年寄り公務員を削減すれば、多額のおカネが浮く。キャリア組だけでなくノン
 キャリア組も含め、50歳前後の公務員は、優に1千万円前後の年収を得ている。一方で、
 年間2千万円の支援があれば、命を助けられる民間失業者はたくさんいる。仮に1千万円の
 高給を取っている高齢職員一人をリストラすれば、病気や失業で誇しむ国民、五人が救われ
 る計算になる。
 
  極論すれば、官の失業者一人を助けるか、民間の失業者五人を助けるかという設題だ。こ
 ういうと、われわれにも生活があると大半の公務員は反論するだろうが、公務員は世間相場
 より高い給与をずっと支給されてきた。都心の一等地の官舎にただ同然で住み、その問ゆと
 りを持って貯金できる。蓄えは民間人より多いだろうし、高額の退職金も出る。急場は凌げ
 るはずである。贅沢をいわなければ、再就職の道かまったく閉ざされているわけでもない。
 
  リストラは無闇に行うべきではないか、現在のように、官と民両方を救う財源はなく、公
 務員を助けるか、一般国民を肋けるか、二者択一を迫られている状況下では、当然、一般国
 民を優先すべきだ。
  しかも、単にリストラができるというだけでなく、若手や民間人の登用によってこれから
 の思い切った改革の推進体制を整えることもできるのだ。国民のために働きたいと望み、公
 務員になった者には十分理解できることである。
  ところが、霞が関の大勢はそうではない。既得権益を守るため、改革に頑強に抵抗してい
 る。そのうちにも、日本の病状は臨終の間際まで進む………

  鳩山内閣の政府案は、衆議院通過後、会期切れで結局、廃案となったが、強い危機感と焦
 燥感を抱いた私は、いま記した内容を含む早急な改革の進展を訴えた論文を、『エコノミス
 ト』(2010年6月29日号、同21日発売)にあえて実名で寄稿した。同誌がつけたタ
 イトルは、「現役官僚が斬る『公務員改革』消費税大増税の前にリストラを」だった。
 
  この論文は霞が関、永田町に大きな波紋を広げた。
  ……というより、大激震が走った。


ここで「破綻を回避するためには、無駄な歳出削減と成長力アップによる税収増をはかる必要が
ある。それでも足りなければ増税も避けて通れない」との目的は合致しても、「官僚一人を切れ
ば失業者五人が助かる」というはこれまた過激な見出しだ。このブログでも掲載しているが(成
長戦略「双頭の狗鷲」)、公務員の賃金レベルは、民間の賃金より低く抑制する原則(「いかに
して、ロシア革命は反革命に転落していったか」)を優先すべし、その上で「組織の機構改革に
着手」し、そして、最も優先すべきは、「デフレ脱却」→「有効需要(=潜在的生産性)の喚起」
を原則とするポスト・ケインズ主義的製法の導入と、考える点で大きく異なるように思える。そ
の点において、財務省官僚の過ちを直ちに是正する必要があった。もっとも、この政策推進には
英米流金融資本主義(ファンドマネージャー的行動態)の格差緩和政策を同伴させる必要がある
と考えていた。


                                                      この項つづく


● 戦後70年「ニッポンの肖像」 豊かさを求めて

ビデオ録画から。これもNHK。ゲストは、堺屋太一、野口悠紀雄で、バブルと失われた20年
・30年を振り返り、急速な少子化・超高齢社会に突入し、これからの日本の指針について語る。
中でも、元三洋電機社長井植敏氏へのインタビューが大変印象的であった。この頃のわたしは?
というと、クールに突き抜け切ったことを、いまでは誇らしく思っているが、それぞれのポジシ
ョンにあった人々の苦悩と苦闘を垣間見せていただいた気がする。

                                         

 

再エネ百パーセント時代 Ⅱ

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   しかし戦後ずっと続いてきた人事慣行をやめることは、
               天下りを廃止するよりはるかにむずかしい。 

                                       池田 信夫

 


【再生可能エネルギー百パーセント時代 Ⅱ】

岐阜県の中部に位置する郡上市の北西に「石徹白(いろしろ)」という名前の集落で、標高7百
メートルの高地にある水に恵まれた地域を流れる農業用水路で新たに小水力発電所が運転を開始。
6月1日に稼働した「石徹白1号用水発電所」は農業用水路と川のあいだの約50メートルの落
差を利用して発電する。水量は毎秒0.19立方メートルで、発電能力は63キロワット)ある。
年間の発電量は39万キロワット時を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600キロワッ
ト時に換算すると百世帯強になり、ちょうど石徹白の世帯数と同じだという(「人口270人の
農村で電力自給率百%に、小水力発電所が本日運転開始」スマート・ジャパン 2015.06.01)。

石徹白では2007年から小水力発電に取り組んできた。らせん式の水車(0. 8kW)を農業用水路に
設置(上図参照)したのに続いて、2011年に上掛け式の水車(2.2 kW)を導入、それまで休眠状態
にあった農産物加工所を復活させた。さらに「エネルギーが自給できる地域」を目指して、1号
用水発電所の建設を推進し稼働させる。水力発電で最も多く使われている横軸フランシス型の水
車を採用した本格的な発電設備が特徴である。

 

この小規模水力発電システムから考えたことは3つ。(1)まず、これで、百パーセントの電力
が再生可能エネルギーで賄うことができるということ。(2)水力発電の弱点は「渇水」。蓄電
システムの整備と併せて太陽光発電を増設すれば電力供給力は倍あるいはそれ以上の電力量を得
られる。(3)今回は横軸フランシス型の水車式発電を採用しているが、永久磁石と電磁コイル
を組み合わせたコンパクトな整流子マイクロ発電への代替も可能に加え、風力発電も可能である
(「再生エネルギー百パーセント時代」2015.05.28、「再エネ百%のハワイ」2015.05.15, 「自
爆することはない」2015.04.30 「グリッドパリティ達成」2015.03.19 「デジタル革命!大爆
発」2014.12.25など参照)。

 




   

【日本の政治史論 23:政体と中枢】

「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。   

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)     

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』  

    目 次     

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策    
  

  第2章 公務員制度改革の大逆流   

                                役人の既得権を拡大させた「基本方針」

  実名で政府の公務員制度改革案を批判すれば、どのような仕打ちが持っているか、私にも
 ある程度は想像できた。それでも論文を書き発表したのは、政府案の提出と並行して看過で
 きない措置が進められようとしていたからだ。2010年6月、国家公務員の「退職管理基
 本方針」(総務省案)なるものが発表された。
  その内容が実に噴飯ものだった。天下り根絶に伴う処遇ポスト確保のための処置としてい
 たが、実態は、高齢官僚が望む年功序列の昇進・昇給システムと、天下りに代わる既得権維
 持策でしかなかったからだ。百歩どころか、改革の時計の針を一気に戻す内容である。

  まだ総務省案の段階だったので『エコノミスト』の論文でも、個々の論点を詳しく論じる
 ことはできなかったが、改革に向けた時計の針を逆回転させようとする、こうした政府内の
 動きをとにかく広く国民に知ってもらいたい、そのフ心でこの論文を実名で公表したのだっ
 た。
  私か憂慮していた事態が現実になったのは『エコノミスト』発売の翌日、6月22日であ
 る。鳩山内閣から政権をバトンタブチされた菅直人内閣が、この日、「退職管理基本方針(
 以下「基本方針』と略すごを閣議決定してしまったのだ。
  「基本方針」は安倍政権時代に改正された国家公務員法のなかで禁止された「天下り」の
 斡旋の禁止措置をあからさまに骨抜きにする内容だった。

 『基本方針」では「天下りのあっせんを根絶し」と従来の方針を謳っている。だが、内容を
 検討すると、謳い文句とは裏腹に、事実上の天下りを容易にする方法と、出世コースから外
 れた官僚の処遇ポストが用意されることになっている。
  具体的に「基本方針」のどこか問題なのか――。
  第一に独立行政法人(独法)や政府県の企業への現役出向、民間企業への派遣拡大の容認
 である。現役出向や民間企業への派遣拡大はどこに問題があるのか、俄かには分かりにくい
 かもしれない。

  中央官庁では60歳の定年を迎える前に、各省庁の大臣官房が中心となり、再就職先を斡
 旋してきたが、安倍政権での国家公務員法改正で、省庁による斡旋行為が禁止された。官民
 の癒着を防ぐとともに天下りポスト維持のための膨大な無駄をなくすという観点から、これ
 は極めて妥当な改正だった。
  ところが菅政権は、国家公務員法で禁じられているのは定年前の「勧奨退職」に伴う天下
 り斡旋であり、中高年の現役職員が公務員の身分を維持したまま出向したり派遣されるのは、
  これに当たらないとした。その結果、天下りは有名無実化するどころか、これまで以上の官
  民癒着につながる恐れさえある。

  なぜか――。天下りが問題視されるのは、省庁による民間企業への押しつけ人事が行われ
 たり、あるいは天下り先との不明朗な関係を生み、結果的に膨大な無駄が生じたり、おかし
 な規制が生まれたりするからだ。この現象は、公務員か退職しているか現役であるかにはか
 かわらず、官庁の斡旋であれば起こり得る。
  いや、現役の出向のほうがOBの天下りより悪質だ。受け入れ側の心理から考えてみよう、
 現役の役人を受け入れた場合、受け入れた企業や団体はこう思う。
 「この人は現役の官僚だから、省内には友人も後輩もたくさんいる。この人が出世しないと
 しても、無下に扱うとリスクがありそうだから、きちんと処遇しよう」

  しかし、反面こう思う。

  「役所から出されたぐらいだから、さほど優秀ではないだろう。役には立たないだろうな」
  実際、有能な官僚なら省内に残す。しかし受け入れ側は、役には立たなくても待遇はきち
 んとしなくてはならなくなる。
  一方、押し込んだ宣房長はどう思うか。
  「優秀な役人ですからよろしくといったものの、向こうは信じていないだろうな,なぜ、
 そんな優秀な人間を出すのかという顔をしていたものなあ」
  受け入れてくれた会社に悪いと思い、恩義を感じる。

 「あそこが受け入れてくれたおかげで人事がうまく回った。そこに行った彼も喜んでいたし、
 あの官房長は一生懸命、面倒を見てくれると、評判も良くなった。次官も見ていてくれるだ
 ろ この両者の心理が、肝心なときにどのように作用するか。たとえば、経度省が規制改革
 の議論を進めている最中に、受け入れ先の社長か事務次官に時候の挨拶にやってきて、官房
 長が同席したとしよう。

  事務次官に社長か白々しくも礼をいう。

 「お宅から出していただいた○×さん。たいへんよくやってくれています」
  そばで聞いていた官房長はその途端ドキッとして、「いや、こちらのほうこそ、お礼申し
 上げないと。たいへん良くしていただいているそうで」とお愛想をいう。
  官房長の心のなかを見透かしたように社長か話し始める。
 「最近、世の申が騒がしいですなあ。お宅の審議会では規制改革に関して議論か進んでいる
 ようで。うちのほうでも独自に調べてみると、いろいろ問題が出てくるようです。事業にも
 かなり影響するという報告もありまして。ただでさえ、厳しいご時世なのに、たいへんです
 わ」 
  お宅の人間の面倒を見て、能力の割りに高い給料を払っているのに、規制緩和などやられ
 たら、何のために受け入れてやったのか分からないと、言外に匂わせる。
  こういう会話が交わされると、規制改革の矛先か一気に鈍る。


                       高齢の官僚に年収千数百万円を保障

  序章で触れた東電と規制官庁である経産省、エネルギー庁や原子力安全・保安院との関係
   はその典型である。
   「想定外」といわれた津波による全電源の機能停止。実は、そうした不安は以前から指摘
 されていた。そのような指摘をいちいちまともに取り上げて規制を強化しようとすれば、東
 電はじめ天下りを送り込んでいる電力各社との関係が悪くなる。世論の厳しい批判が出て初
 めて、東電がやむを得ないと思うまでは、規制強化は先送りしようということになってしま
 ったのだろ。

  これは意図的に行われたというより、官僚の本能として無意識のうちに行われたのかもし
 れない。従って当事者たちは、まったく罪の意識がなかった、という推測も十分に成り立つ。
  それくらい根が深い問題なのだ。
  しかも、何代にもわたって天下りを送り込んでいる場合は、前述したような現実のやり取
 りが行われなくても、阿吽の呼吸で意思疎通が行われているのか普通だ。
  OBの天下りでも同じような寥態か起こり得るが、現役出向のほうが癒着の構造を生みや
 すい。景気が悪くて業績が落ち込んだ企業が、天下りOBの給与を下げることはよくある。
 この場合、OBが官房長に文句をいってきても、「民間なんてすから、我慢してください。
 いいときもあるでしょうから」と、やんわり返して納得させることもできるが、現役だとそ
 うはいかない。

  出向者から「役所にいれば、もっともらえるはずだ。役所に戻して欲しい」といわれると
 一言もなくなる。だから受け入れ側の企業は、いくら給与を下げたくとも、役所の水準以下
 には落とせない。
  役所から見れば、OBより結びつきが強い現役のほうかきちんと面倒を見なければならな
 いし、受け入れ側からすれば、現役の待遇に気を遣うという意識か働き、癒着の構造になり
 やすいのだ。
  にもかかわらず、「基本方針」では「公務員時代の専門知識を民間で活用する」「官民と
 の交流を深める」との美名のもと、中高年職員の実質的天下りが推奨されている。
 「基本方針」にはもう一つ大きな問題点がある。独立行政法人の役員ポストに関してである。
 独法の天下り役員ポストについては2009年秋から公募が義務づけられていたか、現役出
 向で就く場合は、公募しなくても良いと改悪された。

  私には、これを正当化する理由が見当たらない。政治主導で所管大臣が独法役員を選任す
 るという仕組みだから、公募はせずとも良いというのが改正の唯一の理由らしいが、どう考
 えても、政治主導を隠れ耐とした官僚の利権拡大としか思えないからだ。
  第三の問題として高位の「専門スタッフ職」の新設。霞が関では、従来から出世コースを
 外れた課長職以下のために「専門スタッフ職」が設けられているが、これはその上位版であ
 る。
  この処遇によって、高齢のキャリア官僚は幹部並みの年収千数百万円か保障されることに
 なると予想される。これまた官僚の既得権拡大と見られても仕方がない。


 

                                     芸術の域に達した官僚のレトリック

 「退職管理基本方針」が菅政権によって閣議決定された後、矢継ぎ早にこれを具体化するた
 めの措置が講じられた。実際のところ、「基本方針」だけを読んでも具体的に何か起こるの
 か普通の人にはまったく分からない。表現か抽象的で、しかも大事なことはほとんど何も書
 いていない。すべてが映画の予告編のようなものだ。いや、それよりはるかに分かりにくい。

  これは、後ろめたいことを官僚が画策するときの常套手段だか、今回はそれが極めて徹底
 している。全体として見ると、巧妙に仕組まれた総合的な官僚の既得権維持拡大の策略が、
 一つの措置を、あえていくつかの文書に分けて行われている。さらに発表の時期も、選挙前
 のどさくさのときやお盆休み中というように、気づかれにくいときを選んで行われている。

  たとえば、現役出向については、「基本方針」ではほとんど具体的なことは書かれていな
 いが、参議院議員選挙直後の7月22日には具体的な政令が発表される。政府県の企業や団
 体に出向した期間も公務員として働いていたのと同じように退職金の算定対象となるよう政
 令が改正され、出向可能な企業が追加されたのだ(下表参照)。



  この表を見れば一目瞭然。要するに、従来から各省庁が天下りを送り込んでいた企業・団
 体かリストアップされているのだ。天下りできなくなったから、その代わりに現役のまま行
 けるルートにしたというまやかしである。 
    しかし、この表自体は記者発表では公表されていない。後に国会の議論で自民党の河野太
 郎議員が指摘して初めて国民が気づいたものだ。現に発表翌日の新聞では小さな扱いだった。
  毎日新聞の三沢耕平記者だけがこれに気づいて大きく扱った。マスコミの質にもかなりの
 差がある。
  これによりNTTグループや日本郵政グループ、JR、高速道路会社などへの出向は、公
 務員在籍と同じと見なされる。

  さらに驚いたのは、民間企業への派遣に関する人事院規則の改正だ。わざわざお盆休み中
 の8月16日に発表した。本当によくやるなあと溜め息か洩れた。
  内容も凄まじいものだ。これまで部長・審議官以上の幹部は所属する官庁の所管業界へは
 派遣できなかった。つまり、国土交通省の審議官をゼネコンに派遣することはできなかった。
 当たり前だろう、と誰もが思う。ところが、省の所管企業であっても、たまたまそのときに
 所属している局の所管業界でなければ派遣しても良いと改められた。つまり、経度省の経済
 産業政策局の審議官を経産省所管の自動車会社に派遣しても、局が違うからOKだというの
 である。

  局長級は従前のルールと変わらないものの、部長・審議官は、直接担当する局と分野が違
 えば、その省が所管する民間企業にいくらでも派遣できるようになったのだ。
  驚きはさらに続く。規則の改正はここで終わるのだが、なんだかよく分からない運用の規
 定というものが規則改正の後に続く。よく見ると記者発表の表題が「……規則の一部改正等
 について」と「等」がついている。つまり規則改正以外にも実は大事なことがあるんですよ、
 と暗に示しているのだ。

  では、この「等」の部分で何か認められたのか。なんと、民間企業への派遣終了後に、派
 遣されていた企業への再就職が認められてしまったのだ。役所に戻って定年退職した後なら
 再就職できるという………。
  ここで、これまでの天下りの仕組みについて簡単におさらいしておこう。
  キャリア官僚は課長までは概ね同期横並びの年功序列で昇進する。しかし、課長の上のポ
 ストである審議官や部長ポストは数10しかなく、最近は必ずしも全員か昇進できるわけで
 はない。その上の局長ポストはさらに数が少なく10程度である。そこで、これ以上出世で
 きなくなると、その時点でいわゆる肩たたきが行われる。間引きである。

  もちろん、そのときに再就職先を役所が斡旋してくれる。通常受け入れてくれるのは、そ
 の役所の所管の独立行政法人や公益法人、それに所管企業である。
  行き先では通常、退職時の給料の水準を維持してくれる。さらに、70歳前後までいくつ
 かの団体・企業に再々就職(いわゆる「渡り」)を世話して、いわば一生面倒を見るのが暗
 黙のルールになっていたのだ。
  ところか、安倍内閣のときにこの天下りの斡旋を禁止する法律改正があった。そのときか
 ら、実は官僚は、その規制強化をなんとかして骨抜きにできないかと各種の策を準備し、今
 日まで虎視耽々とその実現の機会をうかがっていたのだ。その1つが先ほど解説した現役出
 向制度。これは主として独立行政法人や政府系の企業・団体に出す場合の仕組みだ。



  それと並ぶのが民間企業への派遣である。民間への官僚の派遣は官民交流法という法律で
 認められたものだが、この目的は主として若手官僚を民間に派遣して民間のノウハウを身に
 つけさせ、それを役所に戻ってから活かして、たとえば業務の効率化などに貢献させようと
 いうものだ。従って、50歳を過ぎた官僚を民間企業に派遣するのは法律の本来の目的に違
 反しているから違法だといっても良い。少なくとも法の目的には合っていない。

  そのため、普通なら法律の目的を改正して、かつ幹部を派遣したら生じるであろう弊害を
 防止するための厳しい規制を入れるなどの措置が必要なはずだ。しかし、そんな法改正をし
 ようとしたら国会で議論が紛糾して、とても通らない。そこで、そういう問題にはほおかむ
 りしたまま、民間に幹部級を派遣するという法律違反の行為をやってもいいですよというこ
 とだけ、極めて抽象的な形で先の「基本方針」に入れ、閣議決定させてしまう。
  次に、閣議決定に書いてあるからという理由でその具体策を政令や人事院規則で決めると
 いう、まさに天地の順序をひっくりかえすような詐術を弄しているのだ。


以上のように読み進めてきたが、「官僚の暗黙知」としての「人事制度の精神」とは、つまると
ころ「官尊民卑」だったりしたら、まったくつまらない。さて、次節は「天下り天国が生んだ原
発事故」。いよいよ、核心に迫るがいかに。

                                    この項つづく 

    ●今夜の一曲

'Listen to What the Man Said' 
Paul McCartney’s 10 Greatest Songs After The Beatles March 6, 2013 12:00 AM

「あの娘におせっかい」(Listen to What the Man Said)は、1975年にポール・マッカートニー&ウ
イングスが発表した楽曲と同曲を収録『ヴィーナス・アンド・マース』収録。またベストアルバ
ムでは『オール・ザ・ベスト』『夢の翼〜ヒッツ&ヒストリー〜』に収録。シングルカットは同
年5月16日。なお『ヴィーナス・アンド・マース』版のみ、冒頭でポールが黒人シンガーの物真
似をして喋っており、また次曲へはメドレーとなっている。この曲では、ギターにデイヴ・メイ
ソン、サックスにトム・スコットをゲストとして起用。米国のビルボード誌で、1975年7月19日に
週間ランキング第1位を獲得、キャッシュボックス誌では、6月12日付けで第1位を獲得。日本
でも1位を獲得している。

   Any time, any day
   You can hear the people say
   That love is blind
   Well, I don’t know but I say love is kind

   Soldier boy kisses girl
   Leaves behind a tragic world
   But he wont mind
   He’s in love and he says love is fine

   Oh yes, indeed we know
   That people will find a way to go
   No matter what the man said
   And love is fine for all we know
   For all we know, our love will grow
   That’s what the man said
   So won’t you listen to what the man said
   He said

  ※そうさ 僕らは知っている
   人々は行くべき道を見つける
   誰が何と言ってもね
   僕らが知ってる限り 愛は素敵なもの
   そして僕らの愛は育っていく
   僕にはそう聞こえるんだ
   だから君も耳を傾けて
   愛の声を聞いてごらんよ

   Ah, Take it away

   Oh yes, indeed we know
   That people will find a way to go
   No matter what the man said
   Love is fine for all we know
   For all we know, our love will grow
   That’s what the man said
   So won’t you listen to what the man said  
   He said

   Oh yes, indeed we know
   That people will find a way to go
   No matter what the man said
   Love is fine for all we know 
   For all we know, our love will grow
   That’s what the man said
   So won’t you listen to what the man said
   He said

   The wonder of it all baby
   The wonder of it all baby
   The wonder of it all baby
   Yeah, yeah, yeah

 

 

ナチズムとボリシェヴィキズム

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   理想的な官僚とは、憤怒も不公平もなく、さらに憎しみも激情
              もなく、愛も熱狂もなく、ひたすら義務に従う人間のことである。
                
                                      マックス・ウェーバー

 

来日中のフィリピンのベニグノ・アキノ(Benigno Aquino)大統領は3日、都内で行った講演で、
中国をナチス・ドイツ(Nazi)になぞらえ、世界各国は中国に対し宥和政策をとり続けることは
できないとの見解をほのめかしたという。 それによると、中国は、南シナ海の国際水域におい
て大型軍用機が離着陸できる滑走路の建設を含む埋め立て計画を急ピッチで進めており、各国か
ら懸念の声が上がっている。都内で開かれた国際交流会議「アジアの未来)」に出席したアキノ
大統領は、中国の脅威とそれを抑制する米国の役割に関する質問を受け、「真空状態が生じて、
例えば超大国の米国が『わが国は関心がない』と言えば、他国の野望に歯止めがかからなくなる」
と回答。

  

さらに、「私は歴史学を学んだアマチュアにすぎないが、ここで思い出すのは、ナチス・ドイツ
がさぐりを入れていたことと、それに対する欧米諸国の反応だ」と述べ、第2次世界大戦勃発の
前年にナチス・ドイツがチェコスロバキア・ズデーテン地方を併合した際、「誰もやめろと言わ
なかった」と指摘したという。ともあれ。ナチズムとボリシェヴィキズムはシャムの双生児であ
るとは故・内村剛介 のもの言いだったと記憶するが、「天安門事件」から26年、スペインの記
者が「日本に歴史正視を求めている中国は、いつになったら天安門事件を正視するのですか?」
という質問に、華春瑩(ホア・チュンイン)報道官は「政府の正当性」を繰り返すだけだったと
言う。1982年この事件の発端に多少なりとも関係したわたしにとっては、余りにも大きな課
題を背負ったままにいる中国をあらためて直視させられたニュースだ。

 

外務省は2日、韓国・中国への旅行を計画中、または現地に滞在している日本人に向け、注意を
呼び掛けた。また、韓国での感染拡大が日本でも大きく報じられる中、日本のネット上には、日
本へのウイルス流入を防ぐ対策を取るべきとの声が出ている。ネットユーザーの中には、「韓国
でのMERS拡大が心配だ」としながらも「日本へのMERS流入防止に韓国人の入国禁止も考える
べき」と書き込んでいるとか。3日、韓国国内の感染者は30人に増え、隔離対象者は750人
となりまた、この影響で訪韓を予定していた海外の観光客のキャンセルが相次ぎ、観光業界は打
撃を被っているという。  

MERSコロナウイルス(マーズコロナウイルス Middle East respiratory syndrome coronavirus, MERS-
CoV)は中東呼吸器症候群 (Middle East respiratory syndrome, MERS) の病原体。SARSコロナウイ
ルスに似たコロナウイルス(ベータ型)で、2012年にイギリスロンドンで確認された。2015年5
月30日現在の合計では、1149人感染(韓国12人を含む)、431人死亡。感染地域は2015年5月に中
国、香港、韓国に広がっている。そもそも、2012年9月に初めて報告され(感染者の入院は6月
13日、死亡は6月24日。サウジアラビアのジェッダ)、2013年12月現在、中東地域で感染拡大中
の新型コロナウイルスの流行である。肺炎(異型であるので診断に注意が必要)を主症状として
おり、死亡率が40~50%前後と非常に高いとされる。

●予防 石鹸による手洗い、マスクの装着、人の触る所の消毒などが予防となる。洗っていない
手で、目や鼻や口などの粘膜に触らないように要注意。また、ウイルスの付着しやすいマスクの
表面には触らないよう要注意。また、病人との接触は控えた方が良く、このマーズでは無いが、
シンガポールでのSARSの例では、病院における医療従事者・家族・見舞い客への感染が多かった。
公共交通機関においても密接接触(2メートル以内での接触)は危険。

さらに、病人の排泄物からの感染に要注意必要がある。香港でのSSARSの例では、スーパース
プレッダーによって、ホテルや団地でも大感染が起きている (メトロポールホテル9階、アモイガ
ーデンE棟)[64]。アモイガーデンE棟での大感染の原因は、団地の下水施設に問題があり、排泄物
の粒子が逆流したことと見られているため、下水の匂いがする場所には近づかない方が良く、メ
トロポールホテル9階での大感染の原因は、病人のトイレを清掃した器具で部屋の掃除をしたこと
とされるため、清掃器具の消毒に要注意。

●治療 治療法は確立していない。動物実験において、リバビリンとインターフェロンα2bの組
み合わせが肺炎の発症を抑制するという報告があるが、既に急性呼吸窮迫症候群となっていたエ
ジプトでの5人の重症患者では、これらの組み合わせの投与での治療に失敗。また、HIV薬のロピ
ナビルや回復期患者の血漿に効果がある可能性がある。セリンプロテアーゼ阻害剤の「カモスタ
ット(英語版)」が、培養細胞レベルで、コロナウイルスの活性化に使われるTMPRSS2(英語版)
を阻害し、MERSコロナウイルスの細胞内への侵入を防ぐことが見つかっているという。

  国立感染症研究所
 
それにしても、エボラ出血熱が終息宣言もされずにいるなかで、こんどはマーズ(中東呼吸器症候群)だし
デング熱は昨年を上回る勢いだとか、エイズは相も変わらず減らないし、本当に、東京オリンピックだと、
浮かれている場合ではない状況がつづくね。 

