『尉繚子』
紀元前三世紀、秦の始皇帝に仕えた兵法家・尉繚の説を収録したものといわれる。
8.武 議(ぶぎ)
「兵談篇」で述べた一般論を、「戦争は悪」という観点から補足展開した章。悪であろうともな
お戦わなければならぬのが戦争であるからこそ、慎重さと非情さの両面が要求されるのである。
戦争は悪である
戦争はやむを得ず行なうものである。敵対せぬ国を攻撃してはならず、対岸の人民を殺してはな
らぬ。ひとの親たる者を殺し、ひとの財物を奪い、ひとの子女をドレイにするのは、どれをとっ
ても、盗賊の所行ではないか。戦争とは、暴逆な者を罰し、不正を抑止するための、万やむを得
ぬ手段にすぎないのだ。
指導者がこのことをわきまえていれば、どこを占領しようと、平時と変わらぬ秩序が保たれる。農民は農
事にいそしみ、商人は店舗を閉ざさず、官吏も役所を離れようとしない。このような指導者を戴く国は、あ
えて武力に訴えずとも、おのずから天下の民心を集めることができるのである。
国家規模に対応した計画を持て
戦争に対する心構えは、国の規模に応じて異なる。万乗の大国ともなれば、為政者は生産の振興と軍備
の充実との両面にわたって意を用いなければならぬ。千乗程度の中規模の国の為政者は、まず防衛体
制の整備に全力を注ぐべきである。そして百果そこそこの小国にあっては、何よりも民生の安定を第一義
とする政策を実施することだ。
生産がふるい軍備が充実した大国には、権威は求めずとも備わるだろう。防衛体制の整った国は
少なくとも侵略される恐れはない。そして小国といえども民生が安定していさえすれば、独立独
歩の気風はおのずと養われ、愛国心は高揚する道理である。もしも国家財政が乏しくて、軍事費
を充分に支出することが困難な場合には、商業を振興して財政人の増加をはかるべきである。高
菜こそ、収入を増加させるもっとも有効な手段なのである。万乗の国は、千栄の援助を得られぬ
ことを気に病む感要はない。むしろ商業の振興を通じて、百果に相当する収入増をはかる方が、
より望ましいのである。
罰は大物に、賞は下っ端に
軍紀違反者に対する処罰は、将たる者の武威を発揚するための感荷手段である。したがって、た
だ一人を処刑することによって全軍が震騏し軍紀が緊張するとみれば、ためらうことなく処刑す
べきだ。わずか一人を処刑することによって全員が心服するとみれば、ただちに処刑すべきだ。
処刑される人間は大物であればあるほど効果があがり、表彰される人間は小物であればあるほど
反響は大きい。処刑に値する人間はいかに大物であろうとかならず処刑するのは、高位高官とい
えども例外なく軍紀の統制を受けることの証明である。表彰が牧童や馬丁にまで及ぶのは、いか
に卑賤であろうとも表彰規定が一律に適用されることの証明である。高位高官も軍紀の統制に服
し、卑賤な者も表彰規定の適用を受ける。つまり法の眠格公正な運用こそ、将たる者の武威では
ないか。武威なき将帥は、君主からも信頼されるわけがない。
将帥たる人材
将帥たる者の任務は、指揮権を付与されて国難に当たり、戦争の勝敗を決し、命をまとに争うと
ころにある。指揮が適切であれば功績を認められ栄誉を獲得するが、指揮が適切を欠けば一命を
失い国家をも破滅に導く。一国の興亡安危はひとえに指揮のいかんにかかっているのだ。どうし
て将帥たる者の人材を斜視できようか。
軍を指導して戦闘に当たり、武力によって大業を成就する。これは君主にとって、さほどの難事
ではない。思うに、それは将帥に人材を得るか否かにかかっているのだ。
古人もいったではないか。「素手で敵を攻撃し、まるはだかの状態で侵略に対処するのは、軍隊
として落第だ」と。将帥こそ最良の武器であり、防塞なのである。(中略)有能な将帥の武威は、
戦場生活が長期にわたり、甲冑にしらみがわいてもなお士卒の戦意を衰えさせない。それはなぜ
だろうか。たとえてみれば、鷲に襲われた雀が、日頃は恐れ避けている人間の懐めがけて飛びか
かり、人間の住居にまで侵入するようなものだ。死を願ってのことではなく、ただ背後にある者
への恐れからこのような行動に出るのである。
【オノエヤナギ:Salix udensis(ヤナギ科ヤナギ属)】
①落菜高木で,本州山地の河岸や四目の山地にも分布している。若菜には相当毛があるが,のち
にはほとんど無毛となり,下面はやや白っぽい。 カラフトヤナギ,ナガバヤナギなどの別名が
