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地震予知複合解析考

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     38  嫁と小姑 / 火沢眹(かたくけい) 

 

                                 

 
    ※ 眹とは、そむく、反目すること。前項「家人」の卦をさかさまにした
      もので、家庭の不和、意見の食い違い、矛盾相剋を示す。上卦の離は
      火・少女、下卦の兌は沢・中女である。火は上に、水は下にと、向か
      うところが正反対であり、しかも女同士のジメジメした陰性ないがみ
      あいである。嫁と小姑の睨み合いそんな感じの卦象だ。こんな時には
      大問題にとりくんではいけない。小さなことをコツコツやる心がけが
      必要である,嫁も小姑も一家のなくてはならね成員であるように、万
      物すべて相互に矛盾する中にこそ、統一があり、進歩がある。矛盾を
      活きた形でとらえることが大切。

 

 

【世界初の完全栄養食パスタ販売】

22日、フード系スタートアップのベースフード株式会社が世界初の完全栄養食パスタ「
BASE PASTA(ベースパスタ)」を販売を開始。それによると、3食分で厚生労働省が定め
た「日本人が1日に必要な栄養素」すべて含む。パスタは、あまり健康に良いイメージが浮かばない
かもしれないが、「BASE PASTA」は通常の小麦粉よりも栄養価の高い小麦全粒粉や、話題のスー
パーフード、チアシードなどを練り込んむ。それも、栄養素はしっかり計算されていて、「BAS-
E PASTA」3食分で厚生労働省が制定した「日本人の食事摂取基準(2015年版)」に基づく
「日本人が1日に必要な栄養素」をすべて含む。さらに、従来のパスタと比べて糖質50
%オフ、カロリーは20%オフとなっている点も、ダイエットなどで食べ物に気を使ってい
る(「ライフハッカー|Lifehacker)」2017.02.22)。



なぜパスタにしたかの理由について、スタートアップ、ベースフード株式会社(橋本舜代表
取締役)によれば「健康を当たり前にするため」と語っている。つまり、サプリメントのよ
うな栄養補助食品をとるには、意識して摂取するという意識付けが必要だが、主食であるパ
スタを変えることで、健康意識の低い人でも摂取する栄養を簡単に底上げすることができる。
2種類のパスタ料理が美味しく、麺自体にもほんのり小麦の香りがするとの評判をえている。


(左)TAGLIOLINI CACIO E PEPE(羊のチーズと黒胡椒のパスタ)、(右)TAGLIOLINI ALLA
GENOVESE(羊のチーズのジェノベーゼソースのパスタ)。

特許申請中ということであり、ベースフード株式会社というが、製麺は小林生麺株式会社に
て製造していることで、現時点では不詳。そこで下記の「特開2014-000072  グルテンフリー
麺の製造方法」を参照掲載しておく。目論見通り普及していくかどうかは、嗜好品のために
判断し難く、また、規定された栄養価)の担保も不詳である。

 【符号の説明】
10:包装容器、11:シール部、12:開口、13:シール部、14:収容空間 30:
単位麺線、31:麺線、H:(単位麺線の)最大厚み寸法

【要約】

原料調製工程では主原料粉としての米粉に加水して混合原料を調製し、混練工程では混合原
料を混練して混練物を形成し、圧延工程では混練物を圧延して麺帯を形成し、切り出し工程
では麺帯を所定の麺線形状に切り出して単位麺線を得て、包装工程では単位麺線を袋状の耐
熱性包装容器に収容して密封包装することで包装済み単位麺線を得るが、これらの工程では
単位麺線中の米粉成分の未アルファ化状態を維持する。加熱アルファ化工程では、包装容器
内の単位麺線を単位麺線中の米粉成分がアルファ化する所定温度以上の温度で1回のみ加熱
することにより包装容器内の単位麺線中の米粉成分をアルファ化すると同時に単位麺線中の
細菌類の殺菌を行う。

   Feb. 28, 2017

【地震予知複合解析考】

● 巨大地震発生の前兆か“大気に異変”

地震予知の新たな手がかりになるのでしょうか。巨大地震の前兆が上空300キロで起きて
いた、という研究結果を京都大学の研究グループが発表。京大の梅野健教授らの研究グルー
プは、去年4月の熊本地震発生前後でGPSを使い、大気よりも上の上空約300キロにあ
る電離圏と呼ばれる層を分析。これが結果を示した動画です。地震が発生する1時間ほど前
から、熊本付近の電離圏で電子の数に異変が起きていることを示しています。同様の結果は
2011年の東日本大震災でも観測されていました(MBS NEWS, 2017.02.28)。

「地震に関する予測は今はないが、そういった予測につながって防災・減災に役立てばと考
える」(京都大学 梅野健教授)、一方、去年10月に起きた鳥取での地震では、このよう
な現象は観測されておらず、マグニチュード7以上の巨大地震特有のものだとみられていた。
地震予知の新たな手がかりとなるのか。すでに企業などから共同研究の依頼も入っていると
いうことである。
 

Dec. 14, 2017

Pre-seismic ionospheric anomalies detected before the 2016 Kumamoto earthquake 
Takuya Iwata, Ken Umeno  Geophysics  arXiv:1612.05667

この「電離層の電子量変動観測予知法」(「地震予知工学の此岸」2017.10.01)で掲載済み
であるが、鳥取地震では予知信号を観測できなかったというから、本法での現状限界という
ことであろう。今後は、検出精度(S/N比)を上げる方法の有無、あるいは、地震科学探
索気候(JESEA)のGPSを使った3次元定点位置変動観測法などの複合的的連携の模索な
どでさらに精度を高めるなどが考えられる、うまく行くかどうかわからないが。

 

※ Ionospheric Anomalies Detected Before 2016 Kumamoto Quakes (News) Sci-tech,  2017.03.01

 

【EVgo社 加州でABB社製150キロワット直流高速給電所を開設】

EVgo社、米国初のカリフォルニア州でABB(Asea Brown Boveri)社製の150kW DC給電所開設。
同社は、 ABB社を新しい高出力事業のDC高速給電器供給者として採用。カリフォルニア州
フリーモントにあるラッキースーパーマーケットにMowry AvenueJ1772 Combo(別名CCS
Combo)プラグを装備した国内初の 150kW充電装置を開設。現在900台以上のDC高速充電装
置を搭載。通常、通常、CCSコンボチャージャー(およびCHAdeMO)はわずか50kWなので、
150kWは3倍速い。しかし、ABB社製プロトタイプは非開。ベータ機として機能。 プレスリ
リースによると、ABBはこれらの種類の充電器を世界市場向けに開発。 必要に応じて出力を
350kWにアップグレードの付加を検討中。

  

チャージャーは、次世代の電気自動車の充電に関する調査を支援し、初めに150kWでEV研究
展示場で実証試験し、その後最大350kWの充電速度にチャレンジする。 自動車メーカーが将
来のハードウェアおよびサービス規格に適合すると、給電所は業界モデルとなる。EVgo社は
ステーション(給電所)を利用し、ユーティリティーの影響、設置基準、許可、建築および
安全の要件を調査。また、電気認証委員会や建築基準担当者向けの模擬展示場の提供予定。

EVgo社とABB社は、EVの進化における重要な次のステップとしてHigh-Power急速充電の実施
を検討。自動車メーカーは、バッテリ容量と長距離の新しい電気自動車を導入。 既に、2社
の自動車メーカーは、2年以内に大幅に高い料金を請求する米国での車両販売計画を発表。
さらに、5つの自動車メーカーは、ヨーロッパ全土に400台のハイパワー充電ステーション(
350kW)を建設するための協力を発表。現在市販されている最も速い利用可能な公衆充電器
は50kWで、1分あたり約3マイル(4.8キロメートル)の充電が可能。  150kWの充電器
は毎分9マイル(14.5キロメートル)、350kWの充電器は毎分50マイル以上の充電を
提供。 新しい充電ステーションは、要求に応じて自動車研究用車両に利用できるようにな
り、今後の電気自動車の開発、範囲、容量、充電速度の向上に役立つことを目的とする。充
電器は、カリフォルニア州フリーモントにある国で最も忙しい公衆高速充電サイトにありま
すが、一般に公開されることはない。 オバマ路線からトランプ路線へのUターンが起きなけれ
ば順調に電気自動車立国をリードすることになる。これは見物だ。

  Feb. 28, 2017

【回転する反発磁石力で空中浮遊するクアッドコプター】

「回転翼」ではなく「回転磁石」によって空中浮遊するクアッドコプターが生み出された。
この仕組みは時速1200キロメートルで走る「ハイパーループ構想」にも用いられている
もので、高く飛ぶのではないが、浮かんだ状態でしっかりと安定していることを確認する。
とても浮かぶとは思えない形状の機械物体。重さは47.6kgもあり頑張って持ち上げているハ
イパーループのCasey Handmer氏だという。

回転体の中には磁石がいくつも設置され、台の上に敷かれた銅板に渦電流が生まれる。回転
数が十分であれば、この反発作用により、空中浮遊が実現。ちなみに、このとき銅板は熱を
帯びる。この仕組みを利用したのが電磁調理器。磁石が固定され、その上に良導体であるア
ルミニウム板を置いたとき、浮かぶ力は強く、重りを置いてもなお浮かんでいます。このと
き、アルミニウム板の温度は、水をかけると水蒸気に変わってしまうほどに熱くなる。しか
し、単純に磁石を並べて回転させても、浮上するだけの力を生み出すことはできない。これ
をハルバッハ配列(ハルバック配列)で磁場強度を最大化すれば大丈夫。設置されている磁石
は12個。ハルバッハ配列で、それぞれの磁極の向きはこのように組み替える。この磁気浮
上の仕組みは鉄道技術としての利用も考えられ、2005年の愛知万博の際にはリニモとして営
業が行われている。ハイパーループも、同じ仕組みの応用が考えられている。

因みに、わたし(たち)はこれを革命的な風力タービンシステムに応用展開し微風でも高速
回転を実現しようといしている。




【経済界のトリックスターが大統領議会演説】

28日、トランプ新大統領は、上下両院合同会議で演説し、幅広い移民制度改革に言及した
ほか、中間層向けの大幅な税負担軽減を打ち出した。移民制度については、議会の共和・民
主党が妥協すれば、幅広い改革が可能と述べた。演説では不規則発言はみられなかったもの
の、市場が期待したような減税の具体策も出てこなかった。経済政策に関しては、従来から
の主張をなぞったに過ぎないという(東京 ロイター、2017.03.01)。奇しくも、NHKの
「BS世界のドキュメンタリー」は「強欲時代のスーパースター・ドナルドトランプ」を再
放送をみて驚いた。1991年に制作お蔵入りなった番組。この「経済界のトリックスター」
のタイトル通り、わたしがイメージしていたトランプ像がそっくり映像化されていることに。
少し米国の現代史を知っているなら容易に番組内容が理解できるはずだ。だから、「アホ丸
出し」とは言わぬ、その代わり、「資本主義(=負債)に追い立てられるカチカチ山の狸」
とだけ言っておこう。そして、日米両国民のリスクをでき限り少なくする手だてを考え出し
ていこうと思う。
                                     

 


ハルバッハ配列モータ

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      39  行き悩む / 水山蹇(すいざんけん)

 

                                  

         ※ 蹇とは、足なえ、ビッコのことで、行き悩ひ意味になる。
          前も後ろも「危険ががいっばい」、八方塞がりで二進も三
          進もいかない状態である。卦の形も、険阻な山(艮)と危
               険な大河(坎)を示す。こういう時はなるべく無理をせず
          平易な道を選び、見識ある人の意見に耳を傾けることが大
          切である。それでも苦難が続くのは、どうしようもない運
          命である。「険を見てよく止まる、知なるかな」徒(いた
          ずら)に進むことなく静かにわが身をふりかえり、人徳を
          磨いて危難の時が過ぎるのを待つべきである。

 

【ルームランニング記 Ⅶ】

● さらに、ギアーアップ

 

三月に入り、ギヤーアップ。最大斜度10度、最大時速7キロメートルの1キロをマニュアルモードでウォ
ーキング開始する。それにしても、1週間が猛烈に早い。早すぎる。と言う感じ。モーニングユニットをあ
わただしく終わったら、すぐにランチユニット、そして、イーブニングユニット。特にランチユニットは忘
れていることが多い。適当にやるしかない。

 

 Halbach Array Electric Motor

昨夜の「回転する反発磁石力で空中浮遊するクアッドコプター」(「地震予知複合解析考」2017.03.01)で、
「風力発電向けハルバッハ配列モータの応用」に触れたので、今夜は、ハルバッハ配列モータ技術の現況を
ネット検索する。「永久磁石ハルバッハ配列界磁の特徴と電気機器への応用 」(森下明平工学院大学教授.
2013.06.14
)などをもとに素描してみる。前記の研究成果(下図)によると、この「デュアルハルバッハ配
列コアレスリニア同期モータ」は以下の特徴があるという。

従来のコアレスモータ/発電機との比較――同じサイズ、同じ電圧でおよそ2倍の出力が得られる。 従来の埋め込み磁石同期モータとの比較――①同じサイズで同等の出力値が得られる。②同じサイズ
で重量が20~30%軽くなる。③コギングがない。④トルクリップルが数10分の1に低減。⑤巻線
の自己インダクタンスLが数百分の1。⑥製造時に金型が不要。⑦鉄芯が無いためコイルスペースが広
い ⇒ 巻線損失の低減。

以上のような特徴をふまえ、想定用途として、

小形風力発電機:コギングトルクがない ⇒ 微風からでも発電可能。 低音域スピーカ用ボイスコイルモータ:①Lが小さい ⇒ 信号に遅れが無い、②トルクリップルが
ない ⇒ 高調波ノイズが発生しない。 インホイールモータ:重量が軽い ⇒ ばね下重量の低減。 サーボモータ:トルクリップル、コギングがない ⇒ 高精度位置決めが容易。

さらに、下記の実用化のに向けての課題が示されている。

ハルバッハ配列の製作性が良くない。量産に適した 製作方法がまだ見つかっていない。 界磁を回転させる場合、遠心力に対する対策が必 要。永久磁石を円環で固定する場合、コイルスペー
スが狭くなる。 永久磁石が高価:国産ブランド牛肉程度:1.5~2.0千円/100 g

また、「デュアルハルバッハ磁石配列を採用した高効率発電機」は株式会社アテックと工学院大学と共同開
発している(「デュアルハルバッハ磁石配列の高効率発電機」株式会社アテック 2016.05.13)。それによる
と、①出力1㌔㍗の発電機で、②96.6%の高効率発電を実現。200㍗~1㌔㍗クラスの小型発電機は東日
本大震災後、非常用などとして需要が高まったものの、発電効率は70~80%程度にとどまっており、高効率
発電機に対する社会的ニーズにこたえている。 ハルバッハ配列は一般的な磁石配列に比べて一方向に磁界
が集中する特性がある。ローター(回転子)内部は、ハルバッハ配列の磁石を外輪と内輪の2列(デュアル
)にリング状に並べて磁束密度を高める。

リングの隙間にはコアレスコイルを組み込んだ。コイルの中に鉄芯が入っていないコアレス構造なので、発
電機の回転を妨げるコギングが発生しない。これにより電気損を3%以下に抑え、損失が少ないため温度上
昇が50℃℃以下になる。毎分50回転の低回転から増速機構なしで発電を始める。同社は工学院大学とデ
ュアルハルバッハ磁石配列の設計、効率解析などで連携し、製品化することに成功。順次、最大20㌔㍗まで
の製品化を予定しており、幅広い用途に対応する。今後の課題は生産コストの引き下げと軽量化。現状はサ
ンプル販売の段階だが、価格は他社製品と比べて6割程度が高いという。量産化にあたっては原材料、製造
方法などを改めて総点検するという。




● 事例研究:特開2015-027208  電磁誘導装置 株式会社アテック

次に、国内の関連特許を例示してみよう。

【要約】

本発明の電磁誘導装置は、永久磁石23、27の着磁方向に平行な面内において、界磁空隙24の中心線Ⅱ
と永久磁石列22との間の空隙断面積a1と界磁空隙24の中心線Ⅱと永久磁石列26との間の空隙断面積
a2との比が、永久磁石列22の断面積A1と永久磁石列26の断面積A2の比と略等しい関係を有する。好
ましくは、空隙24の断面積(a1+a2)が、永久磁石列22の断面積A1と永久磁石列26の断面積A2の
平均値の1.2倍以上~2.0倍以下であることが望ましいく、電機子コイルに鎖交する磁束数を大きくでき
るようにする。
JP 2015-27208 A 2015.2.5
【符号の説明】

112  永久磁石 111  永久磁石配列 116  永久磁石 115  永久磁石配列 131  電機子コイル

【技術背景】

電動機(モータ)または発電機の磁場を高めるのに、ハルバッハ配列という永久磁石の配列方法がある。永
久磁石をN極とS極とが交互になるように配置した構造だと、磁場が磁石配列の表側と裏側の両方に発生して
しまい、磁場を有効に利用できない。これに対し、ハルバッハ配列では、永久磁石の磁極を90°ずつ回転
させながら配列しているので、磁石配列の一方の側の磁場が弱まり、その磁石配列の他方の側では、その分
磁場が強くなって、永久磁石の配列の片側に強い磁場を発生させることができる。それぞれハルバッハ配列
された2列の永久磁石配列(デュアルハルバッハ配列)の間に電機子コイルを配置した永久磁石回転電機や
リニア電動機が提案されている。そこで、永久磁石デュアルハルバッハ配列界磁を用いたコアレスモータや
コアレス発電機では、電機子コイルに鎖交する磁束数をできるだけ大きくすることが望ましいが、従来の構
造では、鎖交磁束数が最適化されておらず、さらに大きくすることが望まれている。

【実施形態】

磁極を90度ずつ回転して構成されるデュアルハルバッハ界磁について、磁極間ギャップ中央部の平均磁束
密度を等価磁気回路を用いて求めた。デュアルハルバッハ配列界磁では永久磁石列の外側で磁束密度が極端
に低くなる。また、永久磁石の比透磁率はほぼ空気と同じである。鉄などの強磁性材料を使用しなければ、
磁束集中による磁気飽和も発生しない。このため、等価磁気回路で必要な磁束密度を得ることができる。

図1は、等価磁気回路法を適用するデュアルハルバッハ配列界磁10の断面図である。デュアルハルバッハ
配列界磁10は、永久磁石13の磁極を第1の直線方向に90度ずつ回転してハルバッハ配列された永久磁
石配列12と、永久磁石17の磁極を第1の直線と平行な第2の直線方向に90度ずつ回転してハルバッハ
配列された永久磁石配列16とを備えている。

永久磁石配列12では、永久磁石配列16側の磁場が強めあい、永久磁石配列16側と反対側の磁場が弱め
あうように永久磁石13が配列されている。永久磁石配列16では、永久磁石配列12側の磁場が強めあい
永久磁石配列12側と反対側の磁場が弱めあうように永久磁石17が配列されている。

JP 2015-27208 A 2015.2.5

図1は、永久磁石13、17の着磁方向に平行な面での断面図である。永久磁石13、17は、永久磁石
13、17の着磁方向に平行な面(紙面に平行な面)内において、共に正方形の形状を有し、同じ断面積を
有している。永久磁石13、17の着磁方向に平行な面(紙面に平行な面)内における永久磁石13、17
の断面積の平方根を1として規格化する。断面積の平方根が1なので、永久磁石13、17の断面積も1で
ある。また、永久磁石13、17は、永久磁石13、17の着磁方向に平行な面内において、共に正方形の
形状を有しているので、永久磁石13、17の一辺の長さも1となる。永久磁石配列12と永久磁石配列
16との間14の間隔(ギャップ長)をaとする。

図1に示す閉曲線は磁束線である。磁束線の形状から極ピッチ毎に同一の磁束経路が存在することがわかる。
この磁束経路を点線で示している。図1に示すデュアルハルバッハ界磁の等価磁気回路の主磁束は図1の磁
束経路を通る。また、磁気回路は磁極中心線XXについて対称に存在するので、一つの経路に係る磁気回路
は磁極ごとに線対称に連続する。今、一つの磁気回路を図2のように定義する。図2中、Rは永久磁石13、
17の磁気抵抗であり、磁極に垂直な永久磁石の断面積をS、永久磁石の磁極方向の長さをlm、真空の透
磁率をμ0として次式で表される。

数式については、上図をダブクリック参照とし省略。

図3は、等価磁気回路法を適用する他のデュアルハルバッハ配列界磁20の断面図である。デュアルハルバ
ッハ配列
界磁20は、永久磁石23の磁極を周方向に略90度ずつ回転してハルバッハ配列された永久磁石配列22
と、永久磁石27の磁極を周方向に略90度ずつ回転してハルバッハ配列された永久磁石配列26とを備え
ている。

永久磁石配列22では、永久磁石配列26側の磁場が強めあい、永久磁石配列26側と反対側の磁場が弱め
あうように永久磁石23が配列されている。永久磁石配列26では、永久磁石配列22側の磁場が強めあい、
永久磁石配列22側と反対側の磁場が弱めあうように永久磁石27が配列されている。

図3は、永久磁石23、27の着磁方向に平行な面での断面図である。永久磁石23、27は、永久磁石23、
27の着磁方向に平行な面(紙面に平行な面)内において、共に台形である。永久磁石23の数と永久磁石
27の数は同じである。永久磁石23の数および永久磁石27の数が、例えば、64個であると、隣り合う
永久磁石23同士、または隣り合う永久磁石27同士は、180度に近い略174度の角度で接合すること
になる。従って、永久磁石23と、永久磁石27は略正方形であるとみなすことができる。

そこで、図1の場合と同様に、永久磁石23、27の着磁方向に平行な面(紙面に平行な面)内における永
久磁石23、27の断面積の平方根を1として規格化する。断面積の平方根が1なので、永久磁石23、
27の断面積も1である。また、永久磁石23、27は、永久磁石23、27の着磁方向に平行な面内にお
いて、共に略正方形の形状を有しているとみなすことができるので、永久磁石23、27の一辺の長さも1
と近似することができる。永久磁石配列22と永久磁石配列26との間の間隔(ギャップ長)をaとする。

このように、図3に示すように、永久磁石23、27の磁極を周方向に略90度ずつそれぞれ回転してリン
グ状にハルバッハ配列した永久磁石配列22、26を使用した場合も、近似的に図2の等価磁気回路となり
上述の議論をそのまま当てはめることも可能ではある。(ただし後述するように、図1に基づいて図3の電
磁誘導装置を論ずる場合、外側と内側の永久磁石配列22,26のそれぞれの永久磁石量を、界磁空隙24
の中心線Ⅱの外側と内側の空隙の体積比と一致させるのが望ましい。)

ギャップ長aを0.25、0.5、1.0、1.5、2.0とした場合の直線YY上のy方向磁束密度By
の磁極間平均値B0、γおよびδをパラメータとして(4)式より得られたBavの値を下表1に示す。

1中、γ=0.25、δ=0.25は幾何学的な中心を磁気回路の経路として選択した場合である。また、γ
=0.10、δ=0.25はB0とBavの誤差を最小にする値、Bτは2次元有限要素法磁界解析による解析値
でByの極ピッチ間平均値である。ここで、極ピッチ間の磁束密度が正弦波状に分布していると仮定すると、
その磁束密度平均値BavτはBavの1/√2倍である。BτとBavτの誤差はγ=0.20、δ=0.22で最
小となる。

図1に示すように、永久磁石13の磁極を第1の直線方向に90度ずつ回転してハルバッハ配列された永久
磁石配列12と、永久磁石17の磁極を第1の直線と平行な第2の直線方向に90度ずつ回転してハルバッ
ハ配列された永久磁石配列16とを備え、永久磁石13と永久磁石17は正方形の形状を有し、同じ断面積
を有しているデュアルハルバッハ配列界磁10および、図3に示すように、永久磁石23の磁極を周方向に
90度ずつ回転してハルバッハ配列された永久磁石配列22と、永久磁石27の磁極を周方向に90度ずつ
回転してハルバッハ配列された永久磁石配列26とを備え、永久磁石23と永久磁石27は略正方形の形状
を有し、同じ断面積を有しているデュアルハルバッハ配列界磁20では、上述のように、ギャップ中心線Y
Y上のNS極ピッチ間の平均磁束密度Bavτは、

となる。ここで、Brは永久磁石の残留磁束密度であり、αは

 

である。デュアルハルバッハ界磁のギャップ中に配置される電機子コイルの鎖交磁束数Φは極ピッチあたり
の磁路断面積をS、コイル巻回数をNとすれば



となる。以下の数式は省略するが、最終的には、次のように集約される。

このように、デュアルハルバッハ配列界磁のギャップ長を、着磁方向に平行な面内における永久磁石の断面
の面積の平方根の1.2~1.5倍、永久磁石が正方形の場合には、正方形の一辺の長さの1.2~1.5
倍、永久磁石が略正方形であり、正方形であると近似できる場合には、近似した正方形の一辺の長さの1.2
~1.5倍に設定すると、電機子コイルにおいて大きな鎖交磁束数を得ることができる。

さらに、図1の空隙が直線状であるのに対し、界磁空隙24は湾曲しており、当該空隙に外形が直方体のコ
イルを挿入して電機子を形成する場合、コイルの角が界磁20に接触してはならず、また、仮に接触させた
場合でもコイルと当該界磁間に隙間が発生する。このため、デュアルハルバッハ配列界磁のギャップ長を、
着磁方向に平行な面内における永久磁石の断面の面積の平方根の1.2~2.0倍、永久磁石が正方形の場
合には、正方形の一辺の長さの1.2~2.0倍、永久磁石が略正方形であり、正方形であると近似できる
場合には、近似した正方形の一辺の長さの1.2~2.0倍に設定すると、電機子コイルにおいて大きな鎖
交磁束数を得ることができる。

しかし、図3にも示されているように円形の永久磁石列を用いると、リング状の界磁空隙24の中心線Ⅱよ
り外側の空隙と内側の空隙では、外側の空隙のほうが、断面積(奥行きを考えれば体積)が大きくなる。一
方、図1では空隙の中心線YYより上半分の空隙と下半分の空隙の断面積は等しくなる。したがって、図1
に基づいて図3の電磁誘導装置を論ずる場合、外側と内側の永久磁石列22,26のそれぞれの永久磁石量
を、界磁空隙24の中心線IIの外側と内側の空隙の体積比と一致させることが望ましい。

具体的には本発明の電磁誘導装置では、図3に示すような永久磁石23,27の着磁方向に平行な面(紙面
に平行な面)内において、界磁空隙24の中心線Ⅱと永久磁石列22との間の空隙断面積a1と界磁空隙24
の中心線Ⅱと永久磁石列26との間の空隙断面積a2との比が、永久磁石列22の断面積A1と永久磁石列26
の断面積A2の比と略等しい関係を有する。この場合、界磁空隙24の断面積(a1+a2)が、永久磁石列
22の断面積A1と永久磁石列26の断面積A2の平均値の1.2倍以上2.0倍以下であることが望ましい。

 

図6 第1の実施の形態の円筒型3相リニア同期モータ100

 図10 第2の実施の形態の三相同期発電機200を説明するための概略斜視図

以上、端折りみてきた。この懸案(スマート風力タービン)設計については、シリーズ『革命的な風力ター
ビン』の続編として、タイトルを新たに掲載していくが、当面、外国特許などの関連情報の集約作業をを続
けていく。

   




バルトーク: 弦楽四重奏曲 String Quartet No.4, Sz.91 

バルトークの弦楽四重奏曲第4番Sz.91は、1928年に作曲された弦楽四重奏曲。前作が単一楽章で、A-B-A'-
(B')という形のゆるやかな統合であったのに対し、本作は5つの楽章をもち、第1楽章と第5楽章、第2楽
章と第4楽章とが速度・拍子・形式の上で類似しており、さらに中間の第3楽章は三部形式でその第1部と第
3部がそれぞれ第1楽章・第5楽章と動機上の関連を持つ、いわゆるアーチ構造のシンメトリカルな構成と
なっている。また、打楽器的奏法や和声法では前作で示された方法論が一層徹底的に追求され、荒々しいリ
ズムと不協和な和声とをより先鋭化する特殊奏法が第3番以上に多用されており、演奏技巧上、弦楽四重奏
曲中屈指の難曲とされている。



まずは月へ!SpaceXが2018年に2人の乗客を乗せて月周回旅行を実施すると発表。嘘!?来年じゃないか。
まさか、成功すればそれを眼にする(テレビ放送などで)。何て、エライ時代に生きているんだ?!

SpaceX to Fly Two Tourists to the Moon in 2018

昆布茶をティーカップで

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      40  雪解け / 雷水解(らいすいかい)

 

                                  

        ※ 解は、文字どおり、解ける、解決すること。季節にあては
          めれば春分の頃にあたり、堅い氷が解け、万物一斉に目覚
          めるとき。そして、これまで苦しみ悩んだ難問も解決して
          新しい出発のときが来たのである。この機会を逃がしては
          いけない。すぼやく好機をつかむこと。ぐずぐずしている
          と機を逸することになる。卦の形は春雷(震)と春雨(坎)
          を表わす。まさに春耕播種のときである。怠けて日を送っ
          たのでは、一年の収穫がフイになる。厳冬を脱け出た鮮放
          感にひたるのもよいが、ここで気をゆるめてはいけない。


   ● 今夜の一曲

ハイドン: 弦楽四重奏曲 String Quartet No.76 「五度」 in D minor Op.76-2

ハイドンの弦楽四重奏曲の創作の頂点を成すともみなされることの多い作品。俗称は冒頭の五度の主
題から。各主題を関連させる構成感と自由闊達な筆致の融合が見事。「冒頭ソナタ楽章、メヌエット
楽章、途中の緩徐楽章が対照的に優美な長調曲で、終楽章は切迫感のある短調」という古典派・ロマ
ン派の短調曲の王道を行く形態であるが、実はハイドンとしては珍しいパターンとされる。

【楽曲構成】

第1楽章:Allegro、冒頭で五度の主題が示されるが、楽章全体の様々なところに五度の音型が
     ちりばめられている 第2楽章:Andante o più tosto Allegretto 第3楽章:Menuet: Presto 主部は完全なカノンになっており、異様な雰囲気を持つ。トリオへのつな
        ぎでは大胆な転調が行われる 第4楽章:Finale: Allegro ma non troppo 途中で転調しニ長調で終わる

 ● お茶しませんか 四方山話(一)

休憩に、インスタント・コーヒー(メイカー不詳)を小さめのティーカップを用意し、いつものよ
うに、食器棚を開けコーヒーの瓶に手をかけたとのとき、そのすぐ奥の昆布茶(粉末)の缶が目に
入り、気分転換にと、用意したティーカップに専用のスプーンで1杯をすくい取り、そのままカッ
プ入れ、電気ケルトのお湯を注ぎ、テーブルに運びで飲むことに。彼女がずいぶん昔に買ったティ
ーカップセットなのだが、小さすぎて使うことなく、食棚に積まれていたものを、その愛くるしい
フォルムに惹かれ最近使うようになる。後日、どこで買ったのかとたずねると、彦根銀座街の「こ
いで」という店で二人で買ったのよというわれたものの、すっかりと記憶から消えてしまっている。
その店のご主人とは、同年配で知り合いなのだが、いまは店はなく、キャッスルロード夢京橋へ移
転。雰囲気を変えてみるのもなかなかいいものだが、紅茶やジャスミン(花茶)は茶こしで入れる
ので、上写真のようにもやとした感じ眼に入り、ドリップ、もしくは、微粉末(平均粒子径など)
を最適化し見た目をすっきりさせた方が良いのではと思って、ブレイク・ブレスする。

そこで、昆布もムチンが含まれているのかとネットサーフで確認すると、納豆、オクラ、モロヘイ
ヤ、つるむらさき、里芋、山芋、なめこなどに含まれるヌルヌル成分と同じで、多糖類のガラクタ
ンやマンナンなどが、タンパク質と結合したもので、このムチン、分子量が100万-1000万で、熱に
は弱い性質があり、含有されるタンパク質分解酵素が破壊されるらしいので、胃の粘膜をうるおし
保護する働きがあり、肝臓や腎臓の機能を高める作用もあり、細胞を活性化し、老化の防止に役立
ち、また。消化を促す作用もあり、便秘改善する、そして、タンパク質を無駄なく活用させる働き
によりスタミナの増強に効果があると記されている(この作用機序:mechanism of action, mode of
action, MOAに関する情報不詳)。そういえば、深海魚のムラサキヌタウナギは、危険を察知すると
体外にこのムチを放出し海水と反応し、大量のスライムを放出し、深海鮫などの外敵から身を守る
というが、人間の髪の毛の百倍以上も細い小さな繊維が含まれ、この繊維は同サイズのナイロン繊
維やケブラー繊維よりも丈夫だということで、すでに研究開発の対象となっているという。断念!
ティーカップ一杯の昆布茶からムラサキムタウナギのムチンのこぼれ話でした。

 

  

【ハルバッハ配列モータ考】

● 特許事例:最新ハルバッハ配列電動機技術

昨夜につづき、ハルバッハ配列モータの最新技術例を特許事例から掲載する。件のモータ開発技術
者の諸君も参考にしてもらいえば幸甚。

1.特開2015-039270 発電機

この発電機は、回転方向に配列された複数の永久磁石3,4を含むロータ1と、複数の永久磁石3、
4に対向して設けられ、各々がロータ1の回転時に交流電圧を発生する複数のコイル13を含むス
テータ10と、それぞれ複数のコイル13内に設けられた複数の磁性体12とを備え、コイル13
の中心軸方向において磁性体12の長さLmはコイル13の長さLcよりも短く設定されている。
したがって、コアレス構造よりも発電量が大きくなることで、コギングトルクが小さく、発電効率
が高い発電機を提供すものである。


【図1】本発明の実施の形態1による発電機の構成を示す図
【図2】図1に示した磁性体の長さとコイルの長さとの比と、誘起電圧およびコギングトルクとの
    関係を示す図
【図3】図2に示した磁性体の長さとコイルの長さとの比を説明するための図
【図4】実施の形態1の比較例を示す図
【図6】図5に示したハルバッハ配列の効果を説明するための図

【技術背景】

水力発電や風力発電のような自然エネルギー源が入力となる場合、その変動に無駄なく追従できる
発電能力が求められる。水力発電の場合では一日を通してほぼ一定の水量が得られる場合が多いが、
風量は途絶えることが幾度とあり、発電機のコギングトルクが大きい場合は、次に回転起動できる
ための風量が発生するまで発電できない。言い換えれば、回転起動できるための風量以下の小さな
風のエネルギーは全て無駄になってしまう。

小さな水量・風量からすぐにロータが再起動することができれば、一日を通して発電機の停止時間
は短くなり、総じて発電量を上げられる。特にマイクロ水力発電には、非常時や緊急時に流水量の
小さな身近な水路に発電装置を設置した場合でも、電力を確保できることが求められる。

このように小さな水力、風力によってロータを起動させるためには、発電機のコギングトルクを低
減することが有効である。しかし、特許文献1,2では、コギングトルクを十分に小さくすること
ができなかった。また、特許文献3,4では、コアレス構造を採用したので、コギイングトルクを
ゼロにすることができるが、界磁磁束が大きく漏れ、コイルを効率よく縦断する磁束が著しく減少
するため、発電効率が大幅に低下するという問題がある。この問題を軽減する方法として、永久磁
石の使用量を増加する方法、永久磁石の磁力を強化する方法、コイル巻数を増やす方法などが考えら
れるが、いずれの方法も装置の大型化や高コスト化を招いてしまう。なので、この発明の主たる目
的は、コギングトルクが小さく、発電効率が高い発電機を提供することである。

2.US9567053B2 Outboard propulsion system for vessels:船舶の船外機推進システム

これは、ハルバッハ配列電動機の船舶への応用展開事案だ。琵琶湖の小型、船舶はこの方式を採用すれ
ば、環境への配慮や静粛性や安全性を重視した船舶の主流になるかも。

船舶の船外推進システムは、船舶のトランサム壁(5)に固定される支持構造(4)と、支持構造
(4)によって支持される複数のプロペラ(3)とを含み、格プロペラ(3)は、環状ステータ(S)
内で回転可能で環状のロータ(R)を有し、中央開口部(A)を画定するトロイド形状を有する電気
モータ(6)、ローター(R)に支持されて中心開口(A)まで延在するプロペラ(3)のブレード(
3A)である。

3.特開2016-200598 検体の検出のためのNMRシステムおよび方法

医療分野への応用展開もありそうだ。その程度かはやってみなければわからないが。

(a)溶液と磁性粒子を接触させて、液体試料1ミリリットルあたり、1×10^6~1×10^13個の磁性
粒子を含む液体試料106を生成する工程;(b)液体試料をデバイスに入れる工程であ^って、デ
バイスは、磁性粒子、多価結合剤、および検体を含む液体試料を保持するウェルを画定し、かつ、
ウェルの周囲に配置されたRFコイル110を有する、支持体を含み、該RFコイルは、1つまたは複
数の磁石およびRFパルスシーケンスを使用して生じたバイアス磁界に液体試料を曝露させることに
より生成されるシグナルを検出するように構成されている、工程;(c)バイアス磁界およびRFパ
ルスシーケンスに試料を曝露させる工程;(d)工程(c)に続いて、シグナルを測定する工程;お
よび(e)工程(d)の結果に基づいて、検体を検出する工程、を含む方法で、液体試料中の検体の
存在を検出するための方法を提供する。

 4.US9479038B2 Air gap control systems and methods :エアギャップ制御システムおよび方法

非接触で回転させるためにはエアーギャップの最適化と安定制御は、堅牢・信頼性や出力の安定にはか
かせない。この事案は、複雑で、高級である。

一実施形態において、装置は、磁束伝達部材を支持する第1の部材と、第1の部材に対して移動す
るように配置された磁束発生部材を支持する第2の部材とを含む。エアギャップ制御システムは、
第1の部材または第2の部材の少なくとも1つに結合され、第1の部材と第2の部材との間に形成
される1次磁束回路とは別個のエアギャップ制御装置を含む。エアギャップ制御装置は、第1及び
第2部材のうちの他方に、第1及び第2部材の間の距離を減少させる方向に移動することに応じて、
第1及び第2部材の一方に力を加えて、 第1の部材と第2の部材との間に第1の部材および第2の部
材の一方を実質的に中心に置く。

 【技術背景】

典型的な電磁機械は、ステータの導電性巻線を回転ロータに取り付けられた磁石によって生成され
る磁場に曝すことによって機能する。ステータとロータとの間のエアギャップの大きさは、エアギ
ャップのサイズが小さくなるにつれて、このような機械の電磁効率が向上する傾向があるため、重
要な設計変数である。一定のエアギャップサイズを維持することも、ロータとステータとの衝突を
回避し、エアギャップ内の偏心によって生じる望ましくない電流、磁束の影響および他の負荷関連
の損失を回避するために重要である。

エアーギャップサイズの一貫性は、典型的には、機械の固定子およびローター(および任意の支持
構造)が、組み立ておよび操作中に予想される外力に耐えるのに十分な剛性を有することによって
達成される。エアギャップがほぼ閉鎖されている、または閉鎖されているなど、エアギャップの大
きさに著しい違反があると、特に電磁気機械の動作中にエアギャップが損なわれた場合、装置およ
び人員にとって危険または破壊的となる。

電磁機械のサイズが増大するにつれて、最小の空隙クリアランスが維持されることを確実にするた
めの構造的剛性への依存は、必要な構造体の重量およびコストのために実用的でなくなる可能性が
ある。したがって、一定のエアギャップを維持するための代替的なアプローチが必要とされている。
増大する構造的剛性を含む既知の従来の方法と比較して、必要なギャップクリアランスを比較的低
い重量およびコストで提供する代替案を提供する必要性も存在する。

5.特開2017-005878 回転電機および非接触発電機

磁気効率がよく、磁束の漏れも少ない回転電機および非接触発電機の提案事例。

回転電機1は、第1回転軸周りに回転自在で、回転または移動する移動体の一主面から離隔して対
向配置され、かつ外周面に連なる一側面の少なくとも一部が移動体の一主面に対向して配置される
永久磁石2を備える。永久磁石2は、周状に離隔して配置され、周方向に沿って交互に異なる向き
に磁化された複数の磁極2bと、複数の磁極の間に配置され、周方向に隣接する2つの磁極からの
磁束を集中させて、移動体5の方向またはその反対方向に向ける磁束集中部材2gと、を有する。
永久磁石2は、移動体の一主面上に磁束集中部材からの磁束の変化を妨げる方向に発生される渦電
流に基づいて磁束集中部材に働く反力により、第1回転軸周りに回転し、永久磁石の前記移動体に
対向配置される前記一側面の表面速度は、対向配置される移動体の一主面の表面速度よりも遅い,
磁気効率がよく、磁束の漏れも少ない回転電機および非接触発電機を提供する。

【符号の説明】

1 非接触発電機、2 永久磁石、2b 磁極、2g 磁束集中部材、3 コイル、4 ヨーク、5 回
転体、7 フロントヨーク、8 移動体、11 ティース、12 キャリア、21 コンバータ、22
コントローラ、23 負荷

【技術背景】

特許文献(米国特許公開公報 2014/0132155号)には、非接触で発電する自転車用ダイナモが開示
されている。特許文献1の自転車用ダイナモは、自転車のホイールの回転軸と直交する方向に延び
る回転軸周りに回転する円環状の永久磁石の外周面を、ホイールの外周面に連なる一側面から離隔
して配置している。

永久磁石は、複数の磁極を周方向に並べて配置したものであり、隣接する磁極では、磁化方向が逆
になっている。例えば、永久磁石のN極がホイールの一側面に対向配置された状態でホイールが回
転すると、永久磁石からの磁束の変化を妨げる方向に、ホイールの一側面に渦電流が発生する。

この渦電流による磁束と永久磁石からの磁束との反発力および誘引力により、永久磁石は、ホイー
ルの回転方向に回転する。よって、永久磁石の周囲をコイルで巻回して、永久磁石からの磁束がコ
イルを鎖交するようにすれば、コイルから誘導電力を取り出すことができる。
しかしながら、特許文献1に開示された自転車用ダイナモには、以下の課題がある。

1.ホイールの一側面に対向配置される永久磁石の面積が限られているため、ホイールと永久磁石
 との磁気結合量を大きくできない。よって、ホイールに発生する渦電流が小さくなり、永久磁石
 の回転力も弱くなる。

2.特許文献では、永久磁石に単一相のコイルを巻回しているが、単一相のコイルでは、コイルが
 巻回していない部分の永久磁石の磁束を有効利用できないため、鎖交磁束量を増やすことはでき
 ない。また、コイルが巻回している部分の永久磁石の極性の向きが、回転軸を中心に対称である
 場合、常にコイルを鎖交する磁束の総量が打ち消し合ってしまうため、発電できないという問題
 がある。

3.永久磁石からの磁束は、空気中を伝搬するため、大きな磁気抵抗を受けることになり、磁気効
 率がよいとはいえない。

4.ヨークを用いていないため、磁束の漏れが生じやすく、また周囲に導電材料があると、磁路が
 変化してしまい、発電量に影響を与えてしまうおそれがある。


6.特表2013-509535 エネルギー変換システムおよび方法 

エアーギャップの最適化と安定制御でもこの事案はシンプルである。

エネルギー変換システムは、静止構造体と、静止構造体に対し回転するよう構成され、回転軸を規
定する回転可能な構造体とを含んでもよい。システムは、さらに、少なくとも一つのブレード部材
と、少なくとも一つの軸受機構とを含んでもよい。少なくとも一つのブレード部材は、回転可能な
構造体に取り付けられ、回転可能な構造体から半径方向外側に延び、回転軸と実質的に平行な方向
に流れる流体流と相互作用し、回転可能な構造体を回転軸の回りに回転させるよう構成される。少
なくとも一つの軸受機構は、回転可能な構造体が静止構造体の周りを回転するとき、回転可能な構
造体および静止構造体の間の半径方向支持および軸方向支持の少なくとも一方を提供するよう、配
置される。システムは、回転可能な構造体の回転を、電気および水素生成の少なくとも一つに変換
するよう構成されてもよい。
 
※ http://windofweef.jp/library/patent_room_1/370.html

                                                        この考つづく

  Mar. 1, 2017

● 世界初・米バージニア州でロボット宅配を許可する法律制定

バージニア州はロボット工学の歴史を切り開いた。宅配ロボットが歩道や横断歩道上を操作できる
法律を制定した最初の州になる。新法は昨年7月1日に施行され、先週金曜日に法律が施行。法案
を提出した2人のバージニア州の議員が、エストニアの地上宅配ロボット製造会社のStarship techn-
ologies社と提携、法案の草案を作成。新しい法律に基づいて動作するロボットは、毎時10マイルを
超えることはできないか、50ポンド(約22.7キログラム)を上回る重量で、自律的に移動すること
が許可される。この法律では、ロボットは操作者の視線内に留まる必要がないが、ロボットを少な
くとも遠隔監視し、異常が発生すればすぐさま対処する責任がある。ロボットは、横断歩道の通り
でのみ許可され、州の市町村では、市議会がより厳しい制限を課すか、または全面禁止する場合な
ど、ロボットをどのように動作させるかを規制することもできる。

また、Starship technologies 社はすでに、ワシントンDCのポストマス市、加州はレッドウッドシティ
ーで実証試験を実施、さらに、アイダホ州やフロリダ州でバージニア州と同様の法律が提案されて
いる(下写真ダブクリ参照)。すばらしいことだと思う反面、巻頭の「雷水解(らいすいかい)」
(易経)ではないが、ここは、安全・安心への配慮を十全に行うことが肝要である。

  Jan. 18, 2017

 

ハルバッハ配列な日々

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     41   損して得とれ / 山沢損(さんたくそん)

 

                                  

  
        ※ 損とは、損減、損失のことであるが、単なる損害ではなく、
          むしろ奉仕という言葉に近い。自分の力をさいて、他人に
          与える。社会に奉仕することである。一文の得にもならぬ
          ぬことをと、まわりから嘲笑されながらも、一念を貫き通
          す、これが「損」の道である。それを単なる損失と見るか、
          喜びを見出すかは、その人間の精神にかかかる問題である。
          大目的のために小欲を捨てる、損して得をとる、愛するも
          ののために自己を犠牲にする。つまり目先の利益を捨てて、
          遠い未来をからとることが大切である。卦の形は、山(艮)
          のふもとの沢(兌)、沢がおのれを低くしてこそ、山はよ
          り高くなる。

 

【ハルバッハ配列磁界の応用展開】

今夜は、風見鶏ならぬ風力翼(Wind Vane)の制動システムへのハルバッハ配列磁界の応用展開として、下記
特許事例を考察する。これにより、突然の強風や風向変化や凍結による、主に垂直型風力発電システムのリ
スクを回避回避し、高性能なスマート風力タービンの実現に役立てる。



● 特許事例:US 9291637B2 System and method for damping a wind vane
                 風力翼を減衰させるためのシステムおよび方法

