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雲の上がきかき絶えずして

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第64章 「千思の行は足下より始まる」
安定したものは、保存しやすく、形勢が固定する以前の問題は、処理しやすい。脆弱なものはたやすく
溶けるし、微細なものはたやすく散る。
事件は起こらぬ先に処理し、秩序は乱れぬ先に収拾することがかんじんだ。
ひと抱えある大木も、針先ほどの芽から生え、九階建ての高殿も、基礎がためから着工し、千里の長旅
も、踏み出しは一歩である。
この自然の道理に逆らい、作為と我執にとらわれる者は、かならず失敗する。
聖人は、作為もしなければ、我執も持だない。だから、失敗することがない。だが凡人は、完成まじか
にこぎつけながら、いつもそこで失敗する。最初のうちの慎重さを忘れてしまうのが、その原因である。
聖人は、欲望を捨て去っているから、目先の価値に誘惑されない。知の限界を心得ているから、忘れら
れがちな「道」に順応する。かくて
ある。

第65章 小知に頼れば国政は乱れる
人民を賢くさせず、愚かのままにする。これが昔の聖人のやり方だ。
人民のさかしらが過ぎるから、政治がやりにくくなる。したがって、さかしらに頼って政治をとれば、
国は乱れる。さかしらを捨て無為の政治を行なえば、国は栄える。これが政治の法則である。
この法則をわきまえること、それが底知れぬ徳である。この徳はいかにも深遠で、あたかも背理のごと
く見えるが、それでこそ、自然の大道に合致するのだ。

民の治め難きは、智多きをもってなり 知は両刃の剣である。それは人を生かしもすれば殺しもする。
そして、その知に正しく処することのできるのは、聖人のみであった。したがって、老子の政治学説は、
必然的に愚民政治の形をとるに至る。ただこの場合、愚民政治とはいっても、為政者のほしいままなふ
るまいを可能にするための愚民化ではないことを、承知しておく必要があるだろう。

【下の句トレッキング:雲の上がきかき絶えずして】 

  
北へゆく雁のつばさにことづてよ雲の上がきかき絶えずして  紫式部


11月3日、福井県越前市の第37回菊花マラソンが開催。満開を迎えている「たけふ菊人形」会場近
くの武生西小をスタート、武生三中をゴールとするコースで開かれた。抜けるような秋晴れの下、昨年
よりも244人多い県内外の3756人が歴史豊かな「式部のまち」を駆け抜けたというのだが、「式
部のまち」とあるのでどこのことなのかと調べると武生市のことで、『源氏物語』の作者の紫式部が、
都を離れて越前の国に向かったのが、長徳2年(996年)の夏。父の藤原為時が、春の除目で帝に文
を奉り、大国である越前の国守に任じられ、式部はその父ととも に国府があった現在の福井県武生市に
やってくる。式部が生まれたのは、天延元年(973年)とする説では23歳のころだとかす。 

上の一首は、『紫式部集』に収められ、当時たった一人の姉を失い、同様に妹を亡くした友人と「姉妹」
の約束をしてお互いを慰め合っていたところ、式部が越前へ向かうのと同じ時にその友も筑紫へ向かう
こととなり、近況を歌に託したという。情報量の少ない平安時代だからこそ、通う情感の質量の深さを
偲びながら立冬の夜をしばし物思いに耽り、こんな思いも自分にもあっただと遠くなった昭和を重ねる。 
”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
【エネルギー通貨制時代 13】  

   Mar. 3, 2017

【エネルギー貯蔵技術事例研究 語Ⅴ】
✪ 蓄電池事業篇:最新全固体二次電池技術
先々回は出口戦略として「独立分散型固体蓄電池」の性能及びコストパラメター――❶エネルギー密度
:250Wkg/kg 超、❷ライフサイクル:5万回超、❸耐用年数:15年以上、❹価格:5万円/kWh
以下と目標設定とした。今回は、国内特許からハイレート特性――高電圧、高容量、高エネルギー密度、
長寿命のレベルがどこにあるを調べた。今回も、電池の種類としてはリチウムイオン、水素ニッケル、
空気-金属、リチウムハイブリッドを対象とし、製造方法から超音波溶着装置をピックアップし(いずれも11月1
日公開)し掲載する。 

 Nov. 1, 2018

● パトリック・スン・シオン、リチウムイオン蓄電池産業への参入を支援

  Patrick Soon-Shiong

亜鉛空気、フロー電池、塩水電池、小型圧縮空気電池の製造の企業技術をもつNantEnerg社を、Los Angeles
Timesを買収したPatrick Soon-Shiong氏が同社の未公開株を過半数獲得(同社は現在までに220百万ドルの
資金を調達していた)。来年度NantEnergy社は、カルフォルニアに1ギガワット時程の生産能力を持つ
製造設備建設を予定、また、海外の製造共同者を探している。また、同社の話によると、生産を百メガ
ワットに拡大すると、量産型リチウムイオン電池が現在達成している価格よりはるかに低い、1キロワ
ット時当たりの蓄電池価格を百ドルとし、安全性と耐久性(高ライフサイクル性)の企業技術をベース
に量産効果で価格逓減を実現する。問題は、リチウムイオンが既に大規模生産され、さらに拡大する傾
向にあるが、そのための資金不足がネックになる。

同社は過去6年間に、9か国に3,000の亜鉛空気電池システムを設置、累計120万サイクルの実績があり、
約56メガワット時の設備容量に相当。遠距離流通信バックアップと遠隔マイクログリッドの海外市
場でコスト競争している。インドネシア工場では国内供給し、マイクログリッドで再生可能ベースで百
%の再エネ電気を得る約110万のコミュニティは、合計20万人にのぼり、ラテンアメリカに約一千基の実
績があるがアフリカと米国市場ではまだ初期段階で、グレート・スモーキー山脈国立公園の前哨場の遠
隔マイクログリッドへの電力供給するDuke Energy社は、同社と提携し、自身もカリフォルニア州で電気
通信アプリケーションを供給。また、世界市場規模70億ドルになる遠距離通信バックアップ蓄電池用
途では、十分な成長が見込まれ、22年には110億ドルと予想されている。また、亜鉛空気電池のマ
イクログリッドは、遠隔地に電力供給用ディーゼルや通信バックアップ用鉛蓄電池に対して優れており、
これらは大規模電力系統への参入とは別問題であると話す。


出典:With 3,000 Systems and Money to Scale, Will NantEnergy Make Long-Duration Storage Profitable? |
Greentech Media/Nov.1, 2018
※ それにしても、「❹価格:5万円/kWh」の1/5の約1万円相当/kWhとは恐れいりました。

 Oct. 31, 2018

● NEDOドイツで大規模ハイブリッド蓄電池システムを完成、11月に実証運転開始

10月31日、NEDOと日立化成(株)、(株)日立パワーソリューションズ、日本ガイシ(株)は、ド
イツのニーダーザクセン州ファーレル市で大規模ハイブリッド蓄電池システムを完成させ、2018年11月1
日より実証運転を開始。特性の異なる2種類の蓄電池(リチウムイオン電池とナトリウム硫黄電池、合計
容量11.5MW/22.5MWh)から構成。高出力・大容量で充電・放電が可能なシステムとすることで、電力需
給バランスの調整をより経済的に実現し、再生可能エネルギーの大量導入が進んだ電力系統の安定化に
貢献することを目指す。

【関連特許事例:最新ハイレート特性とローコスト技術】
☑ 特開22018-133299 電極体の製造方法 トヨタ自動車株式会社
鍵語:電極体の製造方法
【概要】
二次電池その他の各種電池では一般的に,正負の電極体を積層した電極積層体を発電要素として使用す
る。電極積層体を構成する個々の電極体は,集電箔に電極合材層を積層したシート状のものである。ま
た電極積層体では,正極電極体と負極電極体との直接の接触を防ぐセパレータもともに積層される。
下図のように、集電箔上に電極合材層が形成されたものである電極板11における電極合材層上に 耐熱
層を形成する液状耐熱物を塗工する塗工工程(1)と,塗工工程(1)で塗工された液状耐熱物が乾燥
する前に,塗工された液状耐熱物上に多孔質のセパレータ層10を配置するセパレータ層配置工程(2)
とを行う。これにより,集電箔と電極合材層と耐熱層とセパレータ層とがこの順に積層されたものであ
る電極体6を製造する。耐熱層とセパレータ層とを一体的に含むとともに,これらの密着性に優れた電
極体を製造できる,電極体の製造方法を提供。 

【符号の説明】
1  塗工部 2  貼り合わせ部 3  乾燥部 5 セパレータ供給部 6  電極体 7 集電箔 8 電
極合材層 9  耐熱層 10 セパレータ層
【図1】実施の形態に係る電極体の製造方法の実施設備の概要を示す正面図
【図2】実施の形態の製造方法で製造される電極体の断面図

☑ 特開2018-107007 リチウム二次電池用正極電極
【概要】
5V級リチウムマンガン含有複合酸化物を正極活物質として使用した正極電極に関し、ガス発生を抑制
でき、且つ、サイクル特性を向上させることができ、ハイレート特性をも高めることができる、新たな
正極電極の提供。極活物質の比表面積に対する前記導電材の比表面積の比率が10以上150未満であ
り、且つ、正極電極合剤層の厚さ方向断面において、前記正極活物質の総面積に対する前記導電材の総
面積の比率が0.47以上0.66未満であることを特徴とする正極電極を提案する。


☑ 特開☑ 特開2018-167193 両面塗工装置および塗膜形成システム 
鍵語:化学電池製造/両面塗工/塗工ギャップ
【概要】
リチウムイオン電池などの化学電池の製造で、金属箔等の基材をロールトゥロール方式にて搬送し基材
表面に電極材料を塗工し、電極多層構造するための裏両面塗工装置は、片面づつ塗工/乾燥処理を行う
方法ではコストが増大する。このため、乾燥前に基材両面――基材を挟み表面側と裏面側とに相対向す
るようにダイを設け、双方のダイから均一に塗工液を同時に吐出吐出する両面塗工装置が提案されてい
るが、基材のくせ、基材搬送時の振動、搬送張力、吐出圧などの要因で塗工不良やムラが生じる。
このため、下図2のごとく、 基材の搬送方向に対して上流側に位置し、基材と対向する上流側対向面を
有する上流側リップと、基材の搬送方向に対して下流側に位置し、基材と対向する下流側対向面を有す
る下流側リップとを備える一対の塗工ノズルにおいて、それぞれの下流側リップは、下流側対向面から
塗工液流路に連通する切り欠き部を有し、切り欠き部が吐出口の一部を構成することを特徴とする基材
の両面に同時に塗工液を塗工する場合でも、塗工液を均一塗工できる両面塗工装置及び塗工成システム
の提供。

 Nov. 1, 2018
【符号の説明】
1    塗膜形成システム 5 基材 10 両面塗工装置 20 第1塗工ノズル 21、41  吐出口
22  第1上流側リップ 23  第1下流側リップ 24  第1塗工液流路 26、46    切り欠き部
30  第1送液機構 40  第2塗工ノズル 42  第2上流側リップ 43  第2下流側リップ
44  第2塗工液流路 50  第2送液機構 60  搬送機構 61  巻き出しローラ(第1ローラ)
62  巻き取りローラ(第2ローラ) 80  乾燥部

【図2】塗工ノズルの断面を示す模式図
【図6】基材の波板状変形を示す模式図
【図7】比較例に係る塗工ノズルを用いた場合の基材の波板状変形によって発生する筋状の塗工不良を
    示す模式図
【図8】比較例に係る塗工ノズルを用いた場合の筋状の塗工不良が発生するメカニズムを模式的に示す図
【図9】図2の吐出口近傍の拡大図である。
【図10】塗工ノズルを用いた場合の基材の波板状変形が押し戻されるメカニズムを模式的に示す図


鳥の目線で自然感じて 琵琶湖博物館の樹冠トレイル



 ●夜の一曲 

『若い頃の加藤和彦のように』 唄 坂崎幸之助 北山修 Music Writer:加藤和彦 北山修 


#IHearYou それはそうだけれど。

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第66章 統治者はへヽりくだらねばならぬ
百川の流れを集める大河と海洋、それは川の王者である。川より低く位置するから、川を集めて王者と
なる。
同様に、人民を統治しようとすれば、まず辞を卑くしてへりくだらねばならや。人民を指導しようとす
れば、まず退いて後に従わねばならぬ,聖人は、この道理をわきまえている。したがって、聖人の統冶
のもとでは、人民はいささかの抑圧をも感じないレ、聖人の指導のもとでは、人民はいささかの束縛を
も感じない。
その結果、万民ことごとく聖人を推戴して、だれひとり争いをしかけようとはしない。それというのも、
聖人の方で、ひとと争う心を捨てているからだ。

江海は百谷の王 韓非の同門李斯は、他国賓の故をもって追放されようとしたとき、始皇帝に上書した。
いわく、「泰山は土壌を譲らず、河海は細流を択ばず(泰山は土壌をえりごのみぜぬねために大となり、
利侮はすべての細流を合するために深くなる)」。上書の効能あらたかに、李斯は追放を免れ、後に宰
相にまで出世する。そして「利府は細流を択ばず」は、王者たる者の度量の広さを表わす名文句として、
後世に伝えられることになった。
老子も、王者の徳を河海にたとえる。だが、着眼点が李斯と異なる。どちらに軍配をあげるかは、各自
で考えていただきたい。

第67章 「われに三宝あり」 
 大きいことは大きいが、どことなくぬけているようだ」。わたしの説く「道」を、世間はこのように批評している。
「道」はたしかに大きい。大きいからこそまがぬけて見える。まがぬけて見えないくらいなら、大きいなどといえは
しない。
この「道」から、三つの宝が引き出せる。第一は、「人をいつくしひ」心である。第二は、「物事を控え目にする」態
度である。第三は、行動において「人の先に立だない」ことである。
人をいつくしむからこそ、勇気が生まれる。控え目だからこそ、窮まることがない。人の先に立たぬからこそ、人を
指導することができる。
もし、いつくしみの心も持たずに、ただ勇のみをこころがし、控え目な態度も知らずに、ただ無窮のみを願い、退く
ことも忘れて、ただ人に先立つことのみを考えるなら、結果は破滅あるのみだ。
いつくしみの心をもつ者は、戦えばかならず勝ち、守れば難攻不落である。いつくしみの心、それはまさしく、天が
万物を保護する心なのだ。
 
● 23年開園 北海道ボールパーク

 

 No.20

ヒトを含めたすべての動物の体は、無数の分化した細胞で構成されている。分化した細胞は通常、分化
前の未分化な状態に戻ることはないが、分化した細胞核を未受精卵子内に移植し、細胞核が初期化され、
未分化な状態に戻りる。この初期化技術を用いて、クローン動物が多くの動物種でつくられてきま。細
胞を初期化しつくる人工多能性細胞(iPS細胞)の発見により、再生医療は大幅な進展を遂げる。しかし、
卵子内で分化細胞核がどのように初期化されるかはわかっておらずその全容解明が望まれている・・・・・・



「遺伝子発現の初期化」に重要な要素を発見

7月11日、近畿大学らの研究グループは、分化※1 した細胞が卵子の中で初期化され、新たに遺伝子
の転写※2 を開始する際、遺伝子ごとに効率が大きく異なる原因を明らかにしたことを公表している。
それによると、初期化の本質解明にむけ重要な発見であり(7月11日(水)日本時間 AM1:00)に、米国
の学術雑誌「Cell Reports」オンライン版に掲載)、分化した成体の細胞を卵子の中に移植し分化前の状態
に戻せる。この現象を「初期化」といい、初期化技術を用いてクローン動物がつくられ、再生医療が大
きな進展を遂げてきまたが、分化した細胞が卵子の中でどのように初期化されるのか解明されていなか
った。初期には、分化細胞で発現する遺伝子を抑制し、未分化細胞のみ発現する遺伝子を活性化する必
要があえう。この遺伝子発現――細胞内で遺伝子のスイッチが入りRNAやタンパク質が合成される過程
――の初期化は効率が悪く、多くの遺伝子で失敗してきった。

同研究グループは、各遺伝子は場所による構造がことなり、閉じた状態と開いた状態の遺伝子があり、
その開き具合によりDNA結合因子――DNAに結合するタンパク質などの因子を示す。この研究における
DNAへのアクセスの違いの検討には、Tn5 transposomeを利用――のアクセスが変わることを発見。また、
このアクセスのしやすさの度合いが初期化に大きな影響を与え、悪いと遺伝子発現の初期化が始まらな
いことも明らかなった。



この研究成果によって、分化した細胞が未分化細胞で発現する遺伝子を活性化には、遺伝子構造が開き
アクセスしやすい状態にすることが重要であることを明らかにする。初期化しやすい状態へと遺伝子構
造を人工的に変化できれば、初期化効率をあげられ、転写初期化の解明に向けて重要な知見を示した。

このように、細胞核内には遺伝情報を有するDNAが存在し、DNAはクロマチン構造を形成する。クロマ
チン構造による、DNAへの核内タンパク質のアクセスが制限され、これにより各遺伝子からの転写は大
きな影響を受ける。遺伝子発現の初期化前後で細胞核内のクロマチン状態を、ATAC-seq(Assay for Trans-
posase-AccessibleChromatinSequencing)と呼ばれる手法で調べ、クロマチン構造を形成せず、容易にアクセ
ス可能なDNA領域を同定。遺伝子の転写状態との関係を調べると、分化細はアクセス可能なDNA領域が優
先的に遺伝子発現の初期化を受けることを明らかなる。

逆に、分化細胞ではてアクセス不可能となっている領域からも遺伝子発現の初期化は起こるが、その効
率は高くない。例えば、卵に細胞核を移植後も継続的にアクセス不可能な状態を維持している遺伝子も
多く見られ、遺伝子発現の初期化を成功させるには、アクセス不可能の状態からアクセス可能へとクロ
マチン状態を変化させる必要があります。研究グループは、転写因子※6 と呼ばれるDNAに直接結合する
タンパク質によりクロマチン状態の制御が行われることを示した。以上の研究成果は、多くが謎とされ
てきた卵子内での分化細胞核の遺伝子発現初期化機構に迫るもので、初期化の解明に向けて重要な知見
となる。

この研究により、卵内での遺伝子発現の初期化には、クロマチン構造をアクセス可能な状態へと人工的に変化さ
せることが重要であることを明らかになったことで、アクセス状態を促進する因子を用いることで初期化効率の向
上が見込まれ、初期化技術の効率化により再生医療やクローン技術の更なる発展が期待されている。

 ● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.17   

   

第4章
「あのマントはどうなったんだろう、おまえが人切にしていたマントけ」
「所詮はマントですよ、アクセル。どんなマントも、着ていれぼすり切れてきます」

うわI、と思った。こんなに遠くから、そしてこんなに高くから、自分の村を見だのは生まれて初めて
だ。小さくて、なんだかこの手でつまみ上げられそうに思える。ためしに、午後のかすみの中に浮か
ぶ村に手を重ね、ぐいと指で包み込んでみた。登るのを心配そうに見上げていた老婦人がまだ木の根元
にいて、それ以上登ってはだめよ、と呼びかけている。だが、エドウィンは無視した。だって
、ぼくほど木を知っている人はいないから………戦士から見張りを命じられたとき、エドウィンは慎重
に考えて楡の木を選んだ。外見は弱々しくても内にさりげない強さを秘めていて、ぼくを歓迎してくれ
る。それに、あの橋も、橋までつづく山道も、ここからなら一番よく見える。ほら、馬に乗った男に三
人の兵隊が話しかけている。あ、騎手がいま馬から下りた。落ち着かない様子の馬を手綱で押さえなが
ら、兵隊と激しく言い争っていエドウィンは木をよく知っている。たとえば、この楡の木はステッフア
みたいだと思う。年長の少年たちはステッフアのことを「あんなやつ、森に棄てられて腐ってしまえば
いいんだ」と言う。

「両脚ともきかなくて働けない年寄りなんて、そうなって当然だろう?」と。だが、エドウィンはステ
ッフアの何たるかを知っている。ステッフアは古強者だ。誰も知らないが強い。物事の理解では長老た
ちをも超える。村でただ一人、戦場を経験している人間でもある。
両脚の働きを失ったのは、その戦場でのことだ。そういうステッフアだからこそ、エドウィンの何たる
かを見抜くことができた。腕力が強い少年なら何人もいる。おもしろがってエドウィンを地面に転がし、
馬乗りになって殴ったりもする。だが、その連中には戦士の魂がない。あるのはエドウィンだけだ。

「君を見ていたぞ、少年」と一度老ステッフアに言われたことがある。
「降ってくる拳骨の雨のなか、君の目は冷静だった。一撃一撃を頭に刻み込んでいたのか?あれこそ最
高の戦士の目、荒れ狂う戦いの嵐の中でも沈着に動ける戦士の目だ。連からず、君は誰もが恐れる男に
なる」

そして、いま始まった。ステッフアの予言どおり、それが現実になりつつある。
強い風で木が揺れた。エドウィンは支えにしている枝を持ち替えて、今朝の出来事をもう一度思い出そ
うとした。歪んだ叔母の顔が見える。誰なのかわからないほどに歪んだ顔が金切り声で毒づいている。
だが、アイバー長老が最後まで言わせず、叔母を納屋の戸口から押しした。長老の背中にさえぎられ、
押し出される叔母の姿が見えなくなった。いつもエドウィンに親切にしてくれていた叔母が、いまはエ
ドウィンを呪う。だが、そのこと自体はたいして気にならなかった。しばらくまえ、「母さん」と呼ん
でくれないかと言われていたが、エドウィンは決してそう呼ぼうとしなかった。だって、ほんとうの母
さんは旅に出ているもの。ほんとうの母さんは、あんなふうに金切り声で怒鳴って、アイバー長老に引
きずり出されたりしないもの………それに、今朝、納屋の中で、エドウィンはほんとうの母の声を聞い
た。

アイバー長老はエドウィンを納屋の暗闇に押し戻し、叔母の醜く歪んだ顔を――その他のすべての顔と
一緒に――連れ出して、ドアを閉めた。暗い納屋の真ん中に古い荷車があった。最初はおぼろな黒い影
でしかなかったが、やがて徐々に輪郭が見えてきた。手を仲ばすと、腐った木の湿っぽい感触があった。
外ではいくつもの声がまた叫んでいる。何かがぶつかるような音も始まった。ぱらぱらと散発的に始ま
り、やがていくつかがまとまって当たる音になり、ものが裂けるような音が加わった。その音がするた
び、納屋の中がわずかずつ明るくなるような気がした。

ぼろ壁に石が投げつけられる音であるのはわかっていたが、エドウィンはそれを無視し、目の前にある
荷車をじっと見つめた。どれほど昔に使われていたものだろう。なぜこんなによじれた形になっている
のだろう。もう使えないのに、なぜ納屋にしまい込まれているのだろうか。
母の声が聞こえたのはそのときだ。外の騒ぎや石のぶつかる音で最初は聞き取りにくかったが、だんだ
んとはっきりしてきた。

「こんなことは何でもないのよ、エドウィン」と母は言った。
「全然何でもない。簡単に堪えられる」 
「でも、長老たちだって、いつまでも抑えているのは無理じやないかな」とエドウィンは暗闇に向かっ
て小声で言った。言いながら、手で荷車の側面をなでた。
「何でもないのよ、エドウィン。何でもない」
「壁は薄いから、石を投げつづけたら壊れるよ」
「心配ないのよ、エドウィン。知らなかった?石はおまえの力でどうにでもなる。ご覧、目の前にある
のは何」
「壊れた古い荷車」
「そう。その荷車の周りを回りなさい、エドウィン。ぐるぐる、ぐるぐる。おまえは大きな輸につなが
れた駿馬よ。だから、ぐるぐる回りなさい、エドウィン。おまえが回らないと、大きな輪は回らない。
おまえが回らないと、石は飛んでこない。ぐるぐる、ぐるぐる、回りなさい、エドウィン。荷車の周り
をぐるぐる、ぐるぐる」
「なんで輪を回さないといけないの、母さん」とエドウィンは言った。言いながら、足はもう歩きはじ
めていた。

「お主えが駿馬だからだよ、エドウィン。ぐるぐる、ぐるぐる。石が壁を打つ音は、おまえが輪を回し
ていないとつづかない。輸を回して、エドウィン。ぐるぐる、ぐるぐる。荷車の周りを、ぐるぐる、ぐ
るぐる」

だから、エドウィンは母の言うとおり回った。荷台の板の縁に手を置き、回る勢いを削がないよう右手
と左手を置き替えながら回った。もう何度そうやって回ったろう。百回か。二百回か。回るたびに納屋
の隅に見えるものがあった。一つの隅には土饅頭か何かのように盛った上があり、別の隅――日光が緬
く射し込んで、納屋の床を照らしている隅――には、羽根も何もそのままで転がる烏の死骸があった。
薄暗がりの中を回るたび、その二つがエドウィンの目に飛び込んできた。一度「叔母さんはほんとうに
ぼくを呪ったのかな」と声に出してみた。返事はなく、母さんはもう行ってしまったのかと思った。だ
が、やがて声が戻ってきた。

「やるべきことをなさい、エドウィン」と言った。
「おまえは駿馬よ。まだ止まってはだめ。すべてはおまえしだいだからね。おまえが止まれば、あの騒
ぎも止まってしまう。だから、恐れてはだめ」

ときには、一度も石の当たる音を聞かないまま、荷車を三回も四回もめぐることがあったが、直後、今
度はその少なさを埋め合わせるように一度にいくつもの音がして、外の叫び声が一段と大きくなった。

「母さんはいまどこにいるの」とエドウィンは尋ねてみた。「まだ旅をしているの?」

答えはなかったが、さらに何回りかしたあとで母の声がした。

「弟や昧を生んであげられたのにね、エドウィン。それも、たくさん。でも、おまえ一人きりだ。だか
ら、わたしのために強くなっておくれ。十二歳なら、ほとんど大人だよ。一人で、四、五人ぶんの息子
になっておくれ。強くなって助けにきて」

また風が吹いて、楡の木が揺れた。あの納屋だろうか、とエドウィンは思った。狼が村に来た日、みん
なが隠れたというのはあの納屋だったのだろうか。そのときの話は、老ステッフアから何度も聞いてい
る。
 
君はまだ幼かった。だから覚えていないかもしれないな。昼日中に狼が三匹、のそのそと村に入り込ん
できたことがあった」

そしてステッフアの声には軽蔑がこもる。

「村中が震え上がって隠れた。畑に出ていたのも何人かいたが、それでも村には大勢残っていたんだ。
それがみんな脱穀小屋に隠れた。女子供だけじゃない。男たちもだ。狼の目つきがおかしい、と言った。
だから、へたにちょっかいをかけないほうがいい、とな。狼にとっちゃ楽なもんだ。やりたい放題さ。
雌鶏を皆殺しにし、山羊も食らった。それでも、村人はみんな隠れたままだ。自分の家に隠れたのもい
たが、ほとんどは脱穀小屋の中だ。おれはこの脚だから、いた場所にそのまま放っておかれた。つまり、
ミンドレッドさんの家の外、溝のわきで、動かないこの脚を突き出したまま手押し車の中よ。狼がおれ
のほうにとことこと歩いてきた。来て食らえ、と言ってやった。たかが簑ごときで、おれは納屋に隠れ
たりせんぞ・・・・・・。だが、狼はおれに目もくれず、目の前を通り過ぎていった。やつらの毛皮がこの役
立たずの足をこするかと思うほど近かった。簑はすっかり満足して出ていった。この村の勇敢な男たち
が、おっかなびっくり隠れ場所から這い出してきたのは、それからずいぶん経ってからだ。昼日中に狼
が三匹。立ち向かう男はI人もなしさ」

エドウィンはステッフアの話を思い出しながら、荷車をめぐりつづけた。

「母さんはまだ旅をしているの?」と、もう一度尋ねた。今度も返事はなかった。脚がだんだんくたび
れてきていた。土の山と烏の死骸を昆るのが、心底いやになってきていた。そのとき、ようやく母が言
った。

「もういいよ、エドウィン。よくがんばったね。さあ、もう戦士を呼んでもいいよ。終わりにしましょ
う」

エドウィンはこれを間いてほっとしたが、そのまま荷車の周りを回りつづけた。ウィスタンを呼ぶには
多少の努力では足りないとわかっていた。前の晩と同様、ウィスタンが来てくれることを、心の奥底か
ら強く願わなければならないと思った。
そして、そのために必要な強さをなんとか絞り出し、回りつづけた。戦士がこちらへ向かっているとい
う確信を得てから、ようやく足取りを緩めた。そう、いくら騏馬でも、一日の終わりが近くなれば多少
は鞭の手加減が必要になる。足取りを緩めたとたん、石の当たる音が間遠になり、それに気づいてエド
ウィンはにこりとした。だが、完全に足を止めたのは、投石がやみ、静けさが長くつづいたあとのこと
だ。荷車にもたれて息を整えていると、突然、納屋のドアが開き、目もくらむほどの光の中に戦士が立
っていた。

ウィスタンは、背後のドアを大きく開け放したまま入ってきた。それは、ついさっきまで外に集まって
いた悪意ある人々への、軽蔑の表明のように思えた。納屋の中に日の光の大きな四角形ができ、エドウ
ィンは周囲を見回した。暗闇の中ではあれほど存在感のあった荷車が、いまは見るも無残なぽんこつと
化していた。あのあとすぐ、ウィスタンはぼくを「若き同志」と呼んだんだっけ……?・よく思い出せ
なかったが、戦士に光の四角形の中へ導かれたことは覚えている。そこでシャツを引き上げられ、傷の
様子を調べられた。そのあと、ウィスタンはまっすぐに背を仲ばし、注意深く肩越しに後ろを振り返っ
てから、低く言った。

                            カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』
 
                                       この項つづく 



● TVドラマ『ドロ刑』に嵌る
「生涯ながら族」のわたしに、楽しみにするテレビ番組は年々少なくなり。釘づけにする「ドラマ性」
がない、というのがその理由。おとなのアニメだと思っている『フィニアスとファーブ』と最近までは
『ドクターX』がそれであった。情報過剰?で勝手気ままな現代社会では「視聴率主義は無意味」だ。
かといって重苦しいシリアスな番組でなく、軽薄で陳腐化しやすい企画もの(NHK的な偏執的な番組」?
は別にして、手などの身体をとめてまでして観るものは希少だ。

日本の刑法犯の7割以上を捜査し、検挙率第1位を誇る!それは、刑事部・捜査第三課。 窃盗、ひった
くりを捜査する彼らは、通称「ドロ刑」と呼ばれる。 「捜査の全てはドロ刑に始まり、ドロ刑に終わ
る――。」 憧れと希望に満ち溢れ、 警視庁"捜査三課"に配属された新米刑事・斑目勉(まだらめつと
む)が出逢ったのは、 稀代の大泥棒・煙鴉(けむりがらす)だった。 磨き抜かれた練達の職業泥棒た
ち、 煙のように捉えどころのない煙鴉、果たして彼らを捕まえることはできるのか……!!? 盗られた
モノは捕り戻す!YJ期待の新鋭が描く"泥棒×刑事盗物帖"明日から試せる防犯テクニックも充実!!
"ドロ刑"こそが、刑事の華だっ!!!――『ドロ刑』は、福田秀による漫画。『週刊ヤングジャンプ』
(集英社)2018年5・6合併号から連載中。話数カウントはEpisode;○○。2018年10月13日に『ドロ刑-
警視庁捜査三課-』のタイトルで日本テレビ系でテレビドラマ化。


  

  ● 今夜の一曲

『サボテンの花』 唄 財津和夫 Music Writer 財津和夫

 

#IHearYou それはそうだけれどⅡ

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第68章 「不争の徳」
立派な武士は、強がらない。戦上手は、誘いに乗らない。勝つことの名人は、やたらと喧嘩腰にならな
い。人使いの巧者は、相手の下手に出る。これが不争の摺である。不争の徳は、人の力を最大限に利用
する。これが天道の極意である。

第69章 兵法の極意
「戦は、仕掛けてはならぬ。相手の仕掛けを待て。進んで戦うより、退いて守れ」
このことばを守るなら、進んでも、進んだとは見えず、腕をふるっても、ふるったとは見えず、敵を草
っても、草ったとは見えず、武器を取っても、取ったとは見えない。これぞ、兵法の極意である。
敵を侮ること、これほど大きな過誤はない。敵を侮り、進んで戦を仕掛ける者は、すでに「道」を失っ
ている。
したがって、双方の戦力が伯仲するときは、牧草されてやむを得ず応戦する側が、つねに勝つ。

   Jun. 5, 2017

 
”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
【エネルギー通貨制時代 14】  

   Mar. 3, 2017

 

 

  View Inc.

♞ ソフトバンク 「スマート・ウィンドウ」に11億ドル投資

11月2日、金融市場などの調査会社のブルームバーグによるとブルソフトバンクは、大規模な投資を
公表した。インターネット接続された窓ガラスを製造販売するシリコンバレーメーカーView Inc.社に、
11億ドルを投資する。View社の技術――IoT 適用の遠隔御できるのスマート・ウインドウ「ダイナミ
ックガラス」は、ブラインドやその他のアクセサリをなくし冷却コストを削減(デジタル革命基本第5
則 イレイジング)。10年を費やし開発したガラスは、空港、病院、オフィスビルを対象販売からと
入る。投資はView社のミシシッピ州にある製造工場規模を2倍にし、アプリケーション開発系継続に向
けられる。 View社の担当責任者(CEO、Rao Mulpuri)は、初めて窓をデジタル化するものだと語る。
ソフトバンク・グループのビジョン・ファンド社、Uber Technologies Inc.および  WeWork Cosが有望な
テクノロジーに約1千億ドルの資本調達を行うが、その資金に450億ドルを拠出したサウジアラビアと
の関係でここ数週間で厳しい監視を受けている。ソフトバンクの孫正義CEOが、将来的にはより多くの
資金を調達できるか不明であるが、サウジアラビアの危機以来、ビジョン・ファンドが明らかにした最
大の案件。

 Nov. 2, 2018 

この投資の前には、コーニング、マドレーン・キャピタル・パートナーズ、TIAAインベストメンツ、ニ
ュージーランドのソブリン・ウェルス・ファンドなどの投資家から約8億ドルを調達。ソフトバンクは
新たに11億ドルを投じた唯一の投資となる。 両社は、この取引でView社評価開示否定している。前
出の担当責任者(Mulpuri) によればこの契約は数週間継続、サウジの事件は不安材料だが、今や長期
間に渡るソフトバンクとの信頼関係を築いており楽観していると語る。

半導体製造適用技術により、View社はガラス板上に金属酸化膜の堆積方法開発。これは薄膜に非常に小
さな電流を流し、様々な程度でガラスを遮光できる。ガラス周辺のフレームには、色合いを調整し、イ
ンターネットと接続する電子デバイスと、該当する建造物建物の屋上に配置した気象監視レーダが含ま
れる。ユーザーは、モバイルアプリケーションで、建物に当たる太陽量に基づき着色プロセスを自動化、
これを単一色調するか複数による色調に選択的に制御できる。 

View製品価格は、通常のガラスの約4倍っだが、省エネ効果で約20%削減し、シャッター、シェード、
ブラインド購入価格はゼロとなるので問題ないとする。 同社はさらに、工場や病院などの施設のスマー
トグラス一体建造物の居住・就労空間の健康促進改善効果を比較検証する。 Wikipedia

同社のユーザーの1つであるはダラス・フォートワース国際空港で、この窓がターミナルをより快適な
室温を維持していることを実証  また、Facebook Inc.、FedEx Corp.、JPMorgan Chase&Co.、USAA、
Texas A&M Universityをユーザーに抱え、現在までに450件のプロジェクトを完了、250件のプロジェクト
が計画/実行中。  SageGlassとKinestral Technologies Inc.もこのタイプのダイナミックガラスを製造して
おり、主要なガラスメーカーの支援を受けている。
 
今後、同社はスマートグラスにさまざまな機能を追加する。 また、各色調は、ソフトバンク社のスマートフォンなど
の保有知財/企業技術を生かした電子チップと、ARM Holdings Plcの設計を基調とする。 直近に、View社は、
特定ガラス板にセキュリティ防犯機能を追加する。 また、長期的には、窓をホワイトボードやビデオディスプレイ
可能な機能を追加する予定。

   July 17, 2018

 

【関連特許:95件】 

❑ US20120062975A Controlling transitions in optically switchable devices :
  光学的に切り替え可能なデバイスにおける遷移の制御

【要約】
コントローラまたは制御方法は、デバイスおよび/またはデバイスの環境の現在の温度に関する情報なし
で動作するように設計または構成されてもよい。 さらに、いくつかの場合において、コントローラまた
は制御方法は、2つの終了状態の間の中間状態への光学デバイスの移行を制御するように設計または構成
されている。 例えば、コントローラは、透過率の2つの終了状態の中間である透過率の状態への移行を
制御するように構成されてもよい。 このような場合には、3つ以上の安定した透過状態を有する。


 


【特許請求の範囲】

1.エレクトロクロミック素子の光学的遷移を開始光学状態から終了光学状態に制御する方法であって、
(a)前記エレクトロクロミック素子を駆動するための駆動電圧を、前記駆動電圧は、前記エレクトロク
ロミック素子のバスバーに印加され、 (b)移行が完了する前に、バスバーに印加される電圧の大きさ
を駆動電圧未満の大きさに減少させるステップと、 (c)バスバーに印加される電圧の大きさを減少さ
せた後、エレクトロクロミック装置内の電流または開回路電圧を検出するステップと、 (d)(c)で検
出された電流または開放回路電圧が光学遷移がほぼ完了したことを示す特性を有するかどうかを決定す
るステップと、 (e)(d)において、光学遷移がまだほぼ完了していないと判定された場合、バスバー
に印加される電圧の大きさを駆動電圧に増加させ、駆動電圧を追加の持続時間にわたって印加する。
2.(d)において、光学遷移がほぼ完了していると判定された場合、終了光学状態を保持するための保
持電圧を印加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
3.前記電圧は、(b)において、前記駆動電圧から前記保持電圧まで低減される、請求項1に記載の方法。
4.(c)で検出された電流または開放回路電圧が、光学遷移がほぼ完了したことを示す特性を有するか
どうかを判断することは、特定の方向の電流が閾値レベルを下回るかどうかを決定することを含む。
5.前記閾値レベルが0アンペアである、請求項4に記載の方法。
6.b)~(d)が約5秒〜5分の頻度で繰り返される、請求項1に記載の方法。
7.(b)において、(a)において駆動電圧を印加した後の所定の時間に電圧が低下し、前記規定され
た時間は最大約30分である、請求項1に記載の方法。
8.エレクトロクロミック装置の光学遷移を開始光学状態から終了光学状態に制御する方法であって、
(a)前記エレクトロクロミック装置を駆動するための駆動電圧または駆動電流を前記開始光学状態駆
動電圧または駆動電流がエレクトロクロミック装置のバスバーに印加される終端光学状態に至り、
 (b)前記エレクトロクロミックデバイス内の電流または開回路電圧を検出するステップと、 (c)
(b)で検出された電流または開放回路電圧が目標遷移時間内に光学遷移が完了することを示す特性を有
するかどうかを判定するステップと、 (d)(c)において、光学遷移が目標時間枠内で完了しないと判
定された場合、修正駆動電圧または修正駆動電流を印加するステップとを含み、変更駆動電圧または修
正駆動電流の大きさは、 (a)で印加された駆動電圧または駆動電流の大きさ。
9.(c)において、光学遷移が目標時間内に完了すると判定された場合に、駆動電圧または駆動電流を
印加するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
10.b)が、バスバーに印加される電圧または電流の大きさを、駆動電圧または駆動電流よりも小さい大
きさに低減することを含む、請求項8に記載の方法。
11.前記バスバーに印加される電圧または電流の大きさを減少させることは、(a)において前記駆動電
圧または駆動電流を印加した後の所定の時間に実行され、前記定義された時間は、約30分
12.(b)で検出された電流または開放回路電圧が、光学遷移が目標時間内に完了することを示す特性を
有するかどうかを判断することは、電流または開放回路電圧が所定の範囲内にあるかどうかを決定する
ことを含む。
13.(b)~(c)を繰り返すことをさらに含む、請求項8に記載の方法。
14.エレクトロクロミック装置の光学的遷移を開始光学状態から終了光学状態に制御する方法であって、
(a)前記エレクトロクロミック装置を駆動するための駆動電圧を、前記開始光学状態から前記終了前記
駆動電圧は、前記エレクトロクロミック素子のバスバーに印加され、 (b)遷移が完了する前に、バス
バーに印加される電圧の大きさを保持電圧まで減少させるステップと、 (c)バスバーに印加される電
圧の大きさを減少させた後、エレクトロクロミック装置内の電流または開回路電圧を検出するステップ
と、 (d)(c)で検出された電流または開放回路電圧が光学遷移がほぼ完了したことを示す特性を有す
るかどうかを決定するステップと、 (e)(d)において、光学遷移がほぼ完了していると判定された場
合、終了光学状態を保持するための保持電圧を印加する。保持電圧の大きさは、駆動電圧の大きさより
も小さい。
15.(c)で検出された電流または開回路電圧が、光学遷移がほぼ完了したことを示す特性を有するかど
うかを判断することは、特定の方向の電流が閾値レベルを下回るか否かを判定する段階を含む。
16.前記閾値レベルが0アンペアである、請求項15に記載の方法。
17.(b)~(d)が約5秒~5分の頻度で繰り返される、請求項14に記載の方法。
18.(b)において、(a)において駆動電圧を印加した後の所定の時間に電圧が低下し、前記規定され
た時間は最大約30分である、請求項14に記載の方法。
19.前記ステップ(d)の前に、前記検出された電流が前記(d)で決定された結果、前記バスバーに印
加される電圧の大きさを前記駆動電圧まで増加させるステップをさらに含む、 光学遷移がほぼ完了して
いることを示す特性を持たない。 (ii)(b)〜(d)を繰り返すことを含む。

※尚、上記特許の【請求範囲】は、同タイトルの再表示のものを翻訳(US10120258,Nov.6,2018)

