自分の生命を愛しても憎んでもいけない。だが生きている限りは生命を
大切にするがよい。長く生きるか短命に終るかは、天に委せるがよい。
ミルトン 「失楽園」
John Milton
Dec. 9, 1608 - Nov. 8, 1674
● 人工光合成における太陽光のエネルギー変換反応を高効率化する新しい材料
将来に向けた持続可能な地球環境社会を構築していくためには、二酸化炭素などの温室効果ガスを低
減していくことが急務であり、化石燃料に頼らない貯蔵可能なクリーンなエネルギーの創出が望まれ
ている。人工光合成は太陽光と水と二酸化炭素を用い、酸素と水素および有機物などの貯蔵可能なエ
ネルギーを人工的に生成する技術であり、注目を浴びている。
これまで、太陽光と水が反応する明反応の電極は、半導体材料や、比較的大きい粒子状の光励起材料
を密度の低い構造で固めた材料が用いられていましたが、太陽光(可視光波長)の中で利用できる波
長の範囲が狭いことから化学反応に十分な電流量を取り出すことが困難であったが、この方法では、
フレキシブル実装シート上にキャパシタなどの受動素子を形成するための電子セラミックスの成膜法
(ナノパーティクルデポジション(NPD)を改良し、光励起材料の原料粉末をノズルで吹き付ける際、
原料粉末を薄い板状に破砕しながら基板上に積層させる薄膜形成プロセス技術を開発。開発した技術
の特長は以下のとおり。
尚、材料内部の構造解析は国立大学法人東京大学幾原研究室と共同で行っている。
(1)利用可能な太陽光波長域の拡大(左/下図)
光励起材料の原料粉末を、成膜後に原子レベルのひずみを持つ結晶構造となるような組成にすること
で、新技術適用前と比べて太陽光のエネルギーを吸収できる最大波長を490 nmから630 nmへと広げ、
利用可能な光の量を2倍以上に向上させることに成功。
(2)高い電子伝導特性 (右/上図)
形成された薄膜は、ミクロ・マクロな欠陥がないため結晶性が良く、材料中の粒子間の電子伝達特性
に優れた緻密な構造となっている。これにより太陽光で励起された電子を効率的に電極に伝えること
が可能となる。
(3)水との大きな反応表面積を確保するナノサイズの粒子で構成された構造体
薄膜の表面構造は、材料と水との反応表面積が大きく、また、材料結晶中の電子密度の高い結晶面が
膜表面に規則的に形成。その結果、水と光の相互反応を大幅に促進させることに成功(下図)。
今回開発した新技術により、光励起材料をそのまま用いる場合と比べて、太陽光の中で利用可能な光
の量が2倍以上に広がり、さらに、材料と水との反応表面積を50倍以上に拡大することに成功。こ
れにより、電子および酸素の発生効率を百倍以上に向上できることを確認。今後、光励起材料とプロ
セス技術のさらなる改良を進め、明反応の電極の特性向上を図るとともに、暗反応部(ニ酸化炭素還
元反応)・全体システムの技術開発についても取り組み、人工光合成技術の実用化を目指す。
※ 参考特許
・ 特許5491189 固定化装置 谷岡 明彦 他 2014年05月14日
【スーパーエンジニアリングプラスチック】
● 単層CNT添加で世界最高水準の耐熱性と機械強度を達成
単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)らの研究グループは、スーパーエンジニアリングプラス
チックの一種であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)にスーパーグロース法で作製した単層カー
ボンナノチューブ(SGCNT)を加えることで、世界最高水準の耐熱性(4500℃)と機械強度(曲
げ強度1.8倍)を同時に達成し、かつ射出成形可能な新しいスーパーエンジニアリングプラスチック
「PEEK/SGCNT複合材料」を開発に成功したと公表(上写真)。
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は溶融成形可能なスーパーエンジニアリングプラスチックと
しては最も高い耐熱性を有し、さらに耐疲労性、耐環境性、難燃性および成形性に優れ、金属に比べ
て軽量であるため、電気・電子分野、自動車分野および航空宇宙分野において広く用いられている樹
脂です。しかし、適用範囲の拡大のためには、さらなる高機能化、特に耐熱性の向上が求められてい
た。今回、技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構などの研究グループ、PEEKにスーパーグロ
ース法で作製した単層カーボンナノチューブを添加、世界最高水準の耐熱性(450℃で2時間でも