風身鳥とも呼ばれる風力翼(Wind Vane)は、一般的に、風の方向を決定するように構成される。全
てではないが、大部分のタイプの風車は共通の構成要素を共有し、風向きを決定する際に同様の方法
で動作する。例えば、風車は、回転部分と静止部分とで構成される。回転部分は、尾部に結合された
ヘッドで構成、静止部分は、基部で構成、頭部および尾部は、基部に対して垂直な回転軸を中心に(
すなわち、垂直な平面に平行な方向回転軸に対し)回転する。

風力翼は、空気力学的に風と整列し構成する。特に、回転部は風向きの変化に応じ移動(例えば、回
転)するように構成。静止部分と回転部分との間の角度位置の差は風向に対応する。風車は様々な用
途に使用できる。例えば、風力エネルギー分野では、風力タービン制御システムに含まれる。これら
のタイプの風車は、タービン制御風車と呼ばれ、風力タービンは、風力の強い地域で使用され、瞬時
に方向を変える強風の影響を受ける。風力タービンが常に最大風力を受けるために、風力タービンの
運動は、タービン制御システムで制御でき、タービンの最も効率的な最大エネルギーを得る位置の決
定の際に、例えば風速および風向などの様々な風力パラメータを考慮する。

このように、タービン制御システムは、風力タービンの最適配置決定に、風向表示のための1つ以上
のタービン制御ベーンから構成される。タービン制御翼を含む風力翼の共通の特徴は、風向きが変化
したときに、回転部分が風向きを指す前に、回転軸が垂直軸を中心に数回振動する。さらに、乱気流
は、回転部分が風ベクトルに対しオフラインに位置付けされ、ある時間ずれを生じる。

例えば、運転中、タービン制御ベーンは、突風、風向の突然の変化などにより妨害され、タービン制
御ベーンを揺動させ制御不能に状態に陥る可能性がある。例えば、タービン制御ベーンは、風力ター
ビン上に配置しても、風力タービンロータの後流で動作させてもよい。このように、タービン制御ベ
ーンは、風速および方向が著しく迅速に変化し得る乱流にさらされ得る。その結果、激しく揺動し、
時には1回転することもある。タービン制御風力翼に結合され通信するタービン制御システムは、風
力タービンの適切な位置決めに、タービン制御風力翼からの指向性データに依存させもよい。

タービン制御風力翼が制御不能な場合、風力翼は、タービン制御システムにある許容誤差を超えて出
力誤差を与える可能性があり、そのデータの受信により、制御システムは、安全対策として風車を停
止するように構成されてもよい。より具体的には、タービン制御ベーンの制御不能な揺れには、風車
が現在の位置で動作し続けることが許される場合、風車を損傷させる可能性のある強風、風力翼の制
御不能な回転は、摩耗を増加させ、ベーン寿命を低下させる。

このように、タービン制御風力翼を含むいくつかの風力翼が、突風、風向変化などの外乱に対処する
ための減衰手段を有することができるが、現在の減衰手段にはいくつかの欠点――例えば、いくつか
の風車は、強風時に著しく減衰する場合があり、また微風状態で風車が応答しなくなる場合がある。
さらに、風力翼に組み込まれた加熱システムを無効にし、風力翼および風力タービンを氷結させる。

従って、この特許事例では、風力翼制動システムが、風車の少なくとも一部の回転運動を減衰させ、渦
電流が利用できる減衰構造体を有す。減衰構造体は、風速が急激に変化するのに対応するために、風
車の減衰を提供する。一方、風速が低風条件では正確な測定と応答が維持できるようにする。減衰構
造体は、風力翼の振動に対する感受性を低減し、風力翼の精度を向上する構成・構造及びその方法を
提示する。 

【実施形態】



この新規考案は、風車制動システムとその方法に関するものである。より具体的には、①風向を決定
し、②風向に対応する出力を風力タービン制御システムに伝達するように構成された風力翼を有し、
風力翼は、風力翼の少なくとも一部の回転運動を減衰させるように渦電流を誘導するように構成され
た減衰アセンブリを含む。本事例一致する減衰構造体は、風向きの急激な変化に対応するために風車
の減衰を提供する一方で、風向きが低風条件で正確な測定および応答を維持することを可能にする。
さらに、本開示と一致する減衰構造体は、風力翼の振動に対する感受性を低減し、それによって風力
翼の精度を改善することができる。

図1は、本開示に従う風力翼の図である。一般に、風力翼10は、静止部材14(以下、「ベース14」と
いう)に連結された回転可能な部材12を含むことができる。回転可能な部材12は、そこから延びる尾
部18を有する頭部16を有す。頭部及び尾部16,18は、基部14に対して、垂直軸線Aの周りに回転するよ
うに(垂直軸線Aに垂直な平面に平行な方向に回転)構成する。図示のように、垂直軸線Aは、頭部16
の中心を通って延びる。

また、動作中、回転可能部材12(頭部および尾部16,18)は、風向変化に応答して軸Aを中心として時
計回りおよび/または反時計回りの方向に移動(回転)するようにしてもよく、特に、回転可能な部
材12は、0°の範囲内で自由に回転できる。 360度 (すなわち、完全な回転)。ベース14と回転部材
12との間の角度位置の差は、風向きに対応し得る。

また、下図2及び図3は、上図1の風向羽根10の一部の分解図である。図示されているようにベース14
は、回転可能な部材12を支持するように構成された本体22を有す。本体22は、回転可能なヘッド12の
回転運動に基づいて風向を決定し、(例えば、風力タービン制御装置、プログラマブル論理制御装置
(PLC)、データロガーなど)に適用できる。特に、シャフト部材24は、本体22から垂直軸Aに沿っ
て延在してもよく、シャフト部材24は、回転部材12のヘッド部分16の一部分(すなわちボア25)をさ
らに貫通しこれに連結してもよい。図示の実施形態では、基部14は、本体22の一部分に結合されたヒ
ーター要素26をさらに含むこともできる。ヒーター要素26は、回転部材12および/または基部14を加
熱する(熱エネルギーを提供する)風力翼10が低温状態(すなわち、凍結温度以下の温度にさらされ
た風力翼10)で動作するように、風力翼10を配置することができる。回転部材12、具体的には頭部16
は、ベース14に隣接する底部に形成されたキャビティ28を含むことができる。キャビティ28は、風力
翼が組み立てられたときにベース14の一部を受けるように構成してもよい(基部14に結合された部材
12)。

特に、キャビティ28は、本体22のヒータ要素26およびシャフト部材24を受け入れるような形状および
/またはサイズにすることができる。加熱風車は、加熱風車の建設のために、加熱されていない風車
よりも高い慣性及びより低い空力減衰を有する。これらの特性は、アンダーダンピング(不足減衰・
制動)を悪化させる傾向がある。例えば、加熱された風力翼10の回転可能な部材12は、(相対的に高
い熱伝達率を有する)比較的高い密度を有する材料で構成されてもよい。回転部材12は、熱源から例
えば尾羽のような空力要素までの材料に沿った比較的短い距離で、厚い部分(すなわち、伝熱のため
の断面積がより大きい)とさらに構成してもよい。

その結果、加熱された風力翼は、平衡位置から所定の角度距離だけ比較的低いトルクを生成すること
がある。回転する構成要素の摩擦抵抗と組み合わせると、風の弱い状況では、加熱された風力翼が不
正確でありかつ/または応答しないことがある。さらに、比較的重いおよび/または回転軸と空気力学
的要素との間の比較的短い距離を有する風力翼は、微弱な空気力学的減衰特性を有す。

したがって、風向き羽根10は、低風条件での精度および応答性を犠牲にすることなく、回転可能な部
材12の回転運動を減衰させるように構成された減衰構造体30をさらに有すことができる。図示するよ
うに、減衰構造体は、第1の磁石アレイ32Aと、第1の磁気アレイアレイに対向する第2の磁石アレイ32B
とを有すことができる。図示されるように、磁石の第1のアレイは通常の位置(すなわち、本明細書
で詳細に説明されるハルバッハ配列)で示され、磁石32Bの第2のアレイは、第2のアレイ32Bに含まれ
る個々の磁石を示すために離間して描かれている。

減衰構造体30は、第1および第2の磁石アレイ32A、32Bがそれぞれの磁界を投影する固定導電体部材26
をさらに含むことができる。 図示された実施形態では、加熱素子26は導電性材料を含むことができ、
したがって、導電部材26(以下、「導電体26」という)として機能する。 他の実施形態によれば、
この開示と一致する風力翼は、加熱器部材から分離した導電性部材を有することもある。 さらに、
いくつかの実施形態によれば、本開示と一致する風力翼は、加熱素子を含まなくてもよい。

現在および第2の磁石および磁石のアレイ32A、32Bは、回転可能な部材12のヘッド部分16内で調整で
きる。特に、第1および第2のアレイ32A、32Bは、回転部材12のキャビティ16の内周に沿って画定され
た対応する凹部33A、33B内で決定されてもよい。減衰構造体30 30は、第1および第2の磁石アレイ32A、
32Bをリング部材34などの追加の凹部33A、33B内に保持する手段をさらに含むことができる。図示さ
れているように、第1および第2のアレイ32A、32Bは、頭部16の内周の少なくとも一部に分布していて
もよい。第1および第2のアレイ32A、32B内の各磁石は、円周方向導体26に対して垂直であり、渦電流
減衰を生じさせるための所与の回転量に対して導体26の導体材料のサイズより大きい長さLを有する
ことができる 詳細については、ここで説明する。

電界強度を高めるために、磁石32A、32Bのの数および/または第1および第2の磁石配列磁石の大きさ
を増加することで調整することができる。また、磁性材料には、ネオジミウム鉄ホウ素、サマリウム
コバルトおよびアルニコが含まれ得るが、これらに限定されない。磁石材料は、少なくとも部分的に
は、磁場強度、耐食性、コスト、温度抵抗、組み立ての容易さおよび/または入手可能性に関して選
択することができる。

減衰構造体30は、風向計10に低風状態での正確な測定と応答の維持のために、一方風向の急激な変化
に適応するように回転部材12の回転運動を減衰するために、渦電流を利用できるように構成されても
よい。十分に渦電流を使用し減衰制動するには、できるだけ多くの導電性材料に強い磁場生成できる
することが望ましい。(低磁場で)磁場を導体26の中に及び/又は導体26を通して(磁場を形成)投射
するおとも有す。運動の大きさ(回転)の変化を作り出すことが望ましいことがある。また、旋回す
る、近くのデバイスからの風力翼10への影響を最小限に影響を最小限にするように風力翼10に少し磁
場を生成することが望ましい場合もある。

これは、導体26の周りの1回転の間に磁場強度および極性を実質的に変化させるように構成された磁
場パターンにより達成し得る。適切な断面(例えば、厚さ)の高導電性材料を使用し、中断されてい
ない電気経路を用いて、導体26の導電率を最大にすることがに望ましいことがある。例えば、導電性
材料は、アルミニウム、銅、銀及び金を含むことができるが、これらに限定されない。

比較的強い磁場は、例えば、風力翼10の外側の強磁場が、風力翼センサに磁性材料を引き寄せ、回転
部材12内またはその上に位置するセンサ磁石を、近くの他の品物に引き付けることもできる。このよ
うな引力は、センサが風ではなくこれらの他の品目に応答している可能性があるため、センサの精度
を低下させる可能性がある。シールドはこれらの影響を低減できるが、比較的大量のシールドを使用
しなければ効果的ではない場合がある。さらに、構成に応じて、回転部材12への熱伝達は、これらの
設計選択肢のうちの1つ以上によって損なわれる可能性もある。

上図4は、本開示に一致する磁石のハルバッハ配列の一実施形態の斜視図である。また、上図5、図
1の磁石の円形ハルバッハ配列の磁束パターンを示す図である(図2を参照)。図4に示すように、
ハルバッハ配列40は、所望の磁場形成の提供に利用され、風力翼10の外部の磁場を制限することがで
きる。前述したように、例えば、磁石32A、32Bの第1及び第2配列は、ハルバッハ(Halbach)配列に
配置されてもよい。当業者によって一般に理解されるように、ハルバッハ配列は、アレイの反対側に
不等磁界を提供するように構成することもできる。ハルバッハ配列は、アレイの一方の側でそのフィ
ールドを制限するので、反対側のアレイに垂直な強いフィールドを投影しながら一方の側で遮蔽する
必要性を排除することもできる。例えば、図5に示すように、図4では、磁石41(1)-41(n)のハ
ルバッハ配列40がリング形態で示されている。しかしながら、本開示と一致するハルバッハ配列、例
えば、半円形、曲線状、棒状、シート状など、用途に応じて様々な形状および/または寸法を有すこ
もできることを留意すべきである。

図示されているように、配列内の各磁石41(1)-41(n)(以下、説明の便宜上、「磁石41」と呼ぶ
)の磁気配向は矢印で示されている。 矢印の頭はN極を示し、矢印の尾は各磁石41のS極を示す。図
示のように、アレイ内の各磁石41は、各磁石の向きがアレイ内の隣接する磁石41の向きと直角になる
ように配置することができる。図示された磁石41の向きによれば、リングの中心Cに向かって、矢印
(インナー)によって示されるように、比較的強い磁場が内半径方向に生成され得る。

リングの外面から矢印(外)で示されるように、比較的弱い磁場が、半径方向の外側に生成され得る。
図2を参照する。 図5に示すリングハルバッハ配列40の磁束パターンは、図4に示す。前述したよう
に、第1および第2の磁石アレイ32A、32Bは、 図4および図5に示すように、ハルバッハ配列であっ
てもよく、導体14がベース14(静止部分)上に配置された状態で、風力翼10の回転可能な部材12に配
置されてもよい。

別の実施形態では、ハルバッハ配列40の磁石41のいくつかの向きを逆転させ、ハルバッハ配列40の内
側および外側半径方向の磁場の強度を逆転させることができる。特に、図1のハルバッハ配列40に関
して、図4に示すように、円周方向に磁化された各磁石(例えば、41(1)および41(3))の磁場の
向きが逆転している間に、ハルバッハ配列40の各半径方向に磁化された磁石(例えば41(2)および
41 )は、変化しない。 第1および第2のアレイ32A、32Bにおける放射状に磁化された各磁石の向き
が逆転すると、比較的弱い磁界が内側半径方向に生成され、比較的強い磁界が外側半径方向に生成さ
れ得る。この実施例(半径方向に磁化された各磁石の向きを反転させる)によれば、磁石32A、32Bの
第1および第2のアレイは、風羽根10のベース14(静止部材)の一部に配置されてもよく、導体26は、
回転部材12の一部に配置されている。

この例を続けると、導体26が第1および第2のアレイ32A、32Bと磁極片との間に位置するように、磁極
片(図示せず)を配置することができる。磁極片は、外部磁場を低減および/または最小にするように
構成されてもよい。


上図6は、図4の風力翼の部分断面斜視図である。図示のように、第1および第2の磁石アレイ32A、
32Bは、頭部16の空洞28の内周の一部に沿って配置されてもよい。 第1および第2のアレイ32A、32B
の磁石のそれぞれは、永久磁石であってもよく、ベース14上に配置された導体26に関連する磁界を投
影するように構成されてもよい。前述したように、磁石の第1および第2のアレイ32A、32Bはハルバッ
ハ配列であってもよい。

少なくとも第1のアレイ32Aの各磁石の磁化方向が示されている。 他の実施形態では、第1および第
2のアレイ32A、32Bをベース14(固定部材)上に配置し、導体26を回転可能部材12上に配置すること
ができることに留意されたい。ベース14上に配置された固定された第1および第2の磁石アレイ32A、
32Bの周りを回転する。したがって、上述したように、第1および/または第2のアレイ32A、32Bの磁石
のうちのいくつかの磁石の向きは、逆転されてもよい。より具体的には、半径方向に磁化された磁石
の磁場の向きは、周方向に磁化された磁石の磁場の向きが同じままである間に逆転されてもよい。

上図7は、図3の風力翼10の回転可能な部材12およびベース14の部分断面斜視図である。図1には、
減衰アセンブリ30によって供給される磁束36および渦電流38が示されている。図示のように、回転部
材12のヘッド部分16が基部14に対して回転すると(矢印20で示す)、第1および第2の磁石アレイ32A、
32Bにより生成された磁界(磁束36)によって、導電性材料26の一部の磁界強度および方向を変化さ
せる。変化する磁場は、導体26内に流れる電流(矢印38で示す渦電流)を誘起することができる。

より具体的には、渦電流38は、第1および第2のアレイ32A、32Bの磁石(Lenz 'Law)の磁場(すなわち
磁束36)に対抗する第2の磁場(図示せず)を生成することができる。これにより、第2の磁界は、第1
及び第2のアレイ32A、32Bの磁石の運動に対抗し、回転部材12のヘッド部分16の運動に対抗し、渦電
流ダンピングを生じ得る。 誘導された渦電流38は、ベース14に対するヘッド部分16の回転に対抗し、
それによりベース14に対するヘッド部分の角速度に比例する減衰を提供する。言い換えれば、減衰に
より提供される減衰組立体30は、ベース14に対する回転部材12の回転速度に比例する。 渦電流38に
よりて生成される「抗力」は、回転部材12の回転速度に比例し、零回転速度でゼロに減少するように
構成される。従って、回転速度依存抗力は、低風速方向感知精度に影響を及ぼさず、比較的高い風速
で羽根旋回を減衰させる可能性がある。

また、上図8Aおよび図8Bは、所与の風速において従来の風車(ハルバッハ・アレイを有さない風車)
の減衰を示す大きさおよび位相対周波数のプロットである。また、図9Aおよび9Bは、下図9の風力翼
の減衰を示す大きさおよび位相対周波数のプロットである。 (ハルバッハ配列を有する)図1の従
来の風羽根と同じ風速で、図8Aおよび図8B。この事例と一致する減衰構造体のない従来の風力翼は、
約18dBの共鳴ピークを有する0.5と1Hzとの間の固有共振をもたらす。本開示と一致する減衰構造体
を有する風ベーンは、約5dBの共鳴ピークを生じる。他の風速でも同様の利点が生じる。


上記のいくつかの実施形態では、回転可能部材のヘッド部分にハルバッハ配列を配置し、導体をベー
スに配置したことに留意されたい。他の実施形態では、ハルバッハ配列をベースに配置し、導体を回
転可能部材のヘッド部分に配置した。ヘッド部分に配置されたハルバッハ配列を有する実施形態では、
外部磁場は、一般に、磁極片を使用せずに低減および/または除去された。しかし、この実施形態は、
風ベーンの非回転部分上の磁性材料に敏感であり得る。

換言すれば、磁石は磁性材料と整列する傾向があり、そのような整列傾向は低風速精度に悪影響を及
ぼすことがある。ベース内の磁石を回転部材内の導体材料で位置決めすることにより、磁性材料に対
する感度を低下させることができる。 しかしながら、ベースに配置されたハルバッハ配列は、磁極
片が使用されない場合には比較的減衰が少ない。このように、外部磁場を低減および/または排除す
るために、磁極片を有することができる。磁極片を使用することにより、導体の電場強度を高めるこ
とができ、および/または漂遊磁場を低減することができる。

 

 モーツァルト: フルート四重奏曲 Flute Quartet, in D, K.285

フルート四重奏曲は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲した室内楽曲で、全部で4
曲残されているフルート四重奏曲のうち3曲はマンハイムで書かれている。第1番が有名。1777年9
月、21歳のモーツァルトは職探しの目的でパリへの旅行へ、その途次、長期間滞在したマンハイムに
は、当時のヨーロッパで有数の宮廷オーケストラ。モーツァルトはこのオーケストラへの就職を希望
したが、成功せず、このオーケストラの名フルート奏者ヨハン・バプティスト・ヴェンドリングとい
う人物と親交を結ぶが、ヴェンドリングは、オランダの裕福な商人フェルディナント・ドゥジャン(
ド・ジャンとも)をモーツァルトに紹介する。音楽愛好家で、自身もフルートを吹くというドゥジャ
ンは、モーツァルトに200フローリンで「小さくて軽く短い協奏曲を3曲と四重奏曲を何曲か、フルー
トのために作って」くれるように注文。少しでも収入が欲しかったモーツァルト。これに応じ、結局
出来上がったのはフルート協奏曲第1番、第2番と3曲のフルート四重奏曲であった。しかし約束が
違うということで、報酬は当初の話の半分以下の96フローリンにされている。

【楽曲構成】

ドゥジャンのための3曲の四重奏曲の最初のもので、1777年12日25日に完成された。4曲中最も有名
な作品である。

第1楽章  アレグロ:ニ長調、4分の4拍子、ソナタ形式、フルートが輝かしく縦横無尽に活躍。 第2楽章  アダージョ:ロ短調、4分の3拍子、3部形式、弦のピッツィカートの上にフルート
     の 情緒纏綿たる悲歌が流れる。そのまま次の楽章に移行する。 第3楽章  ロンド:ニ長調、4分の2拍子、ロンド形式。精力的な楽想が連続する楽章。


● 常在戦場時代:スウェーデン再徴兵制に

 Mar. 3, 2017 CNN

 

スウェーデン政府は2日、2010年に廃止していた徴兵制を復活させると発表した。18歳の男女を対象
に来年から兵役に就かせる。ロシアがバルト海(Baltic Sea)周辺で活動を活発化させるなど、世界
的な安全保障環境の変化に対応する。

 

ペーテル・フルトクビスト(Peter Hultqvist)国防相はAFPに対し「ロシアが(ウクライナの)クリミ
ア(Crimea)を併合した現状がある」と指摘。さらに「ロシアはわが国のごく近傍での演習を増やし
ている」と警戒感を示した。スウェーデンは現代的な軍に必要な条件を満たせないとみて2010年に
徴兵制を廃止。志願制に切り替えていた。

 

今年7月1日から、1999年以降に生まれた男女全員が徴兵対象となる。スウェーデンで徴兵制が女性に
も適用されるのは初めて。兵役に就くのは来年1月1日からで期間は11か月。 7月1日以降、1999年以
降生まれの国民は全員連絡を受け、質問票への回答を求められる。回答内容に基づいて1万3000人が
招集され、毎年4000人ずつ徴集される(AFP Mar. 3.,2017)。

 

 

 

 

 

デュアルな季節病

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      43   独裁者を断罪する / 沢天夬(たくてんかい) 


                                   

        ※ 夬とは、決潰、決裂の決にあたる言葉で、切り開く、垂大事を決行
          することである。いちばん上に陰爻があり、5つの陽爻を抑えつけ
          ている,独裁者が世論を無視して圧政を布いている形である。たと
          い危険はともなっても、また非常手段に訴えても、この独裁汗を排
          除(夬)しなけれぽならぬ。剛毅な精神(乾)でそれを行なってこ
          そ、人々は悦び(兌)和らぐのである。それにほ不純な動機があっ
          てはならない。私利私欲を去って正義を貫くこと、また自己の足場
          を固めてから行なうこと、暴力はできるだけ避けることが大切であ
          る。

 

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【寒暖差アレルギーと花粉症】

季節の変わり目である3月は気温の差が激しく、「寒暖差アレルギー」が発症しやすい時期です。寒
暖差アレルギーは通常のアレルギーとは異なり、自律神経の不調によって起こるといわれ、生活習慣
の改善とともに、体を温める漢方薬が効果的ともいわれる。吾が家でも、家族皆な症状はそれぞれ異
なるものの不調を訴える。病院に行くもの(彼女)、これから行こうとするもの(息子)、そして、
病院に行こうともしないもの(僕)というふうに。それにしても、くしゃみ、偏頭痛、鼻炎と、精神
的な騒鬱感は収まりそうにない。

寒い場所から温かい屋内に移動したとき、体がかゆくなったりするのは、暑さのために体の血管が急
激に拡張し、周囲の細胞からアレルギー反応を引き起こすヒスタミンや好酸球などが放出されるため
体は寒さで体温が低下すると自律神経の働きにより、熱を逃さないよう、血管が収縮。逆に暑くなる
と血管が拡張して熱を逃がす。しかし、急激に体が冷やされたり、逆に温められたりする環境下では
この切り替えがうまくいかない、そのために起こる過敏な反応が寒暖差アレルギー。体のかゆみのほ
か、鼻炎の症状、せき、食欲不振や下痢など消化管の症状などが表れる。

すぐにできる対策としては、①衣服による調整。こまめに脱ぎ着をして、急激な温度変化にできるだ
け体をさらさないようにする。寒い日は洋服を着込むだけでなく、帽子やマフラーで首から上を保護
し、足元はレッグウォーマーで覆い、熱を逃がさない。③鼻や喉が弱い人は粘膜への刺激を避けるた
めにマスクがよい。③漢方薬で身体を温め、血流を良くする――寒暖差アレルギーの起きやすい人は
筋肉が少なく、痩せ形で冷え症タイプが多い。こうした人は血流が悪いため、血管の収縮、拡張とい
った自律神経の働きがうまくいかないというので、高齢者なども含まれるのだろうが?、そこで体を
温め、血流をよくする働きのある当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や桂枝茯苓丸(けいしぶくり
ょうがん)の処方を薦められる。また、これらの漢方薬に五苓散(ごれいさん)を併用すると、さら
に効果がアップするというが、その作用機序についてはいまいち理解できないでいるが、①室内運動
の励行、②入浴、③夜更かしや過剰作業や不節制をやめ、④最適な空調環境を作り出すことに努める。

 

それにしても、「寒暖差アレルギー」と「花粉症」のデュアルな季節病とはややこしい。

 

 

Wind turbine Fluid performance analysis

  

Design of a contra-rotating propeller type turbine

【革命的風力タービン補考Ⅰ】

しばらくハルバッハ配列磁力特性のことを調べていたら、磁石形状そのサイズと磁力強度と3次元配
置のデータ入力すれば、その「磁界支配強度図表示できるプログラムソフト」があれば便利いいなと
思ってもみたが、もう既に上梓されているのだろうけれど面倒くさいので、思考停止し、「SWT」
に関する代わりに、設計ベース思考に関する包括的な特許事例を検索する。

● 特許5521120 垂直軸タービン及びこれを備える両方向積層式垂直軸タービン

この事例は韓国のファシン マシーナリ カンパニー リミテッドの垂直型風力発電システムかんするも
のだが、金本敏明佐賀大学教授らのの「特開平10-201197 相逆転二段羽根車と内外二重回転子からな
発電装置」の相反転方式を模した上下二段タービン(下図)で、その他、二重(複合)ブレード方
式を特徴とする。 

 

【要約】

複合ブレードユニット、複合ブレードユニットに連結されるアーム、アームが連結される回転軸、及
び回転軸を支持する支持体を含む垂直軸タービンを提供し、ここで、複合ブレードユニットは、アー
ムに連結されるカセットと、カセットに回転可能に結合する遠心回転軸と、遠心回転軸に回転可能に
結合する第1ブレードと、第1ブレードに結合する遠心力対応装置と、カセットに結合する第2ブレ
ードとを備え、第1ブレードは、回転軸の回転時の遠心力に対応して遠心力対応装置で生成される力
によって遠心回転軸を中心に自体回転運動することで、低風速、低回転で有効なエネルギーを抽出す
ることができる垂直軸タービン及びこれを備える両方向積層式垂直軸タービンの構造・構成の特許で
ある。

尚、「カセット」という用語に面食らうがここでは「ケース(収納体)」と理解する。下記にこの事
例の特許請求項目を掲載する。

複合ブレードユニット、前記複合ブレードユニットに連結されるアーム、前記アームが連結さ
れる回転軸、及び前記回転軸を支持する支持体を含み、前記複合ブレードユニットは、前記ア
ームに連結されるカセット;前記カセットに回転可能に結合する遠心回転軸;前記遠心回転軸
に回転可能に結合する第1ブレード;前記第1ブレードに結合する遠心力対応装置;及び 前記
カセットに結合する第2ブレードを備え、
前記第1ブレードは、前記回転軸の回転の際、遠心力に対応して前記遠心力対応装置から加わ
る力によって前記遠心回転軸を中心に自体回転運動することを特徴とする、垂直軸タービン。 前記第1ブレードの後縁または前縁に設置される重りをさらに含むことを特徴とする、請求項
1に記載の垂直軸タービン。 前記第2ブレードは、前記回転軸を中心に回転するとき、回転方向において前記第1ブレード
より先立つ位相を持つことを特徴とする、請求項2に記載の垂直軸タービン。 前記第1ブレードは、前記回転軸を中心に回転するとき、回転方向において前記第2ブレード
より先立つ位相を持つことを特徴とする、請求項2に記載の垂直軸タービン。 前記遠心力対応装置は、圧縮スプリング、圧縮ダンパー、油圧装置、電磁弁、モーター、永久
磁石の応力装置、またはこれらの組合せを含むことを特徴とする、請求項1に記載の垂直軸タ
ービン。 前記遠心回転軸を中心に回転する前記第1または第2ブレードの回転角を制限するように、前
記カセット、前記第1または第2ブレード、またはこれらのすべてに設置されるエンドストッ
パーをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の垂直軸タービン。 前記第1ブレードまたは前記第2ブレードは、対称型、非対称型、揚力型、抗力型、またはこ
れらの組合型の翼形を備えることを特徴とする、請求項1に記載の垂直軸タービン。 前記回転軸を中心にした回転方向において前記第1ブレードの位相が前記第2ブレードの位相
より先立つとき、前記第1ブレードの初期入射角は前記第2ブレードの初期入射角より大きい
ことを特徴とする、請求項1に記載の垂直軸タービン。 前記第1ブレードの入射角は少なくとも2個の特定角に固定されることを特徴とする、請求項
8に記載の垂直軸タービン。 前記第1ブレードの初期入射角は前記第2ブレードの最大キャンバーより大きいことを特徴と
する、請求項8に記載の垂直軸タービン。 前記回転軸に対する前記第1ブレードの回転半径は前記第2ブレードより小さいことを特徴と
する、請求項10に記載の垂直軸タービン。 前記複合ブレードユニットは、3列、4列、5列、及び6列のいずれか一つが等間隔の形態で
前記回転軸に結合することを特徴とする、請求項1に記載の垂直軸タービン。 前記第2ブレードに対する前記第1ブレードの先立つ距離は前記第2ブレードの翼弦線長の2
%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の垂直軸タービン。 前記回転軸からの前記第1ブレードと前記第2ブレードの距離の差は前記第1または第2ブレ
ードの最大キャンバーの1倍より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の垂直軸タービン。 請求項1~14のいずれか一項の垂直軸タービンとして、第1方向に回転する第1垂直軸ター
ビン、及び前記第1方向の反対方向である第2方向に回転する第2垂直軸タービンを備える第
1両方向垂直軸タービンを含むことを特徴とする、両方向積層式垂直軸タービン。 前記垂直軸タービンとして、前記第1方向に回転する第3垂直軸タービン、及び前記第2方向
に回転する第4垂直軸タービンを備える第2両方向垂直軸タービンをさらに含み、前記第1及
び第2両方向垂直軸タービンは、前記第1、第2、第3、及び第4垂直軸タービンがこの記載
順に垂直方向に積層されることを特徴とする、請求項15に記載の両方向積層式垂直軸タービ
ン。 前記第1及び第2垂直軸タービンの回転軸の間で前記第1垂直軸タービンに隣接して設置され
る上部ワンウェイクラッチ及び電磁クラッチセット;及び 前記回転軸の間で前記第2垂直軸タ
ービンに隣接して設置される下部ワンウェイクラッチ及び電磁クラッチセットをさらに含むこ
とを特徴とする、請求項15に記載の両方向積層式垂直軸タービン。 前記上部及び下部ワンウェイクラッチ及び電磁クラッチセットの間に設置される発電機モジュ
ール部;及び 前記発電機モジュール部と前記上部または下部ワンウェイクラッチ及び電磁クラ
ッチセットの間に設置される出力スリップリングをさらに含むことを特徴とする、請求項17
に記載の両方向積層式垂直軸タービン。 前記第1垂直軸タービン及び前記第2垂直側タービンにそれぞれ備えられる複合ブレードユニ
ットは、前記第1または第2ブレードが回転方向または前記回転方向の反対方向に一定角だけ
傾いた形態、または連続曲線形態を備えるか、あるいは遠心力方向または前記遠心力方向の反
対方向である回転軸方向に一定角だけ傾いた形態を備えることを特徴とする、請求項15に記
載の両方向積層式垂直軸タービン。


以上のように、この事例は垂直軸風力タービンのダリウス型タービンの初期起動問題を解消するため
に、低風速、低回転で有効なエネルギーを抽出するためのタービンブレードの多重迎え角を具現する
垂直軸タービンの提供にあり、また、都心の間歇的な風に速かに反応して定速度に到逹することがで
きる構造を持つことにより、高効率及び高稼働率を提供することができる両方向積層式垂直軸タービ
ンを提供することになどを目的としている。

①つまり、多重迎え角を具現する二重ブレード構造のタービンブレードを用いることにより、第1方
向に回転するブレードを備えた上部タービンと第1方向の反対方向である第2方向に回転するブレー
ドを備えた下部タービンの自己起動性を向上させることができ、

②さらに、上部タービンと下部タービンが自体回転速度を増加させることができ、規定風速以上の風
速で停止(カットアウト)速度とならなくて一定の速度で定着して安定して回転するようにすること
ができる特徴をもち、

③また、大型風力発電に適用されるピッチ制御及びストール制御を機械的な要素だけで具現すること
ができ、精密運転制御のための別途のプログラムや装置を設置しなくても優れた発電効率及び利用率
を得ることができる。

● 複合ブレードユニットの特徴

本事例の複合ブレードユニットを備えた垂直軸タービンは、単純構造の二重ブレードを備えた既存の
垂直軸タービンに比べ、次のような利点を持つ。このような違いは垂直軸タービンの性能及び効率の
違いを伴う。

  1.ブレード配列において、外側の翼(第2ブレードに対応)より内側の翼(第1ブレードに対応)
  が回転軸中心から回転方向に一定角だけ先立つ位相を持つ配列を備える。
  2.外側の翼を基準として内側翼の位置または半径は最大キャンバーの約1倍以上の距離を持つ。
  3.外側翼と内側翼は機械構造学的入射角が違うので、内側翼は外側翼より大きな角を形成する。
  4.内側翼と外側翼によって形成される入射角が違う。
  5.入射角が違うので、内側翼と外側翼のベクターが違って同一方位角で迎え角が同じになる。
  6.全区間で干渉部位がない。
  7.B地域とD地域で入射角が“0”であるとき、理想的な迎え角が小さいが、入射角がある場合、
  B地域とD地域で迎え角が改善して出力が向上する。
  8.内側翼または外側翼のフラップ(Flap)の機能によって上限速度制御機能を持つ。
  9.2個以上のブレードを組み合わせる(複合ブレードユニットに対応)場合、回転半径の回転面
  方向に配列されるので、ブレードの有効面積を広げることができる。
  10.前後の配列による内側翼の後流が外側翼の引入側で空気密度を高くし、一部層流で剥離される
  後流のベクターは後端の外側翼の迎え角改善に役立ち、前端から流れた流動が後端の外側翼の層
  流につながって全体的に表面積が大きい効果を発生させて揚力特性を改善させる。
  11.初期回転方向に前進して配置された、つまり位相が先立つ内側翼の位置及び入射角によって抗
    力ベクターが増加して初期起動及び低風速で卓越した性能を示す。

● 両方向積層式垂直軸タービンの特徴

発電機において電気を誘導するための方法には、コイルを持つ回転子を固定し、磁石を有する界磁石
を回転させる方法と、その反対に界磁石を固定し、回転子を回転させる方法の二通りがある。ところ
で、両方向発電機においては、この回転子及び界磁石を互いに反対方向に回転させて、導体であるコ
イルと磁束が分布されている磁界内の導体との相対速度を2倍に増加させて誘起起電力を2倍以上に
発生させる原理を用いる(下図17、18参照)

例えば、水平軸の両方向発電機1700は、図17に示すように、水平型タービンの翼に相当する仮
想の空気流動管内に流入する空気の総エネルギーを前端のブレードで1次電気エネルギー(V2)に
変換し、その後流のエネルギーを後端のブレードでエネルギー(V4)を吸収する方式で構成されて
いる。ここで、流入風速の総エネルギーを1次及び2次ブレードで分散吸収するため、結局1個のブ
レードで得たエネルギー総量と同量のエネルギーを生産するようになり、よってこのような両方向発
電機ではブレードの相互逆回転だけで効率を2倍に増大させることはできない。

例えば、V1の無限風速が流入するとき、V2、V4のブレードで吸収することができる理論的エネル
ギーの最大値は、損失を無視した場合、ベッツ理論またはベッツ係数によって無限風速のエネルギー
(V1)の59.3%に過ぎなく、V5の値は結局V1の40.7%となる。すなわち、V5=V1-(
59.3%)となる。したがって、V2とV4から吸収するエネルギーは理論的最大値59.3%を両
分してエネルギーを発生させる。

 

一方、図18に示すように、両方向垂直型タービン1800は、それぞれのタービンに無限風速エネ
ルギー(V1、V1’)が作用し、一定の面積を持つタービンの機械的出力によるトルクが各タービ
ンを介して回転子及び界磁石に回転運動エネルギーとして伝達されて出力を2倍以上増加させること
ができる。

すなわち、上部及び下部タービンに独立してエネルギーが流入して回転子及び界磁石に同等な回転ト
ルクが発生すれば、2倍以上の電気的出力を発生することができる。
これを式で示すと、数式1及び数式2の通りである。

  [数式1]  V2=V1×59.3
  [数式2]  V2’=V1’×59.3

しかし、垂直型両方向タービンの起動(カットイン)の際、回転子コイルに電流が流れると同時にそ
の電流によって磁束が発生し、回転子は瞬間的に電動機の回転子と同様な状態となり、相対的逆トル
クによって反対側界磁石を引き寄せる力を発生させる。このような現象を電気子反作用と言う。した
がって、両方向発電機の初期起動の際、上部タービンの一部が例えば時計方向に回転するとき、下部
タービンが固定装置によって固定されない場合、前記のような現象によって下部タービンも同一方向
に引かれて行く現象が発生し、このような現象は風が流入する全区間で連続的に現れ、結局両方向発
電機の役目ができなくなる。

また、垂直軸において時間の経過につれて上部または下部のいずれか一方にだけ作用する力によって
タービンが回転するとき、必ず反対側タービンは逆回転することができる受風領域にあるか固定され
ていなければならなく、そうではない場合、むしろ独立タービン(シングル)発電機より劣る形状となることもあ
り、このように、水平軸両方向発電機に比べ、垂直軸両方向発電機はエネルギー発生効率が高いにも
かかわらず、両方向駆動を具現するための構造的問題によって実用化が遅くなっている。

図19は垂直軸タービンを備える両方向積層式垂直軸タービンの概略斜視図で、図20は図19の両
方向積層式垂直軸タービンの部分拡大斜視図。図19に示したように、両方向積層型垂直軸タービン
1900は、多重迎え角機能がある複合ブレードユニットをそれぞれ備える複数の垂直軸タービン
1910~1960、それぞれの垂直軸タービンの上下側でそれぞれの垂直軸タービンを支持する支
持三脚1904a、1904b、それぞれの垂直軸タービンの一対の支持三脚1904a、1904
bを連結する支持棒1906、それぞれの垂直軸タービンの支持棒1906を連結するカップリング
部材、及び両方向垂直軸タービンの下部を支持する支持台1902を含む。支持三脚、支持棒、カッ
プリング部材、及び支持台のそれぞれは説明の便宜上簡単に支持体と言うことができる。複数の垂直
軸タービン1910~1960は二個ずつ対をなしてほぼ垂直方向に3列積層された構造を備える。

各対の垂直軸タービンは、第1方向に回転する複合ブレードユニットを備えた上部タービンと、第1
方向の反対方向である第2方向に回転する複合ブレードユニットを備えた下部タービンとからなる。
言い替えれば、3個の両方向垂直軸タービンは実質的に同一の構成及び形態を備えるので、その中で
いずれか一対の垂直軸タービン、例えば上部タービン1940及び下部タービン1930を中心とし
て説明する。

発電機は、回転子または界磁石のいずれか一方が固定され、外部の機械的回転動力によって磁界内の
導体を移動させて磁束を切る速度によって誘起起電力を発生させる装置である。発電機の出力を決定
する要素は、磁束密度、導体有効長、導体が磁束を断続させる速度によって決まる。ここで、磁束密
度と導体の長さは製作当時に定格設計値によって一定の値に決まり、磁束を切る導体の回転速度は結
局発電機の可変的出力に起因する。一方向発電機とは異なり、両方向発電機は、回転子と界磁石の回
転を独立的にして相互に逆方向に回転した加速の力で速度を倍加させる結果として発電機の出力特性
を向上させる。

両方向垂直軸タービン1900は、副タービン回転軸2004に結合される上部複合タービンカセッ
トユニット2000d、上部タービン下部ベアリングハウジング2010、上部ワンウェイクラッチ
及び電磁クラッチセット2020、発電機モジュール部2030、出力スリップリング2040、下
部ワンウェイクラッチ及び電磁クラッチセット2050、支持体1904a、1904b、1906、
及び他の副タービン回転軸2003に結合する下部複合タービンカセットユニット2000cを備え
る。上部及び下部複合タービンカセットユニット2000d、2000dのそれぞれは前述した複合
ブレードユニットに対応する。

回転子と同一の回転軸に結合された上部連結カップリングによって上部タービン1940が時計方向
に回転するとき、下部タービン1930がフリー(Free)状態にある場合、つまり受風領域では
ない場合、電気子の反作用によって同一方向に引かれて行く現象を防止するために、下部タービン
1930の回転軸2003から伸びた同一回転軸に下部タービン1930の回転を円滑にする上部ベ
アリング及び下部ベアリング(下部タービンの上下部ベアリング)とは別に下部タービン1930の
上部ベアリングの上端回転体支持三脚(支持体)1904a上にワンウェイクラッチを挿入設置する。
ワンウェイクラッチは一方向にだけ回転し、反対方向の力によってはロック機能を果たす。

このような構造によれば、上部タービン1940が時計方向に回転するとき、ワンウェイクラッチの
ベアリングによってワンウェイクラッチの外輪が支持体に固定され、内側は発電機の界磁石側に連結
され、電気子の反作用による発電機界磁石が回転子である上部タービン1940の時計方向回転に対
してロック機能を果たすことで、界磁石側回転軸が支持体に固定されたように作動することができる。

その後、下部タービン1930が受風領域に入れば、ワンウェイクラッチのベアリングは順風向(例えば、反時計
方向)に回転することができることにより、両方向発電機の起動問題を解決することができる。上部ワンウェイ
クラッチまたは下部ワンウェイクラッチはそれぞれ電磁クラッチとともに上部または下部ワンウェイクラッチ及び
電磁クラッチセット2020、2050内に一体的に構成されている。電磁クラッチは一般的に採用される装置であ
る。

上部タービン1940と下部タービン1930の間に上部ワンウェイクラッチ及び電磁クラッチセッ
ト2020と下部ワンウェイクラッチ及び電磁クラッチセット2050を設置し、上部ワンウェイク
ラッチ及び電磁クラッチセット2020と下部ワンウェイクラッチ及び電磁クラッチセット2050
の間に発電機モジュール部2030と出力スリップリング2040を設置する。両方向垂直軸タービ
ンにおいて、上部及び下部のそれぞれの電磁クラッチは、両方向発電機の特性上、一方向発電機に比
べ、電気子と界磁石が交差する相対速度が2倍となるので一定の速度で回転速度(RPM)を制御す
る必要があり、上部と下部を同時にまたは別個に作動することができるように電気制御的プログラム
コントローラを含むことができる。すなわち、上部及び下部のそれぞれの電磁クラッチには、上部と
下部を同時に制御する機能、上部を単独で制御する機能、下部を単独で制御する機能などを含むこと
ができる。

上部と下部タービン1940、1930は機械構造学的に複合ブレードユニットにおいて停止(カッ
トアウト)なしに一定の速度で制御されることができるが、機械的欠陥ないし破損の発生時、非常装
置により電気的にブレイキングさせる機能を備えることができる。このように、前述した実施例によ
れば、複合ブレードユニットを備えた両方向風力発電機が2個以上複層に積層された両方向積層式垂
直軸タービンを提供することができる。


以上、この事例はわたし(たち)がめざす革命的風力タービンに近いものとなっているようにみえる
が(比較データがないので要確認)、後は最適化のための詰めが残る。「ブレードとアーム」の可変
については絶対的な設計条件でなく、ローカルな設計条件と考える。

                                        この項了

  ● 今夜の一曲

ラヴェル : ピアノ三重奏  Piano Trio  M.67 

ピアノ三重奏曲イ短調は、モーリス・ラヴェルが1914年の夏に作曲した室内楽曲。ピアノ三重奏曲を
作曲するにあたって、ラヴェルはこのジャンル自体が作曲上の困難を持っていることを意識していた。
どうやってピアノと弦楽器の対照的な音色を調和させるか、またどうやって3つの楽器のバランスを
取るか、特にチェロを聴き取りやすくするためにはどう他の楽器と対置すればいいかという点である。
音色の調和については、ラヴェルは管弦楽的な書法を持ち込むことで対処した。各楽器をきわめて広
い音域において大胆に用いることで、通常室内楽には見られないような豊かなテクスチュアを作り出
したのである。また彼はトリル、トレモロ、ハーモニクス、グリッサンド、アルペジオといった色彩
効果を自由に用いているが、これは3人の奏者に高い技術を要求することになった。一方、テクスチ
ュアの明快さと各楽器のバランスを保つためラヴェルは、ヴァイオリンとチェロを2オクターヴ間隔
で配置し、その間にピアノの右手のパッセージを挟む書法を頻繁に用いている。『三重奏曲』の音楽
素材の着想は、バスクの舞踏からマレーシアの詩に至るまで幅広い分野から得られている。

イ短調、全4楽章。楽章構成は、ソナタ形式とロンド形式の第1楽章・第4楽章を挟んだ古典的なも
のであるのに対し、調性については旋法や五音音階の使用も目立ち、調という枠組みで括りきれない
面も多い。第1楽章や第4楽章に現れる混合拍子、第2楽章の小節線とややずれたアクセント、第3
楽章のオクターブによる単純な伴奏が、この作品の民謡的な性格や異国趣味/古代趣味的な情緒を醸
し出している。

  

今宵も技術がてんこ盛り

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      44   女王蜂のような女 / 天風后(てんぷうこう) 


                                   

        ※ 后とは、邂逅の遁と同じで、偶然の出会いのことである。「夬」に
          おいて小人の勢力を駆逐して、平和な時代がおとずれたと思ってい
          ると、思いがけぬところで災禍に見舞われることを意味する。卦の
          形は、一本の陰気--が、五本の陽気を乗せている、つまり一人の女
          が五人の男を相手にしている形、水商売ふうの女でしかも相当なや
          り手である。そういう方面には良い卦であるが、結婚の相手として
          は良くない。「女を取るに用いることなかれ」とある。それはそれ
          として、この卦を悪い面からばかり見てはいけない。偶然の出会い
          は、美しい人間模様を生むこともあるのだ。

 




