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環境リスク本位制宣言

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『尉繚子』
紀元前三世紀、秦の始皇帝に仕えた兵法家・尉繚の説を収録したものといわれる。

6.十 二 陵(じょうにりょう)
「陵」は「凌」に同じで、しのぐ意味。敵をしのぎ、敵からしのがれる十二項をあげ、上者の注
意を喚起しようとする。

敵に打ち勝つための十二の心得
一、指揮官の威厳は、命令や態度を軽々しく変更せぬことによって保たれる。
二、恩恵は、時宜を失わずに施してこそ、所期の効果をあげ得る。
三、機略とは、事態の変化にすかさず対応することである。
四、戦争とは、士気の争奪戦である。
五、攻撃とは、敵の意表を衝くことである。
六、守備とは、味方の内情を敵に秘匿することである。
七、失策を犯さぬための根底は、数量に関する精密な把握である。
ハ、苦境におちいらぬための要件は、兵員・武器・軍需物資におけるゆとりである。
九、情誼さとは、どんな些細なことにも注意を怠らぬことである。
十、知謀とは、根本的な問題について思心にを働かすことである。
十一、弱点を取り除くには、果断でなければならぬ。
十二、民心を政績するには、謙虚でなければならぬ。

敵から乗ぜられやすい十二の欠陥
一、確信に基づかぬ行動。後悔のたねである。
二、能率の民衆を殺戮すること。妖異が超こるもとである。
三、上官のえこひいき。部下の不平の原因となる。
四、指揮官が自分の失策を認めまいとすること。不祥事の原因となる。
五、人民を収奪しつくすこと。不測の事態の原因となる。
六、歌詞の離間工作に乗せられること。指導者の明察が失われる。
七、命令を安易に下すこと。部下は無責任な行動をとる。
ハ、賢人を退けて用いないこと。指導者は固削におちいる。
九、利欲に目がくらむこと。災厄のもとである。
十、小人を重用すること。害毒を流すもとである。
十一、防衛態勢を怠ること。国家は滅亡する。
十二、指揮官の命令がないこと。軍は混乱におちいる。 

  

第12章 消費者に見えない「原産国」
題2節 イタリア、カン八二ア州ノチェーラ・スペリオーレ
さらにワタンマルは、ジーノ・セレブレイト・ライフ基金という社会福祉基金を利用することで
も、消費者の購買欲を刺激している。たとえば、ジーノがナイジェリア市場に参入したのは10
年ほど前だが、ジーノ商品を購入すれば国民の生活水準が改善されるというイメージが定着し、
国産品を抑えて市場を独占する勢いでシェアを伸ばしている。この基金は白内障の手術に助成を
行なっているのだ。

基金のCMでは、白内障の手術に成功した男性が喜びの声を上げる。
「ンーノ、ありがとう!おかげでこれからは家族を養っていけるよ!」
すると別の男性が「ジーノに神の祝福を!」と応じる。画面の隅では、イタリア国旗の三色をバ
ックにブランドキャラクターが笑っている。



現在、アフリカの濃縮トマト市場では、ワタンマル以外の会社も、中国産の商品を武器にシェア
争いに乗りだしている,チー社のプライベートブランド、「ぺッペ・テッラ」もそのひとつだ。
チー社は、トロピカル・ジェンッラル・インヴェストメント(TGI)というダブリンを拠点に
した食品卸売・小売グループ傘下のナイジェリアの会社だ。ノクリンク・ベンチャーズ社は「タ
イマ」「トマヴィータ」「ファン・トマト」という三つのブランドを販売している。ナイジェリ
アから鉱石を輸出する一方、中国製の携帯電話、オートバイ、自動車部品、ハンドバッグなどさ
まざまな商品を輸入しており、中国産濃縮トマトもそのひとつだ。

だが、ジーノの晨大のライバルは、なんといっても「テイスティ・トム」だろう。シンガポール
のオーラム・インターナショナルーグルーブのプライベートブランドで、アフリカの多くの市場
に進出している。オーラムは食品の仲買・卸売をする世界的な企業で、主にアフリカ市場で活動
しながら、年間110億ドルを売り上げている。パーム油、木材、製粉の分野に強く、パスタ、
マヨネーズ、ビスケット、コメ、粉ミルク、食用油、そしてトマトペースト缶といった製品を取
りあつかう。70カ国から5万6000人を雇用して大規模に事業を行なう、アフリカ食品流通
晨大手のひとつだ。オーラムの「テイスティ・トム」にも、やはり激安の中国産濃縮トマトが使
われているのだ。

第3節
「ジーノはワタンマルのアイデアだった」と、アントニオ・ペッティは言った。
「あのパッケージデザインは、ワタンマルがカリフォルニアのグラフィックデザイナーに頼んで
作ってもらったんだ。1960年代のイタリアの缶詰デザインをイメージして、緑・白・赤のト
リコローレをバックにしたキャラクターを考えたらしい。ワタンマルから連絡をもらって、この
ブランドのためにトマトペーストを生産してほしいと頼まれたんだ。10年くらいうちでやって
いたよ。ジーノの缶詰を初めて輸出したときのことは、今でもよく覚えている。コンテナ3つ分
だった。だが、それからみるみる大口の顧客に成長していった。しまいには、年間3500台の
コンテナを輸出するようになった」

1990年代終わりごろ、アフリカの輸入濃縮トマト市場は、ナポリの食品メーカー数社が独占
していた。当時は、中国でトマト加工工場の建設が始まったばかりだった。ナポリのメーカーは、
中国からドラム缶入り濃縮トマトを輸入し、再加工して缶に詰めなおして、アフリカをはじめと
する世界各国に再輸出していた。いかにもイタリアらしいパッケージのジーノの商品は、確かに
イタリアで缶詰にされていたのだ。ペッティとワタンマルはそのイメージを利用して、アフリカ
で大量に中国産濃縮トマトを売りさばいた。

1997年、アフリカが輸入した濃縮トマト11万4549トンのうち、9万トンがナポリから
輸出されたものだった。この年、中国から直接アフリカに輸出された濃縮トマトはわずか140
0トンだった。そして5年後の2002年、ナポリのメーカーは22万2751トンの濃縮トマ
トをアフリカに輸出した。そのほとんどが中国産濃縮トマトを再加工したものだった。こうして
中国の二大濃縮トマトメーカー、カルキス(中基)と中糧屯河(コフコートンハー)は、ナポリ
のメーカーに商品を供給しつづけた。しかし、中国のメーカーは次第に貪欲になっていった……
最初に気づいたのは、カルキスを創業したリウ将官だった。

「ふと、気づいたんだ。中国の濃縮トマトは、イタリアに無駄な寄り道をしてからアフリカに運
ばれているとね。そこで思った。だったら、われわれが自分たちで濃縮トマトを缶詰にして、直
接アフリカに輸出すればいいじやないか、とね」それが、ナポリのメーカーにとって運命の分か
れ道だった。2004年、カルキスは天津に新たに缶詰メーカー、チャルトン・トマト・プロダ
クツ(天津中辰番茄制品有限公司)を設立し、巨大な生産工場を建設した。チャルトンの工場で
は、年間10万トンのトマトペースト缶を生産できたという。
 
「リウ将官がわたしに会いにノチェーラに来たのはそのころだ」と、アントニオ・ペッティが
言う。
「わたしには何も言わなかったが、そのときはすでに心に決めていたんだろう、うちを出しぬい
てジーノの商品を作ってやろうとね。ここに来だのは情報を収集するためだったんだ。その後、
ワタンマルヘ行って、うちより安くジーノを生産すると提案したらしい。正直言って、ジーノを
うちに引きとめておくための手はずを整えておかなかったのは、わたしのキャリアにおける最大
のミスだ。こうして、大事なパートナーだったはずのリウ将官が、ある日突然、最大のライバル
になってしまったんだ」

2000年代の終わりには、リウ将官のもくろみどおり、チャルトンは天津最大の缶詰メーカー
に成長した。トマト戦争に挑む兵団企業、カルキスにとっての最新兵器だ。こうして中国の濃縮
トマト大手が、アフリカに商品を直接輸出できるようになったのだ。
当時、チャルトンで作られていたのはジーノだけではなかった。世界中の多くのブランドのOE
M生産を手がけていた。モロッコの「シュヴアル・ドール」と「デリシア」もそうだ。このふた
つは、資本が異なる競合二社のブランドで、モロッコ国内市場のシェアを激しく争っていた。だ
が実際はどちらの会社も、カルキスのチャルトンに生産を委託していたのだ。

1950年代から2000年代まで、アフリカの市場はずっとイタリアのメーカーの独壇場だっ
た。われわれが完全に独占していたんだ」と、アントニオ・ペッティは言う。
「その後、中国が世毀市場に現れた。承知のとおり、最初は半製品しか作っていなかった。それ
をわれわれがイタリアに輸入し、再加工してから再輸出していた。だが、中国人は気づいたんだ、
われわれが中国の半製品を再加工してひともうけしていることに。中国人には勝算があった。労
働コストも光熱費もイタリアよりずっと安いからね。だからアフリカ市場でわれわれに戦いを挑
んだんだ」

結果はすぐに現れた。2013年、アフリカは、濃縮トマトを7億4800万ドル分輸入した。
そのうち、ナポリのメーカーが輸出したのはわずか4分の1の14万1669トンだった。ほと
んどが輸入品を再加工して再輸出したものだ。そして中国は、全体の4分の3に当たる44万7
540トンを輸出した。そのとき、アフリカの濃縮トマト市場において、中国はすでに70パー
セント以上のシェアを握っていた。

 Adolf Ferdinand Wenceslaus

第4節
ペッティのノチェーラエ場で、併設する研究所を見学した。案内役の技術部長の指示を受けて、
研究員の女性がブリックス値検査のデモンストレーションを見せてくれる。ブリックス値とは果
汁に含まれる糖類の量を示す値のことで、いわゆる糖度だ。糖用屈折計という測定器で計測され
る。ちなみにブリックスという名は、発案者であるドイツ人エンジニアで数学者、アドルフ・フ
ェルディナント・ヴェンツェスラス・ブリックス(1798年~1870年)に由来している。
次に見たのは、比色分析だ。色調の変化から溶液の濃度を測定する分析で、これによって濃縮ト
マトの色合いを調整しているという,

「同じヨーロッパでも、国によって好みがちがいますからね」
国によって?むしろ、ペッティのクライアントである「大手スーバーチェーンによって」だろう。
「濃い色を好む国もあれば、赤みが強い色、透明感のある色を好む国もあります。たとえばフラ
ンスは、濃すぎも薄すぎもしない中間の色を好みます。わたしたちは、クライアントのニーズに
合うよう、さまざまな濃縮トマトをブレンドしているんです」

なるほど、よくできた説明だ。技術部長によると、濃縮トマトをブレンドするのは、ヨーロッパ
の消費者の「色の好み」に合わせるためだという。だが実際は、色というより、品質が異なる濃
縮トマトがブレンドされているのだ。品質のよい製品によくない製品を混ぜることで、生産コス
トを安く抑えることができる。そのため、スーパーで激安価格で売られているトマトペースト缶
には、中国産、スペイン産、カリフォルニア産など、さまざまな産地の製品が混ぜられているこ
とが多い。こうすることで、スーパーチェーンからプライベートブランドのOEM生産を委託さ
れたメーカーは、安く製品を供給することができるのだ。研究所のキヤビネットには、書類ファ
イルが並んでいた。

「これらのファイルには、工場で加工される原材料の流通履歴が収められています。こうして
トレーサビリティを管理しているのです」

技術部長が、キャビネットから近年のものらしいファイルを一冊取りだし、ページを繰る。手元
を覗きこむと、原材料の仕入先が列記されていた。あるページで技術部長の手が止まった。そこ
に書かれているのは、すべてカリフォルニア産濃縮トマトの履歴だった。だがわたしがそのファ
イルを借りてページを繰ってみると、多くのページに「中国新疆」の文字が並んでいた。
カリフォルニア産濃縮トマトのトレーサビリティを管理するのは、それほど難しいことではない
。カリフォルニアのトマト畑は広大で、きちんと区画が整理されている。生産者の数も少なく、
生産工程はすべてコンピュータ管理されている。カリフォルニアのメーカーにメールでロット番
号を送れば、数時間後には必要な情報をすべて敦えてもらえる。

だが、中国産濃縮トマトの場合はそうはいかない。新疆ウイグル自港区には小さな畑が無数にあ
り、区画もはっきりしていない。猫の額ほどの土地でこぢんまりとトマトを作っている生産者も
あちこちにいる。すぐそばてヒマワリや綿花を育てていることも多く、そちらに散布している農
薬がトマトにもたっぷり使われていたりする。だから、世界の加エトマト業界の人間は誰でも、
中国産濃縮トマトのトレーサビリティを管理するのは難しいと知っている。
わたしたちは研究所を出て、生産ラインのスタート地点に戻った。作業員たちが、輸入した3倍
濃縮トマトのドラム缶を定位置にセットしている。ドラム缶から濃縮トマトがポンプで汲み上げ
られ、ラインに供給される。この後、タンク内で水が加えられて2倍濃縮トマトが生産されるの
だ。

パスクワーレ・ペッティのトスカーナエ場とは大違いだ。このノチェーラエ場では、イタリア産
トマトはいっさい使用されない。遠いところからやってくる濃縮トマトを再加工しているだけ
だ。どこの産地のものが使われるかは、世界市場での価格変動と為替レートによって決められる。

倉庫も見せてもらった。トマトペースト缶が出と積まれている。さまざまなブランドの缶詰があ
った。誰もがよく知っている、ヨーロッパの大手スーパーチェーンのプライベートブランドもあ
る。缶詰に書かれている言語も、パッケージデザインもさまざまたが、中身はすべて同じものだ。
現在のグローバル経済の市場原埋から、こういう結果が生まれたのだ。大手スーパーチェーンは、
独自のブランド商品を謁げて互いに競合している。ところが、別の店で売られるそれぞれ個性的
に見える商品は、いずれもこの巨大工場で生産されるまったく同じものなのだ。

ヨーロッバ各国の「ニーズ」に合わせて作られた、さまざまなトマトペースト缶……』の倉庫の
光景は、資本主義のパラドックスを体現している。あまりおおっびらには言えないが、現在のヨ
ーロッパではトマトペースト缶に関して消費者に選択の自由はまったくない。確かに、競合各社
は一自由」で公正な競争を行ない、市場では商品が「自由」に流一通されてはいるのだが。
唯一、消費者が選べるとすれば、各社のマーケティング部門で考案された個性的なパッケージデ
ザインだけだ。だがいずれのパッケージにも原材料の原産地はほとんど記されていない。消費者
の「選択の自由」はいったいどこにいったのだろう?

トマトペースト缶はまさに資本主義の象徴だ。この業界ではほんの一握りの会社が市場を独占し
ている。この20年間、トマトペースト缶は利益の追求のためだけに生産され、安く大量に作る
ことだけを目標にされてきた。ペッティをはじめとするトマト加エメーカーは巨大企業に成長し、
強大な権力を握った。そして大量生産が進んだあげく、巨大工場でたった一種類の商品が生産さ
れ、パッケージだけを変えて出荷されている。

世界中で消費されているのは、同じ容器に入った同じ中身だ。パッケージが違うので、消費者は
自由に選んでいると勘違いしているだけだ。それが資本主義だ。一見、「多様性」と「競合」と
「自由」を消費者に提供しているようで、実際は一部の人間にしか利益をもたらしていない。い
ったいわたしたちはいつまで、こうした素性のわからない商品を消費しなくてはならないのか?
トマト加工メーカーが権力を握ったのなら、民主的な反権力によってきちんと監督されるべきで
はないだろうか?
                  ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』

最後の箇所はなんとなく、このブログわたしが掲載したフレーズ(思想)とよく似ているねと思
いつつ、加工食品のトレーサビリティの困難さを考えつつ、その測定方法/検査システムをを開
発/事業化に興味を惹いた。さて、次回は「第13章 天津ののトマト缶工場の秘密」へ(後6
章、先をいそごう)。

                                                                         この項つづく



【ソーラータイリング事業篇:進化する立ち上げ試運転―迅速化とコスト削減】

7月17日、グリーンテックメディア社の「太陽光発電の立ち上げの未来――より速く、安く、
簡単に目標達成できる」と題する下記のコメント(キャサリン・ツイード)を掲載。

ファーストソーラー社だけでなく、迅速かつ効率的な事業立ち上げの重要性を理解する太陽光発
電事業社は皆無に近い。全世界総計17ギガワットの事業導入している同社は、その立ち上げの
実積があり、重要な経済性に関わる企業技術確立している。スムーズな実行による早期立ち上げ
――労働者の賃金が比較的高いカリフォルニア州では、労働コスト削減を実現可能な試運転――
は、発電収益の早期達成可能だという。

迅速な立ち上げにより事業主は事業試運転期間の発電容量から収益が得られ、より迅速な立ち上
げは、工場がCOD (商業運転日)に早期に達でき、したがってプロジェクトから予想よりも早
く収入が得られる。尚、最近では、モジュール、インバータなどの改良により立ち上げんが迅速
化し効率的になっている。このように、過去10年間に技術進化により試運転率が向上し、これ
まで以上に太陽発電事業、技術進歩、他社との競合により低利益率が、価格下落のためコスト削
減を必要とする。このように立ち上げ(コミッション)は、設備投資の一部であり、初期設備投
資のかなりの部分を占めるため、労力と資材の節約には効果的である。業界最大手のインバータ
メーカーのHuawei社は、将来的により早期に立ち上げるために注力している。同社はすでに集中
型比較して分散型(ストリング)インバータを利用し試運転をスピードアップしている。

 SUN2000 String Inverter

EPCは長年にわたり大型の集中型インバータを使用、その容積/重量は、軽量化の妨げ、インバ
ータメーカの追加費用を膨張させていた。同社のストリングインバータの使用で、事業を3~4
メガワットのセクショ分割のブロック設計が導入し、クラスタ・ラックと統合トランスの使用に
より迅速にかつ安全に施工できる。このように、DCコンバイナー・ボックスを扱う場合、ユニ
ット・コンバイナ・ボッのクスはアーク・フラッシュ・ショックの危険性がありインバータキャ
ビネット下にDCコネクタを内蔵し、設置中に接合配置を閉じたまま放置。 DCストリングをキャ
ビネットに接続時の感電いよる危険性はなくなる。ストリングインバーター技術の実際の進化は
試運転のスピードと効率を改善できる。同類規格(ォームファクタ)から多くのが得られる。例
えば、45KTLと同じフォームファクタの100KTLインバータを発売。これにより電力密度の2倍以
上となことで、AC結合の労力の大幅削減と設備投資節約につながる。ファーストソーラー社は文
字列インバータの試運転企業技術は少ないものの、インバータの1つが動作しなくても、トラブ
ルとはならない。別のインバータをリッピングし交換するだけで、試運転プロセスを継続できる。
また、機能不全のインバータを最終的にはトラブルシューティングのOEMに返送するだけですむ。
将来、プラグ・アンド・プレイ機器コンポーネントの使用増加で、より迅速な立ち上げが可能と
なるだろう。グリッド・エミュレーションは、今後の改善の重要な要素となり、コンポーネント
が工場でら予備構成させれば作業がいっそう迅速化されという。

 Jul. 12, 2018

【ソーラータイル事業:日本の太陽光、2025年にピーク時原発102基分達成】 
7月17日、日本経済新聞は、日本の太陽光、25年にピーク時原発102基分に達する?と報道。
富士経済社の最新調査によると、太陽光の年間当たり導入量と予測――2018年度 780万kW、20
18年度以降 600~700万kW、7年後にはさらに約4550万kWも増加――している。これを原子力
発電1基百万キロワット換算すると、2012年 662万kW(ピーク時原発6基分)、2018年 4800万
kW(ピーク時原発48基分)2025年 10200万kW(ピーク時原発102基分)に相当。世界各
国に比べ、日本だけは、再エネの導入量も増加量も、圧倒的に少なが、現在は、九州、四国、中
国エリアでは、太陽光が接続可能量に達しつつあり、太陽光だけで総電力需要の最大8割を賄う
までになっており、現在すでに太陽光の出力抑制(原発の電気を優先して太陽光の電気を捨てる
)が始まっている。

そこで疑問となるのが、7年後に太陽光がさらに現在の倍に増加し、風力もそれなりに増加した
ら、日本政府は――本当は高くて危険で汚い原発を守るために、国民が高い賦課金を払って導入
した太陽光や風力のクリーンな電気のほとんどを捨てるのだろうか――どうするのだろうかとい
うもの。考えられることは、❶出力調整のできない原発が一気に消えて行く(巨大な廃炉事業、
つまり、使用済みの核廃棄物処理事業の誕生-税金による公共事業)、❷出力調整が苦手でCO2
排出量が多い石炭火力が一気に消えて行く(これは世界的に動く-トランプのような反動政権は
消滅)。❸出力調整の容易なLNG火力が、太陽光が発電しなくなる夕方の需要ピークに向けて、
重要視され――などのが想定されている。



※尚、7年後でも出力調整用の蓄電池をkんが得るとまだコストが高いと予測されているが、政
府の取り組みいかんによれば10分の1はおろか百分の1まで原単位は下落するものと考えてい
る。尚、具体的な方法、技術に関しては後日、このブログでも提案掲載していく。

●『今年度・国内太陽光市場は7.8GW・5460億円、富士経済予測』2018/7/17  
世界市場は2014年以降、中国、米国、日本の3カ国がけん引してきたが、モジュール価格の下落
によって太陽光発電の導入ハードルが低くなり、需要地は新興国を含め世界各地に広がっている。
2017年は、中国が突出した導入量を達成したこともあり、出力ベースで初めて100GW(10万MW)
を突破した。参入企業の多くは、中国の需要が落ち着くことを予想しつつも、設備増強の計画を
進めている。今後金額ベースでは縮小が予想されるが、出力ベースでは低価格化が需要を喚起し、
さらなる拡大を予想。

国内市場は、2018年度の市場規模は出力ベースで7800MW(7.8GW)、金額ベースで5460億円を見込
み、2017年度に施行された改正FIT法に伴う認定の遅れや施工・販売側で法改正の対応に追われる
などの混乱が生じ、工期の短い住宅用や事業用低圧案件がその影響を受けて市場が縮小。2018年度
以降は出力6000~7000MW(6~7GW)の規模で推移すると見ており、固定価格買取制度(FIT)の終
了に向けて自家消費を促進する動きが、今後の市場動向を左右すると分析。2030年度は、出力ベー
スで6400MW(6.4GW)、金額ベースで3840億円になると予測。

注目市場としては、「PPA(Power Purchase Agreement)モデル」が挙げられるという。PPA事業者が
資金調達し、建物の屋根上に太陽光発電システムを設置して、発電電力を建物所有者に供給する
形になる。契約期間満了または売電が一定ラインに達した後、太陽光設備を建物所有者に無償で
譲渡する仕組み。

PPAモデルは、FIT制度のない米国で普及した事業モデルのため、FIT価格に左右されにくい側面を
持つとされ、今後の普及が期待される。市場規模は、2018年度に2017年度比6.0倍の12億円、2030
年度には同411.5倍の823億円まで拡大すると予測。また、O&M(運営・保守)サービスは、改正
FIT法に太陽光発電所の適切な運用・保守を求める項目が盛り込まれたこともあり、今後は高圧連
系の中規模案件や事業用低圧連系案件における需要が増える見通し。市場規模は、2018年度に2017
年度比18.1%増の567億円、2030年度は同2.6倍の1225億円と予測する。 



【RE100事業篇:IEA報告:昨年のクリーンエネルギー消費は気候目標達成に警告】

7月17日、国際エネルギー機関(IEA)によると、2017年には再生可能エネルギーの投資が7%
減(約2980億ドル)した一方で、2014年以来のエネルギー供給資金の化石燃料のシェアは初めて
増加したことを公表(上/下図参照)。尚、IEAによると、新興国における太陽光発電プロジェク
トの平均規模は3倍以上に増加し、陸上風力発電の2013年から2017年の間の半分の増加となって
いる。

 
Jul. 17, 2018

 

 【ゲームトライアスロン日記】





囲碁、将棋、チェスを同時に行うことはめったにない。今回も2日わたり最強レベルで黒後手で対戦。結果
は人の勝ちとなっているが、「急いては事をし損じる」に徹したことが勝因である(と、反省するならサルでも
できるってか?!)。

● 今夜の寸評:今夜環境リスク本位制宣言!もう後戻りはできない。

※ 動機はブログで掲載済み。

 ● 今夜の一曲



 


音明るきは夏来るしるし

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『尉繚子』
紀元前三世紀、秦の始皇帝に仕えた兵法家・尉繚の説を収録したものといわれる。

8.武 議(ぶぎ)
「兵談篇」で述べた一般論を、「戦争は悪」という観点から補足展開した章。悪であろうともな
お戦わなければならぬのが戦争であるからこそ、慎重さと非情さの両面が要求されるのである。

戦争は悪である
戦争はやむを得ず行なうものである。敵対せぬ国を攻撃してはならず、対岸の人民を殺してはな
らぬ。ひとの親たる者を殺し、ひとの財物を奪い、ひとの子女をドレイにするのは、どれをとっ
ても、盗賊の所行ではないか。戦争とは、暴逆な者を罰し、不正を抑止するための、万やむを得
ぬ手段にすぎないのだ。
指導者がこのことをわきまえていれば、どこを占領しようと、平時と変わらぬ秩序が保たれる。農民は農
事にいそしみ、商人は店舗を閉ざさず、官吏も役所を離れようとしない。このような指導者を戴く国は、あ
えて武力に訴えずとも、おのずから天下の民心を集めることができるのである。

国家規模に対応した計画を持て
戦争に対する心構えは、国の規模に応じて異なる。万乗の大国ともなれば、為政者は生産の振興と軍備
の充実との両面にわたって意を用いなければならぬ。千乗程度の中規模の国の為政者は、まず防衛体
制の整備に全力を注ぐべきである。そして百果そこそこの小国にあっては、何よりも民生の安定を第一義
とする政策を実施することだ。

生産がふるい軍備が充実した大国には、権威は求めずとも備わるだろう。防衛体制の整った国は
少なくとも侵略される恐れはない。そして小国といえども民生が安定していさえすれば、独立独
歩の気風はおのずと養われ、愛国心は高揚する道理である。もしも国家財政が乏しくて、軍事費
を充分に支出することが困難な場合には、商業を振興して財政人の増加をはかるべきである。高
菜こそ、収入を増加させるもっとも有効な手段なのである。万乗の国は、千栄の援助を得られぬ
ことを気に病む感要はない。むしろ商業の振興を通じて、百果に相当する収入増をはかる方が、
より望ましいのである。

罰は大物に、賞は下っ端に
軍紀違反者に対する処罰は、将たる者の武威を発揚するための感荷手段である。したがって、た
だ一人を処刑することによって全軍が震騏し軍紀が緊張するとみれば、ためらうことなく処刑す
べきだ。わずか一人を処刑することによって全員が心服するとみれば、ただちに処刑すべきだ。
処刑される人間は大物であればあるほど効果があがり、表彰される人間は小物であればあるほど
反響は大きい。処刑に値する人間はいかに大物であろうとかならず処刑するのは、高位高官とい
えども例外なく軍紀の統制を受けることの証明である。表彰が牧童や馬丁にまで及ぶのは、いか
に卑賤であろうとも表彰規定が一律に適用されることの証明である。高位高官も軍紀の統制に服
し、卑賤な者も表彰規定の適用を受ける。つまり法の眠格公正な運用こそ、将たる者の武威では
ないか。武威なき将帥は、君主からも信頼されるわけがない。

将帥たる人材
将帥たる者の任務は、指揮権を付与されて国難に当たり、戦争の勝敗を決し、命をまとに争うと
ころにある。指揮が適切であれば功績を認められ栄誉を獲得するが、指揮が適切を欠けば一命を
失い国家をも破滅に導く。一国の興亡安危はひとえに指揮のいかんにかかっているのだ。どうし
て将帥たる者の人材を斜視できようか。
軍を指導して戦闘に当たり、武力によって大業を成就する。これは君主にとって、さほどの難事
ではない。思うに、それは将帥に人材を得るか否かにかかっているのだ。
古人もいったではないか。「素手で敵を攻撃し、まるはだかの状態で侵略に対処するのは、軍隊
として落第だ」と。将帥こそ最良の武器であり、防塞なのである。(中略)有能な将帥の武威は、
戦場生活が長期にわたり、甲冑にしらみがわいてもなお士卒の戦意を衰えさせない。それはなぜ
だろうか。たとえてみれば、鷲に襲われた雀が、日頃は恐れ避けている人間の懐めがけて飛びか
かり、人間の住居にまで侵入するようなものだ。死を願ってのことではなく、ただ背後にある者
への恐れからこのような行動に出るのである。

【オノエヤナギ:Salix udensis(ヤナギ科ヤナギ属)】
①落菜高木で,本州山地の河岸や四目の山地にも分布している。若菜には相当毛があるが,のち
にはほとんど無毛となり,下面はやや白っぽい。 カラフトヤナギ,ナガバヤナギなどの別名が
ある。北海道、本州、四国 の山地の湿地や日当たりのよい谷間などに自生する落葉高木。雌雄
異株。1本立ちで、高さ5~15mになる。枝は小枝の分岐点で折れにくく、数年枝の裸材に隆起
線はない。



②分類:広葉樹(直立性)-単葉-不分裂葉-互生-きょ歯あり-きょ歯は単きょ歯-側脈は葉縁に達
しないか不明瞭-きょ歯は全縁にある-落葉性。③葉は互生する。葉身は、長さ 10~16cm、幅
1~2cmの披針形~狭披針形で最大幅は基部寄り。葉柄は0.5~1cm。葉の先端は細長く尖り、
基部は狭い楔形。縁には不整で低い波状のきょ歯が全縁にあり、先端部を除き裏側に巻くことが
多い。新葉は外反する。葉脈は表面で凹み裏面に浮き出し、表面では皺が目立つ。④葉の表面は
暗緑色で光沢があり無毛。裏面は淡緑色または青白緑色で葉裏全体に短毛があるが、ないものも
ある。若い枝は黄褐色で毛はあるものとないものがある。



【下の句×樹木トレッキング:音明るきは夏来るしるし×尾上柳】

Crape myrtle 

朝あさを落ち葉掻き寄せ掃き寄せて仰げ尊し楠の大樹は

暁を雨降り出でて木々を打つ音明るきは夏来るしるし


大下一真 『そののち憤怒』より二首(歌壇、2018年07月号)

 Sep. 18, 2008

 

Nov. 11. 2010
【低炭素型コンクリート篇:最新低炭素型コンクリート技術】

  Mar. 24, 2018

大量の化石燃料の消費に伴い、地球温暖化の問題が深刻化してきている。この地球温暖化を抑制
するために、二酸化炭素の排出抑制が各産業に求められている。建設業界においても、コンクリ
ート材料として広く使用されるセメント(ポルトランドセメント)は、その製造過程において膨
大な量の化石燃料を使用し、大量の二酸化炭素を排出する。また、その製造過程において石灰石
の脱炭酸反応が生じ、二酸化炭素を排出する。このため、コンクリート中のセメント使用量をい
かに削減するか、あるいは低炭素型セメントへの切り替え、さらには、木材使用による非コンク
リー型建設部材化への経理換えが大きな架台となっている。集中豪雨などの大規模気候変動に曝
される日本列島への防災・減災用施設建設及び部材に関わる二酸化炭素排出量の削減は喫緊の課
題である。

昨年3月24日、戸田建設は、地球温暖化対策の一つとして、同社の筑波市にある環境技術実証
棟の一部で、低炭素型コンクリート「スラグリート®」を適用し、建設時の二酸化炭素(CO2)排
出量を削減したことを公表。「スラグリート®」は、同社と西松建設、国立研究開発法人土木研究
所との共同研究によって開発、製鉄所の副産物である高炉スラグ微粉末をセメントの代替として
積極的に活用したコンクリートです。コンクリート製造時に、CO2の主たる排出源となるセメント
使用量を大幅に低減することで、一般的なコンクリートに比べて――「スラグリート®」は、高炉
スラグ微粉末をセメント質量の70~90%置換で高含有した、セメント使用量の極めて少ない
コンクリートであり、高炉スラグ高含有コンクリート用の化学混和剤を用いることで、下記の特
徴を有す、CO2排出量を最大70%削減できる環境にやさしいコンクリートである(下記に特徴を
敬作)。

✪一般的なコンクリートと比較して、コンクリート製造時のCO2排出量を約70%※2削減。
✪適切な材料選定と配合設計を実施することで、ポンプ圧送性や打込み、締固め作業等の施工性
 能が一般的なコンクリートと同程度となる。
✪圧縮強度や耐久性能も一般的なコンクリートと同程度。

※2.「スラグリート®」と同じ呼び強度27N/mm2の普通コンクリートと比較した場合。下記に関
連特許技術を掲載。

❑ 特開2014-114176 コンクリート材料

【概要】
このコンクリート材料は、少なくとも70質量%の混和材料を含有する混合セメントと骨材と水
と混和剤とを混合することにより製造されるコンクリート材料である。このコンクリート材料の
配合は、セメントのみを使用してコンクリート材料を製造する場合に必要とされる所定の水セメ
ント比、単位水量、細骨材率および混和剤の添加量とされるが、その混和剤として、一定量の増
粘剤を含有した混和剤が使用することで、セメントのみを使用する場合とほぼ同等の単位水量お
よび混和剤の使用量を確保しつつ、練り上がりからの経過時間によるスランプの低下を小さくで
きるコンクリート材料を提供する(下図詳細参照)。



❑ 特開2018-104266 セメント組成物及びその製造方法、並びにモルタル又はコンク
リートの製造方法  宇部興産株式会社

【概要】
高炉セメントは高炉スラグを混合材とするセメントである。近年、セメント製造時の二酸化炭素
排出量への関心が高まっていることから利用が推進されている。一方で、高炉セメントはセメン
トの水和反応によって発生する水酸化カルシウムを刺激剤として徐々に硬化するというスラグの
潜在水硬性を利用しているため、普通ポルトランドセメントと比較して凝結が遅延することや硬
化して十分な強度が得られるまでに長い時間を要することが従来からの課題となっている。高炉
セメントの初期強度や凝結遅延の改善に関する既往の報告では、水酸化カルシウム及び石膏の添
加、硫酸アルカリの添加、及び石膏や高炉スラグの粉末度を高めるといった技術が提案されてい
る。



しかしながら、水酸化カルシウムや硫酸アルカリ等の添加剤の調達や、石膏や高炉スラグの高粉
末度化には生産コストが増大するという問題がり。高炉スラグの含有量が60質量%を超えるよ
うな場合や、特定の成分を有する混和剤を使用した場合には、凝結の遅延が著しく、更なる対策
が求められていた。セメント組成物は、セメントと高炉スラグとを含む。セメント中のC3A(式
中、CはCaOを表し、AはAl2O3を表す。)含有量が9質量%超20質量%以下である。高
炉スラグの含有量が30質量%超95質量%以下である。高炉スラグのAl2O3含有量が11質
量%以上18質量%以下であることが好適である。セメント中のフリーライム含有量が0.5質
量%以上3.0質量%以下であることも好適である。更に、セメントと高炉スラグとの合計10
0質量部に対して0.01質量部以上1質量部の硫酸アルカリを含むことも好適で、生産コスト
の増大を抑えながら硬化遅延が抑制されたセメント組成物を提供する。


【低炭素型コンクリート事業篇:野菜でより強固な建物や橋脚に貢献】

  Jun. 15, 2018

8月15日、 英国はランカスター大学の研究グループは、機械的特性および微細構造的特性の点で
現在のセメント製品より優れ、セメント使用量削減――セメント製造に伴うエネルギー消費と二
酸化炭素排出量が大幅に削減できる――人参や甜菜繊維から抽出したナノプレートを混成するこ
とで実現きたことを公表。



これらの植物複合コンクリートは、グラフェンやカーボンナノチューブなどの市販のセメント添
加物をはるかに低コストで生産でき、根菜のナノプレートレットは、コンクリートの性能を制御
する主要物質であるケイ酸カルシウム水和物の量を増やし、コンクリートに生じる亀裂を抑制―
コンクリートの物性を高め、二酸化炭素排出量の削減を可能となる。コンクリートの主要成分の
1つのポルトランドセメント代替させることで全世界の二酸化炭素2排出量の8%を削減。今後、
30年間で需要は2倍になると予測されている。

根菜ののナノ繊維の添加で、コンクリート1立方メートル当り普通のポルトランドセメント40
キログラム削減=二酸化炭素排出量40キログラム削減。根菜植物混成物の強度が大きいほど、
既存のコンクリートより微細な加工物が作製できることを意味する。植物ベースのセメント質複
合材料はまた、腐食を防止、長寿命化など、より高密度微細構造に適している。日本でも、すで
に、グラフェン混成やナノセルロース繊維混成による軽量化、強度、靱性強化の開発が先行して
いるが、食糧作物の「ゼロ・ウエスト」につながる今回の研究報告に注目したが、大量消費を実
現するには木質バイオマス由来との兼ね合いが課題となろう。




【海洋温度差発電篇:OTEC沖縄 ホーム 温度差発電実】

もう1つ、自然/再生可能エネルギー利用技術の1つである海洋温度差発電(OTEC:Ocean The-
rmal Energy Conversion) は海洋表層の温水と深海の冷水の温度差を利用して発電を行う仕組み―
―について今夜は注目する。原理的には、海洋が受ける総日射量 = (5.457 × 1018 MJ/yr) × 0.7
= 1.9 × 1018 MJ/yr. (taking an average clearness index of 0.5) このエネルギーの15%が吸収される。
光強度は水深yに伴って 指数関数的に減衰するので、熱の吸収は上層に集中して起こる。熱帯で
は通常、水深1キロメートル以上で水温10℃である一方、表面温度は25℃を上回る。上部に
より温かい、すなわち軽い水が存在するため、対流が生じない。熱勾配が小さいために熱伝導に
よる熱移動は少なく、この温度差を解消するには至らない。従って、海洋は事実上、高温熱浴と
低温熱浴であるとみなすことができる。この温度差は緯度、季節に伴って変化し熱帯、亜熱帯、
赤道で最大になる。この温度差を利用し下図のように発電、(エネルギー)、海水淡水化、成分
利用、冷熱利用など4事業に展開できる。



しかし、海洋は絶えず太陽によって熱せられ、地球の70%近くを覆っているのに対し、深層の水
は比較的低温(10℃以下)であり、この温度の違いは人間が使うために開発される可能性を秘め
た膨大な量の太陽エネルギーを含み、もしもこの抽出を大規模に経済的に行えば、人口がもたら
すエネルギー問題を解決できる可能性があり、水力などの他の海洋エネルギーの選択肢と比べて1~2
桁多くの総エネルギーを利用できるが、温度差が小さいとエネルギーの抽出は困難で高価になり、典型
的なOTECシステムの全体的効率は1~3%しかないといった課題があるが、海洋資源/観光開発の中
核設備として展開でき夢のある事業であろう(残件扱い)。 

  

第13章 天津のトマト缶工場の秘密
中国、天津
第1節
乳白色の空の下、缶詰工場に向かってアスファルトの道路が延びる。片道三車線で、車線ごとに
通る車両の種類が違う。左は一般車用だ。セダン、クーペ、4WD、新型モデルなど、さまざま
な種類の乗用車が通る。真ん中の車線は貨物トラック専用だ。まるで港のコンテナターミナルの
ように、工場に向かってトラックが長い列を作っている。もっともゆっくり流れているのは右の
車線だ。自転車、原付スクーター、オート三輪などが走っている。あちこち補修されたボロボロ
の自転車や、走っているのが不思議なくらいに古い車もある。ヘルメットもかぶらずに原付バイ
クに乗る工場従業員もいる。金持ちから貧乏人まで、三つの車線に広がって、みんながこの道を
進んでいく。沿道には、同じような形の高層住宅がずらりと立ち並ぶ。
未完成のまま放置され、錆びた鉄筋がむきだしになっている建物もある。石造りのアーチが目の
前に現れた。大きな金文字で一天津金土地食品有限公司」と書かれた看板が見える。同社はドラ
ム缶入り濃縮トマトからトマトペースト缶を作る大手缶詰メーカーのひとつだ。だが、ここは会
社の正面玄関ではない。この大きくて派手な門は、公式行事の式典や、写真撮影にしか使われな
い。営業用の会社案内パンフレットには、この門を背景にした写真が掲載されている。

工場の敷地内に入るには、別のゲートを通らなくてはならない。通勤する従業員たちのオートバ
イが並んで走る脇を、車で追いぬいていく。ゲートが上がると、警備室のすぐ横から発送場が広
がっていた。この発送場では毎日、昼も夜もなく、男たちが汗だくになって働いている。トマト
ペースト缶が詰まったダンボール箱をコンテナに積みこむ作業だ。ものすごく暑い。上半身裸で、
プラスティックのサンダルをひっかけただけで、フオークリフトを操っている者もいる。コンテ
ナの高さはニメートル60センチだ。ダンボール箱を高く積みあげていき、背が届かなくなると
積荷を踏み台代わりにする。長さ六メートルのコンテナがダンボール箱でほぼいっばいになると、
地面にパレットを積み上げて脚立代わりにし、天井ギリギリまで無理やり箱を押しこむ。海運業
者や港湾当局に文句を言われようが知ったことではない。ほんのわずかな隙間も残さないよう工
場幹部から指示されているのだ。

男たちは、短パン姿で、脚をむきだしにして働いている。パレットをじ枚重ねた上に男がふたり
乗っている。今のところうまくバランスを取っているが、もしどちらかひとりが体勢を崩したら、
パレットは崩れ落ちてしまいそうだ。2015年だけで、中国では28万1576件の労働災害
が発生している。うち6万6182件が死亡事故だった。
無理やり箱を詰めこんだせいで、コンテナの扉が閉まらなくなった。さあ、ここでフオークリフ
トの登場だ。ツメを高く上げたま圭扉に向かって突進し、強引に扉を閉じる。二本のツメが金属
製の扉にすごい勢いでぶつかり、ドーンと激しい衝撃音が響きわたった。通し番号がついた金属
製ボルトシールで扉が封印される。よし、これで準備完了。匹に界の港へ向けて出発だ。



第2節
トマトペースト缶が積まれたコンテナは、工場から天津港に輸送されるためにトレーラーに載せ
られる。作業員がクレーンを遠隔操作してコンテナを持ち上げている。巨大な金属の塊なのに、
まるで宙に浮いているようだ。ふわふわとトレーラーのほうへ近づいて、荷台の上にゆっくりと
降りていく。コンテナを定位置に設置するため、四人の作業員がコンテナ下部の四隅をそれぞれ
両手で支えている。荷台から数センチの高さまできたところで、クレーンがコンテナを離した。
コンテナの重みで、トレ士フーがドンという大きな音を立て、荷台が激しく揺れる。

金土地食品の工場は、天津港のコンテナターミナルから数キロメートルのところにある。天津港
の取扱貨物量は世界第10位だ。あらゆる貨物が陸揚げされ、積みこまれている。2015年の
コンテナ取扱量は一匹〇〇万個だった。長さ20フィート(約6メートル)のコンテナ1台を1
個とした数量だ。業界ではTEU(20フィートコンテナ煥量)という単位も使われる。
現在、天津は経済の重要な拠点として、直轄一巾の名のもとに中央政府の管理下に置かれている。
人口は1500万人で、中国第4の都市だ。南運河と北運河という溺海に注ぐ二つの大河の合流
地点に位置し、太古より河川交通の最終地点、および港町として重要視されてきた。7世紀には、
隋の時代に建設された京杭大運河のおかげて国の北部や東部とも結ばれた。そして近年、とくに
ここ数十年は、鉄道、高速道路、海運など、大運河以外の流通ルートも網の目のように広がり、
天津の経済活動はますます活発になっている。

 Aug. 12, 2015

2015年、天津の港湾地区で大規模な事故が起きた。有毒化学物質を数千トン保管していた倉
庫が爆発したのだ。人体に有害なシアン化ナトリウムが700トン流出し、消防士99人をはじ
めとする173人の死者、800名近くの負傷者が出た。皮肉なことにこの大災害によって、天
津が産業と貿易において非常に重要な位置にあることを、世界中に知らしめることになった。
トマトペースト缶を大量に生産している金土地食品の工場に、立ち入ることを許されたジャーナ
リストは決して多くない。会社側は、繁栄ぶりをぜひとも見せたいという欲求と、その裏に隠さ
れた秘密は隠さなければという不安の間で揺れながらも、わたしに門戸を開いてくれたのだ。

従業員用更衣室には、スチールロッカーが並んでいた。会社代表の右腕であり、工場長でもある
マー・チェンヨンが、紙製のシューズカバー、白い上着、帽子、マスクを手渡す。すべて身につ
けると、マーが先に立って案内してくれた。狭くて薄暗い小部屋が続く、迷路のようなところを
歩いていく。鉄製のターングートを通り、青いライトがストライプ模様を描いている廊下を進む。
100歩ほど進んだだろうか、重そうな扉にぶつかった。マーが扉を開けると、たちまち騒音に
包まれた。じめじめした熱い突風に襲われる。
目の前に、生産ラインの現場が広がっていた。黄色っぼいネオン照明の下で、たくさんのトマト
缶が、機械から機械へと滝のように流れている。室内には蒸気がもくもくと立ち上り、ひどく蒸
し暑い。サウナのような濃密な空気のなかを、中身を充腸されたばかりの缶詰が湯気を上げなが
ら進んでいく。

生産ラインに沿って並ぶ作業員たちは、みなひっきりなしに手を動かしていた。ある者たちは散
水用ホースを曲げたり伸ばしたり、水を噴射させたりしている。ラインから缶詰を抜きだしたり、
あるいはラインに缶詰を役人したり、向きを調整・点検したりする者たちもいる。機械を修繕し
たり、重そうなものを移動させたり、ダンボール箱を持ち上げたり、道具を運んだり、商品の検
査や箱詰めをする作業員もいる。小さな白い帽子をかぶっている者もいれば、髪も耳も酋もすべ
て覆いつくす薄手の帽子をかぶっている者もいる。耳のところがメッシユ素材になっているので、
騒音防止の耳栓をしていないのが見てとれる。鼓膜は大丈夫なのだろうか。機械がうなるような
轟音を上げ、ぶつかり合う金属製の缶が機関銃のような音を立てているというのに。丸くて赤い
缶がレールに沿って次々と進み、ギーギーときしみ音を立てる機械に吸いこまれていく。

                  ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 

                                                       この項つづく

 

まつろはす夏のゆふべの炎

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『尉繚子』
紀元前三世紀、秦の始皇帝に仕えた兵法家・尉繚の説を収録したものといわれる。

8.武 議(ぶぎ)
「兵談篇」で述べた一般論を、「戦争は悪」という観点から補足展開した章。悪であろうともな
お戦わなければならぬのが戦争であるからこそ、慎重さと非情さの両面が要求されるのである。

良馬もよき騎手を得てこそ
太公望は七十歳に及んでも志を得ず、朝歌(ちょうか)では牛殺しを渡世とし、盟津(もうしん)
では一膳飯屋を営んで生活をたてていた。こうして七十歳を過ぎてもまだ用いようとする君まも
なく、人々から狂人扱いされたものである。だが、ひとたび文王にめぐりあうや、三万の軍勢を
率い、一挙に天下を平定した。太公望が軍事に通暁していた賜物といわないで何といおう。「良
馬もよき騎手を得てこそ遠路を走り、毀士もしかるべき君主を得てこそ才能を発揮する」といわ
れているではないか。

〈太公望〉本名は呂尚。周の文王・武王の宰相として、殷を倒し、周王朝の基礎を固めた。   
〈朝 政〉殷の郡。今の河南谷にあった。
〈盟 津〉地名。今の河尚古にあり、黄河に臨む地。

人事を尽くすのみ
武王が紂王放伐の兵を挙げ、盟肆を渡った時には、座下の決死の士といえばわずか三百、率いる
軍も総数三万に過ぎなかった。これに対する村王の軍はその多きこと数知れず、飛廉、悪果の雨
勇将は挺身して部下を激励し、その軍陣は百里にわたって展開する壮大さであった。しかし威圧
は、自国の兵士、人民を疲弊させることなく、敵兵を多数殺傷することもなく、商を撃破して紂
王を滅ぼしたのである。だからといって、肩車に瑞祥吉兆があったわけではない。これひとえに、
人事を尽くしたか否かによるのである。

ところが現今、世の凡将たちは、相も変わらず方位をトし、星を占い、亀甲を焼いたり気象の変
化をうかがったりして吉凶を判断し、それに基づいて勝利を収め功を立てようと期待している。
何とも話にならない仕儀ではないか。

戦争の本質を知れ
将帥とは、つねに主体性を保って天文気象に支配されず、地勢の不利にも動揺せず、他人の意見
に盲従せず、縦横に独歩すべき者である。だからこそ、勝敗の帰趨を握ることができるのだ。 
そもそも、武器は不吉な道具であり、争いは望ましからぬ行為であり、軍人は人を殺すのが使命
である。したがって、武力に訴えるのは、万やかを得ぬ場合の手段でなければならない。だが、
ひとたび戦端が聞かれたなら、天をも恐れず、地をも則心にせず、君命がどうあろうと、敵勢が
どうあろうと、全軍一体となってさながら猛獣のごとく、風雨のごとく、雷宛のごとく、渕り知
れぬ猛威をふるい、その威武によって天下を震動させるようでなければならない。
勇猛なる軍隊は、水にたとえることができる。水はきわめて柔く弱いが、しかも行く手に当たる
丘陵をかならず崩し流し去る力を持つ。それはほかでもない。水の性質が終始一員して変わらず、
その運動法則も不変の理に基づいているからである。

以上のごとき戦争の本質を体得した将帥が、鋭利な武器と堅牢な甲胃とを具備した大軍を変通自
在の采配を揮ったなら、これに対抗し得る者は天下にあるまい。
だからこそ、次のようにいわれているのである。「有能な看を抜擢して用いれば時日の吉凶にか
かわらず成果があがる。法令を明確詳細に規定して実行すれば占わずとも結果は吉となる。人民
の功労をねぎらいいたわれ神に頼らずとも福がもたらされる」と。
また、こうもいわれている。「天の好機よりも地の利、地の利よりも人の和が大切である」と。
昔の聖人が言祝したのは、ただ人事を尽くすことのみであった。

