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ヤヌスキューブの謎

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                何の職業であっても、自分の中の問答の行き来が豊富にな
            って、自分の中にたまっていくことが、いちばん大切です。

 

 

                                       

                               Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 



● 新規化合物創製工学の此岸:ヤヌスキューブ

ケイ素と酸素からなる立方体(キューブ)骨格に、その対面に4つずつの異なる2種類の置換基をもつ化合物。2つ
の顔を持つローマ神話の神ヤヌスに因んで、米国ミシガン大学のR. Laine教授によって命名された。ところで、ヤー
ヌス(ヤヌス Janus)は、ローマ神話の出入り口と扉の神。前後2つの顔を持つのが特徴。ローマのフォルム(公
共広場)に神殿があり,その扉は平和時には閉ざされ戦時には開かれるのが習慣であった。表現上、左右に別々の
顔を持つように描く場合もある。前後を見る二つの一年の終わりと始まりの境界に位置し、1月を司る神、入り口
の神でもあるため、物事の始まりの神でもあった。1月の守護神なのは、1月が入り口であり、年の始まりでもあ
ったため。それから来て、過去と未来の間に立つという解釈もあり、その役割は日本の年神によく似ているが直接
の関連性とされる。他の著名な神と異なりギリシア神話にはヤーヌスに相当する神はいない。
英語で1月をいうJanuaryの語源(ヤーヌスの月)でもある。

ところで、話はヤヌスキューブ。海野雅史群馬大学教授らの研究グループは、フッ素を含む新たなケイ素化合物を
合成し、別のケイ素化合物のナトリウム塩とのあいだのカップリング反応によりヤヌスキューブを簡便に合成。こ
の成果の詳細は、Angewandte Chemie, International Editionに5月25日に掲載され、同誌のCover Pictureとして中表
紙を飾った(ブログ巻頭図参照)。

 

群馬大学と産総研は高機能の有機ケイ素材料の開発を目指して、構造が高度に制御されたシロキサン化合物の合成に
取り組んできが、ケイ素と酸素からなる立方体(キューブ)骨格の対面に異なる2種類の置換基をもつヤヌスキューブ
の合成は、20年以上に渡り挑研究されてきたものの。さまざまな不純物が副生成物として生成され、不純物からヤ
ヌスキューブだけの分離が困難であったのだが、(1)合成プロセスを改善し収率を大幅に向上、(2)X線結晶
構造解析で構造を解明し、(3)今回の合成法のポイントであるフッ素を含むケイ素化合物(フルオロシロキサン)
を新しく合成し新しいカップリング反応を実現した(下図)。


Janus Cube Octasilsesquioxane: Facile Synthesis and Structure Elucidation , DOI: 10.1002/anie.201602413  Click ↑ 


これまでヤヌスキューブのようなシロキサンの合成には、ケイ素と塩素を含む化合物が主に用いられてきたが、ケイ
素-塩素結合は水などによって簡単に分解するため、結合が切れたり、置換基の位置が入れ替わったりする。これに
対しケイ素-フッ素結合は非常に安定で、水中でも分解せず、反応で発生する副生成物が、中性のフッ化ナトリウム
で、分離精製が容易。下図にX線結晶構造解析の分子構造を示す。異なる2種類の置換基が対面に配置しており、ヤ
ヌスキューブである。

ところで、今回開発したヤヌスキューブは、有機-無機ハイブリッド材料をはじめとするさまざまな高機能材料の原
料となることが期待されるとのこと。また、ヤヌスキューブに、イオウを含む置換基を導入すれば、分子レベルでシ
リカを分散でき、シリカ配合「混合物」として性能向上が試みられてきたエコタイヤをつくることができる。また、
水酸基で置き換えることで、シリカ、アルミナ、チタニアなどの金属酸化物などの金属と直接、反応できれば接着性
・耐熱性をもつ化合物として、現在のシランカップリング剤に代わる材料開発となる。

