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究極のZW革命

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                 人祅(じんよう)はすなわち畏るべし   / 「天論」


         
      ※ 祅とは禍事(わざわい)のこと。

        自然は自然として認識し、その法則を人間のために活用せよ。人間には
        その力がある。天に頼るな、天をうらむな、人事をつくして天命を制せよ。

 

                                                         

                                                                     荀子
                                 B.C. 313 ーB.C..238  

 

 Dec. 24, 2016

【量子ドット工学講座29:太陽熱光起電力発電】

● フォトニック構造で波長変換

24日、京都大学と大阪ガスは熱を特定の波長の光に変換できる技術を開発したことを公表。太陽電
池が効率よく発電できる波長の光にも変換でき太陽光発電の発電効率が高まる。12年に熱輻射を中
赤外線領域の単一波長に制御することに成功し、14年には熱輻射の高速変調に成功している。今回
の共同研究では、シリコン半導体でナノメートルレベルのフォトニック構造を形成することで、高温
にしたときに太陽電池が効率よく発電できる波長の光だけを放出する熱輻射光源を開発。太陽光を集
光し、この光源を加熱した場合、集めた光のすべてが太陽電池にとって有効に利用できる光に変換さ
れて放出される。これにより、その光を太陽電池で受けて発電すると、40%以上という高い効率が
期待される。

 Jul. 9, 2012

 

このように、熱光波長変換方式には、無機/ハイブリット蛍光体を介し紫外線なのような短波長を長
波長に波長シフト(変換)させる(低いエネルギーを高いエネルギーの光に変換するフォトン・アッ
プコンバージョン)方法があるが、この情報は太陽光などの熱輻射(赤外線などの長波長光)をフォ
トニックナノ構造を介し熱光起電させる方法である。

同大学の研究グループは、上図のように12年に極めて広いスペクトルをもつ熱輻射――太陽光スペ
クトルは、約5800Kの黒体からの熱輻射スペクトルに近く、紫外から赤外に至る極めて広い波長
スペクトルをもち、この広いスペクトルの一部の波長成分のみを利用し、その他の成分は無駄に捨て
ている。太陽電池がこれを吸収し電力に変換できない波長成分が多く、光電変換効率は10~20%
程度に留まっている。エネルギー損失がなく、極めて狭いスペクトルへと変換/圧縮することで発電
効率を高効率化(400%以上)につながる。太陽光にとどまらず地熱等などを熱光発電、熱の出な
い高効率ランプ、各種分析用高効率赤外光源などに応用展開できる。

この研究で、外部から投入した電力を極めて狭い輻射スペクトル(黒体輻射の1/30)に集中可能
であることを示し、熱輻射スペクトルの制御による熱エネルギーの有効利用を実証することに成功し
している。上図に示すように、電子の状態の制御のために「量子井戸」と呼ばれる構造を導入し、電
子遷移の波長が連続的ではなく離散化させた上で、さらに「フォトニック結晶」と呼ばれる周期的な
屈折率分布をもつ人為的な光の結晶構造を導入、離散化した電子遷移波長のみで、光が強い共振作用
を起こし、限定された波長域のみで、電子と光の強い相互作用が起こる構造を考案する。

具体的な量子井戸材料としては、AlGaAs/GaAsを用い、離散化された電子遷移の波長を10マイクロ
メートル(ミクロン)程度とし、また、この波長域で強い共振作用を得るため、量子井戸構造に直接
フォトニック結晶構造を形成、その周期は、6.5ナノメートルに設定し、この人工物質に外部から熱
エネルギーを与える電線を設け、物質に通電しジュール加熱の効果で熱エネルギーを与え、与えた熱
エネルギーが熱対流などで失われないように、真空中に保持、電流注入用の電線に電線そのものを介
した熱伝導によるエネルギー損失を防ぐ熱伝導率の低いマンガニン線を用いている。


Published online08 July 2012

上図の技術報告以上のように、これまで難しいと考えられてきた熱輻射スペクトルを狭帯域化して、
その帯域に外部から注入されたエネルギーを効率よく集中させることに初めて成功する。この実験で
は、熱輻射の波長域として10マイクロメートルと長い波長で実験、GaN/AlGaN量子井戸系等へと
展開させ、より短波長(1マイクロメートル未満)に挑戦し、太陽光を一旦、熱輻射制御の人工物質
に照射・蓄積し、狭い波長域の光のみを効率良く放出させ、太陽電池で受光可能な波長域の輻射エネ
ルギーを大幅増大させ、高効率な光電変換(40%超)をめざす。 

  Jul. 23, 2014

14年7月、同研究グループは上図のように、物体からの熱輻射の超高速制御――加熱された物体か
らの熱輻射をオン・オフするには、物体自体を温めたり冷やしたりする必要があり、そのオン・オフ
に相当な時間(数秒~1/100 秒程度、周波数にすると 1~ 100Hz)がかかる。物体の温度を上昇・低
下させることなく、物体と光の相互作用そのものを電気的に変化させることで熱輻射を超高速に制御
する全く新しい方法を見出し、従来と比較し、6千倍以上の高速度(周波数にして 600kHz)で物体か
ら生じる熱輻射のオン・オフの切り替え――に世界で初めて成功する。