〈不吉な道具〉原文は「凶器」。棺桶や副部品など、葬儀の道具の意である。



【下の句×樹木トレッキング:まつろはす夏のゆふべの炎×バッコヤナギ】

バッコヤナギ(Salix caprea)はヤナギ科の落葉小高木または高木。別名ヤマネコヤナギ。北海
道南半部から本州,四国に分布し山地から丘陵地のやや開けた明るい場所に生じる。葉は楕円形
または長楕円形で長さ 10cm,幅 4cmほど。先は鋭くとがり,基部は円形。辺縁に不規則な波状
の鋸歯がある。上面は無毛でやや光沢がある深緑色,下面は白色の縮毛が密生し粉白色。花は葉
の展開に先立って3~4月に咲く。雌雄異株。雄花穂は長楕円形で長さ3~5cm,径 3cm。雌花穂
も長楕円形で長さ2~4cm,径 1.5cmめしべの柱頭は2裂する。
 

 月見草

感覚が若いてシャープで親近感を覚え読み終え、時間があれば歌集を取り寄せてみようと思いつく
(が、眼精疲労がこの猛暑でさらに増しているのでそれはもっと後になる)。


旅へ この世界の外ヘ ー生どいふ砂ざけい反転きせて

あやふやな輪郭をみせ溶けてゆく氷床、わたし、未来。極夜の

北極星に問ひまた問ひて啓きゆく未知みづからの狂ひをみどめ

鈍(にび)いろの硝子でできたランタンにまつろはす夏のゆふべの炎

松本典子『極夜』より四首(歌壇、2018年07月号)

※ますろはす(服ふ・順ふ・纏らふ):ハ行四段活用の動詞「順ふ」「服ふ」の未然形である
「順は」「服は」に、使役の助動詞「す」が付いた形。合わす。添う。沿う。纏い付く。収(治)
まる。従う。仕えるなどの意。



※ 松本 典子(1970年2月6日 - )は、歌人。千葉県鴨川市出身。千葉県立安房高等学校、早稲
田大学教育学部国語国文学科卒業後、国立能楽堂を経て国立劇場に勤務する。1997年に短歌をは
じめ、同年短歌結社「かりん」入会、馬場あき子に師事。2000年、第20回かりん賞、第46回角川
短歌賞受賞。2003年、第一歌集『いびつな果実』で第4回現代短歌新人賞受賞。現代歌人協会会
員。


 

第13章 天津のトマト缶工場の秘密
中国、天津

第2節
生産ラインは二本あった。一本では、小型の缶詰が生産されている。直径55ミリ、高さ37ミ
リのじ○グラム入りだ。もう一本では、それより大きな400ラム入りだった。床は水びたしで、
ぬるぬるして滑りやすい。ラインのスタート地点で、トマトペーストが飛び散って水たまりが赤
く染まっていた。

ベルトコンベアのすぐそばで、ひとりの作業員が缶詰の重さを測っていた。充崩後の缶詰の列か
らランダムに選びだしているようだ。使っているデジタルスケールはかなり使い古している。あ
れで正しく測れるのだろうか?中身だけを測るために、容器の重さはあらかじめ差し引かれてい
るらしい。それにしても、表示画面に現れる数字はあまりにもまちまちで、まるで宝くじの抽選
会でも見ているようだ。トマトペーストの充場機が故障しているのか?それとも壊れているのは
このスケールのほうか?もしかしたら両方とも? いや、そんなことはどうでもいいのだろう。
作業員はまだ焼けるように熱い缶を指先でつまみ上げ、重さを測り、再びラインに戻している、

するとそのとき、目の前のコンベアがいきなり停止した。それと同時に、騒音もビタリと止まる
。チェーンが一本切れたらしい。缶詰の重さを測っていた作業員がすぐに手を止め、両腕を振り
あげながら同原に向かって何かを叫ぶ。それから生ぬるい水たまりのなかにしゃがみこみ、破損
箇所を調べはじめた。コンベアのベルトはたわんで無残な姿になっている。だが、すぐに修理担
当者が交換部品を持って駆けつけた。接合部をハンマーで叩き、モンキースパナで締めなおすと
、数分後にはまたラインが動きだした。その瞬間、再び騒音が響きわたる。コンベアの上流に溜
まっていた何百という缶詰が、まるで怒り狂ったようにすごい勢いで押し寄せてくる。コンベア
の先のほうでは、缶詰に自動で蓋をする巻き締め機が、巨大なコマのように回りはしめた。缶が
ひとつずつ密封されていく。こうした作業がここでは延々と続くのだ。

コンペアの終点で、女性作業員がひとりでダンボール箱を組み立てていた。折りたたまれた板状
のダンボールを両手でつかみ、力をこめて折ったり開いたりしている。大量のダンボールがどん
どん箱の形になっていく。その素早さ、正確さは実に見事だった。しかもリズミカルで流れるよ
うな手さばきだ。だが、その顔はまったくの無表情だ。何も考えず、ただ目の前の仕事をこなし
ているだけ。ダンボール箱と同じ、空っぼのまなざしだ。これまで何千という箱を組み立ててき
たのだろう。何カ月も、いや何年も前から同じ動作を繰りかえし、同じ箱を作ってきたのだろう
。週じ日間一日も休まず、休暇も取らずに働いてきたのだろう。この女性も、ここにいるほかの
作業員たちと同じように、身も心もすり減らしながら、賃金のために労働力を提供しているのだ。

この工場は、一日34時間体みなく稼働している。仕事は八時間ずつの三交代制だ。週七日の計
五六時間、くたくたになるまで働かされる。それで受けとる月給は、ユーロ換算で500ユーロ
くらいだという。信じがたいことだ。給料についてどう思うか、通訳を介して従業員に質問して
みたが、誰も笞えてくれなかった。
確かに、民工の時代はもう終わったのだろう。2000年代初め、農村から都市に出稼ぎに出た
「民工」と呼ぼれる農民は、わずか200ユーロに満たない月給で工場に労働力を提供していた。
そのころに比べれば賃金は上がった。だが、労働時間は変わらない。労働者の仕事に対する意識
も変わっていない。工場の作業員は、男女とも同じTシャツを身につけていた。白地で、背中に
中国語が書かれている。肩まで抽をまくりあげている男たちがいる。そのうちのひとりは、がっ
しりしたからだつきで、いかつい顔をしていた。毛沢東時代のプロパガンダ用ポスターに描かれ
た、理想的な労働者の姿そのままだ。男らしく、たくましく、決然とした表情をしている。いや、
そんなふうに思うのは時代遅れだろう。この男はトマト帝国の兵士だ。中国の国家資本主義のた
めに戦っているのだ。

天津金土地食品代表のチャン・チュンクワンによると、この工場の規模は天津で第二位だという。
チャンは元軍人だ。特殊部隊用ミリタリーベルト、たくさんのスマートフォンと新車の黒い4W
Dを持っているのが自慢らしい。4WDが停められている駐車場の向かいに、巨大な石碑が立っ
ている。その上には一進歩のために戦おう」という社是が刻まれていた。
 原材料の濃縮トマトは、中国晨西部の新疆ウイグル自治区から、東部の天津まではるばる運ば
れてくる。三二〇〇キロメートルの行程を、北部を経由しながら、貨物列車に揺られて大陸を横
断する。そして工場に到着したら、水を加えられ、個別の小さな缶に詰めかえられ、あっという
間に暗に乗せられて、世界中へ輸送されるのだ。

第3節
天津金土地食品は、140人の従業員を雇用し、年間五万トンのトマトペースト缶を輸出してい
る。コンテナおよそ2000台分だ。行き先は幅広い。工場内の倉庫にはさまざまなブランドの
缶詰が並べられていた。とくに、アフリカ、中近東、ヨーロッパで販売されるものが多いようだ。

「この間は、ドイツとスウェーデンに向けて出荷しましたよ」と、チャンは言った。
工場の最後の工程では、400グラム入りのトマト缶が機械で箱詰めされていた。その機械の向
かい側で、箱の隙間にプラスティック製の蓋を入れている作業員がいた。西アフリカ向けの商品
だという。西アフリカでは、貧しくて70グラム缶さえ買えない人たちのために、市場でトマト
ペーストをスプーン売りしている。スブーンー杯当たり数ユーロセントという値段で、紙に包ん
で販売される。プラスティック製の蓋は、400グラム缶がスプーン売りされるとき、劣化しな
いよう開封後の缶にかぶせておくためのものだ。スプーンー杯分けわずかな金額でも、トマトペ
ーストの需要が多い西アフリカでは積もり積もって莫大な売上になる。トマトペースト缶市場は
世界でもっとも貧しい国でも形成されている。たったスプーンー杯からでも市場は生まれるのだ。

第4節
「この部屋には入れません」
マーはそう言いはなつと、半透明の分厚いプラスティック製カーテンの向こうへ行こうとするわ
たしを引きとめた。わたしは少しだけ驚いたふりをしてから、「ああそうですか、わかりました」
と、興味のないふりを装った。だが、頭のなかではさまざまな思いがフル回転していた。人って
はいけない理由が何かあるはずだ。
たった今まで、わたしはこの工場の生産ラインをあちこち見学し、あらゆる工程を見てまわった。
濃縮トマトを再加工しているところも、トマトペーストを缶に充填しているところも、巻き締め
機で蓋をしているところも、重さを測ったり、不良品の検査をしたり、缶詰を箱詰めしていると
ころも、すべて見せてもらった。だが奇妙なことに、新疆ウイグル自治区からやってきたはずの、
三倍濃縮トマトが入ったあの青いドラム缶はどこにも見当たらなかった。通常は、生産ラインの
スタート地点に、ドラム缶から原材料がポンプで汲み上げられてラインに供給される工程がある
はずだ。ここにはなぜかそれがなかった。

工場の一番奥に、原材料に水を加えて混ぜるための巨大な機械が並んでいた。初めてトマト加工
工場を見たひとは、そこが生産ラインの始まりだと思うだろう。機械には、丸みを帯びた巨大な
タンクがついていた。人工衛星スプートニクのようなそのタンクには小窓がついており、原材料
の濃縮トマトがなめらかなベースト状になっていく様子が覗けるようになっている。これこそが、
あのIプール(球体)」と呼ばれる機械だ。パルマのトマト博物館で見た、19世紀の蒸発濃縮
装置の現代版だ。そしてここにある今の「プール」も、技術的にはむかしのものとほとんど変わ
らない。

わたしは先ほど見た光景を思いだした。確か、あの「プール」の奥には高いブロック塀が立ちは
だかっていた。そうだ、間違いない。あのブロック塀の向こう側に青いドラム缶があるはずだ。
方向的に考えて、プラスティック製カーテンの奥の部屋にちょうど位置している。
そこでは本当に、ドラム缶から濃縮トマトをポンプで汲み上げてIプール」に供給する作業をし
ていろのだろうか?本来ならそうであるはずだ。だが、もしかしたら別のことをしているのでは
ないか?だから、ブロック塀とカーテンで外から見えないようにしているのではないか? つい
先ほど、原材料を保管する倉庫を見学したとき、青いドラム缶の横に白い大きな袋が積まれてい
るのに気づいていた。「塩」と記されたものもあったが、何も書かれていない袋もあった。

これまで、中国のトマト加エメーカーについてのよくない噂を、あちこちで聞いていた。だから
こそ、マーにあの部屋へ入るなと言われたことで、疑惑がますます深まったのだ。なんとしても
あの部屋を見なくてはならない。どんな工程が隠されているのか、この目で確かめなくては,だ
が、いったいどうすればよいのだろう?
一時間後、同行したカメラマンのグザヴィエ・ドゥルーが、マーのポートレート動画を倉庫で撮
影することになった。わたしと共同で制作しているドキュメンタリー映画のためだ。マーはドゥ
ルーの指示にしたがって、並んだドラム缶の前を何度も行ったり来たりしている。わたしはその
様子を静かに見守っていた。そして、描のように様子をじっとうかがいながら、隙をみてこっそ
り抜けだそうと考えていた。

よし、今だ!わたしは倉庫をそっと抜けだした。梱包用のダンボール箱の前を通りすぎ、濡れた
床で滑らないよう気をつけながら、生産ラインの終点から始めまでダッシュで走りぬける。そし
て二分後、あのプラスティック製カーテンの前に到着した。カーテンの奥を覗きこむ。大きなタ
ンクとプラットホームが見える。視線を上げると、ブラットホームの左手に男の背中があった。
山積みにされた袋の奥で、タンクのほうを向いて立ち、白い粉がもうもうと舞い散るなかで何か
をしている。男が袋を取ろうとうしろを振りかえったときに目が合った。男はマスクをつけてい
た,
「ニイハオ!」
わたしは片手を上げ、中国語でそう挨拶をした。どういう反応をするだろう?すると相手は笑顔
で挨拶を返してくれた。よし、これなら大丈夫。わたしは階段でブラットホームに上り、男の隣
に立った。そしてもう一度挨拶をした。男はわたしが隣にやってきたのを喜んでいるように見え
た。目の前のタンクを覗きこむ。なるほど、これは撹拝機だ。袋のなかの白い粉をこの攬拝機に
入れるのが男の仕事なのだ。ここで原材料の濃縮トマトに何かが混ぜこまれ、水分が加えられ、
缶に詰められるのだろう。だが、缶のパッケージには「原材料-トマト塩」としか記載されない
のだ。   
                        
この白い粉はいったい何なのか?ブラットホームには三種類の袋が置かれていた。大豆食物繊維、
デンプン、デキストロース。デキストロースは、ダルコースやブドウ鯨とも呼ばれる糖類だ。白
い粉末状の結晶で、無臭で甘みがある。粒子が細かいので、食品に加えるととろみがついてなめ
らかになる。水に溶けやすいので、たとえば濃縮トマトに別のものを混ぜるときにつなぎとして
便うと便利だろう。

続けて、どこかから延びているチューブを通して、赤い液体がタンクに注ぎこまれた。希釈され
た濃縮トマトだ。わたしは携帯電話を取りだして、その様子を証拠として撮影した。攬桂機が動
きだし、白い粉が赤い液体と混ざりあって薄紅色のペースト状になっていく。

プラットホームから降りて撹件機のまわりを歩くと、今度は四人の作業員に出会った。分厚い千
ブロン、マスク、そしてゴム手袋を身につけている。彼らは何をしているのだろう?その背後に
は、二五リットルから30リットルくらいのタンクが20個ほど並べられていた。いずれも不透
明な液体が満杯に入っていて、不快な匂いを放っている。作業員たちはふたりがかりでそのタン
クを運んでいき、攬栓機につながっている機械のなかに中身を空けた。液体はニンジンのような
オレンジ色をしていた。間違いない、着色料だ。

倉庫へ戻ると、マーは拒変わらずカメラに向かって、ドラム缶の前を行ったり来たりしていた。
まるでランウェイを歩くフアッションモデルのようだ。よかった、どうやらわたしが姿を消した
ことには気づいていないらしい。

第5節
一時間後、わたしはマーのオフィスでインタビューを行なった。トマト缶の品質について質問を
すると、会社が授かったという表彰状や証明書を見せてくれた。「これは、IS022000認
証、食品安全了不ジメントシステム国際規格の認定証明書です。商品を輸出する会社は取得が義
務付けられています。そしてこちらは、IS09001認証、品質了萍ジメントシステム国際規
格の認定証明書です。これかおるから国内市場で販売ができるのです。どちらも食品を生産・販
売するには必要不可欠です。弊社ではそうした認証をすべて取得しています。また、天津におけ
る食品関連トッブ企業のひとつとして政府から顕彰もされています。中国税関の検験検疫局から
は信頼性が高い企業〃と格付けされています。過去10年間の弊社の成長の過程で、少しずつこ
うした評価をいただけるようになりました。大変誇りに思っています]

                   ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 

                                    この項つづく


  March 26, 2015

【史上最強吸引力コードレスクリーナ:パナソニック】

● 電気自動車技術開発の特徴がクリーナにも集約

いまや、4割以上の家庭で2台以上を所有すると言われる「掃除機」は、まさに成熟市場である。
実際、国内掃除機市場の年間出荷台数も、年々減少傾向にある。調査によると、2015年度には、
年間864万台だった国内の掃除機市場は、17年度実績で821万台に縮小。18年度も804万台に縮小
することが想定されている。だが、その中身を見ると、単に市場が縮小しているわけではないこ
とが分かる。これまで主流となっていたキャニスター掃除機が出荷台数を大幅に減少させる一方
で、ロボット掃除機やコードレススティック掃除機が出荷台数を伸ばす。15年度には150万台だ
ったスティック掃除機の出荷台数は、17年度には220万台に拡大。18年度は260万台に拡大予想。

 Jul. 20, 2018

こうした中、パナソニックが8月から発売する「POWER CORDLESS(パワーコードレス)。パ
ワーコードレスでは、「キャニスター掃除機と同等の約200Wの吸引力を実現。パンチコ玉を入れ
た7kgのペットボトルも吸い上げることができる。この高い吸引力を実現したのが、新開発のモ
ータ。業務用ロボット掃除機に採用した大口径モーターをベースに、日本電産との協業によって
開発、最大2万Pa(パスカル)の真空度と、業界最大風量となる1.3立方メートル/分を実現。
パナソニックのコードレスクリーナー史上、最高の吸引力を実現。搭載した大型高速ファンによ
り、最大風速約750km/時を実現。モーターに採用している❶マグネットの長さを従来比2倍
し、❷3層構造を採用で、損失を抑えトルクモーターを向上。❸ストレート排気構造の採用によ
りモーター内部の風損ロスを低減したという。一方で、運転時間の長時間化も図り、スティック
掃除機としては❹最大となる、8本のリチウムイオン電池を直列配置で搭載。これにより、高電
圧パワーを実現。電池への負担を抑え、最長で65分間の長時間運転を実現。❺だが、高い吸引
力と長時間運転を両立する上で、マイナス要素となったのが新開発のモーターと、リチウムイオ
ン電池の重量増だ。モータは、従来モデルに比べて約80gの重量増となり、リチウムイオン電
池は2本増やしたことで、約110gの重量増となっている。軽量化が重要な要素であるスティ
ックス掃除機にとってはマイナス。そこで、パナソニックは、本体部に、➏植物由来の素材であ
るセルロース・ファイバー樹脂を採用。ABS樹脂と比べても、同じ強度ながらも10%の軽量化
を実現。❼さらにノズル部には、耐衝撃性を保ちながら、樹脂使用量を抑え、軽量できる中空ガ
ラス配合軽量プラスチックを採用。加えて、本体裏側部分には、正六角形柱を隙間なく並べたハ
ニカム構造を採用して、強度を維持しながら軽量化を実現。本体重量を2.5kgに抑えた。

 


【変換効率30%超時代:論文公開で最高効率ペロブスカイト 23.3%】

● 情報源:中国科学院(下図参照)

  Jul. 9, 2018
  


 ● 今夜の一曲

ナオト・インティライミ『ハイビスカス/しおり』
作詞/作曲:ナオト・インティライミ、福島カツシゲ

明日 明日 この世界が 
終わるって わかってたとして 
なかなか 咲かないね  待ちぼうけ
oh-we-wo 冬が長かったから
まだまだ 足りないね 愛をくれ
oh-we-wo はぐらかしてばかり 
他力本願で  実に アンバランス
自力で咲こうとも 思わないまま
時計は進む 時はめぐるよ・・・・・・

ナオト・インティライミ(1979年08月15日 - )は、日本の男性シンガーソングライター、俳優。
本名は中村 直人(なかむら なおと)。所属芸能事務所は株式会社エンジン。所属レコード会社
はユニバーサルミュージックで、レーベルはユニバーサルシグマ。身長は172cm。血液型はA型。
公式ファンクラブは「FCインティライミ」。 7/10(火)の「ナオトの日」に20枚目の両A面シングル
「ハイビスカス/しおり」が発売。今作は両A面で、映画&ドラマ「覚悟はいいかそこの女子。」主題歌
「ハイビスカス」と、テレビ東京系 金曜8時のドラマ「執事 西園寺の名推理」主題歌「しおり」の豪
華タイアップ楽曲2曲を含む全6曲(インスト音源を含む)を収録。

 Jul. 21, 2018

● 今夜の寸評:村上春樹氏小説香港で「18禁止図書」指定

香港の司法当局は、村上春樹著の「騎士団長殺し」を18歳未満の青少年への販売を禁止。司法
局が内容を審査したところ、暴力や堕落、不快な表現など、公序良俗に反する出版物だと判断。
小説のどの部分が条例に抵触したのか、具体的には明らかにしていないが、ハード・スターリン
主義(=毛沢東義/アジア赤色専制主義)回帰か。法整備の近代化か。 

   ● 今夜の一枚                                                  

 

最新全固体型電池技術等々

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『六  韜』(ろくとう)
{虎の巻」ということばは、本書の「虎韜」が出典。太公望に仮託した後世の書。
『六韜』は、周建国の功労者・太公望呂尚が説いたという形になっており、まず、文王と彼との
出会いのエピソードから始まる。六篇から城るが、後半は無意味なものが多く、ここには三篇か
ら訳出する。

 Wikipedia

文王と太公望
ある日、文王は猟に出かけようと思い、史官の絹に占いをたてさせた。絹は占いの結果を報告し
て、「泗水の北岸に、大きな指物があります。この獲物は竜でも彲(ち:葳竜の一種)でもなく、
虎でも羆(ひ:熊の一種)でもありません。やがては大諸侯となる人物です。天がその人をあな
たの師としてつかわしたのです。かれはあなたを補佐して、三代にわたって仕えることになりま
しょう」「それほどの吉兆が出たのか」「かつて舜帝の御代に、わたくしの祖先にあたる疇(ち
ゅう)という史官が、占いを立てたことがあります。そのとき、舜帝は毀人皐陶を見出したので
す。このたびの占いにはそれにおとらぬ吉兆があらわれてい
ます」
そこで文王は出発を延期し、三日間潔斎したのち、猫車をととのえ、泗水の此岸に出かけた。は
たして、文王はそこで太公と出会った。太公は茅の茂みの中で釣糸をたれていた。「釣を楽しん
でおられますな」
文王がことばをかけると、大公はいった。
「君子の楽しみは理想の実現にあり、小人の楽しみは目先の仕事をなしとげることにある、とか
申しますが、わたしの釣は、君子の楽しみに近いといえましょう」
「ほう、どこが似ているのかな」
「釣には三つの秘訣があります。これは人材を得る方法と通じあいます。待遇をよくして人材を
招くのは、餌で魚を釣るのとおなじです。登用された臣下が生命を賭して穏くのは、釣りあげら
れた魚が死ぬのとおなじ道理です。能力に応じて人材を用いるのは、魚の大小によって扱い方が
あるのとおなじです。釣は、魚をとるのが目的ですが、その原理は深遠であり、より大きなこと
に活用できましょう」
「その原理というのを敢えてもらえまいか」
「水源が深ければ水は豊かに流れ、したがって魚も多く集まります。根が深く張れば本は大きく
成長し、したがって実もたくさん成ります。君子が心を一つにすれば力は何倍にもなり、したが
って大きな功績をあげることができます。あまりずけずけいってはお気にさわりましょうか。こ
とばやふるまいは人の心の現われ、自分の心をいつわらずに口にすることが大切だと思いますの
で」

「いや、仁者は直言をにくまぬというではないか。かまわぬからつづけてほしい」
「釣の場合、糸が細く、餌がはっきりみえれば、小魚がくいつきます。糸が中細で、餌のかおり
がよければ中くらいの魚がくいつきます。糸が大く、餌が大きければ、大魚がくいつきます。く
いつかせれば、糸でひきあげることができます。同様に人間も、俸禄という餌で従わせることが
できるのです。つまり、魚は餌で、そして人材は待遇によって集めることができるというわけで
す。大夫なみの待遇で国中に人材を求めれば、国を手に入れることができます。諸俣なみの待遇
で天下に人材を求めれば、天下を手にいれることができます。

それなのに、いかに人がむらがっていようとも、むなしくそれを去らせてしまう暗愚な君主もあ
ります。その一方、いかに暗愚であるかのように見えても、じつはその恩恵を遠くまで及ぼして
いる君主もあるのです。聖人の徳は知らず知らずのうちにあらわれるものです。聖人が政治を執
れば、いともたやすく人を掌握し、天下全体を支配することでしょう」

「どうすれば、天下を従えることができるのだろうか」

「天下は君主だけのものではありません。天下万民のものです。万民とともに天下の利を分かち
あう者は天下を従え、天下の利を独りじめにする者は天下を失うのです。天には四季があり、地
には万物を生みだす力があります。その恵みを万民と分かちあう者こそ仁といえます。仁のある
ところに、天下は従いましょう。人民をすべての困窮から救うのは、徳であります。徳のあると
ころに、天下は従いましょう。人民とともに憂え、ともに楽しみ、愛憎を同じくすることは、義
であります。義のあるところに、天下は従いましょう。人間は生を欲し、利益を求めるものです。
人民を生かし、これに利益を与えるのは、道であります。道のあるところに、天下は従いましょ
う」文王は太公に頭をさげていった。「あなたは真理を敢えてくれた。わたしは天の命令を率じ
て、あなたをむかえたいと思う」
そこで太公を車にのせて、いっしょに国都に帰り、師と仰いだのである。

〈文王〉紀元前十二世紀、殷を破って周を建国した武王の父。文王はおくり名で、姓は姫、名は
    昌。西方の有力な氏族をひきい、わが子の代に至って天下を得る基礎をきずいた。
〈太公〉元来は、父、または父の尊称。ここでいう「太公」は呂尚のこと。

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【最新全固体型蓄電池技術:米国特許篇】

今回は最新の米国特許開示例の4件をピックアップ。うち2件は、コーニング(Corning)社とク
ゥアンタムスペース(QuantumScape)社。残りは日本電気硝子とトヨタ自動車の日本企業。前者
2社は以下の通り(参考図は開示特許が入手できず、同社の既存開示特許のもの)で、

US 10,026,990 Lithium-ion conductive garnet and method of making membranes thereof(リチウムイオ
ン伝導性ガーネットおよびその膜の製造方法):式:Li 7-3yLa 3 Zr 2 Ga y O 12(式中、yは0.4~2.0
であり、本明細書で定義される)のガリウムドープガーネット組成物。 また、本明細書で定義
されるような2つの代替低温経路のうちの1つを含む高密度Liイオン伝導性立方ガーネット膜の
製造方法(下図参考)。


US 10,008,742 Garnet materials for Li secondary batteries and methods of making and using garnet materi-
als:Li二次電池のためのガーネット材料およびガーネット材料を製造および使用する方法:固体
電池用途における電解質および陰極としての使用に適した、ガーネット材料組成物、例えば、リ
チウム詰めガーネットおよびアルミナでドープされたリチウム詰めガーネット。また、内部に微
粒子を有するリチウムを詰めたガーネット薄膜も、すべての固体リチウム二次電池用の陰極液、
電解質および/または陽極液としてのリチウム充填ガーネットの製造と使用の新規発明の方法。
さらに、これらのガーネット陰極液、電解質および/またはアノードを組み込んだ新規な電気化
学デバイス、また、電気化学的装置の陰極液、電解液、および/または陽極液として使用するイ
オン導電性材料の高密度薄(<50μm)自立膜を含む新規な構造の調製方法、正または負の電極材
料)、または完全な固体状態の電気化学的エネルギー蓄積デバイスでも。さらには、記載方法は、
固体状態のエネルギー貯蔵装置とその構成要素の、例えば加熱および/または電界支援(FAST)
焼結の新規な焼結技術(下図参考)。
後者2社は以下の通り(参考図は開示特許が入手できず、同社の既存開示特許のもの)で、

US 10,020,508 Composite material as electrode for sodium ion batteries, production method therefor, and
all-solid-state sodium battery:ナトリウムイオン電池用電極としての複合材料、その製造方法、全
固体ナトリウム電池:ナトリウムイオン二次電池用電極としての複合材料は、活物質結晶と、ナ
トリウムイオン伝導性結晶と、非晶質相とを含む。 活物質結晶はNa、M(MはCr、Fe、Mn、Co、Ni
から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素)、P、Oを含む。

JP 2018-18578

US 10,008,735 Method of producing a sulfide solid electrolyte material, sulfide solid electrolyte material,
and lithium battery:硫化物固体電解質材料、硫化物固体電解質材料およびリチウム電池の製造方法
:硫化物固体電解質材料の製造方法は、第1のガラス化工程において、Li 2 Sと硫化物とを混合し
て得られる原料組成物をガラス化して、架橋硫黄を含有するが、Li 2 Sを含まない中間体を形成
する工程 第14族または第15族の元素の硫化物との合計に対するLi 2 Sの割合が、Li 2 Sの割合よ
りも少ない硫化物固体電解質材料がオルト組成物を得るために必要とされる。架橋硫黄の結合を
切断する結合切断化合物を中間体と混合により得られる中間含有組成物を第2のガラス化プロセ
スでガラス化することによって架橋硫黄を除去することを含む(下図参考)。

 2018.7.5

以上の4件を俯瞰し、リチウム系全固体型蓄電池の研究開発の進捗から、また、国内の物質材料
研究機構、産業総合研究機構、民間企業の研究開発は着実に進捗している。このことを踏まえて
ここ数年内には日本をトップランナーとした「高品位蓄電池事業化」が実現、エネルギーフリー
社会と持続可能社会の実現に大きく貢献していくものとと考えられる。

【エネルギー投資篇:電力、2年連続で化石燃料のエネルギー投資上回る】




 No. 16

【3次元プリンティング技術応用篇:人工歯(入れ歯)】

7月19日、産業技術総合研究所は、アイディエスと共同で、3Dプリンティング用コバルトクロ
ム合金粉末の薬事承認を取得し、破損しにくく患者に適した人工歯(入れ歯)を、3Dプリンティ
ングにより短時間で製造する手法を実用化したことを公表。


この技術は、まず口腔内のデータを取得し、歯科医師の指示に基づき患者に最適な形状の人工歯
を設計。そのデータに基づき、医療機器として厚生労働省に登録された3Dプリンターを用いて積
層造形し、表面仕上げの後、臨床使用する。積層造形材としてコバルトクロム(Co-Cr-Mo-W)合
金粉末を利用する。この素材の臨床使用のためには、歯科材料の医療機器として厚生労働大臣の
承認が必要であったため、薬事製造販売承認申請をアイディエスが担当し、産総研も協力、2018
年4月27日クラスⅡの医療機器として製造販売承認されていが、積層造形法では、従来の鋳造法
と比べ、ワックスなどの消耗品が不要で、材料の無駄も少ない。夜間に造形すれば次の日には仕
上げ加工でき、製造期間は3分の1以下に短縮できるという。また、今回のコバルトクロム合金粉
末を用いた積層造形材の金属組織は、透過電子顕微鏡を用いて観察すると、粒状のかなり微細な
組織となり、鍛造(鍛錬)材に見られる微細な鍛造組織と類似。

引張り試験を行った結果、積層造形方向を変えても影響は小さく、また歯科鋳造材と比べ、高い
強度と高い破断伸び(延性)を持つ。疲労試験の結果も、歯科鋳造材の200MPaに比べ、500MPa
と2倍以上高い。今後、この積層造形技術の保険適用を目指す。また、新たな材料であるコバル
トクロム(Co-28%Cr-6%Mo)合金の国産粉末での認可を目指し、敏感なアレルギー患者向けに、
チタン材料での人工歯の開発も目指す。以上、3次元プリンター技術の医療(再生医療)進歩へ
の貢献度は日々高まっている。これは面白い。




【次世代がん治療篇:組織表面に貼る発光デバイス】

7月17日、早稲田大学らの研究グループは、光がん治療において、患者への負担が少なく、高
い治療効果が得られる無線給電式発光デバイスを開発したことを公表。それによると、光でがん
を治療する光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)は、生体に投与した光増感剤が集まった病巣
へ光を照射し、光化学反応によって発生する活性酸素で、がんの細胞死を誘導する方法。特に、出力が
従来の1000分の1といった極めて弱い光源を用いたメトロノミックPDT(mPDT)法は、肝臓など体内深部
の臓器にできた腫瘍直下に発光デバイスを貼り付け、LEDを点灯させることでがん治療ができ、次世代
の治療法として期待されているが、腫瘍と光源の位置ずれなどが生じると、十分な治療効果が得られな
いという課題があった。



このため、長期間安定して固定できる体内埋め込み型発光デバイスを開発。mPDAへの応用を目
的としており、シールのように臓器や組織表面に貼り付けるだけで位置ずれを防ぐことができる。
開発発光デバイスは、膜厚が約600nmのシリコンゴム薄膜表面に、生体模倣型接着分子であるポ
リドーパミン(PDA:Polydopamine)をコーティングした。これにより、生体組織への接着性を
従来の約25倍に向上させた。発光デバイスを縫合しなくても、最低2週間は生体組織上に固定
させることが可能となる。発光デバイスは、NFC(Near Field Communication)方式の近距離無線
通信に対応するLEDチップ(赤色と緑色)が組み込まれており、接着性を向上させたことで腫瘍
部と光源のずれを防ぐことができた。

今回の実験では、担がんモデルマウスの皮下に無線発光デバイスを貼り付けて固定した。マウス
に光増感剤「フォトフリン」を注射した後、マウス飼育箱の下に設置された無線給電用アンテナ
から、マウスに組み込まれたLEDに給電して10日間連続的に点灯させた。この結果、光照射によ
る治療によって腫瘍が明らかに縮退した。また、従来のPDTでは近赤外光を用いるが、今回の
mPDTでは緑色の光で完全に腫瘍を消失させることに成功する。

 ● 今夜のアラカルト

『鴨だしせいろ蕎麦』

この暑さもあり、作業はますます掃けず、ランチ抜きがつづくが、ふと、そのことに気づき、イ
ンスタント「鴨だし蕎麦」を蒸籠蕎麦にて食べてみようチャレンジ。いける。これに鴨ロースト
があれば写真のようになるのだから、恐るべし日本の即席製麺技術。これ専用の鴨ローストを開
発すればいける(千成の通販でもいいか?!)

● 今夜の寸評:相撲も百分の一秒時代

おめでとう!御嶽海。それにしても豪栄道戦は見事だった。両者互角の記録的なゲームとなって
いる。心技一体の百分の一秒(桁)の反応(超意識下)が明暗をわけたと思っている。これを総
合スポーツ科学で分析すれば「相撲革命」となるだろう。

 

建材一体型太陽光発電革命

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『六  韜』(ろくとう)
{虎の巻」ということばは、本書の「虎韜」が出典。太公望に仮託した後世の書。
『六韜』は、周建国の功労者・太公望呂尚が説いたという形になっており、まず、文王と彼との
出会いのエピソードから始まる。六篇から城るが、後半は無意味なものが多く、ここには三篇か
ら訳出する。

 Wikipedia

武力によらず敵を撃つ法
武力によらず敵を征服する十二の方法。

一、相手の欲心を買うことにつとめ、さからったりしないこと。こうすれば、敵は慢心し、必ず
  失策を犯すであろう。それに銀ずれば、相手を滅亡に追いやることができる。
二、敵国の君主の信頼する臣下に近づいて、君主と対立させること。臣下が子oを抱くようにな
  れば敵国は衰える。忠臣がいなければ国家は危機におちいるものだ。
三、買収工作によって敵国の側近を掌握すること。側近とは名ばかりで心はすでに離反している。
 こうなれば、敵国には、きっと混乱が生ずる。
四、敵の君主を遊興にふけらせること。宝物や美女を贈った上で、こちらが下手に出れば、戦う
  までもなく、敵はゆきつくところにゆくだろう。
五、敵の忠臣を君主から引き離すこと。まず、この臣下と君主の双方に贈りものをする。この場
  合臣下の方に高価なものを贈ることだ。そして、もしこの臣下が使者としてきたときは、わざ
  と交渉を長びかせて、交代の使者をさしむけるようにさせる。交代の使者がきたら、友好的態
  度をとって交渉を成立させる。敵の君主は、前の使者よりもこの使者の方を信頼するようにな
  るだろう。こうして、敵国を謀賠にかけることができる。
六、敵国の臣下を懐柔して利用すること。有能な臣下が外国に協力し、内乱がおきるようになれ
  ば、ほとんどの国は滅亡するであろう。
七、敵の君主をツンボ桟敷に置くこと。ワイロを贈って側近の心を収批し、農業生産を低下させ、
  穀物の貯えをからにするのである。
八、相手を信頼させること。まず贈りものをして、相談をもちかけ、その結果が相手の利益にな
  るようにする。そうなれば相手はきっと信頼する。この友好関係かつみ重なれば、いつかは利
 用できる。一国の君主でありながら、他国に利用されるような相手は、かならず国を失うであ
 ろう。
九、おせじをいっておだてること。相手を強いといってこわがってみせれば相手はその気になる
 だろう。こうしておいて、相手の君主に、あなたは聖人だとほのめかせば、きっと増長して政
 治をおろそかにするだろう。
十、誠意をもって相手に仕えること。相手の気にいるようにして、何から伺まで相手のいうまま
 になり、To同体と思わせる。こうして、十分信頼を得たならば、ひそかに準備をすすめる。
 好機を持って攻撃をかければ相手はいともたやすく滅びるであろう。
十ベ敵の君主を孤立させること。それには敵国内に徒党をつくらせることだ。すなわち、臣下と
 いうものは、富貴を願い、失敗をおそれる。これを利用し、高位を約束し高価な贈り物をして
 有能な臣下を懐柔する。また、わが方は、国内に十分物資を貯えながら、相手には貧乏国と思
 わせる。そして、敵国内に策士、勇士をおくりこみ、内部からこちらを軽視する気持をおこさ
 せる。たらいをつけた敵臣の富貴への欲求がみたされ、ふところもあたたかいとなれば、徒党
 づくりは成功である。君主がこの孤立状態の中で、国を持続でふるはずがない。
十二、あらゆる方法で敵の君主を惑わすこと。敵臣が君主にそむくようしかけるのもよい。美女
 や軽薄な音楽をすすめるのもよい。名犬や良馬を贈って狩猟に熱中させるのもよい。こうして
、機会があれば情勢有利とみせかけて挑発し、天の時を副察して孤立化においこむ。

以上の十二ヵ条を用意したのちに、はじめて武力にうったえる。すなわち、天の時、地の利を見
極め、敵が滅亡する徴候が現われたのちに、はじめて攻聯するのである。(武韜)

 



【ソーラータイル事業篇:建材一体型太陽電池でエネルギー革命を】

7月25日、建材一体型太陽光発電(BIPV:Building-integrated photovoltaics)分野をリーするヘリ
オス新能源科技有限公司(Helios New Energy Technology:ヘリオス・ニュー・エネルギー・テク
ノロジー)に同社の戦略などを日経BP総研のクリーンテックラボがインタービューを行った。ブ
ログでもいち早く「オールソーラーシステム」「エネルギータイリング事業」として独自の視点
から事業構想を展開していることもありその展望と課題について考察する。



● 建材一体型太陽光発電事業展望 

18年5月、米カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)は、全会一致で新しい建築物に太陽
光発電の設置を義務化する規制を全米初で採択。この基準では、同州の戸建て住宅やアパートな
どの新築住宅には、太陽光パネルの設置を義務するもので20年に実施予定にある。このような
い流れは、各国に広がっていき、建築物の構造体から最大限にエネルギーを獲得し、電力系統へ
の依存を最小化するBIPVは、スマートな建物の主流となり、エネルギー革命を担う可能性がある。
従来の大規模集中型の系統システムと統合されつつ、やがて主役になるとヘリオス新能源科技社
は見ている。
尚、ヘリオス・ニュー・エネルギーは、上海本社を持つエンジニアリング会社・中建凱徳(China
Construction KIDE)の系列企業で、3年前からBIPV研究開発に取組開始。米シリコンバレーの研
究チームなどが製品化し販売開始、昨年の約500メガワット製造能力を今年中に2倍の1ギガ
ワットに増産。16年10月に米Tesla Solar Cityが、屋根瓦を模したBIPVの新製品を公表、世界的
に注目されました。その後、カリフォルニア州で、新築建物への太陽光の搭載が義務化されたこ
ともあり、追い風になる。



● 屋根上太陽光が伸び悩んだ理由

太陽電池モジュールを建物に設置する場合、部分的に影のかかるケースが多いことや、間近に日
常的に人が活動していること、限られたスペースでの施工になることなど、野立て設置の太陽光
とは異なった設置環境への対応が必要となる。また、従来の太陽電池モジュール構造は、日影な
どで「ホットスポット」が生じて焼損を引き起こす可能性や、PID(potential-induced degradation)
による出力低下、高電圧によるアーク(火花)が火災の原因になる可能性がある。これらの不具
合リスクが高まる背景に、セルを直列接続して構成するモジュール設計と、さらにモジュールを
10枚以上に直列接続したストリング回路構成がある。数百Vや1000V、1500Vという直流高電圧が
人間の生活空間に近い場所にあることは、安全上の脅威となる。アークによる火災に加え、ホッ
トスポットやPIDのリスクを高める。現在の太陽電池モジュール製品は、裏面カバーは有機材料の
バックシートで、建材条件の難燃性をクリアできないし、一定レベルの耐風圧の強度確保しているが、パ
ネルの上に人が乗って作業することまで想定されていない。有機材料のバックシート採用モジュールは、
屋根上の高温高湿環境の下では、野立て太陽光に比べ劣化が早くなる問題がある。つまり、BAPVとし
て建物に設置しても、不具合や火災リスクを高め、建材としての採用されるBIPVの場合、安全性
や耐久性に関し、建材としての基準のクリアが前提となる。

 Wikipedia

● パネル上に載って作業/ワット単価約49円を実現

セルとモジュールの回路構成は、並列接続を多用することで、直流側の電圧は48Vという相対的
に低電圧。その結果、安全性が増し、ホットスポットやPIDのリスク低減。パワーエレクロクス
は、自動車グレードを採用し、高水準の信頼性と耐久性を確保。直流電圧48Vで運用モジュール
基板材料は、従来の有機材料やガラスでなく、耐候性の高いアルミニウム材か亜鉛めっき鋼板を
使用、鋼材基板とし、結晶シリコンセルをネット(網)構造の配線技術で直列・並列につなぎ、
薄型の高強度ガラスでカバーし、特殊な封止・包装技術でパッケージング。これにより、従来の
有機材料やEVAに比べ耐熱性・耐水性を大幅改善し、長寿命化と高耐荷重性を実現(70kg/m2の
荷重に耐えられる)。同社は、このよう安全性が高く、低コストのBIPVが建築物や施設で当たり
前に普及していけば、電力系統への依存は大きく低下、新たなエネルギーシステムに移行すると
想定している。



 

第13章 天津のトマト缶工場の秘密
中国、天津
第6節

日没後、会社代表のチャンと工場長のマーが、わたしたちを食事に招いてくれた。工場に併設さ
れたその建物のファサードには「研究開発部」と金文字で記されていた。だが「研究室」も「開
発案」もあるはずはなく、看板は無意味に見えた。この工場では、濃縮トマトを希釈し、添加物
を加え、小さな缶に詰めかえているだけなのだから。そうして完成した缶詰は、いずれも高々と
積み上げられ、コンテナに無理やり詰めこまれ、船に乗せられて数週間の長い旅に出る。なかに
は、乱暴に取りあつかわれてつぶれた缶詰もあるだろう。缶の蓋に傷がつき、隙間から空気が入
ったかもしれない。コンテナの高温、長期の船旅、港からの輸送などのせいで、膨張したり破裂
したりするものもあるだろう。

大きなホールに入ると、ふたりの女性がテーブルセッティングと給仕をしていた。ふたりとも顔
色が悪くて、疲れきっているように見える。ホールと厨房を何度も往復し、次々と料理を運んで
いた。チャンが「食事前にどうぞ」と、ドイツビールの大聯を運んできた。きっとドイツのクラ
イアントから贈られたものだろう。工場で作られたという缶入りトマトジュースも勧められた。
缶の七に一国境はない」という文字が書かれている。わたしはジュースをグラスに注ぎ、色と濃
さを確かめた。茶色くてだまができており、表面に透明の水の層が浮いたひどい代物だった。ま
だ一口も飲んでいないが、この「ジュース」と言われるものが3倍濃縮トマト希釈していること
は一目瞭然だった。
本来のトマトジュースは、水分と固形分の比率が生のトマトと同じであるはずだ。飲み物にする
ために生のトマトを圧搾しただけで、濃縮もされず、何も添加されない。3倍濃縮トマトからト
マトジュースを作るなんて考えられない。 
それに、品質のよい濃縮トマトはこんなにくすんだ色はしていない。もっと澄んだ赤色をしてい
る。おそらくこの「ジュース」に使われた濃縮トマトは、新疆ウイグル自治区の生産工場で「焼
けて」しまったのだろう。濃縮加工する際に加熱しすぎてトマトが焦げると、茶色く変色し、新
鮮さを失ってしまう。だからこれもこんなふうに黒っぽい色をしているのだ。もっとも、加工時
に「焼けて一いなくても、数年前に作られて消費期限切れになった濃縮トマトもこんなふうに黒
ずんでしまうものだが………その可能性もゼロとは言えない。

わたしたちは、加エトマト産業のために乾杯をした。思ったとおり、ひどい味だ。
「弊社のトマトジュースのお味はいかがですか?」と、チャンが尋ねる。わたしは飲みこむ決心
がなかなかつかなかった。しばらく口のなかに含んでいたが、やがて観念して飲みほした。
「すばらしいです」と、わたしは親指を立てるジェスチャーをしながら言った。
「そうですか、お気に召してうれしいです。もうすぐトマトジュースの輸出も始める予定なんで
すよ」



第14章 トマト31パーセントに添加物69パーセントのトマト缶
第1節 フランス、ヴィルバント。国際食品見本市
この見本市のスローガンは「世界中の人々が出会う場所」だ。本年度はとくに「フードビジネス
に活気を与えよう」というテーマが掲げられている。
2016年10月、世界のアグリビジネスの祭典、国際食品目`本市のシアル・パリにやってき
た。近代的に整備された街並みを通りぬけ、ヴィルパント国際展示場へ向かう。人口には長蛇の
列ができている。スーツを着た男性の姿が多い。聞こえてくる言語はさまざまだ。15万500
0人の来場者のうち、70パーセントは外国人だという。194の国々からこのパリ郊外の町に
集まってきたのだ。

入場証を受けとって会場に入る。大きな建物のなかに、7000に及ぶブースがずらりと並んで
いる。まるで巨大な蜂の巣のようだ。シアルは世界最大の食品産業展示会だ。出展しているメー
カーの40パーセントは一中間加工品」を取りあつかっている。中間加工品とは、加工途中の未
完成のまま販売される商品で、いわゆる一半製品」のことだ。近年、中間加工品分野は急速に成
長しつつある。カット済み肉、小麦粉、香料、着色料、保存料、そして濃縮トマトなどが代衣帯
だ。食品業界では、消費者の知らないところで、さ束ざまな中間加工品が生産され取引されてい
る。その名称は、最終製品のパッケージにちっぽけな文字で記される。現在、世界の中間加工品
の売上高はおよそ1兆ドルで、これは食品業界全体の25パーセントに相当する。

隔年で開催されるシアルには、毎回、世界中からアグリビジネス業界のあらゆる分野の人たちが
やってくる。出展者には、南イタリアをはじめとする、ヨーロッパの大手缶詰メーカーもいる。
濃縮トマトを取りあつかう大手商社、ドラム缶入り濃縮トマトを生産している新疆ウイグル自治
区のメーカー、そうした濃縮トマトを原材料にしている中国のトマト缶メーカーも、新たな販路
を開拓するために出展している。
シアルは、アフリカで食品ビジネスを展開する足がかりとしてもよく知られている。中国のトマ
ト缶メーカーにとっては、販売額を拡大できるまたとないチャンスだ。そしてわたしにとっては
中国のトマト缶メーカーの販売戦略を知るまたとないチャンスになった。

 Apr. 4, 2016

第2節
わたしは天津金土地食品で、安価な添加物を濃縮トマトに混入させる現場を発見した。業界通に
よると、中国でこんなことはふつうに行なわれているという。だがわたしは、こうした行為がど
の程度広まっているのか、自分の目で確かめてみたかった。シァルは絶好の機会だ。あらゆる中
国の大手缶詰メーカーがここにブースを出している。ウルグアイ入の商社代表、ファン・ホセ・
ァメザガはこう言う。

「中国人はみんなシアルに集まるよ。アフリカのスーバーチェーンや商社といった流通業者は
たいていこのイベントにやってくるからね。アフリカのァグリビジネス市場を狙うなら、シアル
は必ず出展すべきところなんだ」

ここでのわたしの目的はごくシンブルだ。中国の缶詰メーカーのブースヘ行き、アフリカ市場に
対してどういう販売戦略を行なっているかを調べる。だがそのためには、ブースにいる営業担当
者に話を間かなくてはならない。しかし、ジャーナリストに対して会社の秘密を正直に打ち明け
る従業員などいないだろう[1]。アフリカに輸出するトマト缶に濃縮トマト以外のものを混ぜ
ていると率直に告白する者や、法律や規則を違反していると白状する者がいるとは考えられない。
ということは、正体を偽ってアブローチするしかない。
そこでわたしは、中国の缶詰メーカーのブースをひとつずつ訪れ、丸二日間練習したセリフをそ
れぞれに投げかけることにした。目当てのブースは、会場マップにあらかじめ○印をつけておき
、話が聞ければ×印をつけた。作戦は成功し、結果はすぐに現れた。マップはどんどん×印で埋
め尽くされ、パンフレットとサンブルが手元にみるみる増えていった。

[1]Emma Slawinski,Exporters denoullce  substandard Chinese canned tomated paste, FoodNews, 6 juillet 2012,


第3節
「こちらではトマトペースト缶が専門なのですね。じつはわたしの一族は祖父の代からガボン共
和国で会社を経営してましてね。いろいろなことをしていますが、缶詰の輸出入がメインなんで
す。今後はぜひトマトペースト缶も扱いたいと思ってるんですよ。シアルに来たのは、トマトペ
ースト缶の取引について詳しく知りたかったのと、できればいい取引相手が見つからないかと思
って。こちらは中国のどこにある会社ですか?どういう商品があるのですか?」
とりあえずこう言っておけば、あとは勝手にしやべってくれるので、こちらはそれをふむふむと
間いていればよかった。

「弊社では、お客さまのニーズに合わせてさまざまなクオリティの商品をご提供していますI
たいていの会社は、最初にこう切りだした。中国の缶詰メーカーの価格表は、いずれも商品のク
オリティによってABC順にランク分けされている。だが、話を少し間いただけで、その「クオ
リティコの意味がちょっと特殊であることがわかった。缶詰に詰められている濃縮トマトの「品
質」ではなく、缶詰に詰められる濃縮トマトの「割§」を指しているのだ。Aランクとは濃縮ト
マトをもっとも多く含む缶詰のことだ。だがそれがどの程度の「割合」かは、会社によって違う
ようだ。そして、B、Cと下がるにつれて、その「割合」は低くなっていく。

今回、15の会社から話を聞くことができた。いずれも、アフリカに多くのトマトベースト缶を
輸出している缶詰メーカーばかりだ。だが、添加物をいっさい加えていない、100パーセント
濃縮トマトだけを詰めた缶詰を輸出している会社は皆無だった。ラベルに添加物の記載がなけれ
ばこれは不正行為に当たる。少なくとも、わたしがシアルの会場でもらったサンプルには、いず
れも記載がなかった。中国の主要缶詰メーカーではどうやらこれが通例になっているようだ。

各ブースの営業担当者の態度はまちまちだった。自分たちがしていることを正直に話してくれた
担当者もいた.わたしが新規のクライアントになってくれると期待したのだろう、その手口のコ
ツを詳しく教えてくれさえもした。またある者は、恐ろしいほどの校揖さでわたしをだまそうと
した。何も知らないふりをして近づいていったので、暴利をむさぼれると思ったのだ
ろう
だがわたしは、逆にそういう態度を利用することで相手を質問攻めにして困らせた。最終的には
営業担当者が商品をアピールするとき、濃縮トマトの割かのランクによって勧めかたが異なるこ
とを見破った。

Dランク――「この缶詰にはイタリアの国旗が描かれているんです。イタリアはトマトの国です
からね」
Cランク――「これはアフリカ市場で流通している商品のなかで、もっとも良質なもののひとつ
です。味見をされますか?」
Bランク――「(缶詰を開けながら)ごらんください、きれいな邑のトマトペーストでしょう?
(実際はくすんだ色) アフリカですごく人気のある商品なんですよ」
Aランク――デンブンと大豆食物繊維だけで、違法な添加物は何も入ってません。確かに ラベ
ルには何も書いていませんね。たいしたことじやありませんよ。みんなやってることですから」

Dランクはパッケージ、Cランクは昧、Bランクは色がそれぞれセールスポイントにされていた
。どういうわけか、Aランクを勧める営業担当者がいちばん正直だった。

「デンプンを入れてほしいという要望もあれば、大豆食物繊維やニンジンパウダーのほうが好き
だという燭台もありますよ。弊社では、アフリカの消費者の好みに台わせた商品をご提供できま
す」

取引の進めかたについてあらかじめ念を押す者もいた。
「新規契約者には、Aランクの商品しかご提供しません。まずはそれで取引がうまくいきそうか
どうかを判断します。仮に、もしコンテナ数台分しか注文していただけないなら、それより条件
のよい商品のご提供はできかねます。逆に、たくさん注文していただけて、互いに信頼関係を築
くことができたら、もっと安く提供できるようこちらも努力します。たとえば、デンプンを混ぜ
たりして」かと思えば、もっと現実的な営業担当者もいた。

「Aランクのサンプルが欲しいだって?ガボン共和国にはダメだ。あげても無駄だからね。ほら
こっちを持っていきな」(と、カウンターの上に缶詰を放り投げる)。そうだよ、一番安いやつ
だ。ガボン共和国ならこっちじゃないと」
わたしはそれでも、Aランクのサンプルが欲しいと何度も頼んだのだが、「いや、ガボン共和国
にはダメだ」と、最後まで突っぱねられた。

第4節
Aランクのトマトペースト缶の「クオリティ」がもっとも高いというのは本当らしいが、いっさ
い添加物を加えていないと言う営業担当者はひとりもいなかった。
「広州港は、天津や上海より税関審査が厳しいんですよ」と、広州近郊の会社の営業担当者が言
った。
そのため、この会社のトマトペースト缶には、デンプンが58パ-セントしか含まれていないと
いう。本当だろうか?それとも単なる営業トーク?本人は優秀な営業員を自称していたが。もら
ったパンフレットには、中国語、英語、アラビア語、そして間違いだらけのフランス語で、商品
説明が書かれていた。年間30億個以上のトマト缶が生産され、原材料のトマトは汚染されてい
ない農園で栽培されているという。

「弊社は、原材料を選ぶところから完成品ができあがるまで、一貫して厳しい管理体制の下で生
産をしている、中国南部唯一の缶詰メーカーです」
この文章は読んだことがある。天津からほど近い河北省にある缶詰メーカーのバンフレットにそ
っくりだ。真似をしていると思うのは考えすぎだろうか?だが、あちらの文章のほうがもっとず
っと詩的だった。
「弊社の商品には、新疆ウイグル自治区の美しく豊かな自然で育ったトマトが使用されています。
土壌はまったく汚染されておらず、大地には雪解け水が流れ、一日の終わりには素晴らしい夕日
が見られます」。このメーカーの缶詰の原材料表記には「トマト、塩」しか書かれていない。だ
が、営業担当者は嘘がつけないタイプなのだろう、その缶詰を差しだしながらこう言った。

「うちの缶詰はりーズナブルですよ。濃縮トマトが45パーセントしか入ってませんからね。ア
フリカの市場ではごく平均的な割合です」

第5節
濃縮トマトが45パーセントで、添加物が55パーセント………ガーナでリウ将官から話を間い
た缶詰は濃縮トマトが31パーセントで、添加物が69パーセントだったが、それについては後
述する。いずれにしても、何百万個という中国産トマトペースト缶には、原材料表記に一トマト、
塩」しか書かれていないが、実際はトマトは半分以下しか含まれていないのだ。
各ブースでサンプルをもらって立ち去るたび、缶詰のひんやりした固さを手のひらに感じながら、
わたしはとまどいと後味の悪さのようなものをかみしめていた。これほどまでに広まってしまっ
たなら、これはもはやトマトペーストの「偽造品」というより、「本物」のトマトペーストとい
うことになるのではないか?

