『李衞公問対』 (りえいこうもんたい)
七世紀唐の将軍事情の説を記したものとされる。「問対」とは「問答」のこと。
『李衛公問対』は、唐の太宗と名将李靖の対話の形で構成されている・古代の兵法が成立して
から千年近い歳月を経ているだけに、強烈な主張はないが、各兵法書のエキスをとりいれてい
る。
攻撃と防禦
「『司馬法』に、『どんなに大国でも、好戦的な国はかならず滅びる。逆にまた、どんなに平
和な時代でも、戦争に備えていない国はかならず危うくなる』とある。つまり、攻撃と防禦は
同一のものの表裏ということになるのであろうか」
太宗の問に、李靖はこうこたえた。
「国家を維持していこうとするならば、攻防両面の備えをしないわけにはゆきません。攻撃は
敵の城や陣地を攻めるだけでなく、敵の心を攻める方法を講じておくことです。防禦は、城壁
や陣地を堅固にするだけでなく、自らの気力を充実し、非常に備えておくことです。これこそ、
大にしては君主たる者の由るべき原則であり、小にしては将たる考の則るべき基準であります。
敵の心を攻めるとは、つまり相手を知ることです。自らの気力を充実するとは、つまりおのれ
を知ることであります」
「まったくそのとおりだと凪う。わたしは、かつて出陣にさいし、敵の心と自分の心とを比較
してみた。それによって敵を知ることができた。また敵の気力と自分の気力とを考えあわせて
みた。それによって、おのれを知ることができた。このように、敵を知りおのれを知るという
のは、戦賠にたずさわる者にとって重要なことである。たとえ教を知らないでも、本当におの
れを知っている将ならば、けっして失敗することはないであろう」
「孫子が、『まず、敵に乗ずる隙を与えないようにする』といっているのは、つまりおのれを
知ることです。『そして敵が隙を見せるのを待つ』といっているのは、つまり相手を知ること
です。孫子はまた、『こちらの態勢が万全であれば、敵は攻められず、逆に敵が態勢を崩せば、
こちらが、攻勢に転ずることができる』ともいっております。わたくしは片時もこの教訓を忘
れておりません
〈孫子が・・・〉 『孫子』軍形篇(五四頁)。
士 気
太宗がたずねた。
孫子は、敵軍の士気をくじく法について、こういっている。『人間の気分は、朝は精気がみち
ており、昼はだれ気味、夕方は休息を求めるというように、状況によって変化する。戦上手は、
この士気の変化を見定め、精気のみちた敵は避け、だらけたり士気の衰えたりしている敵を撃
つ』とな。この説をどう思うか」
李靖はこたえた。
「生命をもった人問が、いざ戦いというとき、命すら投げだしてかかることがあるのは、なぜ
でしょうか。これは、遥クといわれる精神がそうさせるのです。そこで、用兵にさいしては、
まず部下の状態を見極めて、勝つ精神をふるいたたせ、その力で敵を攻めることが必要です。
また、呉子は、戦争には四つのかなめがあるとしており、精神的なかなめをその筆頭において
おります。これこそ基本的なものであり、人々を強制的でなく自発的に戦わせることができる
ならば、その力はおそるべきものとなるのです。孫子のいう『朝は精気が・・・』云々は、必ずし
も時間的なことでなく、朝・昼・晩になぞらえて、状況と精神の働きとの関係を論じているの
です。それを考えずに、昼ならこう、夜ならこうと決めて戦っても、意味がありません。孫子
のことばを表面的に解釈しても、かえって敵の思うつぼにはまってしまいます。敵の戦闘意欲
を失わせることの基本を会得してこそ、戦いの指揮がとれるのです」
〈人間の気分は……〉→『孫子』軍争篇(七九頁)。
〈呉子は……〉 →『呉子』諭将篇(一七五頁)。
8月3日、新日鉄住金は、東京海洋大学などと共同で超電導バルクモーターを開発した。モー
ターの回転子に組み込む超電導磁石(界磁極)として、独自の超電導バルク材「QMG」を成
形・集成した磁石モジュールを開発。非接触の新着磁方式を採用することで実現した。実証試
験機(出力30キロワット)では最長360時間の負荷試験を含む総計700時間の連続運転
を達成したほか、最大トルク537ニュートンメートルと超電導バルク材を利用したモーター
での世界最高値を記録している。スケールアップが容易な設計構造で、将来的に電気推進船や
電気推進航空機といった輸送システムをはじめ風力発電などでの実用化が期待される(新日鉄
