定年延長と年金の充実。この二つができたら、高齢社会に向けて
政治としてやることはもう無いと言ってもいいぐらいです。
第4章 サラリーマンを蝕む危ない常識
『僕なら言うぞ!』
Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012
8月3日、App Store が7月に前例のない売り上げを記録したとアップルのクックCEOがツイートし
ている。実は、前四半期に売り上げ増はタブレットiPad ――そのiPadも販売数は前年同期より減少
――だが、価格が高いiPad Pro が売り上げを支えた分析されている。開発者がアプリでお金を稼ぐ
のは相変わらず簡単ではないアプリビジネスでは大きな変化を迎えている。調査会社アップアニー
によると、ポケモンGO!はApp Storeが提供されている地域の半数未満の地域公開だけで、1カ月足
らずで123億円以上のアプリ課金を生み出している。
その理由の事例で日本ではポケモンGOをダウンロードした人の4人に1人が毎日プレイしている。
先日、ポケモンGO!はダウンロード数が1億件を突破。また、近くにいるポケモンはどこを探せ
ば見つかるのかがわかるというマップアプリ「Go Gear」が、App Storeの有料アプリの第2位。同
様のアプリがたくさんトップ百に入いるほど、売上シェアは3~4%程度ではあるが、知的財産と
素晴らしい制作の組み合わせの力を発揮した事例としてポケモンはひとつの「産業」を形成したと
する見方もある。ポケモンGOの好景気は、学校の新学期が始まると消えてしまう一時的な可能性
もあるが、現在の成長率と利用状況からは、ポケモンGOには持続力があるという(ポケモンGO、
すでに1億2千万ドル以上の「課金」 App Storeドル箱化への道, WIRED. 2016.08.08)。
これは、拡張現実(エイアール)事業の1つに過ぎない、もっと言えば、第4次産業を銀河系とし
た1つの惑星にすぎない。さらに、世界で初めて、NTT東日本関東病院 泌尿器科 杉本真樹医師ら
の研究グループは、8Kカメラでダビンチ手術のロボット支援手術を撮影――従来のロボット支援
手術には欠如していた触覚があるかのように感じられ、術中の判断の迅速化や安全性向上に役立つ
――することに成功するが、ロボット支援手術などに向けた、新しい医療機器の開発につながると
期待されていて、遠隔医療の、「医療用拡張現実」の1つとして成長していくものと考えられる。
【帝國のロングマーチ 21】
● 折々の読書 『China 2049』40
秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」
ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・
ピルズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の
知られざる秘密戦略「1000年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。
日本に関する言及も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日
常生活を見通すうえで、職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。
【目次】
序 章 希望的観測
第1章 中国の夢
第2章 争う国々
第3章 アプローチしたのは中国
第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
第5章 アメリカという巨大な悪魔
第6章 中国のメッセージポリス
第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
第8章 資本主義者の欺瞞
第9章 2049年の中国の世界秩序
第10章 威嚇射撃
第11章 戦国としてのアメリカ
謝 辞
解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか 森本敏(拓殖大学特任教授・
元防衛大臣)