たった数年間でこうした不正行為が、アフリカ大陸に、いや少なくともアフリカ南部のサブサハ
ラ地域に広まったのは、いったいどうしてか。
中国の各メーカーのパンフレットには世界地図が掲載され、自社製品が流通している国に赤いマ
ークが記されている。それを見ても、アフリカ諸国はずぼぬけて多い。
濃縮トマトの一連の取材において、わたしはまずは中国へ行って工場を目`てまわり、それから
フランスの食品見本市、シアル・パリで商社の人間を装って中国のさまざまな缶詰メーカ-に話
を聞いた。その結果、トマトペースト缶に関する不正行為がとてつもなく大規模である
ことがわかった。しかも、過去に一度も捜査のメスが入っていないのだ。現在、アフリカの何億
人もが、真実を知らないままこうした缶詰を消費している。

複数の業界通によると、中国当局もこの不正を知ってはいるか、自国の缶詰メーカーの「競争力」
を守るために目をつぶっているという。だが、これではまるで19世紀のようではないか?当時
はまだ世界中どこでも食品衛生法が確立していなかったので、缶詰で食中毒にかかる人も少なく
なかった。シアルで会った中国の缶詰メーカーの営業拒当者たちは、缶詰に入れられているもの
に毒性はないと主張していた。だが、ナイジェリアの不正行為取締局の調査によると、ここ数年
アフリカで流通しているトマトペースト缶から有毒物質が検出されている。
 
                   ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 

さて、検出された有毒物とは何か?ならば、アフリカでなどの関連国での中国産トマト缶ボイコ
ットの動きはどうなっているのか? 次回以降へ疑問は持ち越される。

                                    この項つづく

 

 Jul. 25, 2018 6:00 am
● Greece wildfires
At least 74 dead as blazes rage in holiday resorts near Athens

嘘が世界を半周したころ、真実はまだズボンを履こうとしている。
A lie gets halfway around the world before the truth has a chance to get its pants on.

                                                                         Winston Churchill (ウィンストン・チャーチル)

【再挑戦:五坐踏破計画 2018】

 ● 焼岳へGO!





7月28、29日のどちらか天気次第で実行。

● 今夜の一曲

Al Di La - Ray Charles Singers & Connie Francis (恋愛専科 / Rome Adventure)

 

痛む全身労り眠る

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 『六  韜』(ろくとう)
{虎の巻」ということばは、本書の「虎韜」が出典。太公望に仮託した後世の書。
『六韜』は、周建国の功労者・太公望呂尚が説いたという形になっており、まず、文王と彼との
出会いのエピソードから始まる。六篇から城るが、後半は無意味なものが多く、ここには三篇か
ら訳出する。

 Wikipedia

人の内心を見破る法
外から見ただけでは人の本心はわからない。それを見破るには、八つの徴候をとらえることだ。
一、質問してみて、どの程度理解しているかを観察する。
二、追及してみて、とっさの反応を観察する。
三、問者をさしかけて内通を誘い、その誠実さを観察する。
四、秘密を打ち明けて、その人徳を観察する。
五、財政を扱わせて、正直かどうかを観察する。
六、女を近づけてみて、人物の堅さを観察する。
七、困難な仕事を与えてみて、勇気があるかどうかを観察する。
八、酒に酔わせてみて、その態度を観察する。

以上、八つの徴候を端察してみれば、有能な人材をふるいわけることができる。(竜韜)

全軍を奮起させるには
「全軍の兵士が、攻城にさいしては先を争ってよじ登り、野戦にさいしては先を争って進み、退
却を令ぜられれば憤激し、進撃を兪ぜられれば勇みたつ。このように戦わせたいものだが、どう
すればそうなるだろうか」低圧の問に太公はこたえた。「将が勝利をもたらす条件は三つありま
す」
「というのは?」
「将が、礼を心得ること、骨おしみしないこと、欲望をおさえることであります。
礼を心得た将とは、冬は暖かいかわごろもなど着ずに兵士と寒さを共にし、夏は扇を使わずに兵
士と暑さをともにし、雨が降れば兵士と共に濡れるような人物です。このように自らを規制しな
ければ、部下のおかれている現送を知ることができません。

骨おしみしない将とは、けわしい地形や泥道を行軍するとき、軍からおりて歩くような人物です。
骨おしみするようでは、部下の労苦を知ることができません。
欲望をおさえる将とは、全軍の宿舎が決まったあとで宿舎に入り、全員の食事が用意されたのち
に食事し、火が使えぬため部下が火の通ったものを食べられないときは、自分も口にしない。こ
ういう人物のことです。将が欲望をおさえなければ、部下の腹具合を知ることができません。
将たる者が部下の士卒と、暑さ寒さを共にし、労苦をともにし、腹をへらすも高股するも一緒と
いことになってこそ、全軍が、進撃の合図をきけば喜び勇み、退却の合図をきけば憤激するので
す。城が高く帽が深く、矢や石が雨のように降ってこようとも先を争ってよじ登り、収り合いに
なれば先を争ってかかってゆくのです。
士は何も好きで死ぬのではありません。喜んで負傷するのではありません。将たる昔が、部下の
状態をつぶさに知り、その労苦を十分に体得しているからこそ、そうさせることができるのです」
(竜脳)

 土用しじみは腹ぐすり

【上の句トレッキング:痛む全身労り眠る】


壊れたる翅をべッドに整えて痛む全身労り眠る

雨上がりの朝には翼も掻もなし背に確かなる空飛ぶ記憶


相沢光恵『空飛ぶ記憶』(歌壇、2018年07月号より)


【次世代太陽電池市場篇:30年3433億円】

7月24日、富士経済は、17年の既存太陽電池(単結晶シリコン、多結晶シリコン、薄膜シリコ
ン、CIG、CIS、CdTe)の世界市場は5兆7830億円だったのに対し、新型・次世代太陽電池(フレキ
シブル結晶シリコン、フレキシブルGaAs、ペロブスカイト、色素増感、有機薄膜)市場は3億円
だと公表。18年の新型・次世代太陽電池市場は15億円の見込み。30年には17年比811
倍の2433億円に拡大すると予測。今後、既存太陽電池の置き換えが実現すれば、巨大市場を
形成する可能性があり、既に商用化されている色素増感太陽電池(DSC)と有機薄膜太陽電池
(OPV)では、室内光利用といった新たな用途開拓も進んでいる。その一方で、既存太陽電池の
販売価格は数10円/ワット台と新型・次世代と比べて大幅に安価であり、現状の価格競争力では
新型・次世代が早急に主流になる可能性は低く、まずは既存太陽電池と競合しない IoT機器・無
線センサーの電源や、ZEB/ZEH実現に寄与するBIPV(建材一体型太陽電池)といった用途から市
場形成が進むと予測している。



【ソーラータイル事業篇:自己蓄電型薄膜太陽電池技術事例】

昨年7月14日、華中大学らの研究グループは、東京大学らの研究グループが色素増感型蓄電融合太
陽電池の開発に続く、ペロブスカイト型を試作したと公表している(下図参考)。



グリーン電力需要の増加とエレクトロニクス産業における小型化と多機能化の傾向により、光起
電部品とエネルギー貯蔵部品の両方を統合したパワーパックは、科学的かつ技術的にされてきた
が、ペロブスカイト型太陽電池とパワーパック用固体スーパーキャパシタの新規な集積を実証。
光電変換とエネルギー貯蔵をハイブリッド化――炭素電極をベースにしたスーパーキャパシタ―
と一体化。パワーパックは、スーパーキャパシタが0.071平方センチメートルの活性領域を有するAM
1.5G白色光照射下でペロブスカイト太陽電池で充電され、76%のエネルギー貯蔵割合と5.26%の
全体的変換効率に達すると0.84Vの電圧出力。 スーパーキャパシタを1.0Vでプリチャージし、ペ
ロブスカイト型太陽電池とスーパーキャパシタの直列接続で22.9%の瞬間総合出力効率を達成、

今年4月25日、カルフォルニア大学らの研究グループは、ナノワイヤシリコン・有機ハイブリ
ッド系自己充電型太陽電池を試作実証したことを公表(下図参考)。



それによると、シリコンナノワイヤーアレイ/導電性ポリマーハイブリッド太陽電池とレーザース
クライブグラフェンスーパーキャパシターのモノリシック集積化自己充電パワーパック――シリ
コンナノワイヤーアレイ/ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート
(PEDOT:PSS)ハイブリッド太陽電池とレーザースクライブグラフェン(LSG)スーパーキャパシ
ターからなる新しい自己充電パワーパックを作製。 Siナノワイヤアレイ/ PEDOT:PSSハイブリッド太
陽電池構造は、12.37%の高い電力変換効率(PCE)を示し、LSGは、活性炭や導電性ポリマーな
どの他のスーパーキャパシタの電極と比較して、高い電流密度、エネルギー密度と周期的安定性
を保持、優れたエネルギー貯蔵能力――パワーユニットの総合効率が2.92%を実証に成功する。

 

  
第14章 トマト31パーセントに添加物69パーセントのトマト缶
第6節 フランス、ヴィルバント。国際食品見本市第
ウルグアイで商社を経営し、加工トマト業界に詳しいファン・ホセ・ァメザガは、こう言った。
「アフリカでは、大豆食物繊維、ニンジンパウダー、デンブン、デキストロース、着色料、その
池わけのわからない添加物が入ったトマトペースト缶が、何百万個も販売されている.そういう
商品を取りあつかっている商社やスーバーチェーンといった流通業者は、不正行為の犠牲者では
なく共犯者だ。むしろ流通業者のほうから中国の缶詰メーカーに頼んで、品質と価格が折り合う
商品が作られている」

中国の缶詰メーカーは、異なるクライアントにまったく同じ商品を供給することもあるという。
どの流通業者もできるだけ安い商品を欲しがるため、必然的にそうなってしまうのだ。
つまり、流れとしてはこうだ。中国の缶詰メーカーは、クライアントである流通業者に、安く供
給できるために添加物を加えることを提案する。流通業者は、メーカーが提示する価格に応じて
どのくらい添加物を入れるかを決める。添加物の割合を増やすほど価格は低くなる。希望に応じ
て、メーカーがさまざまな添加物と完成品の試食サンプルを提供することもあるだろう。メーカ
ーはちょっとした和学者のようなものだ。むしろ麻薬ディーラーに近いだろうか。
契約が成立すると、流通業者は缶詰のパッケージデザインをメールでメーカーに送付する。メー
カーはパッケージ印刷込みで生産を請け負っているのだ。メーカーは、スチール缶とパッケージ
印刷、プラスティック製蓋、梱包用ダンボール箱を、地元の下請業者に発注する。

完成したパッケージには、フランス語、英語、イタリア語、アラビア語などの言語で、たいてい
は嘘八百が並べたててある。スベルミスかおる燭台も多い。「中国産」という文字はどこにも見
当たらない。原皇国をごまかすために、トマトらしい赤い色を用いたり、トリコローレで彩った
りしている。「ハラル」「ナチュラル」「フレッシュ」「グリーン」といったイメージのよい単
語を多用したり、商標権を侵害するようなロゴマークを使ったり、アフリカ入女性や肉厚のトマ
トが描かれていたりする。だが、缶詰メーカーにとってはどんなデザインであろうがかまわない
メーカーにとって重要なのは、それがクライアントに指示されたとおりのデザインであるかどう
かだけだ。そして、その缶のなかには、二倍濃縮トマトによく似た何かが詰めこまれるのだ。

第7節 イタリア、エミリアuロマーニャ州パルマ
であるかどうかだけだ。そして、その缶のなかには、2倍濃縮トマトによく似た何かが詰めこま
れるのだ。
「最初にアフリカ向け缶詰メーカーを天津に設立したのは、カルキスのリウ・イ将官でした。
カルキスグループ傘下のチャルトン・トマト・ブログクツです。その直後、中糧屯河も続いて設
立しました」
パルマにある濃縮トマトの世界最大の商社、ガンドルフィ社の3代目代表アルマンドーガンドル
フィは、2016年7月26日の取材時にそう言った。
「ただ、カルキスも中糧屯河も、市場のニーズに対して生産力が大きすぎました。2社は激しい
価格戦争を繰り広げました。その後、大手二社の後を追うようにして続々と中小の缶詰メーカー
がアフリカ市場に進出しました。最初は、こうした中小のメーカーが市場での生き残りをかけて
、トマトペーストに混ぜものをするようになったのです。大豆食物繊維、デンプン、砂糖、着色
料などの添加物を入れて、安く売りはじめました。現在、アフリカで売られているトマトベース
ト缶には、本物の濃縮トマトが50パーセント以上含まれているものはほとんどありません。

実際の需要に対する生産力が大きすぎたために始まった戦争です。武器になるのは価格だけでし
た。ほかには何もないからです。ブランドカもなければ、高い品質もない。アフリカのトマトベ
ースト缶市場での競争は、価格がすべてでした。いかにも中国らしいやりかたです。そして彼ら
は自滅しました。中糧屯河もガルキスも、グループ会社の缶詰メーカーは倒産してしまいました
。システムが破綻したんです。中国にはまだアフリカ向けの缶詰メーカーがあることはあります
が、わたしが思うに、遅かれ早かれそうした会社もみなつぶれるでしょう。

ええ、理論的に考えても当然です。価格競争を逸脱し、ルールを少しも守ろうとせず、ただ安く
作ることだけを考えて、商品の付加価値を生もうともしない……そんなやりかたでは、必ずいず
れは破綻します。ある会社が濃縮トマトの割合を50パーセントに下げたら、別の会社は48八
パーセントにし、また別の会社は46パーセントにせざるをえないでしょう。それがどどん続け
ば、最終的に残るのは、元に戻せないほど腐った市場だけです。そのうえ、消費者の健康にも被
害を及ぼします………これが、アフリカのトマトペースト缶市場の現状です。

中国の国家政策には優先順位があります。一番大事なのは、経済成長と雇用剔出です。そのため
ならほかのことには目をつぶります。缶詰メーカーがたくさん商品を輸出し、多くの雇用を創出
してくれさえすれば、好きなようにさせておくということです。これはトマトに限ったことでは
ありません。他の多くの商品についても同じことが行なわれているのです」とガンドルフィは締
めくくった.

第15章 農薬入りのトマトか、添加物入りのトマト缶か
第1節 ガーナ共和国、ブロングuアハフォ州テチマン地区タオポダム村
下から差しだされた手を、上にいる者たちが次々と引っぱりあげる。さあ、これで全員荷台に乗
りこんだ。日雇い労働者たちはみんな立ったまま、金属製の手すりにつかまったり、隣の人にし
がみついたりしている。三輪トラックがアクセルを踏んだ途端、大きなエンジン音とともに、重
さで車体がうしろに大きく傾いた。車がひっくり返らないよう、全員があわてて荷台の前のほう
へ移動する。誰かがわたしの足を踏みつけ、わたしは誰かの顔をつかみ、わたしの脇腹に誰かの
肘がぶつかった。大丈夫、どうってことはない。荷台にすし詰めになったわたしたちは、もみく
ちやになりつつも、どうにか重心を立てなおすことができた。そして三輪トラックは、うなるよ
うな低い音を左ててよろよろと前進を始めた。

三輪トラックはガーナでは「モーターキング」と呼ぼれる。中国の自動車メーカーのプランド名
だ。この中国製三輪トラックは西アフリカで広く普及しており、とくにガーナの農民たちに愛用
されている。125CCバイクにトレーラーを結合させたもので、まさに農村のケンタウルスと
いった趣だ。この三輪トラックが大量に流通したことで、アフリカでモータリゼーション革命が
起きたのだ。

車はがたがたと揺れながらでこぼこ道を行く。両脇に並ぶ低木がどんどんうしろへ流れていく。
少しずつ景色が変わり、やがてあたりが徴蒼としてきた。まるで緑のトンネルを進んでいるよう
だ。広く張りだした木の枝にぶつからないよう、みんなが頭を低くする。上り坂に差しかかり
三輪トラックはよろよろと苦しそうに上っていく。てっぺんまで上ったら、次は下り坂だ。重さ
のせいで加速し、あまりブレーキが効かないのか、転がり落ちそうな勢いで下りていく。この恐
怖から逃れるには、車体に貼られたお守り代わりのステッカーに祈りを捧げるしかない。そこに
は、イエス・キリストとカダフィ大佐の姿が掲げられていた。

ようやく畑に到着する。じめじめと重苦しい暑さのなか、日雇い労働者たちはしやがみこんでト
マトの収穫を始めた。摘みとったトマトを次々と木箱のなかに入れる。箱がいっぱいになると、
先ほど乗ってきた三輪トラックの荷台に積みこまれる。労働者の代わりに商品を乗せて、三輪ト
ラックは来た道をまた戻っていくのだ。

いまやトマトは世界中で栽培されている。トマトの起源はアステカにある。現在のメキシコ中央
部だ。この地がスペインによって植民地化される前、8紀ごろから栽培されていた。16世紀に
スペイン人がヨーロッパに持ち帰ったときは、食用ではなく観賞用とされ、18世紀になっても
ほとんど食べられていなかった。状況が大きく変わったのは、蒸気機関車が発明され、鉄道網が
発達した19世紀だ。ヨーロッパの地中海沿岸で好んで食べられるようになり、19世紀末には
イタリアで加エトマト産業が誕生した。その後、ヨーロッパによってアフリカが植民地化され、
世界で缶詰産業が発達する過程で、アフリカにもトマトが伝わった。こうして、加工トマト産業
の一大叙事詩はこの地に引き継がれたのだ。ガーナの首都アクラから車で八時間、緑が億蒼とし
た小道の先に広がるこの畑のなかへ。

トマト畑は2ヘクタールほどの広さだった。ガーナ北部のテチマン地区郊外にある、トマトを名
産とする農業地帯だ。ガーナでは、9万人ほどの小規模生産者によって、年間50万トン以上の
トマトが生産されている。だが、そのうちおよそ30パーセントは、主に雨季を原因とする過剰
生産のために廃棄される。2014年、公式に発表されたトマト生産量は36万6772トンだ
った。

ガーナのトマト生産業界では、畑仕事を行なう生産者のほかに、販売や流通に携わる30万人ほ
どの労働者がいる。そのほとんどが女性だ。ガーナでは主に女性がトマトを仕入れ、運搬し市場
で販売するトマト1個が栽培されてから消費者の食卓に届くまで、約25人の労働力が必要とさ
れるという[1] 。ガーナの人口は2800万人で、アフリカで13番目だ。ガーナの大衆料理の
ほとんどにトマトが使われており、国民の野菜消費量の38パーセントをトマトが占めている。

[1] Mohammed lssah, Right to food of tomato and Poultry farmeres, Send Foundation et Union europ6enne,
novembre 2007.



1957年3月6日、イギリスから独立したガーナは、アフリカの解放を訴えるパン・アフリカ
主義のリーダー的存在になった。初代大統領のクワメ・ンクルマの下で国家主導型の経済政策が
進められ、教育、医療、インフラ整備などに多額の投資がされた。アフリカ社会主義を掲げるン
クルマは、「反帝国主義」に基づいた工業化を推進した。その一環で、ヨーロッパやアメリカな
ど大国による経済支配を防ぐため、外国企業の投資や輸入は大幅に制限された。そして1960
年代初め、過剰生産されるトマトを無駄にしないよう、政府によってトマト加工工場がふたつ建
設された。

1966年2月24日、アメリカの中央情報局(CIA)が支援する軍事クーデターによってン
クルマが失脚し、ガーナは政治・経済的に不安定な状態に陥った。1979九年にはジェリー・
ローリングス空軍大尉による軍事クーデターが起こる。国家元首に就任したローリングスは、1
983年より国際通貨基金(IMF)と世界銀行の支援を受けた「構造調整計画」によって経済
を立て直し、国情を安定化させることに成功した。ガーナはアフリカにおけるネオリベラリズム
政策の規範となったのだ。

1960年代に建てられたふたつのトマト加工工場は、最初のクーデターで閉鎖されたのちに一
時再開され、構造調整計画によって1980年代に再び閉鎖された。その後も再開と閉鎖を繰り
かえし、現在は廃墟となった建物だけが残っている。ふたつの工場のうちの一方、プワルグエ場
は、壁がはがれ落ち、看板が腐食し、雑草に覆われているが、看板と壁に書かれた「ノーザン・
スター・トマト・ファクトリー」という文字をかろうじて読みとることができる。

周辺の住民の多くは、この工場がかつて多くの雇用を生み、地域の富の象徴だったことを今も記
憶している。ガーナは、経済誌などでよく「西アフリカ第二の経済国」と称される。1980年
代以降、IMFと世界銀行による構造調整計画に積極的に取り組んできたことから、IMFの「
秘蔵っ子「フンョーウィンドウ」とも呼ばれた。だがユニセフによると、2016年には360
万人の子どもが貧困生活を送り、うちこ10万人は家庭で十分な食事を与えられていない。また
世界銀行によると、国民2800万人のうち25パーセントが、国際貧困ライン(一日1・9ド
ル未満)以下の生活を余儀なくされているという。上下水道や電力などのインフラもいまだ整っ
ていない。

 Aug. 23, 2007

経済に関しては、イギリス植民地時代とほぼ変わらず、農産物や天然資源などの一次産品の輸出
に全面的に依存している。とくに、金(アフリカ第2位の産出量)、カカオ(世界第2位の生産
量)、原油だけで輸出額の70パーセント以上を占めており、ダイヤモンド、ボーキサイト、マ
ンガンも豊富に採掘される。ここ数年間は不況が続いたので、2015五年、公的支出削減によ
る緊縮財政を実施することを条件に、新たにIMFから10億ドルの融資を受けることになった。
独立から60年、ガーナの農業は今も輸入農産物との厳しい競争にさらされている。 

ガーナでは過去20年間にわたって、濃縮トマトの輸入量が増加しつづけている。国際遥か食糧
農業機関(FAO)の統計によると、1996年に1225トンだったのが、2003年に2万
4000トン、2013年には10万9500トンに達している。20年間でなんと9000パ
ーセント増加している計算になる。マサチューセッツエ科大学(MIT)の経済複雑性観測所に
よると、2014年、ガーナは1億1300万ドル相当の濃縮トマトを輸入しているがうち8
5パーセントが中国からだ。西アフリカにおいて、ガーナは中国産濃縮トマトの主要窓口のひと
つになっており、2014年には中国の年間生産量の11パーセントを輸入している。なお、中
国にとって最大の濃縮トマト輸出先はナイジェリアで、2014年、中国の年間生産量の14パ
ーセントを輸入している。だが、これらの数字の信頼性はあまり高くない。その理由としてまず、
ナイジェリアやガーナが輸入する中国産トマトペースト缶には濃縮トマト以外のものが多く含ま
れていること、そして、ガーナが輸入した中国産濃縮トマトの一部に本来より低い関税率がかけ
られていることがある。関税率については税関のミスではなく、腐敗・汚職が公務員に蔓延して
いるせいだという。

 Apr. 27, 2016
Africa–China economic relations


ガーナでは、農業従事者が就業人口の45パーセントを占めている。それなのに、濃縮トマトを
これほど大量に輸入する必要があるのだろうか?農業があまり盛んではないほかの西アフリカ諸
国ならまだしも?国内でもたくさんトマトが生産されているというのに? このことはガーナに
どういう影響を与えているのか?そして、かつてあったふたつのトマト加工工場はなぜ閉鎖され
てしまったのか?現在の加エトマト産業のグローバル化して複雑になった構造を理解するのに、
アフリカは格好の対象と言える。この産業の進化はめまぐるしく、価格競争はますます熾烈にな
っている。複数の情報通によると、アフリカはここ数年のうちに、アメリカとヨーロッパを抜い
てトマト加工品の世界最大の市場になると考えられている。

                   ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 

                                    この項つづく

  No. 17

【予防医療篇:肥満でがん増殖 仕組みを解明】

   Jul. 7, 2018

7月10日、肥満はがん細胞の増殖を早めることが知られている、大阪大学らの研究グループは、
肥満になるとがん細胞の増殖を促す特殊なたんぱく質が増えることをマウスを使った実験でで解
明。同グループでは、食生活の改善が治療効果を高める可能性があるとする。それによると、大
阪大学大学の藤田和利のグループは、前立腺がんを発症させたマウスを使って、脂肪分の多いエ
サを与えて肥満にしたマウス/通常のマウスで、がん細胞の増殖に違いがあるかを調査。その結
果、およそ5か月後、肥満のマウスでは、通常のマウスと比べてがんの大きさはおよそ3倍にな
り、がんの周辺で「インターロイキン6」という、免疫を抑えるたんぱく質が数倍に増えた。肥
満のマウスにこのたんぱく質の働きを抑える薬を投与したところ、がん細胞が増える通常のマウ
スと同程度になったことから、肥満のマウスで増えていたこのたんぱく質が、がんの増殖を促し
ていることを突き止める。今後、食生活の改善といった身近な部分から新たな治療方法が見つか
る可能性があり、医療費の抑制、健康寿命普及の促進に効果が期待される。



High-fat diet-induced inflammation accelerates tumor proliferation of prostate cancer via IL6

【膝軟骨の再生医療製品化治験へ】

7月24日、青森県弘前市の再生医療ベンチャー「ひろさきLIなどは、スポーツや事故などで損
傷した膝軟骨の再生治療に用いる再生医療製品「IK-01の製造販売に向け、国の承認を得るため
要な検証治験を今秋から開始することを公表。弘前大学医学部付属病院や弘前記念病院など全国
6施設での治験を経て、22年にも承認を申請予定。同社は再生医療の中核都市ひろさきを目指す。

 ● 今夜の一曲

 

朴葉の水をきみは差し出す 

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『三 略』(さんりゃく)
略は「機略」「戦略」の意味。『六韜』(ろくとう)と並んで『韜略』といわれる。六世紀ごろ
の成立。『三略』は神秘的な成立伝説にいろどられており、今日の目でみると、時代がかってい
る部分が多い。上略・中略・下略の三笥から成るが、その中から現代にも通ずる部分を選んで訳
出する。

柔 と 剛
『軍識』にはこう記されている。「柔は剛を抑え、弱は強に勝つ」と。柔とは他者を包み育む徳
にほかならず、剛とは他者を傷つけ損う悪にほかならない。弱者は誰からも擁護されるが、強者
は誰からも狙われる。

とはいえ、ただ柔のみを後生大事に守り、ただ弱のみを金科玉条としているのでは、何の意味も
ない。柔と削、弱と強の四者を兼備したうえで、時宜に応じ硬軟自在に対処することこそ肝要で
ある。

変転自在の働きをすると、その真意が何であるかは、外部からは察知できない。たとえてみれば
天地である。人智を超えたその霊妙さは、日々万物とともに推移し変化するところにある。用兵
もこの天地のごとく、固定した形をみせず流勤し、情勢に応じて千変万化しなければならない。
つまりこちらから進んで戦を仕掛けることなく、軟の出方を待ち敵情に応じて働くのである。

こうしてこそ、軍の働きは無限の自在さを獲得できる。自然の法則と一体化し、おのずと戦局を
有利に聯くことができる。天下の秩序を回復し、蛮夷の地を平定することができる。王者たる者
の軍とは、このような軍を指すのである。

だが人々はこの道理に気づかない。古人もいっているではないか。「人々はただ強のみを追い求
め、自然の法則を顧みない」と。自然の法則に従いさえすれば、身は終始安泰である。
だから、聖人は自然の法則を体得して、時機に応じて勁くのである。自然の法則は、拡大すれば
全世界をも包摂することができるが、縮小する時は林の中にも隠すことができろ。格納するため
の貪もいらず、守るための城もいらない。ただひとりの胸に秘めておくだけで、敵国はおのずと
服従するに至るのである。
『軍識』にはこうも述べられている。「柔剛両者を兼備すれば国威はますます傾き、弱強両者を
兼備すれば国運はますます盛んとなる。だが、柔弱一方ならば国は衰微し、剛強コカならば国は
滅亡する」と。(上略)

〈『卓識』〉古代の兵法書の名であるというが、現存せず、定かでない。仮託であるともいう。

 夏 帯


【下の句×樹木トレッキング:朴葉の水をきみは差し出す×ホオノキ】 

 

ホオノキ(朴の木、Magnolia obovata、シノニム:M. hypoleuca)はモクレン科の落葉高木。大き
くなる木で、樹高30メートル、直径1メートル以上になるものもある。樹皮は灰白色、きめが
細かく、裂け目を生じない。葉は大きく、長さ20センチメートル以上、時に40センチメート
ルにもなり、葉の大きさではトチノキ並ぶ。葉柄は3~4センチメートルと短い。葉の形は倒卵
状楕円形、やや白っぽい明るい緑で、裏面は白い粉を吹く。互生するが、枝先に束生し、輪生状
に見える。花も大型で大人の掌に余る白い花が輪生状の葉の真ん中から顔を出し、真上に向かっ
て開花する。白色または淡黄色、6月ごろ咲き芳香がある。ホオノキは花びらの数が多くらせん
状に配列し、がく片と花弁の区別が明瞭ではないなど、モクレン科の植物の比較的原始的な特徴
を受け継いでいる。果実は袋果で、たくさんの袋がついており、各袋に0~2個の種子が入って
いる。


ひとの業引き受け登るゴルゴダに 朴葉の水をきみは差し出す    高山 宙


※「ゴルゴダに」は「で」でなく「に」の選択は「神話」(信仰)から「現在」へ導出させ「差
し出すきみ」でなく敢えて「きみが差し出す」とし日々の慈しみとして表出する。

  May 28, 2009


  ● 今夜の5枚

ディズニーもプラスチックストロー使用禁止 



夕日を彦根市石寺湖岸のベンチで

 Jul.. 27, 2018

タイ洞窟の救助班、ダム決壊のラオスで救出活動 

 Jul. 23, 2018

チョウが研究者たちの必死の努力により復活



夏の顔、ヒマワリ16万本満開

 

死せるホーキング博士の提唱:多元的宇宙の縮小理論

5月7日、英国の宇宙物理学者、故スティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)博士の死後に発表され
た新たな論文によって、天文学者らを大きく二分してきた問いについての議論が再燃している。それは、
私たちが今いるこの宇宙は拡張し続ける無限の「多元的宇宙」のうちの一つにすぎないのではないかと
いう問題(AFP, 2018.05.07)。

それによると、論文はベルギーのルーベンカトリック大学(KU Leuven university)のトマス・
ヘルトーク(Thomas Hertog)と共同執筆、博士が亡くなった3月14日以前に提出された。今
週「Journal of High Energy Physics」に掲載。(ある学派の)宇宙はビッグバン(Big Bang)の後、
爆発的に拡張し始めたとするこの拡張あるいは「膨張」は大部分で永遠に続いていくが、この動
きが停止する所もいくつか存在する。私たち人類が今いるような宇宙はこうした場所につくられ
ている――とする。

これに対し、多元的宇宙論の懐疑派のホーキング博士は昨年行われたインタビューで、多元的宇
宙のファンであったことは一度もないと語たが、最後の論文では、この理論反論するのでははな
く、大幅に縮小した理論を提唱。博士が在籍していた英ケンブリッジ大学(Cambridge University)
は、単一宇宙にまで縮小したわけではないが、同グループの研究結果は、多元的宇宙の著しい縮
小、すなわち、存在するかもしれない宇宙の数は(無数ではなく、それより)はるかに小規模で
あることを示しているとする立場であることを表明している。前出のヘルトークはAFPの取材に
対し、新たな仮説は「ひも理論、弦理論」の理論物理学の一つの考えに基づいたものであるとし、
宇宙には多くの宇宙があるとしても、その数は「明らかに有限」だと結論付けている。

これに対し、わたし(たち)は到底考え及ばない<世界>だが思索のに労に率直に敬意を表したい。

                                        合掌

 



【国際的なイニシアチブ「RE100」に加盟】

7月20日、富士通は事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際的なイニ
シアチブ「RE100」に、国内で初めてゴールドメンバーとしてこのほど加盟した。国内外の富士通グループ
拠点で消費する電力を50年までに100%再エネ由来とすることを目指し、再エネの利用拡大を
推進する。加えて、エネルギーのマネジメントや貯蔵などの研究開発や技術実証にも取り組み、社会全
体の再エネの普及拡大に貢献する方針であることを公表。RE100は国際的に活動するNGO団体である
The Climate GroupがCDPとのパートナーシップのもとで、運営するイニシアチブ。使用電力を100
%再エネ由来とすることを目指す企業で構成されている。

富士通グループは、17年5月に策定した中長期環境ビジョン「FUJITSU Climate and Energy Vision」
で、富士通グループ拠点における再エネ由来の電力利用を50年までに100%(中間目標30年ま
でに40%)を目標に掲げるなど自らのCO2ゼロエミッションを目指す。この目標の達成には、省
エネルギーに徹底して取り組むとともに、再エネの利用拡大が不可欠となる。そのため、グロー
バル規模で再エネの大幅な普及拡大を目指すRE100に参加し、富士通グループ全体で再エネの利
用拡大に向けた取り組みをさらに強化。具体的には、海外のデータセンターをはじめ国内外の拠
点で、各地域に応じた最適な手段を検討し、再エネ由来の電力調達を拡大する。また、エネルギ
ーのマネジメントや貯蔵などの研究開発や技術実証に取り組み、社会全体の再エネの普及拡大に
貢献することを目指す。


【世界初グレートバリアリーフと氷床変動の解明】

7月26日、東京大学らの研究グループは、IODPの第325次航海にて、グレートバリアリーフ
で科学掘削を実施、熱帯域のサンゴ化石試料を採取に成功。それにより、極域氷床と気候の急激
な変化について新しい知見――現在までに全くデータのなかった時代の南極やグリーンランドな
どの氷床融解に伴う海面上昇などの海水準変動を復元―――❶氷期から現在にかけての氷床変動
を解明、❷ゆっくりとしたものと考えられていた氷床の変化が、想定されていたよりも数倍のス
ピードで変化、❸人工衛星で得られる南極氷床変化の定量的な解釈を含め、現在進行中の地球温
暖化が引き起こす――海水面上昇の予測に反映できることを公表。




Title:Response of the Great Barrier Reef to sea-level and environmental changes over the past 30,000 years


 【地球温暖化:50年までに米国とメキシコで何千の自殺者を生む】

7月23日、スタンフォード大学のマーシャル・パークらの研究グループは、気候と精神的健康
との関連付け化されてはいるが、定量化は不十分にある。特に世界的に主要な死因である自殺率
が、気候条件により影響を受けるかどうかは不明であるもの、米国とメキシコの両方で数十年間
の包括的なデータから、月平均気温が1℃上昇した場合、自殺率は米国郡で0.7%、メキシコ地
方で2.1%増加するいう分析結果を得ている。この結果は、より暑い地域と寒い地域とで近似し
歴史的適応が限定されており、時間とともに減少せず。うつ病の研究分析k結果から、暖かい時期
に悪化することを示唆。気候変動(RCP8.5)の増加は、50年までに米国とメキシコで9,40,000
件の自殺を引き起こすと予測する。
にわかに信じられないものの、このような側面からの「社会的損失」も考慮kしておくべきだとの
警告として受け止めた。


 
第15章 農薬入りのトマトか、添加物入りのトマト缶か
第2節 ガーナ共和国、ブロングuアハフォ州テチマン地区タオポダム村
ざっと畑を同心回したところ、50人ほどの日雇い労働者が働いている。収穫されたトマトは、
加工されるのではなく市場へ売られていく。じつはここにいる労働者のほとんどが、自分でもト
マトを生産している。ただし土地を持っていないので、自宅の近くの狭い土地を地主から借りて
耕している。借りている土地の広さは、だいたいIエーカー(0・4ヘクタール)で、広くても
ニエーカーから三エーカーだ。年間賃料は、平均してIエーカー当たり100ユーロ。こうした
小作農は、収穫時など労働力を必要とするときに、今日のようにほかの小作農を雇っている。そ
して、トマトを収穫して市場に出荷し、販売し終えた後、つまり収穫当日の夜に報酬を支払う。
農業従事者たちは、自分の収穫日をずらして他の者の収穫を手伝うなどして互いに協力しあって
いる。

ここでは、FI種子を購入する者は誰もいない。FI種子とは、異なる性質の種を交配させた雑
種の一代目のことで、生育がよくて病気になりにくいので先進国ではたいていこのタイプの種子
が使われる。栽培しやすいが価格は高い。だがここでは毎年、前年実ったトマトから種を自家採
取して使っている。そうして種子のコストを節約しているのに、トマト生産者たちは借金をして
まで農薬を買う。だが彼らは、それがどういうものか、何か入っているかは知らない。政府調査
によると、トマト生産者の識字率は60パーセントだという。しかも、防護服やメガネといった
保護具をいっさい身につけずに散布している。

「おれは強くて丈夫だから、病気になんかならないさ。防護服なんて必要ない」と、ひとりの労
働者は入った。
「農薬を売ってくれろ人が、そういう化学物質に詳しいんだ。もし何かトラブルが起きてもその
人に相談すればどうにかしてくれろ。いい薬を見つけてくれる。店にずっといて畑には来ないの
に、どうしたら問題が解決するかすぐにわかるんだ。おれたちの先生なんだ。もし毛虫が出たら、
ちゃんと毛虫がいなくなる薬を出してくれる」

畑のまわりに並べられた木箱の下には、その「先生」が売ってくれたという農薬の容器が散乱し
ていた。キラキラ光るパッケージには「中国産」と記されている。殺虫剤や殺菌剤などの農薬に
は、クロルピリホスエチルという化学物質が使われていることが多い。数々の科学研究によって、
この物質が胎児の脳の発達に影響を及ぼすことが明らかにされている。
「おれたちの仕事で一番金がかかるのが農薬だよ。だって畑の賃料より高いんだから」
だが、そう口をそろえる日雇い労働昔たちも、それがどのくらいの金額になるかは答えられなか
った。

「正直言って、よくわからないんだ。トマトなんて博打のようなものだから」と、目の前の畑の
借主であるクワシ・フオスが言う。
「おれたちはみんなトマトで生活してるんだ。もうかる年もあれば、損する年もある。だいたい
とんとんの年もある。でもここ数年は損してばかりだ。だから最近はトマトにあまり金をつぎこ
まないようにしてるんだ」

博打?金をつぎこむ? よく意味がわからなかったので、わたしはさらに話を聞いてみた。

「トマト栽培にはふたつの運だめしがつきものだ。ひとつは収穫。天候が悪かったり、トマトが
病気にかかったりして、収穫量が激減する年がある。でも収穫直前までどうなるかわからない。
もうひとつは市場だ。たとえたくさん収穫できても、市場でちっとも高く売れない年がある。今
日は一箱当たり200セディ(45ユーロ)だった。でも去年はそのわずか4分の1だったんだ。
大赤字さ。だから今年はあまり広い土地を借りなかった。でも今年はなかなかいい値段で売れて
るから、赤字にはならないんじゃないかな。まあ、もう少し様子を見ないとわからないけどね。
ただ、ひとつ言えるのは、このあたりじゃ、みんなどんどんトマトをやめていってるよ。全然も
うからないからね。すでに多くがトマトの栽培をやめてるし、数年でもっと増えるだろうね」

クワシーフォスは、タオボダム村では金持ちで通っている。粗末な小屋で飲み屋を営業し、中国
製バイクを持っているからだ。エンジンがついた乗りものは、この村ではステータスシンボルだ。
「飲み屋のほうもさっぱりだよ。少しはもうけられると思ってはじめたんだけどね。このあたり
のやつらは貧乏すぎて、飲む金さえないんだ。トマトじゃ嫁げないからね」
クワシ・フォスの畑で収穫を手伝った日雇労働者たちは、飲み屋もバイクも持っていない。ある
のは自分の腕だけだ。借金をするのも難しいので、あまり農薬も買えない。だがそんな彼らも、
フォスと同じように「トマトは博打だ」と口をそろえる。それほどリスクが大きいのだ。とくに、土
地を持たない小作農は近年ますます慎重になっており、借りる畑の面積をどんどん減らしている。

畑で働いていたひとりの青年が、トマトにまつわる自らの不運について語った。
「数年前、ぼくはIエーカーの土地を借りて、大量のトマトを収穫しました。翌年、がんばって
もっといっぱいトマトを作ろうと、たくさん借金をして前の年より広い上地を借りました。
でも、その年の収穫期が終わったとき、ぼくはすべてを失いました。全然収穫できなかったんで
す。借金を返せなくなり、お金を貸してくれる人もいなくなりました。この村では、土地を持っ
ていない人間が破産すれば、誰かのために働くしかありません。何の展望もなく、ただ借金を返
すためだけに働きつづけるのです。それでリビアに渡ったんです。本当はそこからすぐにヨーロ
ッパヘ行こうと思っていたんですが、たまたまリビアに仕事が見つかりました。ぼくは節約して
お金を貯めることにしました。船で地中海を渡ってヨーロッパに行くためです。でも結局、船に
乗るのはやめました。海を渡るのがこわくなったんです。船が沈没して溺れてしまう気がして。

そんな危険はおかしたくない。でもどうにかお金を貯めることはできた。だから村へ戻ってきたん
です。椋いだお金で借金を返すことができました。そういうわけで、今ここにいるんです」
青年は、トマトが満杯に詰まった木箱に蓋をし、釘を打っている最中だった。「リビアを解放し
よう」と書かれた、オレンジ色のTシャツを看ている。わたしは、カダフィ大佐が失脚したのを
喜んでいるのかと尋ねた。青年は、ハンマーを二度振りおろす間にこう笞えた。
「まさか。ここではみんなカダフィ大佐を好きですよ。でもぼくがリビアにいたころ、あちこち
で反政府デモをやってて、このTシャツをただで配ってたんです。たまたまそれをもらっただけ
です」

第3節
トマトが詰められた木箱が、次々と三輪トラックに積みこまれる。ひとりの男が木箱をひもで荷
台に固定し、自分も荷台に乗りこむと、車はようやく出発した。これが今日最初の出荷だ。荷台
には、トマトの箱といっしょにふたりの男が乗っている。高く積まれた木箱を手でしっかり押さ
えておくのが男たちの仕事だ。でこぼこ道で車体がぐらぐらと瑶れたり、舗装道路の小さなくぼ
みにはまったりしても、ひとつもトマトを落とさずに市場まで運ばなくてはならない。

幹線道路沿いに、コンクリートブロックを製造中の人々がいた。働いているのは女性たちだ。小
さな作業場で手作りしている。炎の燃えさかる窯に薪をくべたり、セメントに砂利と水を混ぜた
り、生コンクリートを型に入れたりしている。みんな、保護服も手袋もつけずに素手のままだ。
焼かれた原材料から悪臭のする煙が上っているのに、マスクもつけていない。この建築材料で金
を椋ぐために、一日中胸がむかつく煙を扱いつづけているのだ。そこから少し離れたところに川
があり、母親と子どもたちがからだを況っていた。その上流では、ひとりの男性がプラスティッ
クタンクに水を汲み、農薬の原液を希釈していた。

ガーナでは、いまだに上下水道の整備が造んでいない。構造調整計画や経済回復計画の一環で、
1993年からおよそ20年にわたって上下水道の改革が行なわれてきた。政府だけでなく、民
間の業者にも委託して取り組んできた。だが、少しも状況は改善されていない。おそらく予算が
大幅に足りないのだろう、高い水道料金を徴収しないかがり、水質が劣化したり、水の供給が止
まったりするのはどうにもならない。

そのため、この国では水ビジネスが成り立っている。小さなビニール袋に水を詰め、トラックで
巡回して売っているのだ。水ビジネスに関して、ガーナではもはややりたい放題だ。ビニール袋
に水を充堀する機械さえ手に入れれば、誰でもどこでも始められる。あとはどこかで水を汲んで
くるだけだ。だが、それがどんな水であろうが気にするひとはほとんどいない。飲用に適さない
水が平気で売られているのが現状だ。しかし、決まった販売ルートがあるわけではないので摘発
するのが難しい。こうして、金もうけに目がくらんだ人間のせいで、飲用にふさわしくない水が売られ、とき
に大きな健康被害をもたらしている。小さなビニール袋から水を飲んでいる人の姿は、ガーナのあちこち
で見かける。一袋20セントから50セントくらいの価格で、全国で年間45億ユーロ相当の売上があるとい
う。

郊外の村では、衛生的なトイレが見つかることはほとんどない。だからガーナの人たちはよく道端で排尿
する。世界保健機関(WHO)によると、匪界人口の3分の1近くが自宅に適切なトイレを備えておらず、ガ
ーナはそうした家が多い国のワースト10カ国に入るという。ガーナ人の実に85パ-セントが衛生的なト
イレを使用できず、コレラなどの伝染病の大流行が危惧されている。

第4節
トマト市場は国道10号線沿いにある。大都市のクマシから隣国ブルキナ・ファソまで北に延び
る、主要幹線道路のひとつだ。三輪トラックはこの道路を通って、トマト畑と市場の間を日に何
度も往復する。
三輪トラックが市場に到着すると、荷台に立っていたふたりの男とドライバーが、トマトの荷下
ろしに取りかかる。すべての積荷を下ろしたら、次のトマトを運んでくるためにまた畑に戻る。
木箱を積んでは下ろし、積んでは下ろし……それが一日中何度も続く。そして17時ごろ、市場
に別のトラックがやってきて、運びこまれたトマトをクマシやアクラなど別の町の市場に運んで
いく。