LIXIL(リクシル)は東北大学の研究グループと共同で「ゼロ・エネルギー・トイレ(ZET)」の
実証プロジェクトを進めている。災害時に停電が発生しても、トイレを快適に使えるようにする
ことが目的だ。東日本大震災による停電で東北大学のトイレの利用環境が著しく悪化したことか
ら、非常時にも継続して利用できる常設トイレの実現を目指すしていたが、

システム原理は、発電のエネルギーには水洗トイレの便器に水を供給する時の水流を利用する。
日常の生活環境に存在する微小なエネルギーで電力を作る「環境発電」の一種である。LIXILは
発電能力などのデータを公表していないが、水洗トイレのわずかな水流で発電できる電力は極め
て小さい。こうした環境発電の技術に加えて、蓄電池と高効率のLED照明を組み合わせた。LED照
明は暗い場所でも明るさを高める効果のある短波長の光を発する仕様で開発。電力の使用量を最
小限に抑えながら、最低限の明るさを確保することができ、災害時に上下水道の機能が維持でき
ていれば、停電が発生してもトイレの使用に支障を及ぼさないで済むというもの。

 


これは古いニュースだ。東京大学(東大)は5月28日、悪性度の極めて高い小細胞肺がんを移植し
たマウスに、がん細胞にのみ結合する抗体「90Y標識抗ROBO1抗体」を投与したところ、腫瘤が著
明に縮小することを確認したと発表している(上図参照)。

肺がんは、がんの中で最も罹患率・死亡率が高く、その内、成長が早く転移しやすい小細胞肺が
んが約15%を占め、身体の他の部位までがんが広がってしまっている段階の進展型小細胞肺がん
は、悪性度が高く、有効や治療法が確立されていない。今回、研究グループは、放射性同位元素
で標識した「がん細胞にのみ結合する抗体(90Y標識抗ROBO1抗体)」を開発し、実際に、小細胞肺
がんを移植したマウスに投与したところ、がん細胞を殺傷し、腫瘤を縮小させる効果があること
を確認したもの。

こうした抗体を投与して、がんに集積させることで、小細胞肺がんを移植したマウスの体内から
放射線治療をする「放射免疫療法」が、進展型小細胞肺がんの根治や余命の改善に向けた治療法
の確立につながることが期待できる。今後は、同薬剤の治療効果と副作用に関する詳細な評価に
加え、治療効果や副作用のさらなる改善を目指して、化学治療との併用治療や、別の治療用放射
性同位元素の導入、抗体の小分子化などを検討していくとするほか、抗体の体内動態を可視化す
ることで、SPECT/PETイメージング用診断薬の開発につなげていくという。

  

   

【日本の政治史論 24:政体と中枢】 

「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。   
 

   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)      

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』   

    目 次     

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策      

 第2章 公務員制度改革の大逆流

                      天下り天国が生んだ原発事故

  さて、ここで、新しい、民間派遣を使った天下り規制の脱法策を説明しよう。 たとえば、
 経産省の幹部級職員A氏が54歳で東京電力に現役のまま派遣される。A氏は長年、電力行
 政に携わってきたが、過去2年間は経済産業政策局の審議官を務めており、電力業界所管で
 はないので、こうした派遣が許されてしまう。給料は最低でも現在の水準が維持され、東電
 に支払ってもらう。その分役所の負担はなくなる。派遣期間は原則3年以内だが、理屈をつ
 けて5年に延ぼすことができる。

  その間、派遣されたA氏は東電のためになるように経産省とのパイプ役として汗をかく。
  その甲斐あって、A氏と束電の間で退職後は東電に再就職するという密約がなされる。5
 年経って経産省に戻ったA氏はほどなく60歳を迎え定年退職する。その際、54歳からの
 5年間の分も加算された多額の退職金を受け取る。そのまま先の密約の通り東電に再就職し、
 5年から10年程度高給をもらって余生を送るということになる。
  
  むろん、企業もただでは受け入れない。これまでしばしば問題になったように、送り出す
 官庁側は何らかの「お土産」をつける吋脂性が高い。それでなくとも、親元の官庁と直接つ
 ながっている現役官僚が出向するのだから、OBの天下り以上に官民癒着が進みかねない。
 公共事業官庁なら違法な官製談合を誘発する結果にもつながる。

  これで終わりかと思うとそうではない。さらに細かい絹⊥がしてある。
  先述のケースは定年退職の例だ。では派遣企業から戻った後の勧奨退職や自己都合退職の
 ときはどうか。そんな場合も認めていたら、まさに定年前の肩たたきに伴う天下りとまった
 く同じことが起きるから、さすかにこれはしてはいけないというような規定か書かれている。
 しかし、さらに良く見ると、非常に小さな字で、そのような場合も一定の.要件を満たせば
 派遣先の企業に再就職して良い、と肖いてある。しかもこの.定の要件が抽象的で、どうに
 でも解釈できる内容なのである。

  これでは、結局なんでもありだ。実際には、そういう建て前で、裏で役所が動くというこ
 とにもなるだろう。
  読紆のみなさんもうんざりしてきたかもしれないが、もう一つ、誰も気づいていない細工
 がある。ここまでやらせてもらえればもう何もいらない、と思うのは凡人である。官僚はさ
 らに念には念を入れる。

 「退職管理基本方針」が閣議決定された2010年6月22日。同じ閣議で「人事管理運営
 方針」なるものか閣議決定されている。毎年若干の微修疋はあるが、ほとんど同じような内
 容のものが決定されるので誰も関心を持だない。2010年もまったく報道もされなかった。
 しかし、私はこれを眺めていておかしなことに気づいた。それは官民交流に関する部分だ、
 極めて巧妙に書いてあるのでなかなか分からないが、そこまでやるかと呆れるというか、も
 はや「あっぱれ」という感さえ抱いた。

  民間企業に天下りの代わりに職目を派遣できるといっても、それはあくまでも企業側が希
 望した場合だ。そう考えると人事当局は少し心配になる。たとえば、人事課長が使えない職
 員リストを持って企業回りをして、なんとか派遣を受け入れてもらえないかと頼むときに、
 「そんな押しつけみたいなことをやるな」と非難される可能性がある。マスコミに告げ口さ
 れたら困る。

  役人はマスコミの批判を極端に恐れる。特に天下り関連では、自分に後ろめたい思いがあ
 るからなおさらである。従って、先のような批判めいたことをいわれないような免罪符が欲
 しい。そこで、「人事管理運営方針」に、「民間との間の人零交流については、官民のネッ
 トワークによる連携・協力関係の下で、企業・府省間の交流希望情報の交換等を行うなどに
 より『官から民』、『民から官』の双方向の推進・拡大に努める一と書いた。何かいわれた
 ら「閣議決定されたので、それに従って情報提供Fるためにわざわざ来たんですよ」といい
 逃れることができる、ということだ。

  役人はそこまでやる。逆にいえば、役人は、「そこまでやっても現在の政権は許してくれ
 る」、そう思っているということである。
  ここで強調しておきたいのは、こんな細かな細工を施して国民の目を欺くことは、官僚に
 しかできない、ということだ。答通の人には絶対に分からないだろう。その証拠に、これら
 の問題点をまとめて一つの陰謀だと見抜いたマスコミの報道は、いまだ目にしたことがない。
  民主党政権は、この官僚の繋争を容認したことで完全に霞が関に甘く見られたることにな
 ったのではないかと思う。

  2011年1月に元資源エネルギー庁長官が東京電力に直接天下りするという大胆件か起
 きたのはすでに述べたが、こんなことを経度省の官僚にやすやすとやられるようでは、この
 先何か起こるのか・・・・・・。やりたい放題の天下り天国が復活することだけは必至である。そ
 の構造が、原子力安全・保安院を傘下に持つ経度省と東電の癒着と、2011年3月の東日
 本大震災による福島原子力発電所の大事故につながったのだとしたら、国民不在としかいえ
 ない。

                   「公務員だけ先に定年延長」という企み

  もう一つ、ほとんど問題視されていない公務員特権拡大の策略がある。それは、公務員だ
 けは定年を85歳に延長しようというものだ。共済年金の支給開始年齢が65歳に引き上げ
 られるのに合わせて、無年金期間の発生を防ぐためである、
  一般の国民も同じ問題に直面する。そこで、政府は、民間企業に対して、①定年廃止②定
 年延長③再雇用制度導入という三つの選択肢を示して対応を促している。しかし、民同企業
 の経営は苫しいから、定年の廃止や延長は極めてむずかしい。そこで、大半の企業は、かろ
 うじて再雇用制度を整備してなんとか対応しようとしている。つまり、一度定年退職しても
 らって阿雇用契約を結び、定年前のt分、ときには2割とか3割という低い水準の給料で我
 慢してもらい、なんとか雇用を継続しようというものである。しかも中小企業などでは、そ
 れさえままならぬというところも多い。

  人事院は公務員の待遇について、何かといえば民間準拠という。民間並みにしろというの
 だ。

  しかし、民間準拠とはいっても、どう見ても公務員のほうが民間よりもはるかに待遇がい
 いと思われる点がある。それは公務員宿舎だ。都心の一等地に格安賃料で入居できる。民間
 企業でも一部の大企架にしかできない処遇だ。しかも、幹部職員になっても公務員宿舎に居
 座り続けている人たちもいる。民間なら、管理職になれば出てくれといわれるケースが多い
 のだ。
  この際、管理職以七は全員、官舎から退去してもらって、すべて売却したらどうだろうか。
 売却収入は全額、震災復興対策に充てればいい。通常なら強い抵抗があるだろうが、家を失
 った人たちの仮設住宅建設のためだと考えれば、まさか反対する人がいるとは思えない。
  本題に戻るが、驚いたことに、2010年夏に出た人事院勧告に付属する報告覆では、ほ
 とんど理由らしい理由もなく、公務員については(再雇用ではなく)定年を延長すべしと書
 いている。しかも、その具体的スケジュールにまで言及する念の入れようだ。
  こんなお手嘔りが許されるのだろうか・・・・・・。本当に悲しい気持ちになるのは払だけでは
 ないだろう。

                      民主党マニフェストの大欠陥

  民主党政権の脱官僚、天下り根絶を掲げた改革が、なにゆえこのようなおかしな方向に迷
 い込んだのか。
  その最大の原因は民主党のマニフェストの不備にある。マニフェストでは、公務員の天下
 りを全曲禁圧し、定年まで働けるようにするとしているが、これを普通に実施すればどうな
 るか。高齢者が滞留し、人件費は増加する。現に総務省は、人件費は二割増加すると試算し
 ている。

  一方、マニフェストでは総人件費の二割削減も約している。仮にこの二つの公約を本当に
 実現しようとすれば、給与と人員、両面での大幅カットが避けられない。たとえば、人員で
 10八-セント、給与で10バーセント程度のカットか必要になるわけだ。
  ところかマニフェストでは、給与のことは害いてあるにもかかわらず、「労使交渉を通じ
 た給与改定」としかいわず、あえて’下げる」という言葉を避けている。定員も「見直し」
 としかいっておらず、ここでも「削減」という言葉は用いていない。民主党の有力支持団
 体である官公庁の労働組合に遠慮したとしか思えない。

  こうしたごまかしを放置したまま見切り発県したため、高齢職員のポスト不足と人件費の
 増加が差し迫った問題となった。それでも政府が、政治主導で強いりIダーシップを発揮し
 て人員と人件費カットに踏み切れば、問題はない。ところがその肝心な政治主導が、天下り
 緩和だけでなく、様々な面で後退している。
  霞が関は、自民党麻生政権時代から、中高年公務員の既得権維持策を熱心に検討していた。
 現在進行している天下り規制の緩和などの改革逆行軍は、そのときの検討結果に添っている。

  官僚主導といわれた自民党時代でさえ、官僚は批判を恐れてこの検討結果を棚上げにして
 きた。民主党政権になれば、なおさら実現はむずかしくなるだろうと誰もが思った。にもか
 かわらず、官僚に都合の良いお手盛り政策が公然とまかり通っている。民主党政権は霞か関
 に屈したという他はない。公務員制度改革を、内向きの論理で凝り固まっている公務員に委
 ねるのでは、実のある改革などできるはずもない。

  給与や定員に手をつけないまま、公務員が定年まで働こうとすれば、必然的に採用を減ら
 ざるを得ない。事実、政府が人員削減策として唯一打ち出しているのか、平成23年度の新
 規採用者数の四割削減だ。
  しかし、このゐ法は、改革に意欲的な若手の意欲を削ぐ結果にしかつながらない。いつま
 でも中高年が上につかえており、しかも新卒が入ってこないのでは、若手・中堅の士気は下
 がつてしまう。実際、私のもとにも若手官僚から「中高年優遇の人事政策はやめてほしい」
 との悲鳴に似たメールが届いている。

  このまま何年も新規採用を抑制し、高齢職員のポスト作りを続ければ、若手の下積み期間
 は延び続け、いつまでも高齢職員が滞留し、昇進はどんどん遅れ、やりたい仕事を思い切り
 やれなくなる、という悲痛な声が若手から上がっているのだ。
  わすかに残されていた心ある若手のやる気までも奪う政府と霞が関の幹部職員。これでは
 公務貝による自浄作用など望めるはずがない。 

                                                天下り拒否の末に

  私は菅政権の杓ち出した『退職管理基本方針」の問題点について、改めて論文にまとめ、
 『週刊東洋経済』(2010年10月1日号、9月27日発売)に寄稿した。
  6月と9月に実名で発表したニつの論文は、私が想像した以上に霞が関に大きな波紋を広
 げた。「掟破り」の私を登霞が関が敵視し、排除・追放を画策し姶めた。もちろん表立って
 行われるわけではない。しかし、確かにその裁きを私は感じる。

  私は、霞が関をぶち壊したいわけではない。むしろJ霞が関の再生、とりわけ、若手官僚
 の活躍できる公務員制度の実現を願っているからこそ、あえて警鐘を鳴らしているに過ぎな
 い。
  一般国民の感情や価値観と離反した官僚は、いま、厳しい非難に晒されている。官僚の名
 誉のためにいっておけば、淮でもはじめから天下りしたくて公務員になるわけではない。国
 民のために働き、この国を繁栄させる政策立案に参加したいという希望を持って入省する、
 ところが大震した先は、若手の「志」を摘んでいくシステムに支配されている。私流にいわ
 せてもらえば、「霞が関は人材の墓場」という表現がぴったりだ。
 
  私はこれを官僚が国民のために懸命に慟けるシステムに変え、国民の信頼と休敬を集める
 官僚機構に脱皮させたいと願っている。だか、霞が関の淀んだ水に浸かってきた守旧派の幹
 部職員には理解してもらえないのか、私を霞が関の「アルカイーダ」と呼んで悪評をなてよ
 うとする幹部もいると聞く。
   2010年6月の論文の最初の余波はその直後の夏の人事の季節にやってきた。私の異
 動は見送られ、その代わり、経産省から、こともあろうに私か反対している「民間派遣」の
 打診を受けたのだ。
  
  人事のことゆえ、詳しくは唐けないが、提示された条件はかなりの厚遇で、受ければ60
 歳の定年まで生活は安泰だし、定年後もその企業に再就職するように勧められた。前に説明
 した天下りの脱法的迂回措置だ。
  これを受ければ老後の心配も必要なかった。一方、断れば億円単位で生涯収入が減る。正
 直、家族には申し訳ないとも思ったか、もちろんその場で断った。
  受ければ、私かいままで主張してきたことが嘘になるだけでなく、踏み絵ともいえるこの
 申し出に従えば、わずかに燃える霞が関の改革の灯火さえ消えてしまうと危惧したからだ。

  私が断ると、次官は、「では、どうするんだ」という。どこにも答えはない。経産省の官
 房は、財務省や民主党、とりわけ仙谷氏に気を遣って動けない。この政権が続く限り、ポス
 トは用意できないという。しかも、私は天下りを拒否している。袋小路だ。結局、「10月
 末までに辞めてくれ。職探しは自由にやっていいから」ということになった。
 とはいうものの、霞が関や現政府に楯突いたというレッテルを貼られた人間をわざわざ雇う
 企業などまずないのは分かっていた。
  それでも私は発信を続けた。ところが、9月の『東洋経済』への論文寄稿の後さらに激し
 くなった私への嫌がらせか、思いがけない展開を生むことになる。退職の期限まであと1ヵ
 月と迫った9月18日、私は突然、官房長に呼び出された・・・・・・。

 

 
「天下り天国が生んだ原発事故」は、結局のところ「癒着」が「原因」だったとしか、この節で
は書かれていない。つまり、「プロセス」が抜け落ち、具体的な事実関係が書かれていないため
拍子抜けにおわっている。なんだ!つまらない。もう少し踏み込むと「ミスター・コストカッタ
ーが福島第一原発の予備電源の整備執行を、こうした癒着により、サボタージュされたのと・・・・」
とでも書かれていたなら、佐藤栄佐久著の『知事抹殺 つくられた福島県汚職事件』並みであれば
迫力があったのだけれど。

しかし、わたしたちも住民運動などの経験から学習してるから、そのことの難しさも承知してい
るつもりだ。インテリ(専門家)のなれの果ての「官僚」が「えらい」などとの幻想は決しても
ちあわせていない。黒沢明監督の映画『七人の侍』ではないが、民間の人の方が、たとえ低賃金
で喘いでいても、身銭を切りつつも、遙かに優れた「インテリジェンスを発揮し、乗り越えてき
ている。「官僚達よ!けっして勤労国民をなめるなよ。」とでもつぶやき、次回の第3章へ移る
ことにしよう。

                                    この項つづく

● フリンは文化だ!



これは「不倫は文化だ!」で世間のバッシングをうけた石田純一の話ではない、「フリン効果」
の話。つまり、知能指数(IQ)のスコアが過去100年にわたって着実に上昇を続けている。これ
を「フリン効果」という。この上昇は図形合わせなど“文化の違いによらない”と考えられる
テストの結果から生じている。現代の生活は抽象的な思考をますます必要とするようになって
おり,それがフリン効果をもたらす根本的な原因になっていると研究者たちは考えている。
先進的な知性は技術を生み出し,それがさらに知性を高めるというフィードバック関係を生み
出しており、この関係は衰える兆しを見せていない。フリン効果が今世紀中に終わりを迎える
とは考えにくい。将来は、あなたもわたしもひどく前近代的で想像力の欠けた人物に見えるよ
うな世界になるのだろう。このように人類史を通して、人間を本当に賢くしているものは、変
化し続ける環境に沿った新たな種類の知性を作り出す能力かもしれない。 

 

ルーコラにバルサミコ酢

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   「成功は失敗のもと」と逆に言いたい。その方が、この人生の
        面白さを正確に言いあてている。                
                                                岡本 太郎 

 

 

 

● ZSW 高性能CIGS系薄膜太陽電池(変換効率25%)開発へ

太陽電池の変換効率は太陽エネルギーのコスト削減の最も強力な推進力。 変換効率は太陽の入
射光がどれだけ電気エネルギーに変換したかを示す。この程、バーデン・ヴュルテンベルク州太
陽エネルギー水素研究センタ(ZSW)は、プロジェクト"Sharc25"として、CIGS(銅インジウムガリウムセ
レン)系薄膜太陽電池の変換効率を、2020年度までにセルレベルで25%(モジュールレベルで20%超)
を目標に開発することを公表。これにより世界は、5年後には変換効率25%超時代に入る。




   

【日本の政治史論 25:政体と中枢】 

 

「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。


   福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)      

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』   

    目 次     

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策      

 第3章 霞が関の過ちを知った出張

                                             口封じが目的の出張

  2010年10月初旬、秋のみちのく路――。岩手県の新花巻駅で新幹線から釜石線に乗
 り換え、玉置駅に降りた私は、すでに山道を30分近く歩き回っていた。
  目指す企業が見つからない。資料で改めて確認すると駅から徒歩約15分と書いてあり、
 渡された地図の通り歩いている。だとすると、この辺りにあるはずだが……それにしては、
 あまりにも人気か感じられなかった。目に入るのは、紅葉前のまだ縁濃い木々ばかり。道を
 間違えたのではないか。不安になった私は、携帯電話を取り出しノ訪問予定の手つむぎ練り
 の生地メーカーに連絡した。

  と、ややあって側道から一人の男性が現れ、『古賀さんですか」と問う。案内された訪問
 先は、未舗装の側道をかなり入った場所にあった。こんなところにエ場かあろうとは。いく
 ら探しても坦つからなかったはずである・・・・・・。

  先に述べた通り、2008年7月、福田康夫政権下で内閣に出向して以来、国家公務員制
 度改革に取り組んでいた私は、民h党政権に交代した約3ヵ月後の2009年末、突如、国
 家公務員制度改革推進本部事務局審議官の任を解かれ、経産省の大臣官房付となった。
  官房付は待機ポストゆえ閑職、決まった仕事はない。事実、2009九年12月に更迭に
 なって以来、仕事らしい仕事を命じられることなく、夏に次官と約束した職探しの猶予期限
 の2010年10末が近づいていた。

 『そろそろなんとかしないと、本当にハローワーク通いだね」などと友人に話していたのを
 覚えている。ところが、9月下旬に突然、官房長に呼ばれる。その場で私は、2週間に及ぶ
 異例の長同出張を命じられる。出張先は北海道、東北、四国、九州と遠隔地ばかりである。
  出張の目的は「地方の中小企業の実態訓育」だったが、これは建て前に過ぎない」ことは
 すぐに分かった。というのも、同様の調査が、数百社という規模で、各地の経済産業局によ
 ってすでに実施され、なんと私か出張に旅立った翌日には、各地方経産局長から大臣に調査
 結果が報告されていたからだ。いまさら私が一人でいくつかの企業を回ったところで何の意
 味もないではないか。

  『週刊東洋経済』(10月2日号、9月27日発売)に発表した私の論文が「上」の怒り
 を買ったのだと私は思った。発売の翌日に出張命令が出されたのも分かりやすいな、と思っ
 た。2010年6月の『エコノミスト』の論文発表後に、10月末退職か決まった後も、私
 は雑誌やテレビなどで積極的に発一一を続けていた。現役官僚の私が、公然と現政権の批判
 をしているのだから、「上」はおもしろくないだろう。

  後日マスコミでは、この出張の目的について、私を東京からしばらく離れさせてメディア
 と接触できないようにする、と同時に、国会に呼ばれるのを阻止しようとしたという解説が
 流された。冒頭の予算委員会の小野次郎議員の質問でも、この出張が「大人の陰湿ないじめ」
 と批判された。世論の受け止めは、要は私の「口封じ」ということである。

  裏の思惑はどうであれ、経度省の役人である私は「上」からの命令は拒否できない。かく
 して私は、6000キロを超える長期出張の旅に出た。
  この件は、すぐさまマスコミの知るところとなり、メディアのなかには、「涙の6000
 キロ」と題して報じたところもあった。驚いたことに、九州出張で昧著名なジャーナリスト
 である須田慎一郎氏が旅先に現れて私を取材した。その模様はテレビ朝日の「サンデーフロ
 ントライン」で報道されたので、私の出張かいかようなものであったか、ご存じの方もいら
 っしやるかもしれない。

  「涙の6000キロ」-――霞が関への非難と、私へのいささかの同情をこめて、メディ
 アはそう報じたか、この長期出張は私にとって、たいへん有意義なものとなった。この旅を
 通じて、皮肉にも、霞が関の経済産業政策の過ちを再認識させられると同時に、抜本的な公
 務員制度改革の必要性を痛感したからだ。


                     円高で初めて自社の真価を知った企業

  私の訪問先の企業は、各地の経済産業局がリストアップした。役所の選定基準はどこも概
 ね同じで、ありていにいえば「権威打殺」と「モノ作り偏重」だ。私は農業関連の企業を入
 れて欲しいなどと注文を出していたので、なかにはそういう企業も入っていたが、経済産業
 局が私の訪問先として選んだ企業の多くは、「某大手自動車メーカーの○○部品のシェア○
 ○パーセントを占めている」あるいは「伝統の技術を究極まで高めている企業」といった触
 れ込みである。

  リーマン・ショック以来長引く不況に加えて、急激な円高。地方の中小企業はどこも青息
 吐息で、まるで元気かない。優良企業といえども、意欲を失ったり、政府に助けを求めてい
 るのではないかと想像していたが、実際に訪れてみると、実態はわれわれ中央の役人が考え
 ているものとはまるで違っていた.どの企業ももつと強かに生き残りをはかろうとしていた
 のだ。

  たとえば、超精密機械メーカー。この企業は1ミリほどの精密ネジの製造機械では世界屈
 指の技術を誇っており、国内外の先進的な工作機喊メーカーに製品を販売している。
  欧州の工作機械メーカーを主な得意先としている、この会社を直撃したのは、このところ
 続くユーロ安である。ユーロ安によって利益が激減。コスト削減で乗り切ろうと血のにじむ
 ような努力を重ねても、たちまちその努力はユーロ安にかき消されてしまう。

  かといって値上げをすれば、多くの得意先が離れていく心配かあった。作るも地獄、値上
 げするも地獄。経営者は、出口のないトンネルのなかで立ち往生していた。
  だが、背に腹は替えられない。このまま赤字を垂れ流すのなら、たとえ得意先を失っても
 思い切って値上げしてみよう――これか経営者のギリギリの決断だった。
  恐る恐る値上げを申し出ると、得意先からは予想外の反応か返ってきた。欧州の得意先は
 さほど抵抗することもなく値上げ交渉に入ってくれたのだ。
 
  それどころか、なかには値上げ申告に訪れた現地の官業マンに逆に励ましの言葉を贈った
 企業もあったほどだった。
 「こちらが心配して『値上げしないでも大丈夫か』と社内で話していたんだ。『これだけの
 ユーロ安じやあやっていけるはずがない」これで値上げなしだとすれば以前はよほどポロ儲
 けしていたんだなあ』と勘ぐっていたよ。やっぱり苦しかったのか。むしろ、値上げをいっ
 てもらって安心した。君の会社に潰れられたらうちが困るからね。われわれは同業他社とし
 のぎを削っている。うちが最先端を走れている一つの要因は、君の会社の優秀な製品がある
 からだ。不当なものでなければ、儲けてもらっていい。その利益で、もっと優れた製品を開
 発してもらえば、わか社にもメリットがある。円安に傾いたら、そのときは値下げしてもら
 えばいい。

  この一件で『当社の機械はそれほど評価されているのか」と自信を深めた経営陣は、「価
 格競争ではなく、オリジナリティで勝負できる製品の開発を続けよう、世界の製品なら世界
 一高くてもいいんだ、と改めて悟りましたよ。いままでは、『良い製品をより安く`と考え
 てやってきましたからね。いつも、安く、安くといわれてここまで来たので」と述懐してい
 た。

                    低金利支援で中小企業の経営力は 

  示唆に富んだエピソードだった。自分の技術、製品の競争力を利益につなげる経営能力か
 いかに重要かということだ。現在の中小企業政策の過ちは、経営能力を見ずして技術最優先
 で企業を選別し、救いの予を差し伸べる点にある。
  中売の役人は技術、技術というけれど、いくら卓抜な技術があっても、経営力か乏しけれ
 ば宝の持ち腐れになる。経営能力に欠ける企業は、そのままでは、いくら資金面の支援をし
 たところで、やがて立ち行かなくなる。

  先ほどの例でいえば、顧客の減少ばかりを心配して経営者か値上げに踏み切らなければ、
 財務内容が悪化して倒産に追い込まれる嘔態も考えられた、ところが、中小企業庁の行って
 いる支援策は、人座業に納める技術力があれば資金面や財務面の支援を行うということにな
 りがちで、経営力を見極めるというところが弱い。
  しかも、金融支援は、安い金利での貸し付けと補助金の注入だ。このニつの政策はともに
 問題が多い。本来なら救うべきでない企業まで生き長らえさせるだけでなく、企業の経営力
 を減じかねないからだ。

