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帝國のロングマーチ 22

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      現在までの日本国のように、片道の民主主義(言い換えれば非民
      主主義)の国では、日本が滅びるか、滅びないかを決定するのは、
      ほとんど全面的に政治家とくに政治的な国家(政府)の首脳で決
      まるもので、国民が関与するべき場所も責もない。

              「吉本隆明TVを読む」朝日新聞 2000.11.19

 

                                         
                                               Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 



● 腹部大動脈瘤解明に光 近畿大学の財満信宏准教授ら

8日、近畿大学の財満信宏准教授らのグループは、司馬遼太郎やアインシュタインの死因となった
腹部大動脈瘤――日本人の死因の10位前後に位置する疾患。大動脈瘤の8割以上は腹部にできる。
大動脈瘤は、腹部大動脈が進行的に拡張することを主病変とする疾患。拡張した大動脈は瘤状とな
るが、自覚症状がほとんど無いため、病院などで偶然発見されることが多く、破裂すると致命的と
なるため、一定の大きさに達した大動脈瘤は手術が必要――が破裂する原因を解明。それによると
(1)血管壁に脂肪細胞が異常出現することで腹部大動脈瘤破裂のリスクが増加、(2)EPA(エ
イコサペンタエン酸)高含有魚油の投与で、血管壁の脂肪細胞の数と肥大化が抑制され、腹部大動
脈瘤破裂のリスクが低下することを発見(3)未だに開発されていない瘤の破裂を予防する薬や機
能性食品などの開発につながるとみられている。

大動脈瘤破裂及び解離は、なぜ破裂に至るかというメカニズムの詳細は不明であった。腹部大動脈
瘤治療の大きな問題点は、破裂を予防する薬剤や、拡大を抑制する薬剤が一つも開発されていない
点にあり、腹部大動脈瘤が見つかった場合、現段階ではステントグラフト内挿術や人工血管置換術
などの外科手術により破裂を未然に予防するしか手がない。外科手術にはリスクが伴い、腹部大動
脈瘤の破裂を予防する薬物等の開発が望まれている。

腹部大動脈瘤。恐ろしい疾病である。早期の予防方法の開発が望まれる。

  
論文名:Adipocyte in vascular wall can induce the rupture of abdominal aortic aneurysm(血管壁の脂肪細胞
が腹部大動脈瘤の破裂を誘導する):doi:10.1038/srep31268

 

   

【帝國のロングマーチ 22】         

        

● 折々の読書  『China 2049』41       

                                     秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」  

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・
ピルズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の
知られざる秘密戦略「1000年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。
日本に関する言及も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日
常生活を見通すうえで、職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。

 【目次】   

  序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか 森本敏(拓殖大学特任教授・
     元防衛大臣)     

 

   第8章 資本主義者の欺瞞     

                          順手牽羊――手に順いて羊を牽く

                             『兵法三十六計』第十二計  

  ルールを無視すれば、儲けは多くなる。ある研究は、中国が四つの基幹産業(鉄鋼、自動車
 部品、ガラス製造、製紙)で世界市場のシェアを迅速に拡大できたのは、補助余を増やし、税
 を控除し、土地を安く提供し、技術援助した結果だとしている。本来、これらの四つの産業に
 おいて、労働力も含め、中国に優位性はなかった(注62)。また、伝統的な自由市場経済理論
 では、そのような国の支援は、歪曲的で、非能率的で、費用がかかると見なされていた。しか
 し結果は正反対だった。中国の製紙生産は、10年でアメリカを抜いて世界最大になり、ガラ
 ス製造では、世界の生産量の30パーセント以上を占め、輸出量が国内需要を上回った。鉄鋼
 について言えば、2000年の時点では純輸入国だったが、現在、世界市場の40パーセント
 を占める世界一の製造国・輸出国になった,自動車部品でも、2001年以降、世界トップク
 ラスの製造国・輸出国の仲間入りをした。これらの快挙は、すべての部門で経費の10パーセ
 ント未満という安い労働力のせいでもなければ、安く卸えている通貨のせいでもない。言うま
 でもなく中国は、このような目覚ましい市場占有率を宣伝することもなければ、公に説明する
 こともなかった。