男たちが荷下ろしをしているそばで、女たちが数量を確認し、袖に日よけをかぶせていた。太い
フェルトペンで、それぞれの箱に印をつける。「イエス」「神」といった誰でも知っている単語、
お祈りで使われる賛辞のことば、あるいは適当な記号を書いて、ひとつひとつの箱の区別がつく
ようにするのだ。女たちはここでは「女王」と呼ばれる。ガーナのトマト流通になくてはならな
い存在だ。傷みやすいトマトがなるべく素早く流通されるようはからい、燭台によっては卸売業
者のように遠くの村までトマトを買いつけに行くこともある。市場から遠く隨れた村のトマト生
産者は、「女王」が買いつけに来るのをじっと待っている。「女王」が来ないとトマトの収穫す
らしない者もいる。一女王」は自腹でトマトの代金を生産者に支払い、物流の手配もする。畑に
トラックを呼び、箱に詰めたトマトを荷台に載せて市場まで運ばせるのだ。

「女王」はトマト生産者だけでなく、大都市の商社のツテも持っている。取引はすべて相互合意
だ。トマト生産者にとって、取引の相手は商社ではなく「女王」なので、買値が低すぎると「女
王」に対して文句を言う。確かに「女王」のなかには、生産者の立場が弱いのを利用して、トマ
トを安く買いたたこうとする者もいる。だが基本的に、「女王」は自分勝手にトマトの値段を決
めることはできない。トマトの品質や市場のニーズから判断しているのだ。うまく立ち回って社
会的に成功する「女王」もいる。流通ネットワークにおいて高い地位を占め、業界に対して大き
な影響力を持つ者もいる。だが通常、「女王」が市場を独占しようと謀ったり、財産を蓄えたり
することはない。むしろ、生産者のために物流を手配し、売れるかどうか確証のないトマトを自
腹で購入することで、大きなリスクを負っている。

                    ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 
                                 
                                     この項つづく

● 台風12号 焼岳へGO!延期

台風12号では延期することに。30日以降となる。今夜から明日にかけての被災拡大が心配だ。

 ● 今夜の一曲     

            

 

 

南海・東南海要警戒

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『三 略』(さんりゃく)
略は「機略」「戦略」の意味。『六韜』(ろくとう)と並んで『韜略』といわれる。六世紀ごろ
の成立。『三略』は神秘的な成立伝説にいろどられており、今日の目でみると、時代がかってい
る部分が多い。上略・中略・下略の三笥から成るが、その中から現代にも通ずる部分を選んで訳
出する。

 
第15章 農薬入りのトマトか、添加物入りのトマト缶か
第2節 ガーナ共和国、ブロングuアハフォ州テチマン地区タオポダム村

本質的な問題は、なぜ今これほど多くの移民がいるのか、ということです。三年前にわたしがラン
ペドゥーザ島に行ったとき、この現象はすで始まっていました。そもそもの始まりは、中東とアフ
リカでの戦争と、アフリカ大陸の開発途上国における飢餓でした。戦争が起こるのは、武器を製造
する人々がいるからです。でもこれには、防衛のためという意味もあるのでしょう。一番よくない
のは、武器を密売する人々がいることです。これほど失業者が多いのは、労働を生みだす投資が不
足しているからです。とくにアフリカにおいてその不足は顕著です。そのことは、世界の経済シス
テムが拝金主義に陥ったことを示しています。世界の富の80パーセント以上を、わずか16パー
セントほどが独占しています。完全な自由市場というのは機能しないのです。

                                ローマ教皇フランシスコ
                    「移民を受け入れなくてはならない」ラークロワ紙
                                2016六年5月16日

第5節
トマト市場の周辺に一般消費者向けの市場が立ち、女たちが屋台で食品を売っているが、ここには
トマトはほとんど出ていない。人気があるのはむしろよその国から輸入されたマトペースト缶だ.
トマト生産者のクワシ・フオスといっしょに、市場を歩いて回る。フオスはトマトペー缶の屋台の
前で足を止め、わたしにこう言った。

「しかたがないさ、おれたちが作ってるトマトに比べて、トマトペースト缶のほうが日持ちるから
ね」

なかなか鋭い。おそらくフォスは口にすることで、自分にそう言い聞かせているのだ。わたしはこ
の機会を利用して、フオスにある質問をした、答えを知っているのに、あえて知らないふりをして。

「これらのトマトペースト缶はどこから輸入されたの?」

フぉスは、ガーナでもっともよく売れているブランドのひとつ、インドの大手流通グループ、ワタ
ンマルの「ポモ」の原産国を販売員の女性に尋ねた。ブランド名の「ポモ」とはもちろんイタリア
語の「ポモドーロ(トマト)」の略称だ。 

「これはイタリア産ですよ」

販売員は自信たっぷりにそう言い、味や食感のよさを絶賛した。その姿を見ていると、商品の正体
を暴露することにためらいを感じる。だがわたしは、フォスにその缶詰のラベルを読んでみるよう
それとなく促した。

「中国産!?」

フォスはラベルの原産国名を読んだ途端、ロをあんぐり開けてあっけにとられた。販売員の女性も
同様だった。

「中国!?‥ 中国だと!?」

フォスは理解に苦しむというように、何度も繰りかえした。

「どうしてあんな遠くからこんなところに輸出してるんだ?」

わたしたちは、市場に出ているトマトペースト缶をかたっぱしから調査することにした。即席のジ
ャーナリストとなったクワシ・フォスは、次々と缶詰の原産国を調べあげた。ボモ、ジーノ、テイ
スティ・トム、ラ・ヴオンス、タム・タム………ガーナで人気が高いトマトペースト缶はすべて中
国産だった。20人以上の女たちが、中国産トマトペースト缶を屋台で売っていた。先ほどの販売
員は「てっきりイタリア産だと思っていたのに」としきりに繰りかえしながら、ガーナでこの商品
を扱う扱う流通業者や販売量まで詳細に教えてくれた。400グラム入り缶詰が24個入った箱が
売りきりになるまでは三日ほどかかるが、70グラム入りミニパックは一日平均50袋も売れると
いう。

 ここ数年、ガーナでは、缶詰より使いきりのミニパックのほうが人気が高い。だが、メーカーにと
ってこのパッケージは、缶詰よりコストは安くてすむがコンテナ輸送には向いていなからい………
つまり、いまや缶詰メーカーは、中国で生産した商品をアフリカに輸出するの.現地の工場でドラ
ム缶入り中国産濃縮トマトを加工・パッケージングするようになったのだ。

「こんなことが続いたら、おれの子どもたちはガーナを出てヨーロッパに行かなければならなくな
る!」と、クワシ・フォスは嘆いた。
「こんなに安く売られている中国産のトマトペーストを相手に、おれたちが作ってるトマトがどう
やって太刀打ちできるっていうんだ?無理に決まってる!」
そのとき、トマト市場のほうに数台のトラックがやってきて、幹線道路の路肩に停車した。
にわかに周辺があわただしくなる。床の上にうず高く積まれたトマトの木箱が、トラックの荷台に
次々と積みこまれる。「女王」たちは、あちこちに指示を出し、箱を何度も数えなおし、紙幣のや
りとりをしている。日が暮れかかっていた。とうとうすべての商品が片づいて、長い一日が終わり
を告げた。

わたしは偶然、リビアから帰ってきたあの青年を見かけた。オレンジ色のTシャツのおかげで、遠
くからでも見分けられたのだ。わたしは彼のところに近づき、ヨーロッパヘ渡った若者が村にいる
かと尋ねた。
「ええ、もちろんいますよ。たくさんいます.トマトやほかの作物の栽培に失敗して、財産を失っ
た若者たちです。先週もひとりヨーロッパに向かったばかりです」

第16章 アフリカを席巻した中国産トマト
第1節
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2015年、アフリカと中近東から100万
人以上の不法移民が地中海経由でョーロッパに渡ったという。だが2018年には、その数は3分
の1に減少している。理由のひとつに、2016年3月に締結された「EU・トルコ声明」がある。
シリアからの難民がギリシャに流入するのを防ぐためにとられた措置だ。これによって、2016
年6月までの間、ギリシャに不正入国したシリア入難民をトルコに送還する代わりに、EUからト
ルコに60億ユーロを支払うという契約が結ばれた。

その一方で、アフリカからイタリアにやってくる不法移民の数はあまり変わっていない。2016
年は年間15万人と、前年に比べてほぼ横ばいだった。リビアからイタリアに向かういわゆる地中
海中央ルートは、アフリカからョーロッパヘの主要経路となっているが、横断するには多大な危険
が伴う。2015年には3771人、2016年には五000人以上が、海を渡る途中で命を落と
している。

ここ数年、海で遭難した難民を撮ったショッキングな映像が世界中に広まった。命からがら救助さ
れた生存者や、白い布をかぶせられた遺体が映され、世界の映画監督、カメラマン、アーティスト、
小説家などに大いに着想を与えた。そのむごたらしさは、ボランティア、NGO、政治家、聖職者
たちの心を動かし、ヨーロッパ中で論争が巻き起こった。
だがこの件で、グローバル経済の影響について言及する者はほとんどいない。しかしこの現象の根
本的な原因が、資本主義に特有の経済戦争が世界に広まったことにあるのは明らかだ。
2015年から2016年までにイタリアにやってきた30万人のアフリカ人移民の多くは、故郷
で農業に従事していた。ところがそれでは生活できなくなったため、ヨーロッパに働きに出ようと
考えたのだ。

2016年3月、南イタリアのブッリャ州のナルドからレッチエヘ向かう列車で、アフリカ人移民
の男性に出会った。セネガル北部出身で、年齢は40歳。かつてセネガルは濃縮トマトの原材料を
すべて国内生産していた。男性も故郷でトマトの収穫をしていたが、暮らしていけなくなってイタ
リアに来たという。奇遇にもそのときわたしは、プッリャ州でトマトの収穫をするアフリカ人移民
の労働条件について取材をしている最中だった。わたしは男性の話に耳を傾けた。イタリアでの仕
事は不法労働で、報酬は出来高制。さんさんと照りつける太陽の下で丸一日働いて、20ユーロか
ら25ユーロくらいしかもらえないという。シチリア島南方のランドウーサ島にボートでたどり着
いたときのこと、プッリャ州で厳しい生活を強いられていることについても話してくれた。そして、
なつかしむような口調でこう言った。

「セルガルでのトマト収穫も決して楽ではなかったよ。もうけも少なかったし。でもやっぱりセネ
ガルで仕事をしていたころがなつかしい。少なくとも、奴隷のように扱われることはなかったから
ね」そのことばは、自由貿易が人間にもたらした結末を簡潔に言い表していた。

第2節
1960年8月20日、フランスから独立した直後のセネガルで、あるトマトペースト缶ブランド
が誕生した。その名は、ディエ・ブ≒ディア。セネガルの共通語であるウォロフ語で「ひっばりだ
こ」という意味だ。サントナック‘グループ傘下のトマト加エメーカー、ソカスの商品で、今も生
産されている。サントナック・グループは、1902年からセネガルに在住するフランス人、ジャ
ンーサントナックが設立した食品会社だ。植民地時代、ジャンの父親はピーナッツを扱う商社で働
いていたという。

ディエ・プ・ディアのバッケージには、トマトが入ったカゴを頭上にのせているアフリカ人女性が
描かれている。1960年代、セネガルに加エトマト産業を広めたのは、イブライマ・フェディオ
ールとドナルドーバロンのふたりだった。フェディオールはセネガル人のトマト生産者で、加工ト
マト業界の重要人物だ。セネガル全国農業協同協議会の会長にも就任している。バロンはフランス
人企業家で、今は現役を退いているが、長年セネガルでもっとも影響力のある実業家のひとりだっ
た。独立直後、セネガルに移住した当時のドナルド・バロンは、サントナック・グループの子会社
で働く農業技術者にすぎなかった。だが、1969年にグルーブ子会社のソカスを立ち上げたのち
にグループ代表に就任。セネガル政府にコネクションを持ち、セネガル全国経営者評議会の副会長
も務めている。世界貿易機関(WTO)閣僚会議に参加したときは、セネガル企業の保護を世界中
に訴えた。

ソカスの歴史は、セネガルの加工トマト産業の歴史でもある。1965年にトマト栽培の実験を行
ない、1969年に最初の試験的なパイロットプラントを立ちあげた。そして1972年、セネガ
ル北部のサヴオワヌに初のトマトペーストエ場を設立する。工場の一日当たりの生産量は200ト
ン。数千トンのトマトを収穫できる農地も開拓した。
サヴオワヌは、北大西洋沿岸の大都市、サン・ルイから30キロメートルのところにある小さな村
だ。だが、セネガルの歴史を語るのに避けることのできない場所でもある。セネガル初代大統領、
レオポール・セダール・サンゴールによって、農業開発のための実験農場に指定されたのだ。19
64四年、サヴオワヌにフィールドスクールが開設され、軍に所属する20歳未満の独身男性たち
が農業研修を行なった。参加したのは志願者数百人ほどで、彼らは「独立のパイオニア」と呼ばれ
た[1]。一定期間、農業、軍事、社会生活などの研修を受け、課程修了後に小さな土地をもらうこと
ができた。こうして軍隊管理下にあった数年間で、サヴオワヌは見事な農業地帯に生まれ変わった。
堤防、橋などの泥流設備も整備された。

独立後1960年から1986年までのセネガルの農業・商業政策は、輸入を減らして国内生産を
増やすことに主軸が置かれた。いわゆる保護主義政策だ。1972年以降、フランス資本の会社で
あるソカスは、現地の生産者に無償で技術支援を行ない、生産されたトマトをすべて買いとると約
束した。ソカスがトマトペーストの国内需要に応えて、トマト生産者を保護するのと引き煥えに、
国内市場でのソガスの地位が確保されるという契約をセネガル政府と交わしたのだ。ソカスはその
ために回一〇匝CFAフラン以上を投資し、主にサン・ルイ地方で業績を伸ばした。独立後から1
986年までのセネガルは、外国製品の輸入を禁止または制限し、一部の優遇された企業だけが市
場をほぼ独占できるようはからっていた。そしてこの時代、ソカスのトマトペースト缶、ディエー
ブーディアは、セネガル市場を完全に独占し、西アフリカにおけるトマト加工品のパイオニア的存
在になった。

こうしてソカスはみるみる発展し、成功した事業例としてあちこちで引き合いに出されるようにな
った。1976年には、セネガル郵便局が「加エトマト産業」と題した切手を発行している。トラ
クターを運転する生産者の右下に、赤く熟れた美しいトマトがふたつ並んだデザインだ。そのころ、
ディエ・ブ・ディアは、セネガル国内のトマトベースト需要を十分に満たしていた。ソカスの経営
者はフランス入ではあったが、少なくともセネガルは独立当時の目標を達成していた。つまり、自
分たちが食べるものを自分たちで作れるようになったのだ。

1986年、セネガルのトマト畑が砂嵐の被害に遭ったため、外国からトマトベースト缶が輸入さ
れた。輸入量はごくわずかで、国内生産量を大きく下回った。だがこの災害を教訓として、農学者
でトマト生産者、トマト関連産業委員会の元会長だったイブライマ・フェディオールによって対策
が講じられた。砂嵐による被害を食いとめるため、50ヘクタールの農地のまわりに5000本の
樹木が植えられたのだ。砂漠の周辺に設置される防砂林をヒントにしたもので、この方法はその後
の災害対策の規範とされた。[2]

同年三月、セネガルは独立以来続けてきた保護主義政策を終了し、代わりに「新産業政策」をスタ
ートさせた[3]。市場を全面的に間放し、国際競争の仲間入りをしたのだ。また、西アフリカ経済
通貨同盟に加盟する8カ国(セネガルを含む)は、国際通貨基金(IMF)と世界銀行の支援を受
けて一構造調整計画」を進めることになり、貿易の自由化が促進された。
さらに数年後、ショック療法が行なわれた。1994年1月11日、アフリカのCFAフラン圏2
カ国(セネガルを含む)とコモロ・イスラム連邦共和国(現コモロ連白)において、構造調整計画
の一環で通貨切り下げが行なわれたのだ。目的は、国内企業の国際競争力の向上、貿易収支と経済
成長の回復、貿易赤字の削減にあった。セネガル政府は国有企業の多くを民営化し、多くの商品の
専売制を廃止した。

そのころ、中国はまだ濃縮トマト業界でそれほど大きな存在ではなかったが、イタリアからの技術
移転のおかげで頭角を現しつつあった。一方、1990年代初め、セネガルのトマト生産量とトマ
ト加工品生産量は記録的な数字を打ちたてていた。6万トン近いトマトが加工されており、これは
サブサハラ地域では群を抜いていた。ところがそれに続く数年間で、トマト生産量は急激に落ちこ
み、2000年には2万トン以下に減少した。中国製品がとうとう世界市場に進出してきたからだ。
しかもありえないほどの激安価格で。

セネガル経済は自由化され、市場は完全にオーブンになった。外国産トマトペースト缶の輸入量も
過去に例がないほど急増した。400トンから6000トンヘと15倍に増えたのだ。それに反比
例して、セネガル国内の生産量は2分の1に減少した[4]。6000トンのトマトペーストは、ト
マトに換算すると7倍の4万2000トン分になる。つまりセネガルは、2000年代初め、中国
から4万2000トンのトマトを輸入に頼っていた計算になる。それは実際、セネガルで一年間に
生産・加工できる量にほぼ匹敵した。その分か輸入に回ったのだ。

ソカスはそれでも生産を続けたが、さらに大きな問題が立ちはだかった。国内に強力な競合会社が
立て続けに登場したのだ。2004年にはレバノン入が経営するアグロライン、そして、2011
年にはタカムールが事業をスタートさせた。セネガル市場に進出した当時の同社は、当然セネガル
産トマトを使用して製品を作ると期待されていた。ところが実際は、同社とも再加工工場をトマト
畑ではなく港に近いところに建設した。中国産のドラム缶入り3倍濃縮トマトを希釈して2倍濃縮
にし、缶に詰めなおして売るためだ。南イタリアのトマト加エメーカーとまったく同じやりかただ
った。

セネガルの加工トマト産業は、うまく組織立って活動していたにもかかわらず、みるみる弱体化し
ていった。ソカスも競争力を失った。それもそうだろう。2009年、中国産濃縮トマト1キロの
輸入コストは、関税を含めても、ソカスの濃縮トマト1キロの生産コストの2分の1にすぎなかっ
たのだから。ディエ・ブ・ディアは、実績・技術力・信頼のある会社によって、セネガル産トマト
を使って作られた、品質がよくておいしいトマトペーストだ。だが、価格競争の前には無力だった。
セネガルにも資本主義の風が吹いたのだ。関税障壁が撤廃され、中国は自らの法をセネガルの市場
に持ちこんだ。

そして、悲劇は2013年に起きた。サンールイ州ダガナ県にある、ソカスのトマト加工工場ふた
つのうちのひとつが閉鎖されたのだ。84人の従業員が解雇され、数百人のトマト生産者が貴重な
買い手を失った。建物は解体されることなく放置され、今も廃墟のまま残されている。

 

工場が閉鎖されたとき、セネガルの野党勢力は、ソカス代表のドナルド・バロンを「ならず者社長」
と批判した[5]。工場閉鎖に反対する野党議員にとって、政府与党に近いフランス人経営者は格好
のターゲットだった。バロンは一植民地主義を復活させた人間」と呼ばれ、インターネット上でも
あちこちの記事でそう書かれた。

実際、ソカスエ場の閉鎖は、ひとつの時代の終焉を意味していた。20世紀後半の、フランス企業
とセネガル政府との密接な関係によって生まれた一新植民地主義」が、こうして幕を閉じたのだ。
ソカスが工場をひとつ失ったのは、アフリカの新たな資本主義勢力図で、アフリカに進出してきた
中国、「チャイナフリカーに対抗して負けたからだ。トマトペースト缶の生産工場の消滅はその表
れのひとつにすぎない。

2012年から2015年まで、ソカスでは赤字決算が続いた[6]。中国産濃縮トマトの価格はや
や上がったが、それでもディエ≒フ・ディアの価格は、中国産濃縮トマトを希釈したライバル会社
の商品より三〇パーセントほど高かった。セネガルの加工トマト産業は、西アフリカのほかの国々
とは違ってインフラが整備され、現地で栽培された生トマトを使う生産ノウハウも持っていた。国
内需要に応える生産力を持ち、近隣諸国に輸出できるほどだった。だが、中国産濃縮トマトとの競
争のせいで、セネガルの貿易収支は落ちこんだ。セネガルの濃縮トマト輸入量は、2013年は1
000万ドル、2014年は829ドルだった。そのほとんどが中国産だ。

今日、アフリカが輸入する濃縮トマトの70パーセントが中国産だ。西アフリカだけ見れば、その
割白け90パーセントに達する。ディエ・ブ・ディアは、セネガルのテレビでユーモラスなCMシ
リーズを流して、商品が国産であることをアビールしている。怪しげな商人がセネガル人女性に香
水やハンドバッグなどの輸入品を無理やり売りつけようとする。そこに空から巨大なディエ・ブ・
ディアの缶詰が降ってきて、商人を押しつぶす。最後に200パーセントセネガル産ディエ≒フ・
ディア」というナレーションが流れる。CMのなかで勝つのはIセネガル産」のトマトベースト缶
だが、はたして現実ではどうだろうか?

                    ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 
                                 
                                     この項つづく

    ● 今夜の一曲

Come For A Dream  Dusty Springfield

 


安坊峠/焼岳弾丸登山Ⅰ

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『三 略』(さんりゃく)
略は「機略」「戦略」の意味。『六韜』(ろくとう)と並んで『韜略』といわれる。六世紀ごろの
成立。『三略』は神秘的な成立伝説にいろどられており、今日の目でみると、時代がかっている部
分が多い。上略・中略・下略の三笥から成るが、その中から現代にも通ずる部分を選んで訳出する。

「衆心を察して百務を施す」
戦時体制にある国では、民心の動向を見定め、それぞれの状況に応じた牛メの紬かい対策を講ずる
ことが、肝要である。すなわち、こうだ。

動揺する者がいれば、安心感をうえつけ、恐怖におそわれる特がいれば、気持に余裕をもたせる。
食務を放棄した者がいれば、持ち場に戻らせる。無実の罪をこうむった者がいれば、釈放し、訴え
ごとのある者がいれば、事実をよく調べる。低い身分におかれている者がいれば、高い地位に抜擢
し、権力を乱用する者がいれば、低い地位にねとし、敵対者がいれば、処分する。貧しい者がいれ
ば、暮しに事欠かぬようにし、不満を抱く者がいれば、その解消につとめる。秘密の露見を恐れる
者がいれば、機密保持を保証し、知謀に長けた者がいれば、側近に採用する。言言する者がいれば、
退け、人を中傷する者がいれば、裁判にかける。反抗する者がいれば、身分を剥奪し、乱暴をはた
らく者がいれば、追放処分に付し、権勢をふるう者がいれば、その権力を弱める。帰順を申し出た
者がいれば、受け入れ、服従を誓った者がいれば、生命を保証し、投降した者がいれば、罪を不問
に付す。 

敵地を奪ったら、次の原則を守る感荷がある。
要害堅固の地は、二度と敵に渡さぬように守備を固める。険阻狭屋の地は、封鎖して人が通れぬよ
うにする。戦路上の荷である地には、兵を常駐させる。敵から奪った城、土地、戦利品は、独り占
めせずに分配する・
   
敵国に対しては、次の原則を守る必要がある。   
敵がどんな働きをするか、たえず注意する。敵が軍を進めてきたときには、守備を万全にし、敵が
強大であるときには、下手に出て衝突を避ける。敵が疲れをみせないときには、軍を引き揚げ、敵
が裁りたかぷっているときには、その勢いの衰えを待つ。敵が暴言非道であるときには、その自滅
を待ち、敵が信義に背いたときには、その不義を明らかにし、敵が結束しているときには、上下の
離間を策する。
こちらが挙国一致の体割にあれば、敵の野望は挫折する。相手の出方に応じて意表をつけば、敵を
打ち破ることができる。贈を立てて動揺させれば、敵は混乱状態におちいる。こうして四方に網を
張って獲物をとるように、敵を絶体絶命の境地に迫いやるのである。(上略)

酒を川に注いで欽んだ名将
用兵の眼目は、礼を尽くし、禄を爪くすることにある。礼を尽くしてむかえれば、知謀にたけた人
物が集まり、高禄を与えれば、義にそむかぬ人物は命を賭して戦うであろう。こうして、有為の人
物には財をおしまず、功労には速やかに宣を与えるならば、全人民の力を結果し敵国に損害を与え
ることができる。およそ人材登用に当たっては、爵位と禄の二つがポイントとなる。爵位を与えて
身分をあげ、禄を十分に与えるならば、求めずとも自然に人材は集まるものだ。こうして集まった
人材には、礼を十分に尽くし、義によって奮起させることだ。かれらは対生のために一命を投げ出
すであろう。

一軍の将たる者は、常に士卒と生活をともにし、運命をともにすべきである。こうしてこそ、士卒
は敵を恐れず戦う。かならずや勝利はわがものとなろう。ある名将について、こんな逸話がのこさ
れている。あるとき、かれのところに一簞の酒が贈られて
きた。かれは、それを川の流れに注いで、士卒とともに川の水を飲んだという。わずか一箪である。
川の水に酒の味がするわけがない。それでも、兵士たちはかれのために命を投げだしたいと思った。
兵士たちの心に、かれの思いやりがしみとおったのである。
『軍議』にこう記されている。「将たる者は、井戸掘りが終わらぬうちは、水が飲みたいといって
はならぬ。幕舎の設営が終わらぬうちは、疲れたといってはならぬ。食事の用意が整わぬうちは、
食べたいといってはならぬ。冬に毛皮を着てはならぬ。夏に扇を持ってはならぬ。雨が降っても、
阜を求めてはならぬ。これが将たる者の礼である」と。

運命をともにしているのだという連帯感があってこそ、士卒は離散せず、どこまでも将にしたがい、
疲れることを知らずに戦うのだ。平素から、士卒に恩恵を与え、士卒に連帯感を抱かせてこそ、こ
れが可能となる。(上略)
「たえず恩恵を与えておけば、一人で万人に対抗することができる」というのはこれを意味する。

〈簞〉竹でつくった器。

 

【高品位蓄電池事業:電動自動車向けリチウムイオン電池製造事業】

● パナソニック、EV電池セル3割増産 世界最大テスラ共同工場

7 月2日、パナソニックと米テスラが2016-17年の電気自動車(EV)向け電池供給で2位以下を大き
く引き離してトップとなった。両社はテスラが米ネバダ州に置く電池工場「ギガファクトリー」で
協業している。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)が最近のリポートで示
した。テスラとパナソニックによるEVバッテリー販売は1万4890メガワット時。2位は中国の比亜迪
(BYD)で7360メガワット時。同社には米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が出資している。(
(出典:ブルームバーグ)

 Jul. 2, 2018

また、7月31日、パナソニック、EV電池セル3割増産 テスラ共同工場が世界最大にパナソニ
ックは2018年末に、米テスラと共同運営している米国ネバダ州の電池工場「ギガファクトリー
」で、パナソニックが担う電池セルの生産能力を現在比3割超引き上げる。年産能力は35ギガワ
ット時で、供給先はテスラの電気自動車「モデル3」。この増産は、Tesla Model 3およびエネルギー
貯蔵システムの拡大用需要のため。他の2つのモデル(モデルSとモデルX)には、日本からのバッ
テリー(18650対21700の異なるセル形式)が付属しています。バッテリーの35GWhは、数十万テス
ラモデル3のには十分であるが、11週間に1万本のコピーとエネルギー貯蔵システム用には不足し
そうだ。Tesla Gigafactoryの究極の目標は、105GWhのバッテリーと150 GWhのパックを生産す
る(一部のセルは他の施設からも供給:出典: Nikkan, Electrek, Teslarati)。

 
第17章 「アグロマフィア」の象徴、南イタリア産トマト缶
第1節 
現在、ヨーロッパの大手スーパーチェーンで売られているイタリア食品の多くは、何十万人という
労働者が搾取されたうえで生産されている。オリーブオイル、オレンジ味の炭酸飲料、フルーツ、
野菜……オーガニックを謳っていようが、原産地呼称保護(DOP)が記された「イタリア産」で
あろうが、同じことだ。搾取されるのは、イタリア人の場合もあるし、ほかの国籍の労働者の場合
もある。
 
そうした搾取は、一カポララート」というシステムのもとで行なわれる。一カポラーレ」と呼ばれ
る手配師が、求職者に違法で仕事を斡旋し、手数料を取っているのだ。カボララートは食品業界を
耳る巨大な犯罪ネットワーク、アグロマフィアとつながっている。イタリアではよく知られた存在
で、労働組合の激しい非難の的となっている。イタリアのほとんどの農産物や品分野に関わってお
り、マフィアの拠点が集中する南イタリアだけでなく、北イタリアでも活勤している。この問題は
国内メディアでしょっちゅう取りあげられ、議会でもカボララート取締法が可決されている。だが、
いまだ撲滅されるにいたっていない。

トマト缶の世界輸出量の77パーセントが南イタリア産だ。しかも南イタリア産トマト缶こそが、
カポララートを象徴する商品なのだ。
アフリカからイタリアにやってきた移民たちは、誰もが現地で仕事に就く。たとえ滞在を許可され
なくても、賃金労働者になる。何千人というアフリカ人は、イタリアで「ゲットー」と呼ばれる無
許可労働者キャンプに住みつく。ゲットーはマフィアの支配下にあるが、政府や慈善団体が提供す
る収容センターより人気が高い。カポラーレが斡旋する仕事にありつけるからだ。ゲットーは一般
社会からは隔離されているが、グローバル経済とはつながっている。ゲットーで暮らすことは、雑
居生活をし、不便に耐え、食うや食わずで汚い水を飲み、ぎりぎりの生活を余儀なくされるという
ことだ。マフィアの不当な要求にも耐えなくてはならない。日常的に暴力沙汰かおり、移民の殺人
事件も頻繁に起きている。それでも暮らしていくには家賃を払わなくてはならない。

 その一方で、ゲットーで暮らすことは、同じ境遇の、同じ社会階級の者といっしょに暮らことで
もある。同国人で同じ言語を話し、ゲットーの利点も欠点も知り尽くした人々と、肩を寄せあって
生活できる。疲れるし、苦労は多いけれど、安心はできる。そして何よりも仕事ができる.。働け
るうちは、将来に希望を持つことができる。イタリアのこうしたゲットーは、貧困と搾取の上に形
成された、社会に対する反抗集団なのだ。

  Jul. 11, 2018

国際人権NGO《アムネスティ・インターナショナル》の2012年の報告書によると、イタリア
の農業は移民労働者を搾取することで成り立っているという[1]。ある公式な統計によると、20
12年、ィタリアの農業従事者81万3000人のうち、EU圏外からの正規移民は15万300
0人で、EU圏内からは14万8000人だった[2]。この数字には不法就労者は含まれていな
いが、その数はかなりのものと考えられる。2015年、欧州基本権機関はこの問題に関する報告
書で、「労働者が犠牲になる深刻な搾取」と述べている[3]。南ィタリアのブッリャ州にあるフオッ
ジャは、加工用トマト栽培の中心地として知られる。

「多くの移民が、夏にはトマトの収穫のためにブッリャ州にやってきて、冬にはまた出ていきます,
みんなたいていは北ィタリアのほうへ行きます」

フィジャのイタリア労働総同盟=食品農某紙§(FLAI‐CGIL)のメンバー、ラッファエー
レ・ファルコーネはそう言った。

「フィッジャでは、およそ3万人のアフリカ人移民がトマトの収穫をしています。でも公式な統計で
はわずか2000人です。登録簿に記載されている名前しか記録されないからです」



第3節 イタリア、プッリャ州フオッジャ。ポルゴ・メッザノーネのゲットー
2016年7月30日、朝の四時。セネガル人のアルファは、同国人の男といっしょに寝泊まりし
ている古いキャンピングカーから外に出た。水が入ったドラム缶のところへ行き、洗面器に汲んで
顔を洗う。

「この水はぼくが昨日汲みにいったんです」と、ほかの人たちを起こさないよう小声で言う。
 一ゲットーで水を手に入れるのは本当に大変なんです。こんなこと、アフリカでも経験したこと
ないですよ。まさかと思うでしょう? でも、ニジェールやリビアを歩いて旅しても水に困ること
はないんです。ほとんどの村には井戸があって、赤十字が自動ポンプを設置してくれてますから。
でもプッリャのゲットーで水を手に入れるのは難しい。一番近い給水所に行くのに、ここから歩い
てI0分もかかるんです」
ゲットーに関する公式データは存在しない。合法であろうが、違法であろうが、存在しないことに
なっているからだ。ゲットーの規模はさまざまで、数十人しかいないところから、何千人も暮らす
ところまである。労働組合員たちの話によると、ブッリャ州だけで十数ヵ所あるという。たとえブ
ルドーザーで解体されたり、火事で焼きはらわれたりしても、またすぐに別のところに作られる。

このボルゴ・メッザノーネは、もっとも泥道が少なく、舗装された路面が多いゲットーだ。
旧軍用飛行場の跡地に築かれたからだ。冷戦時代、アドリア海対岸のユーゴスラビアやアルバニア
まで、飛行中隊はここから数分で飛んでいくことができた。敷地のまわりは今も有刺鉄線で囲まれ
ているが、そこにはもう飛行機の姿はない。ボロボロの車、キャンピングカー、コンテナなどが、
滑走路の上にひしめき白っている。たくさんのコンテナは、もはや荷物を積んで世界中に輸送され
ることはない。イタリアに流れついたアフリカ人移民労働者のすみかになっている。コンテナー台
につきマットレスが10枚ほど敷かれ、男たちは畑仕事に出かける前にそこに横たわって休息する。
 アルファはコンロに火をつけ、靴ひもを結び、自転車の準備をする。それから朝食をとり、歯を
き、きちんと帽子をかぶる。目覚めてから一五分足らずでそのすべてをすませてしまう。

「トマト畑まで自転車で一時間です。夜明けまでには着くでしょう」と、やはり小声で言う。

近くのコンテナでまだ眠っている沖間たちがいるからだ。

「ぼくは自転車のほうがいいんです。一時間早起きしなくちやいけないけど、交通費の5ユー
ロを節約できますから」

5ユーロを節約できるとはどういう意味だろうか?
イタリアのゲットーは、違法労働を斡旋するカポラーレの支配下に置かれている。カポラーレは、
移民労働者がゲットーと畑を往復するためのライトバンも手配する。だがそれに乗るには、「交通
費」として一日五ユーロを支払わなくてはならない。夕方、収穫されたトマトの重さを測って一日
の報酬が支払われるときに、五ユーロが差し引かれるのだ。
フォッジャでは、アフリカ人移民のほか、ルーマニアやブルガリアなど東欧諸国からの移民もトマ
トの収穫をする。

「そのほとんどが、きちんとした手続きを踏んでいない不法就労者、あるいは半・不法就労者です。
半・不法就労者というのは、就労の申告をしたのは数時間分だけなのに、シーズン忠ずっと働いて
いる労働者のことです」と、FLAI‐CGILのラッファエーレーファルコーネは言う。
イタリアでトマトの収穫をする移民の賃金は、1ケース300キロにつき平均3・5ユーロから4
ユーロくらいだという。つまり、1キロ当たり・16セントから1・33セントだ。

中国の新疆ウイグル自治区では1キロ当たり1セントだったので、ほぼ同額と言えるだろう。
自転車に乗るアルフア・Cのうしろ姿が小さくなり、とうとう見えなくなった。みんなに置いてい
かれないよう、集合場所のゲットー入ロヘ急いで向かったのだ。行きに一時間、帰りに一時間、一
日2時間自転車に乗ることを選んだ者たちが、並んで走って畑へ向かう。カポラーレに賃重な賃金
をむしり取られないために。

ライトバンに乗ってあちこち行き来したり、ショートメッセージをやりとりしたり、誰でも自由に
ゲットーに出入りできたりと、プッリャ州ではカポララートの活動を容易に感じることができる。
イタリア国家憲兵カラビニエリから逃げも隠れもせず、いつも白昼堂々としているからだ。労働組
合員やジャーナリストでさえ、あまり目立たないようにしていれば、ライトバンに乗ったカポラー
レがゲットーを出入りするのを間近で確認できる。

「取り締まりが不十分なうえ、憲兵が腐敗してるせいでしょう」

わたしが取材をした10人ほどのFLAI‐CGIL組海員は、みな異口同音にそう言った。

「畑で取り締まりがあるときは、事前にその旨がトマト生産者に通達されます。取り締まりといっ
ても形だけなんですよ。大金がやりとりされたこともありました。罪に問われないのが当たり前に
なってるんです」と、ファルコーネが言った。
イタリアでは、加工用トマトの85パーセントは機械で収穫されているが、残り15パーセントは
いまだ手摘みされている。北イタリアは全面的に機械化されているので、手作業で収穫されるのは
もっぱら南イタリアだ。カリフォルニア州のトマト畑は広大なので、機械化することで人件費を減
らすことができ、収穫コストを下げることに成功している。一方、南イタリアでは、たくさんの生
産者が少しずつ土地を所有し、生産者団体を組織して缶詰メーカーと契約を交わしている。小さな
畑が無数に集まっているため、機械化しても生産性の向上にはつながらない。南イタリアのように
区画が小さい畑では、巨大な機械を使って広大な畑で生産をするカリフォルニア式の「大規模農業
」は向いていないのだ。

ナンドーペレッティ基金の支援で実施された研究によると、南イタリアの平均的な広さの畑で機械
を使って収穫をする燭台のコストは、カポラーレが手配した移民労働者が収穫するときのコストと
ほぼ同額になるという[4]。機械と労働者は互いに競合しているのだ。仮にカポラーレが暴力や
脅迫という手段に訴えて移民に賃金を支払わなければ(これは実際に頻繁に行なわれており、それ
が原因でゲットーで暴力沙汰になることも多い)、ただ同然で働かされる21紀の奴隷たちは、最
先端技術を駆使した機械よりさらに高い競争力を誇るだろう。

ゲットーでは夏になると、雨乞いをする移民の姿をよく見かける。キリスト教徒だろうがイスラム
教徒だろうが関係ない。雨が降ると畑はぐちやぐちやにぬかるんで、重い収穫機械が泥にはまって
動けなくなる。生産者はリスクを冒したくないので、そういうときはカポラーレに頼んで労働者を
雇う。雨の日は報酬が値上がりし、1ケース当たり4ユーロ以上支払われることもある。つまり、
移民にとっての雨は、賃金を上げてくれる恵みの雨なのだ。だが、雨が降ろうが降るまいが、手作
業による収穫は機械よりずっと質が高い。手摘みをする労働者は、機械とちがって赤く熟したトマ
トしか収穫しない。そっと注意深く摘みとるので、機械のように実を傷つけることもない。そのた
め、最高級品質のホールトマト缶や、最上級ブランドの商品には、手摘みされたトマトが使用され
るのだ。

  Oct. 24 , 2017

第3節 プッリャ州りニャーノ。グラン・ゲットー
グラン・ゲットーは、その名のとおり、ブッリャ州殼大の労働者キャンプだ。海原のように広がる
トタン屋根とビニール製防水シートを、森のように立ち並ぶ木製の板や梓が支えている。夏になる
と5000人ほどの移民がここに寝泊まりする。全員アフリカ人だ。とくに、セネガル人、ブルキ
ナファソ人、マリ人、トーゴ人、ナイジェリア人の姿が目立つ。ボルゴ・メッザノーネのゲットー
と同じように、英語かフランス語か、話す言語によって居住エリアが分かれている。
2016年8月1日、わたしはフオッジャのFLAI‐CGIL(労働総同盟=食品農業組合)組
合員、マグダレーナーヤルチャックといっしょにグランーゲットーを訪れた。ヤルチャックは19
80年にポーランドで生まれた女性だが、2000年代初め、農業労働者としてイタリアに移住し
た。

「あれは15年前のことです。同国人の男に連れられて、ほかの人たちといっしょにここにやって
きました。フオッジャのオルタ・ノーヴァ、カラベッレ、ストルナーラ、ストルナレッラといった
村で農作業をするためです。その男はカポラーレだったのですが、そのときはそんなことは知りま
せんでした。男はたくさんの男女をポーランドから迪れてきて働かせていました。わたしは打ち捨
てられた古い家で暮らしはじめました。いわゆるカソラーレですが、飲用水もありませんでした」

カソラーレとは、プッリャ州特有のレンガや石造りの簡素な小屋だ。ファシスト政権下の農地改革
の一環で農家として建てられたが、今はほとんどが廃墟になっている。

「わたしが暮らしたのは、オルターノーヴァの田台でした。畑で三ヵ月間働き、トマト、ブドウ、
アーティチョークなどを収穫しましたが、報酬はもらえませんでした。カポラーレに躾どりされた
のです。わたしやほかの子たちの書類を取りあげて、三ヵ月の就労期間が終わったら支払いをする
と約束したのに、すべて嘘でした。お金をもらったことは一度もありません。結局、わたしはほか
の子だちといっしょに逃げだしました。女の子たちが売春させられていることに気づいたからです。
男は働かされ、女は売られていたのです。今ゲットーで暮らしている人たちも同じです。ルーマニ
ア人、ブルガリア人、アフリカ人など国籍は変わりましたが、状況はむかしとまったく変わってい
ません」

2000年代初め、ポーランド人のカポラーレが起こした暴力事件が、イタリアとポーランドの外
交問題にまで発展した。その後、多くのボーランド人労働者が行方不明になっていることも発覚し、
何人かは遺体で発見されている。マグダレーナ・ヤルチャックはFLAI‐CGILに助けられ、
感謝の気持ちから組合の活動を手伝うようになった。イタリア語が堪能なこともあって、今はフオ
ッジャの農業労働組合を支える重要なメンバーのひとりになっている。
リニャーノのグランーゲットーで生活を始めるには、まず、25ユーロで入居権を購入する必要か
おる。さらに、月に20ーロから30ユーロの家賃を支払わなければならない。季節によって異な
るが、グラン・ゲットーの人居者はだいたい4000人から5000人だ。カポーレの家賃収入は
月に数万ユーロになる。ゲットーでは何をするにもお金がかかる。たとえば、携帯電話の充電は□
‥)ユーロセントから20ユーロセントだ。カボラーレはゲットーで一財とサービス」を提供して
商売をしている。

プッリャ州のほかのゲットーと同じように、アフリカ入労働者の仕事に選択の自由はまったくない。
男は畑仕事、女は売春だ。季節によって男の賃金が変わるのに合わせて、女の報酬も変動する。需
要と供給の法則が適用されているのだ。売春の仕事もカポラーレに依存することで成り立っている。
男がライトバンでの送迎に一日5ユーロ支払うのと同じように、女は売春の部屋代として一日10
ユーロ支払わなくてはならない。客がない日でも部屋代は必要だった。

「東ヨーロッパからやってきてゲットーに住んでいる女性は、プッリャ州の畑で仕事をします。で
もアフリカ入女性は基本的に畑では働きません」と、組海員のファルコーネは言う。
「ゲットーで生活をするために、アフリカ人女性にはふたつの選択肢しかおりません。ひとつは男
の情婦になること。でもこれは稀なケースです。もうひとつは売春で、こちらのほうがずっと多い
です。乗ヨーロッパの女性の場合はまた状況が異なりますが、だからといってアフリカ入女性より
条件がよいわけではありません。畑で仕事をしたり、パトロンができたりしても、売春を強要され
ることはあるからです」

 Dec. 10, 2016

冬になると、ブッリャ州のゲットーでは、暖をとるための道具があちこちに備えつけられる。火を
燃やしただけの簡単なもので、安全装置などついていない。そのせいで、ゲットーが大火事に見舞
われることがしばしばある。施設が木材やビニールなど燃えやすい素材で作られいるので、ほんの
数十分で全体に燃え広がってしまうのだ。2016六年、リニャーノのグラン・ゲットーで、大火
傷やケガなどの負傷者や死者を出した火事が発生している。2016年12月には、フォッジャ近
郊のブルガリアーゲットーに発生した火災で、20歳の青年が炎に包まれて死亡した[5]。201
2017年3月2日木曜夜には、またしてもグラン・ゲットーで火の手が上がり、敷地はほぼ全焼
し、アフリカ人移民ふたりが命を落とした[6」。

                    ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 
                                 
                                     この項つづく

   ● 今夜の一曲

『The long and winding road』
Singer:Olivia Newton-John ↑/Paul McCartney↓

The long and winding road
That leads to your door
Will never disappear
I've seen that road before
It always leads me her
Lead me to you door  ......

 

 

スポーツ・ブラック・ビジネス

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『三 略』(さんりゃく)
略は「機略」「戦略」の意味。『六韜』(ろくとう)と並んで『韜略』といわれる。六世紀ごろの成
立。『三略』は神秘的な成立伝説にいろどられており、今日の目でみると、時代がかっている部分が
多い。上略・中略・下略の三笥から成るが、その中から現代にも通ずる部分を選んで訳出する。

性質に応じて使え
『軍勢』には、こう記されている。
「人には、それぞれ目的がある。知謀にたけた人は、功業をたてたいと望かだろうし、勇を好む人は、
志が達成されることを順うだろう。物欲の強い人は、利益をあげることを求めるだろうし、愚鈍な人
は、死ぬことを何とも思わないだろう。したがって、軍隊を統率するさいには、各人の真意がどこに
あるかをよく見極め、それによってそれぞれの使い道を決める必要がある。こうしてキメの紬かいや
り方で一軍を統率することが大切である」(中略)

〈『軍勢』〉古代の兵法書といわれているが、定かではない。先の『軍職』と同じく、仮託の言で
あろう。

機密保持・団結・敏速
『軍識』には、こう記されている。すなわち、「大事なことは、将のはかりごとに秘密が保たれ、兵
士が一致団結し、敵を攻めるに当たって敏速であることである」と。将のはかりごとに秘密が保たれ
るならば、車内に火切り行為は超こらない。兵士が一致団結しているならば、いかなる事態にも結束
して当たることができる。攻撃が敏速に行なわれるならば、敵は防禦態勢を建て直すいとまがないだ
ろう。この三つの条件が備わった軍隊であれば、いかなる計略をたてても失敗することはない。

その反対に、もし将のはかりごとがいつのまにか洩れてしまうならば、軍隊は無力になる。もし、内
部の状況が敵につつぬけであるならば、不利な事態の生じるのを防ぎようがない。もし、内部に敵と
通じる者が現われて買収工作を行なえば、兵士はたちまち徒党を組んでよからぬ相談をするだろう。
この三つの害悪に気づかぬ将が車の統率するとしたら、勝利は絶対におぼつかない。(上略)

衰亡する組織とは
軍を統率して臨戦態勢にしておくのが、将の務めである。実際に敵を打ち破って勝利をもたらすのが
兵士の務めである。してみれば無能な武将に軍を維持させ、命今に従わない兵士に敵と戦わせたとこ
ろでむだである。敵城をおとせないことはもちろん、野戦においても失敗するに決まっているからで
ある。どちらをやっても戦果をあげえないならば、その結果は、軍の疲弊が残るだけである。疲弊し
た軍隊にあっては、将は孤立し、いくら命令を下しても兵士の反感を買うばかりである。こうして守
っては崩れ、戦っては敗走するのが、無能な将と命今に従わない兵士とを抱えた軍隊の運命である。
これはもはや衰亡した軍隊でしかない。

軍隊が衰亡するとどうなるか。もとより将の威令はゆきわたらず、したがって刑罰を課しても甘くみ
られるばかりである。兵士の隊伍はバラバラになって、逃亡兵が続出するだろう。そうなっては、敵
にやすやすとつけこまれるだけである。敵につけこまれた軍隊は、滅亡する。(上略)


 

 

第17章 「アグロマフィア」の象徴、南イタリア産トマト缶
第4節 プッリャ州チェリニョーラ。ガーナ・ゲットー
2016年3月、わたしはエンゾ・リモザーノに同行してガーナ・ゲットーを訪れた。リモザーノは
心臓血管外科の元医師だ。すでに定年で引退している-ゲットーの人口でキャンピングカーを停め、
エンジンを切る。フロントガラスの向こうに、廃墟となったカソラーレの小さな集落が見える。わた
したちは車を降り、ドアをバタンと閉めた。その立日を間いて、あたりをうろついていた野良犬が吠
えはじめる。目の前にはゴミが散らばった細い泥道が伸びていた。

歩きだしたリモザーノの後をわたしもついていく。ガーナ・ゲットーを訪れる外部の人間は、はじめ
にリーダーのところへ挨拶に行かねばならない。アフリカの部族を訪ねるときと同じしきたりだ。ガ
ーナ・ゲットーの「首長」の名はアレクサンダーという。

「首長はここに住んでるんだ」

シモザーノは小声で言い、ドア代わりに取りつけられた木の板をノックした。屋根に穴が開いていた
が、ダンボールでふさいであった。その上に防水シートがかぶせてあり、重石が乗っている。寒い日
たった。ゲットーは閑散としていて、誰もいないように見える。

「この時期、畑の仕事はほとんどないから、別のところに働きにでてる人間が多いんだ。気候がよく
なって収穫期になるとまたここに戻ってくる」

室内には三人の男性がいた。顔を見分けることができないくらい薄暗い。

「チャオ。アレクサンダーはどこだい?」

リモザーノが尋ねると、三人は一斉にひとつの方向を指差した。そちらを見ると、酋長が毛布にくる
まって、発砲プラスティックシートの上に横になっていた。室内には、どこかから拾ってきたらしい
古い家具がいくつも置かれている。首長が寝ている奥の壁には、バス停から拝借してきたらしい大き
な宣伝用ポスターが一面に貼られていた。高級ブランドの香水、女性用ランジェリー、ジュエリーな
どの広告で、肌をあらわにした女性がポーズをとっている。

アレクサンダーがゆっくりと起き上がる。あごひげに白いものが混ざっていた。歳をとっているせい
か、あるいは眠いせいか、動きがぎこちない。アレクサンダーはわたしたちにほほ笑みかけ、一ゲッ
トーにようこそ」と挨拶をした。首長もほかの居住者だちと同様に移民労働者だ。カポラーレとはい
っさい関係ない。ガーナ人が多いことから「ガーナ・ゲットー」と呼ばれるこの労働者キャンプで、
年配者であるがゆえに首長と呼ばれるようになったのだ。
薄明かりのなかにいる三人の男性は、表情ひとつ変えずにこちらを観察している。そばにはロードレ
ースのポスターが貼られていた。ライダーがバイクを内側に傾けながら、サーキットのカーブを回っ
ている。

「きみたち、もし医者が必要なら言ってくれ。人口に停めてあるキャンピングカーで診察するから」

リモザーノはそう声をかけ、握手をしてから家の外へ出た。それからひとつひとつカソラーレを訪れ
て、医師が来ていることを告げて回った。
ガーナ・ゲットーを訪れるのは、FLAI‐CGILの組海員と、近隣に暮らす修道女のシスター・
パオラ以外では、このリモザーノくらいだった。

「2015年には、イタリアの有名なNGOが、ここにいる気の毒な労働者たちの医療ケアをしに来
ていたんだ。救急医療チームも連れてきていたから、かなり質のいい医療だった。でもそれは、プッ
リャ州から助成金が出ていたからやってたんだ。助成金が打ちきられた途端、彼らはぱったり来なく
なった。自分たちの資金を使って2ヵ月に一度くらいは来たってよさそうなものなのに、あれから一
度も来やしない。でもここの状況はちっともよくなっていない。何ひとつ改善されていないし、むし
ろ悪くなってるくらいだ。そのNGOは今も、アフリカの紛争地帯の子どもたちの写真や映像を使っ
て、駅のボスターやテレビCMで寄付を募っている。そういう活動をしている一方で、イタリアにい
るアフリカ人たちを見捨てているんだ。こんな近くに困っている病人がいるというのに。まったく恥
ずかしいことだ」

リモザーノは憤慨していた。彼は政治活動家でもなければ、カトリック慈善団体のボランティアでも
ない。単なる引退した医師だ。ひょんなことから未知の世界の現実を目の当たりにして、どうしても
見すごすことができなかったのだ。

「正直なところ、ここに最初に来たときは、人生で初めてイタリア人であることを恥ずかしく思った
よ。だから、自分にできることはすることにした。協力してくれる人たちもいる。医薬品を分けてく
れる薬剤師もいる。医大の講堂で呼びかけると、月に一、二度の日曜、いっしょにブッリャ州のゲッ
トーを巡回してくれる医学生や研優生もいる」

地方自治体で運営している給水車が、ときどきゲットーにやってくる。だがかなり不定期で、週に一
度来ることもあれば、何週間も来ないこともある。その間、ゲットーでは飲用水が今に入らない。
リモザーノが運転してきたキャンピングカーは、NGOが所有する最先端の医療救護車とはまったく
ちがう。ボロボロの中古車で、シートはすでにすりきれている。ブッリャ州で活動する複数の慈善団
体が共有する、唯一の医療用車両だ。そのたった一台の車を借りて、月にスニ度、診察のためにここ
にやってくる。

キャンピングカーで診察が行なわれている間、わたしはゲットーをぶらついた、そしてト-ゴ人の男
性と出会った。このゲットーでフランス語を話すのは彼だけだという。「もうどうしたらいいのかわ
からない」と、途方にくれた様子で言う。
イタリアのゲットーで、ヨーロッパに渡ったことを後悔しているアフリカ人移民に会ったのは、これ
が初めてではない。多くの男たちが、どんなにつらい仕事も耐える覚悟で、希望を胸にここへやって
くる。だが、難民認定手続きで却下され、しかたがなく不法滞往者になったときが運命の分かれ道だ。
行くあてがなくなりゲットーに身を寄せる..生きるために仕事に就くが、稼いだ金はゲットーでの
生活で失われ、その日暮らしの賃金労働者になる。わずかな賃金を節約してようやく小銭を貯めたこ
ろ、母国の知り§いから電話がかかってきて、金を送るようせがまれる。そして、母国になけなしの
金を送る。相手を失望させたくないからか、助け合いの精神からか、あるいは「貧困に立ち向かう勇
敢な自分」という自らが築いたイメージを壊したくないからか、侈民たちは誰もがそうする。そして
数カ月経ったころ、もうそこから抜けだせなくなってしまうのだ。

ガーナ人の男性とも知り合った。顔をケガしていたので、キャンピングカーに連れていくことにした。
カポラーレが数日分の賃金を支払ってくれなかったのでケンカになり、ナイフで切られたのだという。
だが、きちんと治療してもらえぼ痛みはひくだろう。

「さあ、なかへ入って。痛いだろうけど、大ケガじやないから大丈夫だ」

わたしは男性を促し、いっしょに単に入った。車内には消毒液の匂いが漂っていた。治療を終えると、
リモザーノは薬が入った箱の上にI2」と記し、さらに二本の棒線を引いた。一回に服用する薬の数
を示すためだ。男性は文字が読めなかった。それでも不安そうにしていたので、リモザーノは最後に
指を二本立ててみせた.