1.10,120,258  Controlling transitions in optically switchable devices 
2 10,114,265  Thin-film devices and fabrication 
3 10,112,258  Coaxial distance measurement via folding of triangulation sensor optics path 
4 10,088,731  Multi-pane electrochromic windows 
5 10,088,729  Electrochromic devices 
6 10,054,833  Fabrication of low defectivity electrochromic devices 
7 10,048,561  Control method for tintable windows 
8 10,001,691  Onboard controller for multistate windows 
9 9,995,985   Electrochromic window fabrication methods 
10 9,962,170 Method and devices for treating spinal stenosis 
11 9,958,750  Electrochromic window fabrication methods 
12 9,952,481  Obscuring bus bars in electrochromic glass structures 
13 9,946,138  Onboard controller for multistate windows 
14 9,921,450  Driving thin film switchable optical devices 
15 9,927,674  Multipurpose controller for multistate windows 
16 9,921,450 Driving thin film switchable optical devices 
17 9,910,336  Spacers and connectors for insulated glass units 
18 9,904,138 Fabrication of low defectivity electrochromic devices 
19 9,897,888 Spacers for insulated glass units 
20 9,885,935 Controlling transitions in optically switchable devices 
21 9,885,934  Portable defect mitigators for electrochromic windows 
22 9,831,072  Sputter target and sputtering methods 
23 9,829,763  Multi-pane electrochromic windows 
24 9,778,532  Controlling transitions in optically switchable devices 
25 9,759,975  Electrochromic devices 
26 9,728,920  Connectors for smart windows 
27 9,723,723  Temperable electrochromic devices 
28 9,720,298  Electrochromic devices 
29 9,703,167  Electrochromic window fabrication methods 
30 9,690,162  Connectors for smart windows 
31 9,671,665 Connectors for smart windows 
32 9,671,664  Electrochromic devices 
33 9,664,976  Wireless powered electrochromic windows 
34 9,664,974  Fabrication of low defectivity electrochromic devices 
35 9,645,465  Controlling transitions in optically switchable devices 
36 9,638,978  Control method for tintable windows 
37 9,638,977  Pinhole mitigation for optical devices 
38 9,618,819  Multi-pane dynamic window and method for making same 
39 9,523,902 Mitigating thermal shock in tintable windows 
40 9,513,525 Electrochromic window fabrication methods 
41 9,507,232 Portable defect mitigator for electrochromic windows 
42 9,482,922  Multipurpose controller for multistate windows 
43 9,477,131  Driving thin film switchable optical devices 
44 9,477,129 Fabrication of low defectivity electrochromic devices 
45 9,454,056  Driving thin film switchable optical devices 
46 9,454,055  Multipurpose controller for multistate windows 
47 9,454,053  Thin-film devices and fabrication 
48 9,442,341  Onboard controller for multistate windows 
49 9,442,339  Spacers and connectors for insulated glass units 
50 9,436,055  Onboard controller for multistate windows 
51 9,436,054 Connectors for smart windows 
52 9,429,809 Fabrication of low defectivity electrochromic devices 
53 9,423,664 Controlling transitions in optically switchable devices 
54 9,412,290 Controlling transitions in optically switchable devices 
55 9,348,192 Controlling transitions in optically switchable devices 
56 9,341,912 Multi-zone EC windows 
57 9,341,909 Multi-pane dynamic window and method for making same 
58 9,320,535 Tissue removal system with retention mechanism 
59 9,261,751 Electrochromic devices 
60 9,229,291 Defect-mitigation layers in electrochromic devices 
61 9,164,346 Electrochromic devices 
62 9,158,173 Spacers for insulated glass units 
63 9,140,951 Electrochromic devices 
64 9,128,346 Onboard controller for multistate windows 
65 9,116,410 Multi-pane electrochromic windows 
66 9,110,345 Multi-pane dynamic window and method for making same 
67 9,102,124 Electrochromic window fabrication methods 
68 9,081,247 Driving thin film switchable optical devices 
69 9,081,246 Wireless powered electrochromic windows 
70 9,030,725 Driving thin film switchable optical devices 
71 9,019,588 Connectors for smart windows 
※72~95は紙面の都合で割愛

#IHearYou それはそうだけれどⅢ

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第68章 「不争の徳」
立派な武士は、強がらない。戦上手は、誘いに乗らない。勝つことの名人は、やたらと喧嘩腰にならな

 

 

 ● 今夜の一曲

『Say Yes』 唄 チャゲ&飛鳥 Music Writer:CHAGE 飛鳥涼 青木せい子  

 

 

 

梟の棲む世界

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第51章 底知れぬ徳
あらゆる存在には、よって来たる根元がある。その根元が「道」だ。「遜」こそ、すべての存在の
普遍存在たる「道」から生まれ、道の運動法則たる「徳」により育って、形としては物、内容とし
ては絶えず変
化する運動、これが万物である。
「道」を離れて万物は存在せず、「徳」を離れて万物は存在しない。
「道」の偉大さ、「徳」の偉大さ、万物はなんら命ぜられることなく、おのずと生々発展する。
「道」は万物の根元である。「徳」が万物を現象させ、発展させ、完成させ、さらにまた根元たる
「道」に返す。
「道」は万物を生み、万物を育てる。万物を現象させながらも、固定化せず、存在させながらも、
その功を誇らず、完成させながらも、支配しない。これが「道」の底知れぬ徳である。

第52章 小知を捨てよ
あらゆる存在には、よって来たる根元がある。その根元が「道」だ。「遜」こそ、すべての存在の
根元である。根元たる「道」に基づいて、その所産たる存在の本質を理解する。さらにまた、この
理解に基づいて、存在の根元たる「道」へと遡る。この作業を反復することによって、「道」への
認識は無限に深められてゆくのである。「道」への認識を無限に深めてゆくためには、感性を没却
しなければならぬ。感性的判断に固執するかぎり、「道」は永遠に認識できない。感性では捉えら
れぬ物事を認識することが、「明知」である。感性に依存する小知を捨てて、存在をあるがままに
受容することが、堅固」な認識の立場である。小知を捨てて「道」にのっとり「明知」に立ち返る
なら、無限に自由な境珀がひらける。これこそが、「道」の極意に達するということなのだ。

〈感性を没却しなければならぬ〉 原文は「その兌を塞ぎ、その門を閉ず」。「兌」とは穴のこと
で、「門」と同じく外界からの刺激を伝達する感覚器官を指す。

  

”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
【エネルギー通貨制時代 Ⅴ】 

●ソーラータイル事業篇:全無機ペロブスカイトソーラの理論効率限界33%増倍

10月7日、アムステルダム大学と大阪大学の研究グループは、特定のペロブスカイト光電変換効
率がペロブスカイトが「効率的なキャリア増倍」を特徴とし、単層の効率限界を33%から44%
に効果的に向上させる決定的な証拠を発見したことを公表。

Oct. 11, 2018

☑ 効率的に光を電気に変える――特定のペロブスカイト系の実用的特性
大阪大学の報告によると、特定のペロブスカイトが実用的な望ましい特性をもち、ここで、結晶と
は、原子、分子、またはイオンの構成であり、すべての方向でそれ自身を繰り返す構造秩序であり、
一般的に塩、ダイヤモンドなどとして存在するが、ある種の結晶は、そのサイズが日常生活のサイ
ズではなく、ナノメートルサイズの領域(ナノクリスタル構造)で興味深い特性を示す。

ここで、ペロブスカイトとは、19世紀のロシアの鉱物学者レブ・ペロフスキー(Lev Perovski)に
ちなんで命名され、同じ結晶構造を共有するナノクリスタルの特定のファミリーを形成。ナノスケ
ールでは、これらのペロブスカイトは多くの望ましい電子特性を有し、例えば、LED、TVスクリー
ン、太陽電池およびレーザーの構築に有用であり、過去数年間、ペロブスカイトナノクリスタルは、
物理学者によって広く研究されてきた。

☑ キャリア増倍:Carrier Multiplication (CM)
これまでペロブスカイトには存在しないことが示されていた特性は、キャリア増倍である。例えば、
太陽電池などのナノ結晶が光のエネルギーを電気に変換するとき、これは通常、一度に1粒子ずつ
行われ、単一の入射光子が単一の励起電子(および対応する「ホール」それは電流を運ぶことがで
きるが、特定の材料では、入射光が十分にエネルギー的であれば、さらなる電子 - 正孔対が結果と
して励起され得る。キャリア倍増として知られるこのプロセスは、キャリアの倍増が起こると、光
から電気への変換がはるかに効率的になる。例えば、通常の太陽電池では、このように変換するこ
とができるエネルギーの量に理論上の限界(いわゆるショックレイ・ケーザー限界)がある――太
陽エネルギーのせいぜいわずか30%の変換効率が、キャリア増倍効果を示す材料では、既に44
%の効率が得られている(参考:量子ドット太陽電池セル NEDO海外レポート No.1081 2012.01.25
http://www.1an1.gov/news/index.php/fuseact,ion/home.st,ory/storyjd/15709)。 

これは、ペロブスカイトにおけるキャリア増倍効果を探索することを非常に興味深くしている。ク
リス・デ・ウィアード教授らの研究グループ――筑波大学産学連携センタ、デルフト工科大学、藤
原康史大阪大学らの支援と協力を受け――は、セシウム、鉛、およびヨウ素でできたペロブスカイ
トナノクリスタルが実際にキャリア増殖を示すことを分光法で、光短時間照射した後の放射線の周
波数を調べ、さらに、この効果/効率はこれまでに他の材料は報告されたものより高い値を示す。
この結果、ペロブスカイトの特異な特性は、これまでペロブスカイトのキャリア増倍は報告されて
いない。このため。例えば、ペロブスカイトを使用し、効率的な光検出器の構築が実現可能になり、
近い将来、高変換率太陽電が製造可能となる。

❑ Efficient carrier multiplication in CsPbI3 perovskite nanocrystals:CsPbI3ペロブスカイト
ナノクリスタル効率的に光を電気に変える―特定のペロブスカイトの実用特性

【概要】
全無機ペロブスカイトナノクリスタルは、物理的安定性と優れた光学特性で、現在注目されている。
これらの特徴は、光電子応用および光起電用途ととして興味深い。ここでは、ホットインジェクシ
ョン法で作製したコロイド状CsPbI3ナノ結晶における高効率キャリア増倍の観測について報告する。
キャリア増倍プロセスは、ホットキャリアの熱化を妨げるため、太陽電池の変換効率を高める可能
性を提供する。キャリア増倍は、バンドギャップの2倍のエネルギー保存限界付近の閾値励起エネル
ギーで始まり、最大98%の極めて高い量子収率を有する階段状の特性を有することを実証する。
超高時間分解能を用いて、キャリア増倍が自由キャリア濃度のより長い蓄積を誘発することを示し、
この現象を引き起こす物理的機構に重要な洞察を提供する。 証拠は、3つの独立した実験的アプロ
ーチを用いて得られ決定される。

 
半導体の光励起プロセスでは、電子 - ホール(e-h)対を形成する伝導帯の電子と価電子帯のホー
ルが形成される。光生成されたe-h対は、典型的には、材料のバンドギャップ値と吸収された光子
エネルギーとの間の差に等しい過剰エネルギーを有する。ホットエレクトロンとホールは、フォノ
ン散乱によってバンド端まで冷却することによって過剰エネルギーを失うことがある。
しかし、過剰なエネルギーがある閾値に達すると、代わりにホットエレクトロン(ホール)と他の
価電子(ホール)との相互作用が起こり、第2のe-h対が生成される。

バルク半導体では、この現象はインパクトイオン化1,2と呼ばれ、最初に結晶質バルク半導体Siお
よびGe3で観測された。半導体ナノクリスタル(NC)の場合、インパクトイオン化は、より多くの
場合、多重励起子生成またはキャリア乗算(CM)と呼ばれ、その確率を高めることができる。 CM
は、インパクトイオン化の逆過程であるオージェ再結合(Auger recombination:AR)を伴う4:
e-h対は再結合し、そのエネルギーを別の電子または正孔に与え、その余剰エネルギーを増加させ、
ホットキャリアを生成する。逐次的CM及びARは、ホットe-h対が、例えば、フォノン散乱によって
CM閾値を下回って冷却されるまで継続することができる。

過去20年間で、半導体NCは、サイズ調整可能な特性について広く検討されてきた。NCサイズが減少
し、特定の材料のボーア半径に近づくにつれて、量子閉じ込めが設定される。
このように、e-hクーロン結合強度ではなくナノ粒子の寸法は、励起子の空間閉じ込めを規定する。
閉じ込め時には、電子と正孔の波動関数が修正され、最終的に離散エネルギー準位がバルク材料の
連続エネルギーバンドに取って代わられ、バンドギャップは5.6増加する。

強い閉じ込めのために、搬送波キャリアクーロン相互作用が強化され、ARを介した減衰、およびホ
ットキャリア7,8,9による効率的なCMへの可逆的な減衰を優先することができる。太陽光発電装置
にCMを採用することは、すでにそのメリットと有用性を証明。特に、約33%のShockley-Queisser
限界を超えるCM11,12を最適に使用するセルでは、~44%までの太陽光発電変換効率が期待され
ている。実際、100%を超える外部光電流量子効率(入射光子数に対する外部回路によって収集さ
れた光キャリアの比)が報告されている。

Semonin, O. E. et al. Peak external photocurrent quantum efficiency exceeding 100% via MEG in a quantum
dot solar cell. Science 334, 1530–1533 (2011).


以前は、CMは、PbSe、PbS、CdSe、Si、Geおよびグラフェンなどの多くの半導体(ナノ)構造におい
て実証されてきた,SmithおよびBinksによってレビューされている。しかし、これまで、ペロブスカ
イトについてはCMは報告されていない。

これらの材料は現在、多くの用途に集中して研究されている。 ペロブスカイトは、その優れた光
学的および電気的特性、欠陥耐性および低い製造コストから注目を集め。近年、全無機ペロブスカ
イトNC(IP-NCs)が注目され、効率的な放射と速い放射再結合を特徴とする。これらは、ペロブス
カイトとNCの利点を併せ持ち、有機成分を含まないため、より一般的なハイブリッド有機無機ペロ
ブスカイト39よりも優れた安定性を提供します。さらに、CsPbI3 NCs41に基づく安定した太陽電池
の最近の実証により、この材料は、科学的好奇心から、ペロブスカイトベースの応用のための有望
な新しい代替物への状態を変える。

ここでは、1.78eVのバンドギャップエネルギーを有するCsPbI3 NCのコロイド状分散体における効
率的なCMの観察について報告する。我々は、様々な実験的アプローチにおいて、超高速過渡吸収(
TA)分光法を用いてCM効果を明示的に示す。異なるポンプ光子エネルギーにおけるキャリアトラン
ジェントを比較することにより、同じNC内に現れる複数のe-h対のARによって誘導される高速成分
の形態のCMの指紋を示す。誘導吸収と漂白誘発の両方について観察を行う。CM効果を確認し、励起
エネルギーの関数としてキャリア発生率を測定することにより効率を評価する。光誘起漂白(PIB)
および光誘導吸収(PIA)のダイナミクスからそれぞれ抽出された効率は98および97%。

さらに、ピコ秒時間スケールで、閾値ポンピングのための動力学を詳細に調べる。これは、CMプロ
セスが自由キャリア濃度のより長い蓄積と一致し、CM現象への新規で重要な洞察を提供することを
明らかにする。さらに、若干異なる特性を有する独立した実験装置、および新しく合成された物質
について、この研究を再現する。このようにして、無機CsPbI3 NCsにおけるCMの明白な証拠を提供
する。

【実験結果】
☑ 合成および顕微鏡的特徴付け
CsPbI3 NCsは、文献39および41に記載されているわずかに変更されたプロトコルに従い、湿式化学
法によって合成された。小さなバンドギャップエネルギー、より大きいNCで製造方向を調整に180
℃の合成温度を使用。さらに、大きなNCはより大きな吸収断面積を有し優先的に励起。

3.1 eV(400 nm、励起依存性PL QYの補足図1参照)の励起時に42.4±7%のフォトルミネッセンス
量子収率(PL QY)を測定した。これは以前に報告された値39,41に類似。大きなサイズのNC(ボー
ア半径はこの材料で約6nmで、NCは弱い閉じ込め体系にある)に期待される。 NCの構造的特徴は、
1.6A未満の空間分解能を有する最先端の低電圧単色走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて決定。
下図1aは、11.5±0.6 nmの平均サイズを有するドロップキャストされたNCの環状暗視野STEM画像を
示す(補足図2および材料と方法に関する補足情報の詳細も参照)。

12 nmのNCの高分解能環状暗視野像を図1bに示す。ここで、ペロブスカイト構造と一致して、原子
の(ほぼ)立方体配列が明確に観察される。これは、元素同定とコア損失電子エネルギー損失分光
法(EELS、図1d)のためのエネルギー分散型X線分光法(図1c)を同時実行で、詳しく解析する。
主にCs、PbおよびIが検出され、Au信号はTEMグリッドの反射から生じる。対応する元素のL線の下
でのエネルギー分散型X線信号の定量から決定されるCs:Pb:I比は1:1:3±10%であり、CsPbI3
ペロブスカイトの(ほとんど)NCsは形成された。高い損失では、CsM4.5に対応する733eVおよび
746eVの2つの特有のピークが観測され、IM4.5イオン化エッジの遅延特性に対応する700eVのより広
いピークが観測される。

単一のNCのバンドギャップを決定するために、高エネルギー分解能(~50meVのゼロ損失ピーク)
44,45,46で、イメージングと価数損失EELS収集を並行して実施。このようにして、単一のNCの構造
パラメータが決定されると同時に、その低損失EELスペクトルが記録。 電子が価電子帯の上部から
伝導帯に励起され、続いて信号が安定して増加すると、低損失EELスペクトルに特徴的なステップ
が現れ、光吸収に類似して、エネルギーの状態の密度増加につれ、大きくなるバンド間吸収に相当。
図1eは、特徴的な段差を有する低損失EELスペクトルと、サイズ分布の端に幾分現れる12nmのNCの
環状暗視野像(補足図2も参照)を示し、具体的には最初に大きなNCのCMが開始されることが予想
されるため選択されました。1.77eVのバンドギャップエネルギーは、点線で示すように、吸収開始
付近のスペクトルの一次導関数の最大値で決定する。


図1、CsPbI3ナノクリスタルの顕微鏡的特徴付け。 新たに滴下したサンプルの環状暗視野像。 b
ナノクリスタルの原子解像度走査透過顕微鏡画像で、主に立方体構造を明確に示す。 c、d主にCs、
PbおよびIが検出された同じサンプル(c)のエネルギー分散型X線スペクトルおよびコア損失電子
エネルギー損失スペクトル(d)。 対応する元素のL線についてのエネルギー分散型X線信号の定量
から決定されるように、Cs:Pb:I比は1:1:3±10%であり、(ほとんど)ペロブスカイト組成を
示唆。 バンドギャップエネルギー1.77eVの大きな12nmナノクリスタルの低損失電子エネルギー損
失スペクトル。 点線は吸収開始付近のスペクトルの一次導関数を示し、その最大値がNCバンドギ
ャップエネルギーである。


Supplementary Information

☑ 光学的特徴付け
下図2aは、1.78eV(695nm)に最大値を有するNC(点線)およびPLスペクトル(実線)のアンサンブ
ル光吸収を示す。着色された矢印は、TA実験に用いられた励起光子エネルギーを示し、PL寿命は、
励起源としてピコ秒パルスダイオードレーザ(λexc= 375nm)を用いて測定。λdet= 695 nmの正規
化された減衰ダイナミクス、および残りの検出波長の抽出された寿命が図2bに示す。
トランジェントは、双指数関数に適合させることができ、以前の報告41,43,48とよく一致して、そ
れぞれの振幅比が1:2の3.3および45nsのPL寿命をもたらした。図2cは、約2.8~3.3eV(440~375nm)、
4.3eV(290nm)、および4.96eV(250nm)の励起エネルギーに対して特有の最大値が観察されるPL
励起データを示す。以前にも同様の特徴が観察されており、低エネルギーでの最大値は、吸収スペ
クトル48で観察されたより高いエネルギー状態に起因するものであった48。この特定のケースでは、
PL強度は、より高い励起エネルギー(> 4.6eV / 非放射性
再結合による過剰エネルギーの損失によって説明される。

これは明らかにこの研究では当てはまらない:4.96eV(250nm)を超えると、高い強度の発光を最
大限に観測する。我々の実験では、得られた放出スペクトルおよび励起スペクトルが、実験装置の
波長依存特性の可能性について補正されていることに留意。データは、単位面積当たり放出される
光子の数として収集され(これは実験を通して変わらない)、その点でPL QYの決定に似ている。
さらに、過去には、Si NCにおける閾値励起以上の場合、CM Qに割り当てられたPL QYの増加が観察
されたことを思い出してください。このように、NC吸収スペクトル(図2a)とともに4.96eVを超え
るPL励起の観察された増加は、CM20に起因するPL QYの増加を示唆している。残念ながら、セット
アップの限界のために、より高い励起エネルギーでのこの現象の観察は不可能である。

 図2.CsPbI3ペロブスカイトナノクリスタルの効率的なキャリア増倍

光学的特性評価。 吸光度(点線)およびPL(実線)スペクトル。着色された矢印は、過渡吸収実験
に使用される光子エネルギーを示す。 b二重指数関数を用いてフィッティングし、減衰時間τ1= 3
.3nsとτ2= 45nsを得たλdet= 695nmの時間分解フォトルミネッセンス(PL)測定。挿入図は、全て
の検出波長について得られた寿命を示す。対応する振幅を有するPL寿命が挿入図に示されている。
不確実性はフィッティング法の統計誤差によって決定される。 PL励起の2次元等高線プロットであ
り、励起エネルギーがPL発光および強度に及ぼす影響を示す。PL最大値は 4.96eV)付近
で観測され、これはキャリアの乗算の最初の兆候である可能性がある。励起および発光強度は、セ
ットアップおよびスペクトル感度の波長依存成分について補正する(中略)。


☑ CMの指紋
下図3は、λプローブ= 680nm(675nmと685nmとの間で信号を積分することによって得られる)で
の最大値付近で測定された過渡PIBを示す。ここでは、2つの励起波長の結果を比較:λexc= 500 nm(
1.4Egap、図3a)およびλexc= 295 nm(2.4Egap、図3b)で、この研究で測定されたすべての過渡的
なPIB動態について3)。TA測定を実行している間、私たちは、いわゆる線形レジームの中で非常に
低いレベル(≪1)でNCあたりの吸収光子の数を維持。これは、TAダイナミクスの初期振幅Aが、吸
収された光子フルエンス(図3a、bのインセットのオレンジドット)、特に初期振幅Aとテール振幅
との比により直線的に増加確認、吸収光子フルエンス範囲(青緑色の点)内で不変B(A/B)。具体
的には、後者の観察から、光子吸収を完全に排除することができる。したがって、この範囲で観測
されたフルエンスの増加は、単一の光子の吸収に続いて、各NCが多くとも1e-hの対を含むこれらの
励起条件下で、≪1を維持しながら、励起されたNCの数を増加させる。


図3 過渡吸収ダイナミクス(a)および(b)のキャリアの乗算(CM)閾値、すなわちそれぞれ
500nm(2.48eV)および295nm(4.2eV)のポンプ波長でのダイナミクスである。破線はデータに対す
る指数関数近似を表す。4.2eVでポンピングするときの追加の高速成分の出現は、CMの指紋である。
挿入図は、吸収された光子フルエンスの関数としての単一励起子減衰テールA / Bに対する初期過
渡振幅Aおよびその比を示し、単一光子吸収(線形)体制を実証する。

全てのダイナミクスは、675?685nmの信号を積分することによって、光誘起漂白剤の最大値(680nm)
周辺のプローブ波長で測定される。後者は、y方向の誤差バーを決定する。x方向の誤差は、ポンプ
出力の小さな変動から生じる。線形領域外(すなわち、多光子吸収による)でのポンピングおよび
CMによるオージェ再結合による減衰を示す線形対非線形領域は、同じ動力学をもたらす。両方の励
起エネルギーを考慮すると、過渡PIB信号の挙動は著しく異なることに留意されたい。どちらの場合
も、ダイナミクスは、表示された時間ウィンドウ(500ps)に適合する緩和時間をもつテールを示す
(中略)。

【実験材料】
Protesescuらにより、初めて報告されたプロトコールに従ってCsPbI3 NCを合成。 2015年にわずかな
変更を加えている。 Cs-オレエートを調製するために、0.814gのCs2CO3を40mlのODEおよび2.5mlの
OAと混合する。続いて、反応が完了するまで不活性雰囲気中で混合物を150℃で撹拌する。ここでは、
反応物を120℃で1時間乾燥する。 NCの形成を誘導するために、5mLのODEおよび0.188mmolのPbI
2をN 2雰囲気中で120℃で1時間乾燥する。水を除去した後、0.5mLの乾燥OAおよび0.5mLの乾燥OLAを
反応フラスコに添加し、温度を180℃に上昇させる。 PbI 2の溶媒和が完了した後、0.4mlのCs-オレ
エート溶液を注入する(これは以前に加温されている)。反応は、NC溶液を氷浴を用いて迅速に冷
却した後、数秒かかる。最終生成物をいくつかの遠心分離工程を用いて精製し、ヘキサンに再分散
させる。サンプルを分光実験に適切な光学密度(「1OD」)になるように希釈し、石英キュベット(
UVグレード)に移す。

【実験手順】
UV励起エネルギーのためのTA実験(ステーション1、> 4eV)で、~100fsのパルス幅で1kHzで動作す
るMai Tai-SP(米国マウンテンビュー、米国)のダイオード励起、モードロックTiサファイアレー
ザーが、コヒーレント光源としては、出力波長800nmに対して?3mJのパルスエネルギーが用いられる。
周波数調整器は、出力周波数を200Hzに低減する。ビームスプリッタを使用してビームを分離し、ポ
ンプパルスとプローブパルスを生成する。光パラメトリック増幅器TOPAS-C(ライトコンバージョン、
ビリニュス、リトアニア)は、BBO結晶と組み合わせて、所望のポンプエネルギーを生成する。その
後、ポンプビームは遅延段(SGSP 26-200)を通って案内される。プローブシグナルは、サファイア
結晶を用いて生成された白色光からなり、検出器に到達する前に分光される:0.5mのイメージング
トリプルグレーティングスペクトログラム、SpectraPro 2500i(Acton Research Corporation、Acton、USA)
および空冷CCDカメラ、PIXIS 256(Princeton Instruments、Trenton、USA)を使用した。残りのポンプエ
ネルギー(ステーション2、<4eV)については、試料を約150fsレーザーパルス(2.5kHzで動作する
光変換Pharos-SP、Orpheus OPAと組み合わせて)で励起し、可視のマルチチャンネル検出を用いてプ
ローブする/近赤外(500~800nm)プローブパルス(Ultrafast Systems Helios)。広帯域(白色光)
プローブパルスは、1030nmポンプ光を用いてサファイア結晶によって生成される。ここでは「低」
ポンプエネルギーでの実験がステーション1で繰り返し比較。これらの実験では、均等な力学が得ら
れ、結果検証する(下補足図11参照)。

紙面錠、後略するが、今回の技術論文を意訳するにあたり、「量子ドット工学講座」としてまとめ
るか、「ソーラータイル事業篇」とするか困惑する。換言すれば、実用(商用)段階か基礎研究段
階との差異にあるが、前者に到達するには時間的距離感が異なるが(有機ELが「死の谷」をわたっ
たように)、量子ドット半導体の実用化も実現することを確信し掲載した。「ビバ!エネルギー革
命」である。

 Wikipedia

● 梟の棲む世界
日曜日は、早朝からふくろう珈琲店と唐橋焼観光で大津へ(彼女はわたしの誕生日祝いという)。珈琲店は
駐車でご近所が随分迷惑されているようで、わたしの粗忽さと無知を恥じる。ピザは11時からでブレンド
(ふくろ、みみずく)を楽しみ店を後にし、唐崎焼きは琵琶湖大橋の道の駅で購入し、ぶっかけ手打ちとろ
ろそば頂き帰宅。行楽客でどこも車であふれていた。

古代ギリシアはフクロウは英知の女神アテナの象徴とし、積み重ねられた書籍の上に描かれている。また夜
と切り離せず、ミケランジェロのジュリアーノの墓所の彫刻の足元にを置れ、寓意が書かれたチェーザレ・
リーパには、議会のアレゴリーとして描かれ、迷信のアレゴリーにも登場し「徳不徳両面」を寓意するが
"知が栄えたためしなし"と恥じながら、世界のリーダー不在を恐れる心象も浮かびあがらせた一時でもあっ
た。ビバ!滋賀、安らかであれ。 

 

 

 

#IHearYou それはそうだけれどⅢ

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第70章 身にはボロを、ふところには玉を
わたしは、だれにでも理解でき、実行できる説しかとなえていない。にもかか者もなく、実行できる者
もないのは、なぜか。およそ、いかなる意見にせよ行為にせよ、それぞれに基本原理を持つものだ。
ところが人々には、その原理をつかもうとする意志がない。わたしの説を理解できない唯一の理由は、
ここにある。
そもそも、理解する者がいないという事実が、わたしの説の貴重さを示している。身にはボロをまとい
、ふところには玉を抱く。聖人とは、そういうものである。

第71章 迷  妄
知の限界を悟るのが、真の知である。知の限界を悟らぬのは、迷妄である。迷妄を、迷妄であると自覚
できたとき、はじめて真の知に通ずる道がひらけるのである。聖人は、迷妄に陥ることがない。なぜな
ら、知の限界を悟っているからだ。

第72章 抑圧なき政治
無為の政治を行なえば、人民はおのずと治まって、為政者の存在することさえ忘れる。これこそ為政者
たる者の最高の存在形態である。
人民の本性を軽視してはならぬ。人民の自然を抑圧してはならぬ。抑圧しさえしなければ、政治はおの
ずと成功する。 
聖人は、自己の責任を自覚し、自己の価値を自覚しながらも、それを他に誇示しようとしない。つまり、
私意を捨てて、無為自然の「道」にのっとるのである。

〈無為の政治を・・・・・・存在形態である〉原文は「民不良成、則大成至」。「大成」を天成ととるのが
通例で、「無為の治を失えば(または、天成を恐れなければ)、天罰がくだる」と解されていた。だが、
それではいかにも卑俗で、老子の本旨に沿っていないと思われる。 

 
”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
【エネルギー通貨制時代 15】  

 

   Mar. 3, 2017

 

【エネルギー貯蔵技術事例研究 Ⅵ】
✪ エネルギータイリング事業篇:最新窓ガラスエネルギー変換技術  

● 世界初!窓が基地局に、「ガラスアンテナ」を貼るだけ
11月7日、昨夜のViewInc.社で紹介したスマート。ウインドウ「ダイナミック・ガラス」
につづき、NTTドコモとAGCは窓ガラスの室内側に貼り付けられる電波の送受信が可能な
ガラスアンテナを共同開発に成功したことを公表。両社は「世界初」とする。2019年上期
より、LTE(Long Term Evolution:次世代高速携帯通信規格)の周波数帯の基地局に同ガラス
アンテナを展開していく予定ガラスアンテナ・サイズは700×210mmで重さは1.9kg。対応
周波数は3.5GHz帯で、帯域幅は40MHz。4×4 MIMOに対応している。下り変調方式は256QAM
で、スループットは最大588Mビット/秒。

開発したガラスアンテナは、透明性の高い導電材料とガラスを組み合わせたも、既存の窓に貼り付けて
も、景観や室内デザインを損なわない。さらに、独自に開発した「Glass Interface Layer(グラスインタ
フェースレイヤー)」の効果で、窓ガラスを通過したときの電波の減衰および反射を抑える。Glass I
nterface Layerは、ガラスに近づいたときにガラスアンテナの性質が変わる影響を抑え、安定した高速通
信を実現には、スモールセルをいくつも設置して、トラフィック(通信回線上で一定時間内に転送され
るデータ量)を分散させることが重要になる。現在、スモールセルのアンテナは建物の屋上や中低層階
の壁面に設置されているが、このような場所では設置できるエリアが限られたり、景観を損ねたりする
ことから、設置が難しいケースがある。そこで、建物の中にアンテナを設置する方法を考えた。

ただ、建物の中にアンテナを設置する場合も、インテリアを損ねたり、電波が窓ガラスを通過した時に
減衰するといった課題があった。これを解決するために、AGCが保有する、既存窓の表面にガラスを貼
り付ける「アトッチ工法」を活用し、今回のガラスアンテナの開発を進めてきた。 両社は、5G(第5
世代移動通信)に対応したガラスアンテナの開発も検討中(窓が基地局に、「ガラスアンテナ」を貼る
だけ - EE Times Japan 2018.11.08 15:30)。

関連特許






● 世界初!10万年間磁場を発生させる超電導接合NMRコイル装置
11月2日、理化学研究所らの研究グループは、高温超電導線材の超電導接合持つ永久電流核磁気共鳴
(NMR)装置でのNMR信号取得に成功したことを公表。この本成果で、医薬品検査に用いられる定量
NMRや、アルツハイマー病発症に関わるアミロイドβペプチドの構造が超微量試料で得られる次世代
高磁場NMRの実現など、小型化・高性能化を伴ったNMRの普及拡大が期待できる。この超電導コイル
(NMRコイル)は、線材同士を超電導接合でつなぎ永久電流運転。しかし、高温超電導線材の超電導接
合はまだ原理検証レベルであった。今回、このグループは、レアアース系高温超電導線材の実用レベル
の超電導接合技術(iGSe接合)を実装コイルを初めて開発、939テスラの磁場中での永久電流運転を
実現。1時間あたりの磁場の変化率は10億分の1レベルと極めて安定で、これはコイルを冷やし続け
れば外部電源なしで10万年間も磁場が発生し続ける。この安定磁場の中でNMR信号の取得に成功す
る。これにより、定量NMRなどに応用で、小型で汎用性の高い永久電流のNMR装置の開発が可能にな
り、高磁場を保持した永久電流運転が可能となる。NM装置の磁場向上により、アルツハイマー病など
の神経変性疾患要因のアミロイドβペプチド構造情報解析術が飛躍的な進展など、創薬や医療応用へ期
待されている。

今回、共同研究グループは、レアアース系高温超電導線材1本で巻いた小型のNMR用内層コイルを製
作し、コイルから引き出した薄いテープ形状の線材を構造物の障害にならぬよう引き回し、コイルから
漏れる磁場が接合部の電気抵抗ゼロ特性に悪影響しない接合部の最適位置を導き出す。その上で、線材
の両端部を同じ線材で製作した永久電流スイッチの両端部と熱処理により超電導接合することで、永久
電流運転を可能となる。(上図参照)。


上図、2日間にわたるコイル中心磁場の時間変化を示す。計測時間全体にわたる磁場変化の平均値は、1時間
あたり10億分の1レベルである。

これらのコイルにそれぞれ外部電源から電流を流し、内層コイルの磁場が4メガヘルツ、外層コイルが
396メガヘルツを発生することで、合計400メガヘルツの磁場を達成しました。その後、永久電流
スイッチを動作させて、外部電源を切り離すことで、永久電流運転を開始しました。2日間にわたる磁
場の変動を計測したところ、1時間あたり10億分の1レベルという非常に高い安定度が得られ、磁場
の空間均一度を向上させNMR信号の取得に成功する。

Dec. 19, 2017

今回のNMR装置では、高温超電導線材の内層コイルの発生磁場は大きくないが、高温超電導線材の超
電導接合を用いたNMRの永久電流運転を初めて実証できた。今後、この技術を生かし、1300メガ
ヘルツ(30.5テスラ)の次世代超高磁場NMR装置の実現に取り組む方針。

 Nov. 7, 2018
【バイオ発電事業篇:世界初!発電するキノコ作製】
● プリンタで「発電するキノコ」を作り出すことに研究者が成功
米国の研究者は、3Dプリンターを使ってマッシュルームとバクテリアを組み合わせ『発電するキノコ』
を作り出すことに成功したことを公表。スティーブンス工科大学(Manu Mannoor教授)らの研究グルー
は、マッシュルームと光合成を行いエネルギーを作る細菌のシアノバクテリアを組み合わせ発電する機
構をアイデアで、3Dプリンタで生きているマッシュルームのかさの部分にさまざまな加工→グラフェン
に電気的特製を付与したグラフェンナノリボンインクで、木の枝のように分岐したパターンを3Dプリン
タてマッシュルームのかさを作製→シアノバクテリアを含むバイオインクを用いて、複数の点でグラフ
ェンナノリボンのインクと交差するようならせん状のパターン作製→その後マッシュルームに光を照ら
すとシアノバクテリアが光合成を始め→光化学的反応によって発生した「光電流」が細菌の表面から流
れ→グラフェンナノリボンの導電ネットワークを介して移動→マッシュルームのかさに付着したシアノ
バクテリアの光合成を促す→65ナノアンペアという微弱な電気を発生させることに成功する。

 Nov. 8, 2018

今回作ることができた電力はわずかなもので、実際に何かの電気機器を動かすようなことはできないが、
研究グループは大量の発電キノコを作り出して並べることで、やがてはLEDライトを点灯させることも
できる。また、3Dプリンタを用いた組み合わせにより、生きた発電機構を作り出すことを実証。現実の
自然には存在しない生物種の組み合わせ、革新的なバイオ構造を生み出すことができ、今後さらに多く
の発見につながる。シアノバクテリアはへ光合成に必要な水分を供給し、一般的な細菌の6倍の光電流
を取り出せ、シアノバクテリアは数日間長生きするメリットを確認。さまざまな微生物界を工学的に統
合することで合理的な生体共生の存在を探り、多くのメリットを得ることができるという。 

 ● 今夜の一曲

『Say Yes』 唄 チャゲ&飛鳥 Music Writer:CHAGE 飛鳥涼 青木せい子  
「SAY YES」(セイ・イエス)は、CHAGE&ASKAの27枚目のシングル。1991年7月24日に発
売。発売元はポニーキャニオン。デビュー12年目にして初のオリコンチャート1位とミリオンセラー
を達成、テレビドラマ『101回目のプロポーズ』と共に大ヒットする。日本国内のみならず、アジアでも
広く流行。デビューから12年11ヶ月で自身初の1位を獲得。発売10週目累計売上200万枚突破
13週連続でオリコン週間1位、この記録はオリコン歴代5位(平成に記録した中で最大)。小田和正
の「Oh! Yeah! / ラブ・ストーリーは突然に」に阻まれ2位にとどまる。累計売上で累計282.2万枚
を記録、作品(シングル&アルバム)中では最大売上を記録。

 余計な物など無いよね
 すべてが君と僕との愛の構えさ
 少しくらいの嘘やワガママも
 まるで僕をためすような
 恋人のフレイズになる
 このままふたりで 夢をそろえて
 何げなく暮らさないか
 愛には愛で感じ合おうよ
 硝子ケースに並ばないように
 何度も言うよ 残さず言うよ
 君があふれてる

 言葉は心を越えない
 とても伝えたがるけど
 心に勝てない 君に逢いたくて
 逢えなくて寂しい夜
 星の屋根に守られて
 恋人の切なさ知った
 このままふたりで 朝を迎えて
 いつまでも暮らさないか…

 愛には愛で感じ合おうよ
 恋の手触り消えないように
 何度も言うよ 君は確かに
 僕を愛してる

 

千マイルを光速で

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第73章 天網恢恢(かいかい) 疏(そ)にして失わず
積極的にふるまうことを固執すれば、結局は身を滅ぼす。消極的に身を守ることを固執すれば、
危賜を冒さずにすむ。だがいずれにしてもひとつの立場に固執する限り、正しいとはいえない。
絶えざる変化は宇宙の本質である。天の真意がいずれにあるかは、聖人といえども察知すべくも
な天道は、自己を主張せずして万物を統括し、命ぜずして万物を適応せしめ、招かずして万物を
おのずと帰一せしめ、作為によらずして秩序を形成する。天の網は網目が荒いが、何ひとつ取り
おとしはない。

天網恢恢 元来は本章に見るごとく、「自然の法則は万物に貫徹している」という意味だが、一
般には、悪には早晩しかるべき報いがくるということのたとえとして用いられている。「天網恢
恢、疎にして漏らさず」ともいう。

第74章 刑罰無用のこと 
悪政のもとで、人民が生きることに絶望してしまえば、刑罰は何の効果も持だない。善政のもと
で、人民が生を楽しみ死を恐れているなら、たま仁ま秩序を乱す看が出ようとも、処刑して見せ
しめにする必要もない。いずれにせよ、刑罰は無用である。天道こそ、いっさいの秩序の根元で
ある。「道」にはずれた行為には、かならず破局が待つ。天道に代わって人を罰するのは、大工
をまねて木を削るに等しい、しろうとが大工をまねれば、けがをするのがおちだ。

〈天道〉 原文は「司役者」。死をつかさどる者の意味。

  Nov. 8, 2018

 
”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
【エネルギー通貨制時代 16】  

 

   Mar. 3, 2017 

✪ ソーラータイル事業篇:水上太陽光は4年未満で百倍超拡大
世界銀行とシンガポール太陽光エネルギー研究所(SERIS)は10月30日、水上太陽光発電に関する
調査報告書を公表。2014年の末に世界中でわずか10MWの設備容量だった水上太陽光発電所が2018
年9月の時点では1.1GWと4年未満で100倍以上に拡大していることなどを明らかにした。水上太陽
光発電に関する市場調査は初めて。同報告書では、控えめな前提条件でも水上太陽光発電のポテ
ンシャルを世界全体で400GWと見積もる。この規模は、2017年末の時点におけるすべての太陽光
発電所の設備容量の総和に匹敵する。例えば、大規模水力発電所で貯水池の表面積のわずか3~
4%に水上太陽光発電を設置するだけでも発電所全体の容量を倍増できる可能性があり、日中の
太陽光による出力を活用することで水資源のより戦略的な活用が可能になる。このブログでオー
ルソーラーシステムとして調査研究されてきた課題でもあるが、いよいよ世界的な展開といsて
認知されてことになる。
 

また、多くの国において水上太陽光は都市や需要の大きい地域の近くでの発電を可能で、初期投
資費用は多少増加するものの、水によりパネルを冷却する効果があり発電効率が向上し、長い目
で見れば水上太陽光の投資対効果は従来の地上設置型の太陽光発電と比較しても遜色ない。



さらに貯水池などでは、水上に並べた太陽光パネルが、水の蒸発抑制や水質改善、ポンプの駆動
や灌漑用の電源などのために役立つ。現在、水上太陽光発電所の建設が相次いでいるのはアジア
であり、数十~数百MW級のメガソーラー(大規模太陽光発電所)が中国、インド、東南アジア
などで建設または計画されつつあると同報告書では分析している。 世銀でエネルギーおよびエ
クストラクティブズ担当上席ディレクター(Riccardo Puliti)は、水上太陽光発電技術は、土地資
源が貴重な地域や電力網インフラが弱い地域で絶大な威力を発揮する。各国の政府や投資家が水
上太陽光発電のメリットに気づき始めており、アジアに加え、アフリカや南米などのさまざまな
国々で関心が高まりつつあるようだと語る。


 

 No.21 
❦ 世界初、iPS由来の細胞を脳移植 パーキンソン病治験
 11月9日、京都大の研究グループは、ヒトのiPS細胞からつくった神経細胞を、パーキンソン
病の患者の脳に移植したと発表した。iPS細胞からつくった細胞を実際の患者に移植したのは
、国内では目の難病に続く二つ目で、脳への移植は世界で初めてとなる。移植手術は10月に実
施。患者は50代の男性で、術後の経過をみていたが、いまのところ手術による脳出血などの問
題は起きていないという。

今回は、公的医療保険を適用した治療にするための「治験」の手続きをふむ。理化学研究所など
が目の難病で進める臨床研究に比べ、より実用化に近い。治験として患者にiPS細胞からつく
った細胞が移植されたのも初めてとなる。京大iPS細胞研究所が保管している第三者のiPS
細胞からつくった神経細胞約240万個を、患者の頭部に開けた直径約1・2センチの穴から、
注射針で移植した。計画では、薬物治療で症状を十分にコントロールできない50~60代の患
者7人が対象。第三者の細胞をもとにしているため、拒絶反応を抑える目的で、1年間は免疫抑
制剤を使う。2年間、経過を観察し、安全性や有効性を調べる。



尚、パーキンソン病はドーパミンという物質をつくる脳内の神経細胞が減少し、手足の震えや体
が動きにくくなるといった症状が出る。厚生労働省の調査で国内に16万人の患者がいるとされ
る。 

 ● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.18   

 

    

第4章
「さて、君は昨夜の約束を守ってくれたかな。その優についての約束を?」
「はい、言われたとおりにしました」
「誰にも言わなかったな。君のやさしい叔母さんにも?」
「言っていません。みんなこれが鬼の噛み傷だと注って、それでぼくを憎みますけど、誰にも言
っていません」
「勝手に思わせておけ、若き同志。どうしてその傷がついたか、ほんとうのことを知られるより
十倍もいい」
「でも、一緒に来た叔父さん二人はどうなんですか。あの二人は却っていませんか」
「君の叔父さん二人は勇敢な人たちだが、気分が悪くなって鬼の巣には入らなかった。だから秘
密を守るのは、君とわたしのニ人だけだ。傷が治れば、もう妙なことを考える人もいなくなるし
な。できるだけ清潔にして、絶対に引っ掻くな。昼も夜もだ。わかったか」
「はいI

さっき、谷の斜面を上ってくる途中、エドウィンは立ち止まってブリトン人の老夫婦を待ちなが
ら、この優ができた前後のことを思い出そうとしてみた。点々と生えるヘザーの間に立ち、ウィ
スタンの雌馬の手綱を引きながら一所懸命考えたが、そのときはすべてがまだ曖昧膜瑚としてい
て、よく思い出せなかった。だが、楡の本に登り、枝の間に立って橋の小さな人影を見下ろして
いるいま、いろいろなことが心によみがえりつつあった。あの湿った空気と暗さ、小さな本の慟
にかぶせられた熊の毛皮のきついにおい、檻が揺れたとき頭や肩に落ちてくる小さな甲虫の感触
………檻が地面を引きずられていたことも、檻が飛び跳ねるたび体があちこちへと投げ出されそ
うになって、慌てて姿勢を変え、目の前の格子にしがみついたことも、その格子がぐらぐらして
いたことも思い出した。檻が急停止し、すべてがまた静まったときは、これから何か起こるかわ
かっていたこともだ。これから熊の毛皮が取り除かれ、檻に冷たい空気が流れ込み、近くの火の
明かりで夜の様子がうかがえる………なぜわかったかと言えば、その夜、同じことがもう二度起
こっていたからだ。その繰り返しの中で恐怖の感覚も少し鈍っていた。もっと思い出したことも
ある。鬼の放つ悪臭とか、檻の格子に体当たりを繰り返してきた小さくて凶暴な生き物とか……
あれを避けるため、できるだけ檻の後ろ側に下がっていなければならなかったことも。その生き
物はじつに動きがすばやくて、姿をはっきりとらえるのが難しかった。エドウィンの印象では若
い雄飛くらいの大きさで、形もそれに似ていたが、嘴はなく、羽根もなかった。

歯と鈎爪で攻撃し、攻撃中ずっと甲高く耳障りな声で鳴きつづけた。歯と鈎爪の攻撃は本の格子
で食い止められていたが、ときおり、何かの拍子で尻尾が格子を強く叩くことがあって、そんな
とき、エドウィンの目には格子が突然ずっと頼りないものに見えた。幸い、まだ子供らしく-と
エドウィンには思えた-自分の尻尾の威力には気づいていないようだった。

攻撃されているときは永遠にも等しく思えたが、いま思い返してみると、攻撃時間はさほど長く
なかったような気もする。むしろ、つないである紐ですぐに引き戻されていたのではなかったか。
そして熊の毛皮がどさりとかぶせられ、また真っ暗になり、檻が別の場所に引かれていき、エド
ウィンは格子にしがみつきつづけた。

その繰り返しが何度あったのだろう。二、三回ですんだのか。それとも十回とか、いや十二回ほ
どもあったのか。いや、実際にあったのは一回だけで、あんな状況ながらぼくは眠ってしまい、
残りは夢で見たのではなかろうか………

最後のときは熊の毛皮がなかなか取り除かれなかった。エドウィンは耳を澄ませて待ちつづけた。
例の生き物の鳴き声がときには遠く、ときには近くから聞こえた。鬼どうしが話をするときの、
うなるようなゴロゴロという音が聞こえた。これまでとは違う何かが起ころうとしている、と思
った。恐れに満ちたその予感のなかで、エドウィンは救助者の出現を願った。自分という存在の
根底から願った。ほとんど祈りと言ってよいものだったろう。その願いが心の中で一つの形にな
っていったとき、この願いがかなえられることをエドウィンは確信した。



檻が振動した。見ると、檻の前面が-あの生き物から身を守ってくれていた格子ともども-横に
引かれていくではないか。エドウィンは気づくと同時に身を縮め、後ろに下がったが、下がりき
らないうちに早くも熊の毛皮が引き剥がされ、あの斧猛な生き物が一直徐に飛びかかってきた。
檻の中で尻をついた状態では、できることなどあまりない。本能的に両足を持ち土げて蹴ろうと
したが、相手の動きがあまりにも速く、結局、拳と腕で振り払うのが精一杯だった。一度など完
全にやられたと思い、目を閉じたが、思い直してまた聞くと、ちょうど相手が伸び切った紐で引
き戻され、鈎爪で虚空を掻きむしりながら宙に停ましているのが見えた。相手の速さに翻弄され
つづけていたのに、この稀有の一瞬、エドウィンは相手の姿をはっきりと見た。そして、第一印
象がさほど間違っていなかったことを知った。確かに羽根をむしられた鶏によく似ている。

ただ、頭が鶏ではなく蛇だ。紐で攻撃を邪魔されたその生き物は、再度向かってきた。それをな
んとかしのいでいると、突然、檻の前面がまたもとに戻され、つづいて熊の毛皮がかぶせられて、
闇が戻った。小さな檻の中で丸まっているエドウィンが、左の脇腹に-肋骨のすぐ下あたりに-
ちくちくする痛みを感じ、同時に枯りつくような湿り気を感じたのは、そのあとのことだ。

エドウィンは楡の木のLで少し足の位置を変え、右手を下ろして、そっと傷口に触れてみた。も
う深い痛みはない。谷の斜面を上ってくるときは、シャツの粗い生地でこすれて、思わず顔をし
かめるようなときもあったが、こうやってじっとしていれば、ほとんど何も感じない。今朝、納
屋の戸口で戦士に見てもらったときでさえ、小さな穴がぽつぽつといくつかあいている程度の傷
になっていた。傷としてはごく浅い。これよりひどい怪我をしたことなど何度もある。なのに、
村人が鬼の噛み傷だと信じたぼかりに、こんな大騒ぎの原因になった。あの生き物にもっとうま
く立ち向かっていたら、怪我さえせずにすんだかもしれないのに、と思った。

だが、今回のことで自分に恥じることは何もないのをエドウィンは知っていた。恐ろしさのあま
り叫んだこともないし、鬼に命乞いをしたこともない。あの小さな生き物の最初の突進には不意
をつかれたが、そのあとは真正面から立ち向かった。しかも、あの生き物がまだ子供だと気づく
だけの心の余裕があって、ならば人間が行儀の悪い犬にやるように、相手に恐怖心を叩き込んで
士気をくじくこともできるはずだ、と判断した。だから、じっと目を見開き、相手をにらみつけ、
恐れ入らせようとしながら、こういうぼくなら母もきっと自慢に思ってくれるだろうと思いつづ
けた。しかも、あれは無駄な行為ではなかったはずだ。いま思うと、最初の奇襲のあと、あの生
き物の攻撃には鋭さが欠けていたように思う。戦いの主導権はしだいにぼくの手に移りつつあっ
た………あの生き物が鈎爪で虚空をつかんでいる瞬間を、エドウィンはまた心に描いてみた。

あれは戦いつづけたいという闘争心の表れではなく、伸び切った紐に首を絞められ、ただパニッ
クになっていただけではなかろうか。うん、ありうる。というより、鬼はあの時点で戦いの勝者
をぼくと判定し、だから急いで終わらせたのではなかろうか………

「君を見ていたぞ、少年」と老ステッフアは言った。
「君にはたぐいまれな何かがある。いずれ誰かに出会い、戦士の魂にふさわしい技を敦えてもら
える日が来るだろう。そのとき、君は誰もが恐れる男となる。狼が何匹か村に入ってきたくらい
で、納屋に隠れて好きなようにさせる男にはならん」

それがいま実現されつつある。戦士はエドウィンを選んだ。二人は一緒に使命を果たしに行く。
だが、その使命とは何だろう。ウィスタンははっきり話してくれていない。ただ、遠い沼沢地に
いる王が、この瞬間にも、その使の結末を待っているとしか言わない。それに、なぜブリトン人
の老夫婦と一緒に旅をするのだろう。道が曲がるたびに休みたがるような二人と………

エドウィンは老夫婦をじっと見下ろした。二人はいま戦士と何事か真剣な顔で話し合っている。さすがの
老婦人も、エドウィンを呼び下ろすことはあきらめたようだ。三人で二本の松の大木の後ろに隠れ、橋の
上の兵隊を見ている。本の上にいるエドウィンには、騎手がまた馬上に戻り、何やら身振り手振りを交え
て言っているのが見える。三人の兵隊は納得したのか、馬から離れていく。騎手が馬の鼻面の向きを変
え、橋を下りて、全速力で山を下っていく。

これまで山の本道を極力避け、谷の急斜面に聞かれた切通しばかりをたどってきたのが、エドウ
ィンには不思議でしかたがなかった。だが、いまはわかる。ああいう騎手とできるだけ出会いた
くなかったからだ。でも、これからどうするのだろう。旅をつづけるには本道に出て、滝の前を
通るあの橋を行くしか方法がない。なのに兵隊は橋から動いてくれない。下のウィスタンの位置
からは、騎手がもう去ったことが見えただろうか………エドウィンはそのことをウィスタンに伝
えたいと思った。だが、木の上から大声を出すのはまずい。兵隊が聞きつけないともかぎらない。

やはり木を下りて、ウィスタンのところまで行くしかない。仮に相手が四人だと思って直接対決
をためらっていたのなら、橋に三人しかいなくなったいま、戦士の考えが変わるかもしれない。
最初からエドウィンと戦士の二人だけなら、もうとうに兵隊のいる橋に出て、なんとかしていた
ところだろうが、実際にはあの老夫婦がいる。ウィスタンはあの二人のために慎重になっている
に違いない。ウィスタンなりの事情があって連れてきたのだろうし、あの二人はエドウィンに親
切にしてくれている。だが、やはりいらいらする同行者ではある。

エドウィンはまた叔母の醜く歪んだ顔を思い出した。叔母は金切り声をあげてエドウィンに毒づ
こうとした。だが、そんなことはもうどうでもいい。エドウィンは戦士と一緒にいて、母と同じ
ように旅をしている。途中で母に出会うことだってないとは言えない。出会えたら、戦士と並ん
でいるエドウィンを見て、母は自慢に思ってくれるだろう。そして、母と一緒にいる男たちは震
え上がるだろう..
                         カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

次回は第5章へ
 
                                    この項つづく 

 ● 今夜の一枚

仏像の中からミニ仏像 彦根の宗安寺、伝承「本当だった」

11月9日、庚申尊の本体は、今回見つかった大日如来像。台座に丁寧な金箔(きんぱく)が施
され保存状態は良好だった。寄木造の仏像の中に仏像や経典を入れる行為は、鎌倉時代から見ら
れるが、意味や目的は詳しく分かっていない。もともと、庚申尊の背中部分に像と経典を奉納し
たことは記され、寺でも胎内仏の存在は把握していたが、誰も中を見たことがなく、本当に入っ
ているかどうかは半信半疑だったという。と竹内真道住職(64)。修復に伴い、檀家からも中
身を確かめてほしいと声が上がり、内部を確認。庚申尊の背部には、縦二十センチ、横十二セン
チの長方形にくりぬき、のり付けしたような痕跡があった。その部分をはがすと、中に隙間を埋
める綿がぎっしりと詰められ、紙に何重にもくるまれた大日如来像と経典が出てきた。竹内住職
は「本当に入ってたんや」と安心。経典には「天下泰平」や「万民豊楽」といった願いが書かれ
ていた。修復を終えた庚申尊が寺に戻ったのは十月中旬。そのまま、秘仏の姿を模して作られた
「前立仏」の背後の棚に収められ、現在は見ることができない。二十三日には、大日如来像経典
とともに公開。竹内住職は、かつては民間で信仰されてきた仏様なので、広く市民にも手を合わ
せに来てほしい。と語る(中日新聞滋賀版 2018.11.09)。
※ 菩提寺


 ● 今夜の一曲

"A Thousand Miles"   Song ; Venessa Carlton  Music Writer ; Venessa Carlton 

この曲はは、米国のポップ歌手、Vanessa Carlton(Born Aug. 16, 1960~)自身より書かれたデビュ
ーシングル。Curtis SchweitzerとRon Fairにより制作される。彼女のアルバム「Be Not Nobody
(2002年)」からシングルカット。彼女は米国ペンシルベニア州ミルフォード出身のピアニスト
でシンガーソングライタ。パイロットの父親とピアノ教師の母親との間に生まれ。ロシア系ユダ
ヤ人と北欧系のハーフ。幼い頃から音楽に興味を持ち、ディズニーランドから帰った時にわずか
2歳で「It's a Small World」をピアノで弾いたエピソードを持つ。14才でニューヨークのバレ
エ学校に入学、卒業後は音楽の世界へ飛び込んだ。コロンビア大学在学中はマンハッタンでウェ
イトレスをし、アヴリル・ラヴィーンらを手がける音楽プロデューサーPeter Zizzoと出会い、
A&Mレコードと契約。2002年にアルバム『Be Not Nobody』でデビュー。Billboard 200アルバム・
チャートで5位、アルバムからの最初のシングル「A Thousand Miles」も自身最高5位を記録。
他オーストラリアで1位、イギリスで6位、その他ヨーロッパ各国でトップ10入りしている。

Making my way downtown walking fast
Faces pass and I'm home bound
Staring blankly ahead just making my way
Making a way through the crowd

And I need you
And I miss you
And now I wonder

If I could fall into the sky
Do you think time would pass me by?
'Cause you know I'd walk a thousand miles
If I could just see you tonight

It's always times like these when I think of you
And I wonder if you ever think of me
'Cause everything's so wrong and I don't belong
Living in your precious memories ....

 

● 今夜の寸評:高齢で千マイルを光速で駈ける

光陰矢のごとし少年老いやすく学なり難し、あるいは加齢とともに時の移ろいは加速するとは聞き慣れ
た言葉だが、それを実感している。それに加え、彼女が体調不良を訴え、料理をつくってもうらおうか
と弱気だ。調査研究作業に加え、メトフルトリンによる白蟻もテスト中、マイホーム・マイカーのDI
Y課題も山積している中、男子厨房に入る準備が加わり(これは自信があるが?)、想定以上に忙しい。

 

真向ひに寒オリオン

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第75章 為政者の悪
人民の生活が苦しいのは、為政者が租税を取りすぎるからだ。これでは、生活できるはずがない。
人民が反抗するのは、為政者が強制手段に出るからだ。これでは、服従するはずがない。
人民が生命を大切にしないのは、為政者が欲望をそそりたてるからだ。これでは、長生きできるは
ずがない。
人民を愛する政治とは、作為せず自然にまかせる政治のことである。

民の死を軽んずるは、上の生を求むることの厚きゆえなり まさに現代の社会悪を射抜いたとも
いうべき痛烈な批判である。「人民を無欲ならしめよ」(3章)という主張は、一見愚民化政策の
感をあたえるかも知れぬが、その実、人間の生命を愛惜してやまぬヒューマニティの発露だったの
である。

第76章 「兵強ければ滅び、木強ければ折る」
人の体は生きている問は柔らかい。だが、死ねば堅くこわばる。草本は生きている間は柔らかい。
だが、死ねば堅く・ひからびる。堅く強いものは、死のともがらだ。柔らかく弱いものは、生のと
もがらだ。武力を誇る者は滅び、堅い木は折れるではないか。
弱小は強大に勝つ。これが自然の法則である。 

 Nov. 6, 2018 
”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 

【エネルギー通貨制時代 17】    

   Mar. 3, 2017 



【蓄電池篇:40年のエネルギー貯蔵システム投資1兆2千ドル】
11月6日、Bloomberg New Energy Finance (BNEF)は、世界のエネルギー貯蔵市場が、40
年までに累積942GW / 2,857GWhに増加し、今後22年間に1兆2千億ドルの投資が見込まれると
報告した。それによると、❶40年には全世界の設置電力容量の7%に相当するところまでエネル
ギー貯蔵量が増加。❷中国、米国、インド、日本、ドイツ、フランス、オーストラリア、韓国、英
国が主要国となり、❸これらの9つの市場は、40年までに設置容量の2/3に相当。近い将来、韓
国は市場を支配し、20年代初頭には米国が追い越されるが、20年代~40年代は中国支配する
と予測。残念ながら日本は停滞した格好に。

 【風力発電篇:極寒冷地仕様風力発電機実証運転スタート】
11月8日、NEDOは、ロシア極東に極寒冷地仕様の風力発電機3基を完成させ、風力発電システム
の実証運転を開始したことを公表。本実証事業は、北極圏に位置し、ロシア極東でも特に寒冷な地
域、サハ共和国内のティクシ市で実施する。それによると、今後、風力発電システムに加え、ディ
ーゼル発電機、蓄電池などを組み合わせて、極寒冷地に適応した電力系統の安定化を実現するエネ
ルギーマネジメントシステム「ポーラーマイクログリッドシステム(Polar Microgrid System)」を
構築。その後19年12月から低コストで安定的なエネルギー供給の本格的な実証を行う予定。

ロシア極東地域は、大規模な電力系でなく、ディーゼル発電機依存する独立系統地域が多数存在。
これら地域では、燃料輸送コストのために、発電単価が極めて高い状況となっており。ロシア極東
地域の地方政府は、電力価格を電力系統に接続地域との同等補完措置のため財政負担を強いられ、
また、ディーゼル発電機の老朽化によるエネルギー安定供給が危ぶまれていた。このような背景の
もと、今年2月27日にモスクワ市で、サハ共和国政府およびロシア国営電力会社ルスギドロとの
間で、風力発電システムを含むエネルギーインフラ実証事業に関する協力覚書(MOC)を締結。実
証地のサハ共和国のティクシ市は、北極圏に位置し、ロシア極東でも特に寒冷な地域であり、独立
系統地域。

尚、極寒冷な気候に適した運転制御システム仕様はは、マイナス30℃以下での運転を可能とし、
300キロワットの風力発電機3基をサハ共和国のティクシ市内に設置。それにしても、厳寒のロ
シアの風力発電のノウハウがどれほどのものか見届けたい思いが強くなる。


【オールバイオマスシステム事業:木質ペレットを貯蔵サイロに「空気」で搬送】

11月9日、特装車製造やリサイクル施設施工などを手掛ける極東開発工業は、空気を用いて木質
ペレットを搬送するエア搬送ユニット「JETCUBE(ジェットキューブ)」を開発したことを公表。
高所作業が不要になり作業者の負担を大幅に軽減できる(11月13日に発売)。それによると、バイ
オマス燃料に利用される木質ペレットでの輸送および貯蔵用サイトへの搬送には、従来、木質ペレ
ットを詰めたフレキシブルコンテナバッグをクレーンでサイロ上部に運んで荷ほどき作業を行う必
要があり、危険な高所作業を伴うほか、非効率な点が課題になっていた。

 

今回開発したジェットキューブは、地上からサイロ上部の搬入口まで木質ペレットをエア搬送する。
粉粒体搬送車で培ったエア搬送のノウハウを活用した。木質ペレット1tあたり約11分で供給可能
で作業者の負担を大幅に軽減できる。ユニットサイズは一般的なパレット1枚分の大きさで、トラ
ックのデッキに搭載しても木質ペレット配送用のフレキシブルコンテナバッグや資材を十分に積み
込めるほか、定置式としても利用できる。また、既存のトラッククレーンとフレキシブルコンテナ
バッグをそのまま利用できる。ジェットキューブ本体の希望小売価格は300万円(税別)。ホース類
や排気ダクト、排気ブロワー、バグフィルターなどのシステム付属品は参考価格50万円。販売目標
は年間30台。

 

  ● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.19    

    

第5章
一行は朝の多くをきつい上りに費やした。だが、流れの速い川に行く手をさえぎられ、しかたなく、
びっしりと木が生えそろった森の中を少し下って、本道を探すことにした。本道を行けば、きっと
橋があって、川を渡れるだろうと思った。
そのとおり橋はあったが、そこには兵隊がいた。ただ、一見したところ、橋の監視に遣わされた兵
隊ではなく、馬を休ませて、ついでに自分たちも滝の前でのんびりしているだけのように見えた。
これならきっとすぐに立ち去るだろうと予想し、一行は松林で一休みしながら待つことにした。だ
が、もうかなりの時間が経つのに、兵隊は一向に動く気配を見せない。代わりばんこに腹ばいにな
り、橋から手を伸ばして川の水をばしやばしやはね飛ばしてみたり、橋の上に腰をおろし、木の手
すりに背中をもたせかけて、さいころ遊びを始めたりした。そこへさらに四人目が馬でやってきた。

慌てて立ち上がった三人になにやら指示を与えて、また去っていった,

木の上のエドウィンほどではないにせよ、木の背後から様子をうかがうアクセルとベアトリスと戦
士にも、橋の上で起こっていることはよく見えた。馬で乗りつけた四人目がまた去っていくのを見
て、さてどうしたものかと顔を見合わせた。

「ずっといつづけるのかもしれませんね」とウィスタンが言った。「だが、お二人は修道院に急い
でおられる」
「できれば日暮れまでには」とアクセルが言った。「あのあたりには雌竜のクエリグが徘徊すると
聞きます。賠くなって出歩くのは愚か者だけだ、とも。あれはどんな兵士たちだとお考えになりま
すか、戦士殿」
「ここからではよくわかりません、ご老人。この上地の服装についてはまるで無知なもので。たぶ
んブリトン人だと思いますから、ブレヌス卿の兵隊でしょうか。むしろ、奥様の考えをお聞きした
い」

「老いた目には遠すぎて……」とベアトリスが片った。

「でも、たぶんそうでしょう、ウィスタン
様。ブレヌス聯の兵隊がああいう黒っぽい制服を着ているのをよく見かけましたから」
「とすると別に隠すようなこともないか」とアクセルが言った。一説明すれば、すぐ通してくれる
のではないかな」
「できれば日暮れまでには」とアクセルが言った。「あのあたりには雌竜のクエリグが徘徊すると
開きます。賠くなって出歩くのは愚か者だけだ、とも。あれはどんな兵士たちだとお考えになりま
すか、戦士殿」
「ここからではよくわかりません、ご老人。この上地の服装についてはまるで無知なもので。たぶ
んブリトン人だと思いますから、ブレヌス郷の兵隊でしょうか。むしろ、奥様の考えをお開きした
い」

「老いた目には遠すぎて……」とベアトリスが言った。

「でも、たぶんそうでしょう、ウィスタン様。ブレヌス卿の兵隊がああいう黒っぽい制服を着てい
るのをよく見かけましたから」
「とすると別に隠すようなこともないか」とアクセルが言った。

「説明すれば、すぐ通してくれるのではないかな」
「そうだとは思いますが……」

戦士はそう言って、橋を見下ろしながらしばらく考えていた。
橋の上では兵隊がまたすわり込み、さいころ遊びを再開していた。「そうではあっても、兵隊の目
の前を通って橋を渡るのであれぼ、せめてこうさせてください、アクセル殿」と戦士はつづけた。

「あなたと奥様が先に立って、男たちをうまく丸め込んでください。少年が馬を引いておニ人につ
づきます。わたしは少年の横を行きます-こうやって、口をだらしなく開け、目は落ち着きなくき
ょろきょろと。あれは唖者で白痴だ、と兵隊には言ってください。わたしと少年は兄弟で、借金の
かたにお二人に貸し与えられたということでどうでしょう。剣とベルトは馬の荷物の底に隠してお
きますが、もし見つかったら、あなたの剣だと言ってください」

「そのお芝居、ほんとうに必要でしょうか、ウィスタン様」とベアトリスが言った。

「兵隊ですから態度が荒っぽかったりしますけど、これまでは出くわしてもとくに何事もありませ
んでしたよ」
「なるほど、奥様。しかし、武器を持って、指揮官から遠く離れている兵隊というものは油断でき
ません。そのうえ、わたしは異国の人間ですから、からかうには恰好の相手に見えるかもしれませ
ん。少年を呼び下ろして、いまの方法でいきましょう」

                      *

一行は、橋から少し離れたところで森から出た。兵士たちが目ざとく見つけ、立ち上がった。

「それではだめです、ウィスタン様」とベアトリスがそっと言った。「いくら間抜け面をよそおっ
ていても、いまのあなたは、一目見るだけでやはり戦士です」
「大根役者はわかっていましたが:・・:。奥様、ご助言を。何をどうすればもっとうまくできま
すか」
「まず歩き方です」とベアトリスが言った。「いまのままでは間違いなく戦士です。もっとちょ
こちょこと。そして、つまずいて転びそうになる感じで、ときどき大きな一歩を」
「ははあ、なるほど。いいご助言をどうも、奥様。では、唖者のわたしはもうしゃべりません。ア
クセル殿、あとはよろしく。うまく切り抜けてください」

水が岩を流れ落ち、一行を待ち受ける三人の兵士の下を流れていく。橋に近づくにつれ、その水音
が強くなってきて、アクセルはそこに何か不吉なものを感じた。苔むした地面に馬の足音が響く。
それを背後に聞きながら先頭を進み、兵士らまで声が届く距離に来たとき、足を止めた。

兵士たちけ鎖帷子も着ず、兜もかぶっていなかったが、全員が同じ黒っぼいチュニックを着て、右
肩から左の腰へ革綴を下げていた。そこに剣を吊るしていろとあれば、身分は疑いようがない。い
まのところ剣は鞘に収まったままだが、一行の前に立ちはだかる二人は柄に手を置いている。その
うちの一人は背が低く、大くて、筋肉質。もう一人は年齢がエドウィンとさほど変わらないような
若者で、やはり小柄だ。どちらも髪を短く刈り込んでいる。その二人とは対照的に、三人目の兵士
は背が高い。髪は灰色で、肩まで届く長さがあるが、頭にぐるりと巻いた綴で後ろにまとめられて
いて、手入れも行き届いている。ほかの二人とは外見が違うし、見るからに態度が違う。背の低い
二人人は橋の通行を止めようと身を硬くして立っているが、長身の兵士は数歩後ろにひかえ、のん
びりと柱に体を預けて、胸の前で腕を組んでいる。

まるで、夜、焚き大の前にすわって、そこで交わされる話を聞いている者の風情だ。
ずんぐりした兵士が一歩前に踏み出した。アクセルがその兵士に向かって話しかけた。

「ご苦労様です、兵隊さん。怪しい者ではありません。どうぞ通してください」

ずんぐりした兵士は何も答えなかったが、一瞬、顔に迷いの色が浮かんだ。パニックと侮蔑の混在
する表情でアクセルをにらみつけると、助けを求めるように後ろの若い兵士を見やった。だが、と
くにいい知恵がもらえそうにないと見て、視線をアクセルに戻した。
どうやら勘違いしているらしい、とアクセルは思った。この兵隊たちが待ち受けていたのは誰か別
人だ。だが、間違えていることにまだ気づいていない………そこで、「わたしたちはただの農夫で
す、兵隊さん」と言った。一息子の村へ向かう途中です」

ずんぐりした兵士は気を取り直し、むやみに大きな声でアクセルに言った。

「同行の者は何者だ、百姓。見たところ、サクソン人ではないのか」
「わたしたちが預かることになった兄弟です。これから仕事を仕込んで、役に立ってもらわねばな
りませんが、ご覧のとおり一人はまだ子供。もう一人はおつむに難のある唖者とあって、仕込み甲
斐となると、なんとも・・・・・・・・」

アクセルがそう言ったとき、長身で灰色の髪の兵士が、突然、寄りかかっていた柱から体を隨した。
何かを思い出したかのように、首をかしげてじっと考えている。一方、ずんぐりした兵士は、怒り
の表情でアクセルとベアトリスの背後を見ていたが、剣の柄に手を置いたまま二人のわきをすり抜
け、後ろの二人に近づいた。エドウィンは馬の手綱を持ち、近づいてくる兵士を無表情で見ていた。
ウィスタンは目をきょろつかせ、だらしなく口を開けて、けたけたと笑っていた。

兵士は何か手掛かりでも探すように、二人を交互に見ていた。そして、ついにいらいらに堪えきれ
なくなったのか、ウィスタンの髪をつかみ、怒りにまかせて引っ張った。

「髪も切ってもらえないのか、サクソン人」戦士の耳元でそう怒鳴ると、もうI度引っ張った。引
き倒すか、せめてひざまずかせたいという勢いだったが、ウィスタンはよろめきはしたものの倒れ
ず、代わりに哀れっぽい悲鳴をあげた。
「しやべれないんです、兵隊さん」とベアトリスが言った。「ご覧のとおりばかな子で、少しくら
い手荒く扱われても気にしませんけど、順順を起こすと手に負えなくなります」

ベアトリスがしやべっているとき、どこかで何かが動いたような気がした。アクセルは振り返り、
橋の上の兵士たちを見た。背の高い灰色の髪の男が腕を持ち上げていた。五本の指で何かを指し示
す形を作りかけ、寸前でその気をなくしたのか、結局は無意味な手の動きで終えて、最後には腕そ
のものを下ろした。だが、男の目は不承知の色をたたえ、同僚の兵士をじっと見ていた。アクセル
はその様子を見て、灰色の髪の男の気持ちがわかった。既視感があり、男の気持ちの動きが読めた
と思った。あの男は腹を立て、たしなめようとしたのだろう。言葉が口から出かかったが、直前、
ずんぐりした同原に指図する立場にないことを思い出した………かつてどこかで自分も同じような
経験をしている、とアクセルは思った。だが、その思いを強引に払いのけ、なだめる口調で言った。

「お仕事で忙しいみなさんをお騒がせして申し訳ありません。ここを通していただければ、すぐに
この目障りな姿を消しますので」

だが、ずんぐりした兵士はまだウィスタンを痛めつけていた。

「おれに向かって癩廂など起こしてみろ。どんなことになるか思い知らせてやる」と怒鳴った。

兵士はようやくウィスタンを放し、また橋の上の持ち場に戻っていった。何も言わず、怒りながら
も、その怒りの原因をすっかり忘れてしまったように見えた。 張り詰めた空気が、流れ落ちる水
の音でさらに張り詰めたものになった。ここで回れ右をし、全員で森の中に退散したら、丘ハ隊た
ちはどう反応するだろうか、とアクセルは思った。そのとき、灰色の髪の兵士が他の二人の横に並
んで、初めて口をきいた。

「この橋は板が何吹か壊れていてね、おじさん。おれたちがここに立っているのは、たぶん、あん
たら善良な通行人に注意するためだと思う。気をつけて渡らないと、流れに落ちて山腹をまっさか
さまだぞ、とねI
「どうもご親切に、兵隊さん。では、注意して渡ります」
「さっきから見ていると、あんたのその馬、歩き方がおかしいようだ、おじさん」
 蹄を一つ傷めておりまして、ひどくないことを願っています。ですから、ご覧のとおり、人は乗
せません」

「橋の板が水しぶきで腐っていて、危険だからここで見張っている。ただ、そこにいる同僚はもっ
と重大な任務でここにいるはずだと言ってきかない。そこでお尋ねするんだが、おじさんと奥さん、
ここへ来る途中で怪しい者を見かけなかったかい」
「わたしたちもこの辺は初めてなんですよ、兵隊さん」とベアトリスが言った。「ちょっと見ただ
けで怪しいかどうかなどわかりませんけど、この二日間、とくに変わったことはありませんてした」

ベアトリスを見て、灰色の髪の兵士の目が和み、笑ったように見えた。

「女の足で、しかもお年なのに、息子さんの付まで長い道のりを歩くのはたいへんだね、奥さん。
道中、どんな危険にさらされるかわかったもんじやないのに。いっそ息子さんと一緒に暮らして、
毎日、苦労がないように面倒を見てもらったほうがいいんじやないかな」
 一そうできれば、とは思いますよ、兵隊さん。自乙子に会ったら、夫とわたしで話してみます。
でもね、最後に会ってからずいぶん経ちますし、すんなり受け入れてもらえるものかどう
か……」

灰色の髪の兵士はベアトリスにやさしい目を向けつづけ、

「それは取り越し苦労かもしれないよ、奥さん」と言った。「おれも両親とは遠く離れていて、ず
いぶん長く会ってないな。一度や二度、激しい言葉のやり取りだってあったかもしれない。けど、
もし明日、両親がお二入みたいに長い道のりを歩いて訪ねてきたら、おれはきっと飛び上がるほど
に嬉しいと思うな。お二人の息子さんがどんな男か知らないが、奥さん、きっとおれと同じだと思
うよ。賭けてもいい。お二人を見た瞬間、喜びの涙を流すんじやないかな」
「兵隊さんは親切な方ですね一とベアトリスがI.一眉った。「きっとそうでしょう。夫ともいつ
もそう言っているんですけど、人様から、それもご自分でも家から遠く離れている方からそう言っ
ていただけると、安心します」
「よい旅を、奥さん。万一、反対方向からおれの両親が来るのに出会ったら、やさしく声をかけて
やってください。何も心配せずそのまま進め、と。がっかりする旅にはならないから、と」灰色の
髪の兵士はそう言って、わきによけ、一行に道をあけた。

「危ない板があることを忘れずに、おじさん。馬は自分で引いていったほうがいいよ。子供やその
男には無埋だと思うから」

ずんぐりした兵士は不満そうに見ていたが、仲間がかもす自然の威圧感には逆らえないようだった。
くるりと全員に背を向けると、ふてくされた様子で手すりから身を乗り出し、水面を見ていた。少
年のような兵士はしばらくためらっていたが、灰色の髪の男の横に立った。アクセルがもう一度礼
を言うと、二人して礼儀正しくうなずいた。アクセルは馬を引き、下が見えないようその目を覆い
ながら橋を渡った。

                         カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

黄色い太陽と深い霧の"古代イングランドに迷い込み言葉の迷路を彷徨っている。あきらめず彷徨す
るしかないか、ここは。"
                                      この項つづく 

   Feb. 8, 2018

● バラの香り成分に抗うつ効果確認

バラの主要な香り成分「フェニルエタノール」に抗うつ効果があることを、川崎医療福祉大医療技
術学部の上野浩司講師(神経生理学)らの研究グループが突き止めた。フェニルエタノールを吸わ
せたマウスは、ストレス環境下でうつのような状態になりにくいことを確認。精神疾患の新しい薬
や治療法の開発につながる成果として期待される。
これまでにもバラの香りが人間のストレスホルモンの分泌を抑える働きを示す研究成果が報告され
ているが、上野講師によると、どの成分が作用しているかは明らかになっていないため、グループ
は香水や化粧品などに使われるフェニルエタノールに着目し効果を確かめた。
 
実験では、密閉空間で15分間フェニルエタノールを吸わせたマウスと、何もしていないマウスの
しっぽをそれぞれテープで固定し、逆さづりのような状態にして10分間放置。うつ傾向を示す行
動で、あがくのをやめて動かなくなる「無動時間」の長さを調べた。10匹ずつ計20匹を比較し
たところ、通常のマウスは動かなくなる時間が平均して約8分間あったのに対し、フェニルエタノ
ールを吸わせたマウスは2分~1分半短かった。ループは「フェニルエタノールがストレスを緩和
させ、抗うつ作用を発揮することを示した実験結果」と分析している。

 Wikipedia

 研究は、川崎医科大精神科学教室などの協力を得て4月から実施。成果は8日、仏科学雑誌電子版
に掲載された。 上野講師は「メントールやかんきつ類の果皮に含まれるリモネンなど、バラ以外
の香り成分についても、精神状態にどう影響を及ぼすか調べたい」と話している(山陽新聞 2018.
11.09)。

   真向ひに寒オリオンや湖の闇

 ● 今夜の一曲

『オリオンの炎』 唄 徳永英明 Music Writer:徳永英明

 雄もが皆この地球に生まれて来て
 同じ道を歩仁ことが運命ならば

 君と僕は何故あんなに悲しんで
 違う道を選び別れたのだろう

 果てしないこの空に

 とうにもならない現実を叫んでも…
 あの才りオンに君と肩寄せ合い

 叶えると君に誓ったはずさ…あの日
 昔ならばもうこの場で諦めて
 逃げるように僕は帰っただろう

 枯れる程涙して

 


湖底よりひびく散紅葉

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第77章 「余りあるを損して、足らざるを補う」
天道のはたらきは、あたかも弓に弦を張る動作に似ている。弓に弦を張るには、上端を引き下げ、
下端を引き上げ、長い方(弓)をちぢめ、短い方(弦)をひっぱる。天道はこのように、あり余
るものを誠らし、足らぬものを補う。
だが、人の世の道は、まったく逆だ。足らぬ者からしぼり取っては、あり余る者に貢いでいる。
わが身にあり余るものを万民に座す。それは、「道」を体得した者でなくては、できないことだ。
聖人は、万民に施しながらも、そのはたらきを誇らず、その成果にも無心である。聖人には、能
力をひけらかす意志がないのである。

第78章 弱は強に勝つ
およそ何が柔らかい、弱いといっても、水ほど柔らかく弱いものはない。そのくせ、堅く強いも
のにうち勝つこと、水にまさるものはない。これは、水が弱さに徹底しているからだ。弱は強
に勝ち、柔は剛を制する。この道理はだれしも知っている。しかし実行できずにいる。聖人はい
った。「一国の恥をわが身に負う者が、一国の宗主である。天下の不幸をわが身に負う者が、天
下の王である」真理は往々にして、常識からは背理と見られるものだ。

湖底からひびく声あり散り紅葉  吉弘恭子

Voice floating from the bottom of the lake Scattered autumn leaves. 