  もちろん、リーマン・ショックで金融市場か機能マヒに陥ったり、通常の景気変動ではな
 い外的ショックが加わったような緊急時には、経営力かあっても急場のつなぎ資金に行き詰
 まっているような優良企業を救済しなければならない。だが、日常的に政府の安い金利漬け
 になって、普通の金利ではもはや運営できなくなっている企業を延々と存続ざせて、それか
 国民、国家の利益になるとはとても思えない。ましてや補助金の注入は企業の育成にはほと
 んど役立っていないのが現状だ。

  経産省がモデル事業に指定した企業に補助金を出すという産業育成支援は、頻繁に行われ
 ている。しかし、新しい発想で新たな事業を展開しようと望む企業は、補助金の恩志にあず
 かりにくい仕組みになっている.なぜか――。
  補助金をもらうためには、経産省の審査をクリアしなければならない。審査には細かな要
 件が多く、しかも経産省は全国一律の基準に固執する。それに合わせようとすると、先進的
 な発想を持つ企業は、自分たちがやりたいと思う方向性とは違ってくる。先進的な企業は他
 が考えないようなことをやろうとしているので、役人が少々聞きかじってもっともらしいス
 トーリーで基準を作っても合わないのだ。

  調整につぐ調整で、スピ-ドが遅くなり、結局、補助金が下ると決まった頃には遅れを取
 っていて、すでに市場では海外の企業が優位に立っているという状況になりかねない。ゆえ
 に補助金の申請を途中で断念したり、二年目はもらわないという有望企業も少なくないのだ。
  日本の中小企業政策は「中小企業を永遠に中小企業のまま生き長らえさせるだけの政策」
 になってしまっている可能性が高い。しかも、それによって強くて伸びる企業の足を引っ張
 っている、ということさえ懸念されるのである。 

  また、民主党政権は農家に対する戸別所得補償を政策の目玉の一つにしている。経営者た
 ちが異謙ありとするのは、政府の農家偏痢の政策だ。「なぜ、農家だけを助け、われわれ中
 小企業の利益は考えないのか」――これが経営者の憤りである。

  身勝手で不服を洩らしているわけでないのは、彼らの主張を聞けば分かった。

 「いま、農家の大半は兼業でしょ’ス農業をやっているのは、じいちゃん、ばあちゃん、お
 かあちゃんで、一家の大黒柱のご主人は、みな外に働きに出ている。農家の家計を支えてい
 るのは、工場やわれわれの会社に慟きに来ている大黒柱ですよ。
  でも、日本がFTAに躊躇していると、われわれ中小企業は韓国など他のアジアの国々の
 企業に国際競争力で大きく水をあけられ、倒産に追い込まれる。漬れなくとも、中国などに
 海外移転して、安い労働力を活用して生き残りをはかるしかなくなる。そうなれば、家計を
 支える大黒柱の収入も入ってこなくなり、政府から戸別所得補償をもらっても農家の実質的
 な収入は減り、FTAに加わった場合より、むしろ、農家の疲弊につながりかねません。ど
 うして、こんな簡単な道理を中央では分かっていただけないのか、不思議です」

  東日本大震災の復興対策財源として、戸別所得補償は思い切って廃止したらどうだろう。
  真に競争力のある農業を育てるための予算に組み換え、総額も大幅に削減すべきではない
 だろうか。

円高で現地生産で乗り切ろうとする大手自動車・家電メーカはやがて海外にシフトし、解雇され
た農業と兼業従業員は、派遣社員として再就職するも、その派遣会社からも首を切られるという
のがリーマン・ショック前後のよくある地方都市で耳目する光景であったが、農業政策は安全保
障的側面から従来の農業政策を大きく変える必要があるとの、いわゆる"グリーン・リベラリズ
ム(環境自由主義)"的農業政策に切り替えるわたし(たち)と、筆者の考える政策とは大きく
異なるが、その特徴は、農本制と資本制を超えた、逆格差法人税制と初期投資免税制を導入した、
耐気候変動(ガラスハウスなど)・地産地消・安全食品・高度産業化した農営の法人化促進であ
り、ここで開発農法システムを世界展開(インプラント)するというの"環境リスク本位制"下の
基本的特徴である。


                   経産省と大企業の美学が作った高コスト体質

  中央官庁の現実無視の政策と官僚の時代遅れの価値観は、日本の製造業に構造的かつ致命
 的な欠陥をも植えつけてしまった。それは、大企業を頂点として一つのカルチャーに染まっ
 てしまう体質だ。
  一つの例を挙げよう。日本の製造業の特徴を表すキーワードの一つに「擦り合わせ」かあ
 る。日本の大企業は自分たちの使い勝手の良いように、細部にまでこだわった仕様を要求す
 る。たとえばて場のペルトコンペア一つとっても、他社と同じ画一的な仕様は好まず、業者
 と綿密な「擦り合わせ」を行い、独自のシステムを構築しようとする。
 
  工場ごとにオリジナルのものを作ってくれなければ取り引きできないとこだわる企業も少
  なくない。さらに納入した後も業者が呼ばれ、「ここのつなぎがちょっと悪い。使いにくい
  から改良してくれないか」といったやり取りが繰り返されている。
  経産省の見解では、このきめ梱やかな「擦り合わせ」の力こそが、日本の製造業の最大の強
 みだということになっている。だが、闇雲に「擦り合わせ」を美化することにより、その「
 擦り合わせ」によって日本の製造業は、国際間競争では知らず知らずのうちにハンデを負っ
 てしまっているという実態がある。

  欧米のメーカーは日本の企業と違って非常に合理的で、ベルトコンベアや空調といったシ
 ステムにはこだわらず、すべて汎用品で間に合わせている。
  彼我の企業文化の違いを端的に物語る話を、ある空調機器メーカーの方から聞いた。この
 企業は工場向けをはじめとする特殊な空調設備を主力商品としており、たとえば、排出ガス
 をすべて除去し、かつ湿度も温度も.定に保つといった空調システムを開発、高度空調機器
 の市場では世界有数のシェアを誇っている、数年前、ヨーロッパの企業を買収し、そこを拠
 点としてヨーロツパヘの輸出にも力を入れているのだが、日本の得意先とヨーロッパの取引
 先では、要求される度合いに雲泥の差があるらしい。

  ヨーロッパのメーカーが相手なら標準のシステムを納入するだけでピジネスは完結する。
  ところが日本の製造業相手ではそうはいかない。同程度の機能のシステムでも、注文がう
 るさい日本の製造業相手の場合、設計に必要な人員もヨーロッパの2倍になるという。
  要望に添うよう作り込まなければならないので、当然、納入までにかかる時間も長い。そ
 れでいて利益は、ヨーロッバ企業相手の半分しかないというのだ。しかも、日本の設計担当
 は毎日深夜残業。ヨーロッパでは2ヵ月の休暇を取っても利益率ははるかに上だ。
 「それでも苦労して取引先の要望に合わせて作り上げ、あちらのメリットにつながればいい
 んですけどねえ。そうじやないから、なんのためにやっているのか、われわれも分からなく
 なる・・・・・・。」と経営者は嘆いていた。

ここでは、空調機器(詳細不明)の「最適品位とは何か」が不明で、その不明さゆえに「過剰品
質・過剰仕様」「コスト高(腰高)」で、共倒れ防止のための「調整役」の不在ということが指
摘されているのだろうが、それ以上のことはわからないので先にすすむ。


                                    この項つづく

 ● 今夜のアラカルト

これからの季節はバーベキューを企画し、子鮎を釣り上げ楽しんできたものだが、ここ2年は一度もアウ
トドアー・クッキングを行っていない。将来的には?と考えると、再会するとしても2016年以降となるだろ
う。そこでイメージだけでアウトドアー・クッキングのレシピを考えてみた「ステーキサラダ」が頭を過ぎった。
庭先にルーコラが盛りを終えた2つのプランターで次の出番をまっている。

●材 料 冷めたステーキ、いろいろな野菜、基本のドレッシンク、バルサミコ酢、ルーコラ

●作り方 基本のドレッシングにバルサミコ酢を足して、全部をさっとあえるだけ。 

ところで話は、一見、黒酢のようなこのバルサミコ酢。その歴史は約千年前から中部イタリアで
はじまり、その珍しさから婚姻のときの持参金の一部にもなったといわれる。原料は白ブドウの
搾り汁を煮立てた原液を、クルミ、カシ、クリ、サクラ、スギの木樽に順次移し替えて、最低で
も10年の年月をへて、1/10の量まで自然に濃縮された、とても香りの高い酢。百年以上の古
いものもあり、商売の対象としてではなく、一種、宗教的な所有物として保存している家もある
と参考書に紹介されている。1986年、イタリア政府はこのバルサミコ酢を守るための、生産保護
法を制定して販売が許可された。これは酢ではなく、明らかにブドウ汁である。自然が時間をか
けて濃縮したものを火にかけてさらに煮つめる料理人もいるが、とんでもないという。イチゴに
数滴ふりかけたり、レバー・ステーキの焼き上がりに数滴かけたり。毎朝、デミ・スプーンに一
杯飲む人もいる・・・・・・とか。

   


ことしのルージュピエールドゥロンサール(写真上/右)は、バラの病気で散々だ。それでも、遅咲きの蕾
は天を突き破るかのように開花を待つ。複雑な梅雨空とは対照的だ。

 

緑茶と玉葱皮

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   経済のルールが変わったのではない。経済の競技種目が変わったのだ。
                       
                                                      堺屋 太一 

 

【技術進歩と倫理】

例の近所のストーカー事件への情報提供云々の件について、警察関係者が2、3度該当賃貸住宅
を監視捜査していたようだがいまは平常状態に戻っている。

ところで、携帯電話の衛星利用測位システム(GPS)情報を犯罪捜査に活用しやすくするため、
総務省は通信事業者向けの指針の見直しを進めている。6月にも運用開始するという。現行は情
報を取得する際、捜査機関が情報を得ていることを相手に通知しなければならないが、新指針で
はこの手続きが不要となり、本人に気づかれずに居場所を特定できるようになる。犯罪と無関係
の行動も常時把握されかねない。こんな重要なことが指針の見直しだけで行われていいわけがな
い。野放図になる可能性がある限り、認められないとの批判が起きている(北海道新聞 2015.06.
06)。

GPSの発信器をこっそり車に取り付け、捜査対象者を監視する手法は各地で行われている。愛
知県では県警のこうした捜査でプライバシーを侵害されたとして、県に損害賠償を求める訴訟が
起こされている。今年3月には大阪地裁が窃盗の刑事裁判の判決の中で、同様の捜査手法を適法
と判断。しかし一部専門家からは、令状なしに詳細な位置情報を無断で把握するのは行き過ぎだ
との批判も出ている。新指針は問題の多いこうした捜査手法をさらに拡大するのだという。

そてによると、裁判所から令状を取り、携帯電話会社などに捜査対象者の携帯番号を伝えれば、
携帯所有者の位置情報を知ることができる。特殊詐欺や誘拐など、犯人の居場所が分からない事
件の捜査に役立つ。現行の指針では裁判所の許可を取った上で、情報取得を本人に知らせなけれ
ばならなかったため、容疑者が逃げたり証拠を隠したりする恐れがあり、現実の捜査には活用し
にくいのも理解できる。総務省は「裁判所の許可が必要なため、捜査機関の乱用に歯止めがかけ
られる」としていが、思想信条など犯罪と無関係のプライバシーまで侵害される恐れは拭い切れ
ないとし、北海道新聞の社説では、「捜査手法を認めるならば、刑事訴訟法でしっかり規定すべ
き」と指摘し、その上で「(1)対象となる犯罪の種類や(2)情報取得の期間、(3)事後で
あっても本人への通知を義務化することなど、厳格なルール整備を求める」と結ぶ。

この問題は、技術進歩と犯罪防止方法と人権侵害のトライアングルの変容であり、デジタル革命
の基本特性の第3則の「ボーダーレス」に該当するものであるが、本質的には、成熟した福祉国
家の質が問われているのだ。「年金情報流出 中国・米国のサーバー経由か」(2015.06.04 日
本テレビ(NNN))、「<年金情報流出>安倍首相が陳謝 菅官房長官は職員処分検討」2015.06.
05 毎日新聞)など新しい時代の経済把握枠組みプラットフォームに関する問題が生起し、その
構築と関連する行政の法整備が急がれている。


※  「プラットフォーム競争と垂直制限―ソニー・コンピュータエンタテインメント事件を中心
  に―要旨」2009.04.07
※  「平成24年度我が国経済構造に関する競争政策的観点からの調査研究(プラットフォーム関
    連事業に関する理論分析)」 2013.02.28



【緑茶と玉葱皮】

一昨夜の話。農研機構のホームページの『機能性成分ケルセチン配糖体が特に多い茶品種「そう
ふう」「さえみどり」』の「お茶はカテキンだけじゃない ! ケルセチンも多い品種があります
!」のプレスリリースのキャッチ・コピーに目がとまった。既存緑茶品種の中から「そうふう」
と「さえみどり」の2品種が、主力品種「やぶきた」に比べてケルセチン配糖体を特に多く含む
品種であることを発見しましたという内容で、緑茶のカテキンに加えて機能性フラボノイドの一
種であるケルセチン配糖体を多く含む茶品種で、健康機能性の高い品種として需要拡大が期待さ
れるというもの。

つまり、ケルセチンは野菜や果物に豊富に含まれるポリフェノール成分であり、そのままで、あ
るいあは配糖体(ルチン、クエルシトリンなど)の形で、柑橘類、タマネギ、ソバ、エンジュ等
の種々の植物に含まれているという化合物だというのだが、玉葱の皮にたくさん含まれるのでお
茶にして摂取することが話題(いつごろから?)になっているという。ケルセチンは、強力な抗
酸化活性の他、血小板の凝集抑制および接着抑制作用、血管拡張作用、抗ガン作用等、多彩な生
理機能をもつことが知られている。そんなに効果があるのなら食品資本や医薬品資本が放ってお
く手はないはず。と、いうわけでお茶にする以外の動きを至急追ってみたが、サントリーホール
リングスに注目する。 

 

経口で摂取するには腸内吸収促進工学が必要になるが、そして、ケルセチン配糖体に関しては、
(1)結合するグルコース数が1、2、3と増すにつれて、経口吸収性が高くなり、グルコース
数(n)が4つになると経口吸収性が低下することが分かっている。また、(2)飲料中のナト
リウム濃度を調整することで、ケルセチン配糖体特有の収斂味(苦味)が低減され、茶本来の良
質な香気香味が得られるようになったというから(下図の新規考案参照)、このわたしでも、新
しい健康食品もつくれそうな気がしてきた。お金に困ったらこの情報を元に地域興して稼ぐこと
にしよう考えた。甘いってか?やってみなきゃわからないでしょう!?^^;。

※ 
水抽出コンドロイチン硫酸とケルセチン配糖体を含有する経口投与用製剤 WO 2010013551 A1

 
※ JP 2015-91221 A 2015.5.14

 
※ 特開2009-155312
 

   

【日本の政治史論 26:政体と中枢】  

「古賀の乱ってなんだ  "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。

  福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)      

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』   

 

    目 次     

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策      

 

 第3章 霞が関の過ちを知った出張

                           経産省と大企業の美学が作った高コスト体質

  彼のいわんとするところはこうである。ベルトコンベアから始まり、空調システムまで、
 独自の仕様を要望すれば、当然、コストは高くつく。設備投資に余計にかかった分は、製
 品価格に転嫁される。つまり、「擦り合わせ」という企業文化が日本の製造業の高コスト
 体質につながり、結果的に日本の製造業の国際競争力を削いでいるのだ。

 「われわれの努力が、得意先に貢献しているどころか、むしろ足を引っ張っている。こん
 な報われない不毛な努力をしているかと思うと、空しくなる」というのだ。
 「擦り合わせ」文化がすべて悪いわけではない。製品の品質・性能に直接関わる部分につ
 いて他との差別化をはかるのは、確かに雨要だ。たとえば重要部分の1千分のIミリの調
 整によって製品に決定的な差が出てしまうというケースはままある。

  しかし日本の製造業は、ただ「擦り合わせ」を金科玉条として、取るに廻らないところ
 まで使い勝手の良さを求める。そのため、高コスト体質から抜け出せなくなっているのだ
 から、本末転倒である。
  結果、日本人は汗水垂らして長時間働いても一向に報われないという、まるでギリシャ
 神話に描かれたシシュフオスに科された罰のような生活を強いられている。「擦り合わせ」
 文化はすべてなくす必要はないが、絶対的価値だという先入観は捨て、見直すべき時期に
 来ているのではないか。

  日本の大手製造業の『擦り合わせ」絶対に義は一種の宗教のようになっている。経産省
 もことあるごとにこれを賛美してきた。しかし、中小企業でも、海外の実情を目の当たり
  にすれば、その愚かさにすぐに気づくのである。
  経産省かもし、日本の産業の振興を本気で考えているのなら、このような悪しき企業文
 化の払拭に肴手すべきだろう。ところが、困ったことに、経産省の最高の美学かいまだに
 「擦り合わせ」なのだ。

  経産省では、日本企業の細やかな「擦り合わせ」こそ、他国がまねのできない特有の文
 化で日本の競争力の原動力、との解釈がまかり通っており、「日本の技術力を守れ」とば
 かり、むしろ、「擦り合わせ」文化を奨励してきた。日本企業に「擦り合わせ」文化が定
 着した一因は、経度省の感覚のすれた価値観にあるといっても過言ではない。


                大きなチャンスを阻む大企業の囲い込み

  涙の6000キロの旅では、経度官僚かいま果たすべき役割も痛感した。ある金型部品
 メーカーを訪れたとさのことである。
  事前の情報では、訪問先は成型技術に秀でている企業で、日本を代表する大手メーカー
 からもその技術は高い評価を受けているということだった。実際に訪れてみると、想像し
 ていた以上の優良企栗だった。
  職人集団の色合いが強い地方の中小メーカーはどこも高齢化していて、その例にもれず
 経営者の方はご高齢だったが、管理が実に行き届いていて、24時間の操業体制か整えら
 れており、金型を作る機械が常に動いていた。しかも、説明を間くと、その技術は世界の
 トップを走っているらしい。

  数年前から自動車の新素材として炭素繊維に注目か集まっている。炭素繊維は鉄よりも
 強度がありながら、それでいて重さは4分の1とはるかに軽く、炭素繊繊維なら従来のス
 チール製の車より20パーセントも軽量化できるという。つまり、炭素繊維を使えば、燃
 費が良くて環境にもやさしく、しかもいまよりも頑丈な夢のエコカーの実現が可能となる
 のだ。モのため、世界の自動車メーカーは炭素繊維単の量産化に向けて開発合戦を繰り広
 げている。

  その近未来型車の分野で、いち早く市販仕様車の生産に踏み切った大手メーカーの高級
 スポーツカー。ドライバー垂涎の的となっているこの車の開発・生産を陰で支えているの
  か、私が訪問した企業だった。炭素繊維は、彫らかにカットしたり精密に成型するのに極
 大していく。どんどん宣伝すれば、世界中の自動中メーカーから注文か殺到するじやあり
 ませんか」

  応対してくれた経営陣の一人に率直に疑問をぶつけると、彼はいいにくそうに口を開い
 た。
 「そうでしょうね。実は、これ内緒なんです.理由はいえませんが……」
  察するに、発注元の自動車メーカーとの契約条項に、この技術を公表しないという取り
 決めか入っているようだった。そう考えたのは、前々から私は日本の大企業のやり方を苦
 々しく思っていたからだ。

  日本の大手メーカーを世界屈指の超優良企業にまで押し上げた原動力は、悪くいえば大
 企業か構築した利益を独り占めする、ある意味、こずるいシステムにある。日本の大手メ
 ーカーは、下請け企業を囲い込み、本来なら下請けが得る利益まで、すべて吸い上げる仕
 組みを考え出した。
  こうした構造を前提に考えれば、炭素繊維車に必須の技術を独占するためのなんらかの
 制約項目を契約に入れてあるだろうことは、容易に想像できた。

  誤解して欲しくはないのだか、私は決して日本のメーカーを非難しているわけではない。
 むしろ、立派だと思っている。企業が自社にとってもっとも効率的に利潤を上げられるや
 り方を考えるのは、当然の行為である。そうした経営手腕が卓越していたからこそ、世界
 のなかで競争していけたのだと評価している。だが、われわれ官僚の立場は一企業の経営
 者とは違う。経産官僚は、国全体の産業、経済の発展を考えなければならない。そういう
 観点からすれば、このような構造にはいささか問題がある。

  私は、「もし、発注元からなんらかの縛りを受けているのなら、次に契約するときは、
 宣伝してもいいという条項を入れるよう交渉してはいかかですか。それを受け入れなけれ
 ば、契約しないと突っぱねてみては。それがお宅の会社にとっては得だと思いますよ」と
 提案してみた。
  表情から推測するに、どうやら図星だったようだ。「確かにおっしやる通りですね。経
 産省の力がそういってくださると、われわれもその気になれます」といいながら、手帳に
 私の提案をメモしていた。

  私は、これまで、世界でも有数の技術力を誇るという中小企業を数多く訪問した経験が
 ある。話を聞くと、これからどんどん成長して、すぐにも大企業になりそうな気がしたも
 のだ。

  しかし、その多くはその後も中小企業のままである。

  そういう企業でよく間く話として、『発注元がわれわれの技術を高く買ってくれていて、
 わざわざ本社から取締役がお見えになって、従業員にまで声をかけてくれました.あれは
 私たちにとって大きな励みになりました」というのかある。
  役員室には、発注元の社長名の喪形状があったりする、地方の方は純朴である。わざわ
 ざ世界に冠たる企業の重役が訪問して、自分たちの技術を貧めてくれただけでヽ大きな喜
 びを感じる。大手メーカーの凄いところは、そんな地方の経営者の純真無垢な気持ちをう
 まく利用し、取り込んで離さない術を知っている点である。これほど安上がりな技術独占
 方法はない。
  しかし一企業が、世界に一通用し、しかも大きなピジネスにつながる可能性を秘めた技
 術を有する企業を囲い込んでいるのは、国家全体の経済からいえば、多大な損失である。

                    県庁にも対抗できない経済産業局

  いま触れた企業のように、ワールドワイドなビジネスに育つ可能性がありながら、様々
 な理由から芽を出せずにいる企業は他にもたくさんあるに違いない。そうした埋もれた技
 術や隠れた有望企業を発掘し、世の中に送り出し、世界の企業への端緒を開く。もちろん、
 それが市場によって達成できれば素晴らしい、だが、必ずしもそうした機能が十分に発揮
 されているようには見えない。こういうときこそ経産官僚の出番ではないかと思う。

  だか、残念なから現在の経産省ては正直、荷が眠い。現場の最前線にいる各地の経済産
 業局でさえ、その地の企業に関して熟知しているとはいいがたいのが現状だからだ。
  北海道から九州・沖縄までブロックごとに設置されている九ヵ所の経産局には、エネル
 ギー、中小企業、消費者保護など、業種・分野ごとに職員か配置されており、平均的には
 200名前後が働いている。彼らがサボタージュしているわけではない。構造的に生の情
 報が入りにくいのだ。

  経産局の職員が、担当業種の情報を得るために真っ先にすることは、県庁での情報収集
 である。いまどき、地力の中小企業といえどもグローバル化していて、中国をはじめとし
 て世界を股にかけビジネスを展開している。各県は、これに対応するため、海外にスタッ
 フを派遣している。
  たとえばある県は、JETRO(日本貿易振興機構)上海事務所に県の職員を数年交代
 で出向させているので、中国語に堪能で現地の事情に詳しいスタッフか県庁のなかに何人
 もいる。

  また県によっては、自前の現地事務所を設置しているという具合で、生の情報をもとに
 企業に適切なアドバイスができるシステムが整備されているのだ。
  対して地方の経度局はどうか。ある局の職員の嘆きを開いて、彼らが置かれている状況
 が分かった。
 「どこの県も海外に人を送っているのに、うちは去年も今年も海外出張旅費はゼロ。予算
 がない。これじやあ、到底、県には太刀打ちできません」

  たとえ海外に人を派遣できないとしても、百聞は一見にしかずである。企業に足を運べ
 ば、生の情報は得られる。実際、訪問してみて初めて知る事実は多い。
  中小企業庁に勤務していた当時、この出張と同様に地方の中小企業の実態調合を行った
 ことがある。このとき訪れた社に、自動車部品メーカーかあった。例によって経産局の触
 れ込みは、「某大手自動雁メーカ’‐のトランスミッションの○割を納入している」だっ
 た。
  ところが、実際に話を聞いてみると、経産局で聞いた謳い文句とは違っていた。初めは
 経営陣とトランスミッションの話に終始し、様々な議論を戦わせていたが、ちょっとした
 きっかけで、「それで儲かりますか」と私が尋ねると、先方が「いや、それか大して儲か
 らないんですよ。毎年、自動車メーカーからはコストダウンを迫られるので、安定はして
 いても利益はほとんど出ないんです」という。

  このやり取りをきっかけに話題は思いもしなかった方向に逸れた。この会社では、あま
 りにも自動県部品の利益率が低く、自動車産業とつき合っていては将来が展望できないの
 で、新たな分野の開拓を考えていたそうだ。そのとき、目に留まったのが、医療の人工関
 節である。
  精密トランスミッションの技術を転用すれば人工関節の製造はむずかしくない。しかも、
 人工関節の分野は人の生命に関わるだけに、規制が複雑で手間かかかるので、大手の同業
 他社はまだ進出を暗譜している。ならば、ライバルは少ない。自行の技術力に自信を持っ
 ていた社長の決断により、医者との綿密な打ち合わせを重ねて人工関節の試作品を作ると
 評判がいい。

  そこで、思い切って人工関節の分野に本格参入してみると、利益率は自動嘔のトランス
 ミッション製造とは比べようもないほど高かった――。
 
  経営陣の一人は最後にこう語っていた。

 「いまは自動牡部品が売り上げの7割を占めていますが、5年後にはこれを2割まで下げ
 る計画です。現在の最大の課題は、いかに自動車部品からうまく撤退するか、なんです」
  私の経験からも、直接、企業を訪問して「じっくり」話をうかかえば、収穫は多いはず
 である。だが、現在の経産局にはそんな余裕はない。200名前後のスタッフがいるとは
 いえ、業務は業界の規制から商店街の振興、消費者保護までと幅広く、企業を一軒軒訪ね
 て歩けるほどの時間はない。勢い、県庁に出向き「どこか、いい企業はありますか」と尋
 ね、教えてもらうという手っ取り早い方法を取りがちになる。

  かといって専用スタッフを配しても、恐らくうまくは機能しないだろう。中小企業の経
 営者から本音を引き出すには、それ相応の感度が必要だからだ。先ほどの自動巾部品メー
 カーを例にすれば、余計なことを役人に喋って自動車メーカーに聞こえでもして、睨まれ
 たくはないと警戒する。この壁を崩すには高感度のアンテナが便る。
  ところか、現在の官僚に決定的に欠けているのがこの『感性にである。霞が関にいても、
 耳を澄まし、目を擬らせぱ、地方の企業がいま置かれている現実に気づく機会はいくらで
 もある。しかし、霞が関の官僚の多くは、目は曇り、耳は遠くなっている。聞こえてく
 るのは、政府に頼って生き長らえようとするダメ企業が集まった団体の長老幹部の声や、
 政治家の後援者の歪んだ要請ばかりだ。

  政府に頼らず本当に自分の力でやっていこうとしている企業は経産省などにはやってこ
 ない。さらに、経産省を批判する声に耳を傾けようという姿勢を持つ幹部もほとんどいな
 い。
  
  かくして、これからの日本を引っ張るポテンシャルを持った企業のニーズに応えるため
 の改革、たとえばゾンピ企業の積極的淘汰のための政策転換などはできない。そして常に
 「危機的状況」を叫んで、ばら撒きの「緊急支援」を続けることしかできなくなっている
 のだ。
  しかし、それよりも深刻なのは、自らの問題に目を向けて自己改革する心を失っている
 ことかもしれない・・・・・。

