『三 略』(さんりゃく)
略は「機略」「戦略」の意味。『六韜』(ろくとう)と並んで『韜略』といわれる。六世紀ごろの成
立。『三略』は神秘的な成立伝説にいろどられており、今日の目でみると、時代がかっている部分が
多い。上略・中略・下略の三笥から成るが、その中から現代にも通ずる部分を選んで訳出する。
「仁者をして財を主らしむるなかれ」
『軍勢』には、こう記されている。
「弁説の巧みな男に、勝手にしゃべらせてはならぬ。敵国の美点を宣伝し、多くの人が惑わされてし
まうからである。仁者に国家財産の管理をまかせてはならぬ。人民に恩恵を施し、人望がかれ一個人
に集中するからである」(中略)
大前名分
義の立場に立って不義を諒する。これはたとえていえば、せきとめた川口の水を、一挙にたいまつの
火に注ぐようなもの、あるいはまた、深谷に、飛びこもうとする男をうしろからおすようなものであ
る。絶対に失敗することはない。
王者の率いる軍隊が進軍するありさまは、一見、何ごともないかのように、きわめて緩慢である。
こうして人命の犠牲を最小限にとどめようとするのである。もともと武器は天意に逆らう不吉な手段
である。やむをえない場合に限ってのみ武力を行使することこそ、天意にそうことである。
人と道との関係は、ちょうど魚と水との関係に似ている。魚は水を得てこそ生命を全うできるので
あり、水を失った魚は、死魚にひとしい。君子が、天意を恐れて、道を失うまいとたえず努力するの
は、そのためである。(下略)
正当性とエネルギー 目的の正当性に自信があるとき、人の予不ルギーは倍加する。逆に目的にため
らいがあるときは本来の力も発揮されない。戦争だけでなく、昨今の企業活動などにおいてもこのこ
とが端的に示されている。
第19章 酸化トマト「ブラックインク」をよみがえらせる最新研究
第1節 ガーナ、アクラ
リウー族は大きな邸宅に暮らしていた。敷地を囲う高い壁には電気柵が張りめぐらされ、庭では番犬
のジャーマンシェパードが見張りをしている。ここはアクラの有産階級向け住宅街だ。ガーナ中南部
の都市クマシからは車で四時間以上かかる。邸宅内には多くの寝室や書斎があり、応接室の壁にはガ
ーナの大きな地図が架けられている。今、リウー族はこの家で生活をし、仕事をしている。ここでア
フリカでのビジネスを行ない、市場競争に挑んでいるのだ。
2016年11月、わたしはアクラでリウ将官と再会した。8月に会った北京から1万2000キロ
メートル以上も隨れた場所だ。2011年にカルキス代表を退いた後も、リウ将官は加エトマト業界
の有力者でありつづけた。汚職に手を染めて失脚し、もうとっくに死んでしまっただろうと噂されて
いたが、とんでもない。リウ将官のたくましさ、狡猾さ、冷酷さを、みんな過小評価している。中国
政府の一員としても、実業家としても、彼は百戦錬磨の達人だ。
加エトマト業界の年鑑から姿を消してからも、リウ将官は業界に生きつづけていた。わたしはこの取
材の一環で、彼がある会社を秘密裏に経営していることを知った。アフリカの濃縮トマトビジネスで
無視できない存在、ブロヅァンス・トマト・プロダクツ社だ。2014年、同社は本苑地の天津に、
30万平方メートルという巨大な工場を建設した。だがCEOはリウ・イ将官ではない。息子のリウ
ーハオアン、西洋名クイントンだ。父親のリウーイ将官の名は組織図には記載されず、写真も載って
いない。しかし影のオーナー、実質的な経営者はまさしく父親だ。
Federation of Saint Kitts and Nevis
クイントンは1987年生まれ、29歳だ。同世代の多くの権力者二世たち同様、アメリカで教育を
受け、アメリカ国籍を取得するために中国国籍を放棄した。その数年後、今度はアメリカ国籍を放棄
