徳は名に蕩(とう)し、知は争いに出(い)ず
「人間世」(じんかんせい)
※ ガツガツと肩ひじ張り、人よりぬきんでようとしたところでどうなるか。
才子は才で身を械ぼし、策士は策に倒れる。人間世-人間社会に生きて、
危害を避け、天命を全うするには、どうすればよいか。本篇もまた、さま
ざまな事例に即して「無為」を説き、「無用の用」を語る。
※ 雑念を去れ:われわれがなぜ徳を失いなぜ知に頼るようになったか、おま
えはわかっているだろうか。徳を失ったのは名誉心にとらわれたためであ
り、知に頼るようになったのは争いに必要だからだ。名誉心にとらわれ、
知に頼っているかぎり、人間どうしの対立抗争は激しくなるばかりだ。名
誉心も知も、相手を傷つけ自らを滅ぼす凶器にほかならぬ。凶器に依存し
て、いったい何かできるだろう(孔子の弟子が衛国の救済に赴くための暇
乞する場面)。
● ソフトバンク 世界第7番級 350メガワットソーラーインドで稼働
今月11日、SB Energy Holdings Limitedは、インド・アンドラプラデーシュ州に建設した出力350MW
のメガソーラー(大規模太陽光発電所)の営業運転を開始。同州カルヌール地方の「Ghani Sakunala Solar
Park」 で今年3月29日に竣工。世界で7番目に大きな太陽光発電所となる。電力販売契約時の予定
よりも51日早い運転となる。 発電した電力は、プロジェクト落札時に合意した「25年間、4.63
ルピー/kWh(約8.70 円/kWh)」の売電価格で、インドの電力会社であるNTPC Limitedに売電する。
400K/V の送電線に接続し、インドの約70万世帯を超える一般家庭へ供給する。同発電所は、イン
ド中央政府によって09年に施行された太陽光発電施策「JNNSM(Jawaharlal Nehru National Solar Mis-
sion:ジャワハルラル・ネルー・ナショナル・ソーラー・ミッション)」の下で初めての運転となる。
SB Energy は現在、ソフトバンクグループの完全子会社で、独占禁止法に関する規制当局からの承認
をもって、バーティ・エンタープライゼズ・リミティッド、フォックスコン・テクノロジー・グルー
プの3社による合弁会社となる。SB Energy はインド中央政府による太陽光ならびに再エネ普及促進
施策の下で、20ギガワットの再エネ発電所建設を目指す。
【ネオコン倶楽部:世界最高の水酸化物イオン伝導ナノシート】
Apr. 14, 2017
今月15日、物質・材料研究機構の研究グループは、層状複水酸化物ナノシートが10-1 S/cmに達する
非常に高い水酸化物イオン伝導性を示すことを発見したことを公表。この伝導率は従来の水酸化物イ
オン伝導体――クリーンなエネルギー変換技術として注目される燃料電池では、電解質として水素イ
オン伝導体 (例えばNafion®) を用いる方式が主流だが、強酸性環境中での動作となるため、使える
触媒が白金系金属にほぼ限定されるなどの制約がある。伝導イオンとして水素イオンの代わりに水酸
化物イオンを用いる方式も可能です。その場合アルカリ性環境中での動作となるため、Fe, Co, Ni等の
遷移金属元素形触媒が使用でき、コストを大幅に低減できると期待されているものの、既存の水酸化
物イオン伝導体は、水酸化物イオンの伝導率が10-3〜10-2 S/cmと低いことが大きなネック――と比べ
10~100倍という高い値で、無機アニオン伝導体の中でも世界最高であり、✪固体電解質として、❶
アルカリ燃料電池や❷水電解装置等への応用が期待されている。
☑ 研究成果
今回の研究では、層状複水酸化物を化学反応により層1枚にまで剥離し、得られた単層ナノシートの
イオン伝導度を測定しました。その結果、室温付近で10-1 S/cmに達する極めて高い値を示すことを見
出す。❶単層ナノシートの表面が多くの水分を吸着し、❷水酸化物イオンが自由に動くことができ、
❸イオン輸送特性が著しく向上する。また、ナノシートの厚み方向の伝導率に比べ4~5桁も高く、
究極の2次元ナノ構造に由来した機能であると推測している。
【ネオコン倶楽部:デジカメでX線計測 元素分析・イメージング技術】
X線反射率法は、面内の場所的な違いがない、均一な薄膜・多層膜試料の深さ方向の情報(各層の密
度、厚さ、表面と各界面のラフネス)を決定しようとするものであり、深さ方向分布が、試料面内の