                                                    この項つづく 

 



甘い誘惑に酔ってみようか。

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    あなたが大もうけし、私が稼げないのは不公平だ。 

                レオス元国際サッカー連盟理事 

 

 

 

● 琵琶湖大橋無料化とは

有料か無料かが議論されている琵琶湖大橋※をめぐり、県市長会は有料継続を求める意見書を県
と県議会に提出する。大津市内で5月27日あった臨時会で決めた。意見書では、無料化すれば
年間3億5千万円の維持管理費が必要になると指摘。県全体の道路財源を圧迫し、県内道路網の
課題解決にならないと主張する。橋周辺の渋滞解消のための四車線化も必要だとしている。
1964年開通の琵琶湖大橋は通行料による収益で建設費用を償還できる状態。償還を終えた有
料道路は無料化するのが原則だが、管理者の県は維持管理費用の捻出方法などについて有識者に
も意見を求めて対応を検討している。三日月大造知事は県議会6月定例会議初日の同月24日に
方針を示すと表明しているという(「中日新聞」 2015.05.28)。

※ 滋賀県の湖東と湖西を連絡し、県政の均衡のとれた発展と琵琶湖観光の開発を図るため建設
され、昭和39年9月に開通。開通以来産業経済、観光発展に大きな役割を果たし、滋賀県を代表
する有料道路。1981年3月に大橋の自転車歩行者道の添加、その後の交通量増加に対応するため、
大橋の四車線拡幅事業を行い1994年7月に供用され、琵琶湖大橋有料道路として滋賀県道路公社
が管理している。 

ところが、県市長会の意見書には、無料化による便益性や県内の経済的寄与性(=経済成長性)につい
ての独自評価については触れられていないことがきになぅた。そこで、よせばいいのに、「第4回道路事
業の評価手法に関する検討委員会 資料 費用便益分析マニュアル(案)[見え消し版] 2008.
11.25
)など関連資料などを目を通してみた(上/下図参照)。これにより、便益性の計量法の
基本的な考え方が理解できたが、琵琶湖大橋の無料化による、周辺の道路利用県民の便益の計
量ができるとしても、運輸業、観光業、商業、サービス業などへの波及効果予測を行うことで、
総合的な予測が必要になる。そのことで、滋賀県の「便益費+経済寄与費」が管理維持費が上回
われば無料化は達成されるから、3年間程度の実績データの結果を待って、無料化の継続の有無
の結論をだせば良いのではと考えた。

             「便益費+経済寄与費」>「維持管理費」

しかし、(1)予測試算段階でが右辺の管理維持費が上回る場合、県民の理解が得られるかどう
か不明であり、(2)仮に左辺の経済的寄与費が上回る場合でも、その算定方法(試算対象範囲
や測定要素感度)の不明さが依然として残る。つまり、今夜のところは「理解の筋道」を立てて
みたというわけで、その精神は、あくまでも公正に緻密に計量したいということ、決して、「維
持管理費=有料化」先にありきでないということに尽きる。

 

 

 

   

【日本の政治史論 27:政体と中枢】  

「古賀の乱ってなんだ "I am not ABE  " 」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。

  福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)      

                            古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』   

    目 次     

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策       

 第3章 霞が関の過ちを知った出張

                                   削られた報告書三ページの中身

  若い官僚は感度もまだ鋭敏で視野も広い。ところが、時とともにアンテナは錆びつき、削
 界が狭くなる。そして霞か関で20年も過ごせば、感性はほとんど劣化し、麻痺状態になる。
  いささか誇張していえば、霞が関のベテラン官僚が見ているのは、せいぜい半径1キロメ
 ートルである。官僚がもっとも気になるのは「霞が関村」の掟だ。よく批判されるように、
 「霞が関村」では省利省益最優先。先輩のやった政策は、たとえ疑問があっても非難はタブ
 ーといった不文律ができあがっている

  福島原発でも、実は津波に備えて、非常用のディーゼル発電機を原子炉浬屋内に置くべき
 いう問題意識はあったようだ。しかし、これを実行すれば、先輩は安全を十分に配慮してい
 なかったことになる。そのため、原子力安全・保安院の官僚はもとより、官僚よりも官僚的
 といわれる東電マンは、なんの対策も打たなかったのだ。
  もし、この掟を破れば、村から追放されるか、もしくは村八分の憂き目に遭うか、それが
 分かっている官僚は、村の掟から逸脱しないよう、細心の注意を払う。
  これは官僚個人の資質とは別の問題である。現在の官僚機構のシステムでは「霞が関村」
 の掟に逆らうと生き残れない仕組みになっているのだ。

  どれほど内向きの論理が色濃く霞が関を覆っているか-私の長期出張の圖末をお話しすれ
 ば、理解していただけるのではないか。
  出張を終えた私か急いで報告書にまとめて提出すると、すぐに官房長から電話があった。
 官房長と私は同期の間柄で、忌憚なく話せる関係である。彼は私が電話に出ると、要領を得
 ない挨拶をしてから軽い調子で、こういった。

 「この報告書ちょっと書き換えてくれないかなあ」

  理由を間うと、「中小企業庁に回したいんだけど、これじやあ、ちょっとねえ』という。
  官房長が問題にしたのは、報告潜の最後の3ページである。ここに私は「所感」と題して、
 出張で感じたことを率直に記した。そのなかには、「国の機関が中小企業政策を挺うことの
 限界」「中小企業政策は予算と権限ごと県に移管することが効率的だ」「弱者保護の対策は
 直ちにやめて労働移動の円滑化対策だけに絞るべき」「モデル事業的なものは全廃して、ベ
 ンチャー支援の睨鯛とミドルリスクミドルリターンの企業金融だけに絞ることにしてはどう
 か」「淘汰を促進するという明確な意思を持った政策に転換していくことが必要』といった
 提言を盛り込んだ。

  そう、官房長は、中小企業庁は要らないと取られるような報告激は中小企業庁にはとても
 回せないというのだ。

 「でも、中小企嬰庁の職員のなかにも僕と同じ意見を持っている人はたくさんいるよ。書き
 換えると、出張した意味がなくなる。そもそも、他の職員にはない目で調査して報告しろと
 いったのは君だろう」

  と答えると、官房長は反論できないと思ったのだろう、急に「中身の問題というより、君
 のことを考えただけなんだけどね」と言い訳して、「分かった。じやあ、これは官房だけで
 保管して、中小企業庁などには回さないようにする」という。
  やはり、私の少々過激な所感か公式文壽として残るのはまずいと思ったのだろう。「最後
 の2ページは報告じやないよな」と食い下がる。’いや、一体のものとして出したのだから
 報告だよ」と応じながら、私の頭には、要するになんのための山張だったんだという思いと、
 もうどうでもいいやという思いがよぎる。

  これ以上話をしても時間の無駄だと思って、「僕は、官房長と次官に報告書を出した。そ
 れをそっちでどう扱うかは僕の問題じやないけどね」と投げかけると、「そうだな,これは
 官房への報告だけど、われわれ限りということにするから.そもそもこれは君の感想だから
 ね」といって電話は切れた。

   後に国会から私の出張報告書の提出要求を受けた経産省は、結局、問題の3ページの存
 在を隠蔽するため目次に細工を施し、最後の3ページを削除して捉出した。これが、後に報
 告書の改竄として、河野太郎議員や世耕弘成議員らによって取り上げられろことになる。
  この官房長が極めつきの守旧派というわけではない。むしろ、どちらかといえば開明激とい
 ってもいいだろう。人間的にも明るく温厚なほうだ。しかし、省庁で幹部まで上がる官僚た
 ちは、良かれと思ってこうした行動に出てしまう。決しておかしなことだとは思わない。む
 しろこれが普通の感覚なのだ。

  だから、私のような者でさえ、彼らと話していると、どうも自分のほうがおかしいのかな
 という錯覚に陥りそうになる。それくらい、霞が関の幹部クラス全体が、こと省益の保護と
 いうことになると、金太郎飴のごとく奇麗に考えが揃っているのである。誰と話しても答え
 は同じだ。そのなかに入った名は、自らの価値基準のほうかおかしいと思わされてしまうほ
 どに・・・・・・。

  後日、河野太郎議員のブログでこの問題を知った友人が私に尋ねた。『経産省の官房長と
 か次官ってキャリアなんだよな?」と。その後、こんなやり取りが続いた。「そうだよ。一
 番優秀ということでそのポストに就くんだ」「東大出てるのか」「そうだよ」「それで、な
 んでそんなことするんだ?誰がどう見ても報告書だって分かるだろ?それを勝手に隠したら
 問題になるに決まってるよな。俺より常識ないんじやないの。そんな奴らが経産省のトップ
 にいるのか?ぶったまげたなあ一と、とどまろところを知らない。ひとしきりその話題が続
 いた。
  私は、「やはり国民から見ればそういうことだよな」と、なんとなくほっとした。


                          官房長官の逆鱗に触れた発言

  さて、ここで第一章冒頭の2010年10月15日、参議院f算委員会の舞台に戻る。
  あの長期出張で、前口から四国を訪れていた私は、その日の朝、急速、吸収を命じられた。
 参議院予算委員会で小野次郎議員が出席を求めているというのだ。その目の訪問先の企業に
 向かう車中で指示を受けた私は、そのまま空港へ直行することになった。何の準備もないま
 ま国会に向かう。
  衆議院の予算委員会では、その前年に民主党の松本則明議員の質問に答弁した経験があっ
 たが、参議院の予算委員会は初めてだった。予算委員会は数ある国会の委員会のなかでもも
 っとも格が高く、予算審議などで技術的な質問があれば局長板の官僚が答弁に茫つこともあ
 るか普通は答弁の大半は人臣が行う。そこに、局長でもない私か呼ばれること自体か異例た
 った。

  しかも、払は特に仕事のない、ただのぶB房付」の身分だ。ますます異例だ。
  議場に入ると役入用の控えの席に座る。なんとなく他の官僚たちの冷たい視線が気になる。
 針のむしろというのはこういうものか。席で質問を待ちながら、私は迷っていた。どこまで
 思つていることを話せばいいのか、と。国会で公式に発一Jするとなると、影響は大きい。
 不用意な発言はできないな、と躊躇する気持ちもあった。

  しかし、質問にたったみんなの党の小野次郎議員が「天下り根絶というスローガンが骨抜
 きになっている」して、仏の考えを述べるよう促されると、それまでの迷いが嘘のように消
 え、いつも考えている持論を、次々と正直に話していた。
  「天下りがいけないという理由は二つある。天下りによってそのポストを維持する、それ
 によって大きな無駄か生まれる、無駄な予算がどんどん作られる、あるいは維持されるとい
 う問題が一つ」
 「もう一つは、民間企業などを含めてそういうところと癒着が生じる。そして、たとえばそ
 の企業あるいは業界を守るための規制は変えられないというようなことが起こる。ひどい場
 合は、官製談合のような法律に違反する問題さえ見えてくる。
 「一部に退職金を3回取るのが問題だという話もあるが、それは本質的な問題ではなくて、
 重要なのは、無駄な予算が山のようにできあがる、あるいは癒着がどんどんできる、これが
 問題なのだ」

 「この点は民主党も非常に強く批判していた。それによって天下り規制の事実上の緩和のよ
 うな措置は実施できず止まっていたものか、今回、『退職管理基本方針』で決定した現役出
 向や民間派遣のような形で堰を切ったように実施されている」
 「現役で出ていけば問題ないというのは非常に不思議なロジックだ。無駄が生まれる、ある
 いは維持される、それから不透明な癒着ができるということは、公務員の身分を維持して出
 ていってもまったく同じことが起きる可能性があるので、その点か非常に問題だ」と、こん
 な趣旨のことを答えた。

  予算委員会では答弁席から見て、右手に閣僚が、左手には民主党議員が居並ぶで反応が気
 になったので、喋りながらも、議員の方々の様子をみているろ、みな真剣に耳を傾けてくだ
 さっている。それどころか、野党だけでなく、大きく頷いている民紅党議員も少なからず目
 に入った。
  民主党の議員の方々のなかにも私の考えを理解してくれる人は大勢いるんだな、と心強く
 感じ、答弁はより滑らかになった。

  小野議員の質問が尖閣諸島の問題に移り、私への質問は終わった。その時点では、「ああ、
 やっと終わった」と、ただただほっとしただけである。ところが、尖閣諸島問題の答弁にな
 った仙谷官房長官の最初の一言で私の体は硬直した.「私には質問はいただいておりません
 けれど」という前置きの後、第一章冒頭の発電が飛び出したのだ。 
  もちろん、渦中の私の心中は穏やかではない。仙谷長官の批判は直接的には、私ではなく、
 私を招致した小野議員に向けられている。しかし、小野議員の行動か原因で、なぜ私の将来
 に傷かつくのか。

 「彼の将来を傷つける」、そう長官がいったのは、官僚である私が政権の政策批判を展開し
 たからだ。仮に、私が政権を擁護する発言をしていたら、あの油谷長官の発言は出なかった
 はずだ。つまり小野議員への批判を借りて、私が政権批判した発言を非難し、私を脅したの
 だと考えるしかなかった。
  仙谷長官は当時、「陰の総理」と呼ばれる実力者となっていた。彼のぎ凱に触れた仏にど
 のような仕打ちが待っているか、想像しただけでもゾッとした。その感覚は、帰宅しても消
 えず、いまも時として、あのときの国会でのやり取りが鮮明に甦ってくる。

  その後、仙谷長官は記者会見で、「(私を)恫喝したつもりはない。本当に心配している」と
 いうL旨の答えをしている。.介の公務員に過ぎない私には、その尽俄を信じる以外に選択
 肢は与えられていなかったのだか・・・・・・。


                      次官と前次官に呼び出されて

  仙谷長官の真意はどうてあれ、この.件を境に、経蔵省での私への風当たりは暴風威に突
 入した。
  実は、あまり報道されていないが、例の仙谷長官発百の質疑の際に、小野次郎議員が、私
 の出張に関する新聞報道を引用して、この出張が『大人の賤界の陰湿ないじめではありませ
 んか」と聞いたのに対して、大畠章宏経産大臣が次のような答弁をしている。

 「ご本人のお話等も承りなから、ご本人の経験やあるいはそして能力、そういうものが十分
 発揮できるような形で対処してまいりたいと思います」
  普通の人が聞けば、何か私に相応しいポストを用意する、といっているように聞こえる。
  その後も何度か記者会見で私の人事が取りトげられているが、たとえば11月10日には、
 こんな大畠人臣の発言もあった。

 「本人か一番、よし、やるぞという、そういう気持ちを持って仕事に励めるようなところに、
 その人事を持っていくというのか一番だと思いますから、だからそういう意味で官房長には
 そういう話をして、いまいろいろ話をしてもらっているということです」
  国会で答弁したのは10月15日の金曜日だったが、すぐさま官房艮から連絡があり「次
 官かお前と飯を食いたいといっている。月曜の夜、時間を空けるといっていろがどうか」と
 いう打診かあった。

  なぜ、この時期に事務次官が払と夕食をともにしたいのか、おおよその見当はついた。多
 忙な次官にわざわざ夜の時間を割いてもらうのは忍びないので、月曜の昼食ならと答えた。
 指定されたのは、青山のイタリアンレストランだった。
  次官との会談は、一言でいえば沈黙の連続だった。
 会談の内容をいま詳しく話すことはできない。その会談は、あくまでも非公式のものだつた
 からだ。次官から、正式の会談ではない、個人的な話だから、その内容は外に話さないで欲
 しい、といわれている、私が次官と話したのは実はこれか初めてだった。

  確かその翌日だったと思うが、今度は前次官から呼び出しを受けた。彼は、「個人的な会
 談だ」などという建前をいうような人ではない。いつも正々堂々隠し立てなく話をしてくれ
 る。ただ、現次官の話を内密にして、たまたまオープンな人だからといって前次官の話を表
 に出すのはフェアではないから、これも次の機会ということでご勘弁いただきたい。

  では、その後どうなったのか。この他の経産省幹部からも話があつたが、その後の推移か
 ら推測するに、大畠人臣が私の処遇を求めたのに対して、経産省は事実上それを無視して、
 時間稼ぎに出たようだ。
  あれだけ国会で騒がれ、しかも、その後、出張報告書の改竄問題で河野議員らから追及を
 受けている最中に私をクピにしては、非難囂々となることは明らかだ。人事当局は、私に対
 して、あまり騒がしいときに辞められても困るという感じのことを伝えてきた。

  10月末の退職期限は串実ト撤回された。しかし、だからといって、真剣にポストを探す
 わけでもなく、大畠大臣が交代するか、マスコミか私のことを忘れる日が来るのを待つ作戦
 に出たのだろう.
  経産省の判断は吉と出た。年が明けた2011年1月14日、菅政権の内閣改造に伴い、
 大畠大臣は国E交通大臣に横滑りし、その代わりに海江田万里経済財政担当大臣が、これも
 横滑りで経産大臣に就任したのだ。これで、大畠発言のくぴきから解放される、そう想って
 経産省幹部は喜んだだろう。

  さらに、大畠大臣は、退任記者会見で私の人事について質問を受け、よほど官僚のサポタ
 ージュに腹が立ったのだろうか、こんな発言をしてしまった。
 「経済産業省のなかの人事の問題ですから。これは官房長の管轄なんです、基本的に。私が
 云々というよりもね。……後は官房長のほうでよく聞いていただきたいと思います」
  これで、経産省事務方としては、私の人事について、官房長に.任されたと解釈するだろ
 う.しかし、人事権はあくまで大臣にある。こんな状況でパトンを渡された海江田大臣から
 見れば至極迷惑な話だろうと思う。
  果たして、私は大臣官房付のまま、一年数ヵ月を過ごした。


【日本の政治史論 24:政体と中枢】(「ナチズムとボリシェヴィキズム」2015.08.04)で触
れた福島第一原発の予備電源設置の遅れた経緯に触れられているが、先回の感想と内容は変わら
ないことを追記しておく。 

                                   この項つづく

 

 

● 今夜の一枚 Basket Bierdfeeder

野鳥用の「餌箱」の特集が掲載されていた。多様な素材でデザインしたものが多く紹介されてい
る。これはチョットしたカルチャーショックだ。

 

2010年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の招致に絡み、賄賂を受け取ったなどとして起訴
された国際サッカー連盟(FIFA)元副会長、ジャック・ワーナー被告は3日、事件の内幕を
全て暴露すると宣言した。辞意を表明したブラッター会長に関する秘密も例外視しないと述べた。
FIFA理事会、副会長職に居座った被告が米司法省などとの司法取引に応じて供述すれば、事
件の解明が一気に進む可能性があるという(毎日新聞 2015.06.05)。また、ワーナー被告はこ
れまで、在任中の行為に違法性の認識はなかったと強気を保ってきた。だが、米司法省の調べに
息子2人が罪を認めただけでなく、3日に公開された元理事の公判記録などから、南ア側からワ
ーナー被告などに渡ったカネが賄賂だった可能性が一段と高まっていたという(同上)。

ところで、サッカーのような世界的人気のある競技誘致にまつわる汚職は古今東西にはじまるわ
けではないが、巨額なまでの賄賂などの汚職は非常に現在的で、新興国を含めた「高度消費社会」
のスポンサー(国家、企業)とオルガナイザー(主催者)の関係が、深く産業構造の変化と関係
していることを物語っている。そして、そこから導出されるものは「組織目的」「組織倫理」の
再確認というわけだが、このわたしも、一度はこんな甘い誘惑に酔ってみたいと思わないことは
ない? ^^;。

                                      
 

反スピノザの条理

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    規定性とは否定性である / バールーフ・デ・スピノザ

 

 

● NGOオックスファム : G7各国に「石炭脱却を」促す

G7サミット=先進7か国首脳会議に合わせて貧困の撲滅などに取り組む国際NGOは、先進
7か国は今も石炭による火力発電で多くの二酸化炭素を排出しているとして石炭の利用をやめ
るよう率先して取り組むべきだという報告書をまとめたという(NHKニュース 2015.06.08)。
この国際NGOオックスファムの報告書では、今も石炭による火力発電が電力分野で最も多く
の二酸化炭素を排出し、その排出量はアフリカ全体の排出量の2倍に当たり、このまま同じ規
模の排出が続けば、地球温暖化による被害額がアフリカだけでも2080年代までに年間およ
そ430億ドル、日本円にして5兆4000億円に上ると予測。

さらに、日本について東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、石炭火力発電の割合が増
加の一途をたどり、温暖化対策にブレーキをかけていると指摘し、経済的に豊かな先進7か国
こそが率先して風力や太陽光など再生可能エネルギーへの投資を行い、2040年までに石炭
の利用をやめるべきだと呼びかけた。



● 投げやりな日本政府の計画 再生可能エネルギーの取り組み

また、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)は6月2日、政府が公表した
長期エネルギー需給見通し(案)に対し、「政府の数値は現在の市場動向に合っていない」とし
2030年の電源構成に占める再生可能エネルギーの比率を26.1%(政府案は22~24%)、
そのうち太陽光の電源構成全体に占める比率は12%(政府案は7%)、原子力の同比率は9%
(政府案は20~22%)との独自の予測値を公表しているが、太陽光は政府案との差は7%と
開きが大きく、再生エネルギーへの取り組みは余りにも消極的。これに対して、人新エネルギー・
産業技術総合開発機構(NEDO)は「2030年までに発電コスト7円/キロワットアワーを目指す
」として新たなプロジェクトを始動させた(2015.06.04)。

日経BPクリーンテック研究所

ここで、1キロワットアワー当たり、石炭火力発電料金の7円を目標としているが、火力発電の
燃料は、石炭の他、液体天然ガス、バイオマスなどあり前者は、二酸化炭素ガスを排出させるた
め、回収が必要でその費用は加算されていない。だだし、現段階は温室ガスの低排出(=二酸化
炭素削減・回収) 技術も進歩していきている。 このように目標価格の規定(定義)も曖昧な点
を残しているが、そこは目を瞑り?ひたすら太陽光発電のグリッド・パリティー達成に目を向け
ると、2030年度を前倒した、2年後の2017年にも努力次第では達成可能な状況である。 後は、政
府の後押しがあればゴールまで完走するだけだ。

 

    ※ 再エネ百パーセント時代 Ⅱ

 

   

【日本の政治史論 28:政体と中枢】  

 

「古賀の乱ってなんだ "I am not ABE  " 」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。 

  福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)   

                             古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』  

  目 次     

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策   った出張

 

  第4章 役人たちが暴走する仕組み    

                            核燃料サイクルに反対した若手官僚三人の左遷

  現在の霞か関の最大の問題は、繰り返すが、官僚が本当に国民のために働く仕組みになつ
 ていない点である。
   官僚志望者の大半は、国民のために持てる能力を発揮したいと望み、官僚を目指す。ところか、
 この純粋無垢な気持ちは、いつの間にか汚濁にまみれていく。そういう構造的な欠陥を現在
 の官僚機構が宿している。

  第一の欠陥は縦割りの組織構成である。国家公務n採川I種試験の合格者(いわゆる「キ
 ャリア官僚」候補)は、省庁回りを経て各省に採用される。いったん入省すると、生涯所属
 は変わらない。民間に置き換えれば、公務員という職に就くというよりは、経産株式会社や
 財務株式会社に永年雇用される。途中、出向することはあっても、払の場合なら「経産省の
 役人」の名札は退官するまで変わらない。だから自分の役所のことを「わが社」などという。
  一生お世話になる組織の利益のために働く、これはごく自然な感情だ。また民間であれば、
 組織に貢献した社員は高く評価されて然るべきである。社員が稼いだカネを企業が利益還元
 し、そこで働く者が豊かになるのも、至極まつとうな行為だ。

  しかし、公共のために働く公務員の役割は、利潤追求を最大の目的とする企業の従業員の
 それとは根本から違う。公務員は、国民から徴収した血税を使ってどのような施策を立案す
 れば、国民生活が向上りるかを第一義に考えるのか仕事だ。
 省利省益の確保と縄張り争いに血道を上げ、職員の生活か豊かになっても、国民の誰も賞賛
 はしないどころか、それは悪でしかない。
  つまり、一度入省すれば番地が変わらず、その官庁が終の棲家になるため、自分の所属す
 る省への利益誘導体質かできあかっているというわけだ。これを本来の国家公務員の使命で
 ある国民のために働くという体質に改善する新たな人事システムの導入が必須となる。

  第二の欠陥は、年功序列制と身分保障。かつて日本企業の強味の一つは従業員の忠誠心を
 育む年功序列制にあるといわれていた時代もあったが、いまどき、年功序列制を採用してい
 る民間企業はほとんどない。勤務した年数で人事を決め、待遇を上げていくというシステム
 では厳しい国際競争には勝ら抜けず、生き残れないからだ。
  いま大半の企業は多少の年功制の色合いは残しながらも、能力主義や実力主義を採用して
 いる。とりわけ幹部職員はそうである。日産自動車、ソニー、日本板硝子などは経営トップ
 に外国人を就けている。2011年に入ると、オリンパスか次期社長にイギリス人を就けた。
 民間企業では経営者の選抜は完全な能力主義になってきたということだ。
  能力があれば年功どころか国籍も問わない、逆に業績が上がらなければ経営責任を厳しく
 問われる 身分保障などといったらお笑い草だ。


 ここは、異論がある。営利企業(民間)で年功序列とキャリアアップや企業内福祉(忠誠心)
への等式、つまり、正の相関度が他の説明因子より優位であればそれ有意な選択肢であるだろう。
例えば、利潤至上主義が企業内福祉(忠誠心)を疎かにし、人財流出・ブラック企業化などの企
業の弱体化を強めることも熟慮しておかなければならないだろう、さて、先を急ごう。


  ところが、官庁では、ポストも給与も人省年次で決まる。能力がなければ係長で終わりで
 も 仕方がないのに、キャリアならまず催実に課長にはなれる。
  課長職以上のポストとなると出世競争があるが、評価はどれだけ省益に貢献したかで決ま
 るのだから、幹部候補のエリートは余計に国民のことは考えなくなる。それ以前に親方日の
 丸で、国家財政破綻寸前になっているいまも年功序列にしがみつき、ぬくぬくと暮らしてい
 る官僚に、民間企業や国民のニーズに応える適切な政策が立案できるわけかない。

  天下りを生む根っこにあったのも年功序列割と身分保障である。自民党政権時代までは、
 霞が関では次のようなシステムが慣行となっていた。
  前にも記した通り、課長職は毎年採用されるキャリア官僚の数にほぽ対応できるよう設け
 られているが、審議官。部長、局長と、徐々にポストの数は減っていき、トップの事務次官
 にはたった一人しかなれない。しかも審議官・部長以上は、同期の者が出世すると、出府競
 争に敗れた人は、退職するという贋行になっていた。

  いってみれば、同期はトーナメント方式の勝ち抜き戦を戦っているのだ。スポーツなら、
 負ければ、文句もいわず退場するしかないが、なにせ霞が関では年功序列制と身分保障が絶
 対の規範である。霞が関の論理では、出ほ競争から脱落した者にも、年次に応じて同等の収
 入を保障しなければならないとなり、大臣宮司が省庁の子会社ともいえる特殊法人や独立行
 政法人などに再就職を斡旋していた。

  すなわち、出世競争に負けた人のための受け匿が必要なので、無駄な独立行政法人、特殊
 法人、そして無数の公益法人を役所は作る。
  年功序列制を守るために再就職を斡旋するのだから、その人物の能力は関係ない。なかに
 はまったく役に立たない人も交じる。受け入れる独法・特殊法人・公益法人や民間企業にし
 てみれば、そんな人にまで高給を保障しなければならないのだから、何かお土産をもらわな
 ければ割りに合わない。役所もそれは重々承知で、補助金など見返りをつける。あるいは原
 子力行政のように、業界に遠慮して、規制か不十分になることもある。
  つまり、無能な人に高給を保障するために、国民の税金が使われ、国民の生命の安全が犠
 牲にされているのだ。

