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界面*粒界工学

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【オールソーラーシステム完結論 24】 

● 電荷の輸送障壁の解明ツール

 

産総研の研究グループによると、通常、有機薄膜太陽電池は、電荷の受け渡しを行う2種類の分子
(ドナー分子とアクセプター分子)が複雑に混ざり合い(下図1(b)、(c))、発電層内部に自己組
織化したナノ構造を形成して高い変換効率が実現する。しかし、発電層内のナノ構造と電荷の輸送
との関係はほとんど解明されておらず、変換効率を向上させるための指針を得ることが難しい状況
だったが、有機薄膜太陽電池の変換効率の向上に関する研究開発を積極的に進めている(2014年4月
17日/2014年5月8日の2回に渡りプレス発表)。今回、発電層内部の電荷輸送を簡便に定量評価す
る手法を開発(次下の新規考案説明図参照)し、ナノ構造と電荷輸送との関係を明らかにした上で、
変換効率の向上を目指す研究を進めてきている。


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● 新規考案概要

一般に、太陽電池の発電性能は、電池製造後に屋内の大気環境下で評価される。測定対象の電池に
擬似太陽光を照射し、標準条件(電池温度:25℃、分光分布:基準太陽光、放射強度:100mW/cm2)
の下で電流-電圧特性が測定される。発電効率は、照射光強度に対する電流-電圧積の最大値を百
分率で表した数値として定義され、発電性能の指標として広く用いられている。従来、この発電性
能は、電池製造後に評価され、製造工程の途中において予測する方法は無かった。

太陽電池にはいくつかの種類があり、そのうちの一つの種類として太陽光を光電変換して光起電力
として取り出す構成の薄膜太陽電池(例えば、薄膜シリコン太陽電池、化合物薄膜太陽電池、有機
薄膜太陽電池等)が知られている。この薄膜太陽電池は、省資源・低コスト化が可能であり、次世
代の太陽電池として期待されている。薄膜太陽電池は、基板洗浄、電極形成、発電層形成、スクラ
イビング等の工程を経て製造されるが、とりわけ、発電層の形成は、発電性能を決定する最も重要
な工程である。通常、発電層は、不純物抑制の観点から、減圧下でのプロセス技術(プラズマ化学
気相堆積法、スパッタ法、蒸着法、熱化学気相堆積法、分子線エピタキシー法)を用いて製造され
る。 

従来、薄膜太陽電池の発電層の製造条件(プロセス条件)を最適化し発電性能を向上させる場合、
プロセス条件を変更し、その都度、電池を作製し発電性能を評価していた。発電性能の評価には、
上述の通り、多くの工程を経て太陽電池を作製する必要があり、本工程のプロセス条件の最適化に
は、多くの時間と労力を要する課題を抱えていた。また、発電層は減圧下で製造されるのに対し、
発電性能は大気環境下で評価される。そのため、発電層の製造工程において、減圧下にて発電性能
を予測する手法の開発が望まれていた。


(1)この太陽電池の製造工程における発電性能の予測方法は、基板側から透明電極、発電層及び
裏面電極の順で、また、基板側から裏面電極、発電層及び透明電極の順で積層された構造の太陽電
池の製造工程の発電性能の予測方法で、複数の透明電極また、裏面電極に対し発電層が積層された
工程段階の基板に対し、波長領域の異なる第1と第2のポンプ光を同時に、または交互に照射する
照射ステップと、発電層の形成時もしくは発電層の形成後に、複数の透明電極また、裏面電極のう
ち隣接する2つの透明電極または、裏面電極に対し、照射ステップにより第1のポンプ光を照射し
たときの2つの透明電極間と裏面電極間の第1の電流と、第2のポンプ光を照射したときの2つの
透明電極間と裏面電極間の第2の電流とをそれぞれ測定する電流測定ステップと、電流測定ステッ
プにより測定された第1及び第2の電流の電流比を算出する電流比算出ステップと、電流比算出ス
テップで算出された電流比に基づき、製造後の太陽電池の曲線因子及び発電効率を予測するステッ
プとを含む特徴をもつ。

(2)上の目的達成のため、太陽電池の製造工程の異常検知方法は、基板側から透明電極、発電層
及び裏面電極の順で、または基板側から裏面電極、発電層及び透明電極の順で積層された構造の太
陽電池の製造工程における異常検知方法で、複数の透明電極と裏面電極に対し、発電層が積層され
た工程段階の基板に対し、波長領域の異なる第1及び第2のポンプ光を同時に、交互に照射する照
射ステップと、発電層の形成時、または発電層の形成後、複数の透明電極と裏面電極のうち隣接す
る2つの透明電極と裏面電極に対し、照射ステップにより第1のポンプ光を照射したときの2つの
透明電極間と、裏面電極間の第1の電流と、第2のポンプ光を照射したときの2つの透明電極間と、
裏面電極間の第2の電流とをそれぞれ測定する電流測定ステップと、電流測定ステップにより測定
された第1及び第2の電流の電流比を算出する電流比算出ステップと、電流比算出ステップにより
算出された電流比が所定値以下であるか否かを判定し、電流比が所定値以下のときプロセス異常と
判定する判定ステップとを含む特徴ともつ。
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このように、有機薄膜太陽電池は、安価、フレキシブルで、意匠性に優れる次世代太陽電池として
近年注目を集めており、変換効率と耐久性の向上に向けた研究開発が世界各地で進められているが、
開発した電荷の輸送特性を評価する手法では、試料に2種類のレーザー光(ポンプ光およびプローブ
光)を照射し、それぞれの光によって励起される光電流を測定する(図2)。ポンプ光は光励起キ
ャリア(正負の電荷)を生成するための光で、その光子のエネルギーは半導体のバンドギャップよ
りも大きい。そのため、ポンプ光によって励起される光電流を測定することで電荷の流れやすさが
評価できる。一方、プローブ光は輸送障壁によって捕捉された電荷(トラップ電荷)を輸送レベル
にまで引き上げて取り出すための光で、その光子のエネルギーは、半導体のバンドギャップより小
さく、輸送障壁の高さより大きくする必要がある。そのため、プローブ光によって励起されるトラ
ップ電流はトラップ電荷の量を反映する。また、これらの電流比から、トラップ電荷の定量値(ト
ラップ電荷密度)が得られ、この値は太陽電池の変換効率を決める重要な指標になるというもの。