「ヤヌスキューブ」の名称に、これまたすごいと思うと同時に、新規な遺伝子組み換え作用物、ダイオキシン、フロ
ンと同様に、ひとの身体などの環境への影響リスク評価も同時に併行しておかなければという警戒心も過ぎるが、堅
牢な固形物であればナノ化合物とはいえコントロールはたやすいかもしれない。はたして「ヤヌスキューブの謎」と
して未来に投機されるがいかに。

  

 

【最新高性能太陽電池技術の此岸】 

 今回は、日米2つの特許事例を掲載。

● 色素増感型太陽電池製造技術:ロールツゥロール方式

1つめの下図の「 特開2016-082094 色素増感太陽電池の製造方法 積水化学工業株式会社 2016年05月16日 」は、
対向して配置される一対の基板2A,2Bと、この一対の基板2A,2B上に、それぞれ対向するように設けられ
る光電極及び対向電極と、を備える色素増感太陽電池1の製造方法であり、ローラー13の表面13aに接着剤B
を所定のパターンで担持させる担持工程と、ローラー13の表面13aに担持させた接着剤Bを一対の基板2A,
2Bの内の一方の基板2A上に接触させて塗工し、所定のパターンの接着剤層5を形成する塗工工程と、を備える
、一対の基板同士をロールトゥロール方式で接着するプロセスに対応可能で、接着剤の塗布量と塗布パターンを適
正に制御でき、接着剤層のパターンを高精度且つ生産性良く形成することが可能な色素増感太陽電池の製造方法を
提供である。

● 太陽電池と関連機器の自律的調整システム、方法、モジュール

2つめの、下図の「US 9331499 System, method, module, and energy exchanger for optimizing output of series-connected
photovoltaic and electrochemical devices
」は、太陽光発電システムのエネルギー伝送装置は、高変換効率太陽電池か
ら電力を引き出し、低変換効率太陽電池にわたってその力を適用するように動作する。実施形態では、各直列接続
された太陽電池にわたって均一に電圧を維持するように動作する双方向DC-DCコンバータによる自己調整エネルギ
ー交換器である。代替の実施形態では、均一電流提供し、高性能デバイスから電力を引き込み、低変換効率太陽電
池にの電力を印加し、最大電力点で、直列接続れ太陽電池各々を維持するように制御が提供されている。

 

 

 

 

  きょうの料理 テーマ曲 

 花の生涯

  新日本紀行

   シルクロードを行く

● 今夜の一曲:世界シンセサイザー奏者で作曲家 富田勲

シンセサイザーを使った電子音楽の第一人者で、音響作家としても世界的に知られた作曲家冨田勲さんが5日、慢
性心不全のため他界、享年84。その20日も経過してそれを知る。高度情報化社会とはいえ情報のブラックホー
ルだったんだ感心している自分がいる――50年代、慶應義塾大学文学部在学中に作曲家として活動を始め、NHKや
民放における数々のテレビ番組、また映画や虫プロダクション関連のアニメーションなど多くの作品で音楽を担当
した。特に大河ドラマやNHK番組、虫プロアニメの主題曲、BGMは、繰り返し単独やオムニバスでレコードやCDが発
売されて今なお愛され続けている。これらの多くではまだ電子音はほとんど取り入れられていないが、メロディ作
りにもアコースティックのオーケストレーションにも才能を発揮し、各社のオファーは絶えなかったとか。初期の
ころにおいては、作曲家として活動する一方、従来のオーケストラという演奏形態に飽きたらず、新たに出現して
きた電子機器と古典的な楽器を融合させるなど、様々な音楽の可能性を追求した。その後1969年にモーグ・シンセ
サイザーと出会ったことが転機となり、これ以降は古典的名曲をシンセサイザーによって現代的な解釈を加えて発
表活動が中心となる。「イサオ・トミタ」の名は、広く世界に知られている。

ところで、ユーチューブでなじみの深い曲を選曲すると上の「トップ・フォー」となる。NHKのテレビ番組のテ
ーマ曲の多いことに改めて気付く。「花の生涯」は居住地の彦根市であり、「シルクロードを行く」は中国プラン
ト建設の仕事で、「きょうの料理」「新日本紀行」は日常生活のシーンのBGMとして一体として存在していたの
だと思い知る。
                                                合掌

    


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