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薄膜振動発電工学の此岸

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                   死は生の終点ではなく、生とともにあって、人生全体を照らしている。

                

                                              
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

  

● ソーラー・インパルス2 世界一周達成

太陽エネルギーのみで世界初の世界一周飛行に挑戦していた次世代ソーラー飛行機「ソーラー・インパ
ルス2)」が26日、最終目的地のアラブ首長国連邦のアブダビに着陸した。太陽光発電での飛行で世
界一周するなんて新らしい時代(持続可能社会時代)の幕開けを象徴する偉業である。



Solar Impulse 2 breaks the world record for the longest solo flight



 

【薄膜発電工学の此岸:最新振動発電】

こういう作業を続けていると、時間経過の速度がわからなくなることがある。今夜はちょっとその話を。
その切っ掛けというのが、理化学研究所などによる研究グループは、通常の環境に存在する湿度の揺ら
ぎをエネルギー源として半永久的に駆動する薄膜アクチュエーターが開発されたニュース(理化学研究
所 2016.07.19)。

グラフィティック・カーボンナイトライドと呼ばれる2次元状高分子を独自に開発した手法で、安価な
グアニジン炭酸塩を用いたこの薄膜は、加熱するだけという非常にシンプルな手法で作製は水分の吸着
量に応じて屈伸するため、湿度変化に応じて屈伸運動を示す。今回開発した薄膜は、従来のものより少
ない水分量で大きくかつ高速に屈伸運動を行うことが特徴。さらに、局所的な湿度変化を運動エネルギ
ーに高効率で変換できるため、汎用の湿度計では感知できないほど小さな湿度変化にも応答するという
もの。これに、薄膜の一部に金を蒸着することで、水滴の周りに起こる湿度の揺らぎを駆動力とし、一
方向に歩き続けるアクチュエーターの開発にも成功する。高分子薄膜の一部に金を蒸着することによっ
て、水の吸脱着を起こさない場所を作製する。すると湿度の揺らぎに対して同じ屈伸運動を繰り返し一
方向に自律的に歩き続ける。

また、薄膜の水分の吸着量は熱や光にも影響を受け、環境におけるさまざまな揺らぎを薄膜の運動エネ
ルギーに変換することが可能で、この薄膜は環境の変化に高速で応答し、薄膜に強い光を照射すると薄
膜が高速で屈伸し、ジャンプする。今回の成果により、これまでエネルギーとして利用することが困難
であった“環境の揺らぎ”を、運動エネルギーとして利用できることを実証。今後、実際のデバイスな
どで利用するには、薄膜の運動エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換する技術を実現する必要が
あり、さらに人工筋肉などの分野への応用も考えられるとのこと。

しかし、「エナジーハーべスティング技術(環境発電技術)」への実用化には、信頼性、堅牢性、耐久
性などをクリアーする必要があると考える反面、これらの「振動発電」の研究開発10年前は萌芽期に
当たり実用化にほど遠いものであったが、理化学研究所のこの報告を受け、改めて調査し始めるともの
凄い速度で商用期に突入している。次に、今年6月以降の「振動発電」関連の特許公開情報を調べてる。
それをピックアップしてみる。



まず、下図は、ムネカタ株式会社の「特開2013-000701 圧電・焦電性膜の形成方法及び形成装置」の事
例で、プラスチックや布など、柔軟な素材に樹脂系圧電性溶液コーティングし、それらの素材を発電素
子の製造と方法――真空容器や密閉空間が不要で大掛かりな設備を必要とせず、低コストによる生産を
実現、さらに、溶液を微粒化しコーティング膜厚の均一化と三次元形状の被コーティング物に対し電界
コーティングと電界分極を実施、圧電・焦電性膜の形成方法及び形成である。、

 【符号の説明】

1 ハンドリング装置 2 溶液圧送タンク 3 高電圧電源 4 コーティング噴霧機 5 コーティング
噴霧機キャップ 6 誘電性溶液噴出ノズル 7 電極針 8 不活性気体噴出ノズル 9 不活性気体圧送
タンク 10 逆止弁 11 不活性気体バイパス流路 12 高電圧ケーブル 13 不活性気体及び溶
液の併用流路 14 溶液側三方電磁弁 15 分岐流路 16 電界 17 マイナスの電荷を帯びた液滴
粒子 18 被コーティング物 19 コーティング膜 20 受け冶具 21 アース 22 不活性気体
側三方電磁弁 23 ヒーター 27 溶液搬送流路 28 不活性気体搬送流路 29 絶縁ソケット 
30 湾曲した被コーティング物 31 コーティング噴霧機の移動軌跡 32 ハンドリング装置中心点
 33 コーティング噴霧機動作可能範囲 34 コーティング噴霧機後進動作可能限界線 35 コーテ
ィング噴霧機前進動作可能限界線 36 コーティング噴霧機上昇動作可能限界線 37 コーティング
噴霧機下降動作可能限界線 38 コーティング噴霧機旋回動作可能範囲 39 コーティング噴霧機旋回
動作可能角度 40 フロア(床) 41 溶液圧送ON、OFFバルブ 42 不活性気体圧送ON、O
FFバルブ 43 制御装置