【極寒の大地にワンディ・ビルトイン】

● 日本で誕生した3Dプリンタ技術で一日で家一軒が完成

築物を3Dプリンターで出力する試みがオランダをはじめとして世界中で行われている。このほど、
ロシアの建設用3Dプリンタ開発企業「Apis Cor」は、建設現場にプリンタを持ち込み、全自動無人
でわずか1日で建物を3Dプリントすることに成功する。

※ 「スリーディプリンタとは」 閲覧室|548 情報工学

 





The first on-site house has been printed in Russia | Apis Cor. We print buildings  fEB. 20, 2017

モバイル3Dプリンタ技術を使用した最初の家は、モスクワのStupinoの町に建設。 Apis Cor社とPIK
社、昨年12月にこのプロジェクトを完了している。建設に掛かった時間はわずか24時間という驚
異的な時間でプリント完了させ、壁構造完成後、クレーンマニピュレータを用いてプリンタを建物か
ら取り外した。建物面積はすべてで38平方メートル。このプロジェクトの主な目的の1つが、機器
の柔軟性と利用可能なフォームの多様性を示すことで、今回の単層住宅の設計は珍しいケースである。

重要なことは印刷インクであるコンクリートが5℃以下では印刷できないため、建設物全体をテント
で覆蓋し5℃以上を保持しながらの印刷作業のため複雑を極めたことにあるが無事完遂させることに
成功する。協力企業の1つ三星電子は湾曲の壁を建設の制御カメラなどのハイテク機器を担当、また、
テクノニコル株式会社は、信頼性の高い効率的な建築資材メーカーの1つ。 1992年以来市場で活動し
ている同社は、屋根材、ハイドロアコースティック断熱材、輸送および道路建設のソリューションの
豊富な製造に関する企業技術を保有し、独自の製品と技術を提供してきている。ドイツのBitex Reibep-
utz 社は50年以上にわたり、ペイントや補強材の開発、製造、マーケティングビジネスをリードして
きているが、同社の鉱物性装飾石膏(Reibeputz)である高い接着性と蒸気透過性とファサードペイント
を備えたKOROEDは、耐久性と耐候性に優れる。最後に、Fabrika Okon社は、気候制御機能を備えた断
熱/保温二重窓を設置。

【主な仕様】

①幅:76ミリメートル、②チャンバー数:6、③防音設備:クラス4、④耐寒性:-60℃以上、
⑤製品の寿命:50年以上、⑥不法侵入防止システム、⑦内空調制御システム、⑧内部インテリア什
器類のバスルーム、リビングルーム、コンパクトな機能的なキッチンなどは下写真参照。⑨建設費:
275ドル/平方メートル(約2万8千円/平方メートル)、⑩その他:従来の構造技術と比較し
て、最大70%のコスト削減、さらに、従来、工期は2ヶ月程度掛かるが1/60に短縮。

 

 


 doi: http://dx.doi.org/10.1104/pp.16.01814

● ダイコンの辛み成分を作り出す遺伝子を発見

ダイコンの食味を特徴付ける辛み、たくあんの黄色やにおいは、グルコシノレート(カラシ油配糖
体)の一種であるグルコラファサチン(4-メチルチオ-3-ブテニルグルコシノレート:4MTB-GSL)の
分解産物により生成することや、グルコラファサチンを全く含まず辛み成分の質が変化した突然変
異体の存在がこれまで知られていたが、この成分を合成する鍵酵素は不詳であった。

2014年に東北大学の北柴大泰准教授らがダイコンのドラフトゲノム情報を発表したことから、グル
コラファサチン合成酵素の同定に向けた研究が加速し、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機
構)らの研究グループは、今月3日、グルコラファサチン合成酵素遺伝子を発見したことを公表。
この研究の詳細は米国植物生物学会誌「Plant Physiology」に掲載された。

今回の研究成果を利用して、農研機構野菜花き研究部門では原因遺伝子の塩基配列情報をもとに開
発したDNAマーカーを利用し、種苗会社と共同で、グルコラファサチンが合成されず辛み成分の組成
が変化したダイコン品種である「悠白」と「サラホワイト」を育成。これらの品種は、保存中にた
くあん臭や黄変が生じないため、フレッシュ感のあるダイコン加工品の開発が進められている。




 
● 近接場結合を用いた3D集積、電力効率の1桁改善を

積層メモリを革新するTCIとHDSV

 Nov. 30, 2012

 「ムーアの法則が死んだといわれているが、果たして本当に死んだのだろうか」、冒頭、芝浦工業大
学グリーンイノベーション研究センターが、2017年2月に開催した「第4回グリーンイノベーション
シンポジウム」で、黒田忠広慶應義塾大学教授がかく語る(EE Times Japan 2017.03.01)。

それによると、ムーアの法則は、性能コスト比を改善できなくなったときに終わる。コストはリソグ
ラフィ技術で決まり、性能は電力効率で決まる。リソグラフィ技術に関しては限界に近づくと、トラ
ンジスタの単価は上がる。事実16nmからトランジスタの単価が上昇しているが、EUV(極端紫外線)
の導入で解決することが期待されている。つまり、本質的な問題は、電力が上限に達して集積を妨げ
ること」であり、電力効率(=処理性能/電力)の改善なくして、性能改善なしということである。
それでは、電力効率が重要なのは、電力が上限に達してしまい集積しても電源を投入できないトラン
ジスタ「ダークシリコン」の問題からも分かる。28nmプロセスでは、ダークシリコンの比率はゼロ、
だが、集積化が進むほどその比率は増加する。20nmでは33%、16nmで45%、10nmで56%、7nmで75%
5nmになると80%と跳ね上がる。



電力が増加する要因は、スケーリングの副作用による。1980~1990年代にかけて、電圧一定のスケー
リングで動作速度を優先した結果、デバイス内部の電界は非常に高くなった。1995年以降は電界一定
のスケーリングに切り替えたが、高電界でキャリアが速度飽和し、電圧を下げたとしても電力が効果
的に減らなかった。

そこで、低電力化への方策として、①低電圧化、②低容量化、③低活性化があるが、③の低活性化は、
スイッチングの回数を減らすために、代わりに、効率の高いアルゴリズムを見いだすことが必要なた
め、現実的でなく、①②の低電圧化と低容量化に期待が掛かる。

①低電圧化に向けて立ちはだかる課題はリーク電流。トランジスタが微細になればなるほど、ゲート
の支配力が低下するため、リーク電流が増加する。全体の電力における約20%がリーク電流になる電
源電圧よりも下げてしまうと、消費電力は全体としてかえって増えてしまう。

Mar. 1,  2017


● 低電圧化に向けた3つの方法

そこで、リーク電流を減少させる方法として、①トランジスタの構造を変えることである。これまで
にも①Ultra Thin Bodyや②FinFET、③ナノワイヤによる新しい構造が検討されてきた。④トンネルFE
T(T-FET)も期待されているが、トンネル現象を利用するためオン電流が小さく、FinFETに比べて実
用化が難しい。現在、電源電圧0.3Vに向けて研究が進んでいる。0.3V以下になると、素子のばらつき
が多くなるため、誤り検出、誤り訂正といった“回復力に富む機能”が求められるなど、設計が困難。
理論的に電源電圧の限界値は、0.036Vであが、そのため低電圧化による電力低減の余地は、あと2桁
(E=CV2のため)残る。



● 積層メモリを革新するTCIとHDSV

黒田教授の電力効率の改善へ提案は、チップやモジュールの接続をTSVやコネクターなどの機械式から
電子式の「近接場結合」による3D集積へと変えることにある。「Suica」など電子マネーに用いられ
ている近接場は、移動通信などに用いられる遠方場と比較して、少し距離が離れると急激にエネルギ
ーが減衰するため通信距離が短い。しかし、あまり飛ばないために混信せず、見えない配線があるか
のように対象へ届く特長を持つ。黒田教授らの研究グループは、近接場結合を用いた集積技術の開発
を行ってきたのが①「TCI:ThruChip Interface」と②「TLC:Transmission Line Coupler」となる。

①は、磁界結合を用いた積層チップ間通信である。磁界は、配線や基板があったとしても、チップの
中をきれいにすり抜ける。①はウエハー工程の中で、標準CMOSチップの多層配線を巻くだけのため、
追加のプロセスが必要なTSV(シリコン貫通ビア)と比べてコストメリットが高い。設置場所にも制
約がなく、転送速度もTSVの2倍以上とする512Gバイト/秒、通信電力も低いとメリットを強調する
が、電源はどうするのか?の疑問に貫通電源をインプラで低コストに作る『HDSV:Highly Doped Silic-
on Via』の実現性を検証しているとのこと。HDSVでは高濃度で深い不純物ウェルを用いて積層チップ
に給電する。シリコン基板を十分に薄くすると、不純物ウェルが高濃度のまま裏面に到達するため、
裏面側のチップとオーミック接合ができる。TCIとHDSVを組み合わせることで、メモリが容易に積層
可能となり、電力の大幅な削減が期待できる見通しと同教授はいう。

TLCとは、電磁界結合を用いた非接触のコネクターとなる。隣接した並行する信号の影響で発生する
クロストークノイズを活用することで、非接触のコネクターを実現。伝送速度は、最大12Gビット/秒
を超えるという。通信距離の増加や、インピーダンスの整合が取れるため広帯域であるといった特長
を持つ。非接触にしたことで、防水や防じんなどの耐性も強くなり、ディペンダビリティ(自立的自
己修復的な動作:dependability)を損なわないる。電力効率の改善なくして、性能の改善はない。その
ためには、低電圧化と低容量化が求められる。最先端の研究では、低リークなデバイスとディペンダ
ブルな回路システムで0.3Vを目指し。加えて、TCIとTLCを用いたチップとモジュールの3D集積により
電力効率の1桁改善を目指すという。




なるほど、「新しいコンピュータと集積回路を求めて――コンピュータとICの短い歴史と一つの未来
」ということですか!?短時間で理解するには骨の折れることだが、近接場接続を手がけたのが2000
年前後だから、早いもので20年近くなるのかと進歩のスピードを改めて確認する(いつものこと
で"スカタン"でも繰り返し学習すればわかってくる」と割り切りここは前を進むことに。

   
DOI: 10.1109/IRMMW-THz.2013.6665821 THz.2013.6665821

● 光波長変換によりテラヘルツ波を高感度に検出

近年、電波と光波の中間の周波数帯であるテラヘルツ波領域の研究開発が進み、基礎科学だけでな
く産業利用への応用開発が進む。テラヘルツ波領域には指紋スペクトルと呼ばれる物質固有の吸収
ピークが数多く存在しているため、この特性を利用した非破壊センシング・イメージング技術は、
安心・安全な社会を実現するための基盤技術の一つとして注目されているが、これまでは必要な性
能を得るため光源や計測装置の冷却が必要だった。そこで、生活環境で使用可能な非破壊センシン
グ・イメージング技術を実現に、室温で動作する高性能なテラヘルツ波光源およびテラヘルツ波計
測技術の開発が急がれている。今月3日、浅田雅洋東京工業大学教授らのグループは、光波長変換
技術による小型・室温動作・高感度テラヘルツ波検出装置を用いて、東工大が開発した共鳴トンネ
ルダイオードからのテラヘルツ波放射を高感度に検出することに成功いたことを公表。



それによると、共鳴トンネルダイオード(RTD)から発生したテラヘルツ波を、光波長変換により
検出する実験。その結果、RTDから放射されたテラヘルツ波を近赤外光に光波長変換して検出する
ことに成功し、周波数1.14テラヘルツ(THz、1THzは1兆ヘルツ)のとき最小検出可能パワーとして、
約5ナノワット(nW、1 nWは10億分の1ワット)の高感度検出を実現。これは、従来の光波長変換に
よる検出と比較して100倍以上高い感度。また、光波長変換技術を用いることで、RTDの発振周波数
および出力を測定できることを示す。今回用いた実験装置はすべて室温で動作するため、生活環境
で使用可能な、テラヘルツ波領域の小型非破壊検査装置の実用化につながると期待される。



 

 

  ● 今夜の一曲

 シェーンベルク: 弦楽六重奏曲 Verklarte Nacht , Op.4

《浄められた夜》(きよめられたよる)または《浄夜》(独語:Verklärte Nacht)作品4は、1899年
にシェーンベルクがウィーンで作曲した弦楽六重奏曲。シェーンベルクの初期作品の中では、《グ
レの歌》と並んで最も有名かつ最も重要な作品の一つであり、その後たびたび弦楽合奏用に編曲や
改訂が繰り返され、シェーンベルクの主な収入源となった。リヒャルト・デーメルの同名の詩「浄
夜」に基づき、月下の男女の語らいが題材となっている。室内楽のための音詩という、きわめて特
異なジャンルを開拓したことでも有名である。1902年にウィーンで、ロゼー弦楽四重奏団とフラン
ツ・イェリネク、フランツ・シュミットによる初演が行われた際、半音階を多用した当時としては
斬新な響きや、調性の浮遊するパッセージ、さらには、あけすけに性を主題とするデーメル作品を
出典に作曲する姿勢をめぐって、波紋を呼んだ。

当初弦楽六重奏曲として作ったものを作者自身が弦楽合奏化したものだが、「浄夜」というと通常
こちらの編成を指すことが多い後期ロマン派の最後を飾る有名作品。デーメルの詩に基づく表題音
楽であり、月夜の晩の恋人たちの散歩で、女性が別の男性の子供を宿していることを告白し、男性
がそれを受け止め自分たちの子供として育てようと2人の強い愛を語る、というもの。 

Zwei Menschen gehn durch kahlen, kalten Hain;
der Mond läuft mit, sie schaun hinein.
Der Mond läuft über hohe Eichen;
kein Wölkchen trübt das Himmelslicht,
in das die schwarzen Zacken reichen.
Die Stimme eines Weibes spricht:

Ich trag ein Kind, und nit von Dir,
ich geh in Sünde neben Dir.
Ich hab mich schwer an mir vergangen.
Ich glaubte nicht mehr an ein Glück
und hatte doch ein schwer Verlangen
nach Lebensinhalt, nach Mutterglück

und Pflicht; da hab ich mich erfrecht,
da ließ ich schaudernd mein Geschlecht
von einem fremden Mann umfangen,
und hab mich noch dafür gesegnet.
Nun hat das Leben sich gerächt:
nun bin ich Dir, o Dir, begegnet.

Sie geht mit ungelenkem Schritt.
Sie schaut empor; der Mond läuft mit.
Ihr dunkler Blick ertrinkt in Licht.
Die Stimme eines Mannes spricht:

Das Kind, das Du empfangen hast,
sei Deiner Seele keine Last,
o sieh, wie klar das Weltall schimmert!
Es ist ein Glanz um alles her;
Du treibst mit mir auf kaltem Meer,
doch eine eigne Wärme flimmert
von Dir in mich, von mir in Dich.

Die wird das fremde Kind verklären,
Du wirst es mir, von mir gebären;
Du hast den Glanz in mich gebracht,
Du hast mich selbst zum Kind gemacht.
Er faßt sie um die starken Hüften.
Ihr Atem küßt sich in den Lüften.
Zwei Menschen gehn durch hohe, helle Nacht.

日本語訳例 URL:http://blog.livedoor.jp/audimax1/archives/50705587.html

  

 

ランチタイムがヤバイ

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        45  砂漠のオアシス / 沢地萃(たくちすい) 


                                          

        ※ 萃の原義は草が群生していることで、転じて、人や物が集まるとい
          う意味に用いられる。地(坤)上沢水(兌)が集まり、草木が茂り、
          人が集まり、交易が行なわれる。ちょうど砂漠のオアシスである。
          旅行く者はオアシスに遇って、天の恵みに感謝する。この卦は、現
          在の繁栄は天や祖先の霊の恩寵である、それに感謝することを忘れ
          て自分の力を過信してはならぬ、と戒めるのである。また沢水が地
          上に集まる形から、洪水あれども農作、あるいは湖・温泉を示すと
          考えることもできる。昔から「鯉、竜門に登るの象」とも言われ、
          入試・就職・人事異動などには大吉の卦である。

● ランチタイムがヤバイ

 
正午前、食事の準備がちょっと問題になっている。というより、冷凍食品を解凍し電子レンジで頂
くにしても、即席ラーメンに湯を注いで頂くにしても、その動作、作業がいらつくのだが、その原
因が、体調不良からくるのと、構想づくりの作業のダブルに効いてのこともわかっている。兎に角、
具材の準備や、キャベツをざく切りやフライパンで炒め物をする時も、出来上がったもの食べると
きも、いらつき、面倒くさい。今日はまだましで、構想がまとまれば自ずと復調すると確信する。
それというのも、自分では料理は元来、上手い方だと思っているのだが、今日は、手の掛からない、
冷凍たこ焼きとキャベツとベーコンの炒め物とホットミルク。いずれも電子レンジで加熱するだけ
のもの。この日も面倒くさく感じながらも、キャベツを切り、市販のベーコンと混ぜ合わせ、醤油、
オリーブ油、塩こしょうし、お気に入りの有田焼のタジン鍋に蒸し野菜にし、たこ焼きと合わせ頂
いたが申し分ない(同封のたこ焼きソースは不使用)。こんな体験初めて、自分でも不思議だ。

 

 

 May. 20, 2016

携帯可能な電子レンジ、NXPのRFパワートランジスタで実現 ↑

電子レンジ正しくは電子レンジオーブンが家庭調理器具が定着して久しいが、前記のように、加工
食品技術の進歩と相まって、安全で栄養バランスの良く、なによりも衛生的で、安価で手軽に、本
格的な調理に近い食事が手早く美味しく頂けるようになったことに感謝しなければならない。また、
電子レンジは、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの小売店にも設置され、このよう
な店舗では、食品を購入したひとが、レジにて精算した後、この食品を電子レンジに入れて温めて
から持ち帰ったり、店員のひとが食品を電子レンジで温めてから購入したひとに渡すサービスが行
なわれている。 

ところが、電子レンジは、レンジ内の食品などにマイクロ波を照射して誘電加熱するのだが、マイ
クロ波を発生させる機器には、従来からマグネトロンが用いられてきた。このマグネトロンから出
力されたマイクロ波は、導波管内を伝播して、電子レンジの加熱室内へ供給される構造だが、マグ
ネトロンから出力されるマイクロ波は、指向性が低い。このため、加熱対象全体を加熱することは
できても、部分的に加熱することができない。

例えば、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどでお弁当が販売されているが、通常、複
数の食品が収容され、ご飯や煮物などのように温めた方がよいものもあれば、果物や漬物などのよ
うに温めない方がよいものもごちゃ混ぜされていることから問題がある。このブログでもこのこと
を取り上げてきた。この「特開2016-110750 マイクロ波加熱方法及びマイクロ波加熱装置」(下図)
は、この問題解決ために、①加熱する部分の情報を容器から取得する工程→②要加熱部の位置を特
定する工程→③半導体素子で構成したマイクロ波発生部がマイクロ波を発生する工程→④加熱室内
にマイクロ波を供給する工程→⑤マイクロ波の位相を変化させることで、要加熱部を加熱する加熱
工程とを有した方法が提案されている。

Jun. 20, 2016

 

また、このマイクロ波加熱装置は、半導体素子を用い、マイクロ波発生部と、マイクロ波の位相を
制御する位相制御部と、加熱室内にマイクロ波を供給する給電部と、要加熱部に関する情報を加熱
部特定情報として容器から取得する情報取得部と、要加熱部の位置を特定する情報制御部と、位相
制御部を制御してマイクロ波の位相を変化させることで、加熱制御部とを備えた構成である。

【実施例1】

電子レンジ1は、上図2に示すように、マイクロ波を発生させて加熱室13の内部に供給するマイ
クロ波供給手段20の構成として、半導体素子を用いたマイクロ波発生部21(21a、21c)
と、マイクロ波発生部21の出力を2分配する電力分配部22(22a、22c)と、電力分配部
22(22a、22c)のそれぞれの出力から任意の位相ずれを発生させる位相制御部23(23
a~23d)と、位相制御部23の出力を増幅する増幅部24(24a~24d)と、増幅部24
により増幅されたマイクロ波出力を加熱室13内に放射する給電部25(25a~25d)と、増
幅部24と給電部25とを接続するマイクロ波伝送路に挿入され給電部25から反射する電力を検
出する電力検出部26(26a~26d)と、操作パネル15を構成する複数のボタンやダイヤル、
タッチパネルなどの操作部151が操作されたことを検知する操作検知部27と、電力検出部26
により検出される反射電力に応じ、マイクロ波発生部21の発振周波数と、位相制御部23の位相
調整量と、増幅部24の増幅量を制御する加熱制御部28と、加熱室13に収納された加熱対象物
の容器40から情報を取得する情報取得部31と、取得された情報にもとづいて加熱対象物の加熱
部分を特定する情報制御部32とを備える。

マイクロ波発生部21は、例えば、トランジスタなどの半導体増幅素子と、タンク回路などの共振
回路で構成されている。このマイクロ波発生部21には、例えば、ハートレー型発振回路または
ルピッツ型発振回路
などを用いることができる。電力分配部22は、例えばウィルキンソン型分配
器であってもよく、あるいは、ブランチライン型やラットレース型のような出力間に位相差を生じ
る分配器であってもよい。この電力分配部22によって各々の出力には、マイクロ波発生部21か
ら入力されたマイクロ波電力の略1/2の電力が伝送される。位相制御部23は、印加電圧に応じ
て容量が変化する容量可変素子を用いて構成し、電力分配部22(22a、22c)から各々出力
されるマイクロ波電力の位相差を0度から±180度の範囲で制御することができる。 増幅部24
は、位相制御部23から出力されたマイクロ波を増幅する機能を有した素子又は回路である。

この増幅部24には、例えば、窒化ガリウム(GaN)を半導体材料として用いて形成されたトラ
ンジスタなどの半導体素子を使用することができる。GaN材料は、一般に広く知られている半導
体材料のシリコン(Si)と比べると、エネルギーバンドギャップが広い。また、GaN材料は、
Si半導体素子に比べると、高耐圧、高速動作、低損失に素子を構成することが可能となる。この
ため、GaN半導体素子を増幅部24に用いることによって、その駆動電圧を高めることができ、
駆動電流の軽減を図ることができる。



また、増幅部24は、低誘電損失材料から構成した誘電体基板の片面に形成した誘電体パターンに
て回路を構成し、各増幅部24の増幅素子である半導体素子を良好に動作させる整合回路を配置す
ることができる。 給電部25は、加熱室13を構成する内ケース12の壁部16a、天面部16b、
底面部16cに設けられており、増幅部24によって増幅されたマイクロ波出力を加熱室13内に
放射する。この給電部25には、例えば、アレーアンテナを用いることができる。アレーアンテナ
は、複数配置された放射素子(給電素子)251のそれぞれの給電電力と位相を制御することで、
近接場の電場強度を変化させ、マイクロ波の所望の指向性を実現する。これにより、加熱対象物の
部分加熱が可能となる。  アレーアンテナの放射素子251には、例えば、マイクロストリップア
ンテナ(パッチアンテナ)、スロットアンテナ、ダイポールアンテナなどを用いることができる。

また、給電部25には、例えば、平面アレーアンテナを用いることができる。平面アレーアンテナ
は、複数の放射素子251を平面状に配置したプレーナアレー(Planer array)である。配列方法と
しては、例えば、放射素子251をマトリックス状に並べる4角配列や、千鳥状に並べる3角配列
がある。さらに、給電部25は、放射素子251の励振係数の相対位相によってマイクロ波のビー
ム方向や放射パターンの制御を行うフェーズドアレーアンテナ(位相走査アンテナ)を用いること
ができる。フェーズドアレーアンテナは、下図左上3に示すように、増幅部24から送られてきた
マイクロ波を分配する分配・合成回路252と、分配・合成回路252から放射素子251への給
電線路のそれぞれに位相制御部として挿入された移相器253とを備えており、各放射素子251
の励振位相を変化させるものである。これにより、マイクロ波の指向性の高い方向を加熱対象物に
おける所望の部分に向けて、この部分を集中して加熱することができる。

なお、図2は、給電部25を4つ配置する構成を示しているが、給電部25の数は、4つに限るも
のではなく、1つまたは2つ以上であってもよい。給電部25の数を2つとする場合、これらは、
内ケース12の各面のうち対向する二つの面、例えば、天面部16bと底面部16c、対向する2
つの壁部16aのそれぞれに1つずつ配置することができる。これにより、要加熱部を上下または
左右の各方向から加熱することができる。また、給電部25の数を複数とする場合において、要加
熱部の数が複数あるとき、1つの給電部25が1つの要加熱部を加熱し、他の給電部25が他の要
加熱部を加熱するようにすることができる。

電力検出部26は、電力検出回路(検波回路)を有しており、加熱室13から給電部25及び増幅
部24にそれぞれ伝送するいわゆる反射波の電力を抽出する。この電力検出部26は、例えば、電
力結合度を約40dBとし、反射電力の約1/10000の電力量を抽出する。抽出した電力量を
示す電力信号は、それぞれ、検波ダイオード(図示せず)で整流し、コンデンサ(図示せず)で平
滑処理し、その出力信号を加熱制御部28に入力させている。電力検出部26は、抽出した反射波
の電力を示す検出情報を加熱制御部28へ送る。


これらマイクロ波発生部21、電力分配部22、位相制御部23、増幅部24、給電部25、電力
検出部26の各々を接続するマイクロ波伝送路は、誘電体基板の片面に設けた導電体パターンの伝
送回路や、同軸ケーブルなどで形成することができる。 操作検知部27は、操作パネル15を構成
する操作部151のいずれかが操作されたことを検知すると、操作された操作部151又は操作に
より指定された内容(加熱時間、加熱対象物の種類、加熱対象物の数量、料理名、各種モード、加
熱または調理開始の指示等)を示す検知信号を加熱制御部28へ送る。

加熱制御部28は、検知信号を入力すると、操作された操作部151または操作により指定された
内容を特定し、加熱対象物の加熱処理条件を設定する。また、操作により指定された内容が料理開
始の指示であるときは、加熱制御部28は、加熱を開始するように、マイクロ波供給手段20の構
成各部を制御する。操作部151には、例えば、加熱対象物の部分加熱を行うモードである部分加
熱モードを設定するための「部分加熱モード設定ボタン」や、加熱又は調理を開始するときに操作
する「加熱開始ボタン」などを含むことができる。

加熱制御部28は、操作検知部27からの検知信号と電力検出部26からの検出情報にもとづいて、
給電部25から放射するマイクロ波の励振電界の制御および、マイクロ波発生部21と増幅部24
のそれぞれに供給する駆動電力や、位相制御部23に供給する電圧を励振方向の制御と関連付けて
制御し、加熱室13内に収納された加熱対象物を最適に加熱処理する。情報取得部31は、加熱対
象物のうち加熱する部分を要加熱部とし、加熱しない部分を非加熱部としたときに、要加熱部に関
する情報又は非加熱部に関する情報の一方又は双方を加熱部特定情報として容器40から取得する。

ここで、本実施形態において、情報取得部31は、カラーセンサであり、容器40の色を加熱部特
定情報として取得する。容器40は、上図左下4に示すように、食品などの加熱対象物が収容され
る容器本体41と、容器本体41の上部を覆う蓋部材42とを備えている。容器本体41には、加
熱対象物を構成する複数の食品を区分けして収容するための複数の収容凹部411が形成されてい
る。

蓋部材42は、上面部421が着色可能となっており、この上面部421において複数の収容凹部
411のそれぞれに対応する範囲内に、所定の色が着色されている。この着色される色は、収容凹
部411ごとに、収容される食品が加熱するものであるか否かによって決められる。例えば、収容
される食品が加熱するものであるときは、この食品を要加熱部とし、蓋部材42の上面部421に
おいて対応する範囲(この食品が収容される収容凹部411に対応する範囲)に、要加熱部である
ことを示す色(例えば赤色422a)が着色される。また、収容される食品が加熱しないものであ
るときは、この食品を非加熱部とし、蓋部材42の上面部421において対応する範囲に、非加熱
部であることを示す色(例えば青色422b)が着色される。このように、蓋部材42の上面部
421に着色される色は、要加熱部に関する情報又は非加熱部に関する情報となっている。

なお、着色は、蓋部材42の上面部421において、一つの収容凹部411に対応する範囲の全体
を塗りつぶすようにして施してもよく、あるいは、この範囲の一部(範囲の周縁や、この範囲の中
央部分など)にのみ施すようにしてもよい。また、要加熱部であることを示す色と非加熱部である
ことを示す色は、両方を蓋部材42の上面部421に施してもよく、あるいは、一方のみを施して
もよい。要加熱部であることを示す色を施しているが、非加熱部であることを示す色を施していな
い場合は、前者の色が施された範囲に対応する収容凹部411に収容された食品のみを加熱し、他
の食品を加熱しないようにする。また、要加熱部であることを示す色を施していないが、非加熱部
であることを示す色を施している場合は、後者の色が施された範囲に対応する収容凹部411に収
容された食品を加熱せず、他の食品を加熱する。

情報取得部31を構成するカラーセンサは、RGBの三つの色フィルタと、それぞれに対応する3
つのフォトダイオードと、色特定部とを備えている。フォトダイオードは、対応する色フィルタを
透過してきた光を受光すると、この光の強さに応じた信号(電流)を出力する。色特定部は、各フ
ォトダイオードから出力された信号を入力すると、これら信号の示す光の強さにもとづいて色を特
定する。

情報取得部31は、カラーセンサを一つのみ備えたものであってもよく、あるいは、複数のカラー
センサを線状に配置したものや、多数のカラーセンサをマトリックス状(行列状)に配置したもの
であってもよい。カラーセンサを一つのみ備えた情報取得部31、及び、複数のカラーセンサを線
状に配置した情報取得部31は、加熱室13の内部の所定範囲であって加熱対象物及び容器40を
含む範囲を走査し、走査線上の色を、所定間隔で多数取得する。そして、色を取得した位置の座標
とこの取得した色とを関連付け、これを加熱部特定情報として、情報制御部32へ送る。

また、多数のカラーセンサをマトリックス状に配置した情報取得部31は、加熱室13の内部の所
定範囲であって加熱対象物及び容器40を含む範囲を撮像して二次元画像を取得し、この二次元画
像の画素ごと(あるいは、複数の画素ごと)に、色を特定する。そして、各画素(あるいは複数の
画素)の座標とこの画素における色とを関連付け、これを加熱部特定情報として、情報制御部32
へ送る。

情報制御部32は、情報取得部31から加熱部特定情報を取得すると、この加熱部特定情報にもと
づいて加熱対象物における要加熱部と非加熱部とを特定する。例えば、加熱部特定情報が位置座標
と色で構成されている場合において、ある位置座標における色が赤色であるとき、この赤色に関連
付けられた位置座標に対応する加熱対象物のこの位置を要加熱部として特定する。また、ある位置
座標における色が青色であるとき、この青色に関連付けられた位置座標に対応する加熱対象物の位
置を非加熱部として特定する。加熱部特定情報が画素の座標と色とで構成されている場合も同様で
ある。

情報制御部32は、位置座標ごとに又は画素の座標ごとに、要加熱部又は非加熱部のいずれか一方
を特定すると、これら位置座標等を示す情報と要加熱部又は非加熱部を示す情報と関連付け、これ
を新たな加熱部特定情報として、加熱制御部28へ送る。なお、蓋部材42の上面部421におい
て、1つの収容凹部411に対応する範囲の周縁のみを着色している場合は、この周縁で囲まれた
範囲内にある位置座標のすべてにおいて、周縁に付された色と同じ色が付されているものとして、
要加熱部または非加熱部の別を特定することができる。

また、蓋部材42の上面部421において、1つの収容凹部411に対応する範囲の一部のみを着
色している場合は、この着色された部分を含む所定面積の範囲内に、その色と同じ色が付されてい
るものとして、要加熱部又は非加熱部の別を特定することができる。さらに、蓋部材42の上面部
421において、1つの収容凹部411に対応する範囲の一部(その範囲のうちの1/2や1/3
の範囲)のみを着色している場合は、着色された部分に対応する加熱対象物の当該部分を要加熱部
(または非加熱部)とし、これ以外の部分を非加熱部(または要加熱部)として特定することがで
きる。これにより、1つの収容凹部411の中に加熱する食品と加熱しない食品が収容されている
場合に、前者を加熱し、後者を加熱しないようにすることができる。

 なお、蓋部材42の上面部421において、1つの収容凹部411に対応する範囲の周縁のみを着
色している場合は、この周縁で囲まれた範囲内にある位置座標のすべてにおいて、周縁に付された
色と同じ色が付されているものとして、要加熱部又は非加熱部の別を特定することができる。また、
蓋部材42の上面部421において、1つの収容凹部411に対応する範囲の一部のみを着色して
いる場合は、この着色された部分を含む所定面積の範囲内に、その色と同じ色が付されているもの
として、要加熱部又は非加熱部の別を特定することができる。

さらに、蓋部材42の上面部421において、一つの収容凹部411に対応する範囲の一部(その
範囲のうちの1/2や1/3の範囲)のみを着色している場合は、着色された部分に対応する加熱
対象物のこの部分を要加熱部とし、これ以外の部分を非加熱部として特定することができる。これ
により、一つの収容凹部411の中に加熱する食品と加熱しない食品が収容されている場合に、前
者を加熱し、後者を加熱しないようにすることができる。

加熱制御部28は、情報制御部32から送られてきた加熱部特定情報にもとづいて、位置座標ごと
にまたは画素の座標ごとに、要加熱部又は非加熱部のいずれか一方を特定する。そして、加熱制御
部28は、位相制御部23又は給電部25の移相器(位相制御部)253を制御してマイクロ波の
位相を変化させるとともに放射指向性の高い方向を加熱対象物の要加熱部に向けることで、特定し
た要加熱部を加熱し、非加熱部を加熱しないようにする。

ここで、ある位置座標と、この位置座標に対応する加熱対象物の位置を加熱するときのマイクロ波
の位相とマイクロ波の位相がこの位相となるように位相制御部23また給電部25の移相器253
を制御するための位相調整量は、予め記憶部29に記憶されている。また、給電部25が四つ設け
られているが、これら4つの給電部25に接続された位相制御部23のそれぞれについて、座標と
調整すべき位相と位相制御部23の位相調整量が記憶部29に記憶されている。さらに給電部25
に移相器253を設ける構成とすることができるが、これら移相器253のそれぞれについて、座
標と調整すべき位相と当該移相器253の位相調整量とを記憶部29に記憶させることができる。

加熱制御部28は、加熱部特定情報と記憶部29に記憶された位相調整量等の情報とにもとづいて、
要加熱部であると特定された位置座標等に対応する加熱対象物のこの部分が加熱されるように、位
相制御部23又は給電部25の移相器253を制御する。これにより、要加熱部を示す色が付され
た上面部421のこの部分に対応する加熱対象物の部分のみが加熱される。また、非加熱部を示す
色が付された上面部421の当該部分に対応する加熱対象物の当該部分の加熱が防止される。

なお、給電部25の放射素子251が、例えば、マイクロストリップアンテナ(パッチアンテナ)、
スロットアンテナ、ダイポールアンテナなどを用いて構成されているときは、加熱制御部28は、
位相制御部23を制御することにより、マイクロ波の位相を制御する。また、給電部25がフェー
ズドアレーアンテナ(位相走査アンテナ)を用いて構成されているときは、加熱制御部28は、そ
のフェーズドアレーアンテナに備えられた移相器253を制御することにより、マイクロ波の位相
を制御する。

また、上図左下4においては、容器40の蓋部材42の上面部421に加熱部特定情報である色を
付する構成を示したが、容器40において色を付する箇所は、蓋部材42の上面部421に限るも
のではなく、容器本体41であってもよい。容器本体41に色を付した例を、上図右5に示す。容
器本体41には、食品を入れるための収容凹部411が複数形成されており、加熱部特定情報であ
る色(図5に示す赤色412aや青色412b)は、収容凹部411の周縁413に沿って施され
る。

収容凹部411は、凹状に形成されており、凹状の底面や側面に色を施すことも可能であるが、食
品を入れるとその色が隠れてしまう。そこで、収容凹部411の周縁413に沿って色を施すこと
で、食品による隠ぺいを回避し、情報取得部31による当該色の取得を可能としている。また、色
は、複数の収容凹部411のそれぞれの周縁413に施すことができるが、例えば、1の収容凹部
411と隣の収容凹部411がいずれも要加熱部である食品を収容するものであるときは、これら
2つの収容凹部411の周縁413を一周するように色を施し、これら二つの収容凹部411の間
に位置する仕切り部分には色を施さないようにすることもできる。

さらに、容器本体41に施された色を情報取得部31が取得可能とするために、蓋部材42の全体、
または、少なくとも蓋部材42の上面部421を透明423の材料で形成するのが望ましい。次に、
マイクロ波加熱装置である電子レンジの動作について、図6を参照して説明する。



同図は、電子レンジの動作の手順を示すフローチャートである。電子レンジ1の利用者により、電
子レンジ1の扉14が開けられ、加熱室13の内部に、加熱対象物が収容された容器40が載置さ
れ、扉14が閉められる。利用者が操作パネル15の部分加熱モード設定ボタンを操作すると、操
作検知部27は、この操作を検知して、検知信号を加熱制御部28へ送る(S10)。加熱制御部
28は、入力した検知信号にもとづいて部分加熱モードを設定する(S11)。

また、利用者が操作パネル15の加熱開始ボタンを操作すると、操作検知部27は、この操作を検
知、検知信号を加熱制御部28へ送る(S12)。加熱制御部28は、入力した検知信号にもとづ
いて加熱を開始するために、マイクロ波供給手段20の構成各部を制御する。情報取得部31は、
容器40から加熱部特定情報を取得する(S13、情報取得工程)。具体的には、情報取得部31
であるカラーセンサが、容器40の蓋部材42の上面部421に付された色を加熱部特定情報とし
て取得する。

情報制御部32は、情報取得部31から加熱部特定情報を取得し、この加熱部特定情報にもとづい
て、容器40に収容された加熱対象物における要加熱部と非加熱部を特定する(S14、要加熱部
特定工程)。マイクロ波発生部21がマイクロ波を発生し(S15、マイクロ波発生工程)、加熱
室13内に供給される(S16、マイクロ波供給工程)。このとき、加熱制御部28は、位相制御
部23又は給電部25の移相器253を制御してマイクロ波の位相を変化させることで、加熱対象
物の要加熱部を部分加熱する(S17、加熱工程)。

以上説明したように、本実施形態のマイクロ波加熱方法及びマイクロ波加熱装置によれば、半導体
素子を用いて構成したマイクロ波発生部を採用することで、指向性の高いマイクロ波を対象物に照
射できる。これにより、電子レンジの加熱室内に載置された加熱対象物の部分加熱を簡易な構成で
実現できる。また、ISMバンドに沿った周波数範囲内で、照射周波数を変化させることができる
ため、位相をコントロールさせ、加熱対象物の部分加熱や均一加熱を行うことができる。

さらに、マイクロ波供給手段は、マグネトロン発振器に比べ、小型化及び低消費電力化を達成でき、
しかも、ほとんど故障しないので、寿命を著しく伸ばすことができる。また、加熱制御部が位相制
御部と給電部の移相器を制御してマイクロ波の位相を変化させる構成としたので、加熱対象物の要
加熱部を部分的に加熱するとともに、非加熱部の加熱を防止できる。

さらに、マイクロ波加熱装置が自動的に容器から情報を取得して加熱対象物における要加熱部と非
加熱部とを特定し、要加熱部のみを部分的に加熱するので、このマイクロ波加熱装置の利用者が面
倒な作業を行うことなく、加熱対象物の部分加熱を実現できる。しかも、本実施形態においては、
容器に付された色を加熱部特定情報とするので、マイクロ波加熱装置に入れるときの容器の向きが
どのような向きであっても、情報取得部が確実にその色と位置情報とを取得し、要加熱部を示す色
が付された部分に対応する加熱対象物の当該部分のみを加熱できる。

JP 2016-110750 A 2016.6.20


カラーでなくても、モノクロパターンなどでもいい感じがするが、それはさておき、電子レンジ(
マイクロウエーブ)技術とその対象(食品・医療などの加熱装置)と絡んで創意工夫されてきそう
だ。これは楽しい。

 

   

NTNは「WIND EXPO 2017」に出展し、農業・工業用水路などに設置できる小水力発電機や、開発
中の小型風力発電機などを参考出展。小水力発電機は春頃から、小型風力発電機は年内にNK認証を
取得する計画(「NTNの新機軸、小さな風と水路を生かせる発電機スマートジャパン 2017.03.08)。
小水力発電機の他、開発中の小形の風力発電機のカットモデルも参考出展。2枚の尾翼を使った垂
直軸型の風車で、出力は10kW 級。稼働時の静謐性が特徴。17年中にNK認証を取得する予定で「18
年の早いうちに販売を開始したい」とのこと(同上)。これは面白い。

※ NK認証:風のエネルギーを利用し、発電機を回して発電する方法。小型の定義は出力20kw未
  満、風を受ける羽根の面積が計200平方メートル未満の場合、小型に分類される。一般財団法人
   日本海事協会が、国内・国際規格の基準(JSWTA国内業界規格、IEC、JIS等)を基に性能及び安定
  性についての適合性を評価しており、日本の厳しい気候への耐性や長期間の安定した操業を資
  するために第三者認証制度が必要とのことで出来た制度のこと。これは小形風車だけではなく、
  大型や浮体式洋上風車の検査も実施。NK認証の内容としては、小形風車の発電機、タワー(支
  柱)、基礎、ケーブル、制御回路(整流回路)、パワーコンディショナ、ブレーカ、そして取
  り扱い説明書を含めた発電設備の適合性の判断をしている。

   Mar. 9, 2017

● テスラ、カウアイ島に大規模な太陽発電事業を展開

カウアイ島ユーティリティ協同組合(KIUC)はテスラとの間で13.9セント(15.9 円)/キロワット時
太陽光発電る20年購入する契約を結んだ。 KIUCの社長兼CEOのDavid Bisselによると、世界最大の
太陽光貯蔵施設。テスラとKIUCは、このプロジェクトにより化石燃料の使用量が年間160万ガロン
削減されると試算している。

 

  

黒猫 そして本が届いた。

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         46  伸びゆく若芽 / 地風升(ちふうしょう) 


                                          

        ※ 升とは、のぽりゆくこと、地(坤)の下に芽を出した若木(巽)が、
          天をめざしてすくすくと伸びゆく姿を示す卦である。上昇を示す卦
          は三つある(晋、升、漸)が、順調な成長という面ではこの卦が最
          高である。勢いから言えば、旭日昇天の「晋」が最も盛んだが、ど
          うしても危険とひずみをともなうのである。この卦は、堅実に、し
          かも自信をもって向上するものを表わしている。「彖(たん)伝」
          にはその時の心構えとして、時を得ること、実力を養うこと、後援
          者を得ること、の三つをあげている。若芽には、春の季節と強烈な
          生命力と豊かな養分とが必要なのである。



 Mar. 9, 2017

● ペロブスカイト太陽電池をR2Rで量産性を証明 12.6% 

9日、薄膜太陽電池の研究開発に関するメーカーのコンソーシアムであるSolliance 社は、ローツ・
ツー・ロール(R2R)方式でペロブスカイト太陽電池(PSC)を作製し、その変換効率が面積0.1cm2
のエリアで最大12.6%だったことを発表。この変換効率は、PSCに限らず、R2R方式で作製した
太陽電池として最高水準である。 PSCは結晶Si系太陽電池を超える高い変換効率を、結晶シリコ
ン系の1/5のコストで実現できる可能性がある次世代太陽電池。現時点で、単接合PSCのセル変
換効率の最高値は22.1%だが、多くがスピンコートという方式で作製されており、量産に向い
たR2R方式での作製例はほとんどない。今回の成果により、特に、低コストでの量産可能性を確認
できたと担当者は話す。

同社は今回、30cm幅のPETフィルム上に透明導電膜のITO層を形成した市販のシートの上に室温、
大気圧下でペロブスカイト層や電子輸送層(ETL)をR2Rで積層し、乾燥、焼成した。その製造ス
ループットは、1分間で5メートルと速い。焼成プロセスの温度は120℃以下。 今後、作製した
性能バラつきを抑え、同時にさらなる高効率化を図っていき、近い将来に、より大きな測定エリア
で変換効率15%をめざす。これは楽しみだ。 

 Mar. 10, 2017

● 初の金メダル ディアルモーグルで西島行真

鳥肌が立つ。初出場の堀島行真(19 中京大)が日本男子史上初の金メダルを獲得。積極的な滑
りで頂点に立つ。世界選手権で男子の日本勢は非五輪種目のデュアルモーグルで03年に附田雄剛、
09年に西伸幸が銀メダル獲得しているが、そのモーグルでは初の金メダル快挙となる。岐阜県揖
斐郡池田町出身。生後1年でスキー好きの両親の影響を受けスキーを始める。小学校4年生でモー
グルを始める。岐阜第一から中京大に進学。W杯の最高成績は15年12月のW杯ルカ大会(フィ
ンランド)デュアルモーグル3位。2月の札幌冬季アジア大会でモーグルとデュアルモーグルの2
冠。166センチ、54キロと小柄。すごいぞ!

