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常在戦場そして則天去私

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       邪説を飾り、姦言を文りて、もって天下を梟乱し、矞宇嵬瑣(きつうかいさ)、
       天下をして混然として是非冶(ぜひち)乱の存するところを知らざらしむ。


       ※ 十二人の思想家を斬る:今日、なんと多くのものが、既の乱れに乗じて、
         ことば巧みに邪説を粉飾し、人心を惑わせていることか。かれらの能弁と
         欺瞞とのために、人ひとは頭が混乱して、是非善悪の見わけがつかなくな
         っている。

       酒食声色の中にては、𥈞(まん)𥈞然、瞑(めい)瞑然。礼節の中にては、疾
       (しつ)疾然、訾(し)訾然。 


       ※ 当世の学者ども:たまたま、宴会、む楽、女に恵まれようものなら、われ
         を忘れてとびつくけれども、礼節を守るだんになると、窮屈でやりきれな
         いと、不満たらたらだ。

                                                  荀子/ 「非十二子」


       ※ この一篇は、思想家、役人、在野の知識人、学者などを撫切りする。当時
         の知識階級のもつ醜さ、いやらしさが、なまなましく描写される。

                                                                                                                                                   B.C. 313 ーB.C..238   

    北斎 「鶏竹図」

● 十二支の酉に想う

来年は酉年というのでネットサーフしてみる。古来中国では、北東方面からの異民族侵略にさらされた
鬼門の方位に対し南西方位をさす申(さる)、酉(とり)は守護を意味していたとか。それが日本に伝
わり現在の鶏(とり)として解釈され民俗化し、「古事記」にあっては、常世長鳴鳥の寓話として表た
りしているものの、酉は雄鶏(rooster)だとか。そこで鶏に纏わる故事を漢文から拾うと「鶏口となるも
牛後となるなかれ」がヒットする。これは「鶏口牛後」であり、その書き下し文は次のようになる。


 秦人諸侯を恐喝して地を割かんことを求む。洛陽の人蘇秦なるもの有り、秦の恵王に游説して、用
 ゐられず。乃ち往きて燕の文侯に説き、趙と従親せしむ。燕之に資して以て趙に至らしむ。粛侯に
 説きて曰はく、諸侯の卒は、秦に十倍す。力を并せて西に向かはば、秦必ず破れん。大王の為に計
 るに六国従親して以つて秦を擯(しりぞ)くるに若(し)くは莫(な)し。粛侯乃ち之に資して、
 以つて諸侯を約せしむ。蘇秦鄙諺(ひげん)を以つて諸侯に説きて曰はく、寧ろ鶏口と為るとも、
 牛後と為ること無かれと、是に於いて六国従合す。


このように、志高くすれば、所属集団の大きさ(牛)に関わりなく、例え少数でも(鶏)意志を貫き大
成することができると諭しているとでも解釈する。ところで、今年は「沈黙の2016」と心に留め置
く言葉としたが、来年は、「常在戦場の2017」と設定してみた。その心は読者諸氏のご想像お任せ
するとしてても、「未だ人生を語らず」と突っ張ってみても、周りはそのような気分ではないので、そ
れを補完するように晩年の漱石が理想とした「則天去私2017」を裏側に貼り合わせて懐に仕舞う。

 

● 高効率海洋鉱物資源探索ロボ見参!

 Dec. 19, 2016

                                    

 

  Dec. 20, 2016
図2

【RE100倶楽部:ホワイト・バイオマスでバイオプラスチック】

● 海洋性細菌由来酵素でリグニンから機能性化学品を創製

12月20日、海洋研究開発機構の大田ゆかりグループらは、海洋から分離した細菌のもつ特異な酵素
を組み合わせて利用し、木材から分離した天然リグニンから、さまざまなバイオプラスチックにも変換
できる機能性化学品を生産する方法を開発。今回研究グループが天然リグニンから酵素生産することに
初めて成功した化合物は、フェニルプロパノンモノマーと呼ばれる物質。これまでその活用法について
ほとんど検討されていなかった。本研究では、天然リグニンから酵素でこの化合物を生産する手法に加
え、簡便な化学的手法によりバイオプラスチックや医薬・化粧品などの機能性化学品に変換できる。こ
れらの成果は、酵素や微生物などの生体触媒の機能を化学産業に活用する異分野融合新技術(ホワイト
バイオテクノロジー)に新しい展開をもたらす。


尚、この研究成果の副題に「ホワイトバイオテクノロジーの新展開」とあるが、色でバイオテクノロジ
ーの領域を識別いることを今日はじめて知る(下図)。それによると、「白の生物工学」は遺伝子に基
づく産業を意味し、バイオテクノロジーは10色に色別しているのだと。

さて、再生産可能なバイオマスから燃料アルコールや化学品などを作り出す統合的バイオリファイナリ
ー構築が急がれる中、食糧と直接競合しないバイオマスを持続的に利用し、高付加価値物を生産する技
術開発は、炭素循環に大きな負荷をかけない持続的社会の創生にとって極めて重要なテーマ。リグニン
はほとんどの地上植物の主要成分の1つで、その存在量ではセルロースに次いで1番目に位置する。ま
た、リグニンは植物に物理的強度を与えるほか、外敵からの生物学的攻撃を防ぐ難分解性の物質の機能
を果たしている。