この実験は、物体内の電子の物体から熱輻射が生じる過程をミクロな視点から考え、物体の温度を上
昇させると動きが活発 になり→光(電磁波)を放出→電子から発せられた光は、物質内部で再び 電
子と相互作用し吸収される。このような光の放出と吸収は物質内で繰り返し行われ、やがて熱的に安
定した状態に落ちつき、その結果、物体からその温度に応じたパワーの光(熱輻射)が放出される過
程で、物体の温度を変化させなくても、物体内部で生じる電子と光の相互作用の大きさを直接制御で
きれば、熱輻射パワーを変化――物体内で光を放出・吸収する電子そのものの数を高速に変化すれば、
それに伴 い物体から生じる熱輻射パワーも高速に変化することに着目。



 Published online27 July 2014

このように、上記の考えに基づき、熱輻射光源の構造を上図(a)のごとく、光源を、

①2種類の半導体の薄い層を交互に積層した構造(量子井戸)
② ①の層を挟む p 型層と n 型層(PN ダイオード)
③ ①②の層に空気孔を周期的に導入した人工的な光ナノ構造(フォトニック結晶)

の3つの構造の組み合わせ構成。上図(a):電圧により輻射パワーを変化させることができる熱輻
射光源の模式図 (b):量子井戸内に電子が存在する場合(左)と存在しない場合(右)の熱輻射発
生の模式図。量子井戸には、離散化された2つのエネルギー状態が存在し、電子は加熱されるとこの
2つのエネルギー状態間の遷移を繰り返す。(c)PN ダイオードに電圧を印加した際の量子井戸内の
電子密度の変化。電圧を印加すると、量子井戸に存在する電子数が減少する。

この光源を加熱すると、量子井戸内の電子は離散化された2つのエネルギー状態間の遷移を繰り返し、
2状態のエネルギー差で決まる波長を中心に赤外光を放出・吸収(図 (b)左)。このとき発生した光
は、③のフォトニック結晶構造内で強く共鳴し、また電子と相互作用し、最終的に光源の外部に熱輻
射として放射。しかし、量子井戸から電子を追い出すことが出来れば、加熱しても量子井戸から赤外
光が生成しない(図 (b)右)。この2つの状態(図1(b)の左右)を高速に切り替える仕組みが、②の
PN ダイオードであり、ダイオードに電圧を印加しない状態では、量子井戸内に電子が存在して(図
(c)左)、強い熱輻射が発生するが、n 型層が正となるような電圧を印加すると、量子井戸内の電子が
量子井戸の外へと移動するため(図 (c)右])、熱輻射強度が大きく減少する。

このように、光源の顕微鏡写真と百℃に加熱した際に生じた赤外線パワーの測定結果から、ダイオー
ドに電圧を印加しない場合、フォトニック結晶を作製した領域から周囲よりも強い熱輻射が生じるが、
電圧10Vを印加すると、その熱輻射パワーが減少していることが、また、光源の温度を変化させな
くても、電子系と光の相互作用の大きさを直接制御により熱輻射オン・オフできることを実証してい
る。この成果を踏まえ、同研究グループは、熱輻射パワーの変化速度が従来の 6,000 倍、すなわち、
約 1 MHz に達し、量子井戸材料や電極構造の工夫により変調速度をさらに 10~100 倍に高速化する
ことを目指す。



そして、今月27日、同研究グループは以上のことを踏まえ、シリコンという半導体材料を用いてフ
ォトニックナノ構造(円柱型光ナノ共振器)を形成し、高温にしたときに太陽電池が効率よく発電で
きる波長の光だけを放出する熱輻射光源の開発に成功する。太陽光を集光して本光源を加熱した場合、
集められた光エネルギーのすべてが太陽電池にとって有効に利用できる光に変換されて放出され、そ
の光を太陽電池で受けて発電することで40%以上の非常に高い効率が実現する期待が高まる。
尚、詳細は下図をダブクリし成果報告を願参照。

Near-infrared–to–visible highly selective thermal emitters based on an intrinsic semiconductor  Science Advances 23 Dec 2016:

  Jun. 8, 2016

【ZW倶楽部:究極のZW革命】

● 円柱型光ナノ共振器でエネルギーを有効活用

今年一年を振り返ると、「再生可能エネルギー百%時代」をテーマ設定したことが夢でなく実現可能
であったことを確信できたと言えるだろう。それを受け、「RE100倶楽部」「ZW倶楽部」をこ
のブログのサブカテゴリーに設定したことも正しいという確信を抱かせる、今夜の京都大学の研究グ
ループの成果報告だが、これに先立つ、今年6月2日、ハーバード大学工学応用科学のジョンA.ポー
ルソンスクールの研究グループは、世界ではじめて全可視スペクトル範囲内で高効率で動作する平面
レンズ(金属化合物半導体系円形型光ナノ共振器:下図参照)での実証実験の成功がある(『超薄膜
レンズの衝撃』2016.06.07)。しかし、これらの研究成果は突然降って湧いたものではなく、進取な
着想と地道な努力の積み重ねの結果としてある。そして、ありきたりだが「継続は力なり」であることを再確認
させるものでもある。もうこの流れは誰にも止められない。
Jun. 10, 2016

  ● 今夜の二枚

”As nations and as people, we cannot choose the history we inherit.
 But we can choose what lessons to draw from it.”…

                 President Barack Obama December 27th, 2016.

 

真珠湾慰霊  欧米メディア「両首脳は詩的で感動的な演説」

 

 


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