● 大谷翔平 MLBで新人王の名誉

  Nov. 12, 2018

12日、エンゼルスの大谷翔平投手がア・リーグの最優秀新人(新人王)に選出され、日本選手では、野
茂英雄投手、佐々木主浩投手、イチロー外野手以来、17年ぶり4人目の名誉。

 天王のアカガシ

【樹木トレッキング:アカガシ】
アカガシ(赤樫、学名:Quercus acuta)はブナ科コナラ属の常緑広葉樹。シノニムCyclobalanopsis
acuta。別名、オオガシ(大樫)、オオバガシ(大葉樫)。 葉は、楕円形で基部は広いくさび形、
鋭尖頭鈍端、鋸歯はなく、時に波状縁となる。葉は表は深緑、裏面はやや薄い色となる。他のカ
シ類に比べ、扁平で厚みがある葉が特徴。やや山地、暖帯上部に多い。森林内では大木になる。
雌雄同株で花期は5、6月頃、雄花序は垂れ下がった形で黄褐色の雄花を多数つけ、雌花序は葉
腋に直立し5、6個の雌花をつける。材は堅くて器具、車輛、船舶、機械、枕木、木刀などに使
われ、1978年、古市古墳群の一つである三ツ塚古墳からは、アカガシを使った修羅が発掘され話
題となる。 和名は、材が赤いことから付けられた。(Wikipedia)
このように、アカガシ、アラカシ、シラカシ、イチイガシ、ウラジロガシなどのブナ科ナラ属の
常緑高木の総称、。カシは堅から。関西ではアラカシが多いことから、歌に詠まれたのはアラカ
シと考えられている。

Quercus acuta
 赤樫 

  ● 今夜の一品

☑ ワイヤレス骨伝導イヤホンスマートハット
ZEROiは、Bluetooth骨伝導イヤホンを内蔵した帽子。耳をオープンにすることにより、圧迫感
や閉鎖感を排除。周りの音を聞き取りながら、安全に野外活動ができるウェアラブルデバイス。
イヤホンを着用したまま道を歩いたり、ジョギングをしたり、自転車に乗ったりしていると、周
りの音を聞くことができないため危険です。一方、ZEROiは耳をふさがないので、周囲の音が聞
こえる状態で、安全に音楽を聴いたり通話したりすることがでる。また、イヤホンを耳に差込む
ことによる圧迫感や閉鎖感、夏場に>耳の中に汗が溜まることによって起こる不快感、痛みとい
ったトラブルもないため、 イヤホンによって起こり得る耳の中の病気も予防可能。長時間のイ
ヤホンの使用による難聴のリスクを低減するだけでなく、中高年層の聴覚保護及び老化による聴
力の低下をZEROiによって補完する。また、市販されているものの多くは2つの骨伝導ドライバー
を採用していらが、ZEROiは、4つの骨伝導ドライバーを取り入れている。これによりクリアな
通話はもちろん、音楽鑑賞用としても通常のイヤホンと遜色のない音質を実現。


 

さらに、音漏れを防止するには、骨伝導ドライバーの周囲に空間が必要。帽子の内側に音を吸収
するためのスペースを確保。柔らかい特殊布素材を使用し、音が外に漏れるのを最大限に減らせ
るように設計。音漏れ防止は、骨伝導ドライバーの周囲に空間が必要。そこで帽子の内側に音を
吸収スペースを確保。柔らかい特殊布素材を使用し、音が外に漏れを最大限に減らすことができ
る。また、Bluetoothで接続で、有線ケーブルの煩わしさがなく、Bluetooth接続されるデバイスな
ら、スマートフォン(iPhone、Android)、タブレットなどいかなる機器とも接続。誤動作の予防
や、操作の手間をなくすボタンひとつでオン、オフ、電話の切り替えできる。ショッピングや読
書中、運動中などに電話が来ても、ボタンをワンプッシュでハンズフリー通話可能。また、高性
能マイクを内蔵し、クリアな音声で通話ができ、雨でも使用できるようにIP55レベルの防水機能
を備え、フル充電で、最大5時間の音楽視聴でき、スタンバイ状態であれば、バッテリーが8日
間も持続。さらに、バッテリー残量が10%になるとアラーム音が鳴り、充電するように知らせ、
着脱式磁気コネクタで充電、充電ポートを探す手間がかかなく、充電ポートをや湿気から保護、
充電用磁気コネクタが製品パッケージに同梱。また、帽子に生地は、光沢と高級感のある高品質
オイルコーティング生地を採用。強い耐摩耗性と耐水性を備えています。また、キャップ内側に
は、一般的な綿素材の20倍の速乾性を誇るクールマックス生地を使用し、汗が速く乾くため、清
潔で爽やか。寒い冬には保温効果も発揮する特徴をもつという(買う?いや、評判を聞いてから
判断したい)。

  ● 今夜のパワースポット

天台宗湖東三山釈迦山百済寺 誰が履くの?新調された大草鞋(京都新聞滋賀版 2018.11.11)    
【エネルギー通貨制時代 18】 
”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era”    

   Mar. 3, 2017 

 ● NEDO 未利用酸性熱水で地熱発電開発へ  Nov. 6, 2018

11月6日、NEDOは、地熱発電で未利用だった酸性熱水の活用を目指した2件の技術開発テーマ
を新たに採択しとことを公表。世界第3位となる地熱資源ポテンシャルを有する日本では、太陽
光発電や風力発電とは異なり、安定した出力が得られることから、ベースロード電源として地熱
発電に大きな期待されている。今年7月に閣議決定された「第1次エネルギー基本計画」で30
年までに地熱発電の導入見込量(地熱発電容量)として最大で約1555万kWの導入拡大が掲げ
ているが、同寄稿は小型バイナリー発電システム※2の開発や環境保全対策に関する技術を開発
していきた事業技術(Know-how,&Patents)、具体的には、耐腐食性などを高めたタービンの開発
および酸性環境で使用可能な坑口装置の低コスト化に向けた技術開発に取り組む。本技術開発を
今年度から20年度にかけて実施、国内に存在する地熱資源量2,347万kWの最大30%程度と
推定される酸性熱水を地熱資源として活用実現を目標に地熱発電の導入拡大を目指す。

 Nov. 9, 2018   ● ドローンソリューションの太陽光発電の増進の貢献を検証 
11月6日、ソーラーマガジン社は、「ドローンソリューションの太陽光発電の増進の貢献予測」
を特集(上写真参照)。それによると、再生可能な資源が世界のエネルギー需要が主役になる日
は近い。人口増加とGDP消費増加に伴い、いまや世界は挑戦的なエネルギーミックスに直面して
いるが 開発と環境の均衡のとれた、太陽、水力、風力、地熱などの持続可能エネルギーの使用を
誰もが願っている 。とりわけ、風力と太陽エネルギーは、新時代の寵児となり、世界の未来とより安いエ
ネルギーへの道を照らす。

    新興資源採用の主な推進要因の1つに、これらの資金を収益化する資本コストの低下があり、ド
ローンソリューションが、太陽エネルギーの計画、構築、維持により収益性が高く効率的である
ことで浮上。ドローンは、17年の98.9GWから約113GWに約15%の増加、年間成長率は
6%で、100GWを突破すると予想される新規設備18年が加算される。特に、インドの総容量
は、16年の 9.5GWから21年には76GWに増加すると予想されている(上/下グラフ参照)
つまり、17~21年から66GW、年間平均13GW 1MWの太陽エネルギーに必要面積は、毎年
約65,000エーカーのソーラーパネルの設置と膨大である。


そこで、将来の太陽光発電所の予定地の地形情報収集には、2つの選択肢があり、1つはGoogle
Mapsなどの公開データに頼るか、も1つは新たに独自で地上調査――無人機で等高線図や地形モ
デルを作成する方法があるが、後者は、太陽光発電所導入の設計工程を70%も短縮し生産性向
上する
。このように、ドローンソリューションは、現場エンジニアが手作業でからデジタル写真
に置き換わることで視覚化に役立ち、オルトモザイクとデジタル双子は、水文や日射量分析、正
確な物資量の推定、工数把握、安全性評価などに貢献し、従来法より90%も高速化できる。



適切なプロジェクトサイトが選択し建設すると、ドローンは現地の事業経営責任者者の「目」と
なり、輸送に多くの時間と費用を節約に貢献しまた、太陽光発電所の業務の効率改善で、労務管
理と事業リスクの逓減――❶時間を節約:ドローンソリューションは、設備が完全で安全に受け
入れられ、設置の堅牢性を遠隔で確認、建設現場の監視と報告(リグの数、設置台数など)を
収集でき、❷コスト削減:無人機によるデジタル資産は、計画されたパネルのレイアウトと施工
条件との照合を行い、合格文書を作成・提出が可能となる。 ❸実積保証のドローンソリューシン
の指数関数的な進歩で、24時間体制で、具体的に、423,000のソーラーパネルで最大3,500の異
常が発見できる実績
が報告されている。



 Jun. 22, 2018

ドローンソリューションの使用で、太陽電池パネルの劣化の広がりを防止し、先取り予測し、ど
のパネルをクリーニングまたは修理できる。 ホットスポットを検出してエネルギー出力を低下さ
せるドローンソリューションは、太陽光発電所の効率を向上させ、問題領域を突き止め、修理を
迅速に対応し、太陽光発電をピーク効率で稼働させ、性能維持に必要なMWあたりの人件費を削
減する。このように、持続可能なエネルギー源を計画、構築、維持を自動化し、より早く、安く、
より安全に任務を完了することができる。太陽光発電の世界的発電量がいままで以上に。 熱画
像や3Dモデリングなどの技術で、主要な電力源を占めるようになるにつれて、ドローンベースの
実積による事業者が増えるにつれ、大きなパラダイムシフトを引き起こすだろう。と、このよう
に報告している。


 Oct. 25, 2018

● ナノチューブの高品位電池で世界に貢献するかもしれない

随分前の技術論文になるが、10月25日、ライス大学の研究グループ(Gladys Lopez-Silva)は、カーボン
ナノチューブ薄膜を含むリチウム金属アノード保護することに成功したことを公表。 電力を放電すると薄
膜リチウムイオンにより浸透、フィルムは蓄積されたイオンを放出し、その下のリチウムアノー
ド(正極)が補充し、デンドライト成長を停止させ薄膜能力を保持する。絡み合ったナノチュー
ブ膜は、同グループが以前の実験で開発した硫化炭素陰極を用いて、試験電池の580回の充放
電リサイクルさせても、デンドライトを効果的に消滅させ、リチウム金属電池のクーロン効率が
99.8%を保持していた。これは、電子が電気化学システム内でうまく動くかの尺度とされる。
 

上写真:ライス大学の試験で500回の充放電サイクル後のリチウム金属アノードの顕微鏡画像は、
樹枝状結晶の成長がカーボンナノチューブの薄膜で保護された左のアノードで急冷されることを
示す。右側の保護されていないリチウム金属アノードは、デンドライト成長を示す。

薄いナノチューブフィルムが、電池の非保護リチウム金属アノードから自然成長する樹状突起(
デンドライト)を効果的に停止させることを示した。 時間の経過とともに、これらの触手のよう
な樹状突起は電池の電解質の芯を突き刺して陰極に達し電池を破損させる。この問題は、商用ア
プリケーションでのリチウム金属の抑制解決が期待されている。リチウム金属の充電は高速で、
携帯電話や電気自動車を含むほぼすべての電子機器に見られるリチウムイオン電極の約10倍の
エネルギーを蓄電できることは周知されている通り。リチウムイオン電池のデンドライトを遅ら
せる方法の1つに充電速度の制限があるが、シンプルで安価で、デンドライトの成長を止めるの
方法は、多層のカーボンナノチューブフィルムでリチウム金属箔をコーティングするだけで、リ
チウムは黒色から赤色に変わるナノチューブ薄膜をドープし、薄膜はリチウムイオンを拡散させ
る至極シンプル。リチウム金属との物理的接触はナノチューブ膜を減少させるが、リチウムイオ
ンを添加しバランスをとることでイオンはナノチューブフィルム全体に分布する。 



上写真:ライス大学らのグループは、カーボンナノチューブ薄膜を含むリチウム金属アノードを
保持。薄膜付着すると、リチウムイオンで浸透され赤色に変わる。

上図:ライス大学で開発されたリチウム金属アノードが、カーボンナノチューブ薄膜によりデン
ドライト成長から保護されている様子を示す。

電池が使用されると、フィルムは蓄積されたイオンを放出し、その下のリチウムアノードはそれ
を補充し、デンドライトの成長を停止させ薄膜能力を維持。絡み合ったナノチューブ膜は、以前
の実験で研究室が開発硫化炭素陰極を用いて、試験電池の580回の充放電サイクルで、デンド
ライトを効果的に消光させた 。 完全なリチウム金属電池がクーロン効率で99.8%を保持。これ
は、電子が電気化学システム内での良好な移動するかの尺度となる(下図参照)。 



上図:マルチウォールカーボンナノチューブ薄膜がリチウム金属ベースの電池の樹状突起の成長
を抑制することを発見する。

以上、日本でも盛んに研究され特許出願されている研究であり、このブログでも『黒い革命』と
してナノカーボングラファイト、カーボンナノチューブの重要性を解説してきたが、面白い技術
論文なので再掲載した。

  Nov.8, 2018

● 低コスト、コンパクト、軽量のバッテリの寿命を延ばす 
11月8日 マサチューセッツ工科大学の研究グループは、安価でコンパクトで軽量の金属空気
電池の寿命を大幅に延ばすことに成功したことを公表している。それによると、金属空気電池は、
入手可能な最も軽くてコンパクトなタイプの電池の1つだが、使用しないときは、腐食が金属電
極で腐食するので急速に劣化。その腐食を大幅に低減する方法を見出し、電池がより長い貯蔵寿
命を有することを可能にした。典型的な充電式リチウムイオン電池は、1ヶ月の保管後に充電の
約5%しか失うことはないが、多くのアプリケーションは高価で、かさばり、または重い。1次
(非充電式)アルミニウム空気電池ははるかに安価でコンパクトで軽量だが月に充電の80%を
失う。同研究グループは、アルミニウム電極と電解液(電池がスタンバイ状態のときにアルミニ
ウムを食べる2つの電池電極の間の流体)の間に油のバリアを導入することで、アルミニウム空
気電池の腐食の問題を克服。 電池を使用するとすぐに、オイルは急速に汲み出され、電解液と交
換される。その結果、エネルギー損失は1ヶ月に0.02%に削減され、1,000倍の改善を達成。

金属空気電池(ナトリウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などの他の金属も使用可能)の
有効期間を延ばすため、いくつかの方法を使用するが、パフォーマンスを犠牲とする。 他のアプ
ローチのほとんどは、電解液を異なる腐食性の低い化学組成物で置き換えを含むが、この選択肢
はでは電池の電力を大幅に減少させる。この方法では、使用中に液体電解質を貯蔵中および取り
出し中に排出することを含む。これらの方法は依然として著しい腐食を可能にし、バッテリパッ
ク内の配管システムを詰まらせる可能性がある。電解液がパックから排出された後でさえも、ア
ルミニウムは親水性である(吸水性である)ので、残りの電解質はアルミニウム電極表面に粘着。 
「電池は複雑な構造をしているため電解液が溜まる角が多く、腐食継続する。

新しいシステムの鍵は、電池電極間に配置された薄い膜で、電池が使用されているときは、膜の
両面に液状電解液が充填されていますが、電池をスタンバイ状態にすると、アルミニウム電極に
最も近い側にオイルがポンプされ、アルミニウム表面が電解液から保護さる。この新しいバッテ
リーシステムは、水中の疎油性と呼ばれるアルミの性質を利用、アルミニウムが水に浸されると、
表面から油をはじきます。その結果、電池が再活性化され、電解液がポンプで戻されると、電解
液はアルミニウム表面から油を容易に移動させ、電池の電力能力を回復させる。皮肉なことに、
腐食抑制のMIT方法は、従来のシステムでは腐食を促進するアルミニウムと同じ特性を利用する。

その結果、従来のアルミニウム空気電池よりもはるかに長い貯蔵寿命を備えたアルミニウム空気
プロトタイプが得られる。 研究者らは、バッテリを繰り返し使用してから1,2日間スタンバイ
した場合、この設計では24日間続き従来法ではわずか3回しか持続しない。 石油とポンプシス
テムが大型のアルミ一次電池パックに組み込まれているにもかかわらず、電気自動車用の充電式
リチウムイオンバッテリーパックの5倍軽くコンパクトである。アルミニウムが非常に安価であ
ることに加えて、最高の化学エネルギー密度貯蔵材料の1つであることを説明、すなわち、臭素
だけで、ほとんどのものよりも多くのエネルギーを貯蔵し、高価で危険であり、匹敵するもので
多くの専門家は、アルミニウム空気電池が、リチウムイオン電池と自動車用ガソリンの唯一の代
替可能性があると考えている。アルミ・エアー・バッテリーは、内蔵バッテリーを使い切って補
充するため、電気自動車用のレンジ・エクステンダーとして使用される。また、遠隔地や一部の
水中用の電源として使用されることもあるが、このような電池は、未使用であれば長期間保存で
きるが、初めて電池を入れると直ちに劣化しはじめる。

このようなアプリケーションは、新しいシステムが大きなメリットもたらし、既存のバージョン
ではシャットダウンしプロセスを遅らせることができるが、 新しいシステムは、例えば車内のレ
ンジエクステンダーとして使用された場合は、それを使用して1ヶ月間駐車した後、戻っても、
これらのバッテリー使用面で有効だと考えられ、この新しいシステムで得られる可能性がある、
より長い貯蔵寿命で、アルミニウム空気電池の使用は現在のニッチアプリケーションを超えて広
がる可能性があると考えており既にこのプロセスに関する特許を申請中であるという。

※Massachusetts Institute of Technology. "Extending the life of low-cost, compact, lightweight batteries.
" ScienceDaily. ScienceDaily, 8 November 2018. www.sciencedaily.com/releases/2018/11/181108142402.htm.
誌面の都合で残件扱いとする。

● 今夜の寸評:拙速は大事故のもと

外国人の労働問題が急浮上している。考え方はすでにブログ掲載しているが、1つは就労ビザ制
度のスパイラルアップであり、期間中のフォロアップシステムの充実であり、2つはめは社会保
障条件の公平化である。この整備がない限り、国内の非正社員化と同じで、疎外感が蔓延しやが
て”大事故(喩え)"に繋がるだろう。

 

長汀に注ぐ鰯雲

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第79章 天道はつねに善人に与(くみ)す
天道のはたらきは、あたかも弓に弦を張る動作に似ている。弓に弦を張るには、上端を引き下げ、
いったん大きな恨みを結んでしまえば、どんなに和解しようと努めても、完全に和解できるもので
はない。はじめから恨みを結ばぬにこしたことはない。
聖人は、たとい相手を責める有利な立場にいたとしても、人を責めようとはしないものだ。徳ある
者は、たとい人を責める権利を握っている場合にも、その権利を行使することがない。厳しく人を
責めるのは徳のない連中だけがすることだ。天道にはえこひいきがない。つねに徳ある者にさいわ
いするのである。

<相手を責める有利な立場〉 原文は「左契(けい)を執る」。「契」とは目印を刻んだ割り符。
約を結ぶ原にはこれをふたつに割り、それぞれ一方を所持して約束の証とした。「契約」「契合」
などのことぱは、ここから出ている。

左契、右契のいずれが債権を示し、いずれが債務を示すかという点については、いろいろ論議もあ
るようだが、一定のきまりはなかったのが実態らしい。
〈厳しく責める〉原文は「徹を司る」。「徹」とは月代の税法の一種といわれる。直訳すれば「税
務署のようなやりかた」という意味。

第80章 わが桃源郷
国は小さく、人口は少ない。たとい人並すぐれた人材がいようとも、腕をふるう余地すらない。住
民はすべて生命を大切にして、遠くへ足を伸ばさない。舟にも車にも乗る必要がないし、武器も使
い道がない。文字を書いたり読んだりするこざかしさを忘れて、ひたすら現在のままの衣食住に満
足し、生活を楽しんでいる。手の届きそうなすぐ隣の国とも、絶えて往来しない。これが、わたし
の理想郷である。

〈人並すぐれた人材〉原文は「什伯之器」。各種の便利な器具類(王弼:おうひつ)、十人頭、百
人頭となり得る才人(蘇轍)、兵器(兪樾:ゆえつ)など、解釈は多様にわかれている。
〈文字を……忘れて〉 原文は「縄を結ぴてこれを用いしむ」。【文字の使用される以前の時代で
は、縄にいろいろの結び目を作って記億のたすけとするのが、世界共通の現象であった。「約を結
ぶ」ということばも、この習慣から生じたものである(約とは、もともと結び目の意味)。

小国寡民 ここに現われた理想郷を、太古の部落国家の姿にほかならぬとし、老子を復古主義者と
見なす論者もある。だがこの章は、一種の象徴的表現ととることも可能であろう。たとえば陶淵明
は、この章を下敷きにして、桃源郷という成語で有名な「桃花源の記」を書いた。あらすじはこう
である。
晋の太元年問、武陵の漁師が、谷川を題って行くと、世の常ならず美しい桃花の林に出合った。不
思議に思って林の奥をつきとめようと進んで行くと、洞穴がある。洞穴は非常に狭かったが、どう
にかくぐって行くと、突然視界がひらけた。見ると、田畑はみごとに手入れされ、家はきちんと立
ち並んでいる。鶏や犬の鳴き声がのどかに聞こえる申を、往来する村人の服装は、見たこともない
種類のものだ。そして老人から子供に至るまで、じつにのぴのびと心楽しげである。村人は漁師を
歓待した。驚いたととに、村人たちは漢も魏も晋も知らない。先祖の時に奉の戦乱を避けてこの地
に往み、それきり外部との往来を絶ってしまったのだという。漁師は、もてなされるままに数日を
心楽しく村に過ごした。漁師が武陵に帰った後、話を聞いてこの村を訪ねようとする者が出たが、
ついに誰もたずね当てることはできなかったという。

 

長汀に一川注ぐ鰯雲   定梶じょう

 Iwashigumo is flowing in the long beach like a river.
※ Iwashigumo(=Mackerel sky):日本では鰯、英語圏では鯖というから面白い。

 
【エネルギー通貨制時代 19】 
”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era”    

  Nov.8, 2018

● 低コスト、コンパクト、軽量のバッテリの寿命を延ばすⅡ
11月8日 マサチューセッツ工科大学の研究グループは、安価でコンパクトで軽量の電気自動車用レンジ・
エクステンダーの金属空気電池を掲載したが、残件の関連する国際特許を下記に記載した。

☑ WO2017176390A1 Corrosion mitigation in metal-air batteries:
金属空気電池の腐食緩和
【概要】 
アルミニウム空気(Al-air)電池のような金属空気電池は、比較的高いパックレベルの重量エネルギ
ー密度を有するなどの有利な特性のために、電池電気自動車(BEV)他の電池(例えば、1キログ
ラムあたり約450ワット時間またはWh kg -1以上)と比較して、相対的な豊富さ、リサイクル可
能性、このような電池に使用することができる金属の低重量および低コストを可能にする。しかし、
多くの金属空気電池は、開回路陽極腐食の影響を受けやすく、金属空気電池が作動停止されたとき
に著しい容量低下を引き起こす可能性がある。例えば、電解質が金属アノード電解液の一部は金属
アノードと接触したままであり、空気に曝されると金属アノードを腐食する可能性がある。

本件の装置、システム、および方法の前述および他の目的、特徴および利点は、添付の図面に示さ
れるようなその特定の実施形態の以下の説明から明らかになる。図面は必ずしも縮尺通りではなく、
ここで説明される装置、システム、および方法の原理を説明することに重点が置かれる。図面にお
いて、同様の参照番号は、対応する要素を識別することができる。
すなわち、金属空気電池における腐食軽減は、金属空気電池のギャップ内の電解液を液体で置換す
ることを含む。 液体は、電解質と実質的に非反応性であり得、金属空気電池のアノードは、電解質
よりも液体と反応しにくい。 ギャップから電解液を移動させると、液体が金属空気電池のギャップ
内に残って、アノードの腐食の可能性を低減し、そのような腐食に起因するバッテリーの電力排出
を低減することができる。電力を発生させるために金属空気電池を作動状態に戻すために、電解液
をギャップに戻して液体を移動させることができる。流体回路は、間隙と流体連通することができ、
間隙内の液体および電解質の一方を、流体回路からの液体および電解質の他方と変位させることが
できる(下図参照)。





図2は、図1の金属空気電池システムの概略図
図3は、第1の動作状態にある図1の金属空気電池システムの概略図
図4は、第2の動作状態にある図1の金属空気電池システムの概略図
図5は、第3の動作状態にある図1の金属空気電池システムの概略図
図9は、金属空気電池システムを動作させる例示的な方法のフローチャー

【特許請求範囲】

記載の方法。充電システムであって、電気負荷。そして.前記電気負荷と電気的に接続され
た金属空気電池であって、前記金属空気電池は、金属アノード、前記金属アノードから離間
した空気カソードと、前記金属アノードと前記空気カソードとの間の空間が隙間を画定し、
ポンプと、流動可能な形態の電解質と、液体とを含み、前記液体は、流動可能な形態の電解
質と実質的に非反応性であり、前記金属アノードは、前記ギャップと流体連通する流体回路
と、流動可能な形態の電解質よりも液体であり、作動状態と非作動状態との間で空気極を有
する金属アノードの電気的およびイオン的な通信を制御するように動作可能なスイッチであ
って、前記液体および電解質の流動可能な形態の一方を他方スイッチが活性化状態と非活性
化状態との間で動かされるとき、電解質の液体および流動性形態のうちの1つが移動する。 前記電気負荷は、前記金属アノードと前記活性化状態で電気的に連通する前記空気極とを備
えた前記金属空気電池によって再充電可能な電池を含む、請求項1に記載のシステム。 車両をさらに備え、前記充電式バッテリは、車両の駆動列に電気的に結合されたリチウムイ
オンバッテリである、請求項2に記載のシステム。 金属アノードと、前記空気極と前記金属アノードとの間にギャップを画定するように前記金
属アノードから離間された空気カソードと、そしてこのギャップと流体連通する流体回路で
あって、流動可能な形態の電解質および液体を含み、液体が流動可能な形態の電解質と実質
的に反応しない流体回路であって、金属アノードは、液体は流体回路内で移動可能であり、
流体回路内の流動可能な形態の電解質を移動させる。 前記流体回路は、前記流体のうちの1つと、前記流体回路の前記液体および前記流動可能な
形態の他方と、前記間隙内の前記電解質の流動可能な形態とを移動させるように作動可能な
ポンプを含む。 前記流体回路および前記ギャップは、前記液体および前記流動可能な形態の前記電解質が前
記ギャップ内で前後に移動するとき、実質的に閉じたシステムを画定する、請求項4~5のいず
れか1項に記載のシステム。 前記金属アノードおよび前記空気カソードを収容するハウジングをさらに備え、前記金属ア
ノードと前記空気カソードとの間の前記隙間は、前記ハウジング内に配置される、請求項4
~6のいずれか一項に記載のシステム。 前記ハウジングが、水素ガスを透過させることができ、前記液体および前記流動可能な形態
の電解質に対して実質的に不浸透性の膜を含む、請求項7に記載のシステム。 前記流体回路は、前記液体および前記流動可能な形態の電解質の一方を保持する第1のリザ
ーバを含み、他方の前記液体および前記流動可能な形態の電解質は、前記電解質の中に配置
されている、請求項4~8のいずれかに記載のシステム。ギャップ。 前記第1のリザーバは、水素ガスを透過させることができ、前記液体および前記流動性のあ
る形態の電解質に対して実質的に不浸透性の膜を含む、請求項9に記載のシステム。 キャリアを含む第2のリザーバをさらに備え、前記第2のリザーバは、前記第2のリザーバ
から前記第1のリザーバに移動可能であり、担体と電解質の流動可能な形態との混合物は、
流動可能な形態の電解質単独よりも大きな流動性を有する。 前記担体が水を含み、前記担体および前記電解質の流動可能な形態の混合物が、前記流動可
能な形態の電解質の水溶液である、請求項11に記載のシステム。 前記担体がゲルを含む、請求項11~12のいずれかに記載のシステム。 前記第1のリザーバと前記第2のリザーバとの間に配置され、前記第2のリザーバから前記
第1のリザーバに前記キャリアを供給するように作動可能な第2のポンプをさらに備える、
請求項11~13のいずれか1項に記載のシステム。 前記第2のリザーバが、空気に対して透過性で前記キャリアに対して実質的に不透過性の膜
を含む、請求項11~14のいずれかに記載のシステム。 前記電解質の流動可能な形態は、前記電解質の水溶液を含む、請求項4~15のいずれか1
項に記載のシステム。 前記電解質の前記流動可能な形態は、前記電解質を含むゲルを含む、請求項4~16のいず
れか1項に記載のシステム。 前記電解質の前記流動可能な形態は、粉末を含む、請求項4~17のいずれかに記載のシス
テム。 前記液体は、前記電解質よりも伝導性が低い、請求項4~18のいずれかに記載のシステム。 前記液体が油を含む、請求項4~19のいずれかに記載のシステム。 前記液体が、鉱油およびシリコーン油の1つまたは複数を含む、請求項20に記載のシステム。 前記液体が実質的に非粘性である、請求項4~21のいずれかに記載のシステム。 前記液体が、室温で前記電解質と異なる密度を有する、請求項4~222のいずれか1項に
記載のシステム。 前記金属アノードがアルミニウムを含む、請求項4~23のいずれか1項に記載のシステム。 前記流動可能な形態の前記電解質が、結晶化した電解質を含む、請求項4~24のいずれか
に記載のシステム。 流動可能な形態の電解質の所定の導電率を維持する1つ以上の結晶化装置をさらに含む、請
求項25に記載のシステム。 前記電解質が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの1つ以上を含む、請求項4
~26のいずれかに記載のシステム。 リチウムイオン電池をさらに備え、前記金属アノード、前記空気カソード、および前記電解
質は、金属空気電池を形成し、前記金属空気電池は、前記金属空気電池に電気的に結合され
ている、請求項4~27のいずれか1項に記載のシステム。金属空気電池によって生成され
た電力を使用してリチウムイオン電池を充電するためのリチウムイオン電池とを含む。 金属空気電池を動作させる方法であって、流体回路から電解質の流動可能な形態を金属空気
電池の金属アノードと空気カソードとの間に画定された間隙に供給し、金属アノードと空気
極との間のギャップに配置された電解質の流動可能な形態で、金属空気電池で電力を発生さ
せるステップと、液体を流体回路からギャップに選択的に移動させるステップと、ギャップ
の中への液体の移動とギャップの流体回路への移動と、電解質の流動可能な形態の存在。 前記金属アノードは、前記電解質の流動可能な形態よりも前記液体との反応性が低い、請求
項29に記載の方法。 前記液体が、前記流動性形態の前記電解質と実質的に不混和性である、請求項29~30の
いずれかに記載の方法。 流動可能な形態の電解質をギャップ内に選択的に移動させて、ギャップ内への電解質の流動
可能な形態の移動がギャップから流体回路へ液体を移動させることをさらに含む、請求項2
9~31のいずれかに記載の方法 前記金属空気電池が作動状態にあるとき、前記金属空気電池から電力を生成するために、前
記間隙内に前記電解質の前記流動可能な形態を維持することをさらに含む、請求項29~3
2のいずれか1項に記載の方法。 前記金属空気電池が非活性化状態にあるとき、前記ギャップ内に前記液体を維持することを
さらに含む、請求項29~33のいずれか1項に記載の方法。 前記流体回路と前記間隙と流体連通するポンプを作動させて、前記流体回路から前記間隙内
に前記液体を選択的に移動させることをさらに含む、請求項29~34のいずれか1項に記
載の方法。 前記流体回路と前記間隙と流体連通するポンプを作動させて、前記流体回路から前記間隙へ
前記電解質の前記流動可能な形態を選択的に移動させることをさらに含む、請求項29~3
5のいずれかに記載の方法。 前記移動した流動形態の前記電解質を前記間隙から第1のリザーバ内に移動させることをさ
らに含み、前記流体回路が前記第1のリザーバを含む、請求項29~36のいずれか1項に
記載の方法。 前記第1のリザーバから前記ギャップに前記電解質の前記流動可能な形態を選択的に移動さ
せることをさらに含む、請求項37に記載の方法。 前記第1のリザーバおよび前記間隙と流体連通するポンプを作動させて、前記液体および前
記流動可能な形態の前記電解質のうちの1つを前記第1のリザーバから前記間隙に選択的に
移動させて変位させるステップをさらに含む、請求項37~38のいずれかに記載の方法。
第1のリザーバによって置換された液体と流動可能な形態の電解液のうちの他方の液体と流
動可能な形態の電解液とを含む。 前記流動可能な形態の電解質が前記電解質の水溶液を含むように、前記流体回路に水を供給
することをさらに含む、請求項29~39のいずれかに記載の方法。 水が、流動可能な形態の電解質を含む第1のリザーバと流体連通する第2のリザーバから供
給される、請求項40に記載の方法。 前記液体が、前記流動性形態の電解質よりも伝導性が低い、請求項29~41のいずれかに
記載の方法。 前記液体が液体油を含む、請求項29~42のいずれかに記載の方法。 前記液体油が、鉱油およびシリコーン油の1つまたは複数を含む、請求項43に記載の方法。 前記金属アノードがアルミニウムを含む、請求項29~44のいずれかに記載の方法。 前記流動可能な形態の前記電解質が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの1つまたは
複数を含む、請求項29~45のいずれか1項に記載の方法。 前記金属空気電池で生成された電力を前記リチウムイオン電池を充電するためのリチウムイ
オン電池に供給することをさらに含む、請求項29~46のいずれかに記載の方法。 前記流動可能な形態の電解質は、前記電解質の水溶液を含む、請求項29~47のいずれか
に記載の方法。 前記流動可能な形態の電解質が、前記電解質を含むゲルを含む、請求項29~48のいずれ
かに記載の方法。 流動可能な形態の電解質が粉末を含む、請求項29~49のいずれかに記載の方法。

 Dec. 5, 2015

 【オールバイオマス事業篇:最新湿式ミリング技術の利用】

湿式ミリング処理技術とは、水中で木材を粉々に粉砕することで、木材の糖化・発酵を可能とする
技術のこと。従来はこれを、メタンガス燃料やバイオエタノールの製造の研究に利用していたが、
湿式ミリング処理した木材に食品用の酵素と酵母を加えたところ、アルコールを醸造できることが
が公表されており、福島第原発事故での放射性セシウムを含む植物バイオマスの処理方法でも実証
実験でその成果が公表されているものであり、このブログでも「オールバイオマスシステム」のな
かで調査研究していたたものだが、得られたアルコールには、木材の種類により、例えばスギ材で
はスギの香りがし、シラカンバ材ではウィスキー樽のような香りがする特徴をもつ。つまり、長期
間の熟成を経ることなく、香りよい酒が造れるかもしれないというもの。当面、この技術で得られ
るアルコールの安全性を慎重に検討し、「樹木原料醸造酒事業」という新しい産業を産み出し、林
業の振興につなげればと期待されている。まず、その技術開発報告を俯瞰。

 Jun. 19, 2014

● 木を発酵して香り豊かなアルコール

4月26日、森林研究・整備機構森林総合研究所(以下、森林総研)の成果報告は次のようになる。
木材を原料とした燃料用のアルコール(バイオエタノール)の製造技術は、いくつかの手法がある
が、燃料用アルコールの製造は、効率追求のために原料を熱処理したり薬剤処理することが一般的
このため、生産されるアルコールを燃料用途以外に使用することは困難であった。森林総研で既に
開発していた湿式ミリング処理という技術を応用して、低温(80℃以下)で木材に食品用の酵素
と酵母を加えてアルコール発酵する技術を開発。試験的にスギ材(樹皮を剥いだ幹の部分)を原料
として製造したアルコールにはスギ特有の香りが含まれ、シラカンバ材(樹皮を剥いだ幹の部分)
を原料として製造したアルコールには、甘く熟した香りやウイスキー等で感じる熟成に使用した樽
の香りが含まれることが分かってきました。このことから、木を原料にして製造したアルコールに
は、長期間の熟成を経ずとも原料樹木特有の成分が豊富に含まれる。

 Apr. 26, 2018

伐採されたスギ材、および北海道内で伐採されたシラカンバ材の樹皮を除き、チッパーとハンマー
ミルによりそれぞれ粗粉砕→粗粉砕木粉とミネラルウォーターを混合→食品加工用ビーズミルで湿
式ミリング処理→クリーム状スラリー化→食品添加用酵素(セルラーゼ・ヘミセルラーゼ)と酵母
を混合→並行複発酵(木材の繊維(セルロース・ヘミセルロース)が酵素て糖に分解されることと、
酵母で糖のアルコール発酵が同時に行われこと)→遠心分離で上清を回→アルコール度数約2%の
発酵液を生成→発酵液の減圧蒸留法でアルコール度数28~300%の蒸留物を得る(図1参照)。

オールバイオマスシステムも事業化ができそうな段階にきているようだ。これは益々面白くなってきた(元会
員談)。

 

 ● 今夜の一曲

『風をみつめて』 唄:コブクロ  Music Writete:小淵健太郎

9月8日に結成20周年を迎えるコブクロが、11月7日(水)に通算30枚目となるニューシングル
『風をみつめて』をリリースする。「風をみつめて」は、テレビ東京開局55周年特別企画 ドラマ
Biz『ハラスメントゲーム』の為に書き下ろした渾身のバラード。

Wikipedia

 ● 今夜の一品

 Nov. 9, 2018

オーディオテクニカ製完全ワイヤレスイヤホン「ATH-CKR7TW」

紅葉や踏み入る山に大草鞋

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第81章 「俗言は美ならず、美言は信ならず」
真実を語ることぱは、飾り気がない。飾ったことばは、真実を語らない。行ないが正しい者の口は、
雄弁ではない。雄弁なものは、行ないが正しくない。真の知者は、もの知りではない。もの知りは、
真の知者ではない。
聖人は、自己のために徳を積むわけではない。ひとのためにすべてを捧げつくすが、そのことによ
ってかえって限りなく豊かな境地を得るのだ。天の道は、万物を利するばかりで、これをそこなう
ことがない。これと同じく、聖人の道は、ひと老 につくすだけで、自己を主張することがないの
である。

〈聖人は、自己のために徳を積むわけではない〉 原文は「聖人は積まず」。通説は、聖人はなに
ものをも蓄積しない、と解釈するが、従わなかった。



【滋賀のパワースポット:百済寺】

百済寺(ひゃくさじ)は1400年以上前の推古14年、聖徳太子さまによって創建された近江国最古
級の寺院。名だたる人物の歴史舞台として、また天台別院と称され、近江の人々の信仰を集めてき
ました。紅葉は暖かい秋の気配でこれから深まると言った案配。仁王門に飾られた大わらじがこの
ほど、8年ぶりに新調され、参拝者は足をとめて、威厳の漂う風格に見入っている。大わらじは仁
王像が履くとされ、寺のシンボル。17世紀半ばごろから飾られるようになり、触れると無病長寿
のご利益があるとされる。10年前後で地元住民が作り直しているとか。そこでデジカメでワン・
ショット。早速、彼女からメールが届き掲載した次第。 



布引焼(窯元:八日市)

  No.22 
❦ iPSから対がん免疫細胞を作製
 11月16日、京都大の研究グループは、人のiPS細胞から、がんへの攻撃力を高めた免疫細胞「キラ
ーT細胞」を作製したことを公表(iPSから対がん免疫細胞を作製 京大などが発表(朝日新聞
デジタル  2108.11.16)。免疫の力でがんを治療する「がん免疫療法」の新たな手法につながる可能性があ
る。京大iPS細胞研究所が保管するiPS細胞を使うことで、短期間で多くのキラーT細胞をつくることができ
る。今後、実際の患者に使う臨床試験の準備を進める。

 May 4, 2018

人の体内では、絶えずがんが生まれているが、キラーT細胞を含む免疫細胞が攻撃することで、健
康を保っている。だが、がんが免疫のしくみを回避したり、免疫細胞の攻撃力が弱まったりすると
がんが増殖し、発症すると考えられている。チームは、第三者の血液由来のiPS細胞にがんを認
識する遺伝子を組み込んだ。その後、キラーT細胞のもととなる細胞の状態に変化させて増殖。ス
テロイドホルモンなどを加えて培養し、がんを攻撃する高品質のキラーT細胞をつくった。人のが
んを再現したマウスに注射したところ、何もしない場合に比べ、がんの増殖を3~4割に抑えられ
た。がん治療薬「オプジーボ」は、がんが免疫のしくみを回避するのを防ぐ。一方、今回の方法は
免疫の攻撃力を上げることで、がんの治療をめざす。チームの金子新・京大iPS細胞研究所准教
授は、従来の免疫療法が効かない患者への治療法や、併用して使う選択肢にしたいと話す。尚、科
学誌「セル・ステムセル」に掲載。

【バイオテクノロジーの標準化技術篇:核酸分子“絶対濃度”の精密定量】

Titol: Absolute Quantification of RNA Molecules Using Fluorescence Correlation Spectroscopy with Certified
Reference Materials

11月15日、産業技術総合研究所は、分子数をカウントすることでRNA濃度を絶対定量する方法
の開発ことを公表。この技術は、1分子イメージング法の一つである蛍光相関分光法(FCS)で蛍
光染色したRNAの分子数を直接数えてRNAの濃度を定量化できる技術で、認証標準物質(SRMとCR
M)を利用し、この定量分析法の妥当性評価を行った。この技術は、今まで重量ベースで行われて
いたRNA濃度の定量を、分子の配列や長さによらず直接定量できる画期的な分析技術であり、RNA
の定量分析法を高精度化させる。

遺伝子診断やオーダーメード医療が注目されてきている。遺伝子関連検査は急速に進歩しているが、
検査システムの品質保証やデータの標準化が未整備なままで、これらの標準化は遺伝子関連検査の
普及や信頼性保証の上で重要な課題となっている。標準化の課題の一つに、品質の保証された標準
試料が未整備という問題がある。現在用いられている遺伝子の定量法は、濃度既知の標準試料で検
量線を作成して、試料濃度を相対的に算出するものがほとんどである。
しかし、診断対象は多様化しており、全ての検査対象の標準試料を用意することは現実的ではない。
このような状況のため、検査機関や検査日によって定量値がばらばらになり、比較できないことが
遺伝子診断の信頼性確保の問題となっている。そのため、配列も長さも異なるターゲット核酸の数
を簡便に直接絶対定量する技術と、その技術を適用した核酸標準物質の開発が望まれていた。

上図:PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は核酸を増幅し、その増幅曲線から核酸の量を定量する方法。
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)はカラムに液体を加圧して通過させて分離し検出する方法。

【概要】
FCSは、微小な測定領域にレーザーを照射し、その領域に蛍光分子が出入りすることで生じる『蛍
光強度のゆらぎ』を解析して分子の数や、分子の拡散速度を測定できる手法である。原理的には生
体分子の分子数を数えることが可能である。しかし、分子数を普遍的な単位である「濃度」に変換
するには、測定領域の正確な体積が必要である。これまで、レーザー照射領域の形状を仮定し、拡
散速度が既知の蛍光色素のFCS測定結果から測定領域の体積を推定していた。しかし、レーザー照射
領域の形状の仮定は装置の種類によってしばしば実際と異なることが報告されており、校正方法と
して十分ではなかった。今回、濃度の認証値をもつ認証標準物質(SRM、CRM)を利用して、正確
な測定領域を求めた(下図1)。
特開2016-217887

今回の技術では、認証標準物質(蛍光色素)で厳密に校正されたFCS測定装置を用い、蛍光染色した
RNA分子を水溶液内で直接カウントして分子数を絶対定量する。さらに、産総研で開発された核酸認
証標準物質を用いて、認証値とFCSによる実測値を比較したところ、絶対定量分析法が妥当であるこ
とが確認できた(下図2)。

 

  
【エネルギー通貨制時代 20】 
”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 

  Nov. 14, 2018

【環境・社会・ガバナンス事業戦略篇:NYK スーパーエコシップ2050】

11月14日、日本郵船グループは、船舶の脱炭素化に向けた新コンセプトシップ「NYKスーパー
エコシップ2050」を考案したと発表した。太陽光パネルを搭載し、燃料には再生可能エネルギー由
来の水素を使用することで「CO2排出量ゼロ」を実現する。自動車専用船をモデルにした2050年のコ
ンセプトシップ。再エネ由来の水素を燃料とし、排熱も利用する高効率な燃料電池システムを用い
て推進。太陽光パネルの設置により長距離の航海にも対応する。空気を船底に送り込み泡を発生さ
せて海水の摩擦抵抗を減らす空気潤滑システムや、従来のプロペラの代わりに複数のフラップ状の
フィンをイルカの尾のように動かす高効率な推進装置などにより、現在運航される一般的な艦船と
比べて70%のエネルギー削減が可能。

船体構造には数学的・力学的に最適化された形状を採用し、軽量化のために素材には複合材などを
使用する。軽量になると、船体が不安定になるため、コンピューター制御のジャイロスタビライザ
ーなど、揺動を軽減する装置を導入し、安定性を維持。このほかにも、船体の状況をデジタル上に
再現するデジタルツイン技術により、陸上専門家によるリアルタイムな分析、事故や不具合を未然
に防ぐ最適な整備計画を立案する。船体の大きさは、全長199.9m、全幅49.0m、計画喫水9.0m、エア
ードラフト31.0m。 同社グループが2018年度からスタートした中期経営計画「Staying Ahead 2022
with Digitalization and Green」の取り組みの一環。日本郵船の100%子会社であるMTIとフィンランド
の船舶技術コンサルタント会社Elomaticが2009年に共同発表した「NYKスーパーエコシップ2030」
の要素技術を見直している。

【省エネ送電事業:三菱電機「直流送電」本格展開】

11月15日、密菱電機は、直流送電システムの製品開発・検証を行うための検証施設「HVDC検証
棟」を建設し、26日から稼働開始する。直流送電は、交流送電より送電効率が高く、太陽光発電
や風力発電などとの連系が容易なため、再生可能エネルギーの利用拡大によるCO2削減に貢献する。
直流送電のなかでも、「自励式」を開発・検証する。直流送電システムには、交流・直流間の変換
に交流系統内に変換器容量に見合った発電機が必要になる「他励式」と、これらが不要な「自励式」
があり、接続する系統条件に制約の少ない自励式の需要が今後増加すると予想される。自励式は、
直流・交流間の電力変換を行う複数の変換所と、これらを接続するケーブルまたは送電線から構成
される。


HVDC検証棟では、交流送電線事故・直流事故発生時の動作検証を行う。主要設備として、設備容量
50MWのBTB(送電線を持たない直流送電設備)構成で、変換装置、制御・保護装置、受電設備などを
備える。なお、太陽光や風力などの再エネ発電設備は設置していない。鉄骨造で一部地上2階建て、
延床面積は1767.8m2。同社は、自励式直流送電システム事業に参入し、トータルブランド「HVDC-Dia-
mond」をグローバルに展開する。HVDC-Diamondは、個々のシステム要件に最適な制御機能およびハ
ードウエア構成を採用し、運用時の安定運転と落雷など交流送電系統事故発生時の運転継続を実現。
高速応答の保護機能により、直流事故発生時の過電流による設備機器の損傷を防ぐ。また、高耐圧・
大電流パワー半導体モジュール(HVIGBT)の採用で変換装置のモジュール数を削減して電力変換所を
小型化・低コスト化。HVIGBTを2列・並列構成にして幅広い送電容量帯に対応する。2020年度まで累
計受注高500億円以上を目指す。

 

CONTROL OF WIND TURBINES


【出力制限事業篇:デジタル&エネルギー貯蔵革命で対応】

11月16日、NHKの「おはよう日本」で九州電力の出力制限を受け、再エネ先進国のアイルラン
ドで電力の需給バランス実態を現地調査報告がされていった。それによると、❶まずアイルランド
はは風力発電を主体としてタービンのウイング角度を自動制御することで周波数変換し出力制御で
対応できるていること、❷また、余剰の電力は真空中で回転するフライホイールに蓄電し対応して
いる。❸次に、これらの発電発電ポイント情報をネットワークで接続しリアルタイムで制御するこ
とで制御(デジタル)されている。これに対し九州電力では、情報のやりとりを電話とファックス
で交換アナログ)していることから比べ生産性・安全性・堅牢性において格段の差がある。このよ
うに、出力問題は技術的には解決しているので、後は本腰を入れて投資をすれば終わる問題である
ことが了解できる、念のため、下記の1年前のNHKの映像を参考に掲載する。Power storage wiをth Flywheels
 