 Mar. 24, 2016

【ZW倶楽部:竹のバイオマス発電の原料化に成功】

日本国内に豊富に存在するものの、ボイラーで燃焼させると炉内に「クリンカ」という溶岩を生成
してしまうなどの特性から、バイオマス発電の燃料には不向きとされている竹。日立製作所はこう
した竹の性質を、一般的なバイオマス燃料と同等の品質に改質する技術の開発に成功した(スマー
トジャパン 2017.03.10)。

竹はカリウムを多量に含んでおり、灰の軟化温度が680~900度と低く、大型のボイラーで燃焼させ
ると炉内に「クリンカ」という溶岩を生成する特性がある。さらに塩素濃度も高いため耐火物や伝
熱管を腐食させやすい。そのため、一般にはバイオマス発電などの燃料としては不向きとされてい
る。 竹は国内に豊富に存在するバイオマス資源であり、成長力が非常に強い。根が森林へ拡大す
るとそこに生育する樹木の成長を阻害してしまうため、放置竹林の拡大防止や、資源としての有効
活用策の確立も課題となっている。燃料に適さないという課題を解決し、竹をバイオマス発電に活
用できるようになれば、林業と発電事業者の双方にメリットが生まれる。

  Mar. 9, 2017

脱水後の粉末で作ったペレットを燃焼させたところ、灰の軟化温度は1100度以上に向上した。塩素
濃度も人体に影響のないダイオキシン類レベルとされる木質バイオマスペレット燃料の規格レベル
まで抑えることができた。さらにこの手法を、孟宗竹、真竹、淡竹、笹や雑草類、未利用の杉の皮
にも適用したところ、同様の効果が得られることが分かったという。

同社はこうしたニーズに応える技術の開発に成功する。竹類から「燃料に不向き」の原因であるカ
リウムと塩素を溶出除去、一般的な木質バイオマス燃料と同等の品質に改質する技術。


● 木質燃焼灰は産業廃棄物か

Apr. 14, 2017

ところで、木質バイオマス燃料はをエネルギー変換する刷る方法は大きく分けて次の2つがある。

木質バイオマスを発酵しガス化し、①燃焼ボイラー、②ガスタービン発電、③燃料電池にて
変換するする方法 ※ 排熱を交換機や熱電変換素子で改修する方法。 木質バイオマスを燃焼ガス化した後、第1項と同様にエネルギー変換する方法。

このとき排熱は徹底的に回収利用するとともに、この工程で発生する廃棄物を回収し、①土壌改質
剤(肥料)、②コンクリートなどの窯業増量剤として徹底利用する。



いま、この滋賀県での木質バイオマス燃料事業(「湖の碧い四つの古城」Azure quatre vieux château
sur le lac) を構想しており、折りをみて掲載していく。

 

 Mar. 9, 2017

黒猫 そして本が届いた。

わたしの作業場は角地の南西側向きに掃き出し窓があり、いぶきの生け垣越しに車の往来がみえる。
この間などは、彼女が溝掃除をしていて、車が住宅街だというのにスピードをだして、視界を横切
るので事故が起こると直感し、しばらくすると案の定、大きな衝突音とともに衝突事故が2件も発
生する。いずれも、その被害者は町内の知り合いの方である。彼女は事故とは関係ないのだが、地
元の中小零細のデベロッパーが宅地開発した道路幅狭まく消防車が通行するのもやっとという貧相
な住宅街なのだが、今朝もヤマト運輸のトラックを室内ウォーキング中、視界を走行音とともに確
認し、今回も直感通り、玄関チャイムが鳴り、声がするのでドアを開けると、若いドライバーが宅
配物を届けてくれた。受け取り領収のサインをしながら、最近なにかと話題になっているんだねと
声をかけると、評判になっていると微笑みながら応じてくれる彼の顔をみると何とも頼もしそうな
男前の若者であった。宅配ドライバーの低賃金で、苦労が多い話(上写真)は、何もヤマトだけで
なく、この日午後に、竹馬の友から突然電話が入り、宅配ドライバーをやっている苦労(低賃金で、
顧客の対応の悪さ、大阪南の中国人観光客が歩行マナーの悪さなどの苦労や、ドライバー不足によ
る慢性的な過重労働、それだけでない、零細の宅配会社の経営継続危機に追い込まれている実情等
々)聞かされる羽目となり、長時間の電話となってしまった。もはやこれは社会問題なのだ、そう、
これが平和時の「富収奪の経路依存性」におけるところの、「常在戦場」なのだろう、「蟻の一穴」
(体制崩壊の序章)となりかねないと妄想する。それにしても、わたし「アマゾン」を利用するこ
とはやめている。その理由は唯拝金主義の経営精神のニオイを感じてのこと、これが世間言われる
外資系特有のドライさ加減なのだろう。

兎も角も、黒猫が紀伊国屋書店に発注した村上春樹の近著『騎士団長殺し』――旋回する物語そし
て返送する言葉――を届けてくれた。


 

● プロローグ

 
  今日、短い午睡から目覚めたとき、〈顔のない男〉が私の前にいた。私の眠っていたソフ
 ァの向かいにある椅子に披は腰掛け、顔を持だない一対の架空の目で、私をまっすぐ見つめ
 ていた。
  男は背が高く、前に見たときと同じかっこうをしていた。広いつばのついた黒い帽子をか
 ぶって顔のない顔を半分隠し、やはり暗い色合いの丈の長いコートを着ていた。

 「肖像を描いてもらいにきたのだ」、顔のない男は私がしっかり目覚めたのを確かめてから
 そう言った。彼の声は低く、抑揚と潤いを欠いていた。「おまえはそのことをわたしに約束
 した。覚えているかね?」

 「覚えています。でもそのときは紙がどこにもなかったから、あなたを描くことはできませ 
 んでした」と私は言った。私の声も同じように抑揚と潤いを欠いていた。「そのかおり代価
 として、あなたにペンギンのお守りを渡しました」

  「ああ、それを今ここに持ってきたよ」

  彼はそう言って右手をまっすぐ前に差し出した。彼はとても長い于を持っていた。手の中
 にはプラスチックのペンギンの人形が握られていた。お守りとして携帯電話にストラップで
 つけられていたものだ。彼はそれをガラスのコーヒー・テーブルの上に落とした。ことんと
 いう小さな音がした。

 「これは返そう。おまえはおそらくこれを必要としているだろう。この小さなペンギンがお
 守りとなって、まわりの大事な人々をまもってくれるはずだ。ただしそのかわりに、おまえ
 にわたしの肖像を描いてもらいたい」

  私は戸惑った。「しかし、急にそう言われても、ぼくはまだ顔を持だない人の肖像という
 ものを描いたことかありません」

  私の喉はからからに渇いていた。

  「おまえは優れた肖像画家だと聞いている。そしてまたなにごとにも最初というものはあ
 る」と顔のない男は言った。そう言ってから笑った。おそらく笑ったのだと思う。その笑い
 声らしきものは、洞窟のずっと奥から聞こえてくる、虚ろな風音に似ていた。
  彼は半分顔を隠していた黒い帽子をとった。顔があるべきところには顔がなく、そこには
 乳白色の霧がゆっくり渦巻いていた。

  私は立ち上がり、仕事場からスケッチブックと柔らかい鉛筆をとってきた。そしてソフア
 に腰掛けて、顔のない男の肖像を描こうとした。でもどこから始めればいいのか、どこに発
 端を見つければいいのか、それがわからなかった。なにしろそこにあるのはただの無なのだ。
 何もないものをいったいどのように造形すればいいのだろう? そして無を色んだ乳白色の
 霧は、そのかたちを休みなく変え続けていた。

 「急いだ方がいい」と顔のない男は言った。「わたしはそれほど長くこの場所に留まること
 はできない」

  胸の中で心臓が乾いた音を立てていた。時間はあまりない。急がなくてはならない。しか
 し鉛筆を握った私の指は宙にとどまったまま、どうしても動こうとはしなかった。まるで手
 首から先が痺れてしまったように。彼が言ったように、私にはまもらなくてはならない何人
 かの人たちがいる。そして私にできることといえば、絵を描くことだけだった。それなのに
 どうしてもその〈顔のない男〉の顔を描くことができなかった。私はなすすべもなく、そこ
 にある霧の動きをにらんでいた。「悪いが、もう時間が切れた」と顔のない男は少し後で言
 った。そして顔のない口から白い川霧の息を大きく吐いた。

 「待ってください。あと少しすれば

  男は黒い帽子をかぶり直し、また顔を半分隠した。「いつか再び、おまえのもとを訪れよ
 う。そのときにはおまえにも、わたしの姿を描けるようになっているかもしれない。そのと
 きが来るまで、このペンギンのお守りは預かっておこう」
  そして顔のない男は姿を消した。賞が突然の疾風に吹き払われるように、一瞬にして空中
 に消えた。あとには無人の椅子とガラスのテーブルだけが残った。ガラスのテーブルの上に
 はペンギンのお守りは残されていなかった。
  それはただの短い夢のように思えた。しかしそれが夢でないことは私にはよくわかってい
 た。もしそれが夢であるのなら、私の生きているこの世界そのものがそっくり夢になってし
 まうはずだ。

  いつかは無の肖像を描くことができるようになるかもしれない。ある一人の画家が『騎士
 団長殺し』という絵を描きあげることができたように。しかしそれまでに私は時間を必要と
 している。私は時間を味方につけなくてはならない。

                  村上春樹 『騎士団長殺し』Ⅰ部 顕れるイデア編


と、ここまで読んで、トリス・クラッシックをホット・ウイスキーを作るためにブログを掻き揚げることに。

  

 

 

 


ジョージと呼んでくれないか

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         47  臥薪嘗胆 / 沢水困(たくすいこん) 


                                          

        ※ 困という字は、かこいの中にある木で、伸びようとして妨げられ、
          苦しみ悩む状態を示している。卦の形も、満々と水をたたえるほず
          の沼沢(兌)が、涸れはてている(坎=水が下にある)姿をあらわし
          ている。また、三つある剛爻(一)がみな陰爻(--)におおわれて
            苦しんでいる譬えである。つまぬ連中に妨げられて思うにまかせぬ、
          資金難に見舞われる、何を言っても信じてもらえぬなど八方塞がり
          の時である。しかし試練の時にこそ人間の真価がわかる。越王勾践
          が、自分は呉王の家来になり、妻は呉王の婢になるという逆境にあ
          りながら、臥薪嘗胆して志を果たした故事を思うべきである。

 

 

   1.もし表面が曇っているようであれば


  その年の五月から翌年の初めにかけて、私は挟い谷間の入り口近くの山の上に往んでいた。夏
 には谷の奥の方でひっきりなしに雨が降ったが、谷の外側はだいたい晴れていた。海から南西の
 風が吹いてくるせいだ。その風が運んできた湿った雲が谷間に入って、山の斜面を上がっていく
 ときに雨を降らせるのだ。家はちょうどその境界線あたりに建っていたので、家の表側は晴れて
 いるのに、裏庭では強い雨が降っているということもしばしばあった。最初のうちはずいぶん不
 思議な気がしたが、やがて慣れてむしろ当たり前のことになってしまった。

  まわりの山には低く切れ切れに雲がかかった。風が吹くとそんな雲の切れ端が、過去から迷い
 込んできた魂のように、失われた記憶を求めてふらふらと山肌を漂った。細かい雪のように見え
 る真っ白な雨が、音もなく風に舞うこともあった。だいたいいつも風が吹いているせいで、エア
 コンがなくてもほぼ快適に夏を過ごすことができた。

  家は小さくて古かったが、庭はずいぶん広かった。放っておくと庭には線の雑草が高く繁り、
 そこに隠れるように猫の一家が往み着いたが、庭師がやってきて草を刈ると、どこかに移動して
 いった。たぶん居心地が悪かったのだろう。三匹の子供たちを抱えた縞柄の雌猫だった。きつい
 顔をして、生きていくのがやっとというように痩せていた。

  家は山のてっぺんに建っており、南西向きのテラスに出ると、雑木林の間に海が少しばかり見
 えた。見えるのは洗面器に張った水くらいのサイズの海だ。巨大な太平洋のちっぽけなかけらだ。
 知り合いの不動産業者によれば、たとえそれくらいの大きさでも海が見えるのと見えないのと
 では、土地の価値がかなり追ってくるということだったが、私としては海が見えても見えなくて
 もどうでもよかった。遠くから見るとその海の断片は、くすんだ色合いの鉛の塊みたいにしか見
 えなかった。なぜそれほど人々が海を見たがるのか、私には理解できなかった。私はむしろまわ
 りの山の様子を眺めている方が好きだった。谷間の向かい側に見える山は季節によって、天候に
 よって、生き生きと表情を変えていく。その日々の変化を心にとめるだけで飽きなかった。

  その当時、私と妻は結婚生活をいったん解消しており、正式な離婚届に署名捺印もしたのだが、
 そのあといろいろあって、結局もう一度結婚生活をやり直すことになった。
  どのような意味合いにおいてもわかりやすくないし、原因と結果との結びつきが当事者にさえ
 うまく把握できないその経緯をあえてひとことで表現するなら、「元の鞘に収まった」というあ
 まりにありきたりの表現に行き着くわけだが、その二度の結婚生活(言うなれば前期と後期)の
 あいだには、九ケ月あまりの歳月が、まるで切り立った地峡に掘られた運河のように、ぽっかり
 と深く口を開けている。

  九ケ月あまり――それが別離の期間として長かったのか、それとも短かったのか、自分ではう
 もし表面が曇っているようであればまく判断できない。あとになって振り返ると、それは永遠に
 近い時間だったようにも思えるし、逆に意外にあっという間に過ぎてしまったようにも思える。
 印象は日によって変わる。よく写真に写された物休のわきに、実寸をわかりやすくするために煙
 草の箱が置いてあったりするが、私の記憶の映像のわきに置かれた煙草の箱は、そのときの気分
 次第で好き勝手に伸び縮みするみたいだ。私の記憶の枠の内側ではどうやら、事物や事象が休み
 なく動き変化しているのと同じように、あるいはそれに対抗するかのように、一定不変であるべ
 き物差しもまた動き変化しているらしい。
 
  といっても、すべての私の記憶がそのように出鱈目に移勤し、勝手に伸び縮みしているわけで
 はない。私の人生は基本的には、穏やかで整合的でおおむね理屈の通ったものとして機能してき
 た。ただこの九ケ月ほどに限っていえば、それはどうにも説明のつかない混乱状態に陥っていた
 ということだ。その期間は私にとってあらゆる意昧合いにおいて例外的な、普通ではない期間だ
 った。そこでの私は、静かな海の真ん中を泳いでいる最中に、出し抜けに正体不明の大禍に巻き
 込まれた泳ぎ手のようなものだった。

  この時期のできごとを思い返すとき(そう、私は今から何年か前に起こった一連の出来事の記
 憶を辿りながら、この文章を書き記している)、ものごとの軽重や遠近や繋がり具合が往々にし
 て揺らぎ、不破かなものになってしまうのも、またほんの少し目を離した隙に論理の順序が素早
 く入れ替わってしまうのも、おそらくはそのせいだ。それでも私は全力を尽くし、能力の許す限
 り系統的に論理的に話を連めたいと考えている。あるいは所詮は無駄な試みなのかもしれないが
 自分なりにこしらえた仮設的な物差しに懸命にしがみついていたいと私は思う。無力な泳ぎ手が
 たまたま流れてきた本ぎれにしがみつくみたいに。

  その家に越して最初にやったのは、安価な中古車を手に入れることだった。それまで乗ってい
 た車は、少し前に乗りつぶして廃車処分にしていたので、新たに車を購入する必要があった。地
 方都市では、とりわけ山の上に一人で往んでいるような場合には、日々の買い物をするのに車は
 必需品になる。小田原市郊外のトヨタの中古車センターに行って、格安のカローラ・ワゴンを見
 つけた。セールスマンはパウダーブルーと言ったが、病気をしてやつれた人の頻のような色合い
 の車たった。走行距離はまだ三万六千キロだが、過去に事故歴があるということで大幅な値引き
 があった。試乗してみたが、ブレーキとタイヤには問題はなさそうだった。高速道路を頻繁に利
 用することもないだろうから、それでじゆうぷんだった。

  家を貸してくれたのは、雨田政彦。彼とは美大でクラスが同じだった。私より二歳年上だが、
 私にとって数少ない気が合う友人の一人であり、大学を出てからもときどき頻を合わせていた。
 彼は卒業後は画作をあきらめて広告代理店に就職し、グラフィック・デザインの仕事をしていた。
 私が妻と別れて一人で家を出て、とりあえず行き場がないことを知り、父親の持ち家が空いてい
 るんだが、留守番みたいなかたちで住んでみないかと声をかけてくれたのだ。彼の父親は雨田典
 彦という高名な日本画家で、小田原郊外の山中にアトリエを兼ねた家を持ち、夫人を亡くしてか
 ら十年ばかり、そこで気楽な一人暮らしを続けていた。しかし最近になって認知症が進行してい
 ることが判明し、伊豆高原にある高級養護施設に入ることになり、その家は数ケ月前から空き家
 になっていた。

 「なにしろ山のてっぺんにぽつんと建っていて、便利な場所とはとても言えないけど、静かなこ
 とにかけては百パーセント保証するよ。絵を描くにはまさに理想的な環境だ。気を散らすような
 ものもまったくないし」と雨田は言った。

  家賃はほとんど名目だけのものだった。

 「誰も住んでいないと家が荒れるし、空き巣や火事のことも心配たしな。誰かが定住してくれて
 いるだけで、こちらも安心できるんだ。でもまったくただというのでは、おまえも気分的に落ち
 着かないだろう。そのかおりこちらの都合で、短い通告で出てもらうことになるかもしれない」

  私に異存はなかった。もともと小型車の荷台に積み込める程度の荷物しか所有していない。引
 っ越してくれといわれれば、翌日にでも引っ越せる。
  私がその家にやってきたのは五月の連休明けだった。家はコテージと呼べそうなこぢんまりと
 した洋風の平屋建てだったが、一人暮らしには十分な広さがあった。小高い山の上にあり、まわ
 りを雑木林に囲まれていて、正確にどこまでが敷地なのか、雨田もよく知らなかった。庭には大
 きな松の木が生えていて、大い枝を四方に伸ばしていた。ところどころに庭石が置かれ、灯龍の
 脇には立派な芭蕉の木が生えていた。

  雨田が言ったように、静かなことは間違いなく静かだった。しかし今から振り連ってみれば、
 気を散らすものがまったくなかったとはとても言えない。
  妻と別れてその谷間に往んでいる八ケ月ほどのあいだに、私は二人の女性と肉体の関係を持っ
 た。どちらも人妻だった。一人は年下で一人は年上だった。どちらも私か敢えていた絵画教室の
 生徒だった。

  私は機会をつかまえて、彼女たちに声をかけて誘い(普通の状況であればまずやらないことだ。
 私は人見知りをする性格で、そういうことにもともと馴れていない)、彼女たちはその誘いをこ
 とわらなかった。なぜかはわからないが、そのときの私には、彼女たちをベッドに誘うことはと
 ても簡単で、理にかなったことのように思えた。白分か教えている相手を性的に誘惑することに
 ついて、やましさをほとんど感じなかった。彼女だちと肉体関係を持つことは、道路でたまたま
 すれ違った人に時刻を尋ねるのと同じくらい普通のことのように思えたのだ。

  最初に関係を待ったのは、二十代後半の背の高い、黒目の大きな女性だった。乳房は小さく、
 腰は細かった。顔が広く、髪がまっすぐで美しく、体つきに比べて耳が大きかった。一般的な美
 人とはいえないかもしれないが、画家ならちょっと絵に描いてみたくなるような、特徴のある興
 味深い顔立ちをしていた(実際に私は画家であり、実際に何度か校女をスケッチしてみたことが
 ある)。子供はいない。夫は私立高校の歴史の教師で、家では妻を殴った。学校で暴力を振るう
 ことができず、そのぷんの鬱屈を家で晴らしているようだった。でもさすがに顔は段らなかった。
 彼女を裸にすると、身体のあちこちにアザや傷跡があることがわかった。彼女はそれを見られる
 のを嫌がって、服を説いで抱き合うときにはいつも部屋の照明を真っ暗にした。

  彼女はセックスにほとんど興味を待っていなかった。いつも性器の湿り気が足りず、挿入しよ
 うとすると痛みを訴えた。時間をかけて丁寧に前戯をし、潤滑ゼリーを使っても効果はなかった。
 痛みは激しく、なかなか収まらなかった。痛みのためにときどき大きな声を上げた。
  それでも彼女は私とセックスをしたがった。少なくともそうすることを嫌がらなかった。どう
 してだろう? あるいは彼女は痛みを求めていたのかもしれない。あるいは快感のなさを求めて
 いたのかもしれない。あるいは彼女は何らかのかたちで自分か罰されることを求めていたのかも
 しれない。人は自らの人生に実にいろんなものを求めるものだから。でも彼女がそこに求めてい
 ないものがひとつだけあった。それは親密さだ。

  彼女は私の家に来ることを、あるいは私が彼女の家に行くことをいやがったので、我々はいつ
 も私の車で、少し離れた海岸沿いにあるカップル用のホテルまで行って、そこでセックスをした。
 ファミリー・レストランの広い駐車場で待ち合わせをし、だいたい午後の一時過ぎにホテルに入
 り、三時前に出てきた。そういうとき彼女はいつも大きなサングラスをかけていた。曇っていて
 も雨が降っていても。でもあるとき彼女は待ち合わせの場所にやってこなかった。教室にも顔を
 見せなくなった。それが彼女との短い、ほとんど盛り上がりのない情事の終わりだった。彼女と
 性的な交渉を待ったのは、全部で四回か五回だったと思う。’

                    村上春樹 『騎士団長殺し』Ⅰ部 顕れるイデア編


「家の表側は晴れているのに、裏庭では強い雨が降っているということもしばしばあった」「人は自
らの人生に実にいろんなものを求めるものだから。でも彼女がそこに求めていないものがひとつだけ
あった。それは親密さだ」という箇所が今夜の特徴ある残像である。前者は、「生きることの陰影」
の隠喩、後者は「性的関係」の不可避性の暗示であろう。

【鍵語】顔のない男

 

  ● 今夜の一曲

チャイコフスキー: ピアノ三重奏曲 Piano Trio「偉大な芸術家の思いで」, in a, Op.50

チャイコフスキーのピアノ三重奏曲イ短調作品50は、1881年から1882年にかけて作曲された。旧友ニ
コライ・ルビンシテインへの追悼音楽であるため、全般的に悲痛で荘重な調子が支配的である。作品
に付された献辞にちなんで『偉大な芸術家の思い出に』(いだいなげいじゅつかのおもいでに)とい
う副題ないしは通称で知られている。楽器編成は、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ。本作品、とりわ
け第2楽章は、ピアノに高度な演奏技巧が要求され、ピアノを用いるあらゆるチャイコフスキー作品
のなかで、おそらく最も演奏が至難である。50分近い演奏時間にもかかわらず、息を呑むような抒情
美や、壮大かつ決然たる終曲によって今なお人気が高い。それでは、ゆるり堪能することに。

 ● 今夜の一枚

ジュブリルタンで、昼を済ませ、伊吹山が綺麗ので写真を撮るということで、絶景アングルスポット
があるので、開出今の湖岸に案内する。天気はいいのだが霞んでいるため惜しい。そこは編集でなん
とかする。ところが、吹きつける強風でさすがに薄着では寒い。急いで車に乗り込む。ムッシュ・ス
カタンもたまには実力を発揮するのねと同乗する彼女が言うので、マダム・スカタン、今後は、わた
しのことを、ジョージ・スカタン、否、ジョージと呼んでくれないかと返事する。そんな会話を交わ
し帰宅する。

※ 定義:ジョージ・スカタンとは、常時失敗をしでかすジャージをこよなく愛用する日本の年金受
     給高齢男性(単数形/複数形)をさす。 

  

バイキングの船舶隧道計画

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         48  清水をたたえる井戸 / 水風井(すいふせい) 

 

 

                                          

         ※ 井とは井戸のこと。卦象は水(坎)の下に木(巽)があり、井戸に
          釣瓶を入れた形である。井戸はそのたたずまいはひっそりとしてい
          るが、汲めども尽きぬ生命を持つ。人間生活に欠くことのできない
          ものでありながら、ふだんはその有難味が忘れられている。あらゆ
          る人間に開放されており、行きずりの旅人もその恩恵を受ける。井
          戸はまた時々さらわねばならぬ。新陳代謝が必要である。井戸には
          釣瓶がなければならない。せっかくの清水も汲み上げられず、空し
          く腐ってしまう。井戸は移動することもない。ジッと居場所を守っ
          ている。これらの性質を人事にあてはめて考えさせるのがこの卦で
          ある。

 Mar. 12, 2017

世界初!ノルウェイに船舶隧道計画

数年後、ユニークな体験ができる山の中の1.7キロメートルのトンネルを横断し、航行できるかも
しれない。世初の船舶隧道(トンネル)が発達することはノルウェーの次の大きな観光資源となるだ
ろう。"Stad Ship Tunnel"は、フィヨルド・ノルウェーで開催予定のメガ・プロジェクトの名称です。
ノルウェー沿岸局は、有名な建築デザインスタジオ"Snøhetta"により描かれたプロジェクトから新しい
理念提案図を公表。

この船舶隧道は、長さ1.7キロメートル、高さ49メートル(底から天井)、幅36メートル、建
設費は300億円。この事業で、新たなフィヨルド観光スポットを創出する。また、ノルウェー沿岸
を航行する Hurtigruten (フッティルーテン)級大型船(下写真ダブクリ)が、厳しい天候で有名な
"Stadhavet 海" を安全航行できるように設計されており、また、経済的効果だけでなく、繊細な風景
に融和し高い美的価値を付加する設計となっている。計画どおりに進めば、一日あたり70~120
隻の船舶が通過できる。隧道は"" Moldefjord"の南アクセスから北アクセス"Selje" に渡り建設され、観
光客は隧道を通過する船舶を見ることができる。

 Hurtigruten

このような船舶隧道建設案は、最初の計画は1870年代の早い時期に行われ、1世紀以上にわたって議
論されてきたが、"Stad"は老朽化した面倒な地域として知られてい。歴史家はバイキングが"Stadhavet" 
の航海の危険回避に海岸沿いに牽引していたことを記録を残している。建設開始は2019年ごろの予定。
スケール大きな話なのだが、隧道掘削技術からみれば、運河開発事業に大きなインパクトを与える話
題である。これは面白い! 

  
                                       Stad Ship Tunnel      

 

  Feb. 22, 2017   

Australian consortium launches world-first digital energy marketplace for rooftop solar

【RE100倶楽部:分散エネルギー取引所とは何か】

● 市場価格に応じて自主的に「売電」

石炭大国オーストラリアは、再生可能エネルギーへと急速に舵を切っている。太陽発電システム(太
陽光)の導入量が急増している。今後は発電した電力の融通について世界初の取り組みを始めるという。
太陽光と蓄電池を導入した家庭や企業が自由に参加する分散エネルギー取引所「deX(Decentralised
Energy Exchange)」が6月に開設がする。これは、固定価格買取制度(FIT)、自家消費、さらにそ
の次を実現する形となる(「FITの二歩先を行く、世界初の分散太陽光市場」スマートジャパン、
2017.03.10)。6月からパイロットプログラムを開始、主導するのは系統内で電力資源をどのように
利用するか、ソフトウェアによって最適化を進める企業GreenSync。同社によればdeXの開設によって、
再生可能エネルギーへのより効果的な投資が促されるため、インフラへの不必要な数十億ドルの投資
を避けることを可能にする。同社の発表資料の中で、オーストラリアの屋根の15%以上に太陽光発
電設備が載っている。これら全てが協働して系統を補うことができれば、再生可能エネルギーがより
一層普及する。エネルギーミックスを進める際、再生可能エネルギーの信頼性が高まり、不規則な発
電が問題にならなくなるという。

 Jul. 18, 2016

固定価格買取制度(FIT)や再生可能エネルギー利用割合基準(RPS)など、再生可能エネルギー導入
を促す政策は国ごとにさまざま。例えばFITによって太陽光の導入量が十分増えたとしよう。現在の
日本のような状況だ。その後、計画的にFITの買取価格が下がっていき、最終的にはゼロになる。FIT
を導入した全ての国がこのような流れをたどる。その後は発電した電力を家庭や企業が自家消費する
ことになる。買取期間中に導入コストを償却しているため、系統から電力を購入するよりも安く付く)。
しかし、自家消費だけでは太陽光の能力を十分に生かしてはいない、さらにもう一歩前進できるので
はないかという発想が、deXを生み出す。

太陽光の発電能力は時刻や季節によって規則的に変化し、天候によって不規則に変わる。電力需要も
同じ。このような状況に対応する手法は大きく2つある。全ての発電設備を中央で制御するというもの。
もう1つは全てを分散処理すること。deXが狙うのは後者。市場で電力が余っているとき(電力の価
格が下がっているとき)は蓄電し、不足したとき(上がったとき)に放出する。これをdeXに参加す
る家庭や企業が、deXの提示する価格に従って個別に判断する。一方的に売電するFITとは全く異なる。
このような処理にソフトウェア技術を利用し、設定に応じて自動処理することもdeXの特徴だ。手動
で切り替える必要はない。各家庭や企業が能力に応じて発電し、必要に応じて電力を受け取る形にな
る。 

● deXが必要なのはオーストラリアだけなのか

deXの取り組みは不必要なインフラへの投資を避ける結果につながるというのがGreenSyncの狙い。現
在のオーストラリアでは、太陽光発電設備や蓄電池などのリソースが、エネルギー市場へ積極的に参
加することができない。電力の需給とはいわば無関係であり、系統の信頼性維持には役立っていない。
分散型の再生可能エネルギーをdeXによって調整し、取引すること。これによってエネルギーミックス
を進め、再生可能エネルギーを高い割合で用いた場合の信頼性や安定性、電力コストの課題を解決で
きる可能性がある。電力会社の指令に従って送電(売電)を停止する取り組みは短期的に必要だ。だ
が、deXのような取り組みを参考にして、その次を考える必要があるだろうとこの記事は結んでいるが、
当然といえば当然で誰が考えてもそうなるだろうが、最初に考え行動したこのグループに感謝の次第。

 

 

   1.もし表面が曇っているようであれば

  その次に関係を持ったもう一人の人妻は、幸福な家庭生活を送っていた。少なくともどことい
 って不足のない家庭生活を送っているように見えた。そのとき四十一歳で(だったと記憶してい
 る)、私より五歳ほど年上だった。小柄で顔立ちが整っていて、いつも趣味の良い服装をしてい
 た。一日おきにジムに通ってョガをしているせいで、腹の贅肉もまったくついていなかった。そ
 して赤いミニ・クーパーを運転していた。まだ買ったばかりの新車で、晴れた日には遠くからで
 もきらきらと光って見えた。娘が二人いて、どちらも湘南にあるお金のかかる私立校に通ってい
 た。彼女自身もその学校を卒業していた。夫はなにかの会社を経営していたが、どんな会社かま
 では聞かなかった(もちろんとくに知りたいとも思わなかった)。

  彼女がどうして私のあつかましい性的な誘いをあっさりことわらなかったのか、その理由はよ
 くわからない。あるいはその時期の私は、特殊な磁気のようなものを身に帯びていたのかもしれ
 ない。それが彼女の精神を(言うなれば)素朴な鉄片として引き寄せることになったのかもしれ
 ない。それとも精神とか磁気とかなんてまったく関係なく、彼女はたまたま純粋に肉体的な刺激
 をよそに求めており、そして私は「たまたま手近にいた男」というだけだったのかもしれない。
  いずれにせよそのときの私には、相手の求めているものを、それがたとえ何であれ、ごく当た
 り前のこととして迷いなく差し出すことができた。最初のうちは彼女も、私とのそのような関係
 をきわめて自然に享受しているように見えた。肉体的な領域について話るなら(それ以外に語る
 べき領域はあまりなかったとしても)、私と彼女との関係はきわめて円滑に運んでいた。我々は
 そのような行為を率直に、混じりけなくこなし、その混じりけのなさはほとんど抽象的なレベル
 にまで達していた。私は途中でそのことに思い当たって、いささか驚きの念に打たれたものだ。
 でもきっと途中で正気に戻ったのだろう。光の鈍い初冬の朝に彼女はうちに電話をかけてきて、
 まるで文書を読み上げるような声で言った。「もうこの先、私たちは会わないほうがいいと思う。
 会っていても先はないから」と。あるいはそういう意味のことを。

  たしかに彼女の言うとおりだった。我々には実際、先ところが根もとだってほとんどなかった。
 美大に通っていた時代、私はおおむね抽象圃を描いていた。ひとくちに抽象圃といっても範囲も
 し表面が曇っているようであればはずいぶん広いし、その形式や内容をどのように説明すればい
 いのか私にもよくわからないが、とにかく「具象的ではないイメージを、束縛なく自由に描いた
 絵画」だ。展覧会で何度か小さな賞をとったこともある。美術雑誌に掲載されたこともある。私
 の絵を評価し、励ましてくれる教師や仲間も少しはいた。将来を嘱望されるというほどではない
 にせよ、絵描きとしての才能はまずまずあったと思う。しかし私の描く油絵は、多くの場合大き
 なキャンバスを必要としたし、大量の絵の具を使用することを要求した。当然ながら制作費も嵩
 む。そしてあえて言うまでもないことだが、無名の画家の号数の大きな抽象画を購入し、自宅の
 壁に飾ってくれるような奇特な人が出現する可能性はとこまでもゼロに近い。

  もちろん好きな絵を描くだけでは生活していけなかったので、大学を卒業してからは生活の糧
 を得るために、注文を受けて肖像画を描くようになった。つまり会社の社長とか、学会の大物と
 か、議会の議員とか、地方の名士とか、そのような「社会の注」とでも呼ぶべき人々の要を(注
 の大さに多少の差こそあれ)、あくまで具象的に描くわけだ。そこではリアリスティックで重厚
 で、落ち着きのある作風が求められる。応接間や社長室の壁にかけておくための、どこまでも実
 用的な絵画なのだ。つまり私が両家として個人的に目指していたのとはまったく対極に位置する
 絵画を、仕事として描かなくてはならなかったわけだ。心ならずもと付け加えても、それは決し
 て芸術家的傲慢にはならないはずだ。

  肖像画の依頼を専門に引き受ける小さな会社が四谷にあり、美大時代の先生の個人的な紹介で、
 そこの専属契約画家のようなかたちになった。固定絵が支払われるわけではないが、ある程度数
 をこなせば若い独身の男が一人生き延びていけるくらいの収入にはなった。西武国分寺線沿線の
 淡いアパートの家賃を支払い、一目にできれば三度食事をとり、ときどき安いワインを買って、
 たまに女友だちと一緒に映画を観に行く程度のつつましい生活だった。時期を定めて集中して肖
 像画の仕事をこなし、ある程度の生活費を確保すると、そのあとしばらくは自分の描きたい緒を
 まとめて描くという暮らしを何年か続けた。もちろん当時の私にとって肖像画を描くのは、とり
 あえず食いつなぐための方便であり、その仕事をいつまでも続けていくつもりはなかった。

  ただ純粋に労働としてみれば、いわゆる肖像画を描くのはけっこう楽な仕事だった。大学時代
 しばらく引っ越し会社の仕事をしたことがある。コンビニエンス・ストアの店員をしたこともあ
 る。それらに比べれば肖像画を描くことの負担は、肉体的にも精神的にもずっと軽いものだった。
 いったん要領さえ呑み込んでしまえば、あとは同じひとつのプロセスを反復していくだけのこと
 だ。やがて一枚の肖像画を仕上げるのにそれほど長い時間はかからないようになった。オート・
 パイロットで飛行機を操縦しているのと変わりない。

  しかし一年ばかり淡々とその仕事を続けているうちに、私の描く肖像画が思いもよらず高い評
 価を受けているらしいことがわかってきた。顧客の満足度も申し分ないということだった。肖像
 画の出来に関して顧客からちょくちょく文句が出るようであれば、当然のことながら仕事はあま
 りまわってこなくなる。あるいははっきり専属契約を打ち切られてしまう。逆に評判がよければ
 仕事も増えるし、一点一点の報酬もいくらか上がる。肖像画の世界はそれなりにシリアスな職域
 なのだ。しかしまだ新人同然だというのに、私のところには次から次へと仕事がまわってきた。
 報酬もそこそこ上がった。担当者も私の作品の出来に感心してくれた。依頼主の中には「ここに
 は特別なタッチかおる」と評価してくれる人もいた。

  私の描く肖像画がなぜそのように高く評価されるのか、自分では思い当たる節がなかった。私
 としてはそれはどの熱意も込めず、与えられた仕事をただ次から次へとこなしていただけなのだ。
 正直なところ、自分かこれまでどんな人々を描いてきたのか、今となってはただの一人も顔が思
 い出せない。とはいえ私は仮にも画家を志したものであり、いったん絵筆をとってキャンバスに
 向かうからには、それがどんな種類の絵であれ、まったく価値のない絵を描くことはできない。

 そんなことをしたら自分白身の絵心を汚し、自らの志した職業を貶めることになる。誇りに思え
 るような作品にはならないにせよ、そんなものを描いたことを恥ずかしく思うような絵だけは描
 かないように心がけた。それを職業的倫理と呼ぶこともあるいは可能かもしれない。私としては
 ただ「そうしないわけにはいかなかった」というだけのことなのだが。

  もうひとつ、肖像画を描くにあたって、拡は最初から一貫して自分のやり方を貫いた。まずだ
 いいちに、私は実物の人間をモデルにして絵を描くということをしなかった。依頼を受けると、
 最初にクライアント(肖像画に描かれる人物だ)と面談することにしていた。一時間ばかり時間
 をとってもらい、二人きりで差し向かいで話をする。ただ話をするだけだ。デッサンみたいなこ
 ともしない。拡がいろんな質問をし、相手がそれに答える。いつどこでどんな家庭に生まれ、ど
 んな少年時代を送り、どんな学校に行って、どんな仕事に就き、どんな家庭を持ち、どのように
 して現在の地位にまでたどり着いたか、そういう話を聴く。日々の生活や趣味についても話をす
 る。だいたいの人は進んで自分について語ってくれる。それもかなり熱心に(たぶんほかの誰も
 そんな話を間きたがらないからだろう)。一時間の約束の面談が二時間になり、三時間になるこ
 ともあった。そのあと本人の写ったスナップ写真を五、六枚借りる。普段の生活の中で自然に撮
 影された、普通のスナップ写真だ。それから場合によっては(いつもではない)自分の小型カメ
 ラを使って、いくつかの角度から錫杖か顔の写真を撮らせてもらう。それだけでいい。

 「ポーズをとって、じっと座っている必要はないのですか?」と多くの人は心配そうに私に尋ね
 る。彼らは誰しも肖像画を描かれると決まった時点から、そういう目に遭わされることを覚悟し
 ていたのだ。両家が――まさか今ときベレー帽まではかぶっていないだろうがむずかしい顔つき
 で絵筆を手にキャンバスに向かい、その前でモデルがじっとかしこまっている。身動きしてはな
 らない。そういう映圃なんかでお馴染みの情景を想像していたわけだ。

 「あなたはそういうことをなさりたいのですか?」と私は逆に質問する。「絵のモデルになるの
 は、馴れない方にはかなりの重労働になります。長い時間ひとつの姿勢を保たなくてはならない
 から、退屈もしますし、けっこ立居だって凝ります。もしそれがお望みであるのなら、もちろん
 そうさせていただきますが」

  当たり前の話だが、九十九パーセントのクライアントはそんなことをしたいとは望んではいな
 い。彼らはほとんどみんな働き盛りの多忙な人たちだ。あるいは引退した高齢の人々だ。できる
 ことならそんな無意味な苦行は抜きにしたい。

 「こうしてお会いしてお話をうかがうだけでもう十分です」と拡は言って相手を安心させた。
 「生身のモデルになっていただいても、いただかなくても、作品の出来映えにはまったく変わり
 ありません。もしご不満があれば、責任を持って描き直させていただきます」

  それから二週間ほどで肖像画は仕上がる(絵の具が乾ききるまでに数ケ月はかかるが)。拡が
 もし表面が曇っているようであれば必要とするのは目の前の本人よりは、その鮮やかな記憶だっ
 た(本人の存在はむしろ圃作の邪魔になることさえあった)。立体的なたたずまいとしての記憶
 だ。それをそのまま両面に移行していくだけでよかった。どうやら私にはそのような視覚的記憶
 能力が生まれつきかなり豊かに具わっていたようだ。そしてその能力特殊技能と言ってしまって
 いいかもしれないが職業的肖像画家としての私にとってずいぶん有効な武器になった。

  そのような作業の中でひとつ大事なのは、私がクライアントに対して少しなりとも親愛の情を
 持つということだった。だから私は一時間ほどの最初の面談の中で、自分か共感を抱けそうな要
 素を、クライアントの中にひとつでも多く見いだすように努めた。もちろん中にはとてもそんな
 ものを抱けそうにない人物もいる。これからずっと個人的につきあえと言われたら、尻込みした
 くなる相手だっている。しかし限定された場所で一時的な関わりを持つだけの「訪問客」として
 なら、クライアントの中に愛すべき資質をひとつかふたつ見いだすのは、さして困難なことでは
 ない。ずっと奥の方までのぞき込めば、どんな人間の中にも必ず何かしらきらりと光るものはあ
 る。それをうまく見つけて、もし表面が曇っているようであれば(曇っている場合の方が多いか
 もしれない)、布で磨いて曇りをとる。なぜならそういった気持ちは作品に自然に撒み出てくる
 からだ。



  そのようにして私はいつの間にか、肖像画を専門とする画家になっていた。その特殊な挟い世
 界ではいくらか名前を知られるようにもなった。私は結婚するのを機に、その四谷の会社との専
 属契約を打ち切って独立し、絵画ビジネスを専門とするエージェンシーを介し、より有利な条件
 で肖像画の依頼を引き受けるようになった。担当者は私より十歳ほど上で、有能で意欲的な人物
 だった。独立して、もっと大事に仕事をするようにと技が私に勧めてくれたのだ。以来、私は多
 くの人の肖像画を描き(多くは財界と政界の人々だった。その分野では著名人だということだが、
 私はほとんど誰の名前も知らなかった)、悪くない収入を得るようになった。しかしその分野に
 おける「大家」になったというわけではない。肖像画の世界はいわゆる「芸術絵画」の世界とは
 成り立ちがまるで違う。写真家の世界とも違う。ポートレイト専門の写真家が世間的な評価を受
 け、名前を知られることは少なからずあるが、肖像両家にはそんなことは起こらない。描いた作
 品が外の世界に出ていくこともきわめて希だ。美術雑誌に載ることもなければ、画廊に飾られる
 こともない。どこかの応接間の壁にかけられ、あとはただはこりをかよって忘れられていくだけ
 だ。その絵をたまたまじっくり眺める人がいたとしても(おそらくは暇を持て余して)、画家の
 名前を尋ねるようなことはまずあるまい。

  ときどき自分が、絵画界における高級娼婦のように思えることがあった。私は技術を駆使して、
 可能な限り良心的に、定められたプロセスを抜かりなくこなす。そして顧客を満足させることが
 できる。私にはそういう才能が具わっている。高度にプロフェッショナルではあるが、かといっ
 て機械的に手順をこなしているだけではない。それなりに気持ちは込めている。料金は決して安
 くはないが、顧客たちは文句ひとつ言わずそれを支払う。私か相手にするのはそもそも、支払い
 頼など気にもしない人々だから。そして私の手腕はロコミで人から人へと伝わる。おかけで顧客
 の来訪は絶えない。予約帳はいつも埋まっている。しかし私自身の側には欲望というものが見当
 たらない。ただのひとかけらも。        

                                 村上春樹 『騎士団長殺し』Ⅰ部 顕れるイデア編

今夜も丹念に書かれた文書を、さほど丹念に読むことなく流す。これからワクワクするような、あるいは、バァ
ァアーッとくる出会いを楽しみにして読み進めていこう。

 

   

サウジの魔法が消える時

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        49  革命の機熟 / 沢火革(たくかかく) 
 

                                        

 

 

        ※ 革とは、あらためること。革命、革新、変革の革であり、古いもの
          を変えて新しいものを創り山す過程である。卦の形から見れば、火
          (離)と水(兌)が消しあう形、また中女(離)と少女(兌)つま
          り上下が対抗激突する形でもある、「革」は、この矛盾相剋を解決
          郷決する形である。それには小細工を弄したり私欲で動いたりして
          はならない。多少の混乱は避けられないが、あくまで正道を守るべ
          きである。革新は単なる変化ではない。そこには積極的な価値が含
          まれているのだ。醜い手段によって目的を汚すことなく、「離」の
          示す明知と勇気で、より高い段階に飛躍すべき時である。

 

  Mar. 12, 2017

● サウジの魔法が消える時

サウジアラビアのキル・サルマン・ビン・アブドゥル・アジズ・アル=サウドと大代表は日曜日に4
日間の日本訪問を開始、46年ぶりにサウジアラビアの国王が訪問となる。国内最大の原油供給国で
あるサウジアラビアは、原油価格の下落に伴い、経済への依存度が高まる中、石油依存度を下げるた
めの構造改革を進めている。このイニシアチブには、国営石油会社Saudi Aramcoの部分的民営化が計
画されているとのこと。経済協力プラン「日・サウジ・ビジョン2030」は、昨年10月に第1回閣僚級
会合がリヤドで開催。同ビジョンは、サウジのムハンマド副皇太子が同4月に打ち出した、石油依存
体質からの脱却や雇用拡大を目指す同国の成長戦略「サウジ・ビジョン2030」を日本が支援し、日本
の成長戦略とのシナジーを目指す。今回、サウジのサルマン国王が国王として46年ぶりに来日した
のに合わせ、第2回会合が開かれ、ビジョン2030は13日に安倍晋三首相とサルマン国王が首脳会談で
合意発表。同プランでは、日本とサウジの41省庁・機関が参加し、エネルギー、医療、農業、イン
フラ、投資、文化など、9分野を協力の重点分野として設定、先行プロジェクトとして政府間で11件、
官民・民間同士で⑳件のプロジェクトの覚書に署名する予定。



ところで、サウジアラビアの経済成長の停滞の主要因は、石油依存にある。これが強みでありえたし、
戦後の、特に、欧米の石油資本支配からの脱した石油輸出国機構(OPEC:Organization of the Petroleum
Exporting Countries)の勝利以降は現代中東史の主役であったが、デジタル革命を背景とした先進国の
脱石油依存・地球温暖化対策などのエネルギー政策により、皮肉にもその失速も急テンポとなってい
る(アラブの魔法が消えた時)の。今後を見据えた時、これまでの欧米列強国の介入が薄まり安定化
に繋がり、先進的な平和憲法と世界最高水準の科学技術力をもつ日本国との協働により、2030年に
は経済低迷を脱し安定を持続していけるのではと夢想する(大国による武(軍事)力・経済(財政)
力による干渉・介入がなければの話)。

 

  Mar. 13, 2017

Firsthand Account Of Self-Driving Nissan LEAF Trip In London

● 日産リーフ ロンドンで自動運転のデモンストレーション走行

ロンドンで人気ある自動運転型電気自動車リーフが、ロンド運東部の決められたコースで路上テスト
運転を行っている(上下の写真ダブクリ参照)。その報告によると、この完全自律型 "ProPILOT"シ
ステム搭載車には、4つのレーザー、5つのレーダー、12台のカメラを体にシームレスに配置統合
され、20センチメートルの精度で障害物を検知する。正面の3つのディスプレイの1つは衛星ナビ
ゲーター、もう1つはフロントカメラの映像モニタで、残りは、歩行者・車両・障害物の位置情報モ
ニタが内部配置されている。メディア関係者を乗せたデモンストレーション走行中、自動車事故に遭
遇したものの、自動的に回避し、所定のコースを無事完走したが、昨年4月にテスラが半自律型自動
操縦車が試験走行したことから比べ進歩していることが認識されたものの、若干の改良点も残件し、
同社は20年までに完全自律型自動車の事業展開を果たすために、今後、完全自律型 "ProPILOT"シ
ステムをさらに8つのモデルに拡張する。

  Mar. 9, 2017

Why London is a self-driving nightmare for the Nissan Leaf 

 

  Mar. 13, 2017

【RE100倶楽部:そんな手があったのか】

● 低温廃熱を工場間でオフライン輸送

百℃程度の低温廃熱は発生場所における用途が限定されること等から大部分が捨てられている。そこ
で、産業分野での大幅な省エネを実現に、これらの低温廃熱を、発生源とは時間・空間的に異なる利
用先の熱源として活用する蓄熱システムの開発が進められいる。具体的には、工場等で発生する廃熱
を蓄熱材に貯蔵し、熱の利用先までトレーラーやトラック等で運搬しようともの。