住金 超電導モーター 独自バルクで高特性 化学工業日報 2018.08.06)。
15年に国連サミットで採択された持続可能な開発目標SDGs (Sustainable Development Goals)
に示されるように効率的なエネルギーの創生と利用による人の生活と環境との持続的共生は世
界にとって重要課題。世界の用途別電力消費量のうち約半分はモータが占めるように、モータ
のエネルギー消費量は非常に大きく、0.1~0.2 %の効率改善でも省エネ効果や省二酸化炭素
効果が大きい。モータの高効率化のひとつの手段として、電気抵抗がゼロになる超電導技術が
あり、世界中で超電導モータの実用化を目指した研究開発が進んでいる。超電導バルク材は、
同じ物質から製造した超電導線材を巻線したコイルに比べて、小さい体格・寸法で高い磁場(
10 T(テスラ)以上)を発生できることから大型超電導機器のコンパクト化に期待が寄せられて
いる一方で、高品質で大面積の超電導バルク材の製造には制約があり、従来は大型の超電導磁
石やモータに代表される大型超電導機器等への適用は困難と考えられていた。この課題解決を
含めて東京海洋大学、ABB、新日鉄住金の3者の開発したモータは、次のような特徴をもる。
Aug. 3, 2018
1.モータの回転子に組み込む超電導磁石(界磁極)として高品質な超電導バルク材を成型・集成組み
合わせて 構成する新しいバルク界磁極ユニットを考案採用
2.バルク界磁極ユニットをモータに組み込んだ状態で容易に着磁できる新しい着磁方式の考案採用
3.バルク界磁ユニットは標準化可能であり、30 kW実証機から大出力機まで同一規格かつ寸法仕様
の高性能 の界磁極ユニットを提供
グループは異なる回転数や負荷の状況などの実回転試験を行うことで、実用化への懸念事項の
1つである減磁の問題を含めた超電導バルク材の挙動を検証。これまでに最長360時間の負荷試
験を含め総計700時間に近い運転を実施。実証機の最大トルクは537 Nmで、超電導バルク
材を利用したモータとしては世界最高値である。
超電導バルク方式のモータにおける懸念事項であった運転中の界磁極ユニットの温度安定性と
減磁の可能性に関しては、良好な温度安定性(±2℃以内の温度変動)と磁場安定性(減少率
は磁場センサの誤差範囲内である1%以下)を確認している。今回の成果は、電気推進船その
他の輸送システム、風力発電などへ適用可能な、超電導バルク材を利用した新しい方式の大出
力高効率モータの実現可能性を示すものです。今後、超電導モータの開発が進み実用化される
と、持続可能な社会の実現に貢献できるものと期待されます。
【関連文献】
❏ 特開2017-050979 回転機 国立大学法人東京海洋大学
【概要】
例えば超電導回転機の超電導界磁極等の被冷却体を超電導状態に保持する等の目的で回転機の
被冷却体を冷却するための冷却装置の1つとして、熱サイフォン方式および/またはヒートパ
イプ方式等の液相冷媒が気化する潜熱で被冷却体を冷却する冷却構造を備えた回転機が知られ
ている。例えば、下記特許文献1に示された構成は、冷却機で冷やされた凝縮器によって液化
された冷媒(液相冷媒)が連結配管を通じて回転機の回転子内部に形成された中央空洞に送ら
れ、中央空洞の液相冷媒が気化することにより中央空洞の周囲に設けられた巻線ホルダを介し
て巻線ホルダに巻回された巻線(被冷却体)を冷却するように構成されている。本構成では、
中央空洞内で液相冷媒が気化することによって生じた気相冷媒は、同じ連結配管を通じて凝縮
器に戻され、再び冷却、凝縮されることにより液相冷媒となる。
このため、巻線ホルダを介し熱伝導冷却に、回転機の回転子径が大きくなると熱伝導部の巻線
ホルダを中央空洞から被冷却体に至る径方向全体を中実構造だと、巻線ホルダを含む冷却構造
の重量増加はさけられず、回転機材料/製造コストが増大する(参考文献:特許第379901)。
また、冷却機による冷却性能は冷却機のコールドヘッド部と被冷却体との温度差が少ないほど
高効率化できるが、冷却機コールドヘッド部と被冷却体との間の伝熱構造(熱伝導経路)が長く
なり冷却機と被冷却体の間に温度差が生じ、冷却効率が高くできない。
下図1のごとく、回転軸線回りに回転する回転子と、冷却機と、を備えた回転機であって、回
