『李衞公問対』 (りえいこうもんたい)
七世紀唐の将軍事情の説を記したものとされる。「問対」とは「問答」のこと。
『李衛公問対』は、唐の太宗と名将李靖の対話の形で構成されている・古代の兵法が成立して
から千年近い歳月を経ているだけに、強烈な主張はないが、各兵法書のエキスをとりいれてい
る。
相手の失敗をまつ
太宗がいった。
「わたしは数多くの兵法書を読んだが、『あらゆる手段を使って敵が失敗するようにしむける』
という一言にまさる戦術はないように思うが、どうか」
李靖は、しばらく黙っていたが、「まさにおっしゃるとおりです。勝負にさいし、敵の失敗が
なかったならば、勝つことは容易でありません。たとえば、囲碁をうつのと同じです。互格の
腕前である場合、一手まちがえば、もうどうにもなりません。かかしから、戦争の勝敗は、た
った一度の失敗で左右されることが多いのです。まして、失敗ばかり重ねていたら千に一つの
勝ち目もありません……」
組織の機動力
太宗がたずねた。
「兵力は分散して使う場合もあれば、集中して使う場合もある。それぞれ状況に応じて使い分
けなければならないが、過去のどんな事例がこれにあてはまるであろうか」
李靖はこたえた。
符堅は、百万もの大軍をひきいて晋と戦いましたが、配水のほとりで敗北しました。これは、
大軍を集中することは知っていても、分散することができなかったからです。これと逆の事例
が、蜀の公孫述を撃った漢の将軍呉漢の場合です。呉将軍は、副将劉尚と二手に分かれ、二十
里ほど離れて陣を布いていました。そこへ公孫述の軍が攻めこんできました。呉漢と劉尚の両
軍はただちに合流してこれを徹底的に打ち破ったのです。分散していても集中できたればこそ
であります。
兵法の元祖ともいうべき太公望は、『分散しようとしても分散できない軍隊は”しばられた組
織”であり、集申しようとしても集中できない軍隊は”ばらばらの組織”である』といってお
ります」
太宗はいった。
「そのとおりだ。符堅は、はじめのうちこそ、兵法に長じている王猛の補佐によって、中原を
制屑した。しかし、王猛が死ぬと、符堅はやはり敗北してしまった。”しばられた組織”の失
敗であろう。逆に、呉漢は光武帝から一切をまかされ、自由に作戦を行なうことができ、蜀を
平定した。”ばらぱらの組織”にならなかったためであろう。この事例は、いつの時代でもお
手本とすることができる」
〈符堅〉 北方民族氏の英雄。四世紀の中国北部は、匈奴、掲、鮮卑、氏、先などいわゆる
「五割」といわれる北方民族が次々と十六の国をうちたて、次々に滅びるという騒乱がつづい
た。このうち陝西省を基盤にした氏族は、国号を「秦」と称し、持堅(357~85)の代に
勢力を拡大、長江以北から朝鮮北部に至る華北一帯を支配するに至った。383年、符堅は、
当時、長江以南を支配していた晋を伐つべく百万の大軍を南下させたが、ひすい淝水(ひすい)
のほとりで敗北し、野望はくずれた。
〈王猛〉 持屋に仕えた漢人の名臣。持屋の斎田が版図を拡大したのは、王猛の袖佐によるも
のであった(325~75)。
〈呉漢〉 一世紀、鏡胴を創始した光武帝に仕えた将軍。
〈公孫述〉一世紀、前漢が滅んだあと、蜀を手中におさめて帝と称し、鏡胴の光武帝に反いた
が、紀元三六年、呉漢のひきいる肩車に敗れて死んだ。
JJulul. 21, 2017
【高品位蓄電池製造篇:世界初!高出力型全固体電池の実証に成功】
8月6日、東京工業大学の一杉太郎教授らの研究グループは、高出力型全固体電池で極めて低
い界面抵抗を実現し、超高速充放電の実証に成功したことを公表。全固体電池の開発は、世界
中で競争となっている。なかでも、通常のリチウムイオン電池より高い電圧を発生する高出力
型全固体電池が注目されているが、実用化課題の1つが、高電圧を発生する電極と固体電解質
が形成する界面でのリチウムイオンの抵抗低減。しかし、明確な方策はなく、実現性が不明の
ままにあった。今回、❶薄膜作製技術と❷超高真空プロセスを工夫し、❸高電圧発生する電極
材料Li(Ni 0.5 Mn 1.5)O4を用いて、固体電解質と電極との良好な界面を作製し、極めて低い界面