13日、産業技術総合研究所らの研究グループは、従来型の熱輸送システムでは、糖類等の融解熱を
利用する固液相変化材を蓄熱材として用いているが、①蓄熱密度が低いため重量や容積が大きくなる
こと、②高価であること、PCM(Phase Change Material――水(氷)、パラフィンなどの液相と固相の2相間
での凝固・融解に伴う潜熱を利用する蓄熱材。水やレンガなどの顕熱を利用する蓄熱材に比べ蓄熱が大きい
ことが特長――の固液相変化時の潜熱を利用するため蓄放熱温度がPCMの相変化温度(融点)に限定
されること、輸送時には蓄熱槽からの放熱でPCMが一部相変化し潜熱ロスが発生すること等が課題と
なっていた。

そこで、産業技術総合研究者が、2008年に開発した80~120℃程度の低温廃熱の蓄熱が可能な高性能
無機系吸放湿材「ハスクレー」(産総研で開発された、Si(ケイ素)-Al(アルミニウム)を主成分
とする低結晶性粘土と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体からなる高性能吸放湿材。非晶質アルミ
ニウムケイ酸塩の“ハス”(HAS:Hydroxyl Aluminum Silicate)と低結晶性の層状粘土鉱物の“クレイ”
(Clay)との造語)をベースに、高蓄熱密度化と、低コスト化が実現可能な改良型ハスクレイの量産製造
技術の開発と、同蓄熱材を搭載した蓄熱システムの開発に取り組んできました((下表)。この蓄熱シ
ステムは、ハスクレイへの水の吸着/脱着反応により放熱/蓄熱を行い、蓄熱槽を乾燥状態で維持す
れば潜熱ロスは発生せず、相変化で蓄熱・放熱を行う方式ではなく、PCMを用いた蓄熱システムと比
較し、熱利用温度域が限定されないのが等が特長。

従来のハスクレイ以上の蓄熱性能を有し、低コストで製造が可能な蓄熱材の量産製造技術の確立とと
もに、従来型の熱輸送システムに対して2倍以上の蓄熱密度(500kJ/L以上)を実現する可搬コンパ
クト型蓄熱システムの開発に成功する。コンパクト化の実現で、中型トラックでの搬送が可能となり
3月13日から23日までの予定で、熱輸送の実用化検証試験を開始する。実運用時の蓄放熱性能や
経済性評価、省エネルギー効果量等の評価を行い、低温廃熱に適応可能な蓄熱・熱利用技術を確立す
る。
 Oct. 8, 2008

エネルギーを運ぶってか、そんな手もあったのかと驚く。新奇な高性能で廉価な蓄熱材!?面白い。

Mar. 9, 2017

● 水素の輸送コストを低減する、高効率な分離膜

同様に、9日には、産総研らの研究グループは、有機ハイドライドから燃料電池自動車(FCV)用の
超高純度水素を分離精製する大型の炭素膜モジュール開発の成功を公表。1時間当たり1m3(立平方
メートル)の水素精製能力を持ち、一度の分離操作でFCV用の超高純度水素のISO規格純度を達成でき
る。有機ハイドライドを利用した水素ステーションの運用コスト低減への貢献が期待できるとしてい
る。新しいエネルギーとして注目されている水素。普及に向けた課題の1つが低コストな貯蔵・輸送
技術の確立だ。水素は常温では圧力をかけても液化せず、-253度という極低温が必要になる。そこで
化学反応を利用して水素を液化し、貯蔵・輸送しやすくする技術・手法の確立に期待が掛かっている。

その1つが「有機ハイドライド法」と呼ばれる芳香族化合物に水素を結合させて水素化物をつくりだ
す手法だ。例えばトルエンと水素を化学反応させると、メチルシクロヘキサンという液体になる。こ
れは常温・常圧でそのまま運べるため、通常のタンカーやローリーの利用が可能になり、大量貯蔵や
長距離輸送に向く。共同研究グループは、メチルシクロヘキサンをエネルギーキャリアとし、これを
利用できる水素ステーションの研究開発を進めてきた。
 開発した中空糸炭素膜

この研究では、新規分離技術として無機膜の一種である炭素膜を採用し、高性能炭素膜の開発。その
結果、一度の分離でFCV用水素規格を達成可能な非常に高い水素選択性(水素/メタン選択性は3,000
以上、水素/トルエン選択性は30万以上)を有する炭素膜の開発に成功する。 この高性能炭素膜は、
下図に示すように水素だけが選択的に透過できる均質な細孔である。また、有機ハイドライド型水素
ステーションでの運用条件として想定する90℃での水素/トルエン混合ガス供給時においても優れた
選択性を維持し、500時間以上にわたる安定した分離性能を確認。さらに、膜分離システム計算の結
果、従来精製技術に比べて大幅な省エネ化が実現できる見通。また、パラジウム膜等の既存の水素分
離用無機膜と比較すると、この炭素膜は中空糸型で支持膜が不要の自立膜であるため、膜コストが安
く、かつコンパクトな精製装置の実現が可能。続いて、この炭素膜の大型モジュール化を実施。



一般的に無機膜の大型モジュール化では、膜性能のばらつきや欠陥(ピンホール)の発生等により、
スケールが大きくなるほど分離性能が低下することが知ら、無機膜の実用化における大きな課題。こ
の研究では、炭素膜製造方法の改善、シール方法の開発、モジュール構造の最適化等に取り組んだ結
果、1m3/h規模の水素精製能力の大型炭素膜モジュールを開発することに成功。優れた水素分離性
能を有し、スケールアップしても欠陥を生じず、炭素膜本来の優れたガス分離性能が維持される。ま
た、水素/トルエン分離試験で、FCV用水素規格を満足する高純度水素を安定的に製造できることを
確認できたとのこと。この研究も革新的素材(マテリアルイノベーション)、面白い。

 

  

   1.もし表面が曇っているようであれば

  自ら望んでその上うなタイプの画家になったわけではないし、その上うなタイプの人間になっ
 たわけでもない。私はただ様々な事情に流されるままに、いつの間にか自分のための絵画を描く
 ことをやめてしまった。結婚して、生活の安定を考慮しなくてはならなかったことが、そのひと
 つのきっかけになったわけだが、そればかりではない。実際にはその前から既に私は「自分のた
 めの絵画」を描くことに、それほど強い意欲を抱けなくなってしまっていたのだと思う。私は結
 婚生活をその口実にしていただけかもしれない。私はもう若者とは言えない年節になっていたし
 何かが――胸の中に燃えていた炎のようなものが――私の中から失われつつあるようだった。そ
 の熱で身体を温める感触を私は次第に忘れつつあった。

  そんな自分自身に対して、どこかで私は見切りをつけるべきだったのだろう。何かしらの手を
 打つべきだったのだろう。しかし私はそれを先送りにし続けていた。そして私より先に見切りを
 つけたのは妻の方だった。私はそのとき三十六歳になっていた。


   2.みんな月に行ってしまうかもしれない

 「とても悪いと思うけど、あなたと一緒に暮らすことはこれ以上できそうにない」、妻は静かな
 声でそう切り出した。そしてそのまま長いあいだ押し黙っていた。
  それはまったく出し抜けの、予想もしなかった通告だった。急にそんなことを言われて、目に
 するべき言葉をみつけられないまま、私は話の続きを待った。それほど明るい続きがあるとも思
 えなかったが、次の言葉を待つ以外にそのときの私にできることはなかった。

  我々は台所のテーブルを挟んで座っていた。三月半ばの日曜日の午後だった。翌月の半ばに
 我々は六回目の結婚記念日を迎えることになっていた。その日は朝からずっと冷たい雨が降って
 いた。彼女のその通告を受けて私がまず鍛初にとった行為は、窓に顔を向けて、雨の降り具合を
 確認することだった。ひっそりとした穏やかな雨だ。風もほとんどない。それでもじわりと肌に
 凍みる寒さを遠んでくる雨だった。春はまだまだ遠くにあることをその寒さは敦えてくれた。雨
 降りの奥にはオレンジ色の東京タワーが霞んで見えた。空には一羽の鳥も飛んでいない。鳥たち
 はどこかの軒下でおとなしく雨宿りをしているのだろう。

 「理由は訊かないでくれる?」と彼女は言った。

  私は小さく首を横に振った。イエスでもノーでもない。何をどう言えばいいのか、考えがまる
 で思い浮かばなかったから、ただ反射的に首を振っただけだ。
  彼女は襟ぐりの広い、藤色の薄手のセーターを着ていた。白いキャミソールの柔らかいストラ
 ップが、浮き上がった鎖骨の隣にのぞいていた。それは特別な料理に用いる、特別な種類のパス
 タみたいに見えた。

 「ひとつ質問があるんだけど」、私はそのストラップを見るともなく見ながらようやくそう言っ
 た。私の声はこわばって、明らかに潤いと展望を欠いていた。

 「私に答えられることなら」

 「それは、ぼくに責任かおることなのかな?」

  彼女はそれについてひとしきり考えた。それから、長いあいだ水中に潜っていた人のように、
 水面に顔を出して大きくゆっくりと呼吸をした。

 「直接的にはないと思う」
 「直接的にはない?」
 「ないと思う」

  私は彼女の言葉の微妙な音調を測ってみた。卵を手のひらに載せて重さを確かめるみたいに。

 「つまり間接的にはある、ということ?」

  妻はその質問には答えなかった。

 「何日か前に、明け方近くにある夢を見たの」と彼女はそのかわりに言った。「現実と夢との境
 目がわからないくらい生々しい夢だった。そして目覚めたとき、こう思ったの。というか、はっ
 きり確信したの。もうあなたとは一緒に暮らしていけなくなってしまったんだと」

 「どんな夢?」

  彼女は首を振った。「悪いけど、その内容はここでは話せない」
 
 「夢というのは個人の持ち物だから?」
 「たぶん」
 「その夢にはぼくは出てきたの?」と私は尋ねた。
 「いいえ、あなたはその夢の中には出てこなかった。だからそういう意味でも、あなたには直接
 的な責任はないの」

  私は彼女の発言を念のために要約した。何を言えばいいのかわからないときに相手の発言を要
 約するのは、私の昔からの癖みたいになっている(それは言うまでもなく、しばしば相手を苛立
 たせる)。

 「つまり、君は何日か前にとても生々しい夢を見た。そして目が覚めたとき、ぼくとはもうこれ
 以上一緒に生活できないと確信した。でもその夢の内容をぼくに教えることはできない。夢は個
 人的なものごとだから。そういうこと?」
  彼女は肯いた。「ええ、そういうことなの」
 「でも、それでは何の説明にもなっていない」

  彼女は両手をテーブルの上に置き、目の前のコーヒーカップの内側を見下ろしていた。その中
 におみくじでも浮かんでいて、そこに書かれた文句を読み取っているみたいに。彼女の目つきか
 からすると、それはかなり象徴的で多義的な文章であるようだ。
  夢はいつも妻にとって大きな意味を持っていた。彼女はしばしば見た夢によって行動を決定し
 たり、判断を変更したりした。でもいくら夢を大事にするといっても、生々しい夢をひとつ見た
 だけで、六年間にわたる結婚生活の重みをまったくのゼロにできるものではない。

 「夢はもちろんひとつの引き金に過ぎないの」と彼女は私の心を読んだように言った。「その夢
 を見ることによって、いろんなことがあらためてはっきりしたというだけ」
 「引き金を引けば弾丸は出る」
 「どういうこと?」
 「銃にとって引き金は大事な要素であって、引き金に過ぎないというのは表現として適切じやな
 いような気がする」

  彼女は何も言わずに私の顔をじっと見ていた。私の言わんとすることがうまく理解できていな
 いようだった。私白身にも実際はうまく理解できていなかったが。
 「君はほかの誰かとつきあっているの?」と私は尋ねた。

  彼女は肯いた。

 「そしてその誰かと寝ている?」
 「ええ、すごく申し訳ないと思うんだけど」

  誰と、どれくらい前から、とたぶん質問するべきなのだろう。しかし私はそんなことはとくに
 知りたくなかった。そんなことは考えたくもなかった。だから私はもうコ茨窓の外に目をやって、
 雨が降り続く様子を眺めた。どうしてそのことに今まで気がつかなかったんだろう? 

  妻は言った。「でもそれはいろんなものごとのうちのひとつに過ぎないの」
  私は部屋の中を見渡した。長いあいだ見慣れた部屋のはずだったが、そこは私にとって既によ
 そよそしい異郷の風景に変貌していた。
  ひとつに過ぎない?
  ひとつに過ぎないというのは、いったいどういうことなのだろう?と私は真剣に考えた。彼女
 は私以外の、誰か他の男とセックスをしている。でもそれはいろんなものごとのうちのひとつに                                                              
 過ぎない。いったい他にどんなことかおるのだろう?

  妻は言った。「私が数日のうちによそに行くから、あなたは何もしなくていいのよ。私が責任
 をとらなくちやいけないことだから、もちろん私が出て行く」

 「ここを出たあとの行き場所はもう決まっているの?」

  彼女はそれには答えなかったけれど、行き場所の心づもりはあるようだった。おそらく前もっ
 ていろんなことを準備してから、この話を切り出したのだろう。そう考えると、私は暗闇の中で
 足を踏み外したような強い無力感に襲われた。私が知らないところでものごとは着実に進展して
 いたのだ。

  妻は言った。「なるべく早く離婚の手続きを進めるから、できたらそれに応じてほしいの。勝
 手なことを言うみたいだけど」
  私は雨降りを眺めるのをやめて、彼女の顔を見た。そしてあらためて思った。六年間同じ屋根
 の下で暮らしていても、私はこの女のことをほとんど何も理解していなかったんだと。人が毎晩
 のように空の月を見上げていても、月のことなんて何ひとつ理解していないのと同じように。

こんなことあるよなぁ~。関係の濃淡はあれど、いや、関係の濃淡を決めるのは自分しかないのだか
ら、「関係の絶対性」と叫んでもみても、それはもう謎だ。
                                     この項つづく 

   

 

 

 

欧州ポピュリズム考

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           50  三本足  /  火風鼎(かふうてい)  

 

                                    

         ※ 鼎とは、かなえのこと。煮炊きする器で、三本の足でささえられて
          いる。神.憲に捧げる供物を煮る祭器であり、また国家権威の象徴
                    でもあった。権威を疑うことを鼎の軽重を問うというのはここから
                    来た言葉である。三本の足は、協力と安定を示す。三点は一平面を
                    決定し、三本足が最も安定がよいのである。三人が力をあわせて、
          重いものをささえてゆく形、個人ではいわゆる三拍子そろった形で、
          なにごとにも順調な進展を示す卦である。男女関係では三角関係を
          表わすが、それも円満まる(初爻)のである。あくまで協力関係を
          失わぬことが肝要。

                              

 

 

   Mar. 14, 2017

【RE100倶楽部:印刷で作れる高性熱電変換材料】

● 世界最高レベルの出力因子600 μW/mK2超

14日、産業技術総合研究所は、印刷法により形成できる高性能な p型の有機系熱電変換材料を開発、
発電性能を示す出力因子で世界最高レベルの600 μW/mK2を実現したことを公表。導電性高分子材料
やカーボンナノチューブ-高分子複合材料などの有機系材料は、①軽量で柔軟でいて、②非レアメタ
ル材料で、③低コストで、③高い生産性が期待される印刷法により材料形成でき、従来の無機熱電変
換材料※6を用いた場合に比べ、利便性の高い熱電変換素子を低コストに製造できる。有機系熱電変
換素子の実用化で、身の回りに存在する低温の排熱を熱電変換し、これによって得られた電力を用い、
センサなどの低消費電力な電子機器を駆動できる。また一方で、現状の有機系熱電変換材料は、発電
性能が著しく低い問題点がある。

有機系材料として、これまで、カーボンナノチューブ-高分子複合材料を用いていた。カーボンナノ
チューブ-高分子複合材料は、高分子材料が溶解した有機溶媒中にカーボンナノチューブを分散させ
この分散液を基板上に塗布し、その後、有機溶媒を乾燥させることで形成できる。従って、有機溶媒
に可溶性を有する広範な高分子材料種を用いることができる。従来は、高い電気伝導性を付与するこ
とを目的として、導電性高分子を用い、作製したカーボンナノチューブ-導電性高分子複合材料が研
究の主流をなす。

一方で、同上の研究グループは、導電性高分子に比較して、汎用性や耐久性、価格などの面で優れた
絶縁体高分子を原料として用いた、カーボンナノチューブ-絶縁体高分子複合材料――の高性能化に
関する研究を進め、典型的な絶縁体高分子であるポリスチレンとカーボンナノチューブの混合で、ゼ
ーベック係数※11が向上すること発見。これは、ポリスチレンの添加により、カーボンナノチューブ
間コンタクトの距離が増加し、その部分のトンネル障壁の厚みが増加した結果、高エネルギーのキャ
リアが優先的に電気伝導に寄与い、ゼーベック係数が増加する、エネルギーフィルタリング効果によ
るものと推測。




さらに、カーボンナノチューブ-絶縁体高分子複合材料中のカーボンナノチューブの束の直径を細く
することで、ゼーベック係数は変化させずに電気伝導性を大幅に向上できることを発見(上図3)。
研究グループはこれらの効果を組み合わせることでパワーファクタを向上させることを目指し、低直
径のカーボンナノチューブ束をポリスチレンと混合させたカーボンナノチューブ-ポリスチレン複合
材料を作製した結果、約百℃において600 μW/mK2を超えるパワーファクタを観測することに成功
(上図4)。この値は、分散液を基板上に滴下し乾燥させる単純な印刷手法で作製したカーボンナノ
チューブ-導電性高分子複合材料のトップレベルの値に比較して概ね2倍以上の値を示す。このよう
に現在盛んに研究されているカーボンナノチューブ-導電性高分子複合材料に変えて、カーボンナノ
チューブ-絶縁体高分子複合材料を用いることでの大幅な性能向上を実現する。今後は、材料内部の
微細構造の制御で、有機系熱電変換材料の性能向上と有機系熱電変換素子の高効率化に取り組む。

※ ゼーベック係数:材料内に温度差を与えると、温度差に比例した電圧が発生する現象をゼーベッ
  ク効果という。温度差1℃あたりの電圧をゼーベック係数と言い、熱電変換材料の電圧発生能力を
  表す。単位はV/℃。
※ 出力因子熱電変換材料の発電量を表す指標。ゼーベック係数の2乗に導電率を乗じた量で単位は
  (W/mK2)、単位長さあたり温度差1℃でどれだけの電力が得られるかの目安となる。

 Mar. 10, 2017

● こんな手もあるのだ!?

ところで、先日の通販ドライバーの話には続きがあった。彼の出生地はこの長浜市なのだが、この間
の降雪で、親戚から電話で除雪依頼で作業の苦労話を話し、家に寄りたかったが疲れてその余裕もな
くご免というので、わたしの方の除雪の苦労話も伝え、ところで、雪はエネルギーの固まりなのだ、
これを利用して除雪できるのだと話すと、それは良い、是非、聞かせて欲しいという反応。温度差を
利用する熱電変換素子シートあるいはポールで発電し融雪(融雪の仕方は特許事案る)する、あるい
は、発電し、ハザード表示灯などに利用するのだと伝えると、再度、教えてと熱を帯びた声で尋ねる
ので、わたし(たち)の領域に踏み込んできたね、これが実現すれば、青色発光ダイオードの発明者
の中村修二ノーベル賞級ものだよと返事する。つまり、今回の産業技術総合研究所の開発案件と完全
リンクするビックプロジェクトとなるものだ。遅れをとるな!きみ(たち)の出番だ。



【欧州ポピュリズムの歴史的考察】

 われわれの考えでは、社会的現実の中心において、瞬間という時間とゆっくり流れる時間との間
 にある、激しく、濃密で、無際限に繰り返される対立ほど重要なものはない。過去を扱うにせよ
 現在を扱うにせよ、このような複数の社会的時間について明確に意識しておくことは、人間科学
 全体に共通の方法論にとって、必要不可欠なことである

                           フェルナン・ブローデル「長期持続」
                                 山上浩嗣・浜名優美訳

フランスの歴史家フェルナン・プローデルは、世界史における『長期持続』論を広めたことで知られ
ている。既に没後30年以上たち、その理論は今日の激変する世界で重要性を増している。もし、ブ
ローデルが健在なら、欧州全土で左右両派のボビュリズムが台頭する現状に何をを思っただろうと、
ニューズウィーク社コラムニストのアフシン・モラビは問題提起する(「欧州ポピュリズムの歴史的
考察――反エリート主義の台頭は今後30~40年続くのか、一週の「さざ波」でおわるのか」(Eur-
opean Populism and The Lomg March of Histry、Newsweek 21, Mar 14, 2017)。

それによると、この現象にはおなじみの部分がいくつかあり、①欧州の右派ポピュリズムには、同性
愛者や少数派の権利、比較的寛容な移民政策といった左派の「聖域」に対する明確な反発がある。②
同様に、ヨーロッパの左派ポピュリストには資本主義と富、「伝統的」価値観といった右派の聖域に
対する懐疑が見受けられる。③だが、なじみのない部分もある。ドナルド・トランブ米大統領が選挙
戦中に行った激しいウォール街たたきは、共和党の政治家より民主党の大統領予備選に出馬した「社
会主義者」のバーニー・サンダースにずっと近い、イタリアのポビュリスト政党「五つ星運動」の指
導者ベッベーグリッロは、トランプの勝利を反既成秩序の大きな運動の一環として歓迎している。
 
現在の欧州での最近の世論調査では、イギリスでは国民の約3分の2が子供たちは今よりいい暮らし
を送れないと考えている。フランス、イタリア、ドイツではさらに悲観的で、社会の進歩を示す基本
的尺度は、人々か将来に自信を持てるかどうか、特に子供たちは今よりいい生活かできると信じられ
るかどうかだとする。で、その原因はというと、①西欧で10年近く続く経済の低成長。特にフラン
ス、イタリア、スペインを含む数カ国は深刻な経済不振にあえぐ。長期の低成長、長期失業を招き、
貯蓄は底を突き、技術革新が阻害され、自信を喪失した人々に不満や不安が広がる。②情報革命、テ
クノロジーを礼賛する人々は、ITかもたらすブラス面を強調。教育、情報、娯楽へのアクセス増大、
ビジネスの効率化、人命を救う医療の急速な進歩等々。が、多くの場合、情報へのアクセス増大は同
時に恨みや不満、「偽ニュース」へのアクセス増大も意味する。



ユーローの不確かな将来も低成長も問題であるが、西欧は世界中で5000万人前後の命を奪い、欧
州の都市と社会に想像を絶する破壊をもたらした第二次大戦を経験しているが、現在の西欧社会は、
第二次大戦後の環境で形成されその後の繁栄の時代に基礎を置く。西欧諸国は四半世紀にわたり戦後
の好景気を享受。経済ジャーナリストで歴史家のマーク・レビンソンの新著『驚異の時代』によると
この好景をレビンソンは、失業率の上昇と深刻な.不況によりリスクが高まり、実験と抗議行動がほ
とんど行われなくなった。生活水準が落ち込むことへの恐怖、子供たちの末末か今より悪くなること
への不安により、それまでよりずっと保守的な時代が訪れたと指摘する。もし、いまヨーロッパで起
きている現象が1970年代までさかのぽれるとすれば、今日起きる現象の影響は30年から40年後ま
で続くのかもしれないとモラビは危惧する。

もっとも、人々は選挙で投票するとき、長期的な視点で考えるわけではない。今年、オランダ、フラ
ンス、ドイツの選挙でポピュリストや反エスタブリッシユメント勢力が勝てば、メディアは政治の地
殻変動が起きたと書き立てるだろうが、それは産業革命以降の艮い歴史のひとコマにすぎないのかも
しれない。これまで500年以上にわたり、欧州の進歩と革新が世界を形づくり、欧州の植民地主義
と収奪が世界をゆがめてきた。西洋の没落と東洋の勃興が指摘されて久しいが、欧州が世界に大きな
影響を及ぽすことに変わりはないが、欧州社会が長い歴史を持っていることを忘れてはならない。判
断を誤らないためには、目先の現象に振り回されず、長い墜史のある国々にふさわしい長期的な視点
で見た方がいいだろうと結んでいる。これらの結論は断念ながら、すでにこのブログでその解決策は
掲載(例えば「コンピュータ仕掛けの英米流金融資本主義」表現)してきたことである。

 

  

   2.みんな月に行ってしまうかもしれない

 「ひとつだけ君に頼みがあるんだ」と私は切り出した。「その頼みさえ聞いてくれたら、あとは
 君の好きなようにしていい。離婚届にも黙って判を捺すよ」

 「どんな頼み?」
 「ぼくがここを出ていく。それも今日のうちに。君にはあとに残ってもらいたい」
 「今日のうち?」と彼女は驚いたように言った。
 「だって、早いほうがいいんだろう?」
  彼女はそれについて少し考えた。そして言った。「もしあなたがそう望むのなら」
 「それがぼくの望んでいることだし、それ以外にとくに望みはない」
  
  それは本当に私の正直な気持ちだった。こんな惨めな残骸のような場所に、三月の冷ややかな
  雨降りの中に一人で残されなくていいのなら、何をしてもかまわない。

 「車は持っていくけど、それはいいね?」
 
  あえて尋ねるまでもない。結婚する前に私が友だちからただ同然で譲り受けたマニュアル・シ
 フトの古い車で、走行距離は十万キロをとっくに越えている。そしてどうせ彼女は運転免許を持
 っていないのだ。

 「画材と衣服とか、必要なものはあとで取りにくる。かまわないかな?」
 「かまわないけど、あとでって、だいたいどれくらいあとになるの?」
 「さあ、わからない」と私は言った。そんな先のことまで考える意識の余裕は、私にはなかった。

 足元の地面さえもうろくに残ってはいないのだ。今ここに立っていることで、ほとんど精一杯な
 のだ。「ここにはそんなに長くいないかもしれないから」と彼女は言いにくそうに言った。

 「みんな月に行ってしまうかもしれない」と私は言った。

  彼女はよく聞き取れなかったようだった。「今、なんて言ったの?」

 「なんでもないよ。たいしたことじゃない」

  その夜の七時までに、私は身の回りのものをビニールの大きなジムバッグに詰め込み、赤いプ
 ジョー205ハッチバックの荷台に積み込んだ。とりあえずの着替えと、洗面用具と、何冊かの
 本と日記。山歩きをするときにいつも持って行く簡単なキャンプ用品。スケッチブックと副作用
 鉛筆のセット。それ以外に何を持っていけばいいのか、まったく思いつけなかった。まあいい、
 足りないものがあればどこかで買えばいいのだ。私かそのジムバッグをかついで部屋を出るとき、
 彼女はやはり台所のテーブルの前に座っていた。コーヒーカップがやはりテーブルの上に置かれ
 ていた。彼女はさっきと同じ目でカップの中をのぞき込んでいた。

 「ねえ、私にもひとつだけお願いがあるんだけど」と彼女は言った。「もしこのまま別れても、
 友だちのままでいてくれる?」

  彼女が何を言おうとしているのか、うまく理解できなかった。靴を履き終え、バッグを肩にか
 け、片手をドアのノブの上に置いたまま、私はしばらく彼女を見ていた。

 「友だちでいる?」

  彼女は言った。「もし可能であれば、ときどき会って話をできればと思うんだけど」
  私にはまだその意味がよく理解できなかった。友だちのままでいる? ときどき会って話をす
 る? 会って何の詰をするのだ? まるで謎かけをされているみたいだ。彼女はいったい何を私
 に伝えようとしているのだろう。私にとくに悪い感情は抱いていない、そういうことなのだろう
 か?

 「さあ、どうだろう」と私は言った。それ以上の言葉はみつからなかった。たぶんそこに立った
 まま一週間考えても、言葉はみつけられなかったはずだ。だからそのままドアを開け、外に出た。
  家を出るとき自分かどんな服装をしているのか、まったく考えもしなかった。もしパジャマの
 上にバスローブを羽織ってそのまま出てきたとしても、たぶん自分では気づかなかったに違いな
 い。あとになってドライブインの洗面所で、全身鏡の前に立って判明したことだが、私は仕事用
 のセーターに、派手なオレンジ色のダウン・ジャケット、ブルージーンズ、ワークブーツという
 格好だった。頭には古い毛糸の帽子をかよっていた。ところどころほつれた丸首のグリーンのセ
 ーターには、白い絵の具のしみがついていた。着ているものの中ではブルージーンズだけが新品
 で、その鮮やかな青さがいやに目立った。全休としてはかなり乱雑な格好だが、異様というほど
 ではなかった。後悔したのは、マフラーを忘れてきたことくらいだった。



  マンションの地下の駐車場から車を出したとき、三月の冷ややかな雨はまだ音もなく降り続い
 ていた。プジョーのワイパーは老人のかすれた咳のような音を立てていた。
  どこに行けばいいのか見当もつかなかったから、しばらくは都内の道路をあてもなく、思いつ
 くままに走った。西麻布の交差点から外苑西通りを青山に向かい、青山三丁目を右に折れて赤坂
 に向かい、あちこち曲がった末に四谷に出た。それから目についたガソリン・スタンドに入って、
 タンクを満タンにした。ついでにオイルと空気圧も点検してもらった。ウィンド・ウォッシャー
 液も入れてもらった。これから長い距離を運転することになるかもしれない。あるいは月まで行
 くことになるかもしれない。

  クレジット・力-ドで支払いをし、再び路上に出た。雨の日曜日の夜で、道路はすいていた。
 FMラジオをつけたが、つまらないおしゃべりが多すぎた。人々の声は甲高すぎた。CDプレー
 ヤーにはシェリル・クロウの最初のアルバムが入っていた。私はそれを三曲ほど聴いてから、ス
 イッチを切った。
  気がついたとき、目白通りを走っていた。どちらに向けて走っているのか、見定めるのに時間
 がかかった。そのうちに、早稲田から練馬方向に向けて走っていることがわかった。沈黙が耐え
 られなくなったので、またCDプレーヤーのスイッチを入れ、シェリル・クロウを何曲が聴いた゜
 そしてまたスイッチを切った。沈黙は静かすぎたし、音楽はうるさすぎた。でも沈黙の方が少し
 はましだった。私の耳に届くのは、ワイパーの劣化したゴムが立てるかすれた音と、タイヤが濡
 れた路面を進む、しやーっという途切れのない音だけだった。

  Sheryl Crow - Steve McQueen

  そんな沈黙の中で、私は妻が誰か他の男の腕に抱かれている光景を想像した。
  それくらい、もっと前にわかっていてもよかったはずだ、と私は思った。どうしてそれに思い
 当たらなかったのだろう? もう何ケ月も我々はセックスをしていなかった。私が誘っても、彼
 女はいろんな理由をつけてそれを断った。いや、そのしばらく前から、彼女は性行為に対してあ
 まり乗り気ではなかったと思う。でもまあ、そういう時期もあるのだろうと私は考えていた。
 日々の仕事が忙しくて疲れているのだろうし、体調もあるのだろう。でももちろん彼女は他の男
 と寝ていたのだ。いつ頃からそれが始まったのだろう? 私は記憶を辿ってみた。たぶん四ケ月
 か五ケ月前、それくらいだ。今から四ケ月か五ケ月前というと、十月か十T月になる。

  でも去年の十月か十一月に何かあったか、私にはまったく思い出せなかった。そんなことを言
 ったら、昨日何かあったかさえほとんど思い出せなかった。
  信号を見落とさないように、前の車のブレーキランプに近づきすぎないように注意しながら、
 去年の秋に起こったことについて考え続けた。頭の芯が無くなるくらい集中して考えていた。私
 の右手は交通の流れに合わせて無意識にギアを切り替えていた。左足はそれに合わせてクラッ
 チ・ペダルを踏んでいた。そのときほど自分かマニュアル・シフト車を運転していることをあり
 たく思ったことはない。妻の情事について考えを巡らせる以外に、手足を使ってこなさなくて
 はならないいくつかの物理的な作業が私には課せられているのだ。

  十月と十一月にいったい何かあっただろう?

  秋の夕方。大きなベッドの上で、どこかの男の手が妻の衣服を説がせていく光景を想像した。
 彼女の白いキャミソールのストラップのことを私は思った。その下にあるピンク色の乳首のこと
 を思った。そんなことをいちいち想像したくはなかったが、コ伎動き出した想像の連鎖をどうし
 ても断ち切ることができなかった。私はため息をつき、目についたドライブインの駐車場に車を
 停めた。運転席の窓を開け、外の湿った空気を胸に大きく吸い込み、時間をかけて心臓の鼓動を
 整えた。それから車を降りた。ニット帽をかぷったまま、傘を差さずに細かい雨の中を横切り、
 店に入った。そして奥のブース席に腰を下ろした。

  店内はすいていた。ウェイトレスがやってきたので、私は熱いコーヒーと、ハムとチーズのサ
 ンドイッチを注文した。そしてコーヒーを飲みながら、目を閉じて気持ちを落ち着けた。妻と他
 の男が抱き合っている光景を、なんとか頭の中からよそに追いやるうと努めた。でもその光景は
 なかなか消えてくれなかった。

  洗面所に行って石鹸で丁寧に手を洗い、洗面台の前の鏡に映った自分の顔をあらためて眺めた。
 目はいつもより小さく、赤く血走って見えた。飢饉のために生命力を徐々に奪われていく森の動
 物みたいだ。やつれて怯えている。タオルのハンカチで手と顔を拭き、それから壁の全身鏡で自
 分の身なりを点検してみた。そこに映っているのは、絵の具のこびりついたみすぼらしいセータ
 ーを着た、三十六歳の疲弊した男だった。

  おれはこれからどこに行こうとしているのだろう、とその自分白身の像を見ながら、私は思っ           
 だ。というかその前に、おれはいったいどこに来てしまったのだろう? ここはいったいどこな
 んだ? いや、そのもっと前に、いったいおれは誰なんだ?

  鏡に映った自分を見ながら、私は自分自身の肖像画を描いてみることを考えた。もし仮に描く
 としたら、いったいどんな自分自身を描くことになるだろう? おれは自分自身に対して愛情み
 たいなものをひとかけらでも抱くことができるだろうか? そこに何かしらきらりと光るものを、
 たったひとつでもいいから見いだせるだろうか?

  結論を出せないまま私は席に戻った。コーヒーを飲み終えると、ウェイトレスがやってきて、
 おかおりを注いでくれた。私は彼女に頼んで紙袋をもらい、手をつけていないサンドイッチをそ
 こに入れた。もっとあとになれば腹も減るだろう。でも今は何も食べたくない。

  ドライブインを出て、道路をそのまままっすぐ速むと、やがて関越速の入り口の案内が見えて
 きた。このまま高速道路に乗って北に行こう、と私は思った。北に何かあるのかはわからない。
 でもなんとなく、南に向かうよりは北に向かった方がいいような気がした。冷たくて清潔な場所
 に私は行きたかった。そして何より大事なことは、北であれ南であれ、少しでも遠くこの街から
 離れることだ。

  グラブコンパートメント(glove compartment)を開けると、中に五、六枚のCDが入っていた。
 そのうちの一枚はイ・ムジチ合奏団の演奏するメンデルスゾーンの八重奏曲、その音楽を聴きな
 がらドライブをす るのが妻は好きだった。弦楽四重奏団がそっくり二つぶん入った奇妙な編成
 だが、美しいメロディーを持った曲だ。メンデルスゾーンはまだ十六識の時にその曲を作曲した。
 妻がそう教えてく
 れた。神童だ。
 あなたは十六識の時に何をしていた?
  十六識のとき、ぼくは同じクラスの女の子に夢中になっていたな、と私は当時のことを思い出
 して言った。
  彼女とつきあっていたの?
  いや、ほとんど口をきいたこともない。遠くからただ眺めていただけだ。話しかけるような勇
 気はなかったしね。そして家に帰って彼女のスケッチを描いていた。何枚も描いたよ。
 昔から同じようなことをしていたのね、と妻は笑って言った。
 ああ、ぼくは昔からだいたい同じようなことをしてきたんだ。



Felix Mendelssohn, Ottetto per archi Op.20

  ああ、ぼくは昔からだいたい同じようなことをしてきたんだ、と私はそのときの自分の言葉を
 頭の中で繰り速した。
  私はシェリル・クロウのCDをプレーヤーから取り出し、そのあとにMJQのアルバムを入れ
 た。『ピラミッド』。そしてミルト・ジャクソンの心地よいブルーズのソロを聴きながら、高速
 道路をまっすぐ北に向かった。ときどきサービスエリアで休憩をとり、長い小使をし、熱いブラ
 ック・コーヒーを何杯も飲んだが、それ以外はほとんど一晩中ハンドルを握っていた。ずっと走
 行車線を走り、遅いトラックを追い抜くときだけ追い越し車線に入った。不思議に眠くはなかっ
 た。
 もう一生眠りが訪れることはないのではないかと思えるくらい、眠くはなかった。そして夜の明
 ける前に、私は日本海に着いていた。

                                     この項つづく 

 
 

似たもの同士の米大統領

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          51  大山鳴動  /  震為雷(しんいらい)  

 

                                    

        ※ 震は雷鳴、勁くことなどを表わす。この卦は、それが二つ重なって
          おり、天地の間に雷鳴がとどろきわたっているのである。古代人に
          とって、雷鳴は天の怒りの声であり、強い畏怖の念をかきたてるも
          のであった。しかしそれが案外実害を起こすことは少ないというこ
          ともまた、かれらは経験の上からよく知っていたのである。耳目聳
          動(じもくじょうどう)、思わず戦慄するようなことに出遭ったと
          きは、この雷鳴を思い浮かべることだ。沈着冷静に振舞えば、案外
          あっけなく通り過ぎるものである。この卦はまた、前景気やかけ声
          ばかりで肝心の内容がともなわないことをも表わす。十分心しなけ
          ればならない。

 

 

       

【RE100倶楽部:変換効率30%超早期実現へ】

太陽光発電と蓄電池の革命的な技術の向上によりコストが急速に低下し、助成金がなくても十分に競争
できる時代となり急速に普及している。国際エネルギー機関(IEA)によると、2015年には世界各地で新
たに作られた太陽光発電所の発電容量は51ギガワットに達し、それまでに建設された分と合わせる
と227ギガワットに及ぶという。電力コストも逓減し、発電所の計画、建設から運用廃止までの全
コストを生涯発電量で割った均等化発電原価(Levelized cost of electridty;LCOE)を過去10年間分で比較
すると、石炭のLCOEは世界平均で、百ドル/MWhでほぼ一定であるのに対し、太陽光発電のそれは
6百ドル/MWhからは百ドル/MWh近くまで低下。世界経済フォーラムによると、助成金なしで
グリッドパリティを達成した国が既に30か国以上あり、2020年までには世界の3分の2以上の国々
がそれに追随するだろうと予想する。

しかし、一方、発電コスト削減ては、日本は遅れをとる。米国のエネルギー省によると、米国、欧州、
中国、インドと比較した場合、住宅用太陽光発電コストは米国に次いで2番目、ユーティリティでは
日本だけ突出して高い。自然エネルギー財団による分析によると、日本で価格が高い要因は、主に建
設工事費、これは施工期間の長さ→人件費の増大、押し上げる。また、使われるモジュールのコスト
も高めな傾向が依然として残っている(品質の安定とは背反するが)。世界全体と比較すれば割高な
日本の太陽光発電も、この20年でコストは5分の1ほどになり、2015年には新たに作られた太陽光発
電所の発電容量が10ギガワットを超える。さらにコストを劇的に逓減するには、変換効率を30%
以上にすることで、工期短縮(面積1/2以下)を実現する。勿論、当初のセル単価は高いが、量産
が始まれば、よりコンパクトに、急速に逓減することは間違いないだろう(基本特性第4則:デフレ
ーション)。


● 事例研究:4接合反転変成太陽電池の製造法とデバイス構造 

     Mar. 2, 2017

ここ数年、宇宙用途のためのⅢ-Ⅴ族化合物半導体多接合太陽電池の大量生産により、技術の進歩が、
宇宙での使用のみならず地上のソーラーパワー用途にも加速。Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体多接合デバイス
は、シリコンに比べて製造が複雑になる傾向はあるものの、エネルギー変換効率が高く、一般的に放
射線耐性も高いとされる。典型的な商用のⅢ-Ⅴ族化合物半導体多接合ソーラーセルは、1sun、エア
マス0(AM0)の照度下で27%を超えるエネルギー変換効率をもつが、最も効率の高いシリコン技術で
も、同等の条件下で約18%の効率程度。シリコンソーラーセルに比べて高いⅢ-ⅤV族化合物半導体
ソーラーセルの変換効率は、異なるバンドギャップエネルギーを有する複数の光起電力領域を用いた
入射放射線のスペクトル分割と、各領域からの電流の蓄積とを達成する能力に部分的に基づいている。 

典型的なⅢ-Ⅴ族化合物半導体ソーラーセルは、半導体ウェハ上に垂直多接合構造で製造し、その後、
個々のソーラーセルまたは、ウェハが水平アレイの形に配置され、電気的直列回路の形で個々のソー
ラーセルが互いに接続。アレイの形状及び構造、並びにアレイが含むセルの数は、所望の出力電圧及
び電流によって部分的にめる。
 
例えば、M.W.Wanlass他著、「高性能Ⅲ-Ⅴ族光起電力エネルギー変換器のための格子不整合手法(
Lattice Mismatched Approaches for High Performance, Ⅲ−V Photovoltaic Energy Converters)」(2005年1月3日
〜7日 第31回IEEE光起電力専門家会議議事録 IEEE出版 2005年)に記載されるような、Ⅲ-ⅤV族化合
物半導体層に基づく反転変成ソーラーセル構造は、将来的な商用高効率ソーラーセルの発展の重要な
概念的出発点を提示しているが、セルの多くの異なる層の材料及び構造は、材料及び製造ステップの
適切な選択に数多くの実用的あ困難をともなう。このため、宇宙用ソーラーセルの効率を高めること
にあるが、宇宙用ソーラーセルの効率は、(不活性Ge上の2重接合InGaP/GaAsの)23%から(3重接
合InGaP/InGaAs/Geの)29.5%に向上している。この向上の実現は、材料品質の改善のみならず、宇
宙動作環境の特徴である荷電粒子放射に起因する電力劣化を低減するセル設計の改善による。

下記のソレアロ テクノロジーズ コーポレイション社の「特開2017-041634 多接合反転変成ソーラー
セル」はこれを応用した多接合ソーラーセルの製造方法とそのデバイス構成・構造の新規考案が提案
されている。

【要約】

上図の多接合ソーラーセルが、第1のバンドギャップを有する上部の第1のソーラーサブセルと、上
部の第1のソーラーサブセルに隣接し、第1のバンドギャップよりも低い第2のバンドギャップを有
する第2のソーラーサブセルと、第2のソーラーサブセルに隣接して量子井戸を含み、第2のバンド
ギャップよりも低い第3のバンドギャップを有する第3のソーラーサブセルと、第3のソーラーサブセ
ルに隣接し、第3のバンドギャップよりも高い第4のバンドギャップを有する傾斜中間層と、傾斜中
間層に隣接し、第3のバンドギャップよりも低い第5のバンドギャップを有し、第3のソーラーサブ
セルに対して格子不整合である下部の第4のソーラーサブセルとを含む構成・構造の編成層を含むⅢ
-Ⅴ族半導体化合物に基づく、高性能の多接合ソーラーセルを実現する製造工程及びデバイスの提案
である。

【特許請求範囲】

多接合ソーラーセルであって、第1のバンドギャップを有する上部の第1のソーラーサブセル
と前記上部の第1のソーラーサブセルに隣接して格子整合し、前記第1のバンドギャップより
も低い第2のバンドギャップを有する第2のソーラーサブセルと、前記第2のソーラーサブセ
ルに隣接して格子整合し、前記第2のバンドギャップよりも低い第3のバンドギャップを有する
第3のソーラーサブセルと、前記第3のソーラーサブセルに隣接し、該第3のバンドギャップ
よりも高い第4のバンドギャップを有する傾斜中間層と、前記傾斜中間層に隣接し前記第3の
バンドギャップよりも低い第5のバンドギャップを有し、前記第3のソーラーサブセルに対し
て格子不整合である下部の第4のソーラーサブセルと、を備え、前記傾斜中間層は、一方では
前記第3のソーラーサブセルと、他方では前記下部の第4のソーラーサブセルと格子整合するよ
うに組成的に傾斜し、前記第3のソーラーサブセルの面内格子定数以上であって前記第4のソー
ラーサブセルの面内格子定数以下の面内格子定数を有することという制約に従って、As、P、N、
Sb系のⅢ-Ⅴ族化合物半導体のいずれかで構成され、前記第3のソーラーサブセル及び前記第
4のソーラーサブセルのバンドギャップエネルギーを上回るバンドギャップエネルギーを有し、
前記下部の第4のソーラーサブセルは、約1.05〜1.15eV のバンドギャップを有し、前記第3の
ソーラーサブセルは、約1.40〜1.50eVのバンドギャップを有し、前記第2のソーラーサブセルは、
約1.65〜1.78 eVのバンドギャップを有し、前記上部の第1のソーラーサブセルは、約1.92〜2.2
eVのバンドギャップを有する、ことを特徴とする多接合ソーラーセル。

※ 尚、詳細は上図ダブクリ参照(英文)。

● 事例研究:貯蔵型太陽光発電装置および貯蔵型太陽光発電システム

半導体太陽電池は、半導体のバンドギャップ以上のエネルギーを有する光を吸収して電気を生成する。
例えば結晶シリコンは1.12eV以上のエネルギーの光を吸収して結晶シリコン中に正孔と電子を生
成する。一定の光を照射すると、ホールと電子のエネルギー差は半導体のバンドギャップにより決ま
り、入射光の波長にかかわらずエネルギー差は1.12eVである。図2の大きな表示で見る別ウィン
ドウ(タブ)は、半導体における正孔 - 電子分極効率によって決定される。Vocは、半導体のバンド
ギャップ(eVで表される値)を超えないがバンドギャップに近い値である。

バンドギャップ以上のエネルギーを有する短波長の光を半導体に照射すると、入射光のエネルギーが
半導体中で部分的に消失し、Voc はバンドギャップに近い小さい値である。したがって、最も効率よ
く発電が行われる光のエネルギーは、半導体太陽電池のバンドギャップよりも僅かに大きい値である。

すなわち、高効率化の観点から、半導体太陽電池には、バンドギャップに相当する波長よりも僅かに
短い波長の光を照射することが望ましい。 バンドギャップの小さい太陽電池が短波長の光を吸収する
場合、発電効率は非常に低い。その理由は次の通りである。具体的には、光子エネルギーの大きい短
波長の光を太陽電池に照射しても、太陽電池のバンドギャップによってVocが決まり、増加することは
ない。さらに、光子エネルギーが大きいので、光子数が減少する。その結果、単位光照射強度に対して
I scが小さくなり、発電効率が低下する。

大きな起電力と大きな電力を得るために、バンドギャップが異なり、分光吸収感度が互いに異なる複
数の半導体が積層された多接合太陽電池が開発されている。例えば、図3に示すようなエピタキシャ
ル結晶形成技術を用いてAlInP、InGaAs、Geのp-n接合を積層形成した多接合(積層)太陽電池が提案さ
れている。例えば、InGaP / InGaAs / Ge三重接合太陽電池のような多接合型太陽電池は、可視光から赤
外領域の広い範囲の光を吸収して発電する。