 Oct. 16, 2018



【水素直燃事業篇:トヨタが「水素バーナー」を新開発、工場二酸化炭素ゼロへ】

11月15日、トヨタが水素を燃料として利用できるバーナーを開発。自動車生産工場に導入し、
二酸化炭素排出量の削減に活用する。工業利用を目的とした汎用水素バーナーの実用化は、世界初。
これまで、水素バーナーは、水素が酸素と急速に反応し、激しく燃焼することで火炎温度が高温に
なり、環境負荷物質である窒素酸化物(NOx)が多く生成されるために、実用化は困難とされていた。
一方、今回開発した水素バーナーは、水素を緩やかに燃焼させる「水素と酸素が混ざらないように
する機構」と「酸素濃度を下げる機構」の2つの新機構を導入し、二酸化炭素排出ゼロに加えて、
同規模の都市ガスバーナーレベル以下まで窒素酸化物(NOx)排出を大幅に低減させるなど、高い環
境性能を両立したという。

1つ目の水素と酸素が混ざらないようにする機構は、水素と酸素をバーナー内で並行に流し、完全
に混合していない状態で緩慢に燃焼させることで、火炎温度を下げる。もう1つの酸素濃度を下げ
る機構は、水素をバーナー内に供給するパイプの中腹に小さな穴を空け、少量の水素と酸素をあら
かじめ燃焼させ、酸素濃度を適正値に下げた状態で主燃焼が始まるようにして火炎温度を下げると
いう仕組み。この技術によって、現在国内工場で1000台以上導入され、工場設備の中でも二酸化炭
素排出量が多い大型都市ガスバーナーを水素バーナーに置き換えることが可能となる。トヨタでは
中長期の環境目標の中で掲げる「工場CO2ゼロチャレンジ」実現に向けて、水素バーナーを他工場へ
順次展開していく予定で、同グループ会社内への導入も検討する方針。

 

  ● 今夜の一曲

" Beauty and the Beast" 
Song Writer:Howard Ashman /Alan Merken
Singer: John Legend

妹を求めむ山道知らずも

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天   瑞 てんずい
ことば----------------------------------------------------------------------------------
「いずくんぞわが今の死の、昔の生に愈らざることを知らんや」
「生は死を知らず、死は生を知らず、来は去を知らず、去は米を知らず」
----------------------------------------------------------------------------------------
人生の楽しみ
林類はもう百歳に近い老人である。春なのに、まだ冬の毛皮を着たまま、田のあぜで鼻歌まじりに
落ち穂をひろっている。
おりから衛の国へ行く孔子がこの姿をみかけ、弟子たちをふりむいた。

「ほう、ちょっとおもしろそうな老人だな。誰か声をかけてみないか」
子貢は田のはずれの小高いおかで待ちうけた。
「ご老人ヽ落ち狛ひろいなどしてるのに鼻歌ですか・ご自分をみじめだとは思いませんか」
林類は手をやすめるでもなく、歌をやめるでもない。子貢はくりかえしてきいた。ようやく林類は
顔をあげた゜
「なんでみじめなのかね」
「若いころ勉強しておけばよかった。出世の道を考えればよかった。妻子があればよかった。……
そんなことは考えませんか。もう人生も終わりに近づいているのに何が楽しくて鼻歌ですか。十落
ち穂などひろっていて」

林類はわらった。

「ひとがみじめと思うことがわしには楽しみなのだ。お前のいうとおり、若いころ勉強しなかった。
おとなになっても出世など考えなかった。おかげで長生きもできたのだ。年とって妻子もなく、人
生も終わりに近い。だから、こうして楽しいのだ」 
「誰でも長生きしたがって、死にたくないものです。だのにあなたは死ぬのが楽しいといわれる。
どういうわけですか」
「人間はこの世とあの世の問をいったりきたりしているのだ。今死んだ者が次の世に生まれかねる。
だから、どちらがいいかわからない。あくせく長生きしようとあがくのも、迷いというものだ。今
こうして死ぬのが前世よりしあわせかもしれないでばないか」

子貢にはその草昧がわからず、かえってきて孔子に報告した。
「やっぱりおもしろい老人だったな。だが、まだ悟りきっているとはいえない」と孔子はいった。

 〈林類〉実在の人物ではあるまい。欲望を捨て去って、木や林の類に近い人物、という意味であ
ろう。『列子』は寓話的色彩が強く、登場人物の名も寓意的なものが多い。
〈子貢〉 孔子の年若い弟子。雄弁家だった。
『列子』の中の孔子 『列子』巾の孔子は、否定的に嘲笑されるか、または、孔子に名をかりて
『列子』福さん者の道家的思想を述べるかのどちらかである。この話は後者の場合である。実在
の孔子とは何の関係もない。
ここでの孔子は林類以上に悟っている。すなわち、林類はまだ「生と死」「この世とあの世」
を比較して、両者に大差はないといっている段階にとどまっている。だが、比較すること自体が
両者の区別を認めていることになる。だから悟りきっていない、というのである。
生と死の問題に対する『列子』書の解答は、かなり仏教に近いことがこの篇からもうかがえるで
あろう。

 

中国,春秋時代の思想家。名は禦寇 (ぎょこう) 。虚心説を唱え,その著書に『列子』がある。
実際には,戦国時代末期に列子を祖師とする一派があり,同名の文献を伝えていたが,その後亡
びたものらしい。現存の『列子』8編は,道家の説をもととして敷延した魏晋頃の偽作と考えら
れる。 書物は8編で晋(しん)の張湛(ちょうたん)の注がついている。著作の時代ははっきりせず、
書中に戦国末の人名があったり、漢代に流行した緯書(いしょ)説と同じ生成論があったり、仏陀
(ぶっだ)を思わせるような「西方の聖人」を疑う説があったりするために、明(みん)のころから
疑われ、今日では魏(ぎ)・晋(しん)間(3世紀ごろ)の偽作とする説が有力である。

ただ、内容には、『荘子』と重なるところで『列子』のほうが古くみえるところもあり、古い資
料によりながら修飾を加え、また新しく書き加えたというのが真相であろう。したがって、純粋
な列子の思想は明らかにしがたいが、『呂氏春秋(りょししゅんじゅう)』で「虚を貴んだ」とい
われているのを根拠にすると、利害得失の念にとらわれない虚心の処世を善しとしたものである
らしい。『老子』のいう無為、無知、無欲などに通ずる思想であろう。『列子』では、天地の生
成変化を論じて形と気と質の三者が混じた「太易(たいえき)」をその始源に置き、死生の往反を
説いて神仙的養生説にも及び、運命を説き夢を説き、激しい快楽説を唱えるなど、さまざまに特
色のある記事が少なくないが、また『荘子』をはじめとする他書との重複文も多い。
列子の像は、『荘子』のなかでも「風に御(ぎょ)して行く」などといわれて仙人めいた風貌(ふ
うぼう)もあるが、『列仙伝』や『神仙伝』ではまだ仙人として著録されない。しかし、唐代に
なると、道教の信仰に伴って荘子や尹文子(いんぶんし)とともに神格化され、冲虚真人(ちゅ
うきょしんじん)と号して祀(まつ)られる。書物も『冲虚真経』とよばれ、宋(そう)代では
『冲虚至徳真経』ともなって尊重された。(出典:『福永光司訳注『中国古典文学大系4 列子』
(1973・平凡社)』)

 列子解題

【下の句トレッキング:妹を求めむ山道知らずも】


秋山の黄葉を茂み迷(まと)いぬる妹を求めむ山道(やまじ)知らずも / 柿本人麻呂

人麻呂は大和の軽(かる)の地にひそかに妻を持っていた。今の橿原市内。だが妻が死ぬ。かれ
は悲しみにくれた挽歌で、長歌とその反歌(かえしうた:長歌の内容をもう一度要約する)たる
挽歌。上はその短歌。「茂み」は茂っているので。歌はここで一旦切れる。「迷ひぬる」は山路
に迷った。実際は死んでしまったこと。秋の山の黄葉があまりに深く茂っているので、迷いこん
だ恋しい妻を探そうにも道が分らない。その時を心情を重ね合わせてみる。

 

 
【エネルギー通貨制時代 21】 
”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
 Mar. 3, 2017 

今回は、先回の出力制御問題解決の残件――❶フライホイール技術、❷バイオマスウエットビー
ズミル処理及びバイオアルコール製造技術を掲載する。



【蓄電事業篇:最新フライホイール技術】


● 10万年間も磁場を発生し続けるNMRコイル(11月8日掲載済)
11月2日、化学研究所(理研)らによる研究グループは高温超電導線材を用いて超電導接合し
た超電導コイル(NMRコイル)を開発し、9.39テスラの磁場中で永久電流運転の成功を発表。現
行の核磁気共鳴(NMR)装置や核磁気共鳴画像(MRI)装置には、液体ヘリウム温度(-269℃)
レベルで超電導となる金属系低温超電導線材が用いられている。これだと冷却のために高いコス
トが必要となっていた。これに対し、レアアース系やビスマス系の高温超電導線材は、液体窒素
温度(-196℃)で超電導となる。このため冷却などのコストが安価で取り扱いも容易で実用化
に向けた研究が進められている。

今回、レアアース系高温超電導線材1本で巻いた小型のNMR用内層コイルを作製。❶コイルから引
き出した薄いテープ形状の線材を、構造物の障害にならないよう引き回し、さらに❷コイルから
漏れる磁場が接合部の電気抵抗ゼロ特性に影響を及ぼさないよう、最適な接合部の位置を割り出
した。その上で、線材と永久電流スイッチのそれぞれの両端部を熱処理し超電導接合し、このコ
イルを外層コイルの内側に設置する。
これらのコイルにそれぞれ外部電源から電流を流した。高温超電導線材を用いた内層コイルの磁
場が4MHz、低温超電導線材の外層コイルが396MHzを発生し、合計400MHzの磁場を達成。その後、
永久電流スイッチを動作させ、外部電源を切り離したところ、永久電流運転を始めた。共同研究
グループは、2日間にわたり磁場の変動計測した結果、1時間当たり10億分の1レベルという高
い安定度を得ることができ、コイルを冷やし続けると外部電源なしで10万年間も磁場が発生し
続けることに相当。こうした安定磁場で、NMR信号の取得にも成功する。 
尚、この接合技術は超電導フライホイールに適用しフライホイールのコンパクト化に寄与する。


● 特許事例研究
❑ 特開2018-182865 電力平準化装置
【概要】
再生可能エネルギーによる発電技術の分野では、主に鉛蓄電池、リチウムイオン電池等の蓄電装
置が用いられている。しかし、これらの化学作用による蓄電装置では、例えば環境温度、充放電
回数等の使用環境に起因した劣化が発生することから、定期的なメンテナンスが必要となる。
一方で、フライホイールを用いた蓄電装置が知られている。フライホイールを用いた蓄電装置は、
化学作用によるものではなく、メンテナンス性のよいことが知られており、劣化寿命を長くする
ことができ、メンテナンスの回数を減らすことができる。この蓄電装置は、フライホイールに蓄
積されたエネルギーにより、電源系統の瞬時停電時等の電力ロスを補償するUPS(無停電電源
装置)として使用される。

しかし、フライホイールを用いた蓄電装置では、❶大気中で使用されるフライホイール自体に風
損があり、?フライホイールを駆動するモータの損失もあり改善すべき点がある。フライホイール
を駆動するモータとしては、例えば誘導電動機が用いられる(例えば特許文献1)。この特許文
献1の技術は、誘導電動機及びフライホイールを用いた蓄電装置に対し、充放電電力を制御する
ことで、電源系統の電力を平準化する。❷しかし、フライホイールにエネルギーの蓄積には、フ
ライホイールを継続的に高速で回転させる必要があり、誘導電動機では、モータの構造上、堅牢
性の面で不十分であるという問題があった。例えば、誘導電動機には固定軸のジュール損があり、
発電効率を低下させる原因となっている。❸また、フライホイールを駆動するモータとして、
ンクロナスリラクタンスモータ
が用いられる場合もある(例えば特許文献2、非特許文献1を参
照)。シンクロナスリラクタンスモータは固定子導体を有していないことから、誘導電動機を用
いた場合の問題を解決することができる。この特許文献2の技術は、フライホイールが連結され
たシンクロナスリラクタンスモータを制御することで、駆動モード時には、電源系統からエネル
ギーをフライホイールに蓄積し、回生モード時には、フライホイールに蓄積されたエネルギーを
電源系統へ供給するものである。つまり、駆動モード時には、シンクロナスリラクタンスモータ
及びフライホイールが一定速度で回転し、電源系統の電力がフライホイールへ供給され、フライ
ホイールに機械エネルギーとして蓄積される。また、回生モード時には、フライホイールの回転
により蓄積された機械エネルギーが電気エネルギーに変換され、電源系統へ供給される。

電源系統に接続された負荷が変動し、電源系統の電力が変動(脈動)した場合には、前述の蓄電
装置に蓄積されたエネルギーが電源系統へ供給されることで、負荷変動を補償することができる。
通常、電源系統に接続された負荷の変動には、?低速な負荷変動と?高速な負荷変動がある。低速
な負荷変動は、低速であるが大容量の電力変動をもたらすものであり、高速な負荷変動は、高速
であるが小容量の電力変動をもたらすものである。前述のフライホイールを用いた蓄電装置を用
いた場合、フライホイールには所定のイナーシャが存在することから、低速な負荷変動を補償に
対応させる。そこで、本件は、電源系統の電力を平準化する際に、低速な負荷変動及び高速な負
荷変動を補償可能な電力平準化装置を提供するものである。

下図2のように、電力平準化装置1のSynRM制御部21は、連系点電圧V、負荷電流IL等に
基づいてFW回転速度基本指令Wfw_refbを算出し、FW回転速度基本指令Wfw_refb及びFW回転
速度Wfwに基づいてエネルギー偏差を求め、エネルギー偏差を反映したFW回転速度指令Wfw_ref
を生成してSynRM駆動インバータ2へ出力する。キャパシタ制御部23は、制限後バス電流
指令Idc_Lmtに基づいて高周波成分が反映されたキャパシタ電流指令Icap_refを生成し、キャパ
シタ電流偏差が0となるようにキャパシタ指令を生成し、キャパシタ指令から、キャパシタ電圧
Vcapからバス電圧Vdcを減算した電圧差を減算し、キャパシタ電圧指令Vcap_refを生成してD
C/DCコンバータ4へ出力することで、電源系統の電力を平準化する際に、低速な負荷変動及
び高速な負荷変動を補償――以上のように、電源系統の電力を平準化する際に、低速な負荷変動
はフライホイールにて対応し、高速な負荷変動はキャパシタにて対応することで、低速な負荷変
動及び高速な負荷変動を補償することが可能となる。

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による電力平準化装置を含む全体システムの構成例を示す概略図
【図2】電力平準化装置の構成例を示すブロック図
【図3】SynRM制御部、SynRM駆動インバータ及びSynRMの構成例を示すブロック図
【図4】連系インバータの構成例を示すブロック図
【図5】キャパシタ制御部、DC/DCコンバータ及びキャパシタの構成例を示すブロック図

 

【符号の説明】
1 電力平準化装置 2 SynRM(シンクロナスリラクタンスモータ)駆動インバータ 3 連
系インバータ 4 DC/DCコンバータ 5 SynRM 6 FW(フライホイール) 7 キ
ャパシタ 8 電源 9 負荷 11,13,15 電圧検出器 12,16 電流検出器 14
レゾルバ(回転角センサ) 21 SynRM制御部 22 バス電圧指令出力部 23 キャパ
シタ制御部 31 演算器 32 ランプ器 33,35 絶対値演算器 34,36 乗算器 
37,40,51,63,64,66,67 減算器 38 エネルギーレギュレータ 39 加
算器 41 速度制御器 52 電圧制御器 53,61 LPF(ローパスフィルタ) 54,
62 リミッタ 65 電流制御器 71 PWM(パルス幅変調)器 Vdc_ref バス電圧指令 
Wfw_ref FW回転速度指令 Idc_Lmt 制限後バス電流指令 Vcap_ref キャパシタ電圧指令 
Wfw_refb FW回転速度基本指令 W_ref ランプ後FW回転速度基本指令 W_ref2 FW回転
速度指令エネルギー Wfw2 FW回転速度フィードバックエネルギー Δω ドループ速度成分 
Idc バス電流指令 Icap_ref キャパシタ電流指令 V 連系点電圧 IL 負荷電流 Vdc バ
ス電圧 Wfw FW回転速度 Wfw_Hat FW回転速度推定値 Vcap キャパシタ電圧 Icap キ
ャパシタ電流



【オールバイオマスシステム事業篇:最新バイオマス粉砕技術】

 

❏ 特開2016-145716放射性セシウムを含む植物バイオマスの処理方法
【概要】
下図1のごとく、放射性セシウムを含む植物バイオマスから、糖質を含み且つ放射性セシウムの
50%以上が移行した液相部と、固相部とを得る分解工程S1と、放射性セシウムを含む液相部
を発酵させて、放射性セシウムを含む液相部廃液と、放射性セシウムを含まない第1気相部とを
得る液相部発酵工程S2と、固相部を発酵させて固相部残渣と、固相部廃液と、放射性セシウム
を含まない第2気相部とを得る固相部発酵工程S3とを備えている。分解工程は、植物バイオマ
スに糖化酵素を添加して粉砕する湿式ミリング処理を含むことで、放射性セシウムを含む植物バ
イオマスを、有効活用しつつ減容化する処理方法を提供する。

❏ 特許4065960 エタノール及び乳酸の製造方法
【概要】
パーム油は、世界で約3,550万トン/年生産され、そのうちの約87%をマレーシアとイン
ドネシアの2カ国で半々を占める東南アジアの代表的な農産物である(2005年実績、アメリカ
農務省統計資料による)。パーム油は大豆油等と比較し安価であることから、マーガリンや揚げ
物用の油など食用に利用されるほか石鹸や化粧品など工業用途にも多用されている。
パーム油生産のために栽培されるオイルパーム(アブラヤシ)は、生産性を維持に、20~25
年の間隔で再植栽培が必要とされる。マレーシアの場合、1980年からの本格的なプランテー
ションにより現在年間約4万ヘクタールの再植栽培が行われるため約3000万トンのパーム幹
が伐採されている。近い将来には、これまでのプランテーション面積拡大の結果として、毎年約
20万~25万ヘクタールもの再植栽培が必要になると見込まれている。再植栽培による伐採オ
イルパームは、幹に薬物を注入して立ち枯れさせるか、伐採後プランテーション内で放置又は焼
却処分しており、深刻な環境破壊につながることが懸念され、環境負荷を掛けない活用法の開発
が求められている。

オイルパーム幹は他の木質系バイオマスと異なり、幹の大部分が維管束や維管束を取り巻く繊維
質で構成されている。そのため、木材としての耐久性が不十分で、利用方法としては比較的強固
な外皮を合板等の表面加工資材として利用する程度であり、その他の部分は未利用、廃棄されて
いることから、特に幹の内側部分の早急な有効利用法の開発が必要である。一方、近年、石油資
源の枯渇や地球温暖化問題の軽減方策として燃料用エタノールなど石油代替エネルギーや乳酸な
どバイオプラスチック原料の製造技術の開発が活発に行われている。特に燃料用エタノールに関
しては、自動車燃料であるガソリンの代替燃料として注目を集めており、その需要は非常に大き
い。しかし、現在、燃料用エタノールの多くはトウモロコシ澱粉やサトウキビ汁等の食用農産物
から製造されており、将来の人口増に伴う食用農産物需要の増大などにより、食用途とエネルギ
ー用途間での競合が生じることが予想されている。そのため農作物の未利用部分、即ち、農産廃
棄物から燃料用エタノールなどへの変換技術の開発が切望されているが、未だ技術開発は困難を
極めている状況である。伐採されるオイルパーム幹は、産出される量、持続的なオイルパーム産
業の発展及び環境負荷低減の観点からも非常に有望なバイオマス資源である。

下図1のごとく伐採されたオイルパーム幹10から採取した組成物である樹液を微生物で発酵し
てエタノールを製造する。また、オイルパーム幹から採取した樹液と樹液を採取した後のオイル
パーム幹の繊維を加水分解処理して得た単糖及びオリゴ糖の混合糖液とを混合し、微生物で発酵
してもよい。一方、伐採されたオイルパーム幹から採取した組成物である樹液を微生物で発酵し
て乳酸を製造する。このとき、オイルパーム幹から採取した樹液と樹液を採取した後のオイルパ
ーム幹の繊維を加水分解処理して得た単糖及びオリゴ糖の混合糖液とを混合し、微生物で発酵し
てもよい、効率よく安定して安価に得られるエタノール及び乳酸並びにこれらの製造方法を提供
する。

【符号の説明】
10:オイルパーム幹 11:中心領域 12:中間領域 13:外側領域 14:樹皮 15:グル
コースのピーク

❏ 特開2013-141415単糖の製造方法及び製造装置並びにエタノールの製造方法
  及び製造装置
【概要】
固体酸触媒による処理においては、完全混合流れ方式の連続槽型反応器(CSTR)で固体酸触
媒とオリゴ糖等とを攪拌して反応を行う場合、原料と生成物とが均一混合される混合流れ方式の
特性として、反応器から得られる生成物中に未反応原料が存在するため、高い単糖収率・転化率
を得ることは難しい。又、反応後に固体酸触媒を沈降分離して除去する操作が必要になるが、攪
拌中の衝突等によって固体酸触媒の微細な破砕粉が生じると、これを除去するには、固体酸触媒
の沈降分離に要する時間が非常に長くなり、沈降分離時間が不十分だと、得られる生成物に微細
粒子が含まれ、生成物を用いてエタノールや他の化学物質を生成すると、その際の発酵反応や化
学反応に対して影響を及ぼすなどの問題がある。
一方、触媒を充填した固定層式の管型反応器(PFR)の場合、原料と生成物とは混合されない
ので、高い収率・転化率を得ることはできるが、分解が不十分な低分子量セルロースやバイオマ
ス粒子が固体酸触媒間の目詰まりを起こし易く、反応器を閉塞させる可能性がある。本発明は、反
応の収率・転化率を高めると共に、触媒反応後の固体酸触媒の分離時間及び閉塞に関する問題を
解消し、リグノセルロース系バイオマスから単糖を好ましい性状で効率的に供給可能な単糖の製
造方法及び製造装置を提供し、バイオエタノールの製造方法及び製造装置の向上を実現すること
である。
下図1のごとく、セルロース又はヘミセルロースの部分加水分解物を、固体酸触媒を用いた加水
分解によって糖化する。部分加水分解物を固体酸触媒と攪拌混合する工程と、この工程の生成物
を固体酸触媒を充填したカラムに通過させる工程とによって加水分解が進行する。カラムは濾過
装置の役割も果たす。バイオマスに加圧熱水を作用させてヘミセルロースを選択的に加水分解し
、反応後の固体残渣に糖化酵素を作用させることで、ヘミセルロース及びセルロースの部分加水
分解物が各々得られ、各糖化によりキシロース及びグルコースを得る。単糖の微生物発酵により
エタノールが得られ、フルフラール及びプラスチックの製造にも利用され、質材から、固体酸触
媒反応をカラムを用いて効率的に実施可能な単糖の製造技術を提供し、バイオマスエタノールや
他の有用物質の製造を促進する方法を提供する。

【符号の説明】 A:エタノール製造装置、 R:触媒反応装置、 1:加圧熱水反応装置、
1a,5e,7e,11,21,23,33:ポンプ、 1b:加熱器、 1c:水量調整弁、
1d:反応槽、 1e:制御装置、 2:固液分離器、 3:冷却器、 4:酵素反応装置、
5:第1触媒反応装置、 5a:第1混合装置、 5b:第1固液分離装置、5c:第1触媒カラ
ム、 5d,7d,32:加熱装置、 6:第1発酵装置、 7:第2触媒反応装置、 7a:第2
混合装置、 7b:第2固液分離装置、7c:第2触媒カラム, 8:第2発酵装置、 9:蒸留
装置、 10:排水処理装置、 12:流量計、 13:触媒反応装置、 14:攪拌装置、 15
,19:酸化還元電位計、 16,20:pH計、 17:触媒分離槽、 17a:管状部材、
17b:触媒排出口、 17c:排出口、 18:触媒返送装置、 22:触媒回収槽、 24:
フロートスイッチ、 25:排出弁、 26:ガスブロア、 27,28,29:開閉弁、 30:
カラム装置、 31:筒部材、 34:入り口、 35:出口、 B:バイオマス、 E:エタノー
ル、 W:水、 W':加圧熱水、 S:固体残渣、 Xa,Xb:固体酸触媒、 L1:原液、
L2:混合液、 L3:上澄み液、 L4:沈殿物、 H1,C1:一次糖化液、 H2,H2',
C2、C2':二次糖化液、 F1,F2:発酵生成物、 D:排水。 

  ● 今夜の一曲

 『コジコジ銀座』 唄:ホフディラン Music Writer:作詞 さくらももこ/作曲:ホフディラン
『コジコジ』(COJI-COJI)は、さくらももこによる日本の漫画作品。漫画は『きみとぼく』(
ソニー・マガジンズ)より1994年から1997年まで連載。アニメは1997年から1999年までTBSほか
で放送。主にメルヘンの国を舞台にコジコジと、そこの住人たちが繰り広げる日常生活を描くメ
ルヘンであると同時に、ナンセンスなギャグ漫画、という新しいジャンルの開拓に挑戦した作品。
さくらももこ独特のシュールさが濃厚に出た作風である。さくらももこ作品として『ちびまる子
ちゃん』の世界とリンクしている。同作中にまる子が出演していたりする描写もある。アニメ版
では該当部分は削除。また、キャラクターの多くは「神のちから」に登場したキャラクターのデザ
インを流用。ソニー・マガジンズの月刊少女マンガ誌「きみとぼく」にて、1994年12月号(創刊号
)から1997年5月号にかけて連載された.。ソニー・マガジンズコミックスから単行本3巻が発売。
連載終了後も、新潮社刊行のさくらももこ編集長による雑誌「富士山」(2000年)などに新作掲
載。 2001年にソニー・マガジンズが漫画事業から撤退しコミックスが絶版後、2002年に幻冬舎か
ら未収録作などを加えた完全版としてコミックス(全4巻)が発売、



2004年には、2度目の新装版コミックスが発売。2009年には集英社から3度目の新装版コミックス
が発売に加え、りぼん2009年5月号で『ちびまる子ちゃん』とのコラボ漫画が描かれ、2009年8月
号に不定期連載する旨を告知。実際に掲載されたのは2010年11月号、2013年1月号・6月号の3回
のみで2018年8月に作者のさくらの逝去により本作は未完絶筆となる(合掌)。

  ● 今夜の一品




                                                   

狐火の燃へつくばかり枯尾花

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天   瑞 てんずい
ことば --------------------------------------------------------------------------------------
「いずくんぞわが今の死の、昔の生に愈らざることを知らんや」
「生は死を知らず、死は生を知らず、来は去を知らず、去は米を知らず」
----------------------------------------------------------------------------------------
三つの楽しみ
孔子が泰山を旅行したときヽ部の町はずれで栄作期と出会った・見ればヽ栄啓期は鹿の毛皮に繩の
帯という貧相ないでたちなのに、琴をひいては歌をうたっている。孔子はたずねた。
 「伺がそんなに楽しいのですか」
 「たくさんありますよ。天が作ったもののなかでも、人間は万物の霊長。わたしはその人間に生
まれることができた。これが第一の楽しみ。その人間には男女の別があって、男の方が身分が商い。
わたしは男に生まれた。これが第二の楽しみ。せっかく人間に生まれながら目も月も見られず、産
衣のまま死んでゆく者もいる。だのにわたしはもう九十歳だ。これが第三の楽しみ。
貧乏は士たるものの常、死は人の終わり。常のまま終わりを迎えるのだ。わたしにはなんの心残り
もない」
「立派だ! なんとこだわりのない自由な人だろう」
 孔子は感嘆した。

杞 憂 Anxiety
杞の国のある男が、今に天と珀がくずれたらどうしようかと、心配で心配で夜もねむれず、食物も
のどを通らなかった。これを見かねた人が、教えてやった。
「天というものは気が積もっただけさ。気はどこにでもある。からだを曲げたりのぱしたり、息を
吸ったり吐いたりするのも、一日中この天の中でしているのだ。くずれる心配などいるものか」
 男がききかえした。
「天がそんなものだとしたら、日や月や星が落ちてこないだろうか」
「日も月も星も、みな気でできているのさ。ただ光っているだけのちがいだよ。たとえ落ちてきて
ぶつかっても、けがなどするものか」
「では、他がくずれたらどうする」
「地は土くれが積み重なったものさ。どこもかしこも土なのだ。一日中この他の上を踏みしめて歩
いているのだ。くずれる心配などいるものか」
 男は心配ごとがとけて、たいへん喜んだ。教えてやった人もたいへんよろこんだ。
 この話を長庶子という人がきいて笑った。

「雨、風、雲、霧、虹、それに四季の変化も、みな積もった気が天にあらわれたものだ。山、河、
水、火、草、石、これはみな積もった形が他にあらわれたものだ。積もった気であり、積もった土
くれならば、くずれないともいえないだろう。
 いったい、天と他は虚空の中の一つのちっぽけな物にすぎない。だが目にみえるものの中ではい
ちばん大きい。その果てをきわめることができないのは当然だ。おしはかることができないのも当
然だ。
天と他がくずれ落ちるのを心配するのはたいへんなとりこし苦労だ。が、くずれ落ちないとするの
もまた正しいとはいえない。いつか、くずれる時は必ずくるだろう。その時になったら心配せずに
はいられない」

 列子がこれをきいて笑っていった。

 「天と他がくずれるというのもまちがいなら、くずれないというのもまちがいだ。誰にもわかり
はしない。だが、いったい物事は、見方によって一つの考えが成りたてば、同時に反対の考えも成
りたつものだ。生きている時は死というものがわからないし、死んだ時には生というものがわから
ない。未来は過去がわからないし、過去は未来がわからない。くずれるとか、くずれないとか、そ
んなことに気を使うには及ばない」
       
〈長庶子〉『史記』にも『漢書』にもその名が見える。道家に属す人であろうが、今に伝わる書物
はない。
杞憂 心配しないでいい事を心配するのを「杞憂」というのは、この話からきている。

 Kitsunebi

【歳時記:俳句トレッキング】

狐火の燃へつくばかり枯尾花    与謝蕪村

❦ Haiku poet Buson Yosano wrote a withered Susuki(silver grass) swaying in the wind in the
field of the night in analogy to the uncanny firefly(Kitsunebi as Kigo as season words).

 

  ● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.20    

    

第5章
兵隊と橋が見えなくなると、ウィスタンが足を止めた。また本道を離れ、森の中をトる細道を行こ
うと言った。

「わたしには本能的な選択で、森を通る道を見るとつい行きたくなるんです」と言った。
「それに、この道を行けばかなり近道になるはずなんです。少なくとも、兵隊も歩くが山賊も歩く
という、こういう広い道よりずっと安全ですよ」

その後しばらく戦士が一行の先頭に立ち、どこかで拾った棒切れで茨の藪を叩き、掻き分けながら
進んだ。エドウィンは馬の日輪をとり、ときどき話しかけて落ち着かせながら、戦士のすぐ後ろに
つづいた。おかげで、二人の後から行くアクセルとベアトリスにとって、その近道――なのかどう
か――はかなり歩きやすくなっていた。だが、それでも山道はやはり山道だ。しだいに険しく、歩
きにくくなっていった。周囲の木が密になり、もつれた木の根やアザミが顔を出して、一歩一歩に
注意が必要だった。道中の二人は、いつもどおりほとんど言葉を交わさなかったが、途中、前の二
人からかなり後れたとき、ベアトリスが「いるの、アクセル」と後ろを呼んだ。

「いるよ、お姫様」と、実際には数歩後ろにいるだけのアクセルが笞えた。「心配いらない。この
あたりの森にはとくに危険だという噂はないし、大平野からは遣いしな」
「いま考えていたの、アクセル。あの戦士は役者としてかなりのものですよ。あの演技ならわたし
だって喘されたかもしれない。あんなに髪の毛を引っ張られても地を出さなかったしね」
「確かによく演じていたな」
「いま考えていたの、アクセル。わたしたち、村をかなり留守にするわけでしょう?よく行かせて
くれたと思わない?だって、まだまだ種まきだってあるし、柵や門の修理だってあるし。手が必要なときにわ
たしたちがいないって、そのうち文句が出るんじやないかしら」
「それは確かにあるだろうな、お姫様、だが、長く留守をするわけではないよ。それに息子に会い
たいという気持ちは、司祭だって理解してくれているさ」
 「そうだといいけど、アクセル。ただね、一番忙しいときにいなくなって……なんて言われたく
なくて」
「そういうことを言う人はいつだっているさ。だが、ましな人たちはわかってくれるし、同じ立場
だったら自分もそうすると思っているよ」

二人はしばらく黙って歩きつづけた。やがて、「いるの、アクセルーとベアトリスがまた呼んだ。

「いるよ、お姫様」
「あれは間違っていたわよね、わたしたちの蝋燭を取り上げるなんて」
「もうどうでもいいじやないか、お姫様。それに夏になるし」
「いま思い出していたの、アクセル。わたしのこの痛みって、蝋燭がなかったせいなんじやないか
しら」
「それはどういうことかな、お姫様。どうしてそうなる」
「暗さのせいで痛みが始まったんじやないかと思うの」
「おっと、そこに鯨の木があるよ、お姫様。そこで転んだらたいへんだ」
「気をつけます。あなたもね、アクセル」
「暗さのせいで痛くなったって、どういう意味かな、お姫様」
「この前の冬、村の近くに妖精が出るって聯が流れたのを覚えている、アクセル?自分では見てい
ないけど、闇を好む妖精だっていう話だったわよね。わたしたちって、長い間ずっと闇の中で過ご
していたわけだしその妖精が知らないうちにときどき来ていたんじやないかしら。寝室に入り込ん
で、いたずらをしたんじやないかと思うの」

「部屋に入られたら、いくら暗くてもわかったろうよ、お姫様。たとえ真っ暗闇でも、動き回る音
とか溜息とか、何か聞こえたはずだ」
「いま思うとね、アクセル、この前の冬は、夜中に目が覚めたことが何度かあったのよ。あなたは
横でぐっすり眠っていた。でも、わたしは何かの物音で目が覚めた、と確かに思ったの」
「鼠か何かの生き物じゃないのかな、お姫様」
「そういう音じゃなかったし、聞こえたと思ったのはI度きりじゃないのよ。それでね、いま思う
と、痛みが始まったのも同じころだったの」
「まあ、妖精のせいだとしても、それがどうだと言うんだ、お姫様。おまえの痛みはちょっと
気になる程度なんだろう?悪い妖精というよりいたずら好きのやつの仕栗だろうな。エニッドさん
の編み物隨に鼠の頭を入れた悪がきがいたろう。ただ、びっくりするのを見たかったっていう、あ
れと同じだ」
「そうよね。そうだわ、アクセル。悪さというより遊び半分ね。そのとおりだと思う。それでもね、
あなた……」ベアトリスはしばらく口を閉じ、幹が触れ白っている二本の古木の隙間を抜けること
に専念した。そしてつづけた。「それでも、村に帰ったら、やはり夜には蝋燭がほしいわね。妖精
ならまだしも、もっとたちの悪い何かに変なことをされたくないもの」
「なんとかするさ。心配いらないよ、お姫様。村に炭ったら、すぐに司祭に話そう。それに、これ
から行く修道院で痛みの治し方を坊さんたちに教えてもらえるかもしれない。そうしたら、これま
でのいたずらはもうなくなるも同然だI
「そうね、アクセル。もともとそんなに心配しているわけじゃないの」

                       ❦

近道になるというウィスタンの言葉が正しかったのかどうか、判断は難しい。いずれにせよ、真昼
を少し過ぎたころ、四人は森を出て本道に戻った。そのあたりはいたるところ轍だらけで、ぬかる
みも点在していたが、やはり本道だけあって、歩きやすさは段違いだ。しかも先へ行くにつれて地
面は乾き、平らになっていった。頭上に差しかかる木々の枝の合間から心地よい日の光が射し込み、
四人は上機嫌で旅をつづけた。

やがてウィスタンがまた停止の合図を出した。道の前方を指差し、「一騎、前に行っていますね。
さほど遠くありません」と言った。さらに少し行くと、道の前方片側に空き地が見え、真新しい足
跡がそこへ向かってつづいていた。四人は顔を見合わせ、慎重に前進した。
空き地に近づいた。かなりの大きさかおる。かつて繁栄していた時代に、ここに誰かが家を建てよ
うとしたのかもしれない。きっと果樹園で囲まれた家になるはずだったろう。本道から分かれる脇
道は、いまでこそ雑草に覆われているが、よく見れば丁寧に掘られていて、その終点に大きな円形
の空き地がある。上に天があるだけの空っぽの地面だが、中央に一本、オークの大木が立ち、大き
く枝を広げていた。一行がいまいる場所からも、その大木の下に一つの人影が見えた。木の影に覆
われた地面にすわり、木の幹に背中を預けている。いまは横からの輪郭しか見えないが、どうも甲
冑をまとっているようだ。金属に覆われた二本の脚をどすんと草の上に投げ出しているところが、
なんだか子供を思わせる。幹から突き出している枝葉のせいで顔がよく見えないが、兜はかぶって
いない。近くで、鞍を置いた馬がのんびり草を食んでい
た,

「名乗られよ」と男の声が木の下から呼んだ。「山賊や盗賊ならば、剣を手にお相手つかまつる」
「返事を、アクセル殿」とウィスタンがささやいた。「何のつもりか探りましょう」
「ただの旅人です、騎士殿」とアクセルが答えた。「どうぞこのままお通しください」
「総勢何人か。馬の足音も聞こえるようだが」
「蹄を傷めた馬一頭に人間四人です、騎士殿。わたしと妻は老いたブリトン人。迪れは、まだ髭も
ないサクソンの少年と、半白痴で唖者の兄です。兄弟の親類縁者からわたしどもに託されました」
「では、こちらへ参られよ、友よ。分かち合えるパンがある。休息をお望みであろう。わしも話し
相手がほしい」
「行くの、アクセル?」とベアトリスが言った。
アクセルが返事をするまえに、「行きましょう」とウィスタンが言った。「けっこうなお年のよう
だし、危険はないでしょう。ですが、お芝居はつづけましょう。わたしはまた例の口と目に戻りま
す」
「でも、甲胃姿で、武器を持っていますよ、ウィスタン様」とベアトリスが言った。「あなたの剣
は毛布や蜂蜜の壹と一緒に馬の背です。いざというとき間に合いますか」
「剣は、疑り深い目から隠しておくのが一番です、奥様。大丈夫、必要なときにはすぐに取り出せ
ます。エドウィンが手綱を持って、馬がわたしからあまり遠く離れないようにしていてくれますか
ら」
「友よ、こちらへ参られよ」見知らぬ男は強張った姿勢のまま、身じろぎ一つせずに言った。
「心配は無用。わしは騎士で、やはりブリトン入だ。確かに武装しておるが、近くに寄れば、ただ
の髭もじやの老いぼれにすぎぬことがわかる。身につけているこの剣と甲冑は、わが敬愛する王、
かの偉大なるアーサー王に命じられた任務を果たすためのもの。王が天国に旅立たれてから、はや
何年か。わしが怒りのうちにこの剣を抜いたのも、同様に昔のことよ。そこにおるわが軍馬ホレス
も老いた。哀れな。これだけの金物をずっと背負いつづけてきて、見よ、脚は曲がり、背中は垂れ
ておる。わしがまたがるたびに苦しむ。だが、わがホレスは大きな心の持ち主だ。この生き方以外
、断じて受け付けないことをわしは知っておる。だからこうして、偉大な王の名のもとに完全武装
で旅をつづけておる。わしかホレスがもうI歩たりと進めなくなるまで、旅はつづく。さあ、友よ。
恐れずともよい」

「一行は脇道から空き地に入り、オークの大木に向かった。近づくにつれ、騎士の言葉どおり、恐
れるには及ぼないことがアクセルにもわかってきた。とても背が高そうな騎士だが、甲冑の中身は
筋金入りというより、ただ痩せ緬っているだけに見える。甲冑はぼろぼろで、錆が目立つ。たぶん
、修繕に修繕を重ねてきたものだろう。本来は白かったと思われるチュニックにも、繕いの跡が歴
然としている。甲冑から突き出した顔はやさしそうで皺だらけだし、頭はほぼ禿げていて、白い長
い毛が数本飛び出し、風になびいている。両脚を大きく開いて投げ出し、地面にへたり込んでいる
姿は、普通なら哀れをもよおす光景だったろう。だが、ちょうど頭上の枝の合間から日の光が射し
、男の体に光と影のまだら模様を作っていた。男はまるで玉座にすわる入物のように見えた。
 
「あわれなホレスは、今朝、食事の機会を逸した。目覚めたのが、たまたま岩だらけの場所だった
のでな。しかも、わしが朝じゆう急がせた。さよう、不機嫌で、休みもやらず歩かせつづけたこと
を認めよう。ホレスの歩みはどんどん遅くなったが、わしもいまではこいつの芸を知りつくしてい
て、譲らなかった。疲れてなどおらんはず-そう言って、少し拍車をくれさえした。これは多芸な
馬でな、いろんな技を仕掛けてくるが、わしは間く耳持たんのが常だ。だが、今朝はなぜか足取り
が重くなる一方で……そこで非情になりきれんのがわしの悪い癖だ。
こいつがあざわらっているのを承知で、よしよしと言ってしまった。止まっていいぞ、ホレス。食
え、と。こうして、諸君の前に、馬にまでばかにされたじじいの身をさらしているというわけだ。
さあ、参られよ」騎士は、甲冑をがちやがちや言わせながら手を仲ばし、目の前の草の上に置いて
あった袋から一塊のパンを取り出した。「焼き立てだ。通りかかった粉屋でもらった。一時間も経
っておらん。さあ、友よ、すわれ。食おうではないか」

アクセルに腕を支えられ、ベアトリスがオークの節くれだった根に腰をおろした。アクセルも妻と
老騎士の間にすわった。すわってみて、背後の苔むした幹に背を預けられることをありかたいと思
った。頭上からは、樹冠を飛び回る鳥の歌声が聞こえる。回されてきたパンは焼き立てで柔らかか
った。ベアトリスはしばらくアクセルの肩に寄りかかり、荒い呼吸に胸を波打たせていたが、やが
ておいしそうに食べはじめた。
ウィスタンはすわらなかった。しばらくケタケタと笑い、愚かさのほどを騎士にたっぷり見せつけ
てから、ふらふらと去っていった。向かう先には、馬の手綱をもって丈高い草の中に立っているエ
ドウィンがいる。ベアトリスがパンを食べ終え、身を乗り出して老騎士に話しかけた。