第8章 資本主義者の欺瞞
順手牽羊――手に順いて羊を牽く
『兵法三十六計』第十二計
中国チームと世界銀行のエコノミストは、詳細にわたる研究の後、民営化と政治改革を進め
ないことに決めた。彼らはともに、経済成長を支える安定した道は、社会主義的経済政策と中
国共産党による政治の独占を維持することだと判断した。民営化を拒んだ理由の一部は、中国
の国有企業は2兆元の価値があるが、国民の総貯蓄額は推定で、1兆元しかなかったからだ。
つまり、中国国民が国有企業に投資してオーナーになるのは、計算上、不可能だったのだ。そ
ういうわけで中国は、ソビエト式の民営化を選ばなかった。何しろ、中国の田舎では、私有財
産自体が存在しないのだ。2014年になっても、中国の6億の農民は自分の土地を持ってい
ない。
※中国では半分しか農業革命は進んでいない。片や日本では、高度農業化という第二次農業革命が
進行中。
こうした議論の一部は、2013年に茅于弑が明らかにした。2012年にケイトー研究所
が自由の推進に貢献した人に与える「ミルトン・フリードマン賞」を受賞したときのことだ(
注40)。この時代に穏健な自由市場提唱者とタカ派が交わした論争について、もしアメリカ政
府の当局者が知っていたら、ワシントンでの決定は違っていたかもしれない。
1990年代初め、欧米の経済界の人が知っている中国企業は、「青島ビール」くらいのも
のだった。しかし今日、世界の主要企業のいくつかは中国の国有企業だ。中国石油化工集団公
司(シノペック)、華為銀行、中国電信、中国移動通信、ファーウェイ等々。国有企業を持つ
国は多いが、たいていは、国民の生活に欠かせない産業を税金で支えるのが目的で、自由市場
にまかせておいては十分な資源が行き渡らないと予測されるからだ。
中国は韓国の財閥と日本の複合企業のモデルに基づいて、数段階先の概念を取り入れた,中
国の国有企業モデルでは、共産党は国有企業を作ってその戦略的目的を明確にする。その目的
の大筋は、四つの近代化のうち一つ以上を進めることにより、国の利益を増やすところにある。
そして主要な国有企業の経営者も共産党の中央委員会が決める。多くは国の諜報機関か軍の出
身者で、そのつながりは国有企業が稼働しはじめた後も続く。さらに、中国国営銀行は、民間
企業より国有企業を重視する。巨額の資本を注入し、これらのナショナル・チャンピオンは外
国の技術の導入と、原料の確保を後押しされる。国有企業への助成金は、非効率的で不正な行
為を助長する恐れもあるが、欧米の企業に対する非常に大きな競争力を国有企業に与えること
になる(注41)。実のところ、フォーチュン・グローバル500のリストに載った100社近
い中国企業のほぼすべてが国有企業である。
驚くべきことに、通常は民間企業を重視する世界銀行と国際通貨基金が、中国政府の利益を
守るには国有企業が必要だ、という中国の主張を認めた。これは中国の当初の約束に反するも
のだったが、実のところ世界銀行は1993年に機密文書で、もし国有企業が改善できず、利
益をあげられなければ、中国の他の改革は失敗するだろうと警告さえしている(注42)。世界
銀 行が掲げたコンセプトは国有企業を「企業らしくすること」であり、具体的には、国による
管理を緩め、一部の企業は破産または解散させ、小規模であまり利益をあげていない企業を統
合して少数の大規模な企業を作り、利益をあげさせる。こうして10年後に、「ナショナル・
チャンピオン・システムとして知られるようになった仕組みが始動した。
世界銀行は、さらに先へ進むよう中国を促し、中国は従った。世界銀行は自由市場経済のミ
ューチュアル・ファンドのような、ポートフォリオを保有する会社を作ることを勧めた。最も
驚かされるのは、国有企業の株式を売却するための証券取引所の設立を提案したことだ(株式
市場は民間企業のためのものであり、本来、国有企業は無関係だ)。この取り決めは、遠回し
に「部分的民営化」と呼ばれた。これに関しても、中国は世界銀行の青写真に(秘密裏に)従
った。アメリカ、ヨーロッパ、日本は天安門事件の後、中国に制裁を加えたが、世界銀行は密
かに中国を援助していた。再び世界銀行のアドバイスに従って、中国はアメリカ連邦準備制度