抵抗を実現。さらに、その界面は大電流を流しても安定で超高速充電が可能であることを実証。
固体の電解質を用いる全固体電池は、高いエネルギー密度]と安全性を兼ね備えた究極の電池と
して、早期の実用化が期待されているが現在広く利用されている4V程度の発生電圧のLiCoO2
系電極材料でなく、5V程度より高い電圧を発生する電極材料Li(Ni0.5Mn1.5)O4を用いた高出力
型全固体電池が注目されいたが、Li(Ni0.5Mn1.5)O4を用いた高出力型全固体電池は、固体電解質
と電極が形成する界面における抵抗(界面抵抗)が高く、リチウムイオンの移動が制限され、
高速充放電が困難であった。高速充放電が実現すれば、携帯電話やパソコンが数分で充電完了
する。そこで、高出力型全固体電池の界面抵抗低減、さらには高速充放電の実証が喫緊の課題
であった。
同グループでは、薄膜作製技術と超高真空プロセスを活用し、Li(Ni0.5Mn1.5)O4エピタキシャル
薄膜を用いた理想的な全固体電池を作製(上図1)。さらに、固体電解質と電極界面における
イオン伝導性を評価した結果、界面抵抗が、7.6 Ωcm2という極めて低い値を示した(下図
2)。これは、従来の全固体電池より2桁程度低く、液体電解質を用いた場合と比較して1桁
程度低い。さらに、活性化エネルギーを見積もると、超イオン伝導体と同程度の低い値(0.3
eV程度)を示した。このような低抵抗界面の安定性を探るため、大電流で充放電試験を行い、
14 mA/cm2という大電流でも安定して高速充放電することに成功する。100回の超高速充放電で
電池容量の変化は全く見られず、リチウムイオンの高速な移動に対して、固体電解質と電極の
界面が安定であることを実証する(下図3)。
また、全固体電池の構造解析を行った結果、固体電解質と電極の界面を形成した直後に、固体
電解質から電極へ、リチウムイオン自発的に移動することも明らかになる。この成果により、
従来の4V程度の発生電圧から5Vへ、全固体電池を高出力化する道筋が明らかになり、極め
て低界面抵抗が得られ、超高速充放電が実現させている。高出力型全固体電池における、界面
抵抗の低減/高速充放電の実証は、全固体リチウム電池の実用化の鍵であり、実用化を目指す
上で大きな一歩となり、今後、詳細な界面構造解析により、電池特性向上につながる界面設計
指針構築につながる。
※本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)リチウムイオン
電池応用・実用化先端技術開発事業、トヨタ自動車株式会社、科学技術振興機構、戦略的創造
研究推進事業「超空間制御に基づく高度な特性を有する革新的機能素材等の創製」の支援を得
ている。また、本研究成果は8月1日(米国時間)に米国化学会誌「ACS Applied Materials and
Interfaces」オンライン版に掲載されている(Extremely low resistance of Li3PO4 electrolyte/Li(Ni0.5
Mn1.5)O4 electrode interfaces ,Hideyuki Kawasoko, Susumu Shiraki, Toru Suzuki, Ryota Shimizu, and T
aro Hitosug ,DOI : 10.1021/acsami.8b08506)。
March 26, 2015
● リチウムイオン電池などの高品位化と製造原単位コストダウン効果
ところで、リサーチ会社の富士経済は6月14日に、HV(ハイブリッド自動車)、PHV(プ
ラグインハイブリッド自動車)、EV(電気自動車)の世界市場を上表のように予測している。
17年の世界市場は合計で324万台(前年比124.6%)と、現状はハイブリッドが市場
をけん引しているが、今後はEVシフトが進み、35年には。2788万台(17年比868
%)と見込んでいるが、これは調査企業によりかなりの幅をもつ(上グラフ参照)。また、電