「ご挨拶が遅くなって申し訳ありません、騎士様」と言った。「でも、本物の騎士様を見ることな
どめったにありませんから、畏れ多くて。お怒りでないといいのですけど……」
「怒ってなどおりませんよ、ご婦人。お会いできて嬉しいかぎりだ。先はまだ遠いのですかな」
 「息子の村に行きます。この山中にある修道院の賢者にお会いしたくて山道を来ましたから、
あと一日というところでしょうか」
「ああ、修道僧の面々か。あなた方なら親身にしてもらえよう。わしも昨春はホレスのことでずい
ぶん肋けてもらった。蹄に毒が入ってしまってな、もう生き延びられないかと心配した。わし自身
も何年か前、落馬の怪我から回復するとき、修道院の痛み止めにはたいへん世話になった。だが、
あの唖者の治療を求めておるのなら、あの唇に言葉を取り戻すのは神にしかできぬ業であろう」

騎士はそう言いながらウィスタンを見やったが、そのウィスタンは白痴の表情を顔から拭い去り、
まっすぐ騎士目かけて歩いてくるところだった。
「驚かせて申し訳ありません、騎士殿。言葉を取り戻しました」と言った。
老騎士はあっけにとられ、ついで甲冑をきしませながら身をよじって、問い質したそうにアクセル
を見た。
「友人を責めないでください、騎士殿」とウィスタンが言った。「わたしの頼みでしていたことで
す。あなたを恐れる理由がないとわかりましたので、偽りのしぐさをやめます。どうぞお許しを」
「気にはせんよ」と老騎士が言った。「この世では用心するに越したことはない。だが、今度はわ
しがそなたを恐れなくていいように、何者か教えてもらえるかな」 「東の沼沢地から来たウィスタンと言いま
す、騎士殿。王の用事で、このあたりを旅しています」
 「それはまた遠くからだ」
 「はい、遠くから。このあたりの道は見慣れていないはずなのですが、なぜか、角を一つ曲がるごとに遠い
昔の記憶が騒ぐような気がします」
 「では、いつか来たことがあるに違いない」
 「おそらく。わたしの生まれは沼沢地ではなく、ここよりもっと西の国だと聞かされています。ですから、お
目にかかれたのはますます幸運でした、騎士殿。あなたはガウェイン卿ではありませんか。西国のご出身
で、いまはこのあたりを巡っておられるという……?」
 「わしは確かにガウェインだ。かつて英知と正義でこの国を治めた偉大なるアーサー王の甥、ガウェイン
だ。数年前までは西国に腰を据えていたが、いまはホレスとともに気の向くまま旅をしておる」
 「好きに時間が使えるものなら、わたしも今日にも西に向かい、かの国の空気をこの胸に吸ってみたいも
のです。ですが、早く王の用事をすませ、知らせを持ち帰らねばなりません。偉大なアーサー王の甥、騎士
ガウェイン殿にお目にかかれたのはじつに光栄です。サクソン人のわたしでも、王の名には尊崇の念を抱
いています」
 「それを聞いて、わしも嬉しい」
 「ガウェイン卿、わたしの言葉が奇跡的に回復したところで、お尋ねしたいことがあります」
「なんでも」
「あなたの横にすわっているご老人は、アクセル殿と言います。ここから二日のところにあるキ
リスト教の村に、農夫として暮らしておいでです。年齢的にはガウェイン卿ご自身と近いでしょ
う。そこで、このご老人のお顔をご覧ください。かつてあなたが見知っていた誰かに似ていま
せんか」
「何をまた、ウィスタン様」眠っているとばかり思っていたベアトリスがそう言って、身を乗り
出した。

「それはどういう意味ですの」
「悪気はありません、奥様。ガウェイン卿は西国の方です。昔、あなたのご主人を見かけたこと
がないかなと思いまして。別に悪いことではないでしょう?」
「ウィスタン殿」とアクセルが呼んだ。「最初に出会ってから、ときどき不思議そうな顔でわた
しを見ておられるので、か理由を、と思っていました。わたしを誰だとお思いでしたか」

見下ろすように立っていたウィスタンが膝を折ってしやがみ、オークの下に並んですわる三人と
顔を突き合わせた。威圧感を与えないようにという配慮からしたことかもしれないが、アクセル
には、三人の顔をもっとよく見たくてしたことのように思えた。

「とりあえず、ガウェイン卿、お願いです」とウィスタンが言った。「頭を少し回すだけですか
ことです。子供の遊びと思っていただきたい。どうでしょう。横のご老人を見て、過去に会った
ことがあるかどうか教えてください、ガウェイン卿」

ガウェインはフフフと笑い、上体を前に動かした。まるで遊びへの参加を求められて、積極に楽
しもうとしているかに見えた。だが、アクセルの顔を見つめているうち、表情が驚きのれに変わ
った。衝撃を受けた人の表情と言ってもいいかもしれない。アクセルが本能的に顔をそむけるの
と同時に、老騎士も上体を引き戻し、また木の幹に寄りかかった。
            
                         カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

                                    この項つづく

 
【エネルギー通貨制時代 22】 
”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
 Mar. 3, 2017 

【蓄電池篇:最新蓄電池技術事例】
●酸化ケイ素ナノ薄膜で容量5倍のリチウムイオン電池負極 高容量・小型化
11月21日、産業技術総合研究所は月、導電性基板上に蒸着でナノメートルスケールの一酸化
ケイ素(SiO)薄膜を形成し、その上に導電助剤を積層させた構造のリチウムイオン2次電池用負
極を開発したことを公表している。それによると、長寿命でありながら、現在主流である黒鉛負
極の約5倍に相当する容量を持ち、リチウムイオン2次電池の高容量化や小型化に貢献する。
リチウムイオン2次電池の高容量化には、負極の活性化物質に一酸化ケイ素を用いることが有望
としれてきた。ケイ素は充放電に伴うリチウムイオンの取り込みと放出で300%以上の体積変
化が生じ、活物質、導電助剤、結着剤からなる電極構造が維持できず劣化する。そこで、粒子径
を300~500nm(ナノメートル)以下まで微細化すれば劣化の抑制効果が見られるという特性を生
かし、一酸化ケイ素の薄膜を作製。❶まず、集電体であるステンレス上に一酸化ケイ素を蒸着。
❷導電性を付与に、導電助剤としてカーボンブラックに結着剤を加え分散させた混合液を、蒸着
した一酸化ケイ素膜の上から塗布・乾燥させて導電助剤層を作製、❸一酸化ケイ素薄膜に導電助
剤層を積層。

この電極を負極とし、正極としてリチウム(Li)を用いた電池の充放電容量の、サイクルごとの
変化を調べる。ここで、以前からある粒径10μm(マイクロメートル)の一酸化ケイ素粉末で作
製した電極と、現行の材料である黒鉛を用いた電極を用いた2つの電池との比較を行う。従来の
粉末を用いた電極ではサイクルに伴う容量劣化が顕著だったが、黒鉛電極ではサイクル劣化は見
られないが、容量は372mAh/gと小さい。これに対して、今回開発した電極は、1サイクル目から
大容量が得られ、その後の充放電でも安定した容量を保ち、200サイクルを経ても2000mAh/g以上
の容量を示す。2サイクルから200サイクル目まで容量維持率は97.8%を示し、200サイクルでの
クーロン効率は99.4%と、充放電におけるリチウムの取り込みと放出が可逆的に行われているこ
とが検証。今回得られた2000mAh/gを超える容量は、一酸化ケイ素の理論容量2007mAh/gとほぼ一
致し、電極を構成する一酸化ケイ素のほぼ全てを電池の活物質として利用できていることが分か
る。

但し、この電極は初回充電時に大容量を必要とし、充放電に関与しないリチウムケイ素酸化物(
Li4SiO4)の生成反応に消費され、このまでは、正極リチウムの消費性能が低下。今後、あらかじ
めリチウムと反応させるプレドープ処理した電極を、既存正極と組み合わせ、性能実証試験を行
う方針。併せて、蒸着法やそれ以外の方法での拡大試験も実施する予定。

【関連最新特許】
❑ 特開2018-172244 リチウムスズ硫化物 国立研究開発法人産業技術 2018.11.08
リチウム、スズ及び硫黄を構成元素として含み、前記リチウムと前記スズとの組成比(Li/Sn)がモル比
で1.5~3.5であり、前記硫黄と前記スズとの組成比(S/Sn)がモル比で2.5~4.5であり、立方晶
岩塩型構造の結晶相を有する、リチウムスズ硫化物で、イオン伝導度が高く、リチウムイオン二
次電池用の固体電解質又は電極活物質として使用することができる化合物の提供。

尚、紙面の都合上で記載漏れ記事は後日掲載。


● 網膜裂孔は突然に
11月18日、15:00、左眼に異変が起きる。網膜裂孔(血液が眼球にリーク)。10年前
にもディスプレイでの仕事中に発生(異常結象)。翌日レーザー網膜光凝固術、3日間安静し、
10日後再検査、2月末要観察。『ラブ・ストーリーは突然に』は『愛と死をみつめて』に変わ
ってしまってか?故石井智幸と誓い合った"革命”はここで潰えるというのか?

  ● 今夜の一品

いのちのはてのうすあかり

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天   瑞 てんずい
ことば --------------------------------------------------------------------------------
「いずくんぞわが今の死の、昔の生に愈らざることを知らんや」
「生は死を知らず、死は生を知らず、来は去を知らず、去は米を知らず」
----------------------------------------------------------------------------------------
死はいこい
子貢は学問をするのがいやになってしまった。そこで孔子に申しでた。
「しばらく休みたいのですが」
「人生に休みなどない」と孔子はいった。
「では、わたしは休ひことができないのですか」
「いや、あるとも。お墓をごらん。こんもりと、広々と、うず高く、深々としているではないか。
あそこに行けば休めるよ」
「なるほど、死とはたいしたもの。小人にとってはいやいや行くところだが、君子にとっては、い
こいの場所なのですね」
「そのとおりだ。世間の人は生きることが楽しいとばかり信じこんでいて、生きることの苦しみを
知らない。年をとれば心身が衰えることは知っているが、心安らかになることは知らない。死ぬの
がいやだと思いこんでいて、死がいこいだということがわからない」

「虚」
ある人が列子にきいた。
「あなたはなぜ『虚』を尊ぶのですか」
列子はこたえた。
「いや、『虚』は尊ぷも尊ばないもない」
尊べば虚ではない 『呂氏春秋』不二篇にこういう論評がある。「老前は柔を尊び、孔子は仁を尊
び、墨摺は廉を尊び、関尹は清を尊び、子列子は虚を尊ぶ」。だが、『列子』にいわせると、尊ぶ、
尊ばないという価値判断をくだすこと自体が、すでに「虚」でないというのだ。

金持になる秘訣
斉の国氏は大金持で、宋の向氏はたいへん貧乏だった。そこで、向氏は斉に出むいて、どうしたら ″
金持になれるかとたずねた。
国氏はこう答えた。
「うまく盗むのが秘訣だ。わたしは盗みだしてから、一年後にはどうにか食えるようになり、二年
で楽になり、三年で身上を残した。それ以後は隣近所にほどこしをするまでになった」
向氏はたいへん喜んだ。が、盗むということばだけをうのみにして、その盗みかたは考えなかった。
そこで塀をのりこえ人の家に忍びこみ、手あたりしだいに盗んだ。するとたちまちつかまって、前
から持っていたなけなしの財産まですっかり没収されてしまった。
向氏は、これも国氏にだまされたからだと文句をいいに行った。

「どんな盗み方をしたのかね」と国氏はきいた。
向氏はありのままに話した。
「ああ、まるっきり盗みかたをまちがえているな。いいか、では敢えてやろう。天には四季があり、
地には五穀、草木がある。わたしはその天の時、地の利を盗んで、穀物を植え、野菜を育て、垣根
をつくり、家をたてた。また鳥やけものをとったり、魚や貝をとった。これこそ盗みではないか。
いったい穀物・野菜・鳥獣・魚貝は、みな天が作ったものだ。もともとは人間のものではない。わ
たしは天から盗んだから、罪にはならない。どだい金銀財宝は人が集めたものだ。天があたえたも
のではない。あんたはこれを盗んだから罰せられたのだ。文句をいう筋あいはない」

向氏はわけがわからなくなって、また国氏が自分をだますのだな、と考え、東郭(とうかく)先生
にたずねた。東郭先生はいった。

「お前のからだだって盗んだものではないか。そもそもお前は、陰陽の和合を盗んで生まれてきた
のだ。ましてその他の物は、みんな盗んだものだ。天地万物は互いに区別がないものだ。それをこ
れだけは自分のものと境界をたてるからまちがいがおこる。国氏は、天地の物を公然と盗んだから
罪はない。お前は人の物をこっそり盗んだから罰せられたのだ。
だが公私の別をたてたところで盗みは盗み、また公私の別をたてずとも盗んでいるにはちがいない。
世にいう公は公、私は私としておいてもよい。だが、天地の節はそんなことを問題にしない。天地
の徳がわかれば、やれ、どれが盗みだとか、盗みでないとかいう区別をたてるには及ばない」

※ "天地の徳"とはつまりは共同体が生み出した叡智ある処世テックであり方便(レトリック)と
理解でいるだろう。

 

#IHearYou それはそうだけれどⅠ

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第66章 統治者はへヽりくだらねばならぬ
百川の流れを集める大河と海洋、それは川の王者である。川より低く位置するから、川を集めて王者と
なる。
同様に、人民を統治しようとすれば、まず辞を卑くしてへりくだらねばならや。人民を指導しようとす
れば、まず退いて後に従わねばならぬ,聖人は、この道理をわきまえている。したがって、聖人の統冶
のもとでは、人民はいささかの抑圧をも感じないレ、聖人の指導のもとでは、人民はいささかの束縛を
も感じない。
その結果、万民ことごとく聖人を推戴して、だれひとり争いをしかけようとはしない。それというのも、
聖人の方で、ひとと争う心を捨てているからだ。

江海は百谷の王 韓非の同門李斯は、他国賓の故をもって追放されようとしたとき、始皇帝に上書した。
いわく、「泰山は土壌を譲らず、河海は細流を択ばず(泰山は土壌をえりごのみぜぬねために大となり、
利侮はすべての細流を合するために深くなる)」。上書の効能あらたかに、李斯は追放を免れ、後に宰
相にまで出世する。そして「利府は細流を択ばず」は、王者たる者の度量の広さを表わす名文句として、
後世に伝えられることになった。
老子も、王者の徳を河海にたとえる。だが、着眼点が李斯と異なる。どちらに軍配をあげるかは、各自
で考えていただきたい。

第67章 「われに三宝あり」 
 大きいことは大きいが、どことなくぬけているようだ」。わたしの説く「道」を、世間はこのように批評している。
「道」はたしかに大きい。大きいからこそまがぬけて見える。まがぬけて見えないくらいなら、大きいなどといえは
しない。
この「道」から、三つの宝が引き出せる。第一は、「人をいつくしひ」心である。第二は、「物事を控え目にする」態
度である。第三は、行動において「人の先に立だない」ことである。
人をいつくしむからこそ、勇気が生まれる。控え目だからこそ、窮まることがない。人の先に立たぬからこそ、人を
指導することができる。
もし、いつくしみの心も持たずに、ただ勇のみをこころがし、控え目な態度も知らずに、ただ無窮のみを願い、退く
ことも忘れて、ただ人に先立つことのみを考えるなら、結果は破滅あるのみだ。
いつくしみの心をもつ者は、戦えばかならず勝ち、守れば難攻不落である。いつくしみの心、それはまさしく、天が
万物を保護する心なのだ。
 
● 23年開園 北海道ボールパーク

 

 No.20

ヒトを含めたすべての動物の体は、無数の分化した細胞で構成されている。分化した細胞は通常、分化
前の未分化な状態に戻ることはないが、分化した細胞核を未受精卵子内に移植し、細胞核が初期化され、
未分化な状態に戻りる。この初期化技術を用いて、クローン動物が多くの動物種でつくられてきま。細
胞を初期化しつくる人工多能性細胞(iPS細胞)の発見により、再生医療は大幅な進展を遂げる。しかし、
卵子内で分化細胞核がどのように初期化されるかはわかっておらずその全容解明が望まれている・・・・・・



「遺伝子発現の初期化」に重要な要素を発見

7月11日、近畿大学らの研究グループは、分化※1 した細胞が卵子の中で初期化され、新たに遺伝子
の転写※2 を開始する際、遺伝子ごとに効率が大きく異なる原因を明らかにしたことを公表している。
それによると、初期化の本質解明にむけ重要な発見であり(7月11日(水)日本時間 AM1:00)に、米国
の学術雑誌「Cell Reports」オンライン版に掲載)、分化した成体の細胞を卵子の中に移植し分化前の状態
に戻せる。この現象を「初期化」といい、初期化技術を用いてクローン動物がつくられ、再生医療が大
きな進展を遂げてきまたが、分化した細胞が卵子の中でどのように初期化されるのか解明されていなか
った。初期には、分化細胞で発現する遺伝子を抑制し、未分化細胞のみ発現する遺伝子を活性化する必
要があえう。この遺伝子発現――細胞内で遺伝子のスイッチが入りRNAやタンパク質が合成される過程
――の初期化は効率が悪く、多くの遺伝子で失敗してきった。

同研究グループは、各遺伝子は場所による構造がことなり、閉じた状態と開いた状態の遺伝子があり、
その開き具合によりDNA結合因子――DNAに結合するタンパク質などの因子を示す。この研究における
DNAへのアクセスの違いの検討には、Tn5 transposomeを利用――のアクセスが変わることを発見。また、
このアクセスのしやすさの度合いが初期化に大きな影響を与え、悪いと遺伝子発現の初期化が始まらな
いことも明らかなった。



この研究成果によって、分化した細胞が未分化細胞で発現する遺伝子を活性化には、遺伝子構造が開き
アクセスしやすい状態にすることが重要であることを明らかにする。初期化しやすい状態へと遺伝子構
造を人工的に変化できれば、初期化効率をあげられ、転写初期化の解明に向けて重要な知見を示した。

このように、細胞核内には遺伝情報を有するDNAが存在し、DNAはクロマチン構造を形成する。クロマ
チン構造による、DNAへの核内タンパク質のアクセスが制限され、これにより各遺伝子からの転写は大
きな影響を受ける。遺伝子発現の初期化前後で細胞核内のクロマチン状態を、ATAC-seq(Assay for Trans-
posase-AccessibleChromatinSequencing)と呼ばれる手法で調べ、クロマチン構造を形成せず、容易にアクセ
ス可能なDNA領域を同定。遺伝子の転写状態との関係を調べると、分化細はアクセス可能なDNA領域が優
先的に遺伝子発現の初期化を受けることを明らかなる。

逆に、分化細胞ではてアクセス不可能となっている領域からも遺伝子発現の初期化は起こるが、その効
率は高くない。例えば、卵に細胞核を移植後も継続的にアクセス不可能な状態を維持している遺伝子も
多く見られ、遺伝子発現の初期化を成功させるには、アクセス不可能の状態からアクセス可能へとクロ
マチン状態を変化させる必要があります。研究グループは、転写因子※6 と呼ばれるDNAに直接結合する
タンパク質によりクロマチン状態の制御が行われることを示した。以上の研究成果は、多くが謎とされ
てきた卵子内での分化細胞核の遺伝子発現初期化機構に迫るもので、初期化の解明に向けて重要な知見
となる。

この研究により、卵内での遺伝子発現の初期化には、クロマチン構造をアクセス可能な状態へと人工的に変化さ
せることが重要であることを明らかになったことで、アクセス状態を促進する因子を用いることで初期化効率の向
上が見込まれ、初期化技術の効率化により再生医療やクローン技術の更なる発展が期待されている。

 ● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.17   

   

第4章
「あのマントはどうなったんだろう、おまえが人切にしていたマントけ」
「所詮はマントですよ、アクセル。どんなマントも、着ていれぼすり切れてきます」

うわI、と思った。こんなに遠くから、そしてこんなに高くから、自分の村を見だのは生まれて初めて
だ。小さくて、なんだかこの手でつまみ上げられそうに思える。ためしに、午後のかすみの中に浮か
ぶ村に手を重ね、ぐいと指で包み込んでみた。登るのを心配そうに見上げていた老婦人がまだ木の根元
にいて、それ以上登ってはだめよ、と呼びかけている。だが、エドウィンは無視した。だって
、ぼくほど木を知っている人はいないから………戦士から見張りを命じられたとき、エドウィンは慎重
に考えて楡の木を選んだ。外見は弱々しくても内にさりげない強さを秘めていて、ぼくを歓迎してくれ
る。それに、あの橋も、橋までつづく山道も、ここからなら一番よく見える。ほら、馬に乗った男に三
人の兵隊が話しかけている。あ、騎手がいま馬から下りた。落ち着かない様子の馬を手綱で押さえなが
ら、兵隊と激しく言い争っていエドウィンは木をよく知っている。たとえば、この楡の木はステッフア
みたいだと思う。年長の少年たちはステッフアのことを「あんなやつ、森に棄てられて腐ってしまえば
いいんだ」と言う。

「両脚ともきかなくて働けない年寄りなんて、そうなって当然だろう?」と。だが、エドウィンはステ
ッフアの何たるかを知っている。ステッフアは古強者だ。誰も知らないが強い。物事の理解では長老た
ちをも超える。村でただ一人、戦場を経験している人間でもある。
両脚の働きを失ったのは、その戦場でのことだ。そういうステッフアだからこそ、エドウィンの何たる
かを見抜くことができた。腕力が強い少年なら何人もいる。おもしろがってエドウィンを地面に転がし、
馬乗りになって殴ったりもする。だが、その連中には戦士の魂がない。あるのはエドウィンだけだ。

「君を見ていたぞ、少年」と一度老ステッフアに言われたことがある。
「降ってくる拳骨の雨のなか、君の目は冷静だった。一撃一撃を頭に刻み込んでいたのか?あれこそ最
高の戦士の目、荒れ狂う戦いの嵐の中でも沈着に動ける戦士の目だ。連からず、君は誰もが恐れる男に
なる」

そして、いま始まった。ステッフアの予言どおり、それが現実になりつつある。
強い風で木が揺れた。エドウィンは支えにしている枝を持ち替えて、今朝の出来事をもう一度思い出そ
うとした。歪んだ叔母の顔が見える。誰なのかわからないほどに歪んだ顔が金切り声で毒づいている。
だが、アイバー長老が最後まで言わせず、叔母を納屋の戸口から押しした。長老の背中にさえぎられ、
押し出される叔母の姿が見えなくなった。いつもエドウィンに親切にしてくれていた叔母が、いまはエ
ドウィンを呪う。だが、そのこと自体はたいして気にならなかった。しばらくまえ、「母さん」と呼ん
でくれないかと言われていたが、エドウィンは決してそう呼ぼうとしなかった。だって、ほんとうの母
さんは旅に出ているもの。ほんとうの母さんは、あんなふうに金切り声で怒鳴って、アイバー長老に引
きずり出されたりしないもの………それに、今朝、納屋の中で、エドウィンはほんとうの母の声を聞い
た。

アイバー長老はエドウィンを納屋の暗闇に押し戻し、叔母の醜く歪んだ顔を――その他のすべての顔と
一緒に――連れ出して、ドアを閉めた。暗い納屋の真ん中に古い荷車があった。最初はおぼろな黒い影
でしかなかったが、やがて徐々に輪郭が見えてきた。手を仲ばすと、腐った木の湿っぽい感触があった。
外ではいくつもの声がまた叫んでいる。何かがぶつかるような音も始まった。ぱらぱらと散発的に始ま
り、やがていくつかがまとまって当たる音になり、ものが裂けるような音が加わった。その音がするた
び、納屋の中がわずかずつ明るくなるような気がした。

ぼろ壁に石が投げつけられる音であるのはわかっていたが、エドウィンはそれを無視し、目の前にある
荷車をじっと見つめた。どれほど昔に使われていたものだろう。なぜこんなによじれた形になっている
のだろう。もう使えないのに、なぜ納屋にしまい込まれているのだろうか。
母の声が聞こえたのはそのときだ。外の騒ぎや石のぶつかる音で最初は聞き取りにくかったが、だんだ
んとはっきりしてきた。

「こんなことは何でもないのよ、エドウィン」と母は言った。
「全然何でもない。簡単に堪えられる」 
「でも、長老たちだって、いつまでも抑えているのは無理じやないかな」とエドウィンは暗闇に向かっ
て小声で言った。言いながら、手で荷車の側面をなでた。
「何でもないのよ、エドウィン。何でもない」
「壁は薄いから、石を投げつづけたら壊れるよ」
「心配ないのよ、エドウィン。知らなかった?石はおまえの力でどうにでもなる。ご覧、目の前にある
のは何」
「壊れた古い荷車」
「そう。その荷車の周りを回りなさい、エドウィン。ぐるぐる、ぐるぐる。おまえは大きな輸につなが
れた駿馬よ。だから、ぐるぐる回りなさい、エドウィン。おまえが回らないと、大きな輪は回らない。
おまえが回らないと、石は飛んでこない。ぐるぐる、ぐるぐる、回りなさい、エドウィン。荷車の周り
をぐるぐる、ぐるぐる」
「なんで輪を回さないといけないの、母さん」とエドウィンは言った。言いながら、足はもう歩きはじ
めていた。

「お主えが駿馬だからだよ、エドウィン。ぐるぐる、ぐるぐる。石が壁を打つ音は、おまえが輪を回し
ていないとつづかない。輸を回して、エドウィン。ぐるぐる、ぐるぐる。荷車の周りを、ぐるぐる、ぐ
るぐる」

だから、エドウィンは母の言うとおり回った。荷台の板の縁に手を置き、回る勢いを削がないよう右手
と左手を置き替えながら回った。もう何度そうやって回ったろう。百回か。二百回か。回るたびに納屋
の隅に見えるものがあった。一つの隅には土饅頭か何かのように盛った上があり、別の隅――日光が緬
く射し込んで、納屋の床を照らしている隅――には、羽根も何もそのままで転がる烏の死骸があった。
薄暗がりの中を回るたび、その二つがエドウィンの目に飛び込んできた。一度「叔母さんはほんとうに
ぼくを呪ったのかな」と声に出してみた。返事はなく、母さんはもう行ってしまったのかと思った。だ
が、やがて声が戻ってきた。

「やるべきことをなさい、エドウィン」と言った。
「おまえは駿馬よ。まだ止まってはだめ。すべてはおまえしだいだからね。おまえが止まれば、あの騒
ぎも止まってしまう。だから、恐れてはだめ」

ときには、一度も石の当たる音を聞かないまま、荷車を三回も四回もめぐることがあったが、直後、今
度はその少なさを埋め合わせるように一度にいくつもの音がして、外の叫び声が一段と大きくなった。

「母さんはいまどこにいるの」とエドウィンは尋ねてみた。「まだ旅をしているの?」

答えはなかったが、さらに何回りかしたあとで母の声がした。

「弟や昧を生んであげられたのにね、エドウィン。それも、たくさん。でも、おまえ一人きりだ。だか
ら、わたしのために強くなっておくれ。十二歳なら、ほとんど大人だよ。一人で、四、五人ぶんの息子
になっておくれ。強くなって助けにきて」

また風が吹いて、楡の木が揺れた。あの納屋だろうか、とエドウィンは思った。狼が村に来た日、みん
なが隠れたというのはあの納屋だったのだろうか。そのときの話は、老ステッフアから何度も聞いてい
る。
 
君はまだ幼かった。だから覚えていないかもしれないな。昼日中に狼が三匹、のそのそと村に入り込ん
できたことがあった」

そしてステッフアの声には軽蔑がこもる。

「村中が震え上がって隠れた。畑に出ていたのも何人かいたが、それでも村には大勢残っていたんだ。
それがみんな脱穀小屋に隠れた。女子供だけじゃない。男たちもだ。狼の目つきがおかしい、と言った。
だから、へたにちょっかいをかけないほうがいい、とな。狼にとっちゃ楽なもんだ。やりたい放題さ。
雌鶏を皆殺しにし、山羊も食らった。それでも、村人はみんな隠れたままだ。自分の家に隠れたのもい
たが、ほとんどは脱穀小屋の中だ。おれはこの脚だから、いた場所にそのまま放っておかれた。つまり、
ミンドレッドさんの家の外、溝のわきで、動かないこの脚を突き出したまま手押し車の中よ。狼がおれ
のほうにとことこと歩いてきた。来て食らえ、と言ってやった。たかが簑ごときで、おれは納屋に隠れ
たりせんぞ・・・・・・。だが、狼はおれに目もくれず、目の前を通り過ぎていった。やつらの毛皮がこの役
立たずの足をこするかと思うほど近かった。簑はすっかり満足して出ていった。この村の勇敢な男たち
が、おっかなびっくり隠れ場所から這い出してきたのは、それからずいぶん経ってからだ。昼日中に狼
が三匹。立ち向かう男はI人もなしさ」

エドウィンはステッフアの話を思い出しながら、荷車をめぐりつづけた。

「母さんはまだ旅をしているの?」と、もう一度尋ねた。今度も返事はなかった。脚がだんだんくたび
れてきていた。土の山と烏の死骸を昆るのが、心底いやになってきていた。そのとき、ようやく母が言
った。

「もういいよ、エドウィン。よくがんばったね。さあ、もう戦士を呼んでもいいよ。終わりにしましょ
う」

エドウィンはこれを間いてほっとしたが、そのまま荷車の周りを回りつづけた。ウィスタンを呼ぶには
多少の努力では足りないとわかっていた。前の晩と同様、ウィスタンが来てくれることを、心の奥底か
ら強く願わなければならないと思った。
そして、そのために必要な強さをなんとか絞り出し、回りつづけた。戦士がこちらへ向かっているとい
う確信を得てから、ようやく足取りを緩めた。そう、いくら騏馬でも、一日の終わりが近くなれば多少
は鞭の手加減が必要になる。足取りを緩めたとたん、石の当たる音が間遠になり、それに気づいてエド
ウィンはにこりとした。だが、完全に足を止めたのは、投石がやみ、静けさが長くつづいたあとのこと
だ。荷車にもたれて息を整えていると、突然、納屋のドアが開き、目もくらむほどの光の中に戦士が立
っていた。

ウィスタンは、背後のドアを大きく開け放したまま入ってきた。それは、ついさっきまで外に集まって
いた悪意ある人々への、軽蔑の表明のように思えた。納屋の中に日の光の大きな四角形ができ、エドウ
ィンは周囲を見回した。暗闇の中ではあれほど存在感のあった荷車が、いまは見るも無残なぽんこつと
化していた。あのあとすぐ、ウィスタンはぼくを「若き同志」と呼んだんだっけ……?・よく思い出せ
なかったが、戦士に光の四角形の中へ導かれたことは覚えている。そこでシャツを引き上げられ、傷の
様子を調べられた。そのあと、ウィスタンはまっすぐに背を仲ばし、注意深く肩越しに後ろを振り返っ
てから、低く言った。

                            カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』
 
                                       この項つづく 



● TVドラマ『ドロ刑』に嵌る
「生涯ながら族」のわたしに、楽しみにするテレビ番組は年々少なくなり。釘づけにする「ドラマ性」
がない、というのがその理由。おとなのアニメだと思っている『フィニアスとファーブ』と最近までは
『ドクターX』がそれであった。情報過剰?で勝手気ままな現代社会では「視聴率主義は無意味」だ。
かといって重苦しいシリアスな番組でなく、軽薄で陳腐化しやすい企画もの(NHK的な偏執的な番組」?
は別にして、手などの身体をとめてまでして観るものは希少だ。

日本の刑法犯の7割以上を捜査し、検挙率第1位を誇る!それは、刑事部・捜査第三課。 窃盗、ひった
くりを捜査する彼らは、通称「ドロ刑」と呼ばれる。 「捜査の全てはドロ刑に始まり、ドロ刑に終わ
る――。」 憧れと希望に満ち溢れ、 警視庁"捜査三課"に配属された新米刑事・斑目勉(まだらめつと
む)が出逢ったのは、 稀代の大泥棒・煙鴉(けむりがらす)だった。 磨き抜かれた練達の職業泥棒た
ち、 煙のように捉えどころのない煙鴉、果たして彼らを捕まえることはできるのか……!!? 盗られた
モノは捕り戻す!YJ期待の新鋭が描く"泥棒×刑事盗物帖"明日から試せる防犯テクニックも充実!!
"ドロ刑"こそが、刑事の華だっ!!!――『ドロ刑』は、福田秀による漫画。『週刊ヤングジャンプ』
(集英社)2018年5・6合併号から連載中。話数カウントはEpisode;○○。2018年10月13日に『ドロ刑-
警視庁捜査三課-』のタイトルで日本テレビ系でテレビドラマ化。


  

  ● 今夜の一曲

『サボテンの花』 唄 財津和夫 Music Writer 財津和夫

 


キーワードビジネス時代

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天   瑞 てんずい
ことば --------------------------------------------------------------------------------
「いずくんぞわが今の死の、昔の生に愈らざることを知らんや」
「生は死を知らず、死は生を知らず、来は去を知らず、去は米を知らず」
----------------------------------------------------------------------------------------
死はいこい
子貢は学問をするのがいやになってしまった。そこで孔子に申しでた。
「しばらく休みたいのですが」
「人生に休みなどない」
と孔子はいった。
「では、わたしは休むことができないのですか」
「いや、あるとも。お羅をごらん。こんもりと、広々と、うず高く、深々としているではないか。
あそこに行けば休めるよ」
「なるほど、死とはたいしたもの。小人にとってはいやいや行くところだが、君子にとっては、い
こいの場所なのですね」
「そのとおりだ。世間の人は生きることが楽し
いとばかり信じこんでいて、生きることの苦しみを知
らない。年をとれば心身が衰えることは知っているが、心安らかになることは知らない。死ぬのが
いやだと思いこんでいて、死がいこいだということがわからない」

「虚」
ある人が列子にきいた。
「あなたはなぜ『虚』を尊ぶのですか」
列子はこたえた。
「いや、『庖』は尊ぶも尊ぱないもない」

尊べば虚ではない 『呂氏春秋』不二篇にこういう論評がある。「老聃(ろうたん)は柔を尊び孔
子は仁を尊び、墨翟(ぼくてき)は廉を尊び、関尹(かんい)は清を尊び、子列子は虚を尊ぶ」。
だが、『列子』にいわせると、尊ぶ、尊ばないという価値判断をくだすこと自体がすでに「虚」で
ないといのだ。

金持になる秘訣
斉の国氏は大金持で、宋の向氏はたいへん貧乏だった。そこで、向氏は斉に出むいて、どうしたら
金持になれるかとたずねた。
国氏はこう答えた。

「うまく盗むのが秘訣だ。わたしは盗みだしてから、一年後にはどうにか食えるようになり、二年
で楽になり三年で身上を残した。それ以後は隣近所にほどこしをするまでになった」

向氏はたいへん喜んだ。が、盗むということばだけをうのみにして、その盗みかたは考えなかった。
そこで塀をのりこえ人の家に忍びこみ、手あたりしだいに盗んだ。するとたちまちつかまって、前
から持っていたなけなしの財産まですっかり没収されてしまった。 向氏は、これも同氏にだまさ
れたからだと文句をいいに行った。

「どんな盗み方をしたのかね」と国氏はきいた。
向氏はありのままに話した。

「ああ、まるっきり盗みかたをまちがえているな。いいか、では教えてやろう。天には四季があり
地には五穀草木がある。わたしはその天の時、地の利を盗んで、穀物を植え、野菜を育て、垣根を
つくり、家をたてた。また鳥やけものをとったり、魚や貝をとった。これこそ盗みではないか。い
ったい穀物・野菜・鳥獣・魚貝は、みな天が作ったものだ。もともとは人間のものではない。わた
しは天から盗んだから、罪にはならない。どだい金銀財宝は人が集めたものだ。天があたえたもの
ではない。あんたはこれを盗んだから罰せられたのだ。文句をいう筋あいはない」

向氏はわけがわからなくなって、また国氏が自分をだますのだな、と考え、東郭先生にたずねた。
東部先生はいった。

「お前のからだだって盗んだものではないか。そもそもお前は、陰陽の和合を盗んで生宜れてきた
のだ。ましてその他の物は、みんな盗んだものだ。天地万物は互いに区別がないものだ。それをこ
れだけは自分のもの、と境界をたてるからまちがいがおこる。国氏は、天地の物を公然と盗んだか
ら罪はない。お前は人の物をこっそり盗んだから罰せられたのだ。だが公私の別をたてたところで
盗みは盗み、また公私の別をたてずとも盗んでいるにはちがいない。世にいう公は公、私は私とし
ておいてもよい。だが、天地の節はそんなことを問題にしない。天地の徳がわかれば、やれ、どれ
が盗みだとか、盗みでないとかいう区別をたてるには及ばない」

   【DIY日誌:給水口パッキン交換】  

 

12月2日、キッチンの水道栓の温水側が涙もれするというので交換パッキンを求め行ってみると
通常のパッキンと株式会社ケーブイケーの節水コマ(PZK4JE4-15 KV式節水こま13(1/2) )――節
水コマは通常のコマの中央部に突起が付いた形状となっており、突起が流出しようとする水流を阻
害し、半開時の流出量を5~10%程度抑える。食器洗い時など、水道を流しっぱなしにする際の水
量を抑えることができ、省資源効果が出る。 東京都水道局が採用している「東京都型」は水圧0.2
Mpa、13mm給水管にTOTO T30AR13水栓で使用した場合、使用しなかった時と比較して、1/4開度で
約8%強、半開で約5.5%程度の流量を減らすことができる。また、これとは別にオリフィスを用い
た「定流量弁」、「流量調整弁」を節水コマと呼ぶ事もある。この場合は、その蛇口の使用目的に
合わせた任意の吐水量に調整することができるので節水効果も高く、水を大量に使用する産業やホ
テル、病院、飲食店などで使われている。また多くの地方自治体で小中学校、高校などに設置して
いる節水コマはこちらを指す――の2種類をキャッシュレス購入し早速交換。せめて20%ていど節
水できればその効果は現れるが、数%となれば学校など公共性の高い施設では数%でも累積すればその
効果が確認できるだろうが。
尚、節水方式には、大きく、コマ方式と水泡方式に分けられ、前者の節水コマには、流量調節の有無の2つ
に分けられる。後者は、平均粒子径と水流振動の有無とに大きく大別されるだろう。



ところで、どのような技術か手っ取り早く特許技術を検索すると、1990年代はじめ、当時息子たち
が小学生でこれまでやってきたシャドウマスクの製造に一区切りをつけ、次の仕事(転職)を考え
ていた頃で、どこかで聞きつけたのか協力企業の轟産業株式会社の土井内数実さんが突然訪れてこ
られ、独立して節水コマを製造販売したいのだが一緒にやりませんかとのお誘い。その場はしばら
く考えてみてから返事をすることを約束し、後日お断りすることにした。その後、JR液の手洗い
などに納品していたようだがそれっきりなっていたが、下記のような特許公開されているところを
みると現役で頑張っているようで驚き運命的なものを感じる。というのもブログの『壺の中の霧』
で掲載しているようにその10年前に節水を取り組んでいてそれなりの実績を残しているので乗れ
ない話ではなかった。

❏ 特開2014-080774 給水規制用ノズル
【概要】

下図1のごとく、給水口10に備え付けられて、給水口10からノズル本体2内に導入される水に
つき、その導入量を絞り部材4にて制限しながら、ノズル板3に形成された複数の吐水孔33によ
って細分化した状態にて吐出させる給水規制用ノズル1において、ノズル板3の一次側、且つ、絞
り部材4の二次側となる位置に、一定の口径Φを有する複数個の貫通孔53が形成された整流板5
を備えることで、吐出される水の水勢に偏りが少なく、使用者に対し、非常に良好な使用感を与え
る新規な給水規制用ノズルの提供。


【符号の説明】
1  本発明ノズル(給水規制用ノズル)2  ノズル本体 21  一次側の開口端 211  雌ネジ部
22  二次側の開口端 221  段差 222  切り欠き 3  ノズル板 33  吐水孔
4  絞り部材 41  流入口 42  流出口 5  整流板 51  一次側の面 52  二次側の面
53  貫通孔 6  第一パッキン 7  第二パッキン 8  蓋材 10  給水口 101  雄ネジ部


・特開2014-051851 給水規制用ノズル 
・特開2011-256669 節水器具 
・特開2007-162400 節水コマ構造
・特開平09-060749 節水型フラッシュバルブ
 

 
【エネルギー通貨制時代 23】 
”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
 Mar. 3, 2017 

【蓄電池篇:最新二次電池プレドーピング技術Ⅰ】

 ❏ 特開2018-113220 リチウムイオン二次電池の製造方法 トヨタ自動車株式会社

先回の残件を掲載する。
リチウムイオン二次電池のエネルギー密度の向上が求められている。エネルギー密度の向上を阻む
要因の一つとして、不可逆容量が挙げられる。不可逆容量は、初回の充電時に、正極から負極へ供
給されたリチウム(Li)イオンのうち、その後利用することができないLiイオンに由来する。
たとえば、珪素(Si)等の高容量な負極活物質である程、不可逆容量が大きい傾向にある。不可
逆容量の存在により、電池の実効的な充放電容量が制限されている。

電池の完成前に、予め不可逆容量に相当する量のLiイオンを負極活物質に供給しておくこと(「
プレドープ」と称される)が検討されている。たとえば、負極の表面にLi金属(Li箔等)を密
着させて放置することにより、負極活物質にLiイオンを供給することができる。しかしこの方法
では、充電量の制御が困難である。さらに負極の厚さ方向に充電量の斑が生じやすい。

電解液を使用したプレドープも考えられる。すなわち、負極とLi金属とを直接接触させず、かつ
負極とLi金属とを短絡させた状態で、これらを電解液に浸漬させる。この方法によれば、負極全
体にLiイオンを均等に供給することができると考えられる。しかしながら、この方法ではLiイ
オンの拡散速度が遅く、不可逆容量分を充電するために長時間を要するが、本開示の製造方法ては、
第1負極活物質がプレドープの対象である。第1負極活物質は、単位質量あたり、第2負極活物質
よりも大きい充電容量を有する。プレドープの駆動力は、プレドープの対象とLi金属との電位差
であると考えられる。しかし一般的な負極活物質は、少しでも充電されると急激に電位が低下する
。そのため、プレドープの駆動力が小さくなり、プレドープの所要時間が長くなると考えられる。

そこで本開示の製造方法では、第2負極活物質(チタン酸リチウム)が利用される。チタン酸リチ
ウムとLi金属との電位差は1.5V程度であり、比較的大きい。さらにチタン酸リチウムは、満
充電になるまで、電位の低下が非常に緩やかである。第2負極活物質が共存することにより、第1
負極活物質の電位が低下しても、プレドープの駆動力が小さくなることが抑制されると考えられる。
その結果、プレドープの所要時間が短縮されると考えられる。
〔2〕第1負極活物質は、好ましくは、黒鉛、非晶質炭素、珪素、酸化珪素および珪素合金からな
る群より選択される少なくとも1種である。これらの負極活物質は、少しでも充電されると、急激
に電位が低下する。プレドープ中、負極活物質とLi金属との電位差は0.05~0.3V程度に
なる。そのため通常は、プレドープの所要時間が長くなると考えられる。しかし上記のように、第
2負極活物質(チタン酸リチウム)が利用されることにより、プレドープの所要時間が短縮される
と考えられる。