ある。北海道、本州、四国 の山地の湿地や日当たりのよい谷間などに自生する落葉高木。雌雄
異株。1本立ちで、高さ5~15mになる。枝は小枝の分岐点で折れにくく、数年枝の裸材に隆起
線はない。
②分類:広葉樹(直立性)-単葉-不分裂葉-互生-きょ歯あり-きょ歯は単きょ歯-側脈は葉縁に達
しないか不明瞭-きょ歯は全縁にある-落葉性。③葉は互生する。葉身は、長さ 10~16cm、幅
1~2cmの披針形~狭披針形で最大幅は基部寄り。葉柄は0.5~1cm。葉の先端は細長く尖り、
基部は狭い楔形。縁には不整で低い波状のきょ歯が全縁にあり、先端部を除き裏側に巻くことが
多い。新葉は外反する。葉脈は表面で凹み裏面に浮き出し、表面では皺が目立つ。④葉の表面は
暗緑色で光沢があり無毛。裏面は淡緑色または青白緑色で葉裏全体に短毛があるが、ないものも
ある。若い枝は黄褐色で毛はあるものとないものがある。
【下の句×樹木トレッキング:音明るきは夏来るしるし×尾上柳】
朝あさを落ち葉掻き寄せ掃き寄せて仰げ尊し楠の大樹は
暁を雨降り出でて木々を打つ音明るきは夏来るしるし
大下一真 『そののち憤怒』より二首(歌壇、2018年07月号)
Nov. 11. 2010
【低炭素型コンクリート篇:最新低炭素型コンクリート技術】
Mar. 24, 2018
大量の化石燃料の消費に伴い、地球温暖化の問題が深刻化してきている。この地球温暖化を抑制
するために、二酸化炭素の排出抑制が各産業に求められている。建設業界においても、コンクリ
ート材料として広く使用されるセメント(ポルトランドセメント)は、その製造過程において膨
大な量の化石燃料を使用し、大量の二酸化炭素を排出する。また、その製造過程において石灰石
の脱炭酸反応が生じ、二酸化炭素を排出する。このため、コンクリート中のセメント使用量をい
かに削減するか、あるいは低炭素型セメントへの切り替え、さらには、木材使用による非コンク
リー型建設部材化への経理換えが大きな架台となっている。集中豪雨などの大規模気候変動に曝
される日本列島への防災・減災用施設建設及び部材に関わる二酸化炭素排出量の削減は喫緊の課
題である。
昨年3月24日、戸田建設は、地球温暖化対策の一つとして、同社の筑波市にある環境技術実証
棟の一部で、低炭素型コンクリート「スラグリート®」を適用し、建設時の二酸化炭素(CO2)排
出量を削減したことを公表。「スラグリート®」は、同社と西松建設、国立研究開発法人土木研究
所との共同研究によって開発、製鉄所の副産物である高炉スラグ微粉末をセメントの代替として
積極的に活用したコンクリートです。コンクリート製造時に、CO2の主たる排出源となるセメント
使用量を大幅に低減することで、一般的なコンクリートに比べて――「スラグリート®」は、高炉
スラグ微粉末をセメント質量の70~90%置換で高含有した、セメント使用量の極めて少ない
コンクリートであり、高炉スラグ高含有コンクリート用の化学混和剤を用いることで、下記の特
徴を有す、CO2排出量を最大70%削減できる環境にやさしいコンクリートである(下記に特徴を
敬作)。
✪一般的なコンクリートと比較して、コンクリート製造時のCO2排出量を約70%※2削減。
✪適切な材料選定と配合設計を実施することで、ポンプ圧送性や打込み、締固め作業等の施工性
能が一般的なコンクリートと同程度となる。
✪圧縮強度や耐久性能も一般的なコンクリートと同程度。
※2.「スラグリート®」と同じ呼び強度27N/mm2の普通コンクリートと比較した場合。下記に関
連特許技術を掲載。
❑ 特開2014-114176 コンクリート材料
【概要】
このコンクリート材料は、少なくとも70質量%の混和材料を含有する混合セメントと骨材と水
と混和剤とを混合することにより製造されるコンクリート材料である。このコンクリート材料の
配合は、セメントのみを使用してコンクリート材料を製造する場合に必要とされる所定の水セメ
ント比、単位水量、細骨材率および混和剤の添加量とされるが、その混和剤として、一定量の増
粘剤を含有した混和剤が使用することで、セメントのみを使用する場合とほぼ同等の単位水量お
よび混和剤の使用量を確保しつつ、練り上がりからの経過時間によるスランプの低下を小さくで
きるコンクリート材料を提供する(下図詳細参照)。