どの位置でも同じであり、均一であるという前提のもとで用いられる。その典型的な面積は、X線反
射率法では10mm×15mm程度である。このような広い面積にわたって均一である場合には、全
く問題ないが、産業上での応用においては、もっと微小な試料を評価したい、または、同じ試料のな
かの薄膜・多層膜の構造の違いを画像化したいという容貌があった。
研究チームは、光学顕微鏡などに搭載されることの多い可視光用のCMOS素子を搭載したデジタルカメ
ラをほぼそのまま利用して、蛍光Xによる元素分析やイメージングを行う方法を開発。❶まず、レン
ズとセンサの間に、X線のみを透過させる不透明な薄い窓を取り付け、❷試料から出てくる蛍光X線
が、この窓を通ってCMOS素子に入ると電荷が作りだされます。❸作りだされた電荷の数を瞬時に計
測すると、入ってきたX線のエネルギーを検出。ただ、生じた電荷は複数の画素に別れて記録され、
また、ある時は失われる。そこで、❹電荷の複数画素への分散状態を調べ、本来持っていた電荷量と
入射位置の両方を画像処理により復元する方法を確立。これにより、信頼性の高いX線スペクトルが
安定に取得できる。実際に今回開発した手法で、上図のようなお皿を蛍光X線分析したところ、青の
顔料が塗られている表側からのみコバルトが検出され、裏側からはコバルトは不検出であった。❺さ
らにピンホールカメラの原理を利用し、その元素がどのように分布しているかを画像化に成功する。
今後は元素の移動を可視化する動画像の取得に活用し、化学反応の過程を追跡する研究などで材料開
発貢献に期待している。
Figure 1: Principle of retrieving X-ray energy-dispersive spectra from camera images.
【ネオコン倶楽部:世界最高の電流密度の低コスト高温超電導線材】
高温超電導体は超電導が生じる温度が高く、冷却に安価で豊富な液体窒素の利用が可能である一方、
超電導状態を維持して通電できる電流は、周囲の磁場が強くなると共に減少するという性質がある。
このため、線材に強い磁場が加えられる環境で使用する機器(MRI、NMR、医療用を含めた加速器、
産業用モータ、航空機用モータ、発電機、リニアモータカー、核融合、超電導電力貯蔵システム、超
電導変圧器など)には、磁場中でも高い特性を維持する線材が必要となる。そこで、イットリウム系
酸化物超電導線材は、他の高温超電導材料に比べて本質的に磁場中での性能が高い線材であり、長尺
化、高性能化が図られているが、現状では、線材が高価であることや高温・高磁場(例えば液体窒素
中で数テスラ)での使用では磁場中での臨界電流値が不十分である。このため、気相法で超電導層を
成膜する技術を中心に、人工ピン止め点導入により磁場中特性の向上が図られてきたが、依然、高コ
ストなため一層の特性向上を必要としていた。
今月14日、産業技術総合研究所らの研究グループは低コストプロセスである溶液塗布熱分解法によ
るイットリウム系酸化物の高性能・長尺超電導線材を超電導層の中に直径数十ナノメートルの人工ピ
ン止め点(BaZrO3)を均一に分散させることに成功――溶液塗布熱分解法による線材として、良好な
超電導特性を示すものの――したが、気相法などによる高性能線材には及ばず超電導特性の向上に取
り組み、❶高温超電導体のイットリウム系酸化物超電導線材の超電導層の形成プロセスを改良して実
現、❷低コストなプロセスで磁場中の臨界電流密度を向上させて、高温超電導線材のコスト課題の解
決へ、❸モータや発電機など省エネ産業用機器、MRIや重粒子線加速器など医療機器の超電導磁石へ
の応用できるなどの成果をえたことを公表。
☑ 研究成果
同上研究グループは、低コスト化のために開発してきた溶液塗布熱分解法では多数回原料溶液を塗布・
熱処理を繰り返すが、❶一回当たりの塗布膜厚を数十ナノメートルに薄膜化することで、❷人工ピン
止め点を超微細化して、磁場中の特性を画期的に向上させることに成功。この基本原理をもとに、人
工ピン止め点の高濃度化を施すなどさらなる特性向上を図り、現時点で世界最高の磁場中の臨界電流
密度(液体窒素温度、磁場 3テスラ(T)中で1平方センチメートルあたり400万アンペア)を実
現。臨界電流値は360アンペアを超え、並行して、実際の製造プロセスに適用できるかどうか基本
原理を検証し、5ナノメートルの線材を作製して長尺化の見通しを得る。