に相当するものを設立した(注43)。
2003年より、中国当局者はナショナル・チャンピオンを作る計画について語りはじめた。
それは2010年までに中国の企業50社をフオーチュン・グローバル500のリストに載せよ
うとするもので、彼らはそれを達成した。ナショナル・チャンピオンの候補になったのは、軍
備、発電、エネルギー、情報技術、民間航空、海運業などの企業で、土地とエネルギーの供与、
税制上の優遇、国有銀行からの低金利ローン(返済の必要がないか、ほとんどない)という形
で共産党の援助を受けている(注44)。
今日の中国経済で、国の所有や支配下にあるものが占める部分は非常に大きい。利用可能な
データによると、国有企業やそれらが直接管理する事業体は、中国の農業を除くGDPの40
パーセント以上を占める,間接的に管理する事業体、都市の集団企業体、小規模農村企業(郷
鎮企業=TVE)も含めれば、中国経済に占める割合は50パーセントを超す,自分の国は資
本主義を目指しており、中産階級はじきに民主主義を求めるようになる、と覇権国に信じさせ
たいのであれば、これは不都合な事実だ。
さらに中国では、五大銀行が中国人のすべての預金の50パーセントを保持している。人口
が13億千万人もいるのに、国と地方が所有する銀行が29行、特別行政区の銀行が34行、
私有銀行が2行しかない(注43)。アメリカに私有銀行が9000行もあるのとは対照的だ(
注46)。2013年末、中国の中央銀行の外貨準備高は3兆6600億ドルに達した(注47)。
この莫大な金額は、中国のGDP全体のおよそ40パ-セントに相当する(注48)。
もっとも、国有企業が長期的に好業績を出せるかどうかは疑問だ(注49)。国有企業は市場
の需要ではなく、政治上の要請に応えがちだということを、ほとんどのエコノミストが認めて
いる。国有企業は製品やサーピスヘの需要の変化を追うのが難しく、私有のライバル会社に比
べて非能率的になりがちで、コネによる人事の害も受けやすい。その企業統治システムは概し
て不透明である。
国による干渉も、国有企業の経営を非能率的にする。したがって欧米の支援がなければ国有
企業は弱体化し、いずれは民同企業に負けていただろう(注50)。現在、国有企業が繁栄して
いるのは、欧米の支援があれぱこそだ。ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなど
の企業は、中国の国有企業を再編成し、幹部社員に国際金融や経理上の必要を満たす方法を教
えた(注51)。その結果、国有企業はロンドンからニューヨークまで諸外国の証券取引で株式
を新規公開(プライマリー上場)し、上海、深周、香港ではセカンダリー上場した。
傑出した国有企業のいくつかは、欧米の投資銀行が作ったものだ。たとえば中国移動通信は、
経営がうまくいっていない地方の電気通信事業体をまとめて外国のファンドマネジャーに売却
したところから生まれた。1997年のニューヨーク証券取引所と香港証券取引所での重複上
場によって45億ドル以上集め(注52)、同社は現在、世界最大の携帯電話会社になっている。
その巨大さゆえに、アップルが同社を通じて・iPhoneを販売すると発表した日に、アップルの
株価は4パーセント近く上昇した(注53)。
※これらの流れは、英米流金融資本主義(=似非グローバル化)であり、米国を主体に、財政力や
軍事力の圧力が加わったもの。本物のグローバル化の流れでない。「欧州危機」「分断される米
国」のように「搾取・格差・貧困」が世界で蔓延している。
欧米人は、中国人起業家や投資家の教育においても、重要な役割を果たした。たとえば中国
は、アメリカやヨーロッパのビジネススクールの指導者を招いて、独自のMBAプログラムを
開発した。ロンドン・ピジネススクールやロッテルダム・スクール・オブ・マネジメントの元
学長は、現在、上海に設立されたビジネススクール、中欧国際工商学院で働き、デュークやハ
ーバードなどのビジネススクールは中国で財界人の教育を請け負っている(注54)。スタンフ
ォードやウォートンのMBAを持つ中国人は、アメリカのベンチャー・キャピタルや投資会社
で経験を積み、投資の機会を見つけるために中国へ送られる,