〔3〕第2負極活物質は、好ましくは、その表面をリチウムイオン透過性の被膜によって被覆され
ている。 プレドープ中、第2負極活物質(チタン酸リチウム)も充電される。充電により、チタン
酸リチウムの電位は、緩やかながらも徐々に低下する。さらに満充電になると、チタン酸リチウム
の電位は急激に低下する。チタン酸リチウムの電位低下に伴い、プレドープの駆動力も小さくなる
と考えられる。チタン酸リチウムがLiイオン透過性の被膜によって被覆されていることにより、
チタン酸リチウムが充電されることが抑制されると考えられる。

〔4〕第2負極活物質は、第1負極活物質と第2負極活物質との合計に対して、1質量%以上5質量
%以下の質量比率を有してもよい。 プレドープの対象である第1負極活物質の質量比率が高い程(す
なわち第2負極活物質の質量比率が低い程)、エネルギー密度の向上が期待される。その反面、第2
負極活物質の質量比率が低い程、プレドープの所要時間が長くなると考えられる。第2負極活物質が
1質量%以上5質量%以下の質量比率を有することにより、エネルギー密度とプレドープの所要時間
とのバランスが良い。

下図のごとく、リチウムイオン二次電池の製造方法は、次の(A)、(C)、(D)および(E)を
少なくとも含む。(A)負極集電体の表面に、第1負極活物質および第2負極活物質を含む負極合材
層を配置することにより、負極を製造する。(C)負極集電体と電気的に接続され、かつ負極合材層
と接触しない位置に、リチウム金属を配置する。(D)負極およびリチウム金属を電解液に浸漬する
ことにより、負極を所定量充電する。(E)所定量充電された負極を備えるリチウムイオン二次電池
を製造する。第2負極活物質は、チタン酸リチウムである。第1負極活物質は、単位質量あたり、第
2負極活物質よりも大きい充電容量を有する。所定量充電された負極において、第2負極活物質とリ
チウム金属との電位差が、第1負極活物質とリチウム金属との電位差よりも大きい。

負極とLi金属とが電気的に接続された状態(短絡状態)で、負極とLi金属とが電解液に浸漬され
ることにより、負極とLi金属との電位差を打ち消すように、Liイオンの拡散が起こる。すなわち、
Li金属から電解液にLiイオンが放出され、電解液から負極にLiイオンが供給される。最終的に
は、Li金属が実質的にすべて溶出する。これによりプレドープが完了する。プレドープ量(充電量)
は、Li金属の量により制御できると考えられる。また電解液は、負極合材層の内部まで浸透し得る
ため、負極合材層全体にLiイオンが均等に供給されると考えられる。

❏ プレードープ
本実施形態の製造方法は、負極およびリチウム金属を電解液に浸漬することにより、負極を所定量充
電することを含む。電極群40が所定の外装体に収納される。外装体は、たとえば、金属製の容器で
あってもよいし、Alラミネートフィルム製の袋等であってもよい。外装体に電解液が注入される。
外装体が密閉される。これにより負極20およびLi金属23が電解液に浸漬される。

負極20およびLi金属23が電解液に浸漬された状態で、これらが静置されることにより、Li金
属23から電解液中にLiイオンが溶出し、電解液中から負極20にLiイオンが供給される。本実
施形態では、第2負極活物質2(チタン酸リチウム)が高い電位を有するために、Liイオンの供給
が促進されると考えられる。プレドープ量(充電量)は、負極20の充電容量に対して、たとえば、
1~50%であってもよいし、1~30%であってもよいし、1~20%であってもよいし1~10
%であってもよいし、1~5%であってもよい。

好ましくは負極20、Li金属23および電解液が加熱される。これによりLiイオンの供給(拡散)
がいっそう促進されると考えられる。負極20、Li金属23および電解液は、好ましくは45℃以
上70℃以下程度に加熱され、より好ましくは50℃以上65℃以下に加熱され、よりいっそう好ま
しくは55℃以上65℃以下に加熱される。本実施形態において、プレドープの所要時間は、たとえ
ば、27.5~37日程度であり得る。
電解液は、溶媒にLi塩が溶解した液体電解質である。溶媒は、たとえば、エチレンカーボネート(
EC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)等の混合溶媒
でよい。Li塩は、たとえば、LiPF6、LiBF4、Li[N(FSO2)2](LiFSI)等で
よい。電解液は、たとえば、ビニレンカーボネート(VC)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(Li
BOB)等の添加剤を含んでもよい。
以上は、大容量化のためのプレドープ処理ありの製造技術事例である。

                                                          この項つづく



● 今夜の寸評:ゴーン再建/解任後の経営方略
車には興味はあったが、知人の紹介などのススメにより購入していたが9代目の13型日産・ブルー
バードSSS-Gのジョンデンバーの『悲しみのジェットプレーン』と夜間空港のジェット旅客機を連
想させるエンジン音がお気に入りだった。その日産自動車は、戦前の15財閥の一角の鮎川義介が
日立金属ともに創業、電気自動車製造を創業とし後のグロリア、セドリックを製造するプリンス自
動車(総評全国金属加盟労組)と吸収合併し技術力を強化させ「ケンメリ」で有名なスカイライン
が大ヒットさせるが2兆円に上る負債を抱えた同社の塙義一会長が1999年、ルノー社からカルロス・
ゴーンを後任として迎え入れ企業再建を断行。2016年、三菱自動車・日産・ルノーの業務提携を果
たすも、2018年11月19日、東京地検特捜部が金融商品取引法違反容疑で逮捕に至る。  
この逮捕・解任劇をめぐり幾多の憶測、意見がネットやマスコミがと飛び交っているが、1つは健
全な営利組織統治に対する毀損(棄損)と国内・国際法との不整合性の有無、2つめは、多国籍企
業体
(参考;コングロマリッド)への関係国政府の関与形態の是非であり、今回のようにルノーの
筆頭株主であるフランス政府の意思・意図の是非(参考:日産の吸収併合の有無)であり、ゴーン
の高額な報酬額多寡の是非は、入手過程の正当性のそれとは別に、二義的なものであるが、強圧的
な軍事力・財政力を背景とした不当な経営介入をグローバリズム(英米流金融資本主義)の名の下
での(帝国・中華主義的)行使は例外を除き排除しなければならない(参考:日米経済協議の "半
導体不平等条約
")。いずれにして世界的な自動車産業の再編は避けられない。

 Wikipedia

 

  ● 今夜の一曲

『悲しみのジェット・プレーン』 Music writer : Johon Denver
「悲しみのジェット・プレーン」(Leaving on a Jet Plane)は、ジョン・デンバーが作詞作曲し、ピー
ター・ポール&マリー
が1967年にアルバム収録曲として発表した楽曲。2年後、シングルカットされ
全米チャート1位を記録。1966年、ジョン・デンバーはビートルズなどのカバーを含むアルバム
『John Denver Sings』を自費で制作し友人や家族に配った。「悲しみのジェット・プレーン」は
「Babe, I Hate To Go」というタイトルでその中に収録。彼のレコードを聴いたピーター・ポール&マ
リーは「Babe, I Hate To Go」に感銘を受け、1967年03月18日発売のアルバム『Album 1700』に収録。
尚、彼自身もデビュー・アルバム『Rhymes & Reasons』で本作品を発表

All my bags are packed
I'm ready to go
I'm standin' here outside your door
I hate to wake you up to say goodbye
But the dawn is breakin'
It's early morn
The taxi's waitin'
He's blowin' his horn
Already I'm so lonesome
I could die

 

So kiss me and smile for me
Tell me that you'll wait for me
Hold me like you'll never let me go
'Cause I'm leavin' on a jet plane
Don't know when I'll be back again
Oh babe, I hate to go .....

 

 ● 今夜のアラカルト

ゴースト・レストランがアメリカでもはやっているとか。ヤドカリのように間借りして、商品をインスタグ
ラムのアプリでオンラインさせ注文を受け宅配、あるいは間借りしている店舗で商品を手渡しキャッシュレ
スで決済するというビジネス。スモール・ビジネス、スモール・ファーム、スモール・オフィスという。
これは、ビジネスモデルサイドから見ると「キーワード・ビジネス」であり、ゴースト・レストランは、
ゴースト・モーニング、ゴースト・ランチ、ゴースト・ディナー、ゴースト・アウトレット、ゴースト・バ
ーゲン・セールとキーワードに凝縮したスモール・ビジネス時代が到来する。

 

RE100 ラストワンマイル

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天   瑞 てんずい
ことば --------------------------------------------------------------------------------
「いずくんぞわが今の死の、昔の生に愈らざることを知らんや」
「生は死を知らず、死は生を知らず、来は去を知らず、去は米を知らず」
----------------------------------------------------------------------------------------



壷丘子林(こきゅうしりん)の教え
列子は鄭の圃というところに四十年住んでいたが、誰ひとりそれが列子とは気づかなかった。鄭の
国王や卿太夫(けいたいふ)も、列子を庶民のひとりとしか見ていなかった。
ある年、鄭が凶作にみまわれ、列子は衛に行こうとした。弟子たちは列子に頼んだ。

「いぢどお別れしてしまったら、あとはいつお会いできるかわかりません。お願いです。わたした
ちに、あとあとの心得となることばを残して行ってください。先生は壹丘子林(列子の師)に教え
を受けられたのでしょう」

「壷丘子林は別に何もいわなかった。だが、わたしは、先生が伯昏瞀人(はくこうぼうじん)に話
していたのを、そばで聞いていたことがある。そのことでも話そうか――万物の生成変化をつかさ
どるものは、それ自体、生成し変化することはない。だからこそ、生成変化の根源であり得るのだ。
だが万物は、生成変化をその本質とする。したがって、常に生まれ常に変
化し、寸秒のいとまもなく動きつづける。陰陽にせよ、四季にせよ、例外なくそうである。ただみ
すがらは生成せず変化せぬもののみが、絶対無窮の存在なのだ。

黄帝の書にこういっている。

『谷の神は無限の創迫力を持つ。これを玄妙不可思議な女性の門といってもいい。女性の門は天地
の根元だ。あらゆるものを生み続ける。だがそれは努力してそうしているのではない』

だから物を生み出すものは、ことさら意識して生み出すのではない。物を変化させるものは、こと
さら意識して変化させるのではない。物はみな、おのずから生じ、変化し、形をなし、色づき知を
そなえ、力となり、おとろえ、消えてゆき、そして終わる。だれがそうさせるわけでもない」

〈伯昏瞀人〉列子の兄弟子。ただし、壷丘子株とともに、実在の人物とは怠えない。 
〈黄帝の書〉『漢書』芸文志に書名が見えるが、早くから散逸して今に伝わらない。この引用の部
分は『老子』第六章と全く同じである。


 
【エネルギー通貨制時代 23】 
”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
 Mar. 3, 2017 

 April 16, 2018

❏ 特開2018-190053 センサモジュール及びこれを用いたセンサネットワーク

地球の金星化を食い止めるべく、再生可能エネルギー百パーセント社会実現に後ラスト・ワン・マ
イルに入り、制度設計(法制整備)化と関連技術システム整備/実証も最終段階に差し掛かってい
るように看えるが、そのなかでも、今夜は環境発電(エナジーハーベスティング)の最新技術事例
を確認よる。ところで、この発電システムとして、環境発電自己発電電力を用いて動作するセンサ
モジュールが実用化され、このようなセンサモジュールは、電源配線の敷設や電池の交換が困難な
アプリケーションにも好適に適用でき様々な用途での普及が見込まれる。

しかし、環境発電では、常に安定した発電電力が得られず、センサモジュールの間欠動作を必須と
するが、従来のセンサモジュールでは、電力不足によりデータの取得や送信が中断されるおそれが
あり、その動作安定性について更なる改善の余地があり、従来のセンサモジュールでは、その間欠
動作の周期が環境発電装置の発電電力とセンサモジュールの消費電力に依存するため、周期性を持
つデータの取得が難しい。そこで、特許文献1では、環境発電装置の発電量と蓄電量を検出し、シ
ステムマネージャに伝送し、ここからの指示に応じ計測周期の設定変更を行うセンサネットワーク
端末を開示されているが、このセンサネットワーク端末は、自ら計測周期の設定変更を行うのでは
なく、システムマネージャを別途必要としている。また、特許文献2では、所定の周期毎にデータ
を収集するとともに、振動発電により所望の蓄電電力を確保しているかどうか判定し、その判定結
果に応じてデータの無線送信を行うかどうかを決定する振動発電無線センサが開示されているが、
この振動発電無線センサは、電力不足のためにデータの無線送信が行われない場合であっても、デ
ータの収集は常に行われるため、その省電力化について更なる改善の余地がある。

本件によれば、下図2のごとく、センサモジュール1は、環境発電部11及び蓄電部12を含む電
源回路10と、電源回路10から電力供給を受けて間欠的に動作するセンサ回路20と蓄電部12
に蓄えられた入力電圧Vinを常時監視する電圧監視回路30と、を有する。センサ回路20は、
計測対象の計測及び計測結果の無線通信を行うアクティブ状態と、その動作を休止するスリープ状
態と、を交互に繰り返すものであり、スリープ状態では、所定の周期で電圧監視回路30の出力確
認を行い、入力電圧Vinが所定の基準電圧Vrefよりも高ければアクティブ状態に復帰し、入
力電圧Vinが基準電圧Vrefよりも低ければスリープ状態を維持することで、周期性を持つデ
ータを安定に取得できるセンサモジュール、及び、これを用いたセンサネットワークを提供する。
2018.11.29

● 超電導体を利用し環境発電機能を実証
微弱な環境揺らぎからの発電や微弱信号の検出素子に
11月29日、東北大学金属材料研究所らの研究グループは、第二種超電導体の渦糸液体状態を利用し
た環境発電機能を実証したことを公表。研究成果は微弱な環境揺らぎからの発電や、微弱信号を検
出する素子への応用できる。前述のように環境発電は、身近にある光や振動、熱といったわずかな
エネルギーを電力に変換でき、究極の省エネルギー技術として注目されている。わずかなエネルギ
ーから電力を得るために必要となるのが整流効果(代表的な素子にダイオード)。第二種超電導体
に特有な「渦糸」の液体状態を利用して、全く新しい整流素子を実証した。具体的には、磁性絶縁
体のイットリウム鉄ガーネット(Y3Fe5O12)基板上に、第二種超電導体――超伝導体にはある一定
の磁場(臨界磁場)を超えた場合、常伝導状態に移行する第一種超伝導体と、超伝導状態を保った
まま一定の磁束線が侵入する渦糸状態を経て、常伝導状態へ移行する第二種超伝導体とがある――
であるモリブデンゲルマニウム(MoGe)薄膜をスパッタリング技術で形成。この試料を一定の温度
に保ち、面内方向に磁場を印加し、ある特定の磁場値で、外部入力がなくてもMoGeの面内方向に直
流電圧が発生することを突き止め、直流電圧は電磁ノイズのある測定環境で、安定して観測され続
けた。

直流電圧が生じる温度と磁場の条件について調査した。この結果、MoGeが「渦糸液体相」にある場
合に、電圧が生じている。渦糸とは第二種超電導体特有の欠陥で、超電導体の内部に侵入する磁束
線。この渦糸が超電導体内部で自由に運動できる状態になっている部分が渦糸液体相。研究グルー
プによれば、実験で観測された直流電圧は、磁性絶縁体のY3Fe5O12がMoGeの片側に取り付けられた
ことにより生じたと推測。Y3Fe5O12が付いた表面とそうでない表面では、渦糸が超電導体内部へ入
り込むために必要なエネルギーが異なり、それぞれの表面近くで渦糸の量が不均衡となる。MoGe
薄膜の面内方向に電流を流すと、薄膜の面直方向に駆動される渦糸の数は、電流の正と負で異なる。
こうした渦糸の流れで面内方向に電圧が生じ、超電導の電気抵抗として観測される。測定された直
流電圧は、測定器内部にある電磁ノイズが、渦糸の量が不均衡となったことで整流された結果だと
してみている。


【成果ポイント】
・第二種超伝導体の性質を利用した環境発電機能を実証。
・試料の温度を一定に保ち、特定の磁場を印加するだけで、環境の"揺らぎ"から直流電圧が発生。
・微弱な環境揺らぎからの発電や、微弱信号を検出する素子に応用できる可能性がある。 



【蓄電池篇:最新二次電池プレドーピング技術Ⅱ】

 ❏ 特開2018-190582 リチウムイオン二次電池の製造方法 トヨタ自動車株式会社
先回はドーピング有りの高容量化技術を掲載、今回は同社公開の非ドーピング技術を掲載。従来、
負極活物質には黒鉛が使用されている。酸化珪素は、黒鉛よりも大きい比容量(単位質量あたりの
容量)をもつ。また、黒鉛と酸化珪素とが混合されて使用されることで、電池の高容量化が期待さ
れれもいるが、酸化珪素は、電解液と副反応を起こしやすく。酸化珪素は、耐久性(高温保存特性
)に課題を残す。酸化珪素の耐久性向上に、電解液にFEC(フルオロエチレンカーボネート)を添
加することが考えられ、初回充電時に、酸化珪素の表面においてFECが還元分解し、酸化珪素の表
面にFEC由来の被膜形成される皮膜はSEI(固体電解質相)とも称され、SEIの形成により、酸化珪
素と電解液との副反応が抑制され耐久性が向上する。しかし、黒鉛と酸化珪素との混合負極では、
黒鉛の表面にもFEC由来のSEIが形成され、FECの添加量に対して得られる耐久性向上効果が小さい
と考えられていた。



本件は、下図のごとく、リチウムイオン二次電池の製造方法は、以下の(A)~(E)を含む。(
A)少なくとも正極および負極を含む電極群が収納されたケースを準備する。(B)第1電解液を
電極群に含浸する。(C)負極の電位を第1電位まで下げる。(D)ケースにFECを注入する。
(E)負極の電位を第2電位まで下げる。負極は、少なくとも黒鉛および酸化珪素を含む。第1電
解液は、FECを含まない。添加剤は、0.5V(vs.Li+/Li)以上1.5V(vs.
Li+/Li)以下の還元分解電位を有する。第1電位は、0.2V(vs.Li+/Li)よりも
高く、還元分解電位以下である。第2電位は、0.2V(vs.Li+/Li)以下であるで、負
極に黒鉛および酸化珪素を含むリチウムイオン二次電池において、FECの添加量に対して得られ
る耐久性向上効果を大きくできる。



【符号の説明】
10 正極、11 正極集電体、12 正極活物質層、20 負極、21 負極集電体、22 負極活物
質層、30 セパレータ、50 電極群、80 ケース、81 缶、82 蓋、83 外部端子、84 注
液孔、85 集電板、100 電池(リチウムイオン二次電池)

【耐久性の評価】
下記表のごとく、たとえば、実施例1と比較例1との比較、実施例4と比較例4との比較、実施例
9と比較例7との比較等から、実施例では、FECの添加量に対して得られる耐久性向上効果が、比
較例に比して大きい(容量維持率が高い)傾向が認められる。実施例では、FEC由来のSEIが、黒鉛
の表面に形成され難く、酸化珪素の表面に形成されやすい。他方、比較例では、黒鉛と酸化珪素両
方において、VC(ビニレンカーボネート)とFECのSEIが形成されるため、酸化珪素の表面に形成される
FEC由来のSEIが少なくなる。
FECの添加量が多くなる程、ガス発生量が多くなる傾向がある。実施例では、比較例よりもガス発
生量が少ない傾向が認められ、実施例では、黒鉛の表面にVC由来のSEIが形成され、酸化珪素表面
にFEC由来のSEIが形成される。これによりガス発生反応が効率的に抑制される。実施例4~6、実
施例12~14の結果に示されるように、PS( ポリサルファイド)でもVCと同様の結果が得られて
いる。ES(エチレンサルファイト)でも同様の結果が得られる。さらにVC、PSおよびESのうち、2種以
上が使用された場合でも同様の結果が得られる。実施形態および実施例はすべての点で例示であっ
て制限的なものではない。特許請求の範囲の記載により確定される技術的範囲は、特許請求の範囲
の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。



❏ 特開2018-113447 ドーピングシステム並びに電極、電池及びキャパシタの製造方法

今度はドーピング装置事例に焦点を当てみよう。
近年、電子機器の小型化・軽量化は目覚ましく、電子機器駆動用電源として用いられる電池も小型
化・軽量化進展している。また、リチウムより低コストで資源的に豊富なナトリウムを用いたナト
リウムイオン型の電池やキャパシタも知られているが、様々な目的のために、予めアルカリ金属を
電極にドープするプロセス(プレドープ)が採用され、アルカリ金属を電極にプレドープする方法
としている――例えば、切り取られた電極板とアルカリ金属板とを、セパレータを介して電解液中
に配置した状態でプレドープを行う、枚葉式の方法がある一方、帯状の電極板を電解液中で移送さ
せながらプレドープを行う連続式がある。連続式は枚葉式より生産性に優れるものの、局所的なプ
レドープが進んでしまうことにより、不良なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜が形成される、ア
ルカリ金属が電極上に析出する等、様々な不具合が生じるおそれがあり、アルカリ金属がプレドー
プされた高品質の電極を製造することができるドーピングシステム、並びに、電極、電池及びキャ
パシタの製造法が求められている。

本件は、下図のごとくドーピングシステムは、活物質を含む層を有する帯状の電極前駆体73にお
ける活物質にアルカリ金属をドープ。ドーピングシステムは、ドーピング槽3と、搬送ユニットと、
対極ユニット51と、接続ユニットと、多孔質絶縁部材53と、を備える。ドーピング槽は、アル
カリ金属イオンを含む溶液を収容する。搬送ユニットは、電極前駆体を、ドーピング槽内を通過す
る経路に沿って搬送する。対極ユニットは、ドーピング槽に収容される。接続ユニットは、電極前
駆体と対極ユニットとを電気的に接続する。

多孔質絶縁部材は、電極前駆体と対極ユニットとの間に配置され、電極前駆体と非接触で、アルカ
リ金属がプレドープされた高品質の電極を製造――活物質を含む層を有する帯状の電極前駆体にお
ける前記活物質にアルカリ金属のるドーピングシステムで、アルカリ金属イオンを含む溶液を収容
するドーピング槽と、電極前駆体を、ドーピング槽内を通過する経路に沿って搬送する搬送ユニッ
トと、ドーピング槽に収容される対極ユニットと、電極前駆体と対極ユニットとを電気的に接続す
る接続ユニットと、電極前駆体と対極ユニットとの間に配置、電極前駆体と非接触である多孔質絶
縁部材とを備えるドーピングシステムであり、また、このドーピンステムは、多孔質絶縁部材を備
え、多孔質絶縁部材は電極前駆体と対極ユニットとの間に配置され、電極前駆体が対極ユニットに
接触したり、過度に接近したりすることが生じにくいため、活物質へのアルカリ金属のドープ量を
コントロールすることが容易で、高品質の電極を製造することができる。さらに、多孔質絶縁部材
は電極前駆体と非接触であり、多孔質絶縁部材と接触することで電極前駆体が損傷してしまうこと
を抑制でき、高品質の電極を――製造できるド-ピングシステム、並びに、電極、電池及びキャパ
シタの製造方法を提供する。

【符号の説明】
1…ドーピングシステム、3、5…ドーピング槽、7…洗浄槽、9、11、13、15、17、19、21、
23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、305、307、309、
311、313、315、317、319、321、323…搬送ローラ、47…供給ロール、49…巻取
ロール、51、52…対極ユニット、53…多孔質絶縁部材、55…支持台、57…循環濾過ユニット、6
1…直流電源、63…ブロア、67、68、70…支持棒、69…仕切り板、71…空間、73…電極前駆
体、75…電極、77…導電性基材、79…アルカリ金属含有板、81…フィルタ、83…ポンプ、85…
配管、87、89…ケーブル、93…集電体、94…未形成部、95…活物質層、96…中央部、97…樹
脂板、99…収容ユニット、101…チャンバー、103…洗浄槽、104…軸受、104A…第1部、
104B…第2部、104C…孔、105…軸受、105A…第1部、105B…第2部、105C…孔、
107…空転防止ユニット、110…シャッター、111…シャッター、113…押圧ユニット、114…
ガス供給ユニット、115…棒状部材、116…ガス排気ユニット、118…根元、120…先端、121
…シール、122…前面蓋、123…スリット、127…レバー、129…空転防止ローラ、131…付勢
バネ、133…配管、135…供給弁、137…配管、139…排気弁、141…壁、143…支持部、
149…エアシャフト、150…孔、151…突出片、152…Oリング、201…電極製造システム、
203、205、207…電解液槽、217…本体部、301…電極製造装置、401、403…クリー
ニングユニット、501…第1のマスク部材、503…第2のマスク部材 
                                         この項つづく                         
                                     
                                  

 ● 今夜の一枚

このグラフィックは再エネのオールソーラーシステムだけでも電力総需要量満たせることが一目で
理解できるように描かれている(詳しくはクリック参照)。このような背景を盛り込みこの10年
「エネルギー革命」をブログ掲載してきたが、同時にエネルギー貯蔵革命も同時進行しており、も
はや、日本は輸入するもの(特定地下資源を除き)がなくなったとわたし(たち)は確信している。
また、この流れに逆らうものは"反知性”だけであるとも考えている。"諸君!RE100 ラストワンマ
イルだ”。

 ● 今夜の一曲

”The Last Mile”    Song: Cinderella,   Music Writer: Tom Keifer

Me and Billy boy and old lady Jane
We hitched a ride, took a fast movin' train
Got to the top with our heads spinnin' round
You never know just what you got until you're comin' back

 

Down on the farmland Mississippi shade
The folks down there they told me take it day by day

 

And walk the last mile before I sleep
It'll be a while before I get my peace
With the same style I walked for years
On the last mile I can rest my fears........


湯豆腐と句心つなぐ命

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天   瑞 てんずい
ことば --------------------------------------------------------------------------------
「いずくんぞわが今の死の、昔の生に愈らざることを知らんや」
「生は死を知らず、死は生を知らず、来は去を知らず、去は来を知らず」
----------------------------------------------------------------------------------------
天地の生成
昔、聖人は陰陽にもとづいて天地を支配した。
形のあるものは形のないものから生じたのだ。とすると、天地は何から生じたのか。いちばん最初
にあるものが太易である。それから、太初、太始、太素と変化する。
太易はまだ「気」になっていない。太初は「気」の始めである。太始は「形」の始めである。太素
は「質」の始めである。この「気」と「形」と「質」が具わりはするが、まだ分離していないから
渾淪(こんりん)という。
渾淪とは万物が互いに混沌としていて分離しない状態をいう。形を見ることもできず、音を聞くこ
ともできず、手にふれることもできないので、易ともいう。易とは形がないことである。易が変じ
て一となり、一が変じて七となり、七が変じて九となる。「九」は「究」であって、ここにまた一
にもどる。
一は物の変化の始めである。その中の軽く澄んだものは昇って天となり、重く澗ったものはくだっ
て地となる。天の気と地の気がまじって人となる。天と地は、ものを生みだす根源を合んでいてそ
こから万物が生じるのである。

無知無能は全知全能
天も地もすべての事を成しとげることはできない。聖人も何もかもできるわけではない。万物も、
その一つ一つが何にでも役だつわけではない。
天は万物を覆う働きをする。珀は万物をのせる働きをする。聖人は人を教化する。万物はそれぞれ
の性質に応じて役だっている。
天にも、地にも、聖人にも、物にも、それぞれ長所と短所がある。天は物をのせられない。地は人列 を教化
できない。聖人は物の性質にさからえない。みなプそれぞれのあたえちれた性質にもとづいで働けるだけだ。

天地の道は陰でなければ陽である。聖人の教えは仁でなければ義である。万物の性質は柔でなけれ
ぱ剛である。みな本性に従って、それを越えることはできない。
生命があれば,それを生みだしたものがある。形があれば、形を作ったものがある。音があれば、
音を発するものがある。色があれば、色を染めだすものがあ芯。味があれば.味をつくるものがあ
る。
生あるものはすべて死ぬ。だが、それを生みだしたものは死なない。形あるものは目に見える。だ
が、形を形としているものは目にみえない。音そのものは聞こえても、音を背にしているものは聞
こえない。色の区別は見ればわかるが、色を色としているものの姿は見えない。甘いからいはわか
るにしても、味を味としているものは現われない。これらはすべて無為の働きである。無為は陰で
もあでもある。柔でもあり剛でむある。円でもあり角でもある。生でもあサ死でもある。暑くもあ
り寒くもある。浮きもし沈みもする。宮でもあり商でもある。現われもし消えもする。
黒くもあり黄色でもある。甘ぐもあわからくもある。香ばしくもありなまぐさくもある。無為は無
知であり無能である。と同時に全知であり全能である。

〈宮、商〉 いずれも五音の中の一つ。宮はド、商はレにあたる。
 道 宇宙のいっさいを生みだし、あるべき姿に置き、秩序を保っているものを道と考える。人間
は目で見たり耳に聞いたりして道を直接認識することはできない。だが人間世界をおおい、人間世
界のあらゆる現象を支配し秩序づけているものは、この道だ。道のあらわれが無為である。

※ここでは中国流二元論レトリックが展開されたのち止揚され仏法的ハビタゾーンが語られている。



【歳時記☯湯豆腐アレンジレシピ】

湯豆腐やいのちのはてのうすあかり   久保田万太郎

湯豆腐や句心つなぐ喜寿米寿      平野無石


急に寒くなり雪もちらつきそうな雰囲気のそこで湯豆腐をスモールビジネス化できないかと考えネ
ットサーフ。加熱の仕方や加熱媒体に具材、出汁(スープ)、薬味(スパイス/ハーブ)などでア
レンジできるが、豆腐そのもののアレンジに工夫が必要なことに気付く。例えば、予め。大豆に米
や小麦、フルーツ、魚介類、卵などのラクト類、野菜(パウダー)を練り込む、あるいは混ぜ込ん
でおけば変幻自在にアレンジ可能だ。何よりも、男子厨房に入る準備をしているから「ソイタウン
構想」を具体化するために研究に余念がなくなってもいいはずだ。



もうひとつ、今朝朝食に、緑茶とおにぎりと小松菜の野沢菜もどきの漬け物を彼女がつくりだしたのをい
ただく。なるほど美味しい。どうしたのだと訊くと、NHKの「ためしてガッテン」でやっていたのでと
のこと。つくりかたは簡単、2等分に切った小松菜を、冷凍用保存袋に入れ、塩を加える→袋の上から全
体を軽くもみ、空気を抜いて冷凍庫に一晩入れる→解凍し、水気を絞り、食べやすい長さに切るというも
の。ごま油やラー油、オリーブ油を少し加えるともっと美味しいくなるのだがと思いつつ感心する。たぶ
ん、こんなことが山ほどでてき、これもキーワードビジネスの1つだろうと合点。

 

  ● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.21

    

第5章
「どうですか、ガウェイン卿」と、じっと見ていたウィスタンが尋ねた。
「この御仁とわしは今日まで会ったことがないと思う」とガウェインが答えた。
「確かですか。年月は人の見かけを変えることがありますが・・・・・・」
「ウィスタン様」とベアトリスが割り込んだ。「夫の顔に何をお探しですの。なぜこの騎士様に
――いままでまったく見知らぬ人だったこの方に――そんなことをお尋ねになるのです」
「お許しを、奥様。この土地は、わたしの中にあるいろいろな記憶を呼び覚ましてくれます。です
が、どれも落ち着きのない雀のようで、たちまち風の中に逃げていってしまいそうです。今日はず
っと、あなたのご主人の顔を見るたびに何か重要な記憶につながりそうな感じがありました。正直
に申し上げると、同行を申し出たのはそれが理由でした。ですが、お二人が安全に旅をなさるよう
にというのも、わたしの心からの願いです」
「でも、主人はこの近くの国にずっと住んできましたのに、なぜ西国で会ったなどと?」
「気にすることはないよ、お姫様。ウィスタン殿は誰か別の人と混同しておられるのだろう」
「そうに違いあるまい、友よ」とガウェインが言った。
「ホレスとわしも、よく過去の誰かと見間違えることがある。おい、ホレス、見よ、とわしが言う。
わしらの前を歩いていくのは昔懐かしいチューターではないか。バドン山で倒れたと思っておった
が・・・・・・。で、近寄ると、ホレスが鼻をぶるぶる鳴らし、なんたるばか者だ、ガウェイン、と言う。こ
の男はチューダーの孫でも通る年じやないか.そのうえ、全然似ていないぞ、とな」
「ウィスタン様」とベアトリスが言った。「せめて牧えてください。主人は、子供のあなたが好き
だった人に似ているのですか。それとも嫌った人?」
「立ち入らないでおこうよ、お姫様」

だが、ウィスタンはしやがんだまま、そっと体を揺らしながらアクセルを見つめつづけた。

「好きだった人、と信じていますよ、奥様。今朝お目にかかったとき、心が喜びでいっぱいになり
ましたから。でも、やがて……」

ウィスタンはまるで夢でも見るような目つきで、黙ってアクセルを見つづけた。その顔がしだいに
賠くなり・・・・・・・戦士は立ち上がって、そっぽを向いた。

「お答えできません、奥様。自分でもよくわからないんです。ご一緒に旅をすれば思い出がもっと
よみがえってくれると踏んだのですが、いまのところはまだ……ガウェイン卿、どうされました」

ガウェインの頭がぐったりと前に垂れ下がっていた。だが、すぐに上体を起こし、一つ溜息をつい
た。

「大丈夫だ。お気遣い、感謝するよ。ホレスとわしは、柔らかいベッドもちやんとした雨よけもな
しに幾晩も過ごしてきたからな、疲れておる。それだけのことだ」

そう言いながら、手を上げて額の一箇所をなでた。だが、ほんとうは違う、とアクセルはふと思っ
た。すぐ横にある顔をもう見たくなかったのではないか………
「ウィスタン殿」とアクセルが呼んだ。
「こうして腹蔵なく話し台えるようになったところで、今度はわたしからお尋ねしてよろしいです
か。あなたは王の用事でこの国に来たと言われる。この国は平定されて久しい。なのになぜ姿を偽
って旅をすることにこだわるのでしょうか。妻と哀れな少年も一緒に旅をする以上、わたしとして
はもう一人の旅仲間のことをよく知っておきたいのです。その人の友人は誰で、敵は誰なのか……」

「ごもっともです、ご老人。言われるとおり、この国は平定されて、穏やかです。ですが、ここで
のわたしは、ブリトン人の支配する土地を旅するサクソン人です。とくにこのあたりはブレヌス徊
の支配地域で、その兵隊が我が物顔に歩き回り、穀物や家畜を悦として徴収しています。誤解がも
とで争い事になるのは避けたくて、そのために別人のふりをしてきました。結果的に、だからここ
まで安全に来られたのだと思います」
「そうかもしれません、ウィスタン殿」とアクセルが言った。
「ですが、橋の上にいたブレヌス卿の兵隊はただ遊んでいたのではないでしょう。目的があって配
置されていたはずです。もし霧で心が曇っていなければ、ウィスタン殿にもっと厳しく接していた
かもしれません。あなたはブレヌス卿の敵とみなされているのではありませんか」

一瞬、ウィスタンは考え込んでいるように見えた。節くれたった根の一つがオークの幹から出て、
足元を過ぎ、少し向こうでまた地面に潜っている。ウィスタンは目でそれを追っていた。やがて、
また三人に近寄り、今度は短い草の上に腰をおろした。

 Episode of Camlann's Battle

「よろしい、ご老人。全部お話ししましょう」と言った。
「あなたとこの騎士殿の前なら包み隠さず申し上げられます。東方で、ある噂を聞きました。この
土地のサクソン人がブリトン人に迫害されているという噂です。王が同胞のことを心配され、実際
はどうなっているのか見てくるよう、わたしに命じられました。それだけのことです。平和衷に視
察の任務についていたのですが、馬が脚を傷めてしまいました」
「君の立場はよくわかるぞ、ウィスタン殿」とガウェインが言った。
「ホレスとわしもサクソン人の支配する土地に行くときは、同様に気を遣う。甲冑など脱ぎ捨て、
百姓に身をやつそうかと思ったりするが、問題はこの金物をどうするかだ。どこかに隠したとして、
また見つけられるかどうか。それにアーサー王の崩御から何年も経つ.いまこそこの誇りある紋章
を高く掲げ、万人の目に触れさせるのが、残された者の義務ではなかろうかとも思う。だから、わ
しは堂々と行く。人々がわしをアーサー王の騎士と認めるとき、その眼差しのやさしさにわしは感
激する」
「ガウェイン卿がこの地で歓迎されるのは、いわば当然でしょう」とウィスタンが言った。
「ですが、アーサー王を敵として恐れた地域もあります。そこではどうでしょうか」
「ホレスとわしは、わが王の名が広く受け入れられているのを見てきた。ウィスタン殿の言う国々
でもそうだ。王は打ち破った敵に寛大であった。だから、敵からもすぐに王として愛されるように
なった」

 Camelot (1967) Official Trailer

先ほどから――アーサー王の名が出たときから――アクセルは正体不明の不安感にまとわりつかれ
ていた。だが、いまウィスタンと老騎士の話を聞いていてようやく記憶の断片がよみがえってきた。
ほんの断片にすぎないが、それでも、手に取って見つめられる何かができたことで心が安堵した。
記憶の中のアクセルは、テントの内部に立っていた。軍隊が戦場近くに組み立てるような大きなテ
ントで、外には風が出ているらしく、テントの壁が外に吸い出されては、また内に押し戻され、大
きくはためいていた。夜らしく、蝋燭が使われて、その炎も激しく瑶れていた。テントにはアクセ
ルのほかにも誰かがいた。たぶん何人もいた。だが、顔は思い出せない。テントの中でアクセルは
怒っていた。同時に、少なくとも当面はその怒りを内に秘めておくことが重要だともわかっていた。
            
                          カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

                                     この項つづく

 
【エネルギー通貨制時代 24】 
”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
 Mar. 3, 2017 



【蓄電池篇:最新二次電池プレドーピング技術 Ⅳ】

❏ 特開2018-190917 電気化学デバイス 太陽誘電株式会社
今回も、二次電池の大容量化技術を考察する。
大容量キャパシタとして、エネルギー密度が高いリチウムイオンキャパシタが検討されている。例
えば、リチウムイオンキャパシタでは、正極、負極、リチウムイオン供給源及び電解液が容器によ
って封止され、リチウムイオン供給源からリチウムイオンが予め負極にプレドープされる。
しかし、リチウムイオン供給源の金属リチウム層は、一般的に均一な厚さ有する。これにより、プ
レドープでは、金属リチウム層が電解液に接する金属リチウム層の表面からリチウムイオンが徐々
に電解液に溶け出す。この結果、プレドープの進行速度は、電解液に浸漬された金属リチウム層が
徐々に薄くなる速度に左右される。
電気化学デバイスは、電極ユニットと、電解液と、リチウムイオン供給源とを具備する。上記電極
ユニットでは、正極と負極とがセパレータを介して交互に積層されている。上記電解液には、上記
電極ユニットが浸漬されている。上記リチウムイオン供給源は、上記電極ユニットに対向し上記負
極に電気的に接続された金属箔と、上記電解液に対して非溶解性の粒子とを有し、上記電極ユニッ
トとともに上記電解液に浸漬されている。上記負極には、上記金属箔に設けられた金属リチウム層
からリチウムイオンのプレドープがなされている。上記粒子は、上記リチウムイオンが上記負極に
プレドープされる前に上記金属リチウム層に分散配置されている。このような電気化学デバイスで
あれば、上記リチウムイオン供給源において、上記粒子が上記金属リチウム層に分散配置されてい
る。これにより、上記金属リチウム層の上記電解液に接する面積が増加して、リチウムイオンが上
記金属リチウム層から溶け出す量が増加する。この結果、プレドープがより迅速に進行する。

下図のごとく、電気化学デバイスでは、電極ユニットにおいて、正極と負極とがセパレータを介し
て交互に積層されている。上記電解液には、上記電極ユニットが浸漬されている。上記リチウムイ
オン供給源は、上記電極ユニットに対向し上記負極に電気的に接続された金属箔と、上記電解液に
対して非溶解性の粒子とを有し、上記電極ユニットとともに上記電解液に浸漬されている。上記負
極には、上記金属箔に設けられた金属リチウム層からリチウムイオンのプレドープがなされている。
上記粒子は、上記リチウムイオンが上記負極にプレドープされる前に上記金属リチウム層に分散配
置することで、電気化学デバイスにおいて、プレドープがより迅速に進行する。



【特許請求の範囲】

正極と負極とがセパレータを介して交互に積層された電極ユニットと、前記電極ユニットが
浸漬された電解液と、前記電極ユニットに対向し前記負極に電気的に接続された金属箔と、
前記電解液に対して非溶解性の粒子とを有し、前記電極ユニットとともに前記電解液に浸漬
されたリチウムイオン供給源とを具備し、前記負極には、前記金属箔に設けられた金属リチ
ウム層からリチウムイオンのプレドープがなされ、前記粒子は、前記リチウムイオンが前記
負極にプレープされる前に前記金属リチウム層に分散配置されている 電気化学デバイス。 正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に設けられたセパレータとを有する電極ユニッ
トと、前記電極ユニットが浸漬された電解液と記電極ユニットに対向し前記負極に電気的に
接続された金属箔と、前記電解液に対して非溶解性の粒子とを有し、前記電極ユニットとと
もに前記電解液に浸漬されたリチウムイオン供給源とを具備し、前記負極には、前記金属箔
に設けられた金属リチウム層からリチウムイオンのプレドープがなされ、前記粒子は、前記
リチウムイオンが前記負極にプレドープされる前に前記金属リチウム層に分散配置されてい
る電気化学デバイス。 請求項1または2に記載の電気化学デバイスであって、前記粒子は、無機粒子及び有機粒子
の少なくともいずれかである電気化学デバイス。

❏  特開2018-190695 全固体電池 株式会社オハラ
有機溶媒など液体の電解質(電解液)に替えて、固体電解質を用いることが提案されている。また
、電解質として固体電解質を用いるとともに、その他の構成要素も固体で構成された固体二次電池
の開発が進められている。特開2007-258165(以下、特許文献1という)には、NAS
ICON構造を有するカチオン導電体である固体電解質、ポリリン酸を含む正極活物質及び負極活
物質を含む全固体電池が開示されている。 しかし、この方法では、全固体電池の負極の電位が高く
高いエネルギー密度を得られないことを発明者らにより確認されている。 また、WO2012/0
08422(以下、特許文献2という)には、同じくNASICON構造を有するリチウムイオン
伝導体を固体電解質とし、アナターゼ型の酸化チタンを負極活物質とする全固体電池が開示されて
いる。特許文献2に記載の方法では、特許文献1よりも負極電位を下げることは確認されている。
しかし、特許文献2に記載の方法では、放電容量-電位曲線において電位降下のプラトー領域に至
るまでの電位降下勾配が緩やかであり、上記プラトー領域に至るまでの区間の正極活物質に対する
充電電位を十分に上げられないこと、それにより電池の放電容量が低下し、結果としてエネルギー
密度が低くなることが発明者らによって確認されている。全固体電池ではないが、非特許文献1に
おいて、アナターゼ型のTiO2を負極活物質としたリチウムイオン電池の研究が開示されている。

非特許文献1によるとアナターゼ型のTiO2を負極活物質とした場合、Liを挿入する充電反応
後に、上記負極活物質は、結晶構造が斜方晶系のLixTi2O4(x=0~1)となることが開
示されている。斜方晶系のLixTi2O4(x=0~1)を用いたリチウムイオン電池は、Livs1
.8Vの高い電位を有することが開示されている。
下図のごとく、固体電解質層、正極層及び負極層、を含む全固体電池であって、前記固体電解質層
は、前記正極層及び前記負極層の間に介在され、前記正極層又は前記負極層の少なくとも一方と前
記固体電解質層とが焼成により接合されており、前記固体電解質層、前記正極層及び前記負極層は
いずれもリチウムイオン伝導性の固体電解質を含み、前記負極層が、焼成後かつ完全放電状態にお
いて、(a)TiO2、及び(b)LixTi2O4(x=0超~2)を含むことを特徴とする、低い
負極電位による高い放電電圧を有し、更に高い放電容量を有することで、高いエネルギー密度を得
ることが可能な全固体電池を提供する。

【符号の説明】
1:全固体電池、2:固体電解質層、3:正極層、4:負極層
【充放電試験】
電池の特性を評価するため、充放電試験は実施例1~3及び比較例1~2で作製した積層型全固体電池の
負極面に銅箔を正極面にアルミ箔を接合することで導通をとって行った。接合はカーボンペーパーにカー
ボンペーストを塗布して、銅箔及びア回折測定を実施する試料については、カーボンペーパー、カーボン
ペーストを用いずに真空パックでの圧着のみルミ箔とセルの間に挟み込み、露点-50℃のドライルーム
内で焼成することで行った。焼成後にドライルーム内においてアルミラミネートフィルムでパッケージン
グすることで外気を遮断した。X線で正極とアルミ箔とを及び負極と銅箔とを電気的に接合した。
なお、エネルギー密度の計算は全固体電池の質量のみを用い、アルミ箔、銅箔、カーボンペーパー及びペ
ースト、並びにアルミラミネートフィルムは含めなかった。

充電放電試験は室温にて50μAで3VまでCC充電後に50μAで放電することで行った。放電のカ
ットオフは0.1Vとした。負極活物質にLi4Ti5O12を用いた実施例1で作製された全固体電池並び
に負極活物質にアナターゼ型TiO2を用いた実施例2及び比較例1で作製された全固体電池について
の放電特性測定結果を図3に示した。下表2に示されるように、負極活物質にアナターゼ型のTiO2を
用い、かつ負極層がガラス電解質を含まない比較例1で作製された全固体電池においては、平均動作電圧
1194mV、放電容量85.7mAh/g、エネルギー密度16.6Wh/kgとなった。一方、実施例1で作製さ
れた全固体電池においては、平均動作電圧1480mV、放電容量140.3mAh/g、エネルギー密度33.
7Wh/kgと最も高く、平均動作電圧、放電容量及びエネルギー密度の全ての点において比較例1で作製
された全固体電池に比べて大きく改善した。特に、実施例1で作製された全固体電池の平均動作電圧が
高いことは、実施例1で作製された全固体電池が、比較例1の全固体電池よりも高い電位で動作している
ことを示した。また、実施例2及び実施例3で作製された全固体電池は、共に比較例1及び比較例2で作
製された全固体電池に比べて高い放電容量、平均動作電圧及びエネルギー密度を持つことが確認された。
【Li濃度解析】
本発明の全固体電池の負極層中のLi濃度と結晶構造の関係についてより局所的に確認するため、実施例
1~3及び比較例1~2の全固体電池を樹脂埋没し、クライオFIBにより薄片の試料調製を行い分析電
子顕微鏡によるSTEM-ABF像とSTEM-HAADF像の解析、電子線解析と得られた部位におけ
る電子エネルギー損失分光法(EELS)によるLi濃度解析を行った。使用した分析電子顕微鏡はJE
M-ARM200F(日本電子製)、EELS分光器はQuantumER(GATAN製)、測定条件
は200kV、EELS点分析は取得時間0.02秒以上とした。 これにより得られた結果を下表2に
示す。


                                                             この項つづく

  ● 今夜の一曲

「NO WAY MAN」(ノーウェイマン)は、日本の女性アイドルグループ・AKB48の楽曲。作詞は秋
元康、作曲は前迫潤哉とYasutaka.Ishioが担当。2018年11月28日にAKB48のメジャー54作目のシングル
としてキングレコードから発売された[注 1]。楽曲のセンターポジションは宮脇咲良が務める。

絶対に無理だって世界中の人に言われた
Why?OhWhy?
何気ない言葉に何度も何度も湛ついて
でもその度に僕は強<なって行った
他人事(ひとごと)だから簡単に決めつける
Why?OhWhy?
届かないくらいにそんなに高い場所なのか?
誰もが諦める夢.......