第5節 
トマト収穫期だけなわの2016年7月、わたしは再びガーナ・ゲットーを訪れた。三月に来たとき
よりずいぶん移民が増えていた。みんな英語で会話をしている。
通り沿いの上手の上に車の残骸があった。前回もそこにあった覚えがあるが、そのときは気にもとめ
なかった。だが、今回はドアが開いていた。見上げると、なかに黄色いTシャツを着た黒人の男性が
いるのがわかった。目を見開いて今にも襲いかかってきそうな表情をしている。が、身動きひとつし
ない。数分経ってもそのままだった。

わたしは男性のほうに近よった。だが、数メートルのところまで近づいても、視線を合わせることは
できなかった。年齢は50代くらいだ。まるで生気のない、ガラス玉のような目をしている。この車
の残骸のなかで暮らしているのだろう。なかは雑然としていた。男はようやくわたしの存在に気づい
たようで、聞きとりにくい英語で口ごもった。わたしたちは互いに意思疎通をはかろうと試みた。彼
は底が抜けて黒ずんだ鍋をわたしに示した。車内からひどい匂いが漂ってくる。ここで寝泊まりして
いるのかと尋ねると、ことばを発する代わりに寝る真似をしてみせた。布きれにくるまってシートに
横たわる。それから、足の甲に広がる化膿した傷を見せてくれた。

この傷のせいで収穫の仕事ができなくなったのだ。その目はもうまわりの世界を見ていなかった。そ
の男性にとっての世界のすべては、果てしなく広がる虚無なのだ。それは底知れない開だ。もはや労
働力を提供することはできない。金を稼ぐ手段を失った。ガーナで生まれ、プッリヤ州にやってきて、
何年も農業をして働いてきた。このゲットーで、最後の最後まで力を振りしぼって精いっぱい生きて
きた,だが、もう力つきたのだ.

夏の暑さに参ってしまったのだろう。ほかのアフリカ人移民にめぐんでもらう食料だけを頼りに、な
んとか命をつないでいる。ゲットーには野良犬がいるが、あたりを跳びはれたり、木陰でのんびり眠
ったりしていて、この男よりずっと幸せそうだ。男はゆっくり息を引きとろうとしていた。目の前に
広がるのは果てしない孤独だけだ。身動きひとつせず、車のシートに座ったままでそこにいつづける。
夜のとばりが下りるなか、その車のドアは大きく開け放たれたままたった。

第18章 イタリアの労働者の違法な搾取
第1節
農業の労働市場をめぐる争いには歴史がある。そしてその争いは、イタリアの歴史において重要な位
置を占めている。かつて北イタリアのボー川流域では、肥沃な土地と豊富な水資源によって農業が栄
え、その恩恵を受けて加エトマト産業が誕生した。その一方でボー川流域は、イタリアでファシズム
運動が誕生した土地でもあった。

1919年イタリア戦闘者ファッシ」という政党を設立したベニート・ムッソリーニは、総選挙で惨
敗したのちにこの地で勢力を拡大した。この土地の自作農たちを、党の準軍事組織「行動隊」に取り
こんで、イタリア社会党と争いながら権力を強めていったのだ。行動隊に参加した自作農のほとんど
は、第一次世界大戦の退役軍人だった。当時、ファシスト運動家としては、作家・詩人でもあったガ
ブリエーレ・ダンヌンツィオのほうがムッソリーニより知名度が高かった。そんななかでムッソリー
ニが台頭できたのは、行動隊の支援があってこそだった。

1919年といえば、第一次世界大戦とロシア十月革命の気配が色濃く残っていたこともあって、総
選挙では社会党が大勝した。これをきっかけに、「赤い二年間」が始まった。不況が深刻化したこの
時期、農民と労働者はあちこちで農地や工場を占拠し、暴動を起こし、ストラ
イキを実行した。イタリア社会党の急進派は、土地を所有していない小作農、いわゆる日雇い労働者
と呼ばれる人たちを率いて革命を起こそうとした。社会主義の名の下に、彼らに労働市場を支配させ
ようとしたのだ[1]。主にボー川流域で、労働組合や労働会議所が次々と設立され、日雇い労働者
たちが組織で活動しはじめた。農場経営者による支配に抗議し、労働の解放を求めて戦った。その結
果、賃金はアップし、労働条件も向上された。

1920年、ボー川流域では、農場経営者が労働者を雇いたいときは、自ら労働会議所に出向いて手
続きをしなくてはならなくなった。日雇い労働者に対して常に優位な立場にあった農場経営者が、権
力を増してきた労働組白と対等に交渉することを強いられたのだ。労働組白け日雇い労働者たちに、
土地の所有や社会的地位より労働のほうが価値があるという思想を広めた。

農場経営者たちは、かつての資本主義システムを取り戻し、自分たちが再び且雇い労働者より優位に
立てるよう、社会主義を破壊しようとした。だが一筋縄ではいかなかった。労働組合の要求を退けよ
うとすると、すぐにストライキが起こるからだ。状況はかなり緊迫していた。
そこで農場経営者たちは政府に支援を要求した。しかし当時の首相ジョヅアンニージョリッテイは中
道的な自由主義者で、しかもやがて80歳になろうとしていた。5期目の首相に就くために贈賄にも
手を染めており、国の秩序を回復させることはもはやできなかった。

代わりにその役目を拒ったのは、黒シャツ隊だった。各地の行動隊を統合して結成された、ムッソリ
ーニの政党の私兵組織だ。1920年11月、イタリア戦闘者ファッシはファシスト党と改組され、
各地の暴動やストライキは黒シャツ隊によって鎮圧された。同年11月21日、北イタリアのボロー
ニャの市役所で六大の社会主義者が殺害されると、労働者にとって黒シャツ隊は大きな恐怖となった。
黒シャツ隊の中核メンバーも行動隊と同様に退役軍人で、反戦主義と国際主義を掲げる社会党を忌み
嫌っていた。そもそも1914年、社会党員だったムッソリーニは、参戦主義と国家主義を掲げて大
々的な参戦運動を展開し、党から除名処分を受けていたのだ。ヨーロッパの社会主義政党で、戦時も
中立を主張しつづけたのはイタリア社会党だけだった。黒シャツ隊は、社会党に関わるあらゆるもの
を破壊していった。社会党系列の新聞社、印刷所、労働会議所、組か集会所、交流クラブ、協会事務
所などを次々と放火した。イタリアの国情は一気に不安定に陥り、多くの都市がファシスト党の支配
下に置かれた。

1921年1月21日、労働者の暴動やストライキを指導したアントニオ・グラムシらが、社会党か
ら分裂してイタリア共産党を結成する。するとファシスト党は共産党を新たな攻撃のターゲットに据
えて、ますます勢いづいていった。一方、政権は自由党が掌握しつづけたものの、共産党、社会党、
人民党が桔抗して次々と内閣が交代し、政府はほとんど機能しなくなった。労働者の暴動を恐れる農
場経営者はムッソリーニとファシスト党を支持し、資金や武器を援助した。そして1922年10月
ムッソリーニによるクーデターのローマ進軍が起こり、国王がムッソリーニに組閣を命じ、11月2
4日にムッソリーニ政権が誕生した。12月19日、イタリア産業総同盟(コンフィンドウストリア)
は、ファシスト政権が設立したファシスト協同同盟の支配下に置かれた。1926年には、イタリア
でストライキは違法とされた。

第2節 イタリア、プッリャ州プリンディジ
「カポララートは労働市場の違法占有です。それ以外の何ものでもありません」
プッリャ州ブリンディジのイタリア労働総同盟=食品農業組合(FLAI‐CGIL)書記長、アン
ジェロ・レオは、2016年7月31日の取材に対してこう述べた。

「不法労働を斡旋するカポラーレは、1960年代に登場しました。きっかけはモータリゼーション
です。そもそもカボラーレは、ライトバンなどの輸送手段を所有している人たちのことでした。日雇
い労働者から金を集めて畑まで送迎していたのです。初期のカポラーレは、むかしイタリアで農業に
従事していて、戦後ドイツに移住したイタリア人でした。夏のバカンス中イタリアに車で帰省してい
たのが、やがて休暇をとるより金もうけをするのを選ぶようになったのです。当時のイタリアでは農
業が大きな変化を遂げていました。急増する消費を満たすために機械化が進められました。労働者の
需要も高まりました。

ライトバンを所有するカボラーレは、農業生産者に労働力を供給することで大金を稼ぎました。じつ
は、カポララートは、アフリカ人、ルーマニア人、ブルガリア人の移民労働者だけを対象にした組織
ではないのです。
搾取されるのはイタリア人も同じです。たとえばこのブリンディジでは、今でも多くのイタリア人女
性がカポラーレに頼って仕事を得ています。自家両軍を所有していない女性でも、カポラーレの単に
乗って自宅と畑を往復できるからです。晨良150キロメートル離れた場所まで送迎してもらえます。
朝三時から四時ごろ、大きな広場や目抜き通りでカポラーレは労働者たちを拾います。
労働者をトラックに乗せるかどうかは、カポラーレが判断します。トラックに乗せるための条件も一
方的に設定します。たとえば、労働一時間分の賃金を手数料として支払うといったことです。不平を
言えば翌日から単に乗せてもらえなくなります。

現在、イタリアでは失業率がとんでもなく高くなっています。とくに南イタリアの主婦のなかには、
一家の大黒柱として働かざるをえない場合もあります。だからこそ、カポラーレにしぶしぶながら服
従するのです。労働市場を支配しているのはカポラーレですから。わたしがプッリャ州で組海員とし
て活動してきて、かれこれ40年になります。カポララートがどんどん成長し、巨大組織化するのを
目の当たりにしてきました。毎年夏になると、畑で作業中に労働者が命を落とします。それがたまた
まニュースになり、労働者の名前が報じられるときだけ、わたしたちはその事実を知ることができま
す。でもたいていの場合、とくにそれが不法移民だったりしたら、事件は決して公になりません。証
人は買収され、遺体はすぐに別の場所に移されます。カポラーレがどこかへ隠してしまうのです。                     

1980年代の終わり、わずか数年間だけ、ブッリャ州とバジリカータ州で協定が結ばれました。数
百人の農業労働者を対象に、労働の自主管理プロジェクトが試験的に実施されたのです。この一環で、
農業労働者のための公共交通機関の整備、公的な職業相談所の設立、労働組合権の付与、労働時間の
遵守などが行なわれる予定でした。ところが、カボラーレたちがこれに暴力で抵抗したのです。まず
公共機関が所有する単に次々と火を放ちました。それから、このブロジェクトに協力する予定だった
企業の経営者に、手を引くよう脅迫しました。カポラーレは、プロジェクトが成功してこの動きが
各地に広がることを恐れたのです。

結局、このブロジェクトは、関係者たちが怖気づいたことで失敗に終わりました。それを決定的にし
たのは、ブリンディジのチェーリエ・メッサーピカという町で、組合の集まりが襲撃される事件が起
きたことです。その日、労働会議所には、カポラーレの性暴力に抗議する女性労働者たちが集まって
いました。その真っ最中に会場が取り囲まれ、ふたりのカポラーレが乱入してきたのです。わたしも
その場にいたのですが、抵抗すると暴力を振るわれ、殺すと脅されました。女性たちはからくも逃げ
だしましたが、殺されるのではないかと怯えていました。
襲撃事件を起こしたカポラーレたちは、イタリア国家憲兵カラビニエリによって逮捕され、のちに裁
判で有罪になりました。でもこの事件は女性たちにトラウマを負わせ、プロジェクトを進める勇気を
失わせてしまいました。それからまもなく、労働市場は再びカポラーレの手中に戻ったのです」

第3節 イタリア、ローマ。共和国元老院(上院)
2011年、イタリアでカボララート取締法が制定された。にもかかわらず、いまだこの問題が解決
していないのはなぜだろうか?原因のひとつとして考えられるのは、この法律には、カポララートの
労働力搾取における大手食品メーカーやスーパーチェーンの連帯責任を問う記述がないからだ。だが、
労働力を搾取することで生産された商品を販売しているのは、こうした大手企業だ。プッリャ州で収
穫されたトマトを使ったホールトマト缶は、ヨーロッパ中、あるいはアメリカで、大手食品メーカー
やスーバーチェーンによって流通されている。

大手スーパーチェーンや、トマト缶メーカーを傘下に置く食品グループは、労働力を供給されている
トマト生産者以上に、カポララートの恩恵を受けている。トマト生産者のもうけは、収穫量1キロ当
たり7ユーロセントから10ユーロセント程度だ。それほど余裕のある生活はしていない。カポラー
レに関しては、収入はケースバイケースだ。現在のカポラーレの多くは元移民労働者で、イタリア語
を流暢に話せるために搾取される側からする側に回った。高額を得ているカポラーレの燭台、月に1
万ユーロ以上になることもある。労働者に対して情け容赦ないのがこのタイプだ。だがたいていのカ
ボラーレの収入はそれほど多くない。カボラーレは犯罪集団の末端にすぎず、背後の黒幕に金を渡さ
ざるをえないからだ。

この犯罪ネットワークが明るみに出たときに逮捕されるのは、実際に畑に姿を見せるトマト生産者と
カポラーレだけだ。食品メーカーや大手スーパーチェーンの経営者たちは、決して罪に問われること
はない.

「この問題を解決するには、業界の連帯責任を問う必要があります」

ブッリャ州の上院議員のダリオ・ステファノ(「左翼・エコロジー・自由」党所属。同党は2016
年に解党)はそう言う。カポララート取締法の草案を作成した人物だ。

「イタリア国内はもちろん、EUの法律も変えるべきです。大手食品メーカーやスーパーチェーンは、
加工トマト業界で起きているすべてのことについて連帯責任を負うべきです。いえ、トマトだけでな
く、農業全般についてそうでなくてはいけません。下請けがやっていることを見て見ぬふりをしたり、
知らなかったとうそぶいたりできないようにすべきです。大企業が下請けに責任をなすりつけて知ら
ん顔をしているかぎり、カポララートはヨーロッパからなくなりません。現行法より厳しい法律を制
定し、大企業が商品生産をきちんと管理するようにさせるのです。そうすれば、カボララートの存在
を見て見ぬふりができなくなります」

2011年に制定された法律では、カポララートを消滅させることはできなかった。今もイタリアの
新開では、この問題が一面で頻繁に取りあげられている。一部のカポラーレは、まんまと法の目をかい
くぐり、新しい状況に適応しながら生き延びている。合法の派遣会社を設立し、犯罪を偽装しはじめ
たのだ。これによって、とくに南イタリアにおいて、移民の不法労働にまつわる新たなタイプの犯罪
も誕生した。農業労働時間の闇取引だ。

イタリア国民が年金や失業手当などの社会保険を受けるには、何らかの分野で一定期間労働し、保険
に加入しなくてはならない。カポララートはその労働時間を開で売りはじめたのだ。つまり、アフリ
カ人などの移民が不法労働を行なった分の時間を、イタリア入がカポララートを通じて購入する。す
るとそのイタリア入は、実際は労働をしていなくても、その労働時間と保険加入期間の記録のおかげ
て失業保険や年金を受給できるようになる。だが本来、その権利は労働者本人に還元されるべきもの
だ。つまりここでも移民労働者は搾取されていることにな そのうえ、一派遣会社」代表のカポラー
レやトマト生産者は、万一当局から疑われて捜査されても言い逃れができる。正式な書類さえそろえ
ておけば、「実際に雇用した」「合法的に社会保険に加入させた一と主張することが可能だからだ。
こうして労働市場は「派遣会社」に支配され、アフリカ入移民はますます就労を申告したり、支払い
証明を受けたりできにくくなった。
合法的にイタリアに滞在できる許可を取得することがいっそう困難になったのだ。

「それから、畑から小売店まで、商品の一貫したトレーサビリティを確保しなくてはなりません。業
界全体の連帯責任を可能にするためです」

カポララートはイタリアだけの問題ではないと、ステファノ上院議員は言う。イタリア入だけに責任
があるわけではない。この問題の根本的な原因は、ほかのさまざまな現象と同様に、グローバル化し
た資本主義経済にあるからだ[2]。
カポララートという労働者搾取システムは、かつての奴隷制度の再来だ。自由主義思想を経済体制に
取り入れたために誕生したのだ。自由放任主義によって、政府が経済活動や市場に干渉しなくなった
からだ。

奴隷制度がいかに自由主義と関わりが深いかは、世路の歴史を振りかえればわかるだろう。
人身売買がもっとも盛んに行なわれたのは、一六世紀からIハ世紀だった。それはちょうど経済学者
や哲学者たちによって、新たに台頭した特権階級の私的財産を前提として自由主義が提唱された時代
に相当する。
今日、南イタリアの農業における「自由」は、ある特定の人たちだけに利益をもたらすものになって
しまった。そしてそれは、不当な利益だ。EU圏内に多くの移民キャンプが作られ、労働者を搾取・
脅迫し、正当な権利を要求するアフリカ人移民をときに殺害するカポラーレたちが、堂々と車で街中
を行き来する………だがこれは「自由」がもたらした現実のもっとも衝撃的な一例にすぎない。
                             
                      ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 
                                 
                                       この項つづく

【安坊峠/焼岳弾丸登山Ⅱ】

 

  安房峠

焼岳火山群は,北アルプス南部,安房(あぼう)峠(標高1790m)以北に位置するアカンダナ火山,白
谷山(しらたにやま)火山,大棚(おおだな)火山,焼岳火山,岩坪山(いわつぼやま)火山,割谷
山(わるだにやま)火山の7つの火山から構成される.この火山群の東側には信濃川水系の梓川が、
西側には神通川水系の高原川が流れ,これら河川の河床から山稜までの比高は1000m以上もあり急峻な
地形をもつが、山麓には上高地、平湯、細池、小船、安房平などの小盆地(凹地)が存在。これらは、
焼岳火山群の裾野と基盤岩が接する所にあることから,この火山群の活動による河川の堰き止めによ
り形成されていると考えられている。

焼岳(標高2455m)は、溶岩ドームとそれが崩壊して発生した火砕流堆積物で作られた火山。数千年間に
1回程度の割合でマグマ噴火を行い、その間に複数回の水蒸気噴火を行っている。約2300年前に最新
のマグマ噴火が発生し、山頂部分の溶岩ドームとその周囲の火砕流堆積物が作られた。近年の噴火は
いずれも水蒸気噴火で、降灰や噴石の降下と共に、火口から直接火山泥流が流れ出る。平常でも噴気
活動が認められ、気象庁が定めた「活火山」であり、「常時観測火山」である。

天候良好、30日(月)午前2時出発→中部縦貫道路を経て奥飛騨温泉郷=安坊峠経由→7時に焼岳
登山口駐車場着→11時、強烈な日照で8、9合目付近で携帯飲料水300ミリリットルを切る(途
中確保不可)、登頂断念下山→14時、中の湯旅館で休憩(水分補給1リットル)→17:30帰宅。

 ● 今夜の一曲

『中島美嘉  命の別名』


● 今夜の寸評:スポーツ・ブラック・ビジネス

大相撲、アメフト、レスリング、ボクシングが何かと話題になっているが、「トマト幹の黒い真実」
のアグロマフィアではないが”スポーツ・マフィア”が横行するかのようだが、所詮、貧相な経済行
為に過ぎない。「第5次産業の誕生に向けて」のダークサイド(反社会敵)の浸潤を予感させるもの
とし関心を惹く。

※「第5次産業論」について『デジタル革命渦論』を参照。

 

死に様ぞよき

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『三 略』(さんりゃく)
略は「機略」「戦略」の意味。『六韜』(ろくとう)と並んで『韜略』といわれる。六世紀ごろの成
立。『三略』は神秘的な成立伝説にいろどられており、今日の目でみると、時代がかっている部分が
多い。上略・中略・下略の三笥から成るが、その中から現代にも通ずる部分を選んで訳出する。

「仁者をして財を主らしむるなかれ」
『軍勢』には、こう記されている。
「弁説の巧みな男に、勝手にしゃべらせてはならぬ。敵国の美点を宣伝し、多くの人が惑わされてし
まうからである。仁者に国家財産の管理をまかせてはならぬ。人民に恩恵を施し、人望がかれ一個人
に集中するからである」(中略)

大前名分
義の立場に立って不義を諒する。これはたとえていえば、せきとめた川口の水を、一挙にたいまつの
火に注ぐようなもの、あるいはまた、深谷に、飛びこもうとする男をうしろからおすようなものであ
る。絶対に失敗することはない。

王者の率いる軍隊が進軍するありさまは、一見、何ごともないかのように、きわめて緩慢である。
こうして人命の犠牲を最小限にとどめようとするのである。もともと武器は天意に逆らう不吉な手段
である。やむをえない場合に限ってのみ武力を行使することこそ、天意にそうことである。
人と道との関係は、ちょうど魚と水との関係に似ている。魚は水を得てこそ生命を全うできるので
あり、水を失った魚は、死魚にひとしい。君子が、天意を恐れて、道を失うまいとたえず努力するの
は、そのためである。(下略)

正当性とエネルギー 目的の正当性に自信があるとき、人の予不ルギーは倍加する。逆に目的にため
らいがあるときは本来の力も発揮されない。戦争だけでなく、昨今の企業活動などにおいてもこのこ
とが端的に示されている。 

 

第19章 酸化トマト「ブラックインク」をよみがえらせる最新研究
第1節 ガーナ、アクラ
リウー族は大きな邸宅に暮らしていた。敷地を囲う高い壁には電気柵が張りめぐらされ、庭では番犬
のジャーマンシェパードが見張りをしている。ここはアクラの有産階級向け住宅街だ。ガーナ中南部
の都市クマシからは車で四時間以上かかる。邸宅内には多くの寝室や書斎があり、応接室の壁にはガ
ーナの大きな地図が架けられている。今、リウー族はこの家で生活をし、仕事をしている。ここでア
フリカでのビジネスを行ない、市場競争に挑んでいるのだ。
2016年11月、わたしはアクラでリウ将官と再会した。8月に会った北京から1万2000キロ
メートル以上も隨れた場所だ。2011年にカルキス代表を退いた後も、リウ将官は加エトマト業界
の有力者でありつづけた。汚職に手を染めて失脚し、もうとっくに死んでしまっただろうと噂されて
いたが、とんでもない。リウ将官のたくましさ、狡猾さ、冷酷さを、みんな過小評価している。中国
政府の一員としても、実業家としても、彼は百戦錬磨の達人だ。

加エトマト業界の年鑑から姿を消してからも、リウ将官は業界に生きつづけていた。わたしはこの取
材の一環で、彼がある会社を秘密裏に経営していることを知った。アフリカの濃縮トマトビジネスで
無視できない存在、ブロヅァンス・トマト・プロダクツ社だ。2014年、同社は本苑地の天津に、
30万平方メートルという巨大な工場を建設した。だがCEOはリウ・イ将官ではない。息子のリウ
ーハオアン、西洋名クイントンだ。父親のリウーイ将官の名は組織図には記載されず、写真も載って
いない。しかし影のオーナー、実質的な経営者はまさしく父親だ。

 Federation of Saint Kitts and Nevis

クイントンは1987年生まれ、29歳だ。同世代の多くの権力者二世たち同様、アメリカで教育を
受け、アメリカ国籍を取得するために中国国籍を放棄した。その数年後、今度はアメリカ国籍を放棄
し、カリブ海域の西インド諸島にあるセントクリストファー・ネイヴィスの国籍を取得した。別名セ
ントキッツーネイヴィス。総面慎251平方キロメートルの小さな国で、ふたつの島(セントクリス
トファー島とネイヴィス島)から成る。租税回避地として知られ、国際的に活躍するエリートたちに
パスポートの販売をしている。この国のパスポートがあれば、香港、リヒテンシュタイン、アイルラ
ンド、スイス、EU諸国を含む100以上の国にビザを取らずに入国できる。国籍を得るには25万
ドルを支払う必要かおるが、取得のためにこの国に行く必要はない[1]。

「法律事務所にお金を支払っただけだったよ。それで、3ヵ月後にはバスポートが手に入るんだ。税
制的にすごく得な国だよ」と、クイントン・リウは言った。



第2節
2011年にカルキス(中基)を去ったのち、リウ将官は天津に設立された新会社、プロヴァンス・
トマト・プロダクツの経営に専念した。自乙子との共同経営だ。まず、濃縮トマトを再加工するため
の最新式ラインを工場に設置した。このラインで、新疆ウイグル自治区で生産された青いドラム缶入
り3倍濃縮トマトを2倍濃縮トマトに再加工し、小さな缶に詰めかえた。

プロヴァンス社は、アフリカ市場での人気ブランド商品もいくつか手がけていた。もともとはリウ将
官がカルキスを経営していた当時に作られたブランドだが、香港の会社を経由してリウ将官が管理す
るようになったのだ。2014年から2016年にかけての3年間、同社は天津工場で、自社ブラン
ド商品、大手スーパーチェーンのブライベートブランド商品、大手食品メーカーの商品を生産してい
た。インドの大手流通グループ、ワタンマルのブランドで、アフリカでシェア第一位のIジーノ」も
そのひとつだ。同社は当時、西アフリカ諸国に強力な販路を築いており、ベナン、コンゴ、コートジ
ボフール、マリ、ガーナ、ケニア、ニジェール、ナイジェリア、トーゴなど、フランス語圏も含む各
国に商品を輸出していた。

 Chalcis 

第3節
中国の缶詰メーカー各社は、商品価格と生産コストを下げることに執着したあげく、濃縮トマトに添
加物を入れ、さらにコストを下げるために添加物の量を増やし……という悪循環に陥った。その結果、
思いがけない事態に直面した。これまでのやりかたではもうからなくなったのだ。中国国内で3倍濃
縮トマトを希釈し、添加物を混ぜてアフリカに輸出しても、利益が出なくなった。

アフリカ向け中国産濃縮トマトの戦いは、新たな段階に突入した。もっと効率よく商品を生産しなく
てはならない。そこで缶詰メーカー各社は、中国ではなくアフリカの港湾地区に缶詰工場を設立し、
そこで同じように缶詰を生産することにした。アフリカ市場のすぐそげて再加工をするのだ。そうす
れば、トマトベースト缶と謳いながら、じつは半分以上は別のものが入っている商品に対し、高い関
税を支払わなくてすむ。それに、原材料の濃縮トマトをなるべく安く中国から輸入することで、利ざ
やを椋ぐこともできる。だからリウ将官も天津の工場を閉鎖して、今はガーナを拠点に活動している
のだ。リウ将官は、ガーナの邸宅の応接室のソファに座ってこう言った。

「もしカルキスに残っていたら、こうしてアフリカで生産を始めるのは難しかったかもしれない。あ
の会社にいたら、たとえわたしがこうしたいと言っても、なかなか物事はスピーディーに進まなかっ
ただろう。今やっているように自由に動くこともできなかったと思う。アフリカ市場は変化が速い。
それに対応するには決断も速くしないと。だがガルキスでの成功の体験がわたしの糧になっているこ
とは確かだ。今、わたしには新たにチャレンジしたいことがある。ガーナの人口はたったの2800
万だが、ひとり当たりのトマトペースト消費量は中国の10倍だ。かつて、中国で加工用トマトが栽
培されていなかったころ、わたしは加工トマト産業を発展させたいと願い、実際にそうしてきた。今
わたしが望んでいるのは、アフリカ中にトマト缶を広めることだ。そのために、新疆ウイグル自治区
の濃縮トマトを、このガーナで再加工して販売することにしたんだ。どうしてアフリカかって?わた
しがここでしているビジネスは、習近平国家主席による国家発展計画に組みこまれているんだよ。あ
の一大プロジェクト、新シルクロード(一帯一路)構想だ。あれを加エトマト産業風に言い表すなら
、J部疆がスタートで、ガーナがゴール″というところだね」


第4節 ガーナ、テマ港湾地区
アクラから束へ二五キロメートルのテマ港湾地区は、ガーナにニカ所ある大水深港湾のひとつだ。水
深が深い港のことで、大型コンテナ船が接岸できる。現在、インドの大手流通グループ、ワタンマル
はここに缶詰工場を建て、中国産ドラム缶入り濃縮トマトに添加物を入れて一ジーノ」とIホモ」の
トマトペースト缶を生産している。

だが、わたしが今入ろうとしているのは、ワタンマルの工場ではない。そのライバル会社であるリウ
ー族の缶詰工場だ。塀の向こうの敷地内では、赤いダンボール箱を乗せたバレットを男たちがトラッ
クに積みこんでいる。建物は古くてボロボロだ。入口に掲げられた錆びた看板にはこう書かれていた。

GNフーズ有限会社
自由貿易地域
トマトペースト加工工場

クイントン・リウは管理棟に駆けこんだ。わたしも続いてなかへ入る。そこには工場長の女性がいた。
以前はロンドンで大手メーカーの下請けをしていたそうだ。わたしの取材依頼を許可してくれて、こ
の工場の生産力の高さを誇りに思っていると言った。
リウー族はこの工場のオーナーではない。クライアントだ。自社ブランドの「タム・タム」と「ラ・
ヴォンス」の商品の生産をこの工場に委託している。リウー族はGNフーズと契約をした後、天津工
場のラインのひとつをここに移したのだ。
クイントンとガーナ入の工場幹部社員だちとの間には、ピリピリした空気が漂っていた。どうやら先
方はジャーナリストが工場にやってきたのを快く思っていないらしい。ガーナ入幹部社員たちはイラ
イラして、わたしが工場に入るのをどうにかして食いとめようとしていた。

だが、クイントンが時間をかけて交渉してくれたおかげて、ようやくわたしは工場に入ることを許可
された。これでどうにか生産ラインを見ることができる。だが、ラインのスタート地点には決して近
づかないよう言いわたされた。きっと天津の工場のように、添加物を入れているところを見られたく
ないのだろう。それなら別に驚くに当たらない。
クイントンとわたしは、現場監督者用の小さな部屋に入り、白い上着と帽子に着替えた。壁には世界
地図が貼られていた。それを眺めながら、わたしは笑ってクイントンに尋ねた。

「セントクリストフアー・ネイヴィスっていったいどこにあるわけ?」

するとクイントンは、地図上のカリブ海周辺に人差し指を近づけ、自分の国を探しはじめた。だが、小
さすぎてどうしても見つからない。

「じつはぼくも知らないんだ。だいたい、行ったこともないしね」と、クイントンは声を上げて笑っ
た。
わたしたちは工場の建物内に入った。缶詰がラインに乗って流れている。どうやらリウー族には、天
津から急速ラインを侈さればならない事情があったらしい。でなければ、こんなひどい施設で生産を
するはずがない。もし入口に社名を記した看板がなければ、非合法の闇工場だと思っただろう。生産
ラインを無理やり入れるために、壁に大きな穴が開けられている。コンクリートブロックがむき出し
で、塗装さえされていない。ラインのすぐそばの壁のブロックが壊れている。手を触れると指先に埃
がついた。リウー族が生産を委託してから1カ月も経っていないはずなのだが。

建物内に鉄骨階段があり、最上階のデッキからライン全体を見下ろせるようになっていた。
見学の合間に上ってみる。いい眺めだ。ラインのスタート地点がよく見える。ひとりの作業員がカッ
ターで大きな袋を開け、撹絆賎のなかに白い粉を注ぎ入れている。わたしは下に戻ると、ガーナ人の
幹部社員に、原材料のドラム缶入り濃縮トマトはどこにあるのか尋ねた。

「ここから離れたところです。この工場に来るのに通ってきた道路があるでしょう?あの向こう側で
す」

そう間いたときはただ、へえそうなのか、と思っただけだった。だが数分後、ふつふつと疑問が湧い
てきた。道路を侠んだ向こう側だって?トマトペースト缶工場で、原材料の濃縮トマトをそんなに遠
くに保管しておくのは不自然だ。そんなところは今まで一度も見たことがな わたしはどうしても、
ドラム缶入り濃縮トマトの保管現場が見たくなった。数分後、そのチャンスが訪れた。幹部社員が目
を離した隙にそっと建物を出て、外壁を伝ってラインのスタート地点に向かう。頭のなかに工場の全
体図を思い描き、ドラム缶入り濃縮トマトが置いてありそうな場所の見当をつける。もちろん、ガー
ナ入幹部社員の言ったことなど信じていない。おそらく、ラインのスタート地点のそぼ、「近づくな」
と言われたあたりにドラム缶が置かれているのだろう。作業員が濃縮トマトに白い粉を入れていた付
近だ。

予想は的中した。青いドラム缶はそこにあった。道路を侠んだ向こう側ではなく、ラインのスタート
地点のすぐそげた。GNフーズで再加工されているのは、カルキスの濃縮トマトだった。例のルート
をたどってここまでやってきたのだ。新疆ウイグル自治区で加工され、パッケージングされ、中国国
内を鉄道で輸送され、天津でコンテナ船に乗せられて海を渡り、このテマ港で荷揚げされたのだ。そ
して今、この不衛生な工場の裏庭に保管されている。ドラム缶は汚れ、吹きさらしのまま放置されて
いた。驚いたことに、ドラム缶の多くが錆びていて、すでに蓋がなかった。なかに入っている銀色の
アセプティック(無菌)パックが、太陽を浴びてキラキラと輝いている。

なんという状態だろ・・・・・まさか、とわたしは思った。ドラム缶に近づき、アセプティックパックに
触れてみた。中身は満杯に詰まっていた。こうなったら確かめるしかない。目の前のドラム缶に手を
突っこみ、パックのブラスティック製キャップを開け、なかから濃縮トマトを片手でつかんで取りだ
した。思わず息を呑んだ。手が真っ黒に汚れている。やっぱりそうか………イタリアの税関職員から
聞いてはいたが、実際に見たのは初めてだ。それにしても、こんなに気持ち悪いものを本当に人間に
食べさせているのだろうか? ここにある濃縮トマトは赤い色ではない、黒だ。そう、これが酸化し
て腐ったトマトの「ブラックインク」なのだ。

0.3 watts from 10 milligrams of tomato
第6節
わたしは素知らぬ顔をして建物内に戻った。そして残りの見学時間中、隙を見てはこっそり従業員た
ちのそばに忍びより、この工場での労働条件について尋ねまわった。大半は非常にきつい仕事だと言
った。届出を出していない不法労働で、一日10時間、週に6日間働いて、月給は10ユーロだとい
う。ガーナの労働者は中国の3分の1から4分の1の賃金しかもらえていないのだ。

そのとき、クイントン・リウの携帯電話が鳴った。ガーナ人幹部社員が工場内での電話は慎むよう注
意をする。その途端、クイントンは激しい怒りの表情を浮かべたが、電話に出るためにその場を離れ
た。だが、電話を終えて戻ってきたときは、すでに怒り汪っていた。そして、ガーナ人幹部社員に向
かって怒鳴りちらした。
「電話をするなだと!? 工場で電話をして何か悪いっていうんだ!? おまえ、何様のつもりだ?
おれが誰だか知らないのか? ここにある機械を中国に送り返したっていいんだぞ。おれがひと言命
令すれば、ここにある機械はすべて中国に戻されるんだ。そうされてもいいのか?それでいいならそ
うしてやろうか?」

ガーナ人幹部社員は、ようやく目の前にいる若い中国人の権力の大きさに気づいたようだった。深々
と頭を下げて謝罪のことぼを口にした。

「すみません、わたしが悪かったです」

ラインの最終地点では、ガーナ人の作業員たちが、缶詰を丁フ・ヅオンス」と書かれたダンボール箱
に詰め、テープで封をし、パレットの上に積んでいた。その様子を中国人の現場監督者たちがそばで
監視している。みな、天津の旧工場で首ていたらしい「プロヴァンス」と書かれたTシャツを身につけ
ていた。
クイントンの怒りはまだおさまらない。その矛先は、今度は中国人現場監督者のひとりに向けられた。

「おい、それはアフリカ人がたくさん積みすぎたんだろ?だったら、アフリカ人にやり直させろ!お
まえが手を貸してはいけない!わかるか?おれたちがやるべきことは、あの腐った原材料の始末だけ
だ。あれだけは自分たちでやらなくちやならない。だがほかのことについては、すべてアフリカ人に
やらせるんだ!おまえが代わりにやるんじやないぞ!」

リウー族は毎月およそ70コンテナ分のトマトベースト缶を、GNフーズに生産させているという。
クイントンは言う,
「2017年には、毎月200コンテナ分生産できるようにしたいんだ。そうすれば、天津の工場で
生産していたときとほぼ同じ量になる。ガーナの市場では年間7000コンテナ分のトマトペースト
缶が流通している。月に200だと、年間2400だから、市場の3分の1のシェアを獲得できる」

工場の建物の外に、赤いダンボール箱が積み上げられている。作業員たちがそれらをトラックに積み
こむ。今日の夕方には、卸売業者に配送されるだろう。そして数週間後、人々はしわくちやの紙幣と
引き換えに、市場に並べられた赤い缶詰を買って帰るのだ。
「ぼくたちの目標は、ガーナと隣接する国々で、年間売上高1億ドルを達成することなんだ」

                     ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 

ここにある濃縮トマトは赤い色ではない、黒だ。そう、これが酸化して腐ったトマトの「ブラックイ
ンク」なのだ・・・・・・、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という。中国のアフリカ向け「貧困ビジネス」
の実態が赤裸々に語られる。またもこう言う。「人のふり見て我がふり直せ」とも。
                   
                                       この項つづく

 Jul. 7, 2018

【ソーラータイル事業篇:太陽光発電革命につながる新しい二次元材料の発見】


 DOI: 10.1038/s41565-018-0134-y

04年にグラフェンが単離された後、新しい2次元材料の合成が始まる。これらは、1原子と数ナノ
メートルの間の厚さの単層物質だ。ナノテクノロジーとナノエンジニアリングの開発において重要な
役割を果たす。7月27日、カンピナス大学(UNICAMP)の研究グループは、これらの特性を備え
た新しい材料の製造に成功したと公表。それによると、通常の鉄鉱石からヘマテンと呼ばれる2次元
物質を抽出。 この材料は厚さ3原子しで、光触媒特性向上。 合成材料は、水を水素と酸素に分解す
る光触媒として働き、水素から電気を生成することができるとのこと。新しい材料は、地球上の最も
一般的な鉱物の一つであるヘマタイトと、最も安価な鉄である鉄の主な供給源から剥離され、多くの
製品に使用されてきた。

ヘマタイトは、カーボンとその2次元型グラフェンとは異なり、非ファンデルワールス材料であり、
非化学的で比較的弱い原子ファンデルワールス相互作用ではなく、3次元結合ネットワークにより互
いに保持(結合に関与する原子による1対以上の電子対の共有を伴わない)。天然に存在するミネラ
ルであり、高度に配向した大きな結晶で、ファンデルワールス材料ではなく、ヘマタイトは、新規な
2次元材料の剥離は優れた前駆体であると考えられており、これまで合成された2次元材料のほとん
どは、ファンデルワールス固体のサンプルに由来。高度に規則化された原子層と大きな粒子を持つ非
ファンデルワールス2次元材料として希少ににある。

ヘマタイトは、有機溶媒、N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)中のヘマタイト鉱石の液相剥離によ
り合成された。 透過型電子顕微鏡検査により、わずか3層の鉄および酸素原子(単層)の厚さおよ
びランダムに積み重ねられた2層シートの単一シート中のヘマテンの剥離および形成を確認する。ヘ
マテンの磁気特性としては、試験および数学的計算を行った結果、へマタイトの磁気特性と異なるこ
とを示し、天然ヘマタイトは反強磁性であるが、ヘマテンは一般的な磁石のように強磁性で、強磁性
体では、双極子は平行であり、同じ方向に整列する。反強磁性体では、双極子は逆平行であり、反対
方向に整列し、強磁性体では、原子の磁気モーメントは同じ方向を指し、反強磁性体では、隣接する
原子のモーメントが交互に現れる。

● 効率的な光触媒

また、同グループはこの光触媒特性を分析したところ、光によって励起されると化学反応の速度を増
感させ、 ヘマタイト光触媒作用は通常のよりも効率的であり、その光触媒特性は有用なものでない。
材料が効率的な光触媒であるには、太陽光の可視部分を吸収し、電荷を生成し、材料の表面に輸送し
所望の反応を行わなければならない。

ヘマタイトは紫外から黄橙色の領域の太陽光を吸収するが、生成する電荷は短命で、表面に到達する
前に消える。光子が表面の数原子内で負電荷と正電荷の両方の生成には、より効率的でなければなら
ない。新物質を二酸化チタンナノチューブアレイと組み合わせ、電子がヘマテンから容易に排出され
る経路提供することにより可視光吸収できる可能性があることを確認。ヘマテンは、特に水を水素と
酸素に分解するための効率的な光触媒であり、スピントロニクス装置用の極薄磁性材料としても役立
つ可能性がある。スピントロニクス(またはマグネトエレクトロニクス)は、磁気モーメントに直接
結合された電子のスピンにより情報保存、表示および処理に使用できるる新しい技術である。また、
エキゾチックな特性を有する他の2次元材料を生む可能性は、他の非ファンデルワールス材料は「新
たな3次元材料の創出候補となり、数多くの他の酸化鉄およびその誘導体が存在するとみている。


 What happens when plastic degrades?