❑ 特開2018-104266 セメント組成物及びその製造方法、並びにモルタル又はコンク
リートの製造方法 宇部興産株式会社
【概要】
高炉セメントは高炉スラグを混合材とするセメントである。近年、セメント製造時の二酸化炭素
排出量への関心が高まっていることから利用が推進されている。一方で、高炉セメントはセメン
トの水和反応によって発生する水酸化カルシウムを刺激剤として徐々に硬化するというスラグの
潜在水硬性を利用しているため、普通ポルトランドセメントと比較して凝結が遅延することや硬
化して十分な強度が得られるまでに長い時間を要することが従来からの課題となっている。高炉
セメントの初期強度や凝結遅延の改善に関する既往の報告では、水酸化カルシウム及び石膏の添
加、硫酸アルカリの添加、及び石膏や高炉スラグの粉末度を高めるといった技術が提案されてい
る。
しかしながら、水酸化カルシウムや硫酸アルカリ等の添加剤の調達や、石膏や高炉スラグの高粉
末度化には生産コストが増大するという問題がり。高炉スラグの含有量が60質量%を超えるよ
うな場合や、特定の成分を有する混和剤を使用した場合には、凝結の遅延が著しく、更なる対策
が求められていた。セメント組成物は、セメントと高炉スラグとを含む。セメント中のC3A(式
中、CはCaOを表し、AはAl2O3を表す。)含有量が9質量%超20質量%以下である。高
炉スラグの含有量が30質量%超95質量%以下である。高炉スラグのAl2O3含有量が11質
量%以上18質量%以下であることが好適である。セメント中のフリーライム含有量が0.5質
量%以上3.0質量%以下であることも好適である。更に、セメントと高炉スラグとの合計10
0質量部に対して0.01質量部以上1質量部の硫酸アルカリを含むことも好適で、生産コスト
の増大を抑えながら硬化遅延が抑制されたセメント組成物を提供する。
【低炭素型コンクリート事業篇:野菜でより強固な建物や橋脚に貢献】
8月15日、 英国はランカスター大学の研究グループは、機械的特性および微細構造的特性の点で
現在のセメント製品より優れ、セメント使用量削減――セメント製造に伴うエネルギー消費と二
酸化炭素排出量が大幅に削減できる――人参や甜菜繊維から抽出したナノプレートを混成するこ
とで実現きたことを公表。
これらの植物複合コンクリートは、グラフェンやカーボンナノチューブなどの市販のセメント添
加物をはるかに低コストで生産でき、根菜のナノプレートレットは、コンクリートの性能を制御
する主要物質であるケイ酸カルシウム水和物の量を増やし、コンクリートに生じる亀裂を抑制―
コンクリートの物性を高め、二酸化炭素排出量の削減を可能となる。コンクリートの主要成分の
1つのポルトランドセメント代替させることで全世界の二酸化炭素2排出量の8%を削減。今後、
30年間で需要は2倍になると予測されている。
根菜ののナノ繊維の添加で、コンクリート1立方メートル当り普通のポルトランドセメント40
キログラム削減=二酸化炭素排出量40キログラム削減。根菜植物混成物の強度が大きいほど、
既存のコンクリートより微細な加工物が作製できることを意味する。植物ベースのセメント質複
合材料はまた、腐食を防止、長寿命化など、より高密度微細構造に適している。日本でも、すで
に、グラフェン混成やナノセルロース繊維混成による軽量化、強度、靱性強化の開発が先行して
いるが、食糧作物の「ゼロ・ウエスト」につながる今回の研究報告に注目したが、大量消費を実
現するには木質バイオマス由来との兼ね合いが課題となろう。
【海洋温度差発電篇:OTEC沖縄 ホーム 温度差発電実】
もう1つ、自然/再生可能エネルギー利用技術の1つである海洋温度差発電(OTEC:Ocean The-
rmal Energy Conversion) は海洋表層の温水と深海の冷水の温度差を利用して発電を行う仕組み―
―について今夜は注目する。原理的には、海洋が受ける総日射量 = (5.457 × 1018 MJ/yr) × 0.7
= 1.9 × 1018 MJ/yr. (taking an average clearness index of 0.5) このエネルギーの15%が吸収される。
光強度は水深yに伴って 指数関数的に減衰するので、熱の吸収は上層に集中して起こる。熱帯で