特開2013-000701 圧電・焦電性膜の形成方法及び形成装置

【要約】圧電・焦電性膜19を形成する為の電界コーティング及び電界分極において、被コーティング
物18をプラス極に保ち、コーティング噴霧機4先端の電極針7にマイナス1kV~90kVの高電圧
を印加して被コーティング物18とコーティング噴霧機4との間に電界を形成する。次にコーティング
噴霧機4の不活性気体噴出ノズル8から不活性気体を被コーティング物18に向けて噴出し、同時にコ
ーティング噴霧機4の誘電性溶液噴出ノズル6より誘電性物質を溶媒に溶解した溶液を噴射し、この誘
電性溶液の液滴に電荷を与え、噴霧機4の電極針7を被コーティング物18に対向し、移動しながら微
粒化噴霧を行う事により被コーティング物18上に前駆分極膜を形成する。その後、電界を形成し、前
駆分極膜をさらに分極させて被コーティング物18上に圧電・焦電性膜を形成することで、圧電・焦電
性膜の形成方法及び形成装置を提供する。

次に、下図は、セイコーエプソン株式会社の「特開2016-134404 振動発電素子及びそれを用いた振動発
電デバイス」で、圧電体層の圧電定数を向上させ、また共振周波数の低下を図り環境振動との共振を好
適に利用し、環境振動に応じた大きな変位を効率よく電気エネルギーに変換できるペロブスカイト構造
の圧電体の振動発電素子とデバイスの公開特許。

【符号の説明】
1,1A~1F 振動発電デバイス、10 基板、11 隔壁 12 空間、13 インク供給路、14 連通
路、 15 連通部、 20 ノズルプレート、50 振動板、51 弾性膜 52 絶縁体膜 60 第1電極
70 圧電体層、70a 下地層、70m メイン層、71 ドメイン、80 第2電極、120 回路 121
配線、 300 振動発電素子

特開2016-134404 振動発電素子及びそれを用いた振動発電デバイス セイコーエプソン株式会社 2016.7.25

【要約】基板に、第1電極60と、少なくともPb、Nb及びTiを含むペロブスカイト構造を有する
複合酸化物からなる圧電体層70と、第2電極80と、が順次積層されており、圧電体層70を構成す
る結晶は正方晶の構造を有し、この結晶は基板10に{100}配向しており、この結晶の格子内には、
積層方向に対して垂直な(100)面及び(001)面を有する各領域が混在することで、圧電体層の
圧電定数を向上させ、また共振周波数の低下を図り環境振動との共振を好適に利用することにより、環
境振動に応じた大きな変位を得て効率よく電気エネルギーに変換することができる振動発電素子を提供
する。

● その他関連公開特許

 

特開2013-000701 圧電・焦電性膜の形成方法及び形成装置 ムネカタ株式会社 2013年01月07日 特開2016-127656 環境発電素子で発生した電力を蓄電する蓄電装置 ムネカタ株式会社 2016年07
月11日
特開2013-210285 導電性部材のひずみ検出方法 ムネカタ株式会社 2013年10月10日 特開2015-141978 圧電型振動発電装置 ムネカタ株式会社 2015年08月03日 特開2015-164153 発電装置 株式会社LIXIL 他 2015年09月10日 特開2016-134404 振動発電素子及びそれを用いた振動発電デバイス セイコーエプソン株式会社
2016
年07月25日 特開2016-129485 発電装置 学校法人 関西大学 他 2016年07月14日 特開2016-092888 圧電発電装置 京セラ株式会社 2016年05月23日 特開2016-103967 素子、及び発電装置 株式会社リコー 2016年06月02日 特開2016-086599 発電装置 パナソニックIPマネジメント株式会社 2016年05月19日 特開2013-188667 高圧電率の圧電性樹脂膜を形成する方法及びコーティング溶液 ムネカタ株式会
社 2013年09月26日
特開2013-077646 静電誘導式発電デバイスのための誘電体薄膜デバイス 国立大学法人東北大学
2013年04月25日

以上ののように調査している中で、今回の理化学研究所らのグ研究ループの事例のような、微少な環境
振動(温度・湿度・光など)をエネルギー変換素子も含め技術進歩の速さを改めて再認識することにな
る。

                                         

 


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