【ゼロ廃棄事業篇:劣化プラスチック温室効果ガスの発生源】

8月1日、ハワイ大学の海洋科学技術研究院(SOEST)の研究グループは、共通のプラスチックが環
境中で劣化するにつれ温室効果ガスが放出されることを公表。プラスチックの量産は70年前に始ま
り、生産率は今後20年間で2倍になると予想されている。耐久性、安定性および低コストのために
多くの用途に役立つ反面、環境に有害な影響を及ぼす。この廃棄プラスチックは分解過程で様々な化
学物質を放出し、生物や生態系に悪影響を及ぼすことが知られている。

PLOS ONEに掲載されたこの研究成果は、太陽光に暴露された場合、メタンとエチレンの温室効果ガ
スを生成、放出するという。同グループは、ポリカーボネート、アクリル、ポリプロピレン、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリスチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE) - 食品
貯蔵、繊維、建材、各種プラスチックで試験。ショッピングバッグで使用されるポリエチレンは、世
界で大量に廃棄される合成ポリマーが最も多量の発生源であることを突き止めた。

さらに、LDPEの処分ペレットのガス放出速度が212日間の実験で増加し、海洋で発見されたLDPE
破片が太陽光に曝され温室効果ガスを放出。覆われた表面層に形成された破砕、微小亀裂、傷から、
一旦日射により化学反応が律速し、バージンペレットからプラスチックの光分解に至るまでの温室効
果ガスの排出増加につながる。つまり、時間経過とともに、これらの表面欠陥面積は、光化学分解を
加速させる原因となる。さらに、「マイクロプラスチック」と呼ばれるより小さい粒子が最終的に環
境中で生成され、ガス生成をさらに促進する。

 ● 今夜の一曲

『下の句×映画音楽トレッキング:ゴッドファーザー』

日盛りをトマト畑にゆっくりと斃れし首領(どん)の死に様ぞよき   

恩田英明 / 『首領の死に様』(歌壇、2018年8月号より)

  

リチウムイオン電池市場急伸

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『司 馬 法』(しばほう)
斉の司馬(軍事長官)だった田穣苴の説を記したものといわれる。5~6世紀ごろの成立。

『司馬法』は、仁本、天千之義、定爵、眠位、用衆の五笥(篇名に格段の意味はない)一貫した論理
性は稀薄だが、言句的なおもしろさをもったことばが少なくない。

目的と手段
古来、仁義による政治こそ正道とされてきた。だが、正道によって目的が達せられないときは、力に
訴えるほかない。それが戦争という非常手段なのであり、なまなかな人間のできることではない。つ
まり、人を殺すことによって人々の生活を安定させることができるならば人を殺してもよい。敵国を
攻めることによってその国民を幸福にできるならば攻めてもよい。戦争によって戦争をなくすことが
できるならば戦ってもよいのである。(仁本)

戦争と平和
どんな大国でも、好戦的な国はかならず滅びる。逆にまた、どんなに平和な時代でも、戦争に備えて
いない国はかならず危うくなる。(仁本)

必要なもの
戦うには正当な理由が必要である・行動をおこすにはタイミングが必要である。人を使うには感情が
必要である。(定爵)


敵に会ったときこそ平静さを失うな。混乱したときこそ余裕をもて。困難にぶつかったときこそ部下
のことを忘れるな。(定爵)
               
知っていることは、はっきり見える
敵状をよく把捉していればヽその動きがはっきり見える。作戦がしっかりできていれば、どんな事態
にもビクともしない。(定爵) 

へたな考え
進退にさいしてはたじろぐな。敵に遭遇してから作戦を考えるな。                             

見るということ
敵がまだ巡くにいるときは、じっくり観察せよ。そうすれば敵がおそろしくなくなるであろう。敵が近づいたら、む
しろあれこれ観察しないことだ。そのほうが迷いが生じない。(娠位)

観察と実行 この場合の遠近は、時間的な遠近におきかえることもできる。将来のことは十分に展望
し、観察し、あれこれ考えることがよろしい。だが、実行段階に入ったら右顧左阿することなくひた
すらぶつかることだ。長期計画と実施計画、知識と行動、理論と実践など、さまざまな場合の「遠近
と視」についてあてはまることばであろう。

  

【リサイクル蓄電池事業篇:25年に第2世代EV用電池市場は42億ドル】

ロンドンに本拠を置くリサーチ&コンサルティンググループのサーキュラー・エネルギー・ストレー
ジ(Circular Energy Storage)社は、エネルギー貯蔵用途向けに再構成電気車用バッテリーのビジネ市
場規模を公表。電動車用蓄電池および定置型蓄電池市場が急成長による相乗効果は継続的なコスト最
適化の有用なツールとなる。同研究グループによる最近の報告によると、長寿命リチウムイオン電池
の世界市場は、今年13億ドルと見込んでいる。



材料回収費は11億ドル規模で、残りの2億3000万ドルは修理、改装等の部門に分科する。中国
の電動車販売台数の増加に伴い、第2次電池市場規模の70%が全米で生まれる。この報告では16
%のシェアを持つ韓国が市場2番目の規模となる。蓄電池リサイクル市場は35億ドルに拡大、第2
次電池の市場は25年には42億ドルに達する。リサイクル蓄電池はポータブル機器では一般的だが、
エネルギー貯蔵システムなどの用途では、電動車用蓄電池の部品取りなどで長寿命化を図る。同社に
よると、電動車用は、その容量と残存寿命は、住宅用定置型貯蔵システムとして再利用できる。

● 電動自動車メーカーの新たな収益の流れ

日産、ルノー、BMWなどの電動車メーカとしては新たな収益源となる可能性があり25年までにエ
ネルギー貯蔵システム向け2次電池用途は、中国の蓄電池容量の半分を満たす42ギガワッアワーに
達するす。また、標準/共通化で製造プロセスの改善により、低コストで達成でき、収益が増加する
す。この分析で、英国の第2代電動車用蓄電池の事例研究では、数メガワット級蓄電池システムの予
備容量供給事業者は、1メガワット当たり約6万ポンド(年間6万5千ドル)の収益が得れると試算
する。日産リーフ電池生産(7千台=百メガワット)工場では、リサイクルにより年間収入は370
万ドルとなる。

●  バッテリの再利用でコスト削減

ドイツでは、周波数規制価格がかなり高く、市場規模の増長に拍車がかかる。ドイツの同じ規模の生
産設備(年間1,800万ドル売上げ)では、第2次世代による5年長寿命化効果は約14,130ドルの収益
達成。この調査結果では、製品を回収し、処分またはリサイクルの管理を必要とする多くの電動車蓄
電池メーカにとって、長寿命化でリサイクル電池の数が減少するため有利に働く。さまざまな自動車
メーカが、蓄電池メーカと共同し蓄電池を供給することを公表。バッテリは元の容量の60%維持す
ることで、エネルギー放電サイクルが通常数分間影響するだけで1時間以上にならない。さらに、ブ
ルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(Bloomberg New Energy Finance)は、30年までに
世界のエネルギー貯蔵市場は、去年の6.25GWhをわずかに上回る305GWh以上に達すると予測している。

 
【定置用Liイオン蓄電池、43%増の5万台、2017年度の出荷量】

  Jul. 27, 2018

  

 

第19章 酸化トマト「ブラックインク」をよみがえらせる最新研究
第7節 ガーナ、アシャンティ州クマシアクラ
雑踏のなか、あちこちでクラクションが鳴りひびく。老朽化した車両のガソリン気が漂う。                                      
三輪トラック、ピックアッブトラック、ライトバンが次々と行き交う。なんという混沌とした風景だ
ろう。ひどい暑さだ。埃が舞うなかを、女たちは頭上に荷物を乗せてうまくバランスを取って歩いて
いる。男たちはタンクやダンボール箱を乗せた年代もののカートを押していろ。
たくさんの商品が次々と途切れることなく運ばれていく。
ここでは、すべての仕事が流れるように素早く行なわれる。男たちが一列に並んできびきびと手を勤
かしながら、バケツリレーの要領でトラックにコメ袋を積みこんでいる。植物油の売買交渉はものの
数分で終了したようだ。三輪トラックの運転手はさっさと支払いをすませ、中国産トマトペースト缶
が入ったダンボール箱数十個をてきぱきと単に積みこむと、あっという間に出発した。行き先は、ガ
ーナ国内のほかの市場、そして隣国のトーゴやブルキナファソだろう

ガーナ南西部の都市、クマシには、大量の農産物が集まる屋外市場かおる。西アフリカ最大のこの市
場は、かかしながらのにぎわいに満ちている。雑然としているがわくわくさせられる雰囲気だ。だが
その裏には、一握りの富裕層が多くの労働者を支配している現実がある。そしてそこには、加工トマ
ト産業の新しい勢力図が表れている。
ここではあらゆる商取引が行なわれる。外国からガーナを介してアフリカに輸入された商品が、ここ
を中紺地にしてあちこちの村へ輸送されていく。中国産濃縮トマトもそのひとつだ。
クマシは、加エトマト産業の歴史に刻まれる町のひとつとなったのだ。

「油、コメ、そしてトマトペースト缶が、クマシでは一番たくさん売れているんだ」と、クイントン・
リウが言う。わたしたちは、市場の細い路地を奥へ向かって進んでいく。クイントンには、ガーナ入
の営業担当者とふたりの中国人従業員が随伴している。営業担当者は、クマシ周辺のことば、トウ
ィ語のアサンテ方言を話す。中国入たちはクイントンより年上だが、クイントンの命令に従って勅い
ている.、

さまざまなものが空中を揺れながら進んでいく。女たちが頭上に荷物を乗せて歩いているからだ。高
いところに商品が並ぶ様子は圧巻だ。まるで宙に浮かぶ巨大コンベアのようだ。卸売業者は、車が渋
滞する大通り沿いに店を構えている。一般客向けの商店や屋台は、小さな掘っ建て小屋や、老朽化し
たピルの上限に並んでいる。上限から見下ろすと、掘っ建て小屋のトタン屋根がまるで大海のように
広がっていた。階段では子どもたちが所在なさげにうろうろしいる。屋根のない通路では、みすぼら
しい格好をした男たちが日陰に敷いたダンボール紙の上に座りこんでいる。

「この市場では、およそ五〇種類のトマトペースト缶が売られている。その90パーセントが中国企
業の商品だ。中国の缶詰メーカーは、大手企業のプライベートブランド商品と自社ブランド商品の両
方を手がけているからね」

そう言うクイントンの左前腕に、大きなタトゥーが彫られていた。高速で進む船が描かれている。経
済戦争を勝ちぬくための戦闘用ガレオン船だろう。

「アフリカに濃縮トマトを輸出することは、中国にとってどうしても必要だった。新疆ウイグル自治
区にはたくさんトマト加工工場かおるから、商品の供給先を増やさなくてはならなかったんだ。アフ
リカはそのひとつで、かなりの売上が期待できる。今、ガーナで父とぼくが行なっているビジネスは、
天津のプロヅァンス社でやっていたやりかたとは全然違う。ここでのぼくの仕事は、市場がどうなっ
ているかを細かくチェックし、ライバル会社の戦略を把握することなんだ」

わたしたちは五時間かけて市場を歩きまわり、輸入トマトペースト缶を専門とする卸売業者を一軒ず
つ訪ねてまわった。店めぐりのルートマップは、クマシにある中国系ホテル、ロイヤル・パーク・ホ
テルのテラスで、クイントンの随伴昔たちによってあらかじめ作成されていた。クイントンは卸売業
者にさまざまな質問をした。商品の販売価格、ライバル会社のライン

ナップ、売上高、在庫状況、顧客の反応………リウー族はガーナの大手流通業者に商品を供給してい
た。こうした流通業者はほかのメーカーの商品も仕人れているので、それらがいくらで販売されてい
るかを確認して、自社商品の価格を調整しようとしているのだろう。
ある卸売業者の倉庫を見学した。トマトペースト缶のダンボール箱が天井までぎっしりと積まれてい
るなかを、迷路のように曲がりくねった通路を歩く。まるで洞穴にいるようだ。積みあげられた箱は
建物二階分の高さになっていた。かなり危険な保管方法だ。何百という缶詰の重みで下のほうの缶詰
がつぶれてしまう可能性かおる。もし缶に穴が開けば、中身は変質して食用に適さなくなる。トマト
ペーストが入ったブリキ缶は、見た目は頑丈そうに見えて、意外と取り扱いに注意が必要なのだ。だ
が、天津やガーナの生産現場を見てきたかぎり、食品産業における基本的なルールを気にしている業
界関係者はあまりいないらしい。

トマトペースト缶の洞穴のような光景はかなり衝撃的だった。ほかの卸売業者でもたいてい同じよう
な状況らしい。それを知って、濃縮トマトに関してガーナは完全に中国の植民地化していると陪った。
ガーナのトマトペースト缶市場の五大ブランドは次のとおりだ。ワタンマルのプライベートブランド
である「ホモ」と「ジーノ」、オーラム・インターナショナルのブライベートブランドのIテイステ
ィ・トム」、リウー族のブランドの「ラ・ヅオンス」と「タム・タム」。いずれも中国産濃縮トマト
に添加物を混ぜた製品だが、消費者に正しい情報を呈示さえすれば違法行為ではない。そこでタムー
タムは、製品名称を「トマトペースト」から「トマトミックス」に変更した。添加物についても巧妙
な宣伝文句を見いだし、2016年11月に公開されたポスターにこう明記した。「栄養強化トマト
ミックス。ビタミン豊富。食物繊維添加。おいしくてヘルシーな食事のために」。食物繊維が健康に
よいことをアピールしはじめたのだ。同様に、ポモも製品名称を変更し、原材料をラベルに明記する
ようになった。

現在、リウー族のラ‘ヴオンスとタム・タムがシェアを仲ばしつつある。広告宣伝を大々的に行なっ
ている効果が表れているのだ。 「もし中国で、消費者に知られていないトマトペースト缶についてスーパー
マーケットで4億ドルの売上をたてるなら、広告宣伝費は7000万ドル必要なんだ」
クイントンはそう言うと、いかにもおかしそうに笑いだした。中国に比べるとガーナでの広告宣伝費はバカみた
いに安いのだという。宣伝キャンペーン1回につき数万ドルしかかからなかったそうだ。いまやこの
国では、ラジオCMや雨中の広告パネルで、リウー族のトマトペースト缶の宣伝を聞いたり見たりし
ない日はない。晨新商品の「ラ・ヴォンス」には混ぜものをした中国産濃縮トマトしか使われていな
いが、巨大広告パネルには堂々と「伝統の品質」と書かれている。もちろん、イタリア国旗の緑・白・
赤のトリコローレに彩られている。

アフリカでは多くの食品ブランドが、ブランドカラーを配したエプロンを小売業者に配布している。
世界的に有名なソフトキャンディ、メントスの版促方法を真似たらしい。リウー族もこれにならい、
小売業者にトマトペースト缶ブランドのロゴ入りTシャツを配布した。ちなみに、アフリカでシェア
ナンバーワンのトマト缶、ジーノは、過去十年間で、西アフリカの各地に壁面広告を展開している。
その数の多さはアメリカの某有名炭酸飲料に匹敵するほどだという。
クマシの市場を歩きながら、クイントンはライバル会社のすべてのトマトペースト缶を順々に購入し
ていった。随伴するふたりの中国人のうちのひとりが、それをビニール袋に入れて持ち歩いている。
「これはすべてうちの科学者に調べてもらうんだ」と、クイントンは言った。



ガーナ、アクラ
その日の夜、わたしはアクラのリウー族の邸宅を再び訪れた。クイントンとわたしがクマシにいる間
、父親のリウ将官はガーナの通商産業省を訪れていたらしい。息子は、市場で購入したライバル会社
のトマトペースト缶を父親に見せ、広いテーブルの上にそれらを並べはじめた。そのとき、応接室に
ひとりの男性が入ってきた。分厚いレンズのメガネをかけ、遠慮がちにおとなしくしている。クイン
トンは男性の肩に右腕を回し、わたしに向かってこう言った。

「見てくれよ、こいつには数百万ドルの価値があるんだ。うちの科学者だ。ぼくたちのビジネスでも
っとも優秀な人間さ。かつては天津のブロヴアンス社の工場で働いてたんだが、今はここにいる。こ
いつは奇跡を起こしてくれるんだよ」

奇跡とは何だろう?クイントンが説明してくれる。この男性に、世界でもっとも安く売買されている
三倍濃縮トマト、ブラックインクを渡し、完成品のトマトペースト缶に濃縮トマトを何パーセント使
いたいかを伝える。それだけで、このリウー族専属の科学者が最良のレシピを考えてくれる。商品と
して販売するのに最適な添加物の分量を敦えてくれるのだ。
一見簡単なことに思われるかもしれないが、しつけそうではない。ブラックインクに水をたっぷり入
れたら、とろみをつけるためにデンプンや食物繊維を加えなくてはならない。だが多く入れすぎると
色が薄くなるので、今度は着色料を加えなくてはならない。だが入れすぎると粘り気がなくなり、ト
マトペーストとは似ても似つかないものになるおそれがある。ここにいる利学者は、それぞれの添加
物のちょうどいい割合を見つけられる唯一の人物なのだ。では、彼の最新のレシピとは?濃縮トマト
ご28パーセントに対し、添加物六69パーセントだという。

「ほら、これが今日の缶詰だ」

クイントンはそう言って、ライバル会社の缶詰を和学者に手渡した。彼はそれらを持って応接室から
出ていった。さっそく研究室で分析を始めるのだろう。他社のトマトベースト缶にどれくらい濃縮ト
マトが含まれているか、正確な割合を調べるのが彼の任務だ。リウ親子は、ほかの商品にどれくらい
の割合で添加物が入れられているか知りたいのだ。リウ将官は息子に向かって言った。

「今ここで値段の話をするのはやめよう。明日、分析の結果を待ってからだ。結果さえわかれば、コ
スト計算もできるし、戦略も立てられる」

リウ将官は、わたしと握手を交わして別れの挨拶をすると、応接室から出ていった。玄関まではクイ
ントンが見送りにきてくれた。番犬のジャーマンシェパードもいっしょだ。クイントンによると、通
商産業省での父親の会見はうまくいったのだそうだ。「ここの土地は本当に安いんだ。だから、数カ
月以内にはガーナに自社工場を建てて、天津の生産ラインを丸ごと持ってくるつもりだ。それから、
カジノも開こうと思ってる」
わたしは、邸宅を取り囲む高い塀の上の電気柵に目をやった。電気柵はかすかに青白く定っている。
署い夜たった。星は見えない。
「カジノですって?」
わたしが驚いて尋ねると、クイントンは犬の頭をなでながら答えた。
「そうさ、賭博場だよ」

著者注:ローマからトゥウーロンまで。
本書は2014年6月から2017年まての取材に基づく。

訳者あとがき

本書『トマト缶の里一い真実』L'Empire de l'or rouge : Enquéte mondiale sur la tomate d'industrieは、フ
ランス入ジャーナリスト、ジャン=パティスト・マレの第三作だ。わたしたちに身近な食品のトマト
缶、とくにトマトベースト缶の生産と流通の裏側を暴いた、他に類を見ないルポルタージュである。
ジャン=バティストーマレは、1987年生まれの30歳(2017年時点)。《ルーモンド・ディ
プロマティーク》《シャルリー・エブド》《リュマニテ》など、有名誌に寄稿する新進気鋭のジャー
リストとして、フランス国内で注目を集めている。2014年に発表した第二作、『アマゾン世界最
良の企業潜入記』En Amazonie, Infiltre dans le meilleur des mondes (未訳)は、世界的なネットー通販
サイト、アマゾンの配送センターに臨時スタッフとして潜入取材したルポルタージュで、ブラック企
業並みの過酷な労働条件を告発した問題作としてベストセラーになった。同年の「高校生が選ぶ経済
・社会学図書賞」を受賞し、ヨーロッパ各国語に翻訳されている。

『アマゾン』は、多くのフランス入に「サイトの購入ボタンをクリックするのをためらうようになっ
た」と言わせるほど社会問題になったが、その一方で「たった数週間勤務しただけで何かわかるのか」
「物流や製造業毀では当たり前の話。取材不足では?」という批判の声も上がった。だが本作のIト
マト缶』は、前作に厳しい目を向けた読者も手放しで賞賛するほど、徹底した取材に基づいて書かれ
ている。実際、著者は「アジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカを、何万キロメートルも移動し(
中略)、業界のトップ経営者のほか、無名の労働者、破産したトマト生産者、移民キャンプで暮らす
日雇い収穫労働者たちの話を関いた」(本書より抜粋)のだから。

本書は2017年5月の出版と同時に大きな話題になり、前作に引き続いてベストセラーになった。
多くの新聞・雑誌が書評を掲載し、著者本人にはメディア出演の依頼が殺到した。大手経済紙《レゼ
コー》は「これはルポルタージュであると同時に、冒険小説、サスベンス、ディストピア小説でもあ
る。身近な食材であるトマトを通じて読者をグローバル経済の恐怖に陥れる。とてもおもしろく、素
晴らしいが、恐ろしい本だ」と、的確な表現で賛辞を贈っている。

本書の取材・執筆には、2014年6月から2017年4月まで、3年近い年月が費やされた。19
世紀のイタリアで誕生し、ファシスト政権下で発展し、アメリカでグローバル化された加エトマト産
業の歴史を詳しく紹介しつつ、中国・アフリカ・南イタリアの収穫・生産現場の過酷な労働、マフィ
アとトマト缶の関わり、中国産ドラム缶入り濃縮トマトにまつわる秘密などの驚くべき事実を、自ら
の体験と関係者の証言によって次々と暴露していく。
界の食品産業の危機、資本主義と自由競争のマイナス面、移民問題など、重要な社会問題をテーマに
したノンフィクションだが、決して無味乾燥でも堅苦しくもなく、文芸作品のような叙情性を感じさ
せる点け、本書の大きな魅力のひとつだろう。ほぼすべての章の冒頭に、まるで映画のワンシーンの
ように豊かな情景描写がなされ、その世界にぐいぐい引きこまれていく。とりわけ、第1章の冒頭の
ドラマティックな幕開け、第8章の冒頭の緊迫る、第17章ラストの崇高なまでの悲壮さは、読んで
いて鳥肌が立つほどだ。

もうひとつの本書の魅力は、まるでミステリーのように展開する独特の構成だ。時系列・エリア別に
進行するのではなく、さまざまな時代や国や人物が一見順不同に登場し、消えたかと思えば再び現れ
る。さらりと語られたことばが実は伏線たったことに後で気づかされたり、謎かけが徐々に解明され
ていったりする。まるでパズルのピースをひとつずつはめこんでいくように、一章ずつ読み進めるこ
とで全体像が少しずつ明らかになっていくのだ。

最終章、すべてのパーツがようやくあるべき場所におさまったとき、著者はただ空を見上げて沈黙す
る。多くの情報を呈示し、わたしたちが今どういう世界にいるのかを教え、警鐘を鳴らしつつも、具
体的な解決策は示さない。今後どうすべきかは、読者の熟考、良心、行動に委ねられている。だが、
本書に示された真実を知った後は、誰もが深く考え、自らの良心に問いかけ、何らかの行動に移さず
にはいられないだろう。それこそが本書の役割なのだ。本書はさまざまな読み方を可能にするが、自
由」が重要なキーワードのひとつになっているように訳者には思われる。ぜひともあちこちに散りば
められた「自由」ということぼ(完全自由主義、自由貿易、選択の自由など)に注目し、「自由」と
は何か、一部の人間の「自由」のために大きな犠牲が強いられていないか、もう一度考えてみたい。
前述したように、本書は独特な構成のため、読みづらさを感じる読者もいるかもしれない。あとがき
の最後に、主な出来事を時系列に並べてみたので、参考にしていただければ幸甚だ。最後にひとつ補
足を。最終章で紹介されるガーナの五大トマトベースト缶ブランドのうち、「ジーノ」「ホモ」「テ
イスティ・トム」は今も人気が高いようだが、リウー族のブランドである。

「ラ・ヴオンス」と「タム・タム」に開する情報は見つからなかった。いったい彼らは今どこで何を
しているのか。おそらく、会社や工場を次々と設立・解体しながら、世界の加エトマト業毀のどこか
で生き延びているのだろう。新疆ウイグル自治区で今も大量に生産される濃縮トマトを、いかなる手
段を使ってでも売りさばくために。
と、本書を訳しながら思っていたところ、このあとがきを書いている2018年1月、あるニュース
記事を見つけた。ガーナのアクラ近郊で「ラ・ヴオンス」というトマトペースト缶を生産する中国人
経営企業の工場が、公害と騒音のために環境保全局から操業停止・退去命令を受けたにもかかわらず、
違法に操業を再開したというのだ。この会社はもしかして………ぜひ著者に追加取材をしてほしいと
ころだ。

本書は、翻訳家の郷奈緒子、中市和孝、宮地明子、吉野さやか(敬称略、五十音順)の四氏の多大な
る協力に支えられて完成した。心から御礼申し上げたい。また、本書のコーディネートをしてくださ
った訳者の恩師である翻訳家の高野優氏、訳者の作業を温かく見守りながら根気よく指導してくださ
った編集者の川上純子氏の両氏にも、この場を借りて深謝申し上げる。

                      ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 

濃縮トマトにまつわるのグローバル経済、あるいはトマト栽培/食品加工史と文化的背景の啓蒙に大
いに役立ったが、「腐ったトマトのブラックインク」などのリスクや安全性に関する情報が乏しいこ
とが消化不良として残る。とは言え、そのたの食品加工品と同様に多くの多国籍のトレーサビリティ
ーの貧弱を考えれば大変難しい。その問題解決のプロジェクト構想もわたしなりに考えてもみた。ま
た、昨日に掲載した「腐ったトマトをメタン発酵させエネルギー変換する技術」のように「ゼロ・ウ
エスト事業」や「持続可能な社会化事業」も考えさせられたが、著者や訳者の多大な労力に敬意を表
したい。多くの課題をまた残すこととなったが今後の作品の上梓を楽しみとしたい。

 自家製健康トマトソースレシピ                                       
        
                                        この項了                                                                       

暑気払いしなくっちゃ。

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『司 馬 法』(しばほう)
斉の司馬(軍事長官)だった田穣苴の説を記したものといわれる。5~6世紀ごろの成立。

『司馬法』は、仁本、天千之義、定爵、眠位、用衆の五笥(篇名に格段の意味はない)一貫した論
理性は稀薄だが、言句的なおもしろさをもったことばが少なくない。

 ″勝心”と”畏心”
敵に勝とうとする気持が強いとふは、相手のことしか目に入らず、冷静さを失う。敵をおそれる気
持が強いときは、警戒心ばかり先に立ち、かんじんの相手のことが目に入らない。この二つの気持
を適当に洞察するならば、それぞれの利点を兼ねそなえ、それぞれ使いわけることができる。つり
あいをとることだ。(厳位)

トップの態度
将がせかせかしている軍隊は弱く、将がゆとりをもっている軍隊は強い。(厳位)

トップの気持
将に主体性がなければ目的は達成できず、独断的であれば犠牲が大きい。将が生に執着すればため
らいを生じ、必死になりすぎれば勝ち目はない。(厳位)

動   機
人間を必死にさせるもの、それは愛情であり、怒りであり、権威であり、義であり、あるいはまた、
利益である。(厳位)

動機づけ 行動科学で、人間を行動にかりたてる欲求発生の条件をつくることを「動機づけ」とい
うが、その条件は画一的、図式的なものではない。相手の動機を見抜くことが、兵法の宝典な課題
なのである。(厳位)

兵力に応じた戦い方
兵力が少数の場合は小まわりをきかせ、多数の場合は正規の戦いをするのがよい。つまり、多数の
人間を動かすには整然とした秩序が必要であり、少数でやるには活発な行動力が大切だ。(用衆)
         
秩序と行動力 これは組織に関する永遠の命題だ。秩序を言祝すれば行動力は鈍り、行効力を第一
にすれば秩序は犠牲になる。大組織の行動力を発揮するため、横断的な行動部隊をつくる「プロジ
ェクト・チーム」などは、この矛盾を解決しようとする一つの方法である。
ちなみに、原文は「進止」と「進退」との対比になっており、前者は「整然と進んだり止まったり
すること」だが、後者は「進」と「止」だけでなく、「進」と「退」、すなわち「必要があれば迅
速にバアクするだけの行動力をもつこと」の意味をもっている。


【環境リスク本位制宣言:記録なき世界的猛暑】No.2

 Aug. 5, 2018

 Aug, 3, 2018



【読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』No.6】  

 

第1部 第2章
だが、いざ出立となると、そのまえにやっておかなければならないことがいろいろとあった。まず
、こういう村では旅に必要なものがどれもこれも共有物になっている。毛布、水筒、火口……みな
そうだ。使わせてもらうには、隣人との交渉という面倒事が避けられない。さらに、アクセルとベ
アトリスは暗かに高齢だが、村の一員として日々それなりの仕事を拒っている。それを勝手に放り
出して出かけるわけにはいかない。そんなこんなで二人は準備に手間取った。それがようやく整う
と、とたんに今度は天候が悪化して、さらに足止めを食った。まあ、好天の季節がすぐそこまで来
ているのに、あえて霧や雨や寒さの中を行くこともない。

ついに出発の日が来た。明るく晴れた朝で、強い風に乗って白い薄雲が流れていた。二人は枕を手
にし、束ねた荷物を背負って歩きはじめた。アクセルは好天の一日になることを見越し、空か白み
けじめたらすぐにでも出発するつもりでいたが、ベアトリスがしぶった。もっと日が高くなるまで
待ちましょう、と言った。最初の夜に泊めてもらうサクソン人の村、一日あれば悠々着けます。だ
ったら、大平野の隅を横切る時刻を、できるだけ真昼近くにすることが大事。その時刻なら、あそ
こに潜む暗い力もきっと眠っていますから………。

二人連れ立ってまとまった距離を歩くのは久しぶりのことだ。アクセルは妻の体力がもつだろうか
と心配していたが、一時間ほど歩くうち、そんな心配は無用とわかった。大地を吹く風に向かって、
ベアトリスは頭を下げ、アザミや下生えにもひるまず、ゆっくり着実に歩きつづけた。足取りもし
っかりしている。ただ、左右の脚の動きがやはり同じではないという感じがした。どこかに痛みが
あって、それをかばっているようにも見える。上り坂や、足をとられるようなぬかるみでは、一歩
また一歩、後ろの足を前へ持ってくるのも苦労なようで、たちまち速度が落ちた。それでも立ち止
まることはなく、前進をつづけた。

出発直前の数日間、ベアトリスは自信満々だった。少なくともサクソン人の村までなら道をよく知
っていますよ、と言っていた。だって、昔からほかの女たちと一緒によく行っていた村ですもの、
と。だが、家のある丘を離れ、岩だらけの頂上が見えなくなり、湿地帯を越えてその先の谷を通り
過ぎたあたりから、自信が揺らいできた。道が伎分かれしていたり、目の前に吹きさらしの野が広
がっていたりすると、そのたびに足を止め、じっと立ち尽くした。見回す目にはパニックの色があ
った。

そんなとき、アクセルが必ず声をかける。「心配いらないよ、お姫様。時間をかけてゆっくり考え
ておくれ」
「でも、アクセル……」とベアトリスが振り向いて言う。「そんな時間はありませんよ。安全を考
えるなら、真昼までに大平野を渡らないと」
「いずれ着くさ、お姫様。好きなだけ時間をかけるといい」



Saxon, : Sachsen,  Sassen, : Saksen

当時、開けた土地での道探しは、いまよりずっと難しかったことを言い添えておこう。磁石や地図
など頼れる道具がなかったのはもちろんだが、それだけではない。たとえば、現在の田園地帯には見た目も
美しい生け垣があって、これで畑と道と草地が分けられている。当時はそんなものがなかった。旅人の目の
前にあったのは、これといった特徴のないただの広がりだ。

たぶん、どちらを向いてもほぼ同じ景色ということも多かったろう。進む方向を決めるときは、遠くの地平線に
立つ石柱の列とか、小川の蛇行、谷の起伏などを手掛かりにするしかなかった。曲がる場所を一つ間違え
るだけで、致命的な結果をもたらすこともありえた。旅人の生命を脅かすのは悪天候だけではない。道を間
違えるということは、人通りのある道から外れることを意味する。当然、隠れ潜む人間、動物、超自然の攻撃
者に身をさらす危険が大きくなる。

黙々と歩く二人を見て、驚く方がいるかもしれない。いつもあれほどしゃべり白っている二人なのに、なぜこ
んなに黙りこくって歩いているのか、と。だが、時代が時代だった。足首の骨を折ったり、擦り傷を化膿させた
りしたら、それこそ生命の危機に直結する。一歩一歩、集中して歩くことが最優先される時代だった。また、
道が狭くなって二人並んでは歩けなくなると、常にベアトリスが先に行き、アクセルがその後ろにつづいてい
たのも、現代人の目には奇異に映ったかもしれない。どこに危険が待ち伏せているかわからない上地なのだ
から、男が先に立つのがあたりまえではないのか……?

もっともな指摘だし、実際、この二人も狼や熊が出そうな森の中では、当然のように位置を入れ替えていた
。だが、それ以外では必ずベアトリスが前、アクセルが後ろだ。もちろん理由がある。道中はいつ悪鬼や悪
霊に狙われるかわからない。そうした危険な存在は、最後尾にいる者を最初に襲うと決まっている。たぶん
現代の猫利の猛獣が、群れの最後にいる玲羊を狙うのと同じことなのだろう。旅人がふと後ろを振り返った
ら、一緒に歩いていたはずの仲間が跡形もなく消え失せていたという話はよく間く。だからベアトリスもそれ
を恐れ、歩きながらときおりIいるの、アクセル?」と後ろに呼びかけた。この呼びかけに、アクセルは決まっ
てIいるよ、お姫様」と笞えた。



昼近くになって、大平野の縁にたどり着いた。アクセルとしてはこのまま進み、危険な土地をさっ
さと越えてしまうのがよいと思っていたが、ベアトリスが反対した。昼まで待って、それから大平
野を渡りましょう、と言った。二人は、平野までつづく下り斜面の入り口に岩を見つけ、そこに腰
をおろした。杖を垂直に立て、その影がだんだん短くなっていくのをじっと見ていた。

「いいお天気だし、ほんとうはね、このあたりで人が難儀に見舞われたという話もあまりないの」
とベアトリスが言った。「でもね、やはり真昼まで待ったほうがいいと思う。昼になれば、悪魔が
竪穴からわたしたちをのぞき見ることもなくなるから」
「ああ、おまえの言うとおり待とう、お姫様。この辺で悪いことが起こらないとしても、なんと言
ってもここは大平野だからな」

二人はしばらくそうやってすわり、ほとんど口もきかず、眼前の大地を見下ろしていた。不意にベ
アトリスが言った。

「息子に会ったら、一緒に同じ村に住めと言われるでしょうね、きっと。お隣さんと別れる気持ち
はどんなかしら。髪の白さをからかわれたりもしたけど、長いお付き合いたった人たちだし……」
「まだ何も決まったわけじゃないさ、お姫様。息子に会ったら、まずいろいろと話し合おう」

アクセルは大平野を見ながら言い、首を横に振って、「妙だな。いまどうやっても息子を思い出せ
ない」と静かな声でつづけた。
「わたしは、昨夜、夢に見たような気がしますよ」とベアトリスが言った。「井戸の横に立ってい
て、片側にちょっと体をねじって誰かを呼んでいました。でも、その前のことと後のことがもう思
い出せない」
「たとえ夢の中でも同心ただけいいじやないか、お姫様。どんな様子だったかな」
「強そうで、ハンサム。それは覚えていますけど、目の色とか頬の形なんかはどうだったかしら」
「わたしはもう顔をまったく思い出せない」とアクセルが言った。「この霧のせいに違いない。喜
んで霧にくれてやりたいことも多いが、息子の顔はな・・・・・・大切なものを思い出せないのはつらい」

ベアトリスがアクセルにいざり寄り、頭をその肩に預けた。風が強く吹きつけ、ベアトリスのマン
トの瑞をはためかせた。アクセルは妻に腕を回し、二人の体でマントの瑞を侠むと、それが妻の体
から離れないように押さえた。
「まあ、二人いれば、どちらかがすぐに思い出すだろうさ」
「いまやってみない、あなた? 二人で一緒に思い出すの。宝石を置き忘れたみたいなものだから、
二人でやればきっと……」
「ああ、そうしたいな、お姫様。だが、ほら、影がほとんど消えた。そろそろ行く時間だ」

ベアトリスは背すじを仲ばし、包みの中を掻き回して、「はい、これ。持っていて」と、何かを差
し出した。
渡されたのは、すべすべの小石のようなものが二個だ。どちらの表面にも複雑な模様が刻まれてい
る。アクセルはじっとそれを見つめた。
「ベルトに入れておいて。模様のあるほうが外を向くようにね。それがあれば、主キリストがわた
したちをお守りくださるのも楽になるから。わたしはこっちの二つ」
「わたしは一つで十分だよ、お姫様」

                          カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

                                      この項つづく

 Anglo-Saxons



【災害時にも安心!ソーラーパネル搭載の次世代バックパック】

● これはすごい!



● これもすごい!自動火消しタイマー付蚊取り線香炉

   

【ソーラータイル事業:自家消費型ソーラーシェアでブルーベリー栽培】

  Jul. 30, 2018

7月31日、ハウステンボス(長崎県佐世保市)は自家消費型ソーラーシェアリング(営農型太陽
光発電)事業に取り組むと発表。同園内のアートガーデン・バスチオン広場に出力132キロワッ
トの太陽光発電設備とブルーベリー観光農園を設置。2019年6月に稼働開始予定。

バスチオン広場には出力50キロワットの太陽光発電設備が設置されていたが、これを撤去して新
たにソーラーシェアリングを整備。再エネ使用比率を向上することで温室効果ガス排出量の削減、
電力・一次産品の地産地消の推進、来場者の環境・再エネに対する理解を深めることを目指す。約
2300平方メートルの面積に330キロワット/枚の太陽光パネル(メーカー未定)を400枚
を設置。年間発電量は14万21515キロワットアワーhを見込む、年間74.08トンの二酸化
炭素削減効果。発電した電力は同園内全体で自家消費。また、中心部の平地1681平方メートル
でブルーベリーを栽培するとのこと。



※同事業は、環境省から公益財団法人・日本環境協会が交付決定を受けた補助金「平成30年度二酸
化炭素排出抑制対策事業費等補助金」(再生可能エネルギー電気・熱自律的普及促進事業)に採択



栽培作物はブルーベリーとサカキ

 

  ● 今夜の一曲

Donald Fagen " I.G.Y."

「I.G.Y.」とは 、1957年7月から1958年12月までの科学プロジェクト「International Geophysical Year」
の略で国際地球観測年のこと。1950年代、60年代初頭までは、科学の発達によってもたらされる明
るい未来へのビジョンが喧伝されていた。歌手はドナルド・ジェイ・フェイゲン(Donald Jay Fagen、
1948年1月10日 - )。彼は、米国のミュージシャン、ソングライター。ジャズ・ロック・バンド「
スティーリー・ダン」の共同作曲者・共同創立者。ニュージャージー州パサイク郡(パッサイク郡)
出身で、生家は東欧諸国からのユダヤ系移民。

この歌は、そんな、当時の人たちが夢見た、科学の発達による夢のような世界をノスタルジックに
歌った内容が、子供ぽくって、おとなげないなんて、的外れな批評を言うのはヤボという――80年
代は多くの社会的なひずみが顕在化――このノスタルジーは、「I.G.Y.」の頃の過去への郷愁である
とともに、失われあるいは実現しなかった未来への夢への郷愁とされるが、彼が敢えてシニカルに
現実世界の矛盾に漂う「夢の欠片」。豊かな才能が発露する。

今夜は「暑気払い」。こんな日はこんな曲がぴったりではないか。



I.G.Y (What a beautiful world) - Donald Fagen - Fingerstyle Guitar Cover

ロシア疑惑と異常気象

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『李衞公問対』 (りえいこうもんたい)

七世紀唐の将軍事情の説を記したものとされる。「問対」とは「問答」のこと。

『李衛公問対』は、唐の太宗と名将李靖の対話の形で構成されている・古代の兵法が成立して
から千年近い歳月を経ているだけに、強烈な主張はないが、各兵法書のエキスをとりいれてい
る。



管理体制か人心の掌握か
太宗がたずねた。
「『管理体制を厳しくすれば、兵士たちは、君主を畏れて命令に従い、敵を畏れず戦うように
なる』と、昔の兵法家がいっているが、どうも疑問に思う。漢の光武皇帝は、桜草もなく孤立
した軍勢で、王萍のひきいる百万の大軍を打ち破った。当時、法律や刑罰などの管理体制が整
っていたわけでもないのに、兵士たちは敵の大軍をおそれもせず戦った。これはどういうわけ
であろうか」
李靖(りせい)はこたえた。
「軍の勝敗の形態は千差万別であり、単純ではありません。かつて、秦の圧制に反抗して決起
した陣勝と呉広が、秦の軍に勝利したのは、かれらの法律や刑罰が秦よりすぐれていたためで
はありますまい。また、おたずねの光武皇帝が王翼を撃って後漢王朝を創建したのは、人心が
王萍から離反している情勢に即応したからです。まして、王萍の下で将として草をひきいた王
将・王邑は兵法に通ぜず、ただ兵力さえ多ければよいと考えておりました。大軍を擁しながら
自滅したのはそのためです。

孫子は、こういっております。『まだ部下がよくなじんでいないうちに、わずかの過失があっ
たからといって、これを罰するならば、その部下は心服しない。心服しない者は使いにくい。
逆に、すっかりなじんでいて、過失があっても罰しないならば、押れてしまう。押れてしまっ
た者は役に立たない』。思いますに、この孫子のことばは、部下に対してはまず愛情によって
人間関係を強化し、そのうえで、過失があれば厳しく処罰すべきであることを示しているので
す。もし、愛情を按きにして、厳しく管理するだけであったならば、うまくゆくはずがありま
せん」
太宗が聞き返した。
「だが、『尚書』には、『愛情より賊しさが勝っている場合は成果が上がり、厳しさより愛情
が勝っている場合は失敗する』と記されているではないか。これはどうか」
李靖はこたえた。
「まず愛情をもって部下を信頼させ、そのうえで、まちがったことをしたら厳しく罰するので
す。この順序をとりちがえてはなりません。先に厳しくしておいて、あとがら愛情で接しよう
としても、うまくゆきません。『尚書』は、結果について注意をうながしているのでありまし
て、前後の関係をいっているのではありません。『孫子』のいうところは、永遠の真理です」

〈太宗〉  唐帝国の二代皇帝
〈光武皇帝〉後漢帝国の創始者(在位、西歴紀元25~57)。前漢帝国を賊はした王莽の大
軍を打ち破り、漢帝国を再興し、その後三百年にわたる繁栄の基をきずいた。
〈王藻〉  西歴八年、前漢帝国を滅ぼし、「新」という国号のもとに改革を行なおうとした
が失敗し、約15年で、劉秀(後の光武帝)のため滅ぼされた。劉秀は、わずかの兵をひきい、
玉藻の部将である王将・王邑のひきいる百万の大軍を破ったのである。
〈李靖〉  太宗に仕えた名将。衛国公に封ぜられたため李衛公と尊称された。『李衛公問対
』は、太宗と李靖の問答集という形をとっている(解題参照)。
〈師勝と呉広〉秦末、農民軍をひきいて反乱をおこし、一時は天下を制約した。
〈孫子のことば〉→『孫子』行軍笥(96頁)。
〈『尚書』〉『書経』ともいう。中国古代の歴史、伝説を素材にした儒教の書。 

  Wikipedia
Russian interference in the 2016 United States elections

【トランプ政権のロシア疑惑Ⅰ】

7月13日、米首都ワシントンに隣接するメリーランド州で、州選管の票集計や有権者登録シ
ステムの運営を請け負う地元のソフトウエア企業が、ロシアの投資会社に買収されていたとい
有権者を驚愕させる出来事が発覚したことが報じられた。州都アナポリスで緊急記者会見を開
いたトーマス・ミラー州上院議長とマイケル・ブッシュ州下院議長によると、問題の投資会社
は「アルトポイント」という名称で、2015年に地元ソフト企業「バイトグリッド」を買収
されるが、その投資会社の最大出資者がウラジーミル・ポターニンというロシアの大富豪であ
ることが最近になって分かった。選管関係者によると、ポターニンはプーチン露大統領と「親
密な関係」にある。アルトポイントの業務執行役員もジェラルド・バンクス(旧名ゲルマン・
アリエフ)という、姓名を米国風に変えた露大富豪。同2人は連邦捜査局(FBI)に通報し捜査
を依頼。ミラーは、ロシアが投資会社を通じて州選管に不正行為を仕掛けた証拠は現時点で見
つかっていないが、米露の冷戦は現在も続いている。ロシアは悪の帝国だ。私たちの選挙プロ
セスをカネで買い、玄関先まで押し寄せている(=選挙干渉/主権侵害/内政干渉)と話す(
下写真参照)。

 Jul. 13, 2018

また、アナポリスでの記者会見と同じ日、連邦大陪審は16年の大統領選で民主党候補だった
クリントン元国務長官の陣営幹部らのメールをハッキングで入手してネット上で暴露する「選
挙干渉」に関与したとして、露軍情報機関「参謀本部情報総局」(GRU)要員だった12人
を起訴。米情報機関は、ロシアが16年の大統領選で、結果を人為的に左右し、有権者の対立
をあおり民主制度への信任を低下させることを狙った、サイバー攻撃などによる「選挙干渉」
を実行したと断定した。これに対し、情報機関は、一連の干渉は選挙結果に影響を与えなかっ
ものの、トランプ政権の安全保障関連省庁や連邦議会、現場の選挙を取り仕切る州政府に、ロ
シアが18年の中間選挙、20年の大統領選でも干渉行為を仕掛けてくることは必至とし、対
策強化を急ぐ。

このメリーランド州の一件をめぐっては7月下旬、同州選出の連邦下院議員らが連邦選挙シス
テム処理業者を米国人所有/米企業限定を義務づけた法案を超党派で提出。上院では今月初旬、
ロシアの選挙干渉が判明した場合、さらに厳格な対露制裁を科すことを盛り込んだ超党派法案
も提出しているが、民主党のマカスキル上院議員の事務所がロシアにハッキングされるなど、
複数の候補に対するサイバー攻撃が早くも表面化しており具体的対策の遅れが目立っている。
ロシアの狙いは、電子投票システムへの侵入による投票結果の書き換えだが、電子投票導入州
のうち、デラウェアやジョージアなど5州は投票集計を紙に印字し記録として残しておらず、
外部から書き換え操作されても分からず「最も脆弱な州」にある。



尚、上院では7月中旬、電子投票を次の大統領選までに廃止して紙による投票を全面採用する
ことを定めた法案を民主党議員5人が提出するも、費用面などの問題で消極的な州も多く、最
大の懸念材料は、トランプ大統領が7月16日の米露首脳会談での記者会見でプーチン露大統
領に干渉をやめるよう強く要請しないなど「対露融和」言動を繰り返していることにある。ロ
シアの干渉が「あったとは思えない」と述べて非難を浴びたトランプ発言の失地を挽回するか
のように、最近のトランプ政権は厳しい対露政策を次々と打ち出しているが、同大統領からは、
露の干渉を否定する(8月3日のペンシルベニア州での集会)かののような発言がいまなお飛
び出している(米中間選挙 忍び寄る露の干渉、産経新聞、 2018.08.07)。

 Aug. 7, 2018

● ミュラーの「ロシア選挙関与調査報告」を話半分に受け取るトランプ支持者

トランプ大統領へのミュラーのロシア選挙関与調査による批判が激化しても支持率変わらない
と言う(上写真参照)。同大統領は特別顧問の捜査の中心であるトランプタワーでの16年の
選挙対策会議――大統領の長男、ドナルド・ジュニアが選挙期間中の16年6月、ヒラリー・
クリントンの不利な情報を持つロシア人弁護士に面会していた。陣営の外交顧問だったジョー
ジ・パパドプロス被告が、ロシア関係者との接触と面会の仲介についてFBIに嘘をついたと認
めたこと――の話を変えてきているが(AP, 2018.08.06)、ジョアネ・ムジアルは、ウラジミー
ル・プーチンとは特別な関心はなく同大統領を信頼しており、ロシアの選挙関与には否定的で
あるとする。また、ペンシルバニア州カナデンシスの66歳の退職者も同し意見でだと話す。
トランプ支持は、ホワイトハウスでの激動する18ヵ月間を通じ大統領の政治的優位を認めて
いる。 支持者の3分の2は16年の選挙関与したことを認めるが調査報告は誇張されたものと
して受け止めている。このように同調査が強化されるにつれて、どのようトンプル大統領が裁
かれるかが有権者の関心事となるが、特に脅威と感じないとと話す(以降、有権者のトランプ
に対する評価をレポート USA TODAY 2018.08.07)。このように、トランプ支持は堅調である
ことが伝わってくるが、その背景には、新自由主義(英米流金融資本主義)による格差分断の
拡大と不況感に対する疎外と反発がトランプ支持のエネルギーとして横たわっていることが読
み取れる。これは面白い情報だったので別件扱いに。

                                    この項つづく

           

【守る会日誌:暑気払いで気炎を上げる】  

7月6日、午後6時から居酒屋「伝五郎ベルロード店」で暑気払いの宴を張る。吉田さんの小
学校の特別支援活動の体験報告の独演会状態で四人衆の近況を話し合った。この内私だけがデ
スクワークで他の三人衆はそれぞれの職場で汗を流している。私の方から、❶世界的な異常気
象下での猛暑による作物の不作と灌漑水温度の上昇対策、❷墓守と墓仕舞いへの心構え(終活)、
❸彦根での脱原発運動の今後の展開の確認を話し合う。❸については、地域運動体ての連携と
該当団体への新規加入(三名)することを決める。❶は、水都施工を経営する辻さんに地下水
くみ上げ工事費用の概算(手動/自動)を訊く。今後琵琶湖の水温は上昇を続けていくので、
RE100型家庭/事業向け廉価な地下水揚水システム導入保守管理の必要性を痛感しているが、
訊くと水温は20℃程度だと言うので、想定していた15℃以下を上回り見直しが必要となる。
下図のように関連特許技術を参考掲載しておく。                   

 



【読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』No.7】  

 

第1部 第2章

「だめですよ、アクセル、二人で等しく分かち白わなくては。わたしね、下のあそこのどの道
を通ればいいか思い出したの。だから、道が雨で流されていなければ、これまでの道のりより
だいぶ楽になるはずよ。でも、一箇所だけ注意が必要なところがあって……聞いてくれている
の、アクセル?それはね、道が巨人の埋葬塚を通るとき。知らない人にはただの丘に見える
でしょうけど、わたしが白図したら、そのときは道を外れてついてきてくださいね。丘の縁を
ぐるりと回って、また道に戻るまでですよ。いくら真昼でも、わざわざお墓を踏みつけて通る
なんて、すべきことじゃないと思うから。いいこと、アクセル?」
「心配いらないよ、お姫様。よくわかった」
「念のために言っておきますね。路上に人を見かけたり近くから呼ばれたりしても、話したり
速度を緩めたりしてはだめ。罠にかかったり溝にはまったりして怪我をしているかわいそうな
動物を見かけても、そのほか何か注意を引くようなものに出会っても同じですよ」
「わたしだってばかではないよ、お姫様」
「では、行きましようか、アクセル」

ベアトリスが言ったとおり、太平野を歩く距離はほんの少しですんだ。道はところどころぬか
るんでいたが、道の体裁をきちんと保っていたし、日陰になる場所もなかった。最初は下り、
やがてまた徐々に上りはじめて、高い尾根に出た。右にも左にも荒れ地が広がっている。
猛烈な風が吹いていたが、真昼の太陽が照りつけている時刻には、かえってありかたかったと
言えなくもない。地面は膝ほどの高さのヘザーとハリエニシダで覆われていて、高木はまばら
だ。たまに視野に入ってくる木は、どれも一本だけひょろりと生え、吹きやむことのない強風
のために老人の腰のように折れ曲がっていた。やがて右手に谷が現れ、二人は太平野の秘める
力と神秘を思い出して、自分たちはいまそのほんの一部を横切っているのだという思いを新た
にした。

  Feb. 17, 2011

大平野を渡る間、二人はできるだけ離れまいとし、アクセルの爪先とベアトリスの腫が触れ合
うほどにくっつき白って歩いた。五、六歩行くごとに、「いるの、アクセル?」とベアトリス
が呼び、「いるよ、お姫様」とアクセルが答える。まるで儀式のようなそんな掛け白いをつづ
け、それ以外には一言もしやべらず、二人は先を急いだ。不意にベアトリスが白図をした。巨
人の埋葬塚が近くなったようだ。二人は道からわきのヘザーに逸れたが、そちらを歩く間も同
じ調子で掛け合いをつづけた。聞き耳を立てている悪魔に、なんとしても心の内を探らせまい
とする努力のように見えた。アクセル自身もまた、ベアトリス主導のこの掛け合いに応じる。
一方で、四方に気を配りつづけた。霧の動きが異様に速くないか。空か急に曇ってきはしない
か………幸いどちらの兆候もないまま、無事、大平野を抜けて森に入った。口では何も言わな
いものの、鳥の鳴き声の中を進むベアトリスの後ろ姿からは、いかにもほっとした様子が見て
とれた。儀式のような掛け白いも終わった。



小川のわきで一休みした。足を洗い、パンを食べ、水筒を満たした。ここから先は、ローマ人
が残した長い道をたどる。道は周囲より少し窪んでいて、両側にオークや楡の木が立ち並び、
これまで歩いてきた野の道よりずっと歩きやすい。だが、当然、人通りも多くなるから、やは
り警戒はたれない。実際、歩きはじめてから一時間も経たないうちに、母と子の三人連れ、驢
馬追いの少年、一座に追いつこうと急ぐ旅の役者二人に出くわした。どのときもアクセルとベ
アトリスは挨拶のために立ち止まり、当り障りのない言葉を交わした。一度、向こうから車輪
と馬蹄の音が響いてきたことがあって、このときは急いで溝に隠れたが、結局、サクソン人の
農夫が荷馬車に薪を山と積んで通りかかっただけで、危ないことは何もなかった。

午後の中頃になると空か曇り、嵐の気配が漂いはじめた。二人はオークの大木の陰にすわり、
通行人から身を隠すようにして休んでいた。道に背を向け、眼前は何もない大地だったから、
天候の変化にはすぐに気づいた。

「心配ないよ、お姫様」とアクセルが言った。「この木の下なら、お天道様が戻るまで濡れず
に待てるさ」 だが、ベアトリスは立ち上がり、上体を前に傾けて、額に手をかぎした。「あ
の先、道が曲がっていくのが見えるでしょう、アクセル?とすると、ここからあまり遠くない
ところに古いお屋敷があるはず。女だちと来たとき、そこで雨宿りしたことがあるの。ぼろ家
だけど、屋根はちゃんとしていましたよ」
「嵐の前に着けるだろうか、お姫様」
「いますぐ出れば」
「では、急ごう。わざわざびしょ濡れになって命を落とす必要はないからな。それにこの木は、
こうやって見ると葉が隙間だらけだ。空の大部分が透けて見える」



                     ※

廃屋は、ベアトリスが記憶していたより道から離れたところにあった。頭上が暗くなり、雨の
最初の数滴が落ちはじめたとき、二人はローマ人の道から枝分かれした脇道で悪戦苦闘してい
た。腰までもある緑麻が生い茂り、進むにはこれを杖で叩き、掻き分けていかねばならない。
それに、本道からはあれほどはっきり見えていた廃屋が、脇道に入ったとたん木々や葉に隠さ
れて見えなくなった。だから、不意に目の前にそれが現れたとき、二人の旅人はほっとすると
同時に、むしろとても驚いた。