は通常、水深1キロメートル以上で水温10℃である一方、表面温度は25℃を上回る。上部に
より温かい、すなわち軽い水が存在するため、対流が生じない。熱勾配が小さいために熱伝導に
よる熱移動は少なく、この温度差を解消するには至らない。従って、海洋は事実上、高温熱浴と
低温熱浴であるとみなすことができる。この温度差は緯度、季節に伴って変化し熱帯、亜熱帯、
赤道で最大になる。この温度差を利用し下図のように発電、(エネルギー)、海水淡水化、成分
利用、冷熱利用など4事業に展開できる。
しかし、海洋は絶えず太陽によって熱せられ、地球の70%近くを覆っているのに対し、深層の水
は比較的低温(10℃以下)であり、この温度の違いは人間が使うために開発される可能性を秘め
た膨大な量の太陽エネルギーを含み、もしもこの抽出を大規模に経済的に行えば、人口がもたら
すエネルギー問題を解決できる可能性があり、水力などの他の海洋エネルギーの選択肢と比べて1~2
桁多くの総エネルギーを利用できるが、温度差が小さいとエネルギーの抽出は困難で高価になり、典型
的なOTECシステムの全体的効率は1~3%しかないといった課題があるが、海洋資源/観光開発の中
核設備として展開でき夢のある事業であろう(残件扱い)。
第13章 天津のトマト缶工場の秘密
中国、天津
第1節
乳白色の空の下、缶詰工場に向かってアスファルトの道路が延びる。片道三車線で、車線ごとに
通る車両の種類が違う。左は一般車用だ。セダン、クーペ、4WD、新型モデルなど、さまざま
な種類の乗用車が通る。真ん中の車線は貨物トラック専用だ。まるで港のコンテナターミナルの
ように、工場に向かってトラックが長い列を作っている。もっともゆっくり流れているのは右の
車線だ。自転車、原付スクーター、オート三輪などが走っている。あちこち補修されたボロボロ
の自転車や、走っているのが不思議なくらいに古い車もある。ヘルメットもかぶらずに原付バイ
クに乗る工場従業員もいる。金持ちから貧乏人まで、三つの車線に広がって、みんながこの道を
進んでいく。沿道には、同じような形の高層住宅がずらりと立ち並ぶ。
未完成のまま放置され、錆びた鉄筋がむきだしになっている建物もある。石造りのアーチが目の
前に現れた。大きな金文字で一天津金土地食品有限公司」と書かれた看板が見える。同社はドラ
ム缶入り濃縮トマトからトマトペースト缶を作る大手缶詰メーカーのひとつだ。だが、ここは会
社の正面玄関ではない。この大きくて派手な門は、公式行事の式典や、写真撮影にしか使われな
い。営業用の会社案内パンフレットには、この門を背景にした写真が掲載されている。
工場の敷地内に入るには、別のゲートを通らなくてはならない。通勤する従業員たちのオートバ
イが並んで走る脇を、車で追いぬいていく。ゲートが上がると、警備室のすぐ横から発送場が広
がっていた。この発送場では毎日、昼も夜もなく、男たちが汗だくになって働いている。トマト
ペースト缶が詰まったダンボール箱をコンテナに積みこむ作業だ。ものすごく暑い。上半身裸で、
プラスティックのサンダルをひっかけただけで、フオークリフトを操っている者もいる。コンテ
ナの高さはニメートル60センチだ。ダンボール箱を高く積みあげていき、背が届かなくなると
積荷を踏み台代わりにする。長さ六メートルのコンテナがダンボール箱でほぼいっばいになると、
地面にパレットを積み上げて脚立代わりにし、天井ギリギリまで無理やり箱を押しこむ。海運業
者や港湾当局に文句を言われようが知ったことではない。ほんのわずかな隙間も残さないよう工
場幹部から指示されているのだ。
男たちは、短パン姿で、脚をむきだしにして働いている。パレットをじ枚重ねた上に男がふたり
乗っている。今のところうまくバランスを取っているが、もしどちらかひとりが体勢を崩したら、
パレットは崩れ落ちてしまいそうだ。2015年だけで、中国では28万1576件の労働災害
が発生している。うち6万6182件が死亡事故だった。
無理やり箱を詰めこんだせいで、コンテナの扉が閉まらなくなった。さあ、ここでフオークリフ
トの登場だ。ツメを高く上げたま圭扉に向かって突進し、強引に扉を閉じる。二本のツメが金属
製の扉にすごい勢いでぶつかり、ドーンと激しい衝撃音が響きわたった。通し番号がついた金属
製ボルトシールで扉が封印される。よし、これで準備完了。匹に界の港へ向けて出発だ。