し、カリブ海域の西インド諸島にあるセントクリストファー・ネイヴィスの国籍を取得した。別名セ
ントキッツーネイヴィス。総面慎251平方キロメートルの小さな国で、ふたつの島(セントクリス
トファー島とネイヴィス島)から成る。租税回避地として知られ、国際的に活躍するエリートたちに
パスポートの販売をしている。この国のパスポートがあれば、香港、リヒテンシュタイン、アイルラ
ンド、スイス、EU諸国を含む100以上の国にビザを取らずに入国できる。国籍を得るには25万
ドルを支払う必要かおるが、取得のためにこの国に行く必要はない[1]。
「法律事務所にお金を支払っただけだったよ。それで、3ヵ月後にはバスポートが手に入るんだ。税
制的にすごく得な国だよ」と、クイントン・リウは言った。
第2節
2011年にカルキス(中基)を去ったのち、リウ将官は天津に設立された新会社、プロヴァンス・
トマト・プロダクツの経営に専念した。自乙子との共同経営だ。まず、濃縮トマトを再加工するため
の最新式ラインを工場に設置した。このラインで、新疆ウイグル自治区で生産された青いドラム缶入
り3倍濃縮トマトを2倍濃縮トマトに再加工し、小さな缶に詰めかえた。
プロヴァンス社は、アフリカ市場での人気ブランド商品もいくつか手がけていた。もともとはリウ将
官がカルキスを経営していた当時に作られたブランドだが、香港の会社を経由してリウ将官が管理す
るようになったのだ。2014年から2016年にかけての3年間、同社は天津工場で、自社ブラン
ド商品、大手スーパーチェーンのブライベートブランド商品、大手食品メーカーの商品を生産してい
た。インドの大手流通グループ、ワタンマルのブランドで、アフリカでシェア第一位のIジーノ」も
そのひとつだ。同社は当時、西アフリカ諸国に強力な販路を築いており、ベナン、コンゴ、コートジ
ボフール、マリ、ガーナ、ケニア、ニジェール、ナイジェリア、トーゴなど、フランス語圏も含む各
国に商品を輸出していた。
Chalcis
第3節
中国の缶詰メーカー各社は、商品価格と生産コストを下げることに執着したあげく、濃縮トマトに添
加物を入れ、さらにコストを下げるために添加物の量を増やし……という悪循環に陥った。その結果、
思いがけない事態に直面した。これまでのやりかたではもうからなくなったのだ。中国国内で3倍濃
縮トマトを希釈し、添加物を混ぜてアフリカに輸出しても、利益が出なくなった。
アフリカ向け中国産濃縮トマトの戦いは、新たな段階に突入した。もっと効率よく商品を生産しなく
てはならない。そこで缶詰メーカー各社は、中国ではなくアフリカの港湾地区に缶詰工場を設立し、
そこで同じように缶詰を生産することにした。アフリカ市場のすぐそげて再加工をするのだ。そうす
れば、トマトベースト缶と謳いながら、じつは半分以上は別のものが入っている商品に対し、高い関
税を支払わなくてすむ。それに、原材料の濃縮トマトをなるべく安く中国から輸入することで、利ざ
やを椋ぐこともできる。だからリウ将官も天津の工場を閉鎖して、今はガーナを拠点に活動している
のだ。リウ将官は、ガーナの邸宅の応接室のソファに座ってこう言った。
「もしカルキスに残っていたら、こうしてアフリカで生産を始めるのは難しかったかもしれない。あ
の会社にいたら、たとえわたしがこうしたいと言っても、なかなか物事はスピーディーに進まなかっ
ただろう。今やっているように自由に動くこともできなかったと思う。アフリカ市場は変化が速い。
それに対応するには決断も速くしないと。だがガルキスでの成功の体験がわたしの糧になっているこ
とは確かだ。今、わたしには新たにチャレンジしたいことがある。ガーナの人口はたったの2800
万だが、ひとり当たりのトマトペースト消費量は中国の10倍だ。かつて、中国で加工用トマトが栽