ローマ時代にはさぞかし豪壮な屋敷だったのだろうが、いまはほんの一部しか残っていない。
目を見張るようだったはずの床も風雨にさらされ、あちこちによどんだ水溜りができて、色あ
せたタイルの隙間から雑草が伸びている。壁も崩壊が進み、低いところではくるぶしの高さほ
どしか残っていないが、それでも七日の部屋の形状や配置がその壁跡から見てとれた。石のア
ーチがあって、そこをくぐると建物の残存部分に入れる。二人は注意深くアーチに近づき、敷
居で立ち止まって聞き耳を立てた。やがてアクセルが大きな声で「どなたかいますか」と呼ん
だ。笞えはなかったが、さらに「ブリトン人の年寄り二人です。雨宿りをお願いします。他意
はありません」とつづけた。

依然、物音はせず、二人はアーチをくぐって、その先にある構造物の影の中に入った。これは、
昔、廊下だったのだろう。少し行くと、広々とした部屋の灰色の光の中に出た。ここでも四方
の壁のうち一枚が完全に崩れ落ち、隣の部屋は部屋そのものが消失して、険悪な様相の常緑植
物が床の端まで押し寄せてきていた。ただ、残る三枚の壁に囲まれた部分は、ちゃんとした天
井もあって、十分に雨風をしのげる空間になっている。昔は漆喰が白く塗られていただろうに、
いまは黒く薄汚れているだけの煉瓦壁の前に、二つの暗い人影があった。一つは立ち、もう一
つはずっと離れてすわっていた。

転がった煉瓦に腰かけているのは、鳥を思わせる小さな老婆だった。黒いマントをまとって、
アクセルやベアトリスより高齢に見えた。フードが後ろに押しやられ、なめし革のような皮膚
をした顔がよく見えるが、目は深く窪んでいて、どんな目かわからない。曲がった背中がすぐ
後ろの壁に触れそうでいて、触れてはいない。その膝の上で何かが動いた。アクセルが目をこ
らすと、老婆の手に一匹の蒐がしっかりとつかまれていた。

同じ壁の一番奥まったところに、痩せて異様に背の高い男がいた。様子からすると、同じ天井
の下にはいたいが、老婆からはできるだけ距離をとりたいといったところだろうか。着ている
厚手の長い外套は、寒い夜に張り番につく羊飼いが着そうな代物だが、その割に、裾の下から
突き出している脛は剥き出しのままだ。足にはちやんと靴をはいている。アクセルの目には
漁師の靴のように映った。頭のてっぺんが見事に禿げているが、耳の周りからは黒い毛の房が
突き出していて、おそらくまだ若いと思われる。壁を向き、その壁に片手を突いて、身を硬く
して立っている。なんだか、壁の向こう側で起こっていることをじっと感じ取ろうとしている
かのようだ。アクセルとベアトリスが部屋に入ったとき、男は肩越しに振り返りはしたが、何
も言わなかった。老婆もまた、二人を見ても何も言わなかった。一御身に平穏あれ」アクセル
がそう挨拶すると、二人の態度が少しだけ緩んだように見えた。背の高い男がIもっと奥へど
うぞ、お二人。そこでは濡れますよ」と言った。

確かに、いま雨は土砂降りとなり、壊れた屋根のところどころから雨水が流れ落ちて、新客二
人が立つ床の近くでしぶきをあげていた。アクセルは男に礼を言い、ベアトリスを促して壁ま
で進むと、先客二人の中間あたりの場所を選んだ。妻が荷物を下ろすのを手伝ってから、自分
の荷物も床に置いた。

                        カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

                                    この項つづく

 

 ● 今夜の一曲

” Between The Devil And The Deep Blue Sea” George Harrison

「悪魔と深い青い海の間」(日本語タイトル:絶対絶命)は、1932年に出版された米国ヒット
曲で、作曲:Harold Arle/作詞:Ted Koehlerので、1931年にCab Callowayにより録音される。
1931年のCotton Clubで発表されたリズムマニア(Rhythmania)である。 

Brainwashed

  The Making Of "Brainwashed"

 



【安坊峠/焼岳弾丸登山Ⅲ】

昨年果たせなかった五坐登山の第二坐目の焼岳を何とか登るも乗鞍岳・霧ヶ峰・仙丈ヶ岳の三
山が残っているが、日程的には9月中旬以降しか予定が立てられないから残り1坐(乗鞍岳か
仙丈ヶ岳)を候補とし無理のないスケジュールに限定する。ところで、焼岳の帰りのロングド
ライブで妙な体験をする。意識が飛びそうな疲れの中の「インディ500の疑似体験」という
もの。先天的なのか後天的なのかわからないが手先の神経が人より過敏にあり、例えば鉛筆硬
度が変われば筆跡が変化し、手の表面に触れる微細な異物に敏感なる癖があり、マウス操作が
妨げられる。今回は車のハンドルを握った途端、タイヤから伝わる微妙な振動に刺激され、そ
れまでの疲れ吹っ飛び、高速疾走でのアップ&ダウンフォースのコントロールがアクセルとハ
ンドル操作で可能になることに初めて実感。ロードスターの性能もあるのだろうが、若いとき
に体験しておれば佐藤琢磨越えも可能だったと妄想する。その反動でからか、昨日から疲れが
どっと吹き出し調子を崩す。
                                       

  

牛豚皮のスニーカ

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『李衞公問対』 (りえいこうもんたい)

七世紀唐の将軍事情の説を記したものとされる。「問対」とは「問答」のこと。

『李衛公問対』は、唐の太宗と名将李靖の対話の形で構成されている・古代の兵法が成立して
から千年近い歳月を経ているだけに、強烈な主張はないが、各兵法書のエキスをとりいれてい
る。

相手の失敗をまつ
太宗がいった。
「わたしは数多くの兵法書を読んだが、『あらゆる手段を使って敵が失敗するようにしむける』
という一言にまさる戦術はないように思うが、どうか」
李靖は、しばらく黙っていたが、「まさにおっしゃるとおりです。勝負にさいし、敵の失敗が
なかったならば、勝つことは容易でありません。たとえば、囲碁をうつのと同じです。互格の
腕前である場合、一手まちがえば、もうどうにもなりません。かかしから、戦争の勝敗は、た
った一度の失敗で左右されることが多いのです。まして、失敗ばかり重ねていたら千に一つの
勝ち目もありません……」

組織の機動力
太宗がたずねた。
「兵力は分散して使う場合もあれば、集中して使う場合もある。それぞれ状況に応じて使い分
けなければならないが、過去のどんな事例がこれにあてはまるであろうか」
李靖はこたえた。

符堅は、百万もの大軍をひきいて晋と戦いましたが、配水のほとりで敗北しました。これは、
大軍を集中することは知っていても、分散することができなかったからです。これと逆の事例
が、蜀の公孫述を撃った漢の将軍呉漢の場合です。呉将軍は、副将劉尚と二手に分かれ、二十
里ほど離れて陣を布いていました。そこへ公孫述の軍が攻めこんできました。呉漢と劉尚の両
軍はただちに合流してこれを徹底的に打ち破ったのです。分散していても集中できたればこそ
であります。

兵法の元祖ともいうべき太公望は、『分散しようとしても分散できない軍隊は”しばられた組
織”であり、集申しようとしても集中できない軍隊は”ばらばらの組織”である』といってお
ります」
太宗はいった。
「そのとおりだ。符堅は、はじめのうちこそ、兵法に長じている王猛の補佐によって、中原を
制屑した。しかし、王猛が死ぬと、符堅はやはり敗北してしまった。”しばられた組織”の失
敗であろう。逆に、呉漢は光武帝から一切をまかされ、自由に作戦を行なうことができ、蜀を
平定した。”ばらぱらの組織”にならなかったためであろう。この事例は、いつの時代でもお
手本とすることができる」



〈符堅〉 北方民族氏の英雄。四世紀の中国北部は、匈奴、掲、鮮卑、氏、先などいわゆる
「五割」といわれる北方民族が次々と十六の国をうちたて、次々に滅びるという騒乱がつづい
た。このうち陝西省を基盤にした氏族は、国号を「秦」と称し、持堅(357~85)の代に
勢力を拡大、長江以北から朝鮮北部に至る華北一帯を支配するに至った。383年、符堅は、
当時、長江以南を支配していた晋を伐つべく百万の大軍を南下させたが、ひすい淝水(ひすい)
のほとりで敗北し、野望はくずれた。

〈王猛〉 持屋に仕えた漢人の名臣。持屋の斎田が版図を拡大したのは、王猛の袖佐によるも
のであった(325~75)。
〈呉漢〉 一世紀、鏡胴を創始した光武帝に仕えた将軍。
〈公孫述〉一世紀、前漢が滅んだあと、蜀を手中におさめて帝と称し、鏡胴の光武帝に反いた
が、紀元三六年、呉漢のひきいる肩車に敗れて死んだ。

 

JJulul. 21, 2017

【高品位蓄電池製造篇:世界初!高出力型全固体電池の実証に成功】

8月6日、東京工業大学の一杉太郎教授らの研究グループは、高出力型全固体電池で極めて低
い界面抵抗を実現し、超高速充放電の実証に成功したことを公表。全固体電池の開発は、世界
中で競争となっている。なかでも、通常のリチウムイオン電池より高い電圧を発生する高出力
型全固体電池が注目されているが、実用化課題の1つが、高電圧を発生する電極と固体電解質
が形成する界面でのリチウムイオンの抵抗低減。しかし、明確な方策はなく、実現性が不明の
ままにあった。今回、❶薄膜作製技術と❷超高真空プロセスを工夫し、❸高電圧発生する電極
材料Li(Ni 0.5 Mn 1.5)O4を用いて、固体電解質と電極との良好な界面を作製し、極めて低い界面
抵抗を実現。さらに、その界面は大電流を流しても安定で超高速充電が可能であることを実証。



固体の電解質を用いる全固体電池は、高いエネルギー密度]と安全性を兼ね備えた究極の電池と
して、早期の実用化が期待されているが現在広く利用されている4V程度の発生電圧のLiCoO2
系電極材料でなく、5V程度より高い電圧を発生する電極材料Li(Ni0.5Mn1.5)O4を用いた高出力
型全固体電池が注目されいたが、Li(Ni0.5Mn1.5)O4を用いた高出力型全固体電池は、固体電解質
と電極が形成する界面における抵抗(界面抵抗)が高く、リチウムイオンの移動が制限され、
高速充放電が困難であった。高速充放電が実現すれば、携帯電話やパソコンが数分で充電完了
する。そこで、高出力型全固体電池の界面抵抗低減、さらには高速充放電の実証が喫緊の課題
であった。

同グループでは、薄膜作製技術と超高真空プロセスを活用し、Li(Ni0.5Mn1.5)O4エピタキシャル
薄膜を用いた理想的な全固体電池を作製(上図1)。さらに、固体電解質と電極界面における
イオン伝導性を評価した結果、界面抵抗が、7.6 Ωcm2という極めて低い値を示した(下図
2)。これは、従来の全固体電池より2桁程度低く、液体電解質を用いた場合と比較して1桁
程度低い。さらに、活性化エネルギーを見積もると、超イオン伝導体と同程度の低い値(0.3
eV程度)を示した。このような低抵抗界面の安定性を探るため、大電流で充放電試験を行い、
14 mA/cm2という大電流でも安定して高速充放電することに成功する。100回の超高速充放電で
電池容量の変化は全く見られず、リチウムイオンの高速な移動に対して、固体電解質と電極の
界面が安定であることを実証する(下図3)。



また、全固体電池の構造解析を行った結果、固体電解質と電極の界面を形成した直後に、固体
電解質から電極へ、リチウムイオン自発的に移動することも明らかになる。この成果により、
従来の4V程度の発生電圧から5Vへ、全固体電池を高出力化する道筋が明らかになり、極め
て低界面抵抗が得られ、超高速充放電が実現させている。高出力型全固体電池における、界面
抵抗の低減/高速充放電の実証は、全固体リチウム電池の実用化の鍵であり、実用化を目指す
上で大きな一歩となり、今後、詳細な界面構造解析により、電池特性向上につながる界面設計
指針構築につながる。

※本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)リチウムイオン
電池応用・実用化先端技術開発事業、トヨタ自動車株式会社、科学技術振興機構、戦略的創造
研究推進事業「超空間制御に基づく高度な特性を有する革新的機能素材等の創製」の支援を得
ている。また、本研究成果は8月1日(米国時間)に米国化学会誌「ACS Applied Materials and
Interfaces」オンライン版に掲載されている(Extremely low resistance of Li3PO4 electrolyte/Li(Ni0.5
Mn1.5)O4 electrode interfaces ,Hideyuki Kawasoko, Susumu Shiraki, Toru Suzuki, Ryota Shimizu, and T
aro Hitosug ,DOI : 10.1021/acsami.8b08506)。


 
 March 26, 2015
 
● リチウムイオン電池などの高品位化と製造原単位コストダウン効果

ところで、リサーチ会社の富士経済は6月14日に、HV(ハイブリッド自動車)、PHV(プ
ラグインハイブリッド自動車)、EV(電気自動車)の世界市場を上表のように予測している。
17年の世界市場は合計で324万台(前年比124.6%)と、現状はハイブリッドが市場
をけん引しているが、今後はEVシフトが進み、35年には。2788万台(17年比868
%)と見込んでいるが、これは調査企業によりかなりの幅をもつ(上グラフ参照)。また、電
機自動車用蓄電池(主にリチウムイオン二次電池)の製造原単位コスト(ドル/kWh)の予測
は、下グラフのように30年には18年比で1/4程度まで下落すると予測されており、さら
に、前述した「高出力型全固体電池」の様な高品位蓄電池などの技術革新による劇的なコスト
逓減の実現も予測され、自己消費型発電システム(家庭/事業/コミ二ティ向け)への組入れ
普及促進による一層のコスト逓減が進行するものと予想される。

さらに、Wood Mackenzie 社は、18年末までに500万台の電気自動車が生産され、12億台の
自動車在庫数にわずかに浸透、加速が速く、寿命が長く、部品が少なく、メンテナンスレスで、
排気ガスがない電気自動車の拡大生産は続く。従って、新車販売の50%以上が電気自動車に
置き換わった場合、40年の予測の3億台に到達する。その時、電気自動車の1/3を占める
バッテリはコストはすでにこの10年間で80%低下し、引き続き低下する。電池パックの価
格は、今年度は200ドル/ kWhを下回り、年率約10%低下する。その限界値は100 US /
kWhで、27年には、電気自動車がエンジン車と競合できる。性能は10年以内に倍増し、様
々なリチウムイオン電池(LiB)技術が採用され、リチウムNMC電池が注目されている。 NMC
111化学物質は、ニッケル、マンガン、コバルトの同等組成比で、約150Wh / kgの予想エネ
ルギー密度を有す。 エネルギー密度を高め、希少で高価なコバルトの依存を減らすことに焦点
を当てた業界は、NMC 5:3:2とNMC 6:2:2バッテリーへの移行にある。 一部の電池メーカーは、
20年代初めまでに200Wh / kg以上のエネルギー密度でNMC 8:1:1を量産できると考えてい
るが、化学的安定性と熱の制御に大きな課題が残されている。将来は、ソーラー固体のような
エネルギー密度が300Wh / kgを超える「次世代」バッテリーであり、20年代後半に市場に
出る可能性があろと塗装している。

 

 Aug. 2, 2018

● 14ドル/メガワット時超低価格入札ソーラーまもなく稼働

8月2日、Wood Mackenzieの子会社のGreentech Media社によると、近年、予測可能で透明な入
札プログラムにより、09年以降平均74%の価格下落と過去2年間の7件の記録的な入札価
格の下落により、未調達のーラー競売価格は下落したが、市場の「超安値」にも終りがある。
最適な資金調達と技術コストを伴う22年のシナリオでは、1メガワット時あたり14.70ド
ルがそれ。「価格下落の余地はまだあるのか?」答えは「肯」。22年の近い将来、14ドル
での電力販売契約(PPA:Power Purchase Agreement)締結は見込んではいないが、理解しうる底
値はどこか?

入札/オークション方式を採用した世界市場は、16年の後半(32社)からほぼ倍増。現在
61社。このような制度検討している市場数は倍増し、16年の後半には14から36。また、
サウジアラビア、アラブ首長国連邦、そして最近ではメキシコを含む成熟市場では、記録的に
低い入札額を目論む。同社の最新予測では、これらの価格低下限界を示す。これらの入札価格
は、低迷を続けるが、おそらく減速ペースで進行。絞り出せる収益(マージン)は多くある。
同社によると、ソーラーの世界平均電力購入契約は、22年までにメガワット時に40ドルに
到達するが、または現在のメガワット時の60ドルから速効で到達するケースである。例えば、
メキシコでは、30ドル/MWhを下回る過去最安値での入札事例がある(まだ相互接続されてい
ないが)。19年から22年の間に稼働する予測されている。GTM社は、22年までに、14
ドル/MWhの低価格入札がまもなく実現すると予測している。  

 Jul. 31, 2018

● 今夜の一枚/一曲

  

David Bowie  "My way"



8月8日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に強く反対し、政治
的立場の違いを超えて移設反対派の支持を得てきた翁長雄志沖縄県知事が他界、享年六十七。

                                        合掌

    

 


宇宙軍設立だって。

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『李衞公問対』 (りえいこうもんたい)

七世紀唐の将軍事情の説を記したものとされる。「問対」とは「問答」のこと。

『李衛公問対』は、唐の太宗と名将李靖の対話の形で構成されている・古代の兵法が成立して
から千年近い歳月を経ているだけに、強烈な主張はないが、各兵法書のエキスをとりいれてい
る。

攻撃と防禦
「『司馬法』に、『どんなに大国でも、好戦的な国はかならず滅びる。逆にまた、どんなに平
和な時代でも、戦争に備えていない国はかならず危うくなる』とある。つまり、攻撃と防禦は
同一のものの表裏ということになるのであろうか」

太宗の問に、李靖はこうこたえた。
「国家を維持していこうとするならば、攻防両面の備えをしないわけにはゆきません。攻撃は
敵の城や陣地を攻めるだけでなく、敵の心を攻める方法を講じておくことです。防禦は、城壁
や陣地を堅固にするだけでなく、自らの気力を充実し、非常に備えておくことです。これこそ、
大にしては君主たる者の由るべき原則であり、小にしては将たる考の則るべき基準であります。
敵の心を攻めるとは、つまり相手を知ることです。自らの気力を充実するとは、つまりおのれ
を知ることであります」
「まったくそのとおりだと凪う。わたしは、かつて出陣にさいし、敵の心と自分の心とを比較
してみた。それによって敵を知ることができた。また敵の気力と自分の気力とを考えあわせて
みた。それによって、おのれを知ることができた。このように、敵を知りおのれを知るという
のは、戦賠にたずさわる者にとって重要なことである。たとえ教を知らないでも、本当におの
れを知っている将ならば、けっして失敗することはないであろう」
「孫子が、『まず、敵に乗ずる隙を与えないようにする』といっているのは、つまりおのれを
知ることです。『そして敵が隙を見せるのを待つ』といっているのは、つまり相手を知ること
です。孫子はまた、『こちらの態勢が万全であれば、敵は攻められず、逆に敵が態勢を崩せば、
こちらが、攻勢に転ずることができる』ともいっております。わたくしは片時もこの教訓を忘
れておりません

〈孫子が・・・〉 『孫子』軍形篇(五四頁)。

士   気
太宗がたずねた。
孫子は、敵軍の士気をくじく法について、こういっている。『人間の気分は、朝は精気がみち
ており、昼はだれ気味、夕方は休息を求めるというように、状況によって変化する。戦上手は、
この士気の変化を見定め、精気のみちた敵は避け、だらけたり士気の衰えたりしている敵を撃
つ』とな。この説をどう思うか」

李靖はこたえた。
「生命をもった人問が、いざ戦いというとき、命すら投げだしてかかることがあるのは、なぜ
でしょうか。これは、遥クといわれる精神がそうさせるのです。そこで、用兵にさいしては、
まず部下の状態を見極めて、勝つ精神をふるいたたせ、その力で敵を攻めることが必要です。
また、呉子は、戦争には四つのかなめがあるとしており、精神的なかなめをその筆頭において
おります。これこそ基本的なものであり、人々を強制的でなく自発的に戦わせることができる
ならば、その力はおそるべきものとなるのです。孫子のいう『朝は精気が・・・』云々は、必ずし
も時間的なことでなく、朝・昼・晩になぞらえて、状況と精神の働きとの関係を論じているの
です。それを考えずに、昼ならこう、夜ならこうと決めて戦っても、意味がありません。孫子
のことばを表面的に解釈しても、かえって敵の思うつぼにはまってしまいます。敵の戦闘意欲
を失わせることの基本を会得してこそ、戦いの指揮がとれるのです」

〈人間の気分は……〉→『孫子』軍争篇(七九頁)。
〈呉子は……〉   →『呉子』諭将篇(一七五頁)。

   Sep. 26, 2017

 

8月3日、新日鉄住金は、東京海洋大学などと共同で超電導バルクモーターを開発した。モー
ターの回転子に組み込む超電導磁石(界磁極)として、独自の超電導バルク材「QMG」を成
形・集成した磁石モジュールを開発。非接触の新着磁方式を採用することで実現した。実証試
験機(出力30キロワット)では最長360時間の負荷試験を含む総計700時間の連続運転
を達成したほか、最大トルク537ニュートンメートルと超電導バルク材を利用したモーター
での世界最高値を記録している。スケールアップが容易な設計構造で、将来的に電気推進船や
電気推進航空機といった輸送システムをはじめ風力発電などでの実用化が期待される(新日鉄
住金 超電導モーター 独自バルクで高特性 化学工業日報 2018.08.06)。 

Aug. 6, 2018

15年に国連サミットで採択された持続可能な開発目標SDGs (Sustainable Development Goals)
に示されるように効率的なエネルギーの創生と利用による人の生活と環境との持続的共生は世
界にとって重要課題。世界の用途別電力消費量のうち約半分はモータが占めるように、モータ
のエネルギー消費量は非常に大きく、0.1~0.2 %の効率改善でも省エネ効果や省二酸化炭素
効果が大きい。モータの高効率化のひとつの手段として、電気抵抗がゼロになる超電導技術が
あり、世界中で超電導モータの実用化を目指した研究開発が進んでいる。超電導バルク材は、
同じ物質から製造した超電導線材を巻線したコイルに比べて、小さい体格・寸法で高い磁場(
10 T(テスラ)以上)を発生できることから大型超電導機器のコンパクト化に期待が寄せられて
いる一方で、高品質で大面積の超電導バルク材の製造には制約があり、従来は大型の超電導磁
石やモータに代表される大型超電導機器等への適用は困難と考えられていた。この課題解決を
含めて東京海洋大学、ABB、新日鉄住金の3者の開発したモータは、次のような特徴をもる。

  Aug. 3, 2018


1.モータの回転子に組み込む超電導磁石(界磁極)として高品質な超電導バルク材を成型・集成組み
  合わせて  構成する新しいバルク界磁極ユニットを考案採用
2.バルク界磁極ユニットをモータに組み込んだ状態で容易に着磁できる新しい着磁方式の考案採用
3.バルク界磁ユニットは標準化可能であり、30 kW実証機から大出力機まで同一規格かつ寸法仕様
  の高性能 の界磁極ユニットを提供

グループは異なる回転数や負荷の状況などの実回転試験を行うことで、実用化への懸念事項の
1つである減磁の問題を含めた超電導バルク材の挙動を検証。これまでに最長360時間の負荷試
験を含め総計700時間に近い運転を実施。実証機の最大トルクは537 Nmで、超電導バルク
材を利用したモータとしては世界最高値である。
超電導バルク方式のモータにおける懸念事項であった運転中の界磁極ユニットの温度安定性と
減磁の可能性に関しては、良好な温度安定性(±2℃以内の温度変動)と磁場安定性(減少率
は磁場センサの誤差範囲内である1%以下)を確認している。今回の成果は、電気推進船その
他の輸送システム、風力発電などへ適用可能な、超電導バルク材を利用した新しい方式の大出
力高効率モータの実現可能性を示すものです。今後、超電導モータの開発が進み実用化される
と、持続可能な社会の実現に貢献できるものと期待されます。

【関連文献】

❏ 特開2017-050979  回転機 国立大学法人東京海洋大学

【概要】

例えば超電導回転機の超電導界磁極等の被冷却体を超電導状態に保持する等の目的で回転機の
被冷却体を冷却するための冷却装置の1つとして、熱サイフォン方式および/またはヒートパ
イプ方式等の液相冷媒が気化する潜熱で被冷却体を冷却する冷却構造を備えた回転機が知られ
ている。例えば、下記特許文献1に示された構成は、冷却機で冷やされた凝縮器によって液化
された冷媒(液相冷媒)が連結配管を通じて回転機の回転子内部に形成された中央空洞に送ら
れ、中央空洞の液相冷媒が気化することにより中央空洞の周囲に設けられた巻線ホルダを介し
て巻線ホルダに巻回された巻線(被冷却体)を冷却するように構成されている。本構成では、
中央空洞内で液相冷媒が気化することによって生じた気相冷媒は、同じ連結配管を通じて凝縮
器に戻され、再び冷却、凝縮されることにより液相冷媒となる。

このため、巻線ホルダを介し熱伝導冷却に、回転機の回転子径が大きくなると熱伝導部の巻線
ホルダを中央空洞から被冷却体に至る径方向全体を中実構造だと、巻線ホルダを含む冷却構造
の重量増加はさけられず、回転機材料/製造コストが増大する(参考文献:特許第379901)。
また、冷却機による冷却性能は冷却機のコールドヘッド部と被冷却体との温度差が少ないほど
高効率化できるが、冷却機コールドヘッド部と被冷却体との間の伝熱構造(熱伝導経路)が長く
なり冷却機と被冷却体の間に温度差が生じ、冷却効率が高くできない。

下図1のごとく、回転軸線回りに回転する回転子と、冷却機と、を備えた回転機であって、回
転子は、径方向中央部に回転軸線に沿って形成される中空の冷媒流通部と、冷媒流通部より径
方向外方に設けられた被冷却体と、を備え、回転機は、冷却機で冷やされた液相冷媒を冷媒流
通部内に導入し、冷媒流通部内の気相冷媒を冷媒流通部から冷却機側へ戻す固定部配管を備え、
回転子は、冷媒流通部の回転軸線に沿った側面に形成された第1開口部を通じて液相冷媒を被
冷却体の近傍に導く導入通路と、被冷却体の近傍で液相冷媒が蒸発することによって被冷却体
との熱交換を行い、その結果生成された気相冷媒を冷媒流通部内に戻す戻り通路と、を備える
ことで、回転子径を大きくしても回転子の重量およびコストの増大を防止しつつ冷却効率を高
くできる回転機を提供する。
【符号の説明】

1,1B,1C,1D  回転子 5  固定部配管 11  界磁極(被冷却体) 15,15C 
導入通路 15a  第1開口部 16,16B,16C  戻り通路 16a  第2開口部
18  第1通路 19  第2通路 20  冷媒流通部 23  二重通路  24  浸入防止部
60  冷却機 100  回転機 A  回転軸線

❏ 特開2014-057396  超電導界磁極 川崎重工業株式会社他

【概要】

回転子を超電導化し固定子を常電導化したラジアルギャップ型の超電導回転電機の、垂直磁場
による臨界電流減少を抑制し、また、回転子を超電導化し固定子を常電導化したラジアルギャ
ップ型超電導回転電機の、他の超電導界磁極の相互影響を考慮し、線材の垂直磁場の低減を図
り臨界電流を向上させ、回転子の超電導界磁極と固定子の電機子巻線との双方に鎖交する鎖交
磁束を増加させで出力向上を図るため、
下図5のごとく、各超電導界磁極(28a~28c)は、超電導線材を渦巻き状に巻回してな
る超電導コイル体(27)と、超電導コイル体の回転子の径方向外側の端面に配置された強磁
性の外側磁場転向部材(60)と、超電導コイル体の回転子の径方向内側の端面に配置された
強磁性の内側磁場転向部材(50)と、を有することでラジアルギャップ型の超電導回転電機
の臨界電流及び出力の向上を図る。


【符号の説明】

10・・・超電導回転電機 12・・・筐体 14・・・中心軸 16・・・回転子 
18・・・固定子 20・・・ロータシャフト 22・・・ロータコア 24・・ケーシング
27…超電導コイル体 28,28a,28b,28c…超電導界磁極 29,29a,29b,
29c,29d…レーストラック型コイル 30a,30b…直線部分 30c,30d…円
弧部分 31…超電導線材 32・・・バックヨーク 34・・・ティース 36・・・スロ
ット 40…電機子巻線 50,51,52…内側磁場転向部材 60,61…外側磁場転向
部材

❏ 特開2018-035015 超電導バルク接合体および超電導バルク接合体の製造方法
  新日鐵住金株式会社

【概要】

塊状(バルク状)の超電導体は超電導バルク体と呼ばれ、従来の永久磁石を凌駕する非常に強
力な磁場発生源(超電導バルク磁石)や、複雑なフィードバック制御システムなしでも安定浮
上を実現できる非接触な軸受(超電導軸受)、磁場中でも大電流を通電できる電流リードなど
の通電素子、強い磁場を遮蔽できる磁気シールドなど、様々な応用が期待されている。

このような応用に用いられる超電導バルク体には、臨界温度(Tc)が高く、磁場中での臨界
電流密度(Jc)が高い超電導バルク体が望ましい。Re-Ba-Cu-O系酸化物超電導体(REはY
または希土類元素から選ばれる1種/2種以上の元素)の臨界温度Tcは90K程度と高いが、
酸化物の一般的な製法である焼結法で作製されるバルク体は多数の結晶粒からなる多結晶状の
超電導バルク体である。超電導バルク体が多結晶である場合には、内部に存在する多数の結晶
粒界が超電導電流を阻害するため、臨界電流密度Jcは77Kで1.0×103A/cm2以下で
あり、低い値である。臨界電流密度Jcを改善するために、特許開示例の溶融結晶成長プロセ
スが開発されている。溶融結晶成長プロセスで、結晶方位の揃ったRE1Ba2Cu3Oy(yは酸素量
で、6.8≦y≦7.1)中にRE2BaCuO5が微細分散した組織を有する超電導バルク体を得る
ことができる。超電導バルク体は、77K、1Tで臨界電流密度Jcが1.0×104A/cm2 以
上という磁場中でも高い特性を示す。ここで、結晶方位の揃ったとは、内部に大傾角粒界を含
まない単結晶状であることと同義である。このような結晶方位の揃った超電導バルク体は、溶
融結晶成長プロセスで製造され、すなわち、種結晶を用いて、徐冷させながら結晶成長させる
製造される。超電導バルク体のサイズが大型化すると、製造時間が極端に長くなることに加え、
種結晶以外からの余分な核生成が生じて多結晶化しやすくなるので、製造が困難になる。製造
可能なサイズには実質的限界がある。

このような超電導バルク体の大型化、長尺化の問題解決に、ある程度の大きさや長さを有する
超電導バルク体同士の接合が考えられるが、超電導バルク体同士を単に接合しただけでは、接
合層の互いの結晶方位がずれ、あるいは超電導バルク体同士をつなぐ接合層部分の多結晶化に
より生じ得る超電導電流を阻害する結晶粒界が存在のため、接合体の超電導特性は単体の超電
導バルク体と比較して低くあった。このような超電導接合体の問題解決方法が、特許文献とし
て開示されている。

具体的には、結晶方位の揃った複数の超電導体の接合本体が、その接合面で接合本体よりも溶
融温度(包晶温度)が低く、かつ接合本体と同じ結晶方位の超電導体からなる接合層を介し接
合されている超電導バルク接合体が開示されている。また、接合本体となる超電導バルク体同
士をお互いの結晶方位を揃えて配置し、接合層を挟んだ状態で、接合本体の溶融温度よりは低
く、かつ、接合層の溶融温度よりは高い温度まで加熱し、その後、接合層の溶融温度前後の温
度領域で徐冷することで、溶融状態にある接合層部が両端の接合本体を種結晶として結晶成長、
最終的に両端の接合本体と接合層の全ての結晶方位が揃った状態で接合することを開示。

尚、この方法では、接合層の溶融温度を接合本体の溶融温度より低くする必要がある。そこで、
RE-Ba-Cu-O系酸化物超電導体は、REサイトの元素によって溶融温度が異なる性質を有し、
接合本体として溶融温度の高い元素を選択し、接合層として溶融温度の低い元素を選択するこ
とが提案されている。別の方法として、RE-Ba-Cu-O系酸化物超電導体は銀を含有すると溶
融温度が低下する性質を有し、接合層に銀または銀化合物を含有することが提案されている。

この様に、結晶方位の揃った複数の超電導体からなる接合本体が、その接合面で接合本体より
も溶融温度が低い超電導体からなる接合層を介して接合する構造にすることは、両側の接合本
体と接合層の全ての結晶方位を揃えることを可能にする有効な手段であるが、従来の接合方法
では接合部分の機械的強度が必ずしも十分ではなく、接合した試料を取り扱っている際に接合
部分である接合層付近で試料が破損するという問題があった。


下図1Aのごとく、結晶方位の揃った第1の酸化物超電導体からなる複数の接合本体2と、隣
り合う接合本体2同士の間に設けられ、第2の酸化物超電導体からなる接合層3と、を備え、
接合層3を挟んで隣り合う接合本体2の互いの結晶方位のずれが15°以内であり、接合層3
の結晶方位と、隣り合う接合本体2との結晶方位のずれがいずれも15°以内であり、接合層
3は、接合本体2よりも溶融温度が低く、接合本体2および前記接合層3は、それぞれ金属銀
換算で30質量%以下の銀を含有する超電導バルク接合体1Aで構成/構造の超電導特性に優
れ、機械的強度が強い超電導バルク接合体の提供。

【符号の説明】

1、9、10、11  超電導バルク接合体 2 接合本体 3 接合層


※ 特開2018-114549 複層鋳片の連続鋳造方法及び連続鋳造装置 新日鐵住金株式会社

以上、ここでは紹介されていないが電動プレーンへの応用も期待される。また宇宙開発技術の
重要な技術に位置づけられる。これは面白い。 

● 今夜の一冊と一曲

  



The Doors   The Crystal Ship / Light My Fire

 Aug. 9, 2018

Space Force: Mike Pence launches plans for sixth military service | US news | The Guardian

● 今夜の寸評:宇宙軍設立だって。

嘘に嘘を、虚勢に虚勢(強勢に強勢)を重ねるトランプ大統領の政権は、レーガン大統領の軍
事ケインズ主義政策の焼き直しとして20年までに宇宙軍を設立することを公表。国連もまと
められず、「人類の統一エシカルコード」なしで宇宙を汚染するというのか?質が悪い冗談だ

 

疲れたらパターンを変えなくちゃ。

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『李衞公問対』 (りえいこうもんたい)

七世紀唐の将軍事情の説を記したものとされる。「問対」とは「問答」のこと。

『李衛公問対』は、唐の太宗と名将李靖の対話の形で構成されている・古代の兵法が成立して
から千年近い歳月を経ているだけに、強烈な主張はないが、各兵法書のエキスをとりいれてい

後継者と重臣
太宗がたずねた。
「そちは、まえに、重臣の季勣は兵法に長じているといったが、あの男をこのまま重用してお
くべきかどうか、そちの意見を聞きたい。というのは、わたしならあの男を使いこなせるが、
やがて、わが子治の代になったとき、わが子はあの男を使いこなせないだろうからな」李靖は
こたえた。
「よい考えがございます。このさい、李恂を左辺なさるのです。そして、将来、太子が皇位に
つかれたとき、あらためて抜擢するのが最上の策です。きっと恩を感じてこれに報いようとす
るでしょう。これならまちがいありますまい」
「なるほど、それに限るな」

<李勣・治〉李勣は、幸衛公と並称される唐代初期の名将。隋にかわった唐の天下を安定させ
るために大きな功績があった。後年、長州の地方長官に左辺させられたが、太宗が崩じて、太
子の治(高宗)が皇位につくと、召しもどされ、尚會左僕尉という高官に返り咲いた。

人間関係の妙 唐の名将李勣の失脚と復権は史実だが、その背後に果して本會のいうような李
衛公の献策があったのかどうかは定かでない。その詮索は別として、この説話は、いかにも東
洋流の
「人間関係」を示している。
わが国の武将黒田如水(1546~1604)にもこれと似た逸話がある。如水は晩年、人が
変わったように家※たちに当たりちらし、人々は寄りつかないようになってしまった。子の長
政(1568~1623、福岡藩祖)が諌めると、如水は「耳をかせ」といい、こうささやい
たという。「これは汝がためなり。乱心にあらず」つまり、わざとわが子に人望が染まるよう
にしむけたのである。

儀式の意味
太宗がたずねた。
「昔は、出陣や将の任兪にさいしては、諾諾な儀式をとり行なった。すなわち、君主はまず三
日開示戒泳浴したのち、将軍に賊を授けてこういう。『上は天に至るまで、将軍の凪うとおり
するがよい」。次に斧を授けてこういう。『下は地に至るまで、将軍の思うとおりするがよい
』。そして、将軍の梁る車の頃を推してこういう。『軍は時機に応じて適切な行動をとれ』。
こうして出陣した以上、軍は将軍の兪今に従い、君主の合今は聞かないでよいことになる。こ
のような儀式がすたれてからすでに久しい。そこで今回、そなたと相談し、将軍を派遣するさ
いの儀式を定めようと思うが、どうか」

李靖はこたえた。
「おそれながら申しあげます。昔、聖人が儀式を定めたについては、それぞれに意味があった
と思われます。つまり、宗廟で斎戒するのは、神威をかりて士気を高揚しようとしたものです。
賊・芹を授け、率の穀を推すのは、統率の権限を将軍に委譲することを意味したものです。
今日、陛下は、出陣の度ごとにかならず重臣だちと協議し、宗廟に報告したのちに派遣してお
られろ。これはまさに神威をかりて士気を高揚しているのです。また、将軍を任命した場合は、
将軍に適宜の処置をとらしておられる。これはまさに、統率の権限を委譲しているのです。
つまり、斎戒泳浴したり、率の澱を推したりなさるのと変わらないではありませんか。すべて
昔の儀式にかなっており、意味は同じです。あらためて儀式を制定するまでもありません」
「なるほど、そうであったな」
 太宗は側近に命じて以上の顛末を記録させ、後世の参考とした。



【読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』No.8】  

 

  

第1部 第2章

そのあと、四人はしばらくそのままでいた。嵐はますます激しくなり、稲妻が光って、四人の
いる避難所を照らした。背の高い男と老婆の奇妙に凍りついたような身構えが伝染したのか、
アクセルとベアトリスまでも、いまは身動き一つせず、黙って立っていた。まるで一枚の絵画
に出会った二人が、自身もその内部に入り込み、あげく、そこに描かれた人物になってしまっ
たかのようだった。
土砂降りが落ち着き、安定した降りになった。鳥のような老婆がようやく口を開いた。一方の
手で兎をつかみ、もう一方の手でなでながら、こう言った。

「神がともにありますように、お二人さん。さっきは挨拶もせずに失礼したね。でも、こんな
ところに来る人がいて驚いたものだから。まあ、ようこそ。嵐が来るまでは旅日和だったんだ
から、誰か来ても驚くことじゃなかったねえ。この嵐は急に始まって、急に終わるやつだか
ら、旅の遅れは心配しなくていいよ。むしろ、いい休憩と思うことだ。お二人さんはどちらヘ
行かれるのかね」
「息子の村に行くところです」とアクセルが笞えた。「向こうでまだかまだかと待ちかねてい
るでしょう。今日はなんとか日暮れまでにサクソン人の村に着いて、一晩泊めてもらうつもり
です」
「サクソン人はいろいろと荒っぽいけど、旅人にはわが同族よりやさしいね」と老婆が言った
。一おすおりよ、お二人さん。後ろにある丸太は乾いている。わたしもすわったことがあるか
ら、すわり心地は保証するよ」

アクセルとベアトリスが言われたとおりにすると、そのあと、また静けさが戻った。雨は相変
わらず降りつづいている。やがて老婆に動く気配があった。アクセルがそちらを昆ると、手で
兎の両耳をつかみ、引っ張っていた。兎は逃れようともがくが、鈎爪のような手は緩まない。
アクセルの見ている前で、老婆は空いているほうの手に長い錆びたナイフを取り出し、蒐の喉
元に当てた。横でベアトリスがぎくりとした。では、これは血痕なのか……アクセルはあたり
の床を見ながら思った。二人の足元をけじめ、床のいたるところに黒い染みがこびりついてい
る。空気中には蔦のにおいと崩れかけた石のにおい。それらと混じり白ってかすかに漂ってい
るこれは……い枚生のにおいなのか、と思った。

ナイフを兎の喉元に当てたまま、老婆はまたじっと動かなくなった。だが、その窪んだ目で、
壁の向こう端に立つ背の高い男をじっと見ているのが、アクセルにはわかった。男の合図を待
っているかのように見えた。だが、男のほうは相変わらず額を壁に触れるほどに近づけて、こ
れまでどおりの強張った姿勢をつづけている。老婆の視徐に気づいていないのだろうか。気づ
いていて、あえて無視しているのだろうか。

「お婆さん一とアクセルが呼びかけた。「どうしてもと言うなら殺せばいいが、首をひねった
ほうが早いでしょう。それか、石で強く一撃するか……」
「そんな力があればこそですよ、あなた。わたしにはない。あるのは鋭く尖ったナイフだけ」
「では、喜んでお手伝いしましょう。そんなナイフは必要ない」アクセルは立ち上がって手を
差し出したが、老婆は動かず、兎を譲る気を見せなかった。そのまま構えを変えず、ナイフを
兎の喉元に当てたまま、部屋の反対側にいる男をにらみつづけた。

背の高い男がとうとう二人のほうに向き直り、「お一一人さん一と呼びかけた。「さっき入っ
てこられるのを見たときは驚きましたが、いまは喜んでいます。善良な方々だとわかりました
から。で、お願いがあります。嵐が去るのを待つ間、わたしの窮状を聞いてくれませんか。わ
たしはしがない船頭です。波立つ水面のこちらからあちらへ旅人を渡すのが仕事です。仕事の
時間は長く、大勢が列をつくって待っているときなどは眠る時間さえなく、擢で漕ぐたびに四
肢が痛みます。雨が降っても風が吹いても、太陽が照りつけても肩ぎつづけます。くじけそう
になることもありますが、そんなときは、休日のことを考えて気を取り直します。ほら、船頭
はわたし以外にも何人かいて、交代で休みますからね。ま、何週間も働きつづけたあとのこと
ですが。その休日をどう過ごすかというと、どの船頭にもお気に入りの場所があって、そこへ
行って過ごします。わたしはここに来ます。この家で、わたしは何不自由ない子供時代を過ご
しました。昔とは様変わりしてしまいましたが、思い出がいっぱい詰まっている場所で、ここヘ
来る目的はただ一つ、静かにその思い出に浸ることなんです。さて、ここからが問題です。わ
たしが来ると、それから一時間もしないうちに、このお婆さんがあのアーチから入ってきま
す。そこにすわり込み、昼も夜もなく、一時の休みもなくわたしをなじりつづけます。残酷で
不当な非難を浴びせてきます。暗闇をいいことに、恐るべき言葉で呪ってきます。一瞬たりと
平穏な時間をくれません。いまご覧のとおり、ときには兎などの小動物を持ち込んできます。
ここで殺して、その血でわたしの大切なこの場所を汚すためです。ええ、頼みましたとも。平
身低頭してお願いしましたとも。どうぞ、もう来ないでください………でも、神にどんな憐れ
みの心を与えられたのか、お婆さんは来るのをやめてくれません。いまおとなしくしているの
は、あなた方の来訪という予定外のことがあったからです。もうすぐ、わたしは仕事に戻らね
ばなりません。また水上で何週間もの苦役が待っています。お二人さん、お願いです。このお
婆さんを立ち去らせてくれませんか。それは神を畏れぬ所業だと悟らせてやってくれません
か。外から来たお二人なら、この人も耳を貸すかもしれませんI

                        カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』    

                                   この項つづく

【ソーラータイル篇:薄膜ハロゲン化鉛ペロブスカイト系の展望】

 Tsutomu Miyasaka

「ソーラ-タイル事業:加速する高品位薄膜タンデム型ソーラーシートの実用化」(『スマフ
ォを見つつ子は我に告ぐ』, 2018.07.12)で掲載したように、宮坂力桐蔭横浜大学教授らが開
発した膜ハロゲン化鉛ペロブスカイト系太陽電池が世界的に認知され、シリコン単結晶タンデ
ム型では変換効率25.2%(オックスフォード太陽光発電株式会社:Oxford Photovoltaics Inli-
mited)が試作され量産化が始っているており、富士経済株式会社は、新型・次世代太陽電池(
フレキシブル結晶シリコン、フレキシブルGaAs、ペロブスカイト、色素増感、有機薄膜)市場
は3億円だと公表。18年の新型・次世代太陽電池市場は15億円の見込み。30年には17
年比811倍の2433億円に拡大すると予測(「次世代太陽電池市場篇:30年3433億
円」『痛む前進労り眠る』.2018.07.26)。また、7月27日、Imec社は、新しいペロブスカイ
ト - シリコンタンデムセルを用いて27.1%の効率を記録。これにより最も効率的なスタン
ドアロンのシリン太陽電池より優る変換効率を達成。



それによると、今回の改良型は、裏面電極構)を採用した4端
子の4cm2シリコンセルを基板として用い、その基板上に0.13cm2のペロブスカイトセルをスピン
コートで形成したもの。同技術は、imecも加入している国際的な太陽電池開発コンソーシアム
Sollianceが開発した技術を活用したもので、別途、4cm2のIBCシリコンセル上に同サイズのペロ
ブスカイトモジュールを形成してタンデム構造にしたところ、変換効率25.3%と、今回の報告
値からはやや落ちたものの、単体のシリコン太陽電池を上回る25.3%の変換効率を得ることが
できた。従来型との最大の変更点は、ペロブスカイト・アブソーバの設計とプロセスであり、
シリコンとのタンデム構造の変換効率を最適化するためにバンドギャップを微調整することに
注力したと研究グループでは説明している。 

なお、今回の成果を受けて、産業用シリコン太陽電池の上にペロブスカイトを積層することは
太陽光発電の効率をさらに向上させる費用対効果の高いアプローチの1つになると研究グルー
プでは自分たちの見解を表明しており、高変換効率を求めている太陽電池業界のバリューチェ
ーン内のすべての企業に呼び掛けて、共に研究を進めていくことで、さらなる変換効率(30
%超)を実現するだろうと同社の責任者は話している。 

● 薄膜太陽電池におけるハロゲン化鉛ペロブスカイト:背景と展望

 April 05, 2018

【要約】

光起電性吸収材としてのハイブリッドペロブスカイト材料の発見の背景と、薄膜フレキシブル
デバイスの製造のための多結晶層の品質および低温金属酸化物の調製を制御する溶液プロセス
に焦点を当てる。高効率ペロブスカイト光電池の進歩について記載されている。単一の高電圧
デバイスと環境問題を伴う Shockley-Queisser 限界への効率向上の可能性と、ハロゲン化鉛系
デバイスの工業化(量産化)のソリューションを含む、今後の研究の方向性が議論する。

工業化の2つの使命 
工業化にとって魅力的なハロゲン化鉛ペロブスカイトデバイスの主な利点は、広い範囲の光強
度(屋内光)で、❶高電圧(> 1.1V)および高効率(> 20%)性能、❷軽量のフレキシブル
デバイスを製造する可能性、❸デバイスの魅力的な外観(カラフルなおよび/または半透明な
ボディ)の設計など、多くの利点がある。 ❷~❹)は、有機太陽電池や色素増感太陽電池の
共通の特徴であるが、❷~❹に適合する他のセルでは、これらの利点は、ペロブスカイトデバ
イスを他の既存の太陽電池から区別するのに十分であり、産業用途のためのより大きな潜在的
技術である。

しかし、実用化には2つの課題が残されている。1つは、作動中の細胞の長期間の安定性の不
確実性。ペロブスカイト、ETL、およびHTLの組成開発により、実験室で作製したペロブスカ
イトデバイスの熱変化、湿気および光浸漬に対する安定性が着実に向上している。85℃~100
℃の温度および高い相対湿度(> 60%)のデバイスの加速試験は、カプセル化されたセルの
十分な耐久性を示す。これらの有望な結果にもかかわらず、より現実的な光変化および温度変
化条件に暴露された大面積集積モジュール試験により、実用的な安定性を実証する必要がある。
言うまでもなく、高効率小型セルのスケーラビリティは、適切な製造方法およびカプセル化方
法の確立が必要である。

また、2つめの鉛の環境問題は、現代社会において大きな懸念事項である。産業界は、鉛含有
材料の使用に対して多くの厳しい規則に直面。事故によるペロブスカイト型光起電力装置から
の鉛の放出の危険性はわずかである(装置1平方メートル当たり約0.4g)に限られているが、
これらの厳しい規則は、産業界および消費者社会における装置の流通を妨げるになる。この問
題を解決するために、鉛フリー材料およびそのデバイスに関する多くの挑戦的な研究が既に行
われている。一部の材料は適度な効率に達している可能性があるが、いずれも、鉛ベースのペ
ロブスカイトの高い効率を実現していない。鉛フリーデバイスの低性能の主な理由は、❶欠陥
許容度、❷キャリア拡散長、❸および光吸収係数(直接遷移)に欠ける固有の物理的特性によ
る。別の理由として、溶液プロセスによって高品質の均一な吸収層を製造することが難しいこ
とにある(下図5参照)。

 Apr. 5, 2018

14族元素および15元素のうち、ビスマス(Ⅲ)およびアンチモン(Ⅲ)は、鉛の置換の一般的
な候補であり、スズ(Ⅱ)とは異なり、それらは大気および湿気にさらされた状態で安定した
ハロゲン化物結晶を形成できる。ビスマスについては、溶液処理(CH3NH3)3Bi2は、表面に凹
凸のある細孔の多い多結晶膜を形成する。8不十分な被覆率のこのような形態不良は、大きな
再結合損失を引き起こし、不良な電池性能をもたらす。同様の問題は、Cs2BiAgBr6および
Cs2InAgCl6の全無機二重ペロブスカイトおよび後者が粗い多結晶膜を形成するAg3BiI6および
AgBi2のペロブスカイト様構造でも起こり得る(図5c参照)