  また中国は、外国製品のまがい物作りにも大々的に取り組んでいる。具体的には、認可され
 ていない製造や流通、製品やデザインや主要技術の無断使用などである。2002年にABC
 ニュースは、中国の模造による外国企業の損失は、年間200億ドルにのぼると報じた(注63)。
 それよりはるかに多いと見る人もいる(注64)。北京のアメリカ大使館の元公使、トマス・ボ
 ームは、全米製造業者協会に向けての最近のスビーチで、中国のGDPの10~30パーセン
 トが 海賊版や模造品の生産によるものと断言した(注65)。他の概算では、欧米製品の海賊
 版や摸 造品は、現在、中国国内の小売販売額の15~20パーセントを占めているとされる。
 一部の市場(音楽CD市場やビデオレンタルなど)では、そのシェアは90パーセントに近づい
 ている。最近のアメリカの国家対情報局の報告は、中国を「世界で最もアクティブで図太い経
 済スパイ」と評している(注66)。中国はデリケートな経済情報(企業秘密、特許取得済みの
 プロセス、事業計画、最先端技術、輸出規制商品等々)を集めて国内産業を支援し、情報収集
 には、従来の方法とサイバーベースの両方を用いている。後者に関して、中国のやり方は世界
 一、荒っぽいようだ。

注64.例えばエコノミストのジェームズ・キングは、中国の模造によるアメリカ、ヨーロッバ、
   日参の金貨の損気は、2004年だけで6000億ドルにのぼると推定。



  2000年以降、ネット利用の高まりに応じて、サイバーベースの諜報活動は、収集量も巧
 妙さも急激に増している。中国人はサイバーテクノロジーを巧みに活用し、企業、政府、学術
 機関、研究機関などから機密情報を盗みとり、国内産業を支援している。発覚を逃れるために、
 悪質なソフトウェア、サイバーツール・シェアリング、プロキシサーバーを使ってのハッキン
 グ、第三国を経由したサイバーオペレーションのルーティングといった、急速に進化した手段
 を用いる。

  アメリカの企業とサイバーセキュリティーの専門家は、中国国内からのネットワーク侵入の
 猛攻を報告した。残念ながら、その大半について、アメリカの情報機関は責任のある人物を特
 定できなかった(注67)。これらの攻撃による損害の概算額はあまりあてにならないが、損害
 の規模は、いくらか把握することができる。爆撃機やスペースシャトルなどを扱うアメリカの
 企業で働いていたエンジニアの鍾東蕃は、2010年に、中国の航空産業に機密情報を漏洩し
 ていたとして有罪判決を受けた。逮捕されたとき、自宅には25万ページに及ぶ機密書類があ
 った。1979年から2006年までの問に鍾が中国当局に伝えた情報量は計り知れない。し
 かし、その25万ページ分のデータは、IドルもしないCD1枚に保存できた(注68),

  2005年、ふたりの亡命者が中国のマラソン戦略の経済的側面の起源を教えてくれた。ミ
 スター・ホワイトとミズ・グリーンとは追って、彼らの説明は完全に一致した。中国の戦略の
 多くは自由市場や資本主義の戦略ではなく、財界銀行の北京のスタッフのアイデアと、アメリ
 カ経済の歴史の歪んだ解釈とのハイブリッドだった。発案者たちがfを組んだのは、市場本位
 の経済改革を提唱する人々を追い出し、反自由市場を貫こうとする中国の指導者たちだった。
 彼らはハイグリッドの重商主義戦略を立て、それを30年にわたって隠してきた。ここでも再
 びタカ派が勝った。当時のわたしたちがこの議論に影響を及ぼす見込みはなかった。重ねて言
 うが、誰がタカ派で誰がハト派なのか、わたしたちにはわからなかったからだ。


  

反客為主とは乗っ取りの計略。最初は弱くてもいずれ強者を併呑する、そんな下克上の計略でもあ
る。この計略でイニシアティブを取るためには段階をおって進めなければならない。つまり、まず
客の座を得て、信用を勝ち取り、主の弱点を探し、権力を奪取し、乗っ取り、権力基盤を固めると
いうステップが必要となる。根気のいる計略で隠忍自重し、軽挙妄動を控えなければ成功しない。