同グループは、リグニンやリグニン派生物質の有効利用を目的として、これらを代謝する微生物や酵素
を海洋から探索してきたが、駿河湾に沈んだ木片から分離した海洋性細菌ノボスフィンゴビウム MBES
04株の遺伝子組換え酵素を組み合わせて用いることで、リグニンを模して合成した低分子化合物(リグ
ニンモデル化合物)を酵素切断できることを報告。これまでにスフィンゴモナドと呼ばれるグループの
細菌からリグニン内主要結合の選択的切断反応に関わる酵素が発見されているが、これらの酵素は限ら
れたサイズや形の低分子化合物しか反応できないことが既報されている。さまざまな部分構造を持つ天
然リグニンには作用しないとされてきた。

【研究成果】

上述のMBES04株由来の5つの酵素を組み合わせて利用した一連の反応(下図)を用いて、天然リグニ
ンを原料として特定のフェニルプロパノンモノマーを生産することに成功(この項の巻頭図)。リグニ
ンの内部構造は多様で複雑な構造であるため、リグニンを過激な条件で分解して得られる物質は複雑な
混合物となってしまうことが多く、高機能な化学品原料としての活用が遅れていた。この研究で行った
温和な酵素反応では、針葉樹(スギ)から単離したリグニンを原料とした場合には1種類(下図、GHP:
グアヤシルヒドロキシプロパノン)、広葉樹(ユーカリ)の場合には2種類(下図、GHPとSHP/シリン
ギルヒドロキシプロパノン)のフェニルプロパノンモノマーを選択的に得ることができる。

これらの酵素群が天然リグニン中のどのような分子構造に対してその性能を発揮するのか、そのメカニ
ズム解明のため、反応過程で生じる中間産物を詳細に解析。その結果、炭素数10~30個の天然リグ
ニン部分構造を持つ物質が反応中間産物として検出。これらの酵素群が、従来考えられていたよりも幅
広い分子サイズや形を持つリグニン内部構造を酵素変換反応の対象とすることにより、天然リグニンに
おいても酵素反応を進められることが解明される。


Dec. 16, 2016

図1.リグニンモデル2量体から基幹化合物(GHP、SHP)を生産するための酵素反応カスケード SDR,
ショートチェーンデヒドロゲナーゼ/レダクターゼ; GST, グルタチオン-S-転移酵素; NAD+, 酸化型ニ
コチンアミド; GSH, 還元型グルタチオン; GSSG, 酸化型グルタチオン

続いて、得られたGHPに対してシンプルな有機化学反応を行い、新規なビスフェノール類、ビニルモノ
マーとその重合物、工業原料として有用なアルコール類などのさまざまな誘導体が得られることを示し
ました(上図)。この誘導体は新たなバイオプラスチック、例えば、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポ
リウレタンなどの原料、医薬品や機能性食品原料として活用されると考える。天然リグニンから機能性
化学品を生産するツールとしての酵素の有用性を示すとともに、これまで注目されていなかった化合物
が基幹化合物として、多大な再生可能資源であるリグニンの有効利用に寄与できる可能性を示す。

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DOI: 10.1002/cssc.201601235 :
Enzymatic Specific Production and Chemical Functionalization of Phenylpropanone Platform Monomers



図3.GST3活性の最適pHおよび温度

  (a)GS-GHPgst4および(b)GS-GHPgst5を基質として用いた精製GST3のpH-活性曲線。 使用した緩衝
  液は0.1モルの2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES; pH5.5-7.0)、3- [N-モルホリノ]プロパ
  ンスルホン酸(MOPS; pH7.0〜8.0;□)、TAPS -9.0;▲)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスル
  ホン酸(CHES; pH 9.0-10.0;○)、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS; pH 10.0
   -11.0、▪)。25℃を含む緩衝液中で活性を測定した。これらの値は、GS-GHPgst4についてはpH7で、
  GS-GHPgst5についてはpH8で観察されるGST3の最大活性のパーセンテージとして示され、これは
    100%とみなされる。基質として(c)GS-GHPgst4および(d)GS-GHPgst5を用いた精製GST3の温度 - 活性曲
   線も示されている。値は、GS-GHPgst4については25℃で、GS-GHPgst5については30℃で観察される
  GST3の最大活性の百分率として示され、100%として示される。

 

図4.製粉された木質リグニンからの酵素カスケード反応によるGHP(スキーム1、化合物7)の合成

  (a)C-MWLおよび(b)E-MWLからのGHPおよびSHPのワンポット酵素生産。反応は酵素なしで
  同じ条件下で反応したが、MWLおよび補因子を伴う補因子(SDR 3、SDR 5およびGST 3-5)が示
  されている(上)。(c)同じ条件下で分析された本物のGHP(上)およびSHP(下)。


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この様に、海底堆積物に生息する微生物の多くは、海洋表層や陸域の森林土壌などで、分解されずに残
った有機物に依存し、地球表層の生態系では分解が困難な物質をなんらかの形で効率的に利用する優れ
た代謝機能を有していると見られる。多様な海洋環境に生息する微生物がもつ代謝機能の理解を深め、
その知見を基盤とするバイオマス活用技術開発を進め、持続可能な社会の構築へ向けた新たなイノベー
ションの創出に繋げることができると結んでいる。「海洋性細菌ノボスフィンゴビウム MBES04株の遺
伝子組換え酵素を組み合わせて用いる手法」の事例のごとく、所望の成分に自在に分解でききれば、ブ
ログテーマの「オールバイオマスシステム」が完成するだろう。その実現はそう遠くないと考える。

 

 


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