 

この評方法を用いて、これらのナノ構造の異なる試料について、電荷の輸送特性を調べ太陽電池特
性と比較したところ(図4)、ポンプ光励起の光電流はドナー分子の割合が20%で最大となり(
図4(a))、トラップ電荷密度はドナー分子の割合が50%で最小になった(上図4(a))。太陽電
池特性はドナー分子の割合に対し強く依存し、変換効率はドナー分子の割合50%で最大となった
(図4(b))。変換効率とトラップ電荷密度を比較すると(図4(a)、(b))、曲線の形が反転し、
ちょうど相反関係となり、トラップ電荷を低減すると高い変換効率が得られることが示唆されてい
る。 

従って、トラップ電荷密度がドナー分子の割合に対し、U字型の依存性を持つことから(図4(a))、
ドナー分子とアクセプター分子の界面が電荷の輸送障壁となると考えられる。また、アクセプター
分子が過剰になると正電荷の移動が妨げられ(図1(b))、逆に、ドナー分子が過剰になると負電荷
の移動が妨げられるためと考えられる(図1(c))。ドナー分子とアクセプター分子が60%ずつの
場合には、両者の界面、すなわち輸送障壁が最も少なくなるためトラップ電子密度が最小になる。
また、トラップ電荷密度がナノ結晶からなるC60単成分薄膜で最大になったのは、結晶の粒界が輸送
障壁として働くためと考えられる(図1(a))――電荷の輸送障壁が界面と粒界であることを突き止
めたという。また1つ、これで実用化のための有力なツールが開発されたことになる。これは面白
い。  

● デクサマニー降臨 Ⅱ

「大型のリチウムイオン蓄電池を設置した事業用太陽光発電所としては国内初の事例だと考えている」
(エジソンパワー)。同社が蓄電池を納入するのは、御船ホールディングスが鹿児島県天城町(徳之
島)に立ち上げる出力1.99MWの大規模太陽光発電所「御船徳之島太陽光発電所」(下図参照)。2014
年8月に着工し、2017年3月に運転を開始する予定というもの(スマートジャパン 2014.08.14)。
この記事の見出しは、「サムスンと組んで国内を制覇か、太陽光発電所+大容量蓄電池」とかなりき
な臭いものとなっているが、各地で大規模太陽光発電所の設置件数が増えていく中、系統に太陽光発
電所を接続する余裕がなくなってきた。連系線の容量が不足している場合は、設備投資によって接続
が可能になる/「九州電力に売電する場合は、出力変動を抑えるための蓄電池を導入すれば、電力会
社が要求する電力の品質を満たすことができ、全量買い取ってもらえる。接続拒否は起こらないこと
が分かった」(同社)――と極めてクールな解説となっている。

 

多くの大規模太陽光発電所の初期コストは、1MW当たりおよそ3億円だ。1日当たり4kWh/m2という日
照条件であれば、変換効率15%の多結晶シリコン太陽電池モジュールを利用すると、年間3500万円程
度の売電収入が得られる。従って、初期コストが1億円増えると、投資回収期間がおよそ3年延びる
という。「当社は徳之島で出力2メガワットMWの太陽光発電所と容量1MWhの大容量リチウムイオン蓄
電池を組み合わせて7億円規模で構築する。実は7億円規模で抑えないと顧客の期待するIRR(内部利
益率)を出すことができない」(エジソンパワー)とした上で、「低価格」に抑えることができた理
由として、同社は2つの理由を挙げている。

※ 一般的なメガソーラーの初期コストから計算すると、1kWh当たり10万円で大容量リチウムイオン
  蓄電池を導入できるとの計算。

1つめは、徳之島の事例では同社が設計・調達・建設(EPC)事業者として取り組むこと。導入期間
全体にわたってコストを管理しやすい。

2つめは、韓国サムスンSDI(Samsung SDI)と合意書を取り交わすことで、長期間(20年)安心し
て運転管理メンテできる。

つまりは、蓄電池は設置してからが勝負。蓄電池を監視し、メンテナンスを施していくためには、特
に温度管理や過充電・過放電の監視が重要となり、不具合が生じた場合は、セル単位の交換はもちろ
ん、複数のセルをまとめたラック単位の交換を施すことで性能を維持する必要がある。このため電池
の供給元の協力がなければ継続が難しい事業だという理由による。

そして、なによりもエジソンパワーがEPCと合意書という強みを今後も生かし、徳之島の事例のよう
に、大容量リチウムイオン蓄電池と組み合わせた大規模太陽光発電所を今後5年間に全国で20カ所建
設する計画していいるが、このような規模の計画を国内で打ち出した企業はこれまでにないと結んで
いる。

 

● エボラ熱に抗インフルエンザ薬「アビガン」が有効?

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