  年功序列制の弊害はまだある。この制度のせいで、官庁では先輩の意見は絶対という不文
 律ができあがっている。過去に上の者が推進した政策を非難することはご法度だし、悪しき
 慣習も改められない。国益そっちのけで省益の確保に奔走する先輩たちの姿を見て、おかし
 いと思っても、上を否定すれば組織の論埋とは相容れない存在になり、はみ出すしかなくな
 る 。
  そう、霞か関では「先輩に迷惑がかかる」ようなまねは一切されないのだ。年功序列によ
 る負の連鎖は連綿と続いており、若干が改革案を実施したいと考えても、現役の上層部だけ
 でなく、OBからも圧力がかかり潰される.
  核燃料サイクルに反別した若手官僚3人が左遷され、うち1人は経産省から退職を余儀な
 くされたこともあった。電力業界の逆鱗に触れ、OBからもクレームがついたのだろう。

  公務員制度改改革に賭けた原英史氏、埋蔵金をはじめとする数々の霞が関のカラクリを暴
 いた高橋洋一氏、小泉改革を支えた岸博幸氏ら、改革意欲に燃える能力の高い役人は結局、
 自らの組織を見切るしかなくなるのだ.
  霞が関だけは過去の遺物ともいえる年功序列制と身分保障をいまだに絶対的な規範にして
 いる。国民に対して、結果を出せなければ責任を取るべきなのに、悪事を働かない限り降格
 もない、年金がなくなっても、歴代の社会保険庁の長官は、いまだに天下りや渡りで生活を
 保障されている。

  実績は関係ないのだから、国民のために働こうという意欲はどんどん失せていく。
  身分保障と年功序列制度が縦割りの組織と一体となり、がんじがらめになっている現在の
 状況が続くのなら、原か関が自ら改革に踏み切るには永遠に来ない。

  民主党政権は天下りの根絶を目指し、斡旋を表向き全面禁止した。だが、禁止しただけで
 は問題は解決しない。出口を閉じても結局は、いままで外に出していた人を省内で抱え込む
 ことになるからだ。
  先に触れたように、身分保障と年功序列制をそのままにして、待遇もポストも保障するな
 どということは不可能だ。人員も給与もカットし、同時に、根底にある年功序列制を廃止し
 て、実力主義、実績主義に改めないと、改革にはならない。


 ここでも異論がある。優先順位が必要という。まずは、(1)公務員の不要業務組織の整理・
統合(重複業務の廃止)、つぎに、(2)非公務員の民間現業こそリスクが高く剰余価値(付加
価値)を生み出す平均賃金に漸近させる原則の優先、さらに、(3)年功序列制の弊害審査と見
直し、勤務評価制度の見直し・・・・・・という順に考えているが、費用効果の即効性では、(2)>
(1)>(3)の順になり、行政の質向上では(3)>(1)>(2)の順になると考える。


                    官僚が省益を考えなくなるシステム

  安倍晋三政権以来、なぜこれほどまでに苦労して公務員制度改革を行おうとしているのか。.
  それは、いかなる改革を行うにも、公務員が省益のためてはなく、政冶主導のもとで、真
 に国民のために働く什組みに変えなければ、結局すべての努力が徒労に終わるからである。
  これまで行われた幾多の改革が途中で頓挫したり、あるいは表面的なものに終わった最大
 の原因も、官僚のサボタージュ。

  これは、実は、改革を命かけでやろうとした政治家にしか分からないことかもしれない。
 そして公務員制度は、様々な要素が複雑に絡み合ってできあかつている。一部に予をつけて
 も結局その他の仕組みが頑強に抵抗し、結果的に全体が元に尻ってしまう、だから、変える
 べき点には網羅的に手をつけなければならない。そのためのすべての改革事項と改正のスケ
 ジュールを法律ではっきり決めてしまう。それか、前に述べた『国家公務員制度改革基本法」
 なのだ。

  法案の国会提出までには、幾多の困難があり、その過程では、渡辺喜美大臣が目指した改
 革の一部は抜け落ちてしまったが、基本的な考え方は基本法に反映されている。
  基本法は、「国家戦略スタッフの創設立内閣人事局の創設」「幹部職員に関する新制度の
 創設」「降格、降給などが柔軟にできる新たな給与制度の創設」「キャリア制度の廃止」「
 外部入材の積極的登用」などを柱にしている。

  基本法を貫く基本理念としてとりわけ重要なのが、霞が関の縦割り組織、年功序列制の
 打破である。
  縦割り組織の弊害解消でいえば、「内閣人事局の創設」だ。縦割り組織を壊すといっても、
  ただ闇雲に若いうちからいろいろな省庁を転々とさせるだけでは、仕事を覚えるうえでも
 効率が悪い。そこで先に挙げたように-内閣人事局」を新たに設置し、全政府的見地から人
 事を一元管理しようとしたのだ.特に重要なのは、各省の部長職以Lの幹部については人事
 局が直接的な関りを行い、省庁問の垣根を越えて適材適所の人事を行うこと。

  後で述べるように、内閣人私局創設は政治主導の切り札の一つでもあるのだが、縦割り組
 織打破の観点でいえば、なんといっても大きいのは、キャリア官僚を縛りつけている省とい
 う枠組みが取り払われることである。
  霞が関の政策が国民そっちのけの自省利益誘導になるのは、各省ごとに自分たちの生活を
 守る仕組みかできあがっているからだ.たとえていえば、政府のなかに独なした互助会がい
 くつもあるようなもの。なかには厚労省のように、旧労働省の互助会と旧厚生省の互助会と
 いった具合に複数存在している省庁もある。

  自分の所属する互助会から追い出されると生きていけないので、天下り先を作るなどポス
 トを増やしたり、予算をなるべく多く取ってきたりして、互助会に貢献する。ポストや予算
 は法案とセットになっていて、あらゆる政策は結果的に国民の利益無視になってしまう。縦
 割り行政の弊害も異なる多数の互助組織が林立していることによって起こる、たとえば、
 「幼保一体化」。幼稚園と保育所はやっていろことは似たようなものなのに、幼稚園は文部
 科学省、保育所はり生労働省の所管だ。旧文部省互助会と旧厚生省互助会か、それぞれ自分
 たちの利益を考えたので、こつできた.ニつの互助会の出してくる政策は違うので、利用す
 るお母さんの側からいうと非常に使いづらいし、結果的に待腰児童がいつまでたっても解消
 ざれ ないという最悪の結果が生じている。

  そこで「幼保一元化」という議論が起きたが、最近は「幼保一体化」といい直している。
 「一元化」とコ体化`は霞が関一目葉では違う。「一体化」は、完全に一緒にするわけでは
 ないという意味を含んでいる。
  たとえば、極端な話だが、.つの建物のなかに幼稚園と保育所かそれぞれ独立して入って
 いればで体化』されたといえる。物理的な一体化だ。一体化はそういうニュアンスが強い。
  とりわけ、最初は「一元化」といっていたのに、途中から「一体化」という言葉に変えた
 ということになれば、普通はそういう思惑があると考えなければならない。中身はまったく
 前と同じ、所管するのもそれぞれ文部科学省と厚生労働省、これでも立派な「一体化」だ。
 これを「一元化」と呼ぶのは少し無理があるだろう。

  このように、各互助会はまやかしの言葉を弄して、なんとか利権を手放すまいとがんばる。
  民主党が事業仕分けで、この事業は廃止といっても、廃止しなかったり、看板をつけ替え
 ていつの間にやら復活したりしているのも、互助会が聞く耳を持たないからだ。廃止といわ
 れると、名目を変えて温存するなど、役人の生活を守るためのイノベーションが始まる。
  従って、国民のための政策にするには、霞が関にあまたある互助組織を解体するしかない。
  そこで考えられたのが、幹部を互助会から剥がし、実質的に内閣の所属とするという解体
 法だ。

  つまり、部長以Lの幹部人事は内閣人事局が一元的に管理する。このとき、幹部候補の名
 簿は各省庁が作るのではなく、内閣人事局が作る。肢体的な人事は、各省の大臣が、総理や
 官房長官と相談して決める。幹部は事実上その省庁のゼッケンを外し、各省庁の大臣の顔だ
 けではなく、内閣、具体的には総理や官房長官のほうを見ることになる。
  もちろん、専門知識を活かすべきだと判断されて、たまたま元いた省庁に配属される人も
 いれば、別の省庁に行く人もいる。しかし、その後も省庁は固定されるわけではない。局員
 に出世した官僚は、内閣人事局によって省庁の垣根を越えて新たな仕事場が決められる。こ
 れこそまさに適材適所だ。

  このシステムでは、入り口は、たとえば経度省や財務省、文科省であっても、幹部になっ
 た後は、どこの省庁に配属になるか分からない。若手にとって、所属する省庁は、とりあえ
 ずの現住所であり、終の棟家ではなくなる。現在の制度では一生ついて回る「○○省の」と
 いう属性が取れれば意識は自ずと変わる。いつまでいるか分からない省の利益を最優先する
 官僚はいなくなり、本来の仕嘔に専念し評価を得たいという人か増え、本当に国民のために
 働きたいと思う優秀な若手か育つ。

                                        国民本位の官僚を作る仕組み

  「キャリア制度の廃止」「官民交流の促進」も年功序列制の廃山につながる。キャリア制
 度の廃止から見てみよう。
  古くは比級繊、現在は国家公務員採用I邨試験を合格して入省した官僚を「キャリア」、Ⅱ
 Ⅱ種、Ⅲ種試験合格者の官僚を通称「ノンキャリア」と呼んでいるのはご存じだろう。キャ
 リア官僚は、ノンキャリアに比べ、人省時からポストも給与も保障されており、いわば特権
 階級となっている。

  ところが、実は法的には、これにはなんの根拠もない。国家公務n法とそれに基づく人事
 院規則や人事院の採用ホームページを見ても、Ⅲ種は高卒程度を対象にしているからI種や
 Ⅱ種よりランクが下だろうということは分かるが、I種とⅡ種の区別はよく分からない。少
 なくともI種職員に高い給与や昇進を保障するなどとは、どこにも書かれていないのだ.
  言い換えれば、建て前上は、身分制度としてのキャリア官僚制は存在していないことにな
 っており、現行の制度は眼なる慣行に過ぎない。年功序列制に支えられた、この妙な制度が
 ある限り、キャリアー冒僚は自分たちの特権を守ろうとし、ましてや改革は進まない。それ
 でなくとも生活に片しむ国民が人勢いるいま、キャリア官僚だけが特権を享受し続けること
 は詐されない。

  基本法ではI種、Ⅱ種、Ⅲ種試験による採用ではなく、「総合職」「一般戦」「専門職」
 という3区分で採用試験を行う制度に改めるとしている。
 総合戦試験では政策の企痢な案の能力を訳桐する。.般職試験では的確な心y務処理能力が
 あるかどうかを見る。専門職試験では特定の行政分野の専門的な知識を有するかどうかか直
 視される。
  このような職域本位の区分けに採用試験を改めると同時に、政府は新たに幹部を育成する
 ための仕組み、「幹部候補育成課程」を導入する。幹部候補育成課程対象右は、内閣人事局
 によって、一定期間勤務した者のなかから本人の希望と厳格な人令評価に基づいて選び、人
 事局による特別な育成プログラムのもとで、省庁本位ではなく全政府的見地に既った行政官
 となるようにが成される。また、新たな身分朋になることを防111するために、幹部候補とし
 てふさわしいか、定則的に見直す。
  つまり、すべて厳格な人事評価に基づいて能力本位で決定されるわけで、能力孔義が根づ
 き国民本位の官僚が育つことになろのだ。


さて、そろそろ核心に迫ることにしよう。 
                                                      この項つづく

 

                                                       

 


ころたんと生物多様性

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    生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。
                それは、変化に最もよく適応したものである。

                                               チャールズ・ダーウィン

 




庭先の木製プランターに植えたシラキの新緑があまりにも鮮やかで、常に携帯しているデジカメ
に収める。カメラの性能と腕の悪さ―これは多分に老眼と乱視の影響が大きい――で焦点の花芽
(♂花)の鮮明さが台無しだ。

  

 

● ころたんと生物多様性

  地球上には種々さまざまな生物が、多様な環境の下で生息している。
  生物多様性とは、普通は種数多様性のことであるが、同種の個体にも個性があり、さらに
 それらが一緒に生活する生物群集にもそれぞれの特徴があり、生物多様性は種数多様性だけ
 に還元できるわけではない。
  また、生物の基本設計プラン自体の多様性(異質性)も生物多様性の大きな要素である。
 生物多様性が生じる根本原因は進化にあるが、異質性を生じさせる進化メカニズムと種数多
 様性を生じさせる進化メカニズムが、同じか異なるかについては議論が多い。

  地球上で知られ学名がついている生物種め数は約150万種であるが、実際には少なくと
 も10倍以上の種が生息していと推定されている。その中で極端に種数が多いのは昆虫類で、
 昆虫だけで3000万種ほどいるのではないかと推定している人もいる。また、それらのほ
 とんどは、熱帯爾林の林冠に生息している。

  なぜ、特定の分類群に偏って種数多様性が高いのがという問題と、なぜ特定の地域に偏っ
 て種数多様性が高いのかという問題は、生物多様性に関する2大難問で定説はない。
  前者に関しては、単なる歴史的偶然だとの考えと、特定の高次分類群はシステムの特性と
 して他の分類群よりも種分化を起こしやすいとの考えがある。後者に関しては、何らかの根
 拠があるとする点でおおかたの意見は一致するが、根拠は何かという点に関しては議論が多
 い。一般に資源量が大きく、それを利用する種の生態的地位が細かく分割されていればいる
 ほど種数は大きくなる熱一帯一雨林でこのことが起こりやす理由としてば太陽エネルギー量
 が多いことと、地質学的上な時間幅で生態系が完全破壊を免れてきたことの2づが有ガであ
 ると考えられている。 

                       池田清彦 著 『新しい生物学の教科書』

5月17日に届いた ミニメロンのころんたの苗(『高野豆腐パウダー開創』)の1本が見事に成
育(下写真)し、シェイド兼用の蔓繁殖ネットに蔓が絡みだした。残りの2本はというと、発育
が悪いので玄関先にプランタを移し育てている。彼女は苗によるのよと言うので、そういうもの
なんだろうねと応じたが、先天的なものか、後天的な理由によるものか、違いが歴然としている。
しかし、待てよ、花咲くことになれば繁殖差がなくなっているのではないだろうかとの淡い期待
を抱くがたぶん駄目だろうなと呟くもうひとりがいる。

苗(台木は「ネバルト」とは記されているが不詳。たぶん、メロンつる割病とえそ斑点病に複合
耐病性メロンつる割病(フザリウム)、メロンえそ斑点病、うどんこ病などの複合耐病性の共台
木をつかっているのだろう)は、メーカの手で育てられているので完全な無農薬というわけには
いかない。因みに、チウラム・ペノミル水和剤(種子消毒)、塩基性硫酸銅(銅殺菌)、炭酸カ
ルシウム(銅水和剤による薬害の軽減など)、イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤(殺菌)、
ジノテフラン(防虫)、マンゼプ・メタラキシルM(硫黄系殺菌)、硫黄(同左)、シアゾフアミ
ド(シアノイミダゾール系殺菌)を散布しているようだ。ここは特別にコメントしておこう。アレルギー罹
患抑制には、農薬使用総量の大幅削減と罹患農薬の特定が必要であることは大前提ではあるが、
人工環境型植物工場の普及は欠かせないとだけいっておこう。

さて、整枝作業期間に入ろう。




   

【日本の政治史論 29:政体と中枢】   

「古賀の乱ってなんだ "I am not ABE  " 」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。  

  福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)    

                             古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』  

   目 次     

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策   った出張 

  第4章 役人たちが暴走する仕組み     

                                   回転ドア方式で官民の出入りを自由に

   次に「外部人材の登用」。本来は「官民の人材交流の促進」と双方向の記述にすべきだが、
  ここではあえて、民から官への登用を強調しておきたい。なぜなら、官から民へは、能力さ
 えあればいつでも転職できるからだ。現に若手を中心にどんどん民間へ転職する者か増えて
  いる。
    他方、民から官への転身は極めてむずかし。もう一つ要注意なのは、官民交流というと、
 官僚はすぐに官から民への押しつけ的な派遣などを画策することだ。これはすでに述べた通
 りだ。従って、ここでは「外部人材の登用」としたが、心は、バランスの取れた官民の人材
 交流の促進である。

  多様性を拒否し、単一の価値観の人間ぱかりになっている組織は澱み、活力を失う。いま
 の霞が関は、この陥穿に嵌まって抜け出せなくなっている。これを官から民へ、民から官へ
 と自由に行き来できる仕組みに変える。このように自由に出入り可能な人材登用法は、「リ
 ボルビングドア(回転ドア)」方式と呼ばれている。
  リボルビングドア方式を導入すれば、官で培ったノウハウを民に出て生かすこともできれ
 ば、逆に官への民間の有能な人材の登用も可能になる。

  たとえば、経度省で八年経験を積んだ若子が民間企業から誘いを受けた。前々から民間の
 仕事にも興味があり、どれだけ自分かできるのか腕試しもしてみたかったし、官僚の仕事に
 もマンネリを感じていたので誘いに乗った。役人の衣を脱いで民間に再就職してみると、仕
 事は新鮮でおもしろい。霞が関で働いていた頃には見えなかった発見が日々あり、刺激的で
 ある。
  意欲的に仕事に取り組む彼に対する会社の評価はうなぎトりで胃進も速い。このまま民間
 のビジネスマンとして一生を終えるのも悪くはないな、と彼は考えていた。だが、10年ほ
 ど経った頃から、この民間での経験を行政に活かしたいという思いか次第に膨らんできた。
 ちょうどそんなとき、ネットで経産省が幹部職員を公募しているのを知り、これに応募し、
 官に戻った。

  現在の片道切符の官から民への再就職ではなく、出入り自由なダイナミックな制度が確な
 されれば、彼のように官と民を股にかけて持てる能力を存分に発陣できるようになる。
  リポルビングドア方式は、民、官どちらの組織にもメリットをもたらす。視点の異なる有
 能な人材が行き来すれば、新風か吹き込まれ、組綿は活性化する。とりわけ、組織か硬直化
 し、国家が危機的状況に置かれていても僕て直す能力を失っている官僚機構には、外部の血
 の導入が絶対に不可欠だ。

  ここまで書くと、なかには2011年3月の原発事故に思い至る力がいるかもしれな事実
 は、原子力安全・保安院には原了力の専門家は一部しかいない。しかも民間に比べれば、そ
 の専門知識もはるかに低いのだ。
  もし、実力ある民間人を採用できる仕組みになっていれば、全体のレベルが格段に上がっ
 ていただろう。また、こうした専門分野では、欧米の専門家なども積極的に一定数採用して
 国際水準から大きく遅れを取ることがないようにする必要もある。

  ただし、リボルピングドア方式を実現するためには、官は現在の年功序列制は捨てなけれ
 ばならない。実績主義の民間で高い能力を発揮し、相応のポストと高収入を得ている若手が
 霞が関で政策立案に携わりたいと望んでも、年功序列の厚い壁が阻めば、リポルピングドア
 方式は実現しない。高給とポストを捨ててまで、年功序列制で頭を押さえつけられる官僚組
 織に飛び込みたいと思う民間の若手など、ますいないからだ。
  すなわち、官民の人材交流の促進は、官の年功序列制の廃止と能カ主義の導入を前提とし
 ている。

  私は省庁の幹部は最低5年間は民間に出た人でなければならないという規定を作るべきだ
 とさえ思っている。民間で5年武者修行して、成果を残した人が役所に幹部として残る。
 あるいは、民間企業で5年以上勤めて実績を挙げた人を幹部に登用する。役人の場合、その
 身分のまま派遣する方法もあるにはあるが、前にも述べたような弊害もある。若手であって
 も一回辞めて出る制度にしたほうがすっきりする。
  仮にこの制度を導入すると、はじめから民間に就職した大のほうが役所の幹部にはなりや
 すくなるかもしれないか、それぐらいでちょうど良いのではないか。
  リボルビングドア方式は、遅かれ早かれ実現するはずだ。5年以内にほなんとかなるので
 は、というのか私の見通しである。だとしたら、すでに役所を辞めて民間で活躍している中
 堅・若手の元官僚が再び役所に帰ってきて活躍できる日が来るということだ。
  ただ、ある同僚は私にこういった。「5年じゃあ、とても無理だろう……」。


回転ドア方式の導入は賛成、米国の事例研究をよく踏まえての上でという条件付きで。さらに、
天下りの議論も深め、対象企業の事業(プロジェクト)に骨を埋める精神が必要で、従来の口利
き程度の仕事で厚遇されるような「甘い制度」は直ちに払拭する必要があるだろう。

   中川秀直チャンネル

                                      法律無視の民主党政権

  ところで、洒費脱増脱をめぐる議論には、民丿党は殊のほか熱心であった。増税の議論を
 急ぐ根拠として、平成21年の「所得税法等の一部を改正する法律」の附則第104条にあ
 る「平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする」という規定を、全科玉条
 のごとく振りかぎしている。法律だから与野党を問わずこれを守らなければいけない」とい
 うのだ。
  国民から見ればれば「良くそんな偉そうなことがいえるな」ということになるのではない
 か。なぜなら、国家公務員制度改革基本法には、様々な改革についてはっきりと期限が書い
 てある。

  内閣人事局設置のための法的措置は、2009年の夏までに取らなければならなかった。
 麻生内閣はこれに間に合わせようということで国家公務員法の改正法案をちゃんと出した。
  だから、民主党は政権交代後、すぐに臨時国会に改正案を出すべきだったが、これを放置
 した。2010年の通常国会には大幅に後退した案を出したが、あまりにいい加減な法案だ
 ったから廃案になった。その後の臨時国会には、法案を提出しなかった。こんないい加減な
 政権が、法律は守りましょうなどと良くいえたものだ。そんな国民の声が聞こえる。
  さらに、安倍内閣のときに成立した国家公務員法改止法では、天下りを第二者に監視して
 もらうための再就職等監視委員会の設置が規定されている。これも、れっきとした法律によ
 って決められていることだ。しかし民主党は、政隆交代後.年半もこの委員会の人事案を出
 さなかった。

  その結果、2011年1月に経度省の元資源エネルギー庁長官か東京電力に天下りしたと
 きにも、経産省の秘書課長に調査させて国民の尊略を買ったことは前にも書いた。ここでも
 重要な法律違反を犯しているのである。「法律に澄いてあるから増税を決めなくてはいけな
 い」などという強弁を、良くも恥ずかしげもなくできるものだ。

                               「Jリーグ方式」で幹部の入れ替えを

  残念なことだか、このように、二年以ヒも的に成立した国家公務員制度改革基本法の改革
 が滞っている。早急にに推進すべきだが、当時とは状況が変化しており、基本法に盛り込ま
 れた基本的な改革に加えて、さらに大胆かつ具体的な改革を一刻も早く進める必要がある。
  国家公務員制度改革推進本部事務局にいた頃、若手官僚の声も入れながら、私が考えた改
 革案は次のようなものだった。
  公務員は法律上、身分が保障されている。これを少なくとも、中央省庁の部長級以上は民
 間の取締役のように任期割にして、政治主導の人事ができるようにするべきだ。厳格な目標
 設定と評価を行い、目標が達成できない幹部の入れ替えを果敢に行う。もちろん、民間、あ
 るいは若手からも実力主義で思い切って登用する。

  恒常的な新陳代謝を促すためには、長くしがみついていれば得をする現行の給与法も改め
 ねばならない。たとえば、給与は50歳以降は逓減する体系に改め、給与の削減輔は、定年
 の60歳までに3割程度減を目安とする。長く在職すれば退職金も減る仕組みにする。これ
 により、長くいてもかえって損するかもしれないという状況を作り出す。

  また、役職定年制も導入する。これは役職者が.一定の年齢に達したら管理職ポストを外
 れ給与も大幅にドげられるように下る制度だ。
  さらに組織に緊張感をもたらし、有能な人材を活かせるよう.局長、部長、課長などの各
 クラスごとに人員の最低一割を毎年、無条件で入れ替える制度を採用する。分かりやすくい
 えば、「Jリーグ方式」だ。
  サッカーのJリーグでは、毎年、一部リーグの下位チームは強制的に二部に降格され、代
 わって部リーグの上位チームが一部に昇格する。入れ替え戦は行わない。つまり、下がる人
 が上がる人よりも劣るとは限らなくても、とにかく有無をいわさずに、.割ほどの人員を強
 制的に降格、昇格させるのだ。

 「Jリーグ方式」のヒントとなったのは、クロネコヤマトの名で知られる宅配便のヤマト運
 輸の本社ヤマトホールディングスの人事システムだった。
  同社では、役員にも課長にも、管理職には全員、評価に順番がついている。たとえば役員
 が 10人いれば、1から10番までランクがある。そして、下位1割は、たとえ失点がな
 くても、自動的に入れ替えられるシステムになヮている。10人役員がいると、10番目の
 役員は降格し、代わって下から1人、新役員に抜擢されるわけだ。

  むろん、いったん下に落ちても、次の年に成績が良ければ、再ぴ役員に返り咲くことがで
 きる。このようなシステムが全管理職に適用されているのだ。
  この方式を導入する最大の目的は、強制降格することで必ずポストに空きか生じる状況を
 作り、そこに外部の民間人や有能な若手を登用することを可能にすることだ。上のポストか
 やかなければ、若手の抜擢、民間人の登用、などといくら声高に叫んだところで絵に描いた
 餅に終わってしまう。
  また、霞が関の役人は、「トコロテン人事」というぬるま湯で昇進してきた人か多いので、
 Jリーグ方式を導入すれば、官僚の大きな意識変革につなかるだろう。

                                     事務次官廃止で起きること

  公務員の最高ポストとしての事務次官ポストも廃止したほうがいい。
  自民党政権時代、各省の事務次官で構成する事務次官会議か、実質的に政策にふるいをか
 けていた。事務次官会議を通過しない政策は閣議には諮れないというおかしな慣習がまかり
 通っていたのだ.実質的にこれを破ったのは、安倍内閣のときに一度あるだけ。民主党政権
 に交代して、事務次官会議と事務次官の定例記者会見は廃山されたものの、事務次官のポス
 トはいまだに残っている。

  民主党政権では、その程度はともかく、大臣、副大臣、政務官の政務三役が実質的な省庁
 の司令塔として機能した。いや、正確にいえば、機能することになっていた。そして、省内
 の収りまとめや省外との調整は政務三役に一本化されるはずであった。
  官僚のトップである政務次官と政治家から選ばれた政務三役の二本立てになっているいま
 の制度は、双頭の蛇のようなもので、効率も悪いし、政治主導も円滑に進まない。民間企業
 にたとえれば、方針の戮なる社長が二人いるようなものだ。

  仮に、政治主導が貫徹できたとしても、組織として頂点に大臣、副大臣、政務官という小
 さなビラミッドがあり、その下に次官を頂点とする大きなピラミッドかぶら下がっている極
 めておかしな形だ。私はこれを「イカ型」と呼んでいる。「政と官の二階建てピラミッド」
 といっても良いだろう。まるで、政治家と事捕方が対峙しているようだ。まさにそれが、政
 治主導が行われてこなかったことを表している。
  事務方の意見を取りまとめてから政治家に送る、これが従来の官僚主導である。もし政務
 二役の方に直接、各局長がつけば、事務方が一致団結してサボタージュするという構図をか
 なり和らげることができるはずだ。分割して統治せよという政治の鉄則にもかなっている。

  もちろん官僚を最高意思決定機関に加えたいということもあるだろう。その場合は、その
 官僚を政務官にすればよい。
  もっとも、事務次官ポストを廃止すべきだなどと主張すれば、霞が関から袋叩きに遭う.
 官僚にとって最大の既得権益はポストだからだ、ゆえに霞が関は天下り先を作った者を評価
 し逆にポストを減らす改革は、何かあっても阻止しようとする。