理論化学において、無鉛ペロブスカイトまたはペロブスカイト様半導体の組成モデリングは、
光学および物理学において非常にバランスのとれたメリットを示すハロゲン化鉛ペロブスカイ
トのような「完全な」電子構造を設計することが困難であることも示している。したがって、
残念ながら、 "鉛"は技術をリード先導している。

展望:地上から宇宙への多様な応用
ペロブスカイトの光起電性応用は過去10年間で大きな進歩を遂げたが、この材料は光電子デ
バイスの様々な用途が想定されている。まず、ハロゲン化鉛ペロブスカイト(特に、CsPbBr3)
の優れたフォトルミネッセンス特性は、次世代の発光素子の開発につながった。発見された別
用途の方向は光感知装置である。弱い可視光の検出に高感度でフォトダイオードとしてのハロ
ゲン化ペロブスカイト鉛の優れた機能の発見で、ペロブスカイトフォトダイオードが、デジタ
ルカメラのカラーイメージセンシングにも有望である。リード問題は家電製品ペロブスカイト
の使用は、既に生活場面で貢献している他の工業用鉛ベースの製品と同じように例外として扱
える。そのケースの1つには、診断に使用するX線検出器――03年、サムスンらはは、最近、
患者が放射線への曝露を最小限に抑えるペロブスカイトベースのX線検出器とイメージング装
置を実証し. ペロブスカイト半導体の薄膜数百ミクロンメートル)は、×線に効率的に応答す
る。×X線を電流信号に直接変換することで、シンチレータベースの間接変換と比較して、よ
り高い解像度の画像検出が可能となる。したがって、この特定ケースとして×線へ曝露最小化
は、Pbが環境に侵入する脅威よりも人の健康により安全サイドにある。

外部空間もまた、ペロブスカイトデバイスの再生地となっている。 MAPbI3および混合カチオ
ン/ハライドペロブスカイトは、宇宙環境における高エネルギー粒子放射に対して強固な安定
性をもつ。ペロブスカイトの欠陥に対する例外的な耐性は、ペロブスカイト太陽電池のプロト
ンと電子粒子などの空間放射に対する高い耐性をもち、高いフルエンス(入射量)と大量のプ
ロトン照射にさらされたペロブスカイト太陽電池の優れた耐放射線性を実証。ペロブスカイト
太陽電池は、SiおよびGaAsベースの太陽電池を破壊する極端な量の電子および陽子の照射に耐
えることができる。このような堅牢な耐久性は、高エネルギー粒子の浸透を可能にする極薄い
吸収フィルム(可視光変換用)の使用できる。言うまでもなく、その欠陥耐性は、宇宙環境に
おけるこのようなまれな性能に大きく寄与する。

以上、長文の技法となっているが、タンデム型で30%超はモジュールタイプで実現するはさ
ほぼ投句はないだろうし、コスパも実現するだろが2点について追加しておきたい。前者は色
素増感型の意匠性にユニークな特徴があったもののペロブスカイト系は暗黒食であり、サーフ
ェードとの用途を考慮すればエンボス/カラーマント層を必須とするなら30%×エンボス/
カラーマントによる変換効率ロスは考慮しなければならない。また、後者は、安全的側面から
鉛とドーパントの物質収支を3Rの観点からトレースすることを義務つけることが必要なると
考える。

  ● 今夜の一曲

“It's A Sin” / Pet Shop Boys

1981年に、ミュージシャン兼雑誌記者のニール・テナント(Neil Tennant)と 当時学生だった
クリス・ロウ(Chris Lowe)の2人が出会い結成。楽器屋で2人同時に同じキーボードに手を
出したことより運命的なものを強く感じたとのこと。デビュー当初のユニット名は「ウエスト
エンド」、その後、共通の友人がペットショップで働いていたことから現在の名前に改名。
1984年にエピックから「West End Girls」でデビュー、1985年にパーロフォンに移籍後、2曲と
してリリースした「West End Girls」のポップアレンジバージョンが大ヒット、全世界で約150
万枚を売り上げて一躍有名になる。この曲は、日本でスズキ・カルタスGT-iのCMソングに使わ
れる。翌年にはファースト・アルバム「please」を発売し、全英3位と大ヒット。その後も現
在に至るまで数々のヒット曲を提供し。1987年には、ニール自身の体験が基になっている
宗教的な曲「It's a sin」や、ブレンダ・リーのカヴァーである「Always on my mind」が全英1位
となる。ちなみに後者は彼らのUKの唯一のクリスマスNo.1ソングある。また同年にはニールの
ファンであるダスィ・スプリングフィールドと「What have I done to deserve this?」(邦題:「と
どかぬ思い」)でデュエットた。1989年には初のワールド・ツアーを行い、以降も精力的に活
動する。

   

1キロワットアワー1円時代

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『李衞公問対』 (りえいこうもんたい)

七世紀唐の将軍事情の説を記したものとされる。「問対」とは「問答」のこと。
『李衛公問対』は、唐の太宗と名将李靖の対話の形で構成されている・古代の兵法が成立して
から千年近い歳月を経ているだけに、強烈な主張はないが、各兵法書のエキスをとりいれてい

運勢を信ずべきかどうか
「吉凶を判断したり占ったりする運命学は、戦いの場合、無視してもよいだろうか」
太宗の問に、李靖はこういった。
「それはいけません。そもそも、戦術とは、心理的な操作です。吉凶を予知する運命学を利用
することによって、貪欲な者だろうと頭の悪い者だろうと、思うように使うことができます。
ですから、無視するわけにはまいりません」
「だが、そなたは前にこういったことがある。名将は、時日や方角による吉凶の予知などには
従わない。愚将ほどこうしたものを気にする、とな。無視してもいいわけではないか」
「殷の糾王が、周の武王に滅ぼされたのは甲子の日です。つまり、同じ甲子の日でも、討王に
とっては滅亡の凶日となり、武王にとっては興隆の吉日になりました。また、宋の武帝は、『
勁くは凶なり』とされる往亡(おうぼう)の日に、軍事行動を起こしました。ひきとめた部下
にたいし帝は『往亡とは、こちらが往き、敵が滅びる日だ』といったのです。果して宋は勝ち
ました。こうみてくると、縁起など無視すべきことははっきりしております。しかし一方では
、こういうこともあります。戦国時代、斉の将であった田単は、敵の燕軍に包囲されたとき、
ひとりの部下を神として祭り上げ、その口から『燕は敗れるであろう』といわせました。こう
しておいて、火牛の計をもって出撃し、燕軍を大破しました。これこそ心理的な戦術でありま
す。吉日・凶日などというのも、同じようなものです」

「なるほど、田単は神のお告げを活用した。だが、反対に周の軍師であった太公望のように、
占いの道具を焼き捨てることによって士気を鼓舞し、討を滅ぼした例もある。縁起をかつぐの
とかつがないのと、全く相反するが、どちらをとるべきだろうか」

「目的は同じことなのです。片やこれを逆手にとり、片やこれをそのまま利用する。それだけ
のこと李衛公問対です。太公望の故事について串し上げましょう。
太公望が周の武王を補佐し、殷の討王を撃つべく、牧野の地に至ったとき、大言雨にあい、の
ぼりや太鼓がこわれてしまいました。そこで、散宜生なる者は、占って吉と出てから進撃しよ
うとしました。のぼりや太鼓が破損したため、将兵が不安動揺しているので、占いによって神
のお告げを得ようとしたのです。

ところが太公望は、『占いには草の茎や動物の骨を用いるが、枯れ草や骨にきいてどうなるも
のか。しかも、どのみち、臣下の身で君主を撃つのだから、迷ってはいられない』として、占
いの茎や骨を捨ててしまったのです。散宜生と太公望のやり方は、逆のようでありますが、根
本は同じであります。わたくしが、縁起を無視しないほうがよいと串し上げたのは、これを活
用する時機があるという意味です。成功の基本が、神や縁起のせいでなく、人間の行動にかか
っていることはいうまでもありません」 

〈運命学〉原文は「陰陽術数」。陰陽は、時日や方角による吉凶判断のことであり、術数は回
耶神託などによる吉凶占いのこと。中国の伝統的な運命学であり、古代においては絶対に近い
権威をもっていた。

〈心理的な操作〉読み下し原文「兵は謳道なり」は孫子の有名なことば。本書『孫子』の部で
は「敵をあざむくこと」と訳出してある(始計篇、三八頁)が、解説にも記したように、トリ
ック、心理操作といった意味あいも強く、ここでは前後の関係から訳文を変えた。

※次回から『中国の思想 第六巻 老子・烈士』へ。

【スマートな農場事業篇:革新的な潅水システムにビジネスチャンス!】

8月9日、「守る会日誌:暑気払いで気炎を上げる」(『ロシア疑惑と異常気象』)で、世界
的な異常気象下での猛暑による作物の不作と灌漑水温度の上昇対策について触れたが、IBMが
「スマート農場」事業――増加の一途を辿る世界人口。このままでは、約30年以内に世界の食
料供給量を上回ることが予測されている。農業従事者はWatson IoTを活用し、天候、気温、土
壌pH、その他農業に関わる環境要因など、さまざまなデータを分析。状況に応じた最適な意思
決定が可能になるので、生産性を向上し、収穫高を飛躍的に高めることが可能になる――東日
本大震災以降、農業園芸団地を造り、再生可能エネルギーやICT(情報通信技術)を活用して野
菜を栽培する「スマート農場」の試みも始まった。2011年12月に仙台市と地元農業法人の舞台
ファームなどが、日本IBMやカゴメとともに「仙台東部地域6次化産業研究会」を立ち上げ、計
画を推進している(日本IBMが作る「スマート農場」は何が違うのか:日経ビジネスオンライン
2012年03月14日
)。あるいは「環境データの見える化で『スマート農業』を実現!」(2016年
11月)、あるいは、「若者よ農業に来れ井関農機、半自動「スマート農園」(日経カレッジカ
フェ 大学生のためのキャリア支援メディア、2016.07.05)などとして掲載されている。さて、
IBM日本の「スマート農場」の特徴(事例)は、❶データとAIが導き出す最適な水量供給:ブ
ドウの生育には、水がなによりも重要なリソース。そこで創業80年をこえるE.&J.Galloワイナリ
ーは、ブドウ畑の注水管理にAIを活用。さまざまなデータを活用して各ブドウ畑に必要な水量
をAIで把握し、優れたブドウの育成と節水を実現。❷クラウド上でAIが多用なデータを分析:
人工衛星から送られるブドウ畑の赤外線画像、畑に設置されたIoTセンサーのデータ、ワイナリ
ーが経験で培った各種情報、The Weather Companyの気象データなど。この多種多様で、膨大な
データを、AIに必要なワークロードに最適なIBM Cloud上で活用し、最適な注水管理を実施。注
水効率の最適化で、E.&j.Galloワイナリーは、水の使用量の25%削減とブドウの品質の向上を実
現している。

以上は、第1次産業の第6次産業化といて『デジタル革命渦論』の1つの産業ギャラクシーで
の変貌事例である。


【マイクログリッド事業篇:記録的な大成長、革新的ビジネスモデル誕生ラッシュ】

送電網関連の公的補助金がマイクログリッド市場の成長に寄与している。マイクログリッド市
場の世界売上高は2015年から2016年に29%増という大きな成長を記録。調査会社ナヴィガント・
リサーチは、世界のマイクログリッド研究&開発市場が220年までに200億ドル規模に達す
ると予想。米国の連邦政府や各州の自治体は、分散型の電力系統を実現に各種の補助金を提供
する。サウス・カロライナ州のデューク・エネルギーは、マイクログリッドに関する3年計画の
事業で連邦政府から720万ドルの補助金の一部を獲得。マイクログリッドで設置件数のもっ
とも多い種類としては、1)商工業用途のマイクログリッド、2)研究機関や大学キャンパス
に設置されるマイクログリッド、3)地域社会および公益会社向けのマイクログリッド、4)
送電網に接続されない遠隔地用マイクログリッド、5)軍事基地向けマイクログリッド、の5
種類がある。このように、世界は「1キロワットアワー1円時代」に突入するかのようである。

※マイクログリッドの定義はないが、一般的なイメージとして、独立した小規模系統てのPVや
蓄電池、発電機などの分散電源を制御することで、電源の品質を維持し安定して供給するもの
とされているが、国や地域によって異なるのが現状。一つの定義として、米エネルギー省(DOE)
が発表している、マイクログリッドの類型がある(上図参照)。 

 ● 今夜の一曲

 『ブルーハワイ(Blue Hawaii)』は、1937年のアメリカ映画「ワイキキの結婚(Waikiki Wed-
ding)」の挿入歌主演のビング・クロスビー(Bing Crosby/1903-1977)が歌っているが、後に
エルヴィス・プレスリー主演の映画「ブルーハワイ」(1961年アメリカ)の主題歌としてリバ
イバルヒット。映画「ブルーハワイ」では、タイトルの『ブルーハワイ(Blue Hawaii)』の他、
『アロハオエ(Aloha Oe)』、『ハワイアン・ウェディングソング(Hawaiian Wedding Song)
』などの南国ムード漂うハワイアンが用いられている。

“Hawaiian Wedding Song”Songwriters:Al Hoffman, Charles E. King, Dick Manning

This is the moment
I've waited for
I can hear my heart singing
Soon bells will be ringing

This is the moment
Of sweet Aloha
I will love you longer than forever
Promise me that you will leave me never Here and now dear
All my love
I vow dear
Promise me that you will leave me never
I will love you longer than forever you-a, si-la
Pa-a ia me o-e
Ko a-lo-ha ma-ka-mea e i-po
Ka-'you ia e le-i a-e ne-i la Now that we are one
Clouds won't hide the sun
Blue skies of Hawaii smile
On this, our wedding day
I do love you with all my heart



【今夜の怖い話:スマートフォンの青い光で失明を早める?!】

8月5日、トレド大学の研究グループは、青い光、いわゆる液晶のバックライトのブルーライ
トだが、この曝露が増加すると失明が加速する可能性があることを公表。スマートフォン、ラ
ップトップ、タブレットを長時間使用していると、目の光感受性細胞に有毒な分子を発生させ
る。青色光に連続的に暴露することで眼の角膜および水晶体を透過する。代わりに、屋外で紫
外光と青色光をフィルタリングできるサングラスの着用を提案している。レチナール(ビタミ
ンA)に青色光を照射すると、膜上のシグナル伝達分子が溶解するにつれて、網膜は光受容体
細胞を破壊されるが、光受容細胞は自己再生できないとのこと(下図参照)。一刻も早い対策
が必要であろう。細心要注意。


doi.org/10.1038/s41598-018-28254-8

 

 

【世界の異常高温 2022年まで続く】

8月14日、、仏ブレスト大学らの研究グループ(英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Com-
munications)の論文によると、気候変動といわゆる自然変動のダブルパンチは、海洋表層水での「異常
な温暖化現象」の発生確率を2倍以上に高め、ハリケーンや台風の危険な温床を形成――この温暖期
は、長期にわたる気候変動を助長し少なくとも5年間は続くと予想さ――すると公表している。
この研究の要件は、❶第1に、大半の気象学者にとっては気候変動の特徴的パターンを見えにく
くする「ノイズ」のある自然変動に着目したこと。❷第2に、最も長期的な予測をもたらす包
括的な気候モデルではなく簡素化した統計的手法を用いた。気候における経年の(短期的な)
自然変動を予測するためのシステムを開発している。2018~2022年の期間は、平年値からの差
(偏差)が人為的温暖化の影響と同等であることを発見。すなわち、自然温暖化は今後5年間
で人為的気候変動とほぼ同程度の影響を及ぼすという(下図参照)。

  Aug. 14, 2018

これにより、海の熱波など、海の「温暖化現象」の発生確率は150%増加すると予測されている
が、確率予報(PRObabilistic foreCAST)を略して「PROCAST」と命名されたこの最新手法は、
過去の気温記録と比較して検証した結果、少なくとも標準的なモデルと同程度の予測精度を持つ
ことが判明。この最新手法は、過去の気温記録と比較して検証した結果、少なくとも標準的なモ
デルと同程度の予測精度を持つことが判明した。PROCASTはノートパソコン上で数秒間で実行可
能で、スーパーコンピューターでの数週間に及ぶ計算時間を必要としないという。 

● 今夜のベストミックス

この夏は、暑さが応えたのかビールの飲む量が減っている(加齢もあるが、先日の暑気払いで
は沢山飲んでいるし外で気のおけない仲間だと飲んでいるが)。その代わり、ウイスキーハイ
ボールが欠かせない。そういえば炭酸ソーダが手頃に帰るようになっている。そのつまみにも
変化。枝豆にかわり、ヘルシーなミックスナッツ、酢納豆、茹で落花生。そして、今夜は鮭と
ば。

   

老子に道を訪ねる

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真理は固定したものではない
これこそ真の道(原理)であるといえる「道」は、絶対不変の固定した道ではない。これこそ
真の名(ことば)であるといえる「名」は、絶対不変の固定した名ではない。
「無」とは天地の始め、つまり物が現象する以前の状態を指すことばであり、「有」とは万物
の母、つまり万物が万物として現象する状態を指すことばである。
「無」はつねに現象(有)として現われようとし、「有」はつねに現象以前の状態(無)に返
ろうとする。
「無」と「有」とは、つまり同じものだが、われわれの知覚に上る場合を異にすることによっ
て、違った名が与えられているのである。
「無」と「有」、この両者の対立と転化の動きを合んで、止むことなく運行する根元的なもの
そのもの自体は奥深くて副り知れないから、「玄」としか形容することができない。その根元
的な玄なるものから、森羅万象が現われるのである。

〈これこそ真の通……〉 冒頭の一句。原文は「道の通とすべきは常の道にあらず」。「常」
の古義は永久不変の意、つまり恒常というときの「常」であって、「常の道」は「永久不変の
道」のことである。この「永久不変の道」を肯定的に考えるか、否定的に考えるかによって、
冒頭の一句は意味が全く反対となる。古来、これを肯定的、つまり「永久不変の道上兵の道」
と取り、「世間で通と称しているのは真の道ではない」と解釈するのが通例となっている。が、
老子本来の思想からいえば、「永久不変の固定した道」は、誤ったものとして、否定されなけ
ればならないはずである。

〈玄〉 黒い色のことだが、純粋の黒ではなく、赤みを帯びた黒である。「天は玄にして地は
黄なり」(易経文言伝)などといわれているところから見ると、暗く定かならぬ天空の色と考
えられる。老子は、「道」の無限定な把捉しがたい一面を「玄」ということばによって形容し
た。「玄徳」「玄通」「玄同」など、すべて同様の表現である。ついでだが、後世の道家の徒
は、その学を「玄学」と称し、唐朝においては、老子を尊んで「玄玄皇帝」の称号を贈ったと
いう。

道の遂とすべきは常の遂にあらず 万物は流転する。それが宇宙の根本法則であり、普遍存在
としての「道」の運動形式である。この転変する巨大な動きのなかにあって、砂たる人間の私
意がなにほどの力を持つだろうか。むしろ進んで変化のなかに身を投じ、必然の動きに順応し
一休化せよ。そこに限りない自由の境地がひらけるであろう。
物事をすべて変化においてとらえる。これが老子の世界観の出発点であった。

美は同時に醜、善は同時に悪
人はだれしも、「美」はつねに美であると考える。美は同時に「削」でもあることを知らない。
だれしも、「善」はつねに善であると考える。善は同時に「悪」でもあることを知らない。
「有」と「無」、「難」と「易」、「長」と「短」、「高」と「低」、「音」と「声」、「前」
と「後」、これらの対立する概念は、あくまで相対的な区別にすぎない゜相互に連関し合い、
限定し合い、転化し合って、ひとつの統一をなしている。「道」を体得した聖人は、相対的な
物事のI面にとらわれず、「無為」を行為の規準とし、「不言」を教化の基準とする。「道」
は万物を生みだしながら、万物を支配することなく、その自律にまかせる。万物を、けっして
ある現象に固定化しない。万物を生みだしながら、生みだした功を誇らない。万物を絶え間な
く生々発展させながら、その発展に執着しない。執着しないからこそ、「道」のはたらきは自
在である。

〈音と声〉 「音」は楽音、「声」ぱたんなる物音。
〈聖人〉「道」を体得し、「道」を人間社会に体現して世を統(す)ベる、理想的な治者たる
べき人格。
〈無為〉 「無」のはたらき。人間が「無為」を実践するとは、事をなさんとする私意を捨て
て、自然必然の動きにまかせることである。これが「無為にしてなさざるなし」(四十八章)
という、能力の窮極を示すありかたである。
〈不可〉 一章の「ことばもまた流動する」という認識に基づく発想であろう。ことぼとぼ、
生々変化をそのまま映すものでなければならないから、生々変化する自然それ自体に語らせる
にしくはない。これが「不言の教え」である。

有無相生ず 前章において店子は、「無」とは物を生み出そうとするものであり、「有」とは
物を滅亡へ向かわせようとするものであることを示し、さらに両者が実は同一のものであるこ
とを明らかにして、世人の常識を拉した。本章では、さらにこれを敷折して、有無のみならず
すべての対立は相対的なもので、相互に転化し合うものであることを明らかにする。今日のこ
とばでいえば「弁証法」と呼ばれるのがそれである。こうして、物事の一面に執着する絶対的
価値観を否定し去った役、老子は、「無為」の行為、「不言」の教化が、「道」のはたらきに
一致することを説くのである。

 ● 今夜の一品

『サバイバルヘアーピン』

ヘアクリップ、ギザ刃定規(インチ&センチ対応)、ドライバー、ウィックホルダー(アルコ
ールランプ/ロウソクの芯を支える道具)、ワイヤストリッパー(被覆電線の覆を剥がす道具)、
ラプタークロー(さまざまな用途に使える鋭い爪状ツール、火打金やマネークリップ、フィジ
ェット・トイなどとして使える、ギザ刃はカミソリほど鋭利ではなく髪は切れないらしいので
安心。ヘアクリップとしてはかなり無骨なデザインで、サイズが小さくカバンなんかに挟んでも邪
魔にならない。例の尾畠春夫さんも邪魔にならないかも。わたし?!デスワークがボランティアだから
あっても困らない(登山用具のサバイバルナイフをもっているので)。

  Aug. 9, 2018

【エアバス 社の巨大なソーラードローン 最長連続飛行記録】
8月日15日、エアバス社は、ソーラー駆動無人機で26日間長時間連続飛行を達成。エアバ
スは、ソーラードローンが最終的に衛星の安価な代替品として使用されることを目指す(軍事
偵察機)。15年から デルファ(Zephyr S)機を開発、より手頃で多用途な衛星の代替品とな
る。無人機の重量は約75キロ、ソーラーパネルで覆われた約24メートルの翼幅で駆動。高
高度で飛行時、雲量やその他の航空交通に干渉されず、一度に何ヵ月も飛行できる。7月11
日に処女航海を開始。同社は、この飛行はほんの始まりに過ぎず、今年後半にはもっと長い任
務を遂行させたい考え。この技術で様々な政府基幹や企業は、より安価な衛星代替品となると
し、また、この無人機を、災害地域の空中監視、長期的な環境調査、未開発地域への無線シス
テムなどに活用する。さらに、2倍大きいペイロード(航空宇宙)できる高度なビジョンも目
指しているというが、ホンダや三菱重工なども簡単につくれちゃう優先順位の郎域だ。

  Jun. 1, 2016

 Aug. 10, 2018

【宇宙エレベーター実現へロボット着陸実験】

  Nov. 24, 2017
 
8月14日、日本の宇宙エレベーター協会は、地上と宇宙ステーションをケーブルで結び、人
や物を運ぶ「宇宙エレベーター」の実現に向けた実験が福島県南相馬市の大規模試験場「ロボ
ットテストフィールド」で行われた。上空の気球からつり下げたケーブルを伝って、四つ足ロ
ボットを載せたクライマーと呼ばれる昇降機が上昇。火星などに着陸することを想定し、上空
約40メートルからロボットが飛び降り、パラシュートを開いて着地。宇宙エレベーターは、ロ
ケットに代わる大量輸送手段として期待されるが、協会によると、実際に宇宙まで行けたとし
ても、月や惑星に着陸するには技術的な課題が多いという。実験を通して、パラシュートや逆
噴射などを使った安全な着陸方法を模索する。この日の実験を終え、担当責任者「技術的な開
発が追いついていないが、理論的には実現可能だ。50年までに実現したいとのこと。

 Aug. 10, 2018

【従来比3倍の高出力窒化ガリウムトランジスタを開発】

8月10日、富士通株式会社は、気象レーダーなどのパワーアンプ(増幅器)に適用可能な窒
化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)の、大電流化と高電圧化を同時に達
成する結晶構造を開発し、マイクロ波帯の送信用トランジスタとしては従来比3倍の高出力化
に成功したことを公表。本技術を気象レーダーなどに適用することで、レーダーの観測範囲を
約2.3倍に拡大することができ、ゲリラ豪雨に発展する積乱雲を早期に発見することなどが可能
になる。 これまですべての電圧が電子供給層に集中していたが、今回開発した高抵抗のAlGaN
スペーサ層を挿入することで、トランジスタ内部の電圧を電子供給層とAlGaNスペーサ層に分
散することができる。電圧集中が緩和した結果、結晶内部の電子の運動エネルギー上昇が抑制
され、電子供給層における結晶破壊が避けられることで、100ボルトまでの動作電圧向上を実
現。これは、本トランジスタの電極距離(ゲート電極とドレイン電極の距離)を1センチメー
トルにした場合、30万ボルト以上の動作電圧になることを意味する。

 Aug. 14, 2018
 

【いつでもどこでも1キロワットアワー1円時代 】

● 認定!東芝のペロブスカイト太陽電池 世界一のエネルギー変換効率

8月9日、東芝のペロブスカイト太陽電池が、学術論文誌「Progress in Photovoltaic」に掲載さ
れる世界の太陽電池トップデータ集である「Solar cell efficiency tables ver.52」に、モジュール
で世界一のエネルギー変換効率として認定た掲載された事を公表。世界一のエネルギー変換効
率と認定されたのは、ガラス基板とフィルム基板の2種のペロブスカイト太陽電池モジュール。

 Aug. 9, 2018

ガラス基板上に作製した面積802平方センチメートル(開口部サイズ 27.20×29.50センチメー
トル)のモジュールのエネルギー変換効率は11.6%と認定。サイズが800平方センチメートル以
上のモジュールのカテゴリーで世界最大の変換効率を誇る。フィルム基板上に作製した面積70
3平方センチメートル(開口部サイズ 24.15×29.10センチメートル)のモジュールのエネルギー
変換効率は11.7%と認定。サイズが200平方センチメートル以上のサブモジュールのカテゴ
リーの変換効率で世界一。ペロブスカイト層の材料改良等で結晶シリコン太陽電池並みの高効
率実現を実現できれば、基幹電源並みの発電コスト毎時7円/キロワットの実現も夢ではない
と言う。さて、次はタンデム型に挑戦だ。、、

● シャープの色素増感太陽電池が離陸間近、屋内で高効率

8月16日、シャープは色素増感太陽電池(DSSC)の市場投入に踏み切る。18年度中の量産
開始を見込んでおり、同社はDSSCの特長を生かした複数のアプリケーションの提案中にある。
DSSCは、屋内環境下のIoT(モノのインターネット)デバイス用電源やエナジーハーベスティ
ング素子としての活用に期待が集まっている。太陽光発電で一般的に用いられる結晶シリコン
型は、太陽光環境下では変換効率が約25%に達するが、屋内における変換効率は数パーセント
程度まで低下する。これに対し、DSSCは感度特性が屋内光のスペクトル分布にマッチしており
、屋内における変換効率が約20%と高い数値を誇る。また、アモルファスシリコンに対しても、
変換効率における照度依存性の面で優れている。また、電極内で光を閉じ込める「光閉じ込め
電極」を開発し、光が色素に吸収される確率を高めたことや、同社と富士フイルムが共同開発
した新規色素を採用したことで高効率化を果たす。

 Aug. 16, 2018

DSSCの小型化では、液晶パネルで培ったプロセス技術が活用された。従来のDSSCでは信頼性確
保のため額縁が5mm程度必要となり、小型化と受光面積の両立が困難だった。同社製DSSCは、独
自の封止技術を採用したことにより額縁を約1mmまで削減し、「2mm角の電池モジュールを開発し
ており、小型IoTデバイスの電源にも対応できるいう。。

 Aug. 10, 2018

● 日本初のバージ型浮体式洋上風力発電システム実証機 完成!

8月10日、NEDOと丸紅(株)などのコンソーシアムは、日本初のバージ型浮体に風車を搭載し
た次世代浮体式洋上風力発電システム実証機の完成を公表。本システム実証機は水深50メート
ル程度の浅い海域でも設置が可能なバージ型と呼ばれる小型浮体を採用し、コンパクトな2枚
羽風車を搭載。今後、北九州市沖設置海域に向けて曳航し、係留、電力ケーブルの接続を行い
試験運転を行った後、今秋から実証運転を開始する予定。

鋼製のバージ型浮体構造物にコンパクトな2枚翼アップウィンド型3メガワット風車を搭載して
おり、スタッドレスチェーンと超高把駐力アンカー※5の組み合わせによる計9本の係留システ
ムで係留し、厳しい気象・海象条件においてもシステムの安全性が確保されるよう設計。本実
証機の開発で、丸紅(株)がコスト分析、関係機関との調整、日立造船(株)が浮体設計、製
作、設置工事、(株)グローカルが風車選定および係留システムの開発、エコ・パワー(株)
が環境影響評価、東京大学が本システムの性能評価およびコミュニケーション活動※6、九電
みらいエナジー(株)が 系統連系協議および電力品質評価についてそれぞれ担当している。

 Aug. 16, 2018

● 「太陽光+P2G」実証実県の成果報告と拡大実験準備 山梨県

7月30日、山梨県は「P2G(Power to Gas)システム」の技術実証成果を報告し、実証施設を
公開。 「P2Gシステム」は、再生可能エネルギーの電力から水素を製造し、貯蔵・利用する。
東レ、東京電力ホールディングス、東光高岳は16年11月、同システムを甲府市の米倉山エ
リアで実施。施設は、パナソニック製の出力35kWの太陽光パネル、日立造船製の固体高分子型
水素発生装置(定格25kW)、日本製鋼所製のMH(水素吸蔵合金)タイプの水素タンク(最大
52Nm3、定格40Nm3)、パナソニック製の純水素型燃料電池システム(定格5kW・3台)、ニ
チコン製の水電解装置用電源(定格25kW)などから抗生。

太陽光パネルを電源に使ったP2Gシステムでは、天気によって変動する電気から いかに安定
的に水素を製造し、貯められるかが課題になる。今回の報告会では、これまでの実証で 水電
解装置用電源の制御によって太陽光パネルの変動電源から2300A程度の電流で25kW級の出力を
確認した(18年7月20日実績)ことや、MHタンクの運用に関し、6  Nm3/h の水素流量7
時間で41.3Nm3に到達。同県は、P2Gシステムを太陽光出力などの時間単位の長周期変動を平
準化する蓄電技術と位置付け、燃料電池の排熱利用や燃料電池自動車などでの水素利用を考
慮すると、蓄電池システムよりもトータルでのシステム効率が高くコストも安くなると試算。

 Nov. 8, 2018

同県では、国の掲げるエネルギーミックス(2030年のあるべき電源構成)の水準は、住宅太
陽光のほかに188MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)導入に相当するとしており、それ
による長周期変動を緩和し、太陽光への出力抑制を回避するには、1.5MWの水電解装置42
台が必要になる。そこで、甲府市の米倉山エリアで、次の実証ステージとして、隣接する東
京電力のメガソーラー(5MW)と連携し、1.5MW級の水電解装置によるシステムの実証に取り
組み準備を進める。


【読書日誌:習近平の中国―百年の夢と現実】

目次
序 章 習近平の描く夢
第1章 勃興する大国、波立つ世界(米中の攻防;海への野心;日中の地殻変動)
第2章 中国式発展モデルの光と影(改革開放のひずみ;農民を食べさせる;国家の繁栄
   、市民の憂鬱)
第3章 十三億人を率いる党(強まる自負と深まる危惧;「核心」時代の党大会)
終 章 形さだまらぬ夢

五年に一度の党大会を前に、その一強体制を盤石にしたように見える習近平指導部。だが、
経済成長が鈍化し、価値観が多様化するなか、十三億人を率いていくのは容易ではない。結
党、建国百年へ向け、習の目指す先はどこか。政権発足時から現地で取材してきた著者が、
外交・内政・党内政治から、その行方を分析する。

早くから買っておいたが、やはり忙しいのだろう今日まで読まずにきたのであわてて目を通
すことに(先延ばしできない事情――至急考察する政策論をまとめるために)。終章の「形
さだまらぬ夢」の次の箇所が印象に残ったので備忘録代わりに掲載しておく。

 習はしばしば「我々は川底の石を探りながら、慎重に川を渡らなければならない」とい
 う言葉を口にする。2014年2月のロシア訪問を前にしたロシアメディアとのインタ
 ビューでは、「中国の改革は、始まって三十年が過ぎ、深くて危険な水域に入っている。
 皆に喜ばれる改革はほとんどやり、軟らかい肉はもう全部食べつくしてしまっている。
 残ったのはかみ砕くのに苦労する硬い骨ばかりだ」と述べ、「たとえそうであっても我
 々は気持ちを強く持って前に進まねばならないが、一歩一歩、危なげなく正しい方向に
 進み続けなければならない。取り返しのつかない間違いを犯すわけにはいかないのだ」
 と語った,彼らにとっても国家のかじ取りが手探りであることを示す言葉であり、表向
 きの「自信」の裏側にある深い危機感の吐露でもあろう。

 習近平の手腕は中国と世界を眩目させているが、その政策の多くは、共産党政権が積み
 上げてきた大きな流れの中にある。毛沢東の時代も郎小平の時代もすべて共産党の歴史
 であるとして肯定しようとする習は、その巨大な振り子が刻む長い時間を意識し、その
 流れの中で自分の仕事が評価されることを深く自覚しているように見える。
 「中国の夢」とは、そうした習の使命感を凝縮したスローガンだが、今後、厳しく問わ
 れていかなくてはならないのは、それがいったい誰のための夢なのかということだ,十
 三億人の夢ではなく、共産党政権の、あるいは習自身の夢でしかないのであれば、これ
 ほど危うい話はない。中国の行方にいや応なく影響を受ける私たちは、彼らが目指す「
 百年の夢」がどのような像を結んでいくのかを、予断や偏見にとらわれず、曇りのない
 目で見つめていく必要かおるように思う。

と、結構無難な物言いに終着しているが、わたし(たち)にはきわめて「脆弱な夢」のよう
にしか見えない。それはこのブログで触れているので屋上屋は避けこれはこれで上がりにす
る。

 ● 今夜の一曲

Aretha Franklin was fighting all the way to the end – ex-husband

 Aretha Franklin "My Way"

「ソウルの女王」として知られた米歌手アレサ・フランクリンが14日、デトロイトの自宅で他界、
享年七十四。

                                         合掌

  

ハッシュタグという歳時記

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小賢しさと欲望は自己を見失わせる
人の賢愚は、相対的なものである。もし賢を宗祖することをやめるなら、競争はなくなる。
金銀財宝といった手に入れにくい品物の価値もヽ相対的なものであるこ金銀財宝を貴言祝する
ことをやめるなら、盗みはなくなる。欲望を起こさせなくするなら、入は自己の本性を見失う
ことがない。人民の心から欲望を取り除き、その代りに肉体の方はいたわってやる。聖人の政
治とは、こういうものだ。人民がつねに無知無欲であれば、 知者も作為を施す余地がない。
「無為」を政治の喜寿運とすれば、世の乱れることはないのである。

〈智者〉 おのれの知識をたのみ、さかしらをふるまう人間を指す。

無為をなせば治まらざるなし 相対的な価値のI方にとらわれるところから、人間は小賢しさ
に溺れ、欲望のドレイに堕し、自己を喪失するに至る。この迷妄から人間を款出し、その本性
を回復させる方策は、「無為の政治」以外にない。老子は政治を言祝する。かれを隠者と見る
ことは誤りである。その政流浪は一見「愚民政治」の形を取り、儒家皇宗の尚賢政治の主張と
際立った対照を示している。

 ● 今夜の日々新々アルバム



【いつでもどこでも1キロワットアワー1円時代 】

 May 19, 2014
太陽電池内のエネルギー損失を最小にするためには、表面を高度な不動態化が必要
である。 (画像:Meyer Burger)

● 次世代ソーラ 薄膜ヘテロ結合で高品位・格安型

太陽光発電が固定価格買取制度(feed-in tariffs)のなしで生き残るには、コスト削減に重点を
置いたさらなる革新を必要とする。スイスの機器メーカーのMeyer Burgerの社は、高効率セル
理念、特にヘテロ接合が、最善技術になると主張している。

 
ヘテロ接合(HJT)セル技術は、単結晶シリコン(c-Si)太陽電池の利点と、簡素な製造プロ
セス生産可能なa-Si薄膜技術で観察された非晶質シリコン(a-Si)材料。 HJT設計は新規な
ものでなく、サンヨー(現在のパナソニック)が、20年以上前に技術を確立し変換効率が
約20%の量産化に成功している。細心のパナソニックの試作レベルでのセル24.7%の効
率を達成している。同社(Meyer Burger)は、高性能キーテクノロジーの技術を太陽電池バリ
ューチェーン提供、変換効率23~24%を保証。この技術は、量産でHJTセルのシンプルな
構造が下図のように、c-Siウェーハとドープ層との間に堆積された薄い真性水素化アモルファ
スシリコン(a-Si:H)層は、セル構造から最大性能達成の鍵となる。表面準位密度低下、表
面再結合損失低下、およびエミッタ飽和電流低下の抑制に成功している。

HJTセルの製造は、比較的簡単なプロセスで、低温で行われPERC、(Passivated Emitter and Rear
Cell:セル裏面側にパッシベーション層(不活性化層)形成で、電子と正孔の再結合で生じる発
電ロスを抑制する技術)メタルラップスルー(MWT:表側の電極を少なくするための技術)、選
択エミッタなど、他の多くの高効率設計に比べて製造工程が少なく。HJTを経済的インセンテ
ィブを高め、エネルギーコストの大幅削減をもたらすと予測。 


HJTセルの重要な技術的利点はa-Si:Hの優れた表面パッシベーションであり、これは高い開
回放電圧と高いセル効率をもたらす。 TC = -0.25%/ Kという優れた温度係数は、モジュー
ル動作条件の高いエネルギー効率を保証。標準的なc-Si技術と比較すると、ヘテロ接合セル
は35%以上の発電量(kWh/ m2)を生成、格安の電気代(LCOE)を実現する。低温処理
(<250℃)は、製造時のエネルギーを節約し、バルク劣化を防ぎ、薄膜ウェーハ使用を可能
にする。ダイヤモンドワイヤウェーハリング、ヘテロ接合セル技術、およびSmartWire 接続技
術(SWCT)のPVバリューチェーン全体での統合開発は、HJTモジュールの最大性能を保証。

  May 1, 2017

Dec. 1, 2018



ドイツのMeyer Burger's fabでのヘテロ接合セルの製造。写真:Meyer Burger

薄いウエハー
今日では、約180マイクロメートル(μm)の厚さのウェハが、セル製造で標準使用されて
いる。より薄いウェーハの使用で、1つのシリコンからより多くのウェーハリング(切断)
でき、材料費を大幅削減できる。ウェーハの厚さ減少で、バルク材料の品質影響も減少し、
少数電荷キャリアの寿命要求が軽減されるる。ウェーハ製造におけるダイヤモンドワイヤソ
ーの使用は、より小さいマイクロクラック生起させ、マイクロクラック深さはより浅く。よ
り高い表面対バルク比は、バルク再結合損失と比較し、表面再結合損失が支配し優れた表面
パッシベーションが必須となる。同社は、薄いウェーハのセルVOCを増加させ、低光吸収に
よりISCの損失をバランスさせるHELiAPECVDシステムで優れた表面パッシベーションを実現
する。

プロセスフロー/テクスチャリング
最適なテクスチャリングや洗浄プロセスは、高効率HJTセル製造プロセスの基礎を形成する。
同社のプロセスノウハウは、最適なパッシベーションの基盤を設定。 HJTプロセスシーケン
スの最初のステップは、裁断ダメージ除去(SDR)、テクスチャリング、クリーニング、お
よび水素終結のウェットケミストリープロセス。高効率HJTセルの実現には、表面の損傷と
微小亀裂をほぼ完全に除去。表面再結合速度(SRV)を測定は、バルクの品質とは無関係に
必要な裁断ダメージ除去する。下図は、ソーダメージ除去が表面再結合速度に及ぼす影響を
図示。

切断損傷の除去は、テクスチャ加工によって最適化することができ、フッ化水素酸の最終的
な短時間浸漬は、その後のPECVDプロセスの最終パッシベーションまでシリコン表面を終端
この湿式化学処理後の表面は、c-Si / a-Si:H界面品質/表面不動態化に重要となる。

PECVD:前面と背面のa-Si:Hコーティング 
太陽電池内のエネルギー損失を最小にするには、表面を高度に不動態化させ、150~25
0℃の温度範囲で堆積されたa-Si:Hを用いた低温パッシベーションが、表面再結合速度が顕
著となる。a-Si:Hはすべてのレベルのn型やp型シリコンを不動態化できる。ドープされたa-Si
:Hは、エミッタと裏面の両方のフィールドフィールド(BSF)を形成に使用され、ドープさ
れたa-Si:Hは、その電界効果特性に起因する不動態化に寄与する。

Meyer Burger社は、ウェーハベースのシリコンHJTセルのコンセプトに特化したモジュラーハ
イスループットHELiAPECVDシステムを開発。 HELiAPECVDシステムの中心は、超純粋で均
一なアモルファスシリコン層を提供するボックスインボックス方式で洗練された特許取得済
み平行平板プラズマリアクタのS-Cubeです。 13.56MHzのRF源を用い、層の堆積中のプラズ
マ損傷を最小にする。少数電荷キャリア寿命およびバンドギャップ点でアモルファスシリコ
ン層の要求品質を保証。 a-Si:H層による不動態化の品質を決定するための重要なパラメー
タは、少数電荷キャリア寿命である。


 PVD:TCO
モジュラーHELiAPVDシステムでは、ウエハの前面および後面に透明導電性酸化物(TCO)
層を塗布に、チャンバの1つでスパッタプロセスが使用。光発生電流を収集し、セル上にオ
ーム接触を形成することに加えて、前面側のTCO層は、反射防止層として働く。特に、HJTセ
ルの前面側では、a-Si:HおよびTCO層の光学的/電子的特性を互いに調整する必要がある。
インジウムスズ酸化物(ITO)は、ドーピングされたa-Si:H層との良好な電気的接触を提供
し、透明導電性のHJTセルに好ましいTCO材料である。同じHELiAPVDシステムの第2のチャ
ンバでは、もう1つのTCO層が95%の二重性でセルの裏側に塗布される。二面セルは、白い裏
面シートが光をセルに反射して全体的なモジュールの電力を増加させる単面体ソーラーモジ
ュールにも使用することができる。これは、真空を破ることなく、またはこれらのコーティ
ングプロセス間でウェハを回転させる必要なく達成される。 HJTセル処理用に構成されたH
ELiAPVDシステムは、余分なレーザーまたは化学ステップを回避しながらエッジ分離を実現
する。マグネトロン上のTCOおよび金属用の回転円筒形スパッターターゲットは、85%を超
える高い目標利用率を実現し、コスト効率のよいコーティングプロセスを保証。 HELiAPVD
とHELiAPECVDシステムは、容量および層特性に関し完全に適合する。


前面を印刷する
従来の結晶シリコン太陽電池技術では、前面側のコレクライン(「フィンガ」)とブスバー
が使用。フィンガーおよびブスバーに使用される銀ペーストの消費量を削減することは、コス
ト削減のもう一つの重要なステップである。同社rは、セル・ツー・モジュール(CTM)損失を
最小限に抑え、モジュールの効率を最適化ために、バスバーレスのSmartWire 続テクノロジー
(SWCT)を提供しています。従来のスクリーンプリンターとエポキシベースの低温ペーストの
使用により、HJTセルの前面のフィンガーグリッドパターンのみが形成。バスバーレス設計で、
細かいラインのスクリーン印刷グリッドパターンが容易となる。バスバーをより細く細い指で
整列したグリッドパターンに置き換えにより、銀の消費量が大幅に削減され、細胞のシャドー
ロスを減少させることでセル変換効率を高める。

SWCTを適用により、フィンガ導電率の要件は従来のバスバー設計の要件に比べて厳しくない。
100Ω/ cmまでの指抵抗はSWCTと組み合わせることができ、大きな電力損失は生じない。2つの
指の接点間の距離が短いほど、指の電力損失の影響が小さくなり、銀の消費量を1セルあたり
60mgに減らせる。同社は、東南アジアのモジュールメーカーから200 MW SWCT生産ラインを
受注したと公表している。パナソニックは、SmartWire接続技術の評価プロセスも行っている。

硬化
フロント側を印刷した後は、このHJTセルのコンセプトでは接触焼成は不要。印刷されたHJT
セル硬化は、低温ペースト溶剤の排出に、250℃未満の温度の単純な熱プロセスとなる。
温度プロファイルは、スクリーン印刷された線およびセル上のTCO層の導電性ならびにセルの
はんだ付け性に影響を及ぼす。 硬化システムは、プロセスおよび生産性の要件に関してHJTプ
ロセスに合わせて調整される。

テスト
HJTセルは、400~600ミリ秒(ms)の測定時間を必要とする高容量セル。これは、標準の低容
量セルと比較して大幅に長い。スイスのヌーシャテル大学のマイクロテクノロジー研究所(IM
T)と協力して、SpotLIGHTとして知られている新しいIV曲線セルテスターシリーズを開発。
スポットライト1秒とスポットライトハイキャップ。高品質のA + A + A + 5msパルス長キセノ
ン光源を使用して、スポットライト1秒は、太陽電池製造におけるエンドオブライン品質管理
などのインラインアプリケーションに必要な高速測定専用です太陽電池モジュールの生産ライ
のラインまたはライン初の品質管理を実現している。SpotLight HighCapは、ヘテロ接合セルな
どの高容量の太陽電池のテスト専用。 SpotLight HighCapは、発光ダイオード(LED)を組み合
わせ、パルス長を5msから6000msまで増加させる。ハイブリッド光源測定プロセスは、
Fraunhofer ISEにより検証。その結果、信頼できる太陽電池測定を実現、同時にシステムの所
有コストの総額をスポットライト1秒で達成できるが、長いパルスソーラーシミュレーターの
中でも独特な特性である。

高効率モジュールの測定には、異なる制約があり、数百ミリ秒間に大きな領域を照らすことは、
費用対効果がなく正確でもない。一方、モジュールの容量はセルの容量よりもはるかに小さく
PasanはA + A + A +の10msパルス長の標準HighLightモジュールテスタ使用できる動的掃引方法
であるDragonBackソリューションを開発。このような業界指向で費用対効果の高いソリューシ
ョンは、生産タクトタイム、低TCO、および高い測定精度を考慮し、大容量モジュールの電力
が測定できる。この革新的なソリューションは、PI Berlinで検証されている。

マイルストーン:335 Wモジュール
335ワットで、Meyer Burger 社は、量産条件下で生産される標準的な60セル(M2フォーマット)
ソーラーモジュールを使用して新しい記録を設定。ウェハ、セル、モジュール技術の高度なプ
ロセス統合により、この発展的な飛躍が可能となる。このモジュールは、TUVRheinland / Solar
Energy Assessment Centre Cologne(SEACC)によって測定され、確認された。
同社のHJTモジュールは、23.5%の平均変換効率(モジュール上で最高のセル:24.0%
)とちょうどTC=--0.25%/ Kの非常に低い温度係数を持つHJTセルの組み合わせでSmartWire
接続テクノロジ TC = -0.43%/ Kの標準セルと比較して、HJTセルを使用するソーラーモジュー
ルは、平均して> 10%大きいエネルギー収率を実現。これにより、セルおよびモジュール製
造メーカならびに最終顧客めの重要な競争上の利点が得られ、SGSフレゼニウス・インスティ
テュートはすでにSmartWire Connection Technologyを備えたIEC認定のHJTモジュールを備える。

HJT:LCOEのブレークスルー
LCOEは、実用規模の電力システムと分散型電力システムの両方で生産される電力コストを測定
に使用される主要なメトリックの1つ。他の技術と比較してHJTモジュールをテストするために
異なるフィールドインストールを実行。 例えば、アブダビの試験施設の二面体ヘテロ接合ソー
ラーモジュールは、標準モノフェイシャルモジュールと比較して1年間で25%のエネルギー
収率を達成し、バイフェーシャルPERxモジュールと比較して11%大きい。さらにHJT / SWCT
モジュールは、細胞が潜在的に誘発される分解(PID)および光誘起劣化(LID)の影響を受け
ないので、最も高い寿命期待値を実現。以上のように、これらの特徴は、技術の電気のコストを
格安に抑えるを実現する。 


以上の成果にこれから薄膜タンデム型、マルチレイヤー型、宇宙ソーラ型の開発進むことで
「いつでもどこでも1キロワットアワー1円時代」に突入するというわけで、いよいよミッシ
ョンは最終章。
                                      

 ● 今夜の一曲

 Eric Burdon and The Animals ”Sky Pilot” 

「Sky Pilot」は、アルバム「The Twain Shall Meet」でリリースされた1968年の曲。シングルと
してリリースされたとき、曲はその長さ(7:27) のために両側に分けられた。 「スカイパイ
ロット(パーツ1と2)」として、それは米国のポップチャートでは14位、カナダの RPM
チャートで15位。この歌は、出動前の軍隊を祝福し帰還を待つ牧師の生涯の物語をテーマと
した三部からなる楽曲で「スカイパイロット」とは、冒頭の歌詞で明らかなように軍の牧師を
指す(Wikipedia)。 

出エジプト記/Exodus 20:13

 


【下の句トレッキング:ひを問はるるしずかに深く】


何を願ふか胸に木霊(こだま)する問ひを問はるるしずかに深く  牛山ゆう子『木の曽ドアを押す』


過日の大雨で元上司の今井博さん宅に心配して電話したが、気がかりがその後ものうりに木霊
するので、盆前に車を走らせ立ち寄る。玄関先近況を訊ねるもそれなりに元気だとの返辞で、

今年の12月に喜寿を迎えられるとのこと。握手を求められ握り返しお宅を後にした。



いまテレビで「世界へ発信!英語術」を録画チェックしているが、「ハッシュタグ」の原泉は、
昔から俳句や短歌の日本文化の歳時記であることに思い当たる。


穏やかにとはに戦後は戦後なれ 散りつつ白くやまぼうふし咲く  同上(歌壇、8月号より)

  

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