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汚染バイオマス利用工学

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【オールバイオマスシステム完結論 Ⅱ】

 ● タールフリーと放射性物質の回収

 『木質バイオマスの資源化』(2014.08.31)のお復習いをすると、下図の「特開2014-085329 放射性セ
シウムおよびストロンチウムの捕集材および捕集方法
」――この新規提案は、放射性物質に汚染したバイ
オマスや木材瓦礫、農業廃棄物を改質反応、ガス化反応と焼却する炉内に充填した捕集材にガス化および
改質ガス、燃焼ガスの還元性ガス雰囲気下でセシウムとストロンチウムを高効率で濃縮捕集し、さらにガ
ス化炉や焼却内に残存する炭化物や焼成灰などから捕集材を遠心分離サイクロンあるいは磁性分離操作で
選択的に分離回収して、必要に応じて回収された捕集材を循環利用して最終的に濃縮捕集材を分離の上、
安全に貯蔵および保管することが出来、さらに。汚染された森林廃材や農産物より放射性セシウムおよび
ストロンチウムを高密度に濃縮分離回収すると同時に、ガス化炉や改質反応炉で製造されるバイオマスガ
スを利用して電力・熱およびアルコール合成燃料など、エネルギーやバイオ燃料を地域社会・産業に提供
することができるもの、チタン、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、ニッケル、コバ
ルト,鉄、およびランタン、イットリウム、ネオジム、セリウムなどの希土類金属の複合金属酸化物、お
よびそれらの金属塩をシリカ、アルミナ、炭素担体に担持する放射性セシウムおよびストロンチウムを捕
集する捕集材とセシウムおよびストロンチウムを捕集する(図1参照)――として、この新規考案の実施
例を記載紹介している。 


ところで、従来、木本類、草本類などの固体系バイオマスのエネルギー変換は直接燃焼による熱利用が主
で、この場合、高度なエネルギー利用は困難である。例えば発電の場合、木質チップ・ボイラで水蒸気を
発生させ、水蒸気タービンによる発電方式が一般的となるが、1千~3千kW規模で、8~12%の発電
効率に止まっているのが実情である。百kW規模の小規模では電力出力を実質的には得ることができない。
現在、小規模から大規模まで、バイオマスのエネルギー高効率利用のためガス化技術が検討されているが、
空気または酸素の理論量以下でバイオマスを半燃焼させる部分酸化法が主流である。部分酸化法では、煤・
タールの発生が多く、また発熱のため使われた相当量のCO2(空気を用いた場合には更に多量の窒素)
が生成ガス(合成ガス)中に混入するため、高品質の合成ガスを得ることは困難であった。

バイオマスの高度エネルギー利用のためには、自動車燃料としての使用や燃料輸送などの観点から、液体
燃料への転換が一つの好ましい形態であるが、現状では、バイオマスからの液体燃料製法は、糖質、でん
ぷん等を原料とした発酵によるエタノール燃料、あるいは植物油をメタノールによってエステル交換した
BDF(登録商標)(バイオディーゼル油燃料)など、主として食料を原料とし、耕作面積当りの収量が
低い植物を利用する手法のみでの実用化にとどまり、食料以外の草本類・木本類のバイオマスを原料とし
て、熱化学的手法で、高品質の化学合成原料となる合成ガスに転換し得るガス化方法はまだ実用化に至っ
ていない。

すなわち、(1)固形物除去装置及びタール除去装置で捕集されるスラッジ状の未ガス化炭素粒子及びタ
ールが、プラント全体の熱効率を低下させること、(2)この捕集されたスラッジ状の未ガス化炭素粒子
は、含水分量も多く難燃性であり、タールもまた粘性が高く、容易には燃焼せず、処理が容易でないこと、
(3)燃料である有機物の種類によっては、その含有灰の融点が低く、燃焼炉の火格子上でクリンカー(
高熱によって半融解状態に固まった鉱物性物質)が発生することがあり、これは火格子の閉塞につながり
長時間運転の支障となる。

これに対し、下記の新規考案は、火格子上で有機物燃料を燃焼させたときにクリンカーなどにより生じる
火格子の閉塞を解消し、高温燃焼ガス発生装置の長時間の安定運転を可能にする方法――火格子12上で
有機物燃料Tを燃焼させることで発生させた燃焼ガスHにより、バイオマスなどの有機原料202を加熱
しガス化する生成ガスの製造方法、または製造装置において、大きさを変化させることが可能な間隙34
が形成された火格子12を使用し、この間隙34の大きさを必要頻度で変化させることで、クリンカー等
による火格子12の閉塞を解消するとともに、補助燃焼室18を設け、発生したスラッジ、タール等を燃
焼させ、熱回収を可能にした構造考案が提案されている。


 

 また、明和工業株式会社(下図参照)の「特開2014-190882 放射性セシウムが付着したバイオマスの処
理方法
」――(1)放射性セシウムが付着したバイオマス原料を粉砕する粉砕工程と、(2)粉砕したバ
イオマス原料を無酸素雰囲気下で、かつ、放射性セシウムが気化しない温度で急速熱分解することで(3)
バイオオイルの原料を含む液体、Si-O-Cs系物質を含む固体及び気体の三相に分ける急速熱分解工程と、
(4)液体を回収するバイオオイル回収工程と、(5)固体を回収する放射性セシウム回収工程とを少な
くとも含み、必要に応じて、粉砕工程と、急速熱分解工程でシリカを添加するシリカ添加工程も含むシス
テムにより、放射性セシウムが付着したバイオマスからバイオオイルを回収すると共に、放射性セシウム
を減容化且つ化学的に安定化した状態で確実に除去できる除染処理方法――が提案されている。 