  政務次官のポスト廃止に対する松強い抵抗は、民主党の方針転換を見れば分かる。200
 9年2月、当時民主党幹事長だった鳩山由紀夫前首相は、「(政権を奪取した暁には)各省
 の局長以上の官僚には、度辞表を出していただく」と、公務員剖度改依への意欲を表明して
 いたかすぐに発言を撤回した。
  政権誕生後、仙谷行政刷新担当相は、われわれの提案を、度は受け入れたのか、事務次官
 ポストの廃止に乗り気だったか、結局、官僚の抵抗に遭ってすぐに引っ込めてしまった。

  さらに、菅総理は2011年1月21日、官邸に各省庁の次官を集めて、政権交代後に逸
 めてきた「政治主導」について「現実の政治運営のなかでは、反省なり行き過ぎなり不十分
 なり、いろいろな問題があったことも事実だ」と述べ、さらに、「1年半を振り返り、より
 積極的な形での協力関係を作り上げていただきたい。政治家のルートと並行し、事務次官や
 局長のレベルでの調整が必要なのは当然だ」と官僚に擦り寄り、次官に助けを求めた。ここ
 まで来ると、国民も、開いた目が塞がらないだろう。
 結局、民主党には政治t導を行う実力がなかったということだろう。民主党は「政治打導」
 のやり方を少し修正しただけだといっているが、本当のことをいえば、国民に幻想を振りま
 いた「政治主導」は最初からどこにもなかつたのだ。序章で述べた通り、慨日本大震災でそ
 の欠陥が露呈するという、最悪の事態になってしまりた。

  第一に、そもそも民主党の閣僚には「政治主導」の意味か分かっていなかった。事務ルー
 トの調整を.切排除しようと思ったこと自体、それを示している。政務一役が.電卓を叩い
 て政治主導を演出しようなどと考えることも政治主導のはき違えだ。
  国民のために国家の進路を政治家か判断し、その実睨のために官僚をうまく使う。当たり
 前のことだ。しかし、実際は、事業仕分けやj算編成は財務官僚に丸投げするかと思えば、
 外交は官僚を無視して国益を損なうような失敗続き。政治主導が何なのか、まったく哲学か
 ないまま「政治主導」の言葉が躍っただけだった。

  第二に、民主党の閣僚はじめ政務三役には「政治主導」を行う実力がなかったということ
 だ。おそらく、仙谷氏たちはそのことを早い段階で察知し、政治主導はむずかしいと判断し
 たのではないか。だから、途中から官僚とうまく協調することを閣僚に促し、重要な場面で
 は、官房長官自らが各省の案件に垂り出して行く。それによって、なんとかして官僚支配に
 陥ることを避けようとした。そんな風に私には見える。

  ある政務三役が、「官僚の話を聞くと喘されるから話は問かない」というのを聞いて、こ
 んな人たちに任せて大丈夫かと不安な気持ちになった人も多いだろう。まさにそのときの嫌
 な予感が的中してしまった。


                         実は働かない幹部職員

  いずれにせよ、官僚個々人か自らの評価を認識できる仕組みが必要だ。現行の年功序列割
 は若手官僚にとって、幸せな制度になっているとはいいがたい。、
  各省庁に入省したキャリアの新人は、単線を走る蒸気機関車に乗り込んだようなものだ。
 この機関車にずっと乗っていれば、課長職という駅までは必ず到達する。その後は、駅に止
 まるたびに何人かが降ろさね、終着駅まで辿り着く乗客はたった一人。

  途中の駅で降ろされた人は、その後、支線に乗り換えるよう指示され、自分の意思とは別
 に行き先を決められる。そちらへは行きたくないと思っていても、自力で旅を続けるとなる
 と凍え死んでしまうのではないかという不安があり、拒否できない。民間の人々は新幹線や
 電卓に乗って旅をしている。いまさら、自分が彼らに追いつけるとも思えず、再び旧式の蒸
 気機関車に乗り換える直を選ぶ。

  若いときの自分は、人生を旅する能力は他の大よりずっとあったはずだ、どこで道を間違
 えてしまったのだろうか、と思う。笞えははっきりしている。乗った機関車か悪い。官僚の
 仕事は、もともと成果がはかりにくい、年功序列制なので、余計に成果は評価の基準にはな
 らない。霞が関の役所の評価基準は大きく分けるとI.つしかない。
  一つは労働時間、もう一つは先輩、そして自分の役所への忠誠心だ。霞か関では、仕事を
 効率的にやるという努力は無駄に終わる。だらだらとでもいいから、なるべく長く仕事をし
 たほうが勝ちだ。

  深夜、霞が関をタクシーで通ると、どの庁舎も煌々と灯りががいている・霞が関は不夜城・
 官僚は批判されているけれど、なんだかんだいって一生懸命働いているじやないか、と思わ
 れる人もいるだろう。
  だが、実態はお寒い限りだ。夜の9時頃から九時頃まで多くの幹部が席を外している。外
 部との打ち合わせと称して、酒を飲んでいるのだ。上司から「お前も来い」といわれれば、
 若手もついていくしかない。疲れているところヘアルコールが入るのだから酔いも回る。そ
 れでも、みんな戻って代参をする。

  私はアルコールを、滴も飲まないので、酔っ払いながらも仕事をやっている人を見ると、
 ある意味、凄いなと思うものの、その一方で、どう考えても実のある仕事ができるとは思え
 ない。仕事ははかどらず、気がついたときは、時計の針は零時を回っている。終電は終わっ
 ているので、タクシーを飛ばして帰るしかない。
 
 一時期、業者の接待は厳禁されて幹部の外出も一気に減った。「居酒屋タクシー」が問題に
 なり、深夜のタクシーの使用が議論されたこともあったが、ほとぼりが冷めると結局、昔と
 同様に各省庁の周りにはタクシーがずらりと並んで待っている。
  日々、このような生活を送っているのだから、日中の仕事も効率が上がらない。要は、だ
 らだらと仕事を続けているに過ぎないのだ。

  本来なら酒など飲みに行かず、さっさと仕事を片づけて帰宅し、家族との時間を持ったほ
 うがいいと考えている官僚も多いはずだが、そうならないのは、いかにサボりなから仕事を
 しているように見せられるかが、霞が関では重要であるからだ.。
  仮にこれを民間でやったらどうか。「私はこれほど長時間働いている。がんぼりを評価し
 てもらいたい」などといっても誰も相手にしない。逆に「それだけ働いて、たったこれっぽ
 っちの成果か」と、無能の焙印を押されてしまう。そもそも管理職がそんな無駄な残業は許
 さない。

  事業仕分けで廃止とされた分野があっても、役人がいうことを聞かないのは、指示を守っ
 ても霞か関ではまったく評価されないどころか、逆に×がつくからだ。
  普通の会社で社長がこうしろと命令したのに、どこ吹く風で無視したりすると、クビにな
 らないまでも評価はがた落ち。昇進は遅れるし、ことによっては給与もカットされる。だが、
 霞が関では大臣にいくら逆らっても、ペナルティはない。次官の意向に添っていればまず飛
 ばされない。前に説明した大臣・次官の双頭の体制になっているからだ。

  大臣あるいは内閣の意向に添った評価と信賞必罰の人事をセットで導入しなければならな
 大字を卒業した時点で、潜在的な能力か非常に高くても、原石は磨かなければ光らない。い
 まの霞か関の制度は、せっかく秘めていた能力を花咲かせるどころか、伸び悩ませるシステ
 ムになっている。前にもいった通り、霞が開は人材の墓場」なのである。
  これを正常な・評価システムに変えれば、途中下車の道も開ける。民間でも十分やれそう
 だという手ごたえを感じた人は、残るよりも辞めたほうが得だと思うケースも出てくる。天
 下りなどに頼らず、早期退職するという選択肢が増えたほうが、官僚という職業の魅力も増
 す。


ここまで、読み終えて、官僚機構の評価方法(基準)って何だろうと考え、「理想的な官僚とは、
憤怒も不公平もなく、さらに憎しみも激情もなく、愛も熱狂もなく、ひたすら義務に従う人間の
ことである」のマックス・ウェーバーの「ひたすら義務に従う人間」」を考えたが難しいという
思いが残った。


                                    この項つづく

 

 

 

空間情報地震予知工学

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    時と潮流は人を待たない。 /   ウォルター・スコット

 




● 空間情報地震予知工学: 村井式GPS地震予測法

GPS地震予測で有名な村井俊治東京大学名誉教授が、6月7日に再びフジテレビ「Mr,サンデ
ー」に出演していた。テレビ放送では、村井教授が発行しているメールマガジン「最新MEGA
地震予測」で、先月多発した地震のすべてを予測。4月の取材の際も 「南関東、今非常に注意し
ている、震度5以上はくる」と断言。5月20日のメルマガで父島で地震発生を予測すると10日後
の5月30日に小笠原諸島西北沖地震が発生。彼の予測方法はGPS電波や電子基準点などを使用
し地震測定を行なう。メルマガから彼の予測を検証し、25回中、22日回の地震を予測。予測が外
ずれた3つの地震について、国土地理院の2週間遅れの観測データでは間に合わないケースであ
ったとし、リアルタイムデータが欲しいと発言。今年4月、新たに三次元解析法を使い7回中4
回を的中させている。これまで2週間後にしか知ることが出来なかった電子基準点の位置情報デー
タを国土地理院は12日間を短縮しデータ提供。今後の地震について、南海・東南海地方・奥羽
山脈周辺と、日本海側などを警戒。さらに、関東地方にある危険な兆候は消えておらず、さらな
る大地震の起きる可能性があると発言。

 

番組では、村井教授の的中率が90%近い値で、これほどの実績があるのなら「GPS地震予測
法」の開発を進める必要があると提案している。関連国家予算が10年間で2千億、年間200
億円の投じられていると聞く。位置変動センサの配置の最適化や三次元情報データのリアルタイ
ム解析化に、「緊急の予算執行してでも、現在の地殻変動に対する観測研究・防災研究を大至急
実施するべきだ」(「小笠原沖M8.5の謎」2015.05.31)とブログ掲載した費用ぐらいかければ
3年程度で「瞬時位置変動三次元解析システム」ば完成するだろう。そして、わたしというと、
教授の近著『地震は必ず予測できる!』(電子ブック)の購読手配を済ませた。ところで、<村井
式GPS地震予測法>なるものが、"凄い”と思えることは、「地殻表面位置変動現象学」とでも
言えることが、デジタル革命渦論の基本特性に合致・収斂しているところで、時代感覚にヒット
すところがそう思わせる。実に面白い。



  

 

 



● イタリアン野外料理: ヒメマスの燻製

武骨な釣り人とはおよそ正反対の端麗な魚。この美味なる魚を味わうにはリンゴのチップしかな
い。下味は塩だけの漬け込み液にリンゴの皮を入れ燻製すれば、野性的にして上手い絶品が完成。
準備するもの:水 1リットル、塩 150グラム、リンゴの皮 1個分、リンゴのチップ 適
宜。つくり方:(1)塩を加えてから3分間沸騰させ、火を止めてからUンゴの皮を入れて冷ま
し、(2)この中に魚を浸し、8時間おく。塩抜きは流水で15~30分、風乾は2~3時間。魚の
大きさ、脂のつき具合で漬け込み時間や塩抜きを調整しよう。煉煙器はステンレス製の深いバッ
トに金網をのせたシンプルなもので十分。

野外料理は当面できそうもないと諦めているが、休憩の合間、野外料理の本をみたり、家庭内ジ
ムを行っている間は、双方とも結構リラックスできるが、特にアウトドア・ークッキング本は、
イメージだけ身体解放させてくれるから面白い。


 


● 最新の太陽光発電技術

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が、発電コスト目標を実現
するため、高性能と高信頼性を両立した太陽電池の開発に着手し、14円/キロワットアワーを
実現する太陽電池モジュールを2020年までに実用化、2030年までに7円/キロワットアワーを実
現する要素技術確立方針を打ち出していることは、『反スピノザの条理』(2015.06.08)で紹介
した通りだが、その中で3つの技術開発課題がある。(1)まず、先端複合技術型シリコン太陽
電池、(2)つぎに、超高効率・低コストⅢ-Ⅴ化合物太陽電池、(3)そして、低コストペロ
ブスカイト太陽電池の3つである。5月から関係する新規考案の調査が滞っていたのでリサーチ
する。今回は小振りだったが、下図の「特開2015-106684 太陽光発電システム 三菱電機株式会社
」は、筒状体とし、モジュール設置密度を高めた幾何学的配置(四角筒、三角筒など)により、
太陽光発電システムの設置面積、および、敷地幅を小さくした上で、光学ユニットにより、筒状
体の内側面に配された発電部の第2の面に光を導くようにしているため、設置面積に対して高効
率の発電が可能になるという提案である。つまり、平屋根などに、強風対策を施し設置するだけ
で効率良く太陽光をエネルギー変換できるという設計思想が面白いが、すでによく似た特許が考
案されている。

 特開2015-106684

10  両面発電型太陽電池モジュール、20 光伝達管、40 集光器、200 光学ユニット、
41a~41d  反射板


下図は「特開2015-088679 量子ドット構造体、量子ドット構造体の製造方法および量子ドット構
造体を用いた太陽電池モジュール シャープ株式会社
」の特許公開された、量子ドット型太陽電
池の製造プロセス案件で、量子ドット構造体は、球状の微粒子の表面に複数の膜を重ねた積層膜
で形成された積層膜中に量子ドットを配列、このため量子ドット構造体を作製で、(1)真空装
置の大型化を防ぎ、低コストの量子ドット構造体を作製できる。(2)また、太陽電池モジュー
ルは、量子ドット構造体を含む材料を受光面側あるいは裏面側に配置した構造としたため変換効
率が高く、低コストを実現できるが、量子ドット構造体を配置するために大型の真空装置を用い
る必要としないというもの。なお、太陽電池セルの受光面側または裏面側の少なくともいずれか
一方に量子ドット構造体を含むアクリルモノマー層を配置したことを特徴としたモジュールであ
る。

特開2015-088679

1  微粒子   2  積層膜   3  量子ドット   4  シリコン酸化物膜   5  受光面保護層   6  受光面側
封止層   7  裏面側封止層   8  裏面保護層   9  太陽電池セル   10  量子ドット構造体 

前者の案件は、光集光方法に、後者は量子ドットの変換素子の高密度配置によるコストダウン方法に特
徴をもっている。 この2例を入れ、全部で12例をリサーチし下記にアドレス掲載した。

※ オールソーラーシステム code No.20150609_01「特集|最新光電変換素子技術

   

【日本の政治史論 30:政体と中枢】    

「古賀の乱ってなんだ "I am not ABE  " 」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。  

  福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)   

                             古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』  

   目 次     

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策  

  第4章 役人たちが暴走する仕組み    

                         政治が無脳のとき役人は
 
  現在は非常時なので、こうした改殖を一気呵成に進めると同時に、大胆なリストラを断行
 しなければならない。
  事業仕分けで今後、無駄な事業はどんどん削られていくはずである。当然、ポストも減っ
 ていく。だからといって、余剰人員を抱えておく余裕はまったくない。必然的に公務員のリ
 ストラが避けられない。
  公務員は身分を保障されている代わりに、スト権、協約締結陸など、労働胚有権の一部を
 制限されている.民間企業のような雇用保険もない。

  いざリストラをするとなれば、公務員の身分保障と労働基本権の付与をセットで考えなけ
 ればならないわけで、その際、問題になるのか雇用保険だ。公務員に雇用保険をかけるとな
 ると、国か雇用主として半分負担することになり、区割の財源が要る。これでは、リストラ
 したところで、かえってマイナスになるのではないか、という議論が出てくる。
  しかし、私は方法はあると思っている。いまでも退職金は支給されるので、失業しても当
 面の生活費には困らない。そうであれば、退職金の上積みと全額国費による少額の失業手当
 を組み合わせるなど、知恵はいくらでもあるはずだ。

  こう書くと、それは無理だという議論が噴出するだろう。要するにリストラを阻止するた
 めに百でも2百でも理屈が出てくる。役人かもっとも得意とする「できないという屁理屈」
 の典型である。政権がやる気になれば、できないことはないはずだ。
  ただし、政治が無傷ては、役人は痛みを伴う公務員制度改革を受け入れないだろう。公務
 員制度改革を進める前に政治の指導層が先頭に立つ姿勢を示す必要がある。

  たとえば、議員定数の大幅削減と同時に、議員歳費の50パーセント削減を実施する。そ
 れに続いて公務員の幹部職員の給りも30パーセント程度は削る。
  もちろん、議員定数をリストラの観点で議論するというのは邪道だろう。本来は、議会制
 民主主義を実現するために必要な制度設計の.環として議員定数も議論されるべきだ。しか
 し、そんな正論はで平時の議論だ。国の存亡に関わる改革を進めるためにやむを得ない犠牲
 だと考えて実施するべきだろう。

  東日本大震災で、さらに日本は追い詰められた。これ以kの危機はない。逆にいえば、こ
 れだけの危機に直面tれば、これ以L政治家が自らの利益を優先することはないのではない
 か――そう期待したい。
  しかし、院主党が準備したのは、議員歳費をわずか半年間で.20パーセントカットする
 というもの。年でいえばたったの15パーセントだ。なぜ半年間などと区切るのか、その神
 経か分からない。
  これでは民間の痛みが分かっていないといわれても仕方がない。公務員給与を恒久的に10
 パーセントカットする方向が打ち出されたが、議員歳費のカットはわずか半年だけ――これ
 では、その実現は覚束ないのではないか。
  日本には、一刻の猶予も残されていない。

  終章 起死回生の策

                             「政府閉鎖」が起こる日

  私は、いまの日参は非常嘔態に突入していると、警匈を発し続けてきた。そう聞いても、
 どこが非常事態なのか、と思う読者もいるに違いない。短気が悪く、学生の就職口がないと
 いっても、大方の日本人は日々の暮らしには困っていない。生活のレベルも、悲惨というほ
 どではない。
  しかし、現状がそこそこであっても、日本か急激に衰退への道を辿っているのは紛れもな
 い事実だ。
  GDP世界第二位の座はすでに中国に奪われた。中国の人口は日本の10倍以上だから、
 GDPで抜かれるのは仕方がない。では、国民一人当たりのGDPはどうか。こちらはもっ
 と悲惨だ.

  先進国の集まりであるOECD30ヵ国の比較では、購買力予価で見て、1993年の2
 位をピークに、ここ数年急落してきた。1998年には6位まで落ち、2000年3位と少
 し回復するも、後は秋の日のつるべ落とし。2001年には5位まで後退し、2004年
 12位、2007年にはシンガポールにも抜かれ、22位まで下降、国民一人当たりのGD
 Pでも、 アジア・ナンバーワンとはいえなくなった。
  いまは、円高なので2008年には17位まで持ち直したようだが、OECD平均均より
 も低いのか現状だ。日本の下には韓国、トルコ、メキシコ、スロパキア、チェコ、ボーラン
 ド、ハンガリー、ギリシャ、ポルトガルなどが載んでいるが、これらの国は普通の日本人の
 感覚では先進国と呼んで良いのか疑問がある国々である。それらを除けばビリから何番目と
 いう水準だ.

  それにしても凄まじい凋落ぷりである。もはや日本は、世界有数の経済大国だと胸を張っ
 ていえる状況ではなくなった。先進国と呼べなくなる日も近いかもしれない。
  ここで使った購買力平価とは、一河でいえば『二つの通貨がそれぞれの国内で商品やサー
 ビスをどれだけ購買できるかという比率で、生活のレベルを比べるのに適しているとされて
 いる。
  たとえば、日本でマクドナルドのハンバーガーが、200円で、アメリカではドルだつた
 と仮定しよう。購買力平価では比率、200対1となる。この場合、月給20万円の日本人
 と月給1000ドルのアメリカ人はほぽ同程度の豊かさを実感している。
  為替レートは1ドル、約80円。この為替レートで比べれば、アメリカ人に対して日本人
 はけっこう収入がある計算になるが、生活のレベルを購買力平価で比べると、日本人のほう
 がはるかに貧しい。

  日本経済の長期的な先行きを見ても、明るい材料はほとんどない。経済成長を促す三大要
 素は、人とカネと生産性で、今人口が増えている国では、その分消費が伸びていくし、労働
 人口も増加していく。これを人ロボーナスという。貯蓄率も高く、国内の資金を用いて企業
 は設備投資し、人を屈い、事業を拡大するという好循環になる。これに匍えて生産性が向上
 すれば、高い経済成長率が達成できる。

  現在、日本では少f叱に出止めがかからず、人ロが毎年、減っている。少1化対策はいま
 からやってもその効果が出るのはかなり先のことで、今後しばらく人口は減り続けるしかな
 い。人口ボーナスとは逆の効果だ。これを人ロオーナスと呼んでいる。
  カネも余っているようで、実はそんなに余裕はなくなってきている。政府の借全て個人金
 融資産をすべて食いつぷすのも時間の問題。さらに、高齢者の割合が増えて、長期的には貯
 蓄率も下がっていくと予測される。人もカネもマイナスになっていくのだ。

  残るは生産性だけ。人とカネのマイナス分を楠って余りあるほどの生産性向上を達成でき
 れば、経済成長はできないことはないが、これにも限界がある。
  なぜなら、いまと同じことを続けていては生産性は上からないか、大きな変革をしようと
 しても既得権者が幅を利かせて、それができない。これでは、どんなにがんばっても、せい
 ぜいマイナス分を帳消しにするくらいの向上しか見込めないかもしれない、その場合、ゼロ
 成長でもやむを得ないということになる。
  こうした状況から、日本の潜在成長率は18パーセント台前後だという認識が広がってい
 たが、最近では1パーセントもないのではという悲観的な見方さえ強まっている。

  財政破綻するのではだめだ、なんとか回避する方法はないか。こう考えて、さらに知恵を
 絞っても、政府には増税でなんとかしようという知懲しかない。パリバリの増税論者である
 与謝野馨氏が、自民党政権でも民主党政権でも経済財政政策担当大臣を務めたことが、それ
 を証明している。
  増税で国民から金を集めて増大する社会保障に充てる、そのうえでさらに借金を減らそう
 と思えば、消費税は30パーセントになり、経済は縮小しながら国民は利を寄せ合って耐え
 ていく――こういう将来しか見えない。

  このままでは今後も凋落現象には歯止めがかからないわけで、いま、そこそこの生活をし
 ていても、10年後には町には失業者か溢れ、経済的困窮から犯罪者が増え、治安も悪いと
 いう悲惨な国になっている吋能性は非常に高い。
  現在、日本は危急存亡の危機に面しているといっても過言ではない。大震災でますます追
 い詰められた。
  いま何もしなければ、確実に日本は世界のなかで埋もれていく。それどころか数年以内に、
 歳入の不足で行政かストッブする「政府閉鎖」という事態にもなりかねない。分水嶺に立た
 されているいまこそ、非常有態であることを認識し、対策を考えなければ、滅ぴへの道が避
 けられなくなる。


               増税主義の悲劇、「疎い」総理を持つ不幸

  ここで私がいいたいのは、もちろん、「日本経済が危機的状況だから一日も早く増税して
 税収を増やし、それによって財政赤字を縮小しよう」「増大する社会保障費を賄うことがで
 きないから早く増税をして安心社会を実現しよう」などということではない。
  むしろ、その逆で、安易に増税に頼ってはいけないということである。もちろん単に増税
 反対と唱えろつもりもない。いいたいのは、「将来どうするのか`という全体像を描かなけ
 ればならない」ということだ。そう簡単にそれが描けるはずはないが、増税すればすべてが
 解決するというのは錯覚に過ぎない。

  真実は、「なんとかして成長しないと破綻への道から抜け出せない」というところにある。
  少し考えてみれば分かることだ。消費税増税ですべてを解決しようとすれば、当面10パ
 ーセントなどというレベルでは足りない。15パーセントにしてもやはり当座しのぎである。
 これから高齢化による社会保障費の増加だけか問題というわけではない。
  実は、高度経済成員間以来作り続けてきたインフラが一気に老朽化し始める。その維持更
 新だけでも、公共参架蔵が現在の何倍も必要だという試算もある。将来金利が上昇すればさ
 らに負担も増える。

  累積債務を少しずつ減らすところまで持っていくには、消費税25パーセントの世界がや
 つてくるだろう。一生懸命働いても、収入の何割かを所得税・社会保険料て取られて、さら
 にお金を使うときにもこ五パーセントの消費税がかかる。単純計算で考えても、25パーセ
 ントの消費税がかかるということは.8パーセント分の消費か滅るということだ。
  こんなことでは、これを20年やったとしても毎年の経済成長はほとんどゼロ。それどこ
 ろかデフレから脱却できず、いずれ破綻への道を歩むことになるだろう。

  2011年に入って、アメリカの格付け会社スタンダード&ブアーズの日本国債格ドげや、
 ムーディーズの格下げ可能性が伝えられた。菅総理が「こういうことには疎いので」と発言
 して世界中に日本の恥を晒すことになったか、他方、「経済一通」といわれる与謝野氏は、
 待ってましたとばかりに「消費税増税を促された」という趣旨の発言をした。
  しかし、これこそ我田引水の極致だ。そもそも、格付け会社の行動にそんなに大騒ぎする
 こと自体がおかしい。それを増税の口実に使おうというのはさらにレベルが低いとしかいい
 ようがない。なにしろリーマン・ショックを引き起こしたサブブライムローンの賂付けに失
 敗した会社なのである。

  そもそもスタンダード&ブアーズのたった一枚の日本語プレスリリースを見ると、「増税」
 という言葉は一度も出てこない。そこで触れられているのは、2004年の社会保障改革を
 上回るような改革か必要だ、というのが1つ。2000年代前半に匹敵する財政再建、そに
 加えて成長率の向上策が実現できれば格上げもあり得る、というのがもう一つ。この「20
 00年代前半の改革」というのは、いわゆる「小泉構造改革」を指す。当時の財政再建は増
 税ではなく、歳出の見直しと成長戦略か2本柱たった。あのときは経済が成長していたので
 税収も仲びたのである。

  いま40兆円しかない税取も、1990年度のピーク時には60兆円あったし、過去10
 年のピークだった2007年度にも51兆円はあった元気な頃の日本経済に戻れば、10兆
 円から20兆円は増える。とすれば、経済を元気にする道を考えないといけない。ては、ど
 うしたら良いか。
  過去、各国か不況から抜け出すために打ったマクロの経済政策や、危機に陥って財政再建
 した歴史の教訓を砥ると、増税中心で成功している国はほとんどない。政府の収入があれば
 あるほど支出か緩くなってしまうからだ。

  もちろんどこかの段階で増税は必要かもしれない。歳出カットや社会保障改革、成長戦略
 も必要という点て、やらなくてはいけない個々の経済政策については、誰も異論はない.重
 要なのは経済政策を展開する順番だ。
  経済学的に見れば、現在の日本で「まず増税」というのはあり得ない。こんなことをいう
 人は経済音痴といわれても仕方がない。

                                                      この項つづく 

 

 

 

 

バラとカモミールのバスボム

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    カモミールの苗床のごとく、踏まれるたびに成長せよ。

                                               ドイツ地方の古訓

 

最近は寝所ではなく書斎のソファで睡眠をとっている。今朝も、目を覚ますと彼女がカーテンを
あけながら、部屋が少しくさいから掃き出し窓をあけるわよと言う。そうか加齢臭がいやなのか
と言うひと悶着があった後、朝食をすませカモミールを摘み取り輪ゴムで束ね、そのままビール
のガラスジョッキーに挿し入れ、作業に入り、下の息子が買ったという鉄火巻きを昼食に頂き、
しばらく作業を再開するがさすが三時を過ぎると疲れ、休憩がてら、いつものローイングジムを
開始すると、部屋中にアップルミントとは違う、ほの甘い林檎の香りが立ちこめていることに気
づき、台所で食器を洗っている彼女に洗剤のアロマではないかとたずねると、否うとの返事で、
そうかカモミールだったのかと考えていると、小さな虫が部屋に持ち込むから気をつけてと釘を
さすので、今度は陰干しポプリにしようかと言うと、それもいいんじゃないと応える。