図4

また、図4に示すように、バンドギャップの異なるセルをあらかじめ単セル化しておき、透明な導電
性接着剤を用いて貼り合わせる方法。また、薄板状基板の両面にそれぞれ異なる分光感度を有する太
陽電池セルを有する複数の太陽電池パネルが所定の間隔をおいて平行に配置され、一方の太陽電池パ
ネルを構成する第1の太陽電池の表面で反射した光が他方の太陽電池パネルの第2の太陽電池に入射す
るもの。また、太陽電池自体の吸収特性を利用した多接合太陽光発電装置提案されている。

下図5に示すように、互いに異なる吸収波長範囲を有し、配線4によって電気的に直列接続された複数
の太陽電池1、2、3と、外部からの光を反射して各太陽電池に光を照射する反射ミラー6、7とを
吸収波長域に吸収されて発電する。遮光板の前後にそれぞれ異なる波長感度を有する太陽電池が設け、
表面側の太陽電池が直射日光を受光する太陽電池付きブラインドであって、その遮光板の前後にそれ
ぞれ異なる波長感度を有する太陽電池が設けられ、表面側の太陽電池が直射日光を受光する太陽電池
付きブラインドであって、 背面側に太陽電池からの反射光を前面側から受光し、この夜間照明用太陽
電池付きブラインドで発電した電力を蓄電池に蓄えて利用することが提案されている。

以上のようなことをふまえ、①光の反射損失を小さく抑え、②太陽電池のエネルギーロスを小さく抑
え、③電力を発生させることができ、④効率的かつ効率的に電気を蓄える、蓄電式太陽光発電装置お
よび蓄電式太陽光発電システムを提供することが本件の目的とされる。


【要約】

蓄電式太陽光発電装置10は、分光吸収感度が互いに異なる少なくとも2種類の太陽電池11、12、13を
含む太陽電池と、太陽電池に電気的に接続された蓄電装置21、22、23とを備えている。太陽電池は、n
番目(n は1以上の整数)の太陽電池が光を透過または反射させて自発的に光を分散させるように構
成されており、n +n 番目の太陽電池に吸収された光の一部以外の太陽電池が、より小さいバンドギ
ャップを有するn+1番目の太陽電池に落ちる。各太陽電池は、蓄電装置の1つに電気的に接続され、
2つ以上の太陽電池に電気的に接続された蓄電装置に蓄える。

 

 

図3 積層型多接合太陽電池の一例を示す概略図
図5 直列型多接合太陽光発電装置の一例を示す概略図
図6、蓄電式太陽光発電装置(第1実施形態の一例)の一例を示す概略図(ここでは図6は図番が表
   記されていないが、図5の右の図がそれである)
図17 実験例1及び比較実験例1の各セルの電流 - 電圧特性曲線を示す図
図18、実験例1及び比較例1の太陽光を模擬した光に対するa-Si(アモルファスシリコン)セル及び
   c-Si(結晶シリコン)セルの配置を示す模式図
図19、実験例2及び比較実験例2の各セルの電流 - 電圧特性曲線を示す図

【特許請求範囲】   互いに異なる分光吸収感度を有する2以上の太陽電池を含み、バンドギャップが減少する順に配
列された複数の太陽電池を備えた蓄電式太陽光発電装置であって、太陽電池に吸収されない入
射光の一部を透過または反射させて入射光を分散させ、入射光の一部を次の太陽電池に入射さ
せる光路方向に対して下流側に配置されている。前記2つ以上の蓄電装置のそれぞれに直接ま
たは間接的に電気的に接続された2つ以上の蓄電装置とを備え、前記2つ以上の蓄電装置のそ
れぞれによって生成された電力は、太陽電池に電気的に接続された蓄電装置とを備える。 前記各太陽電池の発電電力は、前記各太陽電池ごとに個別に記憶されることを特徴とする請求
項1に記載の蓄電式太陽光発電装置 前記2つ以上の太陽電池蓄電装置は、前記2つ以上の太陽電池のうちの少なくとも2つの太陽
電池と電気的に接続された蓄電装置を総称して、前記蓄電装置を構成することを特徴とする請
求項1に記載の蓄電式太陽光発電装置。少なくとも2つの太陽電池によって生成された電力を
蓄える。 前記2つ以上の太陽電池のうちの少なくとも2つの太陽電池が電気配線によって電気的に直列
に接続され、前記2つ以上の蓄電装置が蓄電装置を備えている、請求項1に記載の蓄電式太陽光
発電装置。電気配線によって直列に接続された少なくとも2つの太陽電池によって生成された電
力を集合的に蓄積する。 前記蓄電式太陽光発電装置は、前記2つ以上の太陽電池をそれぞれ含む2以上の太陽電池ユニッ
トと、前記2つ以上の太陽電池ユニット内の太陽電池とを備えることを特徴とする請求項1に
記載の蓄電式太陽光発電装置。 同じ分光吸収感度を有するものが同じ蓄電装置に接続されてい
る。 請求項1に記載の蓄電式太陽光発電装置と、前記蓄電式太陽光発電システムの外部からの光を
集光し、前記蓄電式太陽光発電システムの光路方向に対して最も上流に配置された2つ以上の
太陽電池の中から太陽電池に向けて照射する集光部入射光。

 

【JESEA地震予測:2017.03.15号】

南関東レベル5

 

     

  

   2.みんな月に行ってしまうかもしれない

  新潟に着くと、右に折れて海岸沿いを北上し、山形から秋田県に入り、青森から北海道に渡っ
 た。高速道路はいっさい使わず、一般道をのんびりと速んだ。あらゆる意昧合いにおいて急ぎの
 旅ではない。夜になれば、安いビジネス・ホテルか簡易旅館を見つけてチェックインし、狭いベ
 ッドに横になって眠った。ありかたいことにたとえどんな場所だろうと、どんな寝床だろうと、
 私はだいたいすぐに眠りに入ることができた。
 
  二日日の朝、村上市の近くからエージェンシーの担当者に電話をかけ、これからしばらくのあ
 いだ肖僅圃描きの仕事はできなくなると思うと告げた。まだ制作途中の依頼が数件あったが、私
 としてはとても仕事ができるような状況ではなかった。
 「それはまずいですよ。いったん依頼を引き受けてしまったんだから」と彼は声を使くして言っ
 た。テントの上には無限の空かあった。空には無数の星が光っていた。他には何もない。
  それから三遊間ばかり、私はプジョーを運転して北海道の各地をあてもなくまわった。四月が
 やってきたが、その年の雪解けはもう少し先のことだった。しかしそれでも空の色が目に見えて
 変わり、植物のつぼがはころび始めた。小さな温泉地があればそこの旅館に泊まって、ゆっくり
 風呂に入り、髪を洗って髭を剃り、比較的まともな食事をとった。それでも体重計に乗ると、東
 京にいた頃に比べて体重は五キロばかり落ちていた。

  新聞も読まなかったし、テレビも見なかった。カーステレオのラジオも北海道に着いたあたり
 から調子が悪くなり、やがて何も聞こえなくなった。世間でどんなことが起こっているのか、ま
 ったく知らなかったし、とくに知りたいとも思わなかった。コ伎苫小牧でコイン・ランドリーに
 入り、汚れた衣服をまとめて洗濯した。洗濯が終わるのを待つ間、近所の床屋に入って伸びた髪
 を切ってもらった。髭も剃ってもらった。そのときに床屋のテレビでNHKのニュースを久しぷ
 りに目にした。というか、目を閉じていてもアナウンサーの声はいやでも耳に入ってきた。でも
 そこで伝えられた一連のニュースは始めから終わりまで、私とは何の縁も関わりも持だない、ど
 こかよその惑星の出来事みたいに思えた。あるいは誰かが遊当にでっちあげた作り事のように思
 えた。

  私が唯一、自分になんらかの関わりを持つこととして受け入れたのは、北海道の山中で、一人
 でキノコ探りをしていた七十三歳の老人が熊に襲われて死んだというニュースだった。冬眠から
 目覚めた熊は、朧を減らせて気が立っているからとても危険なのだ、とアナウンサーは語った。
 私はときどきテントで眠って、気が向くと一人で森の中を散歩していたから、熊に襲われたのが
  私は謝った。「でもしかたないんです。支通事故にあったとかなんとか、先方にはうまく言っ
 ておいてくれませんか。ぼくの他にも絵描きはいるでしょう」
  担当者はしばらく黙り込んだ。私はこれまでコ皮も仕事の期限に遅れたことはない。私が仕事
 に関して無責任な性格でないことは彼もよく承知していた。
 「事情があって、これからしばらく東京を離れようと思っているんです。そのあいだは申し訳な
 いけど、仕事はできません」
 「しばらくって、どれくらい長く?」

  私はその質問には答えられなかった。私は携帯電話のスイッチを切り、適当な川をみつけて橋
 の上で車を停め、その小さな通信装置を窓から投げ捨てた。申し訳ないが、あきらめてもらうし
 かない。月に行ったとでも思ってもらうしかない。
  秋田市内で銀行に寄って、ATMで現金を引き出し、口座の残高を確認した。私の個人口座に
 はまだそこそこの金額が残っていた。クレジット・カードの支払いもそこから引き落とされる。
 しばらくはこのまま旅行を続けることができそうだった。日々それほど多くの金を倹うわけでは
 ない。ガソリン代と食費、ビジネス・ホテルの宿泊質、その程度のものだ。

                                     この項つづく 



「トランプはまるでニクソン」。こう、日本で人気のパックン(コラムニスト・タレント)はニュー
ズウィークス(2017.03.21号)で書いている。その1つが二人とも選挙中に人種対立をあおった点、
2つめは、ニクソンはベトナム戦争終結、トランプはISISを壊滅させる「秘密のプラン」を持っ
ているということで、3つめは選挙中二人とも民主党本部への侵入事件(ニクソンは空き巣、トラン
プはロシアによるハッキング)に巻き込まれている点だ。そして、この先、トランプはどこまでニク
ソンと同じ道を走り続けるのかと問いかけ。ニグソンは「僕は悪者じゃない」(I AM NOT A CROOK
!) と言って捜査に抵抗したが、辞職に追い込まれたが、どうもパックンは、そうなって欲しいとにお
わせる結んでいるが、わたし(たち)は両国民にとって最善の方向に展開することを祈る他なし。

 

 

迷惑な自滅/自爆

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          52  動かざる山々  /  艮為山(ごんいさん)  

 

                                    

        ※ 昨日の「震」を逆にした卦であり、卦の持つ意味も全く逆である。
          「震」は動いてやまぬ雷であったが、「艮」は泰然として動かぬ山
          である。沈思黙考して、軽挙妄動を慎しむべき時である。軽率に進
          めば、山また山の難儀がひかえている。卦の形は、各爻とも正応す
          るものがない。協力者は期待できず、ひとりわが道をゆく覚悟が必
          要である。依頼心は禁物。地味な努力で、現在の地位、境遇を守っ
          てゆくことが大切である。「艮」は、「夬」や「咸」と同様、身体
          の各部を例にとり、足から頭へ順に昇ってゆく。

 

 



【RE100倶楽部:海洋エネルギー発電】

ひょんなことから、海洋エネルギー発電を考えようと、思い立ち、一日かけてあれこれと思索にふ
ける。結論は、これまでの、太陽・風力・バイオマスと同じ再生可能エネルギー(あるいは自然エ
ネルギー)の4つめのシステムとして海洋エネルギーを集約し「オールマリーンパワーシステム」
とすることに決める。ここでいう、「オールマリンパワーシステム」とは、①海流発電、②潮流発
電、③波力発電、④塩分濃度差発電、⑤海洋温度差発電をさし、⑦海上風力発電を除いた発電シス
テムのことである(下図表ダブクリ参照)。

● 国内事例:奄美大島の水中浮遊海流発電システム

鹿児島県の奄美大島では古い小水力発電所が5倍以上の規模で復活し、石油火力発電に依存する離
島の中で二酸化炭素排出しない電力を供給。近隣の島の沖合では海流発電の実証試験を計画中であ
る。本土側では原子力発電所の周辺地域にメガソーラーが広がり、新しい地熱発電所の建設も進む。
奄美大島の北側にはトカラ列島の島々が点在している。その中で最も北にある口之島(くちのしま
)の沖合では、世界でも最大級の海流発電プロジェクトが進行中。ガスタービン発電機などを得意
とするIHIが東芝と共同で実証試験の準備に入っている。実証試験に使う海流発電システムは水中に
浮遊させる方式だ。発電システムの両端に、2枚の羽根が回転して発電するタービンをペアで備え、
1枚の羽根の長さは11メートルあり、2基のタービンを合わせて発電能力は百キロワットになる。
システム全体の大きさは横幅が20メートルで、長さも20メートルに及ぶ。

 Dec. 26, 2014

この海流発電システムを海面から50メートル程度の深さに浮かべる。海底に沈めた重りからケー
ブルでつなぎ、空を飛ぶ凧(たこ)のように浮遊させながら海流を受けて羽根を回転させる。海底
にはケーブルの接続箱も設置して、発電した電力を海底ケーブルで島へ送る。口之島を含めてトカ
ラ列島には東シナ海から黒潮が流れ込み、海流の速い場所が島の近くに広がり、実証試験は口之島
の沖合55キロメートルの海域で実施する予定。発電量や漁業に対する影響を評価して実用化を目
指している(「小水力発電と海流発電が離島に、天候に左右されない電力を増やす」 スマートジャ
パン 2017.03.14
)。

水中浮遊式の海流発電システムは同じ海域に数多く並べて設置できるため、発電能力を効率的に増
やせる点が特徴だ。日本の太平洋側には百キロメートル程度の幅で黒潮が流れている。海流発電を
実用化できれば、陸地に近い海域で大量の電力を生み出すポテンシャルがある。尚、海流には世界
中では年間数百テラワットアワーのエネルギーが存在するとされ、黒潮に関しては、東経139度(伊
豆半島沖)、北緯32.5~34度(約150キロメートル)、水深50メートルの断面におけるエ
ネルギーポテンシャルは、2.1ギガワットという見積もりがある。

● 海流発電のタービンは風力/水力と共通:
      
【水中浮遊式海流発電システムとは何か】

海底に係留索を介して繋がれた水中浮遊体にプロペラを取り付け、黒潮等の海流によってプロペラ
を回転させて発電するようにした水中浮遊式海流発電システムが提案されている。このような水中
浮遊式海流発電システムは、水温の変化や海流の強弱等の外乱要因により、水中浮遊体の深度が設
定深度から外れる事態が考えられる。例えば、海流が強くなった場合、係留索と海底との角度が小
さくなって水中浮遊体が沈降し、逆に、海流が弱くなった場合、水中浮遊体が浮上する。また、海
流の水温が高くなった場合、海水の比重が小さくなるので水中浮遊体が沈降し、逆に、海流の水温
が低くなった場合、水中浮遊体が浮上する。

これは新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)が進める「海洋エネルギー技術研究開発-海洋
エネルギー発電システム実証研究」の共同研究予定先として採択、2011年より研究開発。黒潮など
ので海流は昼夜・季節などの変動が少ないため安定供給でき、四方を海に囲まれた日本では最も大
量に利用できる自然エネルギー源とされる。水中浮遊式海流発電システムは、対向回転する双発式
タービンをケーブルで海底に繋留、海中を凧のように浮遊して発電を行う。東芝は発電機や変圧器
の製造、IHIはタービンや浮体を担当。海流発電としては海底から塔を立ててプロペラを回す固定型
の実証実験も各所で行われているが、浮遊型は大規模な海底土木工事が要らず、メンテナンスのた
めに海中から引き上げるのも容易という利点がある。

また、NEDOのプロジェクトにおいては大島造船所とサイエンスリサーチによる「垂直軸直線翼型
潮流発電」も実証研究が進められる。垂直式の風力発電機(ダリウス・サボニウス型風車)と同様に
潮流の方向に合わせて向きを変える必要がなく、低速でも回転するのが特徴。浮体型海流発電/直
軸直線翼型潮流発電はともに2016年以降の事業化に向け、発電コスト40円/kWh以下を目指す。


● 事例研究:特開2017-013721 水中浮遊体の浮力調整装置及び海流発電装置

しかし、ここで、水中浮遊体の深度が設定深度よりも深くなり過ぎると、水圧で水中浮遊体の耐圧
殻が破損したり、プロペラが海底に接触したり、海流が弱く発電効率が低下する等の不具合が発生
する。逆に、水中浮遊体の深度が設定深度よりも浅くなり過ぎると、水中浮遊体やプロペラが漁船
の漁網や船舶と干渉する等の不具合が発生する。一般に、水中浮遊体の深度は、例えば、海面下数
十~数百メートルに設定され、水中浮遊体の浮力を調整して、水中浮遊体の深度を一定深度範囲内
に保つ必要がある。

浮力調整袋に作動流体を注入/排出には、ポンプ等の圧送機器を水中浮遊体に搭載、それを作動さ
せるためのエネルギーも必要で、水中浮遊体に設けたプロペラにより発電した電力等の一部を、水
中浮遊体の深度調節(浮力調整)のエネルギーに使用せざるを得ず、その分だけ外部への電力供給
量が減少してしまうこととなる。外乱要因によって水中浮遊体の深度が変化した場合であっても、
エネルギー消費量を低減しつつ、水中浮遊体の浮力を調整可能な、水中浮遊体の浮力調整装置/海
流発電装置(下図ダブクリ参照)が提案されている。


【符号の説明】

1,1a,1b 浮力調整装置 2 海底 3 係留索 4 水中浮遊体 5 海面 6 索体 7 浮
体 7a 端末浮体 8 プロペラ 9 アンカー 10 海底接続箱 11 海底ケーブル 12 ア
ンテナ 13 地上基地 14 人工衛星 15 目印 16 第一巻取装置 17 ガイド 18 第
二巻取装置 19 錘用索 20 錘体 20a 端末錘体 21 第三巻取装置

 

                                          新しいホーズで見参

   

   2.みんな月に行ってしまうかもしれない  

  私が初めて妻に出会ったのは、三十歳になる少し前たった。彼女は私より三つ年下だった。四
 谷二丁目にある小さな建築事務所に勤めていて、二級建築士の資格を持っており、私が当時付き
 合っていたガールフレンドの高校時代の級友だった。髪がまっすぐで長く、化粧も薄く、どちら
 かといえば穏やかな見かけの顔立ちだった(見かけほど穏やかな性格ではなかったことがやがて
 判明するが、それはあとの話だ)。ガールフレンドとデートをしているときに、どこかのレスト
 ランでたまたま出会って紹介され、私はほとんどその場で彼女と恋に落ちた。

  彼女はとくに際たった顔立ちではなかった。これという欠点も見当たらないが、はっと人目を
 惹くようなところもなかった。まつげが長く、鼻が紹く、どちらかというと小柄で、肩脛骨のあ
 たりまで伸びた髪は美しくカットされていた(彼女は髪にとても気を遺った)。ふっくらした何
 の右端近くに小さなほくろがあり、表情の変化に合わせてそれが不思議な動き方をした。そうい
 うところがほのかに肉感的な印象を与えていたが、それも「よく注意して見れば」という程度の
 ものだ。普通に見れば、私がそのときつきあっていたガールフレンドの方がずっと美人だった。
 それなのに私は一目見ただけで唐突に、まるで雷に打たれたみたいに彼女に心を奪われてしまっ
 た。どうしてだろう? その原因に思い当たるまでに数週間がかかった。でもあるときはっと思
 い当たった。彼女は、死んだ妹のことを私に思い出させたのだ。とてもありありと。

  二人が外見的に似ていたというのではない。もし二人の写真を見比べたら、人はたぶん「ちっ
 とも似てないじやないか」と言うだろう。だからこそ私も最初のうち、そのことに気づかなかっ
 たのだ。彼女が私に妹を思い出させたのは、具体的な顔立ちが似ていたからではなく、その表情
 の動きが、とりわけ目の動きや輝きが与える印象が、不思議なくらいそっくりだったからだ。ま
 るで魔法か何かによって、過去の時間が目の前に蘇ってきたみたいに。

  妹はやはり私より三つ年下で、生まれつき心臓の弁に問題があった。小さい頃に何度か手術を
 受けて、手術自体は成功したのだが、後遺症がしつこく残った。その後遺症が自然治癒していく
 ものなのか、それとも先になって致死的な問題をひき起こすものなのか、それは医師にもわから
 なかった。妹は結局、私が十五歳のときに亡くなった。中学校にあがったばかりだった。短い人
 生の中で、妹はその遺伝子的な欠陥と休みなく闘い続けてきたわけだが、それでも明るく前向き
 な性格を失わなかった。最後まで愚痴や泣き言を口にせず、いつも少し先のことを綿密に計画し
 ていた。自分か死ぬということは彼女の計画の中に入ってはいなかった。生まれつき聡明で、学
 校の成績はいつも優秀だった(私よりずっと出来の良い子供だった)。意志が強く、決めたこと
 は何かあっても曲げなかった。兄妹間で何か揉めごとがあっても――そんなことは希にしかなか
 ったが――最後にはいつも私が譲ることになった。最後の頃は、ずいぶん身体がやせ細っていた
 が、それでも目だけは変わりなく瑞々しく、生命力に溢れていた。

  私が妻に惹かれたのもまさにその目だった。目の奥にうかがえる何かだった。その一対の瞳を
 最初に目にしたときから、私の心は激しく揺さぶられた。といっても、何も彼女を手に入れるこ
 とによって、死んだ妹を復元しようと思ったわけではない。そんなものを求めても、その先にあ
 るのは失望だけだということくらいは、私にも想像がついた。私が求めたのは、あるいは必要と
 したのは、そこにある前向きな意志の煌(きら)めきだった。生きるための確かな熱源のような
 ものだった。それは私にとってお馴染みのものだったし、またたぶん拡に不足していたものだっ
 た。

  私はうまく彼女の連絡先を聞き出し、デートに誘った。彼女はもちろん驚いたし、躊躇した。
 なんといっても私は、彼女の友だちの恋人なのだから。でも拡は簡単には引き下がらなかった。
 ただ会って話をしたいんだと言った。会って話をしてくれるだけでいい。それ以上は何も求めて
 いない。我々は静かなレストランで食事をし、テーブルを挟んでいろんな話をした。会話は最初
 のうちはおずおずとしたぎこちないものだったが、やがて生き生きしたものになった。彼女につ
 いて知りたいことが私には山ほどあったし、話題に困ることはなかった。彼女の誕生日は、妹の
 誕生日と三日しか違わないことがわかった。

 「君のスケッチをしてかまわないかな」と私は尋ねた。
 「今、ここで?」と彼女は言ってまわりを見回した。我々はレストランのテーブルで、デザート
 を注文したところだった。
 「デザートが運ばれて来るまでに終わるから」と私は言った。
 「じやあ、かまわないけど」と彼女は半信半疑で言った。

  私はいつも持ち歩いている小型のスケッチブックをバッグから取り出し、2Bの鉛筆で素早く
 彼女の顔をスケッチした。そして約束通りデザートが運ばれてくる前にそれを描き終えた。大事
 な部分はもちろん彼女の目だった。私かもっとも描きたかったのもその目だった。その目の奥に
 は時間を超えた深い世界が広がっている。
  私はそのスケッチを彼女に見せた。彼女はその終が気に入ったようだった。

 「とても生き生きしている」
 「君自身が生き生きしているからだよ」と私は言った。
  彼女は長い間そのスケッチを感心したように眺めていた。まるで自分か知らなかった自分自身
 を目にしているみたいに。

 「もし気に入ったのなら、君に進呈する」
 「本当にもらっていいの?」と彼女は言った。
 「もちろん。ただのクロッキーだ」
 「ありがとう」

  それから何度かデートをして、結局我々は恋人の関係になった。その流れはとても自然だった。
 ただ私のガールフレンドは、親友に私を奪われたことに、ずいぶんショックを受けたようだった。
 彼女はたぶん私と結婚することを視野に入れていたのだと思う。腹を立てるのもまあ当然のこと
 だった(いずれにせよ、私が彼女と結婚することはまずなかっただろうが)。また妻の方にも当
 時交際している男がいたし、そちらもそう簡単に話は収まらなかった。ほかにいくつかの障碍は
 存在したものの、半年ほどして私たちは夫婦になった。友人たちだけが巣うこぢんまりとしたお
 視いのパーティーを開き、広尾にあるマンションに落ち着いた。彼女の叔父がそのマンションを
 所有していて、比較的安い家賃で我々に賃してくれた。私は挟い一室をスタジオにして、そこで
 肖像画を描く仕事を本格的に続けた。私にとってそれはもう腰掛けの仕事ではなくなっていた。

 結婚生活には安定した収入が必要だったし、肖像画を描く以外に私がまともな収入を得るすべは
 なかったから。妻はそこから地下鉄で四谷三丁目にある建築事務所に週った。そして当然の成り
 行きとして、家に残った私が日常の家事を引き受けることになったが、それは私にとってまった
 く苦痛ではなかった。家事をこなすのはもともと嫌いではなかったし、絵を描く仕事の気分転換
 にもなったからだ。少なくとも、毎日会社に週勤してデスクワークを押しつけられているよりは、
 うちで家事をしていた方が遥かに楽しい。

  最初の何年間かの結婚生活は、それぞれにとって穏やかで満ち足りたものだったと思う。ほど
 なく日々の生活に心地よいリズムが生まれ、我々はその中に自然に身を落ち着けた。週末や休日
 には私も結の仕事を休み、二人であちこちに出かけた。美術具に行くこともあれば、郊外にハイ
 キングに出かけることもあった。ただあてもなく都内を歩き回ることもあった。親密な会話の時
 間を持ち、お互いについての情報を交換し合うことは、二人にとっての大事な習慣になった。そ
 れぞれの身に起こったたいていのことは包み隠さず、正直に語り合った。そして意見を交換し、
 感想を述べ合った。

  ただし私の側にはひとつだけ、彼女にあえて打ち明けなかったことがある。それは妻の目が私
 に、十二歳で死んだ妹の目をありありと思い出させ、それが彼女に心を惹かれた最大の理由だっ
 たということだ。もしその目がなかったら、私があれほど熱心に彼女を口説き落とすようなこと
 もなかったはずだ。でもそのことは言わない方がいいと私は感じていたし、実際最後まで一度も
 口にしなかった。それが私が彼女に対して持っていた、ただひとつの秘密だった。彼女が私に対
 してどんな秘密を抱えていたのか――たぶん抱えていたのだろうが――私にはわからない。 

  妻の名前は抽といった。料理に使うゆずだ。ベッドで抱き合っているとき、私は冗談でときど
 き彼女のことを「すだち」と呼んだ。耳元でこっそりそう囁くのだ。彼女はそのたびに笑い、で
 も半分本気で腹を立てた。

 「すだちじやなくて、ゆず。似ているけど違う」と。

  いったいいつからものごとが悪い方向に流れていってしまったのだろう? 車のハンドルを握
 り、ドライブインからドライブイン、ビジネス・ホテルからビジネス・ホテルヘと、移動のため
 の移動を続けながら、私はそのことについて思案し続けた。でもその潮目の変化のポイントを見
 定めることができなかった。我々はうまくやっていると私はずっと思い込んでいた。もちろん世
 間のすべての夫婦がそうであるように、いくつかの実際的な懸案は抱えていたし、それについて
 たまに口論をすることもあった。具体的には子供を作るか作らないかということが、我々にとっ
 ていちばん大きな懸案だったと思う。でもそれを最終的に決定しなくてはならない時期が到来す
 るまでには、まだしばらく時間の猶予はあった。そういう問題(言うなればまだしばらく棚上げ
 にしておける議題)を別にすれば、我々は基本的に健全な結婚生活を送っていたし、精神的にも
 肉体的にもうまくお互いを受け入れ合っていた。私は最後の最後までおおむねそう信じていた。

  どうしてそんなにも楽観的になれたのだろう? というか、どうしてそんなにも愚かしくなれ
 たのだろう? 私の視野にはきっと何か生まれつきの盲点のようなものがあるに違いない。私は
 いつだって何かを見逃しているみたいだ。そしてその何かは常にもっとも大事なことなのだ。


何かを見逃しているみたいだ――この箇所が妙にひっかかる。つまり、見逃していいるのではなく、
意識して見逃していることもあるのだ、それも数多くあるのだと、自分の体験からそう思った。これ
は本筋とは関わりのないのだろうが。それにしても、この時間帯になると脳疲労が酷い。さて、この
作品(全二巻)が読み終えるのはいつになるのだろうか。
             
                                      この項つづく

【常在戦場:迷惑な自滅/自爆 北朝鮮】

金正恩時代に入りミサイル発射/核実験の回数や規模が急増している。米国の軍事的プレゼンスの変
革(あるいは変遷)に入り、トランプ政権と中国の無知、無能、茶番ぶりがわたしたちを不安にさせ
る。単なる火遊びに終われば問題がないが、金正恩がもし核ボタンを押したとたん、体制崩壊すると
ともに、関係国への国家による最大級の大量テロ/環境破壊が起きる。冗談でない。



                                      

真っ赤なプジョーとの別離

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          53  着実な成長  /  風山漸(ふうさんぜん)  

 

                              

       ※ 漸とは、徐々に進むこと。急激な成長は望めないが、着実に順
                 を追って進んで行くのである。卦の形は、山(艮)上の木(巽)
         が、目に見えぬ速度で、しかも着実に伸びゆくさまを表わしてい
         る。また女子(巽)が落ち着いて(艮)求婚を待つさまでもある。
         各爻の辞は、雁が水際から岩へ、さらに陸、樹上、山上、そして
         はるかなる雲路へと順を追って進み行く姿に象って繋けられてい
         る。雁は厳重な一夫一婦制を守る鳥で、理想的な夫婦関係の象徴、
         また飛ぷ時には決して序列を乱さない。婚礼の儀式が正しい哨序
         で行なわれるように何事も順序正しく進ひならば、吉。


 

 

 

【再生医療最前線=歯再生 岡山大院グループ】

岡山大大学院医歯薬学総合研究科の研究グループは16日、イヌの幹細胞から作った歯の基になる「
歯胚(しはい)」を用い、同じイヌの歯を再生させることに成功したと、英電子科学誌サイエンティ
フィック・リポーツで発表した。ヒトの歯の再生治療の可能性を示す成果で、同大の窪木拓男教授は
毛髪や臓器の再生にも応用できると考えられ、再生医療の発展につながると話す。

生後30日のイヌから永久歯の歯胚を取り出し、さまざまな器官の基(種)となる上皮組織と間葉細
胞に分けた。これをもう一度合わせた後、2日間培養して作った「再生歯胚」を同じイヌの歯が抜け
た部分に移植すると、約6カ月で歯が生えた。この歯はエナメル質や象牙質、歯根膜など天然の歯と
同じ構造を持っていた。歯の中には神経も作られていると推測される。 歯胚を用いた歯の再生は、
東京理科大のグループが2007年にマウスで成功した。その際に開発された技術をヒトに応用する
には、歯が生え替わるイヌなど大型動物での成功が必要だったが、条件によってはマウスに比べて歯
の再生率が低いことや歯胚をどのように確保するかといった課題があるとのこと。

※ 再生医療技術シリーズとして適宜取り上げていこう(「RM100倶楽部)。

Titol: Practical whole-tooth restoration utilizing autologous bioengineered tooth germ transplantation
in a postnatal canine model.

 

    
読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅰ部』

   2.みんな月に行ってしまうかもしれない   

 
  朝、妻を仕事に送り出してから、昼過ぎまで集中して絵を描き、昼食をとったあと近所を散歩
 し、ついでに買い物をし、夕方になると食事の支度をした。週に二度か三度、近くのスポーツク
 ラブのプールに泳ぎに行った。妻が帰宅すると、食事を作って出した。そして一緒にビールかワ
 インを飲んだ。「今日は残業があって、会社の近くで適当に食事をとるから」という連絡があれ
 ば、一人でテーブルに向かい、簡単に食事をすませた。我々の六年間にわたる結婚生活は、おお
 かたそんな日々の繰り返したった。それで私の方にはとくに不満もなかった。
 
  建築事務所の仕事は忙しく、彼女はよく残業をした。私が一人で食事をすませる回数が次第に
 多くなっていった。帰宅が真夜中近くになることもあった。「ここのところ仕事が増えているの」
 と妻は説明した。同僚が一人急に転職して、その穴埋めを自分がしなくてはならないのだ、と言
 った。でも事務所はなかなか新しい人を入れてくれない。夜遅く帰宅した彼女はいつも疲れてい
 て、シャワーを浴びるとそのまますぐに眠ってしまった。おかげでセックスの回数はかなり少な
 くなっていた。仕事が片付かず、休日に出社することもたまにあった。私はもちろん彼女のそん
 な説明を額面通りに受け取っていた。疑わなくてはならないような理由は何ひとつなかったから。

  でも実は残業なんてなかったのかもしれない。私が∵人で家で食事をとっているあいだ、彼女
 はとこかのホテルのベッドで、新しい恋人と二人きりの親密な時間を過ごしていたのかもしれな
 い。

  妻はどちらかといえば外交的な性格だった。見かけはおとなしそうだが、頭の回転が遠く、機
 転も利き、社交的なシチュエーションをある程度必要とした。そしてそのようなシチュエーショ
 ンは、私がまず提供することのできないものだった。だからユズはしばしば親しい女性の友人だ
 ちとどこかで食事をしたり(彼女には多くの友だちがいた)、仕事のあとで同僚たちと飲みに行
 ったりした(彼女は私よりアルコールに強かった)。ユズがそうやって別行動をとり二人で楽し
 むことに、私は苦情を述べなかった。むしろそうすることを動めたかもしれない。

  考えてみれば、妹と私との関係も同じようなものだった。私は苦から外に出るのが苦手で、学
 校から帰るといつも部屋に∵人でこもって本を読んだり、絵を描いたりした。それに比べて妹は
 社交的で活動的な性格だった。だから日常生活の上で、私たち二人の関心や行動が一致すること
 はそれはどなかったように思う。でも私たちはお互いのことをよく理解し合っていたし、それぞ
 れの持ち昧を尊重していた。私たちは、その年代の兄と妹にしてはあるいは珍しいことかもしれ
 ないが、まめにいろんな話をした。二階に物干し台かおり、夏でも冬でもそこに上って、二人で
 飽きもせずに話をしたものだった。我々はとくにおかしな話をするのが好きだった。滑稽な話を
 交換しては、二人でよく笑い転げたものだった。

  だからというわけでもないのだが、私自身はそのような妻との関係性に、素直に安心しきって
 いたところがある。私は結婚生活における自分の役割――無口で補助的なパートナーとしての役
 割――を自然なもの、自明なものとして引き受けていた。でもユズはそうではなかったのかもし
 れない。彼女にとって、私との結婚生活にはきっと何か満ち足りないものがあったのかもしれな
 い。妻と妹とはまったく違う人格であり、存在なのだから。そして言うまでもなく、私はもう十
 代の少年ではないのだから。

  月が変わって五月になった頃、私は来る日も来る日も車を運転し続けることにさすがに疲れて
 きた。ハンドルを握りながら、同じものごとを果てしなく考え続けることにも飽いてきた。質問
 はすべて繰り返しに過ぎず、回答はいつまでもゼロのままたった。運転席に座りつづけているせ
 いで、腰も痛むようになってきた。プジョー205はもともとが大衆車だ。シートだってそれほ
 ど良質なものではないし、サスペンションも目に見えてくたびれてきた。そして長期間にわたっ
 て道路の照り返しを見続けてきたために、目の奥に慢性的な痛みを覚えるようになっていた。考
 えてみればもうIケ月半以上、私はほとんど休みなく、まるで何かに追いかけられているみたい
 にせわしなく移動を続けてきたのだ。
 
  宮城県と岩手県の県境近くの山の中に、小さなひなびた湯治場を見つけ、そこでいったん移動
 を中断することにした。深い渓谷の奥にある名もない温泉で、地元の人々が療養のために長逗留
 するような宿たった。料金も安く、共同の台所で簡単な自炊をすることもできた。そこで心ゆく
 まで温泉につかり、眠りたいだけ眠った。運転の疲れを疲し、畳の上に寝転んで木を読んだ。木
 を読かのにも飽きると、バッグからスケッチブックを出して線を描いた。線を描こうという気持
 ちになったのはずいぶん久しぶりのことだった。最初に庭の花や樹木を描き、それから旅館が庭
 で飼っている兎たちを描いた。簡単な鉛筆の素描だったが、みんなそれを見て感心してくれた。

 そして頼まれるままにまわりの人々の頼をスケッチした。同宿している人々、旅館で働いている
 人々。私の前をただ通り過ぎていく人々。もう二度と会うこともないであろう人々。そして望ま
 れれば、描いた線を本人に進呈した。

  そろそろ東京に戻らなくてはと私は思った。いつまでこんなことを続けていたところで、たぷ
 んどこにも辿り着けない。そして私はまた線を描きたかった。依頼された肖像画ではなく、簡単
 なスケッチでもなく、久しぷりにきちんと腰を据えて自分自身のための絵を描きたかった。それ
 がうまくいくかどうかはわからない。でもとにかく最初の一歩を踏み出してみるしかない。

  私はそのままプジョーを運転して東北地方を縦断し、東京まで戻るつもりだったのだが、国道
 六号線のいわき市の手前でついに車の寿命が尽きた。燃料パイプにひびが入り、エンジンがまっ
 たくかからなくなった。これまでほとんど整備もしてこなかったのだ。そうなっても文句は言え
 ない。唯一幸運だったのは、車が動かなくなった場所がたまたま、親切な修理工がいるガレージ
 のすぐ近くだったことだった。旧型のプジョーの部品をここで手に入れるのは困難だし、取り寄
 せるにしても時間もかかる。もし修理できたとしても、またすぐに他の部分に問題が出てくるだ
 ろう、とその修理工は言った。ファンベルトも危ういし、ブレーキパッドもかなりぎりぎりまで
 減っている。サスペンションにもがたがきている。「悪いことは言わない。このまま安楽死させ
 た方がいい」と。一ケ月半の路上の生活を共にし、走行距離十二万キロ近くをメーターに刻んだ
 プジョーに別れを告げるのは寂しかったが、あとに残していかざるを得なかった。おれの代わり
 に車が息を引き取ってくれたのだ、と私は思った。

  車を処分してもらうお礼に、テントと寝袋とキャンプ用品はその修理工に進呈した。最後にプ
 ジョー205のスケッチをしてから、私はジムバッグひとつを肩に担ぎ、常磐線に東って東京に
 戻った。そして駅から雨田政彦に電話をかけて、現在置かれている事情を簡単に説明した。結婚
 生活がうまく行かなくなって、しばらく旅行に出ていたんだけど、東京に戻ってきた。とりあえ
 ず戻る場所がない。どこか泊めてもらえるようなところはないかな、と私は尋ねた。

  それならちょうどいい家がある、と彼は言った。おれの父親がずっと一人で往んでいた家なん
 だが、父親は伊豆高原にある養護施設に入ることになり、しばらく空き家になっている。家具や
 生活必需品はみんな揃っているから、何も用意しなくていい。場所としては不便なところだが、
 電話はまだ使える。それでよければしばらく往んでみないか。
  願ってもない話だ、と私は言った。それはまったく願ってもない話だった。
  そのようにして新しい場所での、私の新しい生活が始まった。




   3.ただの物理的な反射に過ぎない

  小田原郊外の山頂の新しい家に身を落ち着け、数日してから妻に連絡をとった。彼女に連絡が
 つくまでに五回ほど電話をかけなおさなくてはならなかった。会社の仕事が忙しく、相変わらず
 帰宅は連くなっているようだった。それとも誰かと外で会っていたのかもしれない。でもいずれ
 にせよ、それはもう私には関わりのないことだった。

 「ねえ、今どこにいるの?」とユズは私に尋ねた。
 「今は小田原の雨田の家に落ち着いている」と私は言った。そしてその家に住むようになったい
 きさつを簡単に説明した。

 「あなたの携帯に何度も電話をかけたんだけど」とユズは言った。
 「携帯はもう持っていない」と私は言った。私の携帯電話は今頃はもう日本海に流れ着いている
 かもしれない。「それで、身の回りのものを引き上げるために、近くそちらに行きたいんだけど、
 かまわない?」
 「この部屋の鍵はまだ持ってるでしょう?」
 「持ってるよ」と私は言った。携帯と一緒に鍵を川に捨てることも考えたのだが、返却を求めら
 れるかもしれないと思い直して、そのまま持っていた。「でも君のいないときに勝手に部屋に入
 ってかまわないのか?」
 「だってここはあなたのうちでもあるのよ。いいに決まっているじやない」と彼女は言った。
 「でも長いあいだ、いったいどこで何をしていたの?」

  ずっと旅行していたんだ、と私は言った。一人で車を運転し続けていたこと。寒い地方をあち
 こち回っていたこと。途中で車の寿命が尽きてしまったこと。そんな経緯を手短に要約した。

 「でもとにかく無事だったのね?」
 「ぼくは生きているよ」と私は言った。「死んだのは車だ」

  ユズはしばらく黙っていた。それから言った。「このあいだ、あなたが出てくる夢を見た」
  どんな夢だったのか、私は尋ねなかった。彼女の夢の中に出てきた私のことを、私はべつに知
 りたいとは思わなかった。だから彼女もその夢の話はもうしなかった。

 「部屋の鍵は置いていくよ」と私は言った。
 「私としてはどちらでもいいのよ。あなたの好きにすればいい」

  帰り際に郵便受けに入れておく、と私は言った。
  少し間かあいた。それから妻は言った。

 「ねえ、最初にデートしたとき、私の顔をスケッチしてくれたことを覚えている?」
 「覚えているよ」
 「ときどきあのスケッチを引っ張り出して見ているの。素晴らしくよく描けている。ほんとの自
 分を見ているような気がする」
 「ほんとの自分?」
 「そう」
 「だって毎朝、鏡で自分の顔を見ているだろう?」
 「それとは違う」とユズは言った。「鏡で見る自分は、ただの物理的な反射に過ぎないから」

  私は電話を切ってから洗面所に行って、鏡を眺めてみた。そこには私の顔が映っていた。自分
 の顔を正面からまともに見るのは久しぶりのことだった。鏡に見える自分はただの物理的な反射
 に過ぎないと彼女は言った。でもそこに映っている私の顔は、どこかで二つに彼分かれしてしま
 った自分の、仮想的な片割れに過ぎないように見えた。そこにいるのは、私が選択しなかった方
 の自分だった。それは物理的な反射ですらなかった。

今回は、鍵語、「肖像画」に描かれた「本当の自分」とは?またひとつの謎が残される。


                                     この項つづく

【RE100倶楽部:海洋エネルギー発電Ⅱ】

● 事例研究:特開2017-038511 電磁共振回転電機及び複合型回転電機

航空機や宇宙機器、さらには太陽光発電で飛行できる電動飛行機や無人飛行機は機器の重量が性能を
大きく左右する。そのため、搭載するモータや発電機等の回転電機の軽量化が図られるが、機械構造
を根本的に変更しないままの減量には限界がある。回転電機の重量の大部分を占めるのは金属材料で
あり、かつ体積割合の大部分を占めるのは鉄心である。鉄心が無くなれば金属材量はコイルのみにな
り、飛躍的に軽量化できる。しかし、鉄心は起磁力で生じる磁束を高めるとともに漏れ磁束を低減し
て有効磁束を確保する重要な役割を担い、従来の回転電機には必要不可欠なものである。従来構造の
回転電機ではその軽量化に自ずと限界がある。

一方、汎用モータや大容量モータには誘導型モータ(誘導機)が最も多く使用されているが、誘導機
には原理的な課題がある。誘導機では、エアギャップ長が出力に大きく影響する。出力、効率、力率
等の機器の特性を向上させるにはエアギャップ長を狭くすることが望ましいが、量産性や性能のばら
つき等の製造性を考慮するとエアギャップ長はある範囲までしか狭くできない。このような二律背反
の関係によって誘導機は効率や力率、高出力化において従来技術では性能限界に達している。

ここでは、下記のような新規な電磁共振回転電機及び複合型回転電機の技術事例を提案する。 

固定子巻線と回転子巻線との間に起こる電磁気的共振を利用して回転子に回転力を誘起させ、
あるいは逆に回転子の回転に対して固定子側に電力を発生させるこのような回転子を回転させ
あるいは固定子に電力を発生させることがきる。 このような回転子を回転させあるいは固定子に電力を発生させることのできる電磁気的共振原
理を利用する回転電機により、鉄心を無くして超軽量化が図れ、また誘導機のエアギャップを
大きくとっても高性能化が図れる。

【解決手段】下図のように、複数のコイル11U,11V,11Wを接続した固定子巻線11とキャ
パシタ13とを有する固定子10と、複数のコイル21U,21V,21Wを接続した回転子巻線
21とキャパシタ23とを有する回転子20とから構成され、インダクタンスLとキャパシタンスC
との電磁気的共振現象を利用して回転子20を回転させ又は回転子20の回転により固定子10に電
力を発生させる電磁気共振回転電機である。

  

【符号の説明】1,101,201 電磁共振回転電機  10,110,210 固定子  11,
111,211 固定子巻線  11U,11V,11W 固定子コイル  12 固定子構造体 
13U,13V,13W キャパシタ  14 スロット  20,120,220 回転子 
21,121,221 回転子巻線  21U,21V,21W 回転子コイル  22 回転子構造体 
23U,23V,23W キャパシタ  24 スロット  27 導電板  30 エアギャップ

● 電磁共振モータとは

電磁共振回転電機は電磁界共振結合を利用して固定子巻線と回転子巻線との間で電力を電送し、モー
タ動作では力を発生し、発電機動作では電力を発生させる電磁共振エネルギー変換機器である。電磁
共振回転電機は無鉄心で、巻線のみで構成することができる。そのため、超軽量の回転電機が実現で
き、モバイル機器から電気飛行機、太陽電池飛行機を実現するためのキー技術になる可能性がある。

電磁共振モータは固定子巻線(1次巻線)と回転子巻線(2次巻線)との間で電磁界共振結合の作用
で電力を電送してエネルギー変換を行う。上図1、2を用いて、電磁共振モータ1の原理モデルの構
成と動作原理について述べる。3相の固定子コイル11U,11V,11Wを空間的に60°120°
位相間隔で配置する。前記コイル11U,11V,11Wから成る固定子巻線11の固定子電流によ
って回転磁界を形成する。回転子20には同様に3相のコイル21U,21V,21Wを配置し、三
相短絡状態にする。これらの回転子20のコイル21U,21V,21Wにて回転子巻線21を構成
する。また、上図3、4に示すように、通常の固定子鉄心と回転子鉄心はなくして無鉄心とし、実際
の構造としては合成樹脂FRPを固定子構造体12、回転子構造体22として各コイル11U,11
V,11W;21U,21V,21Wを固定する。但し、低周波数領域でも成立する場合で、応用製
品によっては鉄心を設ける可能性もある(複合型回転電機)。

 さらに図1、図2に示すように、3相の固定子巻線回路と回転子巻線回路とには共振用のキャパシタ
13U,13V,13W;23U,23V,23Wを接続してそれぞれにキャパシタンスを持たせて
いる。図3、図4を用いて実施の形態の電磁共振回転電機1の機械的な構成を詳しく説明する。電磁
共振回転電機1は固定子10と回転子20から構成される。固定子10は、強化繊維樹脂(FRP
)を材料とした固定子構造体12にスロット14を設けて、固定子構造体12の各スロット14内に
コイル11U,11V,11Wを挿入し、複数のコイル11U,11V,11Wから成る3相の固定
子巻線11それぞれにはキャパシタ13U,13V,13Wを接続してキャパシタンスを持たせてい
る。

一方、電磁共振回転電機1の回転子20は、強化繊維樹脂(FRP)を材料とした回転子構造体22
にスロット24を設けて、回転子構造体22の各スロット24内にコイル21U,21V,21Wを
挿入し、複数のコイル21U,21V,21Wから成る3相の回転子巻線21にはキャパシタ23U,
23V,23Wを接続して各相にキャパシタンスを持たせている。固定子10の内部に回転子20を
配置し、両者間にはエアギャップ30を形成している。

固定子10の3相巻線21のインダクタンスLとキャパシタンスCとは、設定した周波数fで共振す
る値にしている。同様に回転子20の3相巻線21のインダクタンスLとキャパシタンスCとは、設
定した周波数fで共振する値にしている。さらに固定子10の共振周波数fと回転子20の共振周波
数fとがほぼ一致するように各巻線11,21とキャパシタ13,23の特性を設定している。これ
によって、固定子10と回転子20とが電磁気的な共振結合状態になり、固定子10側の電気エネル
ギーが回転子20側のエネルギーとして電送される。このような構成にすることによって漏れ磁束の
影響はほとんどなくなるので、無鉄心の空心状態でも電磁界結合によって電力を電送できる。

上記の構成の電磁共振モータの特性解析を行った。空心とするためにステータコアとロータコアの材
料設定を空気に設定した。電磁共振モータのモデルは図3、図4に示すものである。そのモデルの諸
元を下図5の表に示している。

※ これは面白い(残件扱い)

● プライバシー保護が成長戦略

  個人情報を食い物にしないスナップがついに上場

モバイル端末で掘影した写真や勲画を手軽に友達に送信できるスナンブチヤット。このアプリを運営
するスナジブが3月初め.ついにIPO(新規株式公開)を果たした。時価総額は公開初日の終値ペ
ースで約280億ドルと、ここ数年のIT企業のIPOとしては最大規模のものになり話題となって
いる。スナッブチヤットは、受信者か閲覧すると数秒後にデータが消えるのか特徴で、若者の間で人
気か高い。ソーシヤルメデイアのフェイスブックは昨年の米大統領選以降、政治がらみの投稿だらけ
になったとして嫌気か差すユーザーが増加。スナップにとっては、多数の新規ユーザーか援得するチ
ャンスかもしれない。だが、それ以上に強力な同社への追い風になりそうな要因がある。ドナルド・
トランプ米大統領の登場が生み出した「監視国家への恐怖」という(ケビン・メイニー「プライバシ
ー保護が成長戦略」Newsweek 55 2017.03.27)。



最近まで、アメリカ人の多くは「デジタルプライバシー」をあまり懸念していなかった。フェイスブ
ックやグーグルをはじめ、多くのIT企業業が提供する魅力的な無料サービスを享受するため、喜ん
でんで個人情報をネット上で差し出してきた。だがテクノロジーは、かつてない方法で私たちのプラ
イバシーを侵食し始めている。加えてトランプ政権は、鳥の巣箱を租う猫のようにユーザーのデータ
を狙っている。国家安全保障局(NSA)などの治安機関や企業に私たちの個人情報を大量にに集め
させ、好き勝手に使わせようとしているという。

この状況に人々の懸念は高まっている。ビュー・リサーチセンターの1月の世論調査によれば,米国
民の約半数が5年前に比べ、個人情報の安全性が低下したと考えている。政府に個人情報の安全な管
理は期待できないという答えも3分の1近い。 個人向けプライバシー保護ソフトのアンカーフリー
によれば、トランプの大統領選勝利以降、アメリカで同社の登録ユーザーか急増した。「アラブの春」
の時期のエジプトやチュニジアでも同様の現象が起きたという。

3分ごとに位置情報追跡

同誌の著者は、NSAは1月、退陣間近のオバマ政権から、傍受したメールや導Mなどの内容を他の
岑情報機関と共有する許可を得た。プライバシー擁護団体は、トランブ政権がこれを乱用するのでは
ないかと懸念している。それによると、だが、政府以kに心配すべきなのはテクノロジーの進歩かも
しれないという。最近のIT業界は、こぞって機械学習を活用した魅力的な新商品やサービスの提供
を目指している。

フェイスブックの「いいね!」や投稿内容に関連した広告を表示するグーグルは既におなじみだ。グ
ーグルも検索ワードやGメール内の単語を使い、同様の広告を展開している。だがこれらも、IT業
界か開発中の機械学習という複雑な「料理」に比べれば、具のないサンドイッチのようなものだ。今
やソフトウエアは人間とほぼ言語理解能力を身に付けた。アマゾン・エコーやグーグル・ホームのよ
うな音声認識端末を家庭に導入するのは、わざわざ、盗聴機器を目宅に設置するようなものだと指摘
している。

この手の機器は表向き、「アレクサ」のようなトリガーワード「きっかけの言葉」で呼び掛けて初め
て反応する仕様になっている。だが実際には、近くで私たちが発した全ての言語を聞き取り、分析す
る能力かある。警察や弁護士は興味津々だ。アーカンソー州で起きた殺人事件では、警察か容疑者宅
にあるエコーの存在に気付き、アマゾンに対してエコーが聞き取った全記録の提出を要請した。アマ
ゾンは保存されているのはトリガーワード後の数秒分の言葉だけだとして要請を拒否したか、今後こ
うした事例か増えるのは確実だろう。またスマートテレビメーカーのビジオは先口、顧客の視聴習慣
をこっそり追跡していたとして罰金を科された。モバイルアプリのユーザー追跡能力は高い。カーネ
ギー・メロン大学のノーマン・サデー教授らが行った研究によれば、グルーボンやウェザーチャンネ
ルのようなモパイルアブリは、3分おきにユーザーの位置情報を集めていることを判明する。

 Digital privacy

いずれユーザーが反乱? 