転子は、径方向中央部に回転軸線に沿って形成される中空の冷媒流通部と、冷媒流通部より径
方向外方に設けられた被冷却体と、を備え、回転機は、冷却機で冷やされた液相冷媒を冷媒流
通部内に導入し、冷媒流通部内の気相冷媒を冷媒流通部から冷却機側へ戻す固定部配管を備え、
回転子は、冷媒流通部の回転軸線に沿った側面に形成された第1開口部を通じて液相冷媒を被
冷却体の近傍に導く導入通路と、被冷却体の近傍で液相冷媒が蒸発することによって被冷却体
との熱交換を行い、その結果生成された気相冷媒を冷媒流通部内に戻す戻り通路と、を備える
ことで、回転子径を大きくしても回転子の重量およびコストの増大を防止しつつ冷却効率を高
くできる回転機を提供する。
【符号の説明】
1,1B,1C,1D 回転子 5 固定部配管 11 界磁極(被冷却体) 15,15C
導入通路 15a 第1開口部 16,16B,16C 戻り通路 16a 第2開口部
18 第1通路 19 第2通路 20 冷媒流通部 23 二重通路 24 浸入防止部
60 冷却機 100 回転機 A 回転軸線
❏ 特開2014-057396 超電導界磁極 川崎重工業株式会社他
【概要】
回転子を超電導化し固定子を常電導化したラジアルギャップ型の超電導回転電機の、垂直磁場
による臨界電流減少を抑制し、また、回転子を超電導化し固定子を常電導化したラジアルギャ
ップ型超電導回転電機の、他の超電導界磁極の相互影響を考慮し、線材の垂直磁場の低減を図
り臨界電流を向上させ、回転子の超電導界磁極と固定子の電機子巻線との双方に鎖交する鎖交
磁束を増加させで出力向上を図るため、
下図5のごとく、各超電導界磁極(28a~28c)は、超電導線材を渦巻き状に巻回してな
る超電導コイル体(27)と、超電導コイル体の回転子の径方向外側の端面に配置された強磁
性の外側磁場転向部材(60)と、超電導コイル体の回転子の径方向内側の端面に配置された
強磁性の内側磁場転向部材(50)と、を有することでラジアルギャップ型の超電導回転電機
の臨界電流及び出力の向上を図る。
【符号の説明】
10・・・超電導回転電機 12・・・筐体 14・・・中心軸 16・・・回転子
18・・・固定子 20・・・ロータシャフト 22・・・ロータコア 24・・ケーシング
27…超電導コイル体 28,28a,28b,28c…超電導界磁極 29,29a,29b,
29c,29d…レーストラック型コイル 30a,30b…直線部分 30c,30d…円
弧部分 31…超電導線材 32・・・バックヨーク 34・・・ティース 36・・・スロ
ット 40…電機子巻線 50,51,52…内側磁場転向部材 60,61…外側磁場転向
部材
❏ 特開2018-035015 超電導バルク接合体および超電導バルク接合体の製造方法
新日鐵住金株式会社
【概要】
塊状(バルク状)の超電導体は超電導バルク体と呼ばれ、従来の永久磁石を凌駕する非常に強
力な磁場発生源(超電導バルク磁石)や、複雑なフィードバック制御システムなしでも安定浮
上を実現できる非接触な軸受(超電導軸受)、磁場中でも大電流を通電できる電流リードなど
の通電素子、強い磁場を遮蔽できる磁気シールドなど、様々な応用が期待されている。
このような応用に用いられる超電導バルク体には、臨界温度(Tc)が高く、磁場中での臨界
電流密度(Jc)が高い超電導バルク体が望ましい。Re-Ba-Cu-O系酸化物超電導体(REはY
または希土類元素から選ばれる1種/2種以上の元素)の臨界温度Tcは90K程度と高いが、
酸化物の一般的な製法である焼結法で作製されるバルク体は多数の結晶粒からなる多結晶状の
超電導バルク体である。超電導バルク体が多結晶である場合には、内部に存在する多数の結晶
粒界が超電導電流を阻害するため、臨界電流密度Jcは77Kで1.0×103A/cm2以下で
あり、低い値である。臨界電流密度Jcを改善するために、特許開示例の溶融結晶成長プロセ
スが開発されている。溶融結晶成長プロセスで、結晶方位の揃ったRE1Ba2Cu3Oy(yは酸素量
で、6.8≦y≦7.1)中にRE2BaCuO5が微細分散した組織を有する超電導バルク体を得る
ことができる。超電導バルク体は、77K、1Tで臨界電流密度Jcが1.0×104A/cm2 以
上という磁場中でも高い特性を示す。ここで、結晶方位の揃ったとは、内部に大傾角粒界を含
