生産性の本質を測る真の基準は量ではなくて、質である。
ピーター・ドラッガー
Peter Ferdinand Drucker
Nov. 19, 1909 - Nov. 11, 2005
【世界初、電機や機械を使わない自動野菜栽培システム開発】
スターリングエンジンでおなじみの内燃機関、電気モータ等の別の動力源によって空気を圧縮し
てボンベに蓄え、この圧縮空気の噴射を機械的な仕事として取り出す空気エンジンを使い、太陽
(核融合エネルギー)の輻射光で空圧気密器(エアーチャンバー)を加熱・冷却し半永久運動を
繰り返す。これを組み込んだ家庭用野菜栽培キットが世界で初めて販売される。勿論、作動流体
は空気だ。
農業ビジネスを展開するネイチャーダイン(東京都文京区)は、同社が開発を進める動野菜栽培
装置「SoBiC(Solar Pneumatic Bio-Cycle)」の動力システムで、電力などの人工エネルギーを使
うことなく、太陽の熱で自活稼働できる新機構を開発したと発表。SoBiC は太陽熱による空気膨
張と収縮による圧力変化を利用し、ユニット内の天然培地に、水を自然のリズムで自動的に循環
させ、自然の生態系に準じた最適な栽培環境を創り出すことで、手間やコストをかけずに簡単に
健康的な野菜が栽培できる仕組み。同社は16年夏にクラウドファンディングでプロジェクト資
金を調達することに成功。その後、さまざまな事例や実験を重ね、より安定した動作と更なる効
率化を図った量産型のオーガニック・エンジンを完成させた。
太陽熱による微妙な空気圧変化を利用して水の循環動力に変換する機能構造は、その形や動作メ
カニズムが人間の肺や心臓と同じ構造原理になったことから、「有機的構造原理で、無駄なく自
己調整機能をもった発動メカニズム(オーガニック・エンジン)というまったく新しい動力機構
概念」と同社は位置づけている。
この新機構によって、コンパクトでありながら補充水タンクが栽培槽を覆う大容量のウォーター
ウォール型にできたことで、水の補充の手間も大幅に削減するとともに、培地内の遮熱や保温の
効果で、根の部分に対する環境変化の負荷を大幅に軽減でき、異常気象に対する耐性機能や、栽
培期間の延長、栽培地域を広げることにも寄与できる。
● 栽培に必要な資源量を大幅に削減
また、SoBiCの最大の利点は、誰でも扱えて、水の消費が完全循環構造によって無駄がなく、さ
らに人工的にエネルギーを作り出す必要もない点だ。従来の栽培方法では、野菜などの作物を栽
培生産するには大量の水と多くの人工エネルギーが消費され、例えばトマト1個あたり平均する
と約50リットルの水が必要とされている。
また、栽培の過程においても様々な人工動力が利用されており露地栽培でも130キロカロリー
以上、温室栽培の場合は約500キロカロリーの人工エネルギーが使われている。トマト1個の水
分量を約200g、食物カロリーとしては約40キロカロリー程とされているので、資源レベルから考
えるとかなりの無駄や損失がある。
一方でSoBiCでの栽培では、トマト1個当たり3リットル以下の水で足りるという。人工エネルギ
ーもかからず、作物に吸収されなかった余剰肥料などの流出で環境を汚染することもなく、全体
的な資源効率としては劇的に節約・改善するだけでなく、食物カロリーを創出できることになる
(図2)。
現時点のSoBiC専用の野菜カプセルのラインアップとしては、需要の高いトマトなどの果菜類と
呼ばれる野菜を中心として製品開発をしているが、今後茎菜類や穀物、樹木果物にも対応できる
システムを開発する予定。同社ではSoBiCの資源節約性能と機動力特性を活用して、一般家庭用
に留まらず、都市農業など新たなビジネスモデルの創出や物流展開、多品種に対応するための装
置の更なる高度化や製品開発を進めて行く。その上で、基盤技術(特許取得済み)※のライセン
ス化をするなどして、多くのパートナー企業との連携や共同開発、販売協調をするなどし、可能
な限り早く普及展開を図って行く方針。17年4月には、一般家庭向け量産型1号機の販売を開
始する計画。価格は本体ユニット6980円(税別)、専用の野菜カプセルを890円(同)で、生育
保証を付けて販売する予定である。
※ 詳細不詳(現時点):個別(例えば:培養剤)などの特許が考えられるが、特許構成として