空蒼く湖なほ碧し雪螢

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黄  帝 こうてい
ことば --------------------------------------------------------------------------------
「なんじに芋(ちょ)を与えんに、朝に三にし暮は四にす。足らんか」
「風に随いて東西すること、木葉幹穀のごとく、ついに風のわれに梁ずるか、われの風に乗ずるか
を知らず」
「然る所以(ゆえん)を知らずして然るは、兪なり」
----------------------------------------------------------------------------------------
黄帝の夢
黄帝は即位して十五年間、人民から天子と仰がれるのに気をよくし、うまいものを食い、見たいも
のを見、聞きたいものを問いて楽しみにふけった。その結果、健康をそこない、心のバランスをく
ずしてしまった。
そこで次の十五年間ヽ黄帝はご収治に心をくだヽ汽ありったけの知恵をしぽって人民のためにつく
した。すると、体調はますます悪化し、心もいっそう勁揺するありさまだった。
黄帝はためいきをついた。

「ああ、どうやってもだめだ。以前、わたし個人の楽しみを求めてやつれた。こんどは人民の幸福
のためにつくして、やはりこの始末だ」



そこで政治をすて、宮殿をすて、おともを隠し、音楽をやめ、食事も質素なものにした。 
宮殿の庭の片すみにいおりを結び、身も心もきよめ、三月というもの政治から離れてみた。
ある日、黄帝はひるねの夢に華何の国へ行った。華何の国は弊州の西、台州の北にあって、中国か
らは悦子万里はなれているかわからない。歩いてはもちろん、舟や車でも行けない。神遊でしか行
けないところだ。

その国には支配者がおらず、国全体が自然のままにおかれている。人民は欲望をもたず、なにごと
も自然にまかせている。生に執着もしなければ、死をおそれもしない。だから若死にする看がいな
い。わが身かわいさに他人をおしのけることもないから、愛憎もうまれない。人を哀ぎったり、へ
つらったりすることがないから、利害というものもない。好きだとか嫌いだとかいった感情は誰も
もたない。水のなかでもおぼれないし、火のなかでも熱くない。切ってもたたいてもけがをしない。
かきむしっても痛くない。地上を歩くように空中を歩き、ベッドにねるように空中にねる。雲も霧
も視界をさえぎらず、かみなりが耳を谷することもない。美醜にも心は乱されない。山や谷を歩い
てもつまずかない。自由自在なのである。

黄帝は目がさめて、ハッとさとった。天老・力投・大山精の三人の大臣をよんでいった。

「三月の間、身も心もきよめて、修業をつみ、よい政治を考えぬいてきたが、その方法をつかめな
かった。だが今つかれてねむり、夢で華百の国へ行ってきた。ほんとうの道は、あらゆる欲望をす
てないと得られない、ということがよくわかった。口ではうまく説明できないが、わたしはそれを
つかんだのだ」

いらい二十八年間、世の中はりっぱにおさまって、まるで華膏の国のようだった。黄帝が没すると、
人民の号泣は二百年あまりもつづいたということだ。

<黄帝〉 伝説上の皇帝。伏蔵、神農氏とともに三皇と称される。儒家は宛、舜を理想の天子とす
 るが、道家は黄帝を理想の天子として尊敬する。

<詐州、台州〉 『山海経』や『淮南子』に見える地名であるが、ここでは仮空の地名といって
よかろう。
〈神道〉 肉体はそのままで、精神だけがその場所に行くこと。

 
【歳時記:#雪螢#Snowflake】

空蒼く湖なほ碧し雪螢          德田千鶴子
切り返す堆肥の温み雪ぼたる    生田作
大綿の澄みゐる暮のゆとりかな  鈴木花蓑
少女より少年美しき雪蛍        藤井勢津子

晩秋から初冬にかけて、空中を青白く光りながら浮遊する。物に当たると付着する。初雪の頃出現
することから、雪虫とよぶ地方もある。明治以降注目されて、詠まれるようになった。この雪虫が
出現すると「もうすぐ雪が本格的に降ってくるな」と身構えたり冬を越す準備に入る。蛍のように
青白くほのかに光り、晩秋の北海道をそっとライトアップ。道民からは可愛らしい存在として親し
まれている。

From late autumn to early winter, it floats in the air with a glowing white light.
Attaches to objects and sticks.
There are provinces called "snow insects" because they will appear around the first snow.
It has been drawing attention since the Meiji era and began to be sung.
When this snowflake appears, we will be ready to overcome the winter as "snow will soon come
down in earnest".
It glows faintly like a firefly and gently light up Hokkaido in late autumn.
It is familiar to residents as lovely being.



  ● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.22

    

第5章
「ウィスタン様」とベアトリスが横から呼んだ。
「わたしたちの村で一番尊敬されている人々には、サクソン人の家族もいくつか含まれております
よ。それに、今朝出てきた村でもご覧になったでしょう?あの村は富んでいました,確かに、あな
たが退治してくださったような悪鬼に、占しめられることも、ときにはあるでしょうけど、それは
ブリトン人の手によるのではありませんし……」

「ご婦人の.一日うとおりだ」とガウェインが言った。
「わが敬愛するアーサー王はブリトン人とサ クソン人に恒久の平和をもたらした。遠くの地では
まだ戦があるとも聞くが、ここでは互いに友であり、もはや縁者でもある」
「わたしが見たかぎりでも-山の向こうの国々はまだですが-おっしやるとおりです」とウィスタ
ンが言った。

「この嬉しい報告を早く王のもとへ持ち帰りたいものです。ガウェイン卿、あなたのような賢い方
に好きにものを尋ねる機会などもうないかもしれません。ここでうかがうことをお許しください。
偉大な王はどのような魔法で戦の傷を癒されたのですか。旅をしていて、この国土にはもう戦の痕
跡すらあるかなきかです」

「さすがによく見ておる。そうさな、叔父は決してみずからを神以上などと思わない支配者だった、
と答えようか。常に導きを賜るよう祈っていた。だから、叔父とともに戦った者はもちろん、征服
された者たちもその公明正大さを見て、自分らの王となってくれるように望んだのだと思う」 
「そうだとしても、つい昨日自分の子を殺された人が、殺した男を同胞と呼ぶのは不自然ではあり
ませんか、ガウェイン卿。しかし、アーサー王はまさにその不自然を成し遂げたように見えます」

「それこそが物事の核心よ、ウィスタン殿。子を殺した、とそなたは言う。だが、アーサーの命は、
戦いの混乱に巻き込まれた無事の者を助けよ、だった。常にわれらにそう命じていた。さらにだ、
女子供と年寄りは、ブリトン人とサクソン人の区別なく助け、保護せよ、とも命じていた。猛烈な
戦闘がつづいておる一方で、その命にもとづく行動の上に信頼の絆が築かれていった」
「おっしやることには心打たれますが、それでも、まれにみる驚異のように聞こえます」とウィス
タンが言った。

「アクセル殿は、アーサー王によるこの国の統一を驚異的と思われませんか」
「あの、ウィスタン様」とベアトリスが大きな声を出した。「夫を誰とお考えなのですか。夫は
戦いのことなど何も知りません」

だが、突然、全員の注意がほかにそれた。いつの間にか本道に迷い出ていたエドウィンが、大声で
叫んでいた。そして、急速に接近してくる馬の蹄の音が聞こえてきた。後から思い返してみると、
このとき、ウィスタンは確かに過去への不思議な思いにとらわれ、気もそぞろだったに違いない。
いつも油断なく周囲に気を配っている戦士にしては反応が遅れ、立ち上がったときは、もう馬が空
き地に乗り入れてくるところだった。騎手は見事な手綱さばきで速度を落とし、だくあしでオーク
の大木に向かってきた。

長身の騎手を見て、それが誰なのか、アクセルにはすぐにわかった。橋の上でベアトリスにやさし
い言葉をかけてくれた灰色の髪の兵士だ。しだいに近づいてくるその顔にはまだかすかな笑みがあ
ったが、手には鞘から抜いた剣があった。いまのところ剣先は下を向き、柄は鞍の縁に置かれてい
る。兵士はオークまであと数歩というところで馬を止めた。

「いいお天気です。ガウェイン卿」そう言って、小さく頭を下げた。
老騎士はすわったまま、感心しないという眼差しで兵士を見上げた。
「抜身をひっさげて登場とは、いったいどういう料簡かI
「お許しを、ガウェイン郷。あなたとごI緒のその者たちに尋ねたいことかありまして」そう言っ
て、ウィスタンを-またぽかんと口を開け、くすくすと意味不明な笑い声を立てている。

ウィスタンを-見た。そのまま目を離さず、「少年、馬を近づけてはならん」と怒鳴った。エドウ
ィンがウィスタンの馬を引き、兵士の背後から近づいてこようとしていた。「言うことを聞け、少
年。手綱を放して、前に来い。おまえの兄というこの痴呆の横に立て。おれを待たせるな、少年」

言葉はわからなくても、兵士の言いたいことはわかったようだ。エドウィンは馬から離れ、ウィス
タンの横まで歩いてきた。そのエドウィンの移動に白わせ、兵士が馬の立つ位置と向きを少しずつ
変えていくのが見てとれた。この兵士はなかなかの戦術家だ、とアクセルは思った。自分とウィス
タンの間に一定の角度と距離を保ち、何かが突発的に起こっても、自分の優位が崩れることのない
ようにしている。先ほどの位置だと、ウィスタンを攻撃するのに馬の頭と首が邪魔になって、最初
の一撃が一瞬遅れる。一瞬の隙は相手にどう利用されるかわからない。たとえば、馬が動揺するよ
うなことを何かされたらいやだし、馬の左側に回り込まれるのも困る。左側はいわば死角だ。右手
の剣を馬の頭越しに左に振らねばならず、必然的に届く距離が短くなるうえ、あまり力も入らない。
だが、馬の位置と向きを少し調整したことで、丸腰のウィスタンが馬七の兵士に奇襲をかけること
は、いまや自殺行為も同然となった。それだけではない。兵士はウィスタンの馬の位置も巧みに計
算に入れている。馬はいま兵士の後方、少し離れたところにいて、ウィスタンがそこまで走ってい
くためには、騎手の右側を大きく遠回りするしかない。それでは、馬にたどり着くまえにほぼ確実
に後ろから串刺しにされてしまう。

アクセルは逐一見抜きながら、兵士の作戦能力に感嘆し、同時にその意味するところを思って愕然
とした。そして、自分もかつて同じ経験をしていることを思い出した。あのときは馬を少し前進さ
せ、同僚の馬と鼻面を並べさせたのだった。小さくてわかりにくい動きだが、決定的な動きだった
と思う。あの日、わたしはいったい何をしていたのだったか………わたしともう一人は広大な灰色
の荒れ地を見渡しながら、馬上で何かを待っていた。あの瞬間まで同僚の馬が前にいて、その尻尾
が目の前で左右に振られ、揺れ動いていたのを覚えている。見ながら、この動きのどこまでが馬の
反射運動なのだろうと考えていた。どこからが、何もない地表を吹き渡る風のせいなのか……… 

そんな思いのあれこれを振り払い、アクセルは立ち上がった。手を貸して、妻も立たせた。

体がオークの根元に張りついてしまったかのようなガウェイン卿は、すわったまま新しい来防音を
にらみつけていたが、「起きるから手を」とそっとアクセルに言った。

アクセルとベアトリスとで左右の腕をとり、二人がかりで老騎士を引っ張り起こした。立ち上がり
甲冑姿のまま背すじを伸ばして胸を張ったガウェイン卿は、やはりなかなかの騎士ぶりだ。だが、
むっつりと兵士を見やるぽかりで何をするでもなく、結局、口を開いたのはアクセルだった。

「兵隊さん、なぜ追っていらしたのです。わたしらはただの旅人です。それに取り調べなら滝の前
でもうすんだのではありませんか。お忘れですか」
「よく覚えているよ、おじさん」と灰色の髪の兵士が言った。
「だが、橋の上ではなぜか全員に変な魔法がかけられたみたいでな、なんのためにあそこにいたの
かをすっかり忘れていた。交代が来て、野宮地に戻ろうとしたら、途中で急に思い出した。あんた
のことを思い出したよ、おじさん。あんたらがすり抜けていったこともな。だから大急ぎで追いか
けてきたんだ。動くんじやない、少年。兄貴の横でじっとしていろ」 
     
                          カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

                                     この項つづく 

 
【エネルギー通貨制時代 25】 
”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
 Mar. 3, 2017 

 



【蓄電池篇:最新二次電池プレドーピング技術 Ⅴ】
❏ 特許6294348 リチウムのプレドーピング方法、この方法を含むリチウム二次電池
の製造方法、及びこの製造方法により製造されたリチウム二次電池
今回も、二次電池の大容量化技術を考察。
下図のごとく、発明は、リチウムのプレドーピング方法、より詳細には一つ以上の単位セルを大量
でリチウムを均一にプレドープするリチウムのプレドーピング方法に関する。本件の一面によって、
正極、負極、及び正極と負極との間に介されている分離膜を含む単位セルを一つ以上準備する段階
と、準備した一つ以上の単位セルを反応槽内に設け、互いに同一極性を有する電極同士を接続する
段階と、電解液を反応槽内に添加する段階と、電解液中にリチウム金属板を設け、リチウム金属板
を負極に接続する段階と、負極をドープする段階と、を含むリチウムのプレドーピング方法を提供。
これにより、負極の初期不可逆容量を低下して負極表面のSEI(固体電解質相)への正極金属イオン
の浸透を防止することで、電池の容量及びサイクル寿命を改善できる。

【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術におけるリチウムのプレドーピング方法の一例を示した模式図
【図2】本発明の一実施態様によるリチウムのプレドーピング方法の概略的な模式図
【図3】実施例1における電池のサイクル回数による絶対容量値(mAh)及び相対容量値(%)を
フロートしたグラフ
【図4】比較例1における電池のサイクル回数による絶対容量値(mAh)及び相対容量値(%)をフロート
したグラフ

【特許請求範囲】 

リチウムのプレドーピング方法であって、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介されている分離膜とを備えた単位セルを一つ以上準備する段階と、前記準備した一つ以上の単位セルを反応槽内に設け、互いに同一極性を有する電極同士を接続する段階と、電解液を前記反応槽内に添加する段階と、前記電解液中にリチウム金属板を設け、前記リチウム金属板を前記負極に接続する段階と、前記負極をドープする段階とを含んでなる、リチウムのプレドーピング方法。 前記単位セルが、前記正極及び前記負極にそれぞれ独立して正極タブ及び負極タブを通じて接続されている正極リード及び負極リードを備えてなり、 前記正極リード及び前記負極リードを、それぞれ独立して互いに同一極性を有するリード同士を接続することを特徴とする、請求項1に記載のリチウムのプレドーピング方法。 前記単位セルが、極性の異なる電極の間に分離膜が介された単位セル構造を少なくとも一つ以上備えてなり、最外側に位置した両電極の極性が互いに異なる単位セル構造を備えてなり、又は、極性の異なる電極の間に分離膜が介された単位セル構造を少なくとも一つ以上を備えてなり、最外側に位置した両電極の極性が互いに同一な単位セル構造を備えてなることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムのプレドーピング方法。 前記反応槽が、内部に一つ以上の支持隔壁を備えてなることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムのプレドーピング方法。 前記支持隔壁が、反応槽の内部を電気化学的に遮断することを特徴とする、請求項4に記載のリチウムのプレドーピング方法。 前記同一電極の接続が、導線、ワイヤまたはケーブルによってなされることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムのプレドーピング方法。 前記電解液が、リチウム塩を含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウムのプレドーピング方法。 前記リチウム塩が、Li+イオンと、F-、Cl-、Br-、I-、NO3-、BF4-、PF6-、N(CN)2-、SCN、ClO4-、AsF6-、CF3SO3-、(CF3SO2)2-、C(CF2SO2)3-、(CF3)3PF3-、(CF3)4PF2-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、(CF3CF2SO2-)2N、(CF3SO2)2N-、CF3SO3-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、(CF3SO2)3C-、CF3(CF2)7SO3-、CF3CO2-、CH3CO2-またはこれらの組合せからなるイオンとを含むことを特徴とする、請求項7に記載のリチウムのプレドーピング方法。 前記リチウム金属板と負極との接続が、導線、ワイヤ又はケーブルによってなされることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムのプレドーピング方法。 前記負極のドーピングが、負極の初期不可逆容量を超える量のリチウムが負極にドープされるように行われることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムのプレドーピング方法。 前記負極のドーピングが、前記負極を極性化することを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムのプレドーピング方法。 前記負極のドーピングが、負極の電圧準位が0.05V以下に形成される電圧を印加して行われることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムのプレドーピング方法。 前記負極のドーピングが、3.0Vないし4.6Vの電圧で印加することで行われることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムのプレドーピング方法。 前記負極のドーピングが、反応槽を加熱することで行われることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムのプレドーピング方法。 前記反応槽の加熱温度が、25℃ないし100℃であることを特徴とする、請求項14に記載のリチウムのプレドーピング方法。 前記反応槽の加熱温度が、35℃ないし60℃であることを特徴とする、請求項15に記載のリチウムのプレドーピング方法。 請求項1ないし16のいずれか一項に記載のリチウムのプレドーピング方法を含んでなることを特徴とする、リチウム二次電池の製造方法。 請求項17に記載のリチウム二次電池の製造方法によって製造された、リチウム二次電池。

 Dec. 8, 2018

【見直される常温フッ素イオン電池用電解液】

● ホンダがフッ化物イオン電池でブレークスルー
12月7日、ホンダ・リサーチ・インスティテュートは、カリフォルニア工科大学とNASAのジェッ
ト推進研究所などの研究チームとの共同で、新しいフッ化物イオン電池を開発(論文:Room-tempe-
rature cycling of metal fluoride electrodes:Liquid electrolytes for high-energy fluoride ion cells,|金属フッ化物
電極の室温サイクル:高エネルギーフッ化物イオン電池用液体電解質, Science  07 Dec 2018、Vol. 362,
Issue 6419, pp. 1144-1148、DOI: 10.1126/science.aat7070 )。それによると、ホンダが次世代EV用の電池とし
て開発しているフッ化物イオン電池の特徴は、フッ化物イオン電池で、高い動作温度(150℃以上)
が技術隘路(BNE)、これを室温動作に引き下げに成功。フッ化物イオン電池は、❶リチウムイオン
電池と比較し、最大で10倍のエネルギー密度(高エネルギー密度)❷オーバーヒートにより安全
性が損なわれることなく、リチウムイオン電池よりも安全。❸リチウムの採掘には大量の水が必要
とし、鉱床周辺の水質汚染や水資源の枯渇が問題となり、また、コバルトは銅やニッケルを採掘す
る際の副産物であり、紛争地域のコンゴ共和国に埋蔵量が偏り、劣悪な環境での採掘や、環境汚染
を誘発が懸念されているが環境負荷が小さい。

今回の成功は、エーテル溶媒中の乾燥テトラアルキルアンモニウムフッ化物塩のイオン導電率が高
く、動作電圧が広く、化学的にも安定した液体電解質。銅、ランタンおよびフッ素からなるコア-
シェルナノ構造を特徴とする複合カソードと対で、室温で可逆的な電気化学的サイクルが可能であ
ることを検証。しかしながら、フッ化物イオン電池は、充放電サイクル特性が低いことがネックと
して残件する。

フッ素の原子量が低いため、再充電可能なフッ化物ベースの電池は、非常に高いエネルギー密度を
提供することができる。しかし、現在の電池は、溶融塩電解質に必要な高温で動作する必要がある。
Davisら 2つの進歩によって、室温で動作することができる電池に向かって押し進める。1つは、
安定なテトラアルキルアンモニウム塩-フッ素化エーテルの組み合わせに基づく室温液体電解質の
開発である。 第2のものは、可逆的部分フッ素化および脱フッ素化反応を実証する、銅-ランタン
トリフルオライドコア- シェルカソード材料。

 Dec. 6, 2018

❏ 技術論文:Room-temperature cycling of metal fluoride electrodes:Liquid electrolytes for
high-energy fluoride ion cells:金属フッ化物電極の室温サイクル:高エネルギーフッ化物イオン電
池用液体電解質(DOI: 10.1126/science.aat7070)
【概要】
フッ化物イオン電池は、高エネルギー密度を提供する潜在的な「次世代」電気化学的貯蔵装置。 現
在のところ、そのような電池は、適切なフッ化物イオン伝導電解質が固体状態でのみ知られ、高温
での操作に限定される。 本発明者らは、エーテル溶媒中の乾燥テトラアルキルアンモニウムフルオ
ライド塩に基づいて、高いイオン導電性、広い動作電圧、および強い化学安定性を有する液体フッ化
物イオン伝導性電解質を報告する。 この液体電解質を銅 - ランタントリフルオリド(Cu @ LaF3)
コア - シェルカソードと対にして、我々は室温で循環させたフッ化物イオン電気化学セルで可逆的
なフッ素化反応および脱フッ素化反応を実証する。 フッ化物イオン媒介電気化学は、リチウムイオ
ン技術を超える能力を発達させるための経路を提供する。

 

 ● 今夜の一曲

The Beatles  " A Hard Day's Night "  Official Video    

ちとせの命のぶというなり  

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黄  帝 こうてい
ことば --------------------------------------------------------------------------------
「なんじに芋(ちょ)を与えんに、朝に三にし暮は四にす。足らんか」
「風に随いて東西すること、木葉幹穀のごとく、ついに風のわれに梁ずるか、われの風に乗ずるか
を知らず」
「然る所以(ゆえん)を知らずして然るは、兪なり」
----------------------------------------------------------------------------------------
ユートピア
はるか遠くの島に列姑射(れっこしゃ)という山がある。山の上には神人がいる。風を阪い、露を
飲んでいるだけで穀物は一つぶも口にしない。深い泉のような心と、乙女のような姿。神人はとり
たててだれを可愛がるでもない。臣下は仙人と聖人である。人民をおどしたりいじめたりしない。
つかえる人は誠実そのもの人民は施しも恵みも受けずに満ち足りた生活を送っている。たくわえは
ないが、不足もない。
陰陽はいつもととのい、日月の運行、四季の変化はつねに順調、雨はほどよく降り、動植物はすく
すくと育ち毎年年豊作だ。病気もなく、若死にもなく、鬼神のたたりもここにはない。

〈列姑射〉『山海経』にある空想の山。似た話が『荘子』逍遥遺篇にある。

列姑射山在海河洲中,山上有神人焉,吸風飲露,不食五穀;心如淵泉,形如處女,不偎不愛,仙聖為之
臣;不畏不怒,愿愨為之使;不施不惠,而物自足;不聚不歛,而己无愆。陰陽常調,日月常明,四時常若,
風雨常均,字育常時,年穀常豐;而土无札傷,人无夭惡,物无疵厲,鬼无靈響焉。

 姑射山風景

風に乗る術
列子は老商先生に師事し、伯高氏を兄弟子として、道を学んだ。十分会得すると風にのって帰って
きた。これをきいた尹生は列子の弟子になった。数カ月の間、列子について、自分の家に帰らなか
った。
おりをみては風に果る術の教えを乞うた。だが、十度きいても教えてくれない。尹生はあまりくや
しいので問をとることにした。列子はとめもしなかった。
尹生は数カ月家にいたが、どうにも思いきれない。また列子のところへ出かけて行った。
「お前はなんだって行ったり来たりするのか」と列子はきいた。
「この前伺度もおねがいしましたのに教えてくださらないので、先生を恨みました。いまは気持も
ねさまりまレたので、またやってきたわけです」
「以前はお前もみどころがあると思っていたが、案外つまらぬ男だな。まあ、すわるがよい。わた
しが先生について勉強したときの話をしよう。
わたしは老商先生に師事し、伯高氏を兄弟子としてから三年目には、どうやら是非の別に心を使わ
ず、利害を口にしないですかようになった。この時はじめて先生はわたしをひと目見てくれた。
五年目には、むりにおさえつけなくても、ごく自然に是非利害を口にするようになった。先生はや
っとニッコリされた。
七年目には、是非や利害にかかわりなく、自由に考え、自由に話すようになった。先生ははじめて
わたしの手をとり、同席することを許してくれた。
九年目には、何を考え、帽を口にしても、自分の是非や利害ばかりか、他人の是非や利害にもこだ
わらなくなった。また老商氏が先生であり、伯高氏が兄弟子であることも気にならず、親しいとか
疎いとか、内とか外とかいうことも意識しなくなった。
こうなると、目は耳となり、耳は鼻となり、鼻は目となり各器官の機能の区別もなくなった。心は
うつろに、身体はほぐれ、肉も竹もみなとけて、身のおきどころも、足の踏み場も、意識しなくな
った。木の葉か蝉のぬけがらのように、風のまにまに西に東にただよい、いったい自分か風にのっ
ているのか、風が自分にのっているのかわからなくなってしまった。
お前は、わたしのところに入門してまだいくらもたたないのに、二度も三度も恨みごとをいう。そ
んなことでは、大気はお前の小指一本のせてはくれまい。それどころか、いまに大地でさえ足一本
のせてはくれなくなるぞ。風に乗るなど、とてもとても」

尹生は恥じいってしばらくは息もつけなかった。それ以後二度と恨みごとを口にしなかった。

〈列子が風にのって……〉 列子が風に采るということは、『荘子』逍迅遊笥にもみえる。
 列子師老商氏、友伯高氏。進二子

 

【下の句×樹木トレッキング:ちとせの命のぶというなり×ミズナラ】

 

水無月の夏越の祓する人はちとせの命のぶというなり  作者不詳 『後拾遺和歌集』

From ancient times, Japanese who exercise for summer time (as Minazuki as Month to drain
water in the rice field) have been believed to have a life expectancy of 1,000 years. 

 ミズナラ(水楢:Quercus crispula Blume)は、ブナ科コナラ属の落葉広葉樹。温帯の落葉広葉樹林
の代表的構成種である。別名、オオナラ(大楢)。シノニムは Quercus mongolica var. crispula。これ
は本種を北東アジアの広範囲に分布するモンゴリナラの変種と考えての扱い。近縁のコナラやクヌ
ギより寒冷な気候を好み、鹿児島県高隈山を南限に、北は北海道から樺太・南千島まで分布。

日本の山地から亜高山帯にかけて自生する]。ブナと並んで落葉広葉樹林の主要樹種の一つ。ブナ
科比べると、やや明るい場所を好む。樹高は、大きなものでは35 mに達する。葉はつやのない緑で
コナラよりももっと波打つようなはっきりした鋸歯(輪郭のギザギザ)がある。5、6月に長さ5
cmほどの花を咲かせ、秋には実(ドングリ)が熟す。なお、日本国内ではミズナラから派生した変
種としてフモトミズナラ(近年まで“モンゴリナラと呼ばれてきた丘陵帯分布の集団)およびミヤ
マナラ(偽高山帯分布の矮性個体の集団)の存在が知られている。 

ミズナラのドングリはタンニンを含み、そのままでは渋くて食べられないが、灰汁抜き(あくぬき)
すれば食用になる。ドングリの中では灰汁抜きが面倒なほうに入り、粉にしないで水にさらすだけ
では3か月たってもわずかに渋みが残る。粗い粉にしてから水にさらすと期間が短縮される。もっ
と短くするためには長時間煮てから水さらしするが、それでも処理には何日もかかる。縄文時代に
は分布域の東日本で冬の保存食として重要であった。近年まで山村で食べられていたが、現在はほ
とんど食用にされない。20世紀にシイタケの栽培が盛んになってからは、コナラと同様に原木な
どに利用され。



心材はくすんだ褐色。加工性・着色性に優れ、強度が大きく、重厚感がある。木材は高級家具、建
築材、洋酒樽などに利用。特に北海道のものが良質とされ、「道産の楢」(ジャパニーズオーク)
と呼ばれ、輸出もされ盛名を馳せた。近年では国産ウイスキーの熟成樽としても利用、オーク樽と
全く異なる繊細な風味を醸造出来る材として国際的に高い評価を受けている。 

● 国破れてミズナラ樽あり
豊かな味わいを織りなすキーモルトに欠かせない、ミズナラ樽の長期熟成モルト。そのミズナラ樽
の誕生には、時代に翻弄されながらもウイスキーづくりへの情熱を絶やさなかったサントリーの山
崎の職人たちが遭遇がある。1941年に始まった太平洋戦争。その戦中から戦後にかけて、ウイスキ
ーの貯蔵に必要なシェリー樽などの輸入が困難となるなか、貯蔵に適した北海道が主産地のオーク
の一種ミズナラと遭遇する。が、貯蔵樽は材質的に原酒が漏れやすく、木材の選別、製樽作業の苦
労の連続。さらに、当初は木香が強すぎ、ミズナラ樽の原酒は高い評価を得なかった。ここでひと
つの奇跡が起こる。新樽では強すぎた木香が、面白いことに、2,3回繰り返し使用されると独特
の味わいの原酒となり、白檀(びゃくだん)や伽羅(きゃら)を思わせる香味が生まれことを発見。
数十年の時を経て、今では海外のブレンダーやウイスキー通からも高い評価を得られるようになる。

  彦根/慈眼寺の三本巨木杉

Dec.5,2018

【ここ20年で想像以上にグリーンランドの氷が溶解】
12月5日、北極海と北大西洋の間にある世界最大の島「グリーンランド」はおよそ220万平方キロ
メートルの面積を持ち、その陸地の8割以上は氷床と万年雪に覆われている。そんなグリーンランド
の氷床が少なくともここ350年では前例がないほどの速度で溶けていることが公表された。2012年に
はグリーンランドの氷床表面のおよそ97%が融解して泥と化している上に、地球の海面水位が1ミ
リメートル以上上昇、グリーンランドの氷河融解は世界的にも大きな問題となっていた。また、ア
メリカ航空宇宙局(NASA)は2015年にグリーンランドの氷床が減少傾向にあり、2004年から2015年
までの11年間でおよそ2500ギガトンの氷が融解したことを明らかにしている。ローワン大学の氷河
研究グループは、グリーンランドの氷床や氷河で海抜6000フィート(およそ1800メートル)に当たる
地点で氷の掘削。得られた氷のコア構成する層の物理的・化学的特性を測定、過去350年間にわたる
グリーンランドの氷の溶けやすさを調査。


それによると、グリーンランドで調査した全ての氷のコアで溶けやすさが増加していたとのこと。
特に過去20年間における氷の溶けやすさは、19世紀中頃に起こった産業革命以前と比べて250~575
%増加。また、産業革命以後に氷床の流出量は50%増加し、20世紀だけで見ると33%も増えている
ことが判明。この調査結果から、グリーンランドの氷が溶けやすくなったのは「人為的地球温暖化
説」がより強化された。

勿論、氷河融解加速の原因は地球温暖化だけではなく、グリーンランドの氷の溶けやすさが加速し
ているのは、複数の要因――その1つは、氷河のアルベド(太陽光の反射率)のフィードバック。こ
れは氷河の表面が溶けてしまうとアルベドが下がってしまうが、アルベドが下がることで太陽熱の
吸収率が上がり、余計に氷河の融解が促進される。この「アルベドのフォードバック」が起こると
、氷河の融解は歯止めがきかない。一度溶けた氷河が冬に再凍結したとしても、氷の純度や透明度
も下がり、翌夏に再び溶けた時に氷床のヒビや割れ目にしみこみ、氷河を根元から融解してしまう。
さらに、グリーンランドには地球全体の海面を23フィート(約7メートル)上昇させるだけの氷を抱
える。その氷すべてが今すぐ溶けだすわけでなく、沿岸地域の生活リスク評価する上で重要となる
と、同研究グループの責任者は語り、アメリカ人の40~50%は海岸沿いに居住しているため、グリ
ーンランド由来の海面上昇の影響は大きいと想定する。



また、ウッズホール海洋研究所の氷河学者は、今以上に温暖化が進むと、今までの倍以上の氷を失
うことになる。そして、より大量の氷の融解は、より早い海面上昇率につながると語る。グリーン
ランド以外に南極などの地域で氷のコアを掘削することで、今回の調査結果をさらにフォローアッ
プしたいと述べている。さらに、未来は私たちの手にあります。温室効果ガスの排出を減らすため
の措置を講じることで、将来の温暖化を抑制し、氷河や氷床の融解海面上昇リスクを大幅に減らす
ことができると同研究グループの責任者は指摘している。

 Dec. 9, 2018

【トマ・ピケティら税制マニフェストより公平なヨーロッパ」を提案】

12月9日、2015年頃に日本でも注目を集めたフランスの経済学者トマ・ピケティらのグループは、
崩壊の危機に近づきつつあるEUを「より公平にするため」に、多国籍企業や富裕層から徴税する総
額8千億ユーロ(約百兆兆円)規模の税制案を中心とするマニフェストを公表。2015年頃に日本でも
注目を集めたフランスの経済学者トマ・ピケティ氏が率いるグループが、複数国から集まった経済
学者や歴史家、元政治家など50人以上のメンバーからなるグループによって発表されたマニフェス
トは、多国籍企業や「ミリオネア」と呼ばれる富裕層に重く課税することで税収を増やし、EU諸国
が直面している貧困や移民、気候変動、そしていわゆる民主主義の赤字など喫緊の問題に取り組む
ために必要な資金を捻出する。折しもイギリスではEU離脱「ブレグジット」をめぐって国内でも賛
否が入り乱れ、各国でも「極右」に分類される政治家による政治が人々の関心を集める中、グルー
プはEUが「技術的な袋小路(technocratic impasse)」に追い込まれていると主張。「もはや従来と同じ
であり続けることは不可能」であり、「我々はこれ以上、現在のヨーロッパの状態を根本的に変化
させないままに新たなEU離脱国を出し、組織が解体してしまうのを待つわけにはいかない」として、
新たな政策を進めることを提言している(経済学者トマ・ピケティのグループが「より公平なヨー
ロッパ」を目指して予算100兆円規模の税制マニフェストを提案  GIGAZINE日本 2018.12.10
)。 

「ヨーロッパの民主化のためのマニフェスト」と題された提言は、以下のサイトで配布。このマニ
フェストには、スペインの左派政党「ポデモス」のパブロ・イグレシアス党首やイタリアのマッシ
モ・ダレマ元首相、ベルギーの政治家であるポール・マニェット氏、そしてイギリスのブラウン政
権の際にアドバイザーを務めたマイケル・ジェイコブズらが署名を行っている。このマニフェスト
骨子は、8000億ユーロ(約百兆円)規模の税制改革案。巨額の税収の内訳(上図左)は、AppleやGoogle、
Amazonといった巨大多国籍企業の課税率に15%分を上乗せすることで得られる税収と、年収10万
ユーロ(約1300万円)以上の個人に対する増税、そして評価額100万ユーロ(約1億3千万円)以上の
個人資産に対する富裕税、そして企業などが排出する二酸化炭素に対する課税などで賄われる。こ
のようにして得られた税収は、その半分がEU各国に分配されるか、25%がEU全体での研究開発や教
育に、そして残りが気候変動に対処するための予算や、移民問題を解決するための予算として振り
分けられる方針が定められている。また、税収の使われ方は各国の政治化や欧州議会議員などによ
って構成される委員会によって監視されることになる。

ピケティは、富が社会の富裕層から一般市民へと順番に流れてくる「トリクルダウン」というキー
ワードが密接に関わってくるが、今回発表されたマニフェストも一つのトリクルダウンの実効策と
いえる。ただし、このマニフェストには反対意見を唱える人もいる。イギリス労働党議員のリチャ
ード・コルベット欧州議会議員は、すでにEUに備わっている税収の仕組みを利用すればよく、今回
のマニフェストは「車輪の再発明」であると否定的な見方を示す。EUの実質的なリーダーを務める
ドイツで長期政権を担ってきたメルケル首相が2021年秋での引退を表明するなど、EUはリーダーシ
ップを取れる人材をうまく見いだせていない状況。ヨーロッパ統一の悲願として設立されたEUが今
後も存続できるのか、そしてその障壁となるポピュリズムや移民問題といった問題を解決できるの
か、注目が集まる。

 

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 ● 今夜の一曲

”U.S.A ”  Song: Da Pimp Music Writer:Cirelli Donatella/Lombardoni
DA PUMPの「U. S. A. 」は、2018年6月6日にエイベックス・エンタテインメント(SONIC GROOVE
レーベル)から29枚目のシングルとして発売]。 前作「New Position」から約3年半ぶりのシングル
である本楽曲は、1992年に発表されたジョー・イエローの「U.S.A.」のカバーである。 本グループ
がユーロビートに挑戦するのは初の試み。カップリングの「Take it Easy」は、m.c.A・TがDA PUMP
の結成20周年を記念して作詞・作曲。TBS系『王様のブランチ』2018年6月期エンディング・テーマ。
所属事務所の社長から本楽曲のカバーを提案された際の気持ちについて、ISSAは「正直、最初は『
おい、まじか。これかよ』という思いもありました。でも、僕らにできることは“完璧に仕上げる
こと”なので。そこでスイッチも入りましたし、“U.S.A.という場”で、“しっかり遊ぶ”“真剣
にふざける”などの方向性が見えた時点で、違うものに見えました。自分たちのものとして、きち
んと落とし込めているし、しっくりきている。だんだん自分たちの曲に育っていった感じですね。
今ではメンバー全員が“すごくいい曲だ”と思っているし、そういう自分たちの中の変化も、おも
しろかったです。かけ離れていると思っていたものと自分たちの心が、近づいていく感じ。今は、
僕らのところに舞い降りてきてくれてよかったなって思っています」と、オリコンとのインタビュ
ーの中で振り返っている。


● 今夜の寸評:ふるさと納税は戦後国家官僚制のなれの果て
2019年度予算案で、医療や介護などの社会保障費が34兆円台に達し、過去最高を更新する。18年
度当初予算(32兆9732億円)から大幅に増える。高齢化に伴う伸び(自然増)が5000億
円程度に上るほか、19年10月の消費税率10%への引き上げに合わせて実施する幼児教育無償化な
どの社会保障充実策が1兆円程度盛り込まれると報じられている。事業(ビジネス)として巨大市
場を形成する。これはある意味で喜ばしい(福祉)。そこで、その賄いが「所得税+法人税」で行
われるか、消費税で行われるのか課題となるが、<格差デフレ>社会で消費税(物品税)で上手く機
能しないことがフランスのマクロン政権の頓挫を目のあたりにしており、社会保障費は前者で賄う
のがわたし(たち)の立場だ。ところで、東京一極集中は官僚機構と税制によるもの。首都と地方
は農村と都市の二項対立で語られてきたが、ふるさと納税論と同様で「戦後国家官僚制のなれの果
て」で象徴される弊害で、「しがらみビジネス」が膨張(数値化されてこなかった)による。それ
ではどうするか?その1つとして堺屋太一の「首都遷都論」がある。これを「首都機能移転百年
論」(百年に一度、例えば、東京→岩手→熊本→北海道...と移転させれば4千年周期で輪番する。
こうればスリムでスマート化でき一石二鳥(但し、皇居の遷宮の有無は別途検討)。

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