機自動車用蓄電池(主にリチウムイオン二次電池)の製造原単位コスト(ドル/kWh)の予測
は、下グラフのように30年には18年比で1/4程度まで下落すると予測されており、さら
に、前述した「高出力型全固体電池」の様な高品位蓄電池などの技術革新による劇的なコスト
逓減の実現も予測され、自己消費型発電システム(家庭/事業/コミ二ティ向け)への組入れ
普及促進による一層のコスト逓減が進行するものと予想される。
さらに、Wood Mackenzie 社は、18年末までに500万台の電気自動車が生産され、12億台の
自動車在庫数にわずかに浸透、加速が速く、寿命が長く、部品が少なく、メンテナンスレスで、
排気ガスがない電気自動車の拡大生産は続く。従って、新車販売の50%以上が電気自動車に
置き換わった場合、40年の予測の3億台に到達する。その時、電気自動車の1/3を占める
バッテリはコストはすでにこの10年間で80%低下し、引き続き低下する。電池パックの価
格は、今年度は200ドル/ kWhを下回り、年率約10%低下する。その限界値は100 US /
kWhで、27年には、電気自動車がエンジン車と競合できる。性能は10年以内に倍増し、様
々なリチウムイオン電池(LiB)技術が採用され、リチウムNMC電池が注目されている。 NMC
111化学物質は、ニッケル、マンガン、コバルトの同等組成比で、約150Wh / kgの予想エネ
ルギー密度を有す。 エネルギー密度を高め、希少で高価なコバルトの依存を減らすことに焦点
を当てた業界は、NMC 5:3:2とNMC 6:2:2バッテリーへの移行にある。 一部の電池メーカーは、
20年代初めまでに200Wh / kg以上のエネルギー密度でNMC 8:1:1を量産できると考えてい
るが、化学的安定性と熱の制御に大きな課題が残されている。将来は、ソーラー固体のような
エネルギー密度が300Wh / kgを超える「次世代」バッテリーであり、20年代後半に市場に
出る可能性があろと塗装している。
Aug. 2, 2018
● 14ドル/メガワット時超低価格入札ソーラーまもなく稼働
8月2日、Wood Mackenzieの子会社のGreentech Media社によると、近年、予測可能で透明な入
札プログラムにより、09年以降平均74%の価格下落と過去2年間の7件の記録的な入札価
格の下落により、未調達のーラー競売価格は下落したが、市場の「超安値」にも終りがある。
最適な資金調達と技術コストを伴う22年のシナリオでは、1メガワット時あたり14.70ド
ルがそれ。「価格下落の余地はまだあるのか?」答えは「肯」。22年の近い将来、14ドル
での電力販売契約(PPA:Power Purchase Agreement)締結は見込んではいないが、理解しうる底
値はどこか?
入札/オークション方式を採用した世界市場は、16年の後半(32社)からほぼ倍増。現在
61社。このような制度検討している市場数は倍増し、16年の後半には14から36。また、
サウジアラビア、アラブ首長国連邦、そして最近ではメキシコを含む成熟市場では、記録的に
低い入札額を目論む。同社の最新予測では、これらの価格低下限界を示す。これらの入札価格
は、低迷を続けるが、おそらく減速ペースで進行。絞り出せる収益(マージン)は多くある。
同社によると、ソーラーの世界平均電力購入契約は、22年までにメガワット時に40ドルに
到達するが、または現在のメガワット時の60ドルから速効で到達するケースである。例えば、
メキシコでは、30ドル/MWhを下回る過去最安値での入札事例がある(まだ相互接続されてい
ないが)。19年から22年の間に稼働する予測されている。GTM社は、22年までに、14
ドル/MWhの低価格入札がまもなく実現すると予測している。
●
8月8日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に強く反対し、政治
的立場の違いを超えて移設反対派の支持を得てきた翁長雄志沖縄県知事が他界、享年六十七。
合掌