今では個人情報を企業のデータペースに転送するIoT(モノのインターネット一間遠機器も大老に出
回っている。家系調査サイトのアンセストリー・ドットコムや、将来に病気などを引き起こす可能性
がある遺伝子の有無を調べてくれる23アンドミーのサービスを利用するために、DNA検査キット
を購入するユーザーも多い。実際この分野も法執行機関の関心の的だ。アイダホ州で起きたある殺人
事件では、警察がアンセストリーのデータベースにあったDNAサンプルとの照合によって、1人の
容疑者の身元を特定した例がある。

NSAや企業がデジタルデータと遺伝子情報を組み合わせて使用するようになりたら、私たちか何を
話し、どこに行き、誰と知り合いで、どんな出自なのかまで知ることができる。いずれ大量のユーザ
ーか、自分の情報が丸裸にきれていることに気付き、個人情報の無料提供をやめる日か来るかもしれ
ない。この「反乱」は、IT業界に大打撃を与えるはずと指摘。私たちは無料サービスと引き揆えに
プライバシーを売り、企業は個人情報に基づくターゲット畷マーケティングを展開している。多くの
ユーザーが「ゲーム」から抜ければ、このビジネスモデルはもう終わりだ。だからこそ、このタイミ
ングでのスナップのIPOは重要な意味を持つ。同社はあらゆる個人情報を大量に吸い上げなくても、
継続可能なメディア事業を築けることを実証しつつある。

スナッブのIPO申請書類によれば、1日当たりのアクティプユーザーは豹1億6000万㌦。16
年の売り上げは約4億㌦に達し、同社は猛スピードで成艮を続ける。急成長の秘訣は、プライバシー
を侵害しないことかもしれない。投稿した写真や動画がすぐに消えるサービスを売りにしたスナッブ
チャットのビジネスモデルは、顧客の全行動をデータ化する必要はないという考えに基づいている。

インターネット出現以前の数千年間、会話は終わっな瞬間に消えてなくなるものだった。自分が歩い
た場所を記録する機器などなかった。読み終わった新聞からどの記事を読んだかチェックされること
もなかった。プライバシーをユーザーに「返す」ことで支持を得るというのがスナップの戦略だ。そ
れが.正しければ、「未来は過去のようになる」可能性がある。多くの国民が監視国家の影に怯え、
プライバシーを取り戻そうとする時代は、もうすぐそこまで来ているのかもしれないと警告しこう結
んでいる。

ジタバタしても始まらない。悪い事をして悔い改めなければ(勿論、歴史修正主義者も含め)地獄へ
堕ち他なしだと、わたしそう割り切り今夜も打ち込んでいるわけだ。

                                        

           


可愛い名残雪

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    54  着道ならぬ恋  /  雷沢帰妹(らいたくきまい)  

                              


      ※ 帰妹、若い女が帰(とつ)ぐことである。ところが、この卦の
        示すものは正常な結婚ではない。若い女(兌)の方から積極的
        に年とった男(震)に働きかけており、女は待つべきものとい
        う常道に反している、また陰爻が陽爻を押さえつけている形で
        あり、男働きて(震)女悦ぶ(兌)、つまり、肉体関係だけで
        結ばれ、愛情の裏づけに乏しいのである。易の中には男女関係
        を示す卦が四つある(咸、恒、漸、帰妹)が、この卦だけが不
        吉な運命を告げられているのはそのためである。精神的なもの
        を充実させて、末長い結びつきまで高めることが必要である。
        ごれは一のたとえであって、結婚に限らずすべてのことに言え
        ることである。

 

    
読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅰ部』 

   3.ただの物理的な反射に過ぎない 

  その二日後の昼過ぎに、カロ土フ・ワゴンを運転して広尾のマンションまで行って、身の回り
 のものをまとめた。その日も朝から休みなく雨が降っていた。マンションの地下の駐車場に車を
 停めると、いつもの雨の日の駐車場の匂いがした。

  エレベーターで上にあがってドアの鍵を開け、ほとんどニケ月ぷりにマンションの部屋に入る
 と、なんだか自分か不法侵入者になったような気持ちがした。そこは六年近く拡が生活を送り、
 隅々まで見慣れたはずの場所だった。しかし今では、ドアの内側にあるのはもう私か含まれてい
 ない風景だった。台所のシンクには食器が積み上げられていたが、それはすべて彼女の使った食
 器だった。洗面所には洗催物が干してあったが、干してある衣服はすべて彼女のものだった。冷
 蔵庫を開けてみたが、その中に入っているのは見覚えのない食品ばかりだった。多くはそのまま
 食べられる出来合いの食品だ。牛乳もオレンジ・ジュースも、私か買っていたメーカーとは遂う
 ものだった。冷凍庫には冷凍食品が詰まっていた。私は冷凍食品というものをまず買わない。二
 ケ月足らずのあいだに実に多くのものごとが変化を遂げてしまう。

  私は流しの中に積まれた食器を洗い、洗濯物を取り込んで畳み(できればアイロンをかけ)、
 冷蔵庫の中の食品をきれいに整理したいという強い衝動に駆られた。でももちろんそんなことは
 しなかった。ここはもう他人の往まいなのだ。私が手を出すべきことではない。
  荷物のうちでいちばん嵩張るのが画材だった。イーゼルやキャンバス、絵筆や絵の具類を放り
 込んだ大きな段ボール箱がひとつ。それから衣服。私はもともと衣服の数を必要としない人間だ。
 いつも同じような服を着ていても気にならない。スーツもネクタイも持だない。厚い冬用のコー
 トを別にすれば、だいたい大型スーツケースひとつに収まってしまう。

  まだ読んでいない何冊かの本と、1ダースばかりのCD。愛用していたコーヒーマグ。水着と
 ゴーグル、スイミング・キャップ。とりあえず必要なものと言えば、せいぜいそれくらいだ。そ
 れらだってなければないで、とくには困りはしないのだが。
  洗面所には私の歯ブラシや髭剃りのセットや、ローションや日焼け止めやヘアトニックがその
 まま残されていた。封を切っていないコンドームの箱がそのまま残っていた。でもそんな細々し
 たものをわざわざ新しい往まいに遂ぶ気にはなれなかった。適当に処分してくれればいい。

  それだけの荷物を車の荷室に積み込んでしまうと、私は台所見戻ってやかんに湯を彿かし、テ
 ィーバッグで紅茶をつくり、テーブルの前に座って飲んだ。それくらいのことはしてかまわない
 だろう。部屋の中はとて心しんとしていた。沈黙が空気の中に、微かな重みを与えていた。まる
 で一人きりで海の底に座っているみたいだ。

  三十分ばかり私は一人でその部屋の中にいた。そのあいだ尋ねてくる人心いなければ、電話の
 ベルも鳴らなかった。冷蔵庫のサーモスタットが一度切れ、一度入っただけだ。私は沈黙の中で
 耳を澄ませ、水深を測るおもりを垂らすみたいに部屋の気配を深った。それはどのように見ても、
 一人暮らしをしている女性の部屋だった。日々の仕事が忙しく、家事をこなしている暇もほとん
 どない。雑用は週末の休みにまとめて片付ける。部屋の中をざっと見渡してみて、そこに見受け
 られるものはすべて彼女自身のものだった。ほかの人物の気配は見当たらない(私の気配さえ既
 にほとんど見当たらない)。ここに男が訪ねてくることはないのだろう。私はそう思った。彼ら
 はたぶん別のところで会うのだろう。

  その部屋に一人でいるあいだ、うまく説明はできないのだが、自分か誰かに見られているとい
 う感触があった。隠しカメラを週して誰かに監視されているような気がした。でももちろんそん
 なことがあるはずはない。妻は機械類にはおそろしく弱い。リモコンの電池の交換さえ自分では
 できない。隠しカメラを設置したり操作したり、そんな器用な真似ができるわけがない。私の神
 経が過敏になっているだけだ。

  それでも私はその部屋にいるあいだ、架空のカメラで逐一行動を記録されているものとして行
 動した。余計なこと、不適切なことは何ひとつしなかった。ユズの机の抽斗を開けて、中にある
 ものを調べたりもしなかった。彼女がストッキングなどを入れたタンスの抽斗の奥に、小さな日
 記帳や大事な手紙を保管していることも知っていたが、それに心手を触れなかった。ノートパソ
 コンのパスワードも知っていたが(もちろんまだ変更していなければだが)、蓋も開けなかった。

 そんなことはすべて、私にはもう関わりのない事柄なのだ。私は自分の飲んだ紅茶カップだけを
 洗い、布巾で拭いて食器棚にしまい、明かりを消した。そして窓際に立って、降り続く外の雨を
 しばらく眺めた。オレンジ色の東京タワーがその奥にほのかに浮き上がっていた。それから部屋
 の鍵を郵便受けに落とし、車を運転して小田原に戻った。おおよそ一時間半の道のりだ。でもま
 るで日帰りで異国に行って戻ってきたみたいに感じられた。



  翌日、担当エージェントに電話をかけた。そして東京に帰ってきたのだが、悪いけれどもうこ
 れ以上、肖像画を描く仕事を続けるつもりはないと言った。

 「もう二度と肖像画は描かない、ということですか?」
 「たぶん」と私は言った。

  彼は私の通告を言葉少なに受け入れた。とくに苦情も言わず、忠告らしきことも口にしなかっ
 た。私がいったん何かを言い出したらあとには引かないことを、彼は知っていたから。
 
 「でも、もしまたこの仕事をやりたくなったら、いつでも連絡してきてください。歓迎します」
 と彼は最後に言った。

 「ありがとう」と私は礼を言った。

 「余計なことかもしれませんが、どうやって生計を立てていくんですか?」
 「まだ決めていません」と私は正直に答えた。「一人暮らしで、そんなに生活費はかからないし、
 今のところまだ多少の蓄えはあるから」 

 「絵は描き続けるんでしょう?」
 「たぶん。ほかにとくにできることもないし」

 「うまく行くといいですね」
 「ありがとう」と私はもう一度礼を言った。それからふと思いついて、それに付け加えるように
 質問した。「何かぼくが覚えておくべきことはあるでしょうか?」

 「あなたが覚えておくべきこと?」
 「つまり、なんていえばいいのかな、プロのアドバイスのようなものです」

  彼は少し考えた。それから言った。「あなたはものごとを納得するのに、普通の人より時間が
 かかるタイプのようです。でも長い目で見れば、たぶん時間はあなたの側についてくれます」

  ローリング・ストーンズの古い歌のタイトルみたいだ、と私は思った。
  彼は続けた。「そしてもうひとつ、私が思うに、あなたにはポートレイトを描く特別な能力が
 具わっています。対象の核心にまっすぐに踏み込んで、そこにあるものをつかみ取る直観的な能
 力です。それはほかの人があまり持ち合わせていないものです。そういう能力を手にしながら使
 わないままにしておくのは、いかにも惜しい気がします」

 「でも肖像画を描き続けるのは、今のところぼくのやりたいことじゃないんです」
 「それもよくわかっています。でもその能力はいつかまたあなたを肋けてくれるはずです。うま
 くいくといいですね」

  うまくいくといい、と私も思った。時間が私の側についてくれるといい。

 Route 271

  最初の日、家の持ち主の息子である雨田政彦がボルボを運転して、私をその小田原の家まで運
 れて行ってくれた。「もし気に入れば、今日からでもそのまま柱めばいい」と彼は言った。

  小田原厚木道路を終点近くで降り、長道のような狭いアスファルトの道路を山に向かった。道
 路の両脇には畑かおり、野菜を育てるビニールハウスが並び、ところどころに梅の林が見えた。

 そのあいだほとんど人家も見えず、ひとつの信号もなかった。最後に曲がりくねった急な坂道が
 あり、ギアを落としてそこを延々と上っていくと、道路の突き当たりに家の門が見えた。立派な
 門柱が二本建っているだけで、扉はついていない。塀もついていない。門と塀をつけるつもりで
 作り始めたのだが、思い直してやめたみたいに見えた。そんなものをつける必要もないと途中で
 気がついたのかもしれない。門柱の片方に「雨田」という立派な表札が、まるで看板のようにか
 かっていた。その先に見える小ぶりな家は洋風のコテージで、色あせた煉瓦造りの煙突がスレー
 トの屋根の上に突き出ていた。平屋建てだが、屋根は意外に高かった。高名な日本画家の住まい
 ということで、私は当然のことのように古い和風の建物を想像していたのだが。

    Eurasian jay

  玄関の前の広い車寄せに車を停め、ドアを開けると、カケスのような黒い鳥が何羽か鋭い声を
 上げ、近くの本の柱から空に飛び立っていった。彼らは私たちがそこに侵入してきたことを、快
 く思っていないように見えた。家は周囲をほぼ雑木林に囲まれ、西側だけが谷に面して、眺望が
 広く開けていた。

 「どうだ、見事に何もないところだろう」と雨田は言った。

  私はそこに立ってあたりを見回してみた。たしかに見事に何もないところだった。よくこんな
 寂しいところに家を建てたものだと感心した。よほど人と関わり合うのが嫌いだったのだろう。


心の奥を見抜く、対象の核心を掴み取る直感が鋭いのは才能ではあるが、対象にされた人物側に立て
ば的外れな突っ込みに耐える寛容さや、厄介(過剰)ではないかと想像してもみた。

                                     この項つづく  



【RE100倶楽部:温水バイナリー発電システムⅠ】

今月10日から、洞爺湖町(とうやこちょう)は札幌市から南西へ100キロメートルほどの距離にある
風光明美な場所――湖の北西側に沿って町が広がり、近くには活火山で知られる有珠山(うすざん)
や昭和新山がそびえる、豊富な地熱資源を生かした発電事業が湖畔の温泉街で開始。火山地帯の北海
道・洞爺湖町で地熱発電。温泉組合と町が事業者になって、100℃以下の温泉水を利用できるバイナ
リー方式の発電設備を稼働させた。二酸化炭素を排出しない電力を生み出し、周辺のホテルや旅館ま
で温泉水を配湯、環境を重視する温泉町の魅力で観光客を増やす狙いだといいう(「100℃以下の温
泉水で地熱発電、温泉の町が二酸化炭素フリーの電力を地産地消」スマートジャパン、2017.03.15)。

  Aug. 30, 2013

KOBE STEEL ENGINEERING REPORTS/Vol. 63 No. 2(Sep. 2013)

それによると、地元の洞爺湖温泉利用協同組合と洞爺湖町が2013年度から地熱資源の開発を進めてき
た。開発の対象になった場所は湖の南西の端にある金比羅山(こんぴらやま)の周辺で、湖畔に広が
る温泉街からも近い。国の支援を受けて地下1100メートル地点まで掘削したところ、99.8℃の温水が
毎分505リットル(30トン/時)も湧き出ることを確認できた。さらに既存の温泉に対する影響もな
かったとのこと。

地熱発電の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は標準で90%に達することから、72kWの発
電能力で年間に57万kWh(キロワット時)の電力を供給できる見込みだ。一般家庭の使用量(年間3600
kWh)に換算して158世帯分に相当する。

バイナリー発電システムを収容した施設は町の一角にあり、冬のあいだは一面が雪に覆われる。この
施設で発電した電力は周辺地域のホテルや旅館に温泉水を配湯するためのヒートポンプの動力として
自家消費する方針。洞爺湖町で導入したバイナリー発電システムは70~95℃の温水を使って発電でき
る。通常の地熱発電では100℃以上の蒸気を取り込んでタービンを回転させる方式だが、バイナリー
発電は100℃以下の低温でも蒸発する沸点の低い媒体を利用する。神戸製鋼所のシステムはオゾン破
壊係数がゼロのフルオロカーボン(HFC245fa、沸点15℃)を媒体に使って環境負荷を低減している。

 スマートジャパン

温泉組合と町が地熱発電に取り組む背景には、長年にわたって町が抱えてきた深刻な問題があった。
町に隣接する有珠山が1977年と2000年に噴火して、町内の住宅や温泉街にまで噴石が飛び散り、一時
は立ち入りができないほどの甚大な被害を受けた。観光客は激減、地域の農業にも影響が出た。人口
の減少にも歯止めがかからない。

町の活性化に向けた取り組みの中で、大きな契機になったのが「洞爺湖有珠山ジオパーク」の誕生だ
(下図)。2009年にユネスコ(国連教育科学文化機関)が認定する「世界ジオパーク」に日本で初め
て登録されて以降、国内と海外から観光客が増え始めた。

ただし課題として残ったのが電力の問題である。温泉組合では源泉から取り込んだ温泉水をホテルや
旅館に供給するために、ヒートポンプを使って温泉水を沸かしてから配湯する必要がある。寒冷地の
温泉街ならではの対策だが、大量の電力を使うために電気代がかさんでしまう。

しかも電力の消費に伴って二酸化炭素を排出することになる。北海道電力は二酸化炭素排出量の多い
石油火力に依存する割合が大きく、全国の電力会社の中でも二酸化炭素排出係数(電力1kWhあたりの
二酸化炭素排出量)が高い。世界ジオパークの認定地では自然環境を重視した街づくりが求められる。
温泉水を加温するために大量の二酸化炭素を排出する状況を変える必要があった。

豊富にある地熱資源を生かして電力の安定供給と温暖化対策を図るため、2014年度から国の地域再生
計画の認定を受けて「洞爺湖温泉『宝の山』プロジェクト~地熱エネルギー利用による環境・観光活
性化~」の取り組みを開始した。地熱発電によるCO2フリーの電力を地産地消して、環境を重視する
温泉の町としてアピールする狙いだ。今後は学生を対象にした環境教育にも地熱発電施設を利用して
いくとのこと。

 
● 温水バイナリーと木質バイオマス燃料との融合発電システム

冷泉(あるいは地下水)を原泉としてそれを木質バイオ燃料で加熱し給湯及びガス化し発電するシス
テムは、最大{(100℃-水温)+蒸発潜熱}×水量分だけのエネルギーを木質バイオ燃料にて加熱
する部分を除き、基本的に低温バイナリ発電システム(熱媒体循環システムを使用しない従来システ
ムとするかはオプション)と同じである。豊富な地下水を使い発電+給湯+温泉とする事業――田園
城郭都市構想34、第9章「湖の碧い四つの古城」構想)」(彦根市民の飲み水を守る会、2017.
03.12
)を構想している。

 

この事業構想と融合できれば全国的波及すれば、エネルギーの地産地消できれば、地方創生と地球環
境保全の両立の有力なプラットフォームが形成できる。まずは、モデルシステムで実験する必要があ
る(この件は残件扱い)。

  ● 今夜の一曲

 悲しいことかあると開<革の表紙
 卒業写真のあの人はやさしい目をしてる

 街でみかけたとき何も言えなかった
 卒業写真の面影がそのままだったから

 人ごみに流されてかわってゆく私を
 あなたはどきどき遠<で叱って

 話かけるようにゆれる柳の下を
 通った道さえ今はもう電車から見るだけ

 あの頃の生き方をあなたは忘れないで
 あなたは私の青春そのもの

 人ごみに流されてかわってゆ<私を
 あなたはどきどき遠<で叱って

 あなたは私の青春そのもの

                     『卒業写真』 作詞/作曲 荒井由美




可愛い名残雪

異常気象でも、春休みの季節に入り、雪がちらつくこともあっても積もることはないだろう。現に今
日はお彼岸(パーラミター)で夢京橋はキャッスルロードにも多くの観光客が思い思いに歩いていた。
家に戻り、息子たちの写真をみせる。あまりに可愛いので、長男(撮影:1984年1月)の積雪の
ときの写真を一枚、スキャンしアップする。勿論、この当時はデジカメはなかったのだから、科学技
術進歩の早さに改めて驚くとともに、この当時はもっと雪深かったんだと懐かしく二人で回想する。

                                           

           

 

ソーラーシンギュラリティ時代

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    55  充足のなかの悲哀  /  雷火豊(らいかほう)  

                              

      ※ 帰妹、若い女が帰(とつ)ぐことである。ところが、この卦の

      ※ 豊とは盛大豊満なること。この卦はすべてにおいて満ち足りた
        状態を表している。しかし、窮すれば通じ、盛んなれば必ず衰
        えるのが易の理である。逆境にあえぐ者には救いの道を示すが、
        盛運あるものには必ず警告が与えられる。現在の状態を維持す
        るだけでもよほどの努カが必要とれるのっだから、新しい事業
        を拡張するなどもってのほかということになる。男女関係では、
        長男(震)と中女(離)つまり熟した夫婦であるが、これもや
        がて衰えることを暗示している。各爻の辞は.暗黒が支配する
        中で明知(離)をもって動く(震)身の処し方かを述べる。

 

 

  Mar. 09, 2015

  Tam Hunt

【RE100倶楽部:ソーラーシンギュラリティ時代】 

本当に、久しぶりに、コキノダイナスの家をアルマティ、ヘーリオス、ベゴニアなどの常連が集まり、
話を肴に花を咲かせている。おっと、新顔のツイヨポポスがそこに加われ熱い議論に加わる。ヘーリ
オスがしゃべっている・・・・・・

 へーリオス(舳離雄)のアバター

まず 「ソーラーシンギュラリティ」とは米国の作家で弁護士のるタム・ハントが唱えている考え方で
すが、太陽光が著しく世界に普及し、太陽光だけでなく蓄電池をはじめ電気自動車、自動運転などが
密接に結びつき、世界規模でエネルギーシステムの変革が起こることを説明しています。これは30
年前に前に、アルマティ先生が言っておられた第五次産業革命の「デジタル革命渦論」と同じなので
すが、グリッドパリティ、つまり、再生可能エネルギーによる発電コストが既存の電力のコスト(電
気料金発電コスト等)と同等かそれより安価になることですが、同じように、ストレージパリティ、
これは蓄電池などの設備コストが逓減していき、世界的規模で達成している現況をさしています。太
陽光エネルギーを中心とした社会コミニティ構築さ、ここ数年での電気自動車やIoTの技術的進化、
そして、太陽光発電システムや蓄電池をはじめとする再エネ設備の著しいコスト逓減を考えると、ソ
ーラーシンギュラリティが将来実現します。1キロワットアワー4.5セントに逓減し、石油などの
化石燃料と核燃料を必要としない社会になると主張しています。

  コキノダイナス(赤鬼)のアバター

つまりやな、東日本大震災は、福島原発事故を引き起こしたのは、天が下した警告であり、人類に与
えた試練であり、天啓だったというわけなのだなぁと、コキノダイナスがスモークトークを入れると、、
アルマティが、技術の特異点、つまり、シンギュラリティとは、AIが人間の頭脳を上回ってしまう
ことをいうが、シンギュラリティの達成で、人類は、人口問題から食料問題、人種差別、貧困など様
々な問題をクリアーしてしまうという楽観的な見方ある一方で、コンピュータが、人間の頭脳をスキ
ャンしデータ保存するように、個人の頭脳をデジタル化し保存やコピー、アップロードができるよう
になり、人類を支配するのではないかというった悲観的な見方もあると補足し、そういえば今日19
日に、風力発電などの再生可能エネルギーの導入が進むドイツで、大規模な蓄電池施設を使って電力
の需給を調整しようという日本とドイツの共同事業が始まると放送されていたが、これがうまく行け
ば、世界波及が加速し、さらにコスト逓減が進むだろうと喋る。

 アルマティのアバター 


 Mar. 19, 2017

  クスネボーボシのアバター

そこに、ショットグラスのモルトを飲み干しクスネボーボシが加わる。2020年には世界の蓄電池
市場規模(20兆円)の5割を日本企業で作ることを目標にしているぞ、と。それだけはないね。去
年住友電気工業と米国のSDG&E社がレドックスフロー電池の社会実験に入り、アンシラリーサー
ビスなどのテストもされと聴いていますよとベゴニアがほうじ茶ラテを飲みながら議論に加わる。そ
のレドックスフローやけれど、先月6月にハーバード大学のグループが最長の寿命、大容量化できる
有機物蓄電池がわだいとなっているぞと赤鬼も割り込み、そんなにうまいこといくかいなとクスネボ
ーボシが冷ややに言い放ちニヤリと笑にながら、家庭用蓄電池を1キロワットアワーあたり22万円
だから10分1にしても2万2千円で、レドックスフローは大規模用だが5千円程度になれば、シス
テムはそちらに雪崩れ込むだろうよと付け加えると、ヤコシ(薬師)が猫のミケを撫でながら、やは
り、ここはマテリアル・イノベーションが鍵ですよねと小声で割りを入れる。

   ベゴニア(秋海棠)

 

   ヤコシの(薬師)アバター


しばらく、沈黙がつづき、ことし4月あらからネガワット(節電所)取引市場が開かれるよと、アル
マティが発言。ここはカタカナ用語がつづくきますが、例えば、「デマンドレスポンスサービス(D
Rサービス)」は、電気事業者等の電力供給側が、供給量に合わせて需要家側の消費電力を抑制でき
るように、電力料金やインセンティブ条件を掲げて、電力消費の抑制や制御を行うためのサービスの
ことをいいます。また、「アンシラリーサービス」は、供給される電力の品質を維持するための、技
術的、運用的なしくみのことです。たとえば、需給バランスの監視、系統運用、電圧・周波数の調整
などがアンシラリーサービスにあたります。従来、従来、電力会社が担ってきた役割ですが、電力小
売の自由化に伴い発送電分離が進むためには、アンシラリーサービスの各機能についても内容や費用
が明示化されていき、機能によっては市場での取引き対象となることが求められています。先ほどい
っていた「ネガワット」は、 負(ネガティブ)の電力(ワット)を意味する造語で、電力の利用者が
節電した電力を発電した電力と同等の価値と見なす考え方です。 さらに、「デマンドサイドマネイジ
メント」(DSM)は、電気の利用者である需要家の消費電力を、電力を供給する側が制御すること
で需給の調整を行うことをいいます。今は、消費電力を操作するのが中心ではなく、発電事業者が需要家の
消費量に合わせて発電量をコントロールすることで、需給の調整を行っていますから、対称的な関係にありま
す。

 

 
本当にややこしいと、少しいらついた顔つきで、しかし、岡本酒造のごきげん金亀の茶碗酒でニンマリ赤ら顔
の赤鬼である。

それでと、アルマティが話をつづける。電力需要を制御するDRには2種類の手法かあり、ピーク時
に電気料金を値上げすることで、需要を抑制する電気料金型と、電力会社と需要家の契約に基づき、
電力会社からの要請に応じ需要家が需要を制御するネガワット取引というふうにあります。ネガワッ
ト取引の効果には、需要のピークに合わせ需要量を確実に抑制することで、ピーク時だけのために用
意していた発電機等が不要となり、建設コスト、維持管理費を削減できることです。例えば、東京電
力で1年間(8760時間)の1%にあたる上位ピーク需要が抑制されれば、最高ピーク電力(5093万kW)
の約7.5%にあたる電力供給設備の稼働、維持管理、更新が不要になりますし、需要家側は電力を抑
制することで報酬を手にできます。社会的効果の視点でも、ビジネスの面でも、国としては大きな期
待を寄せられていて、グロバール事業として1000億円市場と見込まれたりしていますと話すと、
そうね、やりくり上手なひとにむいている仕事ねとベゴニアがスモールトークしたところでティーブ
レーク。

 Jan. 20, 2017

● 自動車はエネルギーの塊


 エナスダーコスのアバター

しばらくして、めずらしくエナスダーコスが大きな口をひらき、ところでよ、自動車メーカーは蓄電
池・自家消費市場にどのようなインパクトを与えるか?質問すると、クスネボーボシが、蓄電池のピジネス
で、最も大きな影響があるのが自動車産業だ。蓄電池といえば、乾電池、またはスマートフォンやパ
ソコンでの組み込み製品か主な需要だったが、その場合、電気容置は1キロワットアワーに達するこ
とはない小型なモノ。ところが、自動車両は数十キロワットアワーワットアワーと大型。テスラなど、
一部の電気自動車は百キロワットアワーを超えるサイズの電池パックも生産しているぞ。車載の蓄電
池は、エンジン起動の鉛蓄電池が需要の中心だった。鉛蓄電池を大量に積んだEVも開発されたか、
重さが大きい、電気容量が小さい、そして奥いがきついことなどの理由で普及せず、リチウムイオン
二次電池は、正極吋と負極材との組み合わせや、セルの形状もさまざまあり、今後も車載向けの主流
製品となるが、リチウムイオン二次電池の技術開発もメーカーの投資が一時、足踏みしたが、自動車
大手の生産が始まり、回復している。材料の価格か低下したことで、スマートフォンや家電向けのリチ
ウムイオン二次電池の価格も下がったことは消費者にとつて有益だっぺ。そうだといって、クスネボ
ーボシが割り込み、昨年9月に米国の運輸省は、自動運転に関するガイドライン、また12月にはコ
ネクテッドカーに関する法規を発表している。この2つは明らかに連携しており、こうしたクルマは
EVの親和性が高いため普及を後押し。今年夏には、カリフォルア州のZEV法改正が絡み、リチウ
ムイオン二次電池の二次利用として、住宅や企業向け、または太陽光発電向けの定置型蓄電池として
転用が増える。それじゃ、水素燃料電池はさておき、二次電池市場の急成長は約束されたものと同じ
ではないかとコキノダイナスが言ってのけた。



そうすると、自然エネルギーのうち、日本では木質バイオ燃料エネルギーの普及ということに目がい
くけれと、どうしてかしらとベゴニアがたずねる。

 ツイヨポポスのアバター

それは手間がかからからですと、ツイヨポポス語りはじめた。その1つは間伐にに手間がかかりすぎ
ること、伐採した間伐材を運びだすのが大変なのです。全国で2千万立方メートル、東京ドーム16
個分がそのまま伐り捨てられている。作業道を整備する必要があるがそれもできていない。整備され
たとしても、①伐採→②集材→③回収(作業道整備)までの手間を考えるとそれは絶望的ですね。そ
れと。木が増えすぎているKとも大きな問題です。つまり、建築材として価値のない巨木の状態で放
置されしれるという悪循環が起きているわけです。その意味では、間伐だけでなく皆伐も必要だとい
うことになります。つまり、禿げ山にすればいいと言うのねとヤコシがバックチャンネルする。日本
の森林は、もっと木を伐っていく必要に造られているが、歪んだ補助金政策により、間伐だけが進む
と、20年後には巨木杯や針広混合林など、収穫を目的としない山が増えてしまい日本の林業が完全
に衰退し、さらにはバイオマス発電の燃料も、どこにもなくなることになるでしょう。しかし皆伐を
すると、その後に植林をしなければならず、木を植えてもお金にならないため、どこの山主もやりた
がらないのが現況です。したがって、20年後のことを考えるのであれば、間伐ばかりでなく、皆伐
を促す政策や補助金も必要だと思います。皆伐で山主にお金が戻るようにして、再造林期間のコスト
をまかなえるようにしていかないと、20年後には、全量買い取り制度(FIT)の終焉とともに日
本の林業は再び衰退してしまうでしょうと、悲観的な将来を語る。



それじゃ、マイナスと考えられる課題をプラスに転換する政策を、国レベルでとればいいのではない
でしょうかとへーリオスが質問すると、今日のやることは決まりだねとアルマティは拍手しながら言
うと、参加者全員の拍手が期せず起った。 

                                                                          この項了


                                                             

 

  Mar. 15, 2017

【気味が悪いが革命的かも】20年には食卓に人工食肉がでているかも

コスト的に合うのかわからないが、安全性など考えるチョット惹いてしまいそうだが、安心で適正価
格ならOKだろう。日本人には魚肉市場にも展望が拓けるけるかものね。

※ Say Hello to Finger-Lickin’ Lab-Grown Chicken,  MIT Technology Review

   Jan. 6, 2016

【世界初】視覚障害者向けに「スマートウォッチ」を開発!

 遅いニュースだが、これは価値があるものだ。

 

    

はじめ良ければ半ば良し

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     56  孤独な旅人  /  火山旅(かざんりょう)  

                               

      ※ 旅が楽しいものとなったのは近代になてからのことである。古代の
        人々にとって.旅は一大難事であった。交通の不便、宿舎の不備も
        さることながら、見知らぬ土地、なじみのない人々の中でたごひと
        り暮らす不安は、現代のわれわれには想像を絶するものがあった。
        旅舎を転々とする孤独な旅人が象徴するものには、不安定な生活(
        転居、転職など)、孤独な生活、失恋などがある。こんな場合は無
        理をしてまで打開しようとせず、あせることなく受け身で対処する
        ことだ。郷に入れば郷に従え。しかも旅人が目的地を忘れないいよ
        うに、内心には自己の理想をしっかり守ってゆくのだ。人生ば長い
        長い旅なのだから。

 

【量子ドット工学講座33:光子放出素子の製造技術】

次世代の高セキュリティ情報伝送・高速情報処理を実現に、量子情報技術の研究が進められている。
量子情報処理を固体素子によって実現の技術として量子ドット(QD)の応用研究が進んでいる。
例えば、非特許文献1では Sk(Stranski-Krastanow)型自己形成量子ドットを用いた単一光子発生器
が記載されている。量子ドットは化学合成によって作製することもできる。例えば、非特許文献2
には化学合成によって作製された化学合成量子ドットの球対称性を高める合成方法について記載さ
れている。また、非特許文献3には、走査型プローブ顕微鏡(SPM)によるリソグラフィーを用
いて量子ドットを設置するための凹部を作製し、量子ドットの位置を制御できることが記載されて
いる。



ところが、コンパクトで、十分な高効率、高指向性を備える光子放出素子を実現することができな
かった。非特許文献1のSK型自己形成量子ドットは、基板上に形成され、扁平な形状となるり、
基板に垂直な方向への対称性が著しく低い。また結晶成長速度差によって面内対称性が損なわれる
ことも多い。つまり、形状が非対称性な量子ドットは、量子もつれ合い状態の光子対を発生させる
ことができない。量子もつれ合い状態の光子対とは、偏光の重ねあわせ状態にある光子対である。
扁平な形状のSK型自己形成量子ドットからは、特定の偏光を有する光しか得ることができない。
量子情報技術は、量子もつれ合い状態の光を礎に成り立っており、量子もつれ合い状態の光を得る
ことができないことは、実用化の妨げになる。

これに対し、例えば非特許文献2の化学合成量子ドットは、基板に拘束されない結晶成長をする。
このため、化学合成量子ドットは3次元的な対称性が高い。化学合成量子ドットは、主に、バイオ
研究用の蛍光マーカ(標識)等に利用されるが、化学合成量子ドットは発光明滅(ブリンキング)
現象が生じる。ブリンキング現象が生じるとは、量子ドットに励起光を加えた際に、量子ドットが
発光するか発光しないか不確定である。発光が不確定であることは、励起光を入射する入力に対す
る出力が不確定である。この不確定さは、量子コンピュータ等において出力結果の信用度を下げ、
量子情報処理技術の実用化を阻害する。

 Feb. 3, 2015

下図の新規考案は、量子ドットをメタマテリアルに対し所定の位置に配設し、発光の高速化、発光
効率の増大、ブリンキング現象の抑制、放射光の指向性等を高め、また、独自のSPMリソグラフ
ィーでた量子ドットの位置制御技術を利用し、メタマテリアルと量子ドットの位置関係をナノオー
ダーの精度で制御し、光子放出素子を実現する。 

  JP 2017-55057 A 2017.3.16

【要約】

この光子放出素子は、半導体からなる基板1と、基板の一面または内部に設けられた量子ドット2
と、基板に対し平面視で量子ドットを囲み、延在方向に端部を有するメタマテリアル3と、を備え
る光子放出素子で、さらに量子ドットが、メタマテリアルによって囲まれる領域の中央に配置され
、同一平面上に存在する光子放出素子の構成/構造で、高効率、高指向性を備えるコンパクトな光
子放出素子を実現する方法を提案する。

※ 鍵語:メタマテリアル( meta-material)とは、光を含む電磁波に対して、自然界の物質には無
い振る舞いをする人工物質のこと。



ところで、走査プローブ顕微鏡に興味を抱いたのは95年ごろだった。当時は、生産技術に従事し
原子間力顕微鏡が登場して間もない頃で、バルク表面の分析などは電子顕微鏡での分析が主流で、
金属表面の微細な三次元的観測で、温度・湿度・ハーティクルなどと金属酸化物表面状態変遷を観
測したかったのだが、行く行くは、この装置技術を応用した新しい事業展開を意識し、流されるの
ではなく、新しい流れを作りたいと考えていた。21世紀に入りしばらくて、それは、新規事業の
媒体的産業領域を想定した「ネオコンバーテック創業論」として確立させることになる。装置的に
は3Dプリンタ、MEMS、ナノプリンタであり、前述した、走査型プローブ顕微鏡などとして結
実していく。広義の人工物質(メタマテリアル)の創生であり、それは、エネルギー領域において
は、オールソーラーシステムなどの自然エネルギーの導入拡大、医療領域にあっては再生医療とし
て、食品領域おいては人工食品などの前駆体として着実に顕在化してきている。流れを作り出すこ
と。太陽電池の導入はカーター米大統領時代に挑戦されているが頓挫しているように、それは容易
ならざることでもあるが、果敢に挑戦し、事業化に結びつける努力家(あるいは起業家)の勇気を
称えるものである。それは早すぎても、遅すぎてもだめである。流れが生まれれば、始め良ければ
半ば良し、終わり良ければすべて良し。それを見極め行動する努力、シャドーワークは決して見え
ぬものである。

    
読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅰ部』  

   3.ただの物理的な反射に過ぎない 

   「君はこの家で育ったのか?」と私は尋ねた。
 「いや、おれ自身はここに長く往んだことはない。ときどき泊まりに米たくらいだ。あるいは夏
 休みなんかに避暑をかねて遊びに来たくらいだ。学校のこともあって、おれは母親と一緒に自分
 の家で育った。父は仕事をしていないときには東京にやってきて、おれたちと一緒に暮らした。
  それからまたここに戻って一人で仕事をした。おれが独立し、十年前に母が亡くなってからは、
 ずっと一人でここにこもって暮らしていた。ほとんど世捨て人みたいにして」

  その家の留守中の管理を任されていたという、近くに往む中年の女性もやってきて、いくつか
 かの実際的な説明をしてくれた。台所の設備の使い方とか、プロパン・ガスや灯油の注文のしか
 たとか、各種道具の置き場所とか、ゴミ出しの場所と曜日とか。画家はかなりシンプルな独居生
 活を送っていたらしく、使っていた機械・器具類は数少なかった。従ってレクチャーを受けてお
 かなくてはならないようなこともあまりなかった。もし何かわからないことがあったらいつでも
 電話をください、と彼女は言った(結局電話をかけたことは一度もなかったが)。

 「誰かに往んでいただけるととても助かります。誰も往んでいないと家も荒れますし、不用心で
 すから。それに人がいないとわかると、イノシシや猿が寄ってきますし」
 「イノシシや猿がちょくちょく出るんだよ。このへんは」と雨田が言った。
 「イノシシには気をつけてくださいね」とその女性は言った。「春にはタケノコを食べるために、
 よくこのあたりに出没するんです。とくに子供を育てている雌イノシシは気が立っていて危険で
 す。それからスズメバチもあぶないです。刺されて亡くなった人もいます。スズメバチは梅林に
 巣を作ることがあります」

  開放式の暖炉のついた比較的広い居間が、家の中心になっていた。居間の南西側に屋根付きの
 広々としたテラスかおり、北側には正方形のスタジオがあった。そのスタジオで画伯は絵を描い
 ていたのだ。居間の東側にはコンパクトな食堂付きの台所があり、浴室があった。そしてゆった
 りとした主寝室と、それよりは少し挟い客用の寝室があった。客用の寝室には書き物机が置かれ
 ていた。読書が好きな人であるらしく、本棚には数多くの古い書籍が詰まっていた。画伯はそこ
 を書斎として使っていたようだった。古い家屋のわりには清潔で、居心地は良さそうだったが、
 不思議なことに(あるいは不思議ではないのかもしかないが)、壁には絵がただの一枚もかかっ
 ていなかった。壁という壁はどれも、素っ気なく剥き出しのままたった。

  雨田政彦が言ったように、家具も電気器具も、食器も寝具も、生活に必要なものはだいたい揃
 っていた。「身ひとつでくればいい」、そのとおりだった。暖炉のための薪も納屋の軒下にたっ
 ぶり積み上げてあった。家の中にテレビはなかったが(雨田の父親はテレビを憎んでいたという
 ことだ)、居間には立派なステレオ装置があった。スピーカーはタンノイの巨大なオートグラフ、
 セパレート・アンプはマランツのオリジナル真空管だ。そしてアナログ・レコードの立派なコレ
 クションがあった。一見したところオペラのボックスものが多かった。

The Tannoy Autograph I

 「ここにはCDプレーヤーがないんだ」と雨田は言った。「なにしろ新しい道具がまるっきり嫌
 いな人でね。古くからあるものしか信用しない。もちろんインターネット環境なんてものは影も
 かたちもない。もし必要なら、町に降りていってインターネット・カフェを使うしかない」
  インターネットはとくに必要ないと思う、と私は言った。