培されていなかったころ、わたしは加工トマト産業を発展させたいと願い、実際にそうしてきた。今
わたしが望んでいるのは、アフリカ中にトマト缶を広めることだ。そのために、新疆ウイグル自治区
の濃縮トマトを、このガーナで再加工して販売することにしたんだ。どうしてアフリカかって?わた
しがここでしているビジネスは、習近平国家主席による国家発展計画に組みこまれているんだよ。あ
の一大プロジェクト、新シルクロード(一帯一路)構想だ。あれを加エトマト産業風に言い表すなら
、J部疆がスタートで、ガーナがゴール″というところだね」
第4節 ガーナ、テマ港湾地区
アクラから束へ二五キロメートルのテマ港湾地区は、ガーナにニカ所ある大水深港湾のひとつだ。水
深が深い港のことで、大型コンテナ船が接岸できる。現在、インドの大手流通グループ、ワタンマル
はここに缶詰工場を建て、中国産ドラム缶入り濃縮トマトに添加物を入れて一ジーノ」とIホモ」の
トマトペースト缶を生産している。
だが、わたしが今入ろうとしているのは、ワタンマルの工場ではない。そのライバル会社であるリウ
ー族の缶詰工場だ。塀の向こうの敷地内では、赤いダンボール箱を乗せたバレットを男たちがトラッ
クに積みこんでいる。建物は古くてボロボロだ。入口に掲げられた錆びた看板にはこう書かれていた。
GNフーズ有限会社
自由貿易地域
トマトペースト加工工場
クイントン・リウは管理棟に駆けこんだ。わたしも続いてなかへ入る。そこには工場長の女性がいた。
以前はロンドンで大手メーカーの下請けをしていたそうだ。わたしの取材依頼を許可してくれて、こ
の工場の生産力の高さを誇りに思っていると言った。
リウー族はこの工場のオーナーではない。クライアントだ。自社ブランドの「タム・タム」と「ラ・
ヴォンス」の商品の生産をこの工場に委託している。リウー族はGNフーズと契約をした後、天津工
場のラインのひとつをここに移したのだ。
クイントンとガーナ入の工場幹部社員だちとの間には、ピリピリした空気が漂っていた。どうやら先
方はジャーナリストが工場にやってきたのを快く思っていないらしい。ガーナ入幹部社員たちはイラ
イラして、わたしが工場に入るのをどうにかして食いとめようとしていた。
だが、クイントンが時間をかけて交渉してくれたおかげて、ようやくわたしは工場に入ることを許可
された。これでどうにか生産ラインを見ることができる。だが、ラインのスタート地点には決して近
づかないよう言いわたされた。きっと天津の工場のように、添加物を入れているところを見られたく
ないのだろう。それなら別に驚くに当たらない。
クイントンとわたしは、現場監督者用の小さな部屋に入り、白い上着と帽子に着替えた。壁には世界
地図が貼られていた。それを眺めながら、わたしは笑ってクイントンに尋ねた。
「セントクリストフアー・ネイヴィスっていったいどこにあるわけ?」
するとクイントンは、地図上のカリブ海周辺に人差し指を近づけ、自分の国を探しはじめた。だが、小
さすぎてどうしても見つからない。
「じつはぼくも知らないんだ。だいたい、行ったこともないしね」と、クイントンは声を上げて笑っ
た。
わたしたちは工場の建物内に入った。缶詰がラインに乗って流れている。どうやらリウー族には、天
津から急速ラインを侈さればならない事情があったらしい。でなければ、こんなひどい施設で生産を
するはずがない。もし入口に社名を記した看板がなければ、非合法の闇工場だと思っただろう。生産
ラインを無理やり入れるために、壁に大きな穴が開けられている。コンクリートブロックがむき出し
で、塗装さえされていない。ラインのすぐそばの壁のブロックが壊れている。手を触れると指先に埃
がついた。リウー族が生産を委託してから1カ月も経っていないはずなのだが。