中国の指導者たちは、欧米が国有企業に批判的なのを知っていても、いくつかの理由から国
有企業に依存しつづけるだろう。第一に、これまでのところ国有企業は成功している。中国は
わずか一世代で、無力な国から経済大国に昇りつめた。第二に、中国の国有企業は、共産党に
よる政治支配に、意味と正当性をもたらしている。「中国的な社会主義」という旗のもと、共
産党は国民を結束させることができる。第三に、中国の指導者たちは、中国の経済と安全保障
に必要な主要産業を正しい方向へ向かわせるには、政府が完全かほぼ完全に支配し、国家が主
役でありつづけるには、財産の大半を国が所有する必要がある、と考えている。第四に、国有
企業は任命権や合法性を党にもたらし、党による国の支配を維持するための重要なメカニズム
になっている。
第五に、国有企業は中国発のイノベーションを促し、外国への技術依存度を下げるというも
う一つの国家目標を後押しする。そして最後に、中国の指導者たちは、ソ連崩壊後にロシアが
経験した最悪の事態、つまり国の産業を政治家の取り巻き連中に二束三文で叩き売り、結果と
して、少数の途方もなく裕福な支配者が、国際的な競争力のない硬化した企業を経営するよう
になったという事態をどうにか避けたい、と思っているはずだ。
中国の最新の5ヵ年計画には、戦略上重要な新しい先端産業のためのナショナル・チャンピ
オン戦略が含まれている(注55)。中国は、国内で開発された高度な技術を国際市場で売りは
じめた。これは国有企業の経済的成功と言うだけではすまない不安をかきたてた。たとえば世
界最大の電気通信会社の一つ、華為技術(ファーウェイ)は、中国の諜報機関と密接に関わっ
ている恐れがある(注56)。今後、アメリカの企業、政府関係機関、軍部を含む世界規模の通
信が、長期間にわたってファーウェイのネットワークを使うようになれば予想される脅威は明
らかだ。中国のスパイが通信網を監視したり、リルートしたりするのではないか? 彼らはこ
のネットワークを使って情報を盗むことができるのか?将来、危機的な状況になった時、中国
は重要な国際ネットワークを「キルポタン」で遮断するのではないか(注57)? このような
懸念から、とりわけアメリカとイギリスの政府は、国内でのファーウェイの機器の販売を阻止
した。
Time Dec 10, 2013
また中国は、国有企業を発展させるために、資本を海外にも展開した。中国人は、ビジネス
の国際化を表現する言葉まで作った。「走出去」戦略である。さらに中国は世界の準備通貨で
ある米ドルに取って代わるために、人民元の国際化を進めようとしている(注58)。「走出去」
戦略の一端として、中国企業はいわゆる「海外の底値株狙い」に着手し、外国企業を安値で買
収しはじめた(注59)。国有銀行から有り余るほど資金が提供され、また、利益を回収する必
要もないので、向かうところ敵なしだ。
Go Global
中国の経済政策の中心には、国家発展改革委員会(NDRC)という政府機関がある,ND
RCは、戦略的産業の国策、主要な投資、国有企業の合併・買収を決めたり承認したりする。
ウイスキーからガソリンまで、すべての消費財の価格を決める権限も持っている。すなわち中
国の経済戦略の中枢と考えていい(注59)。国際市場への拡大を図る中国だがルールに従うつ
もりなどないということを、西側のライバルは覚悟しておいたほうがいい。最近のアメリカ政
府の報告によると、中国は自国の産業を守るために多くの非関税障壁を築きつづけている。こ
れらの障壁には「国営貿易、国内産業への過剰な補助金、過剰備蓄、差別的税金、反ダンピン
グ関税の乱用、アメリカ産遺伝子組み換え作物の承認の遅延」などがある(注61)。これらは
すべてWTO協定に違反している。
IMFにしろ世界銀行にしろ背景の力の存在の「色」が投影される。また、国際ルールにもバイア
スを帯びる。例えば、「米国産遺伝子組み換え作物」の環境紊乱リスクが定まらない。しかし、強
欲な? 農薬・製薬資本の政治的バイアス=「色」)に対抗する中国側の抵抗はわたし(たち)の眼
からは正当のように映るが、米国式グローバル化も、中国式グローバル化にも、容易に「その侵略
性」を見つけることができるだろう。
この項つづく