 

そこで、ネットをみていると、バラとカモミールのバスボム(入浴剤)のレシピが紹介されてい
た。それによると、ボール、金型、ハーブエッセンシャルオイル、グリッターに、バラのとカモ
ミールのポプリなどを準備しつくるという(下写真)。へぇ~こんな楽しい世界もあるのだと感
心。

重炭酸塩ソーダー 1カップ半 クエン酸  1/2カップ スイートアーモンドオイル、グレープシードオイル、オリーブオイルなど 大さじ2杯 乾燥したバラの花びら 一握り 乾燥カモミール 一握り ローズの精油 ラベンダーの精油

  

   

【日本の政治史論 31:政体と中枢】    

「古賀の乱ってなんだ "I am not ABE  " 」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。    

  福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)  

                             古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』   


    終章 起死回生の策
                                      財務官僚は経済が分かっているのか 

  日本の状況を考えると、最初に力を入れなければならないのはデフレ対策だ。デフレがす
 べての経済活動を停滞させている大きな原因だ。来年物価が下がるだろうと思っている人が
 多数派なら、何を買うにしてももう少し先延ばしにしようと思う。物価が下かって景気が悪
 いから給料も増えない。企業だって、なにも不景気なのに投資する必要はないと考える,
  毎年.1パーセントも物価が下がっているのは世界でも日本だけだ。
 もしデフレが解消して、「来年は物価が下がりそうだとなれば、経済の成長も絵か描けるよ
 うになる。投資や消費も活発になり、資産価格は将来の期待の問題だから、土地の価格も場
 所によっては上がるようになる。

  そうなれば、国の保有資産もどんどん売ればいい。いまだに財務省の天下り先確保のため
 に、JTの株を持っているなんてちょつと信じられない話だ。それも売りに出せる。
  資産売却の関連でいえば、東日本人震災の復興対策で国債を発行する際に、公務員宿舎や
 独立行政法人の資産を償還財源とすることを提案したい。10年物国債で30兆円発行する
 なら30兆円分の国の資産を10年以内に売却して、残高の増加かなくなることを保証する
 のだ。

  こうすれば、震災を奇貨として増税しようという動きへの牽制にもなる。
 さらには数百兆円の資産売却計画を発表し、10年後には国債発行残高を百兆円以上減らす
 ことを宣.一白するというのも一案だ。国債残高が10000兆円を超えると大騒ぎしてい
 る人々は、これですいぶん安心するだろう。無駄な利息の支払いも減り、金利上昇局面に対
 する備えにもなろう。

  デフレを解消して、資産を売りに出して、それと同時に成長戦略を描く。世界のどの国よ
 りも早く成長分野に手をつけて、国全体の経済の成長率を押し上げる必要がある。
  かといって、成長戦略を考えてなんらかの成長分野に補助金を出すとか、研究開発のため
 の大減税をするとか、そういった「ばら撒き行政」的なことも財政的には許されない。新し
 い産業や成長分野は、民間主導でがんばつて切り開いていくしかない。
  だからこそ、自由な企業活動のための「開国」、すなわちTPP(環太平洋洋戦略的経済
 連携協定)への参加が必要だ。いままでタブーだった改革であっても思い切ってやるしかな
 い。農業でも医療でも保育でも、基本的には民間でなんでもできる仕組みを作るからがんば
 ってくれという戦略と、それを信じてもらうメッセージが必要になるのだ。

 電子レセプトとは

  また、「一体改革」というからには、入るほうだけでなく出るほう、つまり社会保障の効
 率化も不可避だ。ところが、民主党政権では、たとえば医療の効率化を進めるためのレセプ
 トの電子化も止まっていた。こうした社会保障の効率化も思い切って進める。
  そうした全体像、全体の政策パッケージがあるなら、消費税増税の議論もどんどんすれば
 いい。税といっても消費税だけでなく、たとえば相続税改革などを含めた税制全体の議論も
 必要だ。全体を改革するなかで、「景気回復と経済成長がうまくいけば、消費税は10パー
 セントで済むかもしれない、うまくいかなくてもご5パ-セントで済みそうだ」といった将
 来像を描ければ、国民も納得する。


ここで、著者は「自由な企業活動のための「開国」、すなわちTPP(環太平洋洋戦略的経済連
携協定)への参加が必要だ・・・・・・」と述べているが、日米経済構造協議の"半導体不平等条約"の
ように、またTPPでの米国の自動車関税圧力や遺伝子組み換え農産物のように、「経済的自由」
と「政治的自由」とは異なることを峻別できなければ、単なる脇の甘い原理主義的主張に過ぎな
いのではと考える。


  では、こうした全体像を淮が描くのか。これまでは、日本経済が高度成長に乗って順調に
 発展してきた仕組みに、旧大蔵省・則務省も含めて、みんな安心しきつて乗っていた。財務
 省だけか悪いのではなく、官僚も政治家も、政治家を選んでいる国民も、油断していた。私
 は、財務省が強力に主導して今日に至ったということより、財務省が本当に問題を分かって
 いたのかということのほうが不安だ。

  財務省の官僚たちは、2010年末の予算編成の過程でも上手にシナリオを作り、増税の
 ための説明資料をきれいに準備して、2012年度以降の増税は絶対に不可避です」という
 イメージ作りを.生懸命やっていた。でも、彼らの議論を聞いていると、「この人たちは本
 当に経済のことが分かっているのか」という不安か大きくなる一方だ。

  一つには、先ほども何度もいったように、成長戦略への言及がほとんどない。国の財布を
 預かっているから自然と堅め堅めに見積もるメンタリティーかあろのは分かるが、増税だけ
 で1000兆円の借金の問題を解決しようとしているのではないか、という疑念が拭い切れ
 ない。
  消費税は広く薄く徴収するので抵抗が少なく、他の税に比べれば増税しやすいし、歳出を
 削るのに比べれば批判の声も少ないかもしれないという考えがあるのだろう。

  財務省がこうした袋小路に入り込んでいるとすれば、政治家が全体の絵を描く必要性はま
 すます高まっている。各省庁がばらばらにやってもうまくいくはずがない。全体の絵を描く
 ために、財務省や経産省、内閣府など各省庁をコーディネートして動かす必要がある。いま
 ほど霞か関を超える目を持って、全体を勣かすことのできる政治家の能力が問われていると
 きはない。
  霞が関の内外でいろいろな議論を聞いていると、役人の議論そのものに限界がある部分が
 見えてくる。やはり役人にばかり頼って政策を作る現状を変えなければいけない。

                       若者は社会保険料も税金も払うな 

  ここで、少し視点を変えて、若い人の立場に立って日本の将来を見てみたい。
  経済財政政策担当大臣になった与謝野氏は、就任直後に、いまかんばって税金を払ってお
 けば将来しっかり戻ってくろという安心感があれば、国民にも納得してもらえる、というよ
 うな趣旨の発言をした。消費税増税について、テレビ局が街頭インタビューすると、多くの
 人が、将来が心配だから増税は仕方ない、といっているのを見る。

  しかし、この考え方は根本的に間違っている。民主党政権がいったことは、「社会保障費
 かどんどん増えていく、さらにこれを充実させたい、そのためにはお金が足りない、だから
 税制と社会保障の見直しをして、どうしたらいいか考える」ということ。要するに、いまの
 お年寄りのために払うお金を工面するために増税させてくれといつたのである。

  日本の年金は賦課方式である。つまり、今年の年金は今年の保険料収入と税金で支払うと
 いうもの。積みきて方式だと思っている人が多いから、’-いま払っておけば将来戻ってく
 る」という発想になるが、そうではない.いまのお年寄りか払った年金保険料や過去の税金
 はほとんど使ってしまった。今年必要な年余は今年の保険料と今年の税金で支払わなければ
 ならないのだ。

  これを理解している人は、驚くほど少ない。自分が払った保険料はしっかり貯金されてい
 ると思っている人か多いのだ。政府もわざとそう思わせているのではないかと私は疑ってい
 る。もし仮に、若い人に、「あなたが払った保険料や税金は、すべて今年お年寄りのために
 使ってしまいます」といったら、若者は梁たして保険料を払うだろうか。

 「じやあ、僕たちの年金は誰が払ってくれるの?」「それは40年後の若い人たちです」「
 だって、その頃若い人はもつと減ってるんでしょ」「だから、税金をどんどん上げるんです
 よ」「いまだって、僕たちギリギリの生活だよ。その頃の若者はもつと苦しくなってるんだ
 から、払ってもらえるはずないじやない」「だから、政府は成長戦略で経済成長を確保しよ
 うとしています。将来の日本はバラ色ですから、私たちを信じて、いまたくさん保険料や税
 金を納めてください」「成長戦略?冗談じやないよ。そんなもの当てになるか。何をやるに
 も年寄りや農家や中小企業経営者やできの悪い大企業、それに組織労働者を守るだけで、ど
 うやって成長するというんだい。誰もそんなもの信じてなんかいないよ」「……」「もう保
 険料なんか払わない。税金も払いたくない。その分自分で貯金して、中国やインドの昧でも
 買っておいたほうかよっぽど安心だ。少なくとも消えてなくなるなんてことはないからね」
  ――こういうことになるのではないか。

  しかし、実はこれは若者としては極めて正しい答えだと恩う。彼らから見れば、社会保険
 料を払わない、増税にも応じない、それが正しい答えだ。
  それは企業のことを考えてみれば分かる。普通の企業なら次のようにするだろう。
  構造的な問題で業績は簡単には回復しない。借金は山のように積み上がり返す当てはない。
  しかし、いまならまだ望みか完全に断たれたわけではない。ならば、会社更生法を申請し
 て思い切ったリストラを行い、債権者にお願いして借金の一部を棒引さしてもらおう。それ
 で身軽になれば、新たにスポンサーとして出資してくれる企業も出る。債晦昔の理解を得る
 ためには年金債務のカットもやむを得ない。

  そう、日参航空が殼近たどった道筋である。若者は、将来の日本の株主として税金や保険
 料を強制的に徴収される、いわば出資者である。彼らから見れば、日本が破綻して、IMF
 が乗り込んで、公務員を削減、無駄な既得権保護の補助金をカットし、年金の飼を引き下げ、
 支給開始年齢を引きヒげるなどの改革をやってもらったほうが得だ。
 
   つまり、本来はこれと同じことを政府がやらなければいけない。
  年金をはじめとした社会保障改苓。支給開始年齢の引きトげはもちろん、裕福な層を中心
 に支給額も引きドげるべきだ。医療も高齢者だからと無条件に優遇するやりゐはやめなけれ
 ばならない。医師会がいくら反対しても、レセプトの電子化を直ちに義務化し、株式会社の
 医療参入も認めるなどの改革を行う。
  農家だから、中小企業だから、紙鳶だからという助成策はすべてやめろ,
  公務員は大幅削減、給与も民間以七にカットする、天下り団体は廃止する。
  新たな産業を件ばすためにタブーとなっている改革もすべて直ちに実施する。農業を例に
 取れば、農業への昧武会社の参入を完全自由化する、休耕地への課税を強化する、農地の転
 用を厳格に禁止する、TPPに参加して、たとえ時間をかけても例外なく関税を撤廃する…
 …… 若い人たちにとつてみれば、こうした血を流す改革を実行して、30年後の日本の経
 済か万全だということを保証することこそが、真の社会保障だ。税金を上げます、だから安
 心だ、などという政策はまやかし以外の何物でもない。

  消費脱牢は一当面10パーセント」と自民党がいった。「当面」とはどういう意味か。つ
 まり、もっと上げます」といっているのである。それに菅総理は飛びついた。
 
  放蕩息子が家に帰ってきて、こういう。
 「母さん、金がなくなったから、『とりあえず』10万円くれない」
 「あんた、何いってるの、仕事するっていってたのはどうなったの。ちゃんと稼ぐこと考え
 ないとだめじゃない」と母。
  息子はこう開き直る。
 「仕事のことはいろいろとむずかしくてさ。でも今年中にはなんとか探すからさ。それより
 も、急がないとサラ金の取り立てか厳しくて、違約金でどんどん借金が膨らんでるんだよ。
 そのうち家にも取り立てに末ちやうかもしれないよ。そうならないようにさ、とりあえず
 10万でいいからさ。早く出してよ」

  いま日本で起きていることは、まさにこれだ。まず、稼ぐことを考えなければいけないの
 に、国民に危機感を煽って、「とりあえず」の増税を受け入れさせようとしているのである。
  若い人から見れば、増税を決める前に椋ぐための痛みを伴う改革を決めるべきだ、となる。
 もちろん、血が流れる改革だから命がけだ。しかし、それにこそ政治家は政治生命を賭けな
 ければならない。
  だが、菅総理は何を間遼ったのか、増税に政治生命を賭けてしまったようだ。まったく経
 済が分かっていないとしかいいようかない。

                               「最小不幸社会」は最悪の政治メッセージ

  とはいえ、悲観してはいけない。不安だけを膨らませ、後ろ向きになると、衰退が早まる。
 私がもっとも懸念しているのも、日本人に蔓延しつつある縮小の思考回路だ。中国をはじめ
 とするアジアの国々に猛追され、いま、日本人は自信を失い、競争をすると負けるのではな
 いかという不安に怯えて、萎縮している。すると、どうなるか。
 
  リーマン・ショックが世界を覆う前、欧米の投資家が投資先を求めて、日本を訪問しにき
 たことがあった。日本は復活してきた。しかも、中国をはじめとする伸び盛りの市場か近く
 に控えている。日本は高い技術も持っているし、資金力もある。中国とは古くからの歴史的
 関係を築いており、同じ漢字を使っている。今後、日本経済は再び急上昇し始める司能性か
 高い。だから、そろそろポートフォリオを変えて日本に本格的に投資しようかと考え、現地
 で調査したいというのか彼らの来日目的だった。

  しかし、日本本に来てみると、会う日本人、会う日本人、「もう日本経済はだめだ」と賠
 い顔をする,自分たちの国はアジアで商売したいが遠い。言葉もまったく違うし、資金的に
 も限りがある。日本は羨ましいと思っていたら、当の日本人が自分たちの見方を打ち消す。
  彼らは本当に日本経済はもうだめなのかと思い、日本への投資から徐々にを引いていった。
 実際に、欧米の投資家たちが来日した前後、日本の株価は少し上がったが、その後、また低
 迷を始めた。

  逆にいえば、われわれ日本人が元気を取り戻し、これから日本は再び成員軌道に乗るに達
 いないという期待感を世界の国々に抱かせるだけでも、海外からの投資は増え、日本経済は
 活気づく。ところが、まだGDP三位の経済規模と世界最高水準の技術と人材、有数の資産
 を持っていながら、日本人はみな塞ぎ込んでいる。メンタル・デフレという言葉があるが、
 まさにぴったりだ。

   これはメンタリティの問題なので一朝一夕には変わらないが、政治と行政にも責任がある。
  いい例が、菅総理の基本方針、「(最小》《不幸》社会」だ。ネガティブな言葉を二つ重
 ねたこの原語には、この国はこれ以上発展しないというイメージがある。ジリ貧の方向性こ
 そ最大の危機になっている、この時期の政治のメッセージとしては最悪だ。
  子ども手当や農家の戸別所得補償にしても、子供を持つ親の苦しい家計を助ける、弱い農
 家も救ってあげるから大丈夫という後ろ向きのイメージしかない。
  法人税5パーセント減税を実施するのはいいか、そのそばから終始見直しで増税する。こ
 れでは景気に温水をかけた後に、氷水をぶっかけるようなものだ。

  仮に菅総理が、
 「これからはビジネス、ビジネスで行こう。国民みんなで金儲けしようではないか。そこら
 じゆうにチャンスは転がっている。日本にはこんなに高い先端技術がある。優秀な人材もい
 る。使いきれていないカネもまだまだある。みんなが思い切り活躍できろように、政府は聖
 域なき改革に邁進する。だから、自信を持ってみなさん一人ひとりがチャレンジしてもらい
 たい。そして、企業はたくさん稼いで、働く人は給料をたくさんもらおう。株にも投資して、
 さらに資産を増やそう!もし、挑戦してそれで倒れたときは政府が責任を持って助ける」
 と力説し、「最大幸福社会」の構築を目指すとぷちあげれば、国民の意識が変わっていただ
 けではなく、世界も日本を見直していただろう。政治か内向きで、しかも混乱し、世界を見
 いないのでは、国民の意識も変わりようがない。

  東日本大義災は、自信をなくしている・日本人をさらに萎縮させる危険がある。「花見自
 粛」などは気持ちとしてはよく分かるが、そうした自粛は被災者にも日本経済にも何ももた
 らさないだろう。
  むしろ被災しなかった者は、ボランティアや募金などを通じて被災者支援を行うのと併せ
 て、なるべく平常時の活動を維持するという姿勢が大嘔だ。景気を良くして消費税を納め、
 それを被災者支援に回す。こちらのほうがはるかに被災者のためになる。
  東日本大震災が日本人の心理に与える影響について、ロンドンの『エコノミスト』誌は次
 のようにいっている――日本人はこの震災を機に、自らの対応能力と世界から寄せられる畏
 敬の念によって自刎を取り戻すかもしれない、と。われわれはこの期待に応えられるような
 社会を作らなければならない。
 

公共事業はバラマキで悪だ風の考え方や、欧米型なのか、日本型なのかわからないが新自由主義
的競争原理や政策の匂いに違和感を憶えるが、概ね同調できる。さて、次回はこの蟠りは払拭されるの
か増長するのかいかに?!


                                    この項つづく 


  ● 今夜のアラカルト

イタリアン野外料理: マグロの香草パン粉焼き

冷凍のマクロの場合は、市販品の「ピチットシート」、「レッドキーパー」を使って解凍。解凍
中、水分と一緒に旨みが流れ出してしまうのを防く目的がある。もちろん生の魚や肉にも効果が
ある便利グッズだ。

マグロは生でも食べられる刺身用を使用するので、火の通しすぎに注意。切り口・色に注意し、
パン粉はミキサー(フードプロセッサ)を使うと細かくなる。




下関市の知的障害者福祉施設「大藤園(おおふじえん)」事件の衝撃的なビデオで、過剰なまで
の競争原理と差別化を強いるこの日本のデフレ精神構造を見せつけられ大変辛かった。障害者・
高齢者福祉施設の「密室」で日常的に繰り返されていることぐらい容易に察しがつくゆえに辛か
った。さらに、もっと問題なのは集団で繰り返されていたことで、『実録・日本収容所列島』と
でも呼ぶべき映像だ。
                                                           
                                                           
                                                     

 

 

 

世界最先端の再エネフィールド

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     雨の中、傘をささずに踊る人間がいてもいい。それが自由というものだ。

                                  ヨハン・ゲーテ

   

【日本の政治史論 32:政体と中枢】    

 

「古賀の乱ってなんだ "I am not ABE  " 」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。     

  福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)   

                             古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』   

   目 次     

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策  

 
    終章 起死回生の策

                                だめ企業の淘汰が生産性アップのカギ

  客観的に分析すれば、日本はまだ捨てたものではない。欧米の投資家が日本に期待したよ
 うに、国際的には、日本は恵まれたな場にある.
  人口減少が食い止められない限り、昔のような高成長はむずかしいだろう。しかし、GD
 Pが高成長を続けなくても、生活の豊かさはレベルアップできる。事実、現在、国民.人当
 たりのGDPでトフプに位置しているのは、わずか人口50万人余りのルクセンブルクであ
 る。

  日本の国民一人当たりのGDPは、ルクセンブルクの四割程度しかない。日本の潜在力か
 ら考えて、これはあまりにも低過ぎる。肩を並べるところまで行かなくとも、ルクセンブル
 クの8割の額ぐらいは、本来なら簡単に到達できるはずだ。
  日本人には勤労精神か根づいている。放っておいても、夜中まで働く国民性だ。日本人は
 身を削って働く。教育レベルも高い。なのに、経済がどんどん喪退しているのは、国を動か
 す仕組みが涸いからだ。一人ひとりの日本人はがんばっているが、政治家と官僚が知恵を出
 していないので、国民のがんばりが空回りしている。

  生産性を向上させるというと、何か目に見えるイノベーションが必要だと思う人は少なく
 ないだろう。たとえば、J場に次世代型の最新橋を導入すれば生産効率は士がる。ITを駆
 使して、経営効率をLげるのも可能だ。あるいはコスト削減という手もある。
  しかし、コスト削減やイノベーションをしなくても、実は生産性を向上させられる力法が
 ある。マクロで見ると、牛産性向ヒのもっとも大きな鍵を握るのは「スクラップ・アンド・
 ビルド」だ。すなわち、だめな産業や企業か潰れて、将来性のある新たな産業や企業に資源
 が回る。別の表現をすれば、産業構造の転換、企業の淘汰である。マクロ経済としては、こ
 れがもっとも生産性の向上につながるのだ。

  これを各国別に数字で表すのはむずかしいが、様々な研究によると、この淘汰による生産
 性向上の割合は日本が一番低いとされている。そうなってしまったのは、日本を動かしてい
 る政治家や役人の発想か、いま存在する企業や産業を守ることを前提にしているからだ。
  新しい時代の波が来たときに思い切った改革をやろうとすると、役人はすぐに「それじや
 あ、日本の電器産業、自動車産業か弱くなるだろう。中小企業も、農家も……」といい始め
 る。そして、実施するのは、補助金や特別保証でだめな企業を支え、効率の悪い農家を枚う
 産業政策だ。

  これがどういう結果につながるか。第三章に記した建設機械リース企業の嘆きかいい例だ。
 だめな企業が優良企業の足を引っ張り、産業全体としても伸び悩む。
  消えゆく者は助けない,助けるのは本当に困っている個人に限定する。でないと、日本の
 生産性は上がらない。特に労働力が年々減り、財政悪化が進む日本は、限りある資源をどこ
 に重点的に使うか、すなわち選択と集中が重要になる。衰退産業・企業はスクラップし、有
 望産業・企業に人材を注入しないと、少ない労働力を有効に活用できず、経済が沈んでいく
 のは自明の理だ。

                       まだ足りなかった構造改革

  小泉構造改革はその意味で方向性は正しかった。「民でできるものは民で」をキャッチフ
 レーズに、役所にぶら下がっていた事業を民の競争のなかに放り込み、規制緩和をして民の
 自由競争を促進した。競争となれば、市場原理によって自然に、だめな企業は淘汰され、優
 秀な企業だけが生き残る。そうでなければ、国際競争に負け、日本は埋没していくというの
 か、小泉・竹中改革の考え方だった。
  その過程では、小泉純一郎総理がいったように「痛み」を伴う。失業者が大量に出る。し
 かし、再チャレンジできるよう、職業訓練や失業期間中の生活を支える仕組み、いわゆるセ
 ーフティネットがしっかり構築できていれば、やがて人材は然るべき産業、企業に振り分け
 られ、経済が活性化するし、働く人の生活も向上する。

  しかし、役人の発想では、一時期でも「痛み』を伴う政第は認められない。そんなことを
 したら、自分たちが批判される、与党の政治家にも怒られる、というのが役人の発想で、失
 業者か出ないように、だめな企業にも巨額の予算を注入して支える。
  小泉構造改革は、セーフティネットの部分では不十分だったために、役人にそこを突かれ、
 すっかり悪者にされてしまった。小泉時代は、内閣の支持率が高く、勢いがあったので、役
 人は表立って反発できなかったか、霞が関は自民党の守旧派と組んで、内閣が退陣した途端
 小泉・竹中構造改苓に対するネガティブキャンペーンを一斉に始めた。残念なことに、民主
 党もこれに乗ってしまった。

  マスコミを使って、「弱肉強食の非情な改唇が、日本経済を足腰から弱くした」「格差社
 会を助長しただけの小泉・竹中改革は悪以外のなにものでもない」と国民に吹き込んだ。
  構造改革は道半ばだったので、地方の企業や商店は青息吐息だった。ああ、やっぱり小泉
 と竹中がわれわれを苦しめていたのか、となって、あれほど国民が支持した構造改革路線か
 影み、否定され、頓挫してしまった。
  構造改革が間違っていたわけではない。むしろ、逆である。改革が足りなかった。小泉総
 理以降も、積極的に構造改革を進めていれば、日本はいまのような最悪の事態にはなってい
 なかったはずである。 

                           農業生産額は先進国で二位

  もちろん、本当に困っている人は助けなければならない。しかし、いまの民主党政権の政
 策を見ていると、救うべきでない人たちまで助けている。
  1つ例を出せば、農家の戸別所得補償である。居酒屋チェーンや介護施設の経常で知られ
 ているワタミという企業がある。ワタミでは、品質が良くて安心な食材を安く仕人れるため
 に農家から土地を借りて、野菜の自家生産に乗り出した。
  ところが、ほとんどの農家か一年契約でしか貸してくれない。なぜか。農地は税全面で優
 遇されており、保有コストはほぼゼロ。農家は相続悦もまけてもらえる。所有していても損
 はないから持ち続けられる。                    

  だから、農家はどんなに収穫が少ない農地でも手放さない。一部の故京にとって、農地は
 ただで宝くじを持っているようなものだからだ。
  景気が持ち直して、消費が活発になり、大型ショッピングセンターが進出してこないとも
 限らない。道路ができることになって多額の補償金が入るかもしれない。おらか農地の地価
 が急騰すれば、濡れ于に栗だと期待し、持ち続けている人がかなりいる。そんなおいしい話
 が転がり込んできたときに、すぐに売れないと好機を逃すので、一年単位でしか貸さないの
 だ。

  しばらく放っておくと農地はたちまち荒れる。耕して、土地改良するには一年以上かかる。
 ワタミは、借りて一年目、二年目には大きな投資を強いられた。さあ、やっと立派な作物か
 作れる状態になった。そこに民主党の戸別所得補償制度である。
  とりあえず、経営努力のいかんにかかわらずお金が入るので、来年は契約はできないと断
 ってくる農家が続出した。ワタミにしてみれば、とんでもない損失になる。
  農家の人に経営状況を聞いてみると、たいがい「赤字」と答える。赤字ならば普通やめる
 のに、農業をやっていられるのは、手厚い優遇措置か受けられるからだ、

  普通の人は土地を所有すると、結構高い固定資産税を毎年徴収される。農家は本来払うべ
 き税金も減免され、宝くじが当たるのを待っている、これは、ある意味、犯罪に近い。
  誤解しないで欲しいが、私は農家が全部悪いといいたいわけではない。真面目に農業に取
 り組んでいる人も、たくさんいる。そういう人に補助金が回るのならまだ分かるが、本当は
 農業を本格的にやる気がないのに、農地を手放さない人も多い。農業に携わっているのは、
 おじいちゃん、おばあちゃんとお嫁さんの三人で、お父さんやお兄さんは近くの工場で働き、

  それか一家の主な収入になっているといった兼業農家をどこまで保護するのか。
  こうした農家を保護するときに必ず叫ばれるのは、「日本の農業を守れ」というスローガ
 ンだ。こうした声を年中聞いているので、いまにも日本の農業が滅びる寸前であるような錯
 覚に陥る。
  実は、日本の農業生産額はアメリカに次いで先進国のなかでは2位である。もちろん、関
 税で保護されて国内価格がかさ上げされているとか、円高でドル換算額が増えるという要因
 があるが、それにしても堂々とした地位にある。GDPに占める割合1ハーセント以下と極
 めて低いともいわれるが、これも先進国には共通することで、製造業や第二、三次産業が発
 展したからそうなったに過ぎない。