建物内に鉄骨階段があり、最上階のデッキからライン全体を見下ろせるようになっていた。
見学の合間に上ってみる。いい眺めだ。ラインのスタート地点がよく見える。ひとりの作業員がカッ
ターで大きな袋を開け、撹絆賎のなかに白い粉を注ぎ入れている。わたしは下に戻ると、ガーナ人の
幹部社員に、原材料のドラム缶入り濃縮トマトはどこにあるのか尋ねた。
「ここから離れたところです。この工場に来るのに通ってきた道路があるでしょう?あの向こう側で
す」
そう間いたときはただ、へえそうなのか、と思っただけだった。だが数分後、ふつふつと疑問が湧い
てきた。道路を侠んだ向こう側だって?トマトペースト缶工場で、原材料の濃縮トマトをそんなに遠
くに保管しておくのは不自然だ。そんなところは今まで一度も見たことがな わたしはどうしても、
ドラム缶入り濃縮トマトの保管現場が見たくなった。数分後、そのチャンスが訪れた。幹部社員が目
を離した隙にそっと建物を出て、外壁を伝ってラインのスタート地点に向かう。頭のなかに工場の全
体図を思い描き、ドラム缶入り濃縮トマトが置いてありそうな場所の見当をつける。もちろん、ガー
ナ入幹部社員の言ったことなど信じていない。おそらく、ラインのスタート地点のそぼ、「近づくな」
と言われたあたりにドラム缶が置かれているのだろう。作業員が濃縮トマトに白い粉を入れていた付
近だ。
予想は的中した。青いドラム缶はそこにあった。道路を侠んだ向こう側ではなく、ラインのスタート
地点のすぐそげた。GNフーズで再加工されているのは、カルキスの濃縮トマトだった。例のルート
をたどってここまでやってきたのだ。新疆ウイグル自治区で加工され、パッケージングされ、中国国
内を鉄道で輸送され、天津でコンテナ船に乗せられて海を渡り、このテマ港で荷揚げされたのだ。そ
して今、この不衛生な工場の裏庭に保管されている。ドラム缶は汚れ、吹きさらしのまま放置されて
いた。驚いたことに、ドラム缶の多くが錆びていて、すでに蓋がなかった。なかに入っている銀色の
アセプティック(無菌)パックが、太陽を浴びてキラキラと輝いている。
なんという状態だろ・・・・・まさか、とわたしは思った。ドラム缶に近づき、アセプティックパックに
触れてみた。中身は満杯に詰まっていた。こうなったら確かめるしかない。目の前のドラム缶に手を
突っこみ、パックのブラスティック製キャップを開け、なかから濃縮トマトを片手でつかんで取りだ
した。思わず息を呑んだ。手が真っ黒に汚れている。やっぱりそうか………イタリアの税関職員から
聞いてはいたが、実際に見たのは初めてだ。それにしても、こんなに気持ち悪いものを本当に人間に
食べさせているのだろうか? ここにある濃縮トマトは赤い色ではない、黒だ。そう、これが酸化し
て腐ったトマトの「ブラックインク」なのだ。
0.3 watts from 10 milligrams of tomato
第6節
わたしは素知らぬ顔をして建物内に戻った。そして残りの見学時間中、隙を見てはこっそり従業員た
ちのそばに忍びより、この工場での労働条件について尋ねまわった。大半は非常にきつい仕事だと言
った。届出を出していない不法労働で、一日10時間、週に6日間働いて、月給は10ユーロだとい
う。ガーナの労働者は中国の3分の1から4分の1の賃金しかもらえていないのだ。
そのとき、クイントン・リウの携帯電話が鳴った。ガーナ人幹部社員が工場内での電話は慎むよう注
意をする。その途端、クイントンは激しい怒りの表情を浮かべたが、電話に出るためにその場を離れ
た。だが、電話を終えて戻ってきたときは、すでに怒り汪っていた。そして、ガーナ人幹部社員に向
かって怒鳴りちらした。
「電話をするなだと!? 工場で電話をして何か悪いっていうんだ!? おまえ、何様のつもりだ?