は新規性は乏しい。点を面で網羅して販売するネットワーク(あるいはデジタル)農法戦略
(すでに、このブログでも掲載している)を現実展開させるという意味で新規性は大きいと
考える。
● 最新気体エンジン技術
ここで、空気エンジンあるいは熱空気機関の新規技術を俯瞰してみる。なかでも、太陽光発電の
絡みでわたし(たち)「光エンジン」に注目している(「特開2010-180817 光エンジン 国際技
術開発株式会社 2010年08月19日 」)。例えば、集光型太陽光発電の1つの形態として、特殊な
気体を作動流体として、集光した太陽光を内燃機関に照射し爆発膨張させ発電させるものである。
とはいえ、構造が複雑となり、量産化によるコスト削減や堅牢性(信頼性)という課題はこれか
らだ。しかし、腕時計などの精密機器製造技術などの微細化は日本の伝統技術であるから、直に
ブレークさせてしまうだろう。
【特許5721129 圧縮空気熱機関】
従来、慣性エネルギー等の余剰動力を有効利用する方法としてハイブリッドカーなどでは発電機
を用いて電気エネルギーとしてバッテリーを介して行うことが主流であり、回生するためには高
価な発電兼用高出力モーター及び大出力バッテリーが必要であった。また、車両の慣性を回生再
生するために、回生エネルギーを圧縮空気として畜圧して利用することが可能で、出力の大きな
空圧機械をエンジンと併用することはコストが増え装置が大きくなる欠点があった。
また、内燃機関に空気機械と同様の機能を組み合わせて、圧縮空気を利用しての原動機の始動等、
あるいは圧縮空気と共に燃料を燃焼室に供給するなどの総合効率を高める工夫が成される提案あ
るが構造が複雑である。また、内燃機関の排熱を再利用するために一部蒸気機関とする場合、機
構が複雑であり、水を高圧で供給及び蒸気機関車のように水の補給をする必要がある。さらに、
内燃機関からの排熱回収手段としてエリクソンサイクルを利用した熱空気エンジンと内燃機関を
組み合わせた機構の場合、空気機関の組み合わせにより装置が複雑化し、簡単に利用で出来るも
のではない。
【符号の説明】
1 畜圧器 2 圧縮配管 3 吐出配管 4 加熱配管 5 制御バルブ 6 熱交換器 7 バー
ナー 8 エアクリーナー 9 逆止弁 10 排気ポート 11 排気管 12 消音器 13 燃
料噴射ノズル 14 ピストン 15 ピストンロッド 16 シリンダー 17 連接棒 18
クランクシャフト 19 クランク室 20 給気ポート 21 高圧逆止弁 22 燃焼器 23
点火プラグ 24 加圧ポート 25 吸気弁 26 高圧弁 27 排気弁 30 燃料タンク
31 圧縮空気熱機関 32 工場 33 集熱器 34 ヘリオスタットアレイ 35 太陽電池パ
ネル 36 風力発電機 37 発電機 38 変圧器 39 熱配管 40 電気配線 41 送電
線 42 触媒
【要約】
燃機関の圧縮行程にて大気を圧縮して畜圧して回生動力を得ると共に、空気エンジンとして動力
の再生及び内燃機関のクランキング始動を行う共に内燃機関と空気エンジンまたは回生圧縮機と
燃焼室の共用切換制御を可能とした。また、空気エンジンでは排熱または外部熱源より加熱空気
を利用して熱空気エンジンとして作動させ排熱回収を行う。また回生圧縮空気による内燃機関の
過給を行い出力の向上を計り、外燃機関と内燃機関の複合サイクルも可能とし、触媒による希薄
混合気の燃焼も可能としたまた、電力スマートグリッドとしての畜圧による電力のバッファー機
能を持たせた給電の安定化システムとすることで、従来と余り変わらない機構にて低コストで耐
久性に優れ、排熱と回生エネルギーを利用してエネルギー利用効率を向上させる。
● 今夜の一曲
ボロディン: 弦楽四重奏曲 String Quartet No.2, in D
アレクサンドル・ボロディンの《弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調》は、1881年にジトヴォで作曲、
1882年に初演されたとされる。ボロディンが妻に愛を告白した20周年の記念として、エカテリー
ナ・ボロディナ(作曲家夫人)に献呈された。ボロディンの、そして19世紀ロシア帝国を代表す
る室内楽のひとつ。