第2節
トマトペースト缶が積まれたコンテナは、工場から天津港に輸送されるためにトレーラーに載せ
られる。作業員がクレーンを遠隔操作してコンテナを持ち上げている。巨大な金属の塊なのに、
まるで宙に浮いているようだ。ふわふわとトレーラーのほうへ近づいて、荷台の上にゆっくりと
降りていく。コンテナを定位置に設置するため、四人の作業員がコンテナ下部の四隅をそれぞれ
両手で支えている。荷台から数センチの高さまできたところで、クレーンがコンテナを離した。
コンテナの重みで、トレ士フーがドンという大きな音を立て、荷台が激しく揺れる。
金土地食品の工場は、天津港のコンテナターミナルから数キロメートルのところにある。天津港
の取扱貨物量は世界第10位だ。あらゆる貨物が陸揚げされ、積みこまれている。2015年の
コンテナ取扱量は一匹〇〇万個だった。長さ20フィート(約6メートル)のコンテナ1台を1
個とした数量だ。業界ではTEU(20フィートコンテナ煥量)という単位も使われる。
現在、天津は経済の重要な拠点として、直轄一巾の名のもとに中央政府の管理下に置かれている。
人口は1500万人で、中国第4の都市だ。南運河と北運河という溺海に注ぐ二つの大河の合流
地点に位置し、太古より河川交通の最終地点、および港町として重要視されてきた。7世紀には、
隋の時代に建設された京杭大運河のおかげて国の北部や東部とも結ばれた。そして近年、とくに
ここ数十年は、鉄道、高速道路、海運など、大運河以外の流通ルートも網の目のように広がり、
天津の経済活動はますます活発になっている。
Aug. 12, 2015
2015年、天津の港湾地区で大規模な事故が起きた。有毒化学物質を数千トン保管していた倉
庫が爆発したのだ。人体に有害なシアン化ナトリウムが700トン流出し、消防士99人をはじ
めとする173人の死者、800名近くの負傷者が出た。皮肉なことにこの大災害によって、天
津が産業と貿易において非常に重要な位置にあることを、世界中に知らしめることになった。
トマトペースト缶を大量に生産している金土地食品の工場に、立ち入ることを許されたジャーナ
リストは決して多くない。会社側は、繁栄ぶりをぜひとも見せたいという欲求と、その裏に隠さ
れた秘密は隠さなければという不安の間で揺れながらも、わたしに門戸を開いてくれたのだ。
従業員用更衣室には、スチールロッカーが並んでいた。会社代表の右腕であり、工場長でもある
マー・チェンヨンが、紙製のシューズカバー、白い上着、帽子、マスクを手渡す。すべて身につ
けると、マーが先に立って案内してくれた。狭くて薄暗い小部屋が続く、迷路のようなところを
歩いていく。鉄製のターングートを通り、青いライトがストライプ模様を描いている廊下を進む。
100歩ほど進んだだろうか、重そうな扉にぶつかった。マーが扉を開けると、たちまち騒音に
包まれた。じめじめした熱い突風に襲われる。
目の前に、生産ラインの現場が広がっていた。黄色っぼいネオン照明の下で、たくさんのトマト
缶が、機械から機械へと滝のように流れている。室内には蒸気がもくもくと立ち上り、ひどく蒸
し暑い。サウナのような濃密な空気のなかを、中身を充腸されたばかりの缶詰が湯気を上げなが
ら進んでいく。
生産ラインに沿って並ぶ作業員たちは、みなひっきりなしに手を動かしていた。ある者たちは散
水用ホースを曲げたり伸ばしたり、水を噴射させたりしている。ラインから缶詰を抜きだしたり、
あるいはラインに缶詰を役人したり、向きを調整・点検したりする者たちもいる。機械を修繕し
たり、重そうなものを移動させたり、ダンボール箱を持ち上げたり、道具を運んだり、商品の検
査や箱詰めをする作業員もいる。小さな白い帽子をかぶっている者もいれば、髪も耳も酋もすべ
て覆いつくす薄手の帽子をかぶっている者もいる。耳のところがメッシユ素材になっているので、
騒音防止の耳栓をしていないのが見てとれる。鼓膜は大丈夫なのだろうか。機械がうなるような
轟音を上げ、ぶつかり合う金属製の缶が機関銃のような音を立てているというのに。丸くて赤い
缶がレールに沿って次々と進み、ギーギーときしみ音を立てる機械に吸いこまれていく。
ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』
この項つづく