まない単結晶状であることと同義である。このような結晶方位の揃った超電導バルク体は、溶
融結晶成長プロセスで製造され、すなわち、種結晶を用いて、徐冷させながら結晶成長させる
製造される。超電導バルク体のサイズが大型化すると、製造時間が極端に長くなることに加え、
種結晶以外からの余分な核生成が生じて多結晶化しやすくなるので、製造が困難になる。製造
可能なサイズには実質的限界がある。
このような超電導バルク体の大型化、長尺化の問題解決に、ある程度の大きさや長さを有する
超電導バルク体同士の接合が考えられるが、超電導バルク体同士を単に接合しただけでは、接
合層の互いの結晶方位がずれ、あるいは超電導バルク体同士をつなぐ接合層部分の多結晶化に
より生じ得る超電導電流を阻害する結晶粒界が存在のため、接合体の超電導特性は単体の超電
導バルク体と比較して低くあった。このような超電導接合体の問題解決方法が、特許文献とし
て開示されている。
具体的には、結晶方位の揃った複数の超電導体の接合本体が、その接合面で接合本体よりも溶
融温度(包晶温度)が低く、かつ接合本体と同じ結晶方位の超電導体からなる接合層を介し接
合されている超電導バルク接合体が開示されている。また、接合本体となる超電導バルク体同
士をお互いの結晶方位を揃えて配置し、接合層を挟んだ状態で、接合本体の溶融温度よりは低
く、かつ、接合層の溶融温度よりは高い温度まで加熱し、その後、接合層の溶融温度前後の温
度領域で徐冷することで、溶融状態にある接合層部が両端の接合本体を種結晶として結晶成長、
最終的に両端の接合本体と接合層の全ての結晶方位が揃った状態で接合することを開示。
尚、この方法では、接合層の溶融温度を接合本体の溶融温度より低くする必要がある。そこで、
RE-Ba-Cu-O系酸化物超電導体は、REサイトの元素によって溶融温度が異なる性質を有し、
接合本体として溶融温度の高い元素を選択し、接合層として溶融温度の低い元素を選択するこ
とが提案されている。別の方法として、RE-Ba-Cu-O系酸化物超電導体は銀を含有すると溶
融温度が低下する性質を有し、接合層に銀または銀化合物を含有することが提案されている。
この様に、結晶方位の揃った複数の超電導体からなる接合本体が、その接合面で接合本体より
も溶融温度が低い超電導体からなる接合層を介して接合する構造にすることは、両側の接合本
体と接合層の全ての結晶方位を揃えることを可能にする有効な手段であるが、従来の接合方法
では接合部分の機械的強度が必ずしも十分ではなく、接合した試料を取り扱っている際に接合
部分である接合層付近で試料が破損するという問題があった。
下図1Aのごとく、結晶方位の揃った第1の酸化物超電導体からなる複数の接合本体2と、隣
り合う接合本体2同士の間に設けられ、第2の酸化物超電導体からなる接合層3と、を備え、
接合層3を挟んで隣り合う接合本体2の互いの結晶方位のずれが15°以内であり、接合層3
の結晶方位と、隣り合う接合本体2との結晶方位のずれがいずれも15°以内であり、接合層
3は、接合本体2よりも溶融温度が低く、接合本体2および前記接合層3は、それぞれ金属銀
換算で30質量%以下の銀を含有する超電導バルク接合体1Aで構成/構造の超電導特性に優
れ、機械的強度が強い超電導バルク接合体の提供。
【符号の説明】
1、9、10、11 超電導バルク接合体 2 接合本体 3 接合層
※ 特開2018-114549 複層鋳片の連続鋳造方法及び連続鋳造装置 新日鐵住金株式会社
以上、ここでは紹介されていないが電動プレーンへの応用も期待される。また宇宙開発技術の
重要な技術に位置づけられる。これは面白い。
● 今夜の一冊と一曲
The Doors The Crystal Ship / Light My Fire
Space Force: Mike Pence launches plans for sixth military service | US news | The Guardian
● 今夜の寸評:宇宙軍設立だって。
嘘に嘘を、虚勢に虚勢(強勢に強勢)を重ねるトランプ大統領の政権は、レーガン大統領の軍
事ケインズ主義政策の焼き直しとして20年までに宇宙軍を設立することを公表。国連もまと
められず、「人類の統一エシカルコード」なしで宇宙を汚染するというのか?質が悪い冗談だ