   原文

  為人驅使者為奴,為人尊處者為客,不能立足者為暫客,能立足者為久客,客久而不能主
  事者為賤客,能主事則可漸握機要,而為主矣。故反客為主之局:第一步須爭客位;第二
  步須乘隙;第三步須插足;第四足須握機;第五步乃成功。為主,則並人之軍矣;此漸進之
  陰謀也。如李淵書尊李密,密卒以敗;漢高視勢未敵項羽之先,卑事項羽,使其見信,而漸
  以侵其勢,至垓下一役,一舉亡之。 


    第9章 2049年の中国の世界秩序

 

 

                          反客為主――反って客が主に為る

                             『兵法三十六計』第三十計

  20年以上にわたって、アメリカは世界で唯一の超大国だった。アメリカの軍隊に並ぶもの
 はなく、経済も今のところはそうである。世界はアメリカ映画を鑑賞し、アメリカのポップス
 を歌い、アメリカの炭酸飲料を飲み、アメリカのチェーン・レストランで食事をし、アメリカ
 の大学で学び、アメリカの大統領選を見守る。世界の70億以上の人々の大半にとって、アメ
 リカの文化、軍、経済が影響しない生活は想像できない。同様に、ほとんどのアメリカ人にと
 って、自国が覇権国でない世界などまったく想像できない。



  だが、そんな世界を想像しはじめる時が来た。2050年までに、中国経済はアメリカ経済
 よりはるかに大きくなり(いくつかの予測によれば、およそ3倍になる(注1)。世界は中国
 をリーダーとする単極世界になるかもしれない。別のシナリオは、中国とアメリカを超大国と
 する二極世界予測し(注2)、さらに別のシナリオは、中国、インド、アメリカの三極世界を
 予測する(注3)。

  これらのシナリオに共通するのは、経済では中国が世界を支配するということだ。米ドルは
 もはや有要通貨ではなく、ドル、ユーロ、人民元からなる複数通貨制度に取って代わられるだ
 ろう(注4)。中国は軍事費も、アメリカより多く費やせるようになる。これまで何十年にも
 わたってアメリカがしてきたように、中国は近隣諸国や同盟国に強い影響を及ぼすようになる。
 そして少なくともある程度、自らのイメージ通りの財界を作ることができるだろう, 

   https://youtu.be/7zlXqQ7yZKs

  それはどんな世界だろう。抑ぼされた人々が独裁政治から逃れるのは簡単なのか、難しいの
 か。わたしたちが呼吸する空気はきれいなのか、有毒なのか。取引を保護し、自由を促進する
 機関は強いのか、弱いのか。
  もちろん、このような疑問のいくつかは答えようがない。だが一つ確かなことがある。それ
 は、もし中国政府が現在の優先事項を堅持し、同じ戦略を続け、毛沢東が政権をとって以来、
 大切にしてきた価値観に固執するのであれば、中国が形成する世界は、わたしたちが今知って
 いる世界とは大いに異なるものになるということだ。

  2049年に中国が率いる世界は、タカ派が中国の政策を決定するのであれば、より悪くな
 るだろう。もしハト派と真の改革派が、欧米の支援を得てタカ派を凌駕すれば、優勢となった
 中国は、脅威にはならないだろう。中国がタカ派を選ぶか、ハト派を選ぶかに、わたしたちが
 どの程度、関与できるかについては最終章で述べよう。改革派を支えられなかった場合、世界
 は次のような危機にさらされる。

 【危機●】中国の価値観がアメリカの価値観に取って代わる

  アメリカ社会はきわめて個人主義だ。この国の土台は、トマス・ジェファーソンやベンジャ
 ミン・フランクリンのような個人主義者と、大英帝国の一部になることを拒んだ反逆者たちが
 築いた。わたしたちは彼らを賞賛する。権利章典は、すべてのアメリカ人が好きなように話し、
 好きなように祈り、不合理な捜索や押収を受ける恐れのない家に住む権利を保護している。す
 べてのアメリカ人は、自らの人生の道筋を決める権利を不可侵のものとして保証されている。