安定)、PEEK単体に比べ引張強度(約1.2倍)、曲げ強度(約1.8倍)の機械強度を併せ持つスー
パーエンジニアリングプラスチック「PEEK/SGCNT複合材料」を開発。この材料はPEEKと同様に射
出成形により様々な形態を簡便に作り出すことも可能。これまで軽金属材料などを使用せざるを得な
かった種々の用途に対してPEEK/SGCNT複合材料が適用でき、特に軽量化が求められる自動車部材、
航空・宇宙産業用部材などへの適用が想定されている。この開発の特徴は以下の通り。
(1)樹脂へのSGCNT高分散化
CNTは、これまでその電気伝導性、熱伝導性、機械特性に注目した材料開発が進められていたが、近
年、CNTの添加による高分子材料の耐熱性向上効果が注目されている。特にSGCNTはCNTの中でも添
加による複合材料の耐熱性向上効果が高いことが分かっている。この耐熱性向上効果の発現にSGCNT
をできるだけ均一に、かつ一本一本孤立に近い状態で高分子材料中に分散させる必要がある。これま
でCNTの複合材料研究では有機溶媒にCNTを分散し、これに高分子材料を溶解させ、有機溶媒を除去
することにより複合材料を得ていたが、溶解する有機溶媒のないPEEKに対しては、新しい作製手法を
開発する必要があった。今回、量産化可能で、SGCNTをPEEK中に連続的に解繊・分散する超高分散
技術を開発成果につながった。
(2)耐熱性
樹脂の耐熱性の指標として、荷重たわみ温度※6と連続使用温度※7の二つがよく知られていた。PEEK
の荷重たわみ温度は150℃、ガラス繊維や炭素繊維を添加することにより300℃まで大きく向上
させることができる一方で、連続使用温度は240℃程度であり、ガラス繊維や炭素繊維の添加で向
上させることはできないことが課題となっていた。これを荷重たわみ温度の上限値300℃まで向上させ
ることができれば、アルミニウム材料のうち、300℃以下で使用され、より軽量化が求められてい
る用途でのアルミニウムなどの代替材料となると見込まれている。
連続使用温度を向上させるためには、PEEKの熱分解を抑制する必要がありますが、熱に対して安定し
ており分散性に優れたSGCNTをPEEKに超高分散することで、PEEK/SGCNT複合材料では連続使用温
度をPEEKより向上させることに成功。下図は、PEEKもしくはPEEK/SGCNT複合材料を一定温度下
で2時間保持した際の重量変化率を示しています。450℃で2時間保持した場合、PEEK単体では重
量変化率が-18%だったのに対し、PEEK/SGCNT複合材料ではSGCNTの添加量を1wt%から5wt
%まで増やすにつれ重量変化率は小さくなっていき、5wt%では、重量変化率は -0.5%まで低減
できました。重量変化はPEEKが熱分解し、発生した低分子成分の気化により生じるので、この重量変
化率の低減は、SGCNTがPEEKの熱分解を抑制したことを意味しています。
また、下図に熱処理前と熱処理後のPEEKおよびPEEK/SGCNT複合材料の状態を示す。図中赤枠は試
料が連続使用温度以上に達し、溶融や変形が生じたことを意味し、一方SGCNTの添加量が2wt%およ
び5wt%のPEEK/SGCNT複合材料は、450℃においても試料に溶融や変形が生じず(図中青枠)、
PEEK単体に比べ連続使用温度が向上しています。
(3)機械特性
SGCNTは他のCNTと同様に高い機械特性を有しているので、PEEK/SGCNT複合材料ではPEEK単体に
比べ引張強度と曲げ強度を向上させることができ、SGCNTを5wt%添加した場合、引張強度で約1.2
倍、曲げ強度で約1.8倍の向上が見られました。このような機械強度は、SGCNTのPEEK中での分散
性や、成形条件を最適化することでさらなる向上が見込まれている。
(4)成形性
PEEK/SGCNT複合材料は、成形の条件は異なりますが、通常のPEEKと同様の形状に射出成形を行う
ことが可能です。金属材料や高耐熱性の熱硬化性樹脂はダイカスト法※8やプレス成形などによって成
形を行うことから、成形コストがかかり、また成形形状に制約が生じます。しかしながら、射出成形
可能なPEEK/SGCNT複合材料は、連続的に、かつ安価に成形を行うことができる。
スーパーグロース法
従来の一般的な研ぎ器では波刃の頂点(凸)部しか研げず、凹部は全く研げません。そのまま研いでい
くと波形状が崩れてしまい、切り刃の性能を損ねてしまう。貝印の独自の独立サスペンション構造は
刃線に沿って砥石ユニットが可動するために、刃線を崩すことなくタッチアップする。これは便利。
おすすめだ。