【RE100倶楽部:最新超音波式風速計】
● 世界最軽量の3D超音波式風速計登場/TriSonica™Mini
今月18日、風力発電制御には風速計が欠かせない。米国のシンクロネス社らは、世界初、最小・最
軽量の三次元超音波式風速計を開発販売開始する(上図ダブクリ参照)。このTriSonica™Miniは、❶
側面が75ミリメート、❷重量が50グラム未満の世界最小の風速計。 ❸3軸(x、y、z)の風速と風
向を毎秒30メートル(67ミリパスカル)まで10ヘルツのサンプリングレートで測定する。❹こ
のソリッドステート・ウインドシステムには可動部分がなく、製品の耐久性、精度、信頼性を最大限
に引き出せるとのうたい文句。対象市場として、風力発電システム以外にも、気象計測や無人車両(
UAV)市場を中心に、モバイルアプリケーションや狭いスペースに理想的な3次元超音波風速計向け
対応(4つの冗長な測定経路と独自の幾何学的特徴技術は特許出願中/詳細不詳のため要調査)。
尚、シンクロネス社は、18年以上にわたり、魅力あるソリューションの提供を行っており、 同社
は、医療機器、航空宇宙、およびカスタムオートメーション業界における強力な顧客ポートフォリオ
を保有するとのこと。 製品ライフサイクル全体にわたりエンジニアリングサービスを完全に保証す
る。下記に、関連する国内の特許事例2件を参考掲載しておく。
※特開2001-278196 航空機用超音波式対気速度センサ
気象観測に用いられている超音波風速計は、一定区間を伝搬する超音波の伝搬時間が、風の影響で変
化することを利用したもので、全方位的に所定の間隔で配設された複数個(一般には6個)の超音波
送受信器は平面上のあらゆる方位の風を測定することが出来る。しかし、超音波送受信機同士の空気
力学的干渉により、強風時の測定は困難で、航空機搭載が可能な大きさのものでは20m/s以下、
地上設置用の大型装置でも60m/s以下が測定可能領域である。この測定可能領域では航空機に利
用するには高速側の計測範囲が充分とはいえず、気象観測用の超音波風速計は、航空機に搭載する対
気流速計測器には適していない。
超音波風速計のセンサ・ブローブを前方方向からの気流に対して乱れを生じにくい形状に改良し、か
つ複数個の超音波送受信機を基体の前後方向に位置を異ならせて配置する形態で低速航空機に搭載す
るものであるから、従来のピトー管では不可能であった航空機の低速度領域の対気速度計測が可能と
なる。本発明を操縦用計器に適用すれば、その結果として低速飛行時の速度表示が従来より高精度と
なり、航空機の飛行安全性を向上させることができる。また、慣性計測装置など適宜の計測器により
対地速度が計測されれば、その位置での風速を割出すことができ、空中の特定位置の風を計測するこ
ともできる。更に、これを成層圏プラットフォーム用飛行船に適用した場合には、飛行船を一定位置
にとどめるための制御用センサとしても使用することができる。
※特開2011-089844 風向風速計測装置および風向風速計測システム
室内の風速の計測には、熱線式や超音波式の風速計がよく用いられている。❶熱線式風速計と❷超音
波式風速計はともに、微風域を含めて測定範囲が広く、応答性が良い点で優れる。熱線式風速計と超
音波式風速計を比較すると、
るため、送信部と受信部の間の空間に温度や圧力の不均一な場所があると、超音波の伝搬速度
の変化やレンズ効果による超音波の散乱が生じることにより、計測誤差が発生しうる。このた
め、超音波式風速計は、サーバールームやデータセンターなどの空間的な温度変化が大きい領
域での風速の計測には不適であ
る。熱線式風速計にはこのような問題がない。 しかし、その一方で熱線式風速計は、計測できるのが一般に風速のみであり、単体では風向を
計測することができない。 熱線式風速計に工夫を施して、風向も計測可能にしたものに、温度に応じて抵抗値が変化する
2本の直線状のヒータを、各々の一端で互いに接続して30度~90度のかぎ型に配置した風
向風速センサであり、電圧をかけられた各々のヒータからの信号を処理することにより風向と
風速を検知できるが、2本のセンサ(ヒータ)を用い、これらのセンサをかぎ型に形成してい
るため、装置構成が複雑になる。 熱線式は、2本のセンサの出力を比較、演算して風向を求めるため、信号処理も複雑になる。
✪ 以上、今夜も技術がてんこ盛りである。