おれが誰だか知らないのか? ここにある機械を中国に送り返したっていいんだぞ。おれがひと言命
令すれば、ここにある機械はすべて中国に戻されるんだ。そうされてもいいのか?それでいいならそ
うしてやろうか?」
ガーナ人幹部社員は、ようやく目の前にいる若い中国人の権力の大きさに気づいたようだった。深々
と頭を下げて謝罪のことぼを口にした。
「すみません、わたしが悪かったです」
ラインの最終地点では、ガーナ人の作業員たちが、缶詰を丁フ・ヅオンス」と書かれたダンボール箱
に詰め、テープで封をし、パレットの上に積んでいた。その様子を中国人の現場監督者たちがそばで
監視している。みな、天津の旧工場で首ていたらしい「プロヴァンス」と書かれたTシャツを身につけ
ていた。
クイントンの怒りはまだおさまらない。その矛先は、今度は中国人現場監督者のひとりに向けられた。
「おい、それはアフリカ人がたくさん積みすぎたんだろ?だったら、アフリカ人にやり直させろ!お
まえが手を貸してはいけない!わかるか?おれたちがやるべきことは、あの腐った原材料の始末だけ
だ。あれだけは自分たちでやらなくちやならない。だがほかのことについては、すべてアフリカ人に
やらせるんだ!おまえが代わりにやるんじやないぞ!」
リウー族は毎月およそ70コンテナ分のトマトベースト缶を、GNフーズに生産させているという。
クイントンは言う,
「2017年には、毎月200コンテナ分生産できるようにしたいんだ。そうすれば、天津の工場で
生産していたときとほぼ同じ量になる。ガーナの市場では年間7000コンテナ分のトマトペースト
缶が流通している。月に200だと、年間2400だから、市場の3分の1のシェアを獲得できる」
工場の建物の外に、赤いダンボール箱が積み上げられている。作業員たちがそれらをトラックに積み
こむ。今日の夕方には、卸売業者に配送されるだろう。そして数週間後、人々はしわくちやの紙幣と
引き換えに、市場に並べられた赤い缶詰を買って帰るのだ。
「ぼくたちの目標は、ガーナと隣接する国々で、年間売上高1億ドルを達成することなんだ」
ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』
ここにある濃縮トマトは赤い色ではない、黒だ。そう、これが酸化して腐ったトマトの「ブラックイ
ンク」なのだ・・・・・・、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という。中国のアフリカ向け「貧困ビジネス」
の実態が赤裸々に語られる。またもこう言う。「人のふり見て我がふり直せ」とも。
この項つづく
Jul. 7, 2018
【ソーラータイル事業篇:太陽光発電革命につながる新しい二次元材料の発見】
DOI: 10.1038/s41565-018-0134-y
04年にグラフェンが単離された後、新しい2次元材料の合成が始まる。これらは、1原子と数ナノ
メートルの間の厚さの単層物質だ。ナノテクノロジーとナノエンジニアリングの開発において重要な
役割を果たす。7月27日、カンピナス大学(UNICAMP)の研究グループは、これらの特性を備え
た新しい材料の製造に成功したと公表。それによると、通常の鉄鉱石からヘマテンと呼ばれる2次元
物質を抽出。 この材料は厚さ3原子しで、光触媒特性向上。 合成材料は、水を水素と酸素に分解す
る光触媒として働き、水素から電気を生成することができるとのこと。新しい材料は、地球上の最も
一般的な鉱物の一つであるヘマタイトと、最も安価な鉄である鉄の主な供給源から剥離され、多くの
製品に使用されてきた。
ヘマタイトは、カーボンとその2次元型グラフェンとは異なり、非ファンデルワールス材料であり、
非化学的で比較的弱い原子ファンデルワールス相互作用ではなく、3次元結合ネットワークにより互
いに保持(結合に関与する原子による1対以上の電子対の共有を伴わない)。天然に存在するミネラ
ルであり、高度に配向した大きな結晶で、ファンデルワールス材料ではなく、ヘマタイトは、新規な
2次元材料の剥離は優れた前駆体であると考えられており、これまで合成された2次元材料のほとん
どは、ファンデルワールス固体のサンプルに由来。高度に規則化された原子層と大きな粒子を持つ非
ファンデルワールス2次元材料として希少ににある。