  また、日本の農家の数か減ってきたといって騒いでいる人たちかいる。しかし、日本の農
 家の数は決して少なくない。ヨーロッパの主要国では農業人口の割合が1パーセントを切っ
 ているところも多いか、日本はまだ5.7パーセントと、むしろ先進国では多いほうである。
  しかも、そのかなりの部分は兼業小規模の農家で、もともと生産に占める割合が低く、そ
 ういう農家の数が減っても、日本の農業か縮小する心配はない。
  逆にいえば、そういう零細兼業農家が多いから、日本の農業の全体の生産性が見かけ上極
 めて低くなり、いかにも競争力がまったくないかのように見えてしまうのだ。

  実際、世界全体で見ても四番目に生産額の多い日本農業では、たった7パーセントの優良
 農家が60パ-セントの生産額を上げている。
  高齢の農家が多いことも問題にされるが、そもそも、農業には定年がなく、サラリーマン
 や公務員をやりながら農業をやっていた人が、定年後も農業をやっているというケースが非
 常に多く、そういう人は年金もあり、むしろ元気な間は農業を楽しみでやっているという層
 も多いのだ。老後の楽しみでやっている農家に跡取りがいなくても大騒ぎすることはないの
 である。

  実際、農業で生活が苦しくなってホームレスになったという人は極めて少ないだろう。
  よく考えてみて欲しい。、生懸命、真面目に働いている人は農家だけではない。中小企業
 にもたくさんいる。
  たとえば、作っているものの値段が下がって経常が苦しくなった中小企業が潰れたらどう
 なるか。そこで働いている人は、失業保険しかもらえない。一生補助金をもらい続けるなど
 という仕組みは、もちろんない。非正規雇用だったため失業保険の対象にもなっていないと
 いう人もたくさんいる。なぜ、農家だけは保護されるのか。

  普通のサラリーマンには経営者の失敗の責任を労働者までが披るという過酷な世界がある。 
  もし、農家も同様の保護が欲しいというのであれば、農家も失業保険の対象にしたらどう
 だろうか。それで普通の人たちと同じ条件になる。
  零細兼業農家の保護は、仮にその農家に悪気はなく、真面目にやっているとしても、日本
 農業の発展という暁点から好ましくない。非効率な経営をしている農家が多い日本の農業は、
 別の見方をすれば、高成長か見込める数少ない分野でもあるのだ。


ここまで読み進めて、やはり、著者は新自由主義の原理主義だった。そこからは、デフレ下の弱
者切り捨て、貧富格差拡大――これを中国流に言うと「先富政策」であるが、当の中国は、開発
国家主義という名の後進国の新自由主義政策を邁進する武断主義的側面をもつ――は、成熟した
福国家に向かう日本が手本にする必然性はない。ここでは政策の時間軸に併せて、自由化(規制
緩和)と社会化(規制化)の選択をしていく必要がある。ことしで「秋葉原通り魔事件」は7年
経つがこの事件は、英米流金融資本主義=新自由主義の「負」を象徴する事として印象に残って
いるが、わたし(たち)はすでに考察を済ませている。また、農業政策は「都市」が行う贈与経
済政策――これは、ギリシャ危機回避の欧州共同体における「ドイツ」からの贈与経済政策――
と考えれば理解されやすいだろう。

                                     この項つづく

  Prof. Eicke Weber — Fraunhofer ISE


●「最適な電源構成は、再エネ80%」: 独フラウンホーファー研究機構

産業技術総合研究所(AIST)の「福島再生可能エネルギー研究所(FREA)」は5日、福島県郡
山市で、開所1周年を記念した成果報告講演会を開いている(日経テクノロジーオンライン 2015.
06.10)。講演会では、太陽光と風力、地熱発電、地中熱の利用、水素活用に関する1年間の研究
内容のほか、「被災地企業のシーズ支援プログラム」の成果なども発表した。同プログラムでは、
被災地企業との共同研究の件数は33社、延べ63件ものプロジェクトがあり、その一部は、現
在も継続しているという。

このうち、アサヒ電子(福島県伊達市)との共同研究(太陽光発電ストリング監視システムの評
価)は、すでにその成果が事業化されたほか、5件が現在、事業化を検討中という。FREA  独自
の研究内容としては、再エネの大量導入を実現するため、電力貯蔵や熱利用などと連携したエネ
ルギーマネジメントシステム、大型パワーコンディショナーの各種試験設備、薄型結晶シリコン
太陽電モジュールの製造技術などに関し、最新の研究成果や今後の実証スケジュールが公表され
た。

招待講演で登壇したドイツ・フラウンホーファー研究機構・太陽エネルギーシステム研究所(ISE)
のEicke R Weber 所長は、ドイツにおける将来のエネルギー構成の効率性を評価したコンピュータ
ーによるモデル分析の結果を披露し、「最も効率が高い一次エネルギーの構成は再エネが60%、
電力システムの電源構成では再エネ80%ということが分かった。その際、蓄電池は24ギガワッ
トアワー程度が必要になる」と述べている。同所長は、「再エネを主体にしたエネルギーシステ
ムへの変革に必要なコストは、負担ではなく投資であり、そこに大きなビジネスチャンスがある。
まずこれに気づくことが重要だ。福島の名は原発事故で知られているが、今後、ギガワットスケ
ールで再エネを導入することで、世界最先端の再エネフィールドになって欲しい」と期待表明し
ている。

                

● 海外で作った「水素」が海を越えて日本へ:6年4百億円プロジェクト始動

新エネルギー・産業技術総合開発機構は、海外の未利用エネルギーから水素を製造・貯蔵・輸送
し、日本国内で利用する大規模な水素エネルギー利用システムの技術開発プロジェクトを開始。
水素を製造し海を越えて運搬する実証実験は「世界に先駆けたもの」。水素エネルギーの研究開
発は日本が30年以上にわたり世界をリード、強みが発揮できる領域である。

このプロジェクトでは、(1)水素の安定的な供給システムの確立に、海外の未利用資源を活用
した水素の製造・貯蔵・輸送と、国内の水素エネルギー利用までのチェーン構築の技術開発を行
い、運用技術の開発と実証する。(2)また、水素のエネルギー燃料電池に次ぐ新たな需要を創
出し、利用を大幅に拡大に、水素燃料ガスタービン発電システムの技術開発を行うものである
(下図参照)。

 

 

ともあれ、これでなんとなく、結構尽くめな事業計画だが、内閣府が主導する「戦略的イノベー
ション創造プログラム
(SIP)」と国家官僚が重複するので棲み分けを考えなければという、小さな問題があるというが
前出の『日本中枢の崩壊』の著者の古賀茂明の話からすると当事者同士には大きな問題かもしれ
ない(蛇足)。

 

 

   ● 今夜の一品

 Rainbow Flash LED Umbrellas

日本人にしか受けないかも知れないが、スターウォーズに登場するライトセイバーのような発光
ダイオード雨傘だ。既に学童向けの防犯・防災用雨傘として表彰されているというから、世界市
場を独占しそうな予感がする。何って!お前が考えより遙か先に投企済みだってか?

                                       

 

 

 

水回り什器のシームレス化

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                    私たちは予測が外れることを恐れない
                          だからあらゆる可能性を排除しない。

                                                          村井 俊治

 

                                 

● 水回り什器のシームレス化: 自動水栓装置 

水回りで「自動温水便器」は世界的なヒット商品。水栓に手を差し出すと自動的に吐水する自動
水栓や便器の使用後に自動的に洗浄水を流す便器自動洗浄装置など、人体を検出して吐水や洗浄
を自動的に行う自動水栓装置は、その利便性や衛生性から広く普及している。たとえば、TOT
O株式会社の「アクアオート」は、センサー方式により手を差し出すとサッと水が出て、手を遠
ざけると水が止まり、洗面器まわりが汚れにくく、水の止め忘れも防げる衛生的で経済的な水栓という
うたい文句で広く販売据え付けられている。



なお、これらの自動水栓装置の使用者である人体を検出する手段には、(1)焦電センサや(2)
超音波センサ、(3)赤外線を用いたアクティブ型の光電センサが多く使用されている。
  また、自動水栓装置の流路に小型発電機を配設し、この発電機で得られた電力を蓄電しておき
上述のセンサ等の回路の電力を補うようになっていおり、水回りの什器の電子化が進み、利便性、
衛生性、環境配慮性といった多様で高度な機能要求を満している。
 ちなみに、「アクアオート」は、センサー方式により手を差し出すとサッと水が出て、手を遠
ざけると水が止まり、洗面器まわりが汚れにくく、水の止め忘れも防げる衛生的で経済的な水栓
であることが特徴である。

日本はシステムを考慮した、あるいはプラットフォームを考慮したした「ものづくり」は世界ー
だと思うが、もう少しすると、デジタル装備されたすべての、アドホックの息遣いがきこえる水
回りの什器にわたしたちは囲まれて生活しているのだろう。

 

 

 

   

【日本の政治史論 33:政体と中枢】    

「古賀の乱ってなんだ "I am not ABE  " 」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。     

  福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
 生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
 部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
  進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
  いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
 送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
 ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
 施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
 閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
 済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
 院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)   

                             古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』   

   目 次     

  序 章 福島原発事故の裏で
  第1章 暗転した官僚人生
  第2章 公務員制度改革の大逆流
  第3章 霞が関の過ちを知った出張
  第4章 役人たちが暴走する仕組み
  第5章 民主党政権が躓いた場所
  第6章 政治主導を実現する三つの組織
  第7章 役人―その困った生態
  第8章 官僚の政策が壊す日本
  終 章 起死回生の策
  補 論  

  終章 起死回生の策

                       「逆農地解放」を断行せよ

  私は「逆農地解放」を実施すればいいのではないかと考えている。戦後、GHQが行った
 大地主から土地を取り上げ、小作農に分け与えるという政策は、非常にまずかった。農地を
 分割したために非効率な生産になり、意欲のある農家が大規模農業を経営する余地を著しく
 狭めた。そして、サラリーマンとして安定した収入を得ながら農業を副業とするだけの兼業
 農家を多数生み出した。

  現在、全農家に占める専業農家の割合はたったニ割。後のハ割は兼業農家だ。年間収入か
 10万円、20万円、さらには赤字の兼業農家かざらにある。たったそれっぽっちの収入で
 も農家は農家だ。牧いの手か差し伸べられる。
  生産効率の悪い農地を、真剣に農業をやっている専業農家に売る。有能な農業従事者か大
 規模経営をすれば、生産性は.気に上がる。あるいは、兼業農家か、大規模化やブランディ
 ングできる優秀な農業経営者に長期契約で貸しつけるように誘導する制度を考える。儲かる
 農家に土地を貸せば、地代も入ってくるし、勤めていないお嫁さんやおばあちゃんは収穫時
 にアルバイトに行けば、臨時収入も于にできる。こうした大規模化を進めるf段として、す
 ぐに補助金や優遇策を打ち出すが、むしろ、生産性が低いまま農地を持っていると損をする
 という仕組みにすることも必要だ。少なくとも、生産性が低いままで土地を持ち続けるイン
 センティブがある税制は抜本的に見直したほうか良い。

  また、農地をいい加減な運用で他用途に転換することを認める現在の農地法の規制も抜本
 的に見直すべきだ。後で述べる観光の振興の観点からも、景観規制を強化して、農地は基本
 的に転換できないということにし、仮に転換する場合は、それまでに減免されていた税金を
 すべて過去に遡って転売利益の範囲内で課税するという制度なども導入すべきだ。
  これが、平成の「逆農地解放」だ。「土地を解放して小規模農家から大規模農家へ」とい
 う標語になるだろうか。兼業農家にも専業農家にもただの農家というレッテルを貼って、同
 じように扱い、結緊的に日本の農家と農業をだめにしている農業政策は即刻やめたほうかい
 い。



ところで、戦後の農地改革以降の流れを下表を参考に踏まえてみよう。GHQにいる農地改革は
(1)土地資本を私有財産化させることで、政策として、(2)戦後の食糧難を切り抜け
る政策として機能した。その後、高度経済成長にともない、(3)繊維・家電・自動車を代表と
する工業資本増強の従属政策の置かれることとなる。↓




→(4)その間、大規模営農を試みるが高度資本主義化による産業構造の変容で、いわば、国内
的贈与経済政策が継続していくなかで、(5)先端技術本位制(→デジタル革命渦論)の進展や
環境リスク本位制への移行で、世界的な「農工サ融合時代」を迎える。と、いうことを踏まえれ
ば、自ずと日本の政策選択は決まる。その意味では、ここでの「逆農地解放」の提案には賛同で
きる。



                     農業にもブラスになるFTAとTPP

  農業に関しては、再度、政府の農業政策が口本の農業をだめにしていると強調しておきた
 い。農業といった途端に国境を高くして守ることしか思い浮かばない貧しい発想が、どれだ
 け日本の農業の発展を妨げているか。
  2010年秋、地方出張に行ったとき、部品産業の人たちが異口同音に私に語ったのは、
 農家と農協に対する非難だった。多くの人たちの憤りは、「どうして農家に生まれただけで
 守られるのか」だった。この後に身分制ついて書くが、草の根レベルでこうした考え方が広
 がっているのだ。

  菅内閣は2011年6月までにTPP参加の方針を決めるとしたが、これに対して農協や
 多くの農家が反対の大合唱を始めた。その間にもアジア諸国は欧米などとFTAを締結し、
 TPPの交渉もどんどん進んだ。このままでは、目本の製造業は近隣アジア諸国に比べてハ
 ンディを負ってどんどん苦しくなる。農業政策をなんとかしてくれないか。地方では、政府
 の農業政策に対する怨嵯の声が渦巻いていた。
  日本の農業基盤を強くするためには、まず米の競争力をヒげなければならない。そのため
 には日本の米作の状況を正しく把握する必要がある。
  日本の米は77パーセントの異常な高関税で保護されてい今この関税がゼロになれば、輸
 入米の価格が大幅にFがるのは確かだ。その結果、日本の米作農家は滅んでしまうというの
 が農水省の言い分だ。

  しかし、その根拠か曖昧だ、米の内外価格差か四倍たというときに使っているデータが、
 日中間の10年ほど前のものだという。しかし、現実には、中国では農産物価格が高騰して
 いるのに対して日本では米価が下落。その結果、・こ○○九年の輸入価格で見る限り、日中
 間の価格差は、60キロあたり中国が1万5500円で、日本が1万4000円と、その差
 はわずか4割弱になっているという,

  つまり関税は40パーセントで良いということになる。生産コストで見ても、大規模農家
 なら7000円程度で生産しているので、余裕でクリアできる水準になっているのだ。
  しかも、一方で農水省は、食糧不足が来るぞ、食稲価格か高騰するぞ、といって危機感を
 煽ってい るが、それなら、これから国際的な米価高騰も起きるはずである.ということは、
 いまよりも内外価格差が縮まるということ。であれば、なおさら関税が下がっても耐えられ
 ると考えるべきなのだ。

  それにしても議論のレベルが低過ぎる。理屈で考えれば、すぐにおかしいと分かることな
 のに、なんとかTPPに反対する口実を探そうと数字を捏造しているとしたら大問題だ。前
 にも書いた通り、官僚は優秀でも公正でもないという典型ではないか。
  もし、農水省が本気で日本の農業を育てようと思っているのなら、経度省と一緒になって
 FTA、TPP 参加を推進することだ。
  はじめに触れたように、兼業農家の主たる収入は、近くの工場などに働きに行っている大
 黒柱の給与である。日本が貿易自由化に踏み切らず、部品産業が海外移転を余儀なくされた
 ら兼業農家も生活できなくなる。
  FTA、TPPへの参加は、農家にとってもプラスになる。農産物の売れ行きは価格競争
 だけで決まるわけではない。品質で勝負という道がある。

  四季による寒暖の差かあり、品種改良技術も進んでいる日本の農産物の質は高い。誰でも
 おいしいものは食べたい。FTAに参加し、農産物の完全自由化がなされれば、日本の果実
 や野菜、穀物は、高付加価値の高級品として海外に輸出できる。アジアの富裕層は急拡大し
 ているので、将来的に有力な輸出産業に育つ可能性もある,
  もう一つ指摘したいことかある。それは、目本の農産物の安全神話だ。農水省か食品の安
 全行政で大きな役割を果たしているということは、ウナギの偽装などで有名になったのと同
 様問題があちこちに潜んでいる心配があるということだ。現に2011年に入り、廃水省は
 魚市場の衛生基準を見直すと発表した。日本の衛生基準では危なくて、ヨーロッパには魚を
 輸出できないのだ。跨果収場もかなり危ない状況だ。

  こんな状態をいままで放置してきた役所が、日本の食べ物は安全だと宣伝すると非常に不
 安になる。日本の農産物や加工食品が本格的に輸出されるようになれば、当然、競合国は、
 日本の食品の弱点を探そうとするだろう。そのとき、意外にもその安全性が弱点になってく
 る可能性かト分にあるということを頭に入れておいたほうが良い。
  中国に比べればはるかに安全だというレベルで安心していてはいけない。いますぐ、日本
 の安全衛生および表示規制・基準のあり方を国際的観点で総点険してみたほうが良いのだ。
 
  こういう活か出るとすぐに、そんなことをすると業界に負担がかかるというような抵抗か
 ある。しかし、助けてもらうことばかり政府に期待して、安全というもつとも大事なことを
 後回しにするような人たちは、保護するに値しないのではないか。
  東日本大震災で、日本の農業は大きな打撃を受けた。震災の被害を受けた地域での農業復
 興は、今後の日本農業を考えるうえでの一つの試金石となるだろう。文字通りの復旧で、こ
 れまでと同じ農業政策を続けるのか、それとも白地に絵を描くように、TPPにも耐えられ
 る強い農業を育てる政策に転換するのか――。

  この地域での農業復興には莫大な費用がかかる。風評被害を乗り越えるためには、先進的
 な品質・ブランド管理か必要だ。そのためには資金力と先進的な経営能力を持つ民間企業
 (株式会社)が、完全に自由に農業経営を行えるような規制緩和をすると同時に、私権制限
 も含めた大規畷なn池集約を進めるべきだ。
  そうした企業が技術力やノウハウを持った農民の力を活用する形で農業経営を行えば、国
 際競争力を有する農業が成立するはずだ。日本において農業だけがいつまでも脆弱であり続
 けなければならない理由はない。

  なお、食品安全の観点からいえば、放射能検査で放射性物質が検出されると出荷できなく
 なることを恐れて、検査を限定しようという意見もあったようだが、こうした姿勢は逆効果
 だ。
  むしろ全砥検査をして、安全なものしか市場に出回らないという安心感を人々に与えるこ
 とが必要だ。
  兼業農家ではむずかしいだろうが、資本力のある企業なら毎日、出荷前に放射能検査を行
 い、その模様をネット上で実況し、結果をリアルタイムで公表することもできるだろう。そ
 うすればその企業の生産物は市場で高い評価を受けることになる。
  やはり企業の直接参入を早急に進めるべきだ。この際、外資でも受け入れて、強い企業を
 支援するという政策に思い切って転換する必要かある。

  私は民主党には、トータルな視点を持っていただきたいと思っていた。民主党の政策を見
 たとき、我家にカネをばら撒けば農家が喜び、中小企業にぱら撒けば中小企業が喜ぷだろう
 という、安直な発想に終始しているように思えてならなかった。それは古い自民党と完全に
 重なる姿なのだが。


                        「平成の身分制度」撤廃

  いま、日本人は「一億総リスク恐怖症」に陥っている。バブル崩壊から始まったその傾向
 は、特にりーマンショック以降、顕著になった。日本経済は中国をはじめとする海外の国々
 に負けてしまうと怯え、FTA、TPPへの参加に躊躇する。ここ数年、日本では、国際化
 はまったくといっていいほど進んでいない。
  企業部門には200兆円を超える現預金が唸っているのに、投資か怖い。個人金融資産も
 いまだに預金が多く、その預金で銀行は国債を買っている。有り余るおカネを持っている人
 でも、せいぜい新興国向けの投信に恐る恐る少額投資し、様子をうかがうぐらいだ.海外留
 学生も年々減少の一途を辿り、公務員や大企業志望の傾向はさらに強まった。f供に「将来
 の夢は?」と聞いたら、「正社員」と返つてきたという笑えない話もあるくらいだ。

  リスクを取らず、いまある生活を防衛することだけを考えている日本人が多くなった。日
 本人に縮み志向の思考回路が定着しつつあるのは、リスク恐怖症に陥っているからだ。あた
 かも、リスク回避という官僚の習性がウイルスとなって霞が関からばら撒かれ、日本人全体
 に感染したかのような感がある。
  だか、リスクを恐れてチャレンジしなければ、明日は拓けない。逆にいえば、リスクを怖
 がらなければ活路は開ける。

  40数年前、20代で勇躍、アフリカに移住し、ケニアで農場を経営していた佐藤芳之さ
 んという方かいらっしゃる。帰国した佐藤氏にお会いしたとき、こうおっしゃっていた。
 「日本の大学生の就職内定率が50数パーセントだそうですが、私はこれは日本にとってい
 いことだと思っています。就職できなければ、起業すればいい。海外に飛び出す道もある。
 若い人たちが塞ぎ込まず、発想を転換すれば、日本が飛躍するチャンスになる」

  政治家も役人も経官省も労働者も、日本人全体で、発想と価値観のコペルニクス的転回が
 必要だ。
  日本の財政事情は逼迫している。いまあるものを全部守るのは到底無理である。切り捨て
 るべきものは切り捨て、それで浮いた予算は将来のために注ぎ込む。そういう前向きの政策
 をやらなければ、ジリ貧は免れない。いまは平時ではないので、少々苦しいぐらいの人を助
 ける余裕はない。
  私が考えているのは、まず、「平成の身分制度」の廃iである。いまの日本には、努力な
 しに手に入れた地位や身分がいっぱいある。たとえば農家の多くは、親から田畑を引き継ぎ
 農業をやっている。中小企業経営者も、ベンチャーはあるにしても、大半の経営者が親の会
 社を受け継いでいる。たまたま農家や中小企業の家に生まれて得た身分でしかない。他方、
 中小企業の労働者は、普通のサラリーマンとして大して大きな保護は与えられない。

  ある意味、高齢者もこの範咄に入る。高齢者は努力してなるものではない。70年生きら
 れれぱ、謝でも高齢者になれる。
  公務員もそうだ。公務員になるときに試験はあるが、‘度なれば、民間と違い、何もしな
 くても60歳まで安泰。しかも、年功序列で給料も毎年とがり、役職定年もなく、給与があ
 る年齢からドかるという仕組みもない。悪いことをしない限り一度得た地位は絶対に失わな
 いとい うパラダイスだ。
  しかも、キャリア官僚は退職後も「天下り」「渡り」で七〇歳くらいまで生活保障される。
 これは職業ではなく「身分」だろう。

  いまの政策では、こうした努力なしにたまたま得られた身分の人に手厚い保護を与え、守
 っている。これは一種の「身分制度」である。保護の強さの順でいえば、「官・農・高(高
 齢者ご小(中小企業経営者)」ともいえるのではないか。
  だから、「平成の身分制度」撤廃で、たとえば、満足に経営できていない人にはやめても
 らう。農家にも失業保険をと先に書いたが、私は中小企業の経営者でも失業保険がかけられ
 るようにしたらいいのではないか、と思っている。

  中小企業経営者は事業を止めると、完全に収入の道か途絶えるので、赤字でも会社にしが
 みつく。その結果、見切りどきを誤り、最後は悲惨な結末を迎える経営者も少なくない。半
 年から一年、失業保険をもらえて、これは差し押さえ禁一としたらいい。これで当面は食い
 つなげるとなれば、本当に危なくなる前に見切りをつけられる。日本の産業構造転換も早く
 進む。
  こうした対策を講じながら、改めて一人ひとりの境遇に目をやり、本当にかわいそうな人
 だけを守る。親がリストラにあって失業し、高校をやめなくてはならなくなったといった非
 常事態に直面している子供は救う。しかし、少しかわいそうなぐらいでは肋けない。少しか
 わいそうな人から見ても、あの人は自分よりもっとかわいそうと思う人だけを守る。

  できの悪い企業や農家も含めて一律に守る産業政策、農業政策を一切やめる。もちろん、
 その前にできの悪い公務員をリストラし、出世できないようにし、競争させて公務員の効率
 を上げる。無駄な産業政策かなくなれば公務員もかなり減らせる。二重の政策効果で人件費
 も浮く。これらを集めれば、数兆円のおカネが浮く。そのカネを全部使わなくても、職業訓
 練や教育に向けた予算を相当手厚くすることができる。

  仕事をしていない人には、訴たに台頭してきた産業に再就職できるよう、技術と知識を身
 につけさせる。この部分が実はもっとも重要だ。
  しかし、いまの厚労省のやっていることは極めて効率が悪く、アリバイ作りに終わってい
 る。成果主義を徹底して、公務員に結果を出させる仕組みに変える。ハローワークの民営化
 なども含め民間の活力も導入する。こうすれば、やっと、みな安心してチャレンジできる。
  また、口本の大学のレベルは国際的に見ると相当に低い。これからの若者は、日本の企業
 に就職する場合でも、海外の若者との競争になってくる。若者にはそういう環境でも生きて
 いけるだけのものを身につけるために、より高い水準の教育を行う。そのためには、文部科
 学省の管理する教育行政から抜本的転換をしなければならない。
  このようにして、予算を「守る」から「変える」「攻める」に大転換して初めて、日本経
 済が浮上する可能性が出てくる。逆に、これができなければ、日本は確実に沈んでいくであ
 ろう。


円高基調にあるものの凄まじいまでの日本の工業製品の輸出による敵対的貿易関係に業を煮やし
た米国は日米経済構造協議が行われ、日本が第二の敗戦を経験したことは、まだ記憶に新しいが
その反動として、農産物の関税廃止が迫られ農家に何らかの補償(国内的贈与経済政策)が当然
として、(1)大規模気候変動および、(2)高度バイオ・ナノ工学時代に入り、従来の、農産
物の大量生産・大量輸出貿易プラットフォームは機能不全となる――これがわたし(たち)の主
張である。従って、著者との見識とは異なる。
 

 

南北戦争の端緒となるサムター要塞の戦い
                                    この項つづく                                                                              

 

 

 

● 情報を守れ!次世代スマートカード時代を迎えるために

年金機構を狙ったマルウェア「Emdivi」、具体的な攻撃手法について、パロアルトネットワーク
スは12日に、Backdoor.Emdivi を用いた標的型攻撃の解説と、標的型攻撃による被害を出さない
ためのセキュリティ対策について解説を行っなった。それによれば、6月上旬に発生した100万
件を超える規模の個人情報漏えい事件を受けてのもの。この事件は2013年以降に日本の組織を狙
った攻撃で利用されているマルウェアBackdoor.Emdiviにより発生したと推測。

 paloaltp

Backdoor.Emdiviを用いた標的型攻撃は、巧妙に進化しながら日本の組織を狙い続け、その被害は
後を絶たない。パロアルトネットワークスの調査によるとメールを経由としたマルウェア攻撃は
他国と比べても高く、日本は標的型攻撃が成功しやすい。その結果、日本が集中して攻撃グルー
プに狙われている現状だという。また、同社によれば、標的型攻撃から個人情報などの重要デー
タを守るには、標的型攻撃における一連の流れ「サイバーキルチェーン」を――(1)例えば、
攻撃プロセスの(1)感染:エクスプロイトコードを含むファイル、偽装したファイルによる感
染、(2)侵入:Backdoor.Emdivi (マルウェア)の侵入、(3)目的の実行:C&Cサーバーとの通
信によるデータの破壊・盗難――断ち切るれば、攻撃を許してもプロセス途中で断てば、被害に
は遭わずにすむという。 

尚、 次世代スマートカードとは、公共分野における次世代IC カードの共通プラットフォームと
その推進を目的として設立された団体。関係省庁など今後導入されるICカードの共通仕様や、こ
れら省庁の情報共有を図るもの。

 

 

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