  だが中国に、アメリカ人が考えるような個人の権利は存在しない,文学者のリディア・リウ
 (劉禾)によると、1860年代にマーティンという名のアメリカ人宣教師が、国際法の教科
 書を初めて中国語に翻訳しているときに、中国語には「right(権利)」に相当する言葉がない
 ことに気づいたそうだ。そこでマーティンは「権(強制力の意)」と「利(利益の意)]を合
 わせて、「権利]という新語を作った。この言葉は今も便われている(注5)。中国共産党が
 築いたのは、集産主義の社会で、1949年以前の文化を引きずっている。中国を広範にわた
 って研究しているふたりの国際ピジネス戦略家が言う。

  「中国では、人間であることは、より大きな人間社会の一部であることなのです(注6)」

  中国の憲法には、言論の自由、結社の自由、宗教の自由について多くのことが書かれている
 が、実際のところ、これらの権利はほとんど保護されていない(注7)。 何十年もの間、中
 国政府は国民の個人的権利を認めていなかった。そして国が強くなるにつれ、国外にいる中国
 人の権利にも干渉しはじめた。ニューヨーク在住の人権活動家、温云超が国連でスピーチを行
 ったあと、彼の携帯電話やEメールやツイッター・アカウントが、中国政府による組織的攻撃
 と思われるハッキングを受けた(注8)。アメリカ議会の公聴会で、シェロッド・ブラウン上
 院議員が温に、中国の他の抗議者のように刑務所に入っていないのはなぜかと尋ねると、彼は
 「中国にいないからです」と答えたそうだ(注9),さらに2009年に中国は、65億80
 00万ドルの予算で「外宣工作」と呼ばれるプロジェクトを開始した(注10)。「海外でのプ
 ロパガンダ」という意味で、外国や外国人に中国を好意的に伝えるネットワークを作るのが目
 的だった。今もそれは続いている。

  外国の人権擁護団体に対する攻撃はよくあることだ(注11)。全米民主主義基金の副総裁、
 ルイザ・グリープが証言したように、中国は日常的に人権擁護団体やNGOのコンピューター
 システムに侵入している(注12)。その狙いは「反対者の間の信頼を揺るがし……コストを
 引き上げ、恐怖を誘発する」ことだ(注13)。それらは「独裁国家が国境を越えて自国民を弾
 圧する注目すべき手法]だとグリーブは結諭づけた(注14)。 

  気になるのは、これらの弾圧戦術が今後も散発的に行使されるだけなのか、それとも、中国
 が力をつけるにつれて、当たり前に使われるようになるのか、ということだ。いったん中国が、
 アメリカとその同盟国に反抗できるほど経済的にも軍事的にも強くなれば、中国当局は気に食
  わないスピーチをした人に、誰彼かまわずサイバー攻撃を仕掛けられるようになる。そうなれ
  ば、中国の外でも、アジアから北米まで、多くの人が攻撃を恐れて発言に注意するようになる
 だろう。

今夜から第9章に移る。中国だけでなく、程度の差はあるが、日本もアジア専制遺制的政治風土に
引きずられていることを再確認。

                                     この項つづく

 

● 競泳男子800mリレー 日本が銅メダル 52年ぶり

日本は7分3秒50の記録で、半世紀ぶりのメダル獲得。意外に思えたが、特にアンカーの松田丈
志選手は天晴れだ。

話は変わる。昨夜、関テレの『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』(第5話)――内藤了によるミ
ステリー小説『猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』シリーズ――を「流し」ではなく通して鑑賞する。
結構面白いし、メインキャストの熱演に感心する。メインテーマは、殺人犯の動機ではなく、その
人物が殺人を行う「契機」(=スイッチ)の解明(あるいは殺人の予防法の開発)にあるというら
しい?犯罪心理学興味があり、以前から余裕があれば少し踏み込んで考えていたので、面白い。



ところで、きょうは親父の月命日。2年前に植えた高野槙(朝鮮槇)が大きくなり、それを切り仏
花としたが、煩悩は消えず。琵琶湖マイナス30センチ、快晴。昼は、家で素麺をいただく。

                                         
                                    
 

 

 


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