 「もし世間の勤きを知りたければ、台所の棚にあるトランジスタ・ラジオでニュースを聴くしか
 ない。山の中だから電波の入り方はかなり悪いし、NHKの静岡局がなんとか聴けるくらいだけ
 ど、まあ何もないよりはましだろう」
 「世の中のことにそれほど興味はない」
 「それはいい。うちの父と話があいそうだ」
 「お父さんはオペラのファンなのか?」と私は雨田に尋ねた。

 「ああ、父は日本画の人だが、いつもオペラを聴きながら仕事をしていた。ウィーンに留学して
 いる頃、歌劇場に通い詰めていたらしい。おまえはオペラは聴くか?」
 「少しは」
 「おれはとてもだめだよ。オペラなんて長くて退屈なだけだ。そこに山ほど古いレコードかおる
 から、好きなだけ聴けばいい。父にはもう用のないものだから、おまえが聴いてくれればきっと
 喜ぶはずだ」
 「もう用がない?」
 「認知症が進んでいるからな。オペラとフライパンの違いだって、今ではもうわからないよ」
 「ウィーン? お父さんはウィーンで日本画の勉強をしていたのか?」
 「いや、いくらなんでも、ウィーンまで行って日本画の勉強をするような物好きな人間はいない。
 父はもともとは洋画をやっていたんだ。だからウィーンに留学した。当時はとてもモダンな油絵
 を描いていたんだよ。でも日本仁戻ってきてしばらくしてから、突然日本画に転向した。まあ、
 世間にちょくちょくあるケースだけどね。外国に出ることによって、民族的アイデンティティー
 に目覚めるというか」
 「そして成功した」

  雨田は小さく肩をすくめた。「世間的に見ればね。でも子供にしてみれば、ただの気むずかし
 いおっさんでしかない。絵を描くことしか順になく、やりたい放題好き放題に生きていた。今じ
 ゃもうその面影はないけどな」
 「今、いくつなんだ?」
 「九十二歳。若い頃はかなり派手に遊んだという話だ。詳しいことは知らないけど」
  私は礼を言った。「いろいろとありがとう。世話になった。今回のことはとても助かったよ」
 「ここは気に入ったか?」
 「ああ、しばらくここに住まわせてもらえるととてもありかたい」
 「それはいいけど、おれとしては、できればおまえとユズとの仲がうま座戻ることを祈っている
 よ」

  私はそれについてはとくに何も意見を言わなかった。雨田自身は結婚していない。バイセクシ
 ュアルだという噂を耳にしたことはあるが、真偽のほどはわからない。長いつきあいだが、そう
 いう話題には触れたことがない。

 「肖像画の仕事はまだ続けるのか?」と帰りぎわに雨田は私に尋ねた。
  肖像画を描く仕事をすっかり断った経緯を私は彼に説明した。
 「これからどうやって生活するんだ?」と雨田はエージェントと同じことを尋ねた。
  生活を切り詰めて、しばらくは貯金で食いつなぐ、と私はやはり同じ答えを返した。久しぷり
 に制約なく好きな結を描きたいという気持ちもあるし。

  「そいつはいい」と雨田は言った。「しばらく自分のやりたいようにやってみればいい。でも、
 もしいやじゃなければ、アルバイトに絵の先生をやってみるつもりはないか。小田原駅前にカル
 チャー・スクールみたいなのがあって、そこに絵の描き方を教える教室があるんだ。主に子供た
 ちを対象にしているが、成人向け市民教室みたいなものも併設している。デッサンと水彩だけで、
 油絵はやらない。そのスクールを経営している人が父の知り合いでね、商業主義的なところはあ
 まりなくて、かなり良心的にやっている。だけど先生のなり手がいなくて困っているんだ。もし
 おまえが手伝ってくれたらきっと喜ぶだろう。謝礼は大したものじゃないけど、それでも少しは
 生活の足しになるはずだ。週に二曰くらいクラスを持てばいいだけだし、それはどの負担にはな
 らないと思う」

 The Shining
  
 「でも、絵の描き方を教えたことなんてないし、水彩画のこともよく知らない」
 「簡単だよ」と彼は言った。「何も専門家を養成するわけじゃない。教えるのはごく基本的なこ
 とだけだ。そんなコツは一日やればすぐにつかめる。とくに子供に絵を教えるというのは、こっ
 ちにとってもなかなか刺激になるしな。それにこんなところに一人で往むつもりなら、週に何日
 かは下に降りて、無理にでも人と接触を持たないと頭が変になっちゃうぜ。『シャイニング』み
 たいになったら困るだろう」
 
  雨田はジャック・ニコルソンの顔真似をした。彼には昔から物真似の才能があった。
  私は笑った。「やってみてもいい。うまくいくかどうかは心からないけど」
 「おれの方から先方に連絡を入れておく」と彼は言った。
  それから私は雨田と一緒に、国道沿いのトョタの中古車センターに行って、そこでカローラの
 ワゴンを現金一括払いで買い求めた。その日から私の小田原の山の上での一人暮らしが始まった。
 ニケ月近くただ移動に終始する生活があり、そのあとに動きのない、ぴたりと静止した生活がや
 ってきた。極端な転換だ。

  その翌週から私は小田原駅前のカルチャー・スクールの絵画教室で、水曜日と金曜日にクラス
 を受け持つことになった。最初に簡単な面接があったが、雨田の紹介ということですぐに採用さ
 れた。成人を教えるクラスが二回、そして金曜日にはそれに加えて子供たちのクラスをひとつ受
 け持つことになった。子供たちのグループを教えることに私はすぐに馴れた。彼らの描く絵を見
 ているのは楽しかったし、雨田が言ったように、こちらにとってもちょっとした刺激にもなった。

 通ってくる子供だちともすぐに親しくなれた。私かやることは、子供たちが描く絵を見て回って、
 ささやかな技術的な忠告を与えたり、良いところをみつけて褒めたり励ましたりすることくらい
 だった。私の方針として、できるだけ同じ題材を何度も描かせた。そして同じ題材でも少し見る
 角度を変えれば、ずいぶん追って見えることを教えた。人にいろんな側面があるように、物体に
 もいろんな側面がある。子供たちはその面白さをすぐに理解してくれた。

  大人に絵を教えるのは、子供たちに教えるよりは少しばかりむずかしかったかもしれない。教
 室にやってくるのは仕事から引退した老人だちか、あるいは子供から手が離れて、生活に少し余
 裕ができた家庭の主婦たちだった。彼らは当然ながら、子供たちほど柔軟な頭を持ち合わせてい
 なかったし、私か何かを示唆しても、それを受け入れることは簡単ではないようだった。でも中
 には何人か、比軟的のびやかな感覚を持っているものもいたし、それなりに面白い絵を描くもの
 もいた。私は求められればいくつかの有益なアドバイスを与えたが、だいたいはただ好きなよう
 に自由に絵を描かせておいた。そして描かれた絵の中になにかしら良いところを見つけて、それ
 を褒めるだけにとどめておいた。そうすることで、彼らはけっこう幸福な気持ちになれたようだ
 った。幸福な気持ちで絵を描けたとしたら、それでもうじゆうぶんではないかと私は考えていた。

  そしてそこで私は二人の人妻と性的な関係を持つことになったわけだ。彼女たちはどちらも絵
 画教室に通っていて、私の「指導」を受けていた。つまり立場からすれば私の生徒ということに
 なる(ちなみに、彼女たちはどちらもなかなか悪くない絵を描いた)。それが教師として――た
 とえ正式な資格を持たない即席の教師であるにせよ――許される行為だったのかどうか、判断に
 苦しむところだ。成人男女が合意の上で性行為を行うことにとくに問題はないはずだと私は基本
 的に考えていたが、社会的に見てあまり褒められたおこないでないこともまた確かたった。

  でも言い訳するのではないが、自分のやっていることが正しいことなのかどうか、それを判断
 するような余裕は、そのときの私にはなかった。私は材木につかまって、流れのままに流されて
 いただけだった。あたりは漆黒の闇で、空には星も月も出ていなかった。その材木にしがみつい
 ている限り溺れずにすんだが、自分が今どのあたりにいて、これからどこに向かおうとしている
 のか、そんなことは何ひとつわからなかった。
  私が『騎士団長殺し』というタイトルのついた雨田典彦の絵を発見したのは、そこに越して数
 ケ月経った頃のことだった。そしてそのときには知るべくもなかったが、その一枚の絵が私のま
 わりの状況をそっくり一変させてしまうことになった。

今宵は、いよいよ騎士団長のお出ましだ。この楽しみは次回に持ち越しにする。

                                     この項つづく

    

 

吾は雛なり

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       57  柔軟無比  /  巽為風(そんいふう)  

 

                               

       ※ 「巽」(そん)は風を象徴する。この卦は巽が二つ重なった形で、
        そよそよと葺きめぐる風である。風は物に遭遇すれば、柔らかく身
        をよけて吹き過ぎる。巽とは、遜(そん)のことで、へりくだる、
        譲ることでもある。風はまた、どんな隙間にでも入り込んでゆく。
        巽入ることでもある。どんな仕事にも、どんな人間関係の中にも、
        柔軟な適応性をもって入りこめる人間を表わす。しかし柔軟性は悪
        くすると無原則性に陥る危険もある。優柔不断のそしりを受けるに
        もなりかねない。進退に迷い、決断をためらうことが多いが、すぐ
        れた指導者に従って、誤りなきを心がけなければならない。     

  

一次エネルギー消費のうち、約70%は100℃~300℃の低温の熱エネルギーであり、それが
未利用のまま大気中に廃棄されている。この廃熱エネルギーを回収して有効利用する技術への関心
は非常に高く、中でも最も有望な廃熱回収技術が熱電変換技術である。熱電変換は、熱電変換材料
の両端に低温部と高温部を設けることにより、両端間に電位差が生じる効果(ゼーベック効果)を
利用して電気エネルギーを取り出す技術である。熱電変換が有望な主な理由としては、以下のもの
がある。今夜は、最新の熱電変換工学を考える。

可動部を要しないため、長寿命である。 熱エネルギーから電気エネルギーへ直接的に変換を行うため、クリーンで静か変換作業が可
能である。 小型で軽量であるため、携帯機器用や非常用電源にも最適である。 少量の熱エネルギーでも電気エネルギーに変換することができる。 

● 200 ℃から800 ℃の熱でいつでも発電できる熱電発電装置

23日、産業技術総合研究所の研究グループが、200 ℃から800 ℃の熱でいつでも発電できる熱電
発電装置の開発に成功したことを公表。この発明のポイントは、①高温でも安定して発電する酸化
物熱電モジュールと、ヒートパイプを用いた空冷式発電装置の構成/構造であること、②800 ℃で
の耐久性と安全性と確認し、従来の2倍以上の発電出力を実現、③したがって、排熱発電により省
エネ・二酸化炭素排出量削減に貢献し、災害時の緊急電源としても使用可能であるとのこと。

排熱や自然熱など未利用熱の有効利用を目指し、さまざまな材料を用いた熱電発電の研究を行って
きたが、その一環として、これまでに800 ℃の高温、空気中でも安定で、変換効率の高いp型熱電
材料
であるカルシウム・コバルト酸化物(Ca3Co4O9)の発見や、n型熱電材料であるカルシウム・
マンガン酸化物(CaMnO3)の製造技術を開発。さらに、これらの酸化物熱電材料を用いた熱電モ
ジュールを開発し、産業排熱利用を目的に、工業炉や焼却炉の排熱で発電できる水冷式熱電発電装
置や、湯沸かしと同時に発電できる発電鍋、発電湯沸かし器を開発している。このことを踏まえ、
他の水冷式発電システムでは困難な小規模熱を利用可能にし、熱電発電の普及に繋がると考え、冷
却水を用いないポータブル空冷式装置の開発を目指めだす。従来の酸化物モジュールの低温側に放
熱フィンを取り付け、加熱温度を650 ℃とし、自然放熱で熱電発電した場合の出力は、水冷時の約
35%にまで減少(下図)。そこで今回、空冷でも高出力で発電できる熱電発電装置開発のため、①
酸化物熱電モジュールの発電出力の向上、② 高温耐久性の改善、③そして、高出力発電を可能にす
る空冷技術を今回実現する。

   

● 酸化物熱電モジュールの発電出力の向上

そこで、1つめの成果を見てみよう。下図のように、従来の酸化物熱電モジュールの発電出力を増
加させるため、熱電素子の性能向上に取り組む。セラミックスである p型のカルシウム・コバルト
酸化物素子は、加圧しながら焼結するホットプレス法により製造していたが、ホットプレス工程で
の組織制御を精密化する新たな技術を今回開発。この技術により、セラミックス内の結晶粒の配列
や大きさ、密度が改善、熱電素子の出力因子は最高で約2倍に向上。また、熱電モジュールの出力
を高電圧化するため、熱電素子の断面積を小さくすることで、モジュールの素子数を増やしている。
さらに、素子配列技術も改良して、モジュールの内部抵抗を20%低減。この結果、加熱温度が80
0 ℃において、新開発モジュールの発電出力は、水冷式発電装置で用いた同サイズ(基板サイズ:
3.5 cm角)の従来モジュールと比べ、2.2倍高い4.1ワット(W)を実現する。

● 高温耐久性の改善

2つめは、これまでの酸化物熱電モジュールは、800 ℃の一定温度で、1ヶ月間連続して発電して
も出力は劣化しなかったが、加熱と冷却を繰り返すサイクル試験では発電出力が最大で20%減少
――加熱・冷却サイクル中に、n型熱電素子に発生する微細なひびが入り――することがあったが、
n型熱電素子に添加物を加えることでひび発生抑制に成功―――このn型熱電素子を用いた熱電モジ
ュールでは、高温側の加熱温度が600 ℃と100 ℃の間で、加熱・冷却サイクルを200回以上繰り返し
発電出力劣化は見られなかった。  

● 高出力発電を可能にする空冷技術

3つめは、空冷式は水冷式よりもモジュールの高温側と低温側の温度差が小さくなるため、発電出
力が低くなる。そこで、空冷でも水冷並みに効率良く冷却するために、作動液体の蒸発潜熱を利用
するヒートパイプを用いた。作動液体の蒸発により、熱電モジュールを効率良く冷却できる。ヒー
トパイプ、放熱フィン、空冷ファンで冷却用ラジエーターを構成し、熱電モジュールと組み合わせ
て、空冷式熱電発電装置を製造(下図)。空冷ファンはこの装置が発電する電力で駆動(約0.5 W
~0.8W)するため、外部の電源や、電池などは不要である。この装置は、加熱温度が500 ℃の場合、
2.3Wを出力できる。同じ熱電モジュールの水冷時の出力は、同じ条件では2.8Wとなり、水冷式の80
%の発電出力を持つ空冷式発電装置を実現する。また、この装置は加熱温度を600 ℃とすれば最高
で3ワット(W )の発電出力が得られる。


以上の成果をまとめると、この熱電発電装置を用いて、工場や焼却場の照明、遠隔での炉内温度な
どの管理等の用途が可能になり、災害時の炊き出しや暖を取るためのかまどベンチの普及が進んで
いるが、薪の燃焼による熱エネルギーを用いる非常用電源とし利用できるため、工業炉や焼却炉か
らの排熱回収用や非常用電源として、2年以内の実用化をめざす。さらに、①高性能、②耐久性、
③安全性、④コスト性に優れた新たな熱電材料と熱電モジュールを開発し、①省エネルギー、②二
酸化炭素排出量の削減、③そして新産業創出の貢献をめざすという。

※ 参考特許:特開2014-049737  n型熱電変換性能を有する金属材料 独立行政法人産業技術総
       合研究所 2014年03月17日
※ 参考特許:特開2011-192857 熱電変換装置 富士通株式会社 2011年09月29日

                             



● 特開2017-054975  ナノ構造素子及びその製造方法、並びに熱電変換装置

これまでの熱電変換材料としてよく用いられてきた材料系としては、Bi-Te系、Pb-Te系、
Co-Sb系等がある。しかしながら、これらの材料系は、毒性元素や希少元素(レアメタル)を
含有している。そのため、①環境負荷が大きく、②低コスト化や③大量普及が困難であるという問
題がある。そこで、環境負荷が小さく、低コストで且つ高性能な熱電変換を実現することができる
信頼性の高いナノ構造素子及びその製造方法、並びに熱電変換装置が提案が以下のようされている。

このナノ構造素子は、キャリア及びフォノンの伝導体と、この伝導体内に形成された複数の
棒状構造体とを備え、棒状構造体は、フォノン散乱を目的に、長手方向がキャリア及びフォ
ノンの伝導方向に対し傾斜し配置する。 この熱電変換装置は、前記1.の複数の棒状構造体と伝導体の端部に形成された電極と、電
極に接続した電気抵抗を備え、この伝導体の一端に低温部が、他端に高温部がそれぞれ熱的
に接触した構成/構造をもつ。

 



【要約】

上図5のように、キャリア及びフォノンの伝導体であるシリコン11,13と、伝導体であるシリ
コン13内に形成された複数の棒状構造体12とを備えており、棒状構造体12は、フォノンを散
乱させるものであり、長手方向がキャリア及びフォノンの伝導方向に対して傾斜して配置されてい
ることで、環境負荷が小さく、低コストで且つ高性能な熱電変換を実現することができる、信頼性
の高いナノ構造素子及びその製造方法、並びに熱電変換装置が提案されている。

【実施形態】(上図ダブクリ参照)

この実施形態では、ナノ構造素子を開示し、その構成について製造方法と共に説明する。
図1~図3は、第1の実施形態によるナノ構造素子の製造方法を工程順に示す模式図であり、図1
~図2が断面図、図3が平面図をそれぞれ示す。

先ず、図1(a)に示すように、シリコン基板11上にシリコン酸化層(SiO2層)21を形成
する。詳細には、基板としてシリコン基板11を用意し、その表面にCVD法等によりシリコン酸
化層21を堆積する。シリコン酸化層21の代わりに、SiC層、SiN層等を形成するようにし
ても良い。

続いて、図1(b)に示すように、棒状構造体12を形成する。
詳細には、先ずシリコン酸化層21の表面にレジストを塗布する。レジストをフォトリソグラフィ
ーで加工して、シリコン酸化層21の棒状構造体となる部位にレジストを残し、レジストマスク
22を形成する。次に、レジストマスク22を用いて、シリコン酸化層21をドライエッチングす
る。以上により、シリコン基板11上に複数の棒状構造体12が形成される。レジストマスク22
は、アッシング処理又はウェット処理により除去される。

形成された棒状構造体12をシリコン基板11の表面の上方から見た(平面視した)様子を図3(
a)に示す。棒状構造体12は、フォノンを散乱させるものであり、その長手方向がキャリア(電
子又は正孔(ホール))及びフォノンの伝導方向(以下、単に伝導方向と言う。)に対して傾斜し
て周期的に配置されている。本実施形態では、一対の棒状構造体12が線対称に配置され、伝導方
向に沿って一周期を構成している。一周期を構成する一対の棒状構造体12は、伝導方向及び伝導
方向に直交する方向の双方について同一に配置されている。

続いて、図1(c)に示すように、棒状構造体12をシリコン結晶13で埋め込む。
詳細には、シリコン基板11上に棒状構造体12を覆うように、シリコン結晶13をエピタキシャ
ル成長させる。これにより、シリコン基板11及びシリコン結晶13のシリコンがキャリア及びフ
ォノンの伝導体となり、当該シリコン内にシリコン結晶13が埋め込まれた形とされる。
続いて、図2(a)に示すように、キャリア及びフォノンの伝導体内に棒状構造体12を備えた複
数のシリコン層を積層する。
詳細には、上記と同様に、図1(c)のシリコン結晶13上に棒状構造体12を形成し、棒状構造
体12をシリコン結晶13で埋め込む一連の工程を、所期の複数回繰り返して行う。以上により、
キャリア及びフォノンの伝導体内に棒状構造体12を備えた複数のシリコン層が積層され、ナノ構
造素子が形成される。ナノ構造素子では、積層された各シリコン層の棒状構造体12が同様に配置
される。

ナノ構造素子は、熱電変換装置や太陽電池等の変換素子に適用されるものである。
そのため、図2(b)及び図3(b)に示すように、その両端部(端面)にそれぞれ所定の金属を
蒸着等により形成し、一対の電極14が形成される。以下、本実施形態のナノ構造素子を熱電変換
素子として用いる場合において、棒状構造体12の配置形態について説明する。
  熱電変換材料の性能指数Zは、以下の式で表される。

  Z=(S2σT)/κ  ・・・(1)

(1)式で、Sはゼーベック係数、σは電気伝導率、κは熱伝導率、Tは温度である。Zに温度T
を乗じて無次元化したZTが熱電変換材料の性能指標としてよく用いられる。ZTの値が大きいほ
ど、熱電変換材料として高性能となる。本実施形態では、ZTの値を大きくすべく、熱伝導率を低
下させることにより、ZTの値を向上させる手法を採る。熱伝導率κは、電子による熱伝導とフォ
ノン(格子振動)による熱伝導との和として表される。シリコン等の半導体では、フォノンによる寄
与が大きい。そこで、本実施形態のナノ構造素子では、シリコン等を伝導体の材料に用いて、フォ
ノン散乱を増大させることで熱伝導率を低下させ、ZTの値が大きい熱電変換材料を得る。

図4は、シリコンにおけるフォノンの平均自由行程に対する累積熱伝導率の関係を示す特性図であ
る。図4より、例えば、平均自由行程が100nm以上のフォノンを選択的に散乱させることがで
きれば、熱伝導率κを86%低下させることができる。そこで、例えば、平均自由行程が100n
m以上のフォノンを散乱させることが可能な棒状構造体を有するナノ構造素子を形成する。一方で、
電子や正孔等の電気伝導を担うキャリア(平均自由行程約40nm)が散乱されてしまうと、電気
伝導率σが減少し、ZTの値が小さくなってしまう。従ってナノ構造素子は、フォノンは効率よく
散乱されるが、キャリアは散乱されないように棒状構造体が配置されてなるものであることを要す
る。

図5は、棒状構造体の配置形態を模式的に示す平面図である。
棒状構造体12は、その長手方向が伝導方向(図5のX方向)に対して傾斜して周期的に配置され
ており、隣り合う一対の棒状構造体12が線対称に配置されて一周期を構成する。棒状構造体12
の幅Wは、例えば10nm程度とされる。隣り合う一対の棒状構造体12について、X方向の両端
間距離rは、上記の考察より、キャリアの平均自由行程距離(例えば40nm程度)以上でフォノ
ンの所定の平均自由行程距離、例えば100nm程度以下とされる。一対の棒状構造体12の離間
距離dxは、例えば10nm程度とされる。伝導方向に直交する方向(図5のY方向)に並ぶ一対
の棒状構造体12間の離間距離dyは、例えば10nm~20nm程度とされる。

棒状構造体12について上記の諸条件を満たすような、棒状構造体12の傾斜角度θ及び長さLは、
図6の特性曲線によって決定される(r=100nmとした場合)。なお、角度θに関しては、そ
の値が小さ過ぎても大き過ぎても、ナノ構造とすることによるフォノンの選択的な散乱効果が減少
してしまう。そのため、図5に示すようにθ=5°~45°程度の範囲とするのが好ましい。この
ようなナノ構造素子により、熱伝導率に寄与する大部分のフォノンは棒状構造体12に衝突して散
乱されるため、熱伝導率を低下さることができる。その一方で、平均自由行程が短い電子や正孔等
の電気伝導を担うキャリアは、棒状構造体12に衝突して散乱される確率が低いため、電気伝導率
の低下は抑制される。よって、大きなZTの値を確保することができる。

以上説明したように、本実施形態によれば、低コストで且つ高性能な熱電変換等を得ることができ
る、信頼性の高いナノ構造素子が実現する。

以上、上記2つの事例をみてきた。わたし(たち)が関心を寄せるのは、①熱エネルギーから電気
エネルギーへ直接的に変換を行うため、クリーンで静か変換作業が可能であること、②少量の熱エ
ネルギーでも電気エネルギーに変換することができる2つであり、①いかに低コストで高性能な熱
変換素子の量産製造できるシステムを実現するかと、②「RE100 倶楽部:印刷で作れる高性熱電変
換材料」(『欧州ポピュリズム考』 2017.03.15)で掲載したしたように、雪のエネルギーを利用し
除雪(融雪)システムを早期に実現することである。 

 

    
読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅰ部』  

     4.遠くから見ればおおかたのものごとは美しく見える

  五月も末に近いある晴れた朝、それまで雨田画伯が使用していたスタジオに自分の画材一式を
 運び込み、久しぷりにまっさらなキャンバスに向かった(スタジオには画伯の使っていた画材は
 何ひとつ残されていなかった。たぶん政彦がまとめてどこかに片付けたのだろう)。スタジオは
 五メートル四方ほどの大きさの真四角な部屋で、床は板張り、周りの壁は白く塗られていた。床
 は剥き出しで、敷物はただの一枚も敷かれていない。北に向けて大きな窓がひとつ開いて、簡素
 な白いカーテンがかかっていた。東向きの窓は小さく、カーテンもかかっていなかった。例によ
 って壁には何も飾られていない。絵の真を洗い落とすための陶製の大きなシンクが部屋の隅にあ
 った。ずいぶん長いあいだ使われてきたのだろう、その表面にはありとあらゆる色が混じり合っ
 て染みついていた。シンクの横には旧式の石油ストーブが置かれ、天井には大きな扇風機がひと
 つついていた。作業用テーブルがあり、丸い木製スツールが一脚あった。つくりつけの棚の上に
 はコンパクトなステレオ装置がセットされ、絵を描きながらオペラのレコードが聴けるようにな
 っていた。窓から入ってくる風には新鮮な樹木の匂いがした。それは紛れもなく、画家が集中し
 け意欲が溢れているにせよ、胸の奥で何か疼いているにせよ、ものごとには具体的な始まりが必
 要なのだ。

  "Quando m'en vo' soletta" (La Bohème) - Puccini

  私は朝早く起きると(私はだいたいいつも六時前に起きる)、まず台所でコーヒーをつくり、
 それからマグカップを手にスタジオに入って、キャンバスの前のスツールに座った。そして気持
 ちを集中した。心の中の響きに耳を澄ませ、そこにあるはずの何かの像を見出そうとした。そし
 ていつも空しく敗退することになった。私は集中をしばらく試みてから、あきらめてスタジオの
 床に腰を下ろし、壁にもたれてプッチーニのオペラを聴いた(なぜかその時期、私はプッチーニ
 ばかり聴いていた)。『トゥーランドット』や『ラ・ボエーム』。そして気怠く回転する天井の
 扇風機を見上げながら、アイデアだかモチーフだか、そんなものがやってくるのを待ち受けた。

   GIACOMO PUCCINI Turandot

  でも何ひとつやってこなかった。初夏の太陽が中空に向けて緩慢に移勤していくだけだった。
  いったい何かいけないのだろう? あまりに長い歳月、生活のために肖像画を描き続けたから
 かもしれない。そのせいで私の中にあった自然な直観が弱められてしまったのかもしれない。海
 岸の砂が波に徐々にさらわれていくみたいに。とにかく、どこかで流れが間違った方向に違んで
 しまったのだ。時間をかける必要がある、と私は思った。ここはひとつ我慢強くならなくてはな

 らない。時間を私の側につけなくてはならない。そうすればきっとまた、正しい流れをつかむこ
 とができるはずだ。その水路は必ず私のもとに戻ってくるはずだ。しかし正直なところ、それほ
 ど確信は持てなかった。
  私が人妻たちと関係を持つようになったのも、そんな時期のことだった。私はたぶん精神的な
 突破口のようなものを求めていたのだと思う。今陥っているその停滞から、なんとしても抜け出
 したかったし、そのためには自らに刺激を与え(どんな刺激でもいい)、精神に揺さぶりをかけ
 ることが必要だった。また私はひとりぼっちでいることに疲れ始めていた。そしてもう長いあい
 だ女性を抱いていなかった。

  今にして思えば、ずいぶん不思議な流れ方をする日々だった。私は朝早く目覚め、白い壁に囲
 まれたその正方形のスタジオに入り、真っ白なキャンバスを前にし、何ひとつアイデアらしきも
 のを得られないまま、床に座ってプッチーニを聴くことになった。創作という領域において、私
 はほとんど純粋な無と向き合っていたわけだ。オペラの創作に行き詰まっていた時期に、クロー
 ド・ドビュッシーは「私は日々ただ無(リアン)を制作し続けていた」とどこかに書いていてい
 たが、その夏の私もまた同じように、来る日も来る日も「無の制作」に携わっていた。あるいは
 そのリアンと日々向き合うことに私はけっこう馴染んでいったかもしれない――親しくなったと
 までは言わないにしても。

 Debussy: Pelléas et Mélisande 

  そして週に二回ほど、午後になると彼女(二人目の人妻)が赤いミニに乗ってやってきた。私
 たちはすぐにベッドに入って抱き合った。そして昼下がりの時間、お互いの肉体を心ゆくまでか
 さばった。それが生み出すものはもちろん無ではなかった。そこには間違いなく現実の肉体が実
 在した。隅々までを実際に手で触ることができたし、唇を這わせることもできた。そのようにし
 て私は意識のスイッチを切り替えるみたいに、漠然としてつかみどころのないリアンと生々しい
 までの実在とのあいだを行き来することになった。夫は彼女の身体をもう二年近く抱いていない


 ということだった。彼女より十歳年上だし、仕事が忙しいし、帰宅の時刻も遅い。彼女がいろん
 な風に誘っても、そういう気にはなれないようだった。

 「どうしてかな。こんなに素敵な身体なのに」と私は言った。
  彼女は小さく肩をすくめた。「結婚して十五年以上になるし、子供も二人いるし、私はもう新
 鮮じゃなくなってしまったのよ」
 「ぼくにはとても新鮮に見えるけど」
 「ありがとう。そう言われると、なんだかリサイクルでもされているような気がしてくるけど」
 「資源の再生利用?」
 「そういうこと」
 「とても大切な資源だよ」と私は言った。「社会の彼にも立つ」
  彼女はくすくす笑った。「正しく間違えずに仕分けさえすればね」
  そして我々は少し時間を置いてから、もうコ皮資源の入り組んだ仕分けに意欲的にとりかかっ
 た。

  正直なところ、私は彼女という人間にもともと興味を惹かれていたわけではない。そういう意
 味では彼女は、私がこれまでに交際してきた女性だちとは色合いを異にしていたと思う。私と彼
 女とのあいだには共通する話題はあまり存在しなかった。現在生活している環境にも、これまで
 生きてきた経歴にも、お互い重なり合う部分はほとんどなかった。私はもともと口数の少ない方
 だから、二人でいると主に彼女が話をした。彼女は自分の個人的な話をし、私はそれに対して相
 づちを打つた。

  いちおう感想らしきものを述べたが、それは正確には会話とは呼びがたいものだった。
  そういうのは私にとってまったく初めての体験だった。ほかの女性たちに関して言えば、私は
 だいたいにおいて相手にまず人間的な興味を持ち、そのあとでそれに付随するように肉体関係を
 持つことになる。それがパターンだった。でも彼女の場合はそうではなかった。まず最初に肉体
 があった。しかしそれはそれでなかなか悪くないものだった。私は彼女と会っているあいだ、純
 粋にその行為を楽しんだと思う。彼女もやはり同じようにその行為を楽しんでいたと思う。私の
 腕の中で彼女は何度も絶頂を迎えたし、私も何度も彼女の中で射精した。

  結婚してから、夫以外の男性と寝るのはこれが初めてだと彼女は言った。それはたぶん嘘では
 ないだろう。そして私も、結婚してから妻以外の女性と寝るのは初めての経験だった(いや、一
 度だけ例外的に一人の女とベッドを共にしたことがある。でもそれは私が望んだことではなかっ
 た。その事情についてはもっとあとで語ることになる)。

 「でも同年代の友だちは、みんな奥さんだけど、だいたい浮気しているみたい」と彼女は言った。
 「そういう話をよく聞かされた」
 「リサイクル」と私は言った。
 「自分もその一人になるとは思わなかったけど」

  私は天井を見上げ、ユズのことを考えた。彼女もどこかでほかの誰かと、これと同じことをし
 ていたのだろうか?

                                     この項つづく



● 吾は雛なり

テレビでは森友問題で賑やかなことです。彼女も興味があるのか、いろいろ話してくれますが、い
つも一方的で、たまに、長く応じると話は彼女の方か遮断するのでそれはそれで問題ないのですが
はじめは、<保守反動派>の内輪もめかと思っていたが、籠池泰典氏に対する証人喚問証がはじまり、
人格障害症とうか自己顕示欲の強い(ある種のサイコパス、虚言癖)、思いこみの強いことが気に
なってくる。今後どのように展開するわからないが(最悪のことも想定しておく必要がある)、齟
齬(誤謬)の合成(?)で終わる可能性もあるかもしれない。茶番に終わり、森友学園が自然消滅
する可能性が強い(願望も含め)と思う。話はそのことではない。齢を重ねても不思議と、好奇心
は衰えず、諦観すべきところ、未だ、俗世に没し彷徨う感強しく「吾は雛なり」と思い定むるとこ
ろあり。

                                        

  

アリスタルコスのピカソ

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       58  和合悦楽  /   兌為沢(だいたく)    

                               

      ※ 兌とは悦ぶこと。兌は沼沢、少女、ロを表わし、この卦はそれが
        二つ並んでいて、乙女が二人、楽しげに語らい笑う姿を示してい
        る。そこには見る者をを思わず微笑ませろ和やかな雰囲気がある。
        心たのしく和やかに暮らすことの重要さを説くのがこの卦である。
        口は笑ったり語り合ったりして心を通わせるものでもあるが、ひ
        とつ間違えば、口ぎたなくののしりあって不和を椙くものでもあ
        る。人間関係の潤滑油としての口は、なによりも誠実な心に支え
        られていなければならない。巧言令色は真の人間関係を作るもの
        ではない。なお、学校関係の団体や寮に麗沢という名が多いのは、
        この卦の大象伝から取ったものである。

       ※ 麗沢とは、二つの沼沢が互いにうるおし合うように、友人が互い
        に助け合いながら学ぶこと(麗=連なる意)。
      ※ 大象伝とは、卦を説明する象伝の一つ。一爻(易の卦を構成する
        基本記号。長い横棒(─)と真ん中が途切れた2つの短い横棒
        (--)の2種類がある)を説明するものを小象、一卦を説明する
        ものを大象という。

 

    
読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅰ部』   

     4.遠くから見ればおおかたのものごとは美しく見える

  彼女が帰ってしまうと私は一人きりで、ひどく手持ちぶさたになった。ベッドには彼女の窪み
 がまだ残っていた。何をする気にもなれず、テラスのデッキチェアに寝転んで本を読んで時間を
 潰した。雨田画伯の本棚にあるのは古い書籍ばかりだった。今では手に入りそうにない珍しい小
 説も少なからずあった。その昔にはけっこう人気があったのに、いつしか人々に忘れ去られ、も
 うほとんど誰の手にもとられない作品だ。私はそんな古くさい小説を好んで読んだ。そして時間
 に取り残されたような気持ちを、その会ったこともない老人と共有した。



  日が暮れるとワインのボトルを開け(時折ワインを飲むことが当時の私にとっての唯一の贅沢
 だった。もちろん高価な物ではないが)、古いLPレコードを聴いた。レコード・コレクション
 のすべてはクラシック音楽で、その大半はオペラと室内楽だった。どれも大事に聴かれてきたら
 しく、盤面には疵ひとつなかった。私は昼間は主にオペラを聴き、夜になると主にベートーヴェ
 ンとシューベルトの弦楽四重奏曲を聴いた。

   

  その年上の人妻と関係を結び、生身の女性の身体を定期的に抱くようになって、私はある種の
 落ち着きを得られたように思う。成熟した女性の肌の柔らかな感触は、私の抱いていたもやもや
 とした気分を少なからず鎖めてくれた。少なくとも彼女を抱いているあいだは、いろんな疑問や
 懸案を一時的に棚上げしてしまうことができた。でも何を描けばいいのか、アイデアが浮かんで
 こないという状況に変わりはなかった。私はときどきベッドの中で、裸の彼女を鉛筆で素描した。

 その多くはポルノグラフィックなものだった。私の性器が彼女の中に入っているところとか、彼
 女が私の性器を口にふくんでいるところとか。彼女もそんなスケッチを、顔を赤らめながらも喜
 んで眺めていた。もしそんなところを写真に撮ったら、大半の女性は嫌がるだろうし、そういう
 ことをする相手に嫌悪感や警戒心を抱いたりもするだろう。しかしそれが素描であれば、そして
 うまく描けていれば、彼女たちはむしろ喜んでくれる。そこには生命の温かみがあるからだ。少
 くとも機械的な冷ややかさばない。でもどれだけうまくそんなスケッチができたところで、私か
 本当に描きたい絵の像はやはりひとかけらも浮かんでこなかった。

  私が学生時代に描いていたような、いわゆる「抽象画」は現在の私の心にはほとんど訴えかけ
 てこなかった。私はそのようなタイプの絵画にもう心を惹かれなかった。今の時点から振り返っ
 てみれば、私がかつて夢中になって描いていた作品は、要するに「フォルムの追求」に過ぎなか
 ったようだ。青年時代の私は、フォルムの形式美やバランスみたいなものに強く惹きつけられて
 いた。それはそれでもちろん悪くない。しかし私の場合、その先にあるべき魂の深みにまでは手
 が届いていなかった。そのことが今ではよくわかった。私が当時于に入れることができたのは、
 比較的浅いところにある造形の面白みに過ぎなかった。強く心を揺さぶられるようなものは見当
 たらない。そこにあるのは、良く言ってせいぜい「才気」に過ぎなかった。



  私は三十六歳になっていた。そろそろ四十歳に手が届こうとしている。四十歳になるまでに、
 なんとか画家として自分固有の作品世界を確保しなくてはならない。私はずっとそう感じていた。
 四十歳という年齢は人にとってひとつの分水嶺なのだ。そこを越えたら、人はもう前と同じでは
 いられない。それまでにまだあと四年ある。しかし四年なんてあっという問に過ぎてしまうだろ
 う。そして私は生活のために肖像画を描き続けたことで、既にずいぶん人生の回り道をしてしま
 った。なんとかもう一度皮、時間を自分の側につけなくてはならない。

  その山中の家で暮らしているうちに、私はその家の持ち主である雨田典彦のことをより詳しく
 知りたいと思うようになってきた。私はそれまで日本画に関心を抱いたことは一度もなかったか
 ら、雨田典彦という名前を耳にしたことはあっても、そしてそれがたまたま私の友人の父親であ
 っても、披がどういう人物で、これまでどんな絵を描いていたのか、ほとんど知らなかった。雨
 田典彦は日本画壇における重鎮の一人ではあるが、世間的な名声とは無縁に、まったくと言って
 いいくらい表舞台には出ないで、一人で静かに――というかかなり偏屈に――創作生活を送って
 いる。私が彼に関して知っているのはせいぜいそれくらいのことだった。



  しかし彼の残していったステレオ装置で、彼のレコードのコレクションを聴き、彼の書棚から
 本を借りて読み、彼の眠っていたベッドで眠り、彼の台所で日々の料理を作り、彼の使っていた
 スタジオに出入りしているうちに、私は次第に雨田典彦という人物に興味を抱くようになってき
 た。好奇心、と言った方が近いかもしれない。かつてはモダニズム絵画を指向し、ウィーンまで
 留学しながら、帰国後唐突に日本画に「回帰する」というその歩みにも少なからず興味をそそら
 れた。詳しいことはよくわからないが、あくまで常識的に考えて、洋画を長く描き続けてきた人
 間が日本画に転向するのは、決して容易いことではない。これまでに苦労して身につけてきた技
 法を、いったんすべて投げ捨てる決意が必要とされる。そしてもう一度ゼロから出発しなおさな
 くてはならない。にもかかわらず、雨田典彦はあえてその困難な道を選択したのだ。そこには何
 か大きな理由があったはずだ。

  ある日、絵画教室の仕事の前に、小田原市の図書館に寄って雨田典彦の画集を探してみた。地
 元在住の画家ということもあるのだろう、図書館には三冊の立派な彼の画集があった。そのうち
 の一冊には、彼が二十代の頃に描いた洋画も「参考資料」として掲載されていた。驚いたことに
 彼が青年時代に描いていた一連の洋画には、私のかつての「抽象画」をどことなく思い出させる
 ところがあった。スタイルが具体的に同じというのではないのだが(戦前の彼はキュービズムの
 影響を色濃く受けていた)、そこに見受けられる「貪欲にフォルムそのものを追求する」という
 姿勢には、私の姿勢と少なからず相通ずるところがあった。もちろん後日一流の画家になるだけ
 あって、私の描いていた絵なんかよりはずっと底が深く、説得力もあった。テクニックにも驚嘆
 すべきものがあった。おそらく当時は高い評価を受けていたはずだ。しかしそこには何かが欠け
 ていた。

 Hans Erni (Feb.  21, 1909 – Mar. 21, 2015)

  私は図書館の机の間に座り、それらの作品を長いあいだ子細に眺めた。いったい何か足りない
 のだろう? 私にはその何かをうまく特定することができなかった。しかし結局のところ、遠慮
 なく言い切ってしまえば、それらはとくになくてもかまわない結なのだ。そのままどこかに永遠
 に失われてしまっても、べつに誰も不便を感じないような絵なのだ。残酷な物言いかもしれない
 が、それが真実だった。七十年以上の歳月を経た現在の時点から見ると、そのことがよくわかる。

  それから私はページを繰って、日本画家に「転向」したあとの彼の絵を、時代を追って眺めて
 いった。初期のいくぶんぎこちなさを残した、先行両家の手法を真似たような時代を経て彼は
 徐々に、しかし確実に自分自身の日本画のスタイルを見出していった。私はその軌跡を順序立て
 て辿ることができた。時折の試行錯誤はあったものの、そこに迷いはなかった。日本画の筆をと
 ってからの彼の作品には、彼にしか描けない何かがあり、彼自身もそのことを自覚していた。そ
 して彼はその「何か」の核心に向けて、自信に満ちた足取りでまっすぐ連んでいった。そこには
 遠くから見ればおおかたのものごとは美しく見える洋画時代の「何かが欠けている」という印象
 はもう見受けられなかった。彼は「転向」したというよりは、むしろ「昇華」したのだ。



  雨田典彦は最初のうちは、普通の日本画家と同じように、現実にある風景や花を描いていたが、
 やがて(おそらくそこには何かしらの動機があったはずだが)主に日本の古代の風景を描くよう
 になった。平安時代や鎌倉時代に題材をとったものもあったが、彼がもっとも愛好したのは西暦
 七世紀の初め頃、つまり聖徳太子の時代だった。そこにあった風景や、歴史上の出来事や、一般
 の人々の営みを彼は大胆に、そして緻密に画面に再現していった。もちろんそんな風景を実際に
 彼が目撃したわけではない。しかしおそらく心の目をもって、彼はありありとそれを観たのだ。
 なぜそれが飛鳥時代だったのか、その理由まではわからない。しかしそれが彼の独自の世界とな
 り、固有のスタイルになった。またそれと時を同じくして、彼の日本画のテクニックはまさに磨
 き抜かれたものになっていった。



  注意深く眺めていると、あるポイントからどうやら、彼は自分が描きたいと思うものをなんで
 も自由に描けるようになったようだった。その頃からあとの彼の筆は、思いのままに自由関連に
 画面の上を躍り、舞っているようだった。彼の絵の素晴らしいところはその空白にあった。逆説
 的な言い方になるが、描かれていない部分にあった。彼はそこをあえて描かないことによって、
 自分か描きたいものをはっきりと際だたせることができた。それはおそらく日本画というフォー
 マットがもっとも得意とする部分であるのだろう。少なくとも私は洋画において、そのような大
 胆な空白を目にしたことはなかった。それを見ていると、雨田典彦が日本画家に転向した意味が、
 私にはなんとなく理解できるような気がした。私にわからなかったのは、いつどのように彼がそ
 の大胆な「転向」を決心し、現実に実行したかだ。

  巻末にあった彼の略歴を見てみた。彼は熊本の阿蘇に生まれた。父親は大地主で地方の有力者
 であり、家はきわめて裕福だった。少年時代から彼の絵の才能は際だっており、若くして頭角を
 現した。東京美術学校(後の東京芸術大学だ)を卒業したばかりの彼が、将来を嘱望されてウィ
 ーンに留学したのは一九三六年末から三九年にかけてたった。そして三九年の初め、第二次大戦
 が始まる前に、ブレーメン港を出る客船に乗って帰国していた。三六年から三九年といえば、ド
 イツでヒットラーが政権を握っていた時代だ。オーストリアがドイツに併合された、いわゆる
 「アンシュルス」(※ Anschluss)がおこなわれたのが一九三八年の三月だ。若き雨田典彦は、ち
  ょうどその激動 の時代にウィーンに滞在していたことになる。そこで彼は様々な歴史的光景を
 目撃したに違いなそこでいったい彼の身に何か起こったのだろう?



  私は両集のひとつに収録されていた、「雨田典彦論」と題された長い論考を通読してみたが、
 ウィーン時代の彼についてはほとんど何も知られていないということが判明しただけだった。日
 本に戻ってきてからの日本両家としての彼の歩みについては、かなり具体的に詳細に論じられて
 いるのだが、おそらくウィーン時代になされたとされる「転向」の動機や経緯については、漠然
 としたあまり根拠のない憶測がなされているだけだった。ウィーンで彼がどんなことをしていた
 のか、そして何か彼に大胆な「転向」を決意させたのか、そのあたりは謎のまま残されていた。




戦前生まれのキュービズムの影響を受け、戦後転向した「洋画家」のことが気になり、しばらく、日
本の画家だけでなくネット検索してみる。東郷青児、藤田嗣治などをサーフしていく。天才たちのオ
ンパレード。写真技術(Graphic Arts)と出会って筆を折った当時の記憶がフラシュバック。ピカソは
逆にキュビズムを創造し数多くの作品を描き続け多大な影響を与える、失敗したからといっても、遠
くから見ればおおかたのものごとは美しく見えるということもあしね。本筋から外れた、面白くなっ
ていきそうだ。

                                      この項つづく

   ● 今夜の一曲

卒業式、 まだ見ぬ世界、この宇宙に飛び出す新しいロケットに乗り込んだ新米パイロットの操縦次
第で、天国地獄。「四月がやって来ると彼女も/川は満ちて雨で潤う頃/五月、彼女は居てくれるだ
ろう/再び私の腕の中で安らぐ・・・・・」、和合悦楽ってか?!しかし、八月になれば、別れが待って
いるかもしれないって、ここではそんな野暮なことは考えないことにしよう。この地球は公転/自転
し、ピカソは恋愛遊戯を繰り返しながら新しい絵画の宇宙を誕生させたのだから。

   April come she will
   When streams are ripe and swelled with rain;
   May, she will stay,
   Resting in my arms again  ......

                                                      ‘April Come She Will’ / Simon & Garfunkel

 

  

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