この提案の特徴――放射性セシウムが付着したバイオマスの処理方法は、(1)急速熱分解法を用いるこ
とでバイオマスから高い収率でバイオオイルを回収できる。(2)また、放射性セシウムが気化しない温
度(400℃~600℃)で加熱するため、当該放射性セシウムがバイオマスに含まれるシリカ及び必要
に応じて別途添加するシリカと固相反応を起こし、Si-O-Cs系物質に変化すため、このSi-O-Cs系物質を含
有するチャー(固体)を回収することで、放射性セシウムを化学的に安定化した状態で確実に回収するこ
とができ、(3)また、回収したチャーはセメント等の周知の固化手段により固化体とすることで、粉砕
処理する前の状態のバイオマスと比較して大幅に減容化できる。(4)また、気体はバイオガスとして急
速熱分解工程の熱源の一部として再利用することができるという。

尚、実施例ではCs(セシウム)の代替物としてナトリウム(Na)を使用し、CsとNaは共に一価のアルカリ
金属であるため、CsはNaと比較して反応性が高いことから、Naを用いた実施例の結果と同様の結果をCsを
用いた場合にも得られることを前提として検証している(※この手法の正当性については別途議論がいる
と考える)。


● 生物学的処理回収技術

東日本大震災によって発生した福島第一原子力発電所の事故は、高濃度の放射能汚染水や広範囲に亘って
汚染した土壌、草木、瓦礫等が大量に発生して復旧作業の障壁となっている。特に放射能汚染に含まれる
放射性セシウム137の半減期は30.1年、放射性ストロンチウム90の半減期は28.8年もあり、
長期に亘って放射線を出し続けることになる。放出された放射性セシウムは、土壌では農地、住宅地、学
校のグラウンド、下水道の汚泥、瓦礫等に付着し、廃水では、プール、浄水場、河川、ダム等に溶け込み、
川や海へ流入して汚染が広がることになる。また、放射性セシウムは食物連鎖によって魚や動物等に蓄積
され、これらを人間が体内に取り込むことによって肝臓癌、腎臓癌、膀胱癌等の健康被害を生じさせるこ
とが分かっているため、そのような被曝や汚染の拡散を防止するために放射性セシウムの早期除染が必要
になってくるが、一般的に、放射性セシウムを除染分離させるには、ゼオライト除去技術、磁気分離除去
技術、活性炭除去、イオン交換樹脂、RO膜による除去技術、植物による取り込み等の各種除去技術が開
発され、かつ試行および一部は実用化されつつある。また、原子力発電所施設から発生する除染処理物や
事故等によって放射能汚染された土壌、草木、瓦礫等の除染処理物をアルカリ除染剤を用いるアルカリ除
染工程と、有機酸および無機酸を組み合わせた酸除染剤を用いる酸除染工程とを組み合わせた除染法も提
案されている。

しかし、従来のゼオライト除去技術、磁気分離除去技術、活性炭除去、イオン交換樹脂、RO膜による除
去技術、植物による取り込み等の各種除去技術構成では、処理の内容が限定的であったり、除去率が低い
等の課題をもち、除染処理物をアルカリ除染剤を用いるアルカリ除染工程と、有機酸および無機酸を組み
合わせた酸除染剤を用いる酸除染工程とを組み合わせて除染処理方法では、多種類の除染剤が必要があり、
かつ、除染洗浄後の廃液処理が必要で、最後は原子力発電プラント内の――既設放射性廃棄物処理設備に
て処理しなければならない。さらに、農地、住宅地、瓦礫等、市街地の悪臭、塩害を中性化したりする混
合菌体よる中性化・防虫剤方法は、利用技術の拡大と効能の確立など課題をもつていた。

それらを踏まえ、下図の新規考案では、放射能汚染された除染処理物2を収容し、かつ酸性洗浄水3が収
容される洗浄槽1と、この洗浄槽1の内部に配設された撹拌器4と、二次洗浄槽9と、内部に加温ヒータ
7が配設されて微生物菌体を混入した汚染洗浄水を収容加温する汚染水処理槽6とを設け、洗浄槽1で一
次洗浄を行った後、酸性洗浄水3で濯ぎ洗いを少なくとも1回行う二次洗浄とを行い、各洗浄工程で排出
された洗浄溶液に微生物菌体を混入し、加温しながら汚染洗浄水を処理するように構成することで、放射
性物質類によって汚染された、構築物、土壌、廃水、草木、瓦礫等を浄化する放射能汚染処理物の除染方
法およびその方法を用いた除染装置が提案されている。

以上、この提案によると、土壌、廃水、草木、瓦礫等の除染処理物全般を除染対象に、コンクリートや瓦
礫等には放射性物質類が深く付着していることもあるため、アルカリ性である中性洗剤のエマルゲンを併
せて使用すれば比較的容易に除染することができて効果的であり、骨材としての再利用が可能となり、温
泉水に硫黄が含有されている場合は、排水放流前に一般公知の技術によって脱硫処理をすることが必要と
なる。また、必要に応じて汚染水処理槽での無害化処理が終了した後、遠心分離機を使用して真水と粘調
の菌体(ゲル状固体物)とに分離し、放射能濃度によってこの少量の粘調の菌体は放射能遮蔽された貯蔵
庫に長期に亘って指定廃棄物保管容器で保管するようにすれば完璧に安全管理が行える。したがって放射
能汚染された除染処理物が除染されると共に汚染された洗浄溶液も中性無害化され、河川等への放流が自
由に行えることになる。遠心分離機により無害化された処理水は、環境省の定めた基準値以下になり河川
に放流できるという。

以上、ここでは「汚染バイオマス利用工学」として実施例を調査し考察し、放射性物質による汚染された
木質バイオマスのエネルギー変換技術の実用性を多角的に考察してみた。

 

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