ヘマタイトは、有機溶媒、N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)中のヘマタイト鉱石の液相剥離によ
り合成された。 透過型電子顕微鏡検査により、わずか3層の鉄および酸素原子(単層)の厚さおよ
びランダムに積み重ねられた2層シートの単一シート中のヘマテンの剥離および形成を確認する。ヘ
マテンの磁気特性としては、試験および数学的計算を行った結果、へマタイトの磁気特性と異なるこ
とを示し、天然ヘマタイトは反強磁性であるが、ヘマテンは一般的な磁石のように強磁性で、強磁性
体では、双極子は平行であり、同じ方向に整列する。反強磁性体では、双極子は逆平行であり、反対
方向に整列し、強磁性体では、原子の磁気モーメントは同じ方向を指し、反強磁性体では、隣接する
原子のモーメントが交互に現れる。
● 効率的な光触媒
また、同グループはこの光触媒特性を分析したところ、光によって励起されると化学反応の速度を増
感させ、 ヘマタイト光触媒作用は通常のよりも効率的であり、その光触媒特性は有用なものでない。
材料が効率的な光触媒であるには、太陽光の可視部分を吸収し、電荷を生成し、材料の表面に輸送し
所望の反応を行わなければならない。
ヘマタイトは紫外から黄橙色の領域の太陽光を吸収するが、生成する電荷は短命で、表面に到達する
前に消える。光子が表面の数原子内で負電荷と正電荷の両方の生成には、より効率的でなければなら
ない。新物質を二酸化チタンナノチューブアレイと組み合わせ、電子がヘマテンから容易に排出され
る経路提供することにより可視光吸収できる可能性があることを確認。ヘマテンは、特に水を水素と
酸素に分解するための効率的な光触媒であり、スピントロニクス装置用の極薄磁性材料としても役立
つ可能性がある。スピントロニクス(またはマグネトエレクトロニクス)は、磁気モーメントに直接
結合された電子のスピンにより情報保存、表示および処理に使用できるる新しい技術である。また、
エキゾチックな特性を有する他の2次元材料を生む可能性は、他の非ファンデルワールス材料は「新
たな3次元材料の創出候補となり、数多くの他の酸化鉄およびその誘導体が存在するとみている。
What happens when plastic degrades?
【ゼロ廃棄事業篇:劣化プラスチック温室効果ガスの発生源】
8月1日、ハワイ大学の海洋科学技術研究院(SOEST)の研究グループは、共通のプラスチックが環
境中で劣化するにつれ温室効果ガスが放出されることを公表。プラスチックの量産は70年前に始ま
り、生産率は今後20年間で2倍になると予想されている。耐久性、安定性および低コストのために
多くの用途に役立つ反面、環境に有害な影響を及ぼす。この廃棄プラスチックは分解過程で様々な化
学物質を放出し、生物や生態系に悪影響を及ぼすことが知られている。
PLOS ONEに掲載されたこの研究成果は、太陽光に暴露された場合、メタンとエチレンの温室効果ガ
スを生成、放出するという。同グループは、ポリカーボネート、アクリル、ポリプロピレン、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリスチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE) - 食品
貯蔵、繊維、建材、各種プラスチックで試験。ショッピングバッグで使用されるポリエチレンは、世
界で大量に廃棄される合成ポリマーが最も多量の発生源であることを突き止めた。
さらに、LDPEの処分ペレットのガス放出速度が212日間の実験で増加し、海洋で発見されたLDPE
破片が太陽光に曝され温室効果ガスを放出。覆われた表面層に形成された破砕、微小亀裂、傷から、
一旦日射により化学反応が律速し、バージンペレットからプラスチックの光分解に至るまでの温室効
果ガスの排出増加につながる。つまり、時間経過とともに、これらの表面欠陥面積は、光化学分解を
加速させる原因となる。さらに、「マイクロプラスチック」と呼ばれるより小さい粒子が最終的に環
境中で生成され、ガス生成をさらに促進する。
● 今夜の一曲
『下の句×映画音楽トレッキング:ゴッドファーザー』
日盛りをトマト畑にゆっくりと斃れし首領(どん)の死に様ぞよき
恩田英明 / 『首領の死に